説明

経皮グラニセトロン

【課題】皮膚を介したグラニセトロンの流量を実質的に増大させるグラニセトロンの経皮投与のための接着性パッチの提供
【解決手段】接着性パッチが、非酸性求核性部分(但し、該非酸性ヒドロキシル部分は、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、又は、ヒドロキシエチルメタクリレートによっては提供されない)を含むアクリル接着剤を備える(但し、該接着剤は、側鎖にポリエチレンオキシド又はポリエチレンオキシドモノメチルエーテルを有するアクリル系粘着基剤を含まない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラニセトロンを含む経皮パッチ、それらの使用およびそれらの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
悪心および嘔吐はしばしば、癌患者に投与された医薬の最も衰弱させ落胆させる症状である。嘔吐の副作用は、この状態自体に起因して不快なだけでなく、重篤な脱水症および栄養失調さえも引き起こし得る。
【0003】
高い付随催吐性を有する抗癌薬(例えば、シスプラチン、ストレプトゾトシン、カルムスチン、プロカルバジン、メクロレタミンおよびダクチノマイシン)の投薬計画を受けている患者は、特に悪影響を受け、したがって、難治性の悪心および嘔吐を抑制する制吐剤薬物の積極的併用投与からこれらの患者が特に利益を得る。このような処置投薬計画から利益を受ける他の患者群は、術後の悪心および嘔吐に罹患している患者である。
【0004】
細胞傷害性化学療法は、小腸の特定の細胞からセロトニンを放出すると考えられている。放出されたセロトニンは、5-HT3(5-ヒドロキシトリプタミン3)レセプターを介して求心性迷走神経を刺激し、したがって、嘔吐反射を刺激し得る。したがって、5-HT3レセプターアンタゴニスト薬物(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロン)は、迷走神経終末に対して末梢から、および化学レセプタートリガーゾーンにおいて中枢からの両方で、セロトニンを遮断することによってそれらの効果を発揮すると仮定される。
【0005】
5-HT3レセプターアンタゴニスト制吐剤は現在、静脈内投与、経口投与または直腸投与されている。静脈内投与は医師の監督下でのみ実施でき、注射部位での患者の有意な不快(例えば、初赤および灼熱)を引き起こす。小児医薬における問題は、子供が針を嫌うことに起因して複合化され、針刺し損傷に関する関心が常に存在する。経口投与は、その頻度(1日4回まで)に関連する不利益を有するだけでなく、重篤な悪心および嘔吐に罹患している患者、ならびにしばしば適切に嚥下し得ない、頭頸部癌に罹患している患者におけるこのような送達経路の利用から生じる問題を有する。経口送達の拍動性の性質はまた、治療ウインドウからの逸脱から生じる問題(しばしば副作用の原因となる)を引き起こし得る。直腸送達は、ある程度までだけは経口送達の拍動性の性質を回避し、薬物送達のための最も簡便でもなく広く受容可能でもない手法である。
【0006】
したがって、長期間にわたって制吐剤の一定の血漿レベルを維持できる非経口薬物送達系が必要とされる。実際、現在のところ十分に活用できておらず、現在利用可能なものよりも制御性の高い送達から恩恵を受けると思われる、5-HT3レセプターアンタゴニストに対する適応症が他に存在する。
【0007】
5-HT3レセプターは末梢ニューロンおよび中枢ニューロン中に主に位置し、末梢ニューロンの脱分極、疼痛および嘔吐反射に関与するようである。したがって、他の適応症には以下が含まれる:掻痒(Porzioら)、偏頭痛、不安、ならびに認識障害および精神病性障害、そしてより具体的には、鬱病、精神分裂病、産後鬱病における精神病、線維筋痛の疼痛、過敏性腸症候群、アルコール中毒症、閉塞性睡眠時呼吸障害、乗り物酔い、認識機能の喪失、尿失禁、ジスキネジア、全身性エリテマトーデス、薬物性の掻痒、慢性疲労症候群(CFS-Theら、2003)、早期射精および摂食障害(例えば、過食症)の処置または予防。
【0008】
皮膚を介した薬物の経皮送達は、治療剤の比較的一定な血漿レベルを維持するための認識された方法であり、一方でまた静脈内薬物送達、経口薬物送達および直腸薬物送達の疼痛、不快および不便さを回避する。したがって、化学療法後および術後の経皮制吐剤治療は、主な治療から生じる悪心および嘔吐を経験しているだけでなく、その医学的状態自体に付随する有意な不快を被ってもいる患者の苦痛を緩和する可能性を有する。
【0009】
5-HT3レセプターアンタゴニストの首尾よい経皮投与を提供するための種々の試みがなされてきた。しかし、この問題についての特許公開の大部分は、経皮送達の選択肢を、可能な投与経路として、多数の選択肢のうちの1つとして含むに過ぎない。
【0010】
同様に、特定の経皮デバイスまたはイオン導入デバイスに関するまたは種々の特許公開は、これらのデバイス中に含める可能性のあるものとして、とりわけオンダンセトロンを列挙している。米国特許第5372819号(Minnesota Mining and Manufacturing Company)は、多数のクラスの多数の他の化合物の中で、経皮パッチ中に含めるための制吐剤として、メトクロプラミドおよびオンダンセトロンを列挙している。しかし、列挙された薬物のいずれについても、このデバイスの治療可能性を実証し、これらの化合物の経皮送達に関する論点を扱う特定の実施例は存在しない。同様に、WO 94/07468号(Cygnus Inc.)は、別の経皮デバイス中に含めるための化合物のあまり広範でない表において、例示的な制吐剤としてグラニセトロンおよびオンダンセトロンを列挙している。
