説明

組成物の調製方法

バイゲルの製造方法において、(a)少なくとも一種のセルロースポリマーでゲル化した少なくとも一種の油性剤を含有するオレオゲルを提供し;(b)例えばカルボマーのような、粘度がpH依存性である少なくとも一種の成分を含有する水性ゲルを提供し;(c)オレオゲルと水性ゲルを一緒に混合してバイゲルを形成し;(d)次に高流量かつ低剪断攪拌下でバイゲルの粘度を調節して所望の粘度のバイゲルを得ることを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲルの調製方法、特に薬学的、獣医学的及び化粧品用途に適したオレオゲルと水性ゲルの安定混合物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的及び/又は化粧品用途のための組成物を処方するための数多くの方法が知られており、それぞれがそれ自体の利点と欠点を有している。
例えば、ある種の薬学的及び化粧品成分は水に難溶性であり、よって最適には水性組成物よりも油性組成物中に処方される。油性ゲル(オレオゲル)は、合成、半合成又は天然油(極性又は非極性)をゲル化させて油の全体透明性を持つ比較的固体状の粘稠度のゲルにすることによって製造されうる。しかしながら、オレオゲルは、油性化合物が存在しているためにべとつき不快な感触となるという不具合がある。この不快な感触は、特に皮膚科用及び化粧品用途の場合に、使用者を落胆させることが非常に多い。よって、ボディケアオイルに、油の有利な性質を同時に維持しながら、比較的固体状の粘稠度であるがフレッシュで心地よい感触、つまりべとつきのない感触を付与することができることが望ましい。
【0003】
かかる不具合を解消するために使用されている一つのアプローチ法は油性相をエマルションの一部として含めるものである。エマルションは、一種の液体を第二の液体の本体中に小球として分散させた調製物として定義できる。分散させられた液体は不連続相又は内部相として知られ、分散体媒体は連続又は外部相である。油が分散させられた液体で水溶液が連続相である場合、それは水中油エマルションとして知られる一方、水又は水溶液が分散された相で油又は油性物質が連続相である場合は、油中水エマルションとして知られている。しかしながら、当該分野でよく知られているように、エマルションは不安定であるので、安定なエマルションを形成するためには乳化剤を加えなければならない(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版 (1995), ISBN: 0-912734-04-3, 21章, 282-291頁を参照)。更なる処方アプローチ法は、乳化剤を用いないである種のオレオゲルと水性ゲルの安定混合物を形成することに関するEP1083880Blに記載されている。かかる安定混合物は「バイゲル(bigel;バイジェル)」としても知られている。バイゲルの形成に関連するEP1083880Blの開示の全体を出典明示によりここに援用する。
【0004】
製剤産業にあっては、製剤の成分を、それらを混合する前に所望のpH及び粘度に最適化することは一般的に受け入れられている習慣である。これは簡便である上、特定の成分の不良のバッチによって引き起こされる経済的損失を最小にもする。例えば、エマルションの分野では、クリーム又はローションの形態の所望の粘度のエマルションがひとたび形成されると、それぞれの更なる製剤工程はエマルションをその成分に破壊してしまう危険性が増加する。従って、最終組成物を形成する前に個々の成分を最適化することが一般に好ましいと考えられる。
また均質な粘性製品を得ることが求められている場合、製剤産業にあっては、高剪断混合/攪拌を使用することがまた一般的に受け入れられている習慣である。これは特にクリーム及び軟膏の場合にしかりである(Silverson(登録商標) Application Reports 18PA2 "Solutions for your toughest mixing applications in pharmaceuticals: Production of pharmaceutical creams and ointments"、及び5TA2 "Solutions for your toughest mixing applications in cosmetics: Production of cosmetic creams and lotions"を参照)。
【発明の開示】
【0005】
本発明者等は、特にバイゲルクリーム及び軟膏のパイロットスケール及び大規模製剤化に対しては、水性相を油性相と混合する前に、水性相のpHと粘度をその最終値に(つまり、中和)最適化しないことが有利であることを見出した。これに対して、油性相との混合後に水性相成分のpHを最適化することが有利である。これにより、二相が混合された後にのみバイゲルの増粘が生じ、これにより所望の粘度のバイゲルクリーム又は軟膏を達成することが可能になる。更に、本発明者等は、一般に受け入れられている高剪断混合の使用がバイゲルの生産には適していないことを特定した。発明者等は、中和段階で高剪断混合だけが使用される場合、ゲルマトリックスが破壊され、製品粘度が減少し、バイゲルが分離し始めることを示した。また発明者等は、混合速度が余りに低いと、中和剤の取り込みが不完全でバイゲルの分離が生じることを示した。
驚いたことにまた意外にも、本発明者等は、高流量(ハイフロー)と低剪断(ローシアー)混合条件の併用が、少なくとも商業的規模の生産に対して、バイゲルクリーム又は軟膏を得るのに必要とされることを示した。
【0006】
よって、本発明の第一の態様は、バイゲルの製造方法において、
(a)少なくとも一種のセルロースポリマーでゲル化した少なくとも一種の油性剤を含有するオレオゲルを提供し;
(b)粘度がpH依存性である少なくとも一種の成分を含有する水性ゲルを提供し;
(c)オレオゲルと水性ゲルを一緒に混合してバイゲルを形成し;
(d)次に高流量かつ低剪断混合下でバイゲルの粘度を調節して所望の粘度のバイゲルを得る
ことを含む方法を提供する。
【0007】
ここで使用される場合、「混合」及び「攪拌」なる用語は交換可能に使用される。
「バイゲル」とは、オレオゲルと水性ゲルの密な混合物であり、エマルションではない裸眼で実質的に均一な外観の安定混合物を意味する。換言すれば、バイゲルは、視覚的に検査したときに単一のゲルのみが識別できるように互いに均一な分散体である。
更に、バイゲルを皮膚に塗布する場合に水性ゲル及びオレオゲル相の分離は検出されない。
「安定」には、バイゲルが2ヶ月の間、好ましくは6ヶ月まで、又は更には12ヶ月まで室温での保存時に油性ゲルと水性ゲルが分離することなく実質的に均一な外観を保持するという意味を含む。
【0008】
バイゲルはエマルションではなく、バイゲルと油中水及び水中油エマルション双方との間には多くの構造的な差異があり、それがバイゲルを医薬又は化粧品組成物として有意に改善された性質を有するものとする。例えば、バイゲルでは、物理化学的安定化プロセスは3次元ゲル網目構造を介した実際の捕捉である。これは顕微鏡で見ることができる極微細な分散体である。また、乳化剤が存在していないため、つまりバイゲルは乳化剤を含まないものとできるため、バイゲルは界面の膜を有していない。その結果、バイゲルの連続相と非連続相の間の界面は乳化剤によって簡便に安定化されない。これは、伝統的なエマルションと比較して、自然の耐水性と、同じ製品における親水性及び親油性活性成分のような非相容性成分を処方する改善された能力のような顕著な利点をもたらす。
バイゲル中における水性ゲルと油性ゲルの混合物の密接な性質は、例えばバイゲルの形成前に染料物質を油性(例えばスーダンレッド3)又は水性(例えばエリスロシン)ゲル相の何れかに導入することによって、観察することができる。視覚検査では、染料は、たとえオレオゲルか水性ゲルの一方にのみ存在していても、均一に分散していることが分かる。実際、バイゲルの形成前に二種の異なった染料が油性相と水性相にそれぞれ導入されれば、双方の色がバイゲルの全体にわたって均一に分散した状態で観察されうる。これは、エマルション形成前に水溶性か油溶性である染料を水性又は油性相に導入すると外部相中の染料の色のみが観察されるエマルションとは対照的である(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19版(1995) 21章, 282頁)。
【0009】
バイゲルは電気伝導度の異なったパターンによってエマルションとはまた区別しうる。電気は水中油エマルションを通過して伝導しうる。これは、例えば1cm離間した二つの電極からなり、その間にエマルションが電気を伝導するために配される電気伝導性測定システム(例えばTypomat, SKM Electronik, Germany又は標準的な研究室設備を使用して製作することができる)を使用して見ることができ、伝導性は、読み取りとして例えば色彩光を使用して観察することができる。油中水エマルションの場合、電気伝導性はなく、水性及び油性相の相対濃度にかかわらず色彩光はない。バイゲルの場合は、水性相と油性相の割合が如何なるものであろうと、電気伝導性を常に見ることができ、これは、分離しているにもかかわらず、水の粒子が互いに接触し、電気を通す。
【0010】
バイゲルはエマルションではないので、それを安定化するために界面活性剤のような乳化剤を含む必要はなく、乳化剤の不在下で安定している。よって、好ましくは、バイゲルの調製において、乳化剤は添加されない。バイゲル中に存在している必要のない典型的な乳化剤には、アルキルアリールスルホネート、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びアルキルアリールスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホネート;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸リチウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、及びテトラデシル硫酸ナトリウムのようなアルコールスルホネート;ラウリルエーテル(2EO)硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル(3EO)硫酸アンモニウム、及びアルキルラウリルエーテル硫酸ナトリウムのようなエーテルサルフェート;セチルリン酸ジエタノールアミン、ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、アルキルリン酸エステル、及びトリエタノールアミン複合体ホスフェートエステルのようなホスフェートエステル;のようなスルホコハク酸ナトリウム及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウムのようなスルホスクシネート;サルコシン酸ラウロイルナトリウム及びスルホサルコシン酸ラウロイルアンモニウムのようなサルコシネートから選択されるアニオン性界面活性剤;及び他のアニオン性界面活性剤、例えばパラフィン、オレフィン及び石油サルフェート/スルホネート、タウレート及びイセチオネート、及びカルボキシレート;第4級アンモニウムカチオン、例えば塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ココトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ジデシルジメチルアンモニウム;アルキルフェノールエトキシレート、例えばノニルフェノールエトキシレート(9EO)、ノニルフェノールエトキシレート(2EO)、及びオクチルフェノールエトキシレート(10EO);アルコールエトキシレート、例えばC12/C14合成エトキシレート(8EO)、ステアリルアルコールエトキシレート(7EO)及びセトステアリルアルコールエトキシレート(20EO);アミンエトキシレート、例えばココナツ脂肪アミンエトキシレート(10EO);エステルエトキシレート、例えばソルビタンモノラウレートエトキシレート;EO/POブロックポリマー、例えば80%PO/20%EO;アルカノールアミン、例えばココナツジエタノールアミド;及びエステル、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノラウレート4EO、ジ-イソプロピルアジペート及びセトステアリルステアレートから選択される非イオン性界面活性剤;及び両性界面活性剤、例えばココイミダゾリンベタイン、ココアミドスルホベタイン、オレオアミドプロピルベタイン及びトールオイルイミダゾリンが含まれる。
【0011】
しかしながら、上記乳化剤のあるものは、それ自体を乳化剤としてではなく、薬剤の吸収促進剤としてバイゲルに含めることができ、含める場合には典型的にはエマルションを安定化させるのに必要な濃度以下で存在している。吸収促進剤として作用しうる乳化剤はTweens、Spans、アルキルアリールスルホネート、SDS、及びDOSSを含む。
好ましくは、該方法はバイゲルのパイロットスケール又は大規模な製造のためのものである。「パイロットスケール」によって、我々は、5−10kg、10−50kg、又は50−100kgのバッチを含む5−100kgのバッチを意味する。「大規模」によって我々は、100−200kg、又は200−400kg、又は400−1,000 kg又はそれ以上のような100kgを越えるバッチを意味する。以下の実施例に記載された方法は40kgのバッチに対して実証されている。工業的な基準によれば、これは400kgまでのバッチに対する十分な実証実験である。
【0012】
上述のように、オレオゲル(油性相又は油性ゲルとも称される)は、少なくとも一種のセルロースポリマーでゲル化された油性剤を含む。セルロースポリマーは、エチルセルロース、非ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びそれらの混合物から選択することができる。エチルセルロースが好ましく、Aqualon(登録商標)エチルセルロース(Hercules)及びEthocelTM(ダウケミカル社)として市販されている。
