説明

組織操作のための成長因子改変タンパク質マトリクス

【課題】タンパク質を、組織の修復、再生および/または再造形ならびに/あるいは薬物送達における使用のために、タンパク質または多糖物質中に組み込むこと。
【解決手段】これらのタンパク質は、マトリクスの分解によって、酵素的な活性化および/または拡散によって放出されるように組み込まれ得る。実施例によって実証されるように、ある方法は、共有結合的方法または非共有結合的方法のいずれかによってマトリクスにヘパリンを結合させ、ヘパリン−マトリクスを形成する。次いで、ヘパリンは、タンパク質マトリクスにヘパリン−結合増殖因子を非共有結合させる。あるいは、融合タンパク質は、第XIIIa因子基質およびネイティブなタンパク質配列のような架橋領域を含めて構築され得る。マトリクスと生物活性因子と間の分解性結合の取り込みは、長期間の薬物送達が所望される場合(例えば、神経再生の場合)、特に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、PTHおよびマトリクスと結合相互作用させるアミノ酸配列を含む融合タン
パク質またはペプチドに関し、そして組織修復および組織再生、ならびにPTHの制御さ
れた放出における融合タンパク質またはペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
上皮小体ホルモン(PTH)は、84アミノ酸ペプチドであり、これは、上皮小体によ
って作られ、分泌される。このホルモンは、種々の組織(骨を含む)に対するその作用に
よる血清カルシウムレベルの制御において主要な役割を果たす。ヒトにおいて種々の形態
のPTHを用いた研究は、骨に対して同化効果を示し、これは、骨粗鬆症および関連する
骨障害の処置についてこれらPTHを興味深いものにする(Chorevらに対する、米
国特許第5,747,456号およびEli Lilly & Co.に対するWO00
/10596)。上皮小体ホルモンは、細胞表面レセプターへの結合によって細胞に対し
て作用する。このレセプターは、骨芽細胞(新規の骨を形成することを担う細胞)におい
て見出されることが公知である。
【0003】
ヒトホルモンのN末端34アミノ酸ドメインは、全長ホルモンに生物学的に等価である
ことが報告されている。PTH1−34およびその作用様式は、米国特許第4,086,
196号においてまず報告された。それ以来、研究が、PTH1−34およびネイティブ
なヒトPTH形態の他の短縮型バージョン(例えば、PTH1−25、PTH1−31お
よびPTH1−38)に対して実施された(例えば、Rixon RHら、J Bone
Miner.Res.9(8):1179−89(Aug.1994)を参照のこと)

【0004】
PTHが骨リモデリングに影響する機構は、複雑であり、これは、矛盾する結果を導き
、続いて、正確な機構に対する有意数の研究が、関与する。PTHが連続的様式で全身に
投与された場合、骨密度が減少することが示された。対照的に、同じ分子が、拍動性様式
において投与される場合、骨密度が増加されることが報告された(例えば、Eli Li
lly & Co.に対するWO99/31137を参照のこと)。この明らかな矛盾は
、PTHが、骨リモデリングおよび、続いて、骨密度の観察可能なパラメーターを調節す
る機構によって説明され得る。成熟骨内で、PTHレセプターは、骨芽細胞系統の細胞の
表面上のみに存在することが示され、破骨細胞には存在しないことが示された。PTHが
骨リモデリングにおいて果たす役割は、破骨細胞とは対照的に、骨芽細胞によって指向さ
れる。しかし、骨芽細胞系統の種々の段階の細胞は、これらがPTHに結合した場合、異
なる応答をする。従って、種々の方法を使用してPTHが投与される場合に観察される劇
的な変化は、同じ分子が、骨芽細胞系統内の異なる細胞に対して有する種々の効果を理解
することによって説明され得る。
【0005】
PTHが、間葉幹細胞に結合する場合、細胞が、前骨芽細胞に分化するように誘導され
る。従って、系にPTHを添加することによって、前骨芽細胞の割合が増加する。しかし
、これらの前骨芽細胞は、同様にPTHレセプターを有し、これらの細胞上のレセプター
に対するPTHの続く結合は、異なる応答を導く。PTHが前骨芽細胞を結合する場合、
骨吸収を導く2つの別々の結果を生じる。第1に、前骨芽細胞の骨芽細胞へのさらなる分
化を阻害する。第2に、前骨芽細胞からのインターロイキン6(IL−6)の分泌を増加
する。IL−6は、前骨芽細胞の分化の阻害と、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化の増加と
両方を行う。骨芽細胞系統内の細胞からのこの二重の応答は、骨リモデリングとPTH曝
露との間の複雑な反応を提供する。PTHが、短い期間の間に周期的に投薬される場合、
間葉幹細胞は、骨芽細胞に分化するように誘導される。次いで、短い投薬期間は、新規に
形成された前骨芽細胞が、IL−6を産生するのを阻害し、破骨細胞の活性化を阻害する
。従って、用量の間隔の間、これらの新規に形成された前骨芽細胞は、骨芽細胞にさらに
分化し得、骨形成を生じる。一定容量のPTHが適用される場合、前骨芽細胞は、IL−
6の産生を開始する機会を有し、これによって破骨細胞を活性化し、それら自身を阻害し
、反対の効果(骨吸収)を導く。
【0006】
組織修復または再生のために、細胞は、創床に移動し、増殖し、マトリクス成分を発現
するか、または細胞外マトリクスを形成し、そして最終組織形状を形成しなければならな
い。多様な細胞集団(しばしば、血管細胞および神経細胞を含む)は、しばしば、この形
態学的応答に参加しなければならない。マトリクスは、大いに増強されることが示され、
いくつかの場合において、この応答が起こるのに必須であることが見出された。アプロー
チは、天然起源または合成起源あるいは両方の混合物から発達中のマトリクスにおいてな
される。天然の細胞が内方増殖するマトリクスは、細胞感化によるリモデリングに供され
、全ては、例えば、プラスミン(フィブリンを分解する)およびマトリクスメタロプロテ
イナーゼ(コラーゲン、エラスチンなどを分解)によるタンパク質分解に基づく。このよ
うな分解は、高度に局在化され、移動する細胞との直接の接触の際にのみ生じる。さらに
、特定の細胞シグナル伝達タンパク質(例えば、増殖因子)の送達は、厳しく調節される
。天然のモデルにおいて、マクロ孔質の細胞内方増殖マトリクスは、使用されないが、む
しろ、細胞がマトリクスに移動する場合、局所的にそして必要に応じて、細胞が分解され
得るミクロ孔質のマトリクスは使用される。免疫原性、高価な産生、限定された利用可能
性、バッチ変化性およびバッチ精製に関する関心に起因して、合成前駆体分子に基づくマ
トリクス(例えば、改変されたポリエチレングリコール)は、人体中および/または人体
における組織再生のために開発された。
【0007】
多くの仕事が、PTHの全身効果の研究をなした、一方で、研究によって、PTHの局
所(local or topical)投与は調査されなかった。PTHが、骨芽細胞
系統に対する直接の同化効果を有するので、欠損部位内に適切に示される場合、骨密度に
対する影響に加えて骨欠損を治癒する強い潜在能力を有するはずである。一旦欠損が前骨
芽細胞で充填されると、PTHシグナルが止まる場合、新規に形成された前骨芽細胞が、
骨芽細胞に分化し、創床に転換し始め、まず、網状骨組織に転換し、次いで、成熟骨構造
に転換する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、組織修復、組織再生、およびリモデリングのためのマトリク
スに結合され得る形態のPTHを提供することである。
【0009】
骨欠損を治癒するために患者に局所(topical or local)投与するた
めに適切な形態でPTHを与えることは、さらなる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
1つのドメインの上皮小体ホルモン(PTH)および別のドメインのマトリクスに共有
結合的に架橋され得る基体ドメインを含む融合ペプチド、ならびにマトリクス、ならびに
このような融合タンパク質またはペプチドを含むキットが、本明細書中で開示される。融
合タンパク質は、天然材料または合成材料に共有結合され、マトリクスを形成し、これは
、骨欠損を治癒するために使用され得る。必要に応じて、マトリクスを形成するための全
ての成分は、骨欠損に適用され、マトリクスは、適用部位で形成される。融合ペプチドは
、マトリクスに組込まれ得、その結果、融合ペプチド全体または第1のドメインのそれぞ
れのPTH配列のみのいずれかで、マトリクスの分解によって、酵素作用によって、およ
び/または加水分解作用によって、遊離される。融合ペプチドはまた、第1のドメインと
第2のドメインとの間に分解可能な結合を含み得、この結合は、加水分解切断部位または
酵素切断部位を含む。特に、融合ペプチドは、1つのドメインにPTH、第2のドメイン
でマトリクスに共有結合的に架橋され得る基体ドメイン、第1のドメインと第2のドメイ
ンとの間の分解部位を含む。好ましくは、PTHは、ヒトPTHであるが、他の供給源由
来のPTH(例えば、ウシPTH)は、適切であり得る。PTHは、PTH1−84(ネ
イティブ)、PTH1−38、PTH1−34、PTH1−31、もしくはPTH1−2
5であり得るか、または前述の特徴に類似する特徴(すなわち、骨形成)を示すPTHの
任意の改変バージョンもしくは対立遺伝子バージョンであり得る。分解部位は、マトリク
ス内の種々の位置で変化する送達速度を可能にし、これは、その位置での、および/また
はマトリクス内での細胞活性に依存する。さらなる利点としては、送達システム内でのよ
り低い総薬物用量、より大きなパーセンテージの薬物が最大の細胞活性の時点で遊離され
ることを可能にする放出の空間制御が挙げられる。したがって、本発明は、以下をも提供する。
(1) 融合ペプチドであって、該融合ペプチドは、以下:
PTHを含む第1のドメインおよび
共有結合的に架橋可能な基質ドメインを含む第2のドメイン
を含む、
融合ペプチド。
(2) 前記第1のドメインと前記第2のドメインとの間の分解部位をさらに含む、項目1に記載の融合ペプチド。
(3) 前記PTHが、PTH 1−84、PTH 1−28、PTH 1−34、PTH 1−31およびPTH 1−25からなる群から選択される、項目1に記載の融合ペプチド。
(4) 前記PTHがPTH 1−34である、項目3に記載の融合ペプチド。
(5) 前記第2のドメインが、トランスグルタミナーゼ基質ドメインを含む、項目1に記載の融合ペプチド。
(6) 前記第2のドメインが、第XIIIa因子基質ドメインを含む、項目5に記載の融合ペプチド。
(7) 前記第XIIIa因子基質ドメインが、配列番号12を含む、項目6に記載の融合ペプチド。
(8) 前記第2のドメインが、少なくとも1つのシステインを含む、項目1に記載の融合ペプチド。
(9) 前記分解部位が、酵素的分解部位または加水分解性分解部位である、項目2に記載の融合ペプチド。
(10) 前記分解部位が、酵素的分解部位であって、該酵素的分解部位が、プラスミンおよびマトリクスメタロプロテイナーゼからなる群から選択される酵素によって切断される、請求項8に記載のペプチド。
(11) 項目1〜10に記載の融合ペプチドを含むキット。
(12) フィブリノゲン、トロンビンおよびカルシウム供給源をさらに含む、項目11に記載のキット。
(13) 前記キットが、架橋酵素をさらに含む、項目11に記載のキット。
(14) 項目1〜10に記載の融合ペプチドを含む、細胞の増殖または内方増殖に適切なマトリクスであって、該融合ペプチドは該マトリクスに共有結合される、マトリクス。
(15) 前記マトリクスがフィブリンである、項目14に記載のマトリクス。
(16) 項目14に記載のマトリクスであって、該マトリクスは、n個の求核基を含む第1の前駆体分子とm個の求電子基を含む第2の前駆体分子との間でマイケル型付加反応によって形成され、ここでnおよびmは少なくとも2であり、そしてn+mの合計は少なくとも5である、マトリクス。
(17) 項目16に記載のマトリクスであって、前記求電子基は不飽和基に結合体化され、そして該求核基は、チオールおよびアミンからなる群から選択される、マトリクス。
(18) 前記マトリクスがポリエチレングリコールを含む、項目14に記載のマトリクス。
(19) マトリクスを作製するための方法であって、該方法は、以下:
架橋されたマトリクスを形成し得る少なくとも1つのマトリクス材料を提供する工程であって、ここで該マトリクス材料は、タンパク質および合成材料からなる群から選択される、工程、
項目1〜10に記載の融合ペプチドを該マトリクス材料に添加する工程、および
該マトリクス材料を架橋し、その結果、該融合ペプチドが第2のドメインを通ってマトリ
クスに結合される工程を包含する、
方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、プラスミン分解ペプチド含有フィブリンゲルおよび遊離ペプチドの蛍光検出クロマトグラムである。組込まれたαPI1−7−ATIII121−134ペプチド(−)、組込まれたペプチドを含む分解されたフィブリンゲルに添加された同じ遊離ペプチド(・・・)、および遊離ペプチド単独(−−)を用いる、分解されたフィブリンゲルのサイズ排除クロマトグラフィーを示す。N−末端ロイシン残基を、ダンシル化(dLと略される)した。遊離ペプチドは、凝固の間にフィブリンゲルに組込まれたペプチドより長い時間で溶出し(これは、より低い分子量に対応する)、このことは、分解されたフィブリンに対する共有結合、従って、第XIIIa因子活性の作用による共有結合的組込みを示す。
【図2】図2は、dLNQEQVSPLRGD(配列番号1)の、外来性第XIII因子が加えられたフィブリンゲルへの取込みのグラフである。1U/mLが加えられる場合、組み込みレベルは、増加し、その結果、25molペプチド/molフィブリノゲンより上が達成され得た。
【図3】図3は、ビドメイン(bidomain)ペプチドのdLNQEQVSPLRGD(配列番号1)の、未希釈フィブリングリューへの組み込みのグラフである。3つの別個のキットを試験し、そして各場合において高レベルの組み込みが観察され得、25molペプチド/molフィブリノゲンに達した。最大組み込みに必要な外来性ペプチドの濃度は、おそらく生成される高密度のフィブリンマトリクス内の拡散限界に起因して、少なくとも5mMであった。この組み込みレベルは、非常に一貫しており、各キットは、類似の組み込みプロフィールを提供した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
硬組織の修復、再生または再構築のため、特に、骨の成長のための、その中に放出可能
に組み込まれたPTHを有する天然および合成のマトリクスを使用する製品および方法が
、本明細書中で記載される。天然マトリクスは、生体適合性かつ生分解性であり、そして
移植時に、インビトロまたはインビボで形成され得る。PTHは、このマトリクスに組み
込まれ得、そしてその完全な生体活性を保持する。PTHは、PTHがどのように放出さ
れるか、およびPTHが何時放出されるか、およびPTHがどの程度放出されるかの制御
を提供する技術を使用して、放出可能に組み込まれ得、その結果、このマトリクスは、制
御放出ビヒクルとしてこのマトリクスを使用して、直接的または間接的に組織修復のため
に使用され得る。
【0013】
(定義)
「生体材料」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、材料に永久的または一時的
に依存して、身体の任意の組織、器官または機能を評価、処置、増強または置換する生物
学的系とインターフェースすることを意図される材料をいう。用語「生体材料」および「
マトリクス」は、本明細書中で同義で使用され、そしてマトリクスの性質に依存して、水
で膨潤され得るが、水中に溶解しない(すなわち、外傷のある硬組織または欠損硬組織の
特定の支持機能を果たす特定の期間、身体中に留まるヒドロゲルを形成する)架橋ポリマ
ーネットワークを意味する。
【0014】
「PTH融合ペプチド」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、少なくとも第1
および第2のドメインを含むペプチドをいう。一方のドメインは、PTH(ネイティブ形
態または短縮形態、特に、PTH 1−34)を含み、そして他方のドメインは、マトリ
クスに架橋されるための基質ドメインを含む。酵素的または加水分解的な分解部位はまた
、この第1のドメインと第2のドメインとの間に存在し得る。
【0015】
「強い求核試薬」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、極性結合形成反応にお
いて電子対を求核試薬に供与し得る分子をいう。好ましくは、この強い求核試薬は、生理
学的pHにおいて、水より求核性である。強い求核試薬の例は、チオールおよびアミンで
ある。
【0016】
「共役不飽和結合」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、単結合と交互の炭素
−炭素多重結合、炭素−ヘテロ原子多重結合またはヘテロ原子−ヘテロ原子結合、あるい
は官能基の高分子(例えば、合成ポリマーまたはタンパク質)への連結をいう。このよう
な結合は、付加反応を受け得る。
【0017】
「共役不飽和基」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、単結合と交互の炭素−
炭素多重結合、炭素−ヘテロ原子多重結合またはヘテロ原子−ヘテロ原子結合を有する分
子または分子の領域であって、付加反応を受け得る多重結合を有する、分子または分子の
領域をいう。共役不飽和基の例としては、ビニルスルホン、アクリレート、アクリルアミ
ド、キノンおよびビニルピリジニウム(例えば、2−または4−ビニルピリジニウム)、
ならびにイタコネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「合成前駆体分子」とは、一般的に本明細書中で使用される場合、天然に存在しない分
子をいう。
【0019】
「天然に存在する前駆体成分またはポリマー」とは、一般的に本明細書中で使用される
場合、天然で見出され得る分子をいう。
【0020】
本明細書中で一般的に使用されるような「官能化する」とは、官能基または官能的な部
分の結合を生じる様式で分子を修飾することをいう。例えば、分子は、分子を強力な求核
試薬または共役不飽和にする分子の導入によって官能化され得る。好ましくは、分子(例
えば、PEG)は、チオール、アミン、アクリレート、またはキノンになるように官能化
される。タンパク質はまた、特に、遊離チオールを生成するためにジスルフィド結合の部
分的還元または完全な還元によって効率的に官能化され得る。
【0021】
本明細書中で一般的に使用されるような「官能性」とは、分子上の反応部位の数をいう

