説明

組成物、帯電防止性コート剤及び帯電防止性積層体

【課題】4級アンモニウム塩基含有共重合体が溶解し、且つ水分吸収に対して安定な有機溶媒溶液である組成物を提供する。
【解決手段】4級アンモニウム塩基を含有する共重合体(A)、一般式(1)で表される化合物(B)、及び有機溶媒(C)を含有する組成物であって、該組成物の25℃でのpHが7未満である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4級アンモニウム塩基を含有する共重合体を含む組成物、該組成物を含む帯電防止性コート剤及び帯電防止層を有する帯電防止性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、酢酸セルロース等は、軽量性、易加工性、耐衝撃性などに優れるため、各種容器、インストルメントパネル、包装材、ハウジング等の種々の用途に使用されている。
一般に、プラスチック製品は表面固有抵抗値が高く静電気が帯電しやすいという大きな欠点を有している。すなわち、静電気の帯電は製品への埃の付着を促進し、製品の美観、透明性を損なう原因となる。このため、プラスチック製品の表面に帯電防止性材料から成るコート層が設けられている。
【0003】
中でも、フラットパネルディスプレイ等に用いられる光学フィルム分野においては、従来からの埃付着防止効果の他に、内部機器を静電気から保護する目的で多くの部品に用いられるフィルム製品で帯電防止性が必要とされている。また同分野においては、表面保護のためのコート層としての機能を併せ持つことが好ましく、帯電防止性と共に高い透明性や傷つきを防止するための硬度も要求されている。
【0004】
このような要求を満たす材料として、帯電防止性及び透明性を具備した活性エネルギー線硬化性材料が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2では4級アンモニウム塩基を有する共重合体と多官能(メタ)アクリレートを含有する帯電防止性を有するコーティング材が記載されている。
特許文献1及び特許文献2のコーティング材は、塗布時の作業性や生産性を考慮して、通常水溶性である4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリル重合体を有機溶媒に可溶にしたものである。また、得られる硬化膜は108〜109Ω/□という高度な帯電防止性を発現しながら、極めて高い透明性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−73305
【特許文献2】特開平6−180859
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載のコーティング材は優れた帯電防止性と高い透明性を示す一方で、有機溶媒を含む溶液中の水分が増加すると液の透明性が損なわれたり、場合によっては固形分が析出することがあり、溶液状態での水に対する不安定性が課題である。これは、例えば溶液状態での保管時や長時間の使用において、経時での水吸収により塗液が劣化し、固形分が析出するといった、生産上の大きなトラブルにつながる。
【0007】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、4級アンモニウム塩基含有共重合体、又は該共重合体と多官能(メタ)アクリレートとの混合物が溶解し、且つ水吸収に対して安定な有機溶媒溶液である組成物を提供することを目的とする。
加えて、このような組成物を含む帯電防止性コート剤及び該帯電防止性コート剤から得られる帯電防止性積層体であって、各種物品の表面に優れた帯電防止性および透明性を付与し得る帯電防止性コート剤及び帯電防止性積層体をも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の下、鋭意検討を行った結果、4級アンモニウム塩基含有共重合体と主として有機溶媒からなる組成物をプロトン酸性条件下に調整し、これに加水分解反応に敏感な特定の化合物(以下、加水分解反応性化合物と称することがある)を配合すると、該組成物が液中の水分の増加に対して極めて高い安定性を示すことを見出し本発明に至った。
【0009】
また、この組成物に活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを添加し、前記加水分解反応性化合物として、該化合物自体及び該化合物が反応した加水分解後の生成物の沸点が低い化合物を選択すれば、塗膜乾燥時にこれらを容易に除去でき、非常に高い塗膜の硬化性・帯電防止性・透明性を維持したまま、水吸収に対して安定な組成物を得られることを見出した。
【0010】
具体的には、以下の手段により達成される。
すなわち、本発明の第1の要旨は、4級アンモニウム塩基を含有する共重合体(A)、下記一般式(1)で表される化合物(B)、及び有機溶媒(C)を含有する組成物であって、該組成物の25℃でのpHが7未満である組成物に存する。
【0011】
(化1)
−C−(OR4−x (1)
(一般式(1)中、R1,R2は、各々が水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、xは0又は1を示し、R1及びR2は同一又は互いに異なっていても良い。)
【0012】
また本発明の要旨は、前記4級アンモニウム塩基が、N,N−ジアルキルアミノ基をアルキルクロライド、モノクロロ酢酸塩、モノクロロ酢酸エステル、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれるカチオン化剤で変性して得られたものである、前記組成物に存する。
