説明

組合せ

本発明は、腫瘍疾患の予防および/または処置用の、少なくとも1種のNSAID(非ステロイド性抗炎症剤)および少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤を含む組合せに関する。本発明はまた、該組合せを含有する医薬およびそれらの製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の予防および/または処置用の少なくとも1種のNSAID(非ステロイド性抗炎症剤)および少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤を含む組合せ、それらを含有する医薬およびそれらの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍の処置は、ここ数年に成された多大な進歩にも拘わらず、依然として未解決の医療問題である。顕在化した腫瘍の処置に加えて、科学的興味は、また、前癌性の変化の治療にますます向けられている。ここで、この目的は、悪性新生物の発達の遅延または防止により遂行される。
【0003】
大腸腺腫症(同義語:家族性腺腫様大腸ポリープ症=FAP)は、多数の大きい腸ポリープの形成を伴う新生物性症候群である。この疾患は家族性に高い程度で起こり、常染色体性に優性遺伝する。症候性のFAP患者では、癌の率は50ないし100%であり、予防的医療検査により検出された疾患において10ないし15%である。FAP患者の割合は、大腸癌腫のファミリーの総数の約1%を占める(Rustgi AK. Hereditary gastrointestinal polyposis and nonpolyposis syndromes. N Engl J Med 1994, 331, 1694-1702)が、腺腫性ポリープは、約50歳の全集団の約33%、70歳の約50%で見られる(Williams AR, Balasooriva BA, Day DW. Polyps and cancer of the large bowel: a necropsy study in Liverpool. Gut. 1982, 23, 835-842)。組織学的には、新生物は線腫である。しばしば、小腸の関与、並びに十二指腸および乳頭の新生物も見られる。診断は、遺伝子試験を利用して、前駆症状的に既に可能である。癌腫の予想を理由として、一般的に、直腸粘膜切除術(proctomucosectomy)および結腸切除を、診断後に治療的に実施する。
【0004】
非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)がFAPおよび腺腫性ポリープの処置に適し、従って大腸癌のリスクを顕著に減少させることが、研究において立証された(Jaenne PA, Mayer RJ. Chemoprevention of colorectal cancer N Engl J Med 2000, 342, 1960-1968; Steinbach G, Lynch PM, Phillips RKS, Wallace MH, Hawk E et al. The effect of celecoxib, a cyclooxygenase-2 inhibitor, in familial adenomatous polyposis. N Engl J Med 2000, 342, 1946-1952)。O−アセチルサリチル酸は、大腸の癌、乳癌の形成に対して、および肺癌の実験モデルにおいて、明白に予防作用を有する(Harris R E, Kasbari S, Farrar WB. Prospective study of nonsteroidal anti-inflammatory drugs and breast cancer. Oncology Reports 1998, 6, 71-73; Rioux N., Castonguay A. Prevention of NNK-induced lung tumorigenesis in A/J mice by acetylsalicylic acid and NS-398. Cancer research 1998, 58, 5354-5360)。しかしながら、高用量または長期間のNSAID投与は、例えば胃腸領域において、望まれない副作用を引き起こし得る(Wolfe MM, Lichtenstein DR, Singh G. Gastrointestinal Toxicity of nonsteroidal antiinflammatory drugs. N Engl J Med 1999; 340:1888-1899 (Erratum, N Engl J med 1999;341:548))。
【0005】
NSAIDを摂取するとき、プロトンポンプ阻害剤パントプラゾールおよびNSAIDからなる組合せの使用により、胃腸管における医薬に関連する胃腸の副作用が回避されることは、WO2005/074930に記載されている。
【0006】
簡潔に述べると、o−アセチルサリチル酸がエソメプラゾールと組み合わされると、心血管系の疾患または卒中の予防のためのo−アセチルサリチル酸の永続的投与は、胃腸の出血のリスクが高い患者においてさえ、例えば存在している胃腸の潰瘍の場合でさえ、副作用として起こる出血の恐れを伴わずに実施できる(Chan FKL, Ching JYL, Hung LCT, Wong VWS, Leung VKS et al. Clopidogel versus Aspirin and Esomeprazole to prevent recurrent ulcer bleeding. N Engl J Med 2005, 352, 238-244)。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、NSAID−に関連する有害副作用が低減された、腫瘍の予防および/または処置用のNSAIDを含む組合せの提供である。
【0008】
この度、本発明による組合せは、腫瘍の予防および/または処置に関して、予想されない有利な効果および特性を有することが見出された。
【0009】
本発明は、腫瘍の予防および/または処置のための、少なくとも1種のNSAIDを成分Aとして、そして、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤を成分Bとして含む組合せに関する。
【0010】
本発明に関し、NSAID(非ステロイド性抗炎症剤)は、一般に、先行技術においてこの用語で述べられた全クラスの物質を表す。NSAIDは、例えば、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、o−アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アンピロキシカム、アントレメチングアシル(amtolmetinguacil)、アニロラク(anirolac)、アントラフェニン(antrafenine)、アザプロパゾン、ベノリラート、ベルモプロフェン、ビンダリト(bindarit)、ブロムフェナク、ブクロキシン酸(bucloxic acid)、ブコローム、ブフェキサマク、ブマジゾン、ブチブフェン(butibufen)、ブチキシレート、カルバサル酸カルシウム(carbasalate calcium)、カルプロフェン(carprofen)、シンメタシン(cinmetacin)、シノキシカム(cinnoxicam)、クリダナク(clidanac)、クロブザリト(clobuzarit)、デボキサメト(deboxamet)、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エルテナク(eltenac)、エンフェナン酸(enfenamic acid)、エテルサレート(etersalate)、エトドラク、エトフェナメート、フェクロブゾン(feclobuzon)、フェルビナク、フェンチアザク、フェプラジノール(fepradinol)、フロブフェン(flobufen)、フロクタフェニン、フルフェナム酸、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フルプフェナク(furpfenac)、フルプロフェン(furprofen)、グルカメタシン(glucametacin)、イブフェナク、イブプロフェン、インドブフェン、インドメタシン、インドメタジンフラネシル(indometazin franesil)、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロベンザリット、ロナゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、メフェナム酸、メロキシカム、メサラジン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルミン酸(niflumic)、オルサラジン、オキサプロジン(oxaprozine)、ペルビプロフェン(pelubiprofen)、フェニルブタゾン、ピメプロフェン(pimeprofen)、ピラゾラク(pirazolac)、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プリフェロン(prifelone)、プリノミド(prinomide)、プログルメタシン、プロカゾン、プロチジン酸、ロマザリト(romazarit)、サリチルアミド、サリチル酸、サルミステイン(salmistein)、サルナセジン(salnacedin)、サルサラート、スリンダク、スプロフェン、タルニフルメート(talniflumate)、テニダップ、テノサル(tenosal)、テノキシカム、テポキサリン(tepoxalin)、チアプロフェン酸、チアラミド、チルノプロフェンアルバメル(tilnoprofen arbamel)、チメガジン(timegadine)、チノリジン、トルフェナム酸、トルメチン、ウフェナマート、キシモプロフェン(ximoprofen)、ザルトプロフェンおよびゾリプロフェン(zoliprofen)を表す。
