組織フラグメントを伴う生体相容性の支持骨格装置
【課題】 特に、軟骨、靭帯、腱、および神経に対する傷害を含む種々の組織傷害の修復において使用するための生体相容性の組織修復移植片または支持骨格装置を提供する。
【解決手段】 上記の修復処置は一定の組織の治癒または修復を補助する一定の生物学的な要素を含有する種々の移植片により行なうことができる。これらの生体相容性の組織修復移植片は一定の生体相容性の支持骨格材料および生活組織の粒子をこれらの組織および支持骨格材料が結合するように含んでいる。さらに、この生活組織の粒子は当該組織から移動して上記支持骨格材料において集合化できる1種類以上の生活可能な細胞を含有している。
【解決手段】 上記の修復処置は一定の組織の治癒または修復を補助する一定の生物学的な要素を含有する種々の移植片により行なうことができる。これらの生体相容性の組織修復移植片は一定の生体相容性の支持骨格材料および生活組織の粒子をこれらの組織および支持骨格材料が結合するように含んでいる。さらに、この生活組織の粒子は当該組織から移動して上記支持骨格材料において集合化できる1種類以上の生活可能な細胞を含有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本特許出願は2002年10月18日に出願されていて「バイオコンパチブル・スキャフォルド・ウイズ・テイシュー・フラグメンツ(Biocompatible Scaffold With Tissue Fragments)」を発明の名称とする米国仮特許出願第60/420,093号、および2002年10月18日に出願されていて「バイオコンパチブル・スキャホルド・フォー・リガメント・オア・テンドン・リペア(Biocompatible Scaffold for Ligament or Tendon Repair)」を発明の名称とする米国仮特許出願第60/419,539号に対して優先権を主張している。
本発明は各種組織の傷害の治療において使用するための生体相容性の組織移植装置に関連しており、さらに、当該生体相容性の組織移植装置を作成する方法およびこれらを使用する方法に関連している。
【背景技術】
【0002】
組織が負傷または損傷している、軟骨、皮膚、骨、腱および靭帯等のような軟質組織に対する傷害部分は多くの場合にその損傷を治療して治癒を促進するための外科的介入を必要とする。このような外科的な治療は既知の各種の装置によりその損傷した組織を縫合またはその他の方法で治療する処理、損傷した組織に別の組織を添加する処理、および一定の移植片、グラフト材料またはこれらの技法の任意の組み合わせを用いる処理を含むと考えられる。
【0003】
一例の一般的な組織傷害は軟骨に対する損傷を含み、この組織は一定の非脈管性の弾性で柔軟性の接合組織である。軟骨は一般的に関節を成している連結部分において一定の「衝撃吸収体(shock-absorber)」として作用するが、一部の種類の軟骨は、例えば、咽頭、気道、および耳等のような各種の管状構造体に対して支持を行なう。一般に、軟骨組織は一定の細胞外基質の中に存在している軟骨細胞として知られている軟骨の各種細胞により構成されており、これらの細胞はコラーゲン、すなわち、一定の構造的な支持骨格体、およびアグリカン(aggrecan)、すなわち、一定の空間充填用のプロテオグリカンを含む。硝子軟骨、線維軟骨および弾性軟骨を含む幾つかの種類の軟骨が体内において見ることができる。硝子軟骨は別個の物質として体内において見ることができ、あるいは、この種の軟骨は各種の骨の関節端部に融合している状態で見ることができる。このような硝子軟骨は一般に関節軟骨、肋軟骨、および一過性軟骨(すなわち、骨形成の過程を通して最終的に骨の変化する軟骨)として体内において見られる。また、線維軟骨は一般的に腱と骨、骨と骨、および/または硝子軟骨と硝子軟骨との間に存在している一定の移行性の組織である。また、弾性軟骨は細胞外基質の全体に分布している弾性線維を含み、一般的に咽頭蓋、耳および鼻の中において見られる。
【0004】
硝子軟骨傷害の一例の一般的な例は膝に対する一定の外傷性の局所的な関節軟骨の欠損である。この関節部分に対する強い衝撃により、種々の大きさおよび形状の一定の軟骨フラグメントが完全にまたは部分的に除去される。このように損傷した関節軟骨はその関節機能を過度に制限する可能性があり、消耗性の痛みを生じて、変形性関節症等のような長期間の慢性の病気を生じる可能性があり、これにより、その軟骨およびその関節における下層の骨が徐々に破壊される。このような軟骨組織に対する傷害は自発的に治癒することがなく、症候性である場合には、外科的な介入を必要とする。現行における治療様式は洗浄および部分的にまたは全体的に付着している組織フラグメントの除去を含む。加えて、外科医は軟骨欠損部内における出血および一定の凝血を誘発するために剥離処理、ドリル処理または微小骨折処理等のような種々の方法を採用する場合が多い。骨髄から由来する各種の細胞が一部の症状を一時的に軽減できる線維軟骨と呼ばれる一定の瘢痕様組織を形成すると考えられている。不都合にも、この線維軟骨組織は上述した硝子軟骨と同一の機械的な特性を有しておらず、疲労の結果として経時的に比較的に速く劣化する。従って、患者は一般的にこのような軟骨の表面における完全な劣化を引き起こす可能性のある各種の外科的処置を繰り返して受けることが必要になる。さらに最近において、自己由来性の軟骨細胞の移植を含む実験的な手法がその頻度を高めながら用いられている。この方法はその最初の外科的処置における関節軟骨の少量の生検材料の採集処理を含み、その後、この材料が増殖のために細胞培養において特殊化されている一定の実験室に運ばれる。この組織生検材料は各種の酵素により処理され、これらの酵素はその基質から各種の軟骨細胞を放出し、単離されたこれらの細胞が標準的な組織培養技法により3週間乃至4週間にわたり増殖される。さらに、この細胞母集団が一定の目的数に到達した後に、これらの細胞が第2の外科的処置における移植のために外科医に戻される。このような手動による労働集約的な方法は極めて費用が高く時間がかかる。この臨床データは一定の患者に対して長期間の有益性を示すが、この方法の極めて高い費用は膝に対する上記二種類の外科的処置における傷害性の衝撃と共にこの技法を採用する障害になっている。
【0005】
一般的な一例の軟骨傷害は膝関節の半月板に対する損傷である。膝関節には2個の半月板すなわち内側半月板および外側半月板がある。それぞれの半月板は両凹形状の線維軟骨組織であり、足の大腿骨と頸骨との間に挟まれている。膝関節の半月板に加えて、半月板軟骨は肩鎖骨関節、すなわち、鎖骨と肩甲骨の肩峰との間の関節内、胸鎖関節、すなわち、鎖骨と胸骨との間の関節内、および側頭下顎関節、すなわち、下顎の関節内おいても見ることができる。これらの半月板軟骨の主な機能は各種の負荷を受けること、衝撃を吸収すること、および一定の関節を安定化することを含む。適正に治療されない場合には、膝関節における「バケツ柄状断裂(bucket-handle tear)」等のような、半月板に対する一定の傷害が変形性関節症の進展を引き起こす可能性がある。このように損傷した半月板軟骨に対する現行の従来的な治療様式はその損傷した軟骨の除去および/または外科的な修復処置を含む。
【0006】
組織傷害における別の一般的な形態は各種の靭帯および/または腱に対する損傷を含む。これらの靭帯および腱は軟質の膠原質組織を含む各種線維組織の索または帯である。各種の靭帯は骨と骨を接続しているが、腱は筋肉と骨を接続している。これらの腱は相当に強度を有しているが事実上において全く弾性を有していない線維状の可変長の策または帯である。これに対して、靭帯は一般に屈曲しやすく柔軟であり、その靭帯組織は移動の自由度を有することが可能であると共に強度を有していて非延伸性であり、加えられる力に対するその靭帯組織の容易な屈服を阻止する。これらの靭帯および腱は線維の束であり、これらの束は靭帯または腱の基本的な原線維および線維芽細胞として知られている靭帯または腱を生成する各種の細胞を含む。これらの腱の線維束は一般に極めて高密度に配列されている膠原質の線維、細長い線維芽細胞の平行の列、および一定のプロテオグリカン基質により構成されている。また、各種靭帯の線維束も一定のプロテオグリカン基質、線維芽細胞およびコラーゲン原線維を含むが、これらの靭帯組織において見られる原線維は腱組織内において見られる原線維よりも一般に密度が低く組織化に劣る。
【0007】
一般的な靭帯の傷害の一例は一定の断裂した前十字靭帯(ACL)であり、この靭帯は膝における4種類の主要な靭帯の一つである。このACLの主な機能は前方移動、回転の不正確さおよび過度の伸びを抑制することである。このACLの欠損はその膝関節の不安定性を生じて、変形性関節症等のようなその膝における変性性の変化を生じる。最も一般的な治療技法はその崩壊したACLを除去および廃棄して自己由来性の骨−膝蓋骨、腱−骨または膝窩腱を用いて新しいACLを再構成することである。この技法は長期間の臨床的効果を示しているが、その組織移植片の採取部位に伴う罹病性が存在する。そこで、合成のプロテーゼ装置が過去において臨床的に評価されているが、長期間の有効性がほとんどない。一定の合成移植片の利点は自己移植片の処置に伴うドナーの部位の罹病性により患者が病気に罹らないこと、および一定の合成移植片を有する患者がその膝の比較的に速いリハビリテーションを受けることが可能であることである。これらの合成の装置は非吸収性の材料により構成されており、永久的なプロテーゼ移植片になるように設計されている。しかしながら、これらの移植片の種々の臨床的試行において、例えば、滑膜炎、骨トンネル拡張、磨耗破片、および装置の伸びおよび崩壊等のような、多数の問題が見出されている。このような理由により、自己移植片による再構成法が一定の崩壊したACLを治療するために依然として広く受け入れられている解消法となっている。
【0008】
一般的な腱障害は損傷または断裂した回旋腱板であり、この回旋腱板は上腕骨の肩甲骨に対する円形動作を容易にする肩関節の一部分である。この回旋腱板に付随する最も一般的な傷害は棘上筋腱に対する一定のひずみまたは断裂である。この断裂は棘上筋腱が上腕骨に付着しているこの腱の挿入部位において生じ、これにより、この腱は(その傷害の程度に応じて)その骨から部分的にまたは完全に遊離する。加えて、上記のひずみまたは断裂は腱自体の中において生じる可能性がある。一定のひずみが生じた腱に対する治療は通常においてその腱の休止および使用の減少を含む。しかしながら、傷害の程度に応じて、一定の断裂した腱は、例えば、上腕骨からの棘上筋腱の完全な断裂の場合等において、外科的な介入を必要とする場合もある。このような重度の腱の損傷の場合に、その外科的介入は断裂した組織の修復および/または再付着の処理を含み、これらの処理は一般的に一定の治癒期間および回復期間を必要とする。
【0009】
従って、比較的に信頼性の高い組織修復を行なうことができ、損傷した組織の治癒を容易に行なうことのできる損傷した組織(例えば、軟骨、半月板軟骨、靭帯、腱および皮膚)の外科的治療のための新規な外科技法に対する継続した要望が当業界において存在している。種々の外科的な移植片が知られており、これらの有益性を達成する補助のために種々の外科的処置において用いられている。例えば、一定の配給用ビヒクルに装填されている各種の単離された細胞を含む各種の移植片を形成するための種々の装置および技法を用いることが知られている。このような細胞接種型の各種の移植片が種々の生体崩壊性で生体相容性の線維高分子基質上に接触した各種軟骨細胞により構成されている軟骨性の構造を増殖することにより軟骨を作成および/または修復する生体外(イン・ビトロ)の方法において用いられている。このような方法は上記高分子基質に軟骨細胞を接種する前にこれらの軟骨細胞を軟骨性の組織から初期的に分離することを必要とする。さらに別の損傷した組織を修復するための技法は所望の組織を生成するために使用する各種の幹細胞または先祖細胞を含む移植片を採用している。例えば、一定の患者における骨および/または軟骨を再生するために脂肪組織、筋肉、または骨髄内の細胞等のような各種の幹細胞または先祖細胞を使用することが知られている。このような幹細胞は一定の患者から取り出されて、軟骨形成に適した一定の環境内に配置され、これにより、その脂肪組織細胞の増殖および、例えば、各種軟骨細胞等のような異なる種類の細胞の形成が誘発される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、損傷した組織を作成および/または修復するため、および損傷した組織の治癒を速めるための新規な装置および方法に対する要望が当業界において存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は組織の治療に使用するための生体相容性の組織移植片およびこれらの装置の作成および使用のための方法に関連している。例えば、この組織移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用できる。さらに、これらの組織移植片は組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織修復のために使用できる。これらの移植片は少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む一定の懸濁液を伴う一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この生体相容性の組織移植片はその細分化処理した組織の懸濁液の上方に配置されている一定の付加的な生物学的物質および/または一定の付随的な保持要素も含むことができる。
【0012】
本発明はまた上記のような生体相容性の組織移植片を作成するための方法にも関連している。これらの移植片は少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを含む生活可能な組織の懸濁液を形成するために上記組織サンプルを処理すること、および当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料の上に付着することにより作成される。一例の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料に集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。
【0013】
本発明はまた上記本発明の組織移植片の作成を補助するための一定のキットにも関連している。本発明のキットは少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料を収容している一定の無菌容器、一定の被検体から一定の組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および組織サンプルの生活可能性を持続するための1種類以上の試薬を含む。このキットはまた一定の組織を組織粒子に細分化するための一定の処理用工具を含むことも可能であり、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してそのサンプルを微細分割した組織粒子に処理することに適合可能である。さらに、このキットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から移植のための一定の被検体に移すための一定の配給装置も含むことができる。
【0014】
本発明はまた上記本発明の生体相容性の組織移植片を用いて組織を治療する方法にも関連している。これらの方法による組織の治療は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料上に付着させること、およびこの組織積載型の支持骨格材料を治療する組織に対して一定の所望の位置に配置することにより達成できる。一例の実施形態において、組織修復は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを組織傷害部位に対して一定の所望の位置に付着させること、および上記生体相容性の支持骨格材料を組織の上に配置することにより達成できる。また、別の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料に集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。また、さらに別の実施形態において、上記の組織を治療する方法は、例えば、上記組織積載型の支持骨格材料の位置を固定することにより治療する組織に対して一定の所望の位置に上記支持骨格材料を固定する別の工程も含むことができる。
【0015】
本発明はまた生活組織における一定の物質の作用を測定するための方法にも関連している。本発明のこの態様によれば、本発明の生体移植可能な組織移植片は各種の組織構造体を形成するために使用可能であり、この構造体は一定の試験物質と接触することにより、生活組織におけるこの物質の作用効果が観察および測定できるようになる。従って、本発明の生体移植可能な組織構造体は、例えば、細胞移動、細胞の増殖および分化および細胞表現型の維持の作用効果等のような、種々の生物学的応答における作用効果を調べることにより生活組織における一定の試験物質の作用効果を測定するための一定の生物学的なスクリーニング・アッセイとして使用できる。
【0016】
上記移植片が組織修復のために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は、例えば、各種の回旋腱板の傷害、ACL崩壊、または半月板断裂等のような筋骨格系内に生じる傷害、ならびに、皮膚および軟骨等のような別の接合組織内において生じる傷害を含む種々の傷害を治療するために使用できる。さらに、これらの移植片は各種の靭帯、神経および腱等のような組織を修復するための手および足の手術等のような別の整形外科的処置において使用できる。
本発明は以下の添付図面と共に考察した場合の上記の詳細な説明を参照することによりさらに完全に理解される。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明によれば、損傷した組織を作成および/または修復するため、および損傷した組織の治癒を速めるための新規な装置および方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の生体相容性の組織移植片は種々の目的のための種々の組織の治療において用いられる。例えば、これらの移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用でき、あるいは、これらは組織増量、組織増強、美顔用治療、医療処置、および組織密封処理のために使用できる。このような組織移植片は一定の生体相容性の支持骨格材料および少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む細分化処理した組織の懸濁物を含み、この場合に、細分化処理した組織の懸濁物は上記支持骨格材料に付随している。本発明の上記懸濁物内の細分化処理した組織は少なくとも1種類の生活可能な細胞を含み、この細胞は上記の組織フラグメントから支持骨格材料上に移動できる。
【0019】
上記移植片は本明細書において「組織修復移植片(tissue repair implants)」として呼ばれる場合があり、これらの移植片を使用する方法が組織修復技法として特徴付けられている場合があるが、これらの移植片が組織修復、組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織密封処理を含むがこれらに限らない種々の組織治療のために使用可能であることが理解されると考える。
【0020】
本発明の生体相容性の組織移植片は少なくとも一部分が細分化処理した組織懸濁物に接触している一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この細分化処理した組織懸濁物は上記支持骨格材料の外表面部、当該支持骨格材料の内表面部、およびこれらの任意の組み合わせにおいて配置可能であり、あるいは、この支持骨格材料の全体が上記細分化処理した組織懸濁物に接触することも可能である。この支持骨格材料は事実上任意の材料または配給ビヒクルにより形成可能であり、この材料は生体相容性で生体移植可能であり、容易に滅菌処理され、一定の動作室内環境における取り扱いを有効に容易にして当該材料が実質的に避けることなく各種の縫合線またはその他の固定手段を許容して保持することを可能にするために十分な構造的完全性および物理的および/または化学的な諸特性を有している。あるいは、この支持骨格材料は一定の欠損部位の場所において硬化する一定の注入可能なゲルの形態にすることも可能である。十分な強度および物理的特性は上記支持骨格材料を形成するために使用する各種材料の選択およびその製造プロセスにより当該支持骨格材料において示される。好ましくは、この支持骨格材料は柔軟性であり、当該支持骨格材料を移植の標的部位の寸法に調節することができる。また、一部の実施形態において、この支持骨格材料は一定の生体吸収性または生体再吸収可能な材料にすることができる。
【0021】
本発明の一例の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の生体相容性のポリマーにより形成できる。種々の生体相容性のポリマーが本発明による各種の生体相容性の組織移植片または支持骨格装置を作成するために使用できる。このような生体相容性のポリマーは各種の合成ポリマー、天然ポリマーまたはこれらの組み合わせ物とすることができる。本明細書において用いられているように、用語の「合成ポリマー(synthetic polymer)」は、これらのポリマーが仮に天然に存在している各種の生体材料により作成されていても、天然には見られないポリマーを意味する。また、用語の「天然ポリマー(natural polymer)」は天然に存在している各種のポリマーを意味する。上記支持骨格材料が少なくとも1種類の合成ポリマーを含む場合の実施形態において、適当な生体相容性の合成ポリマーは各種の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート・ポリアミド・チロシン誘導型ポリカーボネート・ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル・ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、各種アミン基を含みポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、およびこれらの混合物から成る群から選択される各種ポリマーを含むことができる。さらに、本発明における使用に適している合成ポリマーはコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、およびこれらの組み合わせ物において見られる各種シーケンスに基づく各種の生体合成ポリマーを含むこともできる。
【0022】
本発明の目的のために、脂肪族ポリエステルはラクチド(乳酸、D−体、L−体、およびメソ型のラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートの各種アルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体の1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピパロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンおよびこれらのポリマー混合物の各種ホモポリマーおよびコポリマーを含むがこれらに限らない。また、本発明において用いる脂肪族ポリエステルは一定の線形、分枝状または星状の構造を有する各種のホモポリマーまたはコポリマー(ランダム型、ブロック型、セグメント化型、テーパード・ブロック型、グラフト型、トリブロック型等)とすることができる。また、本発明の目的のために、上記ポリ(イミノカーボネート)はケムニッツァー(Kemnitzer)およびコーン(Kohn)により、「ハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),251頁乃至272頁,(1997年))において記載されているような各種ポリマーを含むものと考えられる。また、本発明の目的のために、上記コポリ(エーテル−エステル)はコーン(Cohn)およびユーネス(Younes)により、「ジャーナル・オブ・バイオマテリアルズ・リサーチ(Journal of Biomaterials Research)」,22巻,993頁乃至1009頁,1988年において、およびコーン(Cohn)(例えば、PEO/PLA)により、「ポリマー・プレプリンツ(ACSデイビジョン・オブ・ポリマー・ケミストリー(ACS Division of Polymer Chemistry)」,30(1)巻,498頁,1989年において記載されるような各種のコポリエステル−エーテルを含むものと考えられる。また、本発明の目的のために、上記ポリアルキレン・オキサレートは米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号、および同第4,205,399号において記載されている材料を含む。また、各種のポリホスファゼン類、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレン・カーボネートおよびε−カプロラクトン等から作成される各種ポリマーに基づくコ−、ター−およびさらに高次の混合モノマーがアルコック(Allcock)により、「ジ・エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス(The Encyclopedia of Polymer Science)」,13巻,31頁乃至41頁,ワイリー・インターサイエンシーズ(Wiley Intersciences),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),1988年において、およびバンドルペ(Vandorpe)により、「ハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),161頁乃至182頁,(1997年))において記載されている。また、上記ポリ酸無水物はHOOC-C6 H4 -O-(CH2 )m -O-C6 H4 -COOHの形態の二酸から誘導される材料を含み、この場合に、上記「m」は2乃至8の範囲内の一定の整数であり、さらに、12個までの炭素の脂肪族アルファ−オメガ二酸と当該材料とのコポリマーを含む。また、各種のポリオキサエステル、ポリオキサアミドおよび各種のアミド基および/またはアミノ基を含むポリオキサエステルが以下の米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号および同第5,859,150号の1個以上において記載されている。さらに、上記ポリオルトエステルはヘラー(Heller)により、「ハンドブック・オブ・バイオデイグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),99頁乃至118頁,(1997年))において記載されているような材料を含む。
【0023】
本明細書において用いられているように、用語の「グリコリド(glycolide)」はグリコール酸を含むものとして理解されている。さらに、用語の「ラクチド(lactide)」はL−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含むものとして理解されている。
【0024】
各種の弾性コポリマーもまた本発明において特に有用である。適当な弾性ポリマーはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中におけるポリマーの0.1グラム/デシリットル(g/dL)溶液中において25℃で決定した場合に約1.2dL/g乃至4dL/g、さらに好ましくは約1.2dL/g乃至2dL/g、最も好ましくは約1.4dL/g乃至2dL/gの範囲内の一定の固有粘度を有するポリマーを含む。さらに、適当なエラストマーまたは弾性体は一定の高い伸び率および一定の低い弾性率を示すが、良好な引張強さおよび良好な回復特性を有している。本発明の好ましい実施形態において、上記エラストマーは約200%以上、好ましくは約500%以上の一定の伸び率を示す。これらの伸び率および弾性率に加えて、適当なエラストマーは約500psi(3.5×106 パスカル)以上、好ましくは約1,000psi(6.9×106 パスカル)以上の一定の引張強さ、および約50ポンド/インチ(8.9kg/cm)以上、好ましくは約80ポンド/インチ(14.3kg/cm)以上の一定の引裂強さを有している。
【0025】
本発明において使用できる例示的な生体相容性のエラストマーは約35:65乃至約65:35、さらに好ましくは45:55乃至35:65のε−カプロラクトン対グリコリドのモル比を有するε−カプロラクトンおよびグリコリド(グリコール酸を含む)の弾性コポリマー、約35:65乃至約65:35、さらに好ましくは45:55乃至30:70あるいは約95:5乃至約85:15のε−カプロラクトン対ラクチドのモル比を有するε−カプロラクトンおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、約40:60乃至約60:40のp−ジオキサノン対ラクチドのモル比を有するp−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)およびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のε−カプロラクトン対p−ジオキサノンのモル比を有するε−カプロラクトンおよびp−ジオキサノンの弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のp−ジオキサノン対トリメチレン・カーボネートのモル比を有するp−ジオキサノンおよびトリメチレン・カーボネートの弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のトリメチレン・カーボネート対グリコリドのモル比を有するトリメチレン・カーボネートおよびグリコリド(グリコール酸)の弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のトリメチレン・カーボネート対ラクチドのモル比を有するトリメチレン・カーボネートおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。なお、適当な生体相容性のエラストマーの例が米国特許第4,045,418号、同第4,057,537号および同第5,468,253号において記載されている。
【0026】
一例の実施形態において、上記エラストマーは一定のジオキサン溶媒中において形成されていて一定のポリジオキサノン・メッシュを含む35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。また、別の実施形態において、上記エラストマーは一定のポリジオキサノン・メッシュを含む40:60のε−カプロラクトンおよびラクチドの一定のコポリマーである。さらに別の実施形態において、上記エラストマーはε−カプロラクトンおよびグリコリドの35:65のコポリマーおよびε−カプロラクトンおよびラクチドの40:60のコポリマーの50:50の混合物である。上記のポリジオキサノン・メッシュは一層型の二次元的メッシュまたは多層型の三次元的メッシュの形態にできる。
【0027】
本発明の支持骨格材料は、随意的に、体内環境内において一定の時宜を得た様式で再吸収される能力を有する一定の生体再吸収性または生体吸収性の材料により形成できる。この生体内の諸条件下における吸収時間の違いは本発明の各種の支持骨格材料を形成する場合の2種類の異なるコポリマーの混合に基づくと考えられる。例えば、35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドのコポリマー(比較的に速い吸収性のポリマー)を40:60のε−カプロラクトンおよびL−ラクチドのコポリマー(比較的に遅い吸収性のポリマー)と混合することにより一定の生体相容性の支持骨格材料を形成することができる。採用する処理技法により、上記2種類の成分は不規則に相互接続している二種類の連続的な相になるか、あるいは、これら2種類の成分の各層の間に一定の良好に一体化した境界層を伴う一定の積層型の形態における一定の勾配様式の構造を有することができる。これら支持骨格材料の微小構造は再増殖している組織の所望の解剖構造学的特徴部分を再生または修復するために最適化できる。
【0028】
一例の実施形態において、一定の勾配様式の構造において1種類の組成から別の種類の組成に変化する各種の支持骨格材料を形成するために種々のポリマー混合物を使用することが望ましい。このような勾配様式の構造を有する支持骨格材料は軟骨(関節、半月板、中隔、気管、耳介、肋骨等)、腱、靭帯、神経、食道、皮膚、骨、および脈管組織等のような天然に存在する組織の構造を修復または再生するための組織工学的な用途において特に有利である。例えば、ε−カプロラクトン−コ−グリコリドの一定のエラストマーをε−カプロラクトン−コ−ラクチドと(例えば、約5:95のモル比で)混合することにより、例えば、軟骨から骨の変化に類似している一定の様式で、一定の比較的に軟質のスポンジ状の物質から一定の比較的に硬質の剛性の物質に変化している一定の支持骨格材料が形成できる。明らかに、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記と類似の勾配作用に対応するために、あるいは、別の勾配(例えば、異なる吸収特性、応力応答特性、または異なる弾性の程度)を得るために別のポリマー混合物が使用可能であることが認識できる。例えば、上記のような設計の特徴は本発明の各種支持骨格材料に付随している細分化組織の懸濁物における一定の濃度勾配を設定することができ、一定の領域(例えば、外側の各部分)におけるよりも高い組織フラグメントの濃度を移植片の別の領域(例えば、一定の内側の部分)に設定できる。
【0029】
本発明の組織修復移植片における生体相容性の支持骨格材料は、例えば、織り状、編み状、縦編み状、(すなわち、レース様)、不織状、および編み組状の各種構造を有する任意の吸収性または非吸収性の布地により構成されている一定の補強材料も含むことができる。一例の実施形態において、この補強材料は一定のメッシュ様の構造を有している。上記の構造のいずれにおいても、その材料の機械的特性はその材料の密度または組織、材料の編み方または織り方、材料の厚さを変化すること、またはその材料中に各種の粒状物質を埋め込むことにより変更できる。また、上記材料の機械的特性はそのメッシュ内に各種の部位を形成することにより変更することも可能であり、これらの部位において、各繊維は互いに物理的に結合しているか、例えば、一定の接着剤または一定のポリマー等のような別の物質と物理的に結合している。上記補強材料を作成するために用いる繊維は各種のモノフィラメント、糸、より糸、編み組糸、または複数の繊維の束とすることができる。さらに、これらの繊維はポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレン・カーボネート(TMC)、およびこれらのコポリマーまたは混合物等のような生体吸収性の材料を含む任意の生体相容性の材料により作成できる。また、これらの繊維はシルク(絹)およびコラーゲンを基材とする各種材料を含む各種の天然ポリマーを基材とする任意の生体相容性の材料により作成することも可能である。さらに、これらの繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリ(ビニル・アルコール)等のような非吸収性の任意の生体相容性の繊維により作成することもできる。一例の実施形態において、上記繊維はラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマーにより形成されている。
【0030】
別の実施形態において、上記補強材料を形成している繊維は一定の生体吸収性のガラス材料により作成可能である。生体ガラス、一定のケイ酸塩含有のリン酸カルシウム・ガラス、または再吸収時間を調整するために種々の量の固形粒子が添加されているリン酸カルシウム・ガラスが各種のガラス繊維として延伸可能であり上記補強材料として使用できる材料の例として挙げられる。添加できる適当な固形粒子は鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、およびこれらの組み合わせ物を含む。
【0031】
上記の生体相容性の支持骨格材料および補強材料は組織の内部成長を可能にするための複数の孔または気孔を有する一定の薄い気孔を含む弾性シート材料により形成することもできる。このようなシート材料はポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびポリジオキサノン(PDO)の各種の混合物またはコポリマーにより作成可能である。
【0032】
一例の実施形態において、上記の生体相容性の支持骨格材料または補強材料を形成するフィラメントは一定のシース/コア構造を有する一定のフィラメントを製造するために同時押出成形できる。これらのフィラメントは一定の生体崩壊性のポリマーにより構成されている1個以上のコアを囲む別の生体崩壊性のポリマーのシースを有している。さらに、一定の遅い吸収性のコアを囲む一定の速い吸収性のシースを伴う各種のフィラメントが組織の内部成長のために延長された支持を必要とする場合において望ましい。
