説明

組電池装置

【課題】簡単な構成によって単電池セル間の温度バラツキが低減された、組電池装置を提供する。
【解決手段】本発明の組電池装置1は、互いに電気的に接続され、且つ、列設された複数の単電池セル11と、複数の単電池セル11に含まれる互いに隣接する単電池セル(A)と単電池セル(B)との間に配置された熱放射テープとを備える。複数の単電池セル11は、それぞれ、電池要素と、電池要素を収容する金属製の容器12とを含んでいる。熱放射テープは、単電池セル(A)の容器の外壁のうち単電池セル(B)と対向する面の少なくとも一部、および/または、単電池セル(B)の容器の外壁のうち単電池セル(A)と対向する面の少なくとも一部に貼り付けられている。熱放射テープは、波長2μm〜14μmにおいて0.7以上の全放射率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単電池セルが複数個組み合わされることによって形成された組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車および電気自動車への関心が高まっている。ハイブリッド車および電気自動車を効率よく走行させるために、高電圧、高エネルギー容量および高エネルギー密度の電池の開発が望まれている。このような電池として、複数個の単電池セルを互いに接続して、これを一つのパッケージとする組電池装置が、一般的に用いられる。
【0003】
組電池装置の効率および寿命は、温度環境に大きく依存する。高温になると、組電池装置の効率および寿命が低下する。また、組電池装置を構成している単電池セル間の温度にバラツキがあると、出力特性および寿命に悪影響を与えるという問題がある。
【0004】
そこで、組電池装置において、単電池セル間の温度バラツキを低減させるための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、単電池セル間に冷媒を流通させるための冷媒流路を設け、冷媒によって単電池セルを冷却することによって、単電池セル間の温度バラツキを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−3950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているような冷媒を利用する技術では、単電池セル間に冷媒流路を設ける必要があるため、比較的大がかりな構成となる。その結果、コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、特許文献1で提案されているような大がかりな構成を採用せずに、単電池セル間の温度バラツキが低減された(単電池セル間の均熱化が実現された)、組電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
互いに電気的に接続され、且つ、列設された複数の単電池セルと、
前記複数の単電池セルに含まれる互いに隣接する単電池セル(A)と単電池セル(B)との間に配置された熱放射テープと、
を備え、
前記複数の単電池セルは、それぞれ、電池要素と、前記電池要素を収容する金属製の容器とを含んでおり、
前記熱放射テープは、波長2μm〜14μmにおいて0.7以上の全放射率を有し、且つ、前記単電池セル(A)の前記容器の外壁のうち前記単電池セル(B)と対向する面の少なくとも一部、および/または、前記単電池セル(B)の前記容器の外壁のうち前記単電池セル(A)と対向する面の少なくとも一部に貼り付けられている、
組電池装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組電池装置では、互いに隣接する少なくとも2つの単電池セル間に、高い熱放射性を有する熱放射テープが配置されている。この互いに隣接する単電池セルを単電池セル(A)および単電池セル(B)と表記した場合、熱放射テープは、単電池セル(A)の容器の外壁のうち単電池セル(B)と対向する面の少なくとも一部、および/または、単電池セル(B)の容器の外壁のうち単電池セル(A)と対向する面の少なくとも一部に貼り付けられている。すなわち、熱放射テープは、単電池セル(A)および単電池セル(B)の対向面のうち、少なくとも何れか一方に貼り付けられている。したがって、例えば単電池セル(A)と単電池セル(B)との間に温度差が存在する場合、間に配置された熱放射テープによって、より高温の単電池セルの容器からより低温の単電池セルの容器へと、放射伝熱によって熱を効率よく移動させることができる。また、単電池セルの容器は金属製であるため、受け取った熱を伝導伝熱によって効率よく容器全体に伝えることができる。これらの結果、本発明の組電池装置では、単電池セル間の温度バラツキが低減される。さらに、この効果は、熱放射テープを単電池セルの容器の外壁に貼り付けるという、簡単な構成によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における組電池装置の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における組電池装置に含まれる複数の単電池セルのうち、互いに隣接する2つの単電池セルおよびその間に配置される熱放射テープの一例を示す断面図である。