【0011】
言及される好ましいNSAIDは、アセトアミノフェン、o−アセチルサリチル酸、クリダナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびスリンダクである。特に好ましいNSAIDは、o−アセチル−サリチル酸である。
【0012】
本発明に関し、プロトンポンプ阻害剤は、一般に、先行技術においてこの用語で述べられた全クラスの物質を表す。プロトンポンプ阻害剤は、例えば、ラニチジン、ファモチジン、パントプラゾール、ランゾプラゾール(lanzoprazole)、エソメプラゾール、オメプラゾールおよびラベプラゾールを表す。言及される好ましいプロトンポンプ阻害剤は、パントプラゾール、ラベプラゾール、ランゾプラゾール、エソメプラゾールおよびオメプラゾールである。特に好ましいプロトンポンプ阻害剤は、ランゾプラゾール、エソメプラゾールおよびオメプラゾールである。
【0013】
本発明による組合せに含有される化合物は、それらが既に塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではないならば、それらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物の形態で用いることもできる。
【0014】
本発明による組合せに含有される化合物は、それらの構造に応じて、立体異性体でも存在できる(エナンチオマー、ジアステレオマー)。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。
【0015】
本発明による組合せに含有される化合物が互変異性体で生じ得るならば、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0016】
本発明に関して、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。しかしながら、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含まれる。
【0017】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩は、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩を含む。
【0018】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩は、また、常套の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個のC原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)に由来するアンモニウム塩を含む。
【0019】
本発明に関し、溶媒和物は、溶媒分子との配位により、固体または液体状態で錯体を形成している本発明による化合物の形態である。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。
【0020】
本発明による組合せは、腫瘍の予防および/または処置に使用できる。
本発明に関し、腫瘍は、温血生物の器官の癌性疾患およびそれらの前駆型、特に、Cox−1および/またはCox−2の阻害により治療効果が達成できる腫瘍である。これらは、胃腸管およびその付属器官、例えば肝臓、膵臓の、特に小腸の、大腸の、直腸の、およびそれらの前駆症状である。前駆症状は、まだ癌ではない変化、好ましくは腸ポリープ、例えば線腫性腸ポリープを意味すると理解される。本発明に関し、他の腫瘍は、肺の癌腫、皮膚の腫瘍、特に黒色腫、前立腺の癌腫、乳房の癌腫、骨格の腫瘍、リンパ腫、卵巣の腫瘍、内分泌系の腫瘍および中枢神経系の腫瘍である。
【0021】
好ましくは、本発明による組合せは、肺の癌腫、乳房の癌腫、卵巣の腫瘍および胃腸管の癌腫、例えば、小腸の、大腸の、および直腸の癌腫の予防および/または処置に使用できる。
【0022】
加えて、本発明による組合せは、家族性腺腫様ポリープ症(FAP)、ポリープ症を伴わない家族性合併腫瘍(遺伝性非ポリープ性結腸直腸癌−HNPCC)の予防および/または処置、および結腸直腸癌の一次または二次化学予防および治療に使用できる。
【0023】
予防は、一次および二次予防の両方を意味すると理解される。これに関して、一次予防は、器官の損傷をもたらす最初の疾患から患者を保護することを意味すると理解される。これに関して、二次予防は、腫瘍の結果として既に器官損傷を患っている患者の、新たな腫瘍からの保護を意味すると理解される。
【0024】
本発明による組合せを使用すると、予想されない相乗効果が作用に観察される。従って、組合せ中で用いる活性物質の量を単剤治療と比較して低減できる。同様に、単剤治療と比較して同等の活性物質の量を使用すると、予想されないより良好な作用が観察され得る。
【0025】
本発明による組合せの相乗効果は、好ましくは、各場合において経口投与で患者の体重kgを基準として、本発明による組合せが0.1ないし20mg/kg、特に0.5ないし15mg/kgの成分Aの活性物質および0.01ないし15mg/kg、特に0.05ないし10mg/kgの成分Bの活性物質を含む場合に観察される。
【0026】
加えて、本発明による組合せの相乗効果は、好ましくは、本発明による組合せが、NSAIDとしてo−アセチルサリチル酸を25ないし1500mgの用量で、好ましくは75ないし750mgの用量で、プロトンポンプ阻害剤として、オメプラゾールを5ないし100mgの用量で、好ましくは15ないし50mgの用量で、特に好ましくは20ないし40mgの用量で、パントプラゾールを5ないし100mgの用量で、好ましくは15ないし50mgの用量で、特に好ましくは20ないし40mgの用量で、ランゾプラゾールを5ないし100mgの用量で、好ましくは10ないし50mgの用量で、特に好ましくは15ないし30mgの用量で、または、エソメプラゾールを5ないし100mgの用量で、好ましくは15ないし50mgの用量で、特に好ましくは20ないし40mgの用量で含む場合に観察される。
【0027】
成分Aとしてo−アセチルサリチル酸を、成分Bとしてパントプラゾール、ランゾプラゾール、エソメプラゾールまたはオメプラゾールを含む組合せが好ましい。成分Aとしてo−アセチルサリチル酸を、そして成分Bとしてランゾプラゾールまたはオメプラゾールを含む組合せが特に好ましい。
【0028】
本発明による組合せの相乗効果は、好ましくは、本発明による組合せの成分AおよびBが、AおよびBを基準として、2:1ないし100:1、好ましくは2:1ないし40:1の比で存在する場合に観察される。
【0029】
本発明の意味において、「比」は、断りの無い限り、個々の成分の重量比を意味すると理解される。
【0030】
必要に応じて、即ち、体重または投与経路のタイプ、医薬に対する個体の挙動、製剤の様式および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から離れる必要があり得る。従って、上述の最小量より少なくすることが適切な場合があり得、一方で、上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日かけて数個の個別用量に分割するのが望ましいことがある。
【0031】
必要に応じて、1種またはそれ以上のさらなる成分の添加により、本発明による組合せを補うのが好都合であり得る。言及し得る例は、ビタミンC、ビタミンEおよび葉酸である。これらの他の成分は、個別に、または、代替的に一緒に添加できる。
【0032】
本発明による組合せは、驚くべき良好な耐容性により、さらに卓越している。
【0033】
本発明による組合せは、好ましくは、ヒトの医薬において用いられるが、獣医学の医薬にも、特に哺乳動物の処置にも適する。
