説明

組電池

【課題】ケースに対する各電池セルの位置決め精度を確保して、電極端子間の適正な接続を実現できる組電池を提供する。
【解決手段】組電池1のケース10は、各電池セル20を収容する収容室11を形成するためにセル厚さ方向Tに間隔をあけて配置される複数の仕切り壁110,111と、セル幅方向Wに間隔をあけて対向するように位置して、仕切り壁とともに収容室11を形成する2つの壁部112,13と、を備える。さらにケース10は、セル幅方向Wの両側に対向する2つの壁部112,13のうち、一方側の壁部112のみに他方側の壁部13に向けて突出するように設けられる第1の突起部114を備える。第1の突起部114は、収容室11に収容される電池セルの一方側端面20aに接触して電池セルの他方側端面20bを他方側の壁部13に押し当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに保持された複数の電池セルを備える組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数個の電池セルを一体に組み立てた組電池が開示している。この組電池は、筐体内の仕切り壁部で仕切られた各単電池室に電池セルを1個ずつ収容することによって、筐体内に複数個の電池セルがセル厚さ方向に積層配置された集合体である。筐体内に積層配置された電池セルは、隣接するセルから突出する異極端子同士がバスバーによって通電可能に接続されて、組電池全体として直列に結線される。
【0003】
各電池セルは、筐体内の各単電池室に配置される際に、筐体の内壁面及び仕切り壁部から突出するリブによって、セル側面が支持されて筐体内で位置決めされる。このリブは、セル幅方向(セル厚さ方向と高さ方向の両方に垂直な方向)の両側及びセル厚さ方向の両側においてセルの表面を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−211835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の組電池では、各電池セルがセル幅方向の両側面において支持されるため、各電池セルを支持するリブの変形量がセル幅方向の両側で不均一になることがある。換言すれば、セル幅方向の両側に設けられたリブは、セル幅方向の両側のトータルで1つの電池セルを支持するので、セル幅方向の一方側のリブと他方側のリブとで変形量や変形後の形状が異なるのである。したがって、セル厚さ方向に隣り合う電池セル間で、セル幅方向についての位置がずれることがあるため、隣り合う電池セル間の電極端子に位置ずれが発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、ケースに対する各電池セルのセル幅方向に関する位置決め精度を確保して、電極端子間の適正な接続を実現できる組電池を提供することである。
【0007】
また、筐体の仕切り壁部からセル厚さ方向に突出するリブについても、セル厚さ方向に隣り合う電池セル間の電極端子に位置ずれが発生するという問題がある。そこで、第2の目的は、ケースに対する各電池セルのセル厚さ方向に関する位置決め精度を確保して、電極端子間の適正な接続を実現できる組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。請求項1に記載の発明は、それぞれ直方体状であり、バスバー(21)を用いて直列に結線される複数個の電池セル(20)と、各電池セルを保持して複数個の電池セルをセル厚さ方向(T)に積層するケース(10)とを備える組電池(1)に係る発明であって、
ケースは、
各電池セルを収容する収容室(11)を形成するためにセル厚さ方向に間隔をあけて配置される複数の仕切り壁(110,111)と、
セル幅方向(W)に間隔をあけて対向するように位置して、仕切り壁とともに収容室を形成する2つの壁部(112,13)と、
当該セル幅方向(W)に対向する2つの壁部(112,13)のうち、一方側の壁部(112)のみに他方側の壁部(13)に向けて突出するように設けられ、収容室に収容される電池セルの一方側端面(20a)に接触して電池セルの他方側端面(20b)を他方側の壁部(13)に押し当てる第1の突起部(113,114)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、電池セルがセル幅方向の片側のみで第1の突起部に接触するので、電池セルの他方側端面が押し当てられるセル幅方向の他方側の壁部を基準として、ケースに対する各電池セルのセル幅方向の位置が決定されることになる。これにより、セル厚さ方向に並ぶ複数個の電池セルを正確に位置決めしてセル幅方向に揃えることができるので、複数個の電池セルの電極端子について位置決め精度を確保することができる。このセル幅方向の位置決め精度の確保により、電極端子とバスバーとの接合性を向上することが可能な組電池を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、バスバーによって直列に結線されるとともに、セル厚さ方向(T)に隣接する前記電池セル間に位置する仕切り壁(110)に対して、対向する壁部(117)のみから突出するように設けられ、収容室に収容される電池セルの側面(20c)に接触して当該電池セルを仕切り壁(110)に押し当てる第2の突起部(116)を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、電池セルは、バスバーで結線される電池セル間の仕切り壁に対向する壁部のみにおいてセル厚さ方向に第2の突起部に接触するので、電池セルの側面が押し当てられるバスバーや電極端子近傍の仕切り壁を基準として、ケースに対する各電池セルのセル厚さ方向の位置が決定されることになる。これにより、セル厚さ方向についても電池セルを揃えることができるので、複数個の電池セルの電極端子について位置決め精度をさらに向上することができる。このセル厚さ方向の位置決め精度の確保により、電極端子とバスバーの接合性の一層の向上が図れる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、第2の突起部(116)は、セル幅方向(W)に関して電池セル(20)の端部に接触するように配置されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、仕切り壁及び第2の突起部は電池セルのセル幅方向の端部で電池セルを支持するため、各電池セルのセル幅方向の端部で、上記発明による位置決めが行われる。セル電極の充放電等によって膨張及び収縮しうる電極体が、セル幅方向の端部においてセルケースの内側に存在しないことが多いため、セルケースの膨張や収縮によるセルケース厚さの変化に影響を受けにくい。したがって、セルケースの寸法精度が良好かつ安定した部位において、各電池セルを支持することにより、各電池セルのセル厚さ方向に関する位置決め精度を確保することができ、組電池の電極端子間の適正な接続を実現できる。