【図3】実施例1における評価装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施の形態の組電池装置の一例を示す。図1に示すように、本実施の形態の組電池装置1は、互いに電気的に接続され、且つ、列設された複数の単電池セル11を備えている。
【0013】
単電池セル11は、極板などの電池要素(図示せず)と、当該電池要素を収容する容器12とを備えている。容器12は金属製である。容器12には、例えば、熱伝導性が高いアルミニウムからなる容器が好適に用いられる。
【0014】
本実施の形態では、単電池セル11が、角形扁平形状を有するリチウム単電池セル(リチウム一次電池セル又はリチウムイオン二次電池セル)である場合を例に挙げて説明する。単電池セル11の容器12を構成する6つの面のうち、1つの面(図中では上面)から一対の電極13(正極および負極)が突出して設けられている。複数の単電池セル11を列設する場合、図1に示すように、電極13を有する面が同じ側となるように配置することが一般的である。
【0015】
単電池セル11に含まれる電池要素には、例えば、極板、セパレータおよび電解液などが含まれる。ここでの電池要素は、一般的なリチウム電池で用いられるものと同様である。
【0016】
互いに隣接する単電池セル11間には、熱放射テープが配置されている。この熱放射テープの配置状態を説明するために、図2に、複数の単電池セル11のうち、互いに隣接する任意の2つの単電池セル11a,11b(単電池セル(A)および単電池セル(B))を示す。
【0017】
本実施の形態では、単電池セル11aの容器12aの外壁のうち単電池セル11bと対向する面の少なくとも一部に、熱放射テープ14aが貼り付けられている。さらに、単電池セル11bの容器12bの外壁のうち単電池セル11aと対向する面の少なくとも一部に、熱放射テープ14bが貼り付けられている。熱放射テープ14a、14bは、波長2μm〜14μmにおいて0.7以上の全放射率を有しており、高い熱放射性を有する。
【0018】
例えば単電池セル11aと単電池セル11bとの間に温度差が存在する場合、間に配置された熱放射テープ14a,14bによって、より高温の単電池セルの容器から効率よく放射された熱を、より低温の単電池セルの容器に効率よく吸収させることが可能となる。このように、組電池装置1では、熱放射テープ14a,14bによって、単電池セル11間の放射伝熱による熱の授受が効率よく行われる。また、単電池セルの容器12a,12bは金属製であるため、受け取った熱を伝導伝熱によって効率よく容器全体に伝えることができ、さらに反対側で隣接する別の単電池セルの容器へと効率良く熱を移動させることができる。したがって、単電池セル11間の温度バラツキが低減される。
【0019】
熱放射テープ14a,14bの大きさおよび形状は、特に限定されない。しかし、放射伝熱による単電池セル11間の熱の移動がさらに効率よく行われるように、熱放射テープ14a,14bはより大きい面積を有することが好ましい。例えば、熱放射テープ14aが、単電池セル11aの容器12aの外壁のうち単電池セル11bと対向する面と、同じ形状および同じ大きさを有していてもよい。同様に、熱放射テープ14bが、単電池セル11bの容器12bの外壁のうち単電池セル11aと対向する面と、同じ形状および同じ大きさを有していてもよい。
【0020】
熱放射テープ14a,14bは、熱放射性を有する基材と、当該基材上に形成された粘着剤層とを含む。基材の材料は、熱放射テープ14a,14bが所望の熱放射性を有することができる程度に熱放射性を有していればよく、特に限定されない。例えば、ポリエチレン(PE)およびポリエチレンテレフタレート(PET)などの汎用樹脂、および、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリイミド(PI)などの耐熱性樹脂を、基材の材料として用いることができる。赤外線の吸収・放射特性の向上および/または熱伝導率の向上などを目的として、基材が各種フィラーを含んでいてもよい。基材は、絶縁特性を保持するために、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、チッ化アルミ、チッ化ホウ素などを、単独もしくは併用して、フィラーとして含むことができる。ガラスクロスなどの繊維強化プラスチックをフィラーとして併用してもよい。また、導電特性を発現させる場合には、基材が、カーボン、カーボンファイバー、金属フィラーなどを、単独もしくは併用して含んでもよい。基材の厚さは、特に限定されないが、5μm〜500μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましい。厚さが5μm以上の場合、赤外線が基材に十分に吸収されやすくなるため、高い熱放射性を得やすくなる。厚さが500μm以下の場合、基材自体の剛性による凹凸追従性の低下を抑制できるので、好ましい。
