説明

経頭蓋磁気刺激用の磁気構造とタイミング方式

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、脳の精密検査用の注目すべきツールである。しかしながら、皮質の特定領域がTMSにより励起可能でありながら他の箇所がそうでない理由は、依然として不明である。本発明は、有効な磁気刺激の設計用の方法ならびにツールを提供するものである。この種の刺激装置は、これまで刺激に感応しなかった神経ネットワークを励起することができる。刺激は、生体内と生体外の両方で実行することができる。本発明の新規システムならびに技術が、これまでTMSにより影響を受けなかった脳あるいは神経集合体の領域を刺激することで、治療と診断の両方を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経頭蓋磁気刺激(TMS)と装置と機器ならびにその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、脳と神経の活動を刺激する有数の非侵襲性装置である。かくして、鬱病や偏頭痛に対する治療措置から多数の調査項目における脳活動の精査まで、TMS向けの様々な用途における著しき増加が見てとれる。TMSは、非侵襲性精査能力と介入様式の蓄積に対する新規かつ革新的な追加である。この種のプローブの開発は、神経学と脳神経外科に対する診断と治療の手法の主要な課題の一つである。TMSの主な限界は、その活性化領域の精度と特異性とにある。TMSは、現在、脳の特定の領域、大半は皮質だけ刺激することが可能である。磁気刺激に対する脳領域のアクセス可能性を何が決定するかは、依然として不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、研究用途と臨床用途の双方に対する大きな将来性を示す非侵襲性の脳刺激技術である。しかしながら、基礎技術は基本的に変わらないままであり、その用途における前進は遥か遠く微々たるものである。近年の開発は、高周波反復周期でのパルス給送能力と脳のより深層領域への到達の双方に集中してきた。これは、薬物に起因しない鬱病に対し有効ではあるものの極めて侵食的な電気痙攣療法(ECT)に置き換わる希望の一環として、動機付けられてきた。しかしながら、その開発の現段階でのTMSの主要な限界は、印加される電界の極めて特定された方向性にあり、これには動きと外乱とに対し顕著に感応する正確に標的化された適用が要求される。位置と向きは共に高解像度をもって特定しなければならず、一旦最適位置が特定されれば、治療の全期間に亙りそこに磁石を保持しなければならない。安定した再生可能な位置決めはMRI撮像と立体視方式位置決めを用いて達成することができるが、方向性感度を改善してより有効なTMS適用モードを可能にする装置が将来の磁石開発の目標であった。
【0004】
方向性感度が発生するのは、それらの軸索が誘起電界に沿って正確に配向される場合にのみニューロンが励起されるからである。
【0005】
神経培養組織がTMS開発用の主要な実現ツールであり、これを用いることで、新型磁石や薬剤やTMS複合治療や新規プロトコルや他の技術革新が、動物やヒトの被験体に対する必要性を一切伴うことなく振り分けて試験できることが、最近実証された。培養組織内での活動電位応答を生み出す能力は、2つの属性、すなわち大きさと向きとに依存する。
【0006】
方向依存が生ずるのは、ニューロンの磁気刺激が軸索にて行われ、誘起電界に沿う軸索突起が励起を達成する関連パラメータとなるからである。擬似一次元パターン化培養組織を用いることで、軸索が磁石と同心的なリングに沿って成長するよう誘導し、かくしてこれらが誘起電界に沿って伸長突起を有するようにしうる。樹状突起内で活動電位を立ち上げることでニューロンの励起が可能であるとするならば、そのときは状況は変わる筈であり、方向性に左右されない筈であることに、留意されたい。この種の励起の実例を、ここで下記に説明する。
【0007】
特定されている別の重要な特徴は、格別に感応性のあるニューロンの下位個体群を刺激することで初期励起が達成され、そのことがそこでネットワーク全体を興奮させるための核形成中心として機能する。受容体拮抗薬(CNQXやAPVやビククリン)を適用することで完全に分離される培養組織では、この小さな部分集合(ほぼ1%)だけが賦活され、磁気刺激に対し応答する。培養組織を接続すると、この核はネットワーク内の全てのニューロンの個体群応答の顕在化の起点となる。核の大きさが余りに小さい場合、ネットワーク内のニューロン内への駆動入力は個体群応答を始動させるには不十分である。
【0008】
磁気刺激に対する個体群応答を達成する上で、それ故に多数の始動ニューロンにおける活動電位を励起させねばならない。その軸索の向きが不規則である神経ネットワークでは、従来のTMSを用いたのではこの要件に応えることは困難であり、何故ならその誘起電界の向きは一定しており、大量の十分な数の軸索がこの電界に沿って配向される可能性は低いものとなるからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、本発明は1以上のニューロンを回転電界にさらし、それによってそのニューロンまたはニューロン群を励起する工程を含む改善されたニューロン励起法を提供する。一実施形態では、回転電界は少なくとも2つの時間依存性電界の合成和とする。
【0010】
一実施形態では、少なくとも2つの時間依存性電界を少なくとも2つの時間依存性磁界により誘起する。一実施形態では、少なくとも2つの時間依存性磁界を少なくとも2つの別個の独立コイルに通電することで誘起する。
【0011】
一実施形態では、2つの別個の独立コイルを前記電流の時間シフト位相をもって駆動する。一実施形態では、コイルはその合成和が時間と共に方向を変える少なくとも2つの時間依存性電界を生成する。
【0012】
一実施形態では、少なくとも2つの時間依存性電界は互いに所定角度をなす。一実施形態では、その角度は90度の角度とする。
【0013】
一実施形態では、2個のコイルを独立して駆動する。一実施形態では、2個のコイルを2個の電源により独立して駆動する。
【0014】
一実施形態では、2個のコイルは互いに所定角度をなす。一実施形態では、2個のコイルは互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0015】
一実施形態では、少なくとも2個のコイルを流れる電流は、第1のコイルを流れる第1の電流と第2のコイルを流れる第2の電流を含み、前記第1の電流が前記第2の電流に対し所定の位相をなすようにする。一実施形態では、第2の電流に対する第1の電流の位相は90度の位相をなす。
【0016】
一実施形態では、第1の電流をパルス化し、第2の電流をパルス化する。
【0017】
一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスの数は1または2以上とする。
【0018】
一実施形態では、第1の電流のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電流のパルスは第2の正弦波を含んでおり、第2の正弦波が第1の正弦波よりも1/4周期だけ遅れるようにする。
【0019】
一実施形態では、第1の電流のパルスは1周期の第1の正弦波を含み、第2の電流のパルスは1周期の第2の正弦波を含む。
【0020】
一実施形態では、回転電界は少なくとも2対の電極からなる電極組立体を用いて生成する。一実施形態では、少なくとも2つの電圧を電極組立体の少なくとも2対の電極に印加する。一実施形態では、電圧は時間変動する。一実施形態では、少なくとも2対の電極は互いに所定角度をなす。一実施形態では、2対の電極は互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0021】
一実施形態では、ニューロンの励起は軸索励起を含む。一実施形態では、本方法は被験体の脳に適用する。一実施形態では、本方法は診断用に適用する。一実施形態では、本方法は治療用に適用する。
【0022】
一実施形態では、ニューロンの励起は神経培養組織に適用する。一実施形態では、前記ニューロンの励起に対する前記培養組織の応答を検出する。
【0023】
一実施形態では、回転電界が前記ニューロンの軸索を励起し、ここで第1の軸索の長軸の向きは第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成する。一実施形態では、回転電界がニューロン個体群内に応答を生成するのに必要な少なくとも最小限の数のニューロンを励起し、それによって前記ニューロン個体群内に大域応答を生成する。
【0024】
一実施形態では、前記ニューロンのうちの少なくとも2本の軸索の長軸は平行でない。
【0025】
一実施形態では、本発明は改善されたニューロン励起用のデバイスを提供し、そのデバイスは少なくとも1組の2個の別個のコイルからなる。一実施形態では、少なくとも2個の別個のコイルは時間軸上でシフトさせた電流位相をもって駆動する。一実施形態では、コイルはその合成和が時間と共に方向を変える少なくとも2つの時間依存性電界を生み出す。一実施形態では、2個のコイルを独立して駆動する。一実施形態では、2個のコイルを2個の電源により独立して駆動する。
【0026】
一実施形態では、2個のコイルは互いに所定角度をなす。一実施形態では、2個のコイルは互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0027】
一実施形態では、少なくとも2個のコイルを流れる電流は、第1のコイルを流れる第1の電流と第2のコイルを流れる第2の電流を含み、第1の電流が第2の電流に対し所定位相を有するようにする。一実施形態では、第2の電流に対する第1の電流の位相は90度の位相とする。
【0028】
一実施形態では、第1の電流をパルス化し、第2の電流をパルス化する。一実施形態では、第1の電流と第2の電流の前記パルスの数を1または2以上とする。
【0029】
一実施形態では、第1の電流のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電流のパルスは第2の正弦波を含み、第2の正弦波が第1の正弦波よりも1/4周期遅れるようにする。
【0030】
一実施形態では、本発明は改善されたニューロン励起のための装置を提供し、この装置は少なくとも2対の電極を備える電極組立体を備える。一実施形態では、回転電界の生成に電極組立体を用いる。一実施形態では、前記電極組立体内の少なくとも2対の電極に対し少なくとも2つの電圧を印加する。一実施形態では、2つの電圧は時間と共に変化する。一実施形態では、少なくとも2対の電極は互いに所定角度をなす。一実施形態では、2対の電極は互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0031】
一実施形態では、少なくとも2対の電極に印加する電圧は、第1組の電極に印加する第1の電圧と第2対の電極に印加する第2の電圧を含み、第1の電圧が第2の電圧に対し所定位相を有するようにする。一実施形態では、第2の電圧に対する第1の電圧の位相は90度の位相をなす。