【0022】
本明細書中で一般的に使用されるような「分枝位置の官能性」とは、分子中の一つの位
置から伸びるアームの数をいう。
【0023】
本明細書中で一般的に使用されるような「接着部位または細胞結合部位」とは、分子(
例えば、細胞の表面上の接着促進レセプター)が結合するペプチド配列をいう。接着部位
の例としては、フィブロネクチン由来のRGD配列、およびラミニン由来のYIGSR(
配列番号2)配列が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、接着部位は、マ
トリクスに架橋可能な基質ドメインを含むことによって生体材料に組み込まれる。
【0024】
本明細書中で一般的に使用されるような「生物学的活性」とは、目的のタンパク質によ
って媒介される官能的な事象をいう。いくつかの実施形態において、これは、ポリペプチ
ドと別のポリペプチドの相互作用を測定することによってアッセイされる事現を包含する
。それはまた、目的のタンパク質が、細胞増殖、細胞分化、細胞死、細胞移動、細胞接着
、他のタンパク質との細胞相互作用、酵素活性、タンパク質リン酸化もしくはタンパク質
脱リン酸化、転写または翻訳に対して有する効果をアッセイすることを包含する。
【0025】
本明細書中で一般的に使用されるような「感受性生物学的分子」とは、細胞中、もしく
は体内で見出されるか、または細胞もしくは身体のための治療剤として使用され得る分子
をいい、この治療剤は、その存在下で他の分子と反応し得る。感受性生物学的分子の例と
しては、ペプチド、タンパク質、核酸、および薬物が挙げられるが、これらに限定されな
い。生体材料は、感受性生物学的材料に不利に影響を与えることなく、感受性生物学的材
料の存在下で生成され得る。
【0026】
「再生」は、本明細書中で一般的に使用される場合、硬組織(特に、骨)のようなもの
の一部または全てが、成長して元にもどることを意味する
「多官能性」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、1分子(すなわち、モノマ
ー、オリゴマーおよびポリマー)あたりの求電子官能基および/または求核性官能基が1
つより多いことをいう。
【0027】
「自己選択的反応」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、組成物の第1の前駆
成分が、混合物中またはその反応部位中に存在する他の化合物よりも、その組成物の第2
の前駆成分とより早く反応する(逆もまた同じ)ことを意味する。本明細書中で使用され
る場合、求核基は、求電子物質に優先的に結合し、そして求電子物質は、他の生物学的化
合物よりも、強力な求核基に優先的に結合する。
【0028】
「架橋」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、共有結合の形成を意味する。し
かし、非共有結合(例えば、イオン結合)、または共有結合と非共有結合との組み合わせ
の形成も言及し得る。
【0029】
「ポリマーネットワーク」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、モノマー、オ
リゴマーまたはポリマーの実質的に全てが、それらの利用可能な官能基を介する分子間共
有結合によって結合されて1つの大きな分子を生じるプロセスの産物を意味する。
【0030】
「生理学的」とは、本明細書中で使用される場合、生きている脊椎動物中に見出され得
るような条件を意味する。特に、生理学的条件は、温度、pHなどのようなヒト身体中の
条件を言及する。生理学的温度は、35℃と42℃との間の温度範囲、好ましくは37℃
あたりを意味する。
【0031】
「架橋密度」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、それぞれの分子の、2つの
架橋間の平均分子量(M)をいう。
【0032】
「当量」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、物質のgあたりの官能基のmm
olをいう。
【0033】
「膨潤」とは、本明細書中で使用される場合、バイオマテリアルによる水の取りこみに
よって容量および質量が増加することをいう。用語「水取りこみ」および「膨潤」は、本
願を通して同意語として使用される。
【0034】
「平衡状態」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、ヒドロゲルが、水中の定常
状態下で貯蔵された場合に質量の増加または損失を起こさない状態である。
【0035】
(I.マトリクスおよびPTH)
(A.マトリクス材料)
マトリクスは、前駆体分子をポリマーネットワークにイオン的に架橋するか、共有結合
的に架橋するか、またはその組み合わせによって、あるいは、1つ以上のポリマー材料(
すなわち、マトリクス)を膨潤させて、マトリクス内への細胞の内方増殖または移動を可
能にするために十分なポリマー間間隔を有するポリマーネットワークを形成することによ
って、形成される。
【0036】
1つの実施形態において、マトリクスは、タンパク質(好ましくは、マトリクスが移植
される患者において天然に存在するタンパク質)から形成される。特に好ましいマトリク
スタンパク質は、フィブリンであるが、他のタンパク質(例えば、コラーゲンおよびゼラ
チン)から作製されたマトリクスもまた、使用され得る。ポリサッカリドおよび糖タンパ
ク質もまた、マトリクスを形成するために使用され得る。イオン結合また共有結合によっ
て架橋可能な合成ポリマーを使用することもまた、可能である。
【0037】
(フィブリンマトリクス)
フィブリンは、いくつかの生物学的適用に関して報告された、天然材料である。フィブ
リンは、Hubbellらに対する米国特許第6,331,422号において、細胞内方
増殖マトリクスのための材料として記載されている。フィブリンゲルは、その多くの組織
に結合する能力および損傷治癒におけるその天然の役割に起因して、シーラントとして使
用されている。いくつかの特定の適用としては、血管移植片付着、心臓弁付着、骨折にお
ける骨の配置、および腱修復のためのシーラントとしての使用が挙げられる(Sierr
a,D.H.,Journal of Biomaterials Applicati
ons,7:309−352(1993))。さらに、これらのゲルは、薬物送達デバイ
スとして、および神経再生のために、使用されている(Williamsら、Journ
al of Comparative Neurobiology,264:284−2
90(1987))。フィブリンは、組織の再生および細胞の内方増殖のための固体支持
体を提供するが、これらのプロセスを直接増強するモノマーにおいて、活性な配列はほと
んど存在しない。
【0038】
フィブリノゲンがフィブリンに重合するプロセスもまた、特徴付けられている、最初に
、プロテアーゼが、二量体フィブリノゲン分子を2つの対称的な部位に切断する。フィブ
リノゲンを切断し得るいくつかの可能なプロテアーゼが存在し(トロンビン、レプチラー
ゼ、およびプロテアーゼIIIが挙げられる)、そして各々が、このタンパク質を異なる
部位で切断する(Francisら、Blood Cells,19:291−307,
1993)。一旦、フィブリノゲンが切断されると、自己重合工程が起こり、この工程に
おいて、フィブリノゲンモノマーが一緒になり、そして非共有結合で架橋したポリマーゲ
ルを形成する(Sierra,1993)。この自己集合は、プロテアーゼ切断が起こっ
た後に結合部位が曝露されるので起こる。一旦、これらの結合部位が曝露されると、分子
の中心にあるこれらの結合部位は、フィブリノゲン鎖上の他の部位(これらは、ペプチド
鎖の末端に存在する)と結合し得る(Stryer,L.In Biochemistr
y,W.H.Freeman & Company,NY,1975)。この様式で、ポ
リマーネットワークが形成される。次いで、第XIIIa因子(トロンビンタンパク質分
解によって第XIII因子から活性化されたトランスグルタミナーゼ)が、このポリマー
ネットワークに共有結合で架橋し得る。他のトランスグルタミナーゼが存在し、そして同
様に、フィブリンネットワークへの共有結合架橋およびグラフトに関与し得る。
【0039】
一旦、架橋フィブリンのゲルが形成されると、引き続く分解は、厳密に制御される。フ
ィブリンの分解を制御する際に主要な分子の1つは、α2−プラスミンインヒビターであ
る(Aoki,N.,Progress in Cardiovascular Dis
ease,21:267−286、1979)。この分子は、第XIIIa因子の作用を
介してフィブリンのα鎖に架橋することによって、作用する(Sakataら、Jour
nal of Clinical Investigation,65:290−297
,1980)。それ自体をゲルに付着させることによって、高濃度のインヒビターが、ゲ
ルに局在し得る。次いで、このインヒビターは、プラスミノゲンのフィブリンへの結合を
防止すること(Aokiら、Thrombosis and Haemostasis,
39:22−31,1978)、およびプラスミンを不活性化すること(Aoki,19
79)によって作用する。α2−プラスミンインヒビターは、グルタミン基質を含む。正
確な配列は、NQEQVSPL(配列番号12)として同定されており、最初のグルタミ
ンが、架橋のための活性アミノ酸である。
【0040】
二ドメインペプチド(これは、第XIIIa因子基質配列および生物活性ペプチド配列
を含む)がフィブリンゲルに架橋し得ること、およびこの生物活性ペプチドは、インビト
ロで、その細胞活性を保持することが、実証された(Schense,J.C.ら(19
99)Bioconj.Chem.10:75−81)。
【0041】
(合成マトリクス)
身体への適用のための合成マトリクスを形成するための架橋反応としては、以下が挙げ
られる:(i)不飽和二重結合を含む2つ以上の前駆体間でのフリーラジカル重合(例え
ば、Hernら,J.Biomed.Mater.Res.39:266−276(19
98)に記載される)、(ii)例えば、アミン基を含む前駆体とスクシンイミジル基を
含む前駆体との間でのような、求核置換反応(Rheeらに対する米国特許第5,874
,500号に開示される)、(iii)縮合および付加反応、ならびに(iv)強い求核
試薬と共役不飽和基または結合(強い求電子試薬として)との間の、Michael型付
加反応。特に好ましいものは、求核性基としてのチオール基またはアミン基を有する前駆
体分子と、求電子性基としてのアクリレート基またはビニルスルホン基を含む前駆体分子
との間の反応である。求核性基として最も好ましいものは、チオール基である。Mich
ael型付加反応は、Hubbellらに対するWO00/44808に記載されており
、その内容は、本明細書中に参考として援用される。Michael型付加反応は、感受
性の生物学的物質の存在下でさえも、少なくとも第一および第二の前駆体成分の、生理学
的条件下での、自己選択的様式でのインサイチュでの架橋を可能にする。前駆体成分の1
つが少なくとも2つの官能基を有し、そして他の前駆体のうちの少なくとも1つが2つよ
り多い官能基を有する場合、この系は、自己選択的に反応して、架橋した三次元生体物質
を形成する。
【0042】
好ましくは、共役不飽和基または共役不飽和結合は、アクリレート、ビニルスルホン、
メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルスルホ
ン、2−ビニルピリジニウムもしくは4−ビニルピリジニウム、マレイミド、またはキノ
ンである。
【0043】
吸核性基は、好ましくは、チオール基、アミノ基、またはヒドロキシル基である。チオ
ール基は、プロトン化されていないアミン基より実質的により反応性である。先に言及さ
れたように、pHは、この点に関して重要である:脱プロトン化チオールは、プロトン化
チオールより、実質的により反応性である。従って、2つの前駆体成分をマトリクスに変
換するための、共役不飽和(例えば、アクリレートまたはキノン)を含む、チオールとの
付加反応は、しばしば、約8のpHで、最も迅速に、かつ自己選択的に、最良に実施され
る。約8のpHにおいて、目的のチオールの大部分は、脱プロトン化され(従って、より
反応性であり)、そして目的のアミンのほとんどは、プロトン化された(従って、反応性
が低い)ままである。チオールが、第一の前駆体分子として使用される場合、アミンに対
するチオールについての反応性が選択的である共役構造が、非常に望ましい。
【0044】
適切な第一および第二の前駆体分子としては、タンパク質、ペプチド、ポリオキシアル
キレン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ
(アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−ビニルピロリドン)、ポリ(マレイン酸)、ポ
リ(エチレン−co−アクリル酸)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(ビニルピロリ
ドン)、ポリ(エチレン−co−マレイン酸)、ポリ(アクリルアミド)、およびポリ(
エチレンオキシド)−co−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマーが挙げられ
る。特に好ましい前駆体分子は、ポリエチレングリコールである。
【0045】
ポリエチレングリコール(PEG)は、便利な構築ブロックを提供する。線状(すなわ
ち、2つの末端を有する)または分枝鎖(すなわち、2つより多い末端を有する)のPE
Gを、容易に購入または合成し得、次いで、このPEGの末端基を官能基化して、強い求
核試薬(例えば、チオール)または共役構造(例えば、アクリレートまたはビニルスルホ
ン)のいずれかを導入し得る。これらの成分が、互いと、または対応する成分とのいずれ
かで、わずかに塩基性の環境で混合される場合、マトリクスは、第一の前駆体成分と第二
の前駆体成分との間での反応によって、形成される。PEG成分は、非PEG成分と反応
し得、そしていずれかの成分の分子量または親水性が、得られる生体物質の機械的特性、
浸透性、および水含有量を操作するために、制御され得る。
【0046】
これらの材料は、一般に、以下にさらに詳細に記載されるように、医用移植物において
有用である。マトリクス(特に、インビボで分解することが望ましいマトリクス)の形成
において、ペプチドは、非常に便利な構築ブロックを提供する。2つ以上のシステイン残
基を含むペプチドを合成することは、簡単であり、次いで、この成分は、求核性基を有す
る第一の前駆体成分として、容易に働き得る。例えば、2つの遊離システイン残基を有す
るペプチドは、PEGトリビニルスルホン(そのアームの各々にビニルスルホンを有する
3つのアームを有するPEG)と、生理学的pHまたはそれよりわずかに高いpH(例え
ば、8〜9)で混合される場合に、容易にマトリクスを形成する。ゲル化もまた、なおよ
り高いpHにおいて良好に進行し得るが、潜在的に、自己選択性を犠牲にする。2つの液
体前駆体成分が一緒に混合される場合、これらは、数分の時間で反応して、弾性ゲルを形
成し、このゲルは、ペプチドを連結リンクとして有するネットワークの節を保有する、P
EG鎖のネットワークからなる。このペプチドは、このネットワークが細胞によって浸潤
または分解され得る(タンパク質ベースのネットワーク(例えば、フィブリンマトリクス
)においてなされるように)ようにするための、プロテアーゼ基質として選択され得る。
好ましくは、ドメイン中の配列は、細胞移動に関与する酵素のための基質(例えば、コラ
ゲナーゼ、プラスミン、メタロプロテイナーゼ(MMP)またはエラスターゼのような酵
素に対する基質)であるが、適切なドメインは、これらの配列に限定されない。1つの特
に有用な配列は、酵素プラスミンに対する基質である(実施例を参照のこと)。ゲルの分
解性は、架橋節として働くペプチドの細部の変化によって操作され得る。コラーゲナーゼ
によって分解可能であるが、プラスミンによっては分解可能ではないゲル、またはプラス
ミンによって分解可能であるが、コラーゲナーゼによっては分解可能ではないゲルを、作
製し得る。さらに、酵素反応のKまたはkcat、あるいはその両方を変化させるよう
に、アミノ酸配列を単に変化させることによって、ゲル分解を、このような酵素に応答し
てより速く、またはより遅くすることが、可能である。従って、細胞の通常の再モデル化
特徴によって再モデル化され得る点で生体を模倣する、生体物質を作製し得る。例えば、
このような研究は、重要なプロテアーゼプラスミンのための基質部位を示す。ペプチドで
のPEGのゲル化は、自己選択的である。
【0047】
必要に応じて、生体機能性薬剤がマトリクスに組み込まれて、他の種(例えば、組織表
面)に対する化学結合を提供し得る。マトリクスにプロテアーゼ基質を組み込むことは、
このマトリクスがPEGビニルスルホンから形成される場合に、重要である。PEGアク
リレートおよびPEGチオールの反応から形成されるマトリクス以外の、PEGビニルス
ルホンおよびPEGチオールから形成されるマトリクスは、加水分解的に分解可能な結合
を含まない。従って、プロテアーゼ基質の組み込みは、このマトリクスが体内で分解する
ことを可能にする。
【0048】
合成マトリクスは、形成する操作が単純である。2つの液体前駆体が混合される;一方
の前駆体は、求核性基を有する前駆体分子を含み、そして他方の前駆体分子は、求電子性
基を含む。生理学的食塩水が、溶媒として働き得る。最小の熱が、反応によって発生する
。従って、ゲル化は、インビボまたはインビトロで、組織と直接接触して、都合の悪い毒
性を有することなく、実施され得る。従って、テレキーリックに(telechelic
ally)修飾されたかまたはこれらの側鎖基において修飾されたかのいずれかの、PE
G以外のポリマーが、使用され得る。
【0049】
ほとんどの治癒適応症について、マトリクス内への細胞の内方増殖または細胞の移動の
速度は、マトリクスの適合された分解速度と組み合わせて、治癒応答の全体について重大
である。加水分解的に分解不可能なマトリクスが細胞によって侵入される可能性は、主と
して、ネットワーク密度の関数である。分枝点または節の間に存在する空間が、細胞の大
きさに対して小さすぎる場合、あるいはマトリクスの分解(これは、マトリクス内でのよ
り多くの空間の作製を生じる)の速度が遅すぎる場合は、非常に制限された治癒応答が観
察される。天然に見出される治癒マトリクス(例えば、フィブリンマトリクスであって、
これは、体内の損傷に応答して形成される)は、細胞による侵入が非常に容易であり得る
、非常に緩いネットワークからなることが公知である。浸潤は、細胞接着のためのリガン
ド(これは、フィブリンネットワークの一部として統合される)によって促進される。
【0050】
合成親水性前駆体分子から作製されるマトリクスは、ポリエチレングリコールのように
、ポリマーネットワークの形成後に、水性環境において膨潤する。十分に短いゲル化時間
(7〜8の間のpHおよび36〜38℃の範囲の温度において3〜10分の間)および定
量的な反応を、体内でのマトリクスのインサイチュ形成の間に達成するために、前駆体分
子の開始濃度は、十分に高くなければならない。このような条件下では、ネットワーク形
成後の膨潤が起こらず、そして必要な開始濃度は、このマトリクスが水性環境において分
解可能ではない場合に、細胞浸潤のためには密度が高すぎるマトリクスをもたらす。従っ
て、ポリマーネットワークの膨潤は、分枝点の間の空間を拡大し、そして広くなることが
重要である。
【0051】
前駆体分子の出発濃度にかかわらず、同じ合成前駆体分子(例えば、4アームPEGビ
ニルスルホンおよびSH基を有するペプチド)から作製されるヒドロゲルは、平衡状態に
おいて、同じ水含有量に膨潤する。このことは、前駆体分子の開始濃度がより高いほど、
平衡状態に到達する場合のヒドロゲルの末端体積が高くなることを意味する。身体内で利
用可能な空間が、十分な膨潤を可能にするためには小さすぎる場合、特に、前駆体成分か
ら形成される結合が加水分解的に分解可能ではない場合、細胞浸潤の速度および治癒応答
は、遅くなる。その結果として、身体における適用のための2つの矛盾した要件の間の最
適条件が見出されなければならない。良好な細胞浸潤および引き続く治癒応答は、三官能
性分枝鎖ポリマーと、少なくとも3アームの実質的に類似の分子量の第二の前駆体分子(
これは、少なくとも二官能性分子である)との反応から形成される、三次元ポリマーネッ
トワークを用いて観察された。第一の前駆体分子と第二の前駆体分子との官能基の当量比
は、0.9と1.1との間である。第一の前駆体分子のアームの分子量、第二の前駆体分
子の分子量、および分枝点の官能基は、得られるポリマーネットワークの水含有量が、平
衡時の重量%と水の取り込みの完了後のポリマーネットワークの全重量の92重量%との
間であるように、選択される。好ましくは、水含有量は、水取り込み後のポリマーネット
ワークと水との総重量の、93重量%と95重量%との間である。水取り込みの完了は、
平衡濃度に達する場合、または生体物質において利用可能な空間がさらなる体積増加を可
能にしない場合のいずれかに、達成され得る。従って、可能な限り低い、前駆体成分の出
発濃度を選択することが好ましい。このことは、膨潤性の全てのマトリクスについてあて
はまるが、特に、細胞媒介分解を受け、そしてポリマーネットワーク中に加水分解的に分
解可能な結合を含まないマトリクスについてあてはまる。
【0052】
特に、加水分解的に分解不可能なゲルについて、ゲル化時間と低い出発濃度との間のバ
ランスは、前駆体分子の構造に基づいて最適化されるべきである。特に、第一の前駆体分
子のアームの分子量、第二の前駆体分子の分子量、および分枝の程度(すなわち、分枝点
の官能性)は、これらに従って調節されなければならない。実際の反応機構は、この相互
作用に対して、あまり影響を有さない。
【0053】
第一の前駆体分子が、各アームの末端に官能基を有する3アームまたは4アームのポリ
マーであり、そして第二の前駆体分子が、線状二官能性分子であり、好ましくは、少なく
とも2つのシステイン基を含むペプチドである場合、第一の前駆体分子のアームの分子量
、および第二の前駆体分子の分子量は、好ましくは、そのネットワークの形成後に、分枝
点の間の結合が、(結合が線状であり、分枝していない条件下で)10〜13kDの範囲
、好ましくは、11kDと12kDとの間の分子量を有するように選択される。このこと
は、第一の前駆体分子と第二の前駆体分子との合計の出発濃度が、(ネットワーク形成前
の)溶液中の第一および第二の前駆体分子の全重量の、8〜12重量%、好ましくは、9
重量%と10重量%との範囲にあることを可能にする。第一の前駆体成分の分枝の程度が
8に増加され、そして第二の前駆体分子が依然として線状二官能性分子である場合、分枝
点の間の結合の分子量は、好ましくは、18〜24kDaの間の分子量に増加される。第
二の前駆体分子の分枝の程度が、線状から3アームまたは4アームの前駆体成分に増加さ
れる場合、分子量(すなわち、結合の長さ)が、これに従って増加する。本発明の好まし
い実施形態において、第一の前駆体分子として三官能性の3アームの15kDポリマー(
すなわち、各アームが5kDの分子量を有する)、および第二の前駆体分子として0.5
〜1.5kDの範囲、なおより好ましくは、1kDの分子量の二官能性線状分子を含む、
組成が選択される。好ましくは、第一および第二の前駆体成分は、ポリエチレングリコー
ルである。
【0054】
好ましい実施形態において、第一の前駆体成分は、官能基として、共役不飽和基または
結合、最も好ましくはアクリレートまたはビニルスルホンを含み、そして第二の前駆体分
子の官能基は、求核性基(好ましくは、チオール基またはアミノ基)を含む。本発明の別
の好ましい実施形態において、第一の前駆体分子は、各アームの末端に官能基を有する、
4アームの20kD(各アームが、5kDaの分子量)のポリマーであり、そして第二の
前駆体分子は、1〜3kDの範囲、好ましくは1.5kDと2kDとの間の分子量の、二
官能性線状分子である。好ましくは、第一の前駆体分子は、ビニルスルホン基を有するポ
リエチレングリコールであり、そして第二の前駆体分子は、システイン基を有するペプチ
ドである。両方の好ましい実施形態において、第一の前駆体分子と第二の前駆体分子との
合計の出発濃度は、(ポリマーネットワーク形成前の)第一の前駆体分子および第二の前
駆体分子ならびに水の全重量の、8〜11重量%の範囲、好ましくは、9重量%と10重
量%との間であり、10分未満のゲル化時間を達成するためには、好ましくは、5重量%
と8重量%との間である。これらの組成物は、pH8.0および37℃で、混合後約3〜
10分のゲル化時間を有する。
【0055】
マトリクスが、加水分解的に分解可能な結合を含む場合、形成される(例えば、アクリ
レートとチオールとの間での好ましい反応による)ネットワークの密度は、細胞浸潤に関
して、初期において特に重要であるが、水性環境において、結合が加水分解され、そして
ネットワークが緩み、細胞浸潤を可能にする。ポリマーネットワークの全体の分枝の程度
が増加すると、相互結合の分子量(すなわち、結合の長さ)が増加しなければならない。
【0056】
(B.細胞付着部位)
細胞は、細胞表面において、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−オリゴ糖
相互作用、およびタンパク質−多糖相互作用を介して、それらの環境と相互作用する。細
胞外マトリクスタンパク質は、細胞に対する宿主の生物活性信号を提供する。この密なネ
ットワークは、細胞を支持するために必要とされ、そしてマトリクス中の多くのタンパク
質が、細胞の接着、拡散、移動および分化を制御することが示されている(Carey,
Annual Review of Physiology,53:161−177,1
991)。特に活性であることが示された特定のタンパク質のいくつかとしては、ラミニ
ン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノゲンおよびコラーゲン
が挙げられる(Lander,Journal of Trends in Neuro
logical Science,12:189−195,1989)。ラミニンの多く
の研究が実施され、そしてラミニンが、インビボで神経の、そしてインビトロで神経細胞
の、発達および再生において(Williams,Neurochemical Res
earch,12:851−869,1987)、ならびに新脈管形成において、重要な
役割を果たすことが示された。
【0057】
細胞レセプターと直接相互作用し、そして接着、拡散またはシグナル伝達のいずれかを
引き起こす、特異的配列のいくつかが、同定されている。
【0058】
ラミニン(大きい多ドメインタンパク質)(Martin,Annual Revie
w of Cellular Biology,3:57−85,1987)は、いくつ
かのレセプター結合ドメインを有する3つの鎖からなることが示された。これらのレセプ
ター結合ドメインとしては、ラミニンB1鎖のYIGSR(配列番号2)配列(Graf
ら,Cell,48:989−996,1987;Kleinmanら,Archive
s of Biochemistry and Biophysics,272:39−
45,1989;およびMassiaら,J.of Biol.Chem.,268:8
053−8059,1993)、ラミニンA鎖のLRGDN(配列番号3)(Ignat
iusら,J.of Cell Biology,111:709−720,1990)
ならびにラミニンB1鎖のPDGSR(配列番号4)(Kleinmanら,1989)
が挙げられる。細胞に対するいくつかの他の認識配列もまた、同定されている。これらと
しては、ラミニンA鎖のIKVAV (配列番号5)(Tashiroら,J.of B
iol.Chem.,264:16174−16182,1989)およびラミニンB2
鎖の配列RNIAEIIKDI (配列番号6)(Liesiら,FEBS Lette
rs,244:141−148,1989)が挙げられる。これらの特異的配列に結合す
るレセプターもまた、しばしば同定されている。この結合の大部分の原因であることが示
された細胞レセプターのサブセットは、インテグリンスーパーファミリーである(Rou
slahti,E.,J.of Clin.Investigation,87:1−5
,1991)。インテグリンは、αサブユニットおよびβサブユニットからなる、タンパ
ク質ヘテロダイマーである。以前の研究は、トリペプチドRGDが、いくつかのβ1イン
テグリンおよびβ3インテグリンに結合すること(Hynes,R.O.,Cell,6
9:1−25,1992;Yamada,K.M.,J.of Biol.Chem.,
266:12809−12812,1991)、IKVAV(配列番号5)が110kD
aレセプターに結合すること(Tashiroら、J.of Biol.Chem.,2
64:16174−16182,1989);Luckenbill−Eddsら,Ce
ll Tissue Research,279:371−377,1995)、YIG
SR(配列番号2)が67kDaレセプターに結合すること(Grafら,1987)お
よびDGEA(配列番号7)(コラーゲン配列)がα,βインテグリンに結合するこ
と(ZutterおよびSantaro,Amer.J.of Patholody,1
37:113−120,1990)を示した。RNIAEIIKDI(配列番号6)配列
に対するレセプターは、報告されていない。
【0059】
さらなる好ましい実施形態において、細胞接着のためのペプチド部位は、マトリクスに
組み込まれる。すなわち、細胞の表面の接着促進レセプターに結合するペプチドが、本発
明の生体物質に組み込まれる。このような接着促進ペプチドは、上記のような群より選択
され得る。特に好ましいものは、フィブロネクチン由来のRGD配列、ラミニン由来のY
IGSR(配列番号2)配列である。細胞付着部位の組み込みは、合成マトリクスを用い
る特に好ましい実施形態であるが、天然のマトリクスのいくつかにもまた含められ得る。
組み込みは、例えば、システイン含有細胞付着ペプチドを、共役不飽和基を含む前駆体分
子(例えば、PEGアクリレート、PEGアクリルアミド、またはPEGビニルスルホン
)と単に混合し、その数分後に、求核性基(例えば、チオール含有前駆体成分)を含む前
駆体成分の残りのものと混合することによって、なされ得る。細胞付着部位がシステイン
を含まない場合、この部位は、システインを含むように化学的に合成され得る。この第一
の工程の間、接着促進ペプチドは、共役不飽和で多重に官能基化された前駆体の1つの末
端に組み込まれる;残りの複数のチオールが系に添加される場合、架橋したネットワーク
が形成される。ネットワークがここで調製される様式の別の重要な意味は、ペンダント生
物活性リガンド(例えば、接着シグナル)の組込みの効率である。この工程は、定量的で
ある。なぜなら、例えば、未結合リガンド(例えば、接着部位)は、マトリクスとの細胞
の相互作用を阻害し得るからである。以下に記載されるように、このようなペンダントオ
リゴペプチドでの前駆体の誘導体化は、第一の工程で、チオールに対して化学量論的に大
過剰(最小40倍)のマルチアーム求電子前駆体で実施され、従って、全く定量的である

