説明

組織維持の改善

本発明は、カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニスト(たとえばアデノシン)を局所麻酔薬(たとえばリグノカイン)と共に含む組成物を器官灌流時に投与するステップを含む外科処置からの組織、器官または細胞に対する損傷を低減する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、術後合併症(たとえば心臓手術後の心房細動)のリスクまたは発生率を結果として低下させる、(たとえば外科処置を容易にするために)医療的に誘発された活性低下による組織、器官または細胞に対する損傷を低減する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心停止法の間に心臓に起こりうるような正常な代謝産物流の混乱後に組織を保護および保存することに関するものである。本発明は、外科手術後に術後患者の回復を改善する方法にも関する。詳細には心臓手術後の、特に全身的ではなく心臓に直接適用された心停止法後の術後合併症を最小限にすることに対して、本発明は特定の用途を有する。
【背景技術】
【0002】
毎年世界中で実施される選択的開心術100万症例のうち、1〜3%の患者は回復室で死亡して、10%は左心室機能不全を伴って退院し、最大30%は心房性不整脈を経験し、24%の高リスク患者は3年以内で死亡するであろう。その上、前向き研究は、その血中の術後クレアチンキナーゼ(CK−MB)レベルがわずかに上昇した患者が、早期(初年)および晩期(3〜5年)罹患率および死亡率の著しくより高いリスクを有することを示している。周術期および術後死亡率および罹患率は、心臓手術中の医原性虚血再灌流障害と、不十分な心筋保護に関連している。加えて小児心臓手術では、幼児の50%超が低心拍出量を伴う周術期心筋障害を有する。20年超にわたって、医原性損傷のかなりの部分が心停止液の種類、組成および送達に関連づけられてきた。
【0003】
2000年には、実施された開心外科手術の約64%が冠動脈バイパスグラフト処置であり、24%が心臓弁置換または修復処置であり、約12%が先天性心疾患の修復に関連していた。約1.2%が新生児/小児であった。開心外科手術の大部分(80%超)は、血液または晶質性心停止液のどちらかを使用する心肺バイパスおよび選択的心停止法を必要とする。これらの処置の間、心臓は3時間、しかし時には最大4〜6時間停止させられることがある。3〜4時間によって引き起こされた心臓への損傷の量は、4時間の停止後には心臓が機能を回復する可能性がますます低く、回復しない可能性が高いほどである。
【0004】
心停止組成物は、手術中に心臓を停止または静止させるために使用されてきた。心停止薬は通常、担体によって部分的に希釈および混合される(たとえば血液4:晶質1の比)か、または晶質として単独で使用される。少量の心停止液/薬が大量の血液(たとえば血液66:晶質1の比)と混合される、「ミニプリージア(miniplegia)」または「マイクロプリージア(microplegia)と呼ばれる、処置のわずかな部分が実施される。ミニプリージアは、より大量が全身的に送達されることを必要とするのではなく、興味のある組織(たとえば心臓)に直接送達される。目的は心臓を停止させて、外科医が処置中に組織を手術して、組織への損傷(心停止法が解除されて、心臓が蘇生したときに、再灌流に発生しうる潜在的に実質的な損傷を含む)を最小限にするための「静止した無血野」を作成することであった。Dr.Melroseは1955年に、患者自身の血液をビヒクルとして利用して、心臓を停止させるためにクエン酸カリウムを大動脈内に投与した。1976年には、Dr.Hearseが晶質性心停止液の投与について記載した。2、3年後、Buckbergと同僚は、血液が酸素運搬能力、優れた腫脹および緩衝特性、ならびに内在性酸化防止剤を有するので、患者自身の血液を主な担体として使用することを提案した。全血心停止法はまた、大量の血液およびよりカリウムの少ない滴定を使用して改良され、それゆえ「ミニプリージア」という名称である。「ミニプリージア」という用語は、Menascheと同僚によって1990年代初期に造られた。ミニプリージア(またはマイクロプリージア)は、心臓の停止を達成して、虚血再灌流障害を低減するために、停止および添加剤の微量滴定と組合された酸素が豊富な血液を供給する。
【0005】
かなりの範囲の虚血性障害は、性質が全体的または局所的であるかにかかわらず、虚血事象の期間に依存する。虚血は酸素供給(冠血流および酸素運搬能力)および酸素需要(心臓の壁応力、心拍および収縮力または変力状態により決定)との間のミスマッチとして定義され、虚血の重症度は、続く障害を決定する重要な因子である。虚血の重症度は、側副血行によって相殺、そして中和さえされうる。「ミニプリージア」の大前提は、虚血、したがって障害を最小限にすることである。
【0006】
定義により、停止中の心好気的代謝の維持は、酸素需要に適応する酸素供給を必要とする。結果として、酸素需要が十分な心停止誘発および心静止の維持の間に酸素需要が90%を超えて急激に低下した場合、心臓が好気的代謝を維持するために、多数の因子または様式を満足させる必要がある。これらの様式は、次のようにまとめられる:(i)酸素は需要に適応する十分な量で存在する必要があり、今や、ヘマトクリットが少なくとも24%に等しいべきであるという説得力のある証拠がある;(ii)酸素は需要に適応する十分な流速で送達されねばならない;(iii)酸素は、時が経つにつれて消費されるので、外科医の視界を制限せずにできるだけ連続的に近い方法で送達されるべきである(たとえ「安全な」虚血時間が実験モデルにあろうとも、所与の患者において、心筋代謝が有酸素パターンから無酸素パターンに移行するであろう時点はもちろんのこと、本カットオフタイムマークを超えて起こりうる組織損傷の範囲および可逆性も、予測することは本質的に不可能である);(iv)酸素は、心筋にわたってできるだけ均一に送達されねばならない。冠動脈の堅固な狭窄と、さらに完全な閉塞が存在するときには、心停止法の均一な分布を確保するのには、順行投与経路単独よりも逆行、またなお良好には組合された逆行/順行手法がより有効であるという、説得力のある一連の証拠が今や存在する。
【0007】
早期再灌流、すなわち血流の復旧は未だに急性虚血から心筋を救助する最も有効な手段であるが、突然の酸素流入は逆説的に、壊死、不整脈および死を引き起こしうる。「再灌流障害」の範囲は、サイトカイン、白血球、活性酸素種およびフリーラジカルの発生を含む一連の炎症反応に関連付けられている。虚血心筋の再灌流は、最終的な死から組織を救助するために必要である。しかしながら短期間の虚血の後の再灌流でさえ、虚血それ自体の間に開始したプロセスの加速、または再灌流後に開始した新たな病態生理学的変化のどちらかを示す病理学的変化、に関連付けられる。再灌流障害の程度および範囲は、心筋における炎症反応によって影響されうる。虚血−再灌流は、好中球および冠血管内皮の両方を活性化するフリーラジカル、サイトカインおよび他の炎症誘発性メディエータの放出を促す。炎症プロセスは、内皮機能不全、微小血管虚脱および血流欠陥、心筋梗塞およびアポトーシスに至ることがある。特定のステップを標的とする薬理学的抗炎症療法は、梗塞サイズおよび心筋障害を低減させることが示されている。
【0008】
低体温は、きわめて初期から心筋保護に必須の構成要素である。焦点は虚血間隔の間に代謝を考えられる最低レベルに低下させることに常に当てられてきたので、本虚血エピソード中に心筋エネルギー貯蔵(アデノシン3リン酸およびグリコーゲン)は維持され、組織アシドーシスは回避される。しかしながら多くの研究者らは、10℃または25℃を使用する晶質性心停止法後の心筋回復のレベルがあまり異ならないことを見出していた。最近まで、心筋保護の主な焦点は、内部環境を維持するためのイオンポンピングなどの生細胞活動の維持継続を可能にする低レベルまで代謝を低下させることによって細胞エネルギーを節約する、心力不全を防止するための筋細胞収縮性を保存することであった。心停止法の間の心臓および全身温度を含む現在の技法にだけでなく、内皮および微小血管区画に対する心停止法の効果にも多くの関心がある。それゆえ内皮保存は筋細胞保存と同等に重要でありうる。
【0009】
現在の技法は、かなりの数の、術後に心房細動に罹患する患者をなおもたらす。患者は通例、術後に数日の集中治療を必要として、清明および可動性を回復するまで多少の時間がかかる。これらは現在の処置から生じる、一部は可逆性である損傷と、改良された技法への要求を反映している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、医療介入またはその他から生じるかにかかわらず、細胞の活性低下、すなわち静止の期間より生じる組織、器官および細胞損傷を低減することに関するものである。通例、それは細胞が外科的な目的、たとえば心臓手術のために誘発された心停止で故意に静止される用途を有する。本発明は本明細書において主に、組織維持の改善に重要な商業上の要求がある器官としての心臓に関して説明される。医療介入は心停止法、すなわち医療的に誘発された心臓の停止を含む。しかしながら本発明は心組織に限定されず、ニューロン;組織および細胞、腎組織、肺組織、筋組織などを含む他の器官にも等しく利用可能で有用である。本発明は、医療的に誘発された以外の活性低下、たとえば外傷、ショック、心臓発作、脳卒中および同様の事象の期間の後に器官を保護する用途も有する。
【0011】
