説明

経口用肌改善剤、これを含有する食品、ならびに肌を改善する方法

【課題】肌を改善させるための経口用肌改善剤、これを含有する食品、ならびに肌を改善する方法を提供する。
【解決手段】経口用肌改善剤は、γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用肌改善剤、これを含有する食品、ならびに肌を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、食生活の著しい変化、住環境の悪化と過密化と言った種々の要因により、その生活パターンが著しく変化し、これに起因する生活ストレスが急増していると言われている。又、近年女性の社会進出に伴い、女性がストレスに曝される機会が増加し、「皮膚に張りや弾力がない」「化粧のりが悪い」「くすみがひどい」といった女性特有の皮膚に関する悩みが増えていることから、ストレスと皮膚の関係が注目されている。
【0003】
γ‐アミノ酪酸は、アミノ酸の一種であり、経口摂取することにより抗ストレス効果があることが知られている(特許文献1)。また、特許文献2には、上記抗ストレス効果を有するγ‐アミノ酪酸を、プラセンタ由来成分、コラーゲン由来成分と共に摂取することにより、肌のくすみや張りを改善すると記載されている。
【0004】
また、ヒアルロン酸は皮膚細胞中の保湿成分のひとつであり、特許文献3には、特定の数値以上の純度を有し、且つ、特定範囲内の平均分子量を有する精製ヒアルロン酸を経口摂取したときに優れた肌改善効果を有することが記載されている。
【0005】
このようにγ‐アミノ酪酸やヒアルロン酸を経口摂取したとき肌改善効果を有するが、これらの作用機序については明らかでなかった。また、肌改善、特に、肌荒れの予防や改善は女性の美容にとって永遠のテーマであり、更なる肌改善効果に優れた飲食品組成物が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−348656号公報
【特許文献2】特開2007−70316号公報
【特許文献3】特開2002−356432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、肌に対して総合的な改善を行うことができる経口用肌改善剤、これを含有する食品、ならびに肌を改善する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、肌の改善に関して鋭意研究を重ねた結果、γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを摂取することにより、意外にも、ビオチン、ソマトメジンC(Insulin like growth factor;IGF-1)、DHEAs(Dehydroepiandrosterone sulfate)等の血中濃度を高め、それによって肌のつやや張りを改善し、肌のきめを整えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の一態様に係る経口用肌改善剤は、γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを有効成分として含有する。
【0010】
本発明の一態様に係る経口用肌改善剤に有効成分として含有される上記γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩との比が、95:5〜5:95であることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る食品は、上記経口用肌改善剤を含有する。
【0012】
本発明の一態様に係るヒト又はヒト以外の動物において肌を改善する方法は、γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを、ヒト又はヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
【発明の効果】
【0013】
上記経口用肌改善剤及び上記肌を改善する方法によれば、γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを経口摂取することによって、ビオチン、ソマトメジンC、DHEAs等の血中濃度を高め、その結果、肌のつやや張りを改善し、肌のきめを整えることが可能となる。したがって、肌を改善するための方法を提供できるとともに、γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩の更なる利用拡大が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】群1(γ−アミノ酪酸摂取群)の被験者(29歳)の肌表面画像(腕) (A)摂取前(医師の評価:2点) (B)γ−アミノ酪酸3週間摂取後(医師の評価:2点) (C)本発明の経口用肌改善剤3週間摂取後(医師の評価:3点)
【図2】群2(ヒアルロン酸摂取群)の被験者(26歳)の肌表面画像(腕) (A)摂取前(医師の評価:1点) (B)ヒアルロン酸3週間摂取後(医師の評価:2点) (C)本発明の経口用肌改善剤3週間摂取後(医師の評価:4点)
【図3】ソマトメジンCの血中濃度(各群の被験者の平均値)
【図4】DHEAsの血中濃度(各群の被験者の平均値)
【図5】ビオチンの血中濃度(各群の被験者の平均値)
【図6】グルタチオンの血中濃度(各群の被験者の平均値)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る経口用肌改善剤、これを含有する食品、ならびに肌を改善する方法を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0016】