【0060】
望まれない阻害を防止することは別として、この達成は、生物学的になおより重要であ
る:細胞の挙動は、リガンド密度の小さい変化に極端に感受性であり、そして組み込まれ
るリガンドの正確な知識は、細胞−マトリクス相互作用を設計および理解する助けになる
。要約すると、マトリクス内に共有結合した接着部位の濃度は、細胞浸潤の速度に有意に
影響を与える。例えば、所定のヒドロゲルについて、RGD濃度範囲は、細胞の内方増殖
および細胞の移動を、最適な様式で支持しながら、マトリクスに組み込まれ得る。RGD
のような接着部位の最適な濃度範囲は、0.04mMと0.05mMとの間であり、そし
てなおより好ましくは、特に、水の取り込みの終了後に平衡濃度と92重量%との間の水
含有量を有するマトリクスについて、0.05mMである。
【0061】
優れた骨治癒の結果は、細胞の移動速度およびマトリクスの分解速度を速く維持するこ
とによって、達成され得る。マトリクスの設計(特に、共有結合したPTH1−34)に
関して、プロテアーゼ分解部位GCRPQGIWGQDRC(配列番号8)と架橋した、
約20,000Daの分子量を有する4アームポリエチレングリコール、および0.05
0mMのGRGDSP(配列番号9)は、特に良好な細胞内方増殖結果および骨欠損の治
癒を与える。PEGおよびペプチドの出発濃度は、(膨潤前の)分子と水との総重量の1
0重量%未満である。このゲルは、利用可能な一貫性を有し、そして骨芽細胞および前駆
細胞がマトリクスに容易に浸潤することを可能にする。
【0062】
マトリクス材料は、好ましくは、天然に存在する酵素によって生分解性である。分解速
度は、架橋の程度およびマトリクス中のプロテアーゼインヒビターの含有によって操作さ
れ得る。
【0063】
(C.架橋性基質ドメイン)
PTH融合ペプチドは、架橋され得、そしてPTH融合ペプチドの架橋性基質ドメイン
を通じてマトリクスに共有結合し得る。基質ドメインの種類は、マトリクスの性質に依存
する。フィブリンマトリクスへの組み込みについて、トランスグルタミナーゼ基質ドメイ
ンが特に好ましい。トランスグルタミナーゼ基質ドメインは、第XIIIa因子基質ドメ
インであり得る。この第XIIIa因子基質ドメインは、GAKDV(配列番号10)、
KKKK(配列番号11)、またはNQEQVSPL(配列番号12)を含み得る。PT
Hとトランスグルタミナーゼ基質ドメインとの間のカップリングは、化学合成により実施
され得る。
【0064】
トランスグルタミナーゼ基質ドメインは、第XIIIa因子以外のトランスグルタミナ
ーゼの基質であり得る。最も好ましい第XIIIa因子基質ドメインは、アミノ酸配列N
QEQVSPL(配列番号12)(本明細書中では「TG」と称する)を有する。トラン
スグルタミナーゼを認識する他のタンパク質(例えば、フィブロネクチン)は、トランス
グルタミナーゼ基質ペプチドにカップリングされ得る。
【0065】
(表1:トラスグルタミナーゼ基質ドメイン)
【0066】
【表1】