【0013】
また本発明の要旨は、前記4級アンモニウム塩基が、N,N−ジアルキルアミノ基をメチルクロライドで変性して得られたものである、前記組成物に存する。
また本発明の要旨は、前記化合物(B)が、オルト蟻酸エステル及び/又はオルト酢酸エステルである、前記組成物に存する。
また本発明の要旨は、さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(D)を含有する、前記組成物に存する。
【0014】
そして、本発明の第2の要旨は、前記組成物を含む、帯電防止性コート剤及び該帯電防止コート剤から得られる帯電防止層を有する帯電防止性積層体に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物は、非常に高い硬化性・帯電防止性・透明性を有する膜を与えることが可能であり、かつ水吸収に対して安定な組成物である。よって、帯電防止性コート剤として、フラットパネルディスプレイ、タッチパネルデイスプレイ等の光学物品、DVDや次世代光情報媒体、自動車のランプ、ウインドウなどの(半)透明物品、電機機器の筐体などさまざまな物品の表面に、優れた帯電防止性、表面保護性、及び透明性を付与することができ、組成物における経時での水吸収により透明性が損なわれたり、固形分が析出することなく、種々の物品の生産過程で容易に取り扱うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの総称である。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0017】
また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の組成物は、4級アンモニウム塩基を含有する共重合体(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(B)、及び有機溶媒(C)を含有する。
【0018】
(化2)
−C−(OR4−x (1)
(一般式(1)中、R1,R2は、各々が水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、xは0又は1を示し、R1及びR2は同一又は互いに異なっていても良い。)
【0019】
また、本発明の組成物はさらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(D)を含有することができる。
まず、(A)〜(D)の各成分について説明する。
なお、以下で本発明の組成物に含まれる共重合体(A)、多官能(メタ)アクリレート(D)、後述する任意成分中、真空下、80〜100℃で加熱乾燥しても揮発しない成分(以下、不揮発成分と称することがある)を、まとめて固形分と称する。
【0020】
本発明で用いられる4級アンモニウム塩基を含有する共重合体(A)(以下、共重合体(A)と称することがある)は、4級アンモニウム塩基を含んでいる共重合体であれば特に限定されず、通常、本発明の組成物からなる塗膜及びそれを硬化させてなる硬化膜などの膜に帯電防止性を付与する共重合体である。これは、4級アンモニウム塩基が親水性であるため、膜の表面に水和層を形成するためである。
【0021】
斯かる共重合体(A)としては、例えば、N,N−ジアルキルアミノ基含有単量体を4級化した後、その他の単量体(E)と重合することにより、又はN,N−ジアルキルアミノ基含有単量体とその他の単量体(E)とを共重合した後、得られた共重合体が有するN,N−ジアルキルアミノ基を4級化することにより得ることができる。
N,N−ジアルキルアミノ基含有単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ) アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、特に原料としての工業的な入手のし易さからN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0022】
共重合体(A)を構成する、前記のその他の単量体(E)としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、等の環状構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;エチルカルビトール(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、トリデシル(メタ)アクリルアミド、ドデシル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ベンジル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリルアミド、ジシクロペンテニル(メタ)アクリルアミド、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリルアミド、等の環状構造を有するアルキル(メタ)アクリルアミド;エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;エチルカルビトール(メタ)アクリルアミド、シアノエチル(メタ)アクリルアミド等の各種(メタ)アクリルアミド;スチレン、メチルスチレン等が挙げられる。特に、得られる共重合体(A)の有機溶媒に対する溶解性の高さの面からドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0023】