【0033】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記補強材料における1個以上の層が本発明の組織移植片を補強するために使用できることが認識できる。加えて、同一の構造および化学的性質または異なる構造および化学的性質の、例えば、メッシュ等のような、各種の生体崩壊性の布地の支持骨格材料を互いに重ね合わせることにより優れた機械的強度を有する各種の生体相容性の組織移植片が製造できる。
【0034】
上記支持骨格材料が少なくとも1種類の天然ポリマーを含む場合の実施形態において、この天然ポリマーの適当な例は各種のフィブリン基材の材料、コラーゲン基材の材料、ヒアルロン酸基材の材料、糖タンパク質基材の材料、セルロース基材の材料、シルクおよびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。例えば、非限定的な例として、上記生体相容性の支持骨格材料は一定のコラーゲン基材の小腸粘膜下組織により構成可能である。
【0035】
本発明の別の実施形態において、上記生体相容性の支持骨格材料は一定の生体相容性のセラミック材料により形成できる。適当な生体相容性のセラミック材料は、例えば、ヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体活性ガラス材、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、異種および同種異系の骨材料およびこれらの組み合わせ物を含む。本発明における使用に適している生体活性ガラス材料はリン酸カルシウム・ガラスを含有している種々のケイ酸塩または再吸収時間を調整するために種々の量の固形粒子が添加されているリン酸カルシウム・ガラスを含む。さらに、上記リン酸カルシウムの生体活性ガラス材料に組み込むことのできる適当な化合物は酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。
【0036】
本発明の組織移植片のさらに別の実施形態において、上記支持骨格材料は同種異系の組織、自家組織および異種組織により得られるような、各種の組織移植片により形成可能である。例えば、非限定的な例として、皮膚、軟骨、靭帯、腱(tendon)、骨膜、軟骨膜、滑膜、筋膜、腸間膜および腱(sinew)が上記生体相容性の支持骨格材料を形成するための組織移植片として使用できる。一定の同種異系の組織を使用する一部の実施形態において、一定の胎児または新生児からの組織が一部の成人の組織に伴う免疫抗原性を回避するために使用できる。
【0037】
別の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の欠損部位において位置を設定できる一定の注入可能なゲルの形態にすることも可能である。このゲルはアルギネート、架橋化アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン・ゲル、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、アガロース、キチン、キトサン、セルロース、多糖類、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレン・オキシド)−ポリ(プロピレン・オキシド)の一定のコポリマー、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリアクリレート、高濃度血小板血漿(PRP)クロット、低濃度血小板血漿(PPP)クロット、マトリゲル(Matrigel)、またはこれらの混合物を含む一定の生物学的なまたは合成のヒドロゲルとすることができる。
【0038】
上記組織移植片のさらに別の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の連続気泡型の気孔構造を有する複数の気孔を含む一定の高分子発泡体部品により形成できる。この気孔の寸法は変更可能であるが、好ましくは、これらの気孔は組織の内部成長を可能にする大きさである。さらに好ましくは、この気孔寸法は約50ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内であり、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である。上記高分子発泡体部品は、随意的に、例えば、上述した各種の布地等のような、一定の補強部品を含むことができる。さらに、上記高分子発泡体部品が一定の補強部品を含む一部の実施形態において、この発泡体部品は当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品と連結するようにその補強部品に対して一体化できる。
【0039】
上記組織移植片における発泡体部品は当該技術分野における通常の熟練者において良く知られている種々の技法により一定の発泡体として形成できる。例えば、これらの高分子開始材料は凍結乾燥、超臨界溶媒発泡処理(すなわち、欧州特許(EP)第464,163号において記載されているような処理)、ガス注入押出成形、ガス注入成形、または一定の抽出可能な材料(例えば、塩類、糖または類似の適当な材料)を伴うキャステイング処理により発泡させることができる。
【0040】
一例の実施形態において、本発明の工学処理を施した組織修復移植片装置における発泡体部品は、凍結乾燥処理等のような、一定のポリマー−溶媒相分離技法により作成可能である。しかしながら、一般に、一定のポリマー溶液は以下の4種類の技法、すなわち、(a)熱誘導型のゲル化/結晶化法、(b)溶媒相およびポリマー相の無溶媒誘導型分離法、(c)化学誘導型相分離法、および(d)熱誘導型尖点分解法の内のいずれか一つにより二相に分離できる。さらに、このポリマー溶液は2種類の異なる相または2種類の連続的な相のいずれかに一定の調整された様式で分離される。その後、この溶媒相を除去することにより、通常的に全体のポリマーの密度よりも小さい一定の多孔質構造およびマイクロメートルの範囲内の複数の気孔が残る。例えば、「マイクロセルラー・フォームズ・ビア・フェーズ・セパレーション(Microcellular Foams Via Phase Separation)」,ジャーナル・オブ・VAC.ソサイエテイ・テクノロジー(J. Vac. Sci. Technol.),A.T.ヤング(A. T. Young),4(3)巻,5月/6月,1986年を参照されたい。
【0041】
上記発泡体の調製に関連する工程は凍結乾燥処理する各種ポリマーに対応して適正な溶媒をそれぞれ選択する工程および一定の均質な溶液を調製する工程を含む。次に、このポリマー溶液は一定の凍結処理および真空乾燥処理の工程にかけられる。この凍結工程はポリマー溶液を相分離し、真空乾燥工程は昇華および/または乾燥処理によりその溶媒を除去して、一定の多孔質のポリマー構造または一定の相互接続している連続気泡型の多孔質発泡体を残す。
【0042】
上記発泡体部品の調製において使用できる適当な溶媒はギ酸、ギ酸エチル、酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、フッ化ジメチレン(DMF)、およびポリジオキサノン(PDO))、アセトン、C2乃至C5のアルコールの酢酸エステル(例えば、酢酸エチルおよびt−ブチルアセテート)、グライム(例えば、モノグライム、エチル・グライム、ジグライム、エチル・ジグライム、トリグライム、ブチル・ジグライム、およびテトラグライム)、メチルエチル・ケトン、ジプロピレングリコール・メチル・エーテル、ラクトン(例えば、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレン・カーボネート)、ジメチルカーボネート、ベンゼン、トルエン、ベンジル・アルコール、p−キシレン、ナフタレン、テトラヒドロフラン、N−メチル・ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1,2−ジクロロメタン、モルホリン、ジメチルスルホキシド、ヘキサフルオロアセトン・セスキ・ヒドレート(HFAS)、アニソール、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。さらに、これらの溶媒の内において、好ましい溶媒は1,4−ジオキサンである。また、上記溶媒中における上記ポリマーの一定の均質な溶液が標準的な各種の技法により調製される。
【0043】
適用可能なポリマー濃度または利用可能な溶媒の量はそれぞれのシステムまたは系により変更可能である。一般に、上記溶媒中のポリマーの量は、一定の溶媒中におけるポリマーの溶解度および上記発泡体において望まれる最終的な諸特性等の各種要因により、約0.5重量%乃至約90重量%の範囲において変更可能であり、好ましくは、約0.5重量%乃至約30重量%の範囲において変更する。
【0044】
一例の実施形態において、種々の固形物を上記のポリマー−溶媒システムに添加することにより結果として得られる発泡体の表面における組成を変更することが可能である。これにより、添加した粒子が溶液からその下面部に沈殿するのに従って、その添加した固形物の組成を含み発泡した高分子材料を含まない各種の領域が形成される。あるいは、添加した固形物は得られる組織移植片の所望の領域(すなわち、上部、側部、または下部の近く等)において比較的に多く濃縮することが可能であり、これにより、そのような全ての領域において組成の変化を生じることができる。例えば、選択された各場所における固形物の濃度が金属製の固形物を一定の磁気材料により作成した一定の金型の中に入れた溶液中に添加する(あるいは、逆にする)ことにより達成できる。
【0045】
種々の固形物が上記のポリマー−溶媒システムに添加できる。好ましくは、上記固形物は上記のポリマーまたは溶媒に対して反応しない一定の種類である。一般に、この添加する固形物は約1.0mmの一定の平均直径を有しており、好ましくは、約50ミクロン乃至約500ミクロンの一定の平均直径を有している。また、好ましくは、上記固形物は当該粒子およびポリマー−溶媒の混合物の全体の容量において約1容量%乃至約50容量%を成すような一定の量で存在している(この場合に、上記全体の容量は100容量%に等しい)。
【0046】
例示的な固形物は鉱物質除去した骨、リン酸カルシウム粒子、生体ガラス粒子、硫酸カルシウム、または骨修復用の炭酸カルシウムの粒子、気孔形成用の抽出可能な固形物、および補強材料として有効であるか吸収される時に気孔を形成する上記溶媒システム中において不溶性の各種生体吸収性ポリマーの粒子、および非生体吸収性の各種材料を含むがこれらに限らない。
【0047】
さらに、適当な抽出可能な固形物は塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、生体相容性の単糖類および二糖類(例えば、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトースおよびスクロース)、多糖類(例えば、デンプン、アルギネート、キトサン)、水溶性タンパク質(例えば、ゼラチンおよびアガロース)等のような無毒性の抽出可能な物質を含む。これらの抽出可能な物質は一定の溶媒中に当該抽出可能な物質を含む発泡体を浸漬することにより除去でき、この溶媒中においてこの物質の粒子は当該粒子の実質的に全ての浸出を可能にするのに十分な量の時間をかけて溶解可能であるが、この溶媒は上記発泡体を溶解せず、あるいは、有害な変化を生じない。好ましい抽出溶媒は水であり、最も好ましくは蒸留した脱イオン水である。このようなプロセスが米国特許第5,514,378号において記載されている。好ましくは、上記発泡体は、当該発泡体の加速された吸着が望まれない限り、この発泡体の加水分解を最少にするために上記抽出処理の完了後に低温度および/または減圧下において乾燥される。
【0048】
さらに、適当な非生体吸収性の材料はステンレス・スチール、コバルト−クロム、チタンおよび各種チタン合金、および生体不活性な各種セラミック粒子(例えば、アルミナ、ジルコニア、および硫酸カルシウム粒子)等のような生体相容性の金属を含む。さらに、上記非生体吸収性の材料はポリエチレン、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリ(エチレン・テレフタレート)、シリコーン、ポリエチレン・オキシド、ポリエチレン・グリコール、ポリウレタン、ポリビニル・アルコール、天然ポリマー(例えば、セルロース粒子、キチン、およびケラチン)、およびフッ素化した各種のポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン)等のようなポリマーを含むこともできる。
【0049】
さらに、上記組織移植片を放射線不透過性にする各種の固形物(例えば、硫酸バリウム)を添加することも可能である。さらに、添加可能な固形物として、組織の再生または再増殖を助長する添加物、ならびに、種々の緩衝物質、補強物質または多孔質改質剤として作用する添加物も含まれる。
【0050】
上記において述べられているように、本発明の補強された組織修復移植片装置は上記の適当なポリマー溶液を一定の金型および本発明の補強要素を含む一定の金型組立体の中に射出、注入、またはその他の方法で入れることにより作成される。その後、この金型組立体を一定の適当な槽内または一定の冷却した棚の上において冷却した後に凍結乾燥処理することにより、一定の補強された支持骨格材料が得られる。この場合に、一定の生物学的な成分を上記凍結乾燥工程の前または後に添加できる。このような発泡体部品の形成の途中において、上記ポリマー−溶媒システムの凍結速度を制御することが重要であると考えられる。さらに、この凍結乾燥工程中に進展する気孔の形態の種類は溶液の熱力学的要因、凍結速度、冷却温度、溶液の濃度、および均質または異質の核形成のいずれが生じているか等のような種々のファクターの関数である。なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、過度の実験を行なうことなく上記の各種パラメーターを容易に最適化することが可能である。
【0051】
上記の必要とされる一般の処理工程は上記の高分子発泡体および補強部品を作成する各種の適当な材料の選択を含む。一定のメッシュ状の補強材料を使用する場合には、適当なメッシュ密度を選択する必要がある。さらに、この補強材料は上記金型内に適正に位置合わせされる必要があり、上記ポリマー溶液は一定の適当な速度で、好ましくは、気泡の形成を避けるために一定の適当な角度で傾斜している一定の金型の中に添加される必要があり、さらに、このポリマー溶液は凍結乾燥処理される必要がある。
【0052】
一定のメッシュ状の補強材料を利用する実施形態において、この補強用のメッシュ材料は一定の密度を有している必要がある。すなわち、このメッシュ材料中の各開口部はその構造を縫合可能にまたはその他の方法により固定可能にする程度に十分に小さいが、上記発泡体材料およびその各連続気泡および気泡の壁部が当該メッシュ材料の各開口部の中に進入する際にこれら発泡体と補強用メッシュ材料との間の適当な連結を妨げるほどには小さくないことが必要である。すなわち、適当な連結状態がなければ、その層状構造の完全性が損なわれて、その構造が脆弱になり取り扱いが困難になる。上記メッシュ材料の密度がその構造の機械的強度を決定するので、このメッシュ材料の密度は組織修復における所望の用途に従って変更可能である。加えて、このメッシュ材料において用いられている織り方の種類により、その構造の機械的強度の方向性、ならびに、例えば、弾性、剛性、破裂強さ、縫合線保持強さおよび構造の極限引張強さ等のようなその補強材料の機械的特性が決定できる。例えば、非限定的な例において、本発明の一定の発泡体を基材とする生体相容性の支持骨格材料における上記のメッシュ状補強材料は一定の方向において剛性を示し、別の方向において弾性を示すように設計することができ、あるいは、このメッシュ状補強材料を等方性にすることもできる。
【0053】
上記補強化した発泡体の凍結乾燥処理中に、幾つかのパラメーターおよび処置が所望の構造完全性および機械的特性を有する移植片を製造するために重要である。好ましくは、上記補強材料は上記金型の中に入れる時に実質的に平坦である。この平坦さの適当な程度を確実にするために、この補強材料(例えば、メッシュ材)は金型の中に入れる前に一定の加熱したプレス機により平坦にプレス処理される。さらに、上記補強用の構造が等方性でない場合に、方向性を示すためにその構造を標識することによりその異方性を指示することが望ましい。このことは織り状の補強材料の中に各種の染色した標識または染色した糸等のような1個以上の指示手段を埋め込むことにより達成できる。これにより、その指示手段の方向または配向が一定の医者に対して物理的な特性が優れている移植片の大きさを示す。
【0054】
上述したように、凍結乾燥処理の前に上記ポリマー溶液を金型に加える様式は適当な機械的な完全性を伴う一定の組織移植片を形成することに起因する。一定のメッシュ状の補強材料を使用して、この材料が2個の薄い(例えば、0.75mm)のシムの間に配置されると仮定する場合に、この材料を金型内の一定の所望の深さにおいて一定の実質的に平坦な配向状態で配置する必要がある。その後、上記ポリマー溶液が上記発泡体部品の各層の間から気泡を逃避可能にする一定の様式で注ぎ込まれる。好ましくは、この金型は一定の所望の角度で傾斜しており、注入が気泡の形成を最良に防止するために一定の調整された速度で行なわれる。当該技術分野における通常の熟練者であれば多数の変量により上記の傾斜角度および注入速度が調整されることが認識できる。一般に、上記金型は気泡形成を避けるために約1度よりも大きな一定の角度で傾斜する必要がある。加えて、上記注入速度は気泡が金型の中に捕捉されずに、金型から逃避することを可能にするために十分に遅くする必要がある。
【0055】
一定のメッシュ材料が上記補強部品として用いられる場合に、このメッシュの各開口部の密度は所望の機械的な諸特性を伴う結果物としての組織移植片の形成における一定の重要な要因である。さらに、一定の低密度な開口編み状のメッシュ材料が好ましい。一例の好ましい材料は商品名をビクリル(VICRYL)(ニュージャージー州サマービルのエシコン社(Ethicon, Inc.)として販売されているグリコリドおよびラクチドの90:10のコポリマーである。一例の例示的な低密度の開口編み状のメッシュ材料はニュージャージー州サマービルのエシコン社(Ethicon, Inc.)から入手可能なニッテド・ビクリルVKM−M(Knitted VICRYL VKM-M)である。別の好ましい材料はポリジオキサノンまたはラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマーである。
【0056】
一定のメッシュ材料の密度または「開口度(openness)」は一定のコンピュータによりインターフェイスされた一定のデジタル・ホトカメラにより評価できる。一例の評価において、上記メッシュ材料の密度を一定のIBM300PL型コンピュータによりインターフェイスされた一定のソニー(Sony)デジタル・ホトカメラDKC−5000を伴う一定のニコンSMZ−Uズーム(Nikon SMZ-U Zoom)により決定した。さらに、20倍に拡大した各メッシュ材の断面のデジタル画像をイメージ−プロ・プラス(Image-Pro Plus)4.0ソフトウェアを用いて操作することによりそのメッシュ密度を決定した。一定のデジタル画像を上記ソフトウェアにより捕捉した後に、そのメッシュ材における空の空間部分に相当する面積がその画像の全面積から差し引かれるようにその画像に一定の閾値が設定される。すなわち、このメッシュ密度は残りのデジタル画像の割合として考えられている。この結果、最も望ましい機械的な諸特性を有する移植片は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有する材料であることが分かった。
【0057】
一例の実施形態において、軟骨修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されており、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。関節軟骨の場合に、細胞および組織の内部増殖を可能にする好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0058】
また、別の実施形態において、軟骨修復において好ましい支持骨格材料は一定の不織状の構造である。さらに好ましくは、この不織構造の組成はパナクリル(PANACRYL)、すなわち、ラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマー、ビクリル(VICRYL)、すなわち、グリコリドおよびラクチドの90:10のコポリマー、または商品名をエシソーブ(ETHISORB)(ジョンソン・アンド・ジョンソン・インターナショナル(Johnson & Johnson International)、ベルギー国)として販売されているポリジオキサノンおよびビクリル(VICRYL)の一定の混合物である。関節軟骨の場合に、細胞および組織の内部増殖を可能にする好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有している。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約100ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。さらに、上記不織状の支持骨格材料は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの一定の厚さを有している。
【0059】
一例の実施形態において、半月板修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されている発泡体であり、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。細胞および組織の内部増殖を可能にするための好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。この実施形態において、上記の好ましい使用方法は上記支持骨格材料により細分化した軟骨組織を囲むことである。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0060】
一例の実施形態において、腱または靭帯の修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されている発泡体であり、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。細胞および組織の内部増殖を可能にするための好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0061】
別の実施形態において、上記の腱または靭帯の修復において好ましい支持骨格材料は一定の遅い再吸収特性(例えば、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月)および高い機械的強度を有する一定のポリマーにより構成されている。さらに好ましくは、この支持骨格材料の引張強さおよび弾性率は自然な靭帯のそれぞれの特性に類似している。すなわち、この支持骨格材料の好ましい引張強さは約500N乃至4000N、さらに好ましくは約1000N乃至2500Nである。また、この支持骨格材料の好ましい弾性率は約100N/m乃至300N/m、さらに好ましくは約150N/m乃至200N/mである。さらに、この支持骨格材料の好ましい構造は一定の円筒形状または楕円形状の支持骨格、あるいは、一定の高いアスペクト比(すなわち、幅に対する長さの比率値)を有する一定の支持骨格である。好ましくは、このアスペクト比は1よりも大きく、さらに好ましくは2よりも大きく100よりも小さい。さらに、上記支持骨格材料は好ましくは約3mm乃至12mm、さらに好ましくは約4mm乃至10mmの範囲内の直径または幅を有している。例えば、非限定的な例として、靭帯修復用の支持骨格材料はラクチドおよびグリコリドの一定の95:5のコポリマーを含むことができる。一例の実施形態において、上記靭帯修復用の支持骨格材料はラクチドおよびグリコリドの一定の95:5のコポリマーおよび、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトンおよびこれらの組み合わせ物等のような別の種々のポリマーを含む一定の複合構造体として形成できる。また、この支持骨格材料は一定の織り状、編み状または編み組状の材料により形成できる。随意的に、この支持骨格材料を作成する種々のポリマーは、例えば、一定の製織構造またはメッシュ構造等のような一定の不織状の布地構造体として形成可能であり、あるいは、一定の発泡体として形成できる。別の実施形態において、上記の複合構造体は、例えば、コラーゲン、フィブリン、またはシルク等のような天然の各種ポリマーを含むことができる。このような実施形態において、その天然ポリマーはその複合構造体に対する一定の被膜として作用することができ、あるいは、この天然ポリマーは一定の発泡体として形成可能である。さらに、上記の複合構造体はその支持骨格の全体において、あるいは、その支持骨格の周縁部のみにおいて存在するようにコラーゲンまたはシルクの部材片を随意的に含むこともできる。
【0062】
一例の実施形態において、上記靭帯または腱の修復において有用な支持骨格材料は複数のフィラメントにより形成されており、これらの繊維の大部分はその長手方向に沿って整列している。
【0063】
当該技術分野における熟練者であれば、本発明の生体相容性の支持骨格材料を形成するための適当な材料の選択が幾つかの要因により決まることが理解できる。これらの要因は生体内の機械的性能、細胞の接着、増殖、移動および分化に関する細胞の材料に対する応答、生体相容性、および随意的に、生体吸収(または、生体崩壊)速度を含む。さらに別の関連の要因は化学的組成、各種成分の立体的な分布、ポリマーの分子量、および結晶性の程度を含む。
【0064】
上記生体相容性の支持骨格材料に加えて、本発明の組織修復移植片はさらにその支持骨格材料の少なくとも一部分に付随する少なくとも1種類の生活可能な組織のサンプルを含む。この用語の「生活可能な(viable)」は、本明細書において用いられているように、1個以上または1種類以上の生活可能な細胞含む一定の組織サンプルを意味する。事実上、あらゆる種類の組織が本発明の組織修復移植片を構成するために使用可能である。好ましくは、使用する組織は軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、骨組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、脂肪組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、脈管組織、血液およびこれらの組み合わせ物から選択される。軟骨修復において有用な一例の実施形態において、上記組織は骨組織を含まず、軟骨組織、半月板組織、靭帯組織および腱組織から成る群から選択される。さらに、この組織移植片を構成するために用いる組織は自家組織、同種異系組織、異種組織とすることができる。
【0065】
半月板修復において有用な一例の実施形態において、この組織修復移植片において用いる組織は半月板組織、軟骨組織、皮膚、滑膜組織、骨膜組織、心膜組織、脂肪組織、骨髄、血液、腱組織、靭帯組織、またはこれらの組み合わせ物から成る群から選択できる。また、靭帯修復において有用な一例の実施形態において、その組織修復移植片において用いる組織は腱組織、修復する靭帯と同一種の靭帯組織、修復する組織とは異なる種類の靭帯組織、滑膜組織、骨膜組織、筋膜、皮膚、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択できる。
【0066】
上記組織は、例えば、生検またはその他の外科的な除去手段による等のような、種々の従来技法のいずれかにより入手できる。好ましくは、この組織サンプルは無菌の条件下に入手される。一定の生活組織のサンプルを入手した後に、このサンプルを無菌条件下に処理して、少なくとも1種類の細分化した、あるいは、微細分割した組織粒子を含む一定の懸濁液が形成できる。各組織フラグメントの粒度は変更可能であり、例えば、この組織の大きさは約0.1mm3 乃至3mm3 の範囲内、約0.5mm3 乃至1mm3 の範囲内、約1mm3 乃至2mm3 の範囲内、あるいは、約2mm3 乃至3mm3 の範囲内にすることができるが、好ましくは1mm3 より小さい。
【0067】
好ましくは、上記の細分化した組織はその組織フラグメントから上記支持骨格材料上に移動できる少なくとも1種類の生活可能な細胞を有している。さらに好ましくは、この組織はその組織フラグメントから移動して上記支持骨格材料に集団化を始めることができる一定の有効量の細胞を含む。一定の随意的な実施形態において、その細分化した組織フラグメントは各細胞を囲っている細胞外基質からの細胞の移動を容易にするために一定の基質消化酵素に接触させることができる。これらの酵素は一定の細胞外基質からの支持骨格材料内への細胞の移動速度を高めるために用いられる。本発明において使用できる適当な基質消化酵素はコラーゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、ペプチダーゼ、テルモリジンおよびプロテアーゼを含むがこれらに限らない。
【0068】
一例の実施形態において、上記細分化した組織粒子はこれらの組織粒子が一定の生理学的な緩衝溶液を伴っている一定の懸濁液として形成できる。適当な生理学的な緩衝溶液は塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス平衡塩類、トリス緩衝塩水、ヘペス緩衝塩水、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。加えて、上記組織は漿液の存在下または非存在下のいずれかにおいて当該技術分野における通常の熟練者において知られている任意の標準的な細胞培養培地内において細分化できる。この細分化した組織の懸濁液を上記支持骨格材料上にまたは一定の組織傷害部位に付着する前に、この細分化した組織の懸濁液を濾過して濃縮することにより、組織粒子の乾燥を防ぐために少量のみの生理学的な緩衝溶液をその懸濁的に残すことができ、その細分化した組織粒子を支持骨格材料または傷害部位に直接的に供給できる。好ましくは、この細分化した組織粒子は約1mg/cm2 乃至100mg/cm2 の範囲内、さらに好ましくは約1mg/cm2 乃至20mg/cm2 の範囲内における一定濃度で装填される。
【0069】
上記の細分化した生活組織の懸濁液は、その組織と支持骨格材料が結合するように、一定の生体相容性の支持骨格材料の上にこの生活組織の懸濁液を付着させることにより本発明による一定の組織修復移植片を形成するために使用できる。好ましくは、この組織は上記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している。このような組織修復移植片は一定の被検体内に速やかに移植可能であるか、あるいは、この構造体を一定の持続時間にわたりその組織サンプルの生活能力を維持するために有効な諸条件下において無菌条件下に培養できる。この構造体が培養される実施形態において、その培養条件は変更可能であるが、好ましくは、上記構造体は1時間乃至6週間、さらに好ましくは約1週間乃至6週間の範囲内の一定の持続時間にわたり、約20℃乃至40℃の範囲内の一定温度で、約5%乃至10%の二酸化炭素(CO2 )を含有する一定の雰囲気中において、例えば、約100%の湿度のような高湿度で培養される。
【0070】
さらに、一定のキットが上記本発明の組織修復移植片の調製補助のために使用できる。本発明によれば、このキットは1個以上の生体相容性の支持骨格材料、一定の被検体から生活組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および当該組織サンプルの生活能力を持続するための1種類以上の試薬を収容している一定の無菌容器を含む。この組織サンプルの生活能力を持続するための適当な試薬は、例えば、塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス平衡塩類、標準細胞培養培地、ダルベッコ修飾イーグル培地、アスコルビン酸、ヘペス、可欠アミノ酸、L−プロリン、ウシ退治血清、自己由来漿液、およびこれらの組み合わせ物等のような一定の生理学的溶液を含む。さらに、上記キットは組織を細分化した組織粒子に分割するための一定の処理工具を含むことができ、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してこのサンプルを処理して微細分割した組織粒子にすることに適合可能である。また、上記キットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から一定の被検体に移植のために移送するための一定の配給装置も含むことができる。
【0071】
さらに、一定の生物学的な成分を随意的に本発明の組織修復移植片に組み込むことができる。好ましくは、この生物学的な成分は上述した支持骨格材料の中に組み込まれているか、あるいは、当該支持骨格材料の上に塗布されている。この生物学的な成分が支持骨格材料の上に塗布されている実施形態において、この生物学的な成分は好ましくはその支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している。例えば、非限定的な例として、上記生体相容性の支持骨格材料は細分化した組織フラグメントの懸濁液を当該支持骨格材料に固定するための一定の接着剤を含むことができる。好ましくは、この接着剤は一定の固定剤、一定の架橋剤(すなわち、化学的または物理的な手段)、およびこれらの組み合わせ物である。
【0072】
適当な固定剤はヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、マッセル基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、多糖類基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、低濃度血小板血漿(PPP)、PRPのクロット、PPPのクロット、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイル・グリセロール−コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール−コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0073】
適当な架橋剤は、例えば、ジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光(例えば、青色光およびUV光)、pH、温度、およびこれらの組み合わせを含む。
【0074】
本発明において用いられる上記生物学的成分は、一定の傷害部位に存在する時に、その傷ついた組織の治癒および/または再生を助長する種々のエフェクターの中から選択することも可能である。このような治癒を実際に助長または促進する種々の化合物または薬物であることに加えて、これらのエフェクターはさらに感染を予防する種々の化合物または薬物(例えば、各種の抗菌剤および抗生物質)、炎症を減少する種々の化合物または薬物(例えば、各種の抗炎症剤)、酸化再生セルロース(例えば、エシコン社(Ethicon, Inc.)から入手可能なインターシード(INTERCEED)(登録商標)およびサージセル(Surgicel)(登録商標))またはヒアルロン酸等のような、接着形成を防止または最少にする種々の化合物、および免疫系を抑制する種々の化合物または薬物(例えば、各種の免疫抑制剤)を含むこともできる。
【0075】
例えば、上記本発明の移植片内に存在する別の種類のエフェクターは各種の異種または自己由来の増殖因子、タンパク質(基質タンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコスアミノグリカン、核酸、鎮痛薬、ウイルス、ウイルス粒子、および細胞型を含むことができる。さらに、同一または異なる官能性の1種類以上のエフェクターを上記移植片の中に組み込むことが可能であることが理解されると考える。
【0076】
適当なエフェクターの例は傷害を受けたまたは損傷した組織の治癒および/または再生を助長することが知られている多数の異種または自己由来の増殖因子を含む。これらの増殖因子は上記生体相容性の支持骨格材料の中に直接的に組み込むことができ、あるいは、この生体相容性の支持骨格材料は、例えば、血小板等のような一定の増殖因子の供給源を含むことができる。例示的な増殖因子はTGF−β、骨形態発生タンパク質、軟骨由来形態発生タンパク質、線維芽増殖因子、血小板由来増殖因子、脈管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、表皮増殖因子、インスリン様増殖因子、肝細胞増殖因子、およびこれらの各種フラグメントを含むがこれらに限らない。適当なエフェクターは同様に上述した各物質の各種のアゴニストおよびアンタゴニストを含む。上記の増殖因子はまた上記の各増殖因子の組み合わせ物も含むことができる。加えて、この増殖因子は血液中の血小板により供給される自己由来の増殖因子とすることができる。この場合に、この血小板からの増殖因子は種々の増殖因子の未定の混合物になる。
【0077】
