説明

組織研磨剤

生物活性ガラス、生物活性セラミックスなどの生物活性材料を含み、抗炎症性、抗菌性、酸化防止作用、改善された創傷治癒などの生物学的特性、及び/又は他の有益な作用をもたらす研磨組成物が提供される。また、良好な研磨作用をもたらし、潜在的に有害な小さな粒子が少なく又は無く、皮膚研磨装置の詰まりが少なく又は無く、被膜を適用するための比較的大きな表面積を有し、安価で簡単に製造でき、比較的無毒で生物不活性のガラス及びセラミックスを含有する研磨組成物も提供される。これらの研磨組成物を、ヒトの皮膚などのヒト又は動物の組織に接触させることによる、ヒト又は動物の組織を研磨する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2001年3月27日に出願された米国特許出願No.09/818,466号の一部継続出願である、2003年9月29日に出願された米国特許出願No.10/673,596号の一部継続出願である。これらの出願の各内容は全体的に本明細書に引用加入する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全体的に生物学的組織研磨剤に関し、さらに詳しくは、皮膚等の組織を研磨するための生物活性(もしくは生体活性)ガラス、生物活性セラミックス、生物不活性(もしくは生体不活性)ガラス、生物不活性セラミックスなどの生物活性材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多数の研磨材料や方法が、動物、特にヒトなどの哺乳動物の皮膚、頭皮、指の爪、足指の爪、歯、舌、あるいは他の体表面もしくは体空洞(腔)を研磨し、擦り取り、浄化し、マッサージし、あるいは磨くために用いられている。
【0004】
皮膚研磨装置は、新鮮な皮膚面を提供するために皮膚の外層を機械的に取り除くために一般に用いられている。皮膚研磨装置の一つのタイプは、電気ドリルに取付けられたワイヤーブラシに似ている。よりポピュラーなタイプの一例は、皮膚破片の粒子及び薄片を同時に廃棄物容器に真空引きしながら選択し得る圧力下で研磨剤粒子の流れを皮膚に適用する装置である。この後者のタイプの皮膚研磨装置は、層角質を簡単に除去することができ、あるいは真皮の上層を除去するに充分な深さに侵入することができる。研磨剤を適用するプロセスは、所望の効果を達成するために何度も繰り返すことができる。
【0005】
皮膚研磨(本明細書で用いられているものは、皮膚平削り、皮膚再仕上げ、皮膚再現及び外科的擦り取りを含む)は、皮膚の全体的外観を改善し、しわを減らし、瘢痕もしくは皮膚変色の外観を改善し、また前癌状態の角皮症を除去するために美容整形処置として用いられている。皮膚研磨処置は、一般に化学的剥皮よりも深く侵入する。真皮層に達するまで研磨することにより、これらの処置はコラーゲンの産生を促進する。
【0006】
皮膚研磨処置において現在用いられている研磨剤は、一般に酸化アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、及び塩を含む100〜120粒度の材料である。ガラス又はポリマーのビーズを含む他の研磨剤も皮膚研磨処置での使用に提案されており、抗細菌剤あるいは他の研磨剤などの有益な薬剤でコーティングしたり混合することができる。これの一例は「皮膚研磨システム及び方法」という発明の名称の国際特許出願公開No.WO 00139675号に見られる。
【0007】
皮膚の外層を除去するのに用いられる他の技術は、例えば研磨剤を含有するペースト剤、クリーム剤、又はローション剤で顔を手で擦ることである。手による表層剥離によって機械的に皮膚の外層を除去することにより、新鮮な皮膚面となり、また創傷を清拭(清浄化)するためにも用いられている。手で擦るために現在用いられている研磨剤は、酸化アルミニウム、アンズのさね、塩、オリーブのさね、クルミの殻、ポリエチレンビーズ、軽石、四ホウ酸ナトリウム・10水和物顆粒、及び糖を含む。研磨剤は、一般的にはモイスチャライザー、乳化剤、キレート化剤、栄養素、及び防腐剤などの薬剤をしばしば含有する担体に混合される。幾つかの例は、「顔面皮膚研磨クレンジング及びコンディショニング組成物」という発明の名称の米国特許第6,290,976号、「薬剤組成物及び頭皮コンディション管理方法」という発明の名称の米国特許第6,207,694号、「ヒドロキシ酸を含有する皮膚平滑化組成物及びその使用方法」という発明の名称の米国特許第5,939,085号、及び「ボディ磨き剤」という発明の名称の米国特許第5,866,145号に見ることができる。
【0008】
しかしながら、これらの研磨材料及びシステムは、限られた有効性しか持っていない。例えば、これらのタイプの研磨剤は、抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、及び酸化防止作用などの重要な生物学的特性を持っておらず、有意に創傷治癒を促進しあるいは改善することができない。さらに、これらのタイプの研磨剤は、皮膚研磨装置を詰まらせることが知られている。
【0009】
従って、ヒトの皮膚などのヒト又は動物の組織又は体表面の機械研磨又は手による研磨のための改善された研磨材料が非常に有利であろう。特に、このような研磨材料が抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、及び酸化防止作用並びに創傷治癒の促進及び改善などの重要な特性を備えていれば有利であろう。さらに、これらの改善された研磨材料が皮膚研磨装置の詰まりを最小化しあるいはなくすことができれば有利であろう。
【0010】
また、皮膚研磨の目的のためには、無毒で、生物活性でない(即ち、生物不活性の)ガラス及びセラミックスを有し、このようなガラスあるいはセラミックが良好な研磨作用をもたらし、潜在的に有害な小さな粒子(即ち、微細粒子)を少なくしあるいはなくし、皮膚研磨装置の詰まりを少なくしあるいはなくすことができ、また被膜(例えば、抗菌剤、ローション剤、ビタミン類、着色)を適用するための比較的大きな表面積を有すれば有利であろう。さらにまた、このような生物不活性のガラス及びセラミックスが比較的に安価で製造容易であれば有利であろう。
【特許文献1】国際特許出願公開No.WO 00139675号
【特許文献2】米国特許第6,290,976号明細書
【特許文献3】米国特許第6,207,694号明細書
【特許文献4】米国特許第5,939,085号明細書
【特許文献5】米国特許第5,866,145号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