【0011】
特開平8-34731号は、クリーム、リニメント、ローション、ゲル、テープおよびパッチのような剤形を使用した、グラニセトロンの経皮調剤を開示している。これらの製剤は、アルコール、脂肪酸、これらのエステルなどから選択できる媒体ならびに浸透促進剤を含む。この公開の実施例は、ヒトにおいて起こり得る流量を確立するために、無毛マウスの皮膚を使用している。これらの動物の皮膚はヒトの皮膚よりも約10倍高い浸透性を有するにもかかわらず、100cm2のパッチを使用することがなお必要であった。本発明の目的は、制吐剤の薬物血漿レベルを達成するために必要なパッチのサイズを低下させることである。
【0012】
オンダンセトロンは、広く使用される5HT3アンタゴニストである。制吐剤効果の全身的な性質に起因して、比較的高い治療血漿レベルのオンダンセトロンが、効力を達成するために必要とされる。したがって、治療有効量のオンダンセトロンの首尾よい経皮送達は、経皮デバイスが皮膚を介した薬物の比較的高い流量を提供することを必要とする。パッチ内の薬物充填量が、薬物の枯渇が時間と共に送達速度を低下させない(すなわち、高い流量が維持される)ことを確実にするのに充分高い場合、このような高い流量は、臨床的に適切な期間にわたってのみ維持できる。
【0013】
経皮パッチ中の高い薬物充填量は、所謂「貯留パッチ」の使用によって一般に達成される。貯留パッチは、代替的なマトリックスパッチ技術において通常達成できる充填量よりも高い充填量を可能にする薬物溶液を含む。これらの高い薬物充填量は、しばしば皮膚に対して刺激性である、比較的高容量の溶媒(例えば、エタノールまたはプロピレングリコール)の使用によって達成される。それらの内容物の容量によって、貯留パッチは通常、物理的および視覚的に嵩だかであり、一旦適用されると皮膚表面で平らにならない。このような性質は、これらのパッチを多数の患者に対して美容的に受容可能でないものにする。
【0014】
さらに、皮膚に対する貯留パッチの接着は、皮膚と接触した速度制御膜を介して中心貯留部から薬物が浸透するのを可能にするように意図されたパッチの周縁の周りにのみ接着剤が配置されるので、最適にはなり得ない。
【0015】
対照的に、マトリックスパッチは、皮膚と接触した接着剤の面積がパッチの総有効面積と境を接し、それによってパッチと皮膚との間の最大固定界面もまた確保するという事実に起因して、皮膚にかなりより有効に接着する能力を有する。これは、薬物送達経路としての皮膚の有効利用のための含みを有するだけでなく、パッチがその場所に残留するのを簡単に確実にする。
【0016】
しかし、薬物のための貯留部は、別々にではなく接着剤マトリックスによって提供されるので、マトリックスパッチの性質そのものが、このパッチが保持できる活性物質の量を制限する。マトリックスパッチは充分な薬物を保持できないので、多量で投与されることを必要とする薬物(例えばオンダンセトロン)について単純に適切ではない。例えば、WO 00/47208号(Sam Yang Corporation)および欧州特許出願1064939号(Novosis Pharma AG)は、経皮オンダンセトロン貯留パッチを開示しているが、WO 00/47208号は、得られる薬物充填量が不充分であるとの理由で、マトリックスパッチを明確に除外している。
【0017】
WO 01/74338号は、経皮治療システム(TTS)の形態のレリセトロン(lerisetron)医薬調剤を開示しており、このシステムは、裏地層、それに結合された少なくとも単一層の感圧接着剤、シリコーン感圧接着剤に基づくレリセトロン活性物質貯留部、および除去可能な保護層を含む。
【0018】
3Mに対するWO 98/53815号は、アクリル接着剤中にトロピセトロンまたはグラニセトロンを含む、経皮投与に適切な組成物を開示している。しかし、トロピセトロンがそれらの存在下で不安定であることが実証されているので、求核性(例えばヒドロキシル)部分を含む接着剤がそれに対して教示されている。この著者らは、この不安定性が、薬物のポリマーへの結合も伴い得る接着剤内の架橋の増大によって引き起こされ、これらの薬物の塩基性がこの過程を触媒し得ると推測している。このような反応は望ましくない薬物分解物の生成を伴い得るものであり、任意の薬物/ポリマー結合が流量を低下させると予測できる。
【非特許文献1】Porzioら
【非特許文献2】CFS-Theら、2003
【特許文献1】米国特許第5372819号
【特許文献2】WO 94/07468号
【特許文献3】特開平8-34731号
【特許文献4】WO 00/47208号
【特許文献5】欧州特許出願1064939号
【特許文献6】WO 01/74338号
【特許文献7】WO 98/53815号
【非特許文献3】Guillemら、1998
【非特許文献4】Friedmanら、2000
【非特許文献5】Physicians Desk Reference、2001
【非特許文献6】Cupissolら、1993
【非特許文献7】Kalaycioら、1998
【非特許文献8】Biswas BNおよびRudra A. Comparison of granisetron and granisetron plus dexamethasone for the prevention of postoperative nausea and vomiting after laparoscopic cholecystectomy. Acta Anaesthesiol. Scand.47, 79-83 (2003).