上記移植片内に存在できるタンパク質は、当該移植片内に収容されると共に一定の単離された形態で移植片内に存在している、一定の細胞または、例えば、一定の血小板等のような別の生物学的供給源から分泌される各種のタンパク質を含む。このようなタンパク質の単離された形態は一般的に約55%またはそれ以上の純度のタンパク質であり、別の細胞のタンパク質、分子、破片等から単離されている。さらに好ましくは、この単離されたタンパク質は少なくとも65%の純度、最も好ましくは少なくとも約75%乃至95%の純度のタンパク質である。なお、上記にかかわらず、当該技術分野における通常の熟練者であれば、約55%よりも低い純度を有する各種のタンパク質も依然として本発明の範囲に含まれると考えられることが認識できる。本明細書において用いられているように、用語の「タンパク質(protein)」は各種の糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、およびこれらのフラグメントを含む。上記エフェクターとして有用なタンパク質の例はプレイオトロフィン、エンドセリン、テナスシン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、細糸(マイクロフィラメント)、中間フィラメント、抗体、エラスチン、フィブリリン、およびこれらのフラグメントを含むがこれらに限らない。
【0078】
グリコスアミノグリカン、すなわち、細胞接着において一定の役割を果たす高度に荷電している多糖類もまた本発明によるエフェクターとして作用できる。このようなエフェクターとして有用な例示的なグリコスアミノグリカンは硫酸ヘパリン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナン(ヒアルロン酸としても知られている)およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0079】
本発明の生体相容性の支持骨格材料は各種の細胞をその内部に組み込むことも可能である。本発明によるエフェクターとして作用できる適当な細胞型は骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞先祖、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、脂肪細胞、単核細胞、プラスマ細胞、マスト細胞、臍帯細胞、間質細胞、間葉細胞、表皮細胞、筋芽細胞、タン細胞、靭帯線維芽細胞、神経単位、および骨髄細胞を含むがこれらに限らない。各種の細胞は一般的に一定の同種リガンド(例えば、一定の刺激因子)に応答するそれぞれの表面レセプタ分子を有している。一定の刺激因子は一定のリガンドであり、その同種のレセプタに接触すると、そのレセプタを有する細胞に特定の生物学的作用を生じさせる。例えば、一定の刺激因子(またはリガンド)に応答して、一定の細胞が相当量の、Ca2+等のような、二次的なメッセンジャーを生成できるようになり、これらのメッセンジャーは、タンパク質キナーゼC等のように(本発明者の実施例に一貫して)、種々のタンパク質のリン酸化反応等のような細胞過程において後続的な作用を及ぼす。一部の例において、一定の細胞が適当な刺激因子により刺激されると、この細胞は通常において一定のタンパク質(各種の糖タンパク質、プロテオグリカン、およびリポタンパク質)の形態で一定の細胞メッセンジャーを分泌する。さらに、このような細胞メッセンジャーは一定の抗体(例えば、種々のプラスマ細胞から分泌される)、一定のホルモン(例えば、パラクリン、オートクライン、またはエキソクラインのホルモン)、一定のサイトカイン、または天然または合成のこれらの各種フラグメントとすることができる。
【0080】
本発明の組織移植片はまた各種の核酸、ウイルス、またはウイルス粒子が関連の一定の遺伝子を配給する種々の遺伝子療法技法において使用可能であり、この遺伝子は特定の細胞または細胞型に対して関連する少なくとも1種類の遺伝子生成物をコード化する。従って、上記生物学的エフェクターは一定の核酸(例えば、DNA、RNA、または一定のオリゴヌクレオチド)、ウイルス、ウイルス粒子、非ウイルス・ベクターとすることができる。さらに、これらのウイルスおよびウイルス粒子は各種のDNAまたはRNAのウイルスとすることができ、あるいはこれらから誘導できる。また、関連の遺伝子生成物は好ましくは各種のタンパク質、ポリペプチド、干渉性リボ核酸(iRNA)およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される。
【0081】
適用可能な核酸および/またはウイルスの物質(すなわち、種々のウイルスまたはウイルス粒子)が上記の組織修復移植片における生体相容性の支持骨格材料の中に組み込まれると、この移植片はその後に特定の部位の中に移植して一定の種類の生物学的な応答を示すことができるようになる。さらに、上記の核酸またはウイルス物質が種々の細胞により取り込まれてこれらがコード化するあらゆるタンパク質がこれらの細胞により局所的に生成可能になる。一例の実施形態において、上記の核酸またはウイルス物質は上記細分化した組織の懸濁液における組織フラグメント内の各種細胞により取り込むことができ、あるいは、別の実施形態においては、上記の核酸またはウイルス物質は一定の傷害を受けた組織の部位を囲っている組織内の各種細胞により取り込むことができる。なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の生成されるタンパク質が上述した種類の一定のタンパク質になるか、あるいは、一定の組織における改善された能力が一定の傷害または病気を治癒するか、感染に対して抵抗するか、炎症性の応答を減少することを容易にする一定の類似のタンパク質になり得ることが認識できる。また、上記核酸は一定の組織修復過程またはその他の正常な生物学的過程に否定的な影響を与える可能性のある不所望な遺伝子生成物の発現を阻止するために使用することもできる。さらに、DNA、RNAおよび各種のウイルス物質はこのような発現阻止機能を達成するために用いられる場合が多く、この機能はまた遺伝子発現ノック・アウト機能としても知られている。
【0082】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の生物学的な成分の同定が医療科学の各種原理および適用可能な治療目的に基づいて一定の外科医により決定可能であることが認識できる。
【0083】
上記組織修復移植片における生物学的な成分またはエフェクターは上記支持骨格材料の製造の前または後、あるいは、上記移植片の外科的配置の前または後のいずれかにおいてその支持骨格材料の中に組み込むことができる。
【0084】
外科的な配置の前に、上記生体相容性の支持骨格材料を上記生物学的成分を含む一定の適当な容器の中に配置できる。さらに、一定の適当な時間の経過後に適当な諸条件下において、この支持骨格部材はその生物学的成分により含浸される。あるいは、この生物学的成分を、例えば、当該生物学的物質を上記支持骨格材料の中に注入するために適当なゲージまたは口径の注射器を用いることによりその支持骨格材料の中に組み込むことも可能である。さらに、混合、加圧、散布、遠心処理、および上記生物学的成分を上記支持骨格材料の中に配置する処理等のような、当該技術分野における通常の熟練者において良く知られている別の方法も一定の支持骨格材料に一定の適当な生物学的成分を充填するために適用可能である。あるいは、上記生物学的成分を上記支持骨格材料の中に注入する前に一定のゲル様のキャリヤーと共に混合することもできる。このゲル様のキャリヤーは一定のアルギネート、架橋アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン・ゲル、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレン・オキシド)−ポリ(プロピレン・オキシド)の一定のコポリマー、ポリ(ビニル・アルコール)およびこれらの混合物を含む一定の生物学的なまたは合成のヒドロゲルとすることができる。
【0085】
上記のような外科的な配置により、上記生体相容性の支持骨格材料が生物学的な成分を全く含まない一定の移植片は種々の生物学的物質を注入可能になり、あるいは、上記支持骨格材料が少なくとも1種類の生物学的成分を含む一定の移植片は一定の補給量の生物学的成分により増量可能になる。一定の外科的に備えられる移植片内に一定の生物学的な成分を組み込む一例の方法は一定の適当なゲージの注射器による注入による方法である。
【0086】
一定の生体相容性の支持骨格材料と共に備えられる上記生物学的成分の量は支持骨格材料の寸法、支持骨格材料を作成している材料、支持骨格材料の多孔度、生物学的成分の本質、および組織修復移植片の目的を含む種々の要因により変わる。当該技術分野における通常の熟練者であれば、組織の治癒を容易にし、且つ/または、促進するための一定の用途に対応して一定の生体相容性の支持骨格材料の中に含まれる生物学的な成分の適当な量を容易に決定できる。もちろん、この生物学的成分の量は当該生物学的成分の本質および任意の用途に応じて変化する。
【0087】
別の実施形態において、上記組織修復移植片は組織を積載した支持骨格材料の上に配置される一定の付加的な保持要素を含むことができる。好ましくは、この実施形態において、上記組織の懸濁液の少なくとも一部分が上記支持骨格材料の外表面部の少なくとも一部分に結合しており、この組織の懸濁液が生体相容性の支持骨格材料と上記保持要素との間に「挟まれている(sandwiched)」。この保持要素は事実上任意の生体相容性の材料により形成可能であり、一例の実施形態において、この保持要素は同種異系の組織、自家組織、および異種の組織、および上述した生体相容性の支持骨格材料から選択される一定の付加的な生体相容性の支持骨格材料、およびこれらの組み合わせ物により得られる種々の移植片を含む組織移植片を用いて形成することができる。また、別の実施形態において、上記保持要素は一定の多孔質メッシュ材料、例えば、一定の編み物、織り物、不織布、または組織の内部増殖を可能にする複数の穴または孔を有する薄い孔あけ処理した弾性シート等のような多孔質メッシュ様材料とすることができる。この薄い孔あけ処理した弾性シートは好ましくはコラーゲンまたはシルクまたはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリジオキサノン(PDO)の各種コポリマーにより構成されている。また、この保持要素の種類はその望まれる組織修復に応じて変えることができる。非限定的な例として、半月板修復のための一定の実施形態において、上記保持要素は一定のメッシュ状の補強された発泡体とすることができる。さらに、上記ACLおよび軟骨修復に対応する実施形態においては、上記保持要素は一定のメッシュ状構造にすることができる。また、上記保持要素が一定の同種移植片または一定の自家移植片である場合の実施形態においては、好ましくは、この同種移植片または自家移植片は骨膜、軟骨膜、腸頸靭帯または大腿筋膜、薄筋腱、半腱様腱、膝蓋骨腱、滑膜およびこれらの組み合わせ物から選択される。また、上記保持要素が一定の異種移植片の場合の実施形態においては、この異種移植片は好ましくは小腸、骨膜、軟骨膜、腸頸靭帯または大腿筋膜、薄筋腱、半腱様腱、膝蓋骨腱、滑膜およびこれらの組み合わせ物から選択される。これらの保持要素は上記生体相容性の支持骨格材料の上に配置可能であり、あるいは、この保持要素は、例えば、縫合またはステープル処理により、上記移植片を一定の保持要素として固定できる。当該技術分野における通常の熟練者であれば、例えば、上記保持要素の中における複数の穴の配置等のような、当該保持要素の付加的な処理が医療科学の原理および適用可能な治療目的に基づいて、一定の外科医により決定可能であることが認識できる。
【0088】
さらに別の実施形態において、一定の静電的に紡糸処理した布地のバリヤーを過形成および組織接着に対する一定のバリヤーとして作用するために上記移植片に対して加えることが可能であり、これにより、手術後の種々の接着の可能性が減少できる。このような布地のバリヤーは好ましくは上記移植片に加えられる高密度な繊維性の布地の形態である。好ましくは、この繊維性の布地は小径の繊維により構成されており、これらの繊維は上記生体相容性の支持骨格材料の上面部および/または下面部に融着される。このことにより、多孔度、透過性、崩壊速度および機械的な諸特性等のような構造における特定の表面の諸特性が調整可能になる。
【0089】
なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の繊維性の布地が一定の繊維性の層を凍結乾燥処理した発泡体および不織状の表面部分の上に構築することのできる一定の静電的な紡糸処理により製造可能であることが認識できる。この静電防止処理は種々の繊維材料を用いて行なうことができる。例示的な繊維材料は脂肪族ポリエステルを含む。さらに、上記発泡体部品を形成するポリマー溶液を調製するために有用な上記において定められている溶液を含む種々の溶液もまた使用可能である。
【0090】
上記繊維性の層の組成、厚さおよび多孔度を調整して所望の機械的および生物学的な諸特性を得ることが可能である。例えば、この繊維性の層の生体吸収速度はその下層の生体相容性の支持骨格材料に比較してさらに長いまたはさらに短い生体吸収を行なうように選択できる。加えて、この繊維性の層は上記複合材料に対してさらに高い構造的な完全性を賦与することができ、これにより、一定の機械的な力をその構造の繊維性の面部に対して加えることができるようになる。一例の実施形態において、上記繊維性の層は各種の縫合線、ステープルまたは種々の固定装置による上記複合材料の位置の保持を可能にする。一般に、上記繊維性の層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。しかしながら、回旋腱板および半月板の傷害部の修復等のような一部の用途においては、上記繊維性の層は約1.5mm以上の一定の厚さを有する。
【0091】
本発明の組織修復移植片は種々の外科的用途および非外科的な用途において使用できる。一定の断裂した靭帯、腱、回旋腱板、神経、皮膚、軟骨、または半月板を含む種々の組織の修復における使用の場合等のような、一部の外科的用途において、本発明の組織移植片は一定の手術室内における取り扱いが可能であることが必要であり、さらに、これらは縫合またはその他の固定処理を裂けることなく行えることが必要である。加えて、これらの移植片は組織を補強するために適当な一定の破裂強さを有している必要があり、この移植片の構造は組織の内部増殖を促進するために適応可能である。非限定的な例として、本発明の支持骨格材料はその内部における細胞増殖を可能にするために高度に多孔質である。好ましくは、その気孔の中心の大きさは約100ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である。これらの実施形態において、上記支持骨格材料は当該支持骨格材料の内部領域内における組織増殖に適応するために十分に柔軟であることが必要であり、この支持骨格材料の形状は組織増殖の増加に伴って改造可能である。従って、本発明においては、組織が上記生体相容性の支持骨格材料の表面上において増殖可能であり、あるいは、組織が当該生体相容性の支持骨格材料の中にまたは表面上において増殖可能であり、これにより、その組織は支持骨格材料の中に埋め込まれるか当該材料と一体になる。
【0092】
本発明の一例の実施形態において、一定の靭帯、腱、神経、皮膚、軟骨または半月板に対する傷害等のような一定組織の傷害の治療において用いられる。この組織の傷害の修復は当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の技法のいずれかにより生活組織の一定のサンプルを入手する工程、例えば、組織を切断することによる等のようなその生活組織のサンプルを無菌の条件下に処理して少なくとも1種類の細分化した微細に分割された組織粒子を形成する工程、その組織サンプルが一定の支持骨格材料に結合して一定の組織修復移植片を形成するようにその生体相容性の支持骨格材料に組織サンプルを付着させる工程、およびその組織修復移植片を組織の傷害部分に対して一定の所望の位置に配置する工程を含む。また、この組織の修復は上記支持骨格材料を組織の傷害部位に配置した後に微細な組織粒子をその支持骨格材料に付着させる処理も含むことができる。このように支持骨格材料に結合した組織粒子内の各細胞はその支持骨格材料に移動してその移植部位における周囲の組織に対して増殖および一体化を開始することが可能になり、これにより、その組織の傷害が修復できる。さらに、この組織傷害を修復する方法は一定の付加的な随意的な工程を含むことができる。上記組織修復移植片を一定の組織傷害部位に対して所望の位置に配置する工程の前に、上記組織粒子内の細胞がその組織から移動して上記支持骨格材料に集団化し始めることを可能にするために有効な一定の持続時間および諸条件下においてその支持骨格材料および結合した組織粒子を培養できる。
【0093】
本発明において使用する組織サンプルは適当な採取用工具を用いて一定の供与者(自家、同種異系、または異種の組織)から入手される。これらの組織サンプルは組織の収集時に小さな粒子に微細に細分化および分割可能であり、あるいは、この組織サンプルはこれを身体から採集または収集した後に細分化することもできる。組織サンプルを採集した後にこれを細分化する実施形態において、これらの組織サンプルを秤量してからリン酸塩緩衝液化した塩水中に3回にわたり洗浄することができる。その後、約300mg乃至500mgの組織を、少量の、例えば、約1mlのリン酸塩緩衝液化した塩水等のような一定の生理学的な緩衝液、あるいは、例えば、ハムズF12(Hams F12)中における0.2%のコラーゲナーゼ等のような一定の基質消化酵素の存在下に細分化できる。このように組織を細分化することにより、この組織が約1mm3 の粒子または小片に分割できる。この組織の細分化は種々の方法により達成できる。一例の実施形態において、この細分化処理は一定の平行な方向に2個のメスを用いて達成され、別の実施形態においては、組織を一定の所望の大きさの粒子に自動的に分割する一定の処理工具によりその組織を細分化することができる。一例の実施形態において、例えば、篩い分け、沈降または遠心処理等のような当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の方法のいずれかにより上記の細分化した組織を上記の生理学的な流体から分離して濃縮することができる。このように細分化した組織を濾過および濃縮する場合の実施形態において、この細分化した懸濁液は好ましくはその組織の乾燥を防ぐためにその懸濁液内に少量の流体を保持している。別の実施形態において、上記細分化した懸濁液は濃縮されず、この細分化した組織は一定の高濃度な組織懸濁液または、例えば、一定のヒドロゲル、フィブリン・グルー、またはコラーゲン等のような別のキャリヤーを介して組織の修復部位に直接的に配給できる。このような実施形態において、その細分化した組織懸濁液はその組織フラグメントを保持するために上述した生体相容性の支持骨格材料のいずれかにより被覆できる。
【0094】
その後、上記の細分化した組織は一定の支持骨格材料の全体を被覆するように一定の細胞散布装置によりその支持骨格材料の上に分布できる。半月板および軟骨の修復における好ましい実施形態において、上記の細分化した組織はダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中に予め浸漬した4cm×5cmの支持骨格材料の上に散布されて、この支持骨格材料の全体を被覆する。随意的に、上記の組織粒子は、例えば、フィブリン・グルーまたは高濃度血小板血漿等のような上述した各種の接着剤のいずれかにより上記支持骨格材料に接着できる。フィブリン・グルーまたは高濃度血小板血漿を用いる実施形態において、フィブリノゲンまたは高濃度血小板血漿を分布する前に、数マイクロリットルのトロンビンを支持骨格材料上に配置して自然に硬化できる。上記の組織粒子および任意の付加的な物質を上記支持骨格材料上に付着させた後に、その組織移植片を即時に移植することが可能であり、あるいは、この移植片を組織粒子内の細胞が当該組織粒子から支持骨格上に移動可能にするために十分な一定の持続時間および諸条件下において生体外で培養できる。このように組織移植片を移植前に培養する実施形態において、その移植片は好ましくは、例えば、20%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのヘペス(HEPES)、0.1mMの可欠アミノ酸、20mg/mlのL−プロリン、50mg/mlのアスコルビン酸、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBを補充したDMEM−高濃度グルコース等のような一定の軟骨増殖培地中において約1週間乃至3週間にわたり生体外で培養される。
【0095】
本発明による組織移植片を用いて種々の組織傷害を修復する方法はその組織傷害を修復するための一定の外科手術中に行なうことができる。あるいは、上記の組織サンプルを処理して細分化した微細に分割されている組織粒子を形成する工程、これらの組織粒子を一定の支持骨格材料の上に付着させて一定の組織修復移植片を形成する工程、および/または移植前に上記組織修復移植片を培養する工程を、当該移植片の傷害部位に対する外科的配置の前に、一定の別の無菌の場所において行なうことも可能である。
【0096】
上記の傷害を受けた組織を修復するための移植片はこの移植片がその治療を受ける組織の所望の部分または患部の形状および寸法に適合するような一定の大きさおよび形状を有することができる。さらに、この移植片は切断、折りたたみ、巻き、またはその他の移植片の操作方法を含む多数の技法によりその必要な外形を形成するための大きさおよび形状にすることができる。上述したように、上記の生物学的な成分は上記支持骨格材料の製造中または製造後、あるいは、上記移植片を一定の患者に備え付ける前またはその後に上記支持骨格材料に加えることができる。さらに、付加的な量の生物学的な成分を上記移植片の設置後に加えることも可能である。このように傷害を受けた解剖学的部位の中への接近が(最少侵襲性、開放式または最少開放式の技法のいずれかにより)行なわれた後に、その移植片を、一定の裂け目または患部の中等のような、組織の傷害部位に対して一定の所望の位置に固定できる。このように移植片を所望の位置または患部の中に配置した後に、その移植片を一定の適当な技法により固定することができる。一例の態様において、この移植片は一定の化学的または機械的な固定技法により固定できる。適当な化学的固定手段はフィブリン・グルー、フィブリン・クロット、およびその他の既知の生物学的に相容性のある接着剤等のような種々の粘着剤および/または接着剤を含む。また、適当な機械的固定手段は種々の縫合線、ステープル、組織トラック、縫合腺アンカー、ダーツ、ねじ、ピンおよびアローを含む。なお、1種類以上の化学的および/または機械的な固定手段の組み合わせも使用可能であることが理解されると考える。あるいは、このような化学的および/または機械的な固定手段を全く必要としない場合もある。その代わりに、上記移植片の配置はその移植片の治療を受ける組織内の適当な部位に対する締まり嵌めにより達成できる。
【0097】
別の実施形態において、上記組織修復移植片は種々の靭帯、腱、皮膚および/または神経を修復する外科技法において有用である。
【0098】
一例の用法において、上記組織修復移植片は腱または靭帯の修復手術中における組織の損失部位を修復および増強するために使用でき、あるいは、一定の独立型の装置として使用することも可能である。修復の場合において、腱または靭帯の各端部は適当な外科技法により接合され、上記組織修復移植片がその接合端部の近辺において用いられて、その機械的な支持が増加されてその治癒応答が高められる。このような治癒の過程の結果として、その腱または靭帯の組織はその移植片装置内において増殖して、最終的に自然な組織の機械的特性と類似の機械的特性を伴う一定の組織に成長する。この場合の移植片は適当な治癒を確実にするために初期的に必要な機械的支持を行なうと共に組織再生のための一定の案内手段としても作用する。また、一定の単独型の装置としての別の用法においては、崩壊した組織が取り除かれて、細分化した組織を伴う組織修復移植片がその損傷した組織部位の機能の代用として作用する。さらに、この崩壊した組織はその損傷した組織部位を治癒するために用いる組織供給源になり得る。
【0099】
上記組織修復移植片が靭帯組織を修復するために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は組織の増強のために使用することができ、あるいは、一定の独立型の装置として使用できる。この組織修復移植片が増強移植のために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の標準的で確立されている修復技法のいずれかと共に使用することができる。さらに、上記の組織修復移植片がACL修復中の増強移植のために用いられる実施形態において、外科医は現状において組織修復のために靭帯組織、骨−膝蓋骨の各腱、腱−骨の各腱、膝窩腱、または腸脛靭帯を含む一定の自家移植片を使用しており、本発明の組織修復移植片はその自家移植片の近くに配置されるか、その自家移植片により囲まれるか、あるいは、その自家移植片のそばに並んで配置できる。また、上記組織修復要素が一定の単独型の装置として用いられる実施形態においては、崩壊した靭帯が取り除かれて、その組織修復移植片により完全に置き換えられる。このような場合に、この組織修復移植片は当該移植片の各端部において骨に固定できる。さらに、ACL修復の場合には、この移植片の一方の端部は大腿骨の元の起点において安定化することができ、その他方の端部は頸骨の元の挿入部位において配置できる。
【0100】
上記の組織修復移植片は種々の形態で利用することができる。例えば、この移植片は多数の積層体に折り重ねるか積み重ねることが可能であり、あるいは、一定の形状または管状構造に巻くこともできる。腱または靭帯の各端部は、例えば、この移植片をその組織の端部に縫合、ステープル留め、クリップ留め、接着または固定することにより接合できる。上記組織修復移植片を、例えば、回旋腱板の修復等のような、種々の腱を修復するために用いる場合の一部の実施形態において、外科医は比較的に大きな粗面の皮質面部を通して断裂した回旋腱板を一定の骨の溝に再接合することを補助するためにその組織修復移植片を使用できる。多くの場合に、比較的に高年齢の患者において、その回旋腱板組織は薄くて劣化しているか、さらに/または、上腕骨の質が骨粗しょう症になっている。それゆえ、上記の骨の溝に取り付ける強度を高めるために、複数の縫合線が支持骨格材料および腱の中を通るようにその腱の上部に上記の組織修復移植片を配置することが可能であり、あるいは、この組織修復移植片をその骨の架橋部の上部に用いて縫合線がその骨から抜け出ることを防ぐことができる。いずれの実施形態においても、その組織修復移植片は縫合線を保持する強度を賦与している。また、回旋腱板の質がその組織が上腕骨に対して再接合できないほどに劣化している場合の状況においては、上記組織修復移植片は一定の架橋手段として作用でき、この場合に、この移植片の一方の端部は残留している腱に接合可能であり、その他方の端部は骨に結合できる。
【0101】
別の変更例において、上記移植片は一定の腱の鞘を修復または置換するために使用できる。このことを行なうために、この移植片は骨膜、滑膜、または筋肉等のようなその接合組織に縫合またはその他の方法で結合されてその腱に巻き付けられる。このような構成は移植片により形成された鞘の中における腱の自由な滑動を可能にする。さらに、この移植片は手術後に必要な構造的支持を行なう。しかしながら、経時的に、この実施形態における移植片は新しい組織により吸収されるか置き換えられることが可能である。
【0102】
本発明の移植片はまたこれらの独特な組織移植片により有益的になり得る器官修復のための置換または再生の試みにおいて使用することもできる。例えば、これらの移植片は脊椎円板、脳組織、硬膜、神経組織、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、子宮、食道、肝脾臓、心筋、骨格筋、皮膚、筋膜、骨盤床、胃、腱、軟骨、靭帯および胸部組織において使用できる。
【0103】
さらに別の実施形態において、本発明の移植片は生活組織における一定の物質の作用効果を測定するための一定の生物学的アッセイを形成するために使用できる。この実施形態において、一定の無菌の生体相容性の支持骨格材料を供給し、生活組織の一定のサンプルを入手して、この生活組織のサンプルを無菌条件下に処理して細分化した組織フラグメントおよび一定の生理学的な緩衝溶液を含む一定の細分化した組織の懸濁液を形成し、さらに、この細分化した組織の懸濁液を上記生体相容性の支持骨格材料に付着させてこれらの細分化した組織の懸濁液および支持骨格材料を結合することにより、上述したような、種々の組織構造体が形成される。この組織構造体は上記細分化した組織内の各細胞が上記支持骨格材料において集団化可能にするために有効な諸条件下において培養される。その後、この組織構造体は試験される一定の物質に接触可能になり、この物質の作用効果が決定できるようになる。すなわち、上記のような組織構造体は、例えば、細胞の生活能力、増殖、移動、分化および細胞表現型の維持、代謝の活性、誘発または抑制等のような一定の試験物質に対する生物学的な応答を決定および/または試験するために使用できる。また、これらのような生物学的応答は、例えば、増殖アッセイ、細胞移動アッセイ、タンパク質アッセイ、遺伝子発現アッセイ、生活能力アッセイ、熱量測定アッセイ、または代謝アッセイ等のような当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の技法のいずれかによりアッセイまたは定量することができる。非限定的な例として、例えば、ノーザン・ブロット分析、RNアーゼ・タンパク質アッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ウエスターン・ブロット分析および酵素結合型免疫吸着剤アッセイ(ELISA)等のような種々の既知のアッセイ法を用いて各種軟骨細胞により発現するII型、IX型またはXI型のコラーゲンの発現等を含む、上記組織構造体の組織により一般的に発現する選択された1種類以上の遺伝子生成物の発現が挙げられる。さらに、本発明の組織構造体を用いて試験できる適当な物質は種々の薬物、薬剤組成物、化学薬品、微生物、要素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、ペプチド、リガンド、膜結合レセプタのアンタゴニスト、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0104】
本発明の移植片はまた一定の治療物質のための一定の配給装置として使用することも可能であり、この場合に、その治療物質は再分化された組織であり、この組織は種々の細胞、細胞外基質および固有の増殖因子の一定の組み合わせ物を含む。この場合の移植片の支持骨格部分は種々のホルモンおよびタンパク質が周囲の環境内に放出されることを可能にできる。
【0105】
本発明による組織移植片による組織傷害を修復する方法はその組織傷害を修復するための一定の外科手術中に行なうことができる。一定の患者が従来的な外科技法を用いる一定の従来的な様式における組織修復の手術のために用意される。この組織修復は本発明の組織修復移植片を用いる傷害を受けた組織の部位において行なわれる。上記組織修復移植片を形成するために用いる組織サンプルが適当な工具および技法を用いて上記患者(または、別の供与者)から入手される。この組織サンプルは約0.1mm3 乃至3mm3 の範囲内の一定の粒子の大きさを有する少なくとも1種類の組織粒子に微細に細分化および分割される。この組織は一定の平行な方向に用いた2個の無菌のメス等のような一定の従来的な細分化技法を用いて細分化することができる。約300mg乃至500mgの組織が修復部位における組織傷害の程度に応じて約1mlの一定の生理学的な緩衝溶液の存在下に細分化される。この細分化処理した組織はその細分化した組織粒子を生理学的な緩衝溶液から分離するために濾過および濃縮される。この細分化した組織は、例えば、篩い分け、沈降または遠心処理等のような種々の従来的な技法の任意のものを用いて濃縮できる。その後、この細分化した粒子は一定の細胞散布装置を用いてダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中に浸漬した4cm×5cmの生体相容性の支持骨格材料の上に分布される。さらに、一定の接着剤がこれらの生体相容性の支持骨格材料および細分化した組織粒子に加えられる。さらに、この組織修復片は即時にまたは一定期間の生体外培養の後に上記の組織傷害部位に移植される。その後、最終的な傷の閉鎖が従来的な外科技法を用いて一定の従来的な様式において行なわれる。
【0106】
以下の実施例は本発明の原理および実施方法の例示である。すなわち、本発明の原理および趣旨の範囲に含まれる多数の別の付加的な実施形態が当該技術分野における熟練者において明らかになる。
【0107】
実施例1
種々の関節部分からの健康な軟骨組織をウシの肩関節から入手した。この軟骨組織は骨の組織を実質的に含んでおらず、複数のメス・ブレードを用いて細分化することにより0.2%のコラーゲナーゼの存在下に小さな組織フラグメントを得た。これらの組織フラグメントの大きさは変化しているが、平均で約1mm×1mmの大きさにする必要がある。その後、この細分化した組織を4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PCL/PGA)の支持骨格材料の上に均一に分布した。この場合に、エチレン・オキシドにより滅菌処理したポリマーの支持構造体を種々の組織フラグメントの分布の前にダルベッコ修飾イーグル培地の中に4時間にわたり予備浸漬した。その後、この細分化したフラグメントを充填した支持骨格材料を軟骨細胞増殖培地を含有している一定の10cmの細胞培養皿の中に入れた。このダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−高濃度グルコース)は20%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのヘペス(HEPES)、0.1mMの可欠アミノ酸、20mg/mlのL−プロリン、50mg/mlのアスコルビン酸、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBが補充されている。さらに、この増殖培地は一日おきに補給されている。各支持骨格材料を一定の細胞培養インキュベーターの中において37℃で培養した。さらに、培養後6週間目のサンプルを取り出して各支持骨格材料の中における細胞の分布および移動および軟骨様の基質の生成について分析した。図1は各細胞が細分化した軟骨組織のフラグメントからポリマーの支持骨格材料の中に広く移動している状態を示している(図1A)。これらの移動している細胞はそれぞれの表現型を維持しており、サフラニン−O染色材料による硫酸塩化グリコスアミノグリカンに対して陽性に染色した基質を生成している(図1B)。
【0108】
実施例2
上記実施例による細分化した軟骨の組織および細胞を含有している生体吸収性の支持骨格材料をSCIDマウス中に移植した。この対象を生体内における細分化した軟骨性の組織のポリマー支持骨格材料中への軟骨細胞の内部増殖について評価した。直径5mmのポリマー支持骨格材料を各SCIDマウスの外側の胸部領域内において両側に皮下移植した。この移植した支持骨格材料は4週間にわたり細胞増殖を支持するために自然放置した。その後、これらの皮下移植部位およびそれぞれを被覆している皮膚を切除して10%の緩衝液化したホルマリン固定液中に保存した。固定後に、各移植部位を組織学的構造について処理した。これらの組織学的構造はヘマトキシリンおよびエオシン、およびサフラニン−Oにより染色した。図2Aおよび図2Bは十分な細胞が支持骨格材料の中に分布している状態をそれぞれ示している図である。これらの細胞は上記合成の基質におけるサフラニン−Oに対応する強い陽性の染色により示される軟骨細胞様の形態学的構造を示している。
【0109】
実施例3
上記実施例1において記載されている方法により調製した細分化した軟骨細胞を一定の4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PCL/PGA)の支持骨格材料において均一に分布した。それぞれの細分化した軟骨組織フラグメントを1mLの高濃度血小板血漿(PRP、ヒューマン社(Human))によりこの支持骨格材料に接着した。60マイクロリットル(60単位)のトロンビンを用いてPRP中のクロット形成を誘発した。細分化した軟骨フラグメントのみを充填した対照の支持骨格材料およびPRPにより接着した細分化した軟骨フラグメントを充填した支持骨格材料を1週間にわたり生体外において培養した後に、実施例2において記載されているように各SCIDマウスに移植した。図3Aは細分化した組織を充填した一定の対照の支持骨格材料の顕微鏡写真である。図3Bは細分化した組織およびPRPを充填した一定の支持骨格材料を示している顕微鏡写真である。この図3BはPRPが軟骨細胞の移動を促進することにおいて有益的であり、各支持骨格材料内の軟骨細胞の分化した表現型の維持を助長することにおいても有益的であることを示している。これらの移動している細胞はそれぞれの表現型を維持しており、サフラニン−O染色材料による硫酸塩化グリコスアミノグリカンに対応して陽性に染色した基質を生成している(図3B)。
【0110】
実施例4