生物活性ガラスあるいは生物活性セラミックスなどの生物活性材料は、幾つかの生物学的特性を有する無機材料である。本発明者らは、驚くべきことに、そのような生物活性材料は、ヒトの皮膚などの動物の組織及び体表面を研磨するための研磨材料として利用できると共に、従来の研磨剤及びシステムよりも優れる効果をもたらすことを見出した。研磨材料として用いたとき、これらの材料の生物学的特性は研磨される体表面に驚くべき利益をもたらす。これらの生物活性研磨剤は、抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、再鉱物化及び/又は酸化防止作用、創傷治癒の促進もしくは改善などの有益な生物学的(“生物活性”)特性及び/又は他の有益な特性をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、生物活性材料を含有し、生物活性材料がそのような特性を有する無機材料である、動物の組織を研磨するための研磨材料を提供するものである。このような材料の調製方法もまた提供される。
本発明はまた、生物活性材料を動物の組織に接触させることからなり、ここで生物活性材料が生物学的特性を有する無機材料である、ヒトの皮膚を含む動物の組織を研磨する方法も提供するものである。
【0013】
本発明はまた、良好な研磨作用、潜在的に有害な小さな粒子(即ち、微細粒子)が少なく又は無く、皮膚研磨装置の詰まりが少なく又は無く、被膜(例えば、抗菌剤、ローション剤、ビタミン類)を適用するための比較的大きな表面積を有し、また比較的に安価で簡単な製造プロセスである、という有利な特性の一つ以上を有する無毒で、生物活性でない(即ち、“生物不活性の”)ガラス及びセラミックスを含有する、動物の組織を研磨するための研磨材料も提供するものである。このような材料の調製方法もまた提供される。
【0014】
本発明はまた、生物不活性のガラス又はセラミックスを含有する研磨材料を動物の組織に接触させることからなる、ヒトの皮膚を含む動物の組織を研磨する方法も提供するものである。本発明はまた、生物活性のガラス又はセラミックスと生物不活性のガラス又はセラミックスを組み合わせて含有する、動物の組織を研磨するための研磨材料、及びこのような研磨材料の作製方法及び使用方法も提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
生物活性ガラス、生物活性セラミックスなどの生物活性材料は、幾つかの生物学的特性をもたらすことができる無毒の無機材料である。本発明の特定の態様によれば、生物活性ガラス及び生物活性セラミックスは一般に高温で溶融され、哺乳動物の体と反応するイオン類を放出するように粒子に粉砕された鉱物酸化物である。幾つかの実施例においては、これらの生物活性のガラス及びセラミックスは各種組合せでケイ素、ナトリウム、カルシウム、及びリンの酸化物を組み合わせた材料である。
【0016】
本明細書中に用いられているように、用語「生物活性」は、抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、及び酸化防止作用、並びに創傷治癒の促進及び改善などの特性を有する物質を言う。さらに、「生物活性」は、ヒドロキシアパタイト(水酸化リン灰石)の形成によって表面に生じる鉱物構築作用を言う。
【0017】
本明細書中に用いられているように、用語「生物活性ガラス」は、溶融により得られた及び/又はゾル−ゲル法で得られた粒状の生物活性ガラスを言うことができる。さらに、用語「生物活性ガラス」は、溶融により得られた及び/又はゾル−ゲル法で得られた粒状の生物活性ガラスの水性抽出物を言うのに用いることができる。ケイ素をベースにした生物活性ガラスは、非晶質の非結晶性材料である。
【0018】
本明細書中に用いられているように、用語「生物活性セラミックス」は、生物活性ガラスセラミックス(一般にガラス相と結晶相からなる材料)、生物活性セラミックス(一般に結晶相からなる材料)、及びガラス、セラミックスあるいは他の無機非金属物質からなる生物活性複合材料などの生物活性無機非金属材料を含む。
【0019】
本明細書中に用いられているように、用語「セラミック」又は「セラミックス」は、「ガラスセラミックス」及び関連物質も言うことができる。
本明細書中に用いられているように、用語「生物不活性」は、用語「生物活性」が前記のように定義されているので、実質的に「生物活性」ではなく、研磨剤として用いられたときにヒトなどの動物に対して実質的に無毒の物質を言う。
【0020】
本発明の幾つかの態様は、約30重量%〜約96重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約0重量%〜約35重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約4重量%〜約46重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約1重量%〜約15重量%の酸化リン(P)を含有することができる生物活性ガラスを利用している。このような生物活性ガラス組成物はまた、約0重量%〜約10重量%の酸化アルミニウム(Al)も含有することができる。さらに好ましくは、ガラスは約30重量%〜約60重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約5重量%〜約30重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約10重量%〜約35重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約1重量%〜約12重量%の酸化リン(P)を含有する。
【0021】
本発明の他の態様は、約0重量%〜約30重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約0重量%〜約30重量%の酸化カリウム(KO)、約4重量%〜約46重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約10重量%〜約70重量%の酸化リン(P)を含有することができる生物活性リン酸塩ガラスを利用している。このような生物活性リン酸塩ガラス組成物はまた、約0重量%〜約25重量%の酸化亜鉛(ZnO)及び約0重量%〜約10重量%の酸化アルミニウム(Al)も含有することができる。
【0022】