1.経口用肌改善剤
本発明の一実施形態に係る経口用肌改善剤は、有効成分のひとつとしてγ−アミノ酪酸を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明におけるγ−アミノ酪酸とは、一般にGABA(ギャバ)とも呼ばれ、自然界に広く分布している非タンパク質アミノ酸の1種を指す。食品の成分としても、茶、野菜類、穀類などに含まれている。
【0018】
本実施形態に係る経口用肌改善剤に用いられるγ−アミノ酪酸は、特に限定するものではないが、野菜、果物、穀物などから抽出されたγ−アミノ酪酸、発酵法により生産されたγ−アミノ酪酸、有機合成から生産されたγ−アミノ酪酸を使用することができる。中でも、大量且つ安価にγ−アミノ酪酸を得ることができることから、乳酸菌による発酵法が好ましい。前記発酵法による製造方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、グルタミン酸ソ−ダ、ブドウ糖、パン酵母エキス等を含む培養液に、乳酸菌(ラクトバチルス ブレビス(IFO12005)、ラクトバチルス ヒルガルディーK−3株(FER
M P−18422)等の前培養液を添加し、20〜30℃で、1〜3日間培養し、この
培養液を、加熱殺菌後、濾過して濾液を得る。上記濾過工程においては、ケイソウ土やセルロース、活性炭などの濾過助剤を用いても良い。なお、乳酸菌としてラクトバチルス ヒルガルディー K−3株(FERM P−18422)を用いた場合、培養液に5%以上のグルタミン酸ソーダを含有せしめることにより、γ−アミノ酪酸の濃度を特に効果的に高めることができ、上記培養液中のγ−アミノ酪酸含量は約5質量%、固形分当りに換算するとγ−アミノ酪酸は約50%を占める。また、上記培養液のpHを4.5〜5.5とすることにより、乳酸菌の増殖が特に効果的に促進され、培養液中のγ−アミノ酪酸の含量を高めることができる。上記の濾液は、適宜減圧濃縮、真空濃縮等により濃縮してそのまま、又は更に噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥して粉末として、本発明の経口用肌改善剤に用いることができる。さらに、γ−アミノ酪酸の含有量をより高めるために、液体クロマトグラフィー等による精製を行うこともできる。
【0019】
また、市販品「ファーマギャバ20−D」、「ラクトギャバン」、「LGN」(いずれも商品名、株式会社ファーマフーズ製)を用いてもよい。
【0020】
本実施形態に係る経口用肌改善剤中又は食品中のγ−アミノ酪酸の検出方法は特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換カラムを用いての高速クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、オルトフタルアルデヒド(OPA)によるポストカラムでの誘導体化後、蛍光検出器で検出定量する方法や、前記の高速クロマトグラフィーによる分離後、ニンヒドリンによるポストカラムでの誘導体化後、紫外可視検出器で検出定量する方法などが挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る経口用肌改善剤は、有効成分のひとつとしてヒアルロン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする。
【0022】
ここで、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品又は薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0023】
また、本実施形態に係る経口用肌改善剤で使用するヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量は、小さすぎると発明の効果が得られ難くなり、大きすぎると食品に配合し難くなるので、好ましくは1〜200万、より好ましくは1〜150万、特に好ましくは1〜120万である。
【0024】
また、本発明で使用する精製ヒアルロン酸の平均分子量は下記の方法に求めた値として定義される。
【0025】
即ち、約0.05gの精製ヒアルロン酸を精密に量り、0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mlとした溶液及びこの溶液8ml、12ml並びに16mlを正確に量り、それぞれに0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mlとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液及び0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十四改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度測定法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(1))、各濃度における還元粘度を算出する(式(2))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100ml)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(3))に代入し、平均分子量を算出する(T.C. Laurent, M. Ryan, A. Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42, 476-4851960)。