複数のブタの背面部に形成した1cm×1cmの傷から集めた健康な全層の皮膚サンプルを10倍の抗体/抗真菌剤を伴うDMEMを入れた50mlの円錐形の試験管内に速やかに入れた。その後、これらの組織サンプルを10倍の抗体/抗真菌剤を含有するPBS中において1回すすぎ洗いしてから、1倍の抗体/抗真菌剤を含有するPBSによるさらに別のすすぎ洗い工程を行なった。その後、この組織を一定の層流フード内において一定のメス・ブレードにより無菌状態で細分化した。このように分散した皮膚のサンプルを15分間にわたり37℃において1mlの0.25%コラーゲナーゼ/0.25%デイスパーゼによる酵素消化処理にかけた(自己由来型細胞分散1番)。別の組のサンプルは最初に500μlの0.25%トリプシンにより10分間にわたり消化し、PBSにより洗浄してトリプシンを除去した後に、15分間にわたり37℃において1mlの0.25%コラーゲナーゼ/0.25%デイスパーゼにより培養した(自己由来型細胞分散2番)。消化後に、これらのサンプルを5分間にわたり2500rpmで遠心処理した。上澄み液を吸引して廃棄した。その後、分散して部分的に消化している皮膚サンプルをPBS中において1回洗浄した後に500μlのPBS中に再懸濁した。約20μlの細胞懸濁液を一定の傷床中に均一に分布して、生体吸収性の支持骨格材料を細胞懸濁液が移動しないように分散状態の細胞の上部に注意深く供給した。この結果、分散状態の細胞は支持骨格材料上に均一に分散して傷床に配置できたと考えられる。図4は自己由来型の細胞の分散状態がケラチノサイトの「島(islands)」状の形態学的構造として存在しており、その一部が傷の表面に向かって支持骨格材料の中を移動していることを示している。
【0111】
実施例5
健康な前十字靭帯組織をウシの膝関節から得た。この靭帯組織をメス・ブレードおよび/またははさみを用いて細分化して小さな組織フラグメントを得た。この組織フラグメントの大きさは変化しているがその平均の粒子の大きさは約1mm3 であった。この実施例において、上記靭帯は0.2%のコラーゲナーゼの存在下または非存在下に細分化されている。その後、この細分化した組織を4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PGA/PCL)の支持骨格材料またはポリ乳酸/ポリグリコール酸(PLA/PGA)の支持骨格材料の上に均一に分布した。この場合に、これらの支持骨格材料を1時間にわたり70%エタノール中において滅菌処理してから、PBSにより3回にわたり洗浄した。その後、これらの支持骨格材料を組織フラグメントの分布の前に1倍の抗体/抗真菌剤を伴うダルベッコ修飾イーグル培地中において1時間乃至2時間にわたり予備浸漬した。このようにして細分化したフラグメントを充填した支持骨格材料を増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れ、この増殖培地は20%のウシ胎児血清(FCS)、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBが補充されているダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−高濃度グルコース)により構成されている。その後、細分化した組織を伴う各支持骨格材料を一定の細胞培養インキュベーターの中において37℃で培養し、上記増殖培地を一日おきに交換した。この培養後の3週間目および6週間目に、各サンプルを取り出してそれぞれの支持骨格材料内への細胞の分布および移動について分析した。図5はコラーゲナーゼを伴う(図5A)およびコラーゲナーゼを伴わない(図5B)で処理した場合の細分化した前十字靭帯の組織フラグメントによる培養の6週間後におけるポリマー支持骨格材料中に広く移動している細胞をそれぞれ示している。
【0112】
実施例6
半月板を成育したヤギの膝関節から採取して、4mmの直径の体外移植組織片(2mmの厚さ)を白色および赤色/白色の各領域から採取した。2mmのパンチ生検試料をこれらの体外移植片の中心部から取り出した。その後、2mmの直径および2mmの厚さの一定の生体吸収性の支持骨格材料であるポリ乳酸/ポリカプロラクトン(PLA/PCL)を上記半月板の体外移植組織片の中心部に挿入した。これらの支持骨格材料を伴う体外移植組織片を一日おきの培地(1%FBS、1倍の抗体/抗真菌剤)の交換を伴って標準的な細胞培養条件下において2週間および3週間にわたり培養した。培養後の14日目および21日目において、各サンプルの半分を組織学的構造について処理するために10%の緩衝液化したホルマリン中に入れた。この結果、複数の部分がヘマトキシリンにより染色して細胞が可視化した。さらに、各支持骨格材料における残りのサンプルを取り出してその細胞数をサイクオント(CyQuant)アッセイ法によるDNAの定量化により推定した。図6Aは上記の半月板体外移植組織片からポリマー支持骨格材料中への細胞移動の存在を示している図である。また、図6Bは各支持骨格材料中への細胞移動を示している各支持骨格材料の断面における組織学的構造を示している図である。
【0113】
実施例7
ウシの肩関節から健康な軟骨組織および骨軟骨栓子を入手した。細分化した軟骨組織を上記実施例1において記載されている方法に従って調製した。加えて、骨軟骨栓子(1cm×1cm)を一定のダイアモンド形骨鋸によりウシの肩関節から採取して、骨カッターにより切断することにより骨軟骨ペースト材を得た。次に、250mgのサンプル(細分化した軟骨または骨軟骨ペースト)を2cm×5cmの合成で生体吸収性の(PCL/PGA)支持骨格材料上に分布した。その後、この細分化した軟骨フラグメントまたは骨軟骨ペースト材を充填した支持骨格材料を軟骨増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れて、上記実施例1において記載されているように一定の細胞培養インキュベーターの中で培養した。培養後の3週間目において、各サンプルを取り出して上記実施例2において記載されているように各SCIDマウスの中に移植した。この対象を4週間にわたり移植後の支持骨格材料内に形成される組織の性質について評価した。さらに、ヘマトキシリンおよびエオシン(H/E)、サフラニン−O(SO)および修飾マロリーズ・アニリン・ブルー(Modified Mallory's Aniline Blue)(MMAB)による染色により各支持骨格材料内における細胞分布および当該支持骨格材料内において形成した基質の性質についてそれぞれの組織学的構造を分析した。図7A乃至図7Cは細胞が細分化した軟骨組織フラグメントから支持骨格材料内に広く移動してサフラニン−Oに対して陽性に染色していることをそれぞれ示している。このことは図7Bにおいて特に明らかであり、この図においては、写真の中心部および上部における比較的に暗い領域が陽性の染色を示している。さらに、図8A乃至図8Cは各細胞が骨軟骨ペーストから各ポリマー支持骨格構造中に移動していることを示している図である。しかしながら、形成されている組織は軟骨ならびに新しい骨を含んでいる。この新しい骨は図8Cにおいて比較的に明るい矢印により示されており、古い骨は図8Aおよび図8Cにおいて比較的に暗い矢印により示されている。
【0114】
実施例8
健康な軟骨組織をウシの肩関節の接合部分から得た。その後、細分化した軟骨組織を上記実施例1において記載されている方法に従って調製した。生検パンチ体を用いて2mmおよび3mmの直径の各軟骨組織フラグメントを得た。これらのフラグメントの厚さは約1mmであった。直径2mmまたは3mmで250mgの細分化した軟骨または軟骨フラグメントを2cm×5cmの合成の生体吸収性の(PCL/PGA)支持骨格材料上に分布した。その後、この軟骨フラグメントを充填した支持骨格材料を軟骨増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れて、上記実施例1において記載されているように一定の細胞培養インキュベーター内において培養した。培養後3週間において、各サンプルを取り出してDNA含有量の定量により細胞数を推定した。さらに、5mmの生検パンチ体を実施例2において記載されているように各SCIDマウス内に移植した。この対象を上記処理における組織フラグメントの最適な寸法について評価するために用いた。図9は細分化した軟骨組織を充填した各支持骨格材料において最大の細胞数が観察されたこと、および直径3mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料において最小の細胞数が観察されたことを示している。図10A乃至図10Cは各SCIDマウス内に移植されてサフラニン−Oにより染色されている各支持骨格材料の組織学的な評価を示している。これらの結果は細分化した軟骨組織および直径2mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料における均一な軟骨様組織(染色されている比較的に暗い領域)を示している(図10Aおよび図10B)。一方、直径3mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料は均一に充たされていなかった(図10C)。
【0115】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記において説明されている各実施形態に基づいて本発明のさらに別の特徴および利点を認識できる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲により定められている内容を除いて、特に図示および説明されている内容に限定されない。本明細書において引用されている全ての刊行物および参考文献はそれぞれの内容全体が本明細書において参考文献として含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は組織の治療に使用するための生体相容性の組織移植片およびこれらの装置の作成および使用のための方法に適用可能である。例えば、この組織移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用できる。さらに、これらの組織移植片は組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織修復のために使用できる。これらの移植片は少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む一定の懸濁液を伴う一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この生体相容性の組織移植片はその細分化処理した組織の懸濁液の上方に配置されている一定の付加的な生物学的物質および/または一定の付随的な保持要素も含むことができる。
【0117】
本発明はまた上記のような生体相容性の組織移植片を作成するための方法にも適用可能である。これらの移植片は少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを含む生活可能な組織の懸濁液を形成するために上記組織サンプルを処理すること、および当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料の上に付着することにより作成される。一例の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料において集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。
【0118】
本発明はまた上記本発明の組織移植片の作成を補助するための一定のキットにも適用可能である。本発明のキットは少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料を収容している一定の無菌容器、一定の被検体から一定の組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および組織サンプルの生活可能性を持続するための1種類以上の試薬を含む。このキットはまた一定の組織を組織粒子に細分化するための一定の処理用工具を含むことも可能であり、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してそのサンプルを微細分割した組織粒子に処理することに適合可能である。さらに、このキットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から移植のための一定の被検体に移すための一定の配給装置も含むことができる。
【0119】
本発明はまた上記本発明の生体相容性の組織移植片を用いて組織を治療する方法にも適用可能である。これらの方法による組織の治療は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料上に付着させること、およびこの組織積載型の支持骨格材料を治療する組織に対して一定の所望の位置に配置することにより達成できる。一例の実施形態において、組織修復は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを組織傷害部位に対して一定の所望の位置に付着させること、および上記生体相容性の支持骨格材料を組織の上に配置することにより達成できる。また、別の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料において集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下に一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。また、さらに別の実施形態において、上記の組織を治療する方法は、例えば、上記組織積載型の支持骨格材料の位置を固定することにより治療する組織に対して一定の所望の位置に上記支持骨格材料を固定する別の工程も含むことができる。
【0120】
本発明はまた生活組織における一定の物質の作用を測定するための方法にも適用可能である。本発明のこの態様によれば、本発明の生体移植可能な組織移植片は各種の組織構造体を形成するために使用可能であり、この構造体は一定の試験物質と接触することにより、生活組織におけるこの物質の作用効果が観察および測定できるようになる。従って、本発明の生体移植可能な組織構造体は、例えば、細胞移動、細胞の増殖および分化および細胞表現型の維持の作用効果等のような、種々の生物学的応答における作用効果を調べることにより生活組織における一定の試験物質の作用効果を測定するための一定の生物学的なスクリーニング・アッセイとして使用できる。
【0121】
本発明の具体的な実施態様は以下のとおりである。
(A)生体相容性の移植片において、
一定の生体相容性の支持骨格材料、および
前記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している少なくとも1種類の組織フラグメントを備えており、この場合に、当該組織フラグメントがこの組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料において集団化する一定の有効量の生活可能な細胞を含有している移植片。
(1)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(2)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが複数の細胞を含み、一定の外科部位における移植時に、当該複数の細胞の少なくとも一部分が前記支持骨格材料に結合している組織フラグメントから移動し、前記移植部位において増殖して周囲の組織に対して一体化することが可能である実施態様(A)に記載の移植片。
(3)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが複数の細胞を含み、一定の外科部位における移植の前に、当該複数の細胞の少なくとも一部分が前記支持骨格材料に結合している組織フラグメントから移動し、当該支持骨格材料において増殖して集団化することが可能である実施態様(A)に記載の移植片。
(4)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該生体相容性の支持骨格材料に対して前記組織フラグメントの懸濁液を固定するための一定の接着剤を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(5)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(4)に記載の移植片。
【0122】
(6)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の化学的架橋−連結剤を含む実施態様(4)に記載の移植片。
(7)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、脈管組織、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される実施態様(A)に記載の移植片。
(8)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(7)に記載の移植片。
(9)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨、半月板、腱、靭帯、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される種類の一定の無骨組織を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(10)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の生体吸収性の材料を含む実施態様(A)に記載の移植片。
【0123】
(11)前記生体相容性の支持骨格材料が種々の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、種々のアミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、生体合成ポリマー、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の合成ポリマーを含む実施態様(1)に記載の移植片。
(12)前記生体相容性の支持骨格材料が種々のラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン,6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物のホモポリマーまたはコポリマーから成る群から選択される一定の脂肪族ポリエステルを含む実施態様(11)に記載の移植片。
(13)前記生体相容性の支持骨格材料が一定のフィブリン基材材料、一定のコラーゲン基材材料、一定のヒアルロン酸基材材料、一定のセルロース基材材料、シルクおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される一定の天然ポリマーを含む実施態様(1)に記載の移植片。
(14)前記生体相容性の支持骨格材料がヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体ガラス、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、同種骨移植片材料、異種骨移植片材料およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(1)に記載の移植片。
(15)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の連続気泡型の多孔質構造を伴う気孔を有する一定の高分子発泡体部品を含む実施態様(A)に記載の移植片。
【0124】
(16)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに一定の生体相容性メッシュ含有材料により形成されている一定の補強部品を含む実施態様(15)に記載の移植片。
(17)前記発泡体部品が前記補強部品と一体になっていて、当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品に対して結合している実施態様(16)に記載の移植片。
(18)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該材料に供給される少なくとも1種類の付加的な生物学的要素を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(19)前記少なくとも1種類の付加的な生物学的要素が種々の増殖因子、基質タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、サイトカイン、ウイルス、核酸、ペプチド、単離した細胞、血小板、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(18)に記載の移植片。
(20)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが約0.1mm3 乃至2mm3 の範囲内の一定の粒子の大きさを有している実施態様(A)に記載の移植片。
【0125】
(21)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが一定の生理学的緩衝溶液に加えられて約1mg/cm2 乃至100mg/cm2 の範囲内の一定の組織フラグメントの濃度を有する一定の懸濁液を形成している実施態様(A)に記載の移植片。
(22)前記生体相容性の移植片がさらに一定の合成ポリマー、天然ポリマー、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料を含み、当該少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料が前記少なくとも1種類の組織フラグメントに接触して配置されていて、当該少なくとも1種類の組織フラグメントの少なくとも一部分が前記少なくとも2個の生体相容性の支持骨格材料の間に配置されている実施態様(A)に記載の移植片。
(B)生体相容性の移植片において、
一定の生体相容性の支持骨格材料、
前記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している少なくとも1種類の軟骨組織フラグメントを含む一定の懸濁液を備えており、この場合に、前記懸濁液中の少なくとも1種類の組織フラグメントがこの組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料において集団化する一定の有効量の生活可能な細胞を含有しており、さらに
一定の保持要素を備えており、
この場合に、前記少なくとも1種類の組織フラグメントの少なくとも一部分が前記生体相容性の支持骨格材料と前記保持要素との間に配置されている移植片。 (23)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(B)に記載の移植片。
(24)前記保持要素が骨膜、軟骨膜、大腿筋膜、半腱様腱、薄筋腱、硬膜、腸間膜、小腸粘膜下組織、真皮、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される同種移植片組織を含む実施態様(B)に記載の移植片。
(25)前記保持要素が自家組織、同種異系組織、異種組織、止血材料、少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される実施態様(B)に記載の移植片。
【0126】
(C)一定の組織傷害を修復するためのキットにおいて、
1個以上の生体相容性の支持骨格材料を含む一定の無菌容器、および
一定の被検体から少なくとも1種類の生活可能な組織サンプルを収集するための一定の採取用工具を含むキット。
(26)さらに、前記少なくとも1種類の組織サンプルの生活能力を持続するための少なくとも1種類の試薬を含む実施態様(C)に記載のキット。
(27)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(C)に記載のキット。
(28)前記採取用工具が前記組織サンプルを無菌条件下に少なくとも1種類の組織フラグメントに分割するための一定の処理工具を含む実施態様(C)に記載のキット。
(29)前記生体相容性の支持骨格材料が当該生体相容性の支持骨格材料に対して前記組織サンプルを固定するための一定の接着剤を含む実施態様(C)に記載のキット。
(30)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(29)に記載のキット。
【0127】
(31)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の架橋−連結剤を含む実施態様(29)に記載のキット。
(32)前記少なくとも1種類の試薬が塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス(Hank's)平衡塩類、組織培養培地、漿液を含有している組織培養培地、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(C)に記載のキット。
(D)一定の組織移植片を調製するための方法において、
一定の生体相容性の支持骨格材料を供給する工程、
一定の組織サンプルを入手する工程、
無菌条件下に前記組織サンプルを処理して少なくとも1種類の組織フラグメントおよび一定の生理学的な緩衝溶液を形成する工程、および
前記組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料の上に付着させて一定の組織移植片を形成する工程を含む方法。
(33)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(D)に記載の方法。
(34)前記方法がさらに前記組織移植片を前記少なくとも1個の組織フラグメントの中の細胞が前記支持骨格材料において集合化することを可能にするために有効な一定の持続時間および諸条件下において培養する工程を含む実施態様(D)に記載の方法。
(35)前記組織移植片が約7日乃至6週間の範囲内の一定の持続期間にわたり培養される実施態様(D)に記載の方法。
【0128】
(36)前記組織移植片が約20℃乃至40℃の範囲内の一定温度において高湿度を有する一定の雰囲気中で培養される実施態様(35)に記載の方法。
(37)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(D)に記載の方法。
(38)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが自己由来組織を含む実施態様(37)に記載の方法。
(39)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨、半月板、腱、靭帯、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される種類の一定の無骨組織を含む実施態様(D)に記載の方法。
(40)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが当該組織フラグメントから外に移動可能な一定の有効量の生活可能な細胞を含む実施態様(D)に記載の方法。
【0129】
(41)前記有効量の細胞が前記組織フラグメントから外に移動して前記生体相容性の支持骨格材料の外表面部において集合化する実施態様(40)に記載の方法。
(42)前記有効量の細胞が前記組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料における一定の内部領域の少なくとも一部分において集合化することにより、これらの細胞が当該支持骨格材料の中に埋め込まれた状態になる実施態様(40)に記載の方法。
(43)さらに、少なくとも1個の付加的な生体移植可能な支持骨格材料を供給して当該少なくとも1個の付加的な生体移植可能な支持骨格材料を前記付着された少なくとも1個の組織フラグメントの上に配置することにより、当該少なくとも1個の組織フラグメントの少なくとも一部分が少なくとも2個の生体移植可能な支持骨格材料の間に配置される実施態様(D)に記載の方法。
(44)前記生体移植可能な支持骨格材料がさらに前記少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを前記生体移植可能な支持骨格材料に固定するための一定の接着剤を含む実施態様(D)に記載の方法。
(45)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(44)に記載の方法。
【0130】
(46)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の架橋−連結剤を含む実施態様(44)に記載の方法。
(47)前記生体移植可能な支持骨格材料が一定の生体吸収性の材料を含む実施態様(D)に記載の方法。
(48)前記生体相容性の支持骨格材料が種々の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、種々のアミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、生体合成ポリマー、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の合成ポリマーを含む実施態様(33)に記載の方法。
(49)前記生体相容性の支持骨格材料が種々のラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン,6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物のホモポリマーまたはコポリマーから成る群から選択される一定の脂肪族ポリエステルを含む実施態様(48)に記載の方法。
(50)前記生体相容性の支持骨格材料が一定のフィブリン基材材料、一定のコラーゲン基材材料、一定のヒアルロン酸基材材料、一定のセルロース基材材料、シルクおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される一定の天然ポリマーを含む実施態様(33)に記載の方法。
【0131】
(51)前記生体相容性の支持骨格材料がヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体ガラス、同種骨移植片材料、異種骨移植片材料およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(33)に記載の方法。
(52)前記生体移植可能な支持骨格材料が一定の連続気泡型の多孔質構造を伴う複数の気孔を有する一定の高分子発泡体を含む実施態様(D)に記載の方法。
(53)前記生体移植可能な支持骨格材料がさらに一定の生体相容性メッシュ含有材料により形成されている一定の補強部品を含む実施態様(52)に記載の方法。
(54)前記発泡体部品が前記補強部品と一体になっていて、当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品に対して結合している実施態様(53)に記載の方法。
(55)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該材料に供給される少なくとも1種類の付加的な生物学的要素を含む実施態様(D)に記載の方法。
(56)前記少なくとも1種類の付加的な生物学的要素が種々の増殖因子、基質タンパク質、酵素、サイトカイン、ウイルス、核酸、ペプチド、単離した細胞、血小板、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(55)に記載の方法。
(E)生活組織における一定の物質の作用効果を測定するための方法において、
(a)一定の生体相容性の支持骨格材料を供給することにより一定の組織構造体を形成して、一定の組織サンプルを入手し、前記組織サンプルを処理して少なくとも1種類の組織フラグメントを形成して、当該少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に付着させて当該少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に結合することにより一定の組織構造体を形成し、当該組織構造体を前記組織フラグメント内の細胞が前記支持骨格材料に自然に移動可能にするために有効な一定の持続期間および諸条件下において培養する工程、
(b)前記組織構造体を一定の物質に接触させる工程、および
(c)前記組織構造体における前記物質の作用効果を決定する工程を含む方法。
(57)前記物質が一定の薬物、薬剤組成物、化学薬品、微生物、要素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、ペプチド、リガンド、膜結合レセプタのアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(E)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1A】一定の軟骨組織サンプル内の細胞が多量に一定のポリマー支持骨格材料の中に移動している顕微鏡写真図である。
【図1B】図1Aの移動している各細胞がそれぞれの表現型を維持していること、およびこれらの移動している細胞がサフラニン−O(Safranin O)染料によるサルフェーテド・グリコスアミノグリカンに対して陽性に染色する細胞基質を生成することを示している顕微鏡写真である。
【図2A】SCIDマウスの体内に移植した後の、各生体相容性の支持骨格材料に充填された細分化処理した組織内における各細胞が増殖して支持骨格全体を満たしたことを示している顕微鏡写真である。
【図2B】SCIDマウスの体内に移植した後の、細分化処理した組織内における各細胞が軟骨細胞様であり、サフラニン−Oに対して陽性に染色する一定の豊富な基質により囲まれていることを示している顕微鏡写真である。
【図3A】細分化処理した組織により充填されている一定の支持骨格材料を示している顕微鏡写真である。
【図3B】細分化処理した組織および高濃度血小板血漿(PRP)により充填した一定の支持骨格材料を示しており、当該PRP内における各種の増殖因子が細分化処理した組織からの軟骨細胞の移動を助長すること、および各支持骨格材料内の軟骨細胞の分化した表現型の維持を助長することにおいて有益的であることを示している顕微鏡写真である。
【図4】自己由来細胞の分散(皮膚から由来)が各ケラチノサイトの島状の組織学的構造として存在していることを示している顕微鏡写真である。
【図5A】コラーゲナーゼを伴って処理されている細分化処理した前十字組織フラグメントを含む一定の生体相容性の支持骨格材料の培養における6週間にわたる培養後のポリマー支持骨格材料内への各細胞の多量の移動を示している顕微鏡写真である。
【図5B】コラーゲナーゼを伴わずに処理されている細分化処理した前十字組織フラグメントを含む一定の生体相容性の支持骨格材料の培養における6週間にわたる培養後のポリマー支持骨格材料内への各細胞の多量の移動を示している顕微鏡写真である。
【図6A】一定の半月板体外移植組織サンプル内の各細胞が一定のポリマー支持骨格材料内に多量に移動することを示しているグラフである。
【図6B】付随の半月板体外移植組織および生体相容性の支持骨格材料の各断面の組織学的構造を示している顕微鏡写真であり、これらの断面は半月板体外移植組織サンプル内の各細胞がポリマー支持骨格内に移動することを示している。
【図7】図7A乃至図7Cは実施例7の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、一定の支持骨格内において形成されて細分化処理した軟骨組織フラグメントから増殖した組織の分布および性質を示している。
【図8】図8A乃至図8Cは実施例7の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、一定の支持骨格内において形成されて細分化処理した軟骨組織フラグメントから増殖した組織の分布および性質を示している。
【図9】異なる大きさの細分化処理した軟骨組織フラグメントにおいて得られた各細胞の数を比較しているグラフである。
【図10】図10A乃至図10Cは実施例8の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、異なる大きさの細分化処理した軟骨組織フラグメントにより得られる軟骨様組織の均一さを示している。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本特許出願は2002年10月18日に出願されていて「バイオコンパチブル・スキャフォルド・ウイズ・テイシュー・フラグメンツ(Biocompatible Scaffold With Tissue Fragments)」を発明の名称とする米国仮特許出願第60/420,093号、および2002年10月18日に出願されていて「バイオコンパチブル・スキャホルド・フォー・リガメント・オア・テンドン・リペア(Biocompatible Scaffold for Ligament or Tendon Repair)」を発明の名称とする米国仮特許出願第60/419,539号に対して優先権を主張している。
本発明は各種組織の傷害の治療において使用するための生体相容性の組織移植装置に関連しており、さらに、当該生体相容性の組織移植装置を作成する方法およびこれらを使用する方法に関連している。
【背景技術】
【0002】
組織が負傷または損傷している、軟骨、皮膚、骨、腱および靭帯等のような軟質組織に対する傷害部分は多くの場合にその損傷を治療して治癒を促進するための外科的介入を必要とする。このような外科的な治療は既知の各種の装置によりその損傷した組織を縫合またはその他の方法で治療する処理、損傷した組織に別の組織を添加する処理、および一定の移植片、グラフト材料またはこれらの技法の任意の組み合わせを用いる処理を含むと考えられる。