また、その他の単量体(E)としてオルガノポリシロキサン単位を有する重合性単量体を使用することも出来る。オルガノポリシロキサン単位を有する重合性単量体としては、1分子中に1個以上のラジカル重合性基または1分子中に2個以上のメルカプト基を有するオルガノポリシロキサン化合物が挙げられる。
オルガノポリシロキサン単位は下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
(一般式(2)中、R1及びR2は、メチル基又はフェニル基を表し、相互に同一でも異なっていてもよく、nは5以上の整数、好ましくは5〜300の整数を表す。)
【0026】
上記の様なオルガノポリシロキサン単位を有する重合性単量体は、レベリング性、滑り性、剥離性を向上する効果を有する。上記の様なオルガノポリシロキサン単位を有する単量体の例としては、両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えば信越化学製のX−22−164A)、両末端にエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン、両末端及び側鎖にエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン;側鎖にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン誘導体(例えばEVONIK社(旧デグサ社)製のTego−Rad)、両末端にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えばGelest社製のDMS−U22)、主鎖または側鎖にポリジメチルシロキサンを有し、側鎖及び/又は末端にアクリロイル基及び/又はエポキシ基を有する共重合体などが挙げられる。
【0027】
共重合体(A)を得るための重合は、公知の重合方法に従って行うことができ、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒とエタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどのアルコール系溶媒との混合液などの溶媒の存在下にアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を使用して重合することができる。
【0028】
また、4級アンモニウム塩基はN,N−ジアルキルアミノ基をカチオン化剤で変性し、4級化処理をして得られたものであることが好ましい。カチオン化剤としては、例えばメチルハライド、エチルハライド、ノルマルプロピルハライド、イソプロピルハライド、ノルマルブチルハライド、イソプロピルハライド、ノルマルヘキシルハライド、2−エチルヘキシルハライド、オクチルハライド、ラウリルハライド、ステアリルハライドなどのアルキルハライド;モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウムなどのモノクロロ酢酸塩;モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチルなどのモノクロロ酢酸エステル;及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれるカチオン化剤が好ましく、これらの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
中でも反応性の高さや帯電防止性の高さ、工業的な入手のし易さなどの理由から4級アンモニウム塩基がN,N−ジアルキルアミノ基をアルキルハライド、モノクロロ酢酸塩、モノクロロ酢酸エステル、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれるカチオン化剤で変性して得られたものであることが好ましく、より好ましくはアルキルクロライド、更に好ましくは炭素数1〜2のアルキルクロライド、特に好ましくはメチルクロライドで変性して得られたものである。
【0030】
本発明の共重合体(A)は、有機溶媒との相溶性と帯電防止性の高さから、N,N−ジアルキルアミノ基含有単量体、N,N−ジアルキルアミノ基含有単量体を4級化した単量体及びその他の単量体(E)として、主に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られる、(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル共重合体は、構成単位のうち50重量%以上が(メタ)アクリル酸エステルに由来し、より好ましくは60重量%以上であって、100重量%が(メタ)アクリル酸エステルに由来していてもよい。
【0031】
共重合体(A)における4級アンモニウム塩基を含有する構成単位の含有割合は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であって、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
4級アンモニウム塩基を含有する構成単位の含有割合が10重量%以上であると共重合体(A)が有する帯電防止性が十分発揮され、90重量%以下であると共重合体(A)の親水性が高くなりすぎず、有機溶媒への溶解性が良好で、固形分として析出しにくくなるため好ましい。
【0032】