生物活性ガラスセラミックスも、本発明に従って、研磨材料として、またそのような材料の作製方法及び使用方法に用いることができる。このような生物活性ガラスセラミックスは、約30重量%〜約96重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約0重量%〜約35重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約4重量%〜約46重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約1重量%〜約15重量%の酸化リン(P)を含有することができる。好ましくは、ガラスセラミックスは、約30重量%〜約60重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約5重量%〜約0重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約10重量%〜約35重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約1重量%〜約12重量%の酸化リン(P)を含有する。生物活性ガラスセラミックスの結晶相は上記範囲内でケイ素、ナトリウム及びカルシウムの種々の組合せとすることができる。生物活性ガラスに比べて、生物活性ガラスセラミックスは、一般にこれらの材料に増大した研磨作用をもたらすより高い機械的強度及びより大きなヤング率値を有する。
【0023】
本発明の幾つかの態様においては、他の生物活性セラミックスは主成分としてカルシウム及びリンを含有する。これらの成分の特定の例はヒドロキシアパタイト(水酸化リン灰石)、リン酸三カルシウム及び他のリン酸カルシウムを含む。
【0024】
本明細書に記載した生物活性の及び生物不活性の全ての材料は、さらに、他の抗菌剤又は着色剤あるいはAg、Co、Zn、Au、I、V、Cu、Fe、Nd、F及び/又はNiなどのイオン類を約5重量%以下の濃度で含有することができる。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに、このような生物活性材料は、ヒトや動物の組織、特にヒトの皮膚のための研磨材料として利用できると共に、従来の研磨剤及びシステムよりも優れる効果をもたらすことを見出した。このような生物活性材料は、予測し得ないほど優れた研磨特性をもたらし、手による研磨及び機械的研磨のいずれにも有用である。研磨材料として用いたとき、このような生物活性材料は研磨される体表面に有益な生物学的特性をもたらすことができる。そのような生物学的特性は、抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、再鉱物化及び/又は酸化防止作用、創傷治癒の促進もしくは改善、及び/又は他の有益な特性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
ガラス又はセラミックスの他の成分としてホウ素及びマグネシウムを含むことができる。Bについての好適な範囲は約0重量%〜約20重量%であり、一方、MgOについての好適な範囲は約0重量%〜約10重量%である。
【0027】
本発明に係る研磨組成物はまた、生物活性材料と、ホウケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミニウムケイ酸塩ガラス及びリン酸塩ガラスなどの他のガラス又はセラミックタイプ及び他の生物不活性ガラスとの各種組合せ又は混合物も含むことができる。本発明の他の態様は、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、雲母、クレー、軽石、多孔質ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムあるいはこれらの組合せなど、天然の又は合成のセラミックスを含有できる組成物を提供する。本発明のさらに他の態様は、ケイ酸リチウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸ナトリウムカルシウムあるいはこれらの組合せなどのガラスセラミックスを含む。研磨組成物はまた、生物活性ガラス、生物活性セラミックス、生物不活性ガラス、及び生物不活性ガラスセラミックスの各種組合せも含む。ホウ酸塩ガラスもまたこれらの組成物に含むことができる。
【0028】
生物活性のガラス及びセラミックスなどの生物活性材料は、従来の研磨材料によりもたらされなかった有益な生物学的活性をもたらす。例えば、一般に使用されている皮膚研磨剤である酸化アルミニウムは、前記した重要な有益な生物学的活性をもたらさない生物不活性の鉱物酸化物と言うことができる。同様に、生物不活性のガラス粒子又はポリマー・ビーズも二次材料が添加されない限り有益な生物学的特性をもたらさない。これの一つの例が「皮膚研磨システム及び方法」という発明の名称の米国特許出願No.20010023351に見られる。
【0029】
生物活性のガラス及びセラミックスの組成物及び作製方法は、当業者によく知られており、例えば、「バイオセラミックス入門(An Introduction to BioCeramics)」エル.ヘンチ(L. Hench)及びジェイ.ウィルソン(J. Wilson)編、ワールド・サイエンティフィック社(World Scientific)、ニュージャージー(1993)を含む多くの刊行物に開示されている。
【0030】
本発明は、一部、生物活性材料は従来の研磨剤を超えた多数の予期せざる利点を有するという知見に関連している。例えば、前記した生物学的特性(例えば、抗炎症性、抗菌性、抗刺激性、酸化防止及び/又は創傷治癒作用)の外に、これらの材料は、手による洗浄製品又は皮膚研磨システムと共に現在用いられている研磨剤を超えた最適な性能特性を有することができる。例えば、生物活性のガラス及びセラミックスは、少なくとも、酸化アルミニウムなど現在使用されている最良の研磨剤と同じように皮膚の表面を除去するのに有効であり、また、炭酸水素ナトリウムなどの幾つかの他の研磨材料に比べてはるかに優れた研磨特性を有する。さらに、皮膚研磨装置における使用のためには、生物活性材料は、そのような装置の詰まりに対する優れた抵抗性をもたらす優れた流動性を有する。著しく対照的なことに、酸化アルミニウムや炭酸水素ナトリウムなどの標準的な市販の研磨剤はしばしば皮膚研磨機を詰まらせる。どのような特定の理論にも限定されることなく、幾つかの生物活性材料の改善された性能は、少なくとも部分的に、これらの生物活性材料の幾何形状及び表面特性並びに使用中の粒子及び装置の低い感湿性及び低い静電荷蓄積によるものと考えられる。生物活性ガラス及び生物活性セラミックスなどの生物活性材料は、米国特許No.6,511,486に記載されているようなものなど、広範囲の各種皮膚研磨システムに用いることができる。