合成前駆成分から形成されるマトリクスへのPTHの組み込みについては、PTH融合
ペプチドまたは組み込まれる任意の他のペプチドは、架橋性基質ドメインとして、少なく
とも1つのさらなるシステイン基(−SH)と共に(好ましくはPTHのN末端に)合成
されなければならない。システインは、PTHに直接結合され得るかまたはリンカー配列
を通してであり得る。リンカー配列はさらに、酵素分解可能なアミノ酸配列を含み得、そ
の結果、PTHは、実質的にネイティブ形態で、酵素によりマトリクスから切断され得る
。遊離システイン基は、Michael型付加反応において前駆成分の結合体化不飽和基
と反応する。PTH1〜34の場合、PTH1〜34についての合成マトリクスへの束縛
(bondage)は、少なくとも1つのシステインを含むPTH1〜34のN末端にさ
らなるアミノ酸配列を結合することにより可能とされる。システインのチオール基は、合
成ポリマーにおける結合体化不飽和結合と反応し、共有結合を形成し得る。おそらく、(
a)システインのみがペプチドに結合され(b)酵素分解可能な、特にプラスミン分解可
能な配列は、システインとペプチドとの間のリンカーとして結合される。第1ドメインと
第2ドメイン、システインとの間の配列GYKNR(配列番号15)は、連結をプラスミ
ン分解性にする。
【0067】
このように、PTH融合ペプチドはさらに、接着部位、すなわち第2のドメイン(すな
わち、因子Xllla基質ドメインまたはシステイン)と、PTH、すなわち、第1ドメ
インとの間に、分解可能な部位を含むように、修飾され得る。これらの部位は、非特異的
加水分解(すなわち、エステル結合)によって、分解可能であり得るか、またはそれらの
部位は、特異的酵素的(タンパク質分解または多糖類の分解)分解のための基質になり得
る。これらの分解可能な部位は、フィブリンゲルのようなマトリクスからPTHのより特
異的な放出の操作を可能にする。例えば、酵素活性に基づいた分解は、PTHの放出が、
そのゲルを通る因子の拡散によってではなく、細胞工程によって制御されることを可能に
する。分解可能な部位または結合部位は、マトリクスに浸入する細胞から放出される酵素
によって切断される。
【0068】
分解可能な部位によって、PTHは、第1ペプチド配列にほとんどまたは全く修飾を持
たずに放出され、その結果、その因子のより高い活性を生じ得る。さらに、分解部位は、
因子の放出が、幾つかの多孔性材料からの拡散ではなく、例えば局在化タンパク質分解の
ような細胞特異的工程によって制御されることを可能にする。これによって、因子はこの
材料内の細胞の位置に依存して、同じ材料内に異なった割合で放出される。このことはま
た、その放出が細胞工程によって制御されるので、必要な総PTHの量を減少させる。P
THおよびそのバイオアベイラビリティーの保存は、拡散制御放出装置の使用における、
細胞特異的タンパク質分解活性を利用するための別の利点である。マトリクスに共有結合
するPTHを用いる骨欠損の強力な治癒のための1つの可能な説明において、PTHは長
時間の間に(すなわち単一パルス量ではなく)、しかし持続的な様式ではなく、局所的に
投与されることが重要であるとみなされる。このことは、マトリクスの酵素的切断または
加水分解的切断による、緩やかな分解によって完遂される。このように、その分子は次に
、持続時間に渡って生じる偽パルス効果を通して送達される。先祖細胞がマトリクスを浸
潤するとき、その細胞はPTH分子に遭遇し、前骨芽細胞に分化し得る。しかしながら、
その特定の細胞が、マトリクスから結合PTHを遊離し続けなければ、その細胞は、効果
的に骨芽細胞に変換され、骨マトリクスを産生し始める。最終的に、そのペプチドの治療
的効果は、欠損領域に局在し、その結果、拡大される。
【0069】
タンパク質分解(Proteolytic degradation)に使用され得る
酵素は非常に多数である。タンパク質分解可能部位は、コラゲナーゼ、プラスミン、エラ
スターゼ、ストロメリシン、またはプラスミノーゲンアクチベーターのための基質を含み
得る。例示的な基質は下記の表に示される。P1〜P5は、タンパク質分解が起こる部位
からタンパク質のアミノ末端に向かうアミノ酸の1位〜5位を表す。P1’〜P4’は、
タンパク質分解が起こる部位からタンパク質のカルボキシ末端に向かうアミノ酸の1位〜
4位を表す。
【0070】
(表2:プロテアーゼに対するサンプル基質配列)
【0071】
【表2】