【0032】
一実施形態では、第1の電圧をパルス化し、第2の電圧をパルス化する。
【0033】
一実施形態では、第1の電圧のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電圧のパルスは第2の正弦波を含んでおり、第2の正弦波が第1の正弦波に対し1/4周期遅れるようにする。
【0034】
一実施形態では、ニューロン励起は軸索励起を含む。一実施形態では、本方法は被験体の脳に適用する。一実施形態では、本方法は診断用に適用する。一実施形態では、本方法は治療用に適用する。
【0035】
一実施形態では、ニューロンの励起は神経培養組織に適用する。一実施形態では、ニューロンの励起に対する培養組織の応答を検出する。
【0036】
一実施形態では、回転電界がニューロンの軸索を励起し、ここで第1の軸索の長軸の向きは第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成する。
【0037】
一実施形態では、回転電界がニューロン個体群内に応答を生成するのに必要な少なくとも最小限の数のニューロンを励起し、それによって前記ニューロン個体群内に電気応答を生成する。
【0038】
一実施形態では、前記ニューロンのうちの少なくとも2本の軸索の長軸は平行ではない。
【0039】
一実施形態では、本発明はニューロンの励起方法を提供し、この方法はニューロンを持続時間が200μsを上回る第1の電界パルスにさらし、それによってニューロンを励起する。
【0040】
一実施形態では、第1の電界パルスは持続期間が1msに等しいか、1msを上回るとする。
【0041】
一実施形態では、第1の電界は磁界により誘起する。一実施形態では、コイルに通電することで磁界を誘起する。一実施形態では、コイルはコンデンサに接続する。一実施形態では、コンデンサは少なくとも1.0mFのコンデンサとする。
【0042】
一実施形態では、パルス持続時間は樹状突起あるいは樹状突起の個体群の励起に必要な電界持続時間の閾値を上回る。
【0043】
一実施形態では、本発明は樹状突起励起用の装置を提供し、この装置はコイルと電源とに接続したコンデンサを備え、そのコンデンサの容量は少なくとも1.0mFとする。
【0044】
一実施形態では、装置は持続時間が200μsを上回る電界パルスを生成し、それによって樹状突起を励起する。一実施形態では、電界パルスは持続時間が1msに等しいか、1msを上回るとする。
【0045】
一実施形態では、パルス持続時間は樹状突起あるいは樹状突起の個体群の励起に必要な電界持続期間の閾値を上回る。一実施形態では、樹状突起の励起がニューロンを興奮させる。
【0046】
発明とみなされる主題を具体的に指摘し、明細書の結論部分に明確に特許請求の範囲として記載する。しかしながら、本発明は、作動構成と作動方法の両方に関し、その目的と特徴と利点とを併せ、添付図面と共に読み取るときに、下記の詳細な説明を参照して最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】交差コイル構成の実施形態を示すものであり、図1aは実験に使用する実際のコイルの図であり、2個のコイルは垂直平面内で相互ロックさせ、2つの独立した刺激装置に対し接続してあり、図1bは交差コイル内部に嵌合するよう特注したガラス球体の図であり、ガラス製カバースリップと媒体は球体の頂部に位置するスロットに挿入されており、カバースリップは球体底部の平坦化された基部の上に横たえられ、視認用の孔を介して視認され、この孔は光学的に透明なガラスによって封止されており、図1cは構成の概略図であり、カバースリップ(底部)は交差コイル内部のガラス球体内に配置され、一方で反転顕微鏡でニューロンの活動を監視し、全てのスケールバーは2cmであり、図1dは一方のコイル(水平面コイルと呼ぶ実線)の平面と第2のコイル(垂直面コイルと呼ぶ点線)の平面上に配向したピックアップコイルを用いて交差コイル内の誘起電界を計測したものであり、Magstim社製刺激装置は100%の負荷を受け、HMSは3.5kVの負荷を受け(方法説明部分の詳細参照)、図1eは図1aにて計測された2つの垂直な成分の和から生み出される有効電界の再現を示すものであり、有効電界は交差コイルの磁極のまさに内部の特定の位置(図1c)に対し再現され、有効電界は、黒色矢印で示される如く、磁気パルス周期期間中の3/4螺旋周期で完結し、図1fはラット実験用の交差コイルの構成であり、ラット頭部を交差コイル内に配置し、EMG電極が腓腹筋から筋電位を記録し、EMGデータをデジタル化し、回転電界TMS(rfTMS)パルスと同期させてrfTMSに対するモータの応答を評価するものである。
【図2】刺激に対する応答の実施形態を例証するものであり、図2aはrfTMSに対する二次元神経培養組織の応答で、その培養組織の活動は視認孔(図1b参照)を介して撮像したものであり、ブラックボックスは信号を平均とする関心領域を示し、点線の白線はその上を培養組織が成長したカバースリップの境界を示しており、図2bは図2aにおける関心領域のカルシウム依存蛍光発色性であり、赤色の点線は交差コイルを用いた磁気的刺激事象であり、対して黒色はコイルの一方だけを使用するときのものであり、各刺激の強度はテスラ(T)で表記してあり、動きは既に0.8Tを有する交差コイルにより誘起され、一方で単一コイルは1.5T台の動きを誘起するに過ぎないことに理解されたく、図2cはrfTMSに対するラット運動皮質の応答であり、ラットを異なる場所で刺激するのに交差コイルを用いるときの腓腹筋のEMG記録のグラフであり、各場所は交差コイルを表わす黒色十字を有する応答トレースの右側部分について図示してあり、最後の行はラットの頸部転位後に行なったものであり、スケールバーは200μVであり、図2dは図2cの最後の2行の間の比較であり、実線は転位前のその頭部全体のrfTMSに対するラットの平均応答であり、点線の曲線は転位後のラットの平均応答である。
【図3】回転誘起電界のシミュレーションの実施形態を示すものであり、上段の行は、理想的な電圧トレース、すなわち点線が中段行と下段行内の点線のコイルに対する電圧負荷を表わし、実線は実線のコイルに対する電圧負荷を表わし、青色の垂直バーはその下側の電界を算出した時刻を表わし、中段行は交差コイルであり、2つの円形コイルはそれぞれが(上段行に記載した如く)単一の正弦波状パルスを生成する独立した2つの電流源に接続してあり、コイル内に配置された球体表面の生成電界をシミュレーションし(大きさはカラーコードに従い、向きは白色の矢印に従う)、図3aでは、水平コイルの1/4周期完了後に垂直コイルがそのパルスを開始し、誘起を支配しており、図3bでは、1/4周期後に両コイルが等電界を誘起し、有効電界は対角的であり、図3cでは、さらなる1/4周期後に水平コイルが完全に引き継ぎ、生成電界は図3aの元々の方向に対し90度回転しており、回転磁界の作用点(「ホットスポット」)は2個のコイルの交差点の球体表面に位置(赤色点線楕円)し、シミュレーションの詳細については本願明細書の下記を参照されたく、下段行では四つ葉クローバーコイルであり、2組の変形した8の字コイルが、それぞれ単一の正弦波状パルスを生成する2つの独立した電流源に接続してあり(コイルに対する電圧負荷は上段行に記載)、コイルの上方3cmの生成電界をシミュレーションし、(大きさはカラーコードに従い、向きは白色矢印に従う)、図3aでは、実線の組が1/4周期を完了した後、点線の組がそのパルスを開始し、誘起を支配し、垂直電界を生じ、図3bでは、1/4周期後、両コイルが等電界を誘起し、有効電界は対角的となり、図3cでは、さらなる1/4周期後、実線の組が完全に引き継ぎ、生成電界は水平となり、全周期期間中、誘起された電界の向きは回転し、270度を走査し、一方で最大の励起は四つ葉クローバーの中心(ホットスポット)に止まり、シミュレーションの詳細については、補足材料を参照されたい。
【図4】二次元培養組織の磁気刺激の結果を要約する表であり、活動閾値は磁気コイルの各構成ごとに表記してあり、空白入力部分は刺激に対する可観察応答の欠如を表わす。
【図5】その細胞の軸索が不規則的に配向されている培養組織の刺激の概略シミュレーションであり、各細胞は単一の軸索(実線または点線)を突出させており、図5aは、固定された単一の向きを有する短い磁気パルスの印加を示し(黒色矢印は磁気パルスから誘起された電界の向きを示す)、その軸索(点線)が誘起電界の向きに平行を向く唯一の細胞が励起され、図5bは、短い回転磁界の印加を示し(円弧は磁気パルスから誘起する電界の回転スパンを示す)、その軸索の向きが回転電界の円弧内に横たわる全ての細胞が励起され、ネットワークの個体群の応答に通じ、図5cは、向きの固定された長い磁気パルスの印加を示し、誘起電界の方向に平行に配向された樹状突起を有する全ての細胞が励起され(励起された細胞は点線円で印付けしてある)、ネットワークの個体群の応答に通じる。
【図6】提案装置の一実施形態の概略線図であり、2個のイグナイトロン(点弧子型水銀放電管)(I1とI2)がトリガー発生器によりトリガーされ、結線1を介する接続I2が単極性パルスを生み出し、一方で結線2を介する接続が両極性パルスを生み出し、イグナイトロンI1はサイリスタにより置き換えることができ、一方でI2はダイオードにより置き換えることができる。
【図7】4.8mFのコンデンサCと1msの立ち上がり時間をもって約10Tを給送することのできる6.5kVの最大電圧負荷とを有するより大きな刺激装置の一実施形態を示すものであり、イグナイトロンI1はコイルを介する放電を始動させるのに用い、イグナイトロンI2はコイルを短絡させ、コイルを介する放電を停止するのに用いる。
【図8】ニューロンの二次元培養組織と麻酔をかけたラットの両方の磁気刺激応答の概要である。
【図9】配向依存性の一実施形態を例証するものであり、四つ葉クローバーコイルは磁気刺激の方向従属性を軽減し、四つ葉クローバーコイル(図3)が誘起する算出電界を用い、電圧感応のナトリウムやカリウムを含有する1μmの直径と1mmの長さおよび漏洩コンダクタンスを有する軸索内の活動電位生成をシミュレーションしてあり(材料と方法参照)、コイルに対する軸索の異なる方位における閾値を特性解明するため、磁気刺激が活動電位をトリガーするまで電流パルスを増大させ、各コイルによりこの電流振幅で誘起された電界の最大振幅を、ここでは軸索とx軸との間の角度に対しプロットしてあり、シミュレーションは、磁気刺激による活動電位生成の閾値が、四つ葉クローバーコイルを用いた場合にコイル方位にごく僅かしか依存しないことを予測している。
【図10】神経培養組織の電気的な刺激の一実施形態を示すものであり、図10aは培養組織の刺激に用いる電気パルスの典型的な電圧図であり、持続時間(DT)は10μsと10msとの間で連続的に可変しえ、図10bはパルス持続時間閾値と培養組織の刺激に必要な最小限のパルス持続時間の片対数ヒストグラムであり、磁気的と電気的の両方で励起可能な培養組織が実線の曲線で表示してあり、電気パルスを用いてのみ励起しうる培養組織が点線の曲線で表示してある。