【0026】
(式1)

【0027】
(式2)

【0028】
(式3)

【0029】
ヒアルロン酸及び/又はその塩は、動物等の天然物(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液などの生体組織など)から抽出されたものでもよく、又は、微生物もしくは動物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的もしくは酵素的に合成されたものなどいずれも使用することができる。
【0030】
本実施形態に係る肌改善剤で使用するヒアルロン酸は、市販品を使用することができるが、例えば、以下の製造法1及び2に従って製造することもできる。
【0031】
1.1.製造法1(鶏冠からの抽出)
まず、鶏冠に加熱処理を施す。これは、鶏冠に含まれる蛋白質を熱変性させたり、酵素失活させたりするためである。加熱処理は如何なる方法をとってもよいが、熱水中に鶏冠を浸漬する方法をとると効率よく行うことができる。加熱温度や時間は、鶏冠中の蛋白質が変性したり、酵素が失活したりする範囲内であれば、特に制限がなく、熱水による加熱法を採用する場合は、60〜100℃の熱水中に原料を20〜90分間浸漬するとよい。
【0032】
なお、凍結した鶏冠を用いる場合には、鶏冠をそのまま加熱してもよいが、凍結鶏冠を流水中等に入れ緩慢解凍した後、加熱処理を施したほうが一定品位のものが得られやすく、好ましい。
【0033】
次に、加熱処理した鶏冠をペースト化する。このペースト化によりヒアルロン酸の収率が向上する。ペースト化に先立ち、加熱処理後の鶏冠を細断機により薄く切断したり、又は肉挽き用チョッパー等で細断したりしておくと、ペースト化がしやすくなる。ペースト化の一例を示すと、鶏冠に対して約1〜5倍量の清水を加え、ホモゲナイザーにて10〜60分間ホモゲナイズを行うことで、鶏冠は破砕・微粒子化され、ペーストに仕上げることができる。なお、ペースト化には、ホモゲナイザーの他に、高速撹拌機や擂潰機を用いてもよい。
【0034】
次に、ペースト化した鶏冠に、塩酸、硫酸等の酸剤、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤を添加し酸処理又はアルカリ処理してヒアルロン酸を低分子化し、処理後のヒアルロン酸の平均分子量を調整する。調整方法としては、酸剤あるいはアルカリ剤の濃度、添加量及び処理時間等を適宜組み合わせて、処理後のヒアルロン酸が所望の分子量となるようにすればよいが、アルカリ処理による方法がヒアルロン酸の分子量をコントロールし易く好ましい。アルカリ処理による一例を示すと、ペースト化した鶏冠に、鶏冠に対し10〜30%濃度のアルカリ水溶液を約1〜5%添加し、25〜70℃で約15〜90分間処理を行った後、塩酸等で中和し、分子量を調整する。
【0035】
次に、分子量を調整した原料に蛋白分解酵素を添加して、プロテアーゼ処理する。使用する蛋白分解酵素は、市販しているものであれば種類を問わず使用することができ、例えば、ペプシン、トリプシン、パパイン、プロメリン等が挙げられる。蛋白分解酵素の添加量は、鶏冠に対して0.01〜1%が適当である。また、プロテアーゼ処理の温度と時間は、35〜65℃で1〜10時間の範囲が適当である。
【0036】
最後に、得られたプロテアーゼ処理物からヒアルロン酸を分取して、粗製のヒアルロン酸を得た後、このヒアルロン酸を精製することにより純度90%以上のヒアルロン酸が得られる。
【0037】
ここで、ヒアルロン酸の分取・精製は、常法に従って行うことができる。例えば、まず、プロテアーゼ処理した原料を濾過して固形物を除去して、粗製のヒアルロン酸を含有した濾液を得る。なお、濾過に先立ち、脱臭・脱色や一部の蛋白分解物を除去する目的で、プロテアーゼ処理物に活性炭を添加し処理してもよい。そして得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例1のヒアルロン酸を得ることができる。
【0038】
1.2.製造法2(微生物発酵法)
ヒアルロン酸産出ストレプトコッカス属の微生物(Streptococcus Zoopidemicus)の培養液に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に食塩
を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例2のヒアルロン酸を得ることができる。
【0039】
なお、本発明において使用するヒアルロン酸の純度は、食品で使用できるレベルであればよく、好ましくは90%以上であればよく、より好ましくは95%以上であればよい。この純度は乾物換算で100%よりヒアルロン酸以外の不純物を除いた値として定義される。ここで、不純物としては、蛋白分解物、脂肪分(粗脂肪)、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。具体的に鶏冠を原料とするヒアルロン酸の純度は、以下式(4)で求めることができる。
【0040】
(式4)

【0041】
式4中、蛋白分解物(%)はLowry法により求めた値であり、粗脂肪(%)は新・食品分析法(光琳(株)発行)「第1章一般成分及び関連成分、1−4脂質、1−4−2エーテル抽出法」により求めた値であり、また、コンドロイチン硫酸(%)は、以下に説明する方法により得た値である。
【0042】