【非特許文献9】Gralla RJ, Osaba D, Kris MG, Kirkbride P, Hesketh PJ, Chinnery LW, Clark--Snow R, Gill DP, Groshen S, Grunberg S, Koeller JM, Morrow GR, Perez EA, Silber JHおよびPfister DG. Recommendations for the use of antiemetics : evidence-based, clinical practice guidelines. J. of Clinical Oncology. 17, 2971-2994 (1999).
【非特許文献10】Haus U, Varga B, Stratz T, Spath M, Muller W. Oral treatment of fibromyalgia with tropisetron given over 28 days: influence on functional and vegetative symptoms, psychometric parameters and pain. Scand. J. Rheumatol. 113,55-8 (2000).
【非特許文献11】Macciocchi A, Chernoff SBおよびGallagher SC. A phase II dose-ranging study to assess single intravenous doses of palonosetron for the prevention of highly emetogenic chemotherapy-induced nausea and vomiting. Proceedings of American Society of Oncology, 21,1480 (2002).
【非特許文献12】Noble A, Bremer K, Goedhals L, Cupissol DおよびDilly SG. A double-blind, randomised, crossover comparison of granisetron and ondansetron in 5-day fractionated chemotherapy: assessment of efficacy, safety and patient preference. Eur. J. Cancer. 30,1083-1088 (1994).
【非特許文献13】VanDenBerg CM, Kazmi Y, Stewart J, Weidler DJ, Tenjarla SN, Ward ES, Jann MW.Pharmacokinetics of three formulations of ondansetron hydrochloride in healthy volunteers: 24-mg oral tablet, rectal suppository, and i. v. infusion. Am. J. Health Syst. Pharm. 57, 1046-50 (2000)
【非特許文献14】de Wit R, Beijnen JH, van Tellingen O, Schellens JH, de Boer-Dennert M, Verweij J. Pharmacokinetic profile and clinical efficacy of a once-daily ondansetron suppository in cyclophosphamide-induced emesis: a double blind comparative study with ondansetron tablets. Br. J. Cancer 74,323-6 (1996).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、本発明者らは、陰性基(例えばCOOH)を含む接着剤は有効な経皮パッチの製造に使用できないが、ヒドロキシル基を含む接着剤は非求核性で電気中性の接着剤よりも有意に良好であること、ならびにそのような接着剤が、例えばグラニセトロンの流量を実質的に増強することを今や見出した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、第1の態様において、本発明はグラニセトロンの経皮投与に適切な接着性パッチを提供し、この接着剤は、非酸性ヒドロキシル部分を含むアクリル接着剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のパッチは、好ましくは、活性成分としてグラニセトロン(N-endo-9-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノン-3-イル-1-メチルインダゾール-3-カルボキサミド塩酸塩)またはラモセトロン[(R)-5-[(1-メチル-3-インドリル)ルカルボニル]-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール塩酸塩)]またはそれらの混合物を有するが、混合物はあまり好ましくない。グラニセトロンに対する本明細書中の全ての言及は、他のように特定されないかまたは明白でない限り、ラモセトロンおよびその混合物に対する言及を含むことが理解されよう。
【0022】
非酸性ヒドロキシル部分すなわちOH基は、本明細書中でもいわれるように、接着剤ポリマーの製造の間に適切なモノマーを導入する単純な手段によって提供されることが好ましい。適切なモノマーには、任意の所望の様式で置換されたアクリレートおよびメタクリレートが含み得る。特に好ましいアクリレートは、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートであり、特にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)である。好ましいメタクリレートは、ヒドロキシメチルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0023】
本発明の接着剤のヒドロキシル基は、好ましくは、任意の他の極性部分とも任意の他の基の一部とも結合していない。特に、このOH基は、任意のCOOH基、NCOH基および同様の基の一部ではないことが好ましい。最小レベルのこのような基が許容できるが、本発明の接着剤は、検出可能なレベルのこのような基を実質的に有さないことが好ましい。