「器官」という用語は本明細書ではその最も広い意味で使用され、組織および細胞を含む、特殊機能を作用させる体のいずれの部分およびその一部、たとえば細胞系または細胞小器官試料を指す。他の例としては、心臓などの循環器、肺などの呼吸器、腎臓または膀胱などの泌尿器、胃、肝臓、膵臓または脾臓などの消化器、陰嚢、睾丸、卵巣または子宮などの生殖器、脳などの神経器、精子または卵子などの胚細胞および皮膚細胞などの体細胞、心臓細胞、すなわち筋細胞、神経細胞、脳細胞または腎細胞が挙げられる。
【0012】
「組織」という用語は本明細書ではその最も広い意味で使用され、器官および細胞を含む、特殊機能を作用させる体のいずれの部分およびその一部、たとえば細胞系または細胞小器官試料を指す。他の例としては、動脈または静脈などの導血管、あるいは心臓などの循環器、肺などの呼吸器、腎臓または膀胱などの泌尿器、胃、肝臓、膵臓または脾臓などの消化器、陰嚢、睾丸、卵巣または子宮などの生殖器、脳などの神経器、精子または卵子などの胚細胞および皮膚細胞などの体細胞、心臓細胞(すなわち筋細胞)、神経細胞、脳細胞または腎細胞などが挙げられる。
【0013】
本明細書および請求項で使用されるような「含む(comprises)」という用語またはその文法的変形は、「含む(includes)という用語と同じであり、他の要素または機構の存在を除外するとして解釈されるべきでないことが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態において、本発明は、術後合併症(たとえば心臓手術後の心房細動)のリスクまたは発生率を結果として低下させる、(たとえば外科処置を容易にするために)医療的に誘発された活性低下による組織、器官または細胞に対する損傷を低減する方法を提供する。該方法は、カルシウムチャネル開口薬(opener)/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニスト(たとえばアデノシン)を局所麻酔薬(たとえばリグノカイン)と共に含む組成物を器官灌流時に投与するステップを含む。好ましくは、カルシウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシンあるいはアデノシン受容体アゴニストが使用される。
【0015】
好ましい形では、組成物は組織、器官または細胞に直接投与される。別の実施形態において、組成物は(ボーラスとしてよりも)実質的に連続的に投与される。本文脈では、「実質的に連続的に」は、投与のわずかな中断を許容する。
【0016】
したがって別の実施形態において、本発明は、(複数の)組織および/または(複数の)器官への損傷を低減するための、カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを局所麻酔薬と共に含む組成物を提供する。該組成物は、下で明示するような他の成分をさらに含みうる。ある実施形態において、カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストは、カルシウムチャネルアゴニストなどの他の成分によって置換される。
【0017】
本発明は、(複数の)組織および/または(複数の)器官への損傷を低減するための、特に心臓手術後の術後心房細動を低減するための薬剤の製造における、カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを局所麻酔薬と共に含む組成物の使用も提供する。
【0018】
一実施形態において、器官は心臓である。本実施形態において、組成物はおおよそクロスクランプが除去される時間に投与されうる。該組成物はまた、処置中に心臓がいったん停止されたら、すなわち心停止組成物が投与されたら投与されうる。
【0019】
好ましくは、組成物はマグネシウムカチオンを含む。硫酸マグネシウムはこれらの適切な供給源である。
【0020】
好ましくは、組成物は投与のために0〜37℃である。一部の実施形態において、約4〜15℃の温度が適切である。他の実施形態において、組成物は投与前に20〜37℃に加温される。
【0021】
本発明は、器官が再灌流されているときに組成物が投与される、および/または静止状態中に器官が灌流されている間に組成物が投与される方法も提供する。このことは外科処置の「維持」期と呼ばれることが多い。
【0022】
別の実施形態において、組成物は心停止液の投与前に「プレコンディショニング」ステップとして投与される。プレコンディショニングは、処置の対象である器官へ直接の、または対象への全身的な、組成物の投与によって実施されうる。プレコンディショニングステップは、保護効果を有することが観察されている。
【0023】
したがって本発明の好ましい一形式において、上記の種類の組成物は停止の誘発前に、維持中に、そして外科処置の回復期の一部として投与される。
【0024】
一実施形態において、本発明は、カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを局所麻酔薬と共に含む組成物を投与するステップを含む、心臓処置後の術後細動を低減する方法を提供する。好ましくは、組成物は処置の回復期中に投与される。
【0025】
本発明は、上記の方法への組成物の(特に後述の好ましい実施形態における)使用も提供する。組成物の本使用は、制限なく、心血管診断(冠動脈造影、心筋シンチグラフィ、二重房室結節伝導の非侵襲的診断)、心臓発作の処置での使用、蘇生治療、組織または細胞(グラフト血管を含む)の短期および長期貯蔵、開心術の以前、前、間または後の使用、血管形成術および他の治療介入を含む、多くの治療用途にまで及ぶ。
【0026】
一実施形態において、組成物はアデノシンおよびリグノカインを含む。特に組成物は約1:0.5〜4、特に1:2の重量比でアデノシンおよびリグノカインを含みうる。
【0027】
いずれの理論または作用様式に縛られることなく、保護は、膜興奮性の調節から、(i)特に細胞中のナトリウムおよびカルシウムイオン負荷の、イオン不均衡の低下、(ii)ギャップ結合伝達の調節を含みうる、代謝要求に対する電気伝導の心房および心室マッチングの改善、(iii)冠動脈の血管拡張および(ii)傷害に対する炎症反応の減弱に至る、多数の細胞内シグナル伝達経路までの多層システムを含むと考えられる。
【0028】
前処置および虚血および再灌流中の組成物の輸液は、致死的な不整脈からの保護を含む虚血組織障害からの連続保護を提供する。局所障害および炎症からの保護も、血管形成術中などのステントを血管内に配置するときに得られる。
【0029】
局所麻酔剤は、体の領域で可逆的な感覚消失を生じるために使用される薬物である。多くの局所麻酔剤が、カルボニル含有部分によって炭素鎖を通じて置換アミノ基に結合された芳香環より成る。一般に、そのカルボニル含有結合基によって定義された局所麻酔剤には2つのクラスがある。エステル剤としては、コカイン、アメソカイン、プロカインおよびクロロプロカインが挙げられるのに対して、アミドとしてはプリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、メキシレチンおよびリグノカインが挙げられる。他の目的に使用される多くの薬物は高濃度において、局所麻酔特性を所有する。これらとしては、オピオイド麻酔薬、ベータアドレナリン受容体アゴニスト、抗痙攣薬(ラモトリジンおよびリファリジン)および抗ヒスタミン薬が挙げられる。本発明による組成物の局所麻酔成分は、これらのクラス、またはその誘導体から、あるいは他の目的に使用されうる以外の薬物から選択されうる。好ましくは、該成分は局所麻酔特性も所有する。
【0030】
適切な局所麻酔剤はリグノカインである。本明細書において、リグノカインおよびリドカインは互換的に使用される。リグノカインは、ナトリウム高速チャネルを遮断することと、代謝機能を抑制することと、遊離サイトゾルカルシウムを低下させることと、細胞からの酵素放出を防止することと、おそらく内皮細胞を保護することと、筋フィラメント損傷を防止することとによって、おそらく局所麻酔剤として作用することができるので好ましい。より低い治療濃度では、リグノカインは通常、心房組織にほとんど効果を有さず、したがって心房細動、心房粗動、および上室頻拍症を処置するのに無効である。リグノカインはフリーラジカルスカベンジャ、抗不整脈薬でもあり、抗炎症特性および抗凝固亢進特性を有する。非麻酔的治療濃度において、リグノカインのような局所麻酔剤は電圧依存性のナトリウム高速チャネルを完全に遮断しないが、チャネル活性を下方制御して、ナトリウム流入を減少させうることも認識されねばならない。抗不整脈薬として、リグノカインは、通常、活動電位の第2相によって継続する低いナトリウム電流を標的とすると考えられ、結果として活動電位を低下させ、不応期を短縮する。
【0031】
リグノカインは、ナトリウム高速チャネルを遮断すると考えられる局所麻酔剤であり、内向きのナトリウム電流の大きさを縮小させることによって抗不整脈特性を有する。本明細書において、「リドカイン」および「リグノカイン」は互換的に使用される。活動電位の付随的な低下は、Ca2+選択性チャネルおよびNa/Ca2+交換を介した細胞へのカルシウム流入を直接低下させると考えられる。近年の報告も、リグノカインを再灌流中の心臓内でのヒドロキシルおよび一重項酸素などのフリーラジカルの除去と結び付けている。他の適切なナトリウムチャネル遮断薬の例としては、テトロドトキシンなどの毒液、ならびに薬物であるプリマキン、QX、HNS−32(CAS Registry# 186086−10−2)、NS−7、カッパ−オピオイド受容体アゴニストU50 488、クロベネチン、ピルジカイニド、フェニトイン、トカイニド、メキシレチン、RS100642、リルゾール、カルバマゼピン、フレカイニド、プロパフェノン、アミオダロン、ソタロール、イミプラミンおよびモリシジン、またはその誘導体のいずれかが挙げられる。他の適切なナトリウムチャネル遮断薬としては:ビンポセチン(アポビンカミン酸エチル);およびベータカルボリン誘導体、向知性ベータ−カルボリン(アンボカーブ、AMB)が挙げられる。
