経皮投薬デバイス
【課題】短いマイクロニードルで薬液を確実に経皮投与する。
【解決手段】表面に複数のマイクロニードル1を形成すると共に、表面から背面に通液孔4を備えたニードル形成体2と、前記ニードル形成体2の背面に薬液を供給する薬液充填部3とを備えたデバイス本体5と、基材シート21上に皮膚表面の角質層を除去する粘着剤層6aを設けた角質層剥離システム6とを有し、デバイス本体5のニードル形成体2側にニードル形成体2に対応する開口部26を有する補助シート22を固定し、補助シート22に角質層剥離システム6を連結し、角質層剥離システム6により皮膚の角質層31を除去した部分に開口部26からニードル形成体2を押し当ててマイクロニードル1を刺し、デバイス本体5の薬液充填部3内の薬液を通液孔4を通してニードル形成体2のマイクロニードル1から皮膚30内に投与する。
【解決手段】表面に複数のマイクロニードル1を形成すると共に、表面から背面に通液孔4を備えたニードル形成体2と、前記ニードル形成体2の背面に薬液を供給する薬液充填部3とを備えたデバイス本体5と、基材シート21上に皮膚表面の角質層を除去する粘着剤層6aを設けた角質層剥離システム6とを有し、デバイス本体5のニードル形成体2側にニードル形成体2に対応する開口部26を有する補助シート22を固定し、補助シート22に角質層剥離システム6を連結し、角質層剥離システム6により皮膚の角質層31を除去した部分に開口部26からニードル形成体2を押し当ててマイクロニードル1を刺し、デバイス本体5の薬液充填部3内の薬液を通液孔4を通してニードル形成体2のマイクロニードル1から皮膚30内に投与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を経皮投与するための経皮投薬デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経口投与できない薬液、薬剤(以下、これらを薬液という。)の投与には注射が用いられていたが、注射を用いる方法は身体への侵襲の程度が大きく、しかも痛みを伴うという問題があった。また、薬液を含むパッチ剤などによる経皮投与の方法も用いられてきたが、この方法は薬効が発現するまでに時間がかかること、および使用可能な薬液の種類が限られるという問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決するために、近時、マイクロニードルやマイクロブレードなどと呼ばれる技術が開発されてきている。
【0004】
マイクロニードルを用いる薬液投与方法(特開2006−149818号公報、特許文献1)は、薬液を表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に直接投与することで、薬効時間を短縮することを目的とするものである。また、同様の原理により、インスリン、麻酔薬等の薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することを目的として利用されることもある。
【0005】
マイクロニードルは、一般に先端径が10〜50μm、高さが100〜200μm、裾野径が100〜200μmの微小な針であり、アスペクト比(高さ/裾野径)の大きいマイクロ構造体である。そのため、マイクロニードルを用いる薬液投与方法は、皮膚の角質層を貫通するものの痛点にまでは届かないため、人体への挿入時に痛みを感じないという利点がある。このように、これまでのマイクロニードルを用いる方法は、注射器による身体への侵襲、特に針の突き刺しによる痛みの緩和に重点を置くものであった。
【0006】
しかしながら、マイクロニードルは上述のように極めて微小ではあるが、薬液を投与するためにはまず表皮の表層にある角質層を貫通しなければならない。そのため、マイクロニードルには角質層を貫通するに十分な長さ(又は高さ)が必要とされる。しかも、角質層は比較的硬いと同時に弾性も持っているので、角質層を貫通するためには、マイクロニードルに角質層を突き抜けるだけの細さも要求される。ところが、長さと細さを同時に要求すると、マイクロニードルの強度が不十分となる。薬液投与時に生体内でマイクロニードルが折れ、あるいは破損する場合があるので、体内にマイクロニードルが残らないようにする必要がある。このように、長くて細くて十分な強度を有するマイクロニードルを製造することは容易ではない。
【0007】
特開2005−334594号公報(特許文献2)には、粘着剤等を使用して皮膚の角質を剥離し、皮膚表面の状態を均一で安定した状態とした上で、カーボンナノチューブ突起を有する薬剤投与パッチを皮膚に押し付け、薬剤の経皮輸送を行う薬剤投与パッチが提案されている。
【0008】
しかし、この方法では、粘着剤等を使用して皮膚の角質を剥離した後、突起を有する薬剤投与パッチを皮膚に押し付けるようにしているので、投薬操作が不便であり、また投薬場所を正確に位置合わせする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−149818号公報
【特許文献2】特開2005−334594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、マイクロニードルの長さが短い場合でも、薬液を確実に経皮投与できる経皮投薬デバイスを提供することをその目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、操作が簡単で薬液を経皮投与でき、しかも角質層を剥離した皮膚に確実に薬液を経皮投与できる経皮投薬デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は以下を特徴とする。
【0013】
項目1.表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
角質層剥離システムと 、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する接続手段と、を有する経皮投薬デバイスであって、
該角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、該接続手段により該角質層剥離システムが該デバイス本体に接続されている、経皮投薬デバイス。
【0014】
項目2.前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有する、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0015】
項目3.前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられている、項目1又は2に記載の経皮投薬デバイス。
【0016】
項目4.前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が該ベースシートに形成されている、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0017】
項目5.前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されている、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0018】
項目6.前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能である、項目5に記載の経皮投薬デバイス。
【0019】
項目7.前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0020】
項目8.前記引き剥がしシートが、端部が折り返された第2のシートと、端部が折り返された第3のシートとからなり、第2のシートの折り返し部が前記補助シートと接続され、該第3のシートの折り返し部が前記角質層剥離システムの基材シートを兼用している、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0021】
項目9.前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシート、該第1のシートの両側面に配置される第2のシートおよび第3のシートを有し、該それぞれのシートの端部が折り曲げられ、該折り曲げ部にて第1〜第3のシートが接着され、該第3のシートが前記角質層剥離システムに接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0022】
項目10.前記引き剥がしシートが、長さの長いシートと、長さの短いシートと、を有し、該長いシートが折り曲げられ、この折り曲げ部に折り曲げた短いシートの一方が接着され、短いシートの他方が角質層剥離システムに接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0023】
項目11.前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、項目5に記載の経皮投薬デバイス。
【0024】
項目12.前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0025】
項目13.表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る角質層剥離システムと、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する位置決めシートと、を有する経皮投薬デバイスであって、
該位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部に該デバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に該角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、
該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されている経皮投薬デバイス。
【0026】
項目14.前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0027】
項目15.前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の三辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0028】
項目16.前記位置決めシートから延出片が延出され、該延出片上に前記デバイス本体が接着されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0029】
項目17.前記位置決めシートから延出片が延出され、
前記デバイス本体が、該延出片と、該延出片の一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該延出片の他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該延出片に、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0030】
項目18.前記デバイス本体が、薬液を収容する薬液充填部と該薬液充填部の外面に設けられたニードル形成体とを有し、該ニードル形成体の外表面には複数のマイクロニードルが形成され、該ニードル形成体に該表面から背面に走る通液孔が設けられ、該薬液充填部を加圧した際に、該薬液充填部が破断して内部の薬液を該ニードル形成体の背面に供給し得る脆弱部が薬液充填部に設けられている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0031】
項目19.前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0033】
請求項1の発明によれば、角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、接続手段により角質層剥離システムがデバイス本体に接続されている。
【0034】
よって、マイクロニードルは角質層を貫通する必要がない。皮膚は剥離された角質層の厚さ分だけ薄くなる。このため、すべての又はほとんどのマイクロニードルが表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達した状態に至り、薬液を効率的に表皮の生きた細胞層又は血液中に投与することができる。
【0035】
また、角質層の剥離(ピーリング)処理には痛みが少なく、マイクロニードルを刺しても、患者に対する負荷は非常に軽微である。また、このピーリングにより、ランゲルハンス細胞が活性化される。
【0036】
なお、角質層は常に一定のサイクルで古いものは剥がれて新しいものに生まれ変わっているので、人工的にこの部分を除去するのは容易であり、痛みが伴うこともない。従って、患者に対する負荷は非常に軽微である。
【0037】
さらに、角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域にマイクロニードルが配置されることにより、角質層を剥離した皮膚表面に確実に投薬することができる。
【0038】
請求項2の発明によれば、前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有するので、注射器から針を使わずにニードル形成体に薬液を供給して皮膚に投与することができる。
【0039】
請求項3の発明によれば、前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられているので、注射器から針を使わずに、ニードル形成体に薬液を供給して皮膚に投与することができる。また、特別の器具を使わなくても、皮膚を押し広げることにより、皮膚の表面を薄く延ばして薬液の投与を効率的に行うことができる。
【0040】
請求項4の発明によれば、前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該ベースシートに該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されているので、角質層剥離システムを剥がした後の皮膚にデバイス本体を押し当てた後、薬液充填部を押してベースシートを破り、そこから漏れた薬液をニードル形成体に供給して皮膚に投与することができる。
【0041】
請求項5の発明によれば、前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されているので、請求項1の発明による効果が得られると共に、補助シートの一部に指で押さえる押さえ片を設け又は補助シートの一部に皮膚に接着する接着剤を塗布することにより、指で押さえ又は接着剤により接着することで、ニードル形成体を位置決めすることができる。
【0042】
請求項6の発明によれば、前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能であるので、角質層剥離システムを皮膚に押し当てた後に引き剥がしシートを引くと、角質層剥離システムが皮膚から剥がれて角質層が除去される。残った補助シートの開口部からニードル形成体を角質層が除去された皮膚に押し当ててマイクロニードルを刺し、デバイス本体の薬液充填部からの薬液を通液孔を通してニードル形成体のマイクロニードルから皮膚内に投与することができる。従って、引き剥がしシートを引き剥がすことにより、角質層の除去と補助シートの除去を同時に行うことができ、角質層の除去後ただちに薬液を投与して迅速に処理することができる。さらに投与の直前まで補助シートでニードル及びニードル形成体が覆われることにより、投与の直前までニードルの無菌性を維持することができる。
【0043】
請求項7の発明によれば、前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されているので、引き剥がしシートの他方の端部を引き出すだけで、皮膚から角質層剥離システムを剥がすと同時に、補助シートを皮膚上に当てることができるから、薬液を迅速に投与することができる。
【0044】
請求項11の発明によれば、前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられているので、ニードル形成体の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0045】