共重合体(A)を構成する前記その他の単量体(E)に由来する構成単位の含有割合は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であって、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。その他の単量体(E)に由来する構成単位の含有割合が5重量%以上であると有機溶媒への共重合体(A)の溶解性が向上し、50重量%以下であると共重合体(A)が十分な帯電防止性を有するため好ましい。
【0033】
また、その他の単量体(E)としてオルガノポリシロキサン単位を有する重合性単量体を用いる場合の共重合体(A)における該単量体に由来する構成単位の含有割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であって、好ましくは40重量%以下 、より好ましくは30重量%以下である。オルガノポリシロキサン単位を有する重合性単量体に由来する構成単位の含有割合が0.1重量%以上であると、共重合体(A)が有する滑り性付与の効果が十分発揮され好ましい。
【0034】
共重合体(A)の数平均分子量は、好ましくは400以上、より好ましくは1,000以上であって、好ましくは100,000以下 、より好ましくは70,000以下である。
本発明で用いられる下記一般式(1)で表される化合物(B)(以下、化合物(B)と称することがある)は、下記一般式(1)で表される化合物である限り特に限定されず、通常、脱水剤として効果的に働く加水分解反応に敏感な特定の化合物である。
【0035】
(化4)
−C−(OR4−x (1)
(一般式(1)中、R1,R2は、各々が水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、xは0又は1を示し、R1及びR2は同一又は互いに異なっていても良い。)
【0036】
斯かる化合物(B)としては、例えばオルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト蟻酸ノルマルプロピル、オルト蟻酸イソプロピル、オルト蟻酸ノルマルブチル、オルト蟻酸イソブチル、オルト蟻酸ヘキシル、オルト蟻酸−2−エチルヘキシル、オルト蟻酸オクチル、オルト蟻酸ドデシル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸ノルマルプロピル、オルト酢酸イソプロピル、オルト酢酸ノルマルブチル、オルト酢酸イソブチル、オルト酢酸ヘキシル、オルト酢酸−2−エチルヘキシル、オルト酢酸オクチル、オルト酢酸ドデシル、オルトプロピオン酸メチル、オルトプロピオン酸エチル、オルトプロピオン酸ノルマルプロピル、オルトプロピオン酸イソプロピル、オルトプロピオン酸ノルマルブチル、オルトプロピオン酸イソブチル、オルトプロピオン酸ヘキシル、オルトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、オルトプロピオン酸オクチル、オルトプロピオン酸ドデシル、オルト酪酸メチル、オルト酪酸エチル、オルト酪酸ノルマルプロピル、オルト酪酸イソプロピル、オルト酪酸ノルマルブチル、オルト酪酸イソブチル、オルト酪酸ヘキシル、オルト酪酸−2−エチルヘキシル、オルト酪酸オクチル、オルト酪酸ドデシル等が挙げられ、特に加水分解反応性化合物そのものと該化合物の加水分解後の生成物が低沸点であるため、本発明の組成物からなる塗膜乾燥時に容易に除去できることからオルト蟻酸エステル及び/又はオルト酢酸エステルを用いることが好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチルを各々単独で、或いは複数種を混合して用いることがより好ましい。
【0037】
化合物(B)は、市販されているものを使用してもよい。市販されている化合物(B)としては、日宝化学社製「オルソ蟻酸メチル(OFM)」、「オルソ蟻酸エチル(OFE)」、「オルソ酢酸メチル(MOA)」、オルソ酢酸エチル(EOA)」、「オルソプロピオン酸エチル(EOP)」、「オルソ−n−酪酸メチル(MOB)」などが挙げられる。
【0038】
本発明で用いられる有機溶媒(C)は、特に限定されず、たとえば公知のものを用いることができる。特に限定されない。有機溶媒は一般に水に比べ有機物の溶解性が高く、本発明のような有機物を含有する組成物を作製し易い。また蒸気圧が水に比べて低い溶媒種を適宜選択すれば、塗膜乾燥時に必要な熱エネルギーが小さくて済むため生産性にも優れている。
【0039】
斯かる有機溶媒(C)としては、共重合体(A)を得るための反応時に用いた溶媒でも、かかる反応が終了した後別途添加した溶媒であっても、それらの混合物であってもよい。
有機溶媒(C)として本発明に使用可能な公知のものとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;トルエン、キシレン、メシチレン、ピリジン、アニソール等の芳香族類;及びジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。共重合体(A)の溶解性、溶媒の沸点等の点から、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール系溶媒を単独で使用する、又はアルコール系溶媒とメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒とを混合した混合溶媒を使用するのが好ましい。
【0040】