【0032】
本発明による組成物としては、カリウムチャネル開口薬が挙げられる。カリウムチャネル開口薬は、カリウムチャネルに作用してゲーティング機構を通じてそれらを開く薬剤である。このことは通例、膜を交差して、細胞の内側から外側へのその電気化学勾配に沿ってカリウムの流出をもたらす。それゆえカリウムチャネルは、伝達物質、ホルモン、または細胞機能を調節する薬物の作用の標的である。カリウムチャネル開口薬が、同じ結果でカリウムチャネルの活性も刺激するカリウムチャネルアゴニストを含むことも認識されるであろう。別のカリウムチャネルを開口または調節する多様なクラスの化合物があることも認識されるであろう。たとえば一部のチャネルは電圧依存性であり、一部の整流性カリウムチャネルはATP消耗、アデノシンおよびオピオイドに感受性であり、他は脂肪酸によって活性化され、他のチャネルはナトリウムおよびカルシウムなどのイオンによって調節される(すなわち細胞ナトリウムおよびカルシウムの変化に応答するチャネル)。さらに最近では、2ポアカリウムチャネルが発見され、静止膜電位の調節に関与するバックグラウンドチャネルとして機能すると考えられてきた。
【0033】
カリウムチャネル開口薬は:ニコランジル、ジアゾキシド、ミノキシジル、ピナシジル、アプリカリム、クロモクリムおよび誘導体U−89232、P−1075(選択性血漿膜KATPチャネル開口薬)、エマカリム、YM−934、(+)−7,8−ジヒドロ−6,6−ジメチル−7−ヒドロキシ−8−(2−オキソ−1−ピペリジニル)−6H−ピラノ[2,3−f]ベンズ−2,1,3−オキサジアゾール(NIP−121)、RO316930、RWJ29009、SDZPCO400、リマカリム、シマカリム、YM099、2−(7,8−ジヒドロ−6,6−ジメチル−6H−[1,4]オキサジノ[2,3−f][2,1,3]ベンズオキサジアゾール−8−イル)ピリジンN−オキシド、9−(3−シアノフェニル)−3,4,6,7,9,10−ヘキサヒドロ−1,8−(2H,5H)−アクリジンジオン(ZM244085)、[(9R)−9−(4−フルオロ−3−125ヨードフェニル)−2,3,5,9−テトラヒドロ−4H−ピラノ[3,4−b]チエノ[2,3−e]ピリジン−8(7H)−オン−1,1−ジオキシド]([125I]A−312110)、(−)−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(1,2,3−トリメチルプロピル)−2−ニトロエテン−1,1−ジアミン(Bay X 9228)、N−(4−ベンゾイルフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミン(ZD6169)、ZD6169(KATP開口薬)およびZD0947(KATP開口薬)、WAY−133537および新規なジヒドロピリジンカリウムチャネル開口薬A−278637から成る群より選択されうる。加えてカリウムチャネル開口薬は、BKアクチベータ(BK開口薬またはBK(Ca)型カリウムチャネル開口薬または高コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル開口薬とも呼ばれる)、たとえばベンズイミダゾロン誘導体NS004(5−トリフルオロメチル−1−(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン)、NS1619(1,3−ジヒドロ−1−[2−ヒドロキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン)、NS1608(N−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)尿素)、BMS−204352、レチガビン(またGABAアゴニスト)より選択されうる。中間(たとえばベンズオキサゾール、クロルゾキサゾンおよびゾキサゾラミン)および低コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル開口薬もある。
【0034】
加えてカリウムチャネル開口薬は、間接カルシウムアンタゴニストとして作用することがあり、すなわちそれらは第3相再分極の加速により心臓活動電位持続時間を短縮することによって細胞へのカルシウム流入を低減するように作用して、それゆえプラトー期を短縮する。減少したカルシウム流入は、L型カルシウムチャネルと関与すると考えられるが、他のカルシウムチャネルも関与しうる。
【0035】
本発明の一部の実施形態は、直接カルシウムアンタゴニストを使用し、その主な作用は細胞へのカルシウム流入を減少させることである。これらは下でさらに詳細に説明するカルシウムチャネル遮断薬の少なくとも5つの主要なクラスより選択される。これらのカルシウムアンタゴニストは、細胞へのカルシウム流入を阻害することによって一部の効果をカリウムチャネル開口薬、特にATP感受性カリウムチャネル開口薬と共有する。
【0036】
アデノシンは、カリウムチャネル開口薬またはアゴニストとして特に好ましい。アデノシンは、カリウムチャネルを開くこと、細胞を過分極させること、代謝機能を低下させること、内皮細胞をおそらく保護すること、組織のプレコンディショニングを強化すること、虚血または損傷から保護することが可能である。アデノシンの作用は、アデノシンが多くの広域特性を有するので複雑である。アデノシンは冠血流を上昇させ、細胞膜を過分極させて、虚血および再灌流中に保護することが示されている。アデノシンは、「早期」および「遅延」プレコンディショニング「トリガ」または心臓を虚血性障害から保護する薬剤としても作用する。アデノシンの心臓保護特性の一部は、アデノシン受容体サブタイプ(A1、A2a、A2bおよびA3)の1つ以上の活性化であると考えられる。アデノシンの保護の多くは、A1およびA3受容体活性化に基づいており、それらの関連する伝達経路は、細胞完全性のプレコンディショニング、保護および保存につながっている。アデノシンはA1受容体を活性化することにより、洞房結節ペースメーカー速度の低下(負の変時性)、房室(A−V)結節インパルス伝導の遅延(負の変伝導性)に関与し、心房収縮性(負の変力性)を低下させ、カテコールアミンの効果(抗アドレナリン作用)を阻害することも公知である。アデノシンのA1によって刺激された負の変時、変伝導および変力効果は、薬物がアデニルシクラーゼの活性を低下させる、内向き整流カリウム電流(IK−Ado)を活性化する作用、リン脂質ターンオーバーの阻害、ATP感受性Kチャネルの活性化、L型Ca2+電流に対するカテコールアミンの効果の阻害、およびAV結節細胞における一酸化窒素シンターゼの活性化に関連している。A3受容体も直接心臓保護効果を有することが示されており、A2受容体は障害に応答する強力な血管拡張および抗炎症作用を有する。アデノシンは間接カルシウムアンタゴニスト、血管拡張薬、抗不整脈薬、抗アドレナリン作動薬、フリーラジカルスカベンジャ、停止剤、抗炎症剤(好中球活性化を減弱する)、鎮痛薬、代謝剤および考えられる一酸化窒素供与体でもある。
【0037】
ベータ遮断薬などの抗アドレナリン作動薬、たとえばエスモロール、アテノロール、メトプロロールおよびプロプラノロールが、細胞へのカルシウム流入を減少させるカリウムチャネル開口薬の代わりに、またはカリウムチャネル開口薬と併せて使用されうることが認識されるであろう。好ましくは、ベータ遮断薬はエスモロールである。同様に、アルファ(1)アドレナリン受容体アゴニスト、たとえばプラゾシンは、細胞へのカルシウム流入、したがってカルシウム負荷を減少させる、カリウムチャネル開口薬の代わりに、またはカリウムチャネル開口薬と併せて使用されうる。
【0038】
本発明の一態様において、
抗アドレナリン作動薬;および
局所麻酔剤;
の有効量の送達を含む、虚血または再灌流中の組織をプレコンディショニング、保護および/または組織への損傷を低減する組成物が提供される。
【0039】
本発明の本態様にしたがって、抗アドレナリン作動薬および局所麻酔剤の有効量を含む組成物も提供される。
【0040】
好ましくは、抗アドレナリン作動薬はベータ遮断薬である。好ましくは、ベータ遮断薬はエスモロールである。
【0041】
アデノシンは、細胞ナトリウムおよびカルシウム負荷を低下させるナトリウム−カルシウム交換体を直接阻害することも公知である。ナトリウム−カルシウム交換体の阻害剤はカルシウム流入の低減をもたらし、アデノシンの効果を増幅させることが認識されるであろう。Na/Ca2+交換阻害剤は、ベンズアミル、KB−R7943(2−[4−(4−ニトロベンジルオキシ)フェニル]エチル)イソチオ尿素メシラート)またはSEA0400(2−[4−[(2,5−ジフルオロフェニル)メトキシ]フェノキシ]−5−エトキシアニリン)を含みうる。
【0042】
アデノシンの特性の1つは心臓および冠血管細胞へのカルシウム流入およびナトリウム流入を低減させることであるため、処置の前、間、および/または後にカルシウムおよびナトリウム流入の低減(または細胞中のカルシウム振動の低下)をもたらす化合物が、細胞へのカルシウム流入を低減させるアデノシンの代わりに、またはアデノシンと併せて使用されうることがさらに認識されるであろう。このような化合物は、3つの異なるクラスのカルシウムチャネル遮断薬:1,4−ジヒドロピリジン(たとえばニトレンジピン)、フェニルアルキルアミン(たとえばベラパミル)、およびベンゾチアゼピン(たとえばジルチアゼム、ニフェジピン)より選択されうる。
【0043】