油性剤は好ましくは合成、半合成及び天然由来のモノ-、ジ-及びトリグリセリド、及びその混合物から特に選択されうる。合成モノ-、ジ-又はトリグリセリドはMiglyol810及び812(Dynamit Nobel)を含みうる。半合成モノ-、ジ-又はトリグリセリドとしては、特にイソステアリン酸プロピレングリコール、例えば「hydrophilol isostearique」(Gattefosse)の名称の製品、及びポリ糖分解グリセリド「Labrafil(登録商標) M1944CS」(Gattefosse)が挙げられる。Labrafil(登録商標)M1944CSは、天然植物油のアルコーリシスによって得られるポリオキシエチレン化オレイン酸グリセリドの混合物である (French Pharmacopoeia, 8版)。それは、その性質が、液滴点、145/175のけん化価;<2の酸価;60/90のヨウ素価;>20ml/kgのラットにおける経口致死量(OLD);及び3/4の親水性/疎水性バランス(HLB)を含む油性液体である。
最後に、天然由来のモノ-、ジ-、又はトリ-グリセリドとして、特に、例えばスウィートアーモンド油、アルガン油及びパーム油のような植物由来の油が挙げられる。
【0013】
油性剤はまたカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドの混合物、例えばLabrafac CC(登録商標)(Gattefosse)を含みうる。
他の実施態様では、油性剤は油性サンスクリーン遮蔽剤、より好ましくはケイ皮酸エステルから選択することができる。特に、かかる油性剤は、4-メトキシケイ皮酸イソペンチルエステル、4-メトキシケイ皮酸エチル2-ヘキシルエステル及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、油性剤としてのサンスクリーン遮蔽剤は、4-メトキシケイ皮酸エチル2-ヘキシルエステル、例えば「パルソールMCX」(Roche)の名称で販売されている製品でありうる。該油性サンスクリーン遮蔽剤は、本発明によって製造されるバイゲルの全重量に対して約0.1から約20重量%、好ましくは約4から約10重量%の割合で存在しうる。このようにして製造されるバイゲルは、以下に記載するように、医薬又は化粧品活性成分のような更なる活性成分を含有してもよいサンスクリーン遮蔽剤組成物として使用することができる。
【0014】
一実施態様では、エチルセルロースは、製造されるバイゲルの約0.01から約5重量%、より好ましくは約0.05から約1重量%の割合で存在する。ある実施態様では、エチルセルロースの量は、約0.05−0.1重量%と低い割合である一方、他の実施態様では、高く、例えば製造されるバイゲルの0.1−0.5重量%、0.5−1重量%又は1−5重量%でありうる。
典型的には、エチルセルロースは、油性相の約0.1から10重量%、より好ましくは約0.5から5重量%の割合で存在する。ある実施態様では、エチルセルロースの量は、約0.5−1重量%と低い割合である一方、他の実施態様では、高く、例えばオレオゲルの1−3重量%又は3−5重量%でありうる。
【0015】
周知のように、オレオゲル中のエチルセルロースによってもたらされるゲル化のレベル、よってその粘度は、エチルセルロースの割合とグレードの双方に依存する。オレオゲル中のエチルセルロースの所定の重量に対して、使用されるエチルセルロースのグレードが高くなればなる程、オレオゲルの粘度が高くなる。換言すれば、エチルセルロースのグレードがより低い場合、より多い量のエチルセルロースが通常使用される。Dow Ethocel(登録商標)エチルセルロースでは、製品の粘度、濃度及びグレードの関係に関する情報は、"Ethocel, Ethylcellulose Polymers Technical Handbook" (http://www. dow. com/ethocel/resource/lit.htm)にで入手できる。Aqualon(登録商標)エチルセルロースでは、製品の粘度、濃度及びグレードの関係に関する情報はAqualon(登録商標)製品データシート(250−49A7−03)、及び"Aqualon(登録商標)エチルセルロース(EC)物理的及び化学的性質" (Aqualon(登録商標)製品冊子250−42A)において入手でき、その双方がwww.herc.com/aualonで入手できる。エチルセルロースの性質に関するこれらの参考資料の各々を出典明示によりここに援用する。
【0016】
一の特定の実施態様によれば、オレオゲルの全重量に対して、油性相は約1から約10重量%の割合でエチルセルロースを含み、油性剤は約5から約90重量%の割合でポリオキシエチレン化オレイン酸グリセリドの混合物を含む。
他の特定の実施態様によれば、オレオゲルの全重量に対して、油性相は約1から約10重量%の割合でエチルセルロースを含み、油性剤は約5から約90重量%の割合でカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドの混合物を含む。
【0017】
オレオゲルがイソステアリン酸プロピレングリコールを更に含むのが好ましい。イソステアリン酸プロピレングリコールは、オレオゲルの全重量に対して、典型的には約0.1から約5重量%の割合で存在している。イソステアリン酸プロピレングリコールが、製造されるバイゲルの全重量に対して、約0.05から約1重量%の割合で存在しているのが好ましい。ある実施態様では、イソステアリン酸プロピレングリコールの量は約0.05−0.5重量%と低い割合であるが、他の実施態様では、例えば0.5−1重量%のように高い場合がある。イソステアリン酸プロピレングリコールは、次の列挙された供給元から以下の商品名で市販されている:Emerest2384(Henkel/COSPHA);Hydrophilol isostearique(Gattefosse社);Prisorine PMIS2034(Unichema);及びWitconol2384(Witco)、及びA&E Connock社,Fordingbridge UK)。
【0018】
オレオゲルが更にラウリン酸プロピレングリコールを含むのがまた好ましい。ラウリン酸プロピレングリコールは、典型的にはオレオゲルの全重量に対して、約1から約50重量%の割合で存在する。ラウリン酸プロピレングリコールが製造されるバイゲルの全重量に対して約1重量%から約10重量%の割合で存在しているのが好ましい。ある実施態様では、 ラウリン酸プロピレングリコールの量は約1−5重量%と低い割合であるが、他の実施態様では、例えば5−10重量%のように高い場合がある。ラウリン酸プロピレングリコールは、次の列挙された供給元から以下の商品名で市販されている:Calgene PGML(Calgene);Imwitor412(Huls AG/Huls America);Jeechem PGML(Jeen);Laurate De Propylene Glycol(Prod’Hyg);Schercemol PGML(Speciality Industrial);及びUnipeg−PGML(Universal Preserv−A−Chem)、及びA&E Connock社,Fordingbridge UK。ラウリン酸プロピレングリコールの商業的に得ることができる調製物はしばしばラウリン酸モノエステル及びジエステルの混合物である。ラウリン酸プロピレングリコールの量と割合についてのここでの記載はラウリン酸モノエステル及びジエステル双方の形態を含む。
【0019】
より好ましくは、オレオゲルはイソステアリン酸プロピレングリコールとラウリン酸プロピレングリコールの双方を更に含む。最も好ましくは、オレオゲルはエチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコール及び少なくとも一種の油性剤を含む。
好ましくは、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、全体で、バイゲル組成物の約1重量%から10重量%、より好ましくは2%から6%の割合で存在している。好ましい実施態様では、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは全体でバイゲル組成物の約3重量%又は4重量%又は5重量%又は6重量%で存在している。
【0020】
本発明の好ましい実施態様では、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、それぞれ約2−10%:2−10%:80−96%の相対割合で存在する。Grade50エチルセルロースの場合、エチルセルロースの割合は好ましくは3−6%、より好ましくは4−5%であり、好ましい相対割合はそれぞれ4−5%:5−6%:89−91%である。他のグレードのエチルセルロースの場合は、エチルセルロースの割合は準じて計算できる。低グレードのエチルセルロースを使用する特定の一実施態様では、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、それぞれ約8:2:90%の相対割合で存在する。
エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールの適切な供給源はEmulfree(登録商標)P(Gattefosse)である。
【0021】
好ましい実施態様では、油性相はエチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコール、及び油性剤としてカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドの混合物を、場合によっては更なる油性剤と共に含有する。典型的には、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、一緒に合わせた場合、最終のバイゲルの約1−10%、好ましくは1−9%、2−8%、又は2−7%、最も好ましくは約3%、4%又は5%又は6%で存在する。また好ましくは、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、上で検討した相対割合で存在している。また、典型的には、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドの混合物は、最終バイゲルの10−30%で、好ましくは最終バイゲルの15−25重量%、より好ましくは約20重量%で存在する。
【0022】
一実施態様では、オレオゲルを提供する工程(a)はオレオゲルを作製することを含みうる。オレオゲルの製造は、当業者にはよく知られており、 オレオゲルは典型的には上述の成分を使用して製造される。オレオゲルを製造する方法はまた実施例に記載する。
好適な油性ゲルの調製はまたEP0356325Blに記載され、その関連部分を出典明示によりここに援用する。
一実施態様では、油性相は、一定の撹拌をしながら窒素下で120−150℃でエチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールを組み合わせることによって製造できる。好ましくは、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、上で検討した相対割合で組み合わされる。撹拌後、 混合物を室温まで冷却させ、実施例に記載している様に、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド混合物のような油性剤と組み合わせる。
【0023】
ある好適な実施態様では、油性相はゲルというよりむしろ粘性のある液体の形態である。しかしながら、油性相の粘度は、油の滑動効果のため、一般的なシステム(シリンダー又はコーンプレート)で評価することは困難であるので、油性相の実際の粘度は通常は測定されない。しかしながら、当該分野で理解されるように、油性相の粘度の変動は視覚か感触によって決定できる。
該方法は、必要な場合、油性相の粘度を、工程(c)においてそれを水性相と混合する前に調節することを含みうる。典型的には、粘度の調節は好ましくは50℃以下の温度まで油性相を加熱することによって実施されるが、当該分野でよく知られているような他の適切な方法も用いてもよい。
流体の流れのメカニズムが単純である液体及び溶液の場合、粘度は、液体がガラス毛細管を流れ落ち、2点間で時間が計られるオストワルド粘度計によって精確に決定することができる。毛細管フロー法には多くの変形例があるが、その中でもフローカップ法が混合プラントで使用される速く単純な方法である。
【0024】
単純な流動特性を有していない液体の場合、回転法、回転シリンダ又はプレートに基づく粘度計が使用される。ここで、一又は複数の回転面の間に配される液体には剪断力がかけられ、その剪断力に対する液体の抵抗が測定される。更なる有用な情報は、試験下の液体が異なった剪断速度で如何に挙動するかを研究することによって得られる。これは、使用の際又はその容器から分配している間に機械的作用を受けることになる調製物の開発の際に特に貴重である。例えば、非ドリップエマルション塗料は、ゲル表面に対して移動する塗料ブラシがつくる剪断力の下に置かれるときに粘度を減少させるゲルである。かかる調製物では、単純な粘度の測定を遙かに超えた流動特性を研究することが必須である。粘度の測定のための広く使われている回転式方法は、ブルックフィールド粘度計である。この計測器は、剪断を連続的に実施させることができ、よって異なった剪断速度での異なった条件の研究を可能にする。懸濁液、ペースト及びゲルの粘度は、ブルックフィールド粘度計(モービル)又はレオマット粘度計(同軸シリンダ)によって一般に決定される。
【0025】
粘度を測定するための更なる方法は、Lamy VRM−08粘度計(レオマットR180と等価)を使用することである。Lamy VRM−08は、100Pa.s.を越えるものを含むより粘性の組成物を測定する場合MS DIN1.3モジュールと組み合わせて使用される一方、MS DIN1.9モジュールが粘性の低い組成物に使用され、3mPa.s.と低い粘度を測定することができる。別の記載をしない限り、本発明における全ての粘度測定は23℃で適切なMS DINモジュールと共にLamy VRM−08を使用してなされる。0.8のs−1の剪断応力が典型的に使用され、30秒後に測定がなされる。
【0026】
水性ゲル(水性相としても知られる)は、その粘度が本発明に係る方法で調節される少なくとも一つの成分を含む。好ましい実施態様では、粘度は、所望の粘度のバイゲルを得るために高流量及び低剪断混合下でバイゲルのpHを調節することによって調節される。しかしながら、粘度を調整する他の方法も当業者に知られており、例えば塩又はイオン濃度を変えるような他の因子によって粘度が調整されうる増粘剤の使用が含まれる。粘度がイオン又は塩(例えば塩化ナトリウム)に依存性であるある増粘剤は当業者に知られている。