別の好ましい実施形態において、オリゴ−エステルドメインは、第1ドメインと第2ド
メインとの間に挿入され得る。これは、乳酸のオリゴマーのようなオリゴ−エステルを用
いて達成される。
【0072】
非酵素的分解基質は、酸または塩基の触媒メカニズムによって、加水分解を行う任意の
連結からなり得る。これらの基質は、乳酸またはグリコール酸のオリゴマーのようなオリ
ゴ−エステルを含み得る。これらの物質の分解率は、オリゴマーの選択によって制御され
得る。
【0073】
(D.PTH)
本明細書中に記載される場合、用語「PTH」は、生物学的に分解可能な天然マトリク
スまたは合成マトリクスに共有結合する場合、骨形成の特質を示す、PTH1〜84なら
びにPTHの全ての短縮されたバージョン、修飾を受けたバージョンおよび対立形質バー
ジョンのヒト配列を含む。PTHの好ましい短縮化バージョンは、PTH1〜38、PT
H1〜34、PTH1〜31またはPTH1〜25である。最も好ましくは、PHH1−
34である。好ましくは、PTHはヒトPTHである、ウシPTHのような、他の供給源
由来のPTHが適切であり得る。
【0074】
(生物活性因子の取り込みおよび/または放出のための方法)
PTHのマトリクス内への取り込みに関する1つの好ましい実施形態において、マトリ
クスは、フィブリノゲンから形成されるフィブリン、カルシウム供給源およびトロンビン
を含い、そしてPTH融合ペプチドは、凝固中にフィブリン内に取り込まれる。PTH融
合ペプチドは、2つのドメイン、すなわち、第1ドメインと第2ドメインを含む融合タン
パク質として設計される。1つのドメイン、すなわち第2ドメインは、第XIIIa因子
のような酵素のための基質である。第XIIIa因子は、凝固中に活性化されるトランス
グルタミナーゼである。この酵素は、トロンビンによる切断によって第XLLLa因子か
ら自然に形成され、グルタミン側鎖とリジン側鎖との間に形成されるアミド結合を通じて
、互いにフィブリン鎖に結合する機能を有する。酵素はまた、凝固中にフィブリン(例え
ば、細胞結合部位)に他のペプチドを結合するように機能し、ただし、この細胞結合部位
は、第XIIIa因子をまた含む。
【0075】
特に、配列NQEQVSP(配列番号16)は、第VIIIa因子の有効な基質として
機能することが示さている。本明細書中に記載されるように、その配列がPTHに直接結
合する前か、またはPTH(第1ドメイン)とNQEQVSP(配列番号16)配列(第
2ドメイン)との間の分解部位を含み得る。このように、PTH融合ペプチドは、第XI
IIa因子基質を通じて、凝固中にフィブリン内に取り込まれ得る。
【0076】
(取り込みのための融合タンパク質の設計)
PTHを含む第1ドメイン、架橋酵素に対する基質ドメインを含む第2ドメインおよび
必要に応じて第1ドメインと第2ドメインとの間にある分解部位を含むPTH融合ペプチ
ドは、幾つかの異なるスキームを用いてフィブリンゲル内に取り込まれ得る。好ましくは
、第2ドメインは、トランスグルタミナーゼ基質ドメインを含み、よりさらに好ましくは
、第2ドメインは第XIIIa因子基質ドメインを含む。最も好ましくは、第XIIIa
因子基質ドメインは、NQEQVSP(配列番号16)を含む。このPTH融合ペプチド
が、フィブリノゲンの重合の間、(すなわち、フィブリンマトリクスの形成の間)に存在
する場合、その融合ペプチドは、マトリクス内に直接取り込まれる。
【0077】
PTH融合ペプチドの第1ドメインと第2ドメインとの間の分解部位は、先に記載され
るように酵素的分解部位であり得る。好ましくは、この分解部位は、プラスミンおよびマ
トリクスメラロプロテイナーゼからなる群より選択される酵素によって切断可能である。
この酵素的分解部位のKおよびKcatの注意深い選択によって、タンパク質マトリク
スの前または後のいずれかで、そして/あるいはマトリクスを分解するための類似の酵素
または異なる酵素を利用することによって、分解は、生じるように制御され得、分解部位
の配置は、各々のタイプのタンパク質および適用に対して変更される。このPTH融合ペ
プチドは、上記のフィブリンマトリクス内に直接架橋され得る。しかし、酵素分解部位を
組み込むことは、タンパク質分解の間のPTHの放出を変更する。細胞由来のタンパク質
が、隔離された融合タンパク質に達する場合、これらは、新たに形成された分解部位にお
いて操作されたタンパク質を切断し得る。得られた分解産物は、遊離されたPTHを含み
、この遊離されたPTHは、ここで、いかなる操作された融合配列も、いかなる分解フィ
ブリンもほとんど含まない。
【0078】
(II.使用方法)
マトリクスは、組織の修復、再生、もしくは再構築のため、そして/またはPTHの放
出のために、移植の前または移植のときに使用され得る。いくつかの場合において、移植
部位においてマトリクスを組織に適合させるために、投与の部位に架橋を誘導することが
望ましい。他の場合において、移植の前に、マトリクスを調製することが便利である。
【0079】
細胞はまた、移植の前または移植のときに、または移植の後においてさえ、マトリクス
を形成するためのポリマーの架橋のときまたは架橋の後のいずれかで、マトリクスに添加
され得る。これは、細胞増殖または内方増殖(in−growth)を促進するために設
計された間隙空間を作り出すために、マトリクスを架橋する事に加えて、またはマトリク
スの架橋の代わりであり得る。
【0080】
大部分の場合において、細胞の増殖(growth)または増殖(prolifera
tion)を促進するためにマトリクスを移植することが望ましいものの、いくらかの場
合において、細胞増殖の速度を抑制するために生物活性因子が使用される。特定の適用は
、手術後の癒着の形成を抑制することである。
【0081】
(III.適用の方法)
好ましい実施形態において、この物質は、インサイチュまたは身体の中もしくは身体上
でゲル化される。別の実施形態において、このマトリクスは、身体の外側で形成され得、
次いで、予め形成された形状で適用される。マトリクス物質は、合成または天然の前駆体
組成物から作製され得る。使用される前駆体組成物の種類とは無関係に、前駆体成分は、
身体への混合物の適用の前に分離され、成分の重合またはゲル化を可能にする条件下での
互いの混合または接触を防止されるべきである。投与より前の接触を避けるために、組成
物を互いに分離させるキットが、使用され得る。重合を可能にする条件下での混合の際に
、この組成物は、生体活性因子を補充された三次元ネットワークを形成する。前駆体組成
物およびそれらの濃度に依存して、ゲル化は、混合の後、半瞬間的に生じ得る。このよう
な迅速なゲル化は、注入(すなわち、注射針を通してのゲル化物質の押し込み)をほとん
ど不可能なものにする。
【0082】
1つの実施形態において、このマトリクスは、フィブリノゲンから形成される。フィブ
リノゲンは、適切な温度およびpHにおいてトロンビンおよびカルシウム供給源と接触さ
れる場合、種々のカスケードを介してゲルと反応し、マトリクスを形成する。3つの成分
(フィブリノゲン、トロンビン、およびカルシウム供給源)は、別々に保存されるべきで
ある。しかし、3つの成分のうちの少なくとも1つが分離されている限り、他の2つの成
分は、投与前に混合され得る。
【0083】
第1の実施形態において、フィブリノゲンは、生理学的pH(pH6.5〜8.0、好
ましくは、pH7.0〜7.5の範囲)の緩衝溶液中で溶解され(これは、安定性を増加
させるためのアプロチニンをさらに含み得る)、そして塩化カルシウム緩衝液(例えば、
40〜50mMの濃度範囲)中のトロンビン溶液とは別個に保存される。フィブリノゲン
のための緩衝溶液は、ヒスチジン緩衝溶液であり得、これは、好ましい濃度は50mMで
あり、NaCl(150mMの好ましい濃度で)またはTRIS緩衝生理食塩水(好まし
くは、33mMの濃度)をさらに含む。
【0084】
好ましい実施形態において、融合タンパク質、フィブリノゲン、トロンビンおよびカル
シウム供給源を備えるキットが、提供される。必要に応じて、このキットは、架橋酵素(
例えば、第XIIIa因子)を備え得る。この融合タンパク質は、生体活性因子、架橋酵
素のための基質ドメイン、およびこの基質ドメインと生体活性因子との間の分解部位を含
む。この融合タンパク質は、フィブリノゲン溶液またはトロンビン溶液のいずれかの中に
存在し得る。好ましい実施形態において、フィブリノゲン溶液が、この融合タンパク質を
含む。
【0085】
これらの溶液は、好ましくは、2方向(two way)シリンジデバイスによって混
合され、このデバイスにおいて、混合は、混合チャンバおよび/または針および/または
静的ミキサーを介して、両方のシリンジの内容物を押し込むことによって生じる。
【0086】
好ましい実施形態において、フィブリノゲンおよびトロンビンの両方が、凍結乾燥形態
で別個に保存される。これら2つのうちいずれかが、融合タンパク質を含み得る。使用前
に、トリス緩衝液またはヒスチジン緩衝液がフィブリノゲンに添加され、この緩衝液は、
アプロチニンをさらに含み得る。凍結乾燥トロンビンは、塩化カルシウム溶液中に溶解さ
れ得る。引き続いて、フィブリノゲン溶液およびトロンビン溶液は、別個の容器/バイア
ル/シリンジ本体中に配置され、2方向接続デバイス(例えば、2方向シリンジ)によっ
て混合される。必要に応じて、容器/バイアル/シリンジ本体は、2分され、従って、シ
リンジ本体壁に対して垂直な調節可能区画によって隔てられた2つのチャンバを有する。
これらのチャンバのうち1つは、凍結乾燥されたフィブリノゲンまたはトロンビンを含み
、一方で、他方のチャンバは、適切な緩衝溶液を含む。プランジャーが押し下げられると
、この区画は移動し、そしてフィブリノゲンチャンバ中に緩衝液を放出して、フィブリノ
ゲンを溶解する。一旦、フィブリノゲンおよびトロンビンの両方が溶解されると、両方の
2分シリンジ本体は、2方向接続デバイスに装着され、そして接続デバイスに装着された
注射針を通して内容物を押し込むことによって、内容物が混合される。必要に応じて、こ
の接続デバイスは、内容物の混合を改善するための、静的ミキサーを備える。
【0087】
好ましい実施形態において、混合前に、フィブリノゲンは8倍希釈され、そしてトロン
ビンは20倍希釈される。この比率は、約1分のゲル化時間を生じる。
【0088】
別の好ましい実施形態において、このマトリクスは、Michael付加反応を受け得
る合成前駆成分から形成される。求核性前駆成分(マルチチオール(multithio
l))のみが、塩基性pHでマルチアクセプター(multiacceptor)成分(
結合体化された不飽和基)と反応するので、混合前に別々に保存されるべき3つの成分は
、以下である:塩基、求核成分およびマルチアクセプター成分。マルチアクセプター成分
およびマルチチオール成分の両方が、緩衝液中の溶液として保存される。両方の成分が、
細胞接着部位およびさらに生体活性分子を含み得る。従って、この系の第一組成物として
は、例えば、求核成分の溶液が挙げられ得、そしてこの系の第二組成物としては、マルチ
アクセプター成分の溶液が挙げられ得る。これら2つの成分のいずれかまたは両方が、塩
基を含み得る。別の実施形態において、このマルチアクセプターおよびマルチチオールは
、第一組成物中に溶液として含まれ得るか、または第二組成物が塩基を含み得る。接続お
よび混合が、フィブリノゲンについて以前に記載したのと同じ様式で生じる。二分シリン
ジ本体は、合成前駆成分について等しく適切である。フィブリノゲンおよびトロンビンの
代わりに、マルチアクセプター成分およびマルチチオール成分は、チャンバの1つに粉砕
形態で保存され、そして他方のチャンバは、塩基性緩衝液を含む。
【0089】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。組成物および
方法が、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、本発明の概念、精神および範囲か
ら逸脱することなく、本明細書中に記載される組成物および方法、ならびに本明細書中に
記載される方法の工程または一連の工程に、バリエーションが適用され得ることが、当業
者に明らかである。
【実施例】
【0090】
(実施例1:共有結合したTGPTHを含むマトリクス)
(TGPTHの合成)
完全タンパク質と類似の活性を示すPTH1〜34マーペプチド、およびこの長さのタ
ンパク質を、標準的な固相ペプチド合成法によって合成し得る。
【0091】
全てのペプチドを、自動化ペプチド合成機を使用し、標準的な9−フルオレニルメチル
オキシカルボニル化学を使用して、固体樹脂上で合成した。ペプチドを、c18クロマト
グラフィーによって精製し、そして逆相クロマトグラフィーをHPLCを介して使用して
純度を決定し、そして質量分析(MALDI)によって各生成物の分子量を同定した。こ
の方法を使用して、以下のペプチド(本明細書中で「TGPTH」という)を合成した:
【0092】
【化1】