有機溶媒(C)を混合溶媒とする場合の、有機溶媒(C)におけるアルコール系溶媒の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上であって、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。20重量%以上であると、共重合体(A)の溶解性に優れるため好ましい。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて有機溶媒以外の溶媒、すなわち水を含んでいてもよい、水は、多量に含まれると化合物(B)の必要量が非常に多くなり、所望の脱水効果に悪影響を及ぼすことから、本発明の組成物においては有機溶媒(C)100重量部に対して5重量部を越えて含まないことが好ましい。
【0041】
本発明で2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(D)(以下、多官能(メタ)アクリレート(D)と称することがある)を用いる場合、その構造は(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであれば特に限定されない。このような場合、該組成物に活性エネルギー線を照射した際硬化性が良好であり、さらに硬度の高い硬化物を得ることができる。
【0042】
斯かる多官能(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ポリエステルアクリレート類、多官能ウレタンアクリレート類、カーボネート結合を有するポリエステルアクリレート類、カーボネート結合を有するポリウレタンアクリレート類、ポリエポキシアクリレート類、イソシアヌレート環を有するトリエトキシアクリレート、これらのアルキレンオキシド変性物、ポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。これらの中では、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルが、活性エネルギー線を照射した際の硬化性、硬化後の硬化物の硬度の点から、好適に使用される。
【0043】
本発明の組成物における共重合体(A)の含有量は、組成物全体の3〜50重量%が好ましい。3重量%以上であると帯電防止性が十分発揮され、50重量%以下では共重合体(A)の有機溶媒への溶解性が良好となるため好ましい。
本発明の組成物における化合物(B)の含有量は、組成物中の除去したい水分量に応じて規定すればよく、好ましくは組成物全体の1〜50重量%である。1重量%以上であれば十分な水分除去能力を発揮し、50重量%以下であると共重合体(A)の有機溶媒(C)への溶解性に悪影響を及ぼすことがなく、固形分が析出しにくい状態になるので好ましい。より好ましくは、組成物中の除去したい水分量1モルに対して0.5モル以上、2モル以下である。水分量が比較的多量の時は、水分量1モルに対して1モル以上用いることが好ましい。組成物が吸湿性である場合は、その吸湿性に応じて、適宜含有量を調節することができる。
【0044】
本発明の組成物における有機溶媒(C)の含有量は、組成物全体の好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であって、好ましくは90重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。10重量%以上であると組成物を塗布する際の取扱いが容易な程度に組成物の粘度を調製することが可能であり、90重量%以下であると、帯電防止性を発現するに十分な塗膜膜厚を得やすいため好ましい。
【0045】
本発明の組成物が化合物(D)を含有する場合、その含有量は、組成物全体の10〜90重量%が好ましい。10重量%以上であると、活性エネルギー線を照射して得られる硬化物の硬度が高くなる傾向があり、90重量%以下であると組成物を塗布する際の取扱いが容易な程度に組成物の粘度を調製することが可能であり好ましい。
本発明の組成物は、25℃でのpHが7未満である。これは、本発明の組成物における水分除去機構が、いわゆるアセタール構造のプロトン酸触媒による加水分解反応によるものであることによる。すなわち、本発明の組成物中の化合物(B)1分子はプロトン存在下では、水1分子と反応してエステル1分子とアルコール2分子になる。従って、本発明の組成物における水分除去能の発現には、プロトン酸が存在することが必要であり、すなわちpHが7未満であることが必須である。また、組成物の安定性に悪影響を及ぼすような副反応を抑制するために、pHは4以上であることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物のpHを7未満にする方法については、特に限定されないが、例えば有機プロトン酸を混合するといったような公知の調整法を適用することができる。使用できる有機プロトン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のアルキルカルボン酸;シュウ酸、マロン酸等のアルキルジカルボン酸;安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル等の(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性カルボン酸;アルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。特に、組成物を塗布し、乾燥させて形成する塗膜製造時に容易に除去できる点では蟻酸、酢酸が好ましく、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させる際に硬化時に硬化膜に取り込まれるという点ではアクリル酸が好適に使用できる。