【0034】
本発明による組合せは、非経腸的に、局所でまたは経口で、好ましくは局所または経口で、特に好ましくは経口で投与できる。
【0035】
本発明は、さらに、腫瘍の予防および/または処置用の投与形を製造するための本発明による組合せの使用に関する。
【0036】
本発明の意味では、「組合せ」は、全ての成分を含有する投与形(固定された組合せ)および各成分を相互に別々に含有する組合せパックを意味すると理解されるのみならず、同じ疾患の処置または予防のために用いられる限り、同時にまたは時間的にずらして投与される成分も意味すると理解される。そのとき、個々の成分は、異なる投与形(例えば、異なる錠剤および/またはカプセル剤)で存在でき、それらは次いで同じ疾患の処置または予防のために同時にまたは時間的にずらして用いられる。
【0037】
成分AおよびBの活性物質は、既知の方法で、医薬または投与形の形態の常套の製剤に変換でき、ここで、これらは液体または固体製剤であり得る。例は、錠剤、糖衣錠、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、エアゾール剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、果汁、軟膏、クリーム、散剤および液剤である。さらに、含浸した貼付薬または包帯を本発明による組合せと共に使用できる。本発明による組合せを含むこれらの投与形の製造方法は、当業者に知られている。
【0038】
本発明による組合せは高度に耐容性があり、いくつかの場合では低い用量でも効能があるので、非常に様々な製剤の変形を実現できる。従って、一方では、個々の成分を別々に製剤化する可能性が存在する。この場合、個々の成分AおよびBは、厳密に同時に摂取される必要はないが、他方では、時間的にずらして摂取することが最適な効果を達成するために有利であり得る。このタイプの分離投与の場合、個々の成分の製剤、例えば錠剤またはカプセル剤を、一緒に同時に適する一次パック中に組み合わせるのが明白である。その一次パック中で、成分は各場合で別々の容器中にあり、それは、例えば、チューブ、バイアルまたはブリスターパックであり得る。共通の一次パック中にある各成分のこの種の分離包装は、キットとも呼ばれる。
【0039】
本発明による組合せにさらに適する製剤の変形は、好ましくは、また、固定された組合せである。「固定された組合せ」は、本明細書において、各成分が固定された量の比で一体となって存在する投与形を意味すると理解される。この種の固定された組合せは、既に言及した液体または固体製剤、例えば、液剤、カプセル剤または錠剤において実現できる。
【0040】
本発明による組合せは、1日3回まで投与される;1日1回ないし2回の投与を可能にする組合せが好ましい。
【0041】
成分AおよびBの活性物質は、固体経口投与形の固定された組合せの製剤に特に適する。患者の服薬率は、決定的な程度まで、摂取時当たりの投与形の数並びに(固体経口)医薬形のサイズおよび重量の要因に依存することが一般的に知られている。従って、患者にとって摂取を可能な限り快適にするために、別々に摂取される様々な医薬の数は可能な限り小さく維持されるべきであり(固定された組合せの利点)、かつ、固定された経口投与形のサイズおよび重量は、十分な治療効能を伴って可能な限り小さいべきである。かくして、最小のサイズおよび最小の重量を有する固体経口医薬製剤の形態の固定された組合せを実現できる。従って、本発明による固定された組合せは、患者に可能な限り高い服薬率をもたらし、それにより処置の安全性および信頼性を決定的に改善する。
【0042】
成分AおよびBの組合せおよび組成または機能の改変により、活性物質の放出を制御できる。例えば、ある成分の活性物質の遅延放出(減速)により、固定された組合せにおいて、上述の時間的な作用の開始の分断も実現できる。
【0043】
本明細書で言及される固体経口投与形は、一般的な標準的方法により製造される。各成分は、医薬的に許容され、生理的に無害なもの、例えば:増量剤として、セルロース誘導体(例えば微結晶セルロース)、糖類(例えばラクトース)、糖アルコール類(例えばマンニトール、ソルビトール)、無機増量剤(例えばリン酸カルシウム)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン、ゼラチン、スターチおよびセルロース誘導体)、および医薬製剤の製造に必要とされる所望の特性を有する全てのさらなる補助剤、例えば滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)、例えば崩壊剤(例えば架橋ポリビニルピロリドン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、例えば湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、例えば遅延剤(例えばセルロース誘導体、ポリアクリル酸誘導体)、例えば安定化剤、例えば香味料、例えば色素である。
【0044】
液体製剤は、医薬的に常套の補助剤を使用して、標準的方法に従って同様に製造され、溶解または懸濁形の活性物質を含有する。これらの医薬調製物の典型的投与量は、1ないし10mlである。これらの液体製剤における補助剤の例は:溶媒(例えば水、アルコール、天然および合成油、例えば中鎖トリグリセリド)、可溶化剤(例えばグリセロール、グリコール誘導体)、湿潤剤(例えばポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム)、および、医薬製剤の製造に必要とされる所望の特性を有するさらなる補助剤、例えば粘性増強剤、例えばpH矯正剤、例えば甘味料および香味料、例えば抗酸化剤、例えば安定化剤、例えば防腐剤である。
【0045】
カプセル製剤の殻の主要構成分は、例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0046】
医薬補助剤は、当業者に周知の通り、例えば以下の手引きにも記載されている:"Handbook of Pharmaceutical Excipients", Wade, A. & Weller, P.J., American Pharmaceutical Association, Washington, 2nd edition 1994。
【0047】
上述の疾患状態の処置のための本発明による2種の成分AおよびBの使用のために、経口投与経路が好ましい。本発明は、さらに、成分AおよびBを、常套的に1種またはそれ以上の不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と共に含有する医薬に関する。
【0048】
経口投与のために、先行技術に準じて機能し、本発明による成分AおよびBを迅速に、および/または改変された形態で放出し、結晶形(粉末化または微粉化)および/または無定形および/または溶解形の2種の成分を含有する投与形が適する。例えば、溶解速度、そして、従って、用いる成分AおよびBの粒子サイズを利用して、胃腸管からの吸収に影響を与えることができる。これらの適する投与形には、(腸溶性)被覆または非被覆錠剤、ゼラチン、HPMC、プルランまたは他の材料で作られたハードカプセル剤、ソフトゼラチンカプセル剤、散剤、顆粒剤およびペレット剤がある。半減期、成分AおよびBの安定性、吸収部位および/または所望の時間的な作用開始の分断に応じて、さらなる制御放出製剤が適する。これらには、例えば、特殊構造錠剤、侵食マトリックス錠剤、拡散制御被覆を有する錠剤またはミニ錠剤、ペレット剤を含有するカプセル剤、拡散制御被覆を有する顆粒剤または錠剤、侵食するペレット剤、顆粒剤または錠剤を含有するカプセル剤、および浸透放出錠剤が含まれる。迅速放出および制御放出製剤の選択されたシステムおよびそれらの製造のより正確な説明を、下記に示す。
【0049】
本発明により使用される成分AおよびBを、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。
【0050】
成分Aを成分Bと組合せて加工して合同の経口投与形(固定された組合せ)をもたらすには、全ての上述の投与形が適する。相互の安定性の悪化の場合、2種の成分を医薬形中で空間的に分離できる。このために、分離した顆粒またはペレットを、例えばカプセルに充填するか、または、2種の顆粒を打錠して1層/2層またはジャケット−コア錠剤を得る。加えて、2種の成分の少なくとも一方、または、2種の成分の少なくとも一方を含有する粉末、顆粒またはペレット調製物をポリマーで被覆し、続いてそれをさらに加工して錠剤またはカプセル剤を得ることも可能である。
【0051】