カルシウムチャネル遮断薬は、カルシウムアンタゴニストまたはカルシウムブロッカとも呼ばれる。それらは心拍数および収縮性を低下させて、血管を弛緩させるために臨床的に使用されることが多い。それらは虚血または一部の不整脈によって引き起こされる高血圧、アンギナまたは不快を処置するために使用でき、それらはベータ遮断薬と多くの効果を共有する(上の議論を参照)。
【0044】
多様な化学構造を持つカルシウムチャネルブロッカの5つの主要なクラスが公知である:1.ベンゾチアゼピン:たとえばジルチアゼム、2.ジヒドロピリジン:たとえばニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピンおよびその他多数、3.フェニルアルキルアミン:たとえばベラパミル、4.ジアリールアミノプロピルアミンエーテル;たとえばベプリジル、5.ベンズイミダゾール置換テトラリン:たとえばミベフラジル。
【0045】
従来のカルシウムチャネル遮断薬は、これらの薬物が心血管系に選択的効果を有する理由を説明するのに役立つ、心臓および平滑筋に豊富であるL型カルシウムチャネル(「低速チャネル」)に結合する。各種のクラスのL型カルシウムチャネルブロッカが、主要なチャネル形成サブユニット(アルファ2、ベータ、ガンマ、デルタサブユニットも存在する)である、アルファ1−サブユニットの各種の部位に結合する。組織選択性に寄与しうるL型チャネルの各種サブクラスが存在する。さらに近年、各種の特異性を備えた新規なカルシウムチャネル遮断薬も開発されており、たとえばベプリジルはL型カルシウムチャネル遮断活性に加えてNaおよびKチャネル遮断活性を備えた薬物である。別の例はミベフラジルであり、L型カルシウムチャネル遮断活性と同様にT型カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0046】
3つの一般的なカルシウムチャネル遮断薬はジルチアゼム(カルジゼム)、ベラパミル(カラン)およびニフェジピン(プロカルジア)である。ニフェジピンおよび関連ジヒドロピリジンは、正常な用量では房室伝導系または洞房結節に対して著しい直接効果を有せず、したがって伝導または自動性に直接効果を有さない。一方、他のカルシウムチャネル遮断薬は、負の変時/変伝導効果(ペースメーカー活性/伝導速度)を有さない。たとえばベラパミル(およびより狭い範囲でジルチアゼム)は、AV伝導および系およびSA結節での低速チャネルの回復速度を低下させて、したがってSA結節ペースメーカー活性を抑制し、伝導を低速化させるように直接作用する。これらの2つの薬物は周波数および電圧依存性であり、迅速に分極している細胞においてそれらをより有効にする。ベラパミルはまた、心室機能のAV遮断または激しい抑制の可能性のために、ベータ遮断薬との併用が禁忌である。加えてミベフラジルは、負の変時および変伝導効果を有する。カルシウムチャネル遮断薬(特にベラパミル)は、基礎となる機構が血管痙攣を伴う場合に、不安定なアンギナを処置するのにも特に有効でありうる。
【0047】
オメガコノトキシンMVIIA(SNX−111)はN型カルシウムチャネル遮断薬であり、鎮痛薬としてモルヒネの100〜1000倍強力であると報告されているが、習慣性ではない。本コノトキシンは、難治性疼痛を処置するために研究されている。SNX−482は肉食性クモ毒液の毒液からのさらなる毒素であり、R型カルシウムチャネルを遮断する。該化合物はアフリカ産タランチュラのヒステロクラテス・ギガスの毒液より単離され、記載された最初のR型カルシウムチャネルブロッカである。R型カルシウムチャネルは、それが脳機能の制御に寄与する体の本来の伝達ネットワークで役割を果たすと考えられている。動物界からの他のカルシウムチャネルブロッカとしては、南アフリカ産サソリからのクルトキシン、アフリカ産タランチュラからのSNX−482、オーストラリアン・タイパン・スネークからのタイカトキシン、ジョウゴグモからのアガトキシン、ブルーマウンテン・ジョウゴグモからのアトラコトキシン、ウミカタツムリからのコノトキシン、チャイニーズバードスパイダーからのHWTX−I、南アフリカ産ローズタランチュラからのグラムモトキシン(Grammotoxin)SIAが挙げられる。本リストは、カルシウム拮抗効果を有するこれらの毒素の誘導体も含む。
【0048】
直接ATP感受性カリウムチャネル開口薬(たとえばニコランジル、アプリカレム)または間接ATP感受性カリウムチャネル開口薬(たとえばアデノシン、オピオイド)も間接カルシウムアンタゴニストであり、組織へのカルシウム流入を低減させる。カルシウムアンタゴニストとしても作用するATP感受性カリウムチャネル開口薬で考えられる1つの機構は、第3相再分極を加速して、それゆえプラトー相を短縮することによる心臓活動電位持続時間の短縮である。プラトー相の間、カルシウムの正味流入は、カリウムチャネルを通じたカリウムの流出によって平衡にされうる。向上した第3相再分極は、L型カルシウムチャネルを遮断または阻害することによって細胞へのカルシウム流入を阻害して、組織細胞へのカルシウム(およびナトリウム)過負荷を防止しうる。
【0049】
併用療法での潜在的使用としては、心停止法、血栓溶解薬を用いる、または用いない虚血症候群の管理、心臓手術(オンおよびオフポンプ)、不整脈管理、冠動脈インターベンション(バルーンおよびステント)、虚血ストレスに対する器官、組織または細胞のプレコンディショニング、長期器官または細胞保存、周術期および術後疼痛管理、周術期および術後抗炎症処置、周術期および術後抗凝固方法、蘇生療法、心血管診断および他の関連治療介入が挙げられる。抗凝固方法への潜在的使用は、深部静脈血栓ならびに血管、腰、心臓および全身手術などの手術に関連する同様の障害および合併症の処置にありうる。
【0050】
カルシウムチャネル遮断薬は、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、レルカニジピン、テロジピン、アンギゼム(angizem)、アルチアゼム、ベプリジル、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピンおよびカベロおよび他のラセミ変種より選択されうる。加えて、カルシウム流入がアデノシンの代わりに、またはアデノシンと併用して使用されうる他のカルシウム遮断薬によって阻害可能であり、他のカルシウム遮断薬としては、海生動物または陸生動物からの多数の毒液、たとえばN型カルシウムチャネルを選択的に阻害するオメガ−コノトキシンGVIA(巻貝のアンボイナから)またはRおよびP/Q型カルシウムチャネルをそれぞれ選択的に遮断するジョウゴグモであるヒナタクサグモからのオメガ−アガトキシンIIIAおよびIVAが挙げられることが認識されるであろう。カルシウムおよびナトリウム流入を低減して、それにより心臓保護を補助するために、NS−7などの混合電位作動型カルシウムおよびナトリウムチャネルもある。
【0051】
カルシウムチャネル遮断薬が局所麻酔剤の代わりに、または局所麻酔剤と併せて使用されうることが認識されるであろう。
【0052】
それゆえ本発明の別の態様において、
カルシウムチャネル遮断薬;および
カリウムチャネル開口薬またはアデノシン受容体アゴニスト;
の有効量の送達を含む、虚血または再灌流中の組織への損傷をプレコンディショニング、保護および/または低減する組成物が提供される。
【0053】
本発明の本態様にしたがって、カルシウムチャネル遮断薬および局所麻酔剤の有効量を含む組成物も提供される。好ましくは、カルシウムチャネル遮断薬はニフェジピンである。
【0054】
別の実施形態において、本発明による組成物は追加のカリウムチャネル開口薬をさらに含む。好ましくは、追加のカリウムチャネル開口薬はジアゾキシドである。ジアゾキシドは、イオンおよび量制御、酸化的リン酸化およびミトコンドリア膜完全性を保存すると考えられる(濃度依存性と思われる)。ジアゾキシドは、再酸素負荷時のミトコンドリア酸化ストレスを低下させることによって心臓保護も与える。カリウムチャネル開口薬の保護効果がミトコンドリア中での活性酸素種生成の調節と関連しているという一部の証拠もある。
【0055】
本発明による組成物は、アデノシン受容体アゴニストを含む。アデノシン受容体アゴニストが、受容体に直接または間接的の両方で作用して受容体の活性化を生じるか、あるいは同じ正味の効果を有する受容体の作用を模倣する化合物を含むことが認識されるであろう。
【0056】
適切なアデノシン受容体アゴニストは:N−シクロペンチルアデノシン(CPA)、N−エチルカルボキサミドアデノシン(NECA)、2−[p−(2−カルボキシエチル)フェネチル−アミノ−5’−N−エチルカルボキサミドアデノシン(CGS−21680)、2−クロロアデノシン、N−[2−(3,5−デメトキシフェニル)−2−(2−メトキシフェニル)エチルアデノシン、2−クロロ−N−シクロペンチルアデノシン(CCPA)、N−(4−アミノベンジル)−9−[5−(メチルカルボニル)−ベータ−D−ロボフラノシル]−アデニン(AB−MECA)、([IS−[1a,2b,3b,4a(S)]]−4−[7−[[2−(3−クロロ−2−チエニル)−1−メチル−プロピル]アミノ]−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジル−3−イル]シクロペンタンカルボキサミド(AMP579)、N−(R)−フェニルイソプロピルアデノシン(R−PLA)、アミノフェニルエチルアデノシン9APNEA)およびシクロヘキシルアデノシン(CHA)より選択される。その他としては、N−[3−(R)−テトラヒドロフラニル]−6−アミノプリンリボシド(CVT−510)などの完全アデノシンA1受容体アゴニスト、またはCVT−2759などの部分アゴニストおよびPD81723などのアロステリックエンハンサが挙げられる。他のアゴニストとしては、ヒトアデノシンA1受容体に高い親和性を備えた非常に選択性のアゴニストである、N−シクロペンチル−2−(3−フェニルアミノカルボニルトリアゼン−1−イル)アデノシン(TCPA)であり、A1アデノシン受容体のアロステリックエンハンサとしては、2−アミノ−3−ナフトイルチオフェンが挙げられる。CCPAは特に好ましいアデノシン受容体アゴニストである。CCPAはA1アデノシン受容体アゴニストである。