このため、セル厚さ方向について電極端子の位置決め精度をさらに向上することができるため、電極端子とバスバーの接合性の一層の向上が図れる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、第2の突起部(116)は、セル幅方向(W)に関して電池セルの電極端子(22)の近傍の側面に接触するように配置されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、仕切り壁及び第2の突起部は電池セルの端子が配置される部位付近で電池セルを支持するため、各電池セルの電極端子近傍で、上記発明による位置決めが行われる。このため、セル厚さ方向について電極端子の位置決め精度をさらに向上することができるため、電極端子とバスバーの接合性の一層の向上が図れる。
【0016】
請求項5に記載の発明によると、ケース(10)は、セル幅方向(W)に2列以上並んで設けられる収容室(11,12)を備え、セル幅方向Wに並ぶ2列一対の電池セル間には、電池セルの他方側端面(20b)が押し当てられる壁部(13)が配されていることを特徴とする。この発明によれば、セル幅方向に2列以上並ぶ複数個の電池セルは、バスバーを用いて直列に結線される。そして、上記の各請求項に記載の発明により、セル幅方向に隣接してバスバーを介して接続される電池セル間について、それぞれの電池セルの電極端子の位置決め精度を確保することができる。この列間の電極端子の位置決め精度を確保できることにより、2列以上並ぶ電池セルを有する組電池について、電極端子とバスバーとの接合性を向上することができる。
【0017】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る組電池を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態において電池セルを保持するためのケースを示す下面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】ケースに電池セルを設置した状態を示す部分拡大図である。
【図5】本発明を適用した第2実施形態に係る組電池において、ケースに電池セルを設置した状態を示す部分拡大図である。
【図6】本発明を適用した第3実施形態に係る組電池において、ケースに電池セルを設置した状態を示す部分拡大図である。
【図7】本発明を適用した第4実施形態に係る組電池において、電池セルを保持するためのケースを示す下面図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【図9】ケースに電池セルを設置した状態を示す部分拡大図である。
【図10】本発明を適用した第5実施形態に係る組電池において、ケースに電池セルを設置した状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。各図において、Tは直方体状の電池セル20のセル厚さ方向であり、Wはセル幅方向であり、Hはセル高さ方向である。セル厚さ方向Tは、複数個の電池セル20の積層方向でもある。セル幅方向Wは、セル厚さ方向Tとセル高さ方向Hの両方に垂直な方向である。第1実施形態の組電池1では、セル高さ方向Hを鉛直方向に設定している。組電池1は、例えば内燃機関と電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いられる。
【0021】
組電池1は、少なくとも、ケース10と、ケース10内に収容された複数個の電池セル20と、を備える。第1実施形態の組電池1は、セル幅方向Wに2列の電池セルが並ぶ構成であり、具体的には、セル厚さ方向Tに所定個数の電池セル20を積層してなる積層電池群2個がセル幅方向Wに並び、すべての電池セルが直列に結線して構成されている。電池セルは、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池、有機ラジカル電池であり、筐体内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間などに配置される。
【0022】
組電池1を構成する複数個の電池セル20は、単電池でもあり、例えばアルミ缶等の外殻を構成する外装ケースを有し、直方体状の外装ケースの一端面から上方に突出する正極端子及び負極端子からなる電極端子22をそれぞれ有する。組電池1は、すべての電池セル20を直列に結線するように電極端子22間を接続する複数個のバスバー21を備える。
【0023】
各電池セル20における外装ケースには、安全弁が設けられている。各安全弁は、正極端子と負極端子の間に位置し、電池セルの内部圧力が異常な圧力になるときに破断するように設定されている。安全弁は、例えば、電池セルの外装ケースの端面に開口した孔に薄い金属膜を貼り付けて塞いで構成されている。この場合には、電池セルの内部圧力が異常な圧力になったときに、当該金属膜が破断して外装ケースの孔が開放されて、電池セルの内部のガスが外装ケースの外部に放出されることにより、セル内圧が低下し、電池自身の破裂を防止することができる。
【0024】
ケース10は、その内部に各電池セル20の全体を収容可能な深い箱状であり、電池セル20の外装ケースを支持して、各電池セル20を保持する部材である。ケース10は、例えばポリプロピレン、フィラーやタルクを含有するポリプロピレン等の合成樹脂で形成されている。ケース10は、蓋部10aと、蓋部10aの4辺を囲む4つの側板10b,10cとを有して形成されている。ケース10の側板10b,10cには、所定の位置に、組電池1をボルトナット等の固定具によって車両側に固定する複数個の取付部14が設けられている。ケース10は、下端に、4つの側板10b,10cによって囲まれた開口部を有している。図2は、ケース10の下面図であり、各電池セル20は電極端子22を先頭にして当該下端の開口部から挿入されて設置される。一対の側板10bは、電池セル20のセル幅方向Wの両側に位置している。一対の側板10cは、層状に配置された複数の電池セル20の積層方向、すなわち厚さ方向Tの両端に位置している。