成分BのpH依存的不安定性の理由で、この成分を含有する製剤段階(例えば、活性物質の結晶、顆粒、ペレットまたはミニ錠剤;後述)、または、製剤全体を、腸溶性被覆で被覆するのが好ましい。本発明の意味において、被覆は、特にフィルム被覆である。一般的に、被膜の方法は標準的方法に従い、さらなる補助剤の添加を必要にする。腸溶性フィルム被覆には、フィルム形成剤(例えばセルロースアセテートフタレート、ポリメタクリル酸誘導体[=EUDRAGITS(登録商標) L および S]またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、可塑剤(例えばポリエチレングリコール、トリアセチン、グリセロール、ジブチルフタレート)、着色料/色素(例えば二酸化チタン、酸化鉄)および離型剤(例えばタルク、高分散シリカ、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセロール)が卓越している。被覆は、好ましくは水をベースとする懸濁液での噴霧により実施する。水を適する有機溶媒で置き換えることが可能である。適する被膜は、製造工程中の異なる位置で実施できる。上記で議論される唯一の製剤段階が腸溶性被覆であるならば、例えば糖またはフィルム被覆の形態のさらなる被膜を、製造工程の終わりにさらに行うことができる。この位置で好ましいフィルム形成剤は、例えば、改変されたセルロース類、ポリメタクリル酸塩およびポリビニルピロリドンである。
【0052】
上述のある種の組合せの場合、成分Aおよび/またはBの遅延制御放出が特に有利であり得る。これは、改善された薬理作用を導けるか、望まれない副作用の発生を低減できるか、または、患者の処置の簡略化に貢献できる。従って、本発明は、両成分を含有し、両成分または2種の成分の一方を制御形態で放出する製剤にも関する。ここで、成分Aおよび成分Bの両方、成分Aのみ、または、成分Bのみが、制御形態で放出され得るが、後者の2つの場合では、他方の成分は迅速に放出される。
【0053】
A)迅速放出製剤
本発明による固定された組合せは、とりわけ、成分Aおよび/またはBを迅速に放出する製剤である。「迅速放出製剤」は、それに含有される活性物質の投与量の80%を30分以内に放出する(USPに準ずるブレード撹拌器具;UV検出;放出媒体0.1N塩酸または酢酸バッファーpH4.5±界面活性剤900ml;回転速度75rpm)タイプの製剤(例えば錠剤、カプセル剤、サシェ剤)を意味すると理解される。結果的に、固定された組合せは、本発明の意味において、1日3回まで投与できる;1日1回ないし2回の投与を可能にする組合せが好ましい。
【0054】
迅速な活性物質の放出の達成に、様々なシステムが適する。例えば、後にカプセルまたはサシェに充填される粉末および/または顆粒および/またはペレット、1層/2層またはジャケット−コア錠剤、フィルム錠剤、糖衣錠またはソフトゼラチンカプセル剤が卓越している。
【0055】
例えば、成分AおよびBの本発明による固定された組合せを含む投与形の製造は、適する補助剤を添加して両成分の混合物を直接カプセルに充填する、かつ/または、製剤化して錠剤をもたらすことにより実施できる。適する補助添加物は、とりわけ、増量剤、崩壊剤および流動剤である。言及される補助剤の群の例は、増量剤として:セルロース誘導体(例えば微結晶セルロース)およびスターチ(天然または改変、例えばジャガイモスターチ)、糖類(例えばラクトース)および糖アルコール類(例えばマンニトール、ソルビトール)および無機増量剤(例えばリン酸カルシウム、酸化マグネシウム)およびバッファー物質;崩壊剤として:スターチ誘導体(例えば架橋ナトリウムカルボキシメチルスターチ、ナトリウムスターチグリコレート)、セルロース誘導体(例えば架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)または架橋ポリビニルピロリドン;流動剤(本明細書では、流動調節剤/滑沢剤/離型剤のための一般用語として理解される)として:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルクおよび高分散シリカであり得る。混合物中の2種の物質の均一な分布を可能にするために、2種の成分AおよびBを、例えば、まず相互に混合でき、そこに補助剤を段階的に添加できる。
【0056】
本発明はまた、顆粒を得るための、既に説明した活性物質/補助剤混合物のさらなる加工に関する。造粒のために、本発明によると、流動床凝集、回転造粒および湿式押出の形態の既知の常套方法が湿式造粒方法として適し、そして、ロール圧縮が乾式造粒方法として適する。好ましい湿式造粒方法は、流動床凝集である。湿式造粒では、水または適する有機溶媒、例えばエタノール、アセトンもしくはイソプロパノール、または、水と適する有機溶媒の混合物を、一般的に溶媒として用いることができる。界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート)の形態の親水化剤の添加が可能である。既に述べた補助剤の群に加えて、結合剤、例えば糖類、糖アルコール類、スターチ類、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ペクチン類、ポリエチレングリコール類およびポリビニルピロリドン類の使用を実施できる。帯電防止剤の添加も、特により細かい活性物質のバッチの場合、可能である。ここで、ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、高分散シリカ/アルミナまたはリン酸二カルシウムは、例えば、それら自体用途を示唆する。製造される顆粒は、直接(サシェ/カプセルに)充填できるか、または、さらに製剤化されて錠剤をもたらすことができる。
【0057】
選択される製造経路(直接混合または造粒)と無関係に、カプセル剤、錠剤、あるいは顆粒(サシェ充填の場合)でさえある得られる医薬形に、安定性の理由で腸溶性被覆を施すことができる。
【0058】
さらに、固定された組合せの製造は、相互に独立した2種の混合物/顆粒の製造によっても実施でき、それらは、さらなる工程において組み合わせられ、その後充填され(カプセル/サシェ)、かつ/または、製剤化されて錠剤をもたらす。各々の個々の製造段階は、適する補助剤の添加を特徴とし得る。成分Aおよび成分Bの両方に好ましい造粒方法は、乾式造粒方法である。最終医薬形をもたらす加工は、2種の顆粒を組み合わせた後に実施する。
【0059】
この製造経路の利用は、それらの組合せ/さらなる加工の前に、成分AおよびBの顆粒の一方または両方を別々に腸溶性被膜すること、および、最後に得られる医薬形(組み合わせた顆粒剤、カプセル剤または錠剤)を腸溶性被膜することの両方を可能にする。
【0060】
成分AおよびBの本発明による固定された組合せを含む迅速放出投与形の製造は、両成分を中性ペレットに吸収させることによっても実施できる。上述の成分Aおよび/またはBを使用する迅速放出ペレットの製造のために、スクロースまたは微結晶セルロースの中性ペレットを、例えば、活性物質、常套の結合剤およびさらなる常套の補助剤の混合物で被覆できる。成分毎に1つのペレットのバッチを製造するならば、その後、成分AおよびBを含むペレットのバッチを組み合わせ、1つの段階をもたらす。これらのペレットをカプセルおよび/またはサシェに充填できるか、または、加工してさらに錠剤をもたらすことができる。
【0061】
この製造経路を取るならば、再度、一方または両方のペレットのバッチを相互に別々に腸溶性に被膜する、組み合わせて1つのバッチを得た後にペレットを被覆する、または、ペレットのバッチをさらに加工した後に得られる医薬形(カプセル剤/錠剤)を腸溶性に被膜するという選択肢がある。
【0062】
同様に、本発明は、固定された組合せを2層またはジャケット−コア錠剤の形態で製造することに関する。これは、加工すべき2種の成分の間に不適合が予想されるならば、特に有利である。さらに、この方法は、成分に応じて、様々な補助剤または安定化剤(例えば抗酸化剤または緩衝物質)を各層またはコアもしくは殻で用いる可能性をもたらす。2層錠剤の製造のために、2つの充填および打錠ステーションを有する打錠機が特に適する。各場合で、各成分を充填ステーションの一方に、適する補助剤との直接混合物として、または顆粒の形態で供給する。ジャケット−コア錠剤の製造の場合、コアの打錠の後、コアのジャケットへの正しい導入を保証する2層打錠機用の供給およびセンタリングユニットがさらに必要である。
【0063】
上述の解説によると、成分AおよびBの一方のみまたは両方の顆粒の別々の腸溶性被膜、または、得られる2層錠剤の腸溶性被膜、コアのみの腸溶性被膜または得られるジャケット−コア錠剤の腸溶性被膜が可能である。
【0064】