【0057】
それゆえ別の態様において、本発明は:
カリウムチャネル開口薬またはアデノシン受容体アゴニスト;
局所麻酔剤;および
CCPA;
の有効量を含む、虚血または再灌流中の組織をプレコンディショニング、保護および/または組織への損傷を低減する組成物を提供する。
【0058】
オピオイドは、オピオイドアゴニストとしても公知であり、またはオピオイドアゴニストとも呼ばれ、アヘン(ギリシャ語opion、ケシ乳液)またはモルヒネ様特性を阻害して、特に周術期および術後の両方で疼痛を管理するために中程度から強力な鎮痛薬として一般に臨床的に使用される薬物の群である。オピオイドの他の薬理学的効果としては、嗜眠、呼吸抑制、気分変動および意識消失を伴わない意識混濁が挙げられる。オピオイドはまた、正常な代謝率および正常な中核体温の下落を特徴とする休眠の形である、冬眠のプロセスで「トリガ」の一環として関与すると考えられる。この冬眠状態では、組織は、そうでなければ低下した酸素および代謝燃料供給によって引き起こされうる損傷からより良好に保存され、虚血再灌流障害から保護される。オピオイドペプチドには3つの種類:エンケファリン、エンドルフィンおよびダイノルフィンがある。
【0059】
オピオイドはアゴニストとして作用して、心臓、脳および他の組織で立体特異的および飽和結合部位と相互作用する。3つの主要なオピオイド受容体、すなわちミュー、カッパ、およびデルタ受容体が同定およびクローニングされている。3つすべての受容体は結果として、Gタンパク質共役受容体ファミリに分類されている(該クラスはアデノシンおよびブラジキニン受容体を含む)。オピオイド受容体はさらにサブタイプに分けられ、たとえばデルタ受容体は2つの受容体、デルタ−1およびデルタ−2を有する。
【0060】
オピオイドの心血管効果は無処置の体内へ中枢的(すなわち視床下部および脳幹の心血管および呼吸中枢にて)および末梢的(すなわち心筋細胞ならびに脈管構造に対する直接および間接効果)の両方で割り当てられる。たとえばオピオイドは、血管拡張に関与することが示されている。心臓および心血管系に対するオピオイドの作用の一部は、直接のオピオイド受容体媒介作用または間接的な用量依存性非オピオイド受容体介在作用、たとえばオピオイド、たとえばアリールアセトアミド薬物の抗不整脈作用によって観察されたイオンチャネル遮断を含みうる。心臓が3種類のオピオイドペプチド、すなわちエンケファリン、エンドルフィンおよびダイノルフィンを合成または産生できることも公知である。しかしながらデルタおよびカッパオピオイド受容体のみが心室筋細胞で同定されている。
【0061】
いずれの作用様式に縛られることなく、オピオイドは、虚血性損傷を制限することと、不整脈の発生を低減することとによって心臓保護効果を与えると考えられ、虚血の間に自然に放出される高レベルの損傷を与える薬剤または化合物に対抗するために産生される。これは筋細胞膜およびミトコンドリア膜におけるATP感受性カリウムチャネルの活性化によって媒介され、カリウムチャネルの開口に関与している。さらにオピオイドの心臓保護効果は、筋細胞膜およびミトコンドリア膜におけるATP感受性カリウムチャネルの活性化によって媒介されることも考えられる。それゆえオピオイドがカリウムチャネル開口薬またはアデノシン受容体アゴニストの代わりに、またはそれと併せて使用されうると考えられるのは、それらもカリウムチャネルの間接的な開口に関与しているためである。
【0062】
オピオイドがオピオイド受容体に直接および間接的の両方で作用する化合物を含むことが認識されるであろう。オピオイドは間接的な用量依存性の非オピオイド受容体媒介作用、たとえばオピオイドの抗不整脈作用と共に観察されたイオンチャネル遮断も含む。
【0063】
それゆえ本発明の別の態様において、
オピオイド;および
局所麻酔剤;
の有効量の送達を含む、虚血または再灌流中の器官、組織または細胞をプレコンディショニング、保護および/または器官、組織または細胞への損傷を低減する組成物が提供される。
【0064】
本発明の本態様にしたがって、オピオイドおよび局所麻酔剤の有効量を含む組成物も提供される。好ましくは、オピオイドはエンケファリン、エンドルフィンおよびダイノルフィンより選択される。好ましくは、オピオイドはデルタ、カッパおよび/またはミュー受容体を標的とするエンケファリンである。さらに好ましくは、オピオイドはデルタ−1−オピオイド受容体アゴニストおよびデルタ−2−オピオイド受容体アゴニストより選択される。D−Pen2,5]エンケファリン(DPDPE)は、特に好ましいデルタ−1−オピオイド受容体アゴニストである。
【0065】
本発明の別の実施形態において、抗酸化剤の有効量をさらに含む本発明による組成物が提供される。抗酸化剤は一般に、組織中の酸化の損傷効果に対抗可能である酵素または他の有機物質である。本発明による組成物の抗酸化成分は:アロプリノール、カルノシン、ヒスチジン、コエンザイムQ10、n−アセチル−システイン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンレダクターゼ(GR)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GP)モジュレータおよびレギュレータ、カタラーゼおよび他の金属結合酵素、NADPHおよびAND(P)Hオキシダーゼインヒビタ、グルタチオン、U−74006F、ビタミンE、トロロックス(ビタミンEの溶解形)、他のトコフェロール(ガンマおよびアルファ、ベータ、デルタ)、トコトリエノール、アスコルビン酸、ビタミンC、ベータカロテン(ビタミンAの植物形)、セレン、ガンマリノール酸(GLA)、アルファリポ酸、尿酸(尿酸塩)、クルクミン、ビリルビン、プロアントシアニジン、没食子酸エピガロカテキン、ルテイン、リコピン、ビオフラボノイド、ポリフェノール、トロロックス(登録商標)、ジメチルチオ尿素、テンポール(登録商標)、カロテノイド、コエンザイムQ、メラトニン、フラボノイド、ポリフェノール、アミノインドール、プロブコールおよびニテカポン、21−アミノステロイドまたはラザロイド、スルフヒドリル含有化合物(チアゾリジン、エブセレン、ジチオールエチオン)、およびN−アセチルシステインから成る群の1つ以上より選択されうる。他の抗酸化剤としては、心筋梗塞患者の動脈性高血圧および心不全の処置に使用されるACEインヒビタ(カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル)が挙げられる。ACEインヒビタは、活性酸素種を除去することによって、再酸素負荷された心筋にその有益な影響を及ぼす。また使用されうる他の抗酸化剤としては、ベータ−メルカプトプロピオニルグリシン、O−フェナントロリン、ジチオカルバメート、セレギリンが挙げられ、鉄キレート剤のデスフェリオキサミン(デスフェラール)は実験用梗塞モデルで使用されており、そこであるレベルの抗酸化保護を及ぼした。スピントラップ剤、たとえば5’−5−ジメチル−1−ピロリドン−N−オキシド(DMPO)および(a−4−ピリジル−1−オキシド)−N−t−ブチルニトロン(POBN)も抗酸化剤として作用する。他の抗酸化剤としては:ニトロンラジカルスカベンジャのアルファ−フェニル−tert−N−ブチルニトロン(PBN)および誘導体PBN(2硫黄誘導体);OHフリーラジカルの特異的スカベンジャであるN−2−メルカプトプロピオニルグリシン(MPG);リポオキシゲナーゼインヒビタノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA);アルファリポ酸; 硫酸コンドロイチン;L−システイン;オキシプリノールおよび亜鉛が挙げられる。
【0066】
好ましくは、抗酸化剤はアロプリノール(1H−ピラゾロ[3,4−α]ピリミジン−4−オール)である。アロプリノールは、酵素キサンチンオキシダーゼを生成する活性酸素種の競合的インヒビタである。アロプリノールの抗酸化特性は、酸化ストレス、ミトコンドリア損傷、アポトーシスおよび細胞死を低減することによって、心筋および内皮機能を保存するのを補助しうる。加えてプロテアーゼインヒビタは、心肺バイパスを用いて心臓手術を受けている患者、およびAIDSなどの炎症反応が高まった他の患者または慢性腱損傷の処置において、全身炎症応答を減弱する。一部の広域プロテアーゼインヒビタ、たとえばアプロチニンも、心臓バイパスなどの外科手術での失血および輸血の必要を低減する。
【0067】
本発明の別の実施形態において、ナトリウム水素交換インヒビタの有効量をさらに含む本発明による組成物が提供される。ナトリウム水素交換インヒビタは、細胞に流入するナトリウムおよびカルシウムを低減する。ナトリウム水素交換インヒビタは、アミロライド、カリポリド、エニポリド、トリアムテレンならびにEMD84021、EMD94309、EMD96785およびHOE642およびT−162559(Na/H交換体のアイソフォームのインヒビタ)から成る群の1つ以上より選択されうる。好ましくは、ナトリウム水素交換インヒビタはアミロライドである。アミロライドは、ナトリウムプロトン交換体(Na/H交換体、しばしばNHE−1とも省略)を阻害して、細胞に流入するカルシウムを低減する。虚血の間、過剰な細胞プロトン(または水素イオンは)はNa/H交換体を介してナトリウムに交換される。
【0068】
したがって本発明の別の態様は、