好ましくは、粘度を調整するために、組成物は、その粘度がpH依存性であり、pHが適切に調整されるとゲル化剤として作用する少なくとも一の成分を含んでなる。適切な成分には、現在カルボマーとして知られているカルボポール(Carbopol)(登録商標)、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。カルボマーが好ましい。
カルボマーは、カルボポール(登録商標)として知られているポリマーのファミリーの一般名である。カルボマーはアクリル酸のホモポリマーにペンタエリトリトールのアリルエーテル、スクロースのアリルエーテル又はプロピレンのアリルエーテルを架橋させたものである。グループとして、それらは高バルク密度の乾燥粉末であり、酸性水溶液(pH約3.0)を形成し、より高いpH(約5又は6)で増粘する。それらはそれらの原容積の1000倍もそのpHの水溶液中で膨潤し、それらの溶液は0から80000センチポアズ(cP)の範囲の粘度になりうる。カルボマーの幾つかの例を表1に列挙する。
【0027】

表1に列挙した粘度は、出典明示によりここに援用されるNoveonTMカルボポール(登録商標)ポリマーの製品仕様書から取ったもので(http://www.pharma.noveoninc.com/literature/specs/specsCarbopol.asp)"、各々、他の記載がない限り、中和された0.5%分散体を使用して25℃で20rpmでブルックフィールド粘度計を使用して測定したものである。
【0028】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)は、その粘度をpH7−9に維持する;しかしながら、粘度は、pH4以下及びpH10以上で劇的に減少し、少なくともこれらのpH変化の範囲内で、その粘度がpH依存的である成分であるとまた考えられる。しかしながら、CMCが、カルボマー程は好ましくなく、典型的には、所望の活性医薬成分(API)がカルボマーと適合性がない場合に使用される。カルボキシメチルセルロースを含んでいる組成物の濃度と粘度間の関係は当業者に知られている(例えば、Hercules社 Technical Bulletin VC-453C(2001) "Rheology of Aqualon Water- Soluble Polymers in Solution"、特にその中の図4を参照 (出典明示によりここに援用するhttp://www.herc.com/aqualon/pharrn/index.html))。
水性相に含まれうる他のゲル化剤は、ポロキサマー(プルロニック(登録商標))、アカシア、アルギン酸、ベントナイト、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウムゼラチン(Veegum(登録商標))、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、及びキサンタンガム、及びそれらの混合物から好ましくは選択される。
【0029】
カルボキシメチルセルロースを除くと、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)は、広いpH範囲(3−11)にわたってそれらの粘度を維持し、粘度がpH依存性である成分であるとは考えられない。
ポロキサマー(プルロニック(登録商標))は、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンのコポリマーである。それらは、15%から50%の範囲の濃度の熱可逆ゲルを形成する。これは、それらが冷えた(冷蔵庫)温度では液体であるが、室温又は体温ではゲルであることを意味している。ポロキサマーコポリマーは、冷水中に分散するか又は一晩0−10℃に冷却された場合に透明な液体を形成する白色のロウ状の顆粒である。ある実施態様では、増加した温度でゲル化するという性質は、バイゲルの所望の最終粘度を得るためにpHとよってカルボマーの粘度を増加させる前に、油性ゲルと混合するための所望される粘度の水性ゲルを得る際に利用されうる。
【0030】
カルボポール(登録商標)934P、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムは、経口投与のために好ましい。
典型的には、その粘度が変化し、簡便にはpH依存性であるゲル化剤は、製造されるバイゲルの所望の粘度及び他の性質に応じて、水性ゲルの約0.1から約30重量%、好ましくは0.5から25%、あるいは約0.5%から20%の割合で存在する。
好ましくは、その粘度が変化し、簡便にはpH依存性であるゲル化剤は、バイゲルの約0.3から約5重量%の間の割合、例えば次のおおよその割合の何れかで存在する:製造されるバイゲルの重量の0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、又は2.5−3%、3−3.5%、3.5−4%の間、又は4.5−5重量%の間。
より詳しくは、水性ゲルのための粘度がpH依存性であるゲル化剤は、製造されるバイゲルの全重量に対して約0.1から約5重量%、好ましくは0.4から2重量%の割合で存在するカルボマーカルボポール974又はカルボポール980NFでありうる。
【0031】
一実施態様では、水性ゲルを提供する工程(b)は、水溶性のゲルを作製することを含みうる。水性ゲルの製造は当業者によく知られており、水性ゲルは典型的には上述の成分を使用して製造される。水性ゲルを製造する適切な方法は、以下の実施例に記載する。典型的には、水性相は、剪断ミキサーを使用して混合することによって、形成される。
該方法は、水性相の粘度を、それを工程(c)において油相と混合する前に測定することをまた含みうる。
本発明者等は、少なくともバイゲルのパイロットスケール又は大規模な調製に対して、水性ゲル相があまりに粘性であるならば、相を工程(c)で互いに混合するときに油性相は適切には導入されず、最適なバイゲルは得られない。同様に、水性ゲル相が十分に粘性ではないならば、油性及び水性相が、相を混合する場合、適切には導入されず、最適なバイゲルは得られない。
換言すれば、バイゲルのパイロットスケール又は大規模な形成では、水性相が油性相と混合される段階では、水性相に対して最適な粘度範囲がある。(油性相が水性相と混合される段階では油性相に対しても好ましい粘度範囲がありうるが、これはそれ程重要ではないと思われる。工程(c)における油性相との混合前では、水性相の好ましい粘度は約100から約1000のmPa.s(cp)の範囲である(0.8s−1の剪断応力下で23℃でMS Din1.9モジュールと共にLamy VRM−08を使用して測定)。
【0032】
該方法は、必要ならば、水性相の粘度を、工程(c)においてそれを油性相と混合する前に調節することを含みうる。典型的には、粘度調整は水相を50℃以下の温度まで好ましくは加熱することによって実施されるが、当該分野で知られているような他の適切な方法も使用されうる。
一実施態様では、混合目的のために好適な粘度を得るには、水性相を、それが工程(c)において油性相と混合される前に部分的に前もって中和させることができる。しかしながら、疑義を避けるために、本発明の方法は、所望の粘度のバイゲルを得るために高流量低剪断撹拌を使用してバイゲルのpHを調整する更なる工程(d)をなお必要とする。
水性ゲルの重量に対するオレオゲルの重量の比は、約10:90から約90:10、好ましくは30:70から70:30、より好ましくは40:60から60:40の間でありうる。選択される実際の比は、特に水性相から高いバイオアベイラビリティがあるので、各相に存在している活性成分に、また達成されるバイゲルの所望の物理的特性に典型的には依存する。例えば、油の割合が高くなればなるほど、バイゲルに対して油性感が高くなる。
【0033】
オレオゲルと水性ゲルを共に混合する工程(c)は、典型的には、実質的に均一な外観の混合物が得られるまで、油性相を水性相中に導入することを含む。換言すれば、工程(c)は、低粘度で実質的に均一の外観の均質なバイゲルを製造することを含む。あるいは、実質的に均一な外観の均質な混合物が得られるまで、水性相を油性相に導入することができる。
特に水性ゲルがカルボマーを含む場合、オレオゲルと水性ゲルが一緒に添加され、典型的には約15−25分にわたって高速、例えば1600−3000rpmで混合される。場合によって、混合は、好ましくは減圧下で、添加が完了した後、更に15−25分間、維持されてもよい。この段階で混合物は中和されていないので、ポリマーカルボマーゲルマトリックスがまだ十分には形成されておらず、よって高速混合はポリマーゲルマトリックスを破壊しない。適切には、高速タービンミキサー、例えばTrimix(登録商標)タイプのミキサー(Rayneri)を使用することができる。あるいは、実施例に記載するように、水性相への油性相の導入は、中速(20から35rpm)のプラネタリーミキサーと共にローター/ステータータイプのディスパーザーホモジナイザーを有する50LのOLSA MPEFを3000rpmで使用して実施することができる。
本方法を実施するための他の操作条件は当業者の通常の技量の範囲にある。
【0034】
上述の如く、発明者は、水性ゲルがあまりに増粘されている場合、二相が大規模で互いに混合されるときに油相が最適には取り込まれず、最適なバイゲルが得られないことに気がついた。水性ゲルのpHを調整することによりそれをより粘性にするので、パイロットスケール及び大規模な製剤化では、pH調整は水性ゲルをオレオゲルと混合した後に実施され、バイゲルの所望のレベルへの増粘化が達成される。よって、典型的には、高流量及び低剪断撹拌/混合下でバイゲルのpHを調整する工程(d)は、所望の粘度が達成されるまで、工程(c)において形成されるバイゲルの粘度を上昇させる。このため、低剪断工程(d)は所望の粘度のバイゲルを提供するために十分に低い剪断力で実施される工程を理想的には含みうる。工程(d)が余りに高い剪断力下での混合で実施されるならば、得られるバイゲルは、その粘度がpH依存性である成分によって形成されるマトリックスの過剰な破壊のため、余りに低い粘度を有しうる。
所望の粘度のバイゲルを得るために高流量及び低剪断撹拌下でバイゲルのpHを調節する工程(d)は、特に比較的酸性の混合物のpHが中性pHの方へ増加される場合に、中和工程であると考えることができる。
【0035】
高流量撹拌又は混合は当該分野でよく知られており、当業者は高流量撹拌と低流量撹拌の差異を理解している。例えば、IKA(登録商標)技術刊行物「Mixing and Processing Technology」(2003)は、多くの混合装置を記述しており、様々なサイズのミキサーに対する公称流量の詳細を提供する(http://www.ikausa.com/pdfs/2003_Process_Catlog2.pdf)。ウルトラTurrax(登録商標)UTL2000/...2Pシリーズは、高流量混合ツールとして記載され、最も大きな体積を有しているUTL2000/50 2Pで1500gpm/340000l/h(流体の性質及び補助ポンプに応じて+25%)の公称流量を有していると記載されている。(この場合、gpmは1分当たりのUSガロンを意味する)。このIKA(登録商標)技術刊行物に記載された他のミキサーは低い流量のものである。
中和剤を加えながら高流量とすることは、薬剤をバイゲルを通して急速かつ常に広げ、均一なpHの混合物が可及的速やかに得られる。
【0036】
「低剪断」撹拌又は混合には非剪断撹拌又は混合が含まれる。低剪断撹拌は当該分野でよく知られており、当業者は高剪断撹拌と低剪断(非剪断)撹拌の差を理解している。低剪断撹拌は、バイゲルのゲルマトリックスを有意には破壊しないでバイゲルを混合する非破壊的プロセスを意味する。
よって、所望の粘度のバイゲルを得るために高流量低剪断混合下でバイゲルのpHを調節する工程(d)は、バイゲルのゲルマトリックスを破壊しないで均質な混合物をもたらす混合条件下で、つまりバイゲル中のゲル化剤のポリマー鎖を有意には破壊しない混合条件下で混合物のpHを迅速に調節することを含むと考えられうる。高流量低剪断撹拌に対する更なる情報については、Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology 2版, 2002, Swarbrick & Boylan編, Marcel Dekker, ISBN0-8247-2825-4及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy 19版, 1995, 86章, 1495-1523頁を参照のこと。
【0037】
一実施態様では、所望の高流量及び低剪断混合条件は、ミキサーの組合せを使用して得ることができる。例えば、低流量及び低剪断プラネタリー又はゲートミキサー、例えば約60rpmの最大速度に設定されたHobart又はKenwoodによって販売されているものを、約1500rpmの速度に設定されたシルバーソン(Silverson)型ミキサーのような、中から高流量のハイシアー(高剪断)ミキサーと組み合わせて使用することができる。プラネタリーミキサーは典型的には10から60rpm、より好ましくは30から55rpmの速度で使用される一方、シルバーソン型ミキサーは、典型的には約1500rpm(+/−20%)のその低速設定で使用される。ハイシアーミキサーと組み合わせたプラネタリーミキサーによって生成される更なる流れでは、中和剤をカルボポールゲルマトリックスの余りに多くの分解なしにゲルに導入することができる。これは、300000cP(実施例において特定した粘度測定法を使用)より大きい粘度及び一定の安定なゲルマトリックスを有するゲルを生じうる。
【0038】
実施例1の表4及び5に示されているように、Naメチルパラベンの添加は混合物のpHを約3.9にまで上昇させ、粘度をかなり増加させた。高流量及び低剪断混合条件下で全体で55分の期間、NaOHで約pH4.95−5.0へ更に中和させることにより、製造されるバイゲルの粘度を30−40%減少させた。従って、高流量及び低剪断混合には、我々は、55分の期間にわたってNaOHで約pH3.9からpH4.9まで中和させるときに30−40%以下の粘度の減少を生じる条件を含める。典型的には、55分の期間にわたってNaOHで約pH3.9からpH4.9まで中和させる場合、少なくとも40%、又は少なくとも50%又はそれ以上の粘度の減少が生じる条件は、高流量及び低剪断混合ではない。