本発明は、また、溶融押出を使用する固定された組合せの製造にも関し、この方法は、同様に標準的方法に従う。ここで、成分Aを、例えば、既に説明した活性物質/補助剤混合物または顆粒の形態で用いることができ、一方、成分Bを最初に加工して溶融押出物を得る。溶融押出の方法のために、1種/数種のポリマー、可塑剤および担体の使用が必要である。適するポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルピロリドンであり得る。可能な可塑剤は、とりわけ、クエン酸トリエチル、安息香酸およびコハク酸である。媒体の用語は、本明細書において、例えば、糖アルコール類、特にマンニトール、微結晶セルロースおよび架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどの補助剤を意味すると理解される。得られる溶融押出物は、球形化してペレットを得るか、または、その製造後に好ましくは粒径<0.315[mm]に粉砕し、その後、成分Aを含む粉末/顆粒混合物を用いてさらに加工できる。ここで、顆粒としての直接充填(サシェ剤/カプセル剤)または錠剤をもたらす圧縮(1層または2層錠剤)を行うことができる。これらの条件下で、滑沢剤の添加が望ましい。
【0065】
さらに、固定された組合せの製造は、相互に独立した2種の溶融押出物の製造によっても実施でき、それらをさらなる工程で組合せ、その中に充填する、および/または、製剤化して錠剤(1層または2層錠剤)をもたらす。各々の個々の製造工程は、適する補助剤の添加を特徴とし得る。溶融押出を行った後、球形化してペレットを得るか、または、好ましくは粒径<0.315mmへの溶融押出物の粉砕が続く。かくして得られたペレット/顆粒を混合する。混合した押出ペレットを直接包装できる(サシェ剤/カプセル剤)か、または、混合した顆粒を打錠して錠剤を得ることができる。
【0066】
さらに、本発明は、活性物質−補助剤混合物中の両方の活性物質の合同溶融押出による、固定された組合せの製造にも関する。溶融押出を行った後、球形化してペレットを得るか、または、好ましくは粒径<0.315mmへの溶融押出物の粉砕が続く。かくして得られたペレットを直接包装できる(サシェ剤/カプセル剤)か、または、顆粒を打錠して錠剤を得ることができる。
【0067】
好ましい製造方法に関係なく、実施すべき腸溶性被膜に様々な選択肢がある:得られた押出物(顆粒またはペレット)を相互に別々に被覆できるか、または、それらを混合した後に被膜するか、または、得られる医薬形(カプセル剤/錠剤)を被覆できる。
【0068】
B)制御された活性物質の放出を有する製剤
迅速放出錠剤に対応して、成分Aおよび/またはBの製剤からの放出速度により、制御された活性物質の放出を同様に定義できる。本発明の定義によると、平均放出速度の決定のために、本発明の医薬製剤をUSPの「器具2」で試験する(試験媒質リン酸バッファーpH6.8±界面活性剤900ml;回転速度75rpm;UV検出)。遅延放出成分について、45分間以上で80%、好ましくは2時間で80%ないし16時間で80%の放出速度が得られるならば、製剤は、制御された活性物質の放出を示す。
【0069】
様々なシステムが制御された活性物質の放出の達成に適する。これらは、例えば、封入形態、拡散制御ペレットに細分でき、これらをカプセルまたはサシェに充填するか、または、圧縮して錠剤を得、マトリックス錠剤、2または1層錠剤または浸透放出システムとする。所望の放出プロフィールに応じて(活性物質の特性、特に安定性、半減期および適応症に応じて)、両方の成分または一方のみを制御放出形態に加工できる。
【0070】
制御放出形態の成分AおよびBの製剤のために、活性物質の単結晶、活性物質を含有する顆粒の粒子またはペレットに、被覆を施すことができ、続いてカプセルに充填するか、または、加工して錠剤を得る。錠剤自体も封入できる。使用する補助剤は、脂質、蝋および様々なポリマーである。被覆が消化可能または消化不可能な脂質または脂質様物質からなるならば、用いる消化可能物質は、例えば、モノステアリン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、ステアリン酸、ステアリン酸ジグリコールまたはトリオレイン酸グリセロールであり得、用いる消化不可能な物質は、例えば、カルナウバ蝋、蜜蝋およびセチルステアリルアルコールであり得る。孔の形成は、水溶性補助剤の添加により制御でき、放出速度は、それらのサイズにより制御できる。孔のサイズを制御するための可能な孔形成剤は、とりわけ、例えば、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース類、カルボキシメチルセルロース類またはそれらの塩、メチルセルロース類、デキストリン類、マルトデキストリン類、シクロデキストリン類、デキストラン類などの可溶性ポリマー、または、例えば、塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムなど)、尿素、糖(グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトースなど)、糖アルコール(マンニトール、ソルビトール、ラクチトールなど)などの他の可溶性化合物である。
必要ならば、得られる医薬形の腸溶性被膜が続く。
【0071】
後にカプセル/サシェに充填するか、または後に錠剤化するための制御放出形態での成分AおよびBの製剤に、拡散制御ペレットが特に適する。上述の活性物質の1種を含有する拡散制御ペレットの製造のために、スクロースまたは微結晶セルロースの中性ペレットを、例えば、活性物質、常套の結合剤およびさらなる常套の補助剤の混合物で被覆し、その後、可塑剤を含有できる拡散被膜で被覆する。使用する結合剤は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンである。同様に、他の天然、合成または半合成ポリマー、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールまたはゼラチンを用いることができる。適する拡散被膜は、特にエチルセルロースである。しかしながら、他の物質、例えばポリ[(メタクリル酸)(エチルアクリレート)](1:1)または他のアクリレート類、セルロースアセテートまたはセルロースアセテートブチレートも使用できる。適する可塑剤は、とりわけ、フタル酸誘導体(例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート)、クエン酸誘導体(例えばトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート)、他のエステル(例えばジエチルセバケート、トリアセチン)、脂肪酸および誘導体(モノステアリン酸グリセロール、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油および他の天然油、ミグリオール)、またはポリオール類(グリセロール、1,2−プロパンジオール、様々な鎖長のポリエチレングリコール)である。加えて、可塑剤のタイプおよび量は、上記で定義した本発明による放出およびペレットの必要な安定性が達成されるように調節する。上記で定義した放出の調節を、拡散被膜の孔のサイズおよび/またはその厚さの制御によりさらに実施する。被膜の量における孔形成剤の割合は、ここで、0ないし50重量%である。活性物質で被覆されたペレットの拡散膜に対する一定の重量比の付着および拡散被膜の可塑剤の量に対する一定比の付着が、ペレットの製造上重要である。用いる可塑剤のいくつかは、被膜および後続の可鍛化(malleablizing)の間に蒸発できる。末端条件を変更する際、拡散被膜の被覆の量の変更が必要である。従って、例えば、所望の放出速度を下げるか、孔形成剤の量を増やすか、または、ある種の可塑剤の場合、可塑剤の割合を下げるならば、より多量の被覆が必要である。所望の放出速度を上げるか、孔形成剤の量を減らすか、または、ある種の可塑剤の場合、可塑剤の割合を高めるならば、より少量の被覆が必要である。とりわけ、成分AおよびBを水に懸濁または溶解し、高濃度ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液で濃厚化することにより、拡散ペレットを製造できる。かくして得られた懸濁液または溶液を、噴霧工程で流動床ユニットにて中性ペレットに吸収させる。拡散膜によるペレットの被覆が続き、それは、好ましくは、流動床ユニットにおいて、例えば、適する生理的に耐容できる可塑剤を含有する水性エチルセルロース分散物または有機エチルセルロース溶液を噴霧することによる。続いて、50ないし125℃、好ましくは60ないし110℃の温度でペレットを可鍛化する。ここで、より高い可鍛化温度は、本発明による放出を達成するために、むしろ低い被膜の適用量が十分であり、得られるペレットは、保存に際して物理的により安定であるという事実を導く。上記の放出速度が達成されるように、拡散膜の厚さ、可塑剤のタイプ、可塑剤の量およびペレットのサイズを選択する。1日用量に相当する両成分のペレットの量を、ハードゼラチンカプセルまたはサシェに充填するか、またはさらに加工して錠剤を得る。上述の中性ペレットの被覆に加えて、後の球形化を伴う湿式押出、回転造粒、流動床凝集または後の球形化を伴う溶融押出などの、他のペレット製造方法も可能である。あるいは、直径1−4mmのミニ錠剤を製造することもできる。続いて、活性物質含有ペレットまたはミニ錠剤を、上記の通りに拡散膜で被覆する。
必要ならば、腸溶性被膜を加える。