【0024】
本発明の接着剤は、好ましくは感圧性である。アクリル性の感圧接着剤は実質的な量の主要なアクリレートモノマーで一般に作製され、ほとんどの市販のアクリル接着剤において、この主要なアクリレートモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレートまたはブチルアクリレートのいずれかに限定される。他のモノマーが充分に低いガラス転移温度(Tg)を有する場合には、これらは適切となり得る。
【0025】
改質用モノマーもまた一般に使用され、これらは実質的に任意のビニルモノマーから選択してもよい。これらの改質用コモノマーは、粘着性に対する改質作用を有するコモノマー(例えば、ポリアクリレート中の酢酸ビニルおよびスチレン、ならびにポリメタクリレート中のビニルピロリドンおよびアクリロニトリル)から、OH基を導入することが所望の場合には上記の官能基を含むことのできる、官能基を含有するコモノマーまでから選択してもよい。
【0026】
主要なモノマーの典型的なレベルは、50重量%と90重量%との間であるが98%までであり、改質用モノマー(例えば、酢酸ビニル、スチレンまたはメタクリロニトリル)は、約10% w/w〜約40% w/wの量で典型的に存在する。官能性(すなわちヒドロキシル)コモノマーは、好ましくは、総モノマーの0.5% w/w〜20% w/w、好ましくは3% w/wと10% w/wとの間の量で存在する。官能性モノマーが増大するにつれ、他の構成成分のレベルは比例して低下する。さらに、この接着剤は、等価な量の主要なモノマーの代わりに、架橋モノマー(例えばグリシジルメタクリレート)を、0.05重量%と1重量%との間のレベルで含み得る。
【0027】
本発明の接着性パッチは、任意の可塑剤または浸透促進剤(例えばミリスチン酸イソプロピル(IPM))を導入することを必要とせずに有効である。これは、構成成分の数を減らし、刺激の可能な供給源を排除し、のみならず接着剤の粘着力を低下させる物質を排除するので、有利である。浸透促進剤は経皮パッチにおいて一般に必要とされる。しかし、本発明のパッチにおいて、極性残基の存在は経皮流量に対して驚くべき効果を有し、所望の場合、実質的に全充填量が24時間の期間で分配できるレベルまで浸透を増大させる。
【0028】
実際、接着剤との任意の形態の化学的相互作用は通常、放出を遅延させることによって、流量および経皮浸透を妨害するに過ぎないと予測されている。添付の実施例において、本発明者らは、接着剤中のヒドロキシル基の存在が、非極性基を有する直接匹敵する接着剤からの放出と比較して、放出を実際に実質的に促進することを実証している。最初の放出レベルが非求核性接着剤からの放出レベルよりも数オーダー高い強度であり、約数時間以内に有効レベルのグラニセトロンを必要とする状況において、本発明の接着剤で作製された経皮パッチが使用されるのを可能にすることは、特に驚くべきことである
【0029】
本発明のパッチはまた、化学的に誘発された嘔吐の処置にとって理想的な様式ではあるが、実質的に均質でない形態でグラニセトロンを分配する能力を有する。このような嘔吐は、急性および遅延性に分類でき、急性嘔吐は化学療法および高レベルの抗新生物薬物から生じ、遅延性形態はより長い期間の応答である。急性反応は、投与から約12時間の期間にわたってより高いレベルの制吐剤を必要とするが、遅延性形態は、引き続く日々にわたってより低いレベルを必要とする。本発明のパッチは、この種の投薬計画を提供するために使用でき、個々に使用される場合には、このような投薬計画を提供する傾向が一般にある。
【0030】
用語「パッチ」は、皮膚に接着しかつ皮膚に対してグラニセトロンを分配するのに適切な任意の接着剤構成を包含し、一方の側に接着剤を有する裏地層、この接着剤中に装填されたかまたは充填可能な生理学的有効量のグラニセトロンを一般に含むことが理解されよう。この構成は、例えば部分へと切断できる柔軟性ストリップの形態であってもよい。
【0031】
単一用量の化学療法において、5HT3アンタゴニストは、催吐性化学療法の投与に付随する急性の悪心および嘔吐の予防のために一般に使用されている。急性の設定におけるこれらの薬剤の効力は明らかであるものの、最も適切な用量および効力と血漿レベルとの間の関係は明らかではない。刊行された研究はまた、(デキサメタゾンと共に投与した)5HT3アンタゴニストの効力を遅延性嘔吐において明らかに実証しているが(Guillemら、1998;Friedmanら、2000)、その一方で用量応答の問題は扱っていない。
【0032】
それらの治療的な適切さに関する情報を欠いているにもかかわらず、血漿プロフィールはなお、投薬形態を切り替える場合に生物学的同等性を実証することにおける有用なマーカーである。5HT3アンタゴニストのほとんどの投薬形態(注射、錠剤および経口シロップ)は、拍動性の薬物送達に典型的な血漿プロフィール(すなわち、短いTmax値および比較的高いCmax値と、その後の薬物半減期に伴う血漿レベルの低下)を生じる。
【0033】
化学療法における最も一般的なグラニセトロン投薬計画は、急性嘔吐の予防のための処置の前の1mgまたは2mgの開始用量と、その後の遅延性嘔吐の予防のためのデキサメタゾンと組み合わせた3日間〜5日間にわたる2mgの1日用量である。癌患者における1日2回の1mgの継続的な投与(Physicians Desk Reference、2001)は、6ng/mlの平均ピーク血漿レベルと0.52L/時間/kgのクリアランス値とを生じる。60kgの患者について、これらのデータは、経皮パッチからの約190μg/時間の流量が、6ng/mlの血漿レベルを維持するのに充分であることを示す。しかし、これらのCmax値での血漿レベルの維持は、遅延性嘔吐における効力のためには必要なく(Cupissolら、1993)、急性嘔吐において必要とされる最小の治療的血漿レベルは未知である。
【0034】
任意の薬物の効能のある使用のために必要とされる最小の治療的血漿レベルは、患者における臨床的応答と連結された、滴定された延長IV注入研究によって理想的に評価される。わずか40μg/時間の速度でグラニセトロンを継続的にIV注入すると、癌患者の遅延性嘔吐が緩和することが示されており(Kalaycioら、1998)、このことは、より低い血漿レベル(約1.5ng/ml)の維持が、これに関してはより適切となり得ることを示唆している。
【0035】