(インビボの結果)
骨再生を増強するTGPTHの活性を、TISSUCOL(登録商標)マトリクスにお
いて、ヒツジドリル穴欠損(sheep drill holl defect)におい
て試験した。12mmの深さの8mmの穴を、ヒツジの近位および遠位の大腿および上腕
に作成した。これらの穴を、インサイチュ重合化フィブリンゲルで満たした。欠損を、空
のままにし、TISSUCOL(登録商標)で満たすか、またはTGPTHを、重合化の
前に400μg/mLでTISSUCOL(登録商標)フィブリンに添加した。TISS
UCOL(登録商標)が使用された各例において、これを、標準的な利用可能な濃度から
4倍希釈し、12.5mg/mLのフィブリノゲン濃度にした。
【0093】
この欠損は、8週間で治癒し得た。この治癒期間の後、動物を屠殺し、骨サンプルを取
り出してマイクロコンピュータトポグラフィー(μCT)によって分析した。次いで、石
灰化した骨組織で充填された欠損容積の割合を決定した。欠損が空のままの場合、フィブ
リンマトリクスの内部に石灰化した組織は形成しなかった。フィブリンゲルのみが添加さ
れた場合、同様に、実質的に骨は治癒されなかった。しかし、400μg/mLのTGP
THを添加すると、石灰化した骨で欠損の35%が充填され、治癒レベルは劇的に上昇し
た。
【0094】
(実施例2:フィブリンマトリクスに結合した改変PTH 1−34での治癒応答)
(材料)
フィブリンマトリクス内に組み込まれ得る改変バージョンのPTH1−34を、致命的
な大きさのラット頭蓋欠損における治癒応答について試験した。
【0095】
フィブリンゲルをTISSUCOL(登録商標)キット(Baxter AG,CH−
8604 Volketswil/ZH)のフィブリン封入剤前駆体成分から作製した。
フィブリノゲンを0.03Mの滅菌Tris緩衝化溶液(TBS、pH7.4)に希釈し
て約8mg/mLの溶液を生成し、そして、トロンビンを50mMの滅菌CaCl溶液
に希釈して2U/mL溶液を生成した。フィブリノゲンの最終濃度は、1:8オリジナル
TISSUCOL(登録商標)処方物(約100mg/mL)であり、そして1:160
オリジナルTISSUCOL(登録商標)トロンビン濃度(約500IE/mL)であっ
た。次いで、前もって決定された量のTG−pl−PTH1−34またはTGPTH1−
34をトロンビンに添加し、混合して均質な濃度を生成した。
【0096】
フィブリンゲルを生成するために、希釈した前駆体をトロンビンを含むチューブ内にフ
ィブリノゲンを注入することによって一緒に混合した。(以下に記載される)ヒツジドリ
ル欠損の場合、次いで、直ちにこの混合物をヒツジ海綿骨内に形成されたドリル欠損内に
注入し、ここで、1〜5分内にフィブリンゲルを形成した。動物実験の第1シリーズにお
いて、皮質骨の治癒におけるPTH1−34を含む融合タンパク質(NQEQVSPLY
KNRSVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF、配列
番号18)の生理活性因子としての効力を、小動物モデルにおいて試験した。配列YKN
R(配列番号19)は、分解性の連鎖プラスミン(“TG−pl−PTH1−34)を生じ
る。TG−pl−PTH1−34は、化学合成により作製した。対イオンとしてTFAを
使用する逆相HPLC(C18カラム)を通して精製を完了し、TFA塩である最終産物
を得た。TG−pl−PTH1−34の純度は95%と決定した。
【0097】
治癒応答を単治癒時間(3週間)および長治癒時間(7週間)の両方で調査し、治癒の
亢進が観察され得るかどうかを決定した。
【0098】
(ラットの致命的な大きさの頭蓋欠損)
ラットに麻酔し、頭蓋骨を露出した。頭蓋の外部表面の骨膜を撤回し、その結果、骨膜
は治癒プロセスにおいて役割を果たさず、そして、単一の8mm円形欠損を生じた。8m
mより大きい欠損が自発的にそれ自身によって治癒されず、そして致命的な大きさの欠損
であると以前に決定されたので、この欠損の大きさを選択した。次いで、この欠損を前も
って形成したフィブリンマトリクスで充填し、そして動物を3および7週間治癒させた。
次いで、この欠損領域を外植し、放射線学および組織学的に分析した。
【0099】
(結果)
TG−pl−PTH1−34を3週の時点で研究した場合、治癒のレベルは、フィブリ
ンマトリクス単体で観察されるものと非常に類似した。他の潜在的なモルフォゲン(rh
BMP−2を含む)が3週までに強力な治癒効果を示したできるだけ早い時点として、3
週の時点を選択した。対照的に、TG−pl−PTH1−34についでの治癒効果は、こ
の早い時点では観察され得なかった。しかし、より長い時点(7週)で分析される場合、
フィブリンマトリクスに改変したPTH1−34を添加する致命的な大きさのラット頭蓋
欠損における治癒において、中程度用量に依存する改善が観察された。結果を表3に示す
。高用量の改変PTH1−34を使用する場合、治癒応答は65%まで上昇した。
(表3:ラットの頭蓋欠損における改変PTHでの治癒応答)
【0100】
【表3】