【0003】
一例の一般的な組織傷害は軟骨に対する損傷を含み、この組織は一定の非脈管性の弾性で柔軟性の接合組織である。軟骨は一般的に関節を成している連結部分において一定の「衝撃吸収体(shock-absorber)」として作用するが、一部の種類の軟骨は、例えば、咽頭、気道、および耳等のような各種の管状構造体に対して支持を行なう。一般に、軟骨組織は一定の細胞外基質の中に存在している軟骨細胞として知られている軟骨の各種細胞により構成されており、これらの細胞はコラーゲン、すなわち、一定の構造的な支持骨格体、およびアグリカン(aggrecan)、すなわち、一定の空間充填用のプロテオグリカンを含む。硝子軟骨、線維軟骨および弾性軟骨を含む幾つかの種類の軟骨が体内において見ることができる。硝子軟骨は別個の物質として体内において見ることができ、あるいは、この種の軟骨は各種の骨の関節端部に融合している状態で見ることができる。このような硝子軟骨は一般に関節軟骨、肋軟骨、および一過性軟骨(すなわち、骨形成の過程を通して最終的に骨の変化する軟骨)として体内において見られる。また、線維軟骨は一般的に腱と骨、骨と骨、および/または硝子軟骨と硝子軟骨との間に存在している一定の移行性の組織である。また、弾性軟骨は細胞外基質の全体に分布している弾性線維を含み、一般的に咽頭蓋、耳および鼻の中において見られる。
【0004】
硝子軟骨傷害の一例の一般的な例は膝に対する一定の外傷性の局所的な関節軟骨の欠損である。この関節部分に対する強い衝撃により、種々の大きさおよび形状の一定の軟骨フラグメントが完全にまたは部分的に除去される。このように損傷した関節軟骨はその関節機能を過度に制限する可能性があり、消耗性の痛みを生じて、変形性関節症等のような長期間の慢性の病気を生じる可能性があり、これにより、その軟骨およびその関節における下層の骨が徐々に破壊される。このような軟骨組織に対する傷害は自発的に治癒することがなく、症候性である場合には、外科的な介入を必要とする。現行における治療様式は洗浄および部分的にまたは全体的に付着している組織フラグメントの除去を含む。加えて、外科医は軟骨欠損部内における出血および一定の凝血を誘発するために剥離処理、ドリル処理または微小骨折処理等のような種々の方法を採用する場合が多い。骨髄から由来する各種の細胞が一部の症状を一時的に軽減できる線維軟骨と呼ばれる一定の瘢痕様組織を形成すると考えられている。不都合にも、この線維軟骨組織は上述した硝子軟骨と同一の機械的な特性を有しておらず、疲労の結果として経時的に比較的に速く劣化する。従って、患者は一般的にこのような軟骨の表面における完全な劣化を引き起こす可能性のある各種の外科的処置を繰り返して受けることが必要になる。さらに最近において、自己由来性の軟骨細胞の移植を含む実験的な手法がその頻度を高めながら用いられている。この方法はその最初の外科的処置における関節軟骨の少量の生検材料の採集処理を含み、その後、この材料が増殖のために細胞培養において特殊化されている一定の実験室に運ばれる。この組織生検材料は各種の酵素により処理され、これらの酵素はその基質から各種の軟骨細胞を放出し、単離されたこれらの細胞が標準的な組織培養技法により3週間乃至4週間にわたり増殖される。さらに、この細胞母集団が一定の目的数に到達した後に、これらの細胞が第2の外科的処置における移植のために外科医に戻される。このような手動による労働集約的な方法は極めて費用が高く時間がかかる。この臨床データは一定の患者に対して長期間の有益性を示すが、この方法の極めて高い費用は膝に対する上記二種類の外科的処置における傷害性の衝撃と共にこの技法を採用する障害になっている。
【0005】
一般的な一例の軟骨傷害は膝関節の半月板に対する損傷である。膝関節には2個の半月板すなわち内側半月板および外側半月板がある。それぞれの半月板は両凹形状の線維軟骨組織であり、足の大腿骨と頸骨との間に挟まれている。膝関節の半月板に加えて、半月板軟骨は肩鎖骨関節、すなわち、鎖骨と肩甲骨の肩峰との間の関節内、胸鎖関節、すなわち、鎖骨と胸骨との間の関節内、および側頭下顎関節、すなわち、下顎の関節内おいても見ることができる。これらの半月板軟骨の主な機能は各種の負荷を受けること、衝撃を吸収すること、および一定の関節を安定化することを含む。適正に治療されない場合には、膝関節における「バケツ柄状断裂(bucket-handle tear)」等のような、半月板に対する一定の傷害が変形性関節症の進展を引き起こす可能性がある。このように損傷した半月板軟骨に対する現行の従来的な治療様式はその損傷した軟骨の除去および/または外科的な修復処置を含む。
【0006】
組織傷害における別の一般的な形態は各種の靭帯および/または腱に対する損傷を含む。これらの靭帯および腱は軟質の膠原質組織を含む各種線維組織の索または帯である。各種の靭帯は骨と骨を接続しているが、腱は筋肉と骨を接続している。これらの腱は相当に強度を有しているが事実上において全く弾性を有していない線維状の可変長の策または帯である。これに対して、靭帯は一般に屈曲しやすく柔軟であり、その靭帯組織は移動の自由度を有することが可能であると共に強度を有していて非延伸性であり、加えられる力に対するその靭帯組織の容易な屈服を阻止する。これらの靭帯および腱は線維の束であり、これらの束は靭帯または腱の基本的な原線維および線維芽細胞として知られている靭帯または腱を生成する各種の細胞を含む。これらの腱の線維束は一般に極めて高密度に配列されている膠原質の線維、細長い線維芽細胞の平行の列、および一定のプロテオグリカン基質により構成されている。また、各種靭帯の線維束も一定のプロテオグリカン基質、線維芽細胞およびコラーゲン原線維を含むが、これらの靭帯組織において見られる原線維は腱組織内において見られる原線維よりも一般に密度が低く組織化に劣る。
【0007】
一般的な靭帯の傷害の一例は一定の断裂した前十字靭帯(ACL)であり、この靭帯は膝における4種類の主要な靭帯の一つである。このACLの主な機能は前方移動、回転の不正確さおよび過度の伸びを抑制することである。このACLの欠損はその膝関節の不安定性を生じて、変形性関節症等のようなその膝における変性性の変化を生じる。最も一般的な治療技法はその崩壊したACLを除去および廃棄して自己由来性の骨−膝蓋骨、腱−骨または膝窩腱を用いて新しいACLを再構成することである。この技法は長期間の臨床的効果を示しているが、その組織移植片の採取部位に伴う罹病性が存在する。そこで、合成のプロテーゼ装置が過去において臨床的に評価されているが、長期間の有効性がほとんどない。一定の合成移植片の利点は自己移植片の処置に伴うドナーの部位の罹病性により患者が病気に罹らないこと、および一定の合成移植片を有する患者がその膝の比較的に速いリハビリテーションを受けることが可能であることである。これらの合成の装置は非吸収性の材料により構成されており、永久的なプロテーゼ移植片になるように設計されている。しかしながら、これらの移植片の種々の臨床的試行において、例えば、滑膜炎、骨トンネル拡張、磨耗破片、および装置の伸びおよび崩壊等のような、多数の問題が見出されている。このような理由により、自己移植片による再構成法が一定の崩壊したACLを治療するために依然として広く受け入れられている解消法となっている。
【0008】
一般的な腱障害は損傷または断裂した回旋腱板であり、この回旋腱板は上腕骨の肩甲骨に対する円形動作を容易にする肩関節の一部分である。この回旋腱板に付随する最も一般的な傷害は棘上筋腱に対する一定のひずみまたは断裂である。この断裂は棘上筋腱が上腕骨に付着しているこの腱の挿入部位において生じ、これにより、この腱は(その傷害の程度に応じて)その骨から部分的にまたは完全に遊離する。加えて、上記のひずみまたは断裂は腱自体の中において生じる可能性がある。一定のひずみが生じた腱に対する治療は通常においてその腱の休止および使用の減少を含む。しかしながら、傷害の程度に応じて、一定の断裂した腱は、例えば、上腕骨からの棘上筋腱の完全な断裂の場合等において、外科的な介入を必要とする場合もある。このような重度の腱の損傷の場合に、その外科的介入は断裂した組織の修復および/または再付着の処理を含み、これらの処理は一般的に一定の治癒期間および回復期間を必要とする。
【0009】
従って、比較的に信頼性の高い組織修復を行なうことができ、損傷した組織の治癒を容易に行なうことのできる損傷した組織(例えば、軟骨、半月板軟骨、靭帯、腱および皮膚)の外科的治療のための新規な外科技法に対する継続した要望が当業界において存在している。種々の外科的な移植片が知られており、これらの有益性を達成する補助のために種々の外科的処置において用いられている。例えば、一定の配給用ビヒクルに装填されている各種の単離された細胞を含む各種の移植片を形成するための種々の装置および技法を用いることが知られている。このような細胞接種型の各種の移植片が種々の生体崩壊性で生体相容性の線維高分子基質上に接触した各種軟骨細胞により構成されている軟骨性の構造を増殖することにより軟骨を作成および/または修復する生体外(イン・ビトロ)の方法において用いられている。このような方法は上記高分子基質に軟骨細胞を接種する前にこれらの軟骨細胞を軟骨性の組織から初期的に分離することを必要とする。さらに別の損傷した組織を修復するための技法は所望の組織を生成するために使用する各種の幹細胞または先祖細胞を含む移植片を採用している。例えば、一定の患者における骨および/または軟骨を再生するために脂肪組織、筋肉、または骨髄内の細胞等のような各種の幹細胞または先祖細胞を使用することが知られている。このような幹細胞は一定の患者から取り出されて、軟骨形成に適した一定の環境内に配置され、これにより、その脂肪組織細胞の増殖および、例えば、各種軟骨細胞等のような異なる種類の細胞の形成が誘発される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、損傷した組織を作成および/または修復するため、および損傷した組織の治癒を速めるための新規な装置および方法に対する要望が当業界において存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は組織の治療に使用するための生体相容性の組織移植片およびこれらの装置の作成および使用のための方法に関連している。例えば、この組織移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用できる。さらに、これらの組織移植片は組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織修復のために使用できる。これらの移植片は少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む一定の懸濁液を伴う一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この生体相容性の組織移植片はその細分化処理した組織の懸濁液の上方に配置されている一定の付加的な生物学的物質および/または一定の付随的な保持要素も含むことができる。
【0012】
本発明はまた上記のような生体相容性の組織移植片を作成するための方法にも関連している。これらの移植片は少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを含む生活可能な組織の懸濁液を形成するために上記組織サンプルを処理すること、および当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料の上に付着することにより作成される。一例の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料に集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。
【0013】
本発明はまた上記本発明の組織移植片の作成を補助するための一定のキットにも関連している。本発明のキットは少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料を収容している一定の無菌容器、一定の被検体から一定の組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および組織サンプルの生活可能性を持続するための1種類以上の試薬を含む。このキットはまた一定の組織を組織粒子に細分化するための一定の処理用工具を含むことも可能であり、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してそのサンプルを微細分割した組織粒子に処理することに適合可能である。さらに、このキットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から移植のための一定の被検体に移すための一定の配給装置も含むことができる。
【0014】
本発明はまた上記本発明の生体相容性の組織移植片を用いて組織を治療する方法にも関連している。これらの方法による組織の治療は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料上に付着させること、およびこの組織積載型の支持骨格材料を治療する組織に対して一定の所望の位置に配置することにより達成できる。一例の実施形態において、組織修復は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを組織傷害部位に対して一定の所望の位置に付着させること、および上記生体相容性の支持骨格材料を組織の上に配置することにより達成できる。また、別の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料に集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。また、さらに別の実施形態において、上記の組織を治療する方法は、例えば、上記組織積載型の支持骨格材料の位置を固定することにより治療する組織に対して一定の所望の位置に上記支持骨格材料を固定する別の工程も含むことができる。
【0015】
本発明はまた生活組織における一定の物質の作用を測定するための方法にも関連している。本発明のこの態様によれば、本発明の生体移植可能な組織移植片は各種の組織構造体を形成するために使用可能であり、この構造体は一定の試験物質と接触することにより、生活組織におけるこの物質の作用効果が観察および測定できるようになる。従って、本発明の生体移植可能な組織構造体は、例えば、細胞移動、細胞の増殖および分化および細胞表現型の維持の作用効果等のような、種々の生物学的応答における作用効果を調べることにより生活組織における一定の試験物質の作用効果を測定するための一定の生物学的なスクリーニング・アッセイとして使用できる。
【0016】
上記移植片が組織修復のために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は、例えば、各種の回旋腱板の傷害、ACL崩壊、または半月板断裂等のような筋骨格系内に生じる傷害、ならびに、皮膚および軟骨等のような別の接合組織内において生じる傷害を含む種々の傷害を治療するために使用できる。さらに、これらの移植片は各種の靭帯、神経および腱等のような組織を修復するための手および足の手術等のような別の整形外科的処置において使用できる。
本発明は以下の添付図面と共に考察した場合の上記の詳細な説明を参照することによりさらに完全に理解される。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明によれば、損傷した組織を作成および/または修復するため、および損傷した組織の治癒を速めるための新規な装置および方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の生体相容性の組織移植片は種々の目的のための種々の組織の治療において用いられる。例えば、これらの移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用でき、あるいは、これらは組織増量、組織増強、美顔用治療、医療処置、および組織密封処理のために使用できる。このような組織移植片は一定の生体相容性の支持骨格材料および少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む細分化処理した組織の懸濁物を含み、この場合に、細分化処理した組織の懸濁物は上記支持骨格材料に付随している。本発明の上記懸濁物内の細分化処理した組織は少なくとも1種類の生活可能な細胞を含み、この細胞は上記の組織フラグメントから支持骨格材料上に移動できる。
【0019】
上記移植片は本明細書において「組織修復移植片(tissue repair implants)」として呼ばれる場合があり、これらの移植片を使用する方法が組織修復技法として特徴付けられている場合があるが、これらの移植片が組織修復、組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織密封処理を含むがこれらに限らない種々の組織治療のために使用可能であることが理解されると考える。
【0020】
本発明の生体相容性の組織移植片は少なくとも一部分が細分化処理した組織懸濁物に接触している一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この細分化処理した組織懸濁物は上記支持骨格材料の外表面部、当該支持骨格材料の内表面部、およびこれらの任意の組み合わせにおいて配置可能であり、あるいは、この支持骨格材料の全体が上記細分化処理した組織懸濁物に接触することも可能である。この支持骨格材料は事実上任意の材料または配給ビヒクルにより形成可能であり、この材料は生体相容性で生体移植可能であり、容易に滅菌処理され、一定の動作室内環境における取り扱いを有効に容易にして当該材料が実質的に避けることなく各種の縫合線またはその他の固定手段を許容して保持することを可能にするために十分な構造的完全性および物理的および/または化学的な諸特性を有している。あるいは、この支持骨格材料は一定の欠損部位の場所において硬化する一定の注入可能なゲルの形態にすることも可能である。十分な強度および物理的特性は上記支持骨格材料を形成するために使用する各種材料の選択およびその製造プロセスにより当該支持骨格材料において示される。好ましくは、この支持骨格材料は柔軟性であり、当該支持骨格材料を移植の標的部位の寸法に調節することができる。また、一部の実施形態において、この支持骨格材料は一定の生体吸収性または生体再吸収可能な材料にすることができる。
【0021】
本発明の一例の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の生体相容性のポリマーにより形成できる。種々の生体相容性のポリマーが本発明による各種の生体相容性の組織移植片または支持骨格装置を作成するために使用できる。このような生体相容性のポリマーは各種の合成ポリマー、天然ポリマーまたはこれらの組み合わせ物とすることができる。本明細書において用いられているように、用語の「合成ポリマー(synthetic polymer)」は、これらのポリマーが仮に天然に存在している各種の生体材料により作成されていても、天然には見られないポリマーを意味する。また、用語の「天然ポリマー(natural polymer)」は天然に存在している各種のポリマーを意味する。上記支持骨格材料が少なくとも1種類の合成ポリマーを含む場合の実施形態において、適当な生体相容性の合成ポリマーは各種の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート・ポリアミド・チロシン誘導型ポリカーボネート・ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル・ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、各種アミン基を含みポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、およびこれらの混合物から成る群から選択される各種ポリマーを含むことができる。さらに、本発明における使用に適している合成ポリマーはコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、およびこれらの組み合わせ物において見られる各種シーケンスに基づく各種の生体合成ポリマーを含むこともできる。
【0022】
本発明の目的のために、脂肪族ポリエステルはラクチド(乳酸、D−体、L−体、およびメソ型のラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートの各種アルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体の1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピパロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンおよびこれらのポリマー混合物の各種ホモポリマーおよびコポリマーを含むがこれらに限らない。また、本発明において用いる脂肪族ポリエステルは一定の線形、分枝状または星状の構造を有する各種のホモポリマーまたはコポリマー(ランダム型、ブロック型、セグメント化型、テーパード・ブロック型、グラフト型、トリブロック型等)とすることができる。また、本発明の目的のために、上記ポリ(イミノカーボネート)はケムニッツァー(Kemnitzer)およびコーン(Kohn)により、「ハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),251頁乃至272頁,(1997年))において記載されているような各種ポリマーを含むものと考えられる。また、本発明の目的のために、上記コポリ(エーテル−エステル)はコーン(Cohn)およびユーネス(Younes)により、「ジャーナル・オブ・バイオマテリアルズ・リサーチ(Journal of Biomaterials Research)」,22巻,993頁乃至1009頁,1988年において、およびコーン(Cohn)(例えば、PEO/PLA)により、「ポリマー・プレプリンツ(ACSデイビジョン・オブ・ポリマー・ケミストリー(ACS Division of Polymer Chemistry)」,30(1)巻,498頁,1989年において記載されるような各種のコポリエステル−エーテルを含むものと考えられる。また、本発明の目的のために、上記ポリアルキレン・オキサレートは米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号、および同第4,205,399号において記載されている材料を含む。また、各種のポリホスファゼン類、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレン・カーボネートおよびε−カプロラクトン等から作成される各種ポリマーに基づくコ−、ター−およびさらに高次の混合モノマーがアルコック(Allcock)により、「ジ・エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス(The Encyclopedia of Polymer Science)」,13巻,31頁乃至41頁,ワイリー・インターサイエンシーズ(Wiley Intersciences),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),1988年において、およびバンドルペ(Vandorpe)により、「ハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),161頁乃至182頁,(1997年))において記載されている。また、上記ポリ酸無水物はHOOC-C6 H4 -O-(CH2 )m -O-C6 H4 -COOHの形態の二酸から誘導される材料を含み、この場合に、上記「m」は2乃至8の範囲内の一定の整数であり、さらに、12個までの炭素の脂肪族アルファ−オメガ二酸と当該材料とのコポリマーを含む。また、各種のポリオキサエステル、ポリオキサアミドおよび各種のアミド基および/またはアミノ基を含むポリオキサエステルが以下の米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号および同第5,859,150号の1個以上において記載されている。さらに、上記ポリオルトエステルはヘラー(Heller)により、「ハンドブック・オブ・バイオデイグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」(ドーム(Domb)他編集、ハードウッド・アカデミック・プレス社(Hardwood Academic Press),99頁乃至118頁,(1997年))において記載されているような材料を含む。
【0023】
本明細書において用いられているように、用語の「グリコリド(glycolide)」はグリコール酸を含むものとして理解されている。さらに、用語の「ラクチド(lactide)」はL−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含むものとして理解されている。
【0024】
各種の弾性コポリマーもまた本発明において特に有用である。適当な弾性ポリマーはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中におけるポリマーの0.1グラム/デシリットル(g/dL)溶液中において25℃で決定した場合に約1.2dL/g乃至4dL/g、さらに好ましくは約1.2dL/g乃至2dL/g、最も好ましくは約1.4dL/g乃至2dL/gの範囲内の一定の固有粘度を有するポリマーを含む。さらに、適当なエラストマーまたは弾性体は一定の高い伸び率および一定の低い弾性率を示すが、良好な引張強さおよび良好な回復特性を有している。本発明の好ましい実施形態において、上記エラストマーは約200%以上、好ましくは約500%以上の一定の伸び率を示す。これらの伸び率および弾性率に加えて、適当なエラストマーは約500psi(3.5×106 パスカル)以上、好ましくは約1,000psi(6.9×106 パスカル)以上の一定の引張強さ、および約50ポンド/インチ(8.9kg/cm)以上、好ましくは約80ポンド/インチ(14.3kg/cm)以上の一定の引裂強さを有している。
【0025】
本発明において使用できる例示的な生体相容性のエラストマーは約35:65乃至約65:35、さらに好ましくは45:55乃至35:65のε−カプロラクトン対グリコリドのモル比を有するε−カプロラクトンおよびグリコリド(グリコール酸を含む)の弾性コポリマー、約35:65乃至約65:35、さらに好ましくは45:55乃至30:70あるいは約95:5乃至約85:15のε−カプロラクトン対ラクチドのモル比を有するε−カプロラクトンおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、約40:60乃至約60:40のp−ジオキサノン対ラクチドのモル比を有するp−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)およびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のε−カプロラクトン対p−ジオキサノンのモル比を有するε−カプロラクトンおよびp−ジオキサノンの弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のp−ジオキサノン対トリメチレン・カーボネートのモル比を有するp−ジオキサノンおよびトリメチレン・カーボネートの弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のトリメチレン・カーボネート対グリコリドのモル比を有するトリメチレン・カーボネートおよびグリコリド(グリコール酸)の弾性コポリマー、約30:70乃至約70:30のトリメチレン・カーボネート対ラクチドのモル比を有するトリメチレン・カーボネートおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の各種ポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。なお、適当な生体相容性のエラストマーの例が米国特許第4,045,418号、同第4,057,537号および同第5,468,253号において記載されている。
【0026】
一例の実施形態において、上記エラストマーは一定のジオキサン溶媒中において形成されていて一定のポリジオキサノン・メッシュを含む35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。また、別の実施形態において、上記エラストマーは一定のポリジオキサノン・メッシュを含む40:60のε−カプロラクトンおよびラクチドの一定のコポリマーである。さらに別の実施形態において、上記エラストマーはε−カプロラクトンおよびグリコリドの35:65のコポリマーおよびε−カプロラクトンおよびラクチドの40:60のコポリマーの50:50の混合物である。上記のポリジオキサノン・メッシュは一層型の二次元的メッシュまたは多層型の三次元的メッシュの形態にできる。
【0027】
本発明の支持骨格材料は、随意的に、体内環境内において一定の時宜を得た様式で再吸収される能力を有する一定の生体再吸収性または生体吸収性の材料により形成できる。この生体内の諸条件下における吸収時間の違いは本発明の各種の支持骨格材料を形成する場合の2種類の異なるコポリマーの混合に基づくと考えられる。例えば、35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドのコポリマー(比較的に速い吸収性のポリマー)を40:60のε−カプロラクトンおよびL−ラクチドのコポリマー(比較的に遅い吸収性のポリマー)と混合することにより一定の生体相容性の支持骨格材料を形成することができる。採用する処理技法により、上記2種類の成分は不規則に相互接続している二種類の連続的な相になるか、あるいは、これら2種類の成分の各層の間に一定の良好に一体化した境界層を伴う一定の積層型の形態における一定の勾配様式の構造を有することができる。これら支持骨格材料の微小構造は再増殖している組織の所望の解剖構造学的特徴部分を再生または修復するために最適化できる。
【0028】
一例の実施形態において、一定の勾配様式の構造において1種類の組成から別の種類の組成に変化する各種の支持骨格材料を形成するために種々のポリマー混合物を使用することが望ましい。このような勾配様式の構造を有する支持骨格材料は軟骨(関節、半月板、中隔、気管、耳介、肋骨等)、腱、靭帯、神経、食道、皮膚、骨、および脈管組織等のような天然に存在する組織の構造を修復または再生するための組織工学的な用途において特に有利である。例えば、ε−カプロラクトン−コ−グリコリドの一定のエラストマーをε−カプロラクトン−コ−ラクチドと(例えば、約5:95のモル比で)混合することにより、例えば、軟骨から骨の変化に類似している一定の様式で、一定の比較的に軟質のスポンジ状の物質から一定の比較的に硬質の剛性の物質に変化している一定の支持骨格材料が形成できる。明らかに、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記と類似の勾配作用に対応するために、あるいは、別の勾配(例えば、異なる吸収特性、応力応答特性、または異なる弾性の程度)を得るために別のポリマー混合物が使用可能であることが認識できる。例えば、上記のような設計の特徴は本発明の各種支持骨格材料に付随している細分化組織の懸濁物における一定の濃度勾配を設定することができ、一定の領域(例えば、外側の各部分)におけるよりも高い組織フラグメントの濃度を移植片の別の領域(例えば、一定の内側の部分)に設定できる。
【0029】
本発明の組織修復移植片における生体相容性の支持骨格材料は、例えば、織り状、編み状、縦編み状、(すなわち、レース様)、不織状、および編み組状の各種構造を有する任意の吸収性または非吸収性の布地により構成されている一定の補強材料も含むことができる。一例の実施形態において、この補強材料は一定のメッシュ様の構造を有している。上記の構造のいずれにおいても、その材料の機械的特性はその材料の密度または組織、材料の編み方または織り方、材料の厚さを変化すること、またはその材料中に各種の粒状物質を埋め込むことにより変更できる。また、上記材料の機械的特性はそのメッシュ内に各種の部位を形成することにより変更することも可能であり、これらの部位において、各繊維は互いに物理的に結合しているか、例えば、一定の接着剤または一定のポリマー等のような別の物質と物理的に結合している。上記補強材料を作成するために用いる繊維は各種のモノフィラメント、糸、より糸、編み組糸、または複数の繊維の束とすることができる。さらに、これらの繊維はポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレン・カーボネート(TMC)、およびこれらのコポリマーまたは混合物等のような生体吸収性の材料を含む任意の生体相容性の材料により作成できる。また、これらの繊維はシルク(絹)およびコラーゲンを基材とする各種材料を含む各種の天然ポリマーを基材とする任意の生体相容性の材料により作成することも可能である。さらに、これらの繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリ(ビニル・アルコール)等のような非吸収性の任意の生体相容性の繊維により作成することもできる。一例の実施形態において、上記繊維はラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマーにより形成されている。
【0030】
別の実施形態において、上記補強材料を形成している繊維は一定の生体吸収性のガラス材料により作成可能である。生体ガラス、一定のケイ酸塩含有のリン酸カルシウム・ガラス、または再吸収時間を調整するために種々の量の固形粒子が添加されているリン酸カルシウム・ガラスが各種のガラス繊維として延伸可能であり上記補強材料として使用できる材料の例として挙げられる。添加できる適当な固形粒子は鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、およびこれらの組み合わせ物を含む。
【0031】
上記の生体相容性の支持骨格材料および補強材料は組織の内部成長を可能にするための複数の孔または気孔を有する一定の薄い気孔を含む弾性シート材料により形成することもできる。このようなシート材料はポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびポリジオキサノン(PDO)の各種の混合物またはコポリマーにより作成可能である。
【0032】
一例の実施形態において、上記の生体相容性の支持骨格材料または補強材料を形成するフィラメントは一定のシース/コア構造を有する一定のフィラメントを製造するために同時押出成形できる。これらのフィラメントは一定の生体崩壊性のポリマーにより構成されている1個以上のコアを囲む別の生体崩壊性のポリマーのシースを有している。さらに、一定の遅い吸収性のコアを囲む一定の速い吸収性のシースを伴う各種のフィラメントが組織の内部成長のために延長された支持を必要とする場合において望ましい。
【0033】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記補強材料における1個以上の層が本発明の組織移植片を補強するために使用できることが認識できる。加えて、同一の構造および化学的性質または異なる構造および化学的性質の、例えば、メッシュ等のような、各種の生体崩壊性の布地の支持骨格材料を互いに重ね合わせることにより優れた機械的強度を有する各種の生体相容性の組織移植片が製造できる。
【0034】
上記支持骨格材料が少なくとも1種類の天然ポリマーを含む場合の実施形態において、この天然ポリマーの適当な例は各種のフィブリン基材の材料、コラーゲン基材の材料、ヒアルロン酸基材の材料、糖タンパク質基材の材料、セルロース基材の材料、シルクおよびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。例えば、非限定的な例として、上記生体相容性の支持骨格材料は一定のコラーゲン基材の小腸粘膜下組織により構成可能である。
【0035】
本発明の別の実施形態において、上記生体相容性の支持骨格材料は一定の生体相容性のセラミック材料により形成できる。適当な生体相容性のセラミック材料は、例えば、ヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体活性ガラス材、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、異種および同種異系の骨材料およびこれらの組み合わせ物を含む。本発明における使用に適している生体活性ガラス材料はリン酸カルシウム・ガラスを含有している種々のケイ酸塩または再吸収時間を調整するために種々の量の固形粒子が添加されているリン酸カルシウム・ガラスを含む。さらに、上記リン酸カルシウムの生体活性ガラス材料に組み込むことのできる適当な化合物は酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。
【0036】
本発明の組織移植片のさらに別の実施形態において、上記支持骨格材料は同種異系の組織、自家組織および異種組織により得られるような、各種の組織移植片により形成可能である。例えば、非限定的な例として、皮膚、軟骨、靭帯、腱(tendon)、骨膜、軟骨膜、滑膜、筋膜、腸間膜および腱(sinew)が上記生体相容性の支持骨格材料を形成するための組織移植片として使用できる。一定の同種異系の組織を使用する一部の実施形態において、一定の胎児または新生児からの組織が一部の成人の組織に伴う免疫抗原性を回避するために使用できる。