請求項12の発明によれば、前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得るので、角質層剥離システムの構成が簡単となる。
【0046】
請求項13の発明によれば、位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部にデバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されているので、位置決めシートの開口部を皮膚の所定位置に当てた後、角質層剥離システムを折り曲げて開口部内の皮膚に押し当てて角質層を剥がした後、デバイス本体を折り曲げて開口部内の皮膚に押し当て、さらに薬液充填部を押して、ベースシートを破り、そこから漏れた薬液をニードル形成体に供給して皮膚に投与することができる。
【0047】
請求項14の発明によれば、前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されているので、角質層が剥離された皮膚に確実にデバイス本体を接触させることができる。また、投薬操作も簡単である。
【0048】
請求項15の発明によれば、前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の3辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されているので、3枚の角質層剥離システムによって確実に角質層を剥離できる。
【0049】
請求項19の発明によれば、前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられているので、ニードル形成体の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0050】
このように、マイクロニードルにとって最も問題であった角質層を突き通す必要がないので、マイクロニードルの高さを低くすることができ、マイクロニードルの径を細く形成した場合でも十分な強度を確保することができる。その結果、インスリン、麻酔薬等の薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することができる。
【0051】
マイクロニードル集合部を設けた表面が凸面状(曲率半径Rが10〜100mm、好ましくは30〜40mm)に形成されていると、マイクロニードル集合部を人の皮膚に押し付けたときに、全て又は一部のマイクロニードルがムラなく、均等に入り込むので、効率がよい。また、裏面から表面又は凸面に1個以上の通液孔を貫通形成したので、裏側から薬液を供給すると、薬液は表面側に移動し、凸面状の表面に沿って流れて又は凸面の途中から流出して、マイクロニードルの基部に移動する。従って、薬液をマイクロニードルに沿って表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る経皮投薬デバイスの斜視図。
【図2】上記経皮投薬デバイスの断面図。
【図3】(a)(b)はそれぞれニードル形成体の側面図及び平面の拡大図。
【図4】ニードル形成体の要部の拡大断面図。
【図5】マイクロニードルの拡大断面図。
【図6】(a)(b)(c)は引き剥がしシートと角質層剥離システムとの連結態様の形態を示す断面図。
【図7】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図8】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図9】経皮投薬デバイスの他の引き剥がしシートを使用したときの要部の斜視図。
【図10】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図11】経皮投薬デバイスの他の形態の斜視図。
【図12】経皮投薬デバイスの断面図。
【図13】上記経皮投薬デバイスの薬液投与時の断面図。
【図14】経皮投薬デバイスのさらに他の形態の平面図。
【図15】上記経皮投薬デバイスの断面図。
【図16】(a)(b)は引き剥がしシートの他の連結態様を示す断面図。
【図17】(a)(b)は引き剥がしシートの他の連結態様を示す平面図。
【図18】(a)(b)は引き剥がしシートと開口部の他の態様を示す平面図。
【図19】マイクロニードルに設けた通駅孔の種々の態様を示す拡大断面図。
【図20】経皮投薬デバイスのさらに他の形態の平面図。
【図21】図20で示した経皮投薬デバイスの断面図。
【図22】図20で示した経皮投薬デバイスの作用説明図。
【図23】図20で示した経皮投薬デバイスの作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
図1及び図2は本発明による経皮投薬デバイスAの斜視図及びその縦断面図を示す。
【0055】
この経皮投薬デバイスAは、デバイス本体5と、角質層剥離システム6と、該角質層剥離システム6と該デバイス本体5とを接続するための接続手段38と、を備えている。
【0056】
該デバイス本体5は、表面に複数のマイクロニードル1が形成され、表面から背面に走る通液孔4が設けられたニードル形成体2と、該ニードル形成体2の背面に薬液を供給する薬液充填部3とを備えている。
【0057】
該角質層剥離システム6は、基材シート21と、該基材シート21に積層された粘着剤層6aとを有し、該粘着剤層6aによって皮膚表面の角質層30aを剥離し得るものである。
【0058】
該角質層剥離システム6の粘着剤層6aによって角質層30aを剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体5のニードル形成体2のマイクロニードル1が配置できるよう、該角質層剥離システム6が該デバイス本体5に接続手段38によって接続されている。
【0059】
具体的には、経皮投薬デバイスAは、表面に複数のマイクロニードル1を形成すると共に、表面から背面にかけて通液孔4を有するニードル形成体2と、該ニードル形成体2の背面に薬液Mを供給し得る薬液充填部3とを備えたデバイス本体5と、基材シート21上に皮膚表面の角質層30aを除去する粘着剤層6aを設けた角質層剥離システム6とを有し、デバイス本体5と角質層剥離システム6とは、接続手段38としての補助シート22及び引き剥がしシート24を介して連結されている。
【0060】
なお、連結とは接着の他、粘着によって緩やかに連結される場合も含まれるものとする。
【0061】
詳細は次のとおりである。
(デバイス本体のニードル形成体)
デバイス本体5はニードル形成体2と薬液充填部3とを筒状体7に備えてなるものである。
【0062】
上記ニードル形成体2は、図2〜図4に示すように、表面が凸面状に形成され、直径又は一辺が10〜50mm(好ましくは20〜40mm)の円板状又は角板状の部材で、表面の頂部には複数のマイクロニードル1を集合配置してなるマイクロニードル集合部8が設けられている。マイクロニードル集合部8は曲率半径Rが10〜100mm(好ましくは10〜40mm、さらに好ましくは30〜40mm)の凸面となっている。
【0063】
図5に示すように、マイクロニードル1は円錐台状に形成され、裾野径L1がΦ10〜1000μm(好ましくは50〜200μm)、針の先端径L2が10〜100μm、長さ(高さ)Hが10〜1000μm(好ましくは50〜100μm)となるように形成されている。
【0064】
ニードル形成体2の表面には、高さが10〜1000μm(50〜100μm)の複数のマイクロニードル1を集合配置してなるマイクロニードル集合部8が設けられている。
【0065】
また、図2及び図3に示すように、上記マイクロニードル集合部8には、マイクロニードル1が0.1〜20mm(好ましくは0.5〜1mm)ピッチで、1〜1000本(好ましくは100〜650本)程度設けられている。
【0066】
さらに、ニードル形成体2の中央部には裏面から表面又は凸面に1箇所以上の通液孔4が貫通形成されている。その孔径は5mm以下で、上からの薬液が下に垂れ落ちず、しみ出す程度の大きさとすればよい。通液孔4の位置は、中央部に限定されない。マイクロニードル集合部8の周囲に設けられてもよい。
【0067】
また、図19(a)に示すように、通液孔4はマイクロニードル1を通過するように形成しても良く、あるいは図19(b)に示すように、マイクロニードル1を通過しないでニードル形成体2の本体2aのみを通過する位置に形成しても良い。通液孔4がマイクロニードル1を通過する場合は、マイクロニードル1の先端部を通過しても良く、あるいは図19(d)に示すように、マイクロニードル1の先端部に対してオフセットした位置に通液孔4を形成しても良い。つまり、マイクロニードル1の斜面を通液孔4が通るように形成しても良い。通 液孔4は、図19(c)に示すように、1個設けても良く、あるいは2個以上設けても良い。
【0068】
なお、上記マイクロニードル1及びニードル形成体2は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂や生体適合性樹脂等を材料として、射出成形や低圧鋳造することによって一体に製造すればよい。
【0069】
なお、金型を用いてマイクロニードル1及びニードル形成体2を製造する場合には、金型にミクロンオーダーの孔を多数あける必要があるので、ミクロンバイトによる切削加工又はポンチングツールによる鍛造加工又は放電加工又はエッチング加工又は電鋳加工等によって金型を製造するのが良い。
【0070】
マイクロニードル1に形成した通液孔4の径は、Φ1〜100μmが好ましく、さらに好ましくはΦ40〜80μmである。通液孔4の径が小さい場合(例えば、Φ50μm以下の場合)は、切削での穴あけ、又はレーザー又は金型によって通液孔4を形成することができる。通液孔4が大きい場合(例えば、Φ50μm以上の場合)は、上記のとおり金型、レーザーを用い、又は切削での穴あけによって通液孔4を形成することができる。
【0071】
また、マイクロニードル1は、シリカのような無機材料やステンレスのような金属で形成することもでき、その場合、公知のエッチング工法、プレス工法、インサート成形、接着、その他工法によってもマイクロニードルを形成すればよい。
(デバイス本体)
次に、上記ニードル形成体2は経皮投薬デバイスAに取り付けて使用される。
【0072】
この投薬デバイスAは、筒状体7の上部から注射器14を挿入し、台座10にねじ止め固定し、薬液をマイクロニードル集合部8にしみ込ませた後、注射器14をポンピングすることによって、台座10に溶着部で溶着されたニードル形成体2のマイクロニードル1が皮膚に抜き刺しされ、上記薬液を表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給するようにしたものである。
【0073】
すなわち、ニードル形成体2は、筒状体7の内側下部に移動可能に設けられた台座10に一体的に固定されている。台座10は、中央に筒部11を有する短円筒状に形成され、筒部11の先端外側には雄ネジ12が形成されている。雄ネジ12は注射器14の先端の注射針取付部15の外周に形成された外周縁16の内側の雌ネジ13に螺合可能な大きさに形成されている。
【0074】
台座10の下面にはニードル形成体2が溶着固定されている。そして、上記台座付きニードル形成体2は筒状体7に嵌合されている。
【0075】
また、上記筒状体7には、中間に係合片19aを残した開口部19が形成され、上記台座10の上部外側には棒状又は丸状の係合部41が突出形成されている。この係合部41は上記係合片19aの上に係合している。これにより、上記係合片19aの弾性によって、台座付きニードル形成体2は上方に付勢され、一定範囲で上下に移動可能に設けられている。
【0076】
筒状体7には、上記台座付きニードル形成体2を上下に移動可能に収容する収容部17が形成され、該収容部17の上部は注射器14のシリンダ18を挿入可能な大きさに形成されている。また、筒状体7の下端開口部には、筒状体7を皮膚30に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡大手段としての環状縁20が形成されている。なお、注射器14のシリンダ18とピストン27により薬液充填部3が構成される。
【0077】
デバイス本体5のニードル形成体2側は、合成樹脂、布材等で形成された補助シート22で覆われ、補助シート22は上記筒状体7の環状縁20の下端に接着固定されている。補助シート22には上記ニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。補助シート22の端部22aは角質層剥離システム6の端部からはみ出している。
【0078】
以下、さらに詳細に説明する。
【0079】
上記デバイス本体5は、薬液が充填される注射器14が移動可能に挿入される筒状体7と、該注射器14の先端部に取り付けられるニードル形成体2と、を有する。
【0080】
該筒状体7の上端部にはフランジが形成され、筒状体7の下部にはやや径の大きくなった収容部17が形成され、さらにその収容部17の下端部には皮膚拡張手段20が傾斜して一体に設けられている。
【0081】
該ニードル形成体2は、注射器14の先端に台座10を介して接続されている。このニードル形成体2は、表面が凸面状に形成された略レンズ状のニードル形成体本体2aと、該ニードル形成体本体2aの表面の少なくとも中央部に配置された複数のマイクロニードル1と、を有する。マイクロニードル1は、ニードル形成体本体2aの周縁を除いて該本体の表面全面に配置してもよい。
【0082】
該ニードル形成体本体2aの中央部に該本体の裏面側から表面側に走る1個以上の薬液投下用孔4が貫通して形成されている。
【0083】
該台座10は略円筒状に形成され、筒部11と、外筒と、該筒部11および外筒を連結する環状の連結体と、外筒から外方へ延設された係合部41と、を有する。該筒部11内に連通孔が形成されている。連結体の下面にニードル形成体2が固定され、該ニードル形成体2に形成した薬液投与用孔4と連通孔とが連続する。
【0084】
図2に示したように、筒部11の端部に雄ネジ12が形成され、この雄ネジ12に上記したように注射器14の先端に形成した雌ネジ13が螺合される。
【0085】
注射器14の先端部に形成された収容部17に開口部19が対向する位置にそれぞれ形成されている。この開口部19の周囲の一部から係合片19aが水平方向へ延設されている。そして、上記台座10の係合部41がこの係合片19aに係合するように開口部19内に挿入されている。従って、係合片19aが上下方向へ弾性変形し得るので、台座10は収容部17内で上下方向へ移動可能である。
【0086】
筒状体7の下部を皮膚表面に当て、注射器14を皮膚に対して押圧すると、その下端に設けた台座10およびニードル形成体2が下方へ移動し、マイクロニードル1が皮膚へ侵入するが、注射器14への押圧力を解除すると、係合片19aの復原力によって注射器14は上方へ押され、マイクロニードル1は皮膚から抜かれる。この操作を繰り返す(ポンピングする)ことにより、マイクロニードル1は皮膚へ刺し通したり、皮膚から抜かれたりする。
(角質層剥離システム)
投薬箇所は皮膚である。あらかじめその部分の皮膚の角質層30aを可能な限り角質層剥離システム6によって除去しておく。角質層30aは自然の状態で常に古いものは剥がれてアカとなり、新しいものに生まれかわっているので、人工的にこの部分を剥がすのは容易であり、痛みが伴うこともない。角質層30aの厚さは10〜20μmであるが、年齢や男女等によって多少異なる。角質層30aの弾力も同様である。
【0087】
角質層剥離システム6としては、基材シート21上に皮膚表面の角質層30aを除去するための粘着剤層6aを設けたピーリングシートを用いることが望ましい。
【0088】
該ピーリングシートは、皮膚に粘着して表面の角質層30aを剥離するため、基材シート21の下面に粘着剤層6aを積層した部材である。基材シート21としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル等で構成されたポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性エラストマー樹脂等からなるプラスチックフィルム、各種合成繊維及び/又は天然繊維からなる織物、編物及び不織布、上質紙、グラシン紙、コート紙等の紙やこれらの積層体を用いることができる。基材シート21の平均厚さは10〜800μmであるのが好ましい。