【0031】
生物活性材料で正確な粒子サイズを達成できることもまた有利である。生物活性材料は、広範囲の粒度又は粒子サイズで製造することができる。生物活性のガラス及びセラミックスを製造するために利用される製造プロセスは、例えば、得られる粒子サイズ全体に亘って比較的に正確に制御することができ、実際、そのような粒子の均一性を制御することができる。各種製造技術によって、粉砕粒子、球状、フレーク状、繊維状などの各種形状に生物活性ガラス及び生物活性セラミックスを製造することも可能である。従って、各種アスペクト比の粒子を有する粉末を得ることができる。これらのプロセスはまた、粒子サイズ及び均一性並びに粒子の形状を制御する為に生物不活性ガラス及び生物不活性セラミックスに適用することができる。
【0032】
本発明の一つの側面によれば、研磨材料にとって、また皮膚研磨装置における使用にとって好適なサイズは、皮膚研磨装置における使用での標準的な粒子サイズに相当する約102μm又は約122μmである。しかしながら、より大きな又はより小さな粒子サイズも他の粒子サイズを処理可能な装置に用いることができる。手による研磨(例えば、顔面洗浄)での使用のための粒子サイズは一般に200μm以上、好ましくは400μm以上、さらに好ましくは600μm程度である。1〜4mm以下の粒子サイズも、手による研磨、特に非顔面領域のための手による研磨としては適している。しかしながら、他の粒子サイズ及び粒子サイズの混合物及び粒子サイズ分布もまた本発明の範囲内にあると理解されるべきである。
【0033】
本発明はまた、研磨作用及び生物活性作用のいずれにも最適なように粒子サイズの組合せを含む研磨組成物も提供するものである。例えば、比較的に小さな生物活性のガラス又はセラミックス粒子(例えば、約10μm未満、あるいはさらに約5μm未満)はより大きな粒子サイズ(例えば、約50μm以上、あるいはさらに約100μm以上)と組み合わせることができる。比較的小さな粒子は優れた生物活性作用をもたらすことができ、一方、比較的大きな粒子は優れた研磨作用をもたらす。所望であれば、より小さな粒子は、このより小さな粒子の潜在的な「粉立ち」作用を最小化しあるいはなくすためにより大きな粒子の表面に結合することができる。このような結合は、例えば、燒結によりあるいは結合剤の使用により達成することができる。
【0034】
生物活性材料のさらに他の利点は、炭酸水素ナトリウムや塩などの既存の多くの研磨剤に比べてこれらの材料の比較的不溶性である点を含む。生物活性のガラス及びセラミックスの実施例は、水性環境下で安定である。
【0035】
本発明はまた、生物不活性材料(例えば、ホウケイ酸塩ガラス、アルミナセラミックス)と、前記した生物活性のガラス又はセラミックスとの混合物である組成物も提供するものである。このような混合物は、硬度、耐水性、化学安定性、及び生物活性作用と研磨作用の有益な組合せをもたらす全体的な生物活性など、これらの生物活性材料の機械的、化学的及び生物学的特性を各種変化に富んだものとすることができる。それと同時に、このような混合物は、研磨装置の潜在的な詰まりを最小化する低い全体的な吸湿性を有する。このような混合物は、個々の成分を一緒に組み合わせることによって作製することができる。
【0036】
溶融により得られた生物活性ガラス及び生物活性セラミックスは、標準的な又は特殊な溶融・微粉砕法により製造できる。このような方法は、例えば、セラミックもしくは白金るつぼ又はガスもしくは電気加熱機構により加熱されたタンク内での溶融、乾式微粉砕(例えば、ロール微粉砕及びエアージェット微粉砕)及び湿式微粉砕(例えば、磨細機)を含む。ゾル−ゲル法のみ、又はこれらの他の微粉砕方法との組合せも、これらの組成物を製造するために用いることができる。このような微粉砕法は、広い範囲で粒子サイズ分布(例えば、500μm未満、200μm未満、100μm未満、50μm未満、10μm未満、あるいはさらに2μm未満のd50値)を生じることができる。
【0037】
本発明はまた、TiO、ZnO、CeO及び/又はヒドロキシアパタイトなどの生物活性又は生物不活性のナノ粒子が生物活性又は生物不活性のセラミックもしくはガラス粒子と組み合わされたセラミック・ガラス複合物などの複合材料を含む。好ましくは、凝集及び潜在的吸入を最小化するために、このようなナノ粒子組成物はこれらの潜在的問題を最小化し又はなくすために結合した形態であるべきである。ナノ粒子は特に良好な研磨作用をもたらすような明確な構造を持つ表面を提供することができる。ナノ粒子は、燒結法を用いてガラス又はセラミック粒子表面に溶着でき、あるいはまたゾル−ゲルコーティング法を用いることもできる。このような組成物はまた、例えばヒドロキシアパタイトの使用により鉱物構築作用をもたらすこともできる。
【0038】
本発明の他の態様は、コーティングされた生物活性粒子及び生物不活性粒子への生物活性コーティングを提供する。これは、例えば、有機又は無機原料に基づくゾル−ゲル法により達成できる。これにより、例えば向上した抗炎症性、抗菌性、酸化防止作用及び鉱物構築作用がもたらされる。シラン化など、粉末の他のタイプの表面改質により、吸湿性及び非詰まり性の向上がもたらされる。従って、そのような組成物は良好な流動性を備え、皮膚研磨装置の詰まりを最小化し、あるいはなくすことができる。他のコーティングは、非ゾル−ゲル法で得られたガラス又はセラミックスの被膜としてゾル−ゲル法で得られたガラスを含むことができる。そのようなゾル−ゲルコーティング組成物は、これら同じ有益な効果を示す。粉末は、例えば、粒子上にゾル−ゲル溶液をスプレーすることにより、あるいは粒子を直接ゾル−ゲル溶液中に混合することによりコーティングできる。その後の加熱によってゾル−ゲルはガラスに転化し、生物不活性粒子表面に固着される。
【0039】
本発明に係る研磨組成物はまた、芳香剤、抗刺激剤、抗菌性及び抗炎症性物質及び/又は担体(キャリアー)、賦形剤、希釈剤、防腐剤、緩衝剤及び/又は溶剤等の生理学的に受容可能な物質などの他の所謂「活性」有機もしくは無機材料を含むことができる。これらの組成物もまた、薬剤、特に皮膚科処置に関連する薬剤に含まれ得る。さらに、例えば固有着色の粉末の使用により、又は医薬用の有機もしくは無機薬剤で粉末を着色することにより、これらの組成物を着色することもできる。
【0040】