Na/H交換インヒビタ;および
局所麻酔剤
の有効量の送達を含む、虚血または再灌流中の組織をプレコンディショニング、保護および/または組織への損傷を低減する組成物を提供する。
【0069】
好ましくは、Na/H交換インヒビタはアミロライドである。
【0070】
本発明のなお別の実施形態において、組織内の細胞中のマグネシウム量を増加させる量のマグネシウム源;および/または組織内の細胞中のカルシウム量を増加させる量のカルシウム源の有効量をさらに含む、本発明による組成物が提供される。
【0071】
増加したマグネシウムおよび少量のカルシウムは、器官の虚血および再酸素負荷中の保護と関連付けられてきた。該作用は低下したカルシウム負荷のためであると考えられる。好ましくは、マグネシウムは0.5mM〜20mMの間の、さらに好ましくは2.5mMの濃度で存在する。好ましくは、存在するカルシウムは0.1mM〜2.5mMの間の、さらに好ましくは0.3mMの濃度である。別の態様において、増加したマグネシウムの有効量をさらに含む、本発明による組成物も提供される。
【0072】
本発明による組成物は、不透過剤(impermeant)または組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物も含みうる。組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物は通例、不透過剤または受容体アンタゴニストまたはアゴニストである。細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物は、水の移動、すなわち細胞外環境と細胞内環境との間の水の移動を制御する傾向にある。したがってこれらの化合物は浸透圧の制御または調節に関与している。1つの結果は、組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物が、浮腫、たとえば虚血障害の間に発生しうる浮腫に関連する細胞膨潤を低減することである。
【0073】
本発明による不透過剤は:スクロース、ペンタスターチ、ヒドロキシエチルデンプン、ラフィノース、マンニトール、グルコナート、ラクトビオナート、およびコロイドから成る群の1つ以上より選択されうる。コロイドはとしては、アルブミン、ヘタスターチ、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン40およびデキストラン60が挙げられる。浸透圧目的で選択されうる他の化合物としては、多価アルコール(ポリオール)および糖、他のアミノ酸およびアミノ酸誘導体、ならびにメチル化アンモニウムおよびスルホニウム化合物を含む動物界に見いだされる浸透圧調節物質の主要なクラスによる化合物が挙げられる。
【0074】
細胞膨潤は、器官回収、保存および外科的移植の間に重要でありうる炎症反応からも生じうる。重要な炎症誘発性神経ペプチドであるサブスタンスPは、細胞浮腫を引き起こすことが公知であり、したがってサブスタンスPのアンタゴニストは細胞膨潤を低減しうる。実際にサブスタンスPのアンタゴニスト(−特異性ニューロキニン−1)受容体(NK−1)は、炎症性肝臓損傷、すなわち浮腫形成、好中球浸潤、肝細胞アポトーシス、および壊死を低減することが示されている。2つのこのようなNK−1アンタゴニストとしては、CP−96,345または[(2S,3S)−シス−2−(ジフェニルメチル)−N−((2−メトキシフェニル)−メチル)−1−アザビシクロ(2.2.2.)−オクタン−3−アミン(CP−96,345)]およびL−733,060または[(2S,3S)3−([3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メトキシ)−2−フェニルピペリジン]が挙げられる。R116301または[(2R−トランス)−4−[1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−2−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−N−(2,6−ジメチルフェニル)−1−アセトアミド(S)−ヒドロキシブタンジオアート]は、別の特異性の活性ニューロキニン−1(NK(1))受容体アンタゴニストであり、ヒトNK(1)受容体(K(i):0.45nM)へのナノモル未満の親和性およびNK(2)およびNK(3)受容体に対して200倍を超える選択性を備えている。細胞膨潤をまた低減しうるニューロキニン受容体2(NK−2)のアンタゴニストとしてはSR48968が挙げられ、NK−3のアンタゴニストはSR142801およびSB−222200が挙げられる。シクロスポリンAを使用する透過性遷移の遮断およびミトコンドリア内電位の膜電位低下も、単離脳切片での虚血誘発細胞膨潤を低減することを示している。加えて、グルタメート受容体アンタゴニスト(AP5/CNQX)および活性酸素種スカベンジャ(アスコルベート、トロロックス(登録商標)、ジメチルチオ尿素、テンポール(登録商標))も、細胞膨潤の低減を示した。それゆえ組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物は、これらの化合物のいずれか1つから選択することもできる。
【0075】
次のエネルギー物質も不透過剤として作用しうることも認識されるであろう。適切なエネルギー物質は:グルコースおよび他の糖、ピルベート、ラクテート、グルタメート、グルタミン、アスパルテート、アルギニン、エクトイン、タウリン、N−アセチル−ベータ−リジン、アラニン、プロリンならびに他のアミノ酸およびアミノ酸誘導体、トレハロース、フロリドシド、グリセロールおよび他の多価アルコール(ポリオール)、ソルビトール、ミオイノシトール、ピニトール、インスリン、アルファ−ケトグルタレート、マラート、スクシナート、トリグリセリドおよび誘導体、脂肪酸およびカルニチンならびに誘導体から成る群の1つ以上より選択されうる。
【0076】
好ましくは、組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物はスクロースである。スクロースは不透過剤として水の移動を低減する。不透過剤、たとえばスクロース、ラクトビオナートおよびラフィノースはあまりに大きいので細胞に流入できず、それゆえ組織内の細胞外スペースに残存して、生じた浸透力が特に組織の貯蔵中に発生する、そうでなければ組織を損傷する細胞膨潤を防止する。
【0077】
好ましくは、組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物の濃度は、5〜500mMである。通例、これは組織内の細胞による水の摂取を低減するのに有効な量である。さらに好ましくは、組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物の濃度は、約20〜100mMである。さらになお好ましくは、組織内の細胞による水の摂取を最小化または低減する化合物の濃度は、約70mMである。
【0078】
本発明の別の好ましい実施形態において、
カリウムチャネル開口薬またはアデノシン受容体アゴニスト;および
局所麻酔剤;
の有効量を含み、
ジアゾキシド;
オピオイド;
抗酸化剤;
抗アドレナリン作動薬;
ナトリウム水素交換インヒビタ:
カルシウムチャネル遮断薬;
マグネシウム源;および
カルシウム源;
の有効量をさらに含む、本発明による組成物が提供される。
【0079】
本発明の組成物は、心臓移植を含む開心外科手術中に心臓をプレコンディショニング、保護および/または保存するのに特に有用である。他の用途としては、心臓発作、「拍動下」手術、血管形成または血管造影を含む心血管介入の前、間または後の心臓損傷を低減することが挙げられる。たとえば組成物は、心臓発作に罹患した、または心臓発作を発症している対象に投与されて、ストレプトキナーゼなどの血栓溶解薬の投与時に使用されうる。血栓が溶解するので、組成物の存在は心臓をさらなる障害、たとえば再灌流障害から保護する。
【0080】
組成物は、各種の期間にわたって正常な流れ、栄養素および/または酸素が欠乏した心臓などの器官のこのような部分において保護剤として特に有効である。たとえば組成物は、既存でありうる、または医療介入によって誘発されうる虚血を処置するのに有用でありうる。
【0081】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、心停止組成物および/または心保護組成物である。
【0082】
本発明の別の態様により、器官をプレコンディショニング、保護および/または保存する薬剤の製造における本発明による組成物の使用が提供される。
【0083】
本発明の本態様の好ましい実施形態において、使用の前および/または間に酸素源によって組成物に酸素供給することが好ましい。酸素源は、酸素が主成分である酸素ガス混合物でありうる。酸素はたとえばCOによって混合されうる。好ましくは、酸素ガス混合物は95%のOおよび5%のCOである。酸素ガス混合物による酸素付加がミトコンドリア酸化を維持して、このことが組織の筋細胞および内皮の保存を補助することが考慮される。
【0084】
組成物中に存在する活性成分の量は対象の性質、停止、保護および/または保存される器官の種類、および提案された用途に依存するであろうことが認識されるであろう。開心外科手術中に心停止を必要とするヒト対象の場合、アデノシンの濃度は、好ましくは約0.001〜約2mM、さらに好ましくは約0.01〜約10mM、最も好ましくは約0.05〜約5mMであり、リドカインの濃度は、好ましくは約0.001〜約2mM、さらに好ましくは約0.01〜約10mM、最も好ましくは約0.05〜約5mMである。
【0085】