【0089】
粘着剤層6aは、生体表面に粘着後、生体表面から除去することにより、該生体(皮膚)表面から古い角質層30aを除去する機能を有する。粘着剤は、その粘着力により角質層30aを皮膚表面から除去できるものであればよく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等があげられる。また、粘着剤層6aは、ベークライトに貼付して5分後のJIS Z0237に準拠して測定される粘着力(モード:180°剥離、剥離速度:300mm/min、貼付時間:5分)が、2〜20N/25mmであるものが好ましい。また、このピーリングシート以外にも、確実に角質を除去できる他の角質層剥離システム6を使用することができる。
(接続手段)
上記角質層剥離システム6の粘着剤層6aによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、デバイス本体5のニードル形成体2のマイクロニードル1が配置できるよう、接続手段38により該角質層剥離システム6が該デバイス本体5に接続されている。
【0090】
図2に示す実施形態では、デバイス本体5の補助シート22とピーリングシート6との間に接続手段としての引き剥がしシート24が設けられている。
【0091】
該引き剥がしシート24は合成樹脂、布材等からなる。該引き剥がしシート24は、該補助シート22の裏面に剥ぎ取り可能に取り付けられていると共に、上記角質層剥離システム6を一端から他端に引き剥がし可能に構成されている。
【0092】
図2に示すように、引き剥がしシート24は、第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bと、第3の引き剥がしシート24cとを有する。該第2の引き剥がしシート24bと第3の引き剥がしシート24cの端部は折り返されて第1の引き剥がしシート24aは他の引き剥がしシート24b、24cからはみ出し、該はみ出し部25は外から手で摘んで該第1の引き剥がしシート24aを引き出せるようになっている。
【0093】
該第2の引き剥がしシート24bは補助シート22の裏面と一体に接着され、該第3の引き剥がしシート24が角質層剥離システム6と一体に接着されている。
【0094】
なお、引き剥がしシート24と角質層剥離システム6の構成は、上述の形態に限定されない。引き剥がしシート24は、補助シート22の裏面から剥ぎ取り可能で、上記角質層剥離システム6を皮膚から引き剥がし可能に構成されていればよい。第3の引き剥がしシート24cの一部は、角質層剥離システム6の基材シート21を兼用するようにしてもよい。引き剥がしシート24の他の実施形態を図6に示す。
【0095】
例えば、図6(a)に示される引き剥がしシート24は、第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bとからなる。第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bの端部は、それぞれ反対側に折り返されている。第1の引き剥がしシート24aの折り返し部は上記補助シート22の裏面に一体に接着され、第2の引き剥がしシート24bの折り返し部は角質層剥離システム6に一体に接着されている。上記形態においては、引き剥がしシート24の一部と角質層剥離システム6の基材シート21とは兼用されている。
【0096】
図6(b)に示すように、引き剥がしシート24を各端部が折り曲げられた3枚のシート24a、24b、24cで構成してもよい。3枚のシート24a、24b、24cの折り曲げられた各端部が接着されている。
【0097】
図6(c)に示すように、一枚の長いシート24aを折り曲げ、この折り曲げ部に、短いシート24bの折り曲げた一方を接着し、他方を角質層剥離システム6の端部に接着してもよい。
【0098】
補助シート22と引き剥がしシート24の接着は、接着剤によって接着することができる。補助シート22の皮膚と接触する側に粘着剤を適宜設けても良い。
その場合、さらに、引き剥がしシートの補助シートと接触する側に剥離処理を施すことによって、引き剥がしに伴い粘着剤面が露出し、補助シートを皮膚の目的の位置に確実に固定することができる。
(投薬方法)
上記皮膚投薬デバイスAを使用するときは、まず筒状体7から注射器14を外して、その注射器14のピストン27を引き出し、シリンダ(薬液充填部3)の内部に薬液Mを注入充填する。そして、注射器14を上に向けて筒状体7に挿入し、台座10の筒部11の雄ネジ12を注射器14の先端外周縁16の雌ネジ13に螺合させることにより、注射器14の先端の注射針取付部15を台座10に取り付ける。これにより、上記注射針の取付部15と台座10の筒部11とは連通する(図2)。
【0099】
次に、図7に示されるように、角質層剥離システム6から剥離紙(図示せず)を剥離し、角質層剥離システム6のの粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。
【0100】
次に、補助シート22のはみ出し部22aを皮膚上に指で押さえ(補助シート22の下面に設けた粘着剤により皮膚に固定してもよい)、引き剥がしシート24のはみ出し部25を摘んで皮膚30に沿って引き出す。これにより、第2の引き剥がしシート24bが補助シート22から外れ、また第3の引き剥がしシート24cと共に角質層剥離システム6が皮膚30から剥がされる。そのとき粘着剤層6aに角質層30aが付着して剥がれる。
【0101】
角質層剥離システム6を除去した後、図8に示されるように、角質層30aが剥がされた皮膚30の位置に補助シート22の開口部26が臨むので、筒状体7の下部のニードル形成体2を皮膚30に接触させることができる。
【0102】
次に、投薬デバイスAの先端を皮膚30の角質層30aを剥がした部分に当て、注射器14のピストン27を押して薬液Mをシリンダ18から通液孔4を通してマイクロニードル集合部8および皮膚の上へしみ出させる。そして、注射器14のピストン27をポンピングすることにより、薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給する。また、ポンピングにより、筒状体7の下端開口の環状縁20は皮膚30に押し付けられるので、皮膚30が押し広げられ、薄く引き延ばされ、より確実にマイクロニードル1が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に入り込んで薬液Mを投与できると共に、環状縁20や補助シート22の開口部26の縁が皮膚30に密着することにより、薬液Mが投与中に外に流れ出ることを防ぐことができる。
【0103】
なお、台座付きニードル形成体2は適宜の手段によって筒状体7に対して上下に作動できるようにするのが好ましい。
【0104】
図9及び図10は、引き剥がしシート24の図6(a)の実施形態を採用した場合の経皮投薬デバイスの一部の斜視図である。
【0105】
この場合も補助シート22のはみ出し部22aを皮膚上に指で押さえ、引き剥がしシート24を皮膚30に沿って引き出すことにより、第1の引き剥がしシート24aが補助シート22から外れ、第2の引き剥がしシート24bと共に角質層剥離システム6が角質層30aとともに皮膚30から剥がされる。その後、角質層30aが剥がされた位置に補助シート22の開口部26が臨むので、前述と同様に注射器14から薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に供給することができる。
(他の実施形態1)
次に、経皮投薬デバイスAの他の実施形態について説明する。
【0106】
図11、12に示すように、デバイス本体5は、アルミニウム製の薄いベースシート31の表面に合成樹脂シート32を貼り付け、合成樹脂シート32によってカプセル状の薬液充填部3を形成し、ベースシート31の裏側にニードル形成体2を補助シート22によって保持したものである。薬液充填部3を上から押すと、その圧力でベースシート31に形成した脆弱部が破れて開口し、薬液充填部3内の薬液がニードル形成体2上に移動する。ニードル形成体2の裏側に接着された補助シート22にはニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。
【0107】
デバイス本体5の裏側には引き剥がしシート24を介して角質層剥離システム6が連結されている。なお、引き剥がしシート24と角質層剥離システム6とは図6(b)と同様に構成されている。上記補助シート22と角質層剥離システム6との間に引き剥がしシート24が設けられている。
【0108】
なお、角質層剥離システム6と引き剥がしシート24は他の構成であってもよい。
【0109】
上記経皮投薬デバイスAを使用するときは、前述と同様に、角質層剥離システム6から剥離紙(図示せず)を剥離し、補助シート22のはみ出し部22aを指で押さえると共に、角質層剥離システム6の下面の粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。
【0110】
次に、引き剥がしシート24を皮膚30に沿って引き出す。これにより、角質層剥離システム6が、その粘着剤層6aに角質層30aが付着した状態で皮膚30から剥がれる。角質層剥離システム6が除去された後に、角質層30aが剥がされた位置にニードル形成体2が接触する。
【0111】
次に、図13に示されるように、薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31が破れてできた開口部23から薬液Mがニードル形成体2上に移動し、さらに通液孔4を通ってマイクロニードル集合部8および皮膚30の上にしみ出す。このように薬液充填部3を押すことにより、薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に投与できる。上記構成によれば、薬液の投与を迅速に行うことができる。
【0112】
なお、デバイス本体5を指で押さえるためのはみ出し部は、補助シート22ではなくベースシート31に設けてもよい。
(他の実施形態2)
次に、図14及び図15により、経皮投薬デバイスAのさらに他の実施形態を説明する。
【0113】
この経皮投薬デバイスAは、デバイス本体5と角質層剥離システム6とを、接続手段としての位置決めシート29を介して並べて連結したものである。
【0114】
デバイス本体5は、アルミニウム製の薄いベースシート31の表面に合成樹脂シート32を貼り付け、合成樹脂シート32によってカプセル状の薬液充填部3を膨出形成し、ベースシート31の裏側にニードル形成体2を補助シートによって保持したものである。薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31の脆弱部が破れて口が開き、薬液充填部3内の薬液がニードル形成体2上に移動する。
【0115】
ニードル形成体2の中央には通液孔4が貫通形成されている。また、ニードル形成体2の裏側に接着された補助シート22にはニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。この開口部26は通常は、剥離紙によって覆われている。
【0116】
デバイス本体5の一端に位置決めシート29が折りたたみ可能に連結されている。デバイス本体5と位置決めシート29との間の連結部33は、これらが折りたたみ可能となるように柔軟性を有する部材で形成されている。位置決めシート29には位置決め用の開口部35が形成されている。
【0117】
位置決めシート29の皮膚30と接触する部分に粘着剤層を設けることにより、位置決めシート29を皮膚の目的の位置に確実に固定することができる。位置決めシート29のデバイス本体5と反対側の端部に、角質層剥離システム6が折りたたみ可能に連結されている。角質層剥離システム6も、前述の角質層剥離システムと同様に、基材シート21の下面に粘着剤層6aを積層して形成されたものである。位置決めシート29と角質層剥離システム6との間の連結部34も柔軟性部材で形成されている。
【0118】
デバイス本体5又は角質層剥離システム6を、位置決めシート29側へ折りたたんだ時には、位置決めシート29の開口部35にそれぞれが臨む。
【0119】
上記経皮投薬デバイスAを使用するときは、図16(a)に示されるように、位置決めシート29の開口部35を皮膚30の所定位置に置き、デバイス本体5と角質層剥離システム6から剥離紙を剥離し、角質層剥離システム6を連結部34を中心として180°回動させ、その粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。次に、角質層剥離システム6を元の状態に折り返すことにより、角質層剥離システム6の粘着剤層6aに角質層30aが付着した状態で皮膚30から剥がす。
【0120】
角質層剥離システム6を剥がした後、図16(b)に示されるように、デバイス本体5を連結部33を中心として回動させ、角質層30aが剥がされた皮膚30面にデバイス本体5のニードル形成体2を接触させる。
【0121】
そこで、薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31が破れて薬液がニードル形成体2上に移動し、通液孔4を通ってマイクロニードル集合部8および皮膚30の上へしみ出す。薬液充填部3を押し離しするようにしても良い。薬液充填部3を加圧すると、マイクロニードルの先端から薬液が噴水のように噴出し、薬液はマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に投与される。
【0122】
以上のように、位置決めシート29の開口部35を皮膚の所定の位置に合わせ、この状態でデバイス本体5から薬液を投与するので、皮膚の狙った部位に正確に薬液を投与できる。
(他の実施形態3)
図17(a)(b)に示されるように、位置決めシート29の2辺又は3辺に角質層剥離システム6を連結するように構成してもよい。
【0123】
この実施形態では、角質層30aは2枚又は3枚の角質層剥離システム6によって剥離されるので、角質層30aを確実に剥離できる。しかも、角質層剥離システム6の1枚当たりの粘着力を小さくできる。
【0124】
位置決めシート29に設けた開口部35の形状は方形に限定されない。例えば、図18(a)のように、位置決めシート29および開口部35を三角形に形成してもよく、同図(b)のようにそれぞれを6角形にしてもよい。もちろん、位置決めシート29の全ての辺に角質層剥離システム6を連結する必要はない。
【0125】
上述の各実施例の経皮投薬デバイスAによれば、皮膚30は剥離された角質層30aの厚さ分だけ薄くなる。そのため、マイクロニードル1は角質層30aを貫通する必要がない。マイクロニードル1の高さを10〜1000μm(好ましくは50〜100μm)にすることで、すべての又はほとんどのマイクロニードル1が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達した状態に至ることが確認できた。
【0126】
そして、マイクロニードル集合部8には、マイクロニードル1が0.1〜20mm(好ましくは0.5〜1mm)ピッチで、1〜10000本設けられているので、薬液を効率的に表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給することができる。
【0127】
また、マイクロニードル1の長さを低くできるので、太くしなくても、具体的には裾野径がΦ10〜1000μm(好ましくは50〜200μm)、先端径が10〜100μであっても、十分な強度を確保することができ、薬液投与時に生体内でマイクロニードル1が折れたり破損して、体内にマイクロニードル1が残るのを未然に回避することができる。
【0128】
さらに、ニードル形成体2の表面が凸面状に形成されているから、皮膚30に押し付けたときに、マイクロニードル集合部8が集中的に強く押圧され、圧力が分散されることがない。従って、ほとんどのマイクロニードル1が皮膚30内に差し込まれ、薬液Mを効率的に皮膚30内に供給することができる。
【0129】
その結果、インスリン、麻酔薬などの薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することができる。
【0130】
しかも、角質層の剥離(ピーリング)処理には痛みがなく、マイクロニードル1を刺しても痛点まで達しないから、患者に対する負荷は非常に軽微である。