【図11】培養組織内で成長したニューロンを表わすGFPの蛍光性画像であり、培養組織は30mmのカバースリップ上に塗布し(図中の白色弧はカバースリップの縁を走る)、ニューロンの軸索はこれがカバースリップの周囲を接線方向に3mm追従する際に追尾することができる。
【図12】刺激閾値に対する麻酔の効果を例証するものであり、ラットの脊椎刺激用の磁気的な閾値は10時間の時間経過に沿って15回計測(黒色の×点)し、キシラジンとケタミンの溶液を実験期間中に2回投与し(赤色線)、ケタミンだけを含有する溶液を5回の追加投与し(緑色線)、キシラジンの麻酔効果が注入後にピークに向け徐々に立ち上がり、続いて基線計測値に向け指数関数的に緩和するものと仮定し、データに対し緩和曲線を適合させてある。
【図13】高密度四つ葉クローバーコイルの再現であり、左側は、コイル中心の拡大図であり、線は各コイルループのワイヤを表わし、10本の緑色の線は垂直の群葉に対応し、9本の青色の線は水平の群葉に対応しており、右側は、青色の線がコイル葉のうちの一つの全体図を表わし、コイルは螺旋状ではなく、各内部ループは外部ループの縮尺を変えた写しである。
【図14】方位とパルス持続時間が変化する電気刺激に対する一次元培養組織の応答を示すものであり、図14aでは、実線の培養組織は短時間の刺激(約0.1ms)に応答し、一方で点線は1msを上回る刺激に対してのみ応答し、閾値はパルス持続時間に合わせ減少し、続いて低飽和安定状態(図示せず)に至り、図14bは、培養組織の向きに対する磁界方向の回転に対する培養組織の応答であり、点線の培養組織は全角度で一定の応答を有し、実線の培養組織(短いパルス持続時間)は、培養組織の向きに対し平行であることを意味する電界が0度であるときに励起させるのがずっと容易であり、図14cは、角度の余弦値の関数としての図14bに示した閾値の角度依存性を示し、実線の培養組織では、線形関係は明らかであり、励起用の閾値を特定するのが事実上磁界の方向に対する軸索突起であることを示しており、点線の培養組織は電界の向きに対し感応しない。
【発明を実施するための形態】
【0048】
説明の単純さと明快さとに配慮し、図面中に示された要素は必ずしも実寸で描かれていない点を理解されたい。例えば、一部要素の寸法は明確さに配慮して他の要素に対し誇張することができる。さらに、適切であると考えられる場合は、図面中で符号を反復させ、対応のあるいは類似の要素を指し示すことができる。
【0049】
下記の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供すべく多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、当業者には本発明がこれらの具体的な詳細を用いずとも実施できることが理解されよう。他の例では、公知の方法や手順や構成要素を詳しく説明はせず、本発明を曖昧にしないようにしてある。
【0050】
TMSの開発のこの段階での主要な限界は、印加電界の極めて特異な方向性にあり、それには動きと外乱に極端に感応する正確に標的化された適用が要求される。位置と向きの両方を高解像度でもって特定しなければならず、一旦最適位置が特定されると、全治療期間中、磁石をそこに保たねばならない。
【0051】
方向性感度が生ずるのは、その軸索が誘起電界に沿って厳密に案内される場合にのみニューロンが励起されるからである。本発明は、一実施形態において、印加磁界を回転させ、軸索が多くの異なる方向を向くニューロンの励起を可能にする技術を提供するものである。
【0052】
方向に対する依存が生ずるのは、ニューロンの磁気刺激が軸索において行われ、誘起電界に沿う軸索突起が励起を達成するための関連パラメータとなるからである。擬似一次元パターン化培養組織を用いることで、本発明は軸索が磁石と同心のリングに沿って成長するよう配向する方法を提供し、かくして一実施形態において誘起電界に沿って伸長突起を有するよう強制する。樹状突起内に活動電位を立ち上げることでニューロンを励起できるものとするならば、そのときは状況は変わる筈であり、方向性に左右されない筈であることに、留意されたい。本発明のこの態様に従う方法を、本願明細書において下記に説明する。
【0053】
識別された別の重要な特徴は、格別に感応性のあるニューロンの下位個体群を刺激することで初期励起が達成され、そのことがそこでネットワーク全体を興奮させる核形成中心として機能するということである。受容体拮抗薬(CNQXやAPVやビククリン)の適用により完全に分離させた培養組織では、この小さな部分集合(ほぼ1%)だけが賦活され、磁気刺激に応答する。培養組織を接続すると、この核はネットワーク内の全てのニューロンの個体群の応答を誘発する起点となる。核の大きさが小さすぎる場合、ニューロンへの駆動入力は個体群の応答の始動には不十分である。
【0054】
磁気的な刺激に対する個体群の応答を獲得するため、それ故多数の始動ニューロンにおいて活動電位を励起しなければならない。軸索方向が不規則である神経ネットワークでは、この要件は従来のTMSを用いて応えるのは困難であり、何故ならその誘起電界の向きは一定であり、十分多数の軸索がこの電界に沿って配向される可能性は低いからである。
【0055】
それ故、単一パルス期間中にその方位が広範囲の角度を走査する回転電界を誘起することで、多くの軸索を一度に全て刺激し、個体群の応答を保証しうる。下記の説明では、この種の回転を達成する方法と得られる神経標本の応答を示す。
【0056】
生体外磁気刺激
【0057】
磁気パルスとニューロンの相互作用に対する研究開発の一環として、脳に対する磁気パルスの効果的な相互作用を特定する新規能力とパラメータの理解とが開発されてきた。物理的な技法と新規の細胞培養法の組み合わせを用い、TMSの適用にとっての最適なパラメータを特定する。これらのパラメータは極めて空間的で幾何学的であり、神経基板の形状と磁界の方向性とに関係する。特に、この刺激の効果を最大化すべく、軸索の方向は磁気刺激が誘起する電界の方向に一致させねばならないことは、ここで明らかである。
【0058】
方向性と立ち上がり時間と協同作用とが、磁気的な刺激の効果を制限する。
【0059】
外部電界刺激の神経生理学は受動的なケーブル方程式を用いて簡単化することができ(A.L.Hodgkin、W.A.Rushton,Proc.Royal Soc.B、第133巻444頁(1946年)と、B.J.Roth、P.J.Basser、IEEE Trans Biomed.Eng、第37巻588頁(1990年)参照)、それは容量と抵抗とが既知のケーブルの細胞膜(この場合、ケーブルは神経突起である)上に外部電界が誘起する電圧を算出するものである。この式は、神経突起の刺激における2つの関連パラメータの役割を強調するものである。第1に、誘起電界に対し最も強烈に応答するニューロンはその神経突起(軸索あるいは樹状突起)が電界に平行に横たわるものである。この観測結果は理論的な考察から明らかであり、一次元培養組織を用いて中枢神経系(CNS)からのニューロンの第1の間断無き磁気刺激を入手する根底をなすものであった。第2に、その細胞膜の立ち上がり時間が外部パルスの立ち上がり時間よりもずっと長い神経突起は、刺激には応答しない。商用磁気刺激装置の立ち上がり時間は100μs(100マイクロ秒)を越えず、樹状突起の細胞膜立ち上がり時間は1ms(1ミリ秒)台であるため、ニューロンの励起は軸索においてほぼ排他的に始動させられる。より詳しい派生記事は、A.Rotem、E.Moses、Biophys.J、第94巻5065頁、2008年に見いだすことができる。加えて、生体脳あるいは生体外のいずれかでのニューロンのネットワークの集約的な応答は、単一の細胞の興奮からは始動させることができない。それよりも、それは通常、生体内もしくは生体外の大型の神経培養組織のいずれかにおいて観察することのできる個体群をトリガーすべく、ほぼ同時に興奮させる欠くことのできない数の始動ニューロンを必要とする。詳細は、I.Breskin、J.Soriano、E.Moses、T.Tlusty、Phys.Rev.Lett.第97巻188102号(2006年11月3日)に見いだすことができる。
【0060】
上記の3つの要因が、ニューロンのネットワークの首尾良き磁気刺激を制限し、それらはネットワーク内の幾つかの隣接する細胞が誘起電界に平行に配向された軸索を有することを必要とする。しかしながら、所与のコイルの磁界の向きは固定され、かくして誘起電界もそうなる。これは、ニューロンが不規則に配向された軸索を有するネットワークにおいて励起することのできるニューロンの量が非常に少なく、ネットワークの集約的な応答には不十分であることを意味する(図5a)。このことは、生体外で二次元培養組織とその軸索方向が同質でない皮質領域を励起することが如何に困難であるかの主要な理由となろう。
【0061】
回転電界
【0062】
一実施形態では、軸索方位の異方性により引き起こされる問題を克服すべく、時間依存性電界を用い、全ての角度範囲に亙り走査する。一実施形態では、これは2個のコイルを用いることで得られ、その磁界は互いに垂直で、その電流は一方を他方から1/4周期だけ位相シフトさせたものとする。生成電界はパルス周期の期間中に空間内を回転し、それがその方位を走査するときは常に追加の細胞の励起に通じる。この周期はせいぜい数百μs(マイクロ秒)しか持続しないため、これら全ての細胞は時間軸上で十分密接して刺激を受け、ネットワークの集約的な応答を保証する(図5b)。
【0063】
本発明の回転電界法は、回転電界の誘起を必要とする。回転電界の誘起を達成する仕方と、本発明の改善された刺激パルスが培養組織のシャーレ内と生体脳内の両方でのより多数のニューロンの励起を標的としている点を、本願明細書において下記に示すことにする。これらの概念的な新規ツールにより、現在はTMSに対し応答しない脳内の領域へのアクセスを可能にし、二次元培養組織の簡単な励起を提供し、これはモデルシステムとして一次元培養組織よりもずっとアクセス可能である。一実施形態では、この種の刺激技術は脳と神経系の構成要素の診断を可能とすることになる。一実施形態では、この種の刺激方法は神経学的疾患や他の臨床的疾患の治療を可能にすることになる。一実施形態では、この種の刺激技術は被験体の発症あるいは神経系関連の疾患を発症する相対的な危険を予測することになる。
【0064】
樹状突起の刺激 一実施形態では、本発明は1ms(ミリ秒)台の持続時間でもってパルスを印加することで培養組織内の樹状突起を直接励起する方法を提供する。通常は枝分かれする前に細胞体から単一方向に長い伸びを突出させる軸索とは対照的に、樹状突起ツリーは等方性パターンにて細胞体から広範囲に枝分かれしがちとなる。樹状突起を直接励起する選択肢はかくして極めて有用であり、何故ならそれは方向性の前述の課題、すなわち各細胞がほぼ全ての可能な方向を向く多数の樹状突起を有し、固定された方向の誘起電界に対し応答する(図5c)ことになるという課題を克服するからである。この解決策は回転電界に対する優位を証明することができ、何故ならそれが脳内の領域を標的化できるようにするからであり、この脳は全て軸索が頭蓋平面に対し垂直に配向され、それは誘起磁界を頭蓋骨に平行な平面内を回転するようにしか作成できないからである。