器官をプレコンディショニング、停止、維持、蘇生または灌流するには、器官を浸漬するのに適切な組成物の形は、維持および回復期には0.001ミリモル/リットル〜0.10ミリモル/リットルの、そして心臓または他の器官を停止するためには0.10〜10ミリモル/リットルのアデノシンの濃度範囲を有する。上記のように、リグノカインの濃度は同じレベルであることが多いが、絶対量および相対量はどちらも変化しうる。1:3のアデノシン:リグノカインの比が、維持および回復期に適切である。組成物は、経静脈、動脈、腹腔内、冠内(順行または逆行)、硬膜外および脳内経路を含む多数の経路の1つ以上を通じて送達されうる。それらは晶質単独として、または1:1(血液1:晶質1希釈物)、1:4(血液1:晶質4希釈物)〜64:1(血液64:晶質1希釈物)またはより高い血液比の範囲の血液などの担体による各種の希釈物によって投与されうる。
【0086】
組成物は通例、各種の流量にて送達される。停止期の間、適切な流量は100〜1000ml/分、好ましくは200〜300ml/分およびさらに好ましくは約350ml/分である。維持および回復期の間、適切な流量は100〜1000ml/分、好ましくは200〜300ml/分、逆行送達では10〜200ml/分、順行送達では好ましくは50〜100ml/分である。当業者は、器官に活性物(アデノシン、リグノカインなど)の最適量を送達するために、必要に応じて濃度および流量を調整しうる。
【0087】
別の好ましい実施形態において、組成物は生理学的担体または晶質、たとえばPlasmalyte(商標)またはNormosol(商標)と混合される。処置が体外バイパスを含む好ましい一実施形態において、再灌流液にアデノシン4ml(3mg/mlにて12mgである)、硫酸マグネシウム10ml(約5g)を含む添加カセットを添加して、回復時にリグノカイン25mgを添加する。
【0088】
好ましい製薬的に許容される担体は、約6〜約9の、好ましくは約7の、さらに好ましくは約7.4のpHおよび/または低濃度の、たとえば約10mMまでの、さらに好ましくは約2〜約8mMの、最も好ましくは約4〜約6mMのカリウムを有する緩衝液である。適切な緩衝液としては、一般に10mMグルコース、117mM NaCl、5.9mM KCl、25mM NaHCO、1.2mM NaHPO、1.12mM CaCl(遊離Ca2+=1.07mM)および0.512mM MgCl(遊離Mg2+=0.5mM)を含有するKrebs−Henseleit、St.Thomas No.2液、一般に10mMグルコース、126mM NaCl、5.4mM KCl、1mM CaCl、1mM MgCl、0.33mM NaHPOおよび10mM HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]を含有するTyrodes液、Fremes液、一般に129 NaCl、5mM KCl、2mM CaClおよび29mMラクテートを含有するHartmanns液ならびに乳酸リンゲル液が挙げられる。 低カリウムを使用する1つの利点は、それが本組成物を対象、特に新生児/幼児などの小児対象に対してより有害でないようにすることである。高カリウムは、回復中の不規則な心拍、心臓損傷および細胞膨潤に関連付けられうるカルシウムの蓄積に結び付けられてきた。新生児/幼児は、心停止中の高カリウムによる損傷に成人よりもなおさらに感受性である。欠陥の手術後、新生児/幼児の心臓は何日も正常まで回復しないことがあり、時には集中治療または生命維持を必要とする。たとえば約2.5mMまでなどの低濃度のマグネシウムを有する担体を使用することも好都合であるが、たとえば約20mMまでのより高濃度のマグネシウムも所望ならば、組成物の活性に実質的に影響することなく使用されうる。
【0089】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、アデノシン、リグノカインおよび約10mM未満のカリウムを含有する製薬的に許容される担体を含む製薬または動物用組成物を提供する。
【0090】
組成物は、個別、連続または同時投与のために活性成分が別個に保持されたキットの形でも好都合に提供されうる。
【0091】
本発明の組成物が提案された用途に応じて公知の薬剤を含みうる、および/または公知の薬剤と併せて使用されうることも認識されるであろう。たとえばヌクレオシド輸送インヒビタ、たとえばジピリダモールなどの血中でアデノシンの分解を実質的に防止する薬剤は、本発明の組成物中で添加剤として使用されうる。血中でのアデノシンの半減期は約10秒であるので、その分解を実質的に防止する薬剤の存在は、本発明の組成物の効果を最大限にするであろう。ジピリダモールは、約0.1nM〜約10mMの濃度で好都合に包含されることが可能であり、心臓保護に関して主要な利点を有する。ジピリダモールは、血管拡張を増進させるアデノシン輸送を阻害することによってアデノシンの作用を補助しうる。このことは、組成物が間欠的に投与されるときに特に重要である。
【0092】
本発明は、活性成分および製薬的または獣医学的に許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/賦形剤を含む製薬または動物用組成物にも及ぶ。
【0093】
本組成物は理想的には、100%ミニプリージア(またはマイクロプリージア)と共に使用される。好ましくは、使用した灌流方法は、温および冷心停止液送達の厳密な投与計画に従い、時間および量の制約に関する従来の心筋保護の定説には従っていない(すなわち;望むだけ多くの量を頻繁に与えうる)。
【0094】
驚くべきことに、本方法のさらなる利点は、利尿剤の使用を伴わない、患者による術後の尿産生の改善である。通例、利尿剤は患者が人工心肺で維持されている間に患者の血液に添加されるが、本発明の方法では、患者は利尿剤をあまり、または全く必要としないことが見出されている。同様に本発明の方法では、患者の清明は術後により迅速に回復することも観察された。集中治療室で必要とされる日数もより少ない−これは下で与える実施例の結果によって照明される。
【実施例】
【0095】
本発明を一例としてのみ例証するために、次のプロトコルを実施した。本プロトコルは、患者自身の酸素負荷血液を使用して微量が心臓に直接滴定される、上述のようなミニプリージアを使用する。「設定」への言及は、器官、本実施例では心臓に直接送達される物質の量の、ポンプ、たとえば注射器ポンプでの測定単位である。
【0096】
2つのカセットを次のように作製した。
(1)停止カセット:
1.約80mEqを有する未希釈カリウム40ml−それゆえ2mEq/ml
2.高設定:25mEq/リットル
3.低設定:10mEq/リットル
上の項目1のカリウムは主心停剤である。高カリウムは、その公知の欠点および有害な副作用にもかかわらず、最も周知であり、使用される心停止液である。カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニスト(たとえばアデノシン)を局所麻酔剤(たとえばリグノカイン)と共にmMで含む、代わりの心停止液は、WO 00/56145(GP Dobson)に開示されている。該明細書の内容は参照により全体が本明細書に組み入れられている。本明細書では例示していないが、項目1の高カリウム心停止液は、このような心停止液によって置換されうる。
【0097】
(2)添加カセット:
1.12mgを有するアデノシン4ml−それゆえ3mg/ml
2.硫酸マグネシウム10ml=5g(または5gに等しくするためのMgSOのバイアル)
3.30ml−ポンプ内にあるどの晶質プライムも使用されうる(たとえばL/R、Plasmalyte(商標)、Normosol(商標))
4.添加カセットの全量:44ml
5.添加設定:10ml/リットル
本カセットは、50mlカセットに対応する装置に適切である。
【0098】
改善された結果を得るために、後述するようにリグノカインを本カセットに添加する。リグノカインはアデノシンの0.1〜10倍の、好ましくは0.5〜2倍の濃度で添加する。
【0099】
下のデータは、クロスクランプ除去の直前の回復期までリグノカインを本カセットに添加しなかった実験によるものである。しかしながら本発明の別の実施形態では、本カセットにその最初の使用時からリグノカインを添加するので、アデノシンおよびリグノカインの併用が処置の維持または静止期の間に投与される。このことが心臓回復および/または術後合併症減少の期待をさらに改善することが見出される。
【0100】
虚血停止ではなく、有酸素停止を行う全体の目的で、本実施例で組成物を投与するために使用した処置は次の通りであった。
【0101】
1.ヘパリン処置時に、氷容器の上部まで氷を充填する。クロスクランプが3時間を超えない限り、容器を再度充填する必要はない。送達温度は約12℃になるであろう。クロスクランプ期間の残り3分の1に向かって、酸素が豊富な血液の多少の代謝が起こるはずである。
【0102】
2.温度設定は加温誘発のためである:加温(37℃)
3.停止のための高設定:25mEq/リットルの高カリウム血停止カセットが迅速な停止を誘発する。
【0103】
4.添加の設定:クロスクランプ前に10ml/リットル。
【0104】
クロスクランプの利用時:
1.順行流を500mlまで迅速に増加させ、次に大動脈弁を閉止させるためにすぐに320〜350mlに戻す。
【0105】
2.加温順行700mlを与える。いったん静止が達成されたら、さらに300mlを与え、次に低K+設定(すなわち10ml/リットル)に切り換える。
【0106】
3.加温逆行700mlを与える。
【0107】
4.水温を低温に切り換える。低温逆行をできるだけ長く投与する。停止設定をより低くすればするほど、経験的に流れがより長期間継続する。