この設定におけるパッチの主な制約は、効力に適切な血漿レベルを得る際の遅延である。経口グラニセトロンに関するTmax値は約2時間であるが、グラニセトロンの経皮投与に関するTmax値は一般により長い。本発明のパッチに関するレベルは、約2時間までにすでに効力を示し始めることができ、その結果、本発明のパッチは、急性嘔吐の処置において有用となり得る。
【0036】
一般に、本発明のパッチは好ましくは、処置の前に2時間と48時間との間で患者に適用され、6時間と24時間との間の期間がより好ましい。良好な結果は、このパッチが、例えば処置の前に12時間と16時間との間で適用される場合に見られる。
【0037】
悪心および嘔吐に関して、本発明のパッチは、5-HT3レセプターの活性化に関連する任意の形態の悪心および嘔吐の処置に適切であることが理解されよう。このような状態は一般に、癌療法(放射線療法、複数日の治療、分割治療および終末期癌療法(これらは各々、本発明によって個々に企図される)を含む)に付随する。本明細書中に例示されるものを含む他の形態の癌療法もまた、本発明によって企図される。
【0038】
継続的な高レベルのグラニセトロンを提供することが所望される場合、パッチは、例えば1日2回、または熟練の医師によって示されるたびごとに、適用できる。
【0039】
グラニセトロンのレベルは最大約10重量%であってもよいが、National Starchによって提供される接着剤のDuroTak 387-2287においては、結晶化が生じ得るので、8% w/wは、好ましいレベルよりも一般に高い。したがって、本発明の好ましい接着剤において、グラニセトロンのレベルは8% w/w未満である。4% w/wを超えるグラニセトロン、好ましくは5% w/wを超えるグラニセトロンのレベルを提供することが好ましい。6% w/wと7% w/wとの間のレベルを提供することが特に好ましい。好ましい接着剤において、7.7%までを含むパッチにおいて、1ヵ月後に結晶化は観察されなかった。パッチ中のグラニセトロンの濃度は6%と8%との間であるが、患者の年齢および体重、ならびに身体的状態および他の付随する処置もしくは治療、熟練の医師によって容易に決定されるグラニセトロンの適切なレベルのような考慮事項に従う。好ましいレベルは、現在6% w/wである。
【0040】
費用の考慮に起因して、本発明のパッチ中のグラニセトロンの結晶化を回避することが一般に好ましい。しかし、結晶化は、パッチ中に溶解し得る薬物の貯留部を容易に提供し、このパッチ中のグラニセトロンのレベルが、初期値より少なくとも部分的に枯渇すると、そこから薬物がこの患者中に分配できる。パッチが、例えば即座の迅速な送達のために意図される場合、結晶化は利点を提供せず、生産費用を増大させる。
【0041】
パッチのサイズは、任意の適切なサイズとなり得ることもまた理解されよう。一般に、約100cm2までまたはそれより大きいパッチが、患者に有効量のグラニセトロンを送達するのに適切である。このようなサイズが所望の場合、これは、例えば任意の所望の形状(丸または四角)でもよく、例えば穴あきであってもよい1つのパッチの使用で実現してもよいし、あるいは2つ以上のパッチを使用してもよい。所望の総面積に対して1つまたは複数のパッチで処置を開始し、次いで、例えば熟練の医師によって容易に決定される間隔でより小さいパッチを定期的に適用することによって、グラニセトロンのレベルを維持できることも理解されよう。
【0042】
一般に、約6% w/wのグラニセトロンの充填量で、適切なサイズのパッチは10cm2と100cm2との間であり、より好ましくは15cm2と50cm2との間であり、約40cm2のパッチが、1mgのグラニセトロンを含む錠剤の等価な血漿レベルを一般に提供することが見出されている。これらのパッチを種々のサイズで提供できること、またはそのサイズに切断できること、ならびにそのサイズおよび充填量が熟練の医師によって容易に決定され、所望の血漿レベルを大まかに決定することが理解されよう。
【0043】
パッチからの流量は非常に大きいので、小さいパッチが実質的な効果のために容易に使用され、例えば非常に大きい流量が必要とされない限り、大きいパッチ(例えば、WO 98/53815号に開示されるパッチ)は一般に必要ではないということもまた、本発明の利点である。
【0044】
接着剤のポリマー鎖中の極性基は、皮膚の接着を増大させる付加的な利益を有する。このような基を含めることはまた、必要な場合に接着剤の架橋が達成されるのを可能にし、それによって3次元安定性に関して接着剤マトリックスの粘着性を改善するので、製剤の選択肢を増大させる。
【0045】
本発明のパッチは、接着剤およびグラニセトロン以外の成分を含み得ることが理解されよう。例えば、適切な裏地が本明細書の以下に記載される。これらは任意の適切な形態をとってもよく、例えば、フィルムまたは材料の形態であってもよい。フィルムは、通気性および/またはそれらの閉塞特性について選択できる。金属化フィルムを使用することが可能であるが、プラスチック(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))を使用することが一般に好ましい。材料は、織布および不織布から選択でき、不織布の方が一般に柔軟性が高い。このような材料は一般に高度に多孔性であり、当該分野で周知のような薬物耐性物質および任意選択で防水物質にこれらの材料を含浸させることが好ましい。
【0046】
この接着剤は、好ましくは裏地上に直接積層された1つの層として一般に提供されるが、裏地自体が多数の薄層からなってもよい。この接着剤はほとんどの裏地に直接接着するのに適切であるが、いくつかの例において、裏地に接着剤を固定させるためのさらなる手段(例えば、架橋層による)を提供することが必要であるか、望ましいこともある。
【0047】
本発明の接着剤中に他の成分を導入することは一般に好ましくないかまたは不要であるが、特別の製剤助剤を所望に応じて添加してもよく、特定の製剤または状態が他の成分から利益を得る可能性があることが理解されよう。例えば、植物油の添加は、早期放出をさらに促進するために使用でき、適切な例には、ココナツ油およびピーナツ油が含まれる。軟化剤および増粘剤のような他の成分もまた含んでもよいが、このような成分を最小限に止めることが一般に好ましい。
【0048】