【0047】
上記有機プロトン酸の添加量は、組成物がすでにpH7未満の場合は、混合を省略してもよい。また組成物のpHが7以上の場合は、pHを7未満にすることを満たせば任意の割合で混合してよいが、好ましくは組成物全体の0.1〜5重量%である。5重量%以下であれば、塗膜乾燥時に除去が容易であり、塗膜に残留して性能に悪影響を及ぼすことがないため好ましい。
【0048】
なお、pH調整剤としての上記有機プロトン酸は、本発明の組成物における前記有機溶媒(C)には該当せず、その含有量からは除外するものとする。
本発明の組成物に、任意成分として各種機能性を付与する目的で、すべり性付与剤、防曇付与剤、剥離性付与剤の少なくとも1種を配合すると好ましい場合がある。それぞれ、本発明の効果を阻害しない限り特に構造を限定されることはないが、例えば、すべり性付与剤としては、ポリジメチルシロキサン基を有するような重合体を例示することができる。一方、防曇付与剤としては、親水基変性コロイダルシリカ、シリケート変性コロイダルシリカ、ポリアルキレングリコール基等の親水基を側鎖に有する重合体やオリゴマー類を例示することができる。さらに、剥離性付与剤としては、公知のシリコーン系、フッ素系、長鎖アクリル系のオリゴマーからポリマー型、これらに硬化性基を含むもの等、を例示することができる。
【0049】
本発明の組成物に、上記の他、各種機能性を賦与する目的で、種々の化合物を任意成分として配合することができる。例えば、紫外線吸収剤や光安定剤を配合すると、さらに耐光性が著しく向上し、好ましい場合がある。紫外線吸収剤としては、公知のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、トリアジン系紫外線吸収剤等を、光安定剤としては公知のヒンダードアミン系光安定剤を好ましい例として挙げることができる。
【0050】
本発明の組成物に、塗膜又は硬化膜などの膜物性を改良する目的で、酸化防止剤(たとえば、ヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤等)、ブロッキング防止剤、スリップ剤、レベリング剤などの種々の添加剤を配合してもよい。この場合の配合量としては、その目的に応じて0.01〜2重量%配合することができる。
本発明の組成物から得られる硬化物の硬度や耐ブロッキング性などをさらに向上させる目的で、無機微粒子を未処理のまま配合してもよい。この場合の配合量としては、不揮発成分として0.01〜50重量%配合することができる。
【0051】
本発明の組成物に含まれる固形分量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上であって、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。3重量%以上の場合は、塗膜とする際に所望の性能を発現するための膜厚を形成することが容易であり、70重量%以下であると溶液粘度が高くなりすぎず、固形分の溶解性にも優れるため好ましい。
【0052】
本発明の組成物から得られる膜は優れた帯電防止性を有するので、該組成物を含む帯電防止性コート剤を得ることができる。
また、本発明の帯電防止性コート剤、好ましくは帯電防止性コート剤が多官能(メタ)アクリレート(D)を含有する場合、に活性エネルギー線を照射して硬化することにより帯電防止性の硬化膜を得ることができる。
【0053】
硬化膜を得るために、光重合開始剤を添加することが好ましいが、エレクトロンビーム(EB)のように照射エネルギーが非常に強く、光重合開始剤の添加を必要としない場合には省略できる。光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2-モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のα−アミノフェニルケトン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のベンゾフェノン類、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル等のベンゾイルギ酸エステル類、CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)等のオキシムエステル類を例示することができる。これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
【0054】
光重合開始剤の含有量は、固形分100重量部に対して好ましくは2重量部以上、より好ましくは2.5重量部以上であって、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4.5重量部以下である。2重量部以上であると硬化性が良好となり、5重量部以下では硬化膜の硬度に影響を与えることがないため好ましい。
本発明の帯電防止性コート剤は、基材上に帯電防止性コート剤から得られる帯電防止層を有する、帯電防止性積層体とすることができる。帯電防止層の形成方法は特に限定されず、本発明の帯電防止性コート剤から得られる硬化膜などを形成してから基材と張り合わせても良いし、本発明の帯電防止性コート剤を基材に塗布して塗膜を形成する、又は該塗膜を硬化させて硬化膜を形成するなどの方法でも良い。
【0055】
通常、本発明の帯電防止性コート剤をプラスチック基材、または透明基材上に塗布し、帯電防止層を形成する方法が好適である。
プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、またはメタクリル酸メチル(MMA)共重合体(例えばメタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂(MS樹脂))、ポリカーボネート、特殊ポリカーボネート(例えば、帝人製のピュアエース)、トリアセチルセルロース、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、変性ポリオレフィン樹脂、水素化ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン系透明樹脂(例えばJSR製のア−トン、日本ゼオン製のゼオノア、など)等が挙げられる。あるいは、その他の透明基材として、例えば、熱硬化性や光硬化性の透明樹脂(例えば、透明エポキシ樹脂、透明ウレタン樹脂、熱硬化性のアクリル系樹脂、光硬化性のアクリル系樹脂、熱硬化性の各種有機無機ハイブリッド樹脂、光硬化性の各種有機無機ハイブリッド樹脂などの硬化物)を使用し、その上に塗布しても用いることができる。
【0056】
これらのうち、光学物品用途で使用する場合、すなわち、透明基材として、光学用透明フィルム、光学用シート、光学用板状物を用いる場合、基材が、コーティング、溶融押し出し成形、ソルベントキャスト法のいずれかで形成された透明樹脂成形物であることが望ましい。またこのような基材が光または熱で硬化可能な官能基を含む場合、該基材を活性エネルギー線照射または加熱により硬化させると、より好ましい場合がある。また、これらの基材は、成形品(物品)の形のものであっても良いし、基材と塗布面との間に他の層を介していてもよい。
【0057】
塗布方法としては、スピンコート、デイップコート、フローコート、スプレーコート、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、エアナイフコート等を好ましい例として挙げることができる。
上記基材に上記塗布方法で塗膜を形成後、加熱乾燥により揮発成分を除去した後、活性エネルギー線照射することにより、硬化膜が得られる。塗布、重合、硬化されて得られる硬化膜の厚さは、特に定めるものではなく、例えば、5μm以上であってもよいし、2μm以下であってもよい。本発明の塗布剤は、薄膜化/厚膜化の両方が可能な点で極めて有意である。塗膜の厚さは特に好ましくは0.01〜50μm、帯電防止性を重視する場合は特に好ましくは2〜20μm、透明性や表面保護性などを重視し帯電防止性を比較的重視しない場合は特に好ましくは0.04〜2μmである。
【0058】
活性エネルギー線の照射法としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、または通常20〜2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線、等の活性エネルギー線(エレクトロンビーム、EB)を照射し、硬化させて被膜を形成させる。このような活性エネルギー線で硬化した硬化膜は生産性・物性のバランスに優れ、特に好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において「部」とあるのは「重量部」を意味する。
下記の実施例等で得られた配合液、及び該配合液から得られた硬化膜の物性は下記の方法により評価した。
(1)pH測定:配合液40mLを50mLのバイアル瓶に入れ、恒温水槽中に3hr浸し液温を25℃に調整後、撹拌子を投入し、マグネチックスターラー上で撹拌しながらpHメーター(堀場製作所社製「pH METER F−21」)を用いて測定した。
(2)液の外観:配合液40mLを50mLのガラス製ネジ式バイアル瓶に入れたときの配合液の外観を、目視にて以下の通り評価した。
【0060】
◎: 透明
○: やや蛍光掛かっている
△: 白く霞んでいる
×: 白濁〜析出物有り
【0061】
(3)光線透過率測定:配合液を石英セル(光路長1cm)に入れ、光線透過率測定器(日本分光社製「UV/VIS SPECTROPHOTOMETER V−530」)を用いて波長460nmの光線透過率を測定した。なお、光線透過率は、水添加前の配合液の透過率を100%としたときの水添加後の配合液の透過率を示した。
(4)透明性:JIS K−7105に従ってヘイズメーター(村上色彩技術研究所製「HAZE METER HM−65W」)にてヘイズ値を測定した。
(5)表面抵抗値:硬化膜を、温度23℃、湿度60%RHの恒温室内で24時間状態を調整した後、同恒温室内で、硬化膜上に標準ディスク電極(外φ70mm、内φ50mm)を取り付け、絶縁抵抗計(武田理研社製「High Megohm Meter TR−8601」)を用いて100Vの電圧を1分間印加した後の表面固有抵抗値を測定した。
【0062】
<合成例1>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物(共栄社化学社製「ライトエステルDQ−100」)18部、ドデシルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの混合物(三菱レイヨン社製「アクリエステルSL」)7.5部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルDM」)4.5部、メチルエチルケトン(MEK)20部、イソプロピルアルコール(IPA)50部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製「V−65」)0.6部を添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6部を添加して65℃で3時間撹拌し、共重合体(A1)及び溶媒(C)としてIPA及びMEKを含む反応液を得た。反応液の組成は共重合体(A1)/IPA/MEK=30/50/20(重量比)であった。