【0021】
熱放射テープ14a,14bの粘着剤層には、公知のアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を用いることができる。アクリル系粘着剤は、比較的低温の用途に適している。シリコーン系粘着剤は、耐寒性および耐熱性に優れており、アクリル系粘着剤よりも低温域および高温域で使用される用途に適している。
【0022】
本実施の形態では、単電池セル11aの容器12aと単電池セル11bの容器12bとの両方に、熱放射テープが貼り付けられている。このように、互いに隣接する単電池セルの両方の容器に熱放射テープを貼り付ける構成は、放射伝熱を利用した単電池セル11間の均熱効果をより高く得ることができるため、好ましい。しかし、本発明の組電池装置はこの構成に限定されない。単電池セル11aの容器12aまたは単電池セル11bの容器12bの一方のみに熱放射テープが貼り付けられる構成であっても、単電池セル11間の温度バラツキを低減させる効果が十分に得られる。
【0023】
本実施の形態では、全ての互いに隣接する単電池セル間に熱放射テープが配置される構成について説明した。すなわち、本実施の形態の組電池装置では、組電池装置を構成する複数の単電池セルにおいて、互いに隣接する任意の2つの単電池セルが単電池セル(A)および単電池セル(B)に相当する。このような構成は、単電池セル間の温度バラツキがより低減されるので、好ましい。しかし、本発明の組電池装置は、この構成に限定されない。本発明の組電池装置は、熱放射テープが少なくとも1つの単電池セル間に設けられている構成、すなわち、複数の単電池セルに含まれる互いに隣接する少なくも2つの単電池セルが、単電池セル(A)および単電池セル(B)に相当する構成、を有していればよい。このような構成でも、単電池セル間の温度バラツキを低減させる効果が得られる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の組電池装置について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図3に示す評価装置を作製して、熱放射テープによる単電池セルの均熱効果を評価した。アルミニウム板31a(縦100mm×横100mm×厚さ15mm)と、厚さ4mmのヒーター32aと、厚さ10mmの断熱材33aとをこの順に重ね合わせた部品を準備した。さらに、アルミニウム板31b(縦100mm×横100mm×厚さ15mm)と、厚さ4mmのヒーター32bと、厚さ10mmの断熱材33bとをこの順に重ね合わせ部品を準備した。これら2組の部品を、アルミニウム板31aとアルミニウム板31bとが間隙1mmを介して対向するように、支持具34a,34bで保持した。アルミニウム板31a,31bの表面に、熱放射テープ35a,35bとして、100×100mmのニトフロン(登録商標)No.903SC(日東電工製、厚さ0.11mm、波長2μm〜14μmにおける全放射率0.95)を、それぞれ貼り付けた。ヒーター32aの出力を6W、ヒーター32bの出力を0Wとして、定常状態におけるアルミニウム板31aおよびアルミニウム板31bの温度を測定した。アルミニウム板31aの温度は50.4℃であった。アルミニウム板31bの温度は44.5℃であった。アルミニウム板31aとアルミニウム板31bとの間の温度差は、5.9℃であった。
【0026】
(実施例2)
熱放射テープ35a,35bとして、100×100mmのニトフロン(登録商標)No.903UL(日東電工製、厚さ0.08mm、波長2μm〜14μmにおける全放射率0.85)を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で図3に示す評価装置を作製した。この評価装置を用い、実施例1と同様の方法で、熱放射テープによる単電池セルの均熱効果を評価した。アルミニウム板31aの温度は50.5℃であった。アルミニウム板31bの温度は46.0℃であった。アルミニウム板31aとアルミニウム板31bとの間の温度差は、4.5℃であった。
【0027】
(実施例3)
100×100mmのダイアホイル(登録商標)B100C38(三菱樹脂株式会社製、厚さ0.38mm)の表面に黒色塗料を塗布して、総厚が0.42mm、波長2μm〜14μmにおける全放射率が0.92の基材を準備した。この基材上に、粘着剤層として、両面粘着テープNo.5919(日東電工製、厚さ0.05mm)を貼り付けて、熱放射テープを作製した。得られた熱放射テープを、熱放射テープ35a,35bとして用いた点以外は、実施例1と同様の方法で図3に示す評価装置を作製した。この評価装置を用い、実施例1と同様の方法で、熱放射テープによる単電池セルの均熱効果を評価した。アルミニウム板31aの温度は50.3℃であった。アルミニウム板31bの温度は44.5℃であった。アルミニウム板31aとアルミニウム板31bとの間の温度差は、5.9℃であった。
【0028】
(比較例1)
熱放射テープ35a,35bを設けなかった点以外は、実施例1と同様の方法で図3に示す評価装置を作製した。この評価装置を用い、実施例1と同様の方法で、熱放射テープを設けない構成について、単電池セル間の温度差を測定した。なお、アルミニウム板31a,31bの波長2μm〜14μmにおける全放射率は0.03であった。アルミニウム板31aの温度は53.9℃であった。アルミニウム板31bの温度は46.7℃であった。アルミニウム板31aとアルミニウム板31bとの間の温度差は、7.2℃であった。
【0029】
なお、実施例1〜3で用いた熱放射テープの波長2μm〜14μmにおける全放射率は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、各熱放射テープの非粘着面の反射率および透過率スペクトルを測定して算出することによって得られた値である。測定条件は以下のとおりである。
測定装置:IFS−66v/S(Bruker社製FT−IR、真空光学系)
光源:グローバー(SiC)
検知器:MCT(HgCdTe)
ビームスプリッター:Ge/KBr
分解能:4cm-1
積算回数:512回
ゼロフィリング:2倍
アポダイゼーション:三角形
測定領域:5000〜715cm-1(2〜14μm)
測定温度:25℃
付属装置:透過率・反射率測定用積分球
【0030】
熱放射テープが設けられた実施例1〜3は、熱放射テープが設けられなかった比較例1よりも、アルミニウム板31a,31b間の温度差が小さかった。この結果から、熱放射テープを単電池セルの容器に貼り付けるという簡単な構成によって、互いに隣接する単電池セル間で放射伝熱による熱の授受が効率よく行われて、単電池セル間での温度差を低減できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の組電池装置は、簡単な構成であるにも関わらず、単電池セル間の高い均熱効果が得られるので、良好な出力特性および寿命が期待できる。したがって、本発明の組電池装置は、様々な用途に適用できるが、特に電気自動車の電源装置などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0032】
1 組電池装置
11a,11b 単電池セル
12a,12b 容器
13 電極
14a,14b 熱放射テープ
31a,31b アルミニウム板
32a,32b ヒーター
33a,33b 断熱材
34a,34b 支持具
35a,35b 熱放射テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に接続され、且つ、列設された複数の単電池セルと、
前記複数の単電池セルに含まれる互いに隣接する単電池セル(A)と単電池セル(B)との間に配置された熱放射テープと、
を備え、
前記複数の単電池セルは、それぞれ、電池要素と、前記電池要素を収容する金属製の容器とを含んでおり、
前記熱放射テープは、波長2μm〜14μmにおいて0.7以上の全放射率を有し、且つ、前記単電池セル(A)の前記容器の外壁のうち前記単電池セル(B)と対向する面の少なくとも一部、および/または、前記単電池セル(B)の前記容器の外壁のうち前記単電池セル(A)と対向する面の少なくとも一部に貼り付けられている、
組電池装置。
【請求項2】
前記熱放射テープは、全ての互いに隣接する単電池セル間に配置される、
請求項1に記載の組電池装置。
【請求項3】
前記熱放射テープは、熱放射性を有する基材と、前記基材上に形成された粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤からなる、
請求項1又は2に記載の組電池装置。
【請求項4】
前記単電池セルは、リチウム単電池セルである、
請求項1〜3の何れか1項に記載の組電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−160298(P2012−160298A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18287(P2011−18287)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】