【0131】
なお、ニードル形成体2は円形以外に、方形、長円形、楕円形等であってもよい。また皮膚30との接触面であるニードル集合部8の表面は凸面に限らず、平面状に形成してもよい。また、マイクロニードル1の形状も上述のものに限定されない。
【0132】
さらに、針部は円錐台形状に限らず、三角錐台、四角錐台等であってもよい。さらに、高さ方向に、投与する薬液の通過用溝が切ってあってもよい。さらに、針部の先端付近からニードル形成体2の裏面まで貫通孔があってもよい。
(他の実施形態4)
図20〜図23は、さらに他の実施形態の経皮投薬デバイスを示したものである。
【0133】
このデバイスは、四角形状の開口部を有する四角形状の位置決めシート29と、該位置決めシート29の3辺に折り曲げ部50を介して連結された3つの該角質層剥離システム6と、該位置決めシート29の残りの1辺に折り曲げ部51を介して連結されたデバイス本体5と、を有する。
【0134】
それぞれの角質層剥離システム6は、基材シート21と、該基材シート21に積層された粘着剤層6aとを有し、該基材シート21が上記位置決めシート29から一体に延出されている。通常は、粘着剤層6aにライナー52が剥離可能に貼り付けられる。また、位置決めシート29の皮膚と接触する面にも粘着剤層54およびライナー55が設けられてもよい。さらに、位置決めシート29の皮膚と接触しない面にもライナー57付きの粘着剤層56を設けてもよい。
【0135】
デバイス本体5は、位置決めシート29から延出された延出片36上に接着されている。デバイス本体5は、延出片36に接着剤などを用いて貼り付け可能にしてもよく、あるいは延出片36に一体に形成してもよい。
【0136】
該デバイス本体5は、薬液が収容される袋状の薬液充填部3と、該薬液充填部3の外面に貼り付けられた複数のマイクロニードルを有するニードル形成体2とを有する。ニードル形成体2が貼り付けられた薬液充填部3の外面には、加圧により薬液が薬液充填部3からニードル形成体2の裏面側へ移動し得る脆弱部(図示せず)が形成されている。該脆弱部としては、薬液充填部3の厚みが薄くなったスリットあるいは孔で形成することができる。
【0137】
該デバイス本体5を位置決めシート29に折り重ね(又は折り曲げ)た際には、ニードル形成体2のマイクロニードルが該開口部35内に位置し、また該角質層剥離システム6を該位置決めシート29に折り重ねた際には該角質層剥離システム6の粘着剤層6aが該開口部35に位置するように構成されている。
【0138】
この実施形態の経皮投薬デバイスは次のようにして使用する。
【0139】
皮膚の所定位置に位置決めシート29を配置し、必要に応じて位置決めシート29の皮膚側面に設けた粘着剤層54を皮膚に貼り付け、次いで角質層剥離システム6を位置決めシート29の開口部35に折り重ねて皮膚に貼り付ける(図22)。角質層剥離システム6を皮膚から剥がすと、その粘着剤層6aに角質層が貼り付いた状態で角質層は剥離される。このように、角質層剥離システム6を皮膚面に貼り付けて剥離する操作を3枚の角質層剥離システム6について順次繰り返し、その後デバイス本体5を位置決めシート29に折り重ねる(図23)。ここで延出片36又は位置決めシート29の皮膚とは反対側に粘着剤層を設けることにより、延出片36を位置決めシート29に貼り付けることができる。この状態でデバイス本体5の薬液充填部3を指などで押さえると、薬液充填部3の脆弱部が破れて薬液が薬液充填部3からニードル形成体2側へ流れ、通液孔を通してマイクロニードルの表面および皮膚内へ投与される。
【0140】
なお、上記実施形態4では、デバイス本体5を位置決めシート29の延出片36上に接着させたが、延出片36をデバイス本体5を構成する薬液充填部3の一部としてもよい。つまり、延出片36に覆い片を被覆して袋状の薬液充填部3を構成し、延出片36又は覆い片にニードル形成体2を接着してもよい。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図2の形態において、外径Φ20mm、肉厚1mmのニードル形成体本体2aに、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径20μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1を、ピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0142】
このマイクロニードル1の先端側において、筒状体7の先端部に、開口部26を有するポリエチレン製の補助シート22を固定し、この補助シート22に図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着して経皮投薬デバイスを作成した。
【0143】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0144】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した後、親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与した。いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
(実施例2)
図2の形態において、外径Φ20mm、凸面形状(凸面のトップまでの肉厚が4mmでR39mm)のニードル形成体本体に、高さ100μm、裾野径がΦ70μm、先端径10μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0145】
このマイクロニードル1の先端側において筒状体の先端部に、開口部を有したポリエチレン製の補助シートを固定した。この補助シートに図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着して経皮投薬デバイスを作成した。
【0146】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0147】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した。親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与すると、いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
(実施例3)
図2の形態において、外径Φ20mm、肉厚1mmのニードル形成体本体に、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径20μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0148】
このマイクロニードル1の先端側において筒状体の先端部に、開口部を有したポリエチレン製の補助シートを固定した。この補助シートに図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着した経皮投薬デバイスを作成した。
【0149】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0150】
この経皮投薬デバイスを用いてピーリングシートにより角質層を除去した。次に、2種類のタンパク質ペルオキシターゼ(Sigma製)と卵白アルブミン(OVA)を生理食塩水に溶解した薬液1mgを皮膚に塗布した。
【0151】
ピーリングシートにより角質層を除去した皮膚にマイクロニードル1を押し付けて、24時間経過後に皮膚を観察したところ、角質層下の皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)にタンパク質ペルオキシターゼとOVAの存在を認め、角質層を貫通するマイクロニードルによる孔が開いていることが確認された。
【0152】
皮膚の断面をヘマトキシリン・エオシン染色切片で光学顕微鏡下に観察すると、マイクロニードル1の針が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達していたことがわかった。皮膚を連続切片により観察すると、マイクロニードル1の針で孔が開いていることがわかった。
(実施例4)
図20の形態において、45mm×25mmの袋状に成型したポリカーボネート製の薬液充填部3と、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径50μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで25本を有するニードル形成体2からなる、デバイス本体5を作成した。
【0153】
このデバイス本体5を、60mm×60mmの延出片36の中央部に接着剤にて固定した。この延出片36を60mm×60mmの四角形の中央部に20mm×20mmの開口部35を有した位置決めシート29の一辺に接続した。位置決めシート29と延出片36は10μm厚のポリエステルフィルム製である。また、位置決めシート29の両面には、粘着剤層54、56を設けた。さらに、位置決めシート29の残りの三辺に10mm×20mmの折り曲げ部50を介して50mm×50mmのピーリングシートを接続した。ピーリングシートの粘着剤層6aには、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。ピーリングシートの基材シート21及び折り曲げ部50は、10μm厚のポリエステルフィルムである。
【0154】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した。親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与すると、いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
【符号の説明】
【0155】
1 マイクロニードル
2 ニードル形成体
4 通液孔
5 デバイス本体
6 角質層剥離システム
22 補助シート
24 引き剥がしシート
26 開口部
30 皮膚
38 接続手段
A 経皮投薬デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を経皮投与するための経皮投薬デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経口投与できない薬液、薬剤(以下、これらを薬液という。)の投与には注射が用いられていたが、注射を用いる方法は身体への侵襲の程度が大きく、しかも痛みを伴うという問題があった。また、薬液を含むパッチ剤などによる経皮投与の方法も用いられてきたが、この方法は薬効が発現するまでに時間がかかること、および使用可能な薬液の種類が限られるという問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決するために、近時、マイクロニードルやマイクロブレードなどと呼ばれる技術が開発されてきている。
【0004】
マイクロニードルを用いる薬液投与方法(特開2006−149818号公報、特許文献1)は、薬液を表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に直接投与することで、薬効時間を短縮することを目的とするものである。また、同様の原理により、インスリン、麻酔薬等の薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することを目的として利用されることもある。
【0005】
マイクロニードルは、一般に先端径が10〜50μm、高さが100〜200μm、裾野径が100〜200μmの微小な針であり、アスペクト比(高さ/裾野径)の大きいマイクロ構造体である。そのため、マイクロニードルを用いる薬液投与方法は、皮膚の角質層を貫通するものの痛点にまでは届かないため、人体への挿入時に痛みを感じないという利点がある。このように、これまでのマイクロニードルを用いる方法は、注射器による身体への侵襲、特に針の突き刺しによる痛みの緩和に重点を置くものであった。
【0006】
しかしながら、マイクロニードルは上述のように極めて微小ではあるが、薬液を投与するためにはまず表皮の表層にある角質層を貫通しなければならない。そのため、マイクロニードルには角質層を貫通するに十分な長さ(又は高さ)が必要とされる。しかも、角質層は比較的硬いと同時に弾性も持っているので、角質層を貫通するためには、マイクロニードルに角質層を突き抜けるだけの細さも要求される。ところが、長さと細さを同時に要求すると、マイクロニードルの強度が不十分となる。薬液投与時に生体内でマイクロニードルが折れ、あるいは破損する場合があるので、体内にマイクロニードルが残らないようにする必要がある。このように、長くて細くて十分な強度を有するマイクロニードルを製造することは容易ではない。
【0007】
特開2005−334594号公報(特許文献2)には、粘着剤等を使用して皮膚の角質を剥離し、皮膚表面の状態を均一で安定した状態とした上で、カーボンナノチューブ突起を有する薬剤投与パッチを皮膚に押し付け、薬剤の経皮輸送を行う薬剤投与パッチが提案されている。
【0008】
しかし、この方法では、粘着剤等を使用して皮膚の角質を剥離した後、突起を有する薬剤投与パッチを皮膚に押し付けるようにしているので、投薬操作が不便であり、また投薬場所を正確に位置合わせする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−149818号公報
【特許文献2】特開2005−334594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、マイクロニードルの長さが短い場合でも、薬液を確実に経皮投与できる経皮投薬デバイスを提供することをその目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、操作が簡単で薬液を経皮投与でき、しかも角質層を剥離した皮膚に確実に薬液を経皮投与できる経皮投薬デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は以下を特徴とする。
【0013】
項目1.表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
角質層剥離システムと 、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する接続手段と、を有する経皮投薬デバイスであって、
該角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、該接続手段により該角質層剥離システムが該デバイス本体に接続されている、経皮投薬デバイス。
【0014】
項目2.前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有する、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0015】
項目3.前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられている、項目1又は2に記載の経皮投薬デバイス。
【0016】
項目4.前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が該ベースシートに形成されている、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0017】
項目5.前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されている、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0018】
項目6.前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能である、項目5に記載の経皮投薬デバイス。
【0019】
項目7.前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0020】
項目8.前記引き剥がしシートが、端部が折り返された第2のシートと、端部が折り返された第3のシートとからなり、第2のシートの折り返し部が前記補助シートと接続され、該第3のシートの折り返し部が前記角質層剥離システムの基材シートを兼用している、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0021】