よって、「高流量及び低剪断混合」には、我々は、上記の条件下でプラネタリー型ミキサーとハイシアーミキサーの組合せを使用して得られるものに均等な流量及び剪断条件下での混合の意味を含める。
【0039】
他の実施態様では、単一のミキサーが、所望の高流量及び低剪断条件を得るために使用される。例えば、高流量及び低剪断のタービン又はYstral(登録商標)ミキサー(例えばYstral Jetstream)を、約15000rpm(+/−20%)の典型的な運転速度で使用することができる。Ystral Jetstreamは非常に低い剪断を有しており、非剪断ミキサーであると考えてもよいことが理解される。これにより、カルボポールゲルマトリックスの分解なしにバイゲル中に中和剤を完全に導入することになり、400000cPを越える粘度(実施例において特定した粘度測定法を使用)を有する増粘性ゲルマトリックスを有しうるバイゲルが得られる。
よって、「高流量及び低剪断混合」には、我々は、12000から18000rpmの運転速度でYstral Jetstreamミキサーを使用して得られたものに等価である流量及び剪断条件下での混合の意味を含める。
【0040】
pH調整又は中和段階は、生成物中への空気の取込みを防ぐために減圧下で実施されるのが好ましい。
pH調整又は中和段階は、1、2、3又はそれ以上の別個の段階として実施されうることが理解される。よって、実施例に詳細に記載される製造方法において、第一中和工程は、メチルパラベンナトリウム溶液の添加を含み、第二及び第三中和工程は水酸化ナトリウム溶液の添加を含み、これらの段階の各々は、高流量及び低剪断混合を使用して実施された。
カルボマー(例えばカルボポール(登録商標))を含む組成物のpH及び粘度の関係は、カルボマーの濃度、そのpH及び粘度の関係のように、当業者に知られている。
【0041】
例えば、NoveonTM医薬用ポリマーブレティン第11号(2002)"Thickening Properties"、(http : //www.pharma.noveoninc. com/literature/ bulletin/epb 11.pdf)は様々な濃度での多くのカルボポール(登録商標)ポリマーのpHと粘度の関係を記述している。図11.1.1から11.1.7及び表11.2.1は、10%のNaOH又は50%のトリエタノールアミンで中和されたカルボポール940NF、カルボポール934NF及びカルボポール941NFの0.2%、0.5%及び1.0%溶液の粘度に対するpHの効果を示しており;図11.2.1から11.2.3は異なった濃度での様々なカルボポール(登録商標)ポリマーの増粘効果を示しており;図11.3.1から11.3.3は粘度に対する塩化ナトリウムのような塩の効果を示している。この報告書に与えられた粘度は20rpmで測定されるBrookfield粘度であり、温度は特定されていないが、NoveonTMカルボポール(登録商標)製品仕様書では25℃の温度が特定されている。とにかく、図11.6.1は、カルボポール(登録商標)ポリマーの粘度が比較的温度に影響を受けず、より高温で僅かに減少することを示している。カルボポール(登録商標)ポリマーの増粘性に関するNoveonTM医薬用ポリマーブレティン第11号の全開示を出典明示によりここに援用する。
【0042】
当業者は、自身の日常的な技量と能力と共に、NoveonTM医薬用ポリマーブレティン第11号に含まれる情報に基づいて、その意図される用途に適した所望の最終pHと所望の最終粘度のバイゲルを得るために必要とされるゲル化剤(特定のタイプ及び濃度)及びpH調節剤(タイプ及び濃度)の適切な組合せを容易に決定することができる。
pH調整工程の結果として達成される粘度は、バイゲルの意図され用途に依存する。例えば、「シャワーゲル」は典型的には1000−20000cP(1−20Pa.s)の範囲内の粘度を有し、ローションは典型的には1000−30000cP(1−30Pa.s)の範囲内の粘度を有し、クリーム及び軟膏は30000cP(30Pa.s)を越え、好ましくは80000cP(80Pa.s)を越える高い粘度を有する。適切なクリーム又は軟膏は、典型的には、0.8s−1の剪断応力で23℃の温度にて適切なMS DINモジュールを使用してLamy VRM−08粘度計を使用して測定して、30000−150000cP(30−150Pa.s)の範囲内、より好ましくは80000−140000cP(80−140Pa.s)又は90000−120000cP(90−120Pa. s)の範囲内の粘度を有する。
よって、所望の粘度のバイゲルを得るためにバイゲルのpHを調整する工程(d)は、当該分野でよく知られているように、クリーム又は軟膏としての使用のための適切な粘度のバイゲルを得るために混合物のpHを調整することを含むものと考えることができる。
【0043】
所望の感触と粘度を有する実施例に記載されたようにして製造されたバイゲルクリームの粘度は、0.8s−1の剪断応力で23℃の温度にてMS DINモジュール1.3を使用してLamy VRM−08粘度計を使用して測定し、30秒後に117000mPa.s(cP)±5000の測定値を与えた。従って、一実施態様では、本発明に従って製造されるバイゲルクリームの好ましい粘度は、これらの条件下で測定したとき、95000−140000mPa.s.、より詳しくは112000−122000mPa.s.である。
同様に、所望の感触と粘度を有する以下の実施例に記載されたようにして製造されたバイゲルクリームの4バッチの粘度は、25℃の温度で0.5rpmでBrookfieldモービルB粘度計を使用して測定して、340000から380000mPa.s(cP)の測定値を与えた。従って、一実施態様では、本発明によって製造されるバイゲルクリームの好ましい粘度は、これらの条件下で測定したとき、300000−420000mPa.s.、より詳しくは340000−380000mPa.s.である。
【0044】
バイゲルの最終pHはその意図された用途に依存することがまた理解される。例えば、ヒトの皮膚は約6から6.5のpHを有し、膣は約3.5から4のpHを有し、眼は約7のpHを有し、口腔は約6.5のpHを有している。バイゲルは意図された標的領域の生理学的pHに近いpHを有しているのが明らかに好ましい。同様に、バイゲルは、バイゲル中に存在している薬剤又は他の活性成分の活性と適合性であるpHを有しているのが好ましい。カルボポール(登録商標)ポリマーはpH5から10の間で平坦な粘度安定状態に達する傾向があるので、所望の粘度と、その意図された使用に適切なpHを有するバイゲルを得ることが一般に可能である。
よって、所望の粘度と所望のpHを有するバイゲルを得るために水性相におけるゲル化剤のタイプと量を決定することは当業者の常套的技量の範囲内のものである。
【0045】
所望の粘度を有するバイゲルを製造するためにバイゲルの粘度を測定することは必ずしも必要ではないことが理解される。例えば、バイゲルがローション又はクリーム又は軟膏として使用するために適した粘度を有しているかどうかは感触によって決定することができる。また、一旦所望の粘度を有するバイゲルを製造するための成分及び条件が決定されたならば、同じ手順に従うことによってその特定の粘度を有するバイゲルを再び製造することは可能である。
pH調節工程は、pHを、約pH3−3.5、又はpH3.5−4、又はpH4−4.5、又はpH4.5−5、又はpH5−5.5、又はpH5.5−6、又はpH6−6.5、又はpH6.5−7、又はpH7−7.5、又はpH7.5−8、又はpH8−8.5m又は約pH8.5−9の間に調節することを含みうる。
適切なバイゲルは4.9から6のpHで形成され、幾つかの用途では、バイゲルの理想的なpHはpH5付近である。
【0046】
ヒトへの局所用途のためのバイゲル製剤では、pH調整工程は、中和工程でありうる。「中和」には、我々は、pHを約pH7にする意味を含む。我々はまたこの値に必ずしも達しなくとも、バイゲルのpHをpH7の方へ持って行くことを含む。
エチルセルロースベースのカルボマーは強酸性であり、最終pH調整/中和工程より前のバイゲルのpHは水性相中に存在するカルボマーの割合の結果であり、当業者により算出され又は測定されうる。
典型的には、所望の粘度のバイゲルを得るためにバイゲルのpHを調整する工程(d)は、しばしば中和剤と称される一又は複数のpH調節剤を加えることを含む。適切なpH調節剤は、メチルパラベンナトリウム、ソルビン酸、水酸化ナトリウム、アミノメチルプロパノール、EDTAナトリウム、HCl、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及び幾つかの水溶性有機アミン、例えばトリエタノールアミン(の溶液)を含む。無機塩基が溶液のpHを調整するために使用される場合、安定な水溶性ゲルが形成される。トリエタノールアミンが使用される場合、ゲルは高アルコール濃度に耐えうる。
【0047】
pH調節剤の選択は、水性相の性質に依存しうる。例えば、水性相が緩衝された場合、pHを減少させることが必要ならば、リン酸のような適切な酸を用いることが必要な場合がある。
メチルパラベンナトリウム及びソルビン酸のような幾つかのpH調節剤は、保存料としてバイゲル中に含めることもできる。よって、例えば、該方法は、油性及び水性相の混合後に、バイゲル組成物にメチルパラベンナトリウムを加えて、保存料及びpH調節剤の双方として作用させてもよい。一実施態様では、メチルパラベンナトリウムの添加後に、pHが依然として5以下で、所望のpHがより高い場合には、水酸化ナトリウムをまた使用することができる。あるいは、NaOHを唯一のpH調節剤として使用してもよい。
一実施態様では、該方法は、テクスチャー剤、抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)又はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、染料/色剤又は香料を含むゲル、クリーム及び軟膏のための一又は複数の標準的な成分を加えることをまた含む。それらは、混合前にオレオゲル又は水性ゲルに加えることができ、あるいは相が組み合わされた後にバイゲルに添加される。
【0048】
加えることができる他の成分には、抗菌性保存剤、例えばメチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビン酸及びジメチロールジメチルヒダントイン(Glydant XL1000)が含まれる。好ましくは、これらは、最終バイゲル組成物の重量の約0.01から0.5%で含められ、適切には、重量で約0.01から0.05%、0.05から0.1%、0.1から0.2%、0.2から0.3%、0.3から0.4%及び0.4から0.5%のレベルで使用されうる。
本発明の方法によって製造されるバイゲルが医薬組成物としての使用を目的とするときには、バイゲルは少なくとも一の活性医薬成分(API)を含む。活性成分は、オレオゲル及び水性ゲルの一方又は双方に加えることができる。
バイゲルはまた油性相に活性成分を、水性相に第二の活性成分を含んでもよく、該2つの活性成分は互いに適合性がない。「非適合性活性成分」には、我々は、化学的に又は治療的に望ましくない方法で一緒に反応することが可能である活性成分を含む。非適合性活性成分がバイゲルの油性相又は水性相にそれぞれ主として可溶性である限り、その投与前の非適合性活性成分間の有害反応は回避されうる。
【0049】
バイゲルの粘度は、典型的には水性ゲル相中において、又は好ましさは劣るがオレオゲル相中においてゲル化剤の割合を適合化させることによってバイオゲルの意図された投与経路に適した値に調整されうることは理解される。
例えば、その生物分解可能な性質が与えられると、バイゲル組成物は注射剤として投与されうる。よって、困難な条件で注射され、及び/又は特別な投与条件下でのみ、例えば抗体形成を改善する不完全フロイントアジュバント(モノオレイン酸マンニドからなる外部油性相に内部水性相が分散してなる混合物(Arlacel A))のような特別な媒質中で有効なことが知られているアレルゲン又はワクチンを注射することができる。不完全フロイントアジュバントは、しかしながら、部位並びに注射されたアジュバントの質と量に応じて深刻で痛みがありうる慢性炎症反応を引き起こすので、部位注射で深刻な炎症性副作用を引き起こす。炎症反応は、慢性肉芽腫、無菌の膿瘍、及び/又は潰瘍性組織壊死の形成を生じうる。これに対して、バイゲルは、免疫応答を補助し、抗体形成を刺激する際には同じ有益な性質を有しうるが、このような炎症性副作用はない。
【0050】
ある種の意図された用途、特に局所投与の目的では、バイゲルは、オレオゲル及び水性ゲル中に同じ活性成分を含むことができる。これは、発明者が、バイゲルからの皮膚中への活性成分の放出プロファイルが、適用される組成物の与えられた容積及び組成物の全重量に対する活性成分の与えられた濃度に対して、一つのタイプの油性又は水性のゲルだけに基づく組成物で得られるものよりもかな良好であることを見出したからである。これは、経皮放出系における活性成分貯蔵部としてバイゲルを使用する際に特に有益である。皮膚では、水性ゲル相に溶解した活性成分は表皮層によって速やかに取り込まれ、それによって経皮通過を素早く開始させる。オレオゲル相中の活性成分は、先ず、その油/水分配係数の関数として、表皮層に侵入するために水性ゲル相に入らなければならない:よって、オレオゲル中のこのフラクションは、水性ゲル相に溶解された活性成分が放出された後、大きな遅延を伴って放出される。
【0051】
医薬用途のためにバイゲルに含まれうる適切な活性成分は、アレルゲン及びワクチン、良好な耐性を維持しながら、徐放性を必要とするホルモンのような物質、皮膚科学的に活性な成分、抗菌剤、癌化学療法剤、抗炎症剤及び創傷修復剤、並びに以下に列挙する薬剤の任意のものを含む。
好ましい実施態様では、バイゲルは、一又は複数のホルモン、例えばβ−エストラジオール、プロゲステロン及びテストステロンを含みうる。
好適には、エストラジオール(又は他のエストロゲン)、プロゲステロン及び/又はテストステロンは、バイゲルの全重量に対して、0.5から2.5重量%、より好ましくは、0.5から1.5重量%でバイゲル中に存在しうる。一実施態様では、1%製剤は好ましい。