これらの結果は、PTH1−34がフィブリンマトリクスに組み込まれる場合に、骨形成
における適度な増加によって証明されるようにいくらかの活性を保持することを実証する

【0101】
(ヒツジ骨ドリル欠損)
TG−pl−PTH1−34を、骨治癒に関するこのホルモンの効果を調べるために、
長い骨欠損モデルにおいても同様に試験した。ヒツジドリル欠損モデルにおいて、約15
mmの深さの8mmの円柱状のドリル欠損を、大腿骨および上腕骨の近位領域および遠位
領域の両方に配置した。欠損を長骨の骨端に配置したので、この欠損は、欠損の周縁に皮
質骨の薄層を有する小柱骨に囲まれた。次いで、これらの欠損を、種々の用量のTG−p
l−PTH1−34またはTGPTH1−34を含むインサイチュ重合化フィブリン(約
750μL)で充填した。動物を8週間治癒させ、次いで屠殺した。欠損をμCTおよび
組織学で分析した。
【0102】
実験のこのシリーズについて、3つの型の組成物を試験した。1番目に、TG−pl−
PTH1−34を大きな濃度範囲にわたって試験した。2番目に、分解部位を有さず、ア
ミノ末端にトランスグルタミナーゼ配列のみを有する別の改変PTH1−34、TGPT
1−34(NQEQVSPLSVSEIQLMHNLGKHLN SMERVEWLR
KKLQDVHNF;配列番号17)を使用した。したがって、TGPTH1−34は、
フィブリンマトリクス自身の分解によってのみ遊離され得る。TGPTH1−34を作製
し、TG−pl−PTH1−34と同様に精製した。純度は95%であると決定した。効
力を比較するために、TG−pl−PTH1−34と同様の濃度であったいくつかの濃度
でTGPTH1−34を試験した。最後に、TGPTH1−34またはTG−pl−PT
1−34のいずれかを有する顆粒状の物質の存在下でマトリクスを作製した。この顆粒
状の物質は、ゲル化の間にマトリクス中に包埋された標準的なリン酸三カルシウム/ヒド
ロキシアパタイト混合物であった。PTH1−34の効力に対するこれらの顆粒の添加の
効果を調べた。コントロールとして、改変していないフィブリンを試験した。
【0103】
(結果)
改変したPTH1−34分子のいずれかを長骨欠損内に配置した場合、フィブリンマト
リクス(コントロール)単独の使用よりも、治癒応答における有意な改善が観察された。
フィブリン単独の使用では、ほとんど治癒せず、最初の欠損の20%のみが新しく形成さ
れた骨で充填された。
【0104】
TG−pl−PTH1−34を、20〜1000μg/mLの濃度系列で試験した。試
験した各用量について、治癒応答における有意な増加が観察された。例えば、100μg
/mLのTG−pl−PTH1−34を使用した場合、治癒率はほぼ60%まで増加した

【0105】
実験の第2シリーズにおいて、TGPTH1−34を試験した。TGPTH1−34
使用はまた、骨治癒を増加させた。例えば、400μg/mLの使用は、治癒応答を40
%まで改善し、そして100μg/mLの使用は、骨治癒を65%まで増加させた。従っ
て、PTH1−34改変配列のいずれかの添加は、コントロールよりも強力な治癒応答を
生じた。
【0106】
最後に、改変PTH1−34分子のいずれかをマトリクスに結合し、顆粒/マトリクス
混合物を使用した場合、PTH1−34の効力は維持された。これは、TG−pl−PT
1−34(表4参照)およびTGPTH1−34(表5参照)の両方について試験した

【0107】
(表4:フィブリンマトリクス中に組み込まれたTG−pl−PTH1−34によるヒ
ツジドリル欠損の治癒;治癒時間8週間)
【0108】
【表4】


(表5:フィブリンマトリクス中に結合したPTH1−34によるヒツジドリル欠損の
治癒;治癒時間8週間)
【0109】
【表5】


組織学的評価は、細胞外マトリクスに支持される紡錐体および骨芽細胞前駆体細胞の最初
の欠損における高い浸潤を示した。大きな丸い骨芽細胞を有する活性類骨は一般的であり
、軟骨内の骨化組織(軟骨細胞)の徴候が観察された。8週までに、破骨細胞および再造
形の正常な徴候が見出され得た。しかし、合成PTHへの連続的な曝露から得られた結果
とは異なり、破骨細胞からの顕性応答は観察されず、そして新骨形成が欠損領域の内部ま
たは周辺での吸収よりも有意に多かった。外来物体炎症性反応は観察されなかった(すな
わち、巨細胞は存在せず、低刺激性の単球はわずかに存在した)。顆粒は、鉱物粒子(m
ineral particle)を添加してもなおサンプル中に存在した。
【0110】
(実施例3:合成マトリックスのための前駆体成分の調製)
(PEG−ビニルスルホンの調製)
市販の分岐(4アームPEG,分子量14,800,4アームPEG,分子量10,0
00および8アームPEG,分子量20,000;Shearwater Polyme
rs,Huntsville,AL,USA)を、OH末端で官能基化した。アルゴン雰
囲気下で、(予め、分子ふるいを通して乾燥させた)前駆体ポリマーのジクロロメタン溶
液をNaHと反応させ、次いで水素の放出後、ジビニルスルホン(モル比:OH 1:N
aH 5:ジビニルスルホン 50)と反応させることによって、PEGビニルスルホン
を生成した。この反応を、室温で3日間、アルゴン下で、絶え間なく攪拌しながら行った
。この反応溶液を、高濃度の酢酸で中和した後、この溶液を、透明になるまで紙を通して
濾過した。この誘導体化ポリマーを、氷冷ジエチルエーテル中で沈殿によって単離した。
この生成物を、ジクロロメタン中に再溶解し、(十分に洗浄して)ジエチルエーテル中に
2回再沈殿させ、全ての過剰なジビニルスルホンを除去した。最終的に、この生成物を、
真空下で乾燥させた。この誘導体化を、H NMRで確認した。この生成物は、6.2
1ppm(2つの水素)および6.97ppm(1つの水素)で、特徴的なビニルスルホ
ンピークを示した。末端基変換の程度は、100%と実測された。
【0111】
(PEGアクリレートの調製)
アルゴン雰囲気下で、共沸的に(azeotropically)乾燥させた前駆体ポ
リマーのトルエン溶液を、トリエチルアミンの存在下でアクリロイルクロライドと反応さ
せて(モル比:OH 1:アクリロイルクロライド 2:トリエチルアミン 2.2)、
PEGアクリレートを生成した。この反応を、室温で暗所で一晩攪拌して進行させた。生
じた淡黄色の溶液を、中性のアルミナベッドを通して濾過し;この溶媒をエバポレートし
た後、反応生成物をジクロロメタンに溶解し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ
、冷ジエチルエーテル中で沈殿させた。
【0112】
【化2】


(ペプチド合成)
全てのペプチドを、自動化ペプチドシンセサイザー(9050 Pep Plus S
ynthesizer, Millipore,Framingham,USA)を用い
て、標準的な9−フルオレニルメチルオキシカルボニル化学を用いて、固体樹脂上で合成
した。疎水性スカベンジャーおよび分割された保護基を、冷ジエチルエーテル中でのペプ
チドの沈殿および脱イオン水中への溶解によって、除去した。凍結乾燥後、これらのペプ
チドを、0.03Mトリス緩衝化生理食塩水(TBS,pH7.0)に再溶解させ、移動
緩衝液としてTBS,pH7.0を用いたサイズ排除カラムにおけるHPLC(Wate
rs;Milford,USA)を使用して、精製した。
【0113】
(共役付加反応によるマトリックス形成)
MMP感受性ゲルを、タンパク質分解性の細胞遊走を可能にするペプチド連鎖求核およ
びPEG連鎖共役不飽和を伴う共役付加によって、形成した。ゲルの合成を、ビニルスル
ホン官能基化PEG上に、チオールPEGのマイケル型付加反応を、全面的に介して達成
した。第一工程において、接着ペプチドを、マルチアームPEGビニルスルホンにペンダ
ント状に付着させ(例えば、ペプチド
【0114】
【化3】