項目9.前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシート、該第1のシートの両側面に配置される第2のシートおよび第3のシートを有し、該それぞれのシートの端部が折り曲げられ、該折り曲げ部にて第1〜第3のシートが接着され、該第3のシートが前記角質層剥離システムに接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0022】
項目10.前記引き剥がしシートが、長さの長いシートと、長さの短いシートと、を有し、該長いシートが折り曲げられ、この折り曲げ部に折り曲げた短いシートの一方が接着され、短いシートの他方が角質層剥離システムに接続されている、項目6に記載の経皮投薬デバイス。
【0023】
項目11.前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、項目5に記載の経皮投薬デバイス。
【0024】
項目12.前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る、項目1に記載の経皮投薬デバイス。
【0025】
項目13.表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る角質層剥離システムと、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する位置決めシートと、を有する経皮投薬デバイスであって、
該位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部に該デバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に該角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、
該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されている経皮投薬デバイス。
【0026】
項目14.前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0027】
項目15.前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の三辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0028】
項目16.前記位置決めシートから延出片が延出され、該延出片上に前記デバイス本体が接着されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0029】
項目17.前記位置決めシートから延出片が延出され、
前記デバイス本体が、該延出片と、該延出片の一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該延出片の他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該延出片に、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0030】
項目18.前記デバイス本体が、薬液を収容する薬液充填部と該薬液充填部の外面に設けられたニードル形成体とを有し、該ニードル形成体の外表面には複数のマイクロニードルが形成され、該ニードル形成体に該表面から背面に走る通液孔が設けられ、該薬液充填部を加圧した際に、該薬液充填部が破断して内部の薬液を該ニードル形成体の背面に供給し得る脆弱部が薬液充填部に設けられている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【0031】
項目19.前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、項目13に記載の経皮投薬デバイス。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0033】
請求項1の発明によれば、角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、接続手段により角質層剥離システムがデバイス本体に接続されている。
【0034】
よって、マイクロニードルは角質層を貫通する必要がない。皮膚は剥離された角質層の厚さ分だけ薄くなる。このため、すべての又はほとんどのマイクロニードルが表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達した状態に至り、薬液を効率的に表皮の生きた細胞層又は血液中に投与することができる。
【0035】
また、角質層の剥離(ピーリング)処理には痛みが少なく、マイクロニードルを刺しても、患者に対する負荷は非常に軽微である。また、このピーリングにより、ランゲルハンス細胞が活性化される。
【0036】
なお、角質層は常に一定のサイクルで古いものは剥がれて新しいものに生まれ変わっているので、人工的にこの部分を除去するのは容易であり、痛みが伴うこともない。従って、患者に対する負荷は非常に軽微である。
【0037】
さらに、角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域にマイクロニードルが配置されることにより、角質層を剥離した皮膚表面に確実に投薬することができる。
【0038】
請求項2の発明によれば、前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有するので、注射器から針を使わずにニードル形成体に薬液を供給して皮膚に投与することができる。
【0039】
請求項3の発明によれば、前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられているので、注射器から針を使わずに、ニードル形成体に薬液を供給して皮膚に投与することができる。また、特別の器具を使わなくても、皮膚を押し広げることにより、皮膚の表面を薄く延ばして薬液の投与を効率的に行うことができる。
【0040】
請求項4の発明によれば、前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該ベースシートに該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されているので、角質層剥離システムを剥がした後の皮膚にデバイス本体を押し当てた後、薬液充填部を押してベースシートを破り、そこから漏れた薬液をニードル形成体に供給して皮膚に投与することができる。
【0041】
請求項5の発明によれば、前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されているので、請求項1の発明による効果が得られると共に、補助シートの一部に指で押さえる押さえ片を設け又は補助シートの一部に皮膚に接着する接着剤を塗布することにより、指で押さえ又は接着剤により接着することで、ニードル形成体を位置決めすることができる。
【0042】
請求項6の発明によれば、前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能であるので、角質層剥離システムを皮膚に押し当てた後に引き剥がしシートを引くと、角質層剥離システムが皮膚から剥がれて角質層が除去される。残った補助シートの開口部からニードル形成体を角質層が除去された皮膚に押し当ててマイクロニードルを刺し、デバイス本体の薬液充填部からの薬液を通液孔を通してニードル形成体のマイクロニードルから皮膚内に投与することができる。従って、引き剥がしシートを引き剥がすことにより、角質層の除去と補助シートの除去を同時に行うことができ、角質層の除去後ただちに薬液を投与して迅速に処理することができる。さらに投与の直前まで補助シートでニードル及びニードル形成体が覆われることにより、投与の直前までニードルの無菌性を維持することができる。
【0043】
請求項7の発明によれば、前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されているので、引き剥がしシートの他方の端部を引き出すだけで、皮膚から角質層剥離システムを剥がすと同時に、補助シートを皮膚上に当てることができるから、薬液を迅速に投与することができる。
【0044】
請求項11の発明によれば、前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられているので、ニードル形成体の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0045】
請求項12の発明によれば、前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得るので、角質層剥離システムの構成が簡単となる。
【0046】
請求項13の発明によれば、位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部にデバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されているので、位置決めシートの開口部を皮膚の所定位置に当てた後、角質層剥離システムを折り曲げて開口部内の皮膚に押し当てて角質層を剥がした後、デバイス本体を折り曲げて開口部内の皮膚に押し当て、さらに薬液充填部を押して、ベースシートを破り、そこから漏れた薬液をニードル形成体に供給して皮膚に投与することができる。
【0047】
請求項14の発明によれば、前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されているので、角質層が剥離された皮膚に確実にデバイス本体を接触させることができる。また、投薬操作も簡単である。
【0048】
請求項15の発明によれば、前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の3辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されているので、3枚の角質層剥離システムによって確実に角質層を剥離できる。
【0049】
請求項19の発明によれば、前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられているので、ニードル形成体の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0050】
このように、マイクロニードルにとって最も問題であった角質層を突き通す必要がないので、マイクロニードルの高さを低くすることができ、マイクロニードルの径を細く形成した場合でも十分な強度を確保することができる。その結果、インスリン、麻酔薬等の薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することができる。
【0051】
マイクロニードル集合部を設けた表面が凸面状(曲率半径Rが10〜100mm、好ましくは30〜40mm)に形成されていると、マイクロニードル集合部を人の皮膚に押し付けたときに、全て又は一部のマイクロニードルがムラなく、均等に入り込むので、効率がよい。また、裏面から表面又は凸面に1個以上の通液孔を貫通形成したので、裏側から薬液を供給すると、薬液は表面側に移動し、凸面状の表面に沿って流れて又は凸面の途中から流出して、マイクロニードルの基部に移動する。従って、薬液をマイクロニードルに沿って表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る経皮投薬デバイスの斜視図。
【図2】上記経皮投薬デバイスの断面図。
【図3】(a)(b)はそれぞれニードル形成体の側面図及び平面の拡大図。
【図4】ニードル形成体の要部の拡大断面図。
【図5】マイクロニードルの拡大断面図。
【図6】(a)(b)(c)は引き剥がしシートと角質層剥離システムとの連結態様の形態を示す断面図。
【図7】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図8】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図9】経皮投薬デバイスの他の引き剥がしシートを使用したときの要部の斜視図。
【図10】上記経皮投薬デバイスの使用途中を示す断面図。
【図11】経皮投薬デバイスの他の形態の斜視図。
【図12】経皮投薬デバイスの断面図。
【図13】上記経皮投薬デバイスの薬液投与時の断面図。
【図14】経皮投薬デバイスのさらに他の形態の平面図。
【図15】上記経皮投薬デバイスの断面図。
【図16】(a)(b)は引き剥がしシートの他の連結態様を示す断面図。
【図17】(a)(b)は引き剥がしシートの他の連結態様を示す平面図。
【図18】(a)(b)は引き剥がしシートと開口部の他の態様を示す平面図。
【図19】マイクロニードルに設けた通駅孔の種々の態様を示す拡大断面図。
【図20】経皮投薬デバイスのさらに他の形態の平面図。
【図21】図20で示した経皮投薬デバイスの断面図。
【図22】図20で示した経皮投薬デバイスの作用説明図。
【図23】図20で示した経皮投薬デバイスの作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
図1及び図2は本発明による経皮投薬デバイスAの斜視図及びその縦断面図を示す。
【0055】
この経皮投薬デバイスAは、デバイス本体5と、角質層剥離システム6と、該角質層剥離システム6と該デバイス本体5とを接続するための接続手段38と、を備えている。
【0056】
該デバイス本体5は、表面に複数のマイクロニードル1が形成され、表面から背面に走る通液孔4が設けられたニードル形成体2と、該ニードル形成体2の背面に薬液を供給する薬液充填部3とを備えている。
【0057】
該角質層剥離システム6は、基材シート21と、該基材シート21に積層された粘着剤層6aとを有し、該粘着剤層6aによって皮膚表面の角質層30aを剥離し得るものである。
【0058】
該角質層剥離システム6の粘着剤層6aによって角質層30aを剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体5のニードル形成体2のマイクロニードル1が配置できるよう、該角質層剥離システム6が該デバイス本体5に接続手段38によって接続されている。
【0059】
具体的には、経皮投薬デバイスAは、表面に複数のマイクロニードル1を形成すると共に、表面から背面にかけて通液孔4を有するニードル形成体2と、該ニードル形成体2の背面に薬液Mを供給し得る薬液充填部3とを備えたデバイス本体5と、基材シート21上に皮膚表面の角質層30aを除去する粘着剤層6aを設けた角質層剥離システム6とを有し、デバイス本体5と角質層剥離システム6とは、接続手段38としての補助シート22及び引き剥がしシート24を介して連結されている。
【0060】
なお、連結とは接着の他、粘着によって緩やかに連結される場合も含まれるものとする。
【0061】
詳細は次のとおりである。
(デバイス本体のニードル形成体)
デバイス本体5はニードル形成体2と薬液充填部3とを筒状体7に備えてなるものである。
【0062】
上記ニードル形成体2は、図2〜図4に示すように、表面が凸面状に形成され、直径又は一辺が10〜50mm(好ましくは20〜40mm)の円板状又は角板状の部材で、表面の頂部には複数のマイクロニードル1を集合配置してなるマイクロニードル集合部8が設けられている。マイクロニードル集合部8は曲率半径Rが10〜100mm(好ましくは10〜40mm、さらに好ましくは30〜40mm)の凸面となっている。
【0063】
図5に示すように、マイクロニードル1は円錐台状に形成され、裾野径L1がΦ10〜1000μm(好ましくは50〜200μm)、針の先端径L2が10〜100μm、長さ(高さ)Hが10〜1000μm(好ましくは50〜100μm)となるように形成されている。
【0064】
ニードル形成体2の表面には、高さが10〜1000μm(50〜100μm)の複数のマイクロニードル1を集合配置してなるマイクロニードル集合部8が設けられている。
【0065】