【0108】
5.添加設定を2ml/リットルに低下させる。心臓の大半の調製が行われた。
【0109】
6.CABGを行う場合、遠位が最初に実施される:最初のグラフトの後に、多カテーテルラインを介してグラフトをポンプに連結する。次に流れを非常にゆっくり増加させて150Torrの圧力を達成させ、外科医に有用な情報であるこの流れを記録する。このことはいくつかの事項を達成するであろう:
・圧力対流れ比の金標準を使用してグラフトの開存性を判定するための制御された機械式機器;
・外科医は吻合部位の止血を点検する手段を有する;
・標的に部位に順行を、そして所望ならば同時に逆行を送達する能力。
【0110】
7.処置が弁および冠血管に対する作業を含む場合、冠血管を先に実施する。本方法では、弁が動作されている間に、罹患心臓にそれが必要とする栄養素が供給される。
【0111】
8.通常のSOPに従ってKを監視して、所望のレベルを満足するようにカリウム濃度を調整する。
【0112】
クロスクランプの残り10分間に近づいたときに、加温ショットの調製物を作製する:これらは次を含む:
1.水設定:加温(37℃)
2.停止設定:0−Kおよび他の代謝産物を洗い流すため
3.リグノカイン25mgを添加バッグに注入して(記載されている本実施形態では、以前に添加されていない)、予防的抗不整脈組成物の標的送達を達成する−通例、本時点では、約1mg/mlのリグノカイン濃度を与える処置時間の長さに応じて、添加バッグ内に約18〜35mlが残存している。
【0113】
4.添加設定:15〜18−目標はクロスクランプ除去前に添加バッグを空にすることである。
【0114】
加温ショットでは:通常、クロスクランプ除去の5〜10分前に開始される
1.逆行加温を開始する。ゼロカリウム、添加設定15。逆行圧が最高レベル(35〜40Torr)に維持されるようにする。
【0115】
2.電気的活動が開始したときに、逆行をもう1分間継続する。
【0116】
3.順行に2〜3分間切り換える(外科医の視野を不明瞭にしない場合)。これはグラフトの脱気を促進して、心臓の右側に灌流させて、通常、安定した心拍を達成するであろう。
【0117】
4.クロスクランプの期間にわたって再度逆行に切り換える。
【0118】
5.添加設定が時間切れになったら、xクランプ除去まで純粋な温血で継続する。
【0119】
マイクロプリージア技法によって、多くの量を与えるほど、好気性停止であるために心臓にはそれがより好都合である。多くの例において、適正に投与される場合、酸素供給/需要比は逆転される。1リットル超えて6リットルまでの投与は、術後細動の最大の低減に関連付けられる。
【0120】
温血心停止法によって達成された臨床結果は、低体温による一部の細胞機能の障害に関する以前の観察が先の考えよりも関連性がありうることを示唆している。これらは低下した:
1.膜安定性
2.グルコースおよび脂肪酸を使用する能力
3.細胞膜機能の抑制に至るアデノシン3リン酸のミトコンドリア産生
4.細胞量調節低下に至るアデノシン3リン酸系の活性
5.筋小胞体がカルシウムを結合する能力の低下
6.ミトコンドリア状態呼吸およびクエン酸合成酵素の活性
7.細胞内pHの制御
8.カルシウム摂取に関する筋小胞体の活性
を含む。
【0121】
クロスクランプの終了に向かって加温誘発を低温維持および加温ショットと組合せることは優れた結果をもたらす。特にアデノシン(他の機能の中でも、非常に強力な血管拡張薬)の添加を伴う加温誘発は、すべての側副枝を開いて、停止に必要な導管および筋細胞および内皮に到達する添加剤を供給する。低温誘発では収縮が起こり、筋細胞および内皮まで心停止液を全身に分布させることができない。
【0122】
低温維持は代謝摂取の低下をもたらし、クロスクランプの自然経過の間に氷溶解のために温度のゆっくりとした上昇が起こる。平均温度は約12〜14℃に変動するであろう。最後の加温ショットは、心筋保護の最も重要な態様である。心臓を温血(32〜37℃)にできるだけ長く遭遇させるとは、変力物質および電気補助を必要とする弛緩した生命のない心臓と、心臓の機能回復の大半を取り戻すこととの相違を意味する。クロスクランプが除去されるときに経験されるように、低温の弛緩した拍動しない心臓に大流量の温血による外傷を受けさせると、心臓に再灌流障害が確実に引き起こされる。
【0123】
最近30年の間に、外科医および灌流技師はその外科的技法を改良して、彼らが各患者の個別の要求や需要に取り組む方法を「カスタマイズ」できるようにした。本質的に「月並みな」手法のままである唯一の分野は心筋保護であり;本質的に「万能」である。いずれの個別の理論または作用様式によっても縛られることなく、本好ましい実施形態の方法は、患者を過剰血液希釈しないことにより感受性であり、それゆえ改善された結果を生じる。
【0124】
1つの実験において、心停止液を使用する心臓手術を受けている患者2688名を6つの別の病院にて、別の医師およびその別の技法を使用して、この繊細な環境での可変性について評価した。すべての患者を標準高カリウム血心停止液で処置して、停止を誘発した。患者のうち、群の中で1279名に代表的な晶質−心停止液プロトコルを受けさせた(「標準」)。1409名に、同じ高カリウム血心停止液を上記のような、すなわち本発明の組成物を有する加温ALM添加カセットと共に使用して、マイクロプリージアプロトコル(すなわち心臓に直接投与された最小量の心停止液を使用するプロトコル)を受けさせた。本発明はこの形の心停止液に特定されていないか、または限定されていないが、それは本発明の方法の用途を形成して、本発明の効果を評価および例証するために本明細書で議論されている。
【0125】
添加カセットは、回復期の間にアデノシン、リグノカインおよびマグネシウムを含有するように(それゆえ名称「ALM」)、上記のように使用した。本発明の方法は、好都合な省略形としてのみ「ALM」と呼ばれる。ALMはクロスクランプ除去時に、上記のプロトコルに従って投与した。
【0126】
表1は患者2688名の特徴を示し、表2は測定した各種の術後合併症の発生率を示す。
【0127】
【表1】


【0128】
表2では、表1に明示した患者について臨床結果を表にしている。第3列は、患者のALM割合を各結果の標準心停止患者の割合のパーセンテージとして表す(すなわち第1列のパーセンテージとしての第2列)。左列の結果はすべて負の結果であり、それゆえその最小化が望ましい。
【0129】
【表2】

上のプロトコル後の合併症の、特に術後心房細胞および術中変力物質への要求の本質的な低減があったことがわかる。特に、これらの負の結果の低減は:86%の術中変力物質の低減;64%の術中ペーシングの低減;44%の術中輸血の低減;21%の術後滞在長の短縮および91%の術後心房細動の低減である。
【0130】
本明細書で開示および定義された本発明は、言及された、あるいは本文または図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の代わりの組合せすべてに及ぶことが理解されるであろう。これらの各種組合せはすべて、本発明の各種の代わりの態様を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを局所麻酔剤と共に含む組成物を投与するステップを含む、活性低下の期間からの組織、器官または細胞に対する損傷を低減する方法。
【請求項2】
前記組成物がマグネシウムカチオンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が投与前に少なくとも32℃まで加熱される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記器官に再灌流するときに前記組成物が投与される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記活性低下が医療的に誘発される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が静止状態中に前記器官に灌流する間に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記器官が心臓であり、前記活性低下が心停止である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを
局所麻酔薬と共に
含む組成物を投与するステップを含む、心臓処置後の術後細動を低減する方法。
【請求項9】
前記組成物が前記処置の回復期中に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
カリウムチャネル開口薬/アゴニストおよび/またはアデノシン受容体アゴニストを局所麻酔薬およびマグネシウムカチオンと共に含む、外科処置による術後合併症のリスクまたは発生率を低下させる組成物。
【請求項11】
約10mM未満のカリウム濃度を有する、請求項10に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−538834(P2009−538834A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512365(P2009−512365)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000717
【国際公開番号】WO2007/137321
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508354876)ハイバーネイション セラピューティクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】