【0065】
理論上、誘起電界の減少を伴わない磁気刺激の立ち上がり時間の増大 樹状突起刺激は、1ms台のパルス幅を必要とする。より長期の時間期間に亙り所与の大きさの誘起電界を得るべく、パルス持続時間と共に磁界を線形的に規模策定する必要がある。これは、誘起電界が磁界の時間傾斜に線形に依存するからであり、この磁界はパルスが幅広になるにつれて減少する。所与の周波数ωを有する正弦波状パルスを用いて放電させる所与のコイル構成では、或る点における誘起電界Eがピーク磁界Bの関数となる。すなわち、
【0066】
【数1】

【0067】
iを単位複素数とし、表面パラメータ|A|=mは問題とする幾何学的形状を考慮する。磁界のピーク振幅は、コンデンサのパラメータにより設定される。この関係式はエネルギーの考察から得ることができ、何故なら放電前にコンデンサ内に蓄えられるエネルギーは理論的にはコイルが生成する磁界のエネルギーに等しいからである。
【0068】
【数2】

【0069】
インダクタンスLを有する磁気コイルについては、容量Cのコンデンサからコイルを介して放出されるパルスの周波数ωは下式で与えられ、すなわち
【0070】
【数3】

【0071】
上記の3つの関係を組み合わせることで、以下が得られる。
【0072】
【数4】

【0073】
本分析は、パルス持続時間を増大させる2つの経路を啓示するものである。
【0074】
インダクタンスLの増大:この場合、Eを一定に保つためLに対しVを二次関数的に増大させることもしなければならない。Lの増大は、既に詰め込まれたコイル系に対しより多くの巻数を追加することを意味する。コンデンサに対する負荷Vの増大は、回路内のより高い電圧にとって適切な新規基盤ならびに保安対策を導き出す。
【0075】
容量Cの増大:EはCとは無関係であり、かくして容量の増大は対処すべき副次的効果を伴うことなくサイクル時間を増大させ、磁気パルスを拡幅する好適な方法となる。
【0076】
一実施形態では、樹状突起の励起法は電界をより長時間の期間に亙り印加することを必要とする。この種の電界の印加を達成する仕方と、本発明のその改善された刺激パルスが培養シャーレと生体脳内の両方において大量の数のニューロンの励起を標的とすることとを、本願明細書において下記に示すことにする。これらの概念的な新規ツールにより、現在はTMSに応答しない脳内にアクセス領域を可能にでき、モデルシステムとして一次元培養組織よりもよりアクセス可能な二次元培養組織の簡単な励起を提供することができる。一実施形態では、この種の刺激技術は脳診断を可能にすることになる。一実施形態では、この種の刺激法は神経学的疾患や他の臨床的疾患の治療を可能にすることになる。
【0077】
一実施形態では、本発明はニューロンの励起法を提供し、その方法はニューロンを回転電界にさらし、それによってニューロンを励起するものである。
【0078】
一実施形態では、回転電界は少なくとも2つの時間依存性電界の和となる。一実施形態では、少なくとも2つの時間依存性電界は少なくとも2つの時間依存性磁界により誘起される。一実施形態では、少なくとも2つの時間依存性磁界は少なくとも2個のコイルに通電することで誘起される。
【0079】
一実施形態では、2個のコイルは2つの電源に独立して接続する。一実施形態では、2個のコイルと2つの電源は機器の一部をなす。一実施形態では、機器はシステムの一部をなす。
【0080】
一実施形態では、システムはさらに電気信号検出ユニットや撮像ユニットあるいはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、2個のコイルは互いに垂直とする。
【0081】
一実施形態では、少なくとも2個のコイルを流れる電流は、第1のコイルを流れる第1の電流と第2のコイルを流れる第2の電流を含み、第1の電流が第2の電流に対し90度の位相を有するようにする。一実施形態では、90度の位相は第2の電流に遅れる第1の電流の1/4周期の遅れを表わす。
【0082】
一実施形態では、第1の電流をパルス化し、第2の電流をパルス化する。一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスは同じパルス周期とする。一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスは同一波形パターンとする。一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスは同一のピーク振幅とする。一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスの数は1とする。一実施形態では、第1の電流と第2の電流のパルスの数は2以上とする。
【0083】
一実施形態では、パルスパターンはパルスの数や各パルスの時間やパルス間の間隔あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0084】
一実施形態では、第1の電流のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電流のパルスは第2の正弦波を含み、第2の正弦波が第1の正弦波よりも1/4周期だけ遅れるようにする。一実施形態では、第1の電流のパルスは第1の正弦波の1周期を含み、第2の電流のパルスは第2の正弦波の1周期を含む。
【0085】
一実施形態では、本発明はニューロン励起法を提供し、この方法にはニューロンを回転電界にさらし、それによってニューロンを励起し、励起されたニューロンから電気信号を収集または検出する工程が含まれる。一実施形態では、ニューロンからの電気信号の収集と検出は、脳波検査法(EEG)により行なう。
【0086】
一実施形態では、回転電界は電極組立体を用いて生成する。一実施形態では、電極組立体に電圧を印加する。一実施形態では、電圧は時間と共に変動する。一実施形態では、電極組立体は空間内を回転する。
【0087】
一実施形態では、ニューロンの励起には軸索の励起が含まれる。
【0088】
一実施形態では、本方法は被験体の脳に適用される。一実施形態では、本方法は診断用に適用される。一実施形態では、本方法は治療用に適用される。一実施形態では、ニューロンの励起をニューロンの培養組織に適用する。一実施形態では、ニューロンの励起に対する培養組織の応答を検出する。一実施形態では、応答は培養組織内のスペクトル変化を撮像することで検出する。一実施形態では、応答は蛍光発色性により検出する。
【0089】
一実施形態では、回転電界がニューロンの軸索を励起し、ここで第1の軸索の長軸の向きは第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成する。一実施形態では、回転電界がニューロン個体群内に応答を生成するのに必要な少なくとも最小限の数のニューロンを励起し、それによって前記ニューロン個体群内に電気応答を生成する。一実施形態では、少なくとも2つのニューロンの軸索の長軸は平行ではない。
【0090】
一実施形態では、本発明は改善されたニューロン励起用の装置を提供し、その装置は少なくとも1組の2つの別個のコイルを備える。一実施形態では、少なくとも2つの別個のコイルは時間軸上で位相シフトさせた電流をもって駆動する。一実施形態では、コイルはその合成和が時間と共に方向を変える少なくとも2つの時間依存性電界を生み出す。一実施形態では、2個のコイルを独立して駆動する。一実施形態では、2個のコイルは2個の電源により独立して駆動する。
【0091】
一実施形態では、2個のコイルは互いに所定角度をなす。一実施形態では、2個のコイルは互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0092】
一実施形態では、少なくとも2個のコイルを流れる電流は、第1のコイルを流れる第1の電流と第2のコイルを流れる第2の電流を含み、第1の電流が第2の電流に対し所定位相を有するようにする。一実施形態では、第2の電流に対する第1の電流の位相は90度の位相とする。
【0093】
一実施形態では、第1の電流をパルス化し、第2の電流をパルス化する。一実施形態では、第1の電流と第2の電流の前記パルスの数は1以上とする。
【0094】
一実施形態では、第1の電流のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電流のパルスは第2の正弦波を含み、第2の正弦波が第1の正弦波よりも1/4周期遅れるようにする。
【0095】
一実施形態では、本発明は改善された神経刺激装置を提供し、この装置は少なくとも2対の電極を含む電極組立体を備える。一実施形態では、電極組立体を用いて回転電界を生成する。一実施形態では、少なくとも2つの電圧を前記電極組立体内の少なくとも2対の電極に印加する。一実施形態では、2つの電圧は時間と共に変動する。一実施形態では、少なくとも2対の電極は互いに所定角度をなす。一実施形態では、2対の電極は互いに直角をなし、互いに垂直とする。
【0096】
一実施形態では、少なくとも2対の電極に印加する電圧は、第1組の電極に印加する第1の電圧と第2対の電極に印加する第2の電圧を含み、第1の電圧が第2の電圧に対し所定位相を有するようにする。一実施形態では、第2の電圧に対する第1の電圧は90度の位相とする。
【0097】
一実施形態では、第1の電圧をパルス化し、第2の電圧をパルス化する。
【0098】
一実施形態では、第1の電圧のパルスは第1の正弦波を含み、第2の電圧のパルスは第2の正弦波を含み、第2の正弦波を第1の正弦波よりも1/4周期遅らせるようにする。
【0099】
一実施形態では、ニューロン刺激は軸索励起を含む。一実施形態では、本方法を被験体の脳に適用する。一実施形態では、本方法を診断用に適用する。一実施形態では、本方法を治療用に適用する。
【0100】
一実施形態では、ニューロンの励起をニューロンの培養組織に適用する。一実施形態では、ニューロンの励起に対する培養組織の応答を検出する。
【0101】
一実施形態では、回転電界がニューロンの軸索を励起し、ここで第1の軸索の長軸の向きは第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成する。
【0102】
一実施形態では、回転電界がニューロン個体群内に応答を生成するのに必要な少なくとも最小限の数のニューロンを励起し、それによってニューロン個体群内に電気応答を生成する。
【0103】
一実施形態では、前記ニューロンのうちの少なくとも2本の軸索の長軸は平行ではない。
【0104】
一実施形態では、本発明はニューロンの励起方法を提供し、この方法はニューロンを持続時間が200μsを上回る電界パルスにさらし、それによってニューロンを励起する。一実施形態では、電界パルスは持続時間が1ms以上とする。一実施形態では、本方法はニューロンから電気信号を収集または検出する工程をさらに含む。一実施形態では、ニューロンからの電気信号の収集と検出を脳波検査法(EEG)により行なう。