まず、ヒアルロン酸を乾燥し、その50mgを精密に量り、精製水を加えて溶かし、正確に100mLとして試験溶液とし、その試験溶液4mLを試験管にとり、0.5mol/L濃度の硫酸1mLを加えて混和し、水浴中で10分間加熱し、その後冷却して得られた溶液に0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置し、層長10mm、波長660nmにおける吸光度を測定する。
【0043】
次に、得られた吸光度データをコンドロイチン硫酸の検量線に適用して精製ヒアルロン酸中のコンドロイチン硫酸量(%)を求める。ここで、その検量線は、クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(SG(Special Grade)、生化学工業株式会社製)
を乾燥(減圧、五酸化リン、60℃、5時間)させたものを精密に量り、精製水を加えて溶かし、1mL中に10μg、20μg、30μg、40μgのコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩を含む溶液をそれぞれ調製し、それぞれの溶液4mlについて、0.5ml/L濃度の硫酸1mLを加えて混和した後、0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置した後、同様に吸光度を測定し、その吸光度を縦軸に、対応するコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩溶液(μg/mL)を横軸にプロットすることによって作成したものである。
【0044】
本実施形態に係る経口用肌改善剤は、γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを、95:5〜5:95、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは60:40〜40:60の比で含むことができる。該経口用肌改善剤中に、γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを上記比率で含むことにより、経口摂取した際にビオチン、ソマトメジンC、DHEAs等の血中濃度を高め、それによって肌のつやや張りを改善し、肌のきめを整えることができる。
【0045】
ビオチンとは、ビタミンB群の一種であり、皮下血流量を増加させる作用が知られている。本実施形態に係る経口用肌改善剤を摂取することにより、血中のビオチン濃度を増加させ、その結果、皮下血流量が増加し、肌荒れやむくみ、目のくまを改善する効果が得られる。
【0046】
ソマトメジンCとは、成長ホルモンの刺激により分泌されるタンパク質である。本実施形態に係る経口用肌改善剤を摂取することにより、血中の成長ホルモン濃度を増加させ、その結果、肌のターンオーバーを改善する効果が得られる。成長ホルモン濃度の増加は、血中ソマトメジンC濃度を測定することによって確認することができる。
【0047】
DHEAsとは、副腎皮質から産生、分泌されるステロイドホルモンであり、テストステロン、エストロゲンなどの性ホルモンの他、多くのホルモンへと変換される。このDHEAsは、加齢とともに減少することが知られている。本実施形態に係る経口用肌改善剤を摂取することにより、血中のDHEAs濃度を増加させ、その結果、コラーゲンの産生量が増加し、肌の張りを維持する効果が得られる。
【0048】
本実施形態に係る経口用肌改善剤は、前記比率のγ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩との混合物を、通常0.1%以上含有するものであり、好ましくは0.5〜100%含有する。
【0049】
2.経口用肌改善剤を含有する食品
本発明の一実施形態に係る食品は、本実施形態に係る経口用肌改善剤を含有する。より具体的には、本実施形態に係る食品は、本実施形態に係る経口用肌改善剤を0.1〜100質量%含有することができる。
【0050】
本実施形態に係る食品(食料品及び飲料)は、長期にわたって無理なく摂取できることから、肌のつやや張りを改善し、肌のきめを整えるためには簡便かつ効果的である。
【0051】
本実施形態に係る食品は、経口用肌改善剤である、γ−アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを有効成分として含有する。上記食品の態様は特に限定されないが、例えば、ガム、キャンディー、グミキャンディー、トローチ様食品、ゼリー飲料、米飯加工食品、製パン類、レトルト缶詰、冷凍食品、惣菜、乾燥食品、マヨネーズ等調味料、飲料、菓子、デザート類、サプリメント類等の一般食品全般、生理機能を表現することを許可された特定保健用食品全般が挙げられ、このうち、利便性に優れている点で、サプリメント類が好ましい。
【0052】
また、サプリメント類の形態としては、例えば、錠剤状、散剤状、細粒状、顆粒状、カプセル状(ハードカプセル、ソフトカプセル)等の固形状、液状、懸濁液状、ゼリー状、シロップ状等の流動状が挙げられる。
【0053】
上記食品を経口摂取することによって、肌を改善する効果を発揮させる。また、上記食品を、食事に添加又は混合することによって、摂取することもできる。
【0054】
上記の通り任意の食料品及び飲料に、本実施形態に係る経口用肌改善剤を含有させることができるが、肌の改善を図るためには、本実施形態に係る経口用肌改善剤を継続的に摂取するのが望ましいため、日常的に摂取する食料品及び飲料に本実施形態に係る経口用肌改善剤を含有させるのが望ましい。
【0055】
本実施形態に係る経口用肌改善剤の成分であるγ−アミノ酪酸、及びヒアルロン酸及び/又はその塩は生体物質であるため、多量に摂取しても副作用がない、又はきわめて低いと考えられるが、食品として摂取する本発明の経口用肌改善剤の量は、一日当たり1〜1000mg、好ましくは15〜300mgを目安とすることができる。