【0072】
固定された組合せおよび制御放出形態の両成分の製剤化のために、水で膨潤可能なポリマーのマトリックス中に成分AおよびBを含有する錠剤が同様に適する。これらの錠剤のサイズは、1個またはそれ以上の錠剤が、カプセルまたはサシェの内側に収まるような大きさにできる。それらの錠剤を非被覆形態でカプセル剤に充填できるか、または事前に被膜、例えば胃液に不溶の被膜で被覆できる。
【0073】
両方の成分を水で膨潤可能なポリマーのマトリックス中に含有する錠剤は、以下の通りに製造できる。これらの「マトリックス製剤」は、好都合には、0.1ないし70重量%、好ましくは0.2ないし60重量%の活性物質を含有する。水で膨潤可能なポリマーのマトリックスの割合は、好都合には、10ないし95重量%、好ましくは20ないし60重量%である。侵食錠剤の形態の本発明による医薬製剤は、特に好ましい。これらの錠剤は、常套の補助剤および媒体および錠剤化補助剤に加えて、一定量の水で膨潤可能なヒドロゲルを形成するポリマーを含有し、ここで、これらのポリマーは、少なくとも15、好ましくは少なくとも50cps(2%強度水性溶液として20℃で測定)の粘度を有さなければならないことを特徴とする。常套の補助剤および媒体は、例えば、ラクトース、微結晶セルロース、マンニトールまたはリン酸カルシウムである。常套の錠剤化補助剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたは高分散シリカである。ステアリン酸マグネシウムの場合、これらは、好都合には、0.5ないし3重量%の量で存在し、高分散シリカの場合、好都合には、0.1ないし1重量%の量で存在する。用いる水溶性のヒドロゲル形成性ポリマーは、好ましくは、ヒドロキシ−プロピルセルロース類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース類、メチルセルロース類、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ガラクトマンナン類、ポリアクリル酸類、ポリメタクリル酸類またはメタクリル酸とメチルメタクリレートのコポリマー、ガウア、寒天、ペクチン、トラガカント、アラビアゴム、キサンタンまたはこれらの物質の混合物である。ヒドロキシプロピルメチルセルロース類の使用が特に好ましい。ここで、本発明による侵食錠剤は、錠剤の質量を基準として、少なくとも10重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースのタイプを含有するべきであり、その粘度(2%強度水性溶液として20℃で測定)は、少なくとも15、好ましくは少なくとも50cpsである。水で膨潤可能なポリマーのマトリックス中に活性物質を含む医薬製剤は、活性物質、ポリマーおよび適する補助剤および媒体および常套の錠剤化補助剤を混合し、直接錠剤化することにより製造する。ロール圧縮の形態での事前の乾式造粒は、活性物質、水で膨潤可能なポリマーおよび適する媒体を流動床で造粒する湿式造粒の実施と同様に可能である。回転造粒を使用するとき、必要に応じて、エタノール−水混合物の利用が必要である。マトリックス錠剤の場合、水で膨潤可能なポリマーの量と粘度は、上記の平均放出速度を有する錠剤が両成分について得られるように選択される。乾燥顆粒を篩過し、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムと混合し、錠剤化する。続いて、場合により、必要ならば腸溶性被覆で、錠剤を被膜する。後のカプセル剤の充填のために、直径3mmないし7mmの侵食錠剤が好ましい;場合により、この位置での腸溶性被膜も可能である。
【0074】
同様に、本発明は、成分AおよびBが2層錠剤中に存在する医薬製剤に関する。これは、2つの制御放出層または1つの制御放出層および1つの迅速放出層からなる。各場合の制御放出層の製剤化は、マトリックス製剤について上記で提示した原理に合わせる。各場合の迅速放出層の製剤化について、本発明のA)の部を参照のこと。錠剤化のために、特に、2つの充填および打錠ステーションを備えた2層打錠機が特に適する。錠剤は、場合により、続いて被膜する;必要であれば、この被膜は腸溶性被覆を使用して実施できる。2種の成分の一方の初期放出速度が速すぎることを防止するために、2層錠剤に活性物質を含まない第3の層を施すこともできる。
【0075】
さらに、成分AおよびBを加工して1層錠剤を得ることもできる。後に1層錠剤に導入するのに適する制御放出製剤は、特に、既に説明した拡散制御ペレットである。2つのタイプの拡散制御ペレットまたは1つのタイプの拡散制御ペレットを、迅速放出形態で組み合わせられる活性物質およびさらなる補助剤、媒体および錠剤化補助剤と混合し、打錠して1層錠剤を得る。迅速放出活性物質の造粒および錠剤の後の被膜も可能である。
必要であれば、腸溶性被膜を加える。
【0076】
本発明のさらなる実施態様は、「浸透医薬放出システム」である。このタイプの浸透医薬放出システムは、原則として先行技術で知られており、例えば、R. W. Baker, Osmotic Drug Delivery: A Review of the Patent Literature, Journal of Controlled Release 1995, 35: 1-21 または R.K. Verma et al., Osmotic Pumps in Drug Delivery, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 2004, 21: 477-520 で詳しく述べられている。浸透医薬放出システムとしての医薬製剤は、好ましくは、
a)成分AおよびBを含有するコア、場合により、親水性ポリマーの膨潤剤、および、場合により、浸透を誘導するための水溶性物質、および、
b)水に透過性であり、活性物質含有コアの成分AおよびBに非透過性である殻、および、
c)コアに含有される構成分を周囲の体液に輸送するための、殻b)を貫く開口部
からなる。
【0077】
この特別な浸透医薬放出システムは、原則として先行技術、例えばDE2328409またはUS3,485,770に記載されている。殻の材料に関して、EP0277092およびUS3,916,899、並びにそこで言及されるUS3,977,404を参照し得る。
【0078】
適する親水性ポリマーの膨潤剤に関し、EP0277092およびWO96/40080で言及されるポリマー性膨潤剤に言及し得る。例えば、様々な重合度の、分子量100000ないし8000000のエチレンオキシドホモポリマー(ポリエチレングリコール)、および、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、および、US3,865,108、US4,002,173およびUS4,207,893で言及されるさらなる水で膨潤可能なポリマーを使用できる。浸透を誘導するための水溶性物質は、原則として、その薬学における使用が無害であり、例えば薬局方または "Hager's Handbuch der Pharmazeutischen Praxis" [Hager の薬理実務の手引き], 1990-1995, Springer Verlag and Remington's Pharmaceutical Sciences において水溶性補助剤として言及される、全ての水溶性物質である。特別な水溶性物質は、無機または有機酸の塩または高い水溶解度を有する非イオン性有機物質、例えば、糖などの炭水化物である。錠剤の殻中の開口部の産生は、それ自体先行技術において知られており、例えば、米国特許明細書US3,485,770およびUS3,916,899に記載されている。放出速度は、殻を形成している半透性物質のタイプおよび量により、場合により含有される親水性ポリマー性膨潤剤および浸透の誘導のために場合により存在する水溶性物質のタイプおよび量により、調節する。本発明の成分AおよびBは、様々な方法で浸透医薬放出システムに導入できる。両成分の制御放出のために、これらを補助剤と混合し、打錠して合同活性物質層を得る。一方の成分のみが制御形態で放出されるべきならば、制御形態で放出されるべきではない成分を、錠剤の被膜殻に別に導入できるか、または、それを打錠して、制御放出成分の前に医薬放出システムから先に送り出される別の活性物質層を得る。
必要ならば、腸溶性被覆をさらに適用する。
【0079】
実施例:
実施例1:
o−アセチルサリチル酸80mgおよびオメプラゾール20mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0080】
実施例2:
o−アセチルサリチル酸600mgおよびランゾプラゾール15mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0081】
実施例3:
o−アセチルサリチル酸80mgおよびオメプラゾール40mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0082】