【0105】
一実施形態では、電界は磁界により誘起する。一実施形態では、磁界はコイルに通電することで誘起する。
【0106】
一実施形態では、コイルはコンデンサに接続する。一実施形態では、コンデンサの容量は少なくとも1.0mFとする。一実施形態では、容量は前記コンデンサ材料やコンデンサ構造やコンデンサの寸法またはそれらの組み合わせの結果である。
【0107】
一実施形態では、電界パルス持続時間は樹状突起あるいは樹状突起の個体群の励起に必要な電界持続期間の閾値を上回る。一実施形態では、ニューロンの励起は樹状突起の励起を含む。
【0108】
一実施形態では、本発明は樹状突起励起用の装置を提供し、この装置はコイルと電源とに接続したコンデンサを備え、コンデンサの容量は少なくとも1.0mFとする。
【0109】
一実施形態では、装置は持続時間が200μsを上回る電界パルスを生成し、それによって樹状突起を励起する。一実施形態では、電界パルスは持続時間を1ms以上とする。
【0110】
一実施形態では、パルス持続時間は樹状突起あるいは樹状突起の個体群の励起に必要な電界持続期間の閾値を上回る。一実施形態では、樹状突起励起がニューロンを興奮させる。
【0111】
定義
【0112】
一実施形態では、ニューロンは電気化学的信号伝達により情報を処理し伝送する神経系内の応答細胞とする。一実施形態では、ニューロンの励起はニューロンの周囲あるいはニューロンの一部に対する電界を誘起あるいは切り換えることで果たすことができる。一実施形態では、誘起電界すなわち神経細胞膜または神経細胞膜の小領域あるいは領域に作用する電界の変化がニューロンの励起を引き起こす。一実施形態では、回転電界は一つの電界であり、ここでは電界の向きが時間/空間内で変化しあるいは変動する。一実施形態では、回転電界はそれぞれの向きが空間内で回転する複数の電界成分を有する。一実施形態では、回転電界は複数の電界成分を有し、そのそれぞれの向きは時間の関数として空間内で回転する。
【0113】
一実施形態では、回転磁界は複数の磁界成分を有し、そのそれぞれの向きは固定され、その振幅が時間と共に変化する。一実施形態では、回転磁界は複数の磁界成分を有し、その向きは固定され、その振幅が時間の関数として変化する。
【0114】
一実施形態では、時間依存性電界は電界の大きさと方向が時間と共に変化する電界である。一実施形態では、電流は電気的な電流とする。一実施形態では、コイルは導電コイルである。一実施形態では、コイルはそこを通って電流を通過させることのできる導電性材料やワイヤや円形プレートや丸型あるいは螺旋状の構造をなす。
【0115】
一実施形態では、本発明の装置内の2個のコイルは2つの電源に独立して接続してあり、各電源が独立して動作するようにし、各コイル内に独立して電圧/電流が誘起されるようにする。一実施形態では、複数の出力端を有する1個の電源が少なくとも2個のコイルを作動させる。
【0116】
一実施形態では、電気信号検出ユニットや撮像ユニットやそれらの組み合わせを、脳波検査法(EEG)ユニットや磁気共鳴映像法(MRI)ユニットあるいはそれらの組み合わせで構成する。
【0117】
一実施形態では、2個のコイルは互いに垂直とする。一実施形態では、2個のコイルは互いに垂直に近い。一実施形態では、コイルの平面間の角度は80度と100度の間の範囲とする。
【0118】
一実施形態では、他方の電流に対する一方の電流の90度の位相は、他方の電流の類似の周期関数に対する一方の電流の周期的な電流関数の1/4周期の遅れを表わす。本実施形態によれば、電流関数の全周期は360度で表わされる。一実施形態では、90度の位相は第2の電流に対する前記第1の電流の1/4周期の遅れを表わす。一実施形態では、1周期は周期関数の1周期である。
【0119】
一実施形態では、2個のコイルが誘起する2つの磁界が誘起する回転電界に関する波形公式は下記の如く記述され、すなわち一方のコイルが放電を開始し、1/4周期後に、第2のコイルが放電を開始する。第1のコイルの生成電界はAcos(2πt/T)であり、ここでTはサイクル時間であり、Aは振幅である。第2のコイルの生成磁界はAcos(2πt/T−π/2)であり、2つの電界が互いに垂直で、ピーク振幅とサイクル時間において等しい場合、そのときは2つの電界の合成和は270度の回転を遂行する。
【0120】
一実施形態では、パルス化電流はコイルに対しパルスとして導入される電流である。一実施形態では、パルス期間中にコイルに電流が流れ、パルス間の間隔ではコイルに一切電流が流れないかあるいはごく最小限の電流しか流れない。一実施形態では、パルス間の間隔にコイルを流れる最小電流は、本発明の方法について有効磁界を生成するのに必要な閾値未満とする。一実施形態では、電流周波数は本発明のコイルを流れる交番電流の周波数とする。一実施形態では、波形パターンを電流関数のパターンとする。一実施形態では、波形パターンを電流対時間の関数とする。一実施形態では、電流振幅やピーク振幅は本発明のコイルを流れる電流の値あるいは最高値を表わす。一実施形態では、パルスパターンは電流パルスの数や各電流パルスの時間や電流パルス間の間隔あるいはその組み合わせによって規定する。
【0121】
一実施形態では、電流の波形は正弦波とする。一実施形態では、2つの異なるコイルを流れる2つの電流間の位相は第1の電流については正弦波で、第2の電流については余弦波で表わすことができる。
【0122】
一実施形態では、電極組立体は少なくとも2つの電極を含む。一実施形態では、少なくとも2個の電極に電圧を印加することで、電極間の領域に電界を生成する。一実施形態では、電極の位置を変えるか、あるいは3以上の電極に電圧を印加することで、電極間の領域あるいは電極間の領域の一部に回転電界を生成することができる。
【0123】
一実施形態では、電圧は電気的な電圧とする。一実施形態では、容量なる用語は電磁気学と電子工学において用いられる用語である。一実施形態では、容量は電荷を保持する物体の能力である。
【0124】
一実施形態では、大容量は軸索励起電界用の50〜400μFの範囲にある任意の値あるいは樹状突起励起用の1mFを上回る任意の容量値とする。
【0125】
一実施形態では、樹状突起はニューロンの枝分かれした突起であり、それらは他の神経細胞から受けた電気化学的な刺激をそこから樹状突起が突出するニューロンの細胞本体あるいは細胞体に伝えるよう動作する。電気的な刺激は、樹状突起の心軸を挿通する様々な点に位置するシナプスを介して上流側のニューロンにより樹状突起上へ伝達される。樹状突起は、これらのシナプス入力の統合と活動電位がニューロンにより生成される範囲の特定に重要な役割を果たす。一実施形態では、軸索は神経細胞本体や細胞体から遠くへ電気インパルスを伝える神経細胞あるいはニューロンの長く細い突起である。
【0126】
一実施形態では、神経突起はニューロンの細胞本体からのあらゆる突起を指す。この突起は、軸索あるいは樹状突起のいずれかとすることができる。一実施形態では、活動電位は神経細胞に所定距離に亙り信号を搬送させることのできる電気化学的活動の自律再生的波形とする。一実施形態では、活動電位は神経細胞が生成する主要電気信号であり、これは神経細胞の軸索膜の特定のイオンへの浸透性変化から生起する。一実施形態では、活動電位(神経インパルスあるいはスパイクとしても公知)は、幾つかの種類の細胞膜に沿って移動する電圧のパルス様波形とする。一実施形態では、ニューロンの興奮や興奮するニューロン、あるいは「興奮」や「興奮中」や「興奮する」なる用語は、かく説明したニューロン内で生起する可能性のある活動事象を意味する。
【0127】
寸法と値
【0128】
一実施形態では、下記パラメータが磁気パルスの振幅と周期と、コンデンサに対する電圧負荷とコイルのインダクタンスLとコンデンサの容量Cとを決定する。
【0129】
一実施形態では、コンデンサに対する電圧負荷Vは0V〜5kVの範囲とする。一実施形態では、コンデンサに対する電圧負荷Vは最大20kVまで負荷をかけるよう作成することができる。一実施形態では、コイルのインダクタンスLは0μHと50μHとの間の範囲にある。一実施形態では、コイルのインダクタンスLは1μHと50μHとの間の範囲にある。一実施形態では、コンデンサの容量は109μFとする。一実施形態では、樹状突起励起では、コンデンサの容量は1mFとする。一実施形態では、樹状突起励起ではコンデンサの容量を5mFとする。一実施形態では、コンデンサの容量は1mFと5mFとの間の範囲とする。
【0130】
一実施形態では、これらのパラメータから得られるサイクル時間(すなわちパルス幅)は100μとと5msの間の範囲とする。
【0131】
一実施形態では、本発明の方法に用いる刺激装置は下記のパラメータを有する電源とコンデンサとコイルとを備え、すなわちV=0〜5kV,L=10〜50μH,C=109μHであり、得られるサイクル時間は200μs〜500μsである。
【0132】
一実施形態では、コイルを有する刺激装置は最大100Hzの刺激レートを有する単一TMSあるいは複数TMS用に用いることができる。(培養)シャーレや動物やヒトの被験体に対するコイルの向きは、変えることができる。
【0133】
一実施形態では、ニューロンあるいはニューロン集合体の励起に用いる電界強度は50〜500V/mの範囲とする。一実施形態では、使用する電界強度は少なくとも100V/mとする。
【0134】
一実施形態では、使用する磁界強度が0.1T〜5Tの間の第1の回転電界を生成する。一実施形態では、使用する電界強度は少なくとも100V/mとする。
【0135】
一実施形態では、コイルを流れる電流は1kA〜10kAの範囲とする。一実施形態では、コイルを流れる電流は少なくとも1kAとする。
【0136】
一実施形態では、第1のコイルと第2のコイルを流れる電流は互いに90度の位相を有する。別の実施形態では、電流位相は85度と95度の間の範囲とする。別の実施形態では、電流位相は1度と90度の間の範囲とする。一実施形態では、電流位相は90度と180度の間の範囲とする。一実施形態では、電流位相は180度と270度の間の範囲とする。一実施形態では、電流位相は270度と359度の間の範囲とする。一実施形態では、電流位相は零度以外の他の任意の度数とする。一実施形態では、電流位相度は電流対時間のしかるべき周期関数を呈する電流を指す。一実施形態では、電流対時間の周期関数は正弦波により表わされる。一実施形態では、他の任意の位相と波形関数の組み合わせは、円形でない(例えば、特定例のニューロンに有利とすることのできる楕円形あるいはあらゆる任意の円形に近い形の)回転電界を生成するのに役立てることができる。
【0137】
一実施形態では、90度の位相は前記第2の電流に対する前記第1の電流の1/4周期の遅れを表わす。一実施形態では、周期遅れは0.20周期と0.30周期の間の範囲とする。一実施形態では、周期遅れは0.01周期と0.50周期の間の範囲とする。一実施形態では、周期遅れは0.50周期と0.99周期の間の範囲とする。一実施形態では、周期遅れは一方の電流の別の電流に対する遅れを指し、ここで両電流は電流対時間のしかるべき周期関数を呈する。一実施形態では、電流対時間の周期関数は正弦波により表わされる。