また、図2及び図3に示すように、上記マイクロニードル集合部8には、マイクロニードル1が0.1〜20mm(好ましくは0.5〜1mm)ピッチで、1〜1000本(好ましくは100〜650本)程度設けられている。
【0066】
さらに、ニードル形成体2の中央部には裏面から表面又は凸面に1箇所以上の通液孔4が貫通形成されている。その孔径は5mm以下で、上からの薬液が下に垂れ落ちず、しみ出す程度の大きさとすればよい。通液孔4の位置は、中央部に限定されない。マイクロニードル集合部8の周囲に設けられてもよい。
【0067】
また、図19(a)に示すように、通液孔4はマイクロニードル1を通過するように形成しても良く、あるいは図19(b)に示すように、マイクロニードル1を通過しないでニードル形成体2の本体2aのみを通過する位置に形成しても良い。通液孔4がマイクロニードル1を通過する場合は、マイクロニードル1の先端部を通過しても良く、あるいは図19(d)に示すように、マイクロニードル1の先端部に対してオフセットした位置に通液孔4を形成しても良い。つまり、マイクロニードル1の斜面を通液孔4が通るように形成しても良い。通 液孔4は、図19(c)に示すように、1個設けても良く、あるいは2個以上設けても良い。
【0068】
なお、上記マイクロニードル1及びニードル形成体2は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂や生体適合性樹脂等を材料として、射出成形や低圧鋳造することによって一体に製造すればよい。
【0069】
なお、金型を用いてマイクロニードル1及びニードル形成体2を製造する場合には、金型にミクロンオーダーの孔を多数あける必要があるので、ミクロンバイトによる切削加工又はポンチングツールによる鍛造加工又は放電加工又はエッチング加工又は電鋳加工等によって金型を製造するのが良い。
【0070】
マイクロニードル1に形成した通液孔4の径は、Φ1〜100μmが好ましく、さらに好ましくはΦ40〜80μmである。通液孔4の径が小さい場合(例えば、Φ50μm以下の場合)は、切削での穴あけ、又はレーザー又は金型によって通液孔4を形成することができる。通液孔4が大きい場合(例えば、Φ50μm以上の場合)は、上記のとおり金型、レーザーを用い、又は切削での穴あけによって通液孔4を形成することができる。
【0071】
また、マイクロニードル1は、シリカのような無機材料やステンレスのような金属で形成することもでき、その場合、公知のエッチング工法、プレス工法、インサート成形、接着、その他工法によってもマイクロニードルを形成すればよい。
(デバイス本体)
次に、上記ニードル形成体2は経皮投薬デバイスAに取り付けて使用される。
【0072】
この投薬デバイスAは、筒状体7の上部から注射器14を挿入し、台座10にねじ止め固定し、薬液をマイクロニードル集合部8にしみ込ませた後、注射器14をポンピングすることによって、台座10に溶着部で溶着されたニードル形成体2のマイクロニードル1が皮膚に抜き刺しされ、上記薬液を表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給するようにしたものである。
【0073】
すなわち、ニードル形成体2は、筒状体7の内側下部に移動可能に設けられた台座10に一体的に固定されている。台座10は、中央に筒部11を有する短円筒状に形成され、筒部11の先端外側には雄ネジ12が形成されている。雄ネジ12は注射器14の先端の注射針取付部15の外周に形成された外周縁16の内側の雌ネジ13に螺合可能な大きさに形成されている。
【0074】
台座10の下面にはニードル形成体2が溶着固定されている。そして、上記台座付きニードル形成体2は筒状体7に嵌合されている。
【0075】
また、上記筒状体7には、中間に係合片19aを残した開口部19が形成され、上記台座10の上部外側には棒状又は丸状の係合部41が突出形成されている。この係合部41は上記係合片19aの上に係合している。これにより、上記係合片19aの弾性によって、台座付きニードル形成体2は上方に付勢され、一定範囲で上下に移動可能に設けられている。
【0076】
筒状体7には、上記台座付きニードル形成体2を上下に移動可能に収容する収容部17が形成され、該収容部17の上部は注射器14のシリンダ18を挿入可能な大きさに形成されている。また、筒状体7の下端開口部には、筒状体7を皮膚30に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡大手段としての環状縁20が形成されている。なお、注射器14のシリンダ18とピストン27により薬液充填部3が構成される。
【0077】
デバイス本体5のニードル形成体2側は、合成樹脂、布材等で形成された補助シート22で覆われ、補助シート22は上記筒状体7の環状縁20の下端に接着固定されている。補助シート22には上記ニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。補助シート22の端部22aは角質層剥離システム6の端部からはみ出している。
【0078】
以下、さらに詳細に説明する。
【0079】
上記デバイス本体5は、薬液が充填される注射器14が移動可能に挿入される筒状体7と、該注射器14の先端部に取り付けられるニードル形成体2と、を有する。
【0080】
該筒状体7の上端部にはフランジが形成され、筒状体7の下部にはやや径の大きくなった収容部17が形成され、さらにその収容部17の下端部には皮膚拡張手段20が傾斜して一体に設けられている。
【0081】
該ニードル形成体2は、注射器14の先端に台座10を介して接続されている。このニードル形成体2は、表面が凸面状に形成された略レンズ状のニードル形成体本体2aと、該ニードル形成体本体2aの表面の少なくとも中央部に配置された複数のマイクロニードル1と、を有する。マイクロニードル1は、ニードル形成体本体2aの周縁を除いて該本体の表面全面に配置してもよい。
【0082】
該ニードル形成体本体2aの中央部に該本体の裏面側から表面側に走る1個以上の薬液投下用孔4が貫通して形成されている。
【0083】
該台座10は略円筒状に形成され、筒部11と、外筒と、該筒部11および外筒を連結する環状の連結体と、外筒から外方へ延設された係合部41と、を有する。該筒部11内に連通孔が形成されている。連結体の下面にニードル形成体2が固定され、該ニードル形成体2に形成した薬液投与用孔4と連通孔とが連続する。
【0084】
図2に示したように、筒部11の端部に雄ネジ12が形成され、この雄ネジ12に上記したように注射器14の先端に形成した雌ネジ13が螺合される。
【0085】
注射器14の先端部に形成された収容部17に開口部19が対向する位置にそれぞれ形成されている。この開口部19の周囲の一部から係合片19aが水平方向へ延設されている。そして、上記台座10の係合部41がこの係合片19aに係合するように開口部19内に挿入されている。従って、係合片19aが上下方向へ弾性変形し得るので、台座10は収容部17内で上下方向へ移動可能である。
【0086】
筒状体7の下部を皮膚表面に当て、注射器14を皮膚に対して押圧すると、その下端に設けた台座10およびニードル形成体2が下方へ移動し、マイクロニードル1が皮膚へ侵入するが、注射器14への押圧力を解除すると、係合片19aの復原力によって注射器14は上方へ押され、マイクロニードル1は皮膚から抜かれる。この操作を繰り返す(ポンピングする)ことにより、マイクロニードル1は皮膚へ刺し通したり、皮膚から抜かれたりする。
(角質層剥離システム)
投薬箇所は皮膚である。あらかじめその部分の皮膚の角質層30aを可能な限り角質層剥離システム6によって除去しておく。角質層30aは自然の状態で常に古いものは剥がれてアカとなり、新しいものに生まれかわっているので、人工的にこの部分を剥がすのは容易であり、痛みが伴うこともない。角質層30aの厚さは10〜20μmであるが、年齢や男女等によって多少異なる。角質層30aの弾力も同様である。
【0087】
角質層剥離システム6としては、基材シート21上に皮膚表面の角質層30aを除去するための粘着剤層6aを設けたピーリングシートを用いることが望ましい。
【0088】
該ピーリングシートは、皮膚に粘着して表面の角質層30aを剥離するため、基材シート21の下面に粘着剤層6aを積層した部材である。基材シート21としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル等で構成されたポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性エラストマー樹脂等からなるプラスチックフィルム、各種合成繊維及び/又は天然繊維からなる織物、編物及び不織布、上質紙、グラシン紙、コート紙等の紙やこれらの積層体を用いることができる。基材シート21の平均厚さは10〜800μmであるのが好ましい。
【0089】
粘着剤層6aは、生体表面に粘着後、生体表面から除去することにより、該生体(皮膚)表面から古い角質層30aを除去する機能を有する。粘着剤は、その粘着力により角質層30aを皮膚表面から除去できるものであればよく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等があげられる。また、粘着剤層6aは、ベークライトに貼付して5分後のJIS Z0237に準拠して測定される粘着力(モード:180°剥離、剥離速度:300mm/min、貼付時間:5分)が、2〜20N/25mmであるものが好ましい。また、このピーリングシート以外にも、確実に角質を除去できる他の角質層剥離システム6を使用することができる。
(接続手段)
上記角質層剥離システム6の粘着剤層6aによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、デバイス本体5のニードル形成体2のマイクロニードル1が配置できるよう、接続手段38により該角質層剥離システム6が該デバイス本体5に接続されている。
【0090】
図2に示す実施形態では、デバイス本体5の補助シート22とピーリングシート6との間に接続手段としての引き剥がしシート24が設けられている。
【0091】
該引き剥がしシート24は合成樹脂、布材等からなる。該引き剥がしシート24は、該補助シート22の裏面に剥ぎ取り可能に取り付けられていると共に、上記角質層剥離システム6を一端から他端に引き剥がし可能に構成されている。
【0092】
図2に示すように、引き剥がしシート24は、第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bと、第3の引き剥がしシート24cとを有する。該第2の引き剥がしシート24bと第3の引き剥がしシート24cの端部は折り返されて第1の引き剥がしシート24aは他の引き剥がしシート24b、24cからはみ出し、該はみ出し部25は外から手で摘んで該第1の引き剥がしシート24aを引き出せるようになっている。
【0093】
該第2の引き剥がしシート24bは補助シート22の裏面と一体に接着され、該第3の引き剥がしシート24が角質層剥離システム6と一体に接着されている。
【0094】
なお、引き剥がしシート24と角質層剥離システム6の構成は、上述の形態に限定されない。引き剥がしシート24は、補助シート22の裏面から剥ぎ取り可能で、上記角質層剥離システム6を皮膚から引き剥がし可能に構成されていればよい。第3の引き剥がしシート24cの一部は、角質層剥離システム6の基材シート21を兼用するようにしてもよい。引き剥がしシート24の他の実施形態を図6に示す。
【0095】
例えば、図6(a)に示される引き剥がしシート24は、第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bとからなる。第1の引き剥がしシート24aと、第2の引き剥がしシート24bの端部は、それぞれ反対側に折り返されている。第1の引き剥がしシート24aの折り返し部は上記補助シート22の裏面に一体に接着され、第2の引き剥がしシート24bの折り返し部は角質層剥離システム6に一体に接着されている。上記形態においては、引き剥がしシート24の一部と角質層剥離システム6の基材シート21とは兼用されている。
【0096】
図6(b)に示すように、引き剥がしシート24を各端部が折り曲げられた3枚のシート24a、24b、24cで構成してもよい。3枚のシート24a、24b、24cの折り曲げられた各端部が接着されている。
【0097】
図6(c)に示すように、一枚の長いシート24aを折り曲げ、この折り曲げ部に、短いシート24bの折り曲げた一方を接着し、他方を角質層剥離システム6の端部に接着してもよい。
【0098】
補助シート22と引き剥がしシート24の接着は、接着剤によって接着することができる。補助シート22の皮膚と接触する側に粘着剤を適宜設けても良い。
その場合、さらに、引き剥がしシートの補助シートと接触する側に剥離処理を施すことによって、引き剥がしに伴い粘着剤面が露出し、補助シートを皮膚の目的の位置に確実に固定することができる。
(投薬方法)
上記皮膚投薬デバイスAを使用するときは、まず筒状体7から注射器14を外して、その注射器14のピストン27を引き出し、シリンダ(薬液充填部3)の内部に薬液Mを注入充填する。そして、注射器14を上に向けて筒状体7に挿入し、台座10の筒部11の雄ネジ12を注射器14の先端外周縁16の雌ネジ13に螺合させることにより、注射器14の先端の注射針取付部15を台座10に取り付ける。これにより、上記注射針の取付部15と台座10の筒部11とは連通する(図2)。
【0099】
次に、図7に示されるように、角質層剥離システム6から剥離紙(図示せず)を剥離し、角質層剥離システム6のの粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。
【0100】
次に、補助シート22のはみ出し部22aを皮膚上に指で押さえ(補助シート22の下面に設けた粘着剤により皮膚に固定してもよい)、引き剥がしシート24のはみ出し部25を摘んで皮膚30に沿って引き出す。これにより、第2の引き剥がしシート24bが補助シート22から外れ、また第3の引き剥がしシート24cと共に角質層剥離システム6が皮膚30から剥がされる。そのとき粘着剤層6aに角質層30aが付着して剥がれる。
【0101】
角質層剥離システム6を除去した後、図8に示されるように、角質層30aが剥がされた皮膚30の位置に補助シート22の開口部26が臨むので、筒状体7の下部のニードル形成体2を皮膚30に接触させることができる。
【0102】
次に、投薬デバイスAの先端を皮膚30の角質層30aを剥がした部分に当て、注射器14のピストン27を押して薬液Mをシリンダ18から通液孔4を通してマイクロニードル集合部8および皮膚の上へしみ出させる。そして、注射器14のピストン27をポンピングすることにより、薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給する。また、ポンピングにより、筒状体7の下端開口の環状縁20は皮膚30に押し付けられるので、皮膚30が押し広げられ、薄く引き延ばされ、より確実にマイクロニードル1が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に入り込んで薬液Mを投与できると共に、環状縁20や補助シート22の開口部26の縁が皮膚30に密着することにより、薬液Mが投与中に外に流れ出ることを防ぐことができる。
【0103】
なお、台座付きニードル形成体2は適宜の手段によって筒状体7に対して上下に作動できるようにするのが好ましい。
【0104】
図9及び図10は、引き剥がしシート24の図6(a)の実施形態を採用した場合の経皮投薬デバイスの一部の斜視図である。
【0105】
この場合も補助シート22のはみ出し部22aを皮膚上に指で押さえ、引き剥がしシート24を皮膚30に沿って引き出すことにより、第1の引き剥がしシート24aが補助シート22から外れ、第2の引き剥がしシート24bと共に角質層剥離システム6が角質層30aとともに皮膚30から剥がされる。その後、角質層30aが剥がされた位置に補助シート22の開口部26が臨むので、前述と同様に注射器14から薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に供給することができる。
(他の実施形態1)
次に、経皮投薬デバイスAの他の実施形態について説明する。
【0106】