(配列番号20))、次いで、この前駆体を、ジチオール含有ペプチド(例えば、MMP
基質
【0115】
【化4】


(配列番号21))と架橋した。3次元インビトロ研究のための代表的なゲル調製におい
て、4アームPEGビニルスルホン(分子量15000)を、TEOA緩衝液(0.3M
,pH8.0)に溶解し、10%(w/w)溶液を生じた。ゲル細胞接着性を与えるため
に、溶解したペプチド
【0116】
【化5】


(配列番号20))(同一緩衝液)を、この溶液に添加した。接着ペプチドを、37℃で
30分間反応させた。その後、架橋ペプチド
【0117】
【化6】


(配列番号21))を、上記の溶液に混合し、ゲルを合成した。このゲル化は、数分以内
に起こったが、完全反応を保証するために、この架橋反応を37℃で1時間行った。
【0118】
MMP非感受性ゲルを、非タンパク質分解性の細胞遊走を可能にする、PEG連鎖求核
試薬およびPEG連鎖共役不飽和を伴う共役付加によって形成した。
【0119】
このゲルの合成もまた、ビニルスルホン官能基化PEG上に、チオールPEGのマイケ
ル型付加反応を、全面的に介して達成した。第一工程において、接着ペプチドを、マルチ
アームPEGビニルスルホンにペンダント状に付着させ(例えば、ペプチド
【0120】
【化7】


(配列番号20))、次いで、この前駆体を、PEGジチオール(m.w.3.4kD)
と架橋させた。3次元インビトロ研究のための代表的なゲル調製において、4アームPE
Gビニルスルホン(分子量15000)を、TEOA緩衝液(0.3M,pH8.0)に
溶解し、10%(w/w)溶液を得た。ゲル細胞接着性を与えるために、溶解したペプチ

【0121】
【化8】


(配列番号20))(同一緩衝液)を、この溶液に添加した。この接着ペプチドを、37
℃で30分間反応させた。その後、このPEGジチオール前駆体を上記の溶液と混合し、
ゲルを合成した。このゲル化は、数分以内に起こったが、完全反応を保証するために、こ
の架橋反応を37℃で1時間行った。
【0122】
(縮合反応によるマトリックス形成)
MMP感受性ゲルを、タンパク質分解性の細胞遊走を可能にする、ペプチドXリンカー
含有複合アミンと親電子的活性PEGとの縮合反応によって形成した。
【0123】
MMP感受性ヒドロゲルもまた、2つのMMP基質を含むMMP感受性オリゴペプチド
と3つのLys(
【0124】
【化9】


(配列番号:22))ならびに市販(Shearwater polymers)の二官
能性二重エステル(difunctional double−ester)PEG−N
−ヒドロキシスクシンイミド(NHS−HBS−CM−PEG−CM−HBA−NHS)
との間の縮合反応を誘導することによって、生成した。第一工程において、接着ペプチド
(例えば、ペプチド
【0125】
【化10】


)(配列番号:20)を、NHS−HBS−CM−PEG−CM−HBA−NHSの小画
分と反応させ、次いでこの前駆体を、3つのεアミン(および1つの第一級アミン)を有
するペプチド
【0126】
【化11】


(配列番号:22)と混合することによって、網目構造に架橋させた。3次元インビトロ
研究のための代表的なゲル調製において、両成分を、pH7.4の10mM PBSに溶
解して10%(w/w)溶液を生じ、そして少なくとも1時間以内にヒドロゲルを形成し
た。
【0127】
細胞または組織のような生物学的物質中に存在するアミンはまた、二官能性の活性化二
重エステルと反応するので、マイケル型反応によって形成される現在のヒドロゲルとは対
照的に、このアプローチにおける所望の自己選択性は保証されない。このことはまた、求
電子機能性を有する他のPEG(例えば、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CD
I−PEG)またはPEGニトロフェニルカーボネート)に対しても当てはまる。
【0128】
非タンパク質分解性の細胞遊走を可能にする、PEG−アミン架橋および親電子的に活
性なPEGとの縮合反応によって、MMP非感受性のヒドロゲルを形成した。ヒドロゲル
はまた、市販の分岐PEG−アミン(Jeffamines)と同様の二官能性の二重エ
ステルPEG−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS−HBS−CM−PEG−CM−
HBA−NHS)との間の縮合反応を行うことによって形成された。第1段階において、
接着ペプチド(例えば、ペプチド
【0129】
【化12】


)(配列番号20)をNHS−HBS−CM−PEG−CM−HBA−NHSの小画分と
反応させ、次いで、この前駆体を多分岐(multiarm)のPEG−アミンと混合す
ることによって網目構造と架橋させた。三次元インビトロ研究のための代表的なゲル調製
物において、両方の成分を10mM PBS(pH7.4)に溶解し、10%(w/w)
溶液を得、そして1時間以内にヒドロゲルを生成した。再度、細胞または組織のような生
物学的物質中に存在するアミンはまた、二官能性の活性化二重エステルと反応するので、
マイケル型反応によって形成される現在のヒドロゲルとは対照的に、このアプローチにお
ける所望の自己選択性は保証されない。このことはまた、求電子機能性を有する他のPE
G(例えば、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)またはPEGニ
トロフェニルカーボネート)に対しても当てはまる。
【0130】
(実施例4:合成酵素分解可能なマトリクスによる骨再生)
2つの異なる開始濃度の酵素分解可能なゲルを使用した。これらの各々において、RG
Dの濃度および活性因子(100μg/mLでのCplPTH)を一定に保った。分子量
20kD(各分岐の分子量は5kD)の4つのビニルスルホン末端基で官能基化されたP
EGから分岐した4つの分岐および以下の配列Gly−Cys−Arg−Asp−(Gl
y−Pro−Gln−Gly−Ile−Trp−Gly−Gln)−Asp−Arg−C
ys−Gly(配列番号21)のジチオールペプチドから重合網目構造を形成した。両方
の前駆成分を0.3Mのトリエタノールアミンに溶解した。官能基化PEG(第1の前駆
分子)およびジチオールペプチド(第2の前駆分子)の開始濃度を変化させた。1つの場
合において、この濃度は組成物(第1および第2の前駆成分+トリエタノールアミン溶液
)の総重量の12.6重量%であった。12.6重量%は、第1の前駆成分のみに基づい
て計算した場合、10重量%溶液に対応する(100mg/mL第1の前駆分子)。第2
の開始濃度は、組成物(第1および第2の前駆成分+トリエタノールアミン溶液)の総重
量の9.5重量%であり、これは、総重量の第1の前駆成分のみに基づいて計算した場合
、7.5重量%に対応する(75mg/mL第1の前駆分子)。このことは、ビニルスル
ホンとチオールとの間のモル比が維持されるようにジチオールペプチドの量が変化したと
いう結果を有する。
【0131】
12.6重量%の開始濃度から開始したゲルは、重合網目構造+水の総重量の8.9重
量%の濃度まで膨潤し、従って、マトリクスは、91.1の含水量を有した。9.5重量
%の開始濃度から開始したゲルは、重合網目構造+水の総重量の7.4重量%の最終濃度
まで膨潤し、従って、マトリクスは、92.6の含水量を有した。
【0132】
この変化の効果を調べるために、これらの物質をヒツジドリル欠損中で試験した。ここ
で、750μLの欠損をヒツジ大腿骨および上腕骨の骨幹の海綿骨内に配置し、インサイ
チュゲル化酵素ゲルで充填した。以下の量の石灰化組織が得られた(μCTによって決定
し、各群はN=2):
ゲルの開始濃度 石灰化組織
12.6% 2.7%
9.5% 38.4%
ゲルをより低密度にし、そして細胞浸透をより容易にすることによって、活性因子の添
加により生じる治癒応答は、より強いものであった。8.5重量%より低い最終固体濃度
を有することの効果は、これらの結果から明らかである。
【0133】
次いで、明確に、マトリクスの設計は、創傷欠損における治癒を可能にするのに重要で
ある。これらのヒドロゲルの各々は、ポリエチレングリコールの巨大な鎖からなり、末端
連結されて、マトリクスを形成した。しかし、それらがどのように、酵素分解部位、リン
カーおよび幾つかの他の変数の密度を介して連結されたかの詳細は、機能的治癒応答を可
能にするのに重要であった。これらの差は、ヒツジ穿孔欠損モデルにおいてかなり明確に
観測された。
【0134】
(実施例5.合成加水分解可能マトリクスによる骨形成)
PTH1−34融合ペプチドを、合成ゲル、およびフィブリンマトリクスについて正確
に記載されたヒツジ穿孔欠損モデルにおいて試験した。ヒドロゲルネットワークを、アク
リル化4アームポリエチレングリコール(MW 15,000(Peg4*15Acr)
)と、MW 3400の線状ポリエチレングリコールジオールとを一緒に混合することに
より作製した。Michael型反応を介して、2つの成分が0.3Mトリエタノールア
ミンの緩衝液(pH8.0)中で混合される場合、このpHにおいて形成される得られる
チオレートは、次いで、結合体化した不飽和のアクリレートと反応し、共有結合を生成し
得た。多機能前駆体を一緒に混合する(例えば、合わされた多機能性は、5以上である)
ことによって、ヒドロゲルが、形成される。さらに、生体活性因子は、同一の反応スキー
ムを介して、マトリクスに付加され得る。この場合、生体活性因子(細胞接着動機、また
は形態学またはマイトジェン因子が挙げられる)は、システイン、チオール含有アミノ酸
を配列に付加することによって、マトリクスに結合され得る。ここで、本発明者らは、細
胞接着配列であるRGD、より具体的には、RGDSP(配列番号23)ならびにPTH
1−34配列にシステインを付加し、そして両方を、架橋剤中のアクリレートを介して、
マトリクスに結合した。続いて、これらの新たに形成されたヒドロゲルは、次いで、チオ
ール付近に多数のエステルを有し、このエステルは、加水分解的に不安定であることが示
された。この不安定性は、ゲルがゆっくりと分解し、そして新たに形成された組織によっ
て置換されることを可能にする。
【0135】
これらの粒子状ゲルは、マトリクスに共有結合したRGDおよびPTHにより加水分解
可能であり、これらを、ヒツジ穿孔欠損モデルにおいて試験し、マトリクス結合C−PT
1−34の骨成長を増強させる能力を試験した。増強量を決定するために、0μg/m
L、100μg/mLおよび400μg/mLのPTH1−34融合ペプチドを、マトリ
クスに付加した。これを行った後、骨形成の増加を、PTH1−34の付加により観測し
た。各試験において、治癒応答を、8週間の同じ時点で測定した。これを空のままで残っ
ている欠損と比較した。PTH融合タンパク質を有さない合成加水分解可能マトリクスを
、使用した場合、治癒応答は、約40%であると測定された。このことは、40%の元の
欠損容積が、新たに形成された組織で満たされたことを意味する。次いで、400μg/
mLの改変されたPTH1−34融合ペプチドを使用した場合、治癒応答は、約60%ま
で増加した。比較において、この欠損が、空のままである場合、約10%が、石灰化組織
で満たされた。このデータを以下の表6に示す。
【0136】
表6.改変されたPTHの有無による、合成マトリクスによる治癒応答。
【0137】
【表6】


空の欠損と比較して、加水分解可能なpegゲル単独の付加は、骨治癒において多大な
効果を有し、石灰化組織の量を300%増加した。PTH1−34をこのマトリクスに連
結した場合、治癒は、マトリクスが単独で使用される場合より50%高いレベルにまでさ
らに増加し、欠損が空のままである場合に得られる治癒レベルより500%高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−102383(P2009−102383A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5240(P2009−5240)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2003−552958(P2003−552958)の分割
【原出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(501079026)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】