本発明のパッチはまた、分割化学療法に付随する嘔吐の処置において有用である。分割化学療法投薬計画は、副作用を低下させかつ効力を増大させるために意図された、低下させた1日の速度で連続する日々に化学療法を投与することを含む。不運にも、分割化学療法に付随する副作用には、実質的な悪心および嘔吐がなお含まれ、したがって、グラニセトロンを含む5-HT3アンタゴニストもまた、これらの処置投薬計画において利用される。分割化学療法は通常、5日間の期間(これは変動し得るが)にわたって与えられ、悪心および嘔吐の関連症状は、1日用量の制吐剤によって予防され、グラニセトロンの場合、これは一般に1日当たり2mgである。したがって、投与パターンは、単一用量化学療法に付随する急性および遅延性の嘔吐の予防のための投与パターンと類似である。分割化学療法に付随する悪心および嘔吐に対して保護するためのパッチは、単一用量化学療法の処置のためのパッチよりも一貫して高いレベルの薬物を送達するように適切に構築でき、これは、パッチの面積および充填量の操作によって容易に達成される。
【0049】
本発明のパッチはまた、術後の悪心および嘔吐(PONV)の処置および予防において使用できる。本明細書中で使用する場合、処置には、適切な場合予防が含まれることが理解されよう。PONVは、手術を受ける患者にとって、頻繁で不快な経験のままである。平均して20%〜30%の手術被験体が、個々の被験体の要因、麻酔のタイプおよび持続期間ならびに手術のタイプに依存して、PONV症状に罹患する。PONVは、脱水症、電解質平衡異常、回復室における滞在の延長、予期しなかった入院および失業を生じ得る。化学療法により誘発された悪心および嘔吐の処置を用いる場合、この投薬計画へのデキサメタゾンの添加は、この投薬計画の効力を改善する。
【0050】
術後の悪心および嘔吐を予防するための通常の投薬計画は、手術の直前または直後の、5HT3アンタゴニストの単回投与である。このような用量は、術後の悪心および嘔吐の予防のために必要とされるグラニセトロンの用量における可能な低下を理解することにおける最近の進歩に照らして、手術前に適用される経皮パッチで置換できる。1つの研究において、臨床データは、グラニセトロンが0.1mgほどの低い用量で術後の悪心および嘔吐の予防において有効であることを示唆しており、このような用量は、本発明のパッチによって容易に分配可能である。
【0051】
他の適応症は上に示される通りであり、以下が含まれる:掻痒、線維筋痛およびそれに付随する疼痛の処置および予防、偏頭痛、不安、認識障害および精神病性障害、鬱病、精神分裂病、産後鬱病における精神病、過敏性腸症候群、アルコール中毒症、閉塞性睡眠時呼吸障害、乗り物酔い、アルツハイマー病のような認識機能の喪失、尿失禁、ジスキネジア、全身性エリテマトーデス、薬物性の掻痒、早期射精、摂食障害、強迫性障害、胃運動障害(下痢)、慢性疲労症候群、消化不良ならびにコカイン依存症。
【0052】
本発明は、以下の非限定的な実施例および添付の図面によってさらに示される。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
求核性モノマーを含む接着剤中にグラニセトロンを導入する可能性を試験するために、この薬物を、4つの異なるNational Starch接着剤中に製剤化した。表1中に列挙されるように、これらの接着剤のうち1つは官能基を有さないポリマーを含み、2つは酸性官能基を有するポリマーを含み、そして4番目はヒドロキシル官能基を含んだ。
【0054】
【表1】

【0055】
「官能性モノマーのおよその%」は、10%の許容度内で接着剤の調製において使用される酸性モノマーまたはOH含有モノマーの近似レベル(w/w)を示す。
【0056】
添付の図1は、表1中に列挙された接着剤中3%のグラニセトロン製剤からのグラニセトロンのin vitroマウス皮膚浸透(μg/cm2)を示す。これらの製剤の各々を、85g/m2のコーティング重量で製造し、約260μg/cm2の薬物充填量を得た。結晶化は、製造されたデバイスのいずれにおいても観察されなかった。
【0057】
表2は、種々の時間間隔での種々の製剤からの浸透のレベルを示し、非求核性で電気中性のDT 4098で観察されたものよりも30倍高い、DT 2287からの流量のレベルを示す。より高いレベルでの収束の理由は、DT 2287における接着剤からの薬物の枯渇に起因する。
【0058】
【表2】

【0059】
酸性部分を含む接着剤からの浸透は、官能基を有さない接着剤からの浸透よりもかなり非常に低かった。
【0060】
表3は、表2中と同じであるが、平均流量を示すように処理されたデータを示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表4は、選択された時点での勾配としてとられた、同じではあるが絶対的流量を示すように処理されたデータを示し、最初の6時間にわたる本発明のパッチの優越性をさらに強調している。パッチが実質的に高い充填量を有するほど、送達の期間は長くなり、その用量も多くなることが予測できる。
【0063】
【表4】

【0064】
ヒドロキシル基を含む接着剤からの驚くべき高い程度のグラニセトロン浸透が観察された(図1)。この製剤からの流量は、(図1中のDT 2287製剤についての浸透曲線のプラトーによって示されるように)ほんの24時間後にグラニセトロンのデバイスを枯渇するのに充分に高かった。この完全な枯渇は、任意の持続する相互作用が薬物とこの接着剤との間で生じた可能性が非常に低いことを示す。24時間の期間にわたって試験された製剤の%による相対的な枯渇は図2(これは、異なる接着剤ポリマー官能基の製剤からのグラニセトロンのin vitroマウス皮膚浸透(適用した用量の%)を示す)中に示され、DT 2287製剤の驚くべき有効性を明らかに示す。
【0065】
(実施例2)
実施例1の最良の製剤における薬物安定性を調査した。
【0066】
DT 2287中に製剤化され、3つの温度で6週間保存したパッチについての安定性データが、表5中に示される。パッチのグラニセトロン含量における減少は観察されず、このことは、40℃で加速された条件下でさえ、この薬物がこれらのデバイス中で安定であることを示す。
【0067】
【表5】

【0068】
図3は、DT 387-2287接着剤からのグラニセトロンのin vitroヒト皮膚浸透を示し(n=4)、110g/m2の重量でコーティングされた8%グラニセトロン製剤の使用を示す。これは、約880μg/cm2のグラニセトロン充填量に等しい。96時間後に、総浸透は約660μg/cm2に達し、これは、パッチ充填量の約70%に等しい。浸透は96時間後にプラトーに達するが、このパッチはもう24時間にわたって薬物を送達し続けると仮定される。