【0138】
一実施形態では、2個のコイル内の2つの電流のうちの一方のパルスだけを用いる。別の実施形態では、2以上のパルスを用いる。一実施形態では、少なくとも2個のコイル内の電流パルスは同一パルス周波数とする。別の実施形態では、少なくとも2個のコイル内の電流パルスは異なるパルス周波数とする。一実施形態では、パルス周波数は1Hzとする。一実施形態では、パルス周波数は50Hzとする。一実施形態では、パルス周波数は1Hzと50Hzの間の範囲とする。一実施形態では、パルス周波数は1Hzと100Hzとの間の範囲とする。
【0139】
一実施形態では、第1の電流のパルスと第2の電流のパルスは同じ波形パターンとする。一実施形態では、パルスは異なる波形パターンとする。一実施形態では、任意のパルス波形の組み合わせが円形ではない(例えば、特定例のニューロンに有利とすることのできる楕円形あるいはあらゆる任意の円形に近い)回転電界を生成するのに役立てることができる。
【0140】
一実施形態では、電流ピーク振幅は1kA〜10kAの間の範囲とする。
【0141】
一実施形態では、特定の刺激事象に用いるパルスの数は1とする。一実施形態では、特定の刺激事象に用いるパルスの数を1と50の間の範囲とする。一実施形態では、特定の刺激事象に用いるパルスの数を1と100の間の範囲とする。一実施形態では、特定の刺激事象に用いるパルスの数を100と1000の間の範囲とする。
【0142】
一実施形態では、各パルスの時間を1マイクロ秒と100マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を10マイクロ秒と100マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を50マイクロ秒と100マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を100マイクロ秒と200マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を100マイクロ秒と1000マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を100マイクロ秒と500マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を100マイクロ秒と2000マイクロ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を1ミリ秒と10ミリ秒の間の範囲とする。一実施形態では、各パルスの時間を1ミリ秒と5ミリ秒の間の範囲とする。
【0143】
一実施形態では、パルス間の間隔をほぼ20ミリ秒とする。一実施形態では、パルス間の間隔を10ミリ秒と30ミリ秒の間の範囲とする。一実施形態では、パルス間の間隔を1ミリ秒とする。一実施形態では、パルス間の間隔を1ミリ秒と10ミリ秒の間の範囲とする。一実施形態では、パルス間の間隔を10ミリ秒と100ミリ秒の間の範囲とする。一実施形態では、パルス間の間隔を10μsと30秒の間の範囲とする。一実施形態では、パルス間の間隔を数秒台とする。一実施形態では、パルス間の間隔を数ミリ秒台とする。一実施形態では、パルス間の間隔を数マイクロ秒台とする。
【0144】
一実施形態では、一方のコイルを流れる一方の電流パルスは1周期の正弦波を含み、第2のコイルを流れる第2の電流パルスは1周期の余弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは半周期の正弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは1/4周期の正弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは3/4周期の正弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは2周期の正弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは1周期と10周期の間の正弦波を含む。一実施形態では、電流パルスは0.01周期と0.99周期の間の正弦波を含む。
【0145】
一実施形態では、電極組立体に印加する電圧はピーク間で1Vと36Vの間の範囲とする。一実施形態では、パルスは双極性矩形パルスとする。一実施形態では、パルス幅は0.1ミリ秒と10ミリ秒の間の範囲とする。
【0146】
一実施形態では、電極組立体内の幾つかの電極に印加する電圧は時間と共に変動する。一実施形態では、電圧の時間変動は異なる方向に沿いあるいは異なる軸に沿って異なり、電圧が印加される電極間の1(または複数)の領域は電界の変動に遭遇する。
【0147】
一実施形態では、電極組立体は空間内を回転する。一実施形態では、電極組立体もしくはその一部は90度回転する。一実施形態では、電極組立体を180度回転させることができる。一実施形態では、電極組立体を360度以下回転させることができる。
【0148】
一実施形態では、本発明はニューロンの励起方法を提供し、この方法はニューロンを持続時間が100μsを上回る第1の電界パルスにさらし、ニューロンを刺激する工程が含まれる。
【0149】
一実施形態では、電界パルスの持続時間は1ms以上の持続時間とする。一実施形態では、パルス持続時間すなわち立ち上がり時間は100μsと1000μsの間の範囲とする。一実施形態では、パルス持続時間すなわち立ち上がり時間は750μsと1250μsの間の範囲とする。一実施形態では、パルス持続時間すなわち立ち上がり時間は1msと10msの間の範囲とする。一実施形態では、パルス持続時間すなわち立ち上がり時間は0.5msと2msの間の範囲とする。一実施形態では、パルス持続時間すなわち立ち上がり時間は0.9msと100msの間の範囲とする。
【0150】
一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は少なくとも0.1mFとする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は少なくとも1.0mFとする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は少なくとも4.8mFとする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は少なくとも1.0mFとする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は少なくとも0.05mFとする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は0.1mFと10mFの間の範囲とする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は1mFと5mFの間の範囲とする。一実施形態では、コイルに接続するコンデンサの容量は10mFと50mFの間の範囲とする。
【0151】
一実施形態では、コイル巻数は20巻きと80巻きの間の範囲とする。一実施形態では、コイル巻数は10巻きと50巻きの間の範囲とする。一実施形態では、コイル巻数は10巻きと100巻きの間の範囲とする。一実施形態では、コイル巻数は40巻きと100巻きの間の範囲とする。
【0152】
一実施形態では、コイルインダクタンスLは1μHと50μHの間の範囲とする。一実施形態では、コイルインダクタンスLは1μHと10μHの間の範囲とする。一実施形態では、コイルインダクタンスLは25μHと50μHとの間の範囲とする。
【0153】
一実施形態では、コイル内/外径は100mmとする。一実施形態では、コイル内/外径は10mmとする。一実施形態では、コイル内/外径は5mmと200mmの間の範囲とする。一実施形態では、コイル内/外径は10mmと50mmの間の範囲とする。一実施形態では、コイル内/外径は50mmと100mmの間の範囲とする。一実施形態では、コイル内/外径は100mmと200mmの間の範囲とする。
【0154】
一実施形態では、コイルは導電材料で作成する。一実施形態では、コイルは金属で作成する。一実施形態では、コイルは銅で作成する。一実施形態では、コイルは絶縁銅線で作成する。一実施形態では、銅線の厚みは0.01インチと0.25インチの幅とする。一実施形態では、コイル線の厚み、幅、あるいは直径は0.005インチと0.50インチの間の範囲とする。
【0155】
一実施形態では、刺激装置は4.8mFの容量と6.5kVの最大電圧負荷を含む。一実施形態では、刺激装置は0.1mFの容量と22kVの最大電圧負荷を含む。
【0156】
一実施形態では、本発明の方法により生成する磁界は0Tと1Tの間の範囲とする。一実施形態では、本発明の方法により生成する磁界は1Tと10Tの間の範囲とする。一実施形態では、本発明の方法により生成する磁界は0.5Tと1.5Tとの間の範囲とする。一実施形態では、本発明の方法により生成する磁界は0.2Tと3Tの間の範囲とする。
【0157】
一実施形態では、本発明の方法に用いる電界の刺激閾値は2個のコイルが誘起する回転電界により励起する培養組織について200V/mと1000V/mの間の範囲とする。一実施形態では、本発明の方法の2個のコイル構成が生成する電界は1V/mと200V/mの間の範囲とする。一実施形態では、刺激閾値電位は電極組立体が励起する培養組織について1V/mと20V/mの間の範囲とする。
【0158】
一実施形態では、単位msあるいはmSはミリ秒を意味する。一実施形態では、μsは1(または複数)のミリ秒を意味する。一実施形態では、mFはミリファラッドを意味する。一実施形態では、μHはマイクロヘンリーを意味する。一実施形態では、物理パラメータを記述する全ての単位は従来の単位が用いられ、全ての当業者に認識される。
【0159】
幾何学的形状と向き
【0160】
一実施形態では、コイルは球形とする。一実施形態では、コイルは8の字形状を有する。一実施形態では、コイルは四つ葉クローバー形状とする。一実施形態では、コイルは蝶形状とする。一実施形態では、2個のコイルを用いる。一実施形態では、3個または4個のコイルを用いる。一実施形態では、5個または6個のコイルを用いる。一実施形態では、コイルの数は2コイルと10コイルの間の範囲とする。一実施形態では、コイルの数は3コイルと5コイルの間の範囲とする。一実施形態では、コイルの数は6コイルと20コイルの間の範囲とする。一実施形態では、各コイル平面は他の全てのコイル平面に対し垂直とする。一実施形態では、コイル平面は同一平面に横たわる。一実施形態では、少なくとも2個のコイルの平面間には90度以外の角度が存在する。一実施形態では、多数のプロトコルを用いて回転電界を拡張することができる。2つの別個のコイルシステムの任意の組み合わせを複合し、回転電界の若干の変形例、例えば真円の代りに楕円形の回転を生成することができる。両コイルの幅は必ずしも同一ではなく、かくして2個のコイルのサイクル時間と相対的な方位も同一とは限らない。