図11、12に示すように、デバイス本体5は、アルミニウム製の薄いベースシート31の表面に合成樹脂シート32を貼り付け、合成樹脂シート32によってカプセル状の薬液充填部3を形成し、ベースシート31の裏側にニードル形成体2を補助シート22によって保持したものである。薬液充填部3を上から押すと、その圧力でベースシート31に形成した脆弱部が破れて開口し、薬液充填部3内の薬液がニードル形成体2上に移動する。ニードル形成体2の裏側に接着された補助シート22にはニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。
【0107】
デバイス本体5の裏側には引き剥がしシート24を介して角質層剥離システム6が連結されている。なお、引き剥がしシート24と角質層剥離システム6とは図6(b)と同様に構成されている。上記補助シート22と角質層剥離システム6との間に引き剥がしシート24が設けられている。
【0108】
なお、角質層剥離システム6と引き剥がしシート24は他の構成であってもよい。
【0109】
上記経皮投薬デバイスAを使用するときは、前述と同様に、角質層剥離システム6から剥離紙(図示せず)を剥離し、補助シート22のはみ出し部22aを指で押さえると共に、角質層剥離システム6の下面の粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。
【0110】
次に、引き剥がしシート24を皮膚30に沿って引き出す。これにより、角質層剥離システム6が、その粘着剤層6aに角質層30aが付着した状態で皮膚30から剥がれる。角質層剥離システム6が除去された後に、角質層30aが剥がされた位置にニードル形成体2が接触する。
【0111】
次に、図13に示されるように、薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31が破れてできた開口部23から薬液Mがニードル形成体2上に移動し、さらに通液孔4を通ってマイクロニードル集合部8および皮膚30の上にしみ出す。このように薬液充填部3を押すことにより、薬液Mをマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に投与できる。上記構成によれば、薬液の投与を迅速に行うことができる。
【0112】
なお、デバイス本体5を指で押さえるためのはみ出し部は、補助シート22ではなくベースシート31に設けてもよい。
(他の実施形態2)
次に、図14及び図15により、経皮投薬デバイスAのさらに他の実施形態を説明する。
【0113】
この経皮投薬デバイスAは、デバイス本体5と角質層剥離システム6とを、接続手段としての位置決めシート29を介して並べて連結したものである。
【0114】
デバイス本体5は、アルミニウム製の薄いベースシート31の表面に合成樹脂シート32を貼り付け、合成樹脂シート32によってカプセル状の薬液充填部3を膨出形成し、ベースシート31の裏側にニードル形成体2を補助シートによって保持したものである。薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31の脆弱部が破れて口が開き、薬液充填部3内の薬液がニードル形成体2上に移動する。
【0115】
ニードル形成体2の中央には通液孔4が貫通形成されている。また、ニードル形成体2の裏側に接着された補助シート22にはニードル形成体2に対応する位置に開口部26が形成されている。この開口部26は通常は、剥離紙によって覆われている。
【0116】
デバイス本体5の一端に位置決めシート29が折りたたみ可能に連結されている。デバイス本体5と位置決めシート29との間の連結部33は、これらが折りたたみ可能となるように柔軟性を有する部材で形成されている。位置決めシート29には位置決め用の開口部35が形成されている。
【0117】
位置決めシート29の皮膚30と接触する部分に粘着剤層を設けることにより、位置決めシート29を皮膚の目的の位置に確実に固定することができる。位置決めシート29のデバイス本体5と反対側の端部に、角質層剥離システム6が折りたたみ可能に連結されている。角質層剥離システム6も、前述の角質層剥離システムと同様に、基材シート21の下面に粘着剤層6aを積層して形成されたものである。位置決めシート29と角質層剥離システム6との間の連結部34も柔軟性部材で形成されている。
【0118】
デバイス本体5又は角質層剥離システム6を、位置決めシート29側へ折りたたんだ時には、位置決めシート29の開口部35にそれぞれが臨む。
【0119】
上記経皮投薬デバイスAを使用するときは、図16(a)に示されるように、位置決めシート29の開口部35を皮膚30の所定位置に置き、デバイス本体5と角質層剥離システム6から剥離紙を剥離し、角質層剥離システム6を連結部34を中心として180°回動させ、その粘着剤層6aを皮膚30に粘着させる。次に、角質層剥離システム6を元の状態に折り返すことにより、角質層剥離システム6の粘着剤層6aに角質層30aが付着した状態で皮膚30から剥がす。
【0120】
角質層剥離システム6を剥がした後、図16(b)に示されるように、デバイス本体5を連結部33を中心として回動させ、角質層30aが剥がされた皮膚30面にデバイス本体5のニードル形成体2を接触させる。
【0121】
そこで、薬液充填部3を上から押すと、ベースシート31が破れて薬液がニードル形成体2上に移動し、通液孔4を通ってマイクロニードル集合部8および皮膚30の上へしみ出す。薬液充填部3を押し離しするようにしても良い。薬液充填部3を加圧すると、マイクロニードルの先端から薬液が噴水のように噴出し、薬液はマイクロニードル1に沿って表皮の生きた細胞層に投与される。
【0122】
以上のように、位置決めシート29の開口部35を皮膚の所定の位置に合わせ、この状態でデバイス本体5から薬液を投与するので、皮膚の狙った部位に正確に薬液を投与できる。
(他の実施形態3)
図17(a)(b)に示されるように、位置決めシート29の2辺又は3辺に角質層剥離システム6を連結するように構成してもよい。
【0123】
この実施形態では、角質層30aは2枚又は3枚の角質層剥離システム6によって剥離されるので、角質層30aを確実に剥離できる。しかも、角質層剥離システム6の1枚当たりの粘着力を小さくできる。
【0124】
位置決めシート29に設けた開口部35の形状は方形に限定されない。例えば、図18(a)のように、位置決めシート29および開口部35を三角形に形成してもよく、同図(b)のようにそれぞれを6角形にしてもよい。もちろん、位置決めシート29の全ての辺に角質層剥離システム6を連結する必要はない。
【0125】
上述の各実施例の経皮投薬デバイスAによれば、皮膚30は剥離された角質層30aの厚さ分だけ薄くなる。そのため、マイクロニードル1は角質層30aを貫通する必要がない。マイクロニードル1の高さを10〜1000μm(好ましくは50〜100μm)にすることで、すべての又はほとんどのマイクロニードル1が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達した状態に至ることが確認できた。
【0126】
そして、マイクロニードル集合部8には、マイクロニードル1が0.1〜20mm(好ましくは0.5〜1mm)ピッチで、1〜10000本設けられているので、薬液を効率的に表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に供給することができる。
【0127】
また、マイクロニードル1の長さを低くできるので、太くしなくても、具体的には裾野径がΦ10〜1000μm(好ましくは50〜200μm)、先端径が10〜100μであっても、十分な強度を確保することができ、薬液投与時に生体内でマイクロニードル1が折れたり破損して、体内にマイクロニードル1が残るのを未然に回避することができる。
【0128】
さらに、ニードル形成体2の表面が凸面状に形成されているから、皮膚30に押し付けたときに、マイクロニードル集合部8が集中的に強く押圧され、圧力が分散されることがない。従って、ほとんどのマイクロニードル1が皮膚30内に差し込まれ、薬液Mを効率的に皮膚30内に供給することができる。
【0129】
その結果、インスリン、麻酔薬などの薬剤、さらにDNA、RNA、タンパク、ペプチドなどの生理活性物質の薬効発現時間を短縮することができる。
【0130】
しかも、角質層の剥離(ピーリング)処理には痛みがなく、マイクロニードル1を刺しても痛点まで達しないから、患者に対する負荷は非常に軽微である。
【0131】
なお、ニードル形成体2は円形以外に、方形、長円形、楕円形等であってもよい。また皮膚30との接触面であるニードル集合部8の表面は凸面に限らず、平面状に形成してもよい。また、マイクロニードル1の形状も上述のものに限定されない。
【0132】
さらに、針部は円錐台形状に限らず、三角錐台、四角錐台等であってもよい。さらに、高さ方向に、投与する薬液の通過用溝が切ってあってもよい。さらに、針部の先端付近からニードル形成体2の裏面まで貫通孔があってもよい。
(他の実施形態4)
図20〜図23は、さらに他の実施形態の経皮投薬デバイスを示したものである。
【0133】
このデバイスは、四角形状の開口部を有する四角形状の位置決めシート29と、該位置決めシート29の3辺に折り曲げ部50を介して連結された3つの該角質層剥離システム6と、該位置決めシート29の残りの1辺に折り曲げ部51を介して連結されたデバイス本体5と、を有する。
【0134】
それぞれの角質層剥離システム6は、基材シート21と、該基材シート21に積層された粘着剤層6aとを有し、該基材シート21が上記位置決めシート29から一体に延出されている。通常は、粘着剤層6aにライナー52が剥離可能に貼り付けられる。また、位置決めシート29の皮膚と接触する面にも粘着剤層54およびライナー55が設けられてもよい。さらに、位置決めシート29の皮膚と接触しない面にもライナー57付きの粘着剤層56を設けてもよい。
【0135】
デバイス本体5は、位置決めシート29から延出された延出片36上に接着されている。デバイス本体5は、延出片36に接着剤などを用いて貼り付け可能にしてもよく、あるいは延出片36に一体に形成してもよい。
【0136】
該デバイス本体5は、薬液が収容される袋状の薬液充填部3と、該薬液充填部3の外面に貼り付けられた複数のマイクロニードルを有するニードル形成体2とを有する。ニードル形成体2が貼り付けられた薬液充填部3の外面には、加圧により薬液が薬液充填部3からニードル形成体2の裏面側へ移動し得る脆弱部(図示せず)が形成されている。該脆弱部としては、薬液充填部3の厚みが薄くなったスリットあるいは孔で形成することができる。
【0137】
該デバイス本体5を位置決めシート29に折り重ね(又は折り曲げ)た際には、ニードル形成体2のマイクロニードルが該開口部35内に位置し、また該角質層剥離システム6を該位置決めシート29に折り重ねた際には該角質層剥離システム6の粘着剤層6aが該開口部35に位置するように構成されている。
【0138】
この実施形態の経皮投薬デバイスは次のようにして使用する。
【0139】
皮膚の所定位置に位置決めシート29を配置し、必要に応じて位置決めシート29の皮膚側面に設けた粘着剤層54を皮膚に貼り付け、次いで角質層剥離システム6を位置決めシート29の開口部35に折り重ねて皮膚に貼り付ける(図22)。角質層剥離システム6を皮膚から剥がすと、その粘着剤層6aに角質層が貼り付いた状態で角質層は剥離される。このように、角質層剥離システム6を皮膚面に貼り付けて剥離する操作を3枚の角質層剥離システム6について順次繰り返し、その後デバイス本体5を位置決めシート29に折り重ねる(図23)。ここで延出片36又は位置決めシート29の皮膚とは反対側に粘着剤層を設けることにより、延出片36を位置決めシート29に貼り付けることができる。この状態でデバイス本体5の薬液充填部3を指などで押さえると、薬液充填部3の脆弱部が破れて薬液が薬液充填部3からニードル形成体2側へ流れ、通液孔を通してマイクロニードルの表面および皮膚内へ投与される。
【0140】
なお、上記実施形態4では、デバイス本体5を位置決めシート29の延出片36上に接着させたが、延出片36をデバイス本体5を構成する薬液充填部3の一部としてもよい。つまり、延出片36に覆い片を被覆して袋状の薬液充填部3を構成し、延出片36又は覆い片にニードル形成体2を接着してもよい。
【実施例】
【0141】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図2の形態において、外径Φ20mm、肉厚1mmのニードル形成体本体2aに、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径20μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1を、ピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0142】
このマイクロニードル1の先端側において、筒状体7の先端部に、開口部26を有するポリエチレン製の補助シート22を固定し、この補助シート22に図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着して経皮投薬デバイスを作成した。
【0143】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0144】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した後、親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与した。いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
(実施例2)
図2の形態において、外径Φ20mm、凸面形状(凸面のトップまでの肉厚が4mmでR39mm)のニードル形成体本体に、高さ100μm、裾野径がΦ70μm、先端径10μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0145】
このマイクロニードル1の先端側において筒状体の先端部に、開口部を有したポリエチレン製の補助シートを固定した。この補助シートに図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着して経皮投薬デバイスを作成した。
【0146】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0147】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した。親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与すると、いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
(実施例3)
図2の形態において、外径Φ20mm、肉厚1mmのニードル形成体本体に、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径20μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで121本配置してニードル形成体2を作成した。
【0148】
このマイクロニードル1の先端側において筒状体の先端部に、開口部を有したポリエチレン製の補助シートを固定した。この補助シートに図2の構成のピーリングシート(50μm厚のポリエステルフィルムを適宜折り曲げ、接着して作成した)を接着した経皮投薬デバイスを作成した。
【0149】
なお、ピーリングシートの粘着剤層には、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。
【0150】
この経皮投薬デバイスを用いてピーリングシートにより角質層を除去した。次に、2種類のタンパク質ペルオキシターゼ(Sigma製)と卵白アルブミン(OVA)を生理食塩水に溶解した薬液1mgを皮膚に塗布した。
【0151】
ピーリングシートにより角質層を除去した皮膚にマイクロニードル1を押し付けて、24時間経過後に皮膚を観察したところ、角質層下の皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)にタンパク質ペルオキシターゼとOVAの存在を認め、角質層を貫通するマイクロニードルによる孔が開いていることが確認された。
【0152】