【0069】
図4は、時間に対する図1の勾配のプロット(すなわち、時間に対する流量の描写)である。図4は、DT 2287接着剤からのグラニセトロンの、実験的およびモデル化されたin vitroヒト皮膚浸透(μg/cm2/時間)を示す。この流量プロフィールをモデル化し、単純な薬物動態モデル(患者からのPKデータに基づく)のための入力として使用して、図5中に示されるような10cm2のパッチのin vivo性能を示した。
【0070】
図5は、患者における1mgのグラニセトロンの反復経口投与後の定常状態の実験的血漿プロフィールと比較した、10cm2のパッチからのシミュレートされたグラニセトロン血漿プロフィールを示す。
【0071】
図3中のデータは、この製剤が数日間にわたって薬物を送達し、5日間の期間(例えば、グラニセトロンが頻繁に処方される期間)に適切であることを示す。図3はまた、異なる時点(すなわち化学療法の前)で経皮パッチを適用することの予測された効果を示し、このようなデバイスが、急性および遅延性の嘔吐ならびに分割化学療法に付随する嘔吐に対して保護するために実際に如何に利用できるかを実証する。
【0072】
(実施例3)
ヒトにおけるin vivoでのグラニセトロンの徐放
パッチの調製
グラニセトロンパッチを、以下の様式で調製したコーティング溶液から製造した:
1.DT 387-2287の固体含量を決定し、この接着剤を酢酸エチルで希釈して、49%の規格下限値にした。次いでこの溶液を、15分間にわたってスターラーによって混合した。
2.透明な溶液(約67mg/ml)が得られるまで、グラニセトロン基剤をジメチルアセトアミド(DMA)中に溶解した。
3.上記1から得られた接着剤溶液を、2から得られたグラニセトロン溶液と混合した。
【0073】
コーティングプロセスの目的は、低レベルの残留溶媒の、110g/sqmの面積重量を有する積層体を得ること、およびこの積層体の乾燥の間にこの薬物の分解の量を制限することであった。
【0074】
このコーティング溶液を放出ライナー(FL2000 100μm)上にコーティングして、110g/sqmの面積重量を達成した。これを、裏地ホイルHostaphan MN 15 MEDで引き続いて積層した。コーティング溶液の製造および安定性には問題なかった。活性溶液および偽薬溶液を容易にコーティングして、110g/sqmの必要とされる面積重量を達成した。0.1m/分のコーティング速度での90℃でのコーティングで、良好な結果が得られた。パッチ(15cm2)をこの積層体から打ち抜き、アルミニウム小袋中に包装した。各15cm2のパッチは、接着剤中に6% w/wのグラニセトロン(パッチ1つ当たり約10mgまたは、すなわち660μg/cm2の総充填量)を含んだ。
【0075】
ヒトボランティアにおける第I期研究を、このデバイスの局所的許容度および全身的許容度と共に、このパッチからのグラニセトロンの全身的バイオアベイラビリティを評価するために実施した。パッチを、5日間の期間(120時間)にわたってこれらのボランティアの腹部に適用し、適用期間の間に血液サンプルを採取した。これらの結果は表6および図6中に示され、図6は、ヒトボランティア(n=11)への単一の15cm2のパッチの適用後の、グラニセトロンの平均血漿レベルを示す。
【0076】
【表6】

【0077】
図6中のデータは、これらのボランティアからサンプルを採取することによって得られたグラニセトロンの血漿レベルである。
【0078】
この研究は、15cm2の経皮パッチを介したグラニセトロンの持続されたバイオアベイラビリティを実証した。このパッチは、低い皮膚刺激の可能性および受容可能な接着性を実証した。このグラニセトロンパッチは安全であり、局所的および全身的の両方で全ての被験体において充分許容された。
【0079】
15cm2のパッチを使用したヒトボランティア研究からin vivoデータをとり、グラニセトロンの1mg錠剤(Physicians Desk Reference、Kytrilについての見出し項目)の単回投与後の、ヒトボランティアにおける薬物動態分析および既知のCmax(3.6ng/ml)との比較を考慮して、40cm2の領域中の僅かにより大きいパッチが、最適効力に適切なレベルのグラニセトロンを送達すると結論された。この面積のパッチは容易に受容可能である。このパッチのサイズは、患者の要件および実施者の経験に従って決定でき、40cm2よりも小さいパッチおよび大きいパッチの両方が所望に応じて使用できることが理解されよう。
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】種々の接着剤中3%のグラニセトロン製剤からのグラニセトロンのin vitroマウス皮膚浸透(μg/cm2)を示す図である。
【図2】異なる接着剤ポリマー官能基の製剤からのグラニセトロンのin vitroマウス皮膚浸透を示す図である。
【図3】好ましい接着剤からのグラニセトロンのin vitroヒト皮膚浸透を示す図である。
【図4】好ましい接着剤からのグラニセトロンの、実験的およびモデル化されたin vitroヒト皮膚浸透を示す図である。
【図5】定常状態の実験的血漿プロフィールと比較した、10cm2のパッチからのシミュレートされたグラニセトロン血漿プロフィールを示す図である。
【図6】ヒトボランティアへの単一の15cm2のパッチの適用後の、グラニセトロンの平均血漿レベルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラニセトロンを含む接着性経皮パッチであって、
更に、非酸性ヒドロキシル部分(但し、該非酸性ヒドロキシル部分は、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、又は、ヒドロキシエチルメタクリレートによっては提供されない)を含むアクリル接着剤を含み(但し、該接着剤は、側鎖にポリエチレンオキシド又はポリエチレンオキシドモノメチルエーテルを有するアクリル系粘着基剤を含まない)、
生理学的有効量のグラニセトロンが前記接着剤中に装填されている接着性経皮パッチ。
【請求項2】
前記非酸性ヒドロキシル部分が、適切に選択されたコモノマーによって提供される、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記選択されたコモノマーが、置換されたアクリレートおよびメタクリレートから選択される、請求項2に記載のパッチ。