実施例4:
o−アセチルサリチル酸600mgおよびランゾプラゾール30mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0083】
実施例5:
o−アセチルサリチル酸100mgおよびオメプラゾール20mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0084】
実施例6:
o−アセチルサリチル酸500mgおよびランゾプラゾール15mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0085】
実施例7:
o−アセチルサリチル酸100mgおよびオメプラゾール40mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0086】
実施例8:
o−アセチルサリチル酸500mgおよびランゾプラゾール30mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0087】
実施例9:
o−アセチルサリチル酸500mgおよびオメプラゾール40mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0088】
実施例10:
o−アセチルサリチル酸100mgおよびランゾプラゾール15mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0089】
実施例11:
o−アセチルサリチル酸500mgおよびオメプラゾール20mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0090】
実施例12:
o−アセチルサリチル酸100mgおよびランゾプラゾール30mgを、必要であればさらなる補助剤を添加して、錠剤の製造に使用する。
【0091】
実施例13:
迅速放出の乾式打錠された固定製剤
o−アセチルサリチル酸400.0gを、ランゾプラゾール150.0g、Avicel PH 101(登録商標)162.5g、トウモロコシスターチ100.0g、スクロース100.0gおよび AcDiSol(登録商標)75.0gと均一に混合し、圧縮する。得られるブリケットを、2段階で篩にかけ、続いてステアリン酸マグネシウム12.5gと混合する。完成混合物を、回転式打錠機で圧縮し、9mmWR15の形状で重い錠剤200.0mgを得、続いて、水200.0gに溶解または懸濁した Eudragit L30D(登録商標)28.0g、タルク20.0gおよびトリエチルシトレート2.0gからなる腸溶性被覆を施す。重い錠剤コア200mgは、o−アセチルサリチル酸80mgおよびランゾプラゾール30mgを含有する。
【0092】
実施例14:
2層錠剤
o−アセチルサリチル酸640.0gを、Avicel PH 101 56.0g、トウモロコシスターチ56.0gおよびアスコルビン酸48.0gと均一に混合し、圧縮する。得られるブリケットを2段階で篩にかける。
【0093】
オメプラゾール60.0gを、スクロース28.0g、Avicel PH 101(登録商標)80.5g、AcDiSol(登録商標)20.0gおよび炭酸マグネシウム12.0gと均一に混合し、打錠する。得られるブリケットを2段階で篩にかける。得られる顆粒を、水180.0g中の Eudragit L30D(登録商標)22.5g、タルク20.0gおよびモノステアリン酸グリセロール2.5gの混合物で溶解または懸濁し、流動床で腸溶性被膜し、続いてステアリン酸マグネシウム2.0gと混合する。
【0094】
o−アセチルサリチル酸を含有する顆粒625.0mgおよびオメプラゾールを含有する顆粒165.0mgを、2層打錠機で圧縮し、重い錠剤790.0mgを、19x9mm WR5.7の形状で得る。これらの錠剤コアは、o−アセチルサリチル酸500mgおよびオメプラゾール40mgを含有する。続いて、それらをヒドロキシプロピルメチルセルロース15cp7.5g、PEG3350 2.5gおよび二酸化チタン2.5gの混合物と共に水154.2gに溶解または懸濁し、被膜する。
【0095】
実施例15:
乾式圧縮および溶融押出と組み合わせたカプセル剤
o−アセチルサリチル酸400.0gを、Avicel PH 101(登録商標)40.0gおよびトウモロコシスターチ40.0gと均一に混合し、打錠する。得られるブリケットを2段階で篩にかける。
【0096】
パントプラゾール40.0gを、マンニトール40.0gおよびHPC−SL440.0gと均一に混合し、押し出す。得られる鎖状物を切断し、柱体を得、これらを球形化する。
【0097】
各場合でo−アセチルサリチル酸を含む巻状顆粒97.2mgを、パントプラゾールを含むペレット130,0mgと共にカプセルに充填する。各カプセル剤は、o−アセチルサリチル酸81mgおよびパントプラゾール10mgを含有する。カプセル剤を、水166.0gに、Eudragit L30D(登録商標)20.0g、タルク19.5gおよびトリエチルシトレート2.0gの混合物と共に溶解または懸濁し、被膜する(腸溶性被覆)。
【0098】
コロニー形成アッセイ
以下を使用する:96ウェルプレート、事前に:細胞培養処理 (351172 BD Biosciences)、DMEM/F12 粉末培地 (42400-010 Invitrogen)、または RPMI 粉末培地 (51800-019 Invitrogen)、Sea Plaque アガロース (50100 Cambrex) (USA: Biowhittaker BMA 50100, 125 grams)、Cell-Titer Blue (Ord. # G8080, 20ml / G8081, 100 ml / G8082, 10x100ml, Promega)、細胞: A549 (ATCC# CCL 185); HCT116 (ATCC# CCL 247)。
【0099】
最初に、二倍濃縮寒天(Eppendorf Thermo-Mixer)を用いて、下層を44℃に温度制御する。次いで、下部の寒天50μl/ウェルをプレートに播き、室温で約30分間インキュベートする。次いで、腫瘍細胞(HCT 116)を含有する上層の適用を行う。このために、細胞懸濁液を、50mlの Falcon 中で、迅速かつ徹底的に下部の寒天と1:1で混合する(44℃)。上部の寒天/細胞の混合物50μlを、この過程で下部の寒天と接触することなくプレートに播き、室温で約30間インキュベートする。最後に、DMEM/F12(標準培地)80μl/ウェルを、最終層として、この過程で柔らかい寒天に接触することなく添加する。物質の添加を播種の24時間後に実施する。ここで、下記に示す濃度で物質をDMSOに溶解し、10μl/ウェルを添加する。10mM Hepesバッファーの存在下で、インキュベーションを2週間実施する。製造業者(Promega)の指示に従いCTBアッセイにより評価を実施し、IC50の算出は、プログラム GraphPad Prism を利用して実施する。
【0100】
表1:柔らかい寒天のコロニー形成アッセイにおける腫瘍細胞(HCT 116 結腸癌細胞)に対するo−アセチルサリチル酸、ランゾプラゾールまたはオメプラゾールまたは各々の組合せの活性(PPI:プロトンポンプ阻害剤−表の列で特定)
柔らかい寒天のアッセイ
Prism によるIC50の算出:S字型(sigmoidal)用量応答(可変勾配)、最低値=0
HCT116
【表1】

【0101】
表2:柔らかい寒天のコロニー形成アッセイにおけるヒト肺癌細胞(A549)に対するo−アセチルサリチル酸およびランゾプラゾールまたは組合せの活性
【表2】

【0102】
腫瘍細胞コロニーの増殖は、o−アセチルサリチル酸とプロトンポンプ阻害剤ランゾプラゾールまたはオメプラゾールとの組合せにより、o−アセチルサリチル酸のみよりも顕著に強く阻害される。
【0103】
遊走アッセイ:
DLD1細胞(ATCC#CCL221)で遊走アッセイを実施する。RPMI 1640/グルタミン1%/Glutamax 1%/(FCS10%)中で細胞を培養し、約80%のコンフルエンスでアッセイに使用する。先ず、各750μlの培地+10%FCS、10nM IL−8および20nM SDF−1を、24−ウェルの Companion Plate に導入する。プレートを37℃で温度制御する。次いで、細胞を培養ボトルからトリプシン処理し、培地+10%FCSで停止し、遠心分離し、FCSを含まない培地で1回洗浄し、再懸濁し、Neubauer チャンバーで計数する。次いで、個々のバッチ8μMを用い(Fluoroblock 無しで)、細胞500μlずつ(5x10細胞/ウェルに相当する)で被覆する。DMSO中、下記に示す濃度で物質を調製し、次いで、Companion Plate(3.75μl)の培地およびバッチ中の細胞(2.5μl)に添加する。48時間の遊走期間後、培地をバッチから除去し、これらを新しい Companion Plate 中、予め温めたD-PBS (Gibco)各500μlで洗浄する。続いて、バッチを各200μlの予め温めた Accutase と共に新しい Companion Plate に入れ、10分間37℃で振盪せずに、さらに5分間600rpmで Eppendorf Thermomixer 中にてインキュベートする。次いで、Companion Plate から各場合で150μlのバッチを取り出し(下部の細胞)、白色96ウェルMTPに添加し、CellTiter-Glo (Promega #G7571) で製造業者の指示に従い処理する。Lumibox にて感度0.5%で測定を実施する。Excel および GraphPad Prism で評価を実施する。
【0104】
表3:DLD−1:結腸癌細胞の遊走行動に対するo−アセチルサリチル酸およびプロトンポンプ阻害剤ランゾプラゾールの組合せの影響
【表3】

*非処理対照と比較した下部チャンバー中の遊走細胞の割合を[%]で示す。
【0105】
腫瘍細胞の遊走行動に対する阻害効果が見られる。組合せの結果、o−アセチルサリチル酸単独よりも顕著に少ないDLD−1細胞が下部チャンバーに到達する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の予防および/または処置用の投与形を製造するための、少なくとも1種のNSAIDを成分Aとして、そして、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤を成分Bとして含む組合せの使用。
【請求項2】
成分Aが、アセトアミノフェン、o−アセチルサリチル酸、クリダナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェンまたはスリンダクである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
成分Bが、パントプラゾール、ラベプラゾール、ランゾプラゾール、エソメプラゾールまたはオメプラゾールである、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
成分Aがo−アセチルサリチル酸であり、成分Bがランゾプラゾールまたはオメプラゾールである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
o−アセチルサリチル酸の用量が25ないし1500mgであり、オメプラゾールの用量が5ないし100mgであり、パントプラゾールの用量が5ないし100mgであり、ランゾプラゾールの用量が5ないし100mgであり、そして、エソメプラゾールの用量が5ないし100mgである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
治療効果がCox−1および/またはCox−2の阻害により達成され得る、腫瘍の予防および/または処置のための請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
胃腸管、肝臓、前立腺、小腸、大腸、直腸の癌腫およびそれらの前駆症状の予防および/または処置のための請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
腸ポリープ、線腫性腸ポリープ、家族性大腸腺腫症(FAP)または遺伝性非ポリープ性結腸直腸癌(HNPCC)の予防および/または処置のための請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
肺の癌腫、皮膚の腫瘍、黒色腫、前立腺癌、乳癌、骨格の腫瘍、リンパの癌腫、卵巣の腫瘍、内分泌系の腫瘍または中枢神経系の腫瘍の予防および/または処置のための請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
結腸直腸癌の一次または二次予防および/または処置のための請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
キットの製造のための、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
各投与形が異なる時間に投与されるものである、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
投与が経口で行われるものである、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
NSAIDを成分Aとして、そして、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤を成分Bとして、そして、1種またはそれ以上のさらなる適する不活性の補助剤を含む固定された組合せからなる医薬。
【請求項15】
成分Aおよび/またはBを迅速放出投与形で含む経口投与形としての請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
成分AおよびBを混合し、直接充填または錠剤化することを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項17】
成分AおよびBを乾式または湿式造粒し、その後、直接充填または錠剤化することを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項18】
成分Aおよび/またはBを、さらなる工程において一体化させるために相互に独立に混合または造粒し、直接充填または錠剤化することを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項19】
成分Aおよび/またはBを別々に中性ペレットに吸収させ、直接充填または錠剤化することを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項20】
成分AおよびBが2層またはジャケット−コア錠剤の形態で加工され、ここで、AおよびBは、別々の層に含有されるか、または一方の成分がコアに含有され、他方の成分がジャケットに含有されることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項21】
成分Aおよび/またはBが、粉末混合物、顆粒および/または溶融押出顆粒の形態で最終医薬形に入ることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項22】
成分AおよびBが、一体となって溶融押出され、その後押出顆粒の形態で充填されるか、打錠されて錠剤をもたらすことを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項23】
成分AもしくはBまたは最終生成物を含む製剤段階が腸溶性被膜で被覆されていることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項24】
制御放出投与形で成分Aおよび/またはBを含む経口投与形としての、請求項14に記載の医薬。
【請求項25】
成分Aおよび/またはBが、拡散制御膜で被覆されているペレット、顆粒または錠剤の形態で含有されることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項26】
成分Aおよび/またはBが、活性化合物の制御放出を伴うマトリックスに含有されることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項27】
一方の層が成分Aを制御放出マトリックス製剤の形態で含有し、かつ/または、他方の層が成分Bを制御放出マトリックス製剤の形態で含有する2層錠剤の形態の、請求項14に記載の医薬。
【請求項28】
浸透医薬放出システムの形態の、請求項14に記載の医薬。
【請求項29】
成分Aおよび/またはBまたは最終生成物を含む製剤段階が腸溶性被覆されていることを特徴とする、請求項14に記載の医薬。
【請求項30】
医薬形が、外側の糖被覆またはフィルム被覆を有することを特徴とする、請求項14ないし請求項28のいずれかに記載の医薬。
【請求項31】
請求項14ないし請求項30のいずれかに記載の医薬の製造のための、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
成分Aおよび成分Bを一体として加工し、固定された組合せを得ることによる、請求項14ないし請求項30のいずれかに記載の医薬の製造。

【公表番号】特表2009−510139(P2009−510139A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533892(P2008−533892)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009199
【国際公開番号】WO2007/039129
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】