【0161】
材料
【0162】
一実施形態では、コイルは金属製のワイヤとする。一実施形態では、金属は銅とする。一実施形態では、コイルの内容積は磁性材料を充填する。一実施形態では、コイルの内容積空間に鉄を充填する。一実施形態では、コイル導電線を絶縁する。一実施形態では、コイルは巻きを含む。一実施形態では、電極は金属で作成する。一実施形態では、金属は白金か金かパラジウムで構成する。一実施形態では、電極は銀で作成する。一実施形態では、コイルは冷却システムにより囲繞する。一実施形態では、動作時に冷却システムがコイルの過熱を阻止する。
【0163】
方法
【0164】
一実施形態では、本発明は軸索の極めて効率的な励起を提供し、それによってニューロンを興奮させる。これは、所定電界を用いて所望の軸索個体群の全てあるいは大半の方向(軸索は方向性である)を走査することで達成される。一実施形態では、これはこれら全ての方向を走査する回転電界を作成することで達成され、その方向性とは無関係に軸索を励起することができる。これには、互いに所定角度(例えば、垂直)に構成した2個のコイルを有する装置が含まれ、それぞれが異なる電流/電力源に別個に接続し、2個のコイルを時間軸上で互いにシフト位相にて駆動する。位相シフトは、電界を空間内の異なる方向に時間と共に走査させる。
【0165】
一実施形態では、本発明はニューロンの樹状突起ツリーを励起し、それによってニューロンを興奮させる方法を提供する。一実施形態では、本方法にはだだ一つの電界の印加が含まれ、この電界の空間的な方向は決定的なものではなく、すなわちニューロンは多数の樹状突起を有し、それらが全ての方向に枝分かれしている。一実施形態では、電界が良好な一般的な方向を指向する限り、それは樹状突起を励起し、回転させる必要はない。この態様に従って一実施形態では、装置は極めて大きなコンデンサを有する特定の電源の設計に基づき、極めて長いパルス(一実施形態では従来のTMS刺激装置よりも5倍は長い)を給送する。
【0166】
一実施形態では、本発明の方法は生体外で用いる。一実施形態では、本発明の方法は生体内で用いる。一実施形態では、本発明の方法は細胞培養組織に用いる。一実施形態では、本発明の方法は二次元細胞培養組織に用いる。一実施形態では、本発明の方法は三次元細胞培養組織に用いる。一実施形態では、本発明の方法は極めて小さな細胞培養組織に用いる。一実施形態では、本発明の方法に用いる細胞培養組織の大きさを記述する少なくとも一つの次元は1μmと20μmの間の範囲とする。一実施形態では、本発明の電界回転方法あるいは樹状突起励起方法をシャーレ内の培養組織に適用する場合、シャーレの大きさ、すなわち培養組織を成長/付着させるカバースリップの大きさと培養組織カバースリップのパターン形成方法を、培養組織内のニューロンの神経励起を達成すべく刺激装置と刺激装置のパラメータに適合するよう調整する。一実施形態では、本発明の方法は動物に用いる。一実施形態では、本発明の方法はヒト被験体に用いる。
【0167】
一実施形態では、本発明は本発明の方法に従いTMSを遂行するTMSツールを提供する。一実施形態では、機器は機器あるいは機器内の要素が本発明の方法に従いTMSを遂行するよう設計する。一実施形態では、本発明はTMS用のシステムを提供する。一実施形態では、本発明のTMSシステムは本発明の方法に従いTMSを遂行する。一実施形態では、本発明は本発明の方法従い作動するTMSツールを含むキットを提供する。
【0168】
一実施形態では、方法すなわち本発明の方法の幾つかの要素を自動的に遂行する。一実施形態では、方法すなわち本発明の方法の要素はロボットにより遂行する。一実施形態では、本発明の方法により動作する本発明のシステムは被験体による家庭での使用に向け設計する。
【0169】
一実施形態では、本発明の装置やツールや機器やシステムはさらに、精査対象である被験体や動物や培養組織に対し所望の位置にコイルや電極組立体を保持するスタンドや支持体および/または他の付属品を備える。一実施形態では、本発明のコイルや電極や装置やツールや機器やシステムはさらに、試験対象領域あるいは治療領域に対しコイルや電極を位置決めするのを助ける可動部品を備える。一実施形態では、可動部品はコンピュータ化されたシステムにより制御する。
【0170】
一実施形態では、本発明の方法はさらにニューロンからの信号の収集あるいは検出を含む。一実施形態では、脳からの信号の検出あるいは収集はEEGおよび/またはMRIにより行なう。一実施形態では、脳からの信号の検出あるいは収集は運動フィードバック、すなわちEMGを用いた記録あるいは運動の監視による筋肉の起動により行なう。一実施形態では、脳からの信号の検出あるいは収集は人的フィードバック、例えば視覚的な知覚(閃光感覚)あるいは他の感覚の報告により行なう。
【0171】
一実施形態では、本発明の方法により遂行する樹状突起励起に用いる磁気パルスの時間規模は250マイクロ秒を上回る。一実施形態では、本発明の方法により遂行する樹状突起励起に用いる磁気パルスの時間規模は500マイクロ秒を上回る。一実施形態では、本発明の方法により遂行する樹状突起励起に用いる磁気パルスの時間規模は1000マイクロ秒を上回る。
【0172】
一実施形態では、本発明により提供される装置ならびにツールは、片や長いパルス時間を必要とする樹状突起励起に対する必要性を満たすよう設計され、作動する。一実施形態では、より長い時間のニューロン励起用の装置の設計は比較的大きなコンデンサを要求するものであり、この種のコンデンサはここで説明する如く本発明の装置内に配設する。
【0173】
一実施形態では、生体外での信号の検出あるいは収集は電気生理学(電極)により、あるいは活動の光学的撮像すなわちカルシウム撮像や電圧感応染料撮像等により遂行する。
【0174】
一実施形態では、電極組立体を用い回転電界を生成する。一実施形態では、電気励起は少なくとも2対の互いに独立した電極を用いて行なう。一実施形態では、第1の正弦波を第1の電極対に印加し、第1の正弦波とは90度ずれた第2の正弦波を第2の電極対に印加する。一実施形態では、2対の電極は互いに垂直とする。
【0175】
一実施形態では、本発明の方法とツールを神経関連疾病や疾患の診断および/または治療に使用する。別の実施形態では、本発明の方法ならびにツールは神経関連疾患すなわち疾患の取得リスクの診断に用いる。別の実施形態では、本発明の方法ならびにツールは神経関連疾患あるいは障害の取得リスクを有する被験体の治療に用いる。
【0176】
一実施形態では、本発明の方法による治療および/または診断の対象となる疾患には認知疾患や認知障害が含まれる。一実施形態では、認知疾患や認知障害には、アルツハイマー病や多重梗塞性痴呆症やパーキンソン病のレビー小体変異体を含む記憶障害、学習障害、アルツハイマー病、多重梗塞性痴呆症、さらにクロイツフェルト−ヤコブ病、コルサコフ障害、貧血、脳卒中、頭部外傷、低血糖、一酸化炭素ガス中毒、リチウム中毒、ビタミン(B1やチアミンやB12)欠乏、鬱病性障害、電気ショック療法(ECT)後障害、あるいは当業者が理解するその他が含まれる。
【0177】
一部実施形態では、本発明のシステムならびに方法を用い、軽度の認知障害かあるいはより深刻な神経精神病学的疾患、すなわち認知疾患か障害かを診断してそれらを識別し、あるいは一部実施形態では、後者に対する前者の可能性あるいは経時的進行度を示すことができる。
【0178】
一実施形態では、軽度認知障害には、例えば軽度認知機能障害(MCI)(ここでは、最小から軽度までの範囲の認知機能障害を含む)、軽度記憶喪失、加齢関連記憶障害(AAMI)、加齢関連認知能低下(ARCD)、良性老人性物忘れ(BSF)、あるいは非痴呆認知障害(CIND)を含めることができる。軽度認知障害には、症候群の臨床的特徴としての認知機能障害を必要とする障害が含まれ、被験体は痴呆症に対する診断規範、例えば痴呆症に対するDSM−IV TRに合致しない。これらの障害のうち、軽度認知障害は臨床的な顕著な機能障害が無い状態での痴呆、すなわち最も一般的には記憶の欠如によって特徴付けられる疾患である。一実施形態では、本発明はMCIを抱える被験体がアルツハイマー病を発症しそうかどうか予測する方法を提供する。
【0179】
本発明の方法ならびにシステムは追加の臨床試験および/または追加の臨床的評価あるいは治療方法ならびにツールと併せ使用することができる。この種の方法の組み合わせは、被験体の神経学的疾患の評価や診断や特定に用いることができる。この種の方法とツールの組み合わせは、神経精神病学的疾患や認知疾患あるいは障害の発症について被験体が抱える可能性あるいは相対的リスクの評価あるいは特定に用いることができる。方法あるいはツールのこの種の組み合わせは、本願明細書において上記と下記に一覧掲載するいずれかの障害等の障害を抱えるかあるいは患っている被験体の治療に用いることができる。方法とツールのこの種の組み合わせは、本願明細書において上記と下記に一覧掲載するいずれかの障害等の神経精神病学的疾患や認知疾患や認知障害を発症する相対的リスクを抱える被験体の治療に用いることができる。
【0180】
この種の追加の臨床試験あるいは評価法は、これらに限定はされないが、記憶や他の認知能力の神経精神病学的試験、日常の機能活動を遂行する能力の試験、脳の撮像試験(MRI(磁気共鳴映像法)やSPECT(単一光子放射コンピュータ断層撮影)やPET(陽電子放射断層撮影))、血液や脳脊髄液や他の体液および組織内のバイオマーカの試験である。EEG、言語試験、そして視力、聴覚、体性感覚(感触)、味覚および嗅覚(匂い)応答に関する知覚系応答試験。全身運動スキルと局部的運動スキル試験等。一実施形態では、撮像方法には蛍光団の検出が含まれる。一実施形態では、蛍光団あるいは他のバイオマーカを本発明の方法を用いた被験体に対するTMSの実施前またはこれと並行して被験体や細胞培養組織に投与する。一実施形態では、被験体に対する蛍光団あるいは他のバイオマーカの投与は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、頭蓋内、鼻腔内、皮下、腸管外、経粘膜、経皮、あるいは局在塗布とする。一実施形態では、被験体の脈や心拍数や体温を本発明に記述する磁気刺激方法に関連して計測する。
【0181】
一実施形態では、被験体あるいは培養組織に対する本発明のTMS法の遂行に先立つかあるいはこれと併せ薬物を投与する。一実施形態では、被験体に対する薬物の投与は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、頭蓋内、鼻腔内、皮下、腸管外、経粘膜、経皮、あるいは局在塗布とする。
【0182】
本願明細書に記載するTMS法は、おそらく従来のTMS法と併せ使用される。本願明細書に説明するTMS法は、おそらく従来のTMS法の前にあるいは並行して、または後続させて使用される。
【0183】