本発明者らはまた、驚くべきことに、他の生物活性材料が前記したような生物学的特性をもたらすことができ、従って研磨剤として有用であることを見出した。このような生物活性材料には、亜鉛含有生物活性ガラス及びセラミックス、酸化亜鉛粉末、及びステアリン酸亜鉛等の亜鉛放出化合物;シリカ含有生物活性ガラス又はセラミックス;銀放出生物活性ガラス又はセラミックス;銅放出生物活性ガラス又はセラミックス;マグネシウム放出生物活性ガラス又はセラミックス;ヒドロキシアパタイト;及び銅、亜鉛、銀、マグネシウムなどの鉱物塩又は酸化物、及び他の生物活性金属錯体、及びセラミック・ガラス複合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
皮膚研磨を含む態様に加えて、本明細書に開示されている研磨剤及び方法はまた、他の表面の研磨にも適当であり、ここで他の表面には動物、特にヒトなどの哺乳動物の皮膚、頭皮、指の爪、足指の爪、歯、舌、及び他の体表面又は体空洞(腔)が含まれるが、これらに限定されるものではない。前記した全ての材料は、同様に医療潅注装置において、また創傷治療及び体腔、表面及び開口部の洗浄を含む処置に用いることができる。これらの生物活性及び生物不活性材料は、例えばエマルジョン、水性ベース溶液、及びコラーゲン含有溶液など、各種の溶液に含ませることができる。さらに、これらの材料は、組織を切断する装置、溶液及び処置に用いて組み合わされた研磨及び生物学的特性及び作用を提供することができる。さらに、これらの材料はまた口腔用の水ようじ(ウォーターピック)タイプの装置又は他の用途にも含ませることができる。
【0042】
本発明はまた、良好な研磨作用、潜在的に有害な小さな粒子(即ち、微細粒子)が少なく又は無く、皮膚研磨装置の詰まりが少なく又は無く、被膜(例えば、抗菌剤、ローション剤、ビタミン類)を適用するための比較的大きな表面積を有し、また比較的に安価で簡単な製造プロセスである、という有利な特性の一つ以上を有する無毒で生物不活性のガラス及びセラミックスを含有する研磨材料も提供するものである。
【0043】
好適な態様においては、このような生物不活性のガラス及びセラミックスは実質的に丸くない。他の好適な態様においては、このような生物不活性のガラス及びセラミックスはエッジを有する。さらに他の好適な態様においては、このような生物不活性のガラス及びセラミックスは実質的に丸くなく、且つ、エッジを有する。他の態様においては、生物不活性のガラス及びセラミックスは、不規則な形状及び/又は多数の小面を有する。このような生物不活性のガラス及びセラミックスは、ガラス・ビーズなどの丸い粒子に比べて、また不規則な形状の酸化アルミニウム研磨剤に比べて、優れた研磨特性及び他の特性を有する。
【0044】
これらの生物不活性のガラス及びセラミックスには、ホウケイ酸塩ガラス、アルカリ土類ガラス、及びアルミノケイ酸塩ガラスが含まれるが、これらに限定されるものではない。一つの実施例においては、ホウケイ酸塩ガラスは、約50重量%〜約85重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約0重量%〜約25重量%の酸化ホウ素(B)、約0重量%〜約20重量%の酸化アルミニウム(Al)、約0重量%〜約15重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約0重量%〜約15重量%の酸化カリウム(KO)を含有することができる。実施例はまた、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化リチウム(LiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リン(P)及びフッ素(F)を個々に又は組み合わせて約15重量%未満の量で含有することができる。さらに、これらの生物不活性のガラス及びセラミックスは、ガラス又はセラミックを着色する化合物又は組成物でドープすることができる。着色付与物質は、Ag、Au、V、Cr、Co、Cu、Er、Nd、Fe、Mn、Ni、Sm、Eu、U及びSeなどの元素を個々に又は組み合わせて約5重量%以下の量で含有することができる。他の着色付与物質も同様に用いることができる。
【0045】
幾つかの態様においては、多成分の生物不活性ガラス又はセラミックスを用いるよりも、むしろシリカガラスもしくはセラミックスを単独成分として用いることができる。幾つかの態様においては、生物不活性ガラスはセラミック化され得る。
【0046】
本発明者らは、驚くべきことに、これらの生物不活性ガラス及びセラミックスは、酸化アルミニウムなどの従来の研磨組成物やガラス・ビーズなどの丸い粒子を超える多くの利点を有することを見出した。酸化アルミニウムや丸い粒子に比べて、本発明に係る生物不活性ガラス及びセラミックスは、良好な研磨作用、潜在的に有害な小さな粒子(即ち、微細粒子)が少なく又は無く、皮膚研磨装置の詰まりが少なく又は無く、被膜(例えば、抗菌剤、ローション剤、ビタミン類)を適用するための比較的大きな表面積を有し、また比較的に安価で簡単な製造プロセスである、という利点の少なくとも一つを有する。さらに、本発明に係る生物不活性ガラス及びセラミックスは、標準的な酸化アルミニウムベースの研磨剤に関連した目、鼻、喉などの潜在的な急性健康障害並びに肺損傷などの潜在的な慢性健康障害を低減できる。さらに、本発明に係る組成物は酸化アルミニウムを約20%以下の量で含有するので、アルミニウムとアルツハイマー病などの疾患との潜在的なリンクについての心配を低減できる。
【0047】
生物不活性ガラス及びセラミックスの結晶安定性及び溶融特性により、このようなガラス及びセラミックスの溶融を標準的な高容量耐火ガラスタンクで連続した比較的低コストのプロセスで行うことが可能となる。これらのプロセスに用いられる原料も比較的低コストで入手できる。さらに、これらの生物不活性ガラス及びセラミックスは特定の溶融粘度及び低い耐火物腐蝕を示す。ロールすることにより、又は簡単に水中にキャストすることにより、溶融プロセスは「リボン」又は「フリット」を製造できる。これらのリボン又はフリットは、例えばロールミル、エアーミル、又は磨細機で適当な粒子サイズ及び分布に微粉砕できる。
【0048】
これらのプロセスは、実質的に丸くない表面を有するガラス及びセラミック粒子を製造するのに用いることができる。そのような丸くない表面は、例えば丸いガラス・ビーズに比べて、著しく大きな表面積/容積比を有する。これらの丸くない粒子は、実質的に丸い粒子よりもかなり大きな研磨作用をもたらす。
【0049】