典型的には、エストラジオールは、オレオゲル中に、好ましくはオレオゲルの全重量に対して、0.1から約5重量%の割合で含められる。典型的には、プロゲステロンは、水性相中に、好ましくは水性ゲルの全重量に対して、約1から約6重量%の割合で含められる。テストステロンは、オレオゲル及び/又は水性ゲル中に含めることができる。好ましくは、オレオゲル中のテストステロンの割合は、オレオゲルの全重量に対して、約0.1から6重量%であり、水性ゲル中のテストステロンの割合は、水性ゲルの全重量に対して約1から10重量%である。
【0052】
同様に、少なくとも一のコルチコイド又はコルチコイド誘導体がオレオゲル及び水性ゲル中に存在していてもよく、オレオゲル中のコルチコイド誘導体の割合は、油性相の全重量に対して、約0.001から約3重量%であり、水性ゲル中のコルチコイド誘導体の割合は水性相の全重量に対して、約0.001から約3重量%である。「コルチコイド誘導体」には、我々は、コルチゾン、11−オキシコルチコステロイド、特にヒドロキシコルチゾンを含むコルチコイドの任意の構造的、天然、又は合成誘導体の意味を含む。
【0053】
当業者にはよく知られているように、適切な抗微生物剤は、抗菌剤、抗真菌剤及び抗ウィルス剤を含む。抗菌剤は、例えば天然及び合成ペニシリン及びセファロスポリン、スルホンアミド、エリスロマイシン、カナマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシンを含み、またこれに限定されるものではないが、ゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジルペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシメチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、塩酸バカンピシリン、シクラシリン、メズロシリン、ピバンピシリン、塩酸タランピシリン、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン(pirmecillinan)、セファクロル、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、セフピロム、ラタモキセフ二ナトリウム、アズトレオナム、グリシルシクリン、クロルテトラサイクリン塩酸塩、クロモサイクリンナトリウム、デメクロシジン(demeclocydine)塩酸塩、ドキシサイクリン、リメサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、フラマイセチン硫酸、ネオマイシン硫酸、ネチルマイシン、トブラマイシン、コリスチン、フシジン酸ナトリウム、フピロシン(fupirocin)、ポリミキシンB硫酸、スペクチノマイシン、バンコマイシン、タイコプラニン、スルファロキシ酸(sulphaloxate)カルシウム、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファ尿素、カプレオマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、コリスチメタート、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジキシン酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、シクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオナミド、ピラジナミド、メロペネム及びイミペネムなどを含み;抗真菌因剤は、例えばミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンフォテリシン、フルシトシン、グリセオフルビン、ナタマイシン、ナイスタチンなどを含み;抗ウィルス剤は、例えばアシクロビル、AZT、ddI、塩酸アマンタジン、イノシンプラノベクス、ビダラビンなどのような薬剤を含む。
【0054】
適切な癌化学療法剤は、次のものを含む:アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン(HN)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)及びクロランブシル;エチレンイミン及びメチルメラミン、例えばヘキサメチルメラミン、チオテパ;アルキルスルホナート、例えばブーサルファン;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチルCCNU)及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン);及び、トリアゼン、例えばデカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾール−カルボキサミド);抗代謝物、例えば葉酸アナログ、例えばメトトレキセート(アメトプテリン);ピリミジンアナログ、例えばフルオロウラシル(5‐フルオロウラシル;5−FU)、フロキシウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)及びシタラビン(シトシンアラビノシド);及びプリンアナログ及び関連阻害薬、例えばメルカプトプリン(6‐メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)及びペントスタチン(2'−デオキシコホルマイシン)。天然産物、例えばビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチン;エピポドフィロトキシン、例えばエトポシド及びテニポシド;抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン(マイトマイシンC);酵素、例えばL−アスパラギナーゼ;及び生体応答調節剤、例えばインターフェロンアルフェノーム(alphenomes)。種々の薬剤、例えばプラチナ配位錯体、例えばシスプラチン(cis−DDP)及びカルボプラチン;アントラセンジオン、例えばミトキサントロン及びアントラサイクリン;置換尿素、例えばヒドロキシ尿素;メチルヒドラジン誘導体、例えばプロカルバジン(N−メチルヒドラジン(MIH);及び副腎皮質抑制剤、例えばミトタン(o,p−DDD)及びアミノグルテチミド);タキソール及びアナログ/誘導体;及びホルモンアゴニスト/アンタゴニスト、例えばフルタミド及びタモキシフェン。
【0055】
本発明で用いることができる更なる活性剤は、局所的又は全身的効果の何れかのために皮膚上に又は皮膚を通して送達されうるあらゆる薬剤を含む。これらの化合物は、主要な治療領域全ての薬剤、例えば限定するものではないが、ACE阻害薬、下垂体前葉ホルモン、アドレナリン作動性ニューロン遮断剤、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ステロイドの生合成の阻害薬、αアドレナリン作動性アゴニスト、αアドレナリン作動性アンタゴニスト、選択的α−2−アドレナリンアゴニスト、鎮痛剤、解熱薬及び抗炎症剤、アンドロゲン、局所及び全身麻酔薬、抗依存性薬剤、抗アンドロゲン物質、抗不整脈性薬剤、抗気管支喘息治療剤、抗コリン作用薬、抗コリンエステラーゼ薬、抗凝血物質、抗糖尿病薬、止痢薬剤、抗利尿性、抗嘔吐性及び運動促進剤、抗てんかん作用剤、反エストロゲン、抗真菌剤、血圧降下薬、抗微生物薬、反片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗新生物剤、駆虫薬、抗パーキンソン剤、抗血小板剤、抗プロゲスチン、抗甲状腺剤、鎮咳薬、抗ウィルス剤、非定型抗うつ薬、アザスピロデカネジオン、バルビツール酸、ベンゾジアゼピン、ベンゾチアジアジド、β‐アドレナリン作動性アゴニスト、β‐アドレナリン作動性アンタゴニスト、選択的β−1アドレナリン作用性アンタゴニスト、選択的β−2−アドレナリン作動性アゴニスト、胆汁酸塩、体液の体積及び組成に作用する薬剤、ブチロフェノン、石灰化に影響を及ぼす薬剤、カルシウムチャネル遮断薬、心臓血管薬、カテコールアミン及び交感神経様作用薬、コリン作動性アゴニスト、コリンエステラーゼ再賦活薬、皮膚科用薬剤、ジフェニルブチルピペリジン、利尿剤、麦角アルカロイド、エストロゲン、神経節遮断薬、神経節刺激薬、ヒダントイン、胃酸度コントロール及び消化性潰瘍の治療のための薬剤、造血性薬剤、ヒスタミン、ヒスタミンアンタゴニスト、5‐ヒドロキシトリプタミンアンタゴニスト、高リポ蛋白血症治療薬、睡眠薬及び鎮静剤、免疫抑制剤、下剤、メチルキサンチン、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、神経筋遮断剤、有機硝酸塩、膵臓酵素、フェノチアジン、プロゲスチン、プロスタグランジン、精神医学的疾患の治療薬、レチノイド、ナトリウムチャネル遮断薬、痙性及び急性の筋けいれんのための薬剤、スクシンイミド、チオキサンチン、血栓溶解剤、甲状腺薬剤、三環系抗鬱薬、有機化合物の尿細管輸送の阻害薬、子宮運動性に作用する薬剤、血管拡張因子、ビタミンなどを含む。
【0056】
代表的な薬剤は、例えば、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレジピン(nitredipine)、ベラパミル、ドブタミン、イソプロテレノール、カルテオロール、ラベタロール、レボブノロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、エスモロール、メトプロロール、アルブテロール、ビトルテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、テルブタリン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオネート、ベタメタゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、コルチゾール、コルチゾン、コルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、11−デスオキシコルチコステロン、11−デオキシコルチゾール、デキサメサゾン、ジフロラゾン、フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ハイドロコルチゾン、メドリゾン、6α−メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、テトラヒドロコルチゾール、トリアムシノロン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、コカイン、ジブカイン、ジクロニン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン、テトラカイン、アルフェンタニル、クロロホルム、クロニジン、シクロプロパン、デスフルラン、ジエチルエーテル、ドロペリドール、エンフルラン、エトミデート、ハロタン、イソフルラン、塩酸ケタミン、メペリジン、メトヘキシタール、メトキシフルラン、モルヒネ、プロポフォール、セボフルラン、チアミラール、チオペンタール、アセトアミノフェン、アロプリノール、アパゾン、アスピリン、オーラノフィン、オーロチオグルコース、コルヒチン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、チオマレイン酸ナトリウム金、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メサラミン(meselamine)、サリチル酸メチル、ナブメトン、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェナセチン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸塩、サリチル酸、サルサラート、スルファサラジン、スリンダク、トルメチン、アセトフェナジン、クロルプロマジン、フルフェナジン、メソリダジン、ペルフェナジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、ジソピラミド、エンカイニド、フレカイニド、インデカイニド、メキシレチン、モリシジン、フェニトイン、プロカインアミド、プロパフェノン、キニジン、トカイニド、シサプリド、ドンペリドン、ドロナビノール、ハロペリドール、メトクロプラミド、ナビロン、プロクロルペラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、トリメトベンズアミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ジフェノキシラート、ドロコード、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボルファノール、ロペラミド、メプタジノール、メサドン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシブチニン、ペンタゾシン、二硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、テオフィリン、フェニルエフリン、エフェドリン(ephidrine)、ピロカルピン、フロセミド、テトラサイクリン、クロルフェニラミン、ケトロラク、ブロモクリプチン、グアナベンズ、プラゾシン、ドキサゾシン及びフルフェナム酸を含む。
【0057】