【0037】
別の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の欠損部位において位置を設定できる一定の注入可能なゲルの形態にすることも可能である。このゲルはアルギネート、架橋化アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン・ゲル、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、アガロース、キチン、キトサン、セルロース、多糖類、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレン・オキシド)−ポリ(プロピレン・オキシド)の一定のコポリマー、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリアクリレート、高濃度血小板血漿(PRP)クロット、低濃度血小板血漿(PPP)クロット、マトリゲル(Matrigel)、またはこれらの混合物を含む一定の生物学的なまたは合成のヒドロゲルとすることができる。
【0038】
上記組織移植片のさらに別の実施形態において、上記支持骨格材料は一定の連続気泡型の気孔構造を有する複数の気孔を含む一定の高分子発泡体部品により形成できる。この気孔の寸法は変更可能であるが、好ましくは、これらの気孔は組織の内部成長を可能にする大きさである。さらに好ましくは、この気孔寸法は約50ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内であり、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である。上記高分子発泡体部品は、随意的に、例えば、上述した各種の布地等のような、一定の補強部品を含むことができる。さらに、上記高分子発泡体部品が一定の補強部品を含む一部の実施形態において、この発泡体部品は当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品と連結するようにその補強部品に対して一体化できる。
【0039】
上記組織移植片における発泡体部品は当該技術分野における通常の熟練者において良く知られている種々の技法により一定の発泡体として形成できる。例えば、これらの高分子開始材料は凍結乾燥、超臨界溶媒発泡処理(すなわち、欧州特許(EP)第464,163号において記載されているような処理)、ガス注入押出成形、ガス注入成形、または一定の抽出可能な材料(例えば、塩類、糖または類似の適当な材料)を伴うキャステイング処理により発泡させることができる。
【0040】
一例の実施形態において、本発明の工学処理を施した組織修復移植片装置における発泡体部品は、凍結乾燥処理等のような、一定のポリマー−溶媒相分離技法により作成可能である。しかしながら、一般に、一定のポリマー溶液は以下の4種類の技法、すなわち、(a)熱誘導型のゲル化/結晶化法、(b)溶媒相およびポリマー相の無溶媒誘導型分離法、(c)化学誘導型相分離法、および(d)熱誘導型尖点分解法の内のいずれか一つにより二相に分離できる。さらに、このポリマー溶液は2種類の異なる相または2種類の連続的な相のいずれかに一定の調整された様式で分離される。その後、この溶媒相を除去することにより、通常的に全体のポリマーの密度よりも小さい一定の多孔質構造およびマイクロメートルの範囲内の複数の気孔が残る。例えば、「マイクロセルラー・フォームズ・ビア・フェーズ・セパレーション(Microcellular Foams Via Phase Separation)」,ジャーナル・オブ・VAC.ソサイエテイ・テクノロジー(J. Vac. Sci. Technol.),A.T.ヤング(A. T. Young),4(3)巻,5月/6月,1986年を参照されたい。
【0041】
上記発泡体の調製に関連する工程は凍結乾燥処理する各種ポリマーに対応して適正な溶媒をそれぞれ選択する工程および一定の均質な溶液を調製する工程を含む。次に、このポリマー溶液は一定の凍結処理および真空乾燥処理の工程にかけられる。この凍結工程はポリマー溶液を相分離し、真空乾燥工程は昇華および/または乾燥処理によりその溶媒を除去して、一定の多孔質のポリマー構造または一定の相互接続している連続気泡型の多孔質発泡体を残す。
【0042】
上記発泡体部品の調製において使用できる適当な溶媒はギ酸、ギ酸エチル、酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、フッ化ジメチレン(DMF)、およびポリジオキサノン(PDO))、アセトン、C2乃至C5のアルコールの酢酸エステル(例えば、酢酸エチルおよびt−ブチルアセテート)、グライム(例えば、モノグライム、エチル・グライム、ジグライム、エチル・ジグライム、トリグライム、ブチル・ジグライム、およびテトラグライム)、メチルエチル・ケトン、ジプロピレングリコール・メチル・エーテル、ラクトン(例えば、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレン・カーボネート)、ジメチルカーボネート、ベンゼン、トルエン、ベンジル・アルコール、p−キシレン、ナフタレン、テトラヒドロフラン、N−メチル・ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1,2−ジクロロメタン、モルホリン、ジメチルスルホキシド、ヘキサフルオロアセトン・セスキ・ヒドレート(HFAS)、アニソール、およびこれらの混合物を含むがこれらに限らない。さらに、これらの溶媒の内において、好ましい溶媒は1,4−ジオキサンである。また、上記溶媒中における上記ポリマーの一定の均質な溶液が標準的な各種の技法により調製される。
【0043】
適用可能なポリマー濃度または利用可能な溶媒の量はそれぞれのシステムまたは系により変更可能である。一般に、上記溶媒中のポリマーの量は、一定の溶媒中におけるポリマーの溶解度および上記発泡体において望まれる最終的な諸特性等の各種要因により、約0.5重量%乃至約90重量%の範囲において変更可能であり、好ましくは、約0.5重量%乃至約30重量%の範囲において変更する。
【0044】
一例の実施形態において、種々の固形物を上記のポリマー−溶媒システムに添加することにより結果として得られる発泡体の表面における組成を変更することが可能である。これにより、添加した粒子が溶液からその下面部に沈殿するのに従って、その添加した固形物の組成を含み発泡した高分子材料を含まない各種の領域が形成される。あるいは、添加した固形物は得られる組織移植片の所望の領域(すなわち、上部、側部、または下部の近く等)において比較的に多く濃縮することが可能であり、これにより、そのような全ての領域において組成の変化を生じることができる。例えば、選択された各場所における固形物の濃度が金属製の固形物を一定の磁気材料により作成した一定の金型の中に入れた溶液中に添加する(あるいは、逆にする)ことにより達成できる。
【0045】
種々の固形物が上記のポリマー−溶媒システムに添加できる。好ましくは、上記固形物は上記のポリマーまたは溶媒に対して反応しない一定の種類である。一般に、この添加する固形物は約1.0mmの一定の平均直径を有しており、好ましくは、約50ミクロン乃至約500ミクロンの一定の平均直径を有している。また、好ましくは、上記固形物は当該粒子およびポリマー−溶媒の混合物の全体の容量において約1容量%乃至約50容量%を成すような一定の量で存在している(この場合に、上記全体の容量は100容量%に等しい)。
【0046】
例示的な固形物は鉱物質除去した骨、リン酸カルシウム粒子、生体ガラス粒子、硫酸カルシウム、または骨修復用の炭酸カルシウムの粒子、気孔形成用の抽出可能な固形物、および補強材料として有効であるか吸収される時に気孔を形成する上記溶媒システム中において不溶性の各種生体吸収性ポリマーの粒子、および非生体吸収性の各種材料を含むがこれらに限らない。
【0047】
さらに、適当な抽出可能な固形物は塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、生体相容性の単糖類および二糖類(例えば、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトースおよびスクロース)、多糖類(例えば、デンプン、アルギネート、キトサン)、水溶性タンパク質(例えば、ゼラチンおよびアガロース)等のような無毒性の抽出可能な物質を含む。これらの抽出可能な物質は一定の溶媒中に当該抽出可能な物質を含む発泡体を浸漬することにより除去でき、この溶媒中においてこの物質の粒子は当該粒子の実質的に全ての浸出を可能にするのに十分な量の時間をかけて溶解可能であるが、この溶媒は上記発泡体を溶解せず、あるいは、有害な変化を生じない。好ましい抽出溶媒は水であり、最も好ましくは蒸留した脱イオン水である。このようなプロセスが米国特許第5,514,378号において記載されている。好ましくは、上記発泡体は、当該発泡体の加速された吸着が望まれない限り、この発泡体の加水分解を最少にするために上記抽出処理の完了後に低温度および/または減圧下において乾燥される。
【0048】
さらに、適当な非生体吸収性の材料はステンレス・スチール、コバルト−クロム、チタンおよび各種チタン合金、および生体不活性な各種セラミック粒子(例えば、アルミナ、ジルコニア、および硫酸カルシウム粒子)等のような生体相容性の金属を含む。さらに、上記非生体吸収性の材料はポリエチレン、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリ(エチレン・テレフタレート)、シリコーン、ポリエチレン・オキシド、ポリエチレン・グリコール、ポリウレタン、ポリビニル・アルコール、天然ポリマー(例えば、セルロース粒子、キチン、およびケラチン)、およびフッ素化した各種のポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン)等のようなポリマーを含むこともできる。
【0049】
さらに、上記組織移植片を放射線不透過性にする各種の固形物(例えば、硫酸バリウム)を添加することも可能である。さらに、添加可能な固形物として、組織の再生または再増殖を助長する添加物、ならびに、種々の緩衝物質、補強物質または多孔質改質剤として作用する添加物も含まれる。
【0050】
上記において述べられているように、本発明の補強された組織修復移植片装置は上記の適当なポリマー溶液を一定の金型および本発明の補強要素を含む一定の金型組立体の中に射出、注入、またはその他の方法で入れることにより作成される。その後、この金型組立体を一定の適当な槽内または一定の冷却した棚の上において冷却した後に凍結乾燥処理することにより、一定の補強された支持骨格材料が得られる。この場合に、一定の生物学的な成分を上記凍結乾燥工程の前または後に添加できる。このような発泡体部品の形成の途中において、上記ポリマー−溶媒システムの凍結速度を制御することが重要であると考えられる。さらに、この凍結乾燥工程中に進展する気孔の形態の種類は溶液の熱力学的要因、凍結速度、冷却温度、溶液の濃度、および均質または異質の核形成のいずれが生じているか等のような種々のファクターの関数である。なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、過度の実験を行なうことなく上記の各種パラメーターを容易に最適化することが可能である。
【0051】
上記の必要とされる一般の処理工程は上記の高分子発泡体および補強部品を作成する各種の適当な材料の選択を含む。一定のメッシュ状の補強材料を使用する場合には、適当なメッシュ密度を選択する必要がある。さらに、この補強材料は上記金型内に適正に位置合わせされる必要があり、上記ポリマー溶液は一定の適当な速度で、好ましくは、気泡の形成を避けるために一定の適当な角度で傾斜している一定の金型の中に添加される必要があり、さらに、このポリマー溶液は凍結乾燥処理される必要がある。
【0052】
一定のメッシュ状の補強材料を利用する実施形態において、この補強用のメッシュ材料は一定の密度を有している必要がある。すなわち、このメッシュ材料中の各開口部はその構造を縫合可能にまたはその他の方法により固定可能にする程度に十分に小さいが、上記発泡体材料およびその各連続気泡および気泡の壁部が当該メッシュ材料の各開口部の中に進入する際にこれら発泡体と補強用メッシュ材料との間の適当な連結を妨げるほどには小さくないことが必要である。すなわち、適当な連結状態がなければ、その層状構造の完全性が損なわれて、その構造が脆弱になり取り扱いが困難になる。上記メッシュ材料の密度がその構造の機械的強度を決定するので、このメッシュ材料の密度は組織修復における所望の用途に従って変更可能である。加えて、このメッシュ材料において用いられている織り方の種類により、その構造の機械的強度の方向性、ならびに、例えば、弾性、剛性、破裂強さ、縫合線保持強さおよび構造の極限引張強さ等のようなその補強材料の機械的特性が決定できる。例えば、非限定的な例において、本発明の一定の発泡体を基材とする生体相容性の支持骨格材料における上記のメッシュ状補強材料は一定の方向において剛性を示し、別の方向において弾性を示すように設計することができ、あるいは、このメッシュ状補強材料を等方性にすることもできる。
【0053】
上記補強化した発泡体の凍結乾燥処理中に、幾つかのパラメーターおよび処置が所望の構造完全性および機械的特性を有する移植片を製造するために重要である。好ましくは、上記補強材料は上記金型の中に入れる時に実質的に平坦である。この平坦さの適当な程度を確実にするために、この補強材料(例えば、メッシュ材)は金型の中に入れる前に一定の加熱したプレス機により平坦にプレス処理される。さらに、上記補強用の構造が等方性でない場合に、方向性を示すためにその構造を標識することによりその異方性を指示することが望ましい。このことは織り状の補強材料の中に各種の染色した標識または染色した糸等のような1個以上の指示手段を埋め込むことにより達成できる。これにより、その指示手段の方向または配向が一定の医者に対して物理的な特性が優れている移植片の大きさを示す。
【0054】
上述したように、凍結乾燥処理の前に上記ポリマー溶液を金型に加える様式は適当な機械的な完全性を伴う一定の組織移植片を形成することに起因する。一定のメッシュ状の補強材料を使用して、この材料が2個の薄い(例えば、0.75mm)のシムの間に配置されると仮定する場合に、この材料を金型内の一定の所望の深さにおいて一定の実質的に平坦な配向状態で配置する必要がある。その後、上記ポリマー溶液が上記発泡体部品の各層の間から気泡を逃避可能にする一定の様式で注ぎ込まれる。好ましくは、この金型は一定の所望の角度で傾斜しており、注入が気泡の形成を最良に防止するために一定の調整された速度で行なわれる。当該技術分野における通常の熟練者であれば多数の変量により上記の傾斜角度および注入速度が調整されることが認識できる。一般に、上記金型は気泡形成を避けるために約1度よりも大きな一定の角度で傾斜する必要がある。加えて、上記注入速度は気泡が金型の中に捕捉されずに、金型から逃避することを可能にするために十分に遅くする必要がある。
【0055】
一定のメッシュ材料が上記補強部品として用いられる場合に、このメッシュの各開口部の密度は所望の機械的な諸特性を伴う結果物としての組織移植片の形成における一定の重要な要因である。さらに、一定の低密度な開口編み状のメッシュ材料が好ましい。一例の好ましい材料は商品名をビクリル(VICRYL)(ニュージャージー州サマービルのエシコン社(Ethicon, Inc.)として販売されているグリコリドおよびラクチドの90:10のコポリマーである。一例の例示的な低密度の開口編み状のメッシュ材料はニュージャージー州サマービルのエシコン社(Ethicon, Inc.)から入手可能なニッテド・ビクリルVKM−M(Knitted VICRYL VKM-M)である。別の好ましい材料はポリジオキサノンまたはラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマーである。
【0056】
一定のメッシュ材料の密度または「開口度(openness)」は一定のコンピュータによりインターフェイスされた一定のデジタル・ホトカメラにより評価できる。一例の評価において、上記メッシュ材料の密度を一定のIBM300PL型コンピュータによりインターフェイスされた一定のソニー(Sony)デジタル・ホトカメラDKC−5000を伴う一定のニコンSMZ−Uズーム(Nikon SMZ-U Zoom)により決定した。さらに、20倍に拡大した各メッシュ材の断面のデジタル画像をイメージ−プロ・プラス(Image-Pro Plus)4.0ソフトウェアを用いて操作することによりそのメッシュ密度を決定した。一定のデジタル画像を上記ソフトウェアにより捕捉した後に、そのメッシュ材における空の空間部分に相当する面積がその画像の全面積から差し引かれるようにその画像に一定の閾値が設定される。すなわち、このメッシュ密度は残りのデジタル画像の割合として考えられている。この結果、最も望ましい機械的な諸特性を有する移植片は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有する材料であることが分かった。
【0057】
一例の実施形態において、軟骨修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されており、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。関節軟骨の場合に、細胞および組織の内部増殖を可能にする好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0058】
また、別の実施形態において、軟骨修復において好ましい支持骨格材料は一定の不織状の構造である。さらに好ましくは、この不織構造の組成はパナクリル(PANACRYL)、すなわち、ラクチドおよびグリコリドの95:5のコポリマー、ビクリル(VICRYL)、すなわち、グリコリドおよびラクチドの90:10のコポリマー、または商品名をエシソーブ(ETHISORB)(ジョンソン・アンド・ジョンソン・インターナショナル(Johnson & Johnson International)、ベルギー国)として販売されているポリジオキサノンおよびビクリル(VICRYL)の一定の混合物である。関節軟骨の場合に、細胞および組織の内部増殖を可能にする好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有している。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約100ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。さらに、上記不織状の支持骨格材料は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの一定の厚さを有している。
【0059】
一例の実施形態において、半月板修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されている発泡体であり、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。細胞および組織の内部増殖を可能にするための好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。この実施形態において、上記の好ましい使用方法は上記支持骨格材料により細分化した軟骨組織を囲むことである。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0060】
一例の実施形態において、腱または靭帯の修復において好ましい支持骨格材料は一定のメッシュ状の補強された発泡体である。さらに好ましくは、この発泡体はポリジオキサノン(PDO)を含有している一定のメッシュ材料により補強されている発泡体であり、この発泡体の組成は35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。細胞および組織の内部増殖を可能にするための好ましい構造は一定の開口状の多孔質構造を有していて細胞移動を十分に可能にする大きさを有する構造である。適当な気孔の大きさは平均直径が約50ミクロン乃至1000ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である大きさである。また、このメッシュ層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記発泡体は約300ミクロン乃至2mm、さらに好ましくは約500ミクロン乃至1.5mmの範囲内の一定の厚さを有している。好ましくは、上記メッシュ層は約12%乃至80%、さらに好ましくは約45%乃至80%の範囲内の一定のメッシュ密度を有している。
【0061】
別の実施形態において、上記の腱または靭帯の修復において好ましい支持骨格材料は一定の遅い再吸収特性(例えば、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月)および高い機械的強度を有する一定のポリマーにより構成されている。さらに好ましくは、この支持骨格材料の引張強さおよび弾性率は自然な靭帯のそれぞれの特性に類似している。すなわち、この支持骨格材料の好ましい引張強さは約500N乃至4000N、さらに好ましくは約1000N乃至2500Nである。また、この支持骨格材料の好ましい弾性率は約100N/m乃至300N/m、さらに好ましくは約150N/m乃至200N/mである。さらに、この支持骨格材料の好ましい構造は一定の円筒形状または楕円形状の支持骨格、あるいは、一定の高いアスペクト比(すなわち、幅に対する長さの比率値)を有する一定の支持骨格である。好ましくは、このアスペクト比は1よりも大きく、さらに好ましくは2よりも大きく100よりも小さい。さらに、上記支持骨格材料は好ましくは約3mm乃至12mm、さらに好ましくは約4mm乃至10mmの範囲内の直径または幅を有している。例えば、非限定的な例として、靭帯修復用の支持骨格材料はラクチドおよびグリコリドの一定の95:5のコポリマーを含むことができる。一例の実施形態において、上記靭帯修復用の支持骨格材料はラクチドおよびグリコリドの一定の95:5のコポリマーおよび、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトンおよびこれらの組み合わせ物等のような別の種々のポリマーを含む一定の複合構造体として形成できる。また、この支持骨格材料は一定の織り状、編み状または編み組状の材料により形成できる。随意的に、この支持骨格材料を作成する種々のポリマーは、例えば、一定の製織構造またはメッシュ構造等のような一定の不織状の布地構造体として形成可能であり、あるいは、一定の発泡体として形成できる。別の実施形態において、上記の複合構造体は、例えば、コラーゲン、フィブリン、またはシルク等のような天然の各種ポリマーを含むことができる。このような実施形態において、その天然ポリマーはその複合構造体に対する一定の被膜として作用することができ、あるいは、この天然ポリマーは一定の発泡体として形成可能である。さらに、上記の複合構造体はその支持骨格の全体において、あるいは、その支持骨格の周縁部のみにおいて存在するようにコラーゲンまたはシルクの部材片を随意的に含むこともできる。
【0062】
一例の実施形態において、上記靭帯または腱の修復において有用な支持骨格材料は複数のフィラメントにより形成されており、これらの繊維の大部分はその長手方向に沿って整列している。
【0063】
当該技術分野における熟練者であれば、本発明の生体相容性の支持骨格材料を形成するための適当な材料の選択が幾つかの要因により決まることが理解できる。これらの要因は生体内の機械的性能、細胞の接着、増殖、移動および分化に関する細胞の材料に対する応答、生体相容性、および随意的に、生体吸収(または、生体崩壊)速度を含む。さらに別の関連の要因は化学的組成、各種成分の立体的な分布、ポリマーの分子量、および結晶性の程度を含む。
【0064】
上記生体相容性の支持骨格材料に加えて、本発明の組織修復移植片はさらにその支持骨格材料の少なくとも一部分に付随する少なくとも1種類の生活可能な組織のサンプルを含む。この用語の「生活可能な(viable)」は、本明細書において用いられているように、1個以上または1種類以上の生活可能な細胞含む一定の組織サンプルを意味する。事実上、あらゆる種類の組織が本発明の組織修復移植片を構成するために使用可能である。好ましくは、使用する組織は軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、骨組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、脂肪組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、脈管組織、血液およびこれらの組み合わせ物から選択される。軟骨修復において有用な一例の実施形態において、上記組織は骨組織を含まず、軟骨組織、半月板組織、靭帯組織および腱組織から成る群から選択される。さらに、この組織移植片を構成するために用いる組織は自家組織、同種異系組織、異種組織とすることができる。
【0065】
半月板修復において有用な一例の実施形態において、この組織修復移植片において用いる組織は半月板組織、軟骨組織、皮膚、滑膜組織、骨膜組織、心膜組織、脂肪組織、骨髄、血液、腱組織、靭帯組織、またはこれらの組み合わせ物から成る群から選択できる。また、靭帯修復において有用な一例の実施形態において、その組織修復移植片において用いる組織は腱組織、修復する靭帯と同一種の靭帯組織、修復する組織とは異なる種類の靭帯組織、滑膜組織、骨膜組織、筋膜、皮膚、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択できる。
【0066】
上記組織は、例えば、生検またはその他の外科的な除去手段による等のような、種々の従来技法のいずれかにより入手できる。好ましくは、この組織サンプルは無菌の条件下に入手される。一定の生活組織のサンプルを入手した後に、このサンプルを無菌条件下に処理して、少なくとも1種類の細分化した、あるいは、微細分割した組織粒子を含む一定の懸濁液が形成できる。各組織フラグメントの粒度は変更可能であり、例えば、この組織の大きさは約0.1mm3 乃至3mm3 の範囲内、約0.5mm3 乃至1mm3 の範囲内、約1mm3 乃至2mm3 の範囲内、あるいは、約2mm3 乃至3mm3 の範囲内にすることができるが、好ましくは1mm3 より小さい。
【0067】
好ましくは、上記の細分化した組織はその組織フラグメントから上記支持骨格材料上に移動できる少なくとも1種類の生活可能な細胞を有している。さらに好ましくは、この組織はその組織フラグメントから移動して上記支持骨格材料に集団化を始めることができる一定の有効量の細胞を含む。一定の随意的な実施形態において、その細分化した組織フラグメントは各細胞を囲っている細胞外基質からの細胞の移動を容易にするために一定の基質消化酵素に接触させることができる。これらの酵素は一定の細胞外基質からの支持骨格材料内への細胞の移動速度を高めるために用いられる。本発明において使用できる適当な基質消化酵素はコラーゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、ペプチダーゼ、テルモリジンおよびプロテアーゼを含むがこれらに限らない。
【0068】
一例の実施形態において、上記細分化した組織粒子はこれらの組織粒子が一定の生理学的な緩衝溶液を伴っている一定の懸濁液として形成できる。適当な生理学的な緩衝溶液は塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス平衡塩類、トリス緩衝塩水、ヘペス緩衝塩水、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。加えて、上記組織は漿液の存在下または非存在下のいずれかにおいて当該技術分野における通常の熟練者において知られている任意の標準的な細胞培養培地内において細分化できる。この細分化した組織の懸濁液を上記支持骨格材料上にまたは一定の組織傷害部位に付着する前に、この細分化した組織の懸濁液を濾過して濃縮することにより、組織粒子の乾燥を防ぐために少量のみの生理学的な緩衝溶液をその懸濁的に残すことができ、その細分化した組織粒子を支持骨格材料または傷害部位に直接的に供給できる。好ましくは、この細分化した組織粒子は約1mg/cm2 乃至100mg/cm2 の範囲内、さらに好ましくは約1mg/cm2 乃至20mg/cm2 の範囲内における一定濃度で装填される。
【0069】
上記の細分化した生活組織の懸濁液は、その組織と支持骨格材料が結合するように、一定の生体相容性の支持骨格材料の上にこの生活組織の懸濁液を付着させることにより本発明による一定の組織修復移植片を形成するために使用できる。好ましくは、この組織は上記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している。このような組織修復移植片は一定の被検体内に速やかに移植可能であるか、あるいは、この構造体を一定の持続時間にわたりその組織サンプルの生活能力を維持するために有効な諸条件下において無菌条件下に培養できる。この構造体が培養される実施形態において、その培養条件は変更可能であるが、好ましくは、上記構造体は1時間乃至6週間、さらに好ましくは約1週間乃至6週間の範囲内の一定の持続時間にわたり、約20℃乃至40℃の範囲内の一定温度で、約5%乃至10%の二酸化炭素(CO2 )を含有する一定の雰囲気中において、例えば、約100%の湿度のような高湿度で培養される。
【0070】
さらに、一定のキットが上記本発明の組織修復移植片の調製補助のために使用できる。本発明によれば、このキットは1個以上の生体相容性の支持骨格材料、一定の被検体から生活組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および当該組織サンプルの生活能力を持続するための1種類以上の試薬を収容している一定の無菌容器を含む。この組織サンプルの生活能力を持続するための適当な試薬は、例えば、塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス平衡塩類、標準細胞培養培地、ダルベッコ修飾イーグル培地、アスコルビン酸、ヘペス、可欠アミノ酸、L−プロリン、ウシ退治血清、自己由来漿液、およびこれらの組み合わせ物等のような一定の生理学的溶液を含む。さらに、上記キットは組織を細分化した組織粒子に分割するための一定の処理工具を含むことができ、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してこのサンプルを処理して微細分割した組織粒子にすることに適合可能である。また、上記キットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から一定の被検体に移植のために移送するための一定の配給装置も含むことができる。
【0071】
さらに、一定の生物学的な成分を随意的に本発明の組織修復移植片に組み込むことができる。好ましくは、この生物学的な成分は上述した支持骨格材料の中に組み込まれているか、あるいは、当該支持骨格材料の上に塗布されている。この生物学的な成分が支持骨格材料の上に塗布されている実施形態において、この生物学的な成分は好ましくはその支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している。例えば、非限定的な例として、上記生体相容性の支持骨格材料は細分化した組織フラグメントの懸濁液を当該支持骨格材料に固定するための一定の接着剤を含むことができる。好ましくは、この接着剤は一定の固定剤、一定の架橋剤(すなわち、化学的または物理的な手段)、およびこれらの組み合わせ物である。
【0072】
適当な固定剤はヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、マッセル基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、多糖類基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、低濃度血小板血漿(PPP)、PRPのクロット、PPPのクロット、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイル・グリセロール−コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール−コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0073】
適当な架橋剤は、例えば、ジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光(例えば、青色光およびUV光)、pH、温度、およびこれらの組み合わせを含む。
【0074】
本発明において用いられる上記生物学的成分は、一定の傷害部位に存在する時に、その傷ついた組織の治癒および/または再生を助長する種々のエフェクターの中から選択することも可能である。このような治癒を実際に助長または促進する種々の化合物または薬物であることに加えて、これらのエフェクターはさらに感染を予防する種々の化合物または薬物(例えば、各種の抗菌剤および抗生物質)、炎症を減少する種々の化合物または薬物(例えば、各種の抗炎症剤)、酸化再生セルロース(例えば、エシコン社(Ethicon, Inc.)から入手可能なインターシード(INTERCEED)(登録商標)およびサージセル(Surgicel)(登録商標))またはヒアルロン酸等のような、接着形成を防止または最少にする種々の化合物、および免疫系を抑制する種々の化合物または薬物(例えば、各種の免疫抑制剤)を含むこともできる。
【0075】
例えば、上記本発明の移植片内に存在する別の種類のエフェクターは各種の異種または自己由来の増殖因子、タンパク質(基質タンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコスアミノグリカン、核酸、鎮痛薬、ウイルス、ウイルス粒子、および細胞型を含むことができる。さらに、同一または異なる官能性の1種類以上のエフェクターを上記移植片の中に組み込むことが可能であることが理解されると考える。
【0076】
適当なエフェクターの例は傷害を受けたまたは損傷した組織の治癒および/または再生を助長することが知られている多数の異種または自己由来の増殖因子を含む。これらの増殖因子は上記生体相容性の支持骨格材料の中に直接的に組み込むことができ、あるいは、この生体相容性の支持骨格材料は、例えば、血小板等のような一定の増殖因子の供給源を含むことができる。例示的な増殖因子はTGF−β、骨形態発生タンパク質、軟骨由来形態発生タンパク質、線維芽増殖因子、血小板由来増殖因子、脈管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、表皮増殖因子、インスリン様増殖因子、肝細胞増殖因子、およびこれらの各種フラグメントを含むがこれらに限らない。適当なエフェクターは同様に上述した各物質の各種のアゴニストおよびアンタゴニストを含む。上記の増殖因子はまた上記の各増殖因子の組み合わせ物も含むことができる。加えて、この増殖因子は血液中の血小板により供給される自己由来の増殖因子とすることができる。この場合に、この血小板からの増殖因子は種々の増殖因子の未定の混合物になる。
【0077】
上記移植片内に存在できるタンパク質は、当該移植片内に収容されると共に一定の単離された形態で移植片内に存在している、一定の細胞または、例えば、一定の血小板等のような別の生物学的供給源から分泌される各種のタンパク質を含む。このようなタンパク質の単離された形態は一般的に約55%またはそれ以上の純度のタンパク質であり、別の細胞のタンパク質、分子、破片等から単離されている。さらに好ましくは、この単離されたタンパク質は少なくとも65%の純度、最も好ましくは少なくとも約75%乃至95%の純度のタンパク質である。なお、上記にかかわらず、当該技術分野における通常の熟練者であれば、約55%よりも低い純度を有する各種のタンパク質も依然として本発明の範囲に含まれると考えられることが認識できる。本明細書において用いられているように、用語の「タンパク質(protein)」は各種の糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、およびこれらのフラグメントを含む。上記エフェクターとして有用なタンパク質の例はプレイオトロフィン、エンドセリン、テナスシン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、細糸(マイクロフィラメント)、中間フィラメント、抗体、エラスチン、フィブリリン、およびこれらのフラグメントを含むがこれらに限らない。
【0078】
グリコスアミノグリカン、すなわち、細胞接着において一定の役割を果たす高度に荷電している多糖類もまた本発明によるエフェクターとして作用できる。このようなエフェクターとして有用な例示的なグリコスアミノグリカンは硫酸ヘパリン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナン(ヒアルロン酸としても知られている)およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0079】