これらの生物不活性ガラス及びセラミックスのサイズ分布は、標準的な篩分けプロセスあるいは例えば風篩分けなどの当業界に公知の他の技術を用いることにより制御でき、また修正できる。さらに、非常に小さなガラス及びセラミック粒子はフリーの小さな粒子の量を減少させるためにより大きな粒子の表面に燒結できる(熱処理を経て)。微細粒子の存在も風篩分けにより又は沈降法を用いることにより低減できる。
【0050】
湿式微粉砕又は混合技術が用いられれば、粒子の凝集は乾燥法により制御できる。乾燥法には、例えば従来の標準炉内での乾燥、スプレー乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、超臨界乾燥、及びマイクロ波乾燥が含まれる。これらの乾燥法はまた、微細粒子の発生及び存在を低減するために用いることができる。
【0051】
本発明の一つの態様においては、生物不活性ガラス及びセラミックスは、これらのガラス及びセラミックスをコーティングするための優れた表面をもたらす高い表面積/容積比を有する。これらの生物不活性ガラス及びセラミックスは、従来の酸化アルミニウムなどの研磨剤に比べて、またガラス・ビーズなどの実質的に丸くて平滑な研磨剤に比べて優れたコーティング面を提供する。被膜には、抗菌剤(例えば抗細菌剤)、ローション剤、ビタミン類及び/又は着色剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の幾つかの態様は、多孔質、適度に多孔質、あるいはさらに非常に多孔質な表面を持つ生物不活性ガラスを含み、さらに相対的表面積/容積比が増大している。多孔質生物不活性ガラスの例には、ゾル−ゲル法で製造されたシリカ(例えばSiO)、相分離及び滲出(抽出)法で製造できるホウケイ酸塩ガラス、及び多孔質燒結ガラス(例えばソーダ石灰ガラス)を含まれる。
【0052】
被膜は、ガラス又はセラミック粉末と液状シランを混合することによって塗布できる(シラン化)。ガラス又はセラミック粉末はまた、トリクロサン(triclosan)又は銀、亜鉛もしくは銅の塩などの有機又は無機抗菌組成物を含有し得る抗菌懸濁液と混合することもできる。所望のコーティングを達成するために、混合プロセスにおいて各種タイプのシランをガラス又はセラミック粉末に添加できる。一つの実施例においては、コーティング材料は約15重量%以下のガラス又はセラミック粒子を含有できる。この量は、ガラス又はセラミック粒子の比表面積と所望の被膜厚さに合わせるように調整できる。被膜は乾燥プロセスの前又は後に塗布できる。当業界に公知の他のコーティング技術(例えばスプレーコーティング)も用いることができる。
【0053】
使用においては、これらの生物不活性ガラス及びセラミックスは優れた研磨作用をもたらす。さらに、これらの生物不活性ガラス及びセラミックスは、それらを皮膚研磨装置における使用に特に適したものとする優れた流動性を示し、それらは皮膚研磨装置の詰まりを少なくし、あるいはなくす。
【0054】
前記した生物活性ガラス及びセラミックス及び生物不活性ガラス及びセラミックスのいずれにとっても、Pb、Cd、Hg、As及びSbなどの重金属の存在は最小限とすることが望ましい。本発明の一つの態様においては、そのような重金属は約300ppm未満である。好適な態様においては、これらの重金属は約100ppm未満であり、さらに好適な態様においては約50ppm未満である。
【0055】
さらに、生物活性の及び生物不活性のガラス及びセラミックスのいずれにとっても、貯蔵及び販売目的のためにはこれらの組成物についての生体負荷(bioburden)を少なくすることが有用である。これは、生物活性特性を有するかさもなくば抗菌特性を有するガラス又はセラミックス(例えばAg、Zn又はCuを含有するガラス)を用いることにより、又は生物不活性のガラス又はセラミックスに抗菌被膜を施すことによって達成できる。これらのガラス及びセラミックスについての生体負荷は、好ましくは約100CFU未満であり、さらに好ましくは約10CFU未満である。
以下の実施例は本発明の各種側面を示しており、いかなるやり方でも請求の範囲を限定するように解されるべきではない。
【実施例】
【0056】
実施例1
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmの100%生物活性リンケイ酸ナトリウム・カルシウムガラス(およそ45%SiO、25%NaO、25%CaO、及び5%Pを有する)。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
【0057】
実施例2
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmのホウケイ酸塩ガラス(およそ80.6%SiO、12.5%B、2.4%Al、3.4%NaO、0.5%KO及び少量のTiO、CaO、MgO、及び標準的な清澄剤を有する(全て重量基準))90重量%と、
d50値が122μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)10重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
【0058】
実施例3
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmのホウケイ酸塩ガラス(実施例2で用いたのと同じ相対的組成を有する)90重量%と、
d50値が10μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)10重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、手による皮膚研磨組成物として又はその中に添加して使用するのに特に適している。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚刺激を起す。
【0059】
実施例4
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmのホウケイ酸塩ガラス(実施例2で用いたのと同じ相対的組成を有する)90重量%と、
d50値が122μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)10重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
【0060】
実施例5
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が102μmのホウケイ酸塩ガラス(実施例2で用いたのと同じ相対的組成を有する)90重量%と、