【0063】
<配合例1〜11>
合成例1で得られた共重合体(A1)及び溶媒(C)を含む反応液、及び化合物(B)、多官能(メタ)アクリレート(D)、並びにpH調整剤を用いて表1に示した組成で各成分を配合した後、溶媒(C)として更にノルマルブタノール(NBA)/シクロヘキサノンの混合溶媒(混合比率=65/35(重量比))を用いて組成物中の固形分濃度が各々表2に記載の濃度になるように希釈し、配合液A〜Kを調製した。得られた配合液A〜Kの組成比は表2の通りである。また、pHを上記(1)の方法で測定し、表2に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
<実施例1〜4、比較例1〜7>
配合例1〜11で得られた配合液A〜K100重量部に対して、表3に示す量の水を添加し、25℃で1hr撹拌した後の液の外観を上記(2)の方法で評価した。また、光線透過率(測定波長=460nm)を上記(3)の方法に従い測定し、測定結果を表3に示した。
【0067】
【表3】

【0068】
<実施例5〜7>
配合液B〜D100重量部に対し、光重合開始剤として2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2-モルフォリノ−1−プロパノン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「Irgacure907」))を1.1重量部(配合液の固形分に対して2.5重量部)添加し、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフイルム( 三菱化学ポリエステルフイルム社製「T600」)上 に、乾燥後の塗膜が6μm となる様にバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、光源下15cmの位置で、上記の各塗膜に積算で600mJ/cm2 の紫外線を照射し、硬化膜を得た。
各硬化膜につき、上記(4)、(5)の測定を行い、結果を表4に示した。
【0069】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の組成物は、非常に高い硬化性・帯電防止性・透明性を有する膜を与えることが可能であり、かつ水分吸収に対して安定な組成物である。
よって、本発明の組成物はフラットパネルディスプレイ、タッチパネルデイスプレイ等の光学物品、DVDや次世代光情報媒体、自動車のランプ、ウインドウなどの(半)透明物品、電機機器の筐体などさまざまな物品の表面に、帯電防止性、表面保護性、及び透明性などを付与するコート剤として好適に用いることができる。特に、フラットパネルディスプレイ、タッチパネルデイスプレイ等の光学物品の帯電防止性コート剤として適する。
【0071】
また、本発明の組成物を含む帯電防止性コート剤から得られる帯電防止層を有する帯電防止性積層体は、光学物品、半透明物品などの様々な用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4級アンモニウム塩基を含有する共重合体(A)、下記一般式(1)で表される化合物(B)、及び有機溶媒(C)を含有する組成物であって、該組成物の25℃でのpHが7未満であることを特徴とする組成物。
(化1)
−C−(OR4−x (1)
(一般式(1)中、R1,R2は、各々が水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、xは0又は1を示し、R1及びR2は同一又は互いに異なっていても良い。)
【請求項2】
前記4級アンモニウム塩基が、N,N−ジアルキルアミノ基をアルキルハライド、モノクロロ酢酸塩、モノクロロ酢酸エステル、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれるカチオン化剤で変性して得られたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記4級アンモニウム塩基が、N,N−ジアルキルアミノ基をメチルクロライドで変性して得られたものである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が、オルト蟻酸エステル及び/又はオルト酢酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
さらに、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(D)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を含む、帯電防止性コート剤。
【請求項7】
請求項6に記載の帯電防止性コート剤から得られる帯電防止層を有する、帯電防止性積層体。

【公開番号】特開2010−174180(P2010−174180A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20366(P2009−20366)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】