本発明の生体相容性の支持骨格材料は各種の細胞をその内部に組み込むことも可能である。本発明によるエフェクターとして作用できる適当な細胞型は骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞先祖、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、脂肪細胞、単核細胞、プラスマ細胞、マスト細胞、臍帯細胞、間質細胞、間葉細胞、表皮細胞、筋芽細胞、タン細胞、靭帯線維芽細胞、神経単位、および骨髄細胞を含むがこれらに限らない。各種の細胞は一般的に一定の同種リガンド(例えば、一定の刺激因子)に応答するそれぞれの表面レセプタ分子を有している。一定の刺激因子は一定のリガンドであり、その同種のレセプタに接触すると、そのレセプタを有する細胞に特定の生物学的作用を生じさせる。例えば、一定の刺激因子(またはリガンド)に応答して、一定の細胞が相当量の、Ca2+等のような、二次的なメッセンジャーを生成できるようになり、これらのメッセンジャーは、タンパク質キナーゼC等のように(本発明者の実施例に一貫して)、種々のタンパク質のリン酸化反応等のような細胞過程において後続的な作用を及ぼす。一部の例において、一定の細胞が適当な刺激因子により刺激されると、この細胞は通常において一定のタンパク質(各種の糖タンパク質、プロテオグリカン、およびリポタンパク質)の形態で一定の細胞メッセンジャーを分泌する。さらに、このような細胞メッセンジャーは一定の抗体(例えば、種々のプラスマ細胞から分泌される)、一定のホルモン(例えば、パラクリン、オートクライン、またはエキソクラインのホルモン)、一定のサイトカイン、または天然または合成のこれらの各種フラグメントとすることができる。
【0080】
本発明の組織移植片はまた各種の核酸、ウイルス、またはウイルス粒子が関連の一定の遺伝子を配給する種々の遺伝子療法技法において使用可能であり、この遺伝子は特定の細胞または細胞型に対して関連する少なくとも1種類の遺伝子生成物をコード化する。従って、上記生物学的エフェクターは一定の核酸(例えば、DNA、RNA、または一定のオリゴヌクレオチド)、ウイルス、ウイルス粒子、非ウイルス・ベクターとすることができる。さらに、これらのウイルスおよびウイルス粒子は各種のDNAまたはRNAのウイルスとすることができ、あるいはこれらから誘導できる。また、関連の遺伝子生成物は好ましくは各種のタンパク質、ポリペプチド、干渉性リボ核酸(iRNA)およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される。
【0081】
適用可能な核酸および/またはウイルスの物質(すなわち、種々のウイルスまたはウイルス粒子)が上記の組織修復移植片における生体相容性の支持骨格材料の中に組み込まれると、この移植片はその後に特定の部位の中に移植して一定の種類の生物学的な応答を示すことができるようになる。さらに、上記の核酸またはウイルス物質が種々の細胞により取り込まれてこれらがコード化するあらゆるタンパク質がこれらの細胞により局所的に生成可能になる。一例の実施形態において、上記の核酸またはウイルス物質は上記細分化した組織の懸濁液における組織フラグメント内の各種細胞により取り込むことができ、あるいは、別の実施形態においては、上記の核酸またはウイルス物質は一定の傷害を受けた組織の部位を囲っている組織内の各種細胞により取り込むことができる。なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の生成されるタンパク質が上述した種類の一定のタンパク質になるか、あるいは、一定の組織における改善された能力が一定の傷害または病気を治癒するか、感染に対して抵抗するか、炎症性の応答を減少することを容易にする一定の類似のタンパク質になり得ることが認識できる。また、上記核酸は一定の組織修復過程またはその他の正常な生物学的過程に否定的な影響を与える可能性のある不所望な遺伝子生成物の発現を阻止するために使用することもできる。さらに、DNA、RNAおよび各種のウイルス物質はこのような発現阻止機能を達成するために用いられる場合が多く、この機能はまた遺伝子発現ノック・アウト機能としても知られている。
【0082】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の生物学的な成分の同定が医療科学の各種原理および適用可能な治療目的に基づいて一定の外科医により決定可能であることが認識できる。
【0083】
上記組織修復移植片における生物学的な成分またはエフェクターは上記支持骨格材料の製造の前または後、あるいは、上記移植片の外科的配置の前または後のいずれかにおいてその支持骨格材料の中に組み込むことができる。
【0084】
外科的な配置の前に、上記生体相容性の支持骨格材料を上記生物学的成分を含む一定の適当な容器の中に配置できる。さらに、一定の適当な時間の経過後に適当な諸条件下において、この支持骨格部材はその生物学的成分により含浸される。あるいは、この生物学的成分を、例えば、当該生物学的物質を上記支持骨格材料の中に注入するために適当なゲージまたは口径の注射器を用いることによりその支持骨格材料の中に組み込むことも可能である。さらに、混合、加圧、散布、遠心処理、および上記生物学的成分を上記支持骨格材料の中に配置する処理等のような、当該技術分野における通常の熟練者において良く知られている別の方法も一定の支持骨格材料に一定の適当な生物学的成分を充填するために適用可能である。あるいは、上記生物学的成分を上記支持骨格材料の中に注入する前に一定のゲル様のキャリヤーと共に混合することもできる。このゲル様のキャリヤーは一定のアルギネート、架橋アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン・ゲル、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレン・オキシド)−ポリ(プロピレン・オキシド)の一定のコポリマー、ポリ(ビニル・アルコール)およびこれらの混合物を含む一定の生物学的なまたは合成のヒドロゲルとすることができる。
【0085】
上記のような外科的な配置により、上記生体相容性の支持骨格材料が生物学的な成分を全く含まない一定の移植片は種々の生物学的物質を注入可能になり、あるいは、上記支持骨格材料が少なくとも1種類の生物学的成分を含む一定の移植片は一定の補給量の生物学的成分により増量可能になる。一定の外科的に備えられる移植片内に一定の生物学的な成分を組み込む一例の方法は一定の適当なゲージの注射器による注入による方法である。
【0086】
一定の生体相容性の支持骨格材料と共に備えられる上記生物学的成分の量は支持骨格材料の寸法、支持骨格材料を作成している材料、支持骨格材料の多孔度、生物学的成分の本質、および組織修復移植片の目的を含む種々の要因により変わる。当該技術分野における通常の熟練者であれば、組織の治癒を容易にし、且つ/または、促進するための一定の用途に対応して一定の生体相容性の支持骨格材料の中に含まれる生物学的な成分の適当な量を容易に決定できる。もちろん、この生物学的成分の量は当該生物学的成分の本質および任意の用途に応じて変化する。
【0087】
別の実施形態において、上記組織修復移植片は組織を積載した支持骨格材料の上に配置される一定の付加的な保持要素を含むことができる。好ましくは、この実施形態において、上記組織の懸濁液の少なくとも一部分が上記支持骨格材料の外表面部の少なくとも一部分に結合しており、この組織の懸濁液が生体相容性の支持骨格材料と上記保持要素との間に「挟まれている(sandwiched)」。この保持要素は事実上任意の生体相容性の材料により形成可能であり、一例の実施形態において、この保持要素は同種異系の組織、自家組織、および異種の組織、および上述した生体相容性の支持骨格材料から選択される一定の付加的な生体相容性の支持骨格材料、およびこれらの組み合わせ物により得られる種々の移植片を含む組織移植片を用いて形成することができる。また、別の実施形態において、上記保持要素は一定の多孔質メッシュ材料、例えば、一定の編み物、織り物、不織布、または組織の内部増殖を可能にする複数の穴または孔を有する薄い孔あけ処理した弾性シート等のような多孔質メッシュ様材料とすることができる。この薄い孔あけ処理した弾性シートは好ましくはコラーゲンまたはシルクまたはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリジオキサノン(PDO)の各種コポリマーにより構成されている。また、この保持要素の種類はその望まれる組織修復に応じて変えることができる。非限定的な例として、半月板修復のための一定の実施形態において、上記保持要素は一定のメッシュ状の補強された発泡体とすることができる。さらに、上記ACLおよび軟骨修復に対応する実施形態においては、上記保持要素は一定のメッシュ状構造にすることができる。また、上記保持要素が一定の同種移植片または一定の自家移植片である場合の実施形態においては、好ましくは、この同種移植片または自家移植片は骨膜、軟骨膜、腸頸靭帯または大腿筋膜、薄筋腱、半腱様腱、膝蓋骨腱、滑膜およびこれらの組み合わせ物から選択される。また、上記保持要素が一定の異種移植片の場合の実施形態においては、この異種移植片は好ましくは小腸、骨膜、軟骨膜、腸頸靭帯または大腿筋膜、薄筋腱、半腱様腱、膝蓋骨腱、滑膜およびこれらの組み合わせ物から選択される。これらの保持要素は上記生体相容性の支持骨格材料の上に配置可能であり、あるいは、この保持要素は、例えば、縫合またはステープル処理により、上記移植片を一定の保持要素として固定できる。当該技術分野における通常の熟練者であれば、例えば、上記保持要素の中における複数の穴の配置等のような、当該保持要素の付加的な処理が医療科学の原理および適用可能な治療目的に基づいて、一定の外科医により決定可能であることが認識できる。
【0088】
さらに別の実施形態において、一定の静電的に紡糸処理した布地のバリヤーを過形成および組織接着に対する一定のバリヤーとして作用するために上記移植片に対して加えることが可能であり、これにより、手術後の種々の接着の可能性が減少できる。このような布地のバリヤーは好ましくは上記移植片に加えられる高密度な繊維性の布地の形態である。好ましくは、この繊維性の布地は小径の繊維により構成されており、これらの繊維は上記生体相容性の支持骨格材料の上面部および/または下面部に融着される。このことにより、多孔度、透過性、崩壊速度および機械的な諸特性等のような構造における特定の表面の諸特性が調整可能になる。
【0089】
なお、当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記の繊維性の布地が一定の繊維性の層を凍結乾燥処理した発泡体および不織状の表面部分の上に構築することのできる一定の静電的な紡糸処理により製造可能であることが認識できる。この静電防止処理は種々の繊維材料を用いて行なうことができる。例示的な繊維材料は脂肪族ポリエステルを含む。さらに、上記発泡体部品を形成するポリマー溶液を調製するために有用な上記において定められている溶液を含む種々の溶液もまた使用可能である。
【0090】
上記繊維性の層の組成、厚さおよび多孔度を調整して所望の機械的および生物学的な諸特性を得ることが可能である。例えば、この繊維性の層の生体吸収速度はその下層の生体相容性の支持骨格材料に比較してさらに長いまたはさらに短い生体吸収を行なうように選択できる。加えて、この繊維性の層は上記複合材料に対してさらに高い構造的な完全性を賦与することができ、これにより、一定の機械的な力をその構造の繊維性の面部に対して加えることができるようになる。一例の実施形態において、上記繊維性の層は各種の縫合線、ステープルまたは種々の固定装置による上記複合材料の位置の保持を可能にする。一般に、上記繊維性の層は約1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲内の一定の厚さを有している。しかしながら、回旋腱板および半月板の傷害部の修復等のような一部の用途においては、上記繊維性の層は約1.5mm以上の一定の厚さを有する。
【0091】
本発明の組織修復移植片は種々の外科的用途および非外科的な用途において使用できる。一定の断裂した靭帯、腱、回旋腱板、神経、皮膚、軟骨、または半月板を含む種々の組織の修復における使用の場合等のような、一部の外科的用途において、本発明の組織移植片は一定の手術室内における取り扱いが可能であることが必要であり、さらに、これらは縫合またはその他の固定処理を裂けることなく行えることが必要である。加えて、これらの移植片は組織を補強するために適当な一定の破裂強さを有している必要があり、この移植片の構造は組織の内部増殖を促進するために適応可能である。非限定的な例として、本発明の支持骨格材料はその内部における細胞増殖を可能にするために高度に多孔質である。好ましくは、その気孔の中心の大きさは約100ミクロン乃至500ミクロンの範囲内である。これらの実施形態において、上記支持骨格材料は当該支持骨格材料の内部領域内における組織増殖に適応するために十分に柔軟であることが必要であり、この支持骨格材料の形状は組織増殖の増加に伴って改造可能である。従って、本発明においては、組織が上記生体相容性の支持骨格材料の表面上において増殖可能であり、あるいは、組織が当該生体相容性の支持骨格材料の中にまたは表面上において増殖可能であり、これにより、その組織は支持骨格材料の中に埋め込まれるか当該材料と一体になる。
【0092】
本発明の一例の実施形態において、一定の靭帯、腱、神経、皮膚、軟骨または半月板に対する傷害等のような一定組織の傷害の治療において用いられる。この組織の傷害の修復は当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の技法のいずれかにより生活組織の一定のサンプルを入手する工程、例えば、組織を切断することによる等のようなその生活組織のサンプルを無菌の条件下に処理して少なくとも1種類の細分化した微細に分割された組織粒子を形成する工程、その組織サンプルが一定の支持骨格材料に結合して一定の組織修復移植片を形成するようにその生体相容性の支持骨格材料に組織サンプルを付着させる工程、およびその組織修復移植片を組織の傷害部分に対して一定の所望の位置に配置する工程を含む。また、この組織の修復は上記支持骨格材料を組織の傷害部位に配置した後に微細な組織粒子をその支持骨格材料に付着させる処理も含むことができる。このように支持骨格材料に結合した組織粒子内の各細胞はその支持骨格材料に移動してその移植部位における周囲の組織に対して増殖および一体化を開始することが可能になり、これにより、その組織の傷害が修復できる。さらに、この組織傷害を修復する方法は一定の付加的な随意的な工程を含むことができる。上記組織修復移植片を一定の組織傷害部位に対して所望の位置に配置する工程の前に、上記組織粒子内の細胞がその組織から移動して上記支持骨格材料に集団化し始めることを可能にするために有効な一定の持続時間および諸条件下においてその支持骨格材料および結合した組織粒子を培養できる。
【0093】
本発明において使用する組織サンプルは適当な採取用工具を用いて一定の供与者(自家、同種異系、または異種の組織)から入手される。これらの組織サンプルは組織の収集時に小さな粒子に微細に細分化および分割可能であり、あるいは、この組織サンプルはこれを身体から採集または収集した後に細分化することもできる。組織サンプルを採集した後にこれを細分化する実施形態において、これらの組織サンプルを秤量してからリン酸塩緩衝液化した塩水中に3回にわたり洗浄することができる。その後、約300mg乃至500mgの組織を、少量の、例えば、約1mlのリン酸塩緩衝液化した塩水等のような一定の生理学的な緩衝液、あるいは、例えば、ハムズF12(Hams F12)中における0.2%のコラーゲナーゼ等のような一定の基質消化酵素の存在下に細分化できる。このように組織を細分化することにより、この組織が約1mm3 の粒子または小片に分割できる。この組織の細分化は種々の方法により達成できる。一例の実施形態において、この細分化処理は一定の平行な方向に2個のメスを用いて達成され、別の実施形態においては、組織を一定の所望の大きさの粒子に自動的に分割する一定の処理工具によりその組織を細分化することができる。一例の実施形態において、例えば、篩い分け、沈降または遠心処理等のような当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の方法のいずれかにより上記の細分化した組織を上記の生理学的な流体から分離して濃縮することができる。このように細分化した組織を濾過および濃縮する場合の実施形態において、この細分化した懸濁液は好ましくはその組織の乾燥を防ぐためにその懸濁液内に少量の流体を保持している。別の実施形態において、上記細分化した懸濁液は濃縮されず、この細分化した組織は一定の高濃度な組織懸濁液または、例えば、一定のヒドロゲル、フィブリン・グルー、またはコラーゲン等のような別のキャリヤーを介して組織の修復部位に直接的に配給できる。このような実施形態において、その細分化した組織懸濁液はその組織フラグメントを保持するために上述した生体相容性の支持骨格材料のいずれかにより被覆できる。
【0094】
その後、上記の細分化した組織は一定の支持骨格材料の全体を被覆するように一定の細胞散布装置によりその支持骨格材料の上に分布できる。半月板および軟骨の修復における好ましい実施形態において、上記の細分化した組織はダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中に予め浸漬した4cm×5cmの支持骨格材料の上に散布されて、この支持骨格材料の全体を被覆する。随意的に、上記の組織粒子は、例えば、フィブリン・グルーまたは高濃度血小板血漿等のような上述した各種の接着剤のいずれかにより上記支持骨格材料に接着できる。フィブリン・グルーまたは高濃度血小板血漿を用いる実施形態において、フィブリノゲンまたは高濃度血小板血漿を分布する前に、数マイクロリットルのトロンビンを支持骨格材料上に配置して自然に硬化できる。上記の組織粒子および任意の付加的な物質を上記支持骨格材料上に付着させた後に、その組織移植片を即時に移植することが可能であり、あるいは、この移植片を組織粒子内の細胞が当該組織粒子から支持骨格上に移動可能にするために十分な一定の持続時間および諸条件下において生体外で培養できる。このように組織移植片を移植前に培養する実施形態において、その移植片は好ましくは、例えば、20%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのヘペス(HEPES)、0.1mMの可欠アミノ酸、20mg/mlのL−プロリン、50mg/mlのアスコルビン酸、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBを補充したDMEM−高濃度グルコース等のような一定の軟骨増殖培地中において約1週間乃至3週間にわたり生体外で培養される。
【0095】
本発明による組織移植片を用いて種々の組織傷害を修復する方法はその組織傷害を修復するための一定の外科手術中に行なうことができる。あるいは、上記の組織サンプルを処理して細分化した微細に分割されている組織粒子を形成する工程、これらの組織粒子を一定の支持骨格材料の上に付着させて一定の組織修復移植片を形成する工程、および/または移植前に上記組織修復移植片を培養する工程を、当該移植片の傷害部位に対する外科的配置の前に、一定の別の無菌の場所において行なうことも可能である。
【0096】
上記の傷害を受けた組織を修復するための移植片はこの移植片がその治療を受ける組織の所望の部分または患部の形状および寸法に適合するような一定の大きさおよび形状を有することができる。さらに、この移植片は切断、折りたたみ、巻き、またはその他の移植片の操作方法を含む多数の技法によりその必要な外形を形成するための大きさおよび形状にすることができる。上述したように、上記の生物学的な成分は上記支持骨格材料の製造中または製造後、あるいは、上記移植片を一定の患者に備え付ける前またはその後に上記支持骨格材料に加えることができる。さらに、付加的な量の生物学的な成分を上記移植片の設置後に加えることも可能である。このように傷害を受けた解剖学的部位の中への接近が(最少侵襲性、開放式または最少開放式の技法のいずれかにより)行なわれた後に、その移植片を、一定の裂け目または患部の中等のような、組織の傷害部位に対して一定の所望の位置に固定できる。このように移植片を所望の位置または患部の中に配置した後に、その移植片を一定の適当な技法により固定することができる。一例の態様において、この移植片は一定の化学的または機械的な固定技法により固定できる。適当な化学的固定手段はフィブリン・グルー、フィブリン・クロット、およびその他の既知の生物学的に相容性のある接着剤等のような種々の粘着剤および/または接着剤を含む。また、適当な機械的固定手段は種々の縫合線、ステープル、組織トラック、縫合腺アンカー、ダーツ、ねじ、ピンおよびアローを含む。なお、1種類以上の化学的および/または機械的な固定手段の組み合わせも使用可能であることが理解されると考える。あるいは、このような化学的および/または機械的な固定手段を全く必要としない場合もある。その代わりに、上記移植片の配置はその移植片の治療を受ける組織内の適当な部位に対する締まり嵌めにより達成できる。
【0097】
別の実施形態において、上記組織修復移植片は種々の靭帯、腱、皮膚および/または神経を修復する外科技法において有用である。
【0098】
一例の用法において、上記組織修復移植片は腱または靭帯の修復手術中における組織の損失部位を修復および増強するために使用でき、あるいは、一定の独立型の装置として使用することも可能である。修復の場合において、腱または靭帯の各端部は適当な外科技法により接合され、上記組織修復移植片がその接合端部の近辺において用いられて、その機械的な支持が増加されてその治癒応答が高められる。このような治癒の過程の結果として、その腱または靭帯の組織はその移植片装置内において増殖して、最終的に自然な組織の機械的特性と類似の機械的特性を伴う一定の組織に成長する。この場合の移植片は適当な治癒を確実にするために初期的に必要な機械的支持を行なうと共に組織再生のための一定の案内手段としても作用する。また、一定の単独型の装置としての別の用法においては、崩壊した組織が取り除かれて、細分化した組織を伴う組織修復移植片がその損傷した組織部位の機能の代用として作用する。さらに、この崩壊した組織はその損傷した組織部位を治癒するために用いる組織供給源になり得る。
【0099】
上記組織修復移植片が靭帯組織を修復するために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は組織の増強のために使用することができ、あるいは、一定の独立型の装置として使用できる。この組織修復移植片が増強移植のために用いられる実施形態において、この組織修復移植片は当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の標準的で確立されている修復技法のいずれかと共に使用することができる。さらに、上記の組織修復移植片がACL修復中の増強移植のために用いられる実施形態において、外科医は現状において組織修復のために靭帯組織、骨−膝蓋骨の各腱、腱−骨の各腱、膝窩腱、または腸脛靭帯を含む一定の自家移植片を使用しており、本発明の組織修復移植片はその自家移植片の近くに配置されるか、その自家移植片により囲まれるか、あるいは、その自家移植片のそばに並んで配置できる。また、上記組織修復要素が一定の単独型の装置として用いられる実施形態においては、崩壊した靭帯が取り除かれて、その組織修復移植片により完全に置き換えられる。このような場合に、この組織修復移植片は当該移植片の各端部において骨に固定できる。さらに、ACL修復の場合には、この移植片の一方の端部は大腿骨の元の起点において安定化することができ、その他方の端部は頸骨の元の挿入部位において配置できる。
【0100】
上記の組織修復移植片は種々の形態で利用することができる。例えば、この移植片は多数の積層体に折り重ねるか積み重ねることが可能であり、あるいは、一定の形状または管状構造に巻くこともできる。腱または靭帯の各端部は、例えば、この移植片をその組織の端部に縫合、ステープル留め、クリップ留め、接着または固定することにより接合できる。上記組織修復移植片を、例えば、回旋腱板の修復等のような、種々の腱を修復するために用いる場合の一部の実施形態において、外科医は比較的に大きな粗面の皮質面部を通して断裂した回旋腱板を一定の骨の溝に再接合することを補助するためにその組織修復移植片を使用できる。多くの場合に、比較的に高年齢の患者において、その回旋腱板組織は薄くて劣化しているか、さらに/または、上腕骨の質が骨粗しょう症になっている。それゆえ、上記の骨の溝に取り付ける強度を高めるために、複数の縫合線が支持骨格材料および腱の中を通るようにその腱の上部に上記の組織修復移植片を配置することが可能であり、あるいは、この組織修復移植片をその骨の架橋部の上部に用いて縫合線がその骨から抜け出ることを防ぐことができる。いずれの実施形態においても、その組織修復移植片は縫合線を保持する強度を賦与している。また、回旋腱板の質がその組織が上腕骨に対して再接合できないほどに劣化している場合の状況においては、上記組織修復移植片は一定の架橋手段として作用でき、この場合に、この移植片の一方の端部は残留している腱に接合可能であり、その他方の端部は骨に結合できる。
【0101】
別の変更例において、上記移植片は一定の腱の鞘を修復または置換するために使用できる。このことを行なうために、この移植片は骨膜、滑膜、または筋肉等のようなその接合組織に縫合またはその他の方法で結合されてその腱に巻き付けられる。このような構成は移植片により形成された鞘の中における腱の自由な滑動を可能にする。さらに、この移植片は手術後に必要な構造的支持を行なう。しかしながら、経時的に、この実施形態における移植片は新しい組織により吸収されるか置き換えられることが可能である。
【0102】
本発明の移植片はまたこれらの独特な組織移植片により有益的になり得る器官修復のための置換または再生の試みにおいて使用することもできる。例えば、これらの移植片は脊椎円板、脳組織、硬膜、神経組織、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、子宮、食道、肝脾臓、心筋、骨格筋、皮膚、筋膜、骨盤床、胃、腱、軟骨、靭帯および胸部組織において使用できる。
【0103】
さらに別の実施形態において、本発明の移植片は生活組織における一定の物質の作用効果を測定するための一定の生物学的アッセイを形成するために使用できる。この実施形態において、一定の無菌の生体相容性の支持骨格材料を供給し、生活組織の一定のサンプルを入手して、この生活組織のサンプルを無菌条件下に処理して細分化した組織フラグメントおよび一定の生理学的な緩衝溶液を含む一定の細分化した組織の懸濁液を形成し、さらに、この細分化した組織の懸濁液を上記生体相容性の支持骨格材料に付着させてこれらの細分化した組織の懸濁液および支持骨格材料を結合することにより、上述したような、種々の組織構造体が形成される。この組織構造体は上記細分化した組織内の各細胞が上記支持骨格材料において集団化可能にするために有効な諸条件下において培養される。その後、この組織構造体は試験される一定の物質に接触可能になり、この物質の作用効果が決定できるようになる。すなわち、上記のような組織構造体は、例えば、細胞の生活能力、増殖、移動、分化および細胞表現型の維持、代謝の活性、誘発または抑制等のような一定の試験物質に対する生物学的な応答を決定および/または試験するために使用できる。また、これらのような生物学的応答は、例えば、増殖アッセイ、細胞移動アッセイ、タンパク質アッセイ、遺伝子発現アッセイ、生活能力アッセイ、熱量測定アッセイ、または代謝アッセイ等のような当該技術分野における通常の熟練者において知られている種々の技法のいずれかによりアッセイまたは定量することができる。非限定的な例として、例えば、ノーザン・ブロット分析、RNアーゼ・タンパク質アッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ウエスターン・ブロット分析および酵素結合型免疫吸着剤アッセイ(ELISA)等のような種々の既知のアッセイ法を用いて各種軟骨細胞により発現するII型、IX型またはXI型のコラーゲンの発現等を含む、上記組織構造体の組織により一般的に発現する選択された1種類以上の遺伝子生成物の発現が挙げられる。さらに、本発明の組織構造体を用いて試験できる適当な物質は種々の薬物、薬剤組成物、化学薬品、微生物、要素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、ペプチド、リガンド、膜結合レセプタのアンタゴニスト、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限らない。
【0104】
本発明の移植片はまた一定の治療物質のための一定の配給装置として使用することも可能であり、この場合に、その治療物質は再分化された組織であり、この組織は種々の細胞、細胞外基質および固有の増殖因子の一定の組み合わせ物を含む。この場合の移植片の支持骨格部分は種々のホルモンおよびタンパク質が周囲の環境内に放出されることを可能にできる。
【0105】
本発明による組織移植片による組織傷害を修復する方法はその組織傷害を修復するための一定の外科手術中に行なうことができる。一定の患者が従来的な外科技法を用いる一定の従来的な様式における組織修復の手術のために用意される。この組織修復は本発明の組織修復移植片を用いる傷害を受けた組織の部位において行なわれる。上記組織修復移植片を形成するために用いる組織サンプルが適当な工具および技法を用いて上記患者(または、別の供与者)から入手される。この組織サンプルは約0.1mm3 乃至3mm3 の範囲内の一定の粒子の大きさを有する少なくとも1種類の組織粒子に微細に細分化および分割される。この組織は一定の平行な方向に用いた2個の無菌のメス等のような一定の従来的な細分化技法を用いて細分化することができる。約300mg乃至500mgの組織が修復部位における組織傷害の程度に応じて約1mlの一定の生理学的な緩衝溶液の存在下に細分化される。この細分化処理した組織はその細分化した組織粒子を生理学的な緩衝溶液から分離するために濾過および濃縮される。この細分化した組織は、例えば、篩い分け、沈降または遠心処理等のような種々の従来的な技法の任意のものを用いて濃縮できる。その後、この細分化した粒子は一定の細胞散布装置を用いてダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中に浸漬した4cm×5cmの生体相容性の支持骨格材料の上に分布される。さらに、一定の接着剤がこれらの生体相容性の支持骨格材料および細分化した組織粒子に加えられる。さらに、この組織修復片は即時にまたは一定期間の生体外培養の後に上記の組織傷害部位に移植される。その後、最終的な傷の閉鎖が従来的な外科技法を用いて一定の従来的な様式において行なわれる。
【0106】
以下の実施例は本発明の原理および実施方法の例示である。すなわち、本発明の原理および趣旨の範囲に含まれる多数の別の付加的な実施形態が当該技術分野における熟練者において明らかになる。
【0107】
実施例1
種々の関節部分からの健康な軟骨組織をウシの肩関節から入手した。この軟骨組織は骨の組織を実質的に含んでおらず、複数のメス・ブレードを用いて細分化することにより0.2%のコラーゲナーゼの存在下に小さな組織フラグメントを得た。これらの組織フラグメントの大きさは変化しているが、平均で約1mm×1mmの大きさにする必要がある。その後、この細分化した組織を4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PCL/PGA)の支持骨格材料の上に均一に分布した。この場合に、エチレン・オキシドにより滅菌処理したポリマーの支持構造体を種々の組織フラグメントの分布の前にダルベッコ修飾イーグル培地の中に4時間にわたり予備浸漬した。その後、この細分化したフラグメントを充填した支持骨格材料を軟骨細胞増殖培地を含有している一定の10cmの細胞培養皿の中に入れた。このダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−高濃度グルコース)は20%のウシ胎児血清(FCS)、10mMのヘペス(HEPES)、0.1mMの可欠アミノ酸、20mg/mlのL−プロリン、50mg/mlのアスコルビン酸、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBが補充されている。さらに、この増殖培地は一日おきに補給されている。各支持骨格材料を一定の細胞培養インキュベーターの中において37℃で培養した。さらに、培養後6週間目のサンプルを取り出して各支持骨格材料の中における細胞の分布および移動および軟骨様の基質の生成について分析した。図1は各細胞が細分化した軟骨組織のフラグメントからポリマーの支持骨格材料の中に広く移動している状態を示している(図1A)。これらの移動している細胞はそれぞれの表現型を維持しており、サフラニン−O染色材料による硫酸塩化グリコスアミノグリカンに対して陽性に染色した基質を生成している(図1B)。
【0108】
実施例2
上記実施例による細分化した軟骨の組織および細胞を含有している生体吸収性の支持骨格材料をSCIDマウス中に移植した。この対象を生体内における細分化した軟骨性の組織のポリマー支持骨格材料中への軟骨細胞の内部増殖について評価した。直径5mmのポリマー支持骨格材料を各SCIDマウスの外側の胸部領域内において両側に皮下移植した。この移植した支持骨格材料は4週間にわたり細胞増殖を支持するために自然放置した。その後、これらの皮下移植部位およびそれぞれを被覆している皮膚を切除して10%の緩衝液化したホルマリン固定液中に保存した。固定後に、各移植部位を組織学的構造について処理した。これらの組織学的構造はヘマトキシリンおよびエオシン、およびサフラニン−Oにより染色した。図2Aおよび図2Bは十分な細胞が支持骨格材料の中に分布している状態をそれぞれ示している図である。これらの細胞は上記合成の基質におけるサフラニン−Oに対応する強い陽性の染色により示される軟骨細胞様の形態学的構造を示している。
【0109】
実施例3
上記実施例1において記載されている方法により調製した細分化した軟骨細胞を一定の4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PCL/PGA)の支持骨格材料において均一に分布した。それぞれの細分化した軟骨組織フラグメントを1mLの高濃度血小板血漿(PRP、ヒューマン社(Human))によりこの支持骨格材料に接着した。60マイクロリットル(60単位)のトロンビンを用いてPRP中のクロット形成を誘発した。細分化した軟骨フラグメントのみを充填した対照の支持骨格材料およびPRPにより接着した細分化した軟骨フラグメントを充填した支持骨格材料を1週間にわたり生体外において培養した後に、実施例2において記載されているように各SCIDマウスに移植した。図3Aは細分化した組織を充填した一定の対照の支持骨格材料の顕微鏡写真である。図3Bは細分化した組織およびPRPを充填した一定の支持骨格材料を示している顕微鏡写真である。この図3BはPRPが軟骨細胞の移動を促進することにおいて有益的であり、各支持骨格材料内の軟骨細胞の分化した表現型の維持を助長することにおいても有益的であることを示している。これらの移動している細胞はそれぞれの表現型を維持しており、サフラニン−O染色材料による硫酸塩化グリコスアミノグリカンに対応して陽性に染色した基質を生成している(図3B)。
【0110】
実施例4
複数のブタの背面部に形成した1cm×1cmの傷から集めた健康な全層の皮膚サンプルを10倍の抗体/抗真菌剤を伴うDMEMを入れた50mlの円錐形の試験管内に速やかに入れた。その後、これらの組織サンプルを10倍の抗体/抗真菌剤を含有するPBS中において1回すすぎ洗いしてから、1倍の抗体/抗真菌剤を含有するPBSによるさらに別のすすぎ洗い工程を行なった。その後、この組織を一定の層流フード内において一定のメス・ブレードにより無菌状態で細分化した。このように分散した皮膚のサンプルを15分間にわたり37℃において1mlの0.25%コラーゲナーゼ/0.25%デイスパーゼによる酵素消化処理にかけた(自己由来型細胞分散1番)。別の組のサンプルは最初に500μlの0.25%トリプシンにより10分間にわたり消化し、PBSにより洗浄してトリプシンを除去した後に、15分間にわたり37℃において1mlの0.25%コラーゲナーゼ/0.25%デイスパーゼにより培養した(自己由来型細胞分散2番)。消化後に、これらのサンプルを5分間にわたり2500rpmで遠心処理した。上澄み液を吸引して廃棄した。その後、分散して部分的に消化している皮膚サンプルをPBS中において1回洗浄した後に500μlのPBS中に再懸濁した。約20μlの細胞懸濁液を一定の傷床中に均一に分布して、生体吸収性の支持骨格材料を細胞懸濁液が移動しないように分散状態の細胞の上部に注意深く供給した。この結果、分散状態の細胞は支持骨格材料上に均一に分散して傷床に配置できたと考えられる。図4は自己由来型の細胞の分散状態がケラチノサイトの「島(islands)」状の形態学的構造として存在しており、その一部が傷の表面に向かって支持骨格材料の中を移動していることを示している。
【0111】
実施例5