d50値が50μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)5重量%と、
d50値が50μmの芳香剤含有ナノ多孔質ホウケイ酸塩ガラス(“バイオラン(Bioran)”)5重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有する。
【0061】
実施例6
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmのアルミナ80重量%と、
d50値が122μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)20重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、皮膚研磨装置での使用に充分に適している。
【0062】
実施例7
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmの天然のケイ酸マグネシウム・アルミニウム80重量%と、
d50値が122μmの生物活性ガラス(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)20重量%。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
【0063】
実施例8
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmの100%生物活性リン酸塩ガラス(およそ66.5%P、6.2%Al、12.5%NaO、7.5%CaO、及び7.5%ZnOを有する)。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
【0064】
実施例9
以下の組成を有する研磨剤を処方した。
d50値が122μmの100%生物活性ガラスセラミック(実施例1で用いたのと同じ相対的組成を有する)であり、結晶相はケイ酸ナトリウム・カルシウムで全量30容量%を超えていた。
この研磨組成物は優れた生物活性及び研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。比較として、標準的なアルミナベースの研磨組成物は生物活性を有さず、しばしば皮膚研磨装置の詰まりを起す。
当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく修正及び変更を行うことができるということが認識されるであろう。従って、請求の範囲の範囲内に入るずへてのそのような変更及び修正は本発明の範囲内に含まれるものと言える。
【0065】
実施例10
重量基準で以下の組成を有し、d50値が122μmのホウケイ酸塩ガラス研磨剤を処方した:
SiO:80.6%、
:12.5%、
Al:2.4%、
NaO:3.4%、
O:0.5%
と、少量のTiO、CaO、MgO及び標準的な清澄剤。
この研磨組成物は優れた研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。
【0066】
実施例11
重量基準で以下の組成を有し、d50値が122μmのホウアルミノケイ酸塩ガラス研磨剤を処方した:
SiO:75.0%、
:10.5%、
Al:5.3%、
NaO:7.0%、
CaO:1.4%、
BaO:0.54%、
と、少量のKO、TiO、MgO及び標準的な清澄剤。
この研磨組成物は優れた研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。
【0067】
実施例12
実施例10の上記ホウケイ酸塩ガラス組成物を0.5重量%のシランと混合して詰まりを少なくし、又はなくす表面シラン化を生じさせた。
【0068】
実施例13
以下の表1に、比較的低コストの高い化学安定性を有する生物不活性ガラスのさらに他の実施例を示す。全ての成分は重量%で列挙した。
【表1】

表中、微量成分は例えば標準的な清澄剤であり得る。
これらの研磨組成物の各々は、優れた研磨特性を有し、優れた流動性を示し、皮膚研磨装置における使用に特に適したものとしている。
【0069】
実施例14
d50値が100μmの実施例13のガラス6のガラス粉末をAgNO水溶液(水溶液中のAgNOの濃度:6重量%)と混合した。この水溶液は、水溶液が混合物約5重量%を含有するようにガラス粉末と混合した。この混合物を、550℃で2時間、炉内で乾燥した。加熱プロセスにより銀イオンをガラス表面に侵入させた。得られたガラス粉末は、優れた抗菌特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性ガラス及び生物活性セラミックスよりなる群から選ばれた生物活性材料を含有する、ヒト又は動物の組織を研磨するための研磨材料。
【請求項2】
生物活性材料が、生物活性ガラスを含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項3】
生物活性材料が、生物活性セラミックを含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項4】
生物活性材料が、ナトリウム、カルシウム及びケイ素を含有する、請求項3の研磨材料。
【請求項5】
生物活性材料が、約30重量%〜約96重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約0重量%〜約35重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約4重量%〜約46重量%の酸化カルシウム(CaO)、及び約1重量%〜約15重量%の酸化リン(P)を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項6】
生物活性材料が、約1重量%〜約15重量%の酸化リン(P)、約0重量%〜約25重量%の酸化亜鉛(ZnO)、約0重量%〜約35重量%の酸化ナトリウム(NaO)、及び約0重量%〜約10重量%のAlを含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項7】
生物活性材料が、約0重量%〜約30重量%の酸化ナトリウム(NaO)、約0重量%〜約30重量%の酸化カリウム(KO)、約4重量%〜約46重量%の酸化カルシウム(CaO)、約10重量%〜約70重量%の酸化リン(P)、及び約0重量%〜約10重量%の酸化アルミニウム(Al)を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項8】