【0025】
ケース10は、それぞれ電池セル20を収容する収容室を複数個備える。収容室11と収容室12は、セル幅方向Wに2列並ぶようにケース10に設けられている。ケース10の上端の蓋部10aには、所定の位置に各バスバー21を配置するための開口部115,125が形成されている。開口部115,125には、各収容室11,12に設置された電池セル20の電極端子22が露出するように配置される。また、蓋部10aには、セル幅方向Wに並ぶ2つの仕切り壁110間とセル幅方向Wに並ぶ2つの仕切り壁111間とのそれぞれに、冷却流体流通口113,123が形成されている。冷却流体は、例えば、各電池セル20の下面側から電池セル20間を流れて上昇して、各電池セル20の外装ケース、電極端子22及びバスバー21に接触して冷却し、蓋部10aに複数設けられた冷却流体流通口113,123からケース10の外部に流出する。
【0026】
蓋部10aは、バスバー21と電池セル20の外装ケースとを絶縁し、例えば安全弁及び電極端子22を除く外装ケースの上面部分を覆うように設けられている。また蓋部10aには、複数個の電池セル20の安全弁を露出するように内部通路を形成する排煙用のダクト部30が設けられている。
【0027】
ダクト部30は、耐熱性を有し、電池セル20の内部が異常な高圧状態になって、内部のガスが安全弁の破断によって噴き出しても、ダクト部分が溶けないで破損しない耐熱能力を有することである。また、蓋部10aは、絶縁性を有し、例えばポリプロピレン、フィラーやタルクを含有するポリプロピレン等の合成樹脂で形成されている。
【0028】
電極端子22が突出する電池セル20の上面は、蓋部10aに接触している。蓋部10aのダクト部30と電池セル20の上面との間には、ゴムなどのシール部材を配置するようにしてもよい。また、ダクト部30において電池セル20の上面を押さえる部分には、エラストマー等の軟性の高い樹脂を二色食成形等により設けるようにしてもよい。
【0029】
バスバー21は、対応する電極端子22同士を電気的に接続する。バスバー21と電極端子22との電気的な接続は、ボルトナットによる締結、または溶接などの接続手段によって提供される。この電気的接続を適正に行うために、バスバー21によって接続される電極端子22の位置は、適正に位置決めされなければならない。
【0030】
各バスバー21には、電池セル20の電極端子22を挿通する開口部が形成されている。ケース10の各収容室11,12に、適正に各電池セル20を収容し、保持させた状態で、蓋部10aの開口部115に対応するバスバー21を配置すると、接続対象の電極端子22が各バスバー21の開口部に嵌まり、各電池セル20とバスバー21との位置関係が適正に決まることになる。バスバー21を開口部115の所定の位置に設置する工程により、各バスバー21の位置が規制されるので、バスバー21と電極端子22との溶接等の接合工程を迅速、かつ正確に行うことに貢献し、またバスバー21が接触すべきでない部品に触れることを妨げて短絡等の不適切な接続や部品の損傷等を未然に防止することができる。特に、バスバー21と電極端子22との接合が溶接である場合には、バスバー21と電極端子22の間の数十μmレベルの位置ずれが溶接不良に要因となりうる。
【0031】
電極端子22をバスバー21によって接続する工程を実施する場合には、まず、各電池セル20を、ケース10の下端開口部から電極端子22を先頭にして所定の収容室に適正に収容して保持する。次に、ケース10と複数個の電池セル20の組み立て品に対して、蓋部10aの開口部115から露出する電極端子22にそれぞれ対応する所定のバスバー21を設置する。この状態で、各バスバー21の開口部には、対応する所定の電極端子22が挿通されている。さらに、例えば、ボルトナットによる締結、レーザー溶接、アーク溶接等の溶接により、各バスバー21と各電極端子22とを接合する。また、溶接の場合には、バスバー21を電極端子2上に載置した状態で、溶接する構造も可能である。
【0032】
組電池1は、図示しない電池監視装置、電池制御装置、送風装置等とともに電池パックを構成するようにしてもよい。電池監視装置は、組電池1の状態を監視する電池ECUである。電池監視装置は、組電池1の状態に関する情報を検出するために、組電池1の所定の位置に設置された検出端子から延びる複数の検出線を介して、組電池1に接続されている。検出線は、例えば、組電池1の電圧を検出する電圧センサに接続された電圧検出線31、電池温度を検出する温度センサに接続された温度検出線32等であり、これらの情報は電池監視装置に送信される。電池パックは、複数個の電池セル20の充電、放電、電池温度監視、送風装置による電池冷却等を行う電子部品を有する。
【0033】
次に、ケース10の詳細構成について図2〜図5を用いて説明する。ケース10は、側板10cと並行で、セル厚さ方向Tに所定の間隔をあけて設けられる複数の仕切り壁110,111,120,121を有する。これにより、ケース10は、複数の扁平なチャンバである収容室11,12を区画形成している。一つの収容室には、一つの電池セル20が収容される。
【0034】
複数個の収容室11は、ケース10の内部にセル幅方向Wに並ぶ2列の収容室のうちの一方であり、複数個の収容室12は他方である。収容室11と収容室12は、ケース10内部のセル幅方向Wの中央部にセル厚さ方向Tの全体にわたって設けられる壁部13によって、セル幅方向Wに区画されている。収容室11は、セル厚さ方向Tに対向する仕切り壁110及び仕切り壁111と、セル幅方向Wに間隔をあけて対向する壁部112及び壁部13と、によって囲まれる直方体状のチャンバである。
【0035】
仕切り壁110は、収容室11において、セル幅方向Wの両端側に1つずつ設けられている。仕切り壁111も、セル厚さ方向Tに仕切り壁110と対向するように、収容室11において、セル幅方向Wの両端側に1つずつ設けられている。仕切り壁110及び111は、電池セル20の側面においてセル幅方向Wの中央部を支持していない。したがって、収容室11の電池セル20は、セル幅方向Wの両端側に対向して配される仕切り壁110及び111によって、セル幅方向Wの両端側の側面のみが押圧されて、セル厚さ方向Tに挟持される。
【0036】
収容室12は、セル厚さ方向Tに対向する仕切り壁120及び仕切り壁121と、セル幅方向Wに間隔をあけて対向する壁部122及び壁部13と、によって囲まれる直方体状のチャンバである。仕切り壁120は、収容室12において、セル幅方向Wの両端側に1つずつ設けられている。仕切り壁121も、セル厚さ方向Tに仕切り壁120と対向するように、収容室12において、セル幅方向Wの両端側に1つずつ設けられている。仕切り壁120及び121は、電池セル20の側面においてセル幅方向Wの中央部を支持していない。したがって、収容室12の電池セル20は、セル幅方向Wの両端側に対向して配される仕切り壁120及び121によって、セル幅方向Wの両端側の側面のみが押圧されて、セル厚さ方向Tに挟持される。
【0037】
なお、ケース10のセル厚さ方向Tの両端に位置する収容室11及び収容室12については、チャンバを形成する一側面が側板10cとなる。一つの収容室には、一つの電池セル20が収容される。よって、電池セル20は、ケース10を構成する複数の板状部材に囲まれて配置される。各収容室11,12には、セル高さ方向Hの端部に蓋部10aが位置し、電池セル20が収容された状態で、電極端子22は蓋部10aの開口部115から露出する。電池セル20の上面は、蓋部10aに接触して配置されることにより、ケース10に対する電極端子22のセル高さ方向Hの位置が規定される。
【0038】
このように、電池セル20は、部分的にケース10の板状部材と接触することによって、セル高さ方向H、セル幅方向W、及びセル厚さ方向Tに関して、ケース10に対して固定される。収容室11に収容される電池セル20は、セル幅方向Wに関して壁部13と壁部112の間に挟まれ、セル厚さ方向Tに関して仕切り壁110と仕切り壁111の間に挟まれ、セル高さ方向Hに関して蓋部10aと図示しない底板の間に挟まれる。同様に、収容室12に収容される電池セル20は、セル幅方向Wに関して壁部13と壁部122の間に挟まれ、セル厚さ方向Tに関して仕切り壁120と仕切り壁121の間に挟まれ、セル高さ方向Hに関して蓋部10aと図示しない底板の間に挟まれる。
【0039】
各電池セル20は、複数の位置決め部材によってケース10に対して保持されている。図3及び図4に示すように、第1の突起部114は、セル幅方向Wに対向する2つの壁部112,13のうち、一方側の壁部112のみに他方側の壁部13に向けて突出するように設けられている。第1の突起部114は、収容室11に収容される電池セルの一方側端面20aに接触して電池セルの他方側端面20bを他方側の壁部13に押し当て、ケース10内において電池セル20をセル幅方向Wに関して位置決めする。電池セル20は、セル厚さ方向Tに関しては、仕切り壁110と仕切り壁111とで拘束され、位置決めされている。
【0040】
仕切り壁110,111は、少なくともセル幅方向Wにおいてバスバー21が配設される位置に対応する部位で、収容室11に収容される電池セル20を支持する。仕切り壁120,121は、少なくともセル幅方向Wにおいてバスバー21が配設される位置に対応する部位で、収容室12に収容される電池セル20を支持する。仕切り壁110,111,120,121は、収容室11,12においてセル幅方向Wの中央部には設けられていない。したがって、各電池セル20は、セル幅方向Wの中央部でセル厚さ方向Tに支持されないが、バスバー21や電極端子22近傍で安定的に支持される。
【0041】
また、仕切り壁110、111は、電池セル内部に包含される内包物が外装ケースに内部から接触していない外装ケース端部の表面部位で電池セル20を支持する。仕切り壁110,111,120,121は、収容室11,12においてセル幅方向Wの中央部には設けられていないため、各電池セル20は、セル幅方向Wの中央部でセル厚さ方向Tに支持されない。しかし、仕切り壁110,111,120,121が支持する外装ケース端部の表面部位は、セル電極の充放電などによる外装ケースの膨張、収縮が影響せず、ケース剛性が高く、寸法精度が良好かつ安定した部位であるため、各電池セル20を安定的に支持することができる。
【0042】
第1の突起部114は、電池セル20との当接と、壁部13と電池セル20の当接とによって、電池セル20からの反力により変形しうる。第1の突起部114は、第1の突起部114に電池セル20が押し付けられた時に、電池セル20が変形するよりも、第1の突起部114自身が変形するような材料と形状とを有している。また、第1の突起部114は、ケース10と同様の材料によって形成され、側板10bに一体的に成形されている。
【0043】
壁部13は、突起部が形成されていないので電池セルの他方側端面20bの面全体と面接触するため変形せず、セル幅方向Wについて第1の突起部114のみが変形する。これにより、電池セル20の電極端子22は、壁部13を基準面として、セル幅方向Wに関する位置が決定されることになる。したがって、図4に破線で示したセル厚さ方向Tに並ぶ電極端子22は、セル幅方向Wの位置が揃うようになり、同じく破線で示すバスバー21と電極端子22の接合、締結等を適正かつ確実に実施することができるのである。
【0044】
第1の突起部114は、電池セルの一方側端面20aにおいて、所定の位置を押圧する。第1の突起部114は、電池セルの一方側端面20aの中央部に接触するように位置する。このように、第1の突起部114は、電池セルの一方側端面20aの中央部をセル厚さ方向Tに関して押圧するので、各電池セル20を安定して保持することができる。
【0045】
また、収容室12に収容される電池セル20については、上記した収容室11に収容される電池セル20の場合と同様に、保持、位置決めが行われ、同様の作用効果が得られる。したがって、収容室11側の第1の突起部114は、収容室12側では第1の突起部124に相当する。
【0046】
次に、本実施形態の組電池1がもたらす作用効果について説明する。組電池1のケース10は、各電池セル20を収容する収容室11を形成するためにセル厚さ方向Tに間隔をあけて配置される複数の仕切り壁110,111と、セル幅方向Wに対向するように位置して、仕切り壁110,111とともに収容室11を形成する2つの壁部112,13と、を備える。さらにケース10は、セル幅方向Wに対向する2つの壁部112,13のうち、一方側の壁部112のみに他方側の壁部13に向けて突出するように設けられる第1の突起部114を備える。第1の突起部114は、収容室11に収容される電池セルの一方側端面20aに接触して電池セルの他方側端面20bを他方側の壁部13に押し当てる。なお、この構成は、壁部13について収容室11と対称である収容室12についても同様である。
【0047】
この構成によれば、壁部に比べて比較的変形容易な突起部は、従来技術のように、セル幅方向Wの両側の存在するのではなく、片側にのみ設けられる。電池セル20が押し当てられるケース10の反対側部分は、壁部13の面であるので、第1の突起部114に比べて容易に変形するものではない。このため、片側のみにおいて第1の突起部114が変形したり潰れたりすることにより、他方側の壁部13の面を基準面にして、各電池セル20のセル幅方向Wの位置決めが決定されることになる。つまり、複数個の電池セル20のセル幅方向の寸法が同一であれば、片側の第1の突起部114の変形量や潰れ度合いは、すべての収容室11で均一になり、各電池セル20はセル幅方向Wに揃うようになる。この結果、複数の電池セル20の複数の端面を揃え、さらに複数の電極端子22の位置を揃えることが可能となる。
【0048】
このように組電池1は、セル厚さ方向Tに並ぶ複数個の電池セル20を正確に位置決めしてセル幅方向Wに揃えることができるので、複数個の電池セル20の電極端子22に関する位置決め精度を確保することができる。このセル幅方向Wの位置決め精度の確保により、電極端子22とバスバー21との接合性の向上を実現できる。
【0049】
また、本実施形態の組電池1によれば、セル幅方向Wの片側のみに設けられた第1の突起部114によって、反対側の壁部13に各電池セル20を押し付ける構成である。このため、壁部13は変形し難い面であるから、セル幅方向Wにおいて容易に変形する部分は、第1の突起部114のみであるので、組電池1に対して振動が働くような使用環境であっても、振動によって変形する部分は、片側の突起部のみである。したがって、ケース10に対する各電池セル20のセル幅方向Wの変位を抑制することができる。したがって、電極端子22間を接続するバスバー21における機械的な負荷を抑制することができるので、バスバー接合の耐久性を向上させることができる。
【0050】
また、仕切り壁110,111は、電池セル20においてセル幅方向Wの端部に対応する部位に対向して設けられて、収容室11に収容される電池セル20を支持する。この構成によれば、仕切り壁110,111は外装ケースの膨張、収縮の影響を受け難い、電池セル20のセル幅方向Wの端部を挟持するため、セル厚さ方向Tに隣り合う電極端子22の位置決めが正確に行われる。このため、セル厚さ方向Tについて電極端子22の位置決め精度をさらに向上することができるので、電極端子22とバスバー21の接合性の一層の向上することができる。したがって、各電池セル20のセル厚さ方向Tに関する位置決め精度を向上することができ、電極端子20間の適正な接続を実現する組電池1が得られる。
【0051】
また、仕切り壁は、セル幅方向Wにおいてバスバー21が配設される位置に対応する部位における厚さ寸法が、セル幅方向Wの中央部における厚さ寸法よりも大きいものであってもよい。この場合、仕切り壁はセル幅方向Wの中央部よりもバスバー21が配設される部位で電池セル20を強く支持できる。このため、特に電極端子22近傍における各電池セル20の位置決めを正確に行うことができる。
【0052】
また、ケース10は、セル幅方向Wに2列以上並んで設けられる収容室11,12を備える。この構成によれば、セル幅方向Wに2列以上並ぶ複数個の電池セル20は、バスバー21と列間接続バスバー21Aを用いて直列に結線される。そして、セル幅方向Wに隣接し、列間接続バスバー21Aを介して接続される列間の電池セル同士について、それぞれの電池セル20の電極端子22の位置決め精度を確保することができる。この列間の電極端子22の位置決め精度を確保できることにより、セル幅方向Wに2列以上並ぶ電池セル20を有する組電池1について、電極端子22とバスバー21との接合性を向上することができる。
【0053】
また、セル幅方向Wに電池セルが2列並ぶ組電池の場合は、組電池を構成する複数個の電池セルにおける両端の端子位置が同一の側に位置するように設定できる。したがって、各種のハーネス配線を簡素化することが可能である。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態に対する他の形態である組電池1Aについて図5を参照して説明する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。組電池1Aは、さらに第2の突起部116を備える。
【0055】
図5に示すように、ケース10Aにおいて一方側の壁部112寄りに設けられた第2の突起部116は、バスバー21によって直列に結線され、かつセル厚さ方向Tに隣接する電池セル20間に位置する仕切り壁110に対して、対向する壁部117のみから突出するように設けられる。つまり、第2の突起部116は、セル厚さ方向Tに対向する2つの壁部のうち、一方側の壁部117のみに他方側の仕切り壁110に向けて突出するように設けられている。壁部117は、仕切り壁110に対して、およそ電池セル20の厚さ寸法分、セル厚さ方向Tに距離を設けて設けられている。壁部117は、仕切り壁110よりもセル厚さ方向Tの寸法が小さい。壁部117と第2の突起部116を合わせたセル厚さ方向Tの寸法は、仕切り壁110の厚さ寸法と同等またはやや大きく設定されている。
【0056】
第2の突起部116は、電池セル20に関してセル厚さ方向Tの片側面のみを押圧する突起である。したがって、第2の突起部116によって各電池セル20をセル厚さ方向Tに押圧する力は、セル厚さ方向Tの片側面のみに作用し、収容室11に収容される電池セルの側面20cに接触して当該電池セル20を仕切り壁110に押し当てる働きをする。これにより、電池セル20は、セル厚さ方向Tに仕切り壁110によって支持されるとともに、第2の突起部116によって仕切り壁110に向かう方向に押圧される。
【0057】
第2の突起部116は、電池セル20を仕切り壁110に押し当て、ケース10A内において電池セル20をセル厚さ方向Tに関して位置決めする。第2の突起部116は、バスバー21が配置される部位の近傍または電池セル20のセル幅方向Wの端部に設けられ、バスバー21が接合する電極端子22のセル厚さ方向Tの安定的な位置決めに貢献する。
【0058】
第2の突起部116は、電池セル20との当接と、仕切り壁110と電池セル20の当接とによって、電池セル20からの反力により変形しうる。第2の突起部116は、第2の突起部116に電池セル20が押し付けられた時に、電池セル20が変形するよりも、第2の突起部116自身が変形するような材料と形状とを有している。また、第2の突起部116は、ケース10Aと同様の材料によって形成されている。
【0059】
第2の突起部116にほぼ対向する仕切り壁110は、突起部が形成されていないので電池セルの側面全体と面接触するため変形せず、セル厚さ方向Tについて第2の突起部116のみが変形する。これにより、電池セル20の電極端子22は、仕切り壁110を基準面として、セル厚さ方向Tに関する位置が決定されることになる。したがって、図5に破線で示したセル厚さ方向Tに並ぶ電極端子22は、セル厚さ方向Tの位置が揃うようになり、同じく破線で示すバスバー21と電極端子22の接合、締結等を適正かつ確実に実施することができるのである。
【0060】
第2の突起部116Aは、ケース10Aにおいて他方側の壁部13寄りに設けられている。第2の突起部116Aは、バスバー21によって直列に結線され、かつセル厚さ方向Tに隣接する電池セル20間に位置する仕切り壁111に対して、対向する壁部117Aのみから突出するように設けられる。つまり、第2の突起部116Aは、セル厚さ方向Tに対向する2つの壁部のうち、一方側の壁部117Aのみに他方側の仕切り壁111に向けて突出するように設けられている。壁部117Aは、仕切り壁111に対して、およそ電池セル20の厚さ寸法分、セル厚さ方向Tに距離を設けて設けられている。壁部117Aは、仕切り壁111よりもセル厚さ方向Tの寸法が小さい。壁部117Aと第2の突起部116Aを合わせたセル厚さ方向Tの寸法は、仕切り壁111の厚さ寸法と同等またはやや大きく設定されている。
【0061】
第2の突起部116Aは、電池セル20に関してセル厚さ方向Tの片側面のみを押圧する突起である。したがって、第2の突起部116Aによって各電池セル20をセル厚さ方向Tに押圧する力は、セル厚さ方向Tの片側面のみに作用し、収容室11に収容される電池セルの側面20cに接触して当該電池セル20を仕切り壁111に押し当てる働きをする。これにより、電池セル20は、セル厚さ方向Tに仕切り壁111によって支持されるとともに、第2の突起部116Aによって仕切り壁111に向かう方向に押圧される。
【0062】
第2の突起部116Aにほぼ対向する仕切り壁111は、突起部が形成されていないので電池セルの側面全体と面接触するため変形せず、セル厚さ方向Tについて第2の突起部116Aのみが変形する。これにより、電池セル20の電極端子22は、仕切り壁111を基準面として、セル厚さ方向Tに関する位置が決定されることになる。
【0063】
また、収容室12に収容される電池セル20については、上記した収容室11に収容される電池セル20の場合と同様に、セル厚さ方向Tに位置決めが行われ、同様の作用効果が得られる。したがって、収容室11側の壁部117,117A及び第2の突起部116,116Aは、収容室12側ではそれぞれ壁部127,127A、第2の突起部126,126Aに相当する。
【0064】
次に、本実施形態の組電池1Aがもたらす作用効果について説明する。組電池1Aのケース10Aは、バスバー21によって直列に結線される電池セル20間に位置する仕切り壁110,111に対して、対向する壁部117,117Aのみから突出するように設けられる第2の突起部116,116Aを備える。第2の突起部116,116Aは、収容室11に収容される電池セルの側面20cに接触して電池セル20を仕切り壁110,111に押し当てる。
【0065】
この構成によれば、電池セル20は、仕切り壁110,111に対向する壁部117,117Aのみにおいてセル厚さ方向Tに第2の突起部116,116Aに接触することにより、仕切り壁110,111に押し当てられる。このため、バスバー21近傍の仕切り壁110,111を基準面として、ケース10Aに対する各電池セル20のセル厚さ方向Tの位置を決定することができる。この結果、セル厚さ方向Tについても複数の電池セル20の複数の端面を揃え、さらに複数の電極端子22の位置を揃えることが可能となる。これにより、セル厚さ方向Tについても複数個の電池セル20の位置を揃えることが可能なため、セル幅方向W及びセル厚さ方向Tの両方について、電池セル20の各電極端子22の位置決め精度をさらに向上することができる。このようにセル厚さ方向Tの位置決め精度を確保することにより、電極端子22とバスバー21の接合性を一層向上することができる。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態に対する他の形態である組電池1A1について図6を参照して説明する。第2実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第3実施形態において説明しない他の構成は、第2実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0067】
図6に示すように、組電池1A1では、第2の突起部118,118Aのそれぞれは電池セルの一方側端面20aからのセル幅方向Wの距離が電極端子22と同等である。つまり、第2の突起部118,118Aのそれぞれは、電池セル20間において電極端子22とセル厚さ方向Tに並ぶ位置に設けられている。第2の突起部118は、セル幅方向Wの一方側に配される壁部119から、壁部119に対向する仕切り壁110Aに向けて突出する。第2の突起部118Aは、セル幅方向Wの他方側に配される壁部119Aから、壁部119Aに対向する仕切り壁111Aに向けて突出する。壁部119及び壁部119Aは、電極端子22よりも電池セル20のセル幅方向Wの中央部に近い位置まで延設されている。
【0068】
また、収容室12に収容される電池セル20については、収容室11に収容される電池セル20の場合と同様に、保持、位置決めが行われ、同様の作用効果が得られる。したがって、収容室11側の仕切り壁110A,111A,119,119Aは、それぞれ収容室12側では仕切り壁120A,121A,129,129Aに相当する。また、収容室11側の第2の突起部118,118Aは、収容室12側では第2の突起部128,128Aに相当する。
【0069】
第3実施形態の組電池1A1によれば、仕切り壁110A,111A及び第2の突起部118,118Aは、セル幅方向Wに関してバスバー21が配設される位置に対応する部位、電極端子22の近傍部位、または電極端子22とセル厚さ方向Tに並ぶ位置に少なくとも設けられ、収容室11に収容される電池セル20を支持する。なお、仕切り壁111は、セル幅方向Wにおいて、これらの部位以外にも設けられていてもよい。
【0070】
この構成によれば、仕切り壁110A,111A及び第2の突起部118,118Aは、バスバー21が配設される部位や電極端子22の近傍部位で電池セル20を支持するため、セル厚さ方向Tに隣り合う電極端子22の位置決めが正確に行われる。このため、セル厚さ方向Tについて電極端子22の位置決め精度をさらに向上することができるので、電極端子22とバスバー21の接合性の一層の向上することができる。
【0071】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態に対する他の形態である組電池1Bについて図7〜図9を参照して説明する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第4実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0072】
図7〜図9に示すように、組電池1Bは、ケース10Bがセル幅方向Wに1列となる収容室11を備える点が、2列の収容室11、12を備える組電池1と異なっている。この構成により、組電池1Bの収容室11は、セル厚さ方向Tに対向する仕切り壁110及び仕切り壁111と、セル幅方向Wの両端に位置して対向する壁部112及び壁部112Aと、によって囲まれる直方体状のチャンバである。収容室11に収容される電池セル20は、セル幅方向Wに関して壁部112と壁部112Aの間に挟まれ、セル厚さ方向Tに関して仕切り壁110と仕切り壁111の間に挟まれ、セル高さ方向Hに関して蓋部10aと図示しない底板の間に挟まれる。
【0073】
第1の突起部114は、セル幅方向Wに対向する2つの壁部112,112Aのうち、一方側の壁部112のみに他方側の壁部112Aに向けて突出するように設けられている。第1の突起部114は、収容室11に収容される電池セルの一方側端面20aに接触して電池セルの他方側端面20bを他方側の壁部112Aに押し当て、ケース10内において電池セル20をセル幅方向Wに関して位置決めする。電池セル20は、セル厚さ方向Tに関しては、仕切り壁110と仕切り壁111とで拘束され、位置決めされている。
【0074】
仕切り壁110,111は、少なくともセル幅方向Wにおいてバスバー21が配設される位置に対応する部位で、収容室11に収容される電池セル20を支持する。仕切り壁110,111は、収容室11,12においてセル幅方向Wの中央部には設けられていない。したがって、各電池セル20は、セル幅方向Wの中央部でセル厚さ方向Tに支持されないが、バスバー21や電極端子22近傍で安定的に支持される。第1の突起部114は、電池セル20との当接と、壁部112Aと電池セル20の当接とによって、電池セル20からの反力により変形しうる。
【0075】
壁部112Aは、突起部が形成されていないので電池セルの他方側端面20bの面全体と面接触するため変形せず、セル幅方向Wについて第1の突起部114のみが変形する。これにより、電池セル20の電極端子22は、壁部112Aを基準面として、セル幅方向Wに関する位置が決定されることになる。したがって、図9に破線で示したセル厚さ方向Tに並ぶ電極端子22は、セル幅方向Wの位置が揃うようになり、同じく破線で示すバスバー21と電極端子22の接合、締結等を適正かつ確実に実施することができるのである。
【0076】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第4実施形態に対する他の形態である組電池1Cについて図10を参照して説明する。第4実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第5実施形態において説明しない他の構成は、第4実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。組電池1Cは、さらに第2の突起部116,116Aを備える。
【0077】
図10に示すように、ケース10Cに設けられた第2の突起部116は、バスバー21によって直列に結線されるとともにセル厚さ方向Tに隣接する電池セル20間に位置する仕切り壁110に対して対向する壁部117のみから突出するように設けられる。つまり、第2の突起部116は、セル厚さ方向Tに対向する2つの壁部のうち、一方側の壁部117のみに他方側の仕切り壁110に向けて突出するように設けられている。壁部117は、仕切り壁110に対して、およそ電池セル20の厚さ寸法分、セル厚さ方向Tに距離を設けて設けられている。壁部117は、仕切り壁110よりもセル厚さ方向Tの寸法が小さい。壁部117と第2の突起部116を合わせたセル厚さ方向Tの寸法は、仕切り壁110の厚さ寸法と同等に設定されている。
【0078】
第2の突起部116は、電池セル20に関してセル厚さ方向Tの片側面のみを押圧する突起である。したがって、第2の突起部116によって各電池セル20をセル厚さ方向Tに押圧する力は、セル厚さ方向Tの片側面のみに作用し、収容室11に収容される電池セルの側面20cに接触して当該電池セル20を仕切り壁110に押し当てる働きをする。
【0079】
第2の突起部116は、電池セル20を仕切り壁110に押し当て、ケース10C内において電池セル20をセル厚さ方向Tに関して位置決めする。第2の突起部116は、バスバー21が配置される部位の近傍に設けられ、バスバー21が接合する電極端子22のセル厚さ方向Tの安定的な位置決めに貢献する。これにより、電池セル20は、セル厚さ方向Tに関して、仕切り壁110によって支持されるとともに、第2の突起部116によって仕切り壁110に向かう方向に押圧される。
【0080】
第2の突起部116は、電池セル20との当接と、仕切り壁110と電池セル20の当接とによって、電池セル20からの反力により変形しうる。第2の突起部116は、第2の突起部116に電池セル20が押し付けられた時に、電池セル20が変形するよりも、第2の突起部116自身が変形するような材料と形状とを有している。また、第2の突起部116は、ケース10Cと同様の材料によって形成されている。
【0081】
第2の突起部116にほぼ対向する仕切り壁110は、突起部が形成されていないので電池セルの側面全体と面接触するため変形せず、セル厚さ方向Tについて第2の突起部116のみが変形する。これにより、電池セル20の電極端子22は、仕切り壁110を基準面として、セル厚さ方向Tに関する位置が決定されることになる。したがって、図10に破線で示したセル厚さ方向Tに並ぶ電極端子22は、セル厚さ方向Tの位置が揃うようになり、同じく破線で示すバスバー21と電極端子22の接合、締結等を適正かつ確実に実施することができるのである。
【0082】
また、セル幅方向Wに関して壁部112の反対側の壁部112A近傍には、上述した第2の突起部116と同様の作用を奏する第2の突起部116Aが設けられている。第2の突起部116Aは、電池セル20を仕切り壁111に押し当て、ケース10C内において電池セル20をセル厚さ方向Tに関して位置決めする。第2の突起部116Aに関する他の要素の構成及び作用効果については、上述の第2の突起部116に関する説明と同様であり、省略する。なお、壁部117Aは、セル幅方向Wの一方側の壁部117に相当する。また、仕切り壁111は、セル幅方向Wの他方側でバスバー21によって直列に結線されてセル厚さ方向Tに隣接する電池セル20間に位置し、セル幅方向Wの一方側の仕切り壁110に相当する。また、セル幅方向Wの他方側では、セル厚さ方向Tの端部に位置する側板10cに、対向する仕切り壁111に向かって突出する第2の突起部116Aが設けられている。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0084】
上記実施形態において、組電池のケースは、セル幅方向Wに1列の収容室11Bまたは2列並んで設けられる収容室11,12を備えているが、本発明は、この形態に限定するものではない。ケースには、セル幅方向Wに3列以上の収容室が並んで設けられる形態も含むものである。
【0085】
上記実施形態において、各収容室11,11B,12には電池セル20の端面において、中央部を支持する第1の突起部114,124が設けられているが、本発明の第1の突起部はこの形態に限定するものではない。例えば、各収容室11,11B,12は、電池セル20の端面の角部を支持する第1の突起部、電池セル20の端面の中央部を支持する第1の突起部114,124のいずれかを備えるものでもよい。
【0086】
上記実施形態において、ケース10をはじめ、第1の突起部114,124、第2の突起部116,126は、樹脂材料から形成されていると説明したが、この材料に限定するものではない。例えば、第1の突起部及び第2の突起部は、それぞれ壁部13、仕切り壁111または仕切り壁120よりも電池セル20からの反力によって変形しやすい形状であるため、金属等の比較的固い材料で形成することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…組電池
10…ケース
11,11B,12…収容室
13…壁部(他方側の壁部)
20…電池セル
20a…電池セルの一方側端面
20b…電池セルの他方側端面
21…バスバー
110,111…仕切り壁
112…壁部(一方側の壁部)
114…第1の突起部
T…セル厚さ方向
W…セル幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ直方体状であり、バスバー(21)を用いて直列に結線される複数個の電池セル(20)と、各電池セルを保持して前記複数個の電池セルをセル厚さ方向(T)に積層するケース(10)とを備える組電池(1)であって、
前記ケースは、
前記各電池セルを収容する収容室(11)を形成するために前記セル厚さ方向に間隔をあけて配置される複数の仕切り壁(110,111)と、
セル幅方向(W)に間隔をあけて対向するように位置して、前記仕切り壁とともに前記収容室を形成する2つの壁部(112,13)と、
当該セル幅方向(W)に対向する前記2つの壁部(112,13)のうち、一方側の壁部(112)のみに他方側の壁部(13)に向けて突出するように設けられ、前記収容室に収容される前記電池セルの一方側端面(20a)に接触して前記電池セルの他方側端面(20b)を前記他方側の壁部(13)に押し当てる第1の突起部(114)と、を備えることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記バスバーによって直列に結線されるとともに、前記セル厚さ方向(T)に隣接する前記電池セル間に位置する仕切り壁(110)に対して、対向する壁部(117)のみから突出するように設けられ、前記収容室に収容される前記電池セルの側面(20c)に接触して当該電池セルを前記仕切り壁(110)に押し当てる第2の突起部(116)を備えることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第2の突起部(116)は、前記セル幅方向(W)に関して前記電池セル(20)の端部に接触するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記第2の突起部(116)は、前記セル幅方向(W)に関して前記電池セルの電極端子(22)の近傍の側面に接触するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項5】
前記ケース(10)は、前記セル幅方向(W)に2列以上並んで設けられる前記収容室(11,12)を備え、
前記セル幅方向Wに並ぶ2列一対の前記電池セル間には、前記電池セルの他方側端面(20b)が押し当てられる前記壁部(13)が配されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105637(P2013−105637A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248990(P2011−248990)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】