健康な前十字靭帯組織をウシの膝関節から得た。この靭帯組織をメス・ブレードおよび/またははさみを用いて細分化して小さな組織フラグメントを得た。この組織フラグメントの大きさは変化しているがその平均の粒子の大きさは約1mm3 であった。この実施例において、上記靭帯は0.2%のコラーゲナーゼの存在下または非存在下に細分化されている。その後、この細分化した組織を4cm×5cmの合成の生体吸収性のポリカプロラクトン/ポリグリコール酸(PGA/PCL)の支持骨格材料またはポリ乳酸/ポリグリコール酸(PLA/PGA)の支持骨格材料の上に均一に分布した。この場合に、これらの支持骨格材料を1時間にわたり70%エタノール中において滅菌処理してから、PBSにより3回にわたり洗浄した。その後、これらの支持骨格材料を組織フラグメントの分布の前に1倍の抗体/抗真菌剤を伴うダルベッコ修飾イーグル培地中において1時間乃至2時間にわたり予備浸漬した。このようにして細分化したフラグメントを充填した支持骨格材料を増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れ、この増殖培地は20%のウシ胎児血清(FCS)、100mg/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび0.25mg/mlのアンホテリシンBが補充されているダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−高濃度グルコース)により構成されている。その後、細分化した組織を伴う各支持骨格材料を一定の細胞培養インキュベーターの中において37℃で培養し、上記増殖培地を一日おきに交換した。この培養後の3週間目および6週間目に、各サンプルを取り出してそれぞれの支持骨格材料内への細胞の分布および移動について分析した。図5はコラーゲナーゼを伴う(図5A)およびコラーゲナーゼを伴わない(図5B)で処理した場合の細分化した前十字靭帯の組織フラグメントによる培養の6週間後におけるポリマー支持骨格材料中に広く移動している細胞をそれぞれ示している。
【0112】
実施例6
半月板を成育したヤギの膝関節から採取して、4mmの直径の体外移植組織片(2mmの厚さ)を白色および赤色/白色の各領域から採取した。2mmのパンチ生検試料をこれらの体外移植片の中心部から取り出した。その後、2mmの直径および2mmの厚さの一定の生体吸収性の支持骨格材料であるポリ乳酸/ポリカプロラクトン(PLA/PCL)を上記半月板の体外移植組織片の中心部に挿入した。これらの支持骨格材料を伴う体外移植組織片を一日おきの培地(1%FBS、1倍の抗体/抗真菌剤)の交換を伴って標準的な細胞培養条件下において2週間および3週間にわたり培養した。培養後の14日目および21日目において、各サンプルの半分を組織学的構造について処理するために10%の緩衝液化したホルマリン中に入れた。この結果、複数の部分がヘマトキシリンにより染色して細胞が可視化した。さらに、各支持骨格材料における残りのサンプルを取り出してその細胞数をサイクオント(CyQuant)アッセイ法によるDNAの定量化により推定した。図6Aは上記の半月板体外移植組織片からポリマー支持骨格材料中への細胞移動の存在を示している図である。また、図6Bは各支持骨格材料中への細胞移動を示している各支持骨格材料の断面における組織学的構造を示している図である。
【0113】
実施例7
ウシの肩関節から健康な軟骨組織および骨軟骨栓子を入手した。細分化した軟骨組織を上記実施例1において記載されている方法に従って調製した。加えて、骨軟骨栓子(1cm×1cm)を一定のダイアモンド形骨鋸によりウシの肩関節から採取して、骨カッターにより切断することにより骨軟骨ペースト材を得た。次に、250mgのサンプル(細分化した軟骨または骨軟骨ペースト)を2cm×5cmの合成で生体吸収性の(PCL/PGA)支持骨格材料上に分布した。その後、この細分化した軟骨フラグメントまたは骨軟骨ペースト材を充填した支持骨格材料を軟骨増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れて、上記実施例1において記載されているように一定の細胞培養インキュベーターの中で培養した。培養後の3週間目において、各サンプルを取り出して上記実施例2において記載されているように各SCIDマウスの中に移植した。この対象を4週間にわたり移植後の支持骨格材料内に形成される組織の性質について評価した。さらに、ヘマトキシリンおよびエオシン(H/E)、サフラニン−O(SO)および修飾マロリーズ・アニリン・ブルー(Modified Mallory's Aniline Blue)(MMAB)による染色により各支持骨格材料内における細胞分布および当該支持骨格材料内において形成した基質の性質についてそれぞれの組織学的構造を分析した。図7A乃至図7Cは細胞が細分化した軟骨組織フラグメントから支持骨格材料内に広く移動してサフラニン−Oに対して陽性に染色していることをそれぞれ示している。このことは図7Bにおいて特に明らかであり、この図においては、写真の中心部および上部における比較的に暗い領域が陽性の染色を示している。さらに、図8A乃至図8Cは各細胞が骨軟骨ペーストから各ポリマー支持骨格構造中に移動していることを示している図である。しかしながら、形成されている組織は軟骨ならびに新しい骨を含んでいる。この新しい骨は図8Cにおいて比較的に明るい矢印により示されており、古い骨は図8Aおよび図8Cにおいて比較的に暗い矢印により示されている。
【0114】
実施例8
健康な軟骨組織をウシの肩関節の接合部分から得た。その後、細分化した軟骨組織を上記実施例1において記載されている方法に従って調製した。生検パンチ体を用いて2mmおよび3mmの直径の各軟骨組織フラグメントを得た。これらのフラグメントの厚さは約1mmであった。直径2mmまたは3mmで250mgの細分化した軟骨または軟骨フラグメントを2cm×5cmの合成の生体吸収性の(PCL/PGA)支持骨格材料上に分布した。その後、この軟骨フラグメントを充填した支持骨格材料を軟骨増殖培地を入れた一定の10cmの細胞培養皿の中に入れて、上記実施例1において記載されているように一定の細胞培養インキュベーター内において培養した。培養後3週間において、各サンプルを取り出してDNA含有量の定量により細胞数を推定した。さらに、5mmの生検パンチ体を実施例2において記載されているように各SCIDマウス内に移植した。この対象を上記処理における組織フラグメントの最適な寸法について評価するために用いた。図9は細分化した軟骨組織を充填した各支持骨格材料において最大の細胞数が観察されたこと、および直径3mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料において最小の細胞数が観察されたことを示している。図10A乃至図10Cは各SCIDマウス内に移植されてサフラニン−Oにより染色されている各支持骨格材料の組織学的な評価を示している。これらの結果は細分化した軟骨組織および直径2mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料における均一な軟骨様組織(染色されている比較的に暗い領域)を示している(図10Aおよび図10B)。一方、直径3mmの軟骨フラグメントを充填した各支持骨格材料は均一に充たされていなかった(図10C)。
【0115】
当該技術分野における通常の熟練者であれば、上記において説明されている各実施形態に基づいて本発明のさらに別の特徴および利点を認識できる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲により定められている内容を除いて、特に図示および説明されている内容に限定されない。本明細書において引用されている全ての刊行物および参考文献はそれぞれの内容全体が本明細書において参考文献として含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は組織の治療に使用するための生体相容性の組織移植片およびこれらの装置の作成および使用のための方法に適用可能である。例えば、この組織移植片は病気のまたは損傷した組織の修復および/または再生のために使用できる。さらに、これらの組織移植片は組織増量、美顔用治療、医療処置、組織増強、および組織修復のために使用できる。これらの移植片は少なくとも1種類の細分化処理した組織フラグメントを含む一定の懸濁液を伴う一定の生体相容性の支持骨格材料を含む。この生体相容性の組織移植片はその細分化処理した組織の懸濁液の上方に配置されている一定の付加的な生物学的物質および/または一定の付随的な保持要素も含むことができる。
【0117】
本発明はまた上記のような生体相容性の組織移植片を作成するための方法にも適用可能である。これらの移植片は少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを含む生活可能な組織の懸濁液を形成するために上記組織サンプルを処理すること、および当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料の上に付着することにより作成される。一例の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料において集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下において一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。
【0118】
本発明はまた上記本発明の組織移植片の作成を補助するための一定のキットにも適用可能である。本発明のキットは少なくとも1種類の生体相容性の支持骨格材料を収容している一定の無菌容器、一定の被検体から一定の組織サンプルを収集するための一定の採取用工具、および組織サンプルの生活可能性を持続するための1種類以上の試薬を含む。このキットはまた一定の組織を組織粒子に細分化するための一定の処理用工具を含むことも可能であり、あるいは、上記採取用工具が組織サンプルを収集してそのサンプルを微細分割した組織粒子に処理することに適合可能である。さらに、このキットは随意的に上記支持骨格材料を上記無菌容器から移植のための一定の被検体に移すための一定の配給装置も含むことができる。
【0119】
本発明はまた上記本発明の生体相容性の組織移植片を用いて組織を治療する方法にも適用可能である。これらの方法による組織の治療は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを上記生体相容性の支持骨格材料上に付着させること、およびこの組織積載型の支持骨格材料を治療する組織に対して一定の所望の位置に配置することにより達成できる。一例の実施形態において、組織修復は一定の生体相容性の支持骨格材料および一定の細分化組織のサンプルを供給すること、当該組織サンプルを組織傷害部位に対して一定の所望の位置に付着させること、および上記生体相容性の支持骨格材料を組織の上に配置することにより達成できる。また、別の実施形態において、上記移植片を製造する方法は上記組織サンプル内の細胞が上記支持骨格材料において集団化することを有効に可能にするために十分な諸条件下に一定の持続期間にわたり一定の適当な環境内において上記組織積載型の支持骨格材料を培養するさらに別の工程を含むことができる。また、さらに別の実施形態において、上記の組織を治療する方法は、例えば、上記組織積載型の支持骨格材料の位置を固定することにより治療する組織に対して一定の所望の位置に上記支持骨格材料を固定する別の工程も含むことができる。
【0120】
本発明はまた生活組織における一定の物質の作用を測定するための方法にも適用可能である。本発明のこの態様によれば、本発明の生体移植可能な組織移植片は各種の組織構造体を形成するために使用可能であり、この構造体は一定の試験物質と接触することにより、生活組織におけるこの物質の作用効果が観察および測定できるようになる。従って、本発明の生体移植可能な組織構造体は、例えば、細胞移動、細胞の増殖および分化および細胞表現型の維持の作用効果等のような、種々の生物学的応答における作用効果を調べることにより生活組織における一定の試験物質の作用効果を測定するための一定の生物学的なスクリーニング・アッセイとして使用できる。
【0121】
本発明の具体的な実施態様は以下のとおりである。
(A)生体相容性の移植片において、
一定の生体相容性の支持骨格材料、および
前記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している少なくとも1種類の組織フラグメントを備えており、この場合に、当該組織フラグメントがこの組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料において集団化する一定の有効量の生活可能な細胞を含有している移植片。
(1)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(2)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが複数の細胞を含み、一定の外科部位における移植時に、当該複数の細胞の少なくとも一部分が前記支持骨格材料に結合している組織フラグメントから移動し、前記移植部位において増殖して周囲の組織に対して一体化することが可能である実施態様(A)に記載の移植片。
(3)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが複数の細胞を含み、一定の外科部位における移植の前に、当該複数の細胞の少なくとも一部分が前記支持骨格材料に結合している組織フラグメントから移動し、当該支持骨格材料において増殖して集団化することが可能である実施態様(A)に記載の移植片。
(4)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該生体相容性の支持骨格材料に対して前記組織フラグメントの懸濁液を固定するための一定の接着剤を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(5)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(4)に記載の移植片。
【0122】
(6)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の化学的架橋−連結剤を含む実施態様(4)に記載の移植片。
(7)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、脈管組織、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される実施態様(A)に記載の移植片。
(8)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(7)に記載の移植片。
(9)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨、半月板、腱、靭帯、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される種類の一定の無骨組織を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(10)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の生体吸収性の材料を含む実施態様(A)に記載の移植片。
【0123】
(11)前記生体相容性の支持骨格材料が種々の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、種々のアミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、生体合成ポリマー、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の合成ポリマーを含む実施態様(1)に記載の移植片。
(12)前記生体相容性の支持骨格材料が種々のラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン,6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物のホモポリマーまたはコポリマーから成る群から選択される一定の脂肪族ポリエステルを含む実施態様(11)に記載の移植片。
(13)前記生体相容性の支持骨格材料が一定のフィブリン基材材料、一定のコラーゲン基材材料、一定のヒアルロン酸基材材料、一定のセルロース基材材料、シルクおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される一定の天然ポリマーを含む実施態様(1)に記載の移植片。
(14)前記生体相容性の支持骨格材料がヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体ガラス、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、同種骨移植片材料、異種骨移植片材料およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(1)に記載の移植片。
(15)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の連続気泡型の多孔質構造を伴う気孔を有する一定の高分子発泡体部品を含む実施態様(A)に記載の移植片。
【0124】
(16)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに一定の生体相容性メッシュ含有材料により形成されている一定の補強部品を含む実施態様(15)に記載の移植片。
(17)前記発泡体部品が前記補強部品と一体になっていて、当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品に対して結合している実施態様(16)に記載の移植片。
(18)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該材料に供給される少なくとも1種類の付加的な生物学的要素を含む実施態様(A)に記載の移植片。
(19)前記少なくとも1種類の付加的な生物学的要素が種々の増殖因子、基質タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、サイトカイン、ウイルス、核酸、ペプチド、単離した細胞、血小板、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(18)に記載の移植片。
(20)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが約0.1mm3 乃至2mm3 の範囲内の一定の粒子の大きさを有している実施態様(A)に記載の移植片。
【0125】
(21)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが一定の生理学的緩衝溶液に加えられて約1mg/cm2 乃至100mg/cm2 の範囲内の一定の組織フラグメントの濃度を有する一定の懸濁液を形成している実施態様(A)に記載の移植片。
(22)前記生体相容性の移植片がさらに一定の合成ポリマー、天然ポリマー、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料を含み、当該少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料が前記少なくとも1種類の組織フラグメントに接触して配置されていて、当該少なくとも1種類の組織フラグメントの少なくとも一部分が前記少なくとも2個の生体相容性の支持骨格材料の間に配置されている実施態様(A)に記載の移植片。
(B)生体相容性の移植片において、
一定の生体相容性の支持骨格材料、
前記支持骨格材料の少なくとも一部分に結合している少なくとも1種類の軟骨組織フラグメントを含む一定の懸濁液を備えており、この場合に、前記懸濁液中の少なくとも1種類の組織フラグメントがこの組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料において集団化する一定の有効量の生活可能な細胞を含有しており、さらに
一定の保持要素を備えており、
この場合に、前記少なくとも1種類の組織フラグメントの少なくとも一部分が前記生体相容性の支持骨格材料と前記保持要素との間に配置されている移植片。 (23)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(B)に記載の移植片。
(24)前記保持要素が骨膜、軟骨膜、大腿筋膜、半腱様腱、薄筋腱、硬膜、腸間膜、小腸粘膜下組織、真皮、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される同種移植片組織を含む実施態様(B)に記載の移植片。
(25)前記保持要素が自家組織、同種異系組織、異種組織、止血材料、少なくとも1種類の付加的な生体相容性の支持骨格材料、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される実施態様(B)に記載の移植片。
【0126】
(C)一定の組織傷害を修復するためのキットにおいて、
1個以上の生体相容性の支持骨格材料を含む一定の無菌容器、および
一定の被検体から少なくとも1種類の生活可能な組織サンプルを収集するための一定の採取用工具を含むキット。
(26)さらに、前記少なくとも1種類の組織サンプルの生活能力を持続するための少なくとも1種類の試薬を含む実施態様(C)に記載のキット。
(27)前記支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(C)に記載のキット。
(28)前記採取用工具が前記組織サンプルを無菌条件下に少なくとも1種類の組織フラグメントに分割するための一定の処理工具を含む実施態様(C)に記載のキット。
(29)前記生体相容性の支持骨格材料が当該生体相容性の支持骨格材料に対して前記組織サンプルを固定するための一定の接着剤を含む実施態様(C)に記載のキット。
(30)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(29)に記載のキット。
【0127】
(31)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の架橋−連結剤を含む実施態様(29)に記載のキット。
(32)前記少なくとも1種類の試薬が塩水、リン酸塩緩衝溶液、ハンクス(Hank's)平衡塩類、組織培養培地、漿液を含有している組織培養培地、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(C)に記載のキット。
(D)一定の組織移植片を調製するための方法において、
一定の生体相容性の支持骨格材料を供給する工程、
一定の組織サンプルを入手する工程、
無菌条件下に前記組織サンプルを処理して少なくとも1種類の組織フラグメントおよび一定の生理学的な緩衝溶液を形成する工程、および
前記組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料の上に付着させて一定の組織移植片を形成する工程を含む方法。
(33)前記生体相容性の支持骨格材料が一定の合成ポリマー、天然ポリマー、注入可能なゲル、セラミック材料、自家組織、同種異系組織、異種組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(D)に記載の方法。
(34)前記方法がさらに前記組織移植片を前記少なくとも1個の組織フラグメントの中の細胞が前記支持骨格材料において集合化することを可能にするために有効な一定の持続時間および諸条件下において培養する工程を含む実施態様(D)に記載の方法。
(35)前記組織移植片が約7日乃至6週間の範囲内の一定の持続期間にわたり培養される実施態様(D)に記載の方法。
【0128】
(36)前記組織移植片が約20℃乃至40℃の範囲内の一定温度において高湿度を有する一定の雰囲気中で培養される実施態様(35)に記載の方法。
(37)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(D)に記載の方法。
(38)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが自己由来組織を含む実施態様(37)に記載の方法。
(39)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが軟骨、半月板、腱、靭帯、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される種類の一定の無骨組織を含む実施態様(D)に記載の方法。
(40)前記少なくとも1種類の組織フラグメントが当該組織フラグメントから外に移動可能な一定の有効量の生活可能な細胞を含む実施態様(D)に記載の方法。
【0129】
(41)前記有効量の細胞が前記組織フラグメントから外に移動して前記生体相容性の支持骨格材料の外表面部において集合化する実施態様(40)に記載の方法。
(42)前記有効量の細胞が前記組織フラグメントから外に移動して前記支持骨格材料における一定の内部領域の少なくとも一部分において集合化することにより、これらの細胞が当該支持骨格材料の中に埋め込まれた状態になる実施態様(40)に記載の方法。
(43)さらに、少なくとも1個の付加的な生体移植可能な支持骨格材料を供給して当該少なくとも1個の付加的な生体移植可能な支持骨格材料を前記付着された少なくとも1個の組織フラグメントの上に配置することにより、当該少なくとも1個の組織フラグメントの少なくとも一部分が少なくとも2個の生体移植可能な支持骨格材料の間に配置される実施態様(D)に記載の方法。
(44)前記生体移植可能な支持骨格材料がさらに前記少なくとも1種類の細分化した組織フラグメントを前記生体移植可能な支持骨格材料に固定するための一定の接着剤を含む実施態様(D)に記載の方法。
(45)前記接着剤がヒアルロン酸、フィブリン・グルー、フィブリン・クロット、コラーゲン・ゲル、アルギネート・ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、貽貝基材接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材接着剤、セルロース基材接着剤、合成アクリレート基材接着剤、高濃度血小板血漿(PRP)、マトリゲル、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート(MGSA)、モノステアロイル・グリセロール・コ−スクシネート/ポリエチレン・グリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の固定剤を含む実施態様(44)に記載の方法。
【0130】
(46)前記接着剤がジビニル・スルホン(DVS)、ポリエチレン・グリコール・ジビニル・スルホン(VS-PEG-VS)、ヒドロキシエチル・メタクリレート・ジビニル・スルホン(HEMA-DIS-HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、アルキルおよびアリールのハロゲン化物、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化化合物、カルボジイミド、塩酸化物、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の架橋−連結剤を含む実施態様(44)に記載の方法。
(47)前記生体移植可能な支持骨格材料が一定の生体吸収性の材料を含む実施態様(D)に記載の方法。
(48)前記生体相容性の支持骨格材料が種々の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、種々のアミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、生体合成ポリマー、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される一定の合成ポリマーを含む実施態様(33)に記載の方法。
(49)前記生体相容性の支持骨格材料が種々のラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン,6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物のホモポリマーまたはコポリマーから成る群から選択される一定の脂肪族ポリエステルを含む実施態様(48)に記載の方法。
(50)前記生体相容性の支持骨格材料が一定のフィブリン基材材料、一定のコラーゲン基材材料、一定のヒアルロン酸基材材料、一定のセルロース基材材料、シルクおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される一定の天然ポリマーを含む実施態様(33)に記載の方法。
【0131】
(51)前記生体相容性の支持骨格材料がヒドロキシアパタイト、α−トリカルシウム・ホスフェート、β−トリカルシウム・ホスフェート、生体ガラス、同種骨移植片材料、異種骨移植片材料およびこれらの組み合わせ物を含む実施態様(33)に記載の方法。
(52)前記生体移植可能な支持骨格材料が一定の連続気泡型の多孔質構造を伴う複数の気孔を有する一定の高分子発泡体を含む実施態様(D)に記載の方法。
(53)前記生体移植可能な支持骨格材料がさらに一定の生体相容性メッシュ含有材料により形成されている一定の補強部品を含む実施態様(52)に記載の方法。
(54)前記発泡体部品が前記補強部品と一体になっていて、当該発泡体部品の各気孔が補強部品のメッシュの中に進入して当該補強部品に対して結合している実施態様(53)に記載の方法。
(55)前記生体相容性の支持骨格材料がさらに当該材料に供給される少なくとも1種類の付加的な生物学的要素を含む実施態様(D)に記載の方法。
(56)前記少なくとも1種類の付加的な生物学的要素が種々の増殖因子、基質タンパク質、酵素、サイトカイン、ウイルス、核酸、ペプチド、単離した細胞、血小板、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(55)に記載の方法。
(E)生活組織における一定の物質の作用効果を測定するための方法において、
(a)一定の生体相容性の支持骨格材料を供給することにより一定の組織構造体を形成して、一定の組織サンプルを入手し、前記組織サンプルを処理して少なくとも1種類の組織フラグメントを形成して、当該少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に付着させて当該少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に結合することにより一定の組織構造体を形成し、当該組織構造体を前記組織フラグメント内の細胞が前記支持骨格材料に自然に移動可能にするために有効な一定の持続期間および諸条件下において培養する工程、
(b)前記組織構造体を一定の物質に接触させる工程、および
(c)前記組織構造体における前記物質の作用効果を決定する工程を含む方法。
(57)前記物質が一定の薬物、薬剤組成物、化学薬品、微生物、要素、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、抗体、ペプチド、リガンド、膜結合レセプタのアンタゴニスト、またはこれらの組み合わせ物を含む実施態様(E)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1A】一定の軟骨組織サンプル内の細胞が多量に一定のポリマー支持骨格材料の中に移動している顕微鏡写真図である。
【図1B】図1Aの移動している各細胞がそれぞれの表現型を維持していること、およびこれらの移動している細胞がサフラニン−O(Safranin O)染料によるサルフェーテド・グリコスアミノグリカンに対して陽性に染色する細胞基質を生成することを示している顕微鏡写真である。
【図2A】SCIDマウスの体内に移植した後の、各生体相容性の支持骨格材料に充填された細分化処理した組織内における各細胞が増殖して支持骨格全体を満たしたことを示している顕微鏡写真である。
【図2B】SCIDマウスの体内に移植した後の、細分化処理した組織内における各細胞が軟骨細胞様であり、サフラニン−Oに対して陽性に染色する一定の豊富な基質により囲まれていることを示している顕微鏡写真である。
【図3A】細分化処理した組織により充填されている一定の支持骨格材料を示している顕微鏡写真である。
【図3B】細分化処理した組織および高濃度血小板血漿(PRP)により充填した一定の支持骨格材料を示しており、当該PRP内における各種の増殖因子が細分化処理した組織からの軟骨細胞の移動を助長すること、および各支持骨格材料内の軟骨細胞の分化した表現型の維持を助長することにおいて有益的であることを示している顕微鏡写真である。
【図4】自己由来細胞の分散(皮膚から由来)が各ケラチノサイトの島状の組織学的構造として存在していることを示している顕微鏡写真である。
【図5A】コラーゲナーゼを伴って処理されている細分化処理した前十字組織フラグメントを含む一定の生体相容性の支持骨格材料の培養における6週間にわたる培養後のポリマー支持骨格材料内への各細胞の多量の移動を示している顕微鏡写真である。
【図5B】コラーゲナーゼを伴わずに処理されている細分化処理した前十字組織フラグメントを含む一定の生体相容性の支持骨格材料の培養における6週間にわたる培養後のポリマー支持骨格材料内への各細胞の多量の移動を示している顕微鏡写真である。
【図6A】一定の半月板体外移植組織サンプル内の各細胞が一定のポリマー支持骨格材料内に多量に移動することを示しているグラフである。
【図6B】付随の半月板体外移植組織および生体相容性の支持骨格材料の各断面の組織学的構造を示している顕微鏡写真であり、これらの断面は半月板体外移植組織サンプル内の各細胞がポリマー支持骨格内に移動することを示している。
【図7】図7A乃至図7Cは実施例7の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、一定の支持骨格内において形成されて細分化処理した軟骨組織フラグメントから増殖した組織の分布および性質を示している。
【図8】図8A乃至図8Cは実施例7の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、一定の支持骨格内において形成されて細分化処理した軟骨組織フラグメントから増殖した組織の分布および性質を示している。
【図9】異なる大きさの細分化処理した軟骨組織フラグメントにおいて得られた各細胞の数を比較しているグラフである。
【図10】図10A乃至図10Cは実施例8の手順に従って得られた体外移植組織サンプルの組織学的断面の顕微鏡写真であり、異なる大きさの細分化処理した軟骨組織フラグメントにより得られる軟骨様組織の均一さを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織傷害を修復するためのキットにおいて、
1個以上の生体相容性の支持骨格材料を含む無菌容器、および
被検体から少なくとも1種類の生活可能な組織サンプルを収集するための採取用工具を含むキット。
【請求項2】
生活組織における物質の作用効果を測定するための方法において、
(a)組織構造体を作り出すことであって、
生体相容性の支持骨格材料を供給すること、
組織サンプルを入手すること、
前記組織サンプルを加工して少なくとも1種類の組織フラグメントを形成すること、
前記少なくとも1種類の組織フラグメントが前記生体相容性の支持骨格材料に結合するように、前記少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に配置し、それにより、組織構造体を形成すること、および、
前記組織フラグメント内の細胞が前記支持骨格材料において集団化することが可能であるのに有効な期間および条件下で、前記組織構造体を培養すること、によって組織構造体を作り出す工程と、
(b)前記組織構造体を物質に接触させる工程と、
(c)前記組織構造体における前記物質の作用効果を決定する工程と、
を含む方法。
【請求項1】
組織傷害を修復するためのキットにおいて、
1個以上の生体相容性の支持骨格材料を含む無菌容器、および
被検体から少なくとも1種類の生活可能な組織サンプルを収集するための採取用工具を含むキット。
【請求項2】
生活組織における物質の作用効果を測定するための方法において、
(a)組織構造体を作り出すことであって、
生体相容性の支持骨格材料を供給すること、
組織サンプルを入手すること、
前記組織サンプルを加工して少なくとも1種類の組織フラグメントを形成すること、
前記少なくとも1種類の組織フラグメントが前記生体相容性の支持骨格材料に結合するように、前記少なくとも1種類の組織フラグメントを前記生体相容性の支持骨格材料に配置し、それにより、組織構造体を形成すること、および、
前記組織フラグメント内の細胞が前記支持骨格材料において集団化することが可能であるのに有効な期間および条件下で、前記組織構造体を培養すること、によって組織構造体を作り出す工程と、
(b)前記組織構造体を物質に接触させる工程と、
(c)前記組織構造体における前記物質の作用効果を決定する工程と、
を含む方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−119867(P2010−119867A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27498(P2010−27498)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2003−358118(P2003−358118)の分割
【原出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2003−358118(P2003−358118)の分割
【原出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]