他の代表的な薬剤は、ベンゾジアゼピン、例えば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、デモキセパム、ジアゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム等;抗ムスカリン剤、例えばアニソトロピン、アトロピン、クリジニウム、シクロペントレート、ジサイクロミン、フラボキサート、グリコピロレート、ヘキソサイクリウム、ホマトロピン、イプラトロピウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メタンテリン、オキシフェンサイクリミン、ピレンゼピン、プロパンテリン、スコポラミン、テレンゼピン、トリジヘキセチル、トロピカミド等;エスロトゲン、例えばクロロトリアニセン、ジエチルスチルベストロール(siethylstilbestrol)、メチルエストラジオール、エストロン、エストロン硫酸ナトリウム、エストロピペート、メストラノール、キネストロール、硫酸ナトリウムエキリン、17β−エストラジオール(又はエストラジオール)、半合成エストロゲン誘導体、例えば天然エストロゲンのエステル、例えば、エストラジオール−17β−エナント酸エステル、エストラジオール−17β−吉草酸エステル、エストラジオール−3−安息香酸エステル、エストラジオール−17β−ウンデセン酸エステル、16,17−ヘミコハク酸エストラジオール又はエストラジオール−β−シピオン酸エステル、及び17−アルキル化エストロゲン、例えばエチニルエストラジオール、エストラジオール−3−イソプロピルスルホン酸エチニル等;アンドロゲン、例えばダナゾール、フルオキシメステロン、メタンドロステノロン、メチルテストステロン、ナンドロロンデカノエート、ナンドロロンフェンプロピオネート、オキサンドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、テストラクトン、テストステロン、テストステロンシピオネート、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン等;又はプロゲスチン、例えばエチノジオールジアセテート、ゲストデン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、プロゲステロン等を含む。
【0058】
特に好ましいものは、避妊ホルモンプロゲストーゲン、ノレチステロン、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル(norgestral)、チノロン、ジドロゲステロン、デソゲストロン(desogestrone)、ドロスピレノン、ゲストデン(gestrodene)、レボノルゲストレル、ノルエルゲストロミン及びノレチステロンである。
活性な薬剤が局所作用を生じる実施態様では、薬剤は、限定されるものではないが、(上に列挙した局所用薬剤に加えて)、抗ウイルス剤(例えばアシクロビル及びイドクスウリジン等)、抗真菌剤(例えばアンフォテリシンB、クロトリマゾール、ナイスタチン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ブタコナゾール(butocouazole)、ハロプロジン等)、抗生物質(ペニシリン、セファロスポリンエリスロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、アミノグリコシド、クロラムフェニコール、ポリミキシンb、バシトラシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン等)、消毒剤(例えばポビドンヨード、S塩化メチルベンゼトニウム等)、駆虫剤(例えばリンダン、アントラリン等)、鎮痛薬(例えばメチルサリチル酸塩、サリチル酸、ジクロニン、アロエベラ等)、局所麻酔薬(例えばベンゾカイン、リドカイン、キシロカイン、ブタムベン(butamben)ピクレート等)、抗炎症剤(例えばステロイド化合物、例えばデキサメサゾン、ベタメサゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、ハイドロコルチゾン、アルクロメタゾン、アムシノニド、ジフロラゾン等、並びに非ステロイド抗炎症剤)、かゆみ止め及び刺激減少化合物(例えば抗ヒスタミン剤、例えばジフェンヒドラミン及び乾癬治療剤);火傷軽減化合物(例えばo−アミノ−p−トルエンスルホンアミド、モノアセテート等);脱色剤(例えモノベンゾン);及びホルモン剤(例えばエストリオール)を含む。
【0059】
上に列挙した化合物を含むバイゲルに含めることができる化合物は、全ての薬学的に許容可能な塩及びコンジュゲートを含むことを意味する。
他の局所的に活性な化合物は、出典明示によりここに援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17版, Merck Publishing Co., Easton, Pa. (1985), 773-791頁及び1054-1058頁に列挙される。
また当該分野でよく知られているように、バイゲルは活性剤を、おそらくはカプセルによってコートして、小腸に送達させることを意図してもよいことが理解される。この実施態様では、バイゲルは腸への徐放のために生きている微生物を含んでいてもよい。
【0060】
意図された局所投与の場合、それがオレオゲル中に存在する活性な医薬成分と非適合性ではないならば、つまり、油性サンスクリーン遮蔽剤と医薬成分の間に化学的に又は治療的に望ましくない反応がないならば、上述の油性サンスクリーン遮蔽剤の少なくとも一種を含めてもよい。
典型的には、活性成分は、二相が互いに混合され、ついで中和される前に、上述の方法の工程(a)及び(b)において、オレオゲル及び/又は水性ゲルに提供されるか又は加えられる。これは、特に、少なくとも2つの相互に非適合性の活性成分が、一方がオレオゲルに他方が水性ゲルに、加えられる場合にしかりである。オレオゲルと水性ゲルの双方に活性成分を分配するように、攪拌しながらバイゲルに活性成分を加えることができることが理解される。
【0061】
当業者であれば、使用される活性成分の特性を考慮に入れ、可能な限り活性成分の性質に悪影響を与えないように、プロセスの操作条件、特に温度を適合させることを理解しているであろう。
よって、好ましい実施態様では、該方法はバイゲルを包装し医薬に使用するために提供することを更に含む。
医薬用途に対して上で列挙された成分のあるものは化粧品目的のバイゲルに含めてもよいことが理解される。同様に、化粧品用途に対して以下に列挙される成分のあるものは医薬目的を意図したバイゲルにまた含めてもよい。
化粧品目的のためのバイゲルの調製では、該方法は、少なくとも一種の化粧品的に活性な成分を添加することを含みうる。化粧品的に活性な成分は、美容効果を付与する任意の成分、つまり、ヒトの体の様々な部分(表皮、毛包及び髪系、爪、唇及び外部の生殖器)又は歯又は口腔の粘膜に接触させられると、組成物によって、専ら又は主として、それらを清浄にし、それらに香りを付与し、その外観を修正し、及び/又は体臭を矯正し、及び/又はそれらを保護し又はそれらを良好な状態に保つ任意の成分でありうる。
【0062】
化粧品的に活性な成分は、オレオゲル又は水性ゲル相の何れかに可溶性である保湿剤、サンスクリーン剤、抗フリーラジカル剤又は皮膚再生剤でありうる。有利には、上で説明されたように、浴用オイルのような化粧品のボディケアオイルによって課される課題が与えられた場合、化粧品的に活性な成分は、ボディケアオイル、より詳細には浴用オイル、例えばパーム油、ゴマ油又はアルガン油から選択されうる。従って、油性剤がまた化粧品的に活性な成分を構成しうることが理解される。使用される化粧品的に活性な成分のタイプに応じて、当業者は、化粧品用途のバイゲルの全重量に対してのその適切な割合を如何にして決定するかを知っている。
化粧品用途のために処方されるバイゲルに好適に含められうる更なる活性成分は、皮膚及び/又は毛髪に有益でありうるパーソナルケア活性物質を含む。適切な活性成分は、抗菌及び抗真菌活性物質、ビタミン、抗ざ瘡活性物質;抗シワ、抗皮膚萎縮及び皮膚修復活性物質;皮膚障壁修復活性物質;非ステロイド化粧品用鎮静剤;人工サンタン剤及び促進剤;皮膚明色化活性物質;サンスクリーン活性物質;皮脂刺激剤;皮脂阻害剤;抗酸化剤;プロテアーゼインヒビター;5-αレダクターゼ阻害剤;抗かゆみ成分;体毛成長抑制物質;5−αレダクターゼ阻害薬;落屑酵素エンハンサー;抗グリケーション剤;発汗抑制剤、局所麻酔剤、又はその混合物等から選択されうる。これらの活性剤は、水溶性活性剤、油溶性活性剤、その薬学的に許容可能な塩及び混合物から選択されうる。
【0063】
活性剤成分の安全で有効な量は、特定の活性剤、皮膚への浸透能、年齢、健康状態、及び予想される使用者の皮膚の状態、及び他の類似の因子に依存する。好ましくは、バイゲルは、重量で約0.01%から約10%、より好ましくは約0.05%から約5%、更により好ましくは0.1%から約5%、最も好ましくは0.1%から約2%の活性剤成分を含む。
抗ざ瘡活性物質は、尋常性座瘡、毛包脂腺卵胞の慢性疾患を治療するのに有効でありうる。有用な抗ざ瘡活性物質の例は、表皮剥離剤、例えばサリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)、サリチル酸誘導体、例えば5−オクタノイルサリチル酸及び4−メトキシサリチル酸、及びレゾルシノール;レチノイド、例えばレチノイン酸とその誘導体(例えば、シス及びトランス);硫黄含有D及びLアミノ酸及びそれらの誘導体及び塩、特にそれらのN−アセチル誘導体、それらの混合物等を含む。
【0064】
抗微生物及び抗真菌活性物質は、細菌及び真菌の増殖及び成長を防止するのに効果的である。抗微生物及び抗真菌活性物質の例は、θ−ラクタム薬、キノロン薬、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロバニリド(trichlorobanilide)、フェノキシエタノール、トリクロサン;トリクロカルバン;及びそれらの混合物等を含む。
抗しわ、抗皮膚萎縮及び皮膚修復活性物質は、表皮層を補充するか又は若返らせることに有効でありうる。これらの活性物質は、一般に、落屑の自然の過程を促進し又は維持することによって、これら望ましいスキンケアの効果をもたらす。抗しわ及び抗皮膚萎縮活性物質の例は、ビタミン、ミネラル及び皮膚栄養分、例えばミルク、ビタミンA、E、及びK;ビタミンCアルキルエステルを含むビタミンアルキルエステル;マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛及び他の金属成分;レチノイン酸及びその誘導体(例えば、シス及びトランス);レチノール;レチニルエステル、例えば酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル及びプロピオン酸レチニル;ビタミンB化合物(例えばナイアシンアミド及びニコチン酸)、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、例えばサリチル酸及びその誘導体(例えば5−オクタノイルサリチル酸、ヘプチルオキシ4サリチル酸及び4−メトキシサリチル酸);それらの混合物等を含む。
【0065】
皮膚障壁修復活性物質は、修復を助け、表皮の自然の水分障壁機能を補充しうるスキンケア活性物質である。皮膚障壁修復活性物質の例は、脂質、例えばコレステロール、セラミド、スクロースエステル及び疑似セラミド、アスコルビン酸;ビオチン;ビオチンエステル;リン脂質、それらの混合物等を含む。
非ステロイド系化粧用鎮静活性物質は、皮膚の炎症を予防又は治療するのに有効でありうる。鎮静活性物質は本発明の皮膚外観への効果を亢進し、例えばかかる薬剤はより均一で許容できる皮膚のトーン又は色に寄与する。化粧用鎮静剤の例は、以下の範疇:プロピオン酸誘導体;酢酸誘導体;フェナム酸誘導体;それらの混合物等を含む。
人工サンタン活性物質は、皮膚中のメラニンを増加させるか、又は皮膚に増加したメラニンの出現をつくりだすことによって、天然の日焼けを模倣する際に役立ちうる。人工サンタン剤及び促進剤の例は、ジヒドロキシアセトン;チロシン;チロシンエステル、例えばがチロシン酸エチル及びチロシン酸グルコース;それらの混合物等を含む。
【0066】
皮膚明色化(lightening)活性物質は、実際は皮膚中のメラニン量を減少させ、又は他の機序によってかかる効果をもたらしうる。ここで有用な皮膚明色化活性物質の例は、アロエ抽出物、α−グリセリル−L−アスコルビン酸、アミノチロキシン(aminotyroxine)、乳酸アンモニウム、グリコール酸、ヒドロキノン、4-ヒドロキシアニソール、それらの混合物等を含む。
ここでまた有用なものはサンスクリーン活性物質である。様々なサンスクリーン剤が従来から知られている。本発明の組成物において有用でありうるサンスクリーン剤の例は、ケイ皮酸オクチルメトキシル(Parsol MCX)及びブチルメトキシベンゾイルメタン(Parsol 1789)、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチル−p−アミノ安息香酸2−エチルヘキシル、p−アミノ安息香酸、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オキシベンゾン、それらの混合物等からなる群から選択されるものである。
皮脂刺激剤は、皮脂腺による皮脂の産生を増加させうる。皮脂刺激活性物質の例は、ブリオノール(bryonolic)酸、デヒドロエピアンドロステロン (DHEA)、オリザノール、それらの混合物等を含む。
【0067】
皮脂阻害剤は、皮脂腺による皮脂の産生を減少させうる。有用な皮脂阻害活性物質の例は、アルミニウムヒドロキシクロライド、副腎皮質ステロイド、デヒドロ酢酸とその塩、ジクロロフェニルイミダゾールジオキソラン(Elubiolから入手可能な)、それらの混合物等を含む。
プロテアーゼ阻害剤は、また化粧品用途に製剤化されたバイゲルにおける活性物質として有用でありうる。プロテアーゼ阻害剤は、2つの一般的なクラスに分類できる:プロテイナーゼ及びペプチダーゼである。プロテイナーゼはタンパク質の特定の内部ペプチド結合に作用し、ペプチダーゼはタンパク質の末端のフリーなアミノ又はカルボキシル基に隣接するペプチド結合に作用し、よってタンパク質を外側から切断する。本発明の使用に適切なプロテアーゼ阻害剤は、限定するものではないが、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ及びアスパルチルプロテアーゼのようなプロテイナーゼ、及びペプチダーゼ、例えばカルボキシペプチダーゼ、ジペプチターゼ及びアミノペプチダーゼ、それらの混合物等を含む。
【0068】
本発明において活性成分として有用な他のものは、皮膚引き締め(tightening)剤である。本発明の組成物において有用でありうる皮膚引き締め剤の例は、ポリマーを皮膚に結合させうるモノマー、例えばビニルピロリドンのターポリマー、(メタ)アクリル酸及び長鎖(メタ)アクリル酸アルキルからなる疎水性モノマー、それらの混合物等を含む。