皮膚の断面をヘマトキシリン・エオシン染色切片で光学顕微鏡下に観察すると、マイクロニードル1の針が表皮の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達していたことがわかった。皮膚を連続切片により観察すると、マイクロニードル1の針で孔が開いていることがわかった。
(実施例4)
図20の形態において、45mm×25mmの袋状に成型したポリカーボネート製の薬液充填部3と、高さ100μm、裾野径がΦ200μm、先端径50μmの円錐台のポリカーボネート製マイクロニードル1をピッチ1mmで25本を有するニードル形成体2からなる、デバイス本体5を作成した。
【0153】
このデバイス本体5を、60mm×60mmの延出片36の中央部に接着剤にて固定した。この延出片36を60mm×60mmの四角形の中央部に20mm×20mmの開口部35を有した位置決めシート29の一辺に接続した。位置決めシート29と延出片36は10μm厚のポリエステルフィルム製である。また、位置決めシート29の両面には、粘着剤層54、56を設けた。さらに、位置決めシート29の残りの三辺に10mm×20mmの折り曲げ部50を介して50mm×50mmのピーリングシートを接続した。ピーリングシートの粘着剤層6aには、リンテック社製、アクリル系粘着剤(粘着力10N/25mm)を使用した。ピーリングシートの基材シート21及び折り曲げ部50は、10μm厚のポリエステルフィルムである。
【0154】
この経皮投薬デバイスを用いて、ピーリングシートにより角質層を除去した。親水性軟膏1gあたり、ヒスタミン(Sigma製)1、10、20mg含有した薬液を皮膚に経皮投与すると、いずれの場合でも蕁麻疹が発疹した。これにより、マイクロニードル1の針が確実に角質層を通過し皮膚の生きた細胞層(有棘細胞層以下の表皮層)に到達したことが検証された。
【符号の説明】
【0155】
1 マイクロニードル
2 ニードル形成体
4 通液孔
5 デバイス本体
6 角質層剥離システム
22 補助シート
24 引き剥がしシート
26 開口部
30 皮膚
38 接続手段
A 経皮投薬デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
角質層剥離システムと 、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する接続手段と、を有する経皮投薬デバイスであって、
該角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、該接続手段により該角質層剥離システムが該デバイス本体に接続されている、経皮投薬デバイス。
【請求項2】
前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有する、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項3】
前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられている、請求項2に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項4】
前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が該ベースシートに形成されている、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項5】
前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されている、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項6】
前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能である、請求項5に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項7】
前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項8】
前記引き剥がしシートが、端部が折り返された第2のシートと、端部が折り返された第3のシートとからなり、第2のシートの折り返し部が前記補助シートと接続され、該第3のシートの折り返し部が前記角質層剥離システムの基材シートを兼用している、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項9】
前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシート、該第1のシートの両側面に配置される第2のシートおよび第3のシートを有し、該それぞれのシートの端部が折り曲げられ、該折り曲げ部にて第1〜第3のシートが接着され、該第3のシートが前記角質層剥離システムに接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項10】
前記引き剥がしシートが、長さの長いシートと、長さの短いシートと、を有し、該長いシートが折り曲げられ、この折り曲げ部に折り曲げた短いシートの一方が接着され、短いシートの他方が角質層剥離システムに接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項11】
前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、請求項5に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項12】
前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項13】
表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る角質層剥離システムと、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する位置決めシートと、を有する経皮投薬デバイスであって、
該位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部に該デバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に該角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、
該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されている経皮投薬デバイス。
【請求項14】
前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項15】
前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の三辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項16】
前記位置決めシートから延出片が延出され、該延出片上に前記デバイス本体が接着されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項17】
前記位置決めシートから延出片が延出され、
前記デバイス本体が、該延出片と、該延出片の一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該延出片の他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該延出片に、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項18】
前記デバイス本体が、薬液を収容する薬液充填部と該薬液充填部の外面に設けられたニードル形成体とを有し、該ニードル形成体の外表面には複数のマイクロニードルが形成され、該ニードル形成体に該表面から背面に走る通液孔が設けられ、該薬液充填部を加圧した際に、該薬液充填部が破断して内部の薬液を該ニードル形成体の背面に供給し得る脆弱部が薬液充填部に設けられている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項19】
前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項1】
表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
角質層剥離システムと 、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する接続手段と、を有する経皮投薬デバイスであって、
該角質層剥離システムによって角質層を剥離した皮膚表面の領域に、該デバイス本体のニードル形成体のマイクロニードルが配置できるよう、該接続手段により該角質層剥離システムが該デバイス本体に接続されている、経皮投薬デバイス。
【請求項2】
前記デバイス本体が、薬液が充填される注射器が移動可能に挿入される筒状体と、該注射器の先端部に取り付けられるニードル形成体と、を有する、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項3】
前記筒状体の下端開口には、該筒状体を皮膚に押し付けたときに皮膚を押し広げる皮膚拡張手段が設けられている、請求項2に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項4】
前記デバイス本体が、ベースシートと、該ベースシートの一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該ベースシートの他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が該ベースシートに形成されている、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項5】
前記接続手段は、前記デバイス本体のニードル形成体側に配設された補助シートを有し、該補助シートには該ニードル形成体に対応する開口部が形成され、前記角質層剥離システムが該補助シートを介して前記デバイス本体に接続されている、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項6】
前記接続手段は、さらに、前記補助シートと前記角質層剥離システムとの間に配設された引き剥がしシートを有し、該引き剥がしシートを皮膚表面に沿って引き剥がすことにより、該引き剥がしシートと該角質層剥離システムとを同時に剥ぎ取ることが可能である、請求項5に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項7】
前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシートと、該第1のシートの両側にそれぞれ配置される第2のシートおよび第3のシートとからなり、該第1のシートに、他の2枚のシートの端部が折り曲げて接着され、該第2のシートに前記補助シートが接続され、該第3のシートに前記角質層剥離システムの基材シートが接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項8】
前記引き剥がしシートが、端部が折り返された第2のシートと、端部が折り返された第3のシートとからなり、第2のシートの折り返し部が前記補助シートと接続され、該第3のシートの折り返し部が前記角質層剥離システムの基材シートを兼用している、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項9】
前記引き剥がしシートが、中央に配置される第1のシート、該第1のシートの両側面に配置される第2のシートおよび第3のシートを有し、該それぞれのシートの端部が折り曲げられ、該折り曲げ部にて第1〜第3のシートが接着され、該第3のシートが前記角質層剥離システムに接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項10】
前記引き剥がしシートが、長さの長いシートと、長さの短いシートと、を有し、該長いシートが折り曲げられ、この折り曲げ部に折り曲げた短いシートの一方が接着され、短いシートの他方が角質層剥離システムに接続されている、請求項6に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項11】
前記補助シートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、請求項5に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項12】
前記角質層剥離システムが、基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る、請求項1に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項13】
表面に複数のマイクロニードルが形成され、表面から背面に走る通液孔が設けられたニードル形成体と、該ニードル形成体の背面に薬液を供給する薬液充填部とを備えたデバイス本体と、
基材シートと、該基材シートに積層された粘着剤層とを有し、該粘着剤層によって皮膚表面の角質層を剥離し得る角質層剥離システムと、
該デバイス本体と該角質層剥離システムとを接続する位置決めシートと、を有する経皮投薬デバイスであって、
該位置決めシートは開口部を有し、該位置決めシートの一端部に該デバイス本体が該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、該位置決めシートの他端部に該角質層剥離システムが該位置決めシートに折り重ね可能に接続され、
該デバイス本体を位置決めシートに折り重ねた際にニードル形成体のマイクロニードルが該開口部内に位置し、かつ該角質層剥離システムを該位置決めシートに折り重ねた際に該角質層剥離システムの粘着剤層が該開口部に位置するように構成されている経皮投薬デバイス。
【請求項14】
前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の一辺に前記角質層剥離システムが接続されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項15】
前記位置決めシートは平面視で四角形状に形成され、該位置決めシートの一辺に前記デバイス本体が接続され、該位置決めシートの他の三辺に前記角質層剥離システムがそれぞれ接続されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項16】
前記位置決めシートから延出片が延出され、該延出片上に前記デバイス本体が接着されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項17】
前記位置決めシートから延出片が延出され、
前記デバイス本体が、該延出片と、該延出片の一方の面に配設されたカプセル状の薬液充填部と、該延出片の他方の面に配設されたニードル形成体とを備え、該延出片に、該薬液充填部を押圧したときの圧力で破断可能な脆弱部が形成されている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項18】
前記デバイス本体が、薬液を収容する薬液充填部と該薬液充填部の外面に設けられたニードル形成体とを有し、該ニードル形成体の外表面には複数のマイクロニードルが形成され、該ニードル形成体に該表面から背面に走る通液孔が設けられ、該薬液充填部を加圧した際に、該薬液充填部が破断して内部の薬液を該ニードル形成体の背面に供給し得る脆弱部が薬液充填部に設けられている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【請求項19】
前記位置決めシートの皮膚と接触する側の少なくとも一部に、粘着剤層が設けられている、請求項13に記載の経皮投薬デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−46476(P2010−46476A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173727(P2009−173727)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]