【0056】
3.肌を改善する方法
本発明の一実施形態に係る、ヒト又はヒト以外の動物において肌を改善する方法は、γ−アミノ酪酸とヒアルロン酸及び/又はその塩とを、ヒト又はヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。本発明において、「肌を改善する」とは、例えば、肌のつやを良くすること、肌の張りを高めること、肌のきめを良くすること、肌の水分量を増加させること、ならびに、肌のくすみを少なくすることが含まれる。
【0057】
ヒト以外の動物としては、例えば、ヒト以外の哺乳類が挙げられる。好ましくは、本実施形態に係る肌を改善する方法は、ヒトに経口的に摂取させるものである。
【0058】
特に、γ−アミノ酪酸とヒアルロン酸及び/又はその塩とを、就寝3時間前〜就寝直前に摂取することが好ましい。就寝3時間前〜就寝直前にγ−アミノ酪酸とヒアルロン酸及び/又はその塩とを摂取することにより、睡眠中にビオチン、ソマトメジンC、DHEAsの血中濃度を特に効果的に増加させることができるため、肌の改善効果に優れている。
【0059】
4.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0060】
4.1.調製例
後述する試験例1および2において使用する食品組成物(実施例1、比較例1および比較例2)を以下の配合にて調製した。
【0061】
4.1.1.実施例1
<配合割合>
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量20〜50万)43.3mg
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 35.0mg
タピオカスターチ 208.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 3.0mg
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
290.0mg
【0062】
4.1.2.比較例1
<配合割合>
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 35.0mg
タピオカスターチ 252.0mg
ショ糖脂肪酸エステル 3.0mg
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
290.0mg
【0063】
4.1.3.比較例2
<配合割合>
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量20〜50万)43.3mg
タピオカスターチ 233.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 3.0mg
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
280.0mg
【0064】
4.2.試験例1
本試験例では、本発明のγ−アミノ酪酸とヒアルロン酸及び/又はその塩とを含有する経口用肌改善剤による、肌の改善効果について調査した。
【0065】
慢性的に肌が乾燥し、肌荒れに悩んでいる18名(全て女性、平均年齢30.9±5.2歳)を被験者として、2群(群1及び群2)に分け、1週間の観察期間後、群1の被験者に比較例1のハードカプセルタイプの食品組成物を、群2の被験者に比較例2のハードカプセルタイプの食品組成物を、それぞれ就寝30分前に3錠ずつ3週間摂取させた。3週間摂取後に、群1及び群2の両群の被験者に、実施例1のハードカプセルタイプの食品組成物を就寝30分前に3錠ずつ3週間摂取させた(この群を群3とする)。なお、試験期間中は、コラーゲンやヒアルロン酸など、肌に関係する物質の摂取及び使用(化粧品として)を控えてもらった。
【0066】
試験前のすべての被験者、群1及び群2の被験者、ならびに群3の被験者に、肌及び血液の検査を実施した。なお、検査日の前日夜10時以降から試験終了までは、水以外の飲食を避けてもらった。さらに、試験開始前にはすべての被験者において同一の化粧落とし剤と洗顔剤を用いて洗顔をしてもらった。
【0067】
(1)肌表面の状態
顕微鏡的皮膚表面解析機器(VISIOSCAN, Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)により、被験者の顔、首、及び腕表面の肌の状態を確認した。なお、肌表面の状態を測定する際には、測定条件を可能な限り同一に保つため、測定前には一定条件範囲に設定した試験室(室温20.5〜23.5℃、湿度45〜60%)を用意し、その中で、被験者には20分間以上安静に待機してもらった。また、前記肌の状態についてVISIOSCANの画像を基に、2名の医師が別個に評価を行った。評価は5段階で行い、5(非常に良い)、4(良い)、3(やや良い)、2(やや悪い)、1(非常に悪い)とした。
【0068】
肌表面の状態をVISIOSCANにて確認した結果、本発明の経口用肌改善剤(実施例1の食
品組成物)を摂取することによって、肌のきめが改善されていた。その一例を、図1、2に示す。図1及び図2において、(A)〜(C)はいずれも、同一人の同一箇所の肌を撮影した写真であり、これらの写真についての2名の医師による評価点数は全く同じであった。この結果から、本発明の経口用肌改善剤摂取後には、明らかに肌のきめが整っていることが目視によっても確認できる。
【0069】
医師による評価により、肌(測定箇所:腕)が改善したと評価された(試験後の評価が試験前の評価より1点以上上がった)人数の割合を表1にまとめた。なお、2名の医師による評価結果において、表1に示される改善者の割合は全く同じであった。表1からも、本発明の経口用肌改善剤によって、効果的に肌の状態が改善されていることがわかる。
【0070】
【表1】

【0071】
(2)血液検査
被験者の採血を行い、血中成分の変化(グルタチオン、ビオチン、ソマトメジンC、DHEAs)について調べた。
【0072】
血中成分の分析結果について、図3〜6に示す。なお、図3〜図6において、群1〜3の「摂取前(後)」はそれぞれ、比較例1の食品組成物、比較例2の食品組成物、及び実施例1の食品組成物の「摂取前(後)」を意味する。
【0073】
これらの結果から、γ−アミノ酪酸又はヒアルロン酸を単独で摂取するよりも、本発明の経口用肌改善剤を摂取することによって、血中のビオチン、ソマトメジンC、DHEA
s濃度が増加していることがわかる。これら血中のビオチン、ソマトメジンC、DHEAs濃度が増加した結果、皮下血流量を増加させ、肌のターンオーバーを促進し、コラーゲンの産生が促進され、肌のつやや張りを改善したり、肌のきめを整えたり等の肌改善効果が生じたものと推察される。
【0074】
一方、グルタチオンについては、本発明の経口用肌改善剤の摂取前後において血中濃度の増加はみられなかった。
【0075】
4.3.試験例2
慢性的に肌が乾燥し、肌荒れに悩んでいる18名(全て女性、平均年齢34.9±3.2歳)を被験者として、2群(群1及び群2)に分け、1週間の観察期間後、群1の被験者に比較例1のハードカプセルタイプの食品組成物を、群2の被験者に比較例2のハードカプセルタイプの食品組成物を、それぞれ就寝30分前に3錠ずつ3週間摂取させた。3週間摂取後に、群1及び群2の両群の被験者に、実施例1のハードカプセルタイプの食品組成物を就寝30分前に3錠ずつ3週間摂取させた(この群を群3とする)。なお、試験期間中は、コラーゲンやヒアルロン酸など、肌に関係する物質の摂取及び使用(化粧品として)を控えてもらった。
【0076】
試験前のすべての被験者、群1及び群2の被験者、ならびに群3の被験者に、肌の検査を実施した。なお、検査日の前日夜10時以降から試験終了までは、水以外の飲食を避けてもらった。さらに、試験開始前にはすべての被験者において同一の洗顔剤を用いて2度洗顔をしてもらった。なお、肌表面の状態を測定する際には、測定条件を可能な限り同一に保つため、測定前には一定条件範囲に設定した試験室(室温20±1℃、湿度40〜50%)を用意し、その中で、被験者には20分間以上安静に待機してもらった。
【0077】
(1)水分量の測定
Corneometer(Courge+Khazaka社製)を使用して、両頬の肌の水分量の測
定を行った。全ての被験者の平均値を表2に示す。この結果から、本発明の経口用肌改善剤によって、効果的に肌の水分量を増加することがわかる。
【0078】
【表2】

【0079】
(2)弾力性の測定
CUTOMETER(Courage+Khazaka社製、プローブ径4mm)を使用して、両頬の肌の弾力性を測定した。具体的には、プローブを肌表面に密着させ、一定(40kPa)の陰圧を1秒間かけた際に、プローブ内に吸引された肌の高さを最大吸引高さ(mm)とする。その後陰圧を解放し、0.1秒後の肌の高さを最小吸引高さ(mm)とし、下記式(5)により肌の弾力性(%)を求めた。
【0080】
(式5)

【0081】
弾力性の測定結果(全ての被験者の平均値)を、表3にまとめた。この結果より、本発
明の経口用肌改善剤によって、効果的に肌の弾力性を高めることがわかる。
【0082】
【表3】

【0083】
以上の結果から、本発明の経口用肌改善剤及びこれを含有した肌改善用食品組成物を摂取することによって肌のつや、張り、及び乾燥を改善し、肌のきめを整え、肌を総合的に改善する優れた効果が得られることがわかる。
【0084】
4.4.配合例
4.4.1.配合例1
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用飲料を製した。
果糖 1%
ぶどう果汁 0.1%
アスコルビン酸 0.2%
グラニュー糖 0.01%
クエン酸 0.1%
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量20万) 0.03%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.02%
清水 残量
合計 100%
【0085】
4.4.2.配合例2
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用チョコレートを製した。
カカオマス 18%
ココアバター 13%
カカオ脂 8%
砂糖 38%
全粉乳 23%
製造例1により製したヒアルロン酸(平均分子量10万) 0.05%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.05%
合計 100%
【0086】
4.4.3.配合例3
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用ゼリーを製した。
寒天 0.5%
グラニュー糖 10.0%
クエン酸 0.5%
オレンジピュレ 20.0%
オレンジフレーバー 0.1%
製造例1により製したヒアルロン酸(平均分子量20万) 0.02%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.03%
清水 残量
合計 100%
【0087】
4.4.4.配合例4