バイゲル組成物に含まれうる抗かゆみ成分の適切な例は、ヒドロコルチゾン、メトジラジン(methdilizine)及びトリメプラジン(trimeprazineare)、それらの混合物等を含む。
本発明のバイゲルに有用に含まれうる体毛成長抑制物質の例は、17θ−エストラジオール、抗血管新生ステロイド、ウコン抽出物、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、マツヨイグサ油、リノール酸等を含む。
適切な5−αレダクターゼ阻害剤は、エチニルエストラジオール、ゲニスチン(genistine)及びそれらの混合物等を含む。
【0069】
本発明の組成物に場合によっては含まれうる落屑酵素エンハンサーの例は、アラニン、アスパラギン酸、Nメチルセリン、セリン、トリメチルグリシン、それらの混合物等を含む。
本発明のバイゲル組成物に場合によって含まれうる抗グリケーション剤の例は、Amadorine(Barnet Products Distributorから入手可能)等である。
よって、他の好ましい実施態様では、該方法は、バイゲルを包装し、化粧品として使用するために提供することを更に含む。
バイゲル組成物のpHを測定するために適した器材は、Sentix HW電極を有するWTW pH340i pHメータを含む。pHメータの較正の後、3通りの読みが取られ、平均値が算出される。
【0070】
本発明の第一の態様において記載されたバイゲルの製造方法の他の実施態様は、ついでバイゲルのpHを高流量及び低剪断混合下で調節して所望のレベルのレオロジーパラメータ(粘度以外)を有するバイゲルを得る代替工程(d)を含みうることが理解される。
粘度以外のバイゲルの適切なレオロジーパラメータは、凝集(cohesion)、接着(adhesion)及びコンシステンシーインデックスを含む。バイゲルの凝集、接着及びコンシステンシーインデックスを決定する方法は、20Nのセンサ力で、23℃でのステンレス鋼半球状プローブを有するType TEC025テクスチュロメーターの使用を含む。
これらの条件下で測定されるバイゲルの好適な凝集価は0.8から0.95の範囲である。
これらの条件下で測定されるバイゲルの好適な接着値は0.5から0.95mJの範囲である。
これらの条件下で測定されるバイゲルの好適なコンシステンシーインデックス値は2.5から6.5×10−2N/s−1の範囲である。
【0071】
よって、工程(d)は、所望のレベルで少なくとも一つのレオロジーパラメータ(例えば、粘度、凝集、接着及びコンシステンシーインデックスから選択される)を有するバイゲルを得るために高流量及び低剪断混合下でバイゲルのpHを調整することを含むと考えることができる。適切には、この工程は、当該分野でよく知られているように、ローション又はクリーム又は軟膏としての使用に適したバイゲルを得るためにバイゲルのpHを調整することを含みうる。
本発明は、本発明の第一の態様の方法によって得ることができるバイゲルを含む。
本発明はまた本発明の第一の態様の方法によって得られるバイゲルを含む。
【0072】
本発明の第二態様は、
それぞれ0.05−5重量%の、ステロイドホルモン、グルコステロイド及び抗微生物剤から選択される少なくとも一の活性剤;
0.4−2重量%のカルボマー;
10−30重量%のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
1−10重量%のラウリン酸プロピレングリコール及びエチルセルロース及びシソステアリン酸プロピレングリコール、及び

を含有する組成物を提供する。
活性剤の各々が、独立して、組成物中に0.05−0.1重量%の間、又は組成物中に重量で約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%又は約2.5%で存在することが理解される。あるいは、活性剤は、組成物中に重量で2.5−3%、又は3−4%、又は4−5%であってもよい。好ましくは、活性剤の各々が、独立して、0.5−2重量%で、組成物中に存在してる。投与される活性剤の用量は好ましくは医師によって決定され、よって、活性成分の重量割合は、各用量における組成物の予想される量並びに各活性剤の効能に依存することが理解される。
【0073】
好ましくは、ステロイドホルモンは、テストステロン、プロゲステロン及びエストロジオールから選択される。好ましい実施態様では、組成物は、テストステロンとプロゲステロンの双方、又はテストステロンとエストラジオールの双方、又はプロゲステロンとエストラジオールの双方を含む。
好ましくは、グルコステロイドは、コルチゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)及びアルドステロンから選択される。
適切な抗微生物剤は、上に列挙しており、当業者にはよく知られている様に、抗菌剤、抗真菌剤及び抗ウィルス剤を含む。
【0074】
組成物はラウリン酸プロピレングリコール、エチルセルロース及びイソステアリン酸プロピレングリコールを、併せて、約1重量%又は約2重量%、又は約3重量、又は約4重量%、又は約5重量%、又は約6重量%、又は約7重量%、又は約8重量%、又は約9重量%、又は約10重量%含みうる。好ましくは、ラウリン酸プロピレングリコール及びエチルセルロース及びイソステアリン酸プロピレングリコールは併せて、3−6重量%で存在する。
また好ましくは、エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールは、本発明の第一の態様に関して上で検討した相対割合で存在している。
【0075】
本発明の第二の態様の組成物は、本発明の第一の態様を参照して上述されたもののような他の成分を場合によっては含んでいてもよい。挙げることができる成分は、
0.05−0.4重量%のソルビン酸;
0.05から0.4重量%のメチルパラベンナトリウム;
0.05から0.4重量%のプロピルパラベンナトリウム;及び
1から10重量%のエタノール;
0.05−0.4重量%のBHA;及び
0.05−0.4重量%のBHT
の任意の一又は複数を含む。
【0076】
一実施態様では、組成物は、23℃でMS Din1.9モジュールと共にLamy VRM−08を使用して測定して1000−30000cP(1−30Pa.s)、好ましくは20−30000cP(20−30Pa.s)の範囲の粘度を有するローションの形態である。他のより好ましい実施態様では、組成物は、23℃でMS Din1.3モジュールと共にLamy VRM−08を使用して測定して30000cP(30Pa.s)を越え、好ましくは80000cP(80Pa.s)を越える粘度を有するクリーム又は軟膏の形態である。好適なクリーム又は軟膏は、典型的には、23℃でMS Din1.3モジュールと共にLamy VRM−08を使用して測定して、30000−150000cP(30−150Pa.s)、より好ましくは80000−140000cP(80−140Pa.s)、又は90000−120000cP(90−120Pa.s)、又は112000−122000cP(112−122Pa.s)の範囲の粘度を有する。
好適には、組成物は、約pH3−3.5、又はpH3.5−4、又はpH 4−4.5、又はpH4.5−5、又はpH5−5.5、又はpH5.5−6、又はpH6−6.5、又はpH6.5−7、又はpH7−7.5、又はpH7.5−8、又はpH8−8.5、又は約pH8.5−9の間のpHを有する。当業者には理解されるように、所望のpHは組成物の意図された用途に依存する。例えば、局所的な投与のための組成物は、好ましくは5.5−8のおおよそ中性のpHを有している一方、膣内投与のための組成物は一般により酸性で、3−5の間の典型的なpHを有している。
【0077】
好ましくは、組成物はエマルジョンではない。従って、この実施態様では、組成物は、上に列挙したもののような乳化剤の存在を必要としない。
より好ましくは、組成物は、上で定義されたバイゲルである。
最も好ましい実施態様では、組成物は、本発明の第一の態様の方法によって製造される。
ここで言及した文献の全ては、その全体が出典明示によりここに援用される。
この明細書における先に公開された文献の列挙又は検討は、該文献が技術水準の一部であるか常識であることを認めるものと必ずしも解釈してはならない。
【0078】
以下に、本発明を次の図面と実施例を参照して更に詳しく説明する。実施例において、別に特定する場合以外は、示したパーセントは重量パーセントである。
【0079】
図1:実施例1において使用したバイゲル製造プロセスのフローチャートである。
【0080】
実施例1:バイゲル製造プロセス
次の製造方法を、容器底面にプラネタリーミキサー(スクレーパー付きプラウ)(0−60rpm)とディスパーザーホモジェナイザー(1500/3000rpm)ローター/ステーター型を装備した50LのOlsa MPEFを使用して実施した。
【0081】
バイゲル成分
プラシーボ及び1%テストステロン含有バッチを次の成分から調製した:


【0082】
製造プロセスの記述
1.水性相の調製
a) 15rpmのプラネタリーミキサーと1500rpmのディスパーザーを備えたOlsa中において15分間、50℃に加熱した水中にソルビン酸を溶解させる(混合A)
b) 25℃−30℃で冷却する。
c) 最初は1500rpmのディスパーザーを備えたOlsaでカルボポール980をマニュアルで添加し、カルボポールが完全に膨潤するまで3000rpmで添加する。
d) 15rpmのプラネタリーと3000rpmのディスパーザーで1時間減圧下で混合する(混合B)
【0083】
2.油性相の調製(段階1.dと平行)
a) Labrafac CCを含む20lの容器にテストステロンを添加し、5分間、ローターステーターミキサー(Ultra−Turrax)で混合する(混合C)。
b) Rayneriブレードミキサーを用いて混合物にエタノール(5分の間)を添加する(混合D)。
c) Rayneriブレードミキサーを用いて混合物にEmulfree P(10分の間)を添加する(混合E)。
【0084】
3.バイゲルの調製:
a) 2相を混合する:3000rpmのディスパーザーと20から35rpmのプラネタリーのOlsa中において水性相中に油性相をゆっくり20分で規則的に投入する。
b) 完全に添加した後、混合を減圧下で20分維持する(混合F)。
【0085】
4.バイゲルの中和
a) 工程3bの間に、ナトリウムメチルパラベン溶液(溶液1)を、また攪拌下でNaOH溶液(溶液2)を調製する。
b) 35から45rpmのプラネタリー混合と1500rpmのディスパーザー混合下でバイゲル中に上部Olsa漏斗によってパラベン溶液(溶液1)を投入する(25分のゆっくりした添加)。
c) 45から55rpmのプラネタリー混合と1500rpmのディスパーザー混合下でバイゲル中に上部Olsa漏斗によってNaOH溶液(溶液2)の半分を投入する(20分のゆっくりした添加)。
d) 添加後、減圧下で5分間混合する。
e) 50から60rpmでのプラネタリー混合のみ(20分)の元で少しずつ10mlピペットを用いて、上部Olsa漏斗から残りのNaOH溶液(溶液2)を手作業でゆっくりと導入する。
d) 添加後、55rpmのプラネタリー混合とディスパーザー混合によって減圧下で10分間、混合する。
注意:プラシーボ製剤では、APIをLabrafac CCで置き換え、API分散工程を行わない。
【0086】
中和段階(パラベンナトリウム溶液と水酸化ナトリウム溶液の導入)はバイゲルの製造において最も重要な工程であり、均一な粘性生成物を得ることができる条件を特定することは単純ではなかった。
【0087】
プロセス失敗の理由
バイゲルのパイロットスケールでの製造に対してこの成功裏の製造方法に到達する前に、不成功のプロセスとなる多くの要因が見出された。
【0088】
余りに低い流れを混合する
混合速度が余りに低いと、つまりプラネタリーミキサーだけを中和剤の導入のために使用すると、中和は失敗することが分かった。これは、製造バッチをスケールアップして実証された:穏やかな均一化分離がNaOH溶液の導入の終わりに観察される。これは中和剤の不完全な導入のために起こり、粘度の高いゲルと低いゲルの不均質な領域が生じ、これがバイゲルの分離を生じる。
【0089】
余りに高い剪断で混合
中和の間に、ハイシアーミキサーだけを使用して中和剤をゲルに導入すると、カルボポールゲルマトリックスが壊れ、製品粘度の減少を生じる。製品粘度が300000cP(以下に特定するようにして測定)未満の場合、バイゲルが分離し始める。
また、中和工程中の次のパラメータを試験したが、不成功プロセスの是正は見られなかった:溶液の導入時間、導入順序、使用する溶液の容積、テストステロンの影響及びEmulfree IPのグレードの影響。
【0090】
プロセス成功の理由
高流量低剪断混合
中和工程の間と後でのディスパーザー(その低速設定で;1500rpm)の使用。これは35−60rpmでのプラネタリーミキサーの使用に加えてである。ハイシアーミキサーと併用してプラネタリーミキサーによって発生される更なる流れが、カルボポールゲルマトリックスの分解を生じせしめないで中和剤をゲル中に導入することができる。これにより、300000cPより大きく、一定の安定なゲルマトリックスを有するゲルが得られる。
中和段階において真空を系統的に使用するがまた有益であることが分かった。
上に記載した製造プロセスに従って得たバイゲルは分離せず、所望の粘度、正確なpH(4.95)及び満足できる均一な外観を有していた。
【0091】
この方法で製造したバイゲルの性質
製造中、インプロセスコントロールを中和段階の間、記録した:バイゲルの外観、pH及び粘度範囲、及び結果を表4及び5に示す。
粘度の測定は25℃にて0.5rpmでブルックフィールド・モービルB粘度計を使用して実施した。


これらの結果は、結果の良好な再現性と製造プロセスのロバスト性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイゲルの製造方法において、
(a)少なくとも一種のセルロースポリマーでゲル化した少なくとも一種の油性剤を含有するオレオゲルを提供し;
(b)粘度がpH依存性である少なくとも一種の成分を含有する水性ゲルを提供し;
(c)オレオゲルと水性ゲルを一緒に混合してバイゲルを形成し;
(d)次に高流量かつ低剪断混合下でバイゲルの粘度を調節して所望の粘度のバイゲルを得る
ことを含む方法。
【請求項2】