本発明のシステム/方法により確認しかつ/または治療することのできる神経精神病学的疾患や認知疾患あるいは認知障害には、これらに限定はされないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、コルサコフ健忘症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、鬱病、精神分裂症、進行した摂食障害、前頭側頭骨性痴呆症、レビー小体型痴呆症および/または血管性痴呆症が含まれる。
【0184】
一実施形態では、本発明の方法ならびにツールは、アスペルガー症候群、自閉症、背痛、脳膿瘍、脳損傷、脳外傷、脳腫瘍、脊椎腫瘍、慢性疼痛、慢性局所疼痛症候群、累積的外傷障害、痴呆、癲癇、頭部損傷、頭痛、運動スキル障害、筋ジストロフィー、エイズの神経学的徴候、遷延性植物状態、下肢静止不能症候群、脊髄外傷等の神経疾患や神経障害に対する診断および治療を提供する。
【0185】
一実施形態では、本発明の方法ならびにツールは診断治療に用い、またあらゆる神経障害や精神疾患あるいは関連疾病や疾患に対する治療上のあるいは臨床的な手法の一部として用いることができる。
【0186】
一実施形態では、本発明の方法を用い、初代海馬や皮質やDRG培養組織や接続されたニューロンの他の培養組織等の細胞培養組織を刺激する。
【0187】
一実施形態では、本発明は軸索励起を提供する。一実施形態では、本発明は樹状突起励起を提供する。一実施形態では、本発明は軸索と樹状突起の両方の励起を提供する。一実施形態では、軸索刺激や樹状突起あるいはそれらの組み合わせは、電気刺激を用いて遂行することができる。
【0188】
一実施形態では、本発明は一次元培養組織に回転電界刺激をもたらす。一実施形態では、本発明は二次元培養組織に回転電界の刺激をもたらす。一実施形態では、本発明は人体に回転電界の刺激をもたらす。一実施形態では、本発明は動物に回転電界の刺激をもたらす。一実施形態では、本発明はラットに回転電界の刺激をもたらす。
【0189】
一実施形態では、樹状突起の励起追求に並行し、軸索励起を相当に改善することができる。一実施形態では、培養シャーレ内と生体脳内の両方においてこの種の励起により励起するより多数のニューロンの標的化が可能となる。一実施形態では、この種の励起は臨床応用を有する。
【0190】
一実施形態では、例えば本発明の方法の四つ葉クローバー設計に用いる電界及び磁気構成等のパラメータを、本発明の方法ならびに装置が臨床使用できるよう選択する。一実施形態では、本発明の方法と装置はヒト被験体の治療に用いる。
【0191】
一実施形態では、ほぼ1ミリ秒の立ち上がり時間を有するパルスを用いることで、樹状突起の応答は大幅に向上し、樹状突起と加えて軸索に対して電位の変化を生み出すことができる。
【0192】
二次元培養組織を磁気的に刺激する能力は、特に標準的な単一のあるいは8の字平面コイルを用いてこれを達成する報告された困難さ(Rotem,A.、MosesE.、「Magnetic Stimulation of One−Dimensional Neuronal Cultures(一次元神経培養組織の磁気刺激)」、Biophys.J.、2008年6月、94(12):5065〜78)に鑑み、重要である。この能力は電界の回転の直接的な結果のようであり、それは2つの事実を際立たせるものである。すなわち、1)軸索がTMS期間中に励起される神経領域である点と、2)軸索は二次元培養組織中には好適な方位を一切有していない点とである。
【0193】
驚くべきことに、一実施形態において交差コイルにより励起しうる15個の培養組織のうち4個が1組のうちの単一のコイルだけで励起されている。このことは、単一コイルに応答した培養組織が正しい方位を向く培養組織内の幾つかの軸索を偶然有し、誘起電界によって励起させえたとの事実によるものと考えられる。1個のコイルの電界は空間的に配向されるため、培養組織の励起が方向性に依存し、培養組織をコイルに対し45度回転させることで消失させうることは驚くに値しない。
【0194】
回転電界は、正しい方位を見いだし、その方向に横たわる軸索を励起するだけのこと以上のことを為す。この種の方位が存在する、すなわち培養組織内の幾つかの軸索が単一軸に沿って配向される確率は、恐らく低いものである。他の全ての場合、軸索方位は不規則に分布し、これらの培養組織の励起を可能にするのが交差コイルの走査能力である。
【0195】
明白な大きな関心の一つの問題点は、ヒト被験体に対する交差コイルの幾何学的形状の適用にある。ヒトの頭部を全体として交差コイル内に配置することができるよう、十分大きなコイルを製造することは可能である。誘起電界はそこでシステムの2つの極を接続する軸周りの空間内で回転し、その極でだけ最強となるものと予想される。同様の強度の非回転電界もまた、各個別コイルの周囲に沿って誘起されることになる。その結果、この構成は多くの領域、すなわち標的としていない筋肉領域や脳領域の両方を励起する不利を被ることになる。このことを例証するシミュレーションを、ここで下記に提示する。
【0196】
ヒトの頭部に対するrfTMSの異種の実装は、四つ葉クローバー設計(方法と材料参照)であり、それは公知の8の字コイルの等価物を使用しつつ焦点の絞られた電界走査能力を達成するものである。この構成は、交差コイルのものよりも臨床用途に相応しいものと期待される。ヒト被験体に対するrfTMSの使用は、その不規則な軸索方位が向きの固定された非回転電界を用いる励起に従わない現在アクセス不能な皮質領域の励起を結果的に可能にすることになる。
【0197】
rfTMSの他の明確な利点は、常に時間を浪費し、往々にして扱いにくく高価な立体視的器具を必要とするコイルの正確かつ一貫した位置決めならびに配向についての必要性を取り除くことにある。無論、例えば標的とする領域の解剖学的組織が既知である場合に達成できる高い特異性を標準的な単一コイルもしくは8の字コイルがもたらす誘起電界の特別な配向に対する利点が存在する。
【0198】
一技術としてのrfTMSが本来相補的で、大半の他の技術革新、例えば深層TMSあるいは新規反復周波数プロトコルと縦列使用できることは、強調されて然るべきである。追加電源と二重磁石は、その利点が簡単に経費を克服するパルス対形成設定において招来されるものに匹敵する最小限の技術的あるいは経済的負担を課す。
【0199】
電界方位に対する感度は、軸索の方向性と、磁気刺激が軸索励起を介して得られる事実とにその起源を有する。ニューロンが樹状突起において励起しうる場合、そのときは電界の向きに対する依存性は(rfTMSにおける如く)消失する筈であり、何故なら樹状突起ツリーは等方性だからである。それらの異なる物理的な属性が故に、樹状突起の励起はより長い持続時間のパルスの印加を必要とするが、これらは本願明細書において下記に説明するように電気的な励起を用いるだけで現在のところアクセス可能である。磁気刺激において長いパルスを達成するのは容易であり、当方の研究所において現在追求し続けているものである。
【0200】
実施例
【0201】
実施例1:回転電界用の磁気刺激装置
【0202】
回転電界は、その磁界が互いに垂直で、その電流を1/4周期だけ互いに位相シフトさせた2組の独立したコイルを用いることで誘起させた。2つの磁気正弦波状パルス間の90度位相遅れの導入は、それぞれが別個の8の字コイルを制御する2個の独立した電源を正確にトリガーすることで達成された。
【0203】
電源 使用した2個の電源はMagstim Rapid TMS(英国 Magstim社製)と手製の刺激装置(HMS)とした。HMSは22kVの最大電圧負荷を有する0.1mFコンデンサ(米国 Maxwell Laboratories社製)に基づくものであり、市販のMagstim Rapidにより検体に供給される磁界の5倍は強い磁界を得ることができる。2つの磁気パルス間に正確な位相遅れを達成すべく、2個の電源を信号発生器(米国 Keithley instruments社製Keithley3390 50MHz任意波形/関数発生器)を用いて同期させた。信号発生器は、1/4周期だけ分離された2つのトリガー信号を発する。この遅れは使用するコイルに従って変化し、50〜150μsの範囲にある。
【0204】
磁気コイル 磁気コイルは、0.01インチの厚みで0.25インチの幅のポリエステル被覆された矩形銅線(米国 MWS Wire Industries社製)を用い、研究所において作成した。ワイヤは、特注のフレーム周りに巻回した。ワイヤの巻線はガラス繊維により絶縁し、エポキシ(2部のEPDN814中の1部のベルサミド140)内に鋳込んである。交差コイル構成(下記参照)について、それぞれ巻数10と11で内径が75mmと62mmを用いた。四つ葉クローバー構成(下記参照)について、内径20mmを用いた。1組の巻数25のコイルをMagstim社製電源に接続し、巻数30の1組のコイルをHMSに接続した。
【0205】
四つ葉クローバーコイル 図3に示すこの種の可能な構成の一つは、2個の標準的な8の字コイルを用いるものである。各8の字コイルの中心の真上の誘起電界は2個のコイル中心を結ぶ軸に垂直に配向され、かくして2個の8の字コイルは互いに垂直な電界を生み出す。両方の8の字コイルが共にする放電は、2つの電界の和である生成ベクトルを招来することになる。第1の8の字コイルに遅れること1/4周期での第2の8の字コイルの放電は、システムの中心での回転電界に帰結する。2つの磁気正弦波状パルスの間の90度の位相遅れの導入は、それぞれが別個の8の字コイルを制御する2つの独立電源の正確なトリガーにより達成される。
【0206】
交差コイル 第2の構成が図3に示されており、その平面は垂直な2個のコイルを含んでいる。2個のコイルが交差する極近くでは、電界は大きく、コイル平面において接線方向を向いている。四つ葉クローバー設計における如く、各コイルを別個の電源に接続し、磁気正弦波状パルスの一方を他方に対し90度位相シフトさせた。交差コイル(図1参照)については、それぞれ巻数10と11で内径が75mmと62mmの2個の円形コイルを用いた。2個のコイルは、その平面を垂直に保ったまま、一方を他方の内側に配置した。交差コイルのホットスポットは、2個のコイルが交差(図1d〜図1f)し、コイルの誘起電界が互いに垂直となる箇所の構造体の極の近くに位置する。この構成は四つ葉クローバーコイルよりも単純であり(下記参照)、相互誘導損を被らず、何故なら2個のコイルの平面は垂直だからである。
【0207】
誘起電界の計測とコイルの較正
【0208】
コイルの誘起電界を計測すべく、直径40mmのピックアップコイルを用いた。ピックアップコイルは、その平面に平行な被計測コイル内に配置した。計測は、ピックアップコイルが磁気コイルに同心であるか否かには感応しなかった。ピックアップコイルを用い、交差コイルを下記の如く較正する。先ず、刺激装置の電力設定と各コイルの生成誘起電界との間の関係を計測し、刺激装置と円形コイルの各組について線形な関係を見いだした。次に、HMSコイル対Magstim社製コイルの比例定数を比較し、Magstimの100%電力設定での誘起電界がHMSの3kVの設定に等価であることが判った。このことで回転磁界パルスの最大強度が特定され、このパルスは交差コイルについてはカバースリップ平面のホットