説明

組成物、光学素子、レンズ、前記組成物の製造方法

【課題】 透明性であり、かつ、熱変形しにくい、すなわち、線膨張係数が低い組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 環状オレフィンポリマーと特定の構造を有する、架橋性重合体の架橋体との組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明であり、線膨張係数の低い、組成物、光学素子、レンズ、及び前記組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィンポリマーは透明性が高く、吸水性も低いという特徴があり、レンズ等の光学素子の材料として有用であることが知られている。一方で、環状オレフィンポリマーはそれ単独で用いると、一般に熱変形しやすいなど、環境安定性に課題があることも知られている。特に、レンズ等の光学素子は、さまざまな温度の環境で用いられることが想定されるため、熱変形しにくい、すなわち、線膨張係数が小さいなど、環境安定性の高い材料からなることが好ましい。
【0003】
ここで、環状ポリオレフィンポリマーの環境安定性を上げるために、特許文献1では、環状オレフィンポリマーを、エポキシ化合物、アミノ樹脂前駆体、イソシアネート化合物のいずれかの熱架橋性化合物の架橋生成物とのポリマーアロイとした例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−91941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの知見によれば、上記のエポキシ化合物、アミノ樹脂前駆体、イソシアネート化合物のいずれかの熱架橋性化合物は環状オレフィンポリマーとの相溶性が高くないため、上記ポリマーアロイの透過率は十分であるとは言えない。
【0006】
したがって本発明では、透明であり、かつ、熱変形しにくい、すなわち、線膨張係数が低い組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る組成物は、下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体を有する組成物において、前記組成物はさらに、式(3)の繰り返し構造単位を有する架橋体を有し、前記式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上1000重量部以下であることを特徴とする。
【0008】
【化1】


・・・式(1)
【0009】
【化2】


・・・式(2)
【0010】
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。
また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
また、R11とR13とで、またはR12とR14とでアルキリデン基を形成していてもよい。
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択される。)
【0011】
【化3】


・・・式(3)
【0012】
(式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。また、A及びA’はそれぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択される。))
【0013】
本発明に係る組成物の製造方法は、下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体と、下記の式(4)の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が1000以上200000以下である重合体と、を混合する工程と、前記下記の式(4)の繰り返し構造単位を有する重合体を架橋する工程を有することを特徴とする。
【0014】
【化4】


・・・式(1)
【0015】
【化5】


・・・式(2)
【0016】
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
【0017】
【化6】


・・・式(4)
【0018】
(式(4)において、lは0乃至2のいずれかの整数である。また、R15乃至R26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。また、R23とR26とが結合して環を形成していてもよい。 また、A及びBは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択される。)
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る組成物によれば架橋体を有するため線膨張係数が低い。また、環状オレフィンポリマーと相溶性の高い架橋性重合体の架橋体を用いるため、相溶性が高く、透明である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】架橋性重合体から架橋体が生成するまでの反応の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態における架橋体の架橋点の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光学素子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について以下に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
(実施形態1)
(組成物)
本実施形態に係る組成物は、下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体を有する組成物において、前記組成物はさらに、式(3)の繰り返し構造単位を有する架橋体を有し、前記式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上1000重量部以下であることを特徴とする。
【0023】
【化7】


・・・式(1)
【0024】
【化8】


・・・式(2)
【0025】
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。
また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
また、R11とR13とで、またはR12とR14とでアルキリデン基を形成していてもよい。
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択される。)
【0026】
【化9】


・・・式(3)
【0027】
(式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。また、A及びA’はそれぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択される。))
【0028】
このように本実施形態に係る組成物は、式(3)の繰り返し構造単位を有する架橋体を有するため線膨張係数が低い。後述するように本実施形態に係る架橋体は、分岐構造、架橋性重合体と架橋性重合体とが橋渡しされた構造、または三次元網目構造のいずれかを有するため、熱を加えられても、分子運動は激しくならず、線膨張係数は低い。本実施形態において、線膨張係数は、70以下であることが好ましい。
【0029】
なお、式(3)において、A及びA’はそれぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択されることが好ましい。
【0030】
さらに、式(1)、または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有する重合体(以下では、環状オレフィンポリマーと略す)と上記架橋性重合体の架橋体とは相溶性が高く、分子レベルで絡み合う状態となり、透明である。このように、本実施形態に係る組成物は、線膨張係数が低く、かつ、透明である。ここで、架橋体と直鎖状高分子とが化学結合をもつことなく、独立に存在する状態でお互いに分子レベルで絡み合った構造を半相互貫入網目構造という。
【0031】
また、本実施形態に係る組成物において、架橋性重合体の架橋温度が高く、架橋温度以下で容易に変形できるため成形性が高い。したがって、本実施形態に係る組成物はレンズ等の光学素子に好適である。
【0032】
なお、本実施形態において、式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は100重量部以下であることが好ましく、25重量部以下であることがさらに好ましい。なお、式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20が水素原子であり、A及びA’はそれぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択されることが好ましい。なぜなら、Aが、−CH−、または、−CH−CH−、−CH(CH)−といった疎水性の基である場合、架橋体の吸水性が低いと考えられるからである。
【0033】
また、式(1)、(2)において、m+nは0乃至2のいずれかの整数であり、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択されることが好ましい。
【0034】
なお、式(1)において、m=0、n=0であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることが好ましい。
【0035】
あるいは、式(1)において、m=0、n=1であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることが好ましい。
【0036】
また、式(2)において、m=0、n=0であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることが好ましい。
【0037】
(架橋体)
本明細書において、架橋体とは、架橋性重合体が架橋して、分岐構造、架橋性重合体と架橋性重合体とが橋渡しされた構造、または三次元網目構造のいずれかの構造を形成したものを指す。このような架橋体は、次のようにして生成する。すなわち、後述する、架橋性重合体である式(4)に示す繰り返し構造単位を有する重合体が加熱されることにより図1(a)に示す主生成物と、図示していない副生成物が生成する。この主生成物が二量化して自己架橋することで生成する。上記の主生成物と副生成物が生成する反応のことをretro−Diels−Alder反応といい、二量化して自己架橋することをDiels−Alder反応という。
【0038】
架橋体を生成する反応について、架橋性重合体が2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体である場合を例にして詳細に説明する(図1(b))。まず、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体(i)が加熱されることにより、エチレン(iii)が脱離する。エチレンが脱離してできた重合体(ii)と、同様にしてできた別の重合体(ii)’とが二量化して自己架橋することで(iv)、架橋体(v)を生成する。
【0039】
なお、本実施形態に係る架橋体は、後述する、式(4)の繰り返し構造単位を有する重合体が、retro−Diels−Alder反応及びDiels−Alder反応することで生成した架橋点を有する架橋体であってもよい。架橋点の構造としては、架橋性重合体が2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体である場合、図2(a)乃至図2(e)で示す構造などが挙げられる。
【0040】
架橋性重合体が架橋して架橋体を形成していることは、核磁気共鳴法(NuclearMagnetic Resonance、以下NMRと略す)、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy、以下FTIRと略す)を用いた分析、熱機械分析(Thermomechanical analysis、以下TMAと略す)、示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimetry以下DSCと略す)、動的熱機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、以下DMAと略す)などにより確かめることができる。例えば、NMRやFTIRを用いて構造を特定することによって、上記架橋体(iv)で示される構造に起因するピークがあった場合、架橋体が形成されていると判断することができる。また、架橋前の架橋性重合体を溶解でき、かつ、架橋体を溶解できない有機溶媒を用いることで、架橋したか否かを検証することもできる。
【0041】
(架橋性重合体)
本実施形態に係る架橋性重合体は、下記の式(4)の繰り返し構造単位を有する。また、本実施形態に係る熱架橋性重合体は、数平均分子量が1000以上200000以下であることが好ましく、100000以下であることがさらに好ましい。数平均分子量が1000以上である場合、本実施形態に係る組成物をレンズなどの材料として用いる場合に十分な機械的強度を有するため好ましい。数平均分子量が200000以下である場合、本実施形態に係る架橋性重合体と環状オレフィンポリマーとの相溶性が高いため好ましい。
【0042】
【化10】


・・・式(4)
【0043】
(式(4)において、lは0乃至2のいずれかの整数である。
また、R15乃至R26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。
また、R23とR26とが結合して環を形成していてもよい。
また、A及びBは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択される。)
【0044】
なお、式(4)において、R15乃至R26が水素原子であり、lは0または1であり、A及びBは、それぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択されることが好ましい。なぜなら、AまたはBが、−CH−、または、−CH−CH−、−CH(CH)−といった疎水性の基である場合、架橋体の吸水性が低いと考えられるからである。
【0045】
また、本実施形態に係る組成物が透明であり、線膨張係数が低いという効果を奏する限りにおいて、本実施形態に係る架橋性重合体は、上記の式(4)で表される繰り返し構造単位以外の構造単位を有する共重合体であってもよい。共重合体はランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。ただし、ブロック共重合体が相分離してドメインを形成する場合、本実施形態に係る組成物が透明性を維持するため、ドメインのサイズが可視光の波長以下となるよう適宜ブロック共重合体のセグメントの分子量を調整する必要がある。本実施形態に係る架橋性重合体が共重合体である場合、線膨張係数の低減効果を得るために、架橋性重合体における前記式(4)の繰り返し構造単位のモル分率は5%乃至100%の範囲にあることが好ましい。
【0046】
また、上記式(4)で表される繰り返し構造単位を有する重合体は、一部を水添した重合体であってもよい。
【0047】
本実施形態に係る架橋性重合体として、下記式(5)で示される繰り返し構造単位を有する重合体が好ましい。下記式(5)で示される繰り返し構造単位を有する重合体は、後述する式(6)で表されるモノマーを単独重合することで得られる。
【0048】
【化11】


・・・式(5)
【0049】
(架橋性重合体を構成するモノマー)
重合することによって本実施形態に係る架橋性重合体を構成するモノマーを、以下ではモノマー(A)と呼ぶ。
【0050】
本実施形態におけるモノマー(A)としては、重合した時に式(3)で表される繰り返し構造単位を形成し、アニオン重合あるいはラジカル重合によって重合するものであれば、特に限定されない。
【0051】
本実施形態におけるモノマー(A)の例としては、2,3−ジメチレンビシクロ[2.2.1]−ヘプタン(式(6))、2,3−ジメチレン−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン(式(7))が挙げられるがこれらに限られない。
【0052】
【化12】


・・・式(6)
【0053】
【化13】


・・・式(7)
【0054】
また、本実施形態におけるモノマー(A)の例としては、Canadian Journal of Chemistry vol.53 P256−262に記載の前記式(5)及び前記式(6)以外の環状ジエンモノマーや、Macromolecules 2009,42,9268−9274に記載の前記式(6)及び前記式(7)以外の環状ジエンモノマーを挙げることができる。
【0055】
本実施形態におけるモノマー(A)が、前記式(6)及び前記式(7)のモノマー、及び、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,2]オクタン、2,3−ジメチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、2,3−ジメチレン−1,4−メタノ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、2,3−ジメチレン−1,4−メタノ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、のいずれかである場合、本実施形態に係る架橋性重合体を調製し易いため好ましい。なお、本実施形態に係る架橋性重合体を調製する際に、上記の中から複数種のモノマーを選択して用いてもよい。
【0056】
(モノマー(A)以外のモノマー)
本実施形態に係る架橋性重合体は、架橋性重合体の機械特性や熱特性の調整をするために上記のモノマー(A)以外のモノマーを用いて調製して、共重合体としてもよい。
【0057】
モノマー(A)以外のモノマーとして例えば、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン類、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリルモノマー類、無水マレイン酸や無水マレイミド誘導体、スチレン等のスチレンモノマー類が挙げられる。
【0058】
また、これらの中から複数種を選んで、共重合体を調製してもよい。
【0059】
(環状オレフィンポリマー)
本実施形態に係る環状オレフィンポリマーは、式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有する重合体であり、数平均分子量が10000以上200000以下である。本実施形態に係る環状オレフィンポリマーの数平均分子量が10000以上である場合、本実施形態に係る組成物をレンズなどの材料として用いる場合に十分な機械的強度を有するため好ましい。数平均分子量が200000以下である場合、本実施形態に係る環状オレフィンポリマーと架橋性重合体との相溶性が高いため好ましい。
【0060】
また、本実施形態に係る環状オレフィンポリマーの数平均分子量と、本実施形態に係る架橋性重合体の数平均分子量とが近い値である場合、互いに相溶性が高いと考えられるため、好ましい。
【0061】
なお、本実施形態に係る組成物が透明であり、線膨張係数が低いという効果を奏する限りにおいて、本実施形態に係る架橋性重合体は、上記の式(1)または(2)で表される繰り返し構造単位以外の構造単位を有する共重合体であってもよい。共重合体はランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。ただし、ブロック共重合体が相分離してドメインを形成する場合、本実施形態に係る組成物が透明性を維持するため、ドメインのサイズが可視光の波長以下となるよう適宜ブロック共重合体のセグメントの分子量を調整する必要がある。
【0062】
本実施形態に係る環状オレフィンポリマーは、下記重合体(B1)または重合体(B2)から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィンポリマーからなることが好ましい。
重合体(B1):エチレンと環状オレフィンとを共重合させて得られるエチレン・環状オレフィンランダム共重合体。
重合体(B2):環状オレフィンの開環重合体またはその共重合体。
重合体(B1)及び(B2)については後述する。
【0063】
(環状オレフィンポリマーを構成するモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィンポリマーを構成するモノマーとしては、下記の式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化14】


・・・式(8)
【0065】
なお、式(8)中のmは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1であり、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
【0066】
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
また、R11とR13とで、またはR12とR14とでアルキリデン基を形成していてもよい。
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択される。X、Y、及びZが、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択されることが好ましい。なぜなら、X、YまたはZが、−CH−、または、−CH−CH−、−CH(CH)−といった疎水性の基である場合、架橋体の吸水性が低いと考えられるからである。
【0067】
本実施形態における環状オレフィンの例を式(9)から式(18)に示す。
【0068】
式(8)において、m=0,n=0の場合:
【0069】
【化15】


・・・式(9−1)
【0070】
【化16】


・・・式(9−2)
【0071】
【化17】


・・・式(9−3)
【0072】
【化18】


・・・式(9−4)
【0073】
【化19】


・・・式(9−5)
【0074】
【化20】


・・・式(9−6)
【0075】
【化21】


・・・式(9−7)
【0076】
【化22】


・・・式(9−8)
【0077】
【化23】


・・・式(9−9)
【0078】
【化24】


・・・式(9−10)
【0079】
式(8)において、m=0,n=1の場合:
【0080】
【化25】


・・・式(10−1)
【0081】
【化26】


・・・式(10−2)
【0082】
【化27】


・・・式(10−3)
【0083】
【化28】


・・・式(10−4)
【0084】
【化29】


・・・式(10−5)
【0085】
【化30】


・・・式(10−6)
【0086】
【化31】


・・・式(10−7)
【0087】
【化32】


・・・式(10−8)
【0088】
【化33】


・・・式(10−9)
【0089】
【化34】


・・・式(10−10)
【0090】
【化35】


・・・式(10−11)
【0091】
【化36】


・・・式(10−12)
【0092】
【化37】


・・・式(10−13)
【0093】
【化38】


・・・式(10−14)
【0094】
【化39】


・・・式(10−15)
【0095】
【化40】


・・・式(10−16)
【0096】
【化41】


・・・式(10−17)
【0097】
【化42】


・・・式(10−18)
【0098】
式(8)において、m=0,n=2の場合:
【0099】
【化43】


・・・式(11−1)
【0100】
【化44】


・・・式(11−2)
【0101】
【化45】


・・・式(11−3)
【0102】
【化46】


・・・式(11−4)
【0103】
式(8)において、m=0,n=3の場合:
【0104】
【化47】


・・・式(12)
【0105】
式(8)において、m=1,n=0,p=0の場合:
【0106】
【化48】


・・・式(13−1)
【0107】
【化49】


・・・式(13−2)
【0108】
ここで式(13−2)は、式(13−1)のメチル置換体である。
【0109】
式(8)において、m=1,n=1,p=0の場合:
【0110】
【化50】


・・・式(14−1)
【0111】
【化51】


・・・式(14−2)
【0112】
ここで式(14−2)は、式(14−1)のジメチル置換体である。
【0113】
式(8)において、m=1,n=2,p=0の場合:
【0114】
【化52】


・・・式(15−1)
【0115】
【化53】


・・・式(15−2)
【0116】
ここで式(15−2)は、式(15−1)のトリメチル置換体である。
【0117】
式(8)において、m=1,n=0,p=1の場合:
【0118】
【化54】


・・・式(16)
【0119】
式(8)において、m=1,n=1,p=1の場合:
【0120】
【化55】


・・・式(17)
【0121】
式(8)において、m=1,n=1,p=1の場合:
【0122】
【化56】


・・・式(18)
【0123】
ここで式(18)は、トリメチル置換体である。
【0124】
なお、式(9−1)から式(18)におけるR27、R28はそれぞれ独立に、H,CH,C,C,C13,C17,C1837,CN,COCH,CO,CO,CO11,CH(C),Cから選択される。
【0125】
式(9−1)から式(18)におけるR29はH,CH,C,CH(CH,Cから選択される。
【0126】
上記のような式(8)で表される環状オレフィンの製造方法としては、例えば、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とのDiels−Alder反応を挙げることが出来る。これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0127】
本発明で用いられる式(1)または(2)の繰り返し構造単位を有する環状オレフィンポリマーは、上記のような式(8)で表される環状オレフィンを用いて、公知の方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
【0128】
(重合体(B1)について)
本実施形態において、重合体(B1)は、エチレンに由来する繰返し構成単位と、環状オレフィンに由来する繰返し構成単位を主たる構成成分とする共重合体である。これらの共重合体は、例えばエチレンと環状オレフィンを付加共重合させることにより得ることができる。重合体(B1)は、式(1)の繰り返し構造単位を有する環状オレフィンポリマーである。本実施形態における重合体(B1)としては、エチレン(式(19))と2−ノルボルネン(式(20))の共重合体が好ましい。
【0129】
【化57】


・・・式(19)
【0130】
【化58】


・・・式(20)
【0131】
なお、上記式(19)と式(20)の各繰り返し構造単位のモル比が5:95乃至95:5の範囲にあることが好ましく、30:70乃至90:10の範囲にあることがさらに好ましい。
【0132】
また、本実施形態における重合体(B1)としては、エチレン(上記式(19))とテトラシクロドデセン(下記式(21))の共重合体が好ましい。
【0133】
【化59】


・・・式(21)
【0134】
本実施形態においては、エチレン及び環状オレフィンに加えて、エチレン以外の他のα−オレフィンを付加共重合させてもよい。
【0135】
α−オレフィンは、直鎖状でも分岐状でもよい。好ましくは炭素原子数が3乃至20のα−オレフィンである。具体的な例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数が3〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等の炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィン等が挙げることができる。
【0136】
このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0137】
また、本実施形態で用いられるエチレン・環状オレフィンランダム共重合体(B1)は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
【0138】
このような他のモノマーとしては、例えば及び、単環シクロアルケンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン等が挙げられる。脂環式共役ジエンとしては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。ビニルシクロアルケンとしては、ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等が挙げられる。ビニルシクロアルカンとしては、ビニルシクロペンタン、2−メチル−4−ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン等が挙げられる。さらに、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン等が挙げられるが、これらに限られることはない。これらの他のモノマーは、単独でも、あるいは組み合わせても用いることができる。
【0139】
重合体(B1)において、重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、該炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
【0140】
また、この共重合反応では固体状の周期律表IV族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表IV族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表IV族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムが挙げられる。
【0141】
シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、アルキル基が置換していてもよいシクロペンタジエニル基またはインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。これらの基は、アルキレン基等の他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0142】
また、有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表IV族のメタロセン系触媒については、例えば特開昭61−221206号、特開昭64−106号及び特開平2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0143】
重合体(B1)は、重合体(B1)を従来公知の水素添加触媒の存在下で水素化することで水添体としてもよい。
【0144】
上述の製造方法を用いることで、式(1)で表わされる環状オレフィンに由来する繰り返し構造単位を有する、重合体(B1)を得ることができる。
【0145】
(重合体(B2)について)
本実施形態において、重合体(B2)は環状オレフィンの開環重合体または、環状オレフィンの開環重合体の共重合体である。
【0146】
環状オレフィンの開環重合体は、上記の式(8)で表される環状オレフィンを、開環重合触媒の存在下で重合もしくは共重合して得られる重合体、あるいは重合もしくは共重合したものを、水素化触媒の存在下で水素化して得られる重合体を指す。例えば、上記の式(8)で表される環状オレフィンを重合し、水素化触媒の存在下で水素化して得られる重合体として、前記式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体が挙げられる。
【0147】
環状オレフィンの開環重合体の共重合体は、2種以上の異なる環状オレフィンを用いることで調製する。本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよく、環状オレフィンに添加して、本発明の効果を損なわない範囲で組み合わせることができる。他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、単環シクロアルケンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン等が挙げられる。脂環式共役ジエンとしては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。ビニルシクロアルケンとしては、ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等が挙げられる。ビニルシクロアルカンとしては、ビニルシクロペンタン、2−メチル−4−ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン等が挙げられる。さらに、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン等が挙げられる、これらに限られることはない。
【0148】
上記の開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、インジウムまたは白金等から選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、パラジウム、ジルコニウムまたはモリブテン等から選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0149】
ここで、環状オレフィンポリマーの繰り返し構造単位同士を連結する部分に、不飽和結合が残留していることは、熱成形時及び経時での黄変の原因となる可能性があるので、重合体(B2)は、水素化された環状オレフィンポリマーである、前記式(2)の繰り返し構造単位を90%以上含む重合体であることが好ましい。
【0150】
具体的には、水素化反応は、水素化する重合体の種類により、水素化触媒の使用量、反応温度、水素分圧、反応時間及び反応溶液濃度を適宜に最適な範囲に設定することができる。水素化触媒としては、特に限定されないが、ニッケル、コバルト等の金属化合物と有機アルミニウムや有機リチウムと組み合わせてなる均一系触媒が好ましい。また、前記水素化触媒には、必要に応じて活性炭、ケイソウ土、マグネシア等の担体を用いることができる。
【0151】
水素化触媒の使用量としては重合体100重量部当たり0.01〜50重量部、反応温度としては25〜300℃、水素分圧としては0.5〜10MPa、反応時間としては0.5〜20時間であることが好ましい。
【0152】
水素化された重合体は、水素化反応溶液を濾過して水素添加触媒を濾別した溶液から溶媒等を除去することによって得ることができる。
【0153】
上記の重合体(B1)及び環状オレフィンの開環重合体または共重合体(B2)は、グラフト変性されていてもよい。
【0154】
グラフト変性に用いる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸TM)等の不飽和カルボン酸、さらにこれら不飽和カルボン酸の誘導体たとえば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物等が例示される。
【0155】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。
【0156】
これらの変性剤は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0157】
このようなグラフト変性物は、所望の変性率になるように変性剤を未変性の重合体に配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性の重合体とを所望の変性率になるように混合することにより製造することもできる。
【0158】
グラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。たとえば溶融状態にある未変性の重合体に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいは未変性の重合体の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法等によりグラフト変性物を得ることができる。このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。またグラフト反応は、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
【0159】
上記式(1)または(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有する環状オレフィンポリマーの具体例は、日本ゼオン株式会社製の商品名Zeonexや商品名Zeonor、JSR株式会社製の商品名ARTON、三井化学株式会社製の商品名アペル、または、ポリプラスチックス株式会社製の商品名TOPAS等を挙げることができるが、これらに限られることはない。TOPASとして、TOPAS5013S−04などが挙げられる。
【0160】
本実施形態に係る環状オレフィンポリマーとしては、前述した公知の環状オレフィンポリマーを任意に用いることができるが、吸水性を低く保つために、ヘテロ原子(酸素、硫黄等)の含有量を原子濃度で10%以下の環状オレフィンポリマーを用いることが好ましい。
【0161】
(第3成分)
本実施形態に係る組成物は、式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有する重合体や、式(3)で表される架橋体以外の構造単位を有するポリマーを含んでいてもよい。例えばスチレン重合体、(メタ)アクリル重合体、エポキシ重合体等が挙げられる。これら樹脂は、それ自身架橋構造を持っていてもよい。
【0162】
また、劣化防止剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、赤外吸収剤等の公知の添加材を加えてもよい。
【0163】
また、本実施形態に係る組成物は無機粒子を有していてもよい。無機粒子はさらに上記式(3)で表される架橋体、あるいは、式(1)または式(2)の繰り返しと構造単位を有する環状オレフィンポリマーと結合していてもよい。
【0164】
(無機粒子)
本実施形態において、無機粒子としては、酸化ケイ素、金属酸化物、複合金属酸化物、金属硫化物、金属化合物半導体、金属、ダイヤモンドのいずれかからなることが好ましい。金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化テルル、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫等が挙げられる。複合金属酸化物の例としては、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。金属化合物半導体の例としては、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属硫化物、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウム等が挙げられる。金属の例としては、金等が挙げられる。また、1種類の無機粒子に他の無機成分を被覆した、いわゆるコア−シェル型無機粒子を使用することもできる。また、無機粒子の形状は、球状、楕円状、扁平状、ロッド状等いずれの形状であっても良い。
【0165】
用いる無機粒子は、後述する光学素子に求められる性能に応じて適宜選択することができる。例えば、後述の光学素子の屈折率向上を目的とする場合には、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等の高屈折率の無機粒子を用いることが好ましい。
【0166】
また、光学素子に透明性が必要な場合には、無機粒子の散乱を抑制するために、無機粒子の平均一次粒子径は30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
【0167】
本実施形態に係る組成物に無機粒子を添加する場合、無機粒子の分散性を上げるために、分散助剤を有していてもよい。前記無機粒子と結合する官能基を有し、複合粒子の製造時に使用する有機溶媒に対して相溶性のあるものであれば特に限定されない。
【0168】
前記無機粒子と結合する官能基は、カルボン酸基、ハロゲン化アシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、アミノ基、アミド基、チオール基、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アルコキシチタニル基、ハロゲン化チタニル基等が挙げられる。これらの中で、入手のし易さという理由から、アルコキシシリル基が好ましい。
【0169】
アルコキシシリル基の具体的としてはメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。本実施形態において、組成物と無機粒子とは、溶融混練装置で剪断力を与え混練することで混合する方法や、有機溶媒中で前記複合粒子と前記透明樹脂とを混合し、貧溶媒で再沈殿する方法等が用いられる。
【0170】
本実施形態に組成物には、一般に常用される酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、白化剤、熱安定剤、耐光安定剤、可塑剤、着色剤、耐衝撃性改良剤、増量剤、離型剤、発泡剤、加工助剤等の樹脂添加剤を必要に応じて配合することができる。なお、この添加剤の具体例としては、R.Gachter及びH.Muller,Plastics Additives Handbook,4th edition,1993に記載されている添加材が挙げられる。
【0171】
このような樹脂添加剤としては、前記無機粒子及び前記組成物とを相溶化でき、透明樹脂に無機粒子を分散させることができる範囲であれば、各種の添加剤を適宜使用可能であり、様々な種類の添加剤を単独でまたは組合せて使用してもよい。
【0172】
(組成物の製造方法)
上記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体と、上記式(4)の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が1000以上200000以下である重合体を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物に熱を加えることで、上記式(4)の繰り返し構造単位を有する重合体を架橋する工程を有することを特徴とする。
【0173】
本実施形態において、前記式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上1000重量部以下であることが好ましい。また、線膨張係数を低減し、かつ、透明な成形体を得るためには、式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上30重量部以下であることが好ましい。なぜなら、前記架橋体の量が少ない場合、十分に線膨張係数の低減効果が得られず、添加量が増えすぎる場合、エチレン脱離による加工中の気体発生に伴う発泡により成形性が著しく劣化するためである。
【0174】
本実施形態に係る環状オレフィンポリマーと本実施形態に係る架橋性重合体とを混合すると、互いに相溶性の高い環状オレフィンポリマーと架橋性重合体とが、分子レベルで絡み合う状態となる。次に架橋性重合体を架橋することで、架橋体と直鎖状高分子とが化学結合をもつことなく、独立に存在する状態でお互いに分子レベルで絡み合った構造(半相互貫入網目構造)である組成物を得られると考えられる。
【0175】
半相互貫入網目構造を有する組成物は、例えば、非架橋性ポリマーを溶解あるいは溶剤で膨潤した状態で、架橋を形成しうるモノマー、オリゴマー及び/またはポリマーを架橋重合させる方法や、溶剤の存在または不存在下で架橋性ポリマーをモノマー及び/またはオリゴマーで膨潤させた状態でモノマーを非架橋重合させることにより形成することができる。本実施形態において、組成物は透明性を有するため、架橋性ポリマーと非架橋性ポリマーが相溶している。半相互貫入網目構造であることは、NMR、FTIRを用いた分析、TMA、DSC、DMAなどの手段によって検証することができる。
【0176】
また、架橋前の架橋性重合体を溶解でき、かつ、架橋体を溶解できない有機溶媒を用いることで、架橋したか否かを検証することもできる。
【0177】
ここでは、重合することによって式(4)で表される繰り返し構造単位を有する重合体を形成するモノマーをモノマー(A)とし、モノマー(A)を重合した熱架橋性重合体をポリマー(A)とする。また、式(1)または式(2)で表される繰り返し構造単位を形成するモノマーをモノマー(B)とし、モノマー(B)を重合した環状オレフィンポリマーをポリマー(B)とする。
【0178】
本実施形態に係る組成物の製造方法の一例としては、以下の工程を有する。
(1)モノマー(A)を重合し、ポリマー(A)を得る
(2)モノマー(B)を重合し、ポリマー(B)を得る
(3)ポリマー(A)とポリマー(B)を混合し、得られた組成物を加熱し、架橋体を得る
【0179】
本実施形態に係る組成物の製造方法は(1)(2)(3)以外の工程を含んでいてもよく、例えば、本実施形態に係る組成物に架橋剤・架橋助剤を添加する工程やポリマー(A)またはポリマー(B)の精製工程、ポリマー(A)やポリマー(B)を水素化する工程という工程、本実施形態に係る組成物に無機粒子を混合する工程を含んでいてもよい。
【0180】
(3)に係る混合方法としては、溶融混練装置で剪断力を与え混練し製造する方法や、有機溶媒中で混合し、貧溶媒で再沈殿する方法等が用いられる。
【0181】
(架橋剤及び架橋助剤)
本実施形態に係る組成物の製造方法において、架橋体を作製する方法は特に限定されないが、架橋剤及び/または架橋助剤を用いてもよい。架橋剤の例としては、有機過酸化物やアゾ系開始剤等の公知の材料を用いることができる。また、架橋助剤の例として、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、ビニル化合物、アリール基を有する化合物等の公知の材料を用いることができる。
【0182】
(有機溶媒)
上記のモノマー(A)とモノマー(B)を含む組成物の作製は、有機溶媒中で行ってもよい。その際に用いる有機溶媒としては特に限定はされないが、モノマー(A)及びモノマー(B)と相溶性があるものを用いることが望ましく、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、環状エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ハロゲン系溶媒等を用いることができる。脂肪族炭化水素系溶媒として例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒として例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。ケトン系溶媒として例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステル系溶媒として例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルが挙げられる。エーテル系溶媒として例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンが挙げられる。環状エーテル系溶媒として例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。ハロゲン系溶媒として例えば、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン、塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ブロモベンゼンが挙げられる。また、二種類以上の前記有機溶媒を混ぜ合わせることも可能である。
【0183】
(架橋性重合体の調製方法)
本実施形態に係る架橋性重合体は、上記のモノマー(A)をラジカル重合あるいはアニオン重合させることにより調製できる。
【0184】
ラジカル重合させる場合、例えば、少なくとも1種のラジカル重合開始剤を使用して重合させることができる。ラジカル重合開始剤としては、従来から知られるものを使用できる。その具体例としては、アゾ系開始剤、パーオキサイド系開始剤、レドックス系開始剤、原子移動ラジカル開始剤、ニトロキサイド系開始剤等が挙げられる。特に、種類が豊富でモノマーの種類に合わせて適切なものを選ぶことができ、入手しやすく、安価であるアゾ系開始剤やパーオキサイド系開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー(A)のmol数に対して、0.1%mol以上20%mol以下である場合、共重合体の収率がよく、共重合体の分子量を制御しやすいため、好ましい。また、モノマー(A)を重合させるときに、アミンやチオール、ジスルフィド等に代表される重合促進剤や連鎖移動剤等を添加すると、重合を促進させることが可能であるため好ましい。
【0185】
アニオン重合させる場合、例えば、少なくとも1種の有機金属化合物を使用して重合させることができる。有機金属化合物の具体例としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の炭化水素リチウム、グリニャール試薬等のアニオン重合開始剤等が挙げられる。この中で、入手しやすく、安価であるn−ブチルリチウムを用いることが好ましい。有機金属化合物の使用量は特に限定されないが、モノマー(A)の総mol数に対して0.1%mol以上20%mol以下である場合、共重合体の収率がよく、共重合体の分子量を制御しやすいため、好ましい。
【0186】
(有機溶媒)
モノマー(A)の重合反応は、有機溶媒中で行ってもよい。その際に用いる有機溶媒としては特に限定はされないが、モノマー(A)と相溶性があるものを用いることが望ましく、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、環状エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ハロゲン系溶媒等を用いることができる。脂肪族炭化水素系溶媒として例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒として例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。ケトン系溶媒として例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステル系溶媒として例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルが挙げられる。エーテル系溶媒として例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンが挙げられる。環状エーテル系溶媒として例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。ハロゲン系溶媒として例えば、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン、塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ブロモベンゼンが挙げられる。また、二種類以上の前記有機溶媒を混ぜ合わせることも可能である。
【0187】
(実施形態2)
(光学素子)
本発明の実施形態2では光学素子について図3を用いて説明する。図3の(a)は、本発明による組成物から作製された有機透明部材101からなる凸レンズのような光学素子を示している。図3の(b)は、ガラスのような無機材料からなる基材103の上に、本発明による組成物から作製された有機透明部材102が形成された光学素子を示している。有機透明部材101、102には、上述した組成物に応じて、酸化防止剤と、耐光安定剤とを添加してもよい。
【0188】
酸化防止剤は、上記組成物の酸化による劣化を抑制する材料であれば特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による着色や強度低下を防止できる。
【0189】
耐光安定剤は、上記組成物に光が当たることによる劣化を抑制する材料であれば特に限定されないが、例えば、としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本実施形態においては、透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。本実施形態に係る光学素子の例は、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等光ディスクのピックアップレンズ;走査光学系のレンズとしては、レーザービームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。その他の例としては、液晶ディスプレイ等の導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。特に、光学用途の汎用エンジニアリングプラスチックスの線膨張係数同等の70ppm/K以上の場合、上記光学素子として利用する場合の限定が大きいが、70ppm/K未満となることで、上述した光学素子の中でも、コンパクト・デジタルスチルカメラの撮像光学系レンズやレーザービームプリンターのfθレンズなどでの応用の幅が広がるため、好ましい。さらに、65ppm/K以下では、特に撮像光学系での利用用途をさらに広げる効果があり、より好ましい。
【0190】
本実施形態に係る光学素子は、上記の例の中でレンズであることが好ましい。レンズは、表面に反射防止膜が設けられていてもよく、反射防止膜と光学素子との間に中間層を設けてもよい。反射防止膜は特に限定されないが、レンズの屈折率と近い屈折率を有するものであることが好ましい。また、中間層は特に限定されないが、レンズの屈折率と反射防止膜の屈折率との間の値をもつ材料からなることが好ましい。また、レンズにおいて、内面反射を低減するため、光が通過できない部分、通常はレンズ側端部(通称はコバ部)などに、使用波長域において実質不透明な膜を形成してもよい。
【0191】
(光学素子の製造方法)
本実施形態に係る組成物を用いて成形された光学素子の作製方法の一例について説明する。光学素子は、まず、上記の組成物を調製した後、得られた前記組成物を成形する工程を経て作製される。成形方法としては、特に制限されるものではないが、目的の光学素子の形状に適した成形法を用いることが好ましい。例えば、射出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法、熱プレス成形法、インフレーション法、溶剤キャスト法がある。
【0192】
また、光学素子は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等種々の形態で使用することができる。
【0193】
以下、光学素子の一例として光学レンズの製造方法について説明する。
【0194】
光学レンズは、上記の組成物を所望のレンズ形状に成形することにより得られる。成形方法は特に限定されないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成形物を得る為には溶融成形が好ましい。溶融成形法としては、例えば、市販のプレス成形、市販の押し出し成形、市販の射出成形等が挙げられるが、射出成形が成形性がよく、生産性が高いため、好ましい。
【0195】
成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば、射出成形をするときにおける組成物の温度は、100℃乃至400℃の範囲にあることが好ましい。さらに、成形加工中が不活性ガス下または真空下で行われるとより好ましい。また、成形型に組成物を注入したあと、retro−Diels−Alder反応が発生する温度以上に温度を加温する。該温度範囲である場合、該組成物が成形時に適度な流動性を有し、成形品のヒケやひずみを生じにくく、組成物の熱分解によるシルバーストリークの発生がしにくく、さらに、成形物の黄変がしにくいからである。また、不活性ガス下または真空下の場合、成形物の黄変が顕著に抑制されるからである。
【実施例】
【0196】
以下に本発明を詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた測定方法は、次に述べる方法である。
【0197】
(数平均分子量及び重量平均分子量)
以下の実施例における架橋性重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)装置(ウォーターズ(WATERS)社製)で、Shodex LF−804 カラム(昭和電工株式会社製)を2本直列に配置し、40℃、展開溶媒としてTHFを用い、RI(Refractive Index、示差屈折率)検出器により測定した。得られた数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算値である。
【0198】
(線膨張係数)
実施例及び比較例において測定した線膨張係数は、プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法((JIS−K7197)に基づいて測定した。具体的には得られたフィルムを長さ1.5cm、幅5mm、厚さ100μμmの短冊状の試験片として切り出し、試験片を熱機械分析装置(株式会社リガク製、Thermo Plus EVO TMA8310)に取り付け、窒素気流下(毎分100mL/min)にて、昇温速度5℃/分の条件で、−40℃から80℃の昇温及び降温を2回繰り返し、2回目の昇温時の0℃から40℃の温度範囲における平均線膨張係数を求めた。
【0199】
(透明性の分析)
実施例及び比較例において透明性の分析は、得られた組成物(フィルム)を目視して、気泡が残っていないこと、及び、白濁していない場合を透明である(○)とし、気泡が残っている場合、白濁している場合を透明でない(×)とした。
【0200】
(NMR測定)
環状オレフィンポリマーの構造特定には、水素核磁気共鳴装置(H NMR)および炭素核磁気共鳴装置(13C NMR)(ブルカー・バイオスピン株式会社製Avance600MHz)を用いた。重クロロホルム溶媒に溶解し、化学シフトの基準としてテトラメチルシランを用いた。13C−NMRスペクトルについては、逆ゲーテッドデカップリングモードで測定した。
【0201】
(実施例1)
(架橋性重合体の調製)
2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン 15g(125.0mmol)に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(以下AIBNと呼ぶ)750mg(4.6mmol)を加え、ガラス栓で密栓をした後、フラスコを80℃のオイルバスに漬け、撹拌しながら24時間重合反応を行った。フラスコを冷却し、フラスコ内の重合溶液を空気と接触させることで重合を停止し、架橋性重合体を得た。得られた架橋性重合体をTHF500mlで希釈し、その希釈溶液をメタノール中に滴下することで架橋性重合体である2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体を沈殿回収した。2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体は7.32g(収率48.8%)得られた。得られた2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタンの重合体の分子量は、Mn=62.3×10、Mw=11.4×10であった。
【0202】
(環状オレフィンポリマーの調製)
本実施例において環状オレフィンポリマーとして、商品名TOPAS5013S−04(ポリプラスチックス社製)を用いた。TOPASは、メタロセン触媒を用いてエチレンと2−ノルボルネンを付加共重合させたエチレン・環状オレフィンランダム共重合体である。用いたTOPAS5013S−04について、H NMRおよび13C NMRを用いて測定し、構造の帰属を行い組成を求めたところ、エチレン成分/ノルボルネン成分=53/47(モル比)であった。用いたTOPAS5013S−04の構造は下記式(22)で表される。
【0203】
【化60】


・・・式(22)
【0204】
(式(22)において、n=47、m=53である。)
【0205】
(架橋性重合体と環状オレフィンポリマーの組成物の作製)
上記環状オレフィンポリマー(8g)と上記架橋性重合体である2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(1g)とを、それぞれトルエンに溶解したのち混合し、適切な濃度に希釈後、メタノール500ml中に滴下し、架橋性重合体と環状オレフィンポリマーとの組成物を沈殿回収した。
【0206】
(架橋体と環状オレフィンポリマー組成物の作製)
上記で得られた架橋性重合体と環状オレフィンポリマーとの組成物(0.1g)を、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機(株式会社井元製作所製、真空加熱プレス11FA)にて、真空下200℃、圧力1MPaで10分間、さらに、温度を280℃に上昇し、圧力40MPaで1時間熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作製した。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は13重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は69ppm/Kであった。
【0207】
(実施例2)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(1g)、及び、実施例1記載の前記環状オレフィンポリマー(6g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は17重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は66ppm/Kであった。
【0208】
(実施例3)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(1g)、及び、実施例1記載の前記環状オレフィンポリマー(4g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は25重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は64ppm/Kであった。
【0209】
(比較例1)
実施例1記載の前記環状オレフィンポリマー(0.1g)を、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機にて、真空下200℃、圧力40MPaで20分間熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作製した。本比較例は環状オレフィンポリマーのみを用いているので、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は0重量部である。得られたフィルムは透明であったが、線膨張係数は78ppm/Kであった。
【0210】
(比較例2)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(0.1g)を用いて架橋体を作製した。具体的には、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機(株式会社井元製作所製、真空加熱プレス11FA)にて、真空下200℃、圧力1MPaで10分間、さらに、温度を280℃に上昇し、圧力40MPaで1時間熱プレスした。その結果、気泡が生じ、フィルム形状の物質は得られなかった。得られたものには気泡が確認され、透明ではなかった。フィルム形状の物質が得られなかったため、線膨張係数を測定することはできなかった。なお、本比較例は架橋体のみを用いているので、架橋体は100重量部に対して、環状オレフィンポリマー0重量部である。
【0211】
以上の結果を表1に示す。
【0212】
【表1】

【0213】
(実施例4)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(1g)、及び、α−オレフィン(エチレン)とテトラシクロドデセンとを付加共重合させた環状オレフィンポリマー[三井化学株式会社製、商品名APEL 6011T、テトラシクロドデセン:エチレン=25:75(H−NMRおよび13C−NMR測定より構造を帰属し、算出)](4g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。前記エチレン・テトラシクロドデセン・ランダム共重合体の構造を下記式(23)に示す。
【0214】
【化61】


・・・式(23)
【0215】
(式(23)において、n=25、m=75である。)
【0216】
以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は10重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は69ppm/Kであった。
【0217】
(実施例5)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(0.5g)、及び、前記実施例4に記載の環状オレフィンポリマー(4.5g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は30重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は68ppm/Kであった。
【0218】
(比較例3)
実施例6記載の前記開環重合体である環状オレフィンポリマー(0.1g)を、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機にて、真空下200℃、圧力40MPaで20分間熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作製した。本比較例は環状オレフィンポリマーのみを用いているので、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は0重量部である。得られたフィルムは透明であったが、線膨張係数は75ppm/Kであった。
【0219】
(実施例6)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(1g)、及び、環状オレフィンモノマーの開環重合体である環状オレフィンポリマー[日本ゼオン株式会社製、商品名Zeonex E48R](4g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は10重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は68ppm/Kであった。
【0220】
(実施例7)
実施例1に記載した重合方法に準じて重合した前記熱架橋性重合体、2,3−ジメチレンビシクロ[2,2,1]ヘプタン重合体(0.5g)、及び、前記実施例6に記載の環状オレフィンポリマー(4.5g)を用いて架橋体と環状オレフィンポリマーの組成物を作製する以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上の仕込み量から、得られたフィルムは、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は30重量部である組成物であると考えられる。得られたフィルムは透明であり、線膨張係数は66ppm/Kであった。
【0221】
(比較例4)
実施例6に記載の前記開環重合体である環状オレフィンポリマー(0.1g)を、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機にて、真空下200℃、圧力40MPaで20分間熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作製した。本比較例は環状オレフィンポリマーのみを用いているので、環状オレフィンポリマー100重量部に対して、架橋体は0重量部である。得られたフィルムは透明であったが、線膨張係数は72ppm/Kであった。
【0222】
(比較例5)
架橋性重合体として、ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂[商品名jER828、三菱化学株式会社製]0.11gおよび酸無水物[商品名リカシッドMH−700、新日本理化株式会社製]0.09gの混合物を作製し、前記架橋性重合体混合物と実施例1記載の前記開環重合体である環状オレフィンポリマー(1.8g)それぞれトルエンに溶解したのち混合したのち、溶媒のみ蒸発させ、架橋性重合体と環状オレフィンポリマーとの組成物を作製した。前記組成物を、高さ100μm、直径3cmの円形の金型に入れ、真空加熱プレス機にて、真空下200℃、圧力40MPaで1時間熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作製した。本比較例で得られたフィルムは白濁しており、良好な成形体を得ることはできず、線膨張係数を測定することはできなかった。
【0223】
以上の結果を表2に示す。
【0224】
【表2】