生物活性材料が、亜鉛放出化合物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項9】
生物活性材料が、銀放出化合物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項10】
生物活性材料が、銅放出化合物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項11】
生物活性材料が、マグネシウム放出化合物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項12】
生物活性材料が、銅、亜鉛、銀及びマグネシウムよりなる群から選ばれた鉱物の塩又は酸化物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項13】
生物活性材料が抗炎症作用をもたらす、請求項1の研磨材料。
【請求項14】
生物活性材料が抗菌作用をもたらす、請求項1の研磨材料。
【請求項15】
生物活性材料が酸化防止作用をもたらす、請求項1の研磨材料。
【請求項16】
生物活性材料が創傷治癒を促進もしくは改善する、請求項1の研磨材料。
【請求項17】
生物活性材料が抗炎症作用をもたらす、請求項1の研磨材料。
【請求項18】
動物の組織がヒトの皮膚である、請求項1の研磨材料。
【請求項19】
生物活性材料が、無機生物活性材料を含む粉末混合物を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項20】
生物活性材料が、大きな粒子に結合した小さな粒子を含有する、請求項1の研磨材料。
【請求項21】
生物活性材料を含有する、医療灌注処置用の組成物。
【請求項22】
生物活性材料が研磨作用及び生物学的作用をもたらす、請求項21の組成物。
【請求項23】
前記処置が創傷の治療を含む、請求項22の組成物。
【請求項24】
生物活性材料を組織に接触させることからなる、ヒト又は動物の組織を研磨する方法。
【請求項25】
生物活性材料を含有する研磨材料をヒト又は動物の組織に適用する皮膚研磨装置を用い、それによって皮膚研磨装置の詰まりが生物活性材料を含まない研磨材料を用いた場合よりも実質的に少なくなる、皮膚研磨装置の操作方法。
【請求項26】
生物活性材料を少なくとも1種の他の生理学的に受容可能な物質と混合して研磨材料を作製することからなる、ヒト又は動物の組織を研磨するための研磨材料の調製方法。
【請求項27】
実質的に丸くない生物不活性のガラス又はセラミック粒子を含有する、ヒト又は動物の組織を研磨するための研磨材料。
【請求項28】
約50重量%〜約85重量%の二酸化ケイ素(SiO)、約0重量%〜約25重量%の酸化ホウ素(B)、約0重量%〜約20重量%の酸化アルミニウム(Al)、及び約0重量%〜約15重量%の酸化ナトリウム(NaO)を含有する生物不活性のガラス粒子を含有する、ヒト又は動物の組織を研磨するための研磨材料。
【請求項29】
さらに約0重量%〜約15重量%の酸化カリウム(KO)を含有する、請求項28の研磨材料。
【請求項30】
さらに酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ジルコニウム(ZrO)及びフッ素(F)よりなる群から選ばれた化合物を個々に又は組み合わせて約15重量%以下の量で含有する、請求項28の研磨材料。
【請求項31】
さらにAg、Au、V、Cr、Co、Cu、Er、Nd、Fe、Mn、Ni、Sm、Eu、U及びSeよりなる群から選ばれた着色元素を個々に又は組み合わせて約5重量%未満の量で含有する、請求項28の研磨材料。
【請求項32】
さらに被膜を含む、請求項27の研磨材料。
【請求項33】
さらに被膜を含む、請求項28の研磨材料。
【請求項34】
被膜が抗菌剤、ローション剤、ビタミン類及び着色物質よりなる群から選ばれる、請求項33の研磨材料。
【請求項35】
被膜が抗菌剤を含有する、請求項34の研磨材料。
【請求項36】
抗菌剤が抗細菌性を有し、細菌の存在を無くし又は低減する量で存在する、請求項35の研磨材料。
【請求項37】
被膜がシラン化法により塗布されている、請求項33の研磨材料。
【請求項38】
被膜がスプレーコーティング法により塗布されている、請求項33の研磨材料。
【請求項39】
さらにAg、Zn及びCuよりなる群から選ばれたイオンを含有し、前記研磨材料が抗菌性を有する、請求項28の研磨材料。
【請求項40】
前記研磨材料がAgイオンを含有する、請求項39の研磨材料。
【請求項41】
さらにAgNOを含有する、請求項28の研磨材料。
【請求項42】
前記研磨材料がゾル−ゲル法により製造されている、請求項27の研磨材料。
【請求項43】
前記研磨材料がゾル−ゲル法により製造されている、請求項28の研磨材料。
【請求項44】
請求項27又は28の研磨材料を組織に接触させることからなる、ヒト又は動物の組織を研磨する方法。
【請求項45】
その研磨作用が酸化アルミニウム研磨剤によりもたらされる研磨作用よりも優れる請求項27又は28の研磨材料を組織に接触させることからなる、ヒト又は動物の組織を研磨する方法。
【請求項46】
その研磨作用が実質的に丸いガラス・ビーズによりもたらされる研磨作用よりも優れる請求項27又は28の研磨材料を組織に接触させることからなる、ヒト又は動物の組織を研磨する方法。
【請求項47】
請求項27又は28の研磨材料をコーティング材料と混合することからなる、ヒト又は動物の組織を研磨するための研磨材料の調製方法。
【請求項48】
コーティング材料が抗菌剤、ローション剤、ビタミン類及び着色物質よりなる群から選ばれる、請求項47の方法。
【請求項49】
生物不活性ガラスもしくはセラミックスを含む研磨材料をヒト又は動物の組織に適用する皮膚研磨装置を用い、それによって皮膚研磨装置の詰まりが従来の酸化アルミニウム材料を用いた場合よりも少なくなる、皮膚研磨装置の操作方法。
【請求項50】
粒子が本質的にシリカからなる、請求項27の研磨材料。

【公表番号】特表2007−507426(P2007−507426A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528160(P2006−528160)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031239
【国際公開番号】WO2005/032499
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】