【請求項4】
感圧性である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項5】
過半量の主要なアクリレートモノマーを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項6】
前記主要なアクリレートモノマーが、2-エチルヘキシルアクリレートまたはブチルアクリレートのいずれかである、請求項5に記載のパッチ。
【請求項7】
約2時間後に薬理学的有効量のグラニセトロンを提供するように適合された、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項8】
約10重量%までのグラニセトロンを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項9】
8% w/w未満のグラニセトロンを有する、請求項8に記載のパッチ。
【請求項10】
約4% w/wを上回るグラニセトロンのレベルを有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項11】
6% w/wと7.7% w/wとの間のグラニセトロンのレベルを有する、請求項8に記載のパッチ。
【請求項12】
室温および常圧での1ヶ月間の保存の後に結晶化が観察されない、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項13】
化学的に誘発された嘔吐の処置又は予防のための、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項14】
前記嘔吐が急性である、請求項13に記載のパッチ。
【請求項15】
前記嘔吐が遅延性である、請求項13に記載のパッチ。
【請求項16】
分割化学療法に付随する嘔吐の処置又は予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項17】
術後の悪心および嘔吐の処置又は予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項18】
化学療法により誘発された悪心及び嘔吐の処置又は予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項19】
放射線療法に付随する悪心及び嘔吐の処置又は予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項20】
分割癌療法に付随する悪心及び嘔吐の処置又は予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項21】
掻痒、線維筋痛およびそれに付随する疼痛、偏頭痛、不安、認識障害および精神病性障害、鬱病、精神分裂病、産後鬱病における精神病、過敏性腸症候群、アルコール中毒症、閉塞性睡眠時呼吸障害、乗り物酔い、アルツハイマー病などの認識機能の喪失、尿失禁、ジスキネジア、全身性エリテマトーデス、薬物性の掻痒、早期射精、摂食障害、強迫性障害、胃運動障害、慢性疲労症候群、消化不良ならびにコカイン依存症から選択される状態の処置または予防のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項22】
前記接着剤に、3% w/wと12% w/wとの間のグラニセトロンが装填されている、請求項1乃至21のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項23】
前記接着剤に、4% w/wと10% w/wとの間のグラニセトロンが装填されている、請求項22に記載のパッチ。
【請求項24】
前記接着剤に、5% w/wと8% w/wとの間のグラニセトロンが装填されている、請求項22に記載のパッチ。
【請求項25】
可塑剤も浸透促進剤も導入していない、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項26】
6% w/wのグラニセトロンの接着剤充填量で、前記接着剤が10cm2と100cm2との間の表面積を有する、請求項1乃至25のいずれか一項に記載のパッチ。
【請求項27】
前記接着剤が15cm2と50cm2との間の表面積を有する、請求項26に記載のパッチ。
【請求項28】
5−HTレセプター活性に関連する嘔吐の処置又は予防のための医薬品の製造におけるグラニセトロンの使用であって、
前記医薬品が、患者の皮膚に施される、請求項1乃至20及び22乃至27のいずれか一項に記載の接着性経皮パッチである使用。
【請求項29】
化学療法により誘発された悪心及び嘔吐の処置又は予防のための医薬品の製造におけるグラニセトロンの使用であって、
前記医薬品が、患者の皮膚に施される、請求項1乃至20及び22乃至27のいずれか一項に記載の接着性経皮パッチである使用。
【請求項30】
掻痒、線維筋痛及びそれに付随する疼痛、偏頭痛、不安、認識障害及び精神病性障害、鬱病、精神分裂病、産後鬱病における精神病、過敏性腸症候群、アルコール中毒症、閉塞性睡眠時呼吸障害、乗り物酔い、アルツハイマー病等の認識機能の喪失、尿失禁、ジスキネジア、全身性エリテマトーデス、薬物性の掻痒、早期射精、摂食障害、強迫性障害、胃運動障害、慢性疲労症候群、消化不良並びにコカイン依存症から選択される状態の処置又は予防のための医薬品の製造におけるグラニセトロンの使用であって、
前記医薬品が、患者の皮膚に施される、請求項1乃至12及び21乃至27のいずれか一項に記載の接着性経皮パッチである使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−195738(P2008−195738A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111808(P2008−111808)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【分割の表示】特願2006−502225(P2006−502225)の分割
【原出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(500547647)ストラカン・インターナショナル・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Strakan International Limited
【Fターム(参考)】