【0225】
以上の実施例、比較例の結果から、本実施例における環状オレフィンポリマーと架橋体の組成物は透明であり、線膨張係数が低いことがわかった。
【0226】
前記実施例の環状オレフィンポリマーと架橋体の組成物は、線膨張係数が未架橋の環状オレフィンポリマーよりも線膨張係数が低く、70ppm/Kを下回っており、環状オレフィンポリマーの撮像系レンズまたは電子基板における用途範囲を広げる効果が得られた。
【符号の説明】
【0227】
101 有機透明部材
102 有機透明部材
103 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体を有する組成物において、前記組成物はさらに、式(3)の繰り返し構造単位を有する架橋体を有し、前記重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上1000重量部以下であることを特徴とする組成物。
【化1】


・・・式(1)
【化2】


・・・式(2)
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。
また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
また、R11とR13とで、またはR12とR14とでアルキリデン基を形成していてもよい。
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択される。)
【化3】


・・・式(3)
(式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。また、A及びA’はそれぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択される。))
【請求項2】
前記式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20は水素原子であり、A及びA’はそれぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)及び(2)において、m+nは0乃至2のいずれかの整数であり、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)の繰り返し構造単位及び、下記の式(19)の繰り返し構造単位を有する共重合体であり、下記の式(19)の繰り返し構造単位と前記式(1)の繰り返し構造単位とのモル比が5:95乃至95:5の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【化4】


・・・式(19)
【請求項5】
前記式(1)において、m=0、n=0であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(1)において、m=0、n=1であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(2)において、m=0、n=0であり、かつ、X、Y、Zはいずれも−CH−であり、R乃至R10がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(1)の繰り返し構造単位を有する重合体が、下記の式(19)及び式(20)で示される繰り返し構造単位を有する共重合体であり、下記の式(19)の繰り返し構造単位と下記の式(20)の繰り返し構造単位とのモル比が5:95乃至95:5の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【化5】


・・・式(19)
【化6】


・・・式(20)
【請求項9】
前記式(1)の繰り返し構造単位を有する重合体が、下記の式(19)及び式(21)で示される繰り返し構造単位を有する共重合体であり、下記の式(19)の繰り返し構造単位と下記の式(21)の繰り返し構造単位とのモル比が5:95乃至95:5の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4、または請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【化7】


・・・式(19)
【化8】


・・・式(21)
【請求項10】
前記式(3)において、R15乃至R20及びR’15乃至R’20は水素原子であり、A及びA’はそれぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体を有する組成物において、前記組成物はさらに、式(4)の繰り返し構造単位を有する重合体が、retro−Diels−Alder反応及びDiels−Alder反応することで生成した架橋点を有する架橋体を有し、前記式(1)または式(2)の繰り返し構造単位を有する重合体100重量部に対して、前記架橋体は10重量部以上1000重量部以下であることを特徴とする組成物。
【化9】


・・・式(1)
【化10】


・・・式(2)
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。
また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
また、R11とR13とで、またはR12とR14とでアルキリデン基を形成していてもよい。
また、X、Y及びZは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−から選択される。)
【化11】


・・・式(4)
(式(4)において、lは0乃至2のいずれかの整数である。
また、R15乃至R26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。
また、R23とR26とが結合して環を形成していてもよい。また、A及びBは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択される。)
【請求項12】
有機透明部材を有する光学素子において、前記有機透明部材が請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組成物からなることを特徴とする光学素子。
【請求項13】
前記有機透明部材はさらに、酸化防止剤と、耐光安定剤とを有することを特徴とする請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
下記の式(1)または式(2)の少なくともいずれか一方の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が10000以上200000以下である重合体と、下記の式(4)の繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が1000以上200000以下である重合体と、を混合する工程と、
前記下記の式(4)の繰り返し構造単位を有する重合体を架橋する工程を有することを特徴とする組成物の製造方法。
【化12】


・・・式(1)
【化13】


・・・式(2)
(式(1)、(2)において、mは0または1であり、nは0乃至3のいずれかの整数であり、pは0または1である。
また、R乃至R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基である。
また、R11乃至R14は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環は二重結合を有していてもよい。
【化14】


・・・式(4)
(式(4)において、lは0乃至2のいずれかの整数である。
また、R15乃至R26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1乃至20の炭化水素基から選択される。
また、R23とR26とが結合して環を形成していてもよい。また、A及びBは、それぞれ独立に、−O−、−NH−、−S−、−CH−、−CH−CH−、または−CH(CH)−から選択される。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10937(P2013−10937A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117482(P2012−117482)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】