オレオゲル中の少なくとも一種のセルロースポリマーが、エチルセルロース、非ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びそれらの混合物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オレオゲル中の少なくとも一種のセルロースポリマーがエチルセルロースである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エチルセルロースがバイゲル組成物に約0.05重量%から9重量%の割合で存在している請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オレオゲル中の油性剤が、合成、半合成及び天然由来のモノ-、ジ-、及びトリ-グリセリド、及びそれらの混合物から選択される請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
半合成由来のモノ-、ジ-、及びトリ-グリセリドが、天然植物油のアルコーリシスによって得られるポリオキシエチレン化オレイングリセリド混合物を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
天然由来のモノ-、ジ-、及びトリ-グリセリドが、スウィートアーモンド油、アルガン油及びパーム油のような植物由来の油から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
油性剤がカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド混合物を含む請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
オレオゲルが、イソステアリン酸プロピレングリコールとラウリン酸プロピレングリコールの一方又は双方を更に含み、それぞれがバイゲル組成物に約0.1から5重量%の割合で独立して存在している請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
オレオゲルがエチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコール及び油性剤を含有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
かるぼ
エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールがバイゲル組成物に全体で約2重量%から6重量%の割合で存在している請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールがそれぞれ約2−10:2−10:80−96の相対割合で存在している請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
オレオゲルを提供する工程(a)が請求項1から12の何れか一項に記載のオレオゲルを製造することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水性ゲルが、カルボマー及びカルボキシメチルセルロースナトリウム及びその混合物から選択される、粘度が変動しpH依存性である少なくとも一種のゲル化剤を含む請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
カルボマーが、カルボポール(登録商標)Ultrez10、カルボポール(登録商標)71G、カルボポール(登録商標)910、カルボポール(登録商標)934、カルボポール(登録商標)934P、カルボポール(登録商標)940、カルボポール(登録商標)971P、カルボポール(登録商標)974、カルボポール(登録商標)974P、カルボポール(登録商標)980、カルボポール(登録商標)981、及びカルボポール(登録商標)1342NFから選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水性ゲルが、ポロキサマー(プルロニック(登録商標))、アカシア、アルギン酸、ベントナイト、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum(登録商標))、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、及びキサンタンガム、及びそれらの混合物から選択される少なくとも一種のゲル化剤を更に含有する請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
水性相が、23℃でMS DIN1.9モジュールを備えたLamy VRM−08を使用して測定して、100−1000cP(100−1000mPa.s)の粘度を有している請求項14から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
水性相が2.5から4の間のpHを有している請求項14から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
水性ゲルを提供する工程(b)が請求項14から18の何れか一項に記載の水性ゲルを形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
オレオゲルと水性ゲルを、高剪断混合を使用する工程(c)で混合する請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
粘度がpH依存性である少なくとも一種の成分がナトリウムカルボキシメチルセルロースを含有し、オレオゲルと水性ゲルが、低剪断混合を使用する工程(c)で混合される請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
pH調節工程(d)が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルパラベンナトリウム、ナトリウムプロピルパラベン、アミノメチルプロパノール、ナトリウムEDTA及びトリエタノールアミンから選択されるpH調節剤を添加することを含む請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(d)におけるpHの調節が、pHをpH4とpH6の間にすることを含む請求項1から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程(d)におけるpHの調節が、pHをpH6とpH7.5の間にすることを含む請求項1から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程(d)におけるpHの調節が、23℃でMS DIN1.9モジュールを備えたLamy VRM−08を使用して測定して、1000−30000cP(1−30Pa.s)、好ましくは20000−30000cP(20−30Pa.s)にバイゲル粘度を高める請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程(d)におけるpHの調節が、23℃でMS DIN1.9モジュールを備えたLamy VRM−08を使用して測定して、30000−150000cP(30−150Pa.s)、好ましくは80000−140000cP(80−140Pa.s)にバイゲル粘度を高める請求項1から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
高流量低剪断混合を、約40−45rpmでのプラネタリーミキサーと約1500rpmでのシルバーソン型ミキサーの組み合わせを使用して実施する請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
高流量低剪断混合を、タービン又はYstral(登録商標)ミキサーを使用して実施する請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程(d)におけるpHの調節が、真空下で実施される請求項1から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
乳化剤を添加しない請求項1から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
メチルパラベンナトリウム、ナトリウムプロピルパラベン及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の保存料を添加する工程を更に含む請求項1から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一種の活性医薬成分(API)を添加する工程を更に含む請求項1から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも一種のAPIが、ホルモン、抗微生物剤、アレルゲン、ワクチン、皮膚科学的に活性な成分、癌化学療法剤、抗炎症剤、創傷修復剤、鎮痛剤、局所麻酔薬及び抗痒み剤から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一種のAPIが、テストステロン、プロゲステロン及びエストラジオールから選択されるホルモンである請求項33に記載の方法。
【請求項35】
テストステロンとプロゲステロンの双方、テストステロンとエストラジオールの双方、又はプロゲステロンとエストラジオールの双方が添加される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも一種の抗微生物剤が、抗菌剤、抗真菌剤及び抗ウイルス剤から選択される請求項33に記載の方法。
【請求項37】
テクスチャー剤、抗酸化剤、染料、又は香料、保湿剤、サンスクリーン剤、抗フリーラジカル剤及び皮膚再生剤から選択される少なくとも一種の更なる成分を添加する工程を更に含む請求項1から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも一種の抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
バイゲルを包装し医薬での使用のために提供する請求項1から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
バイゲルを包装し化粧品用途に提供する請求項1から31及び37から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1から40の何れか一項に記載の方法により得ることができるバイゲル。
【請求項42】
オレオゲルと水性ゲルからバイゲルを製造する方法において、オレオゲルと水性ゲルを互いに混合し、混合物のpHを高流量低剪断攪拌下で調節して、所望の粘度を有するバイゲルを得ることを特徴とする方法。
【請求項43】
それぞれ0.1−5重量%のステロイドホルモン、グルコステロイド及び抗微生物剤から選択される少なくとも一種の活性剤;
0.4−2重量%のカルボマー;
10−30重量%のカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド;
1−10重量%のラウリン酸プロピレングリコール、エチルセルロース及びイソステアリン酸プロピレングリコール;及び

を含有する組成物。
【請求項44】
ステロイドホルモンが、テストステロン、プロゲステロン及びエストラジオールから選択される請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
テストステロン及びプロゲステロン、テストステロン及びエストラジオール、又はプロゲステロン及びエストラジオールを含有する請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
グルコステロイドが、コルチゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン及びアルドステロンから選択される請求項43に記載の組成物。
【請求項47】
抗微生物剤が抗菌剤、抗真菌剤及び抗ウイルス剤から選択される請求項43に記載の組成物。
【請求項48】
ステロイドホルモンが、プロゲストーゲン, ノルエチステロン, ジドロゲステロン, レボノルゲストレル, メドロキシプロゲステロン, ノルゲストレル, チノロン、ジドロゲステロン、デソゲストロン、ドロスピレノン、ゲストロデン、レボノルゲストレル、ノルエルゲストロミン及びノルエチステロンから選択される避妊ホルモンである請求項43に記載の組成物。
【請求項49】
少なくとも一種の活性剤の各々が独立して約0.5−2重量%で存在している請求項43から48の何れか一項に記載の組成物。
【請求項50】
エチルセルロース、イソステアリン酸プロピレングリコール及びラウリン酸プロピレングリコールがそれぞれ約2−10:2−10:80−96の相対割合で存在している請求項43から49の何れか一項に記載の組成物。
【請求項51】
4−7のpHを有する請求項43から51の何れか一項に記載の組成物。
【請求項52】
0.05−0.4重量%のソルビン酸;0.05−0.4重量%のメチルパラベンナトリウム;0.05−0.4重量%のナトリウムプロピルパラベン;1−10重量%のエタノール;0.05−0.4重量%のBHA;及び0.05−0.4重量%のBHTの何れか一又は複数を更に含有する請求項43から51の何れか一項に記載の組成物。
【請求項53】
バイゲルである請求項43から52の何れか一項に記載の組成物。
【請求項54】
医薬での使用のための請求項43から53の何れか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−514748(P2010−514748A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543516(P2009−543516)
【出願日】平成19年12月31日(2007.12.31)
【国際出願番号】PCT/GB2007/005023
【国際公開番号】WO2008/081175
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505103976)アーダナ バイオサイエンス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】