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用キャンディを製した。
水飴 50%
砂糖 35%
植物油脂 6%
ぶどう果汁 3%
ゼラチン 2%
ジャム 1%
乳成分 1%
クエン酸 0.5%
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量2万) 0.2%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.8%
香料 0.5%
合計 100%
【0088】
4.4.5.配合例5
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用ゼリー飲料を製した。
ジェランガム 0.3%
キサンタンガム 0.1%
ローカストビーンガム 0.1%
グラニュー糖 9.0%
ぶどう糖 2.5%
ビタミンC 0.2%
クエン酸 0.2%
ピロリン酸カリウム 0.1%
クエン酸ナトリウム 0.15%
乳酸カルシウム 0.15%
ブルーベリーエキス 0.15%
製造例1により製したヒアルロン酸(平均分子量60万) 0.03%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.02%
香料 適量
色素 適量
清水 残量
合計 100%
【0089】
4.4.6.配合例6
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含むアイスクリームを製した。
全乳 58%
脱脂粉乳 6%
生クリーム 23%
砂糖 12%
乳化安定剤 0.5
製造例1により製したヒアルロン酸(平均分子量20万) 0.1%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.4%
合計 100%
【0090】
4.4.7.配合例7
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含むヨーグルトを製した。
全乳 80%
脱脂粉乳 3%
ヨーグルトスターター 3%
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量1万) 0.02%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.08%
清水 残量
合計 100%
【0091】
4.4.8.配合例8
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含むパウンドケーキを製した。
薄力粉 25.5%
全卵 40%
グラニュー糖 26%
バター 8%
製造例1により製したヒアルロン酸(平均分子量80万) 0.3%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.2%
合計 100%
【0092】
4.4.9.配合例9
以下の配合にて、公知の手段で原料を混合して炭酸ガスを含ませ、本発明の経口用肌改善剤を含むアルコール飲料を製した。
95%醸造用アルコール 5%
55%果糖ぶとう糖液糖 10%
クエン酸 0.4%
グレープフルーツアロマ果汁 1%
グレープフルーツ香料 0.2%
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量1万) 0.05%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.01%
合計 100%
【0093】
4.4.10.配合例10
以下の配合にて、本発明の経口用肌改善剤を含む肌改善用飲料を製した。
高甘味度甘味料
ネオテーム(商品名「ミラスィー」、大日本住友製薬(株)製) 0.007%
スクラロース 0.014%
クエン酸 0.3%
香料 0.1%
分枝鎖アミノ酸バリン:ロイシン:イソロイシン=1:1:1) 0.012%
製造例2により製したヒアルロン酸(平均分子量20万) 0.03%
LGN(GABA含量95%、商品名、(株)ファーマフーズ) 0.2%
清水 残量
合計 100%
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の経口用肌改善剤は、例えば美容健康食品素材として様々な飲食品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを有効成分として含有する、経口用肌改善剤。
【請求項2】
γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩との割合が、95:5〜5:95である、請求項1記載の経口用肌改善剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の経口用肌改善剤を含有する食品。
【請求項4】
γ‐アミノ酪酸と、ヒアルロン酸及び/又はその塩とを、ヒト又はヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒト又はヒト以外の動物において肌を改善する方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−53120(P2010−53120A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172743(P2009−172743)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(500101243)株式会社ファーマフーズ (30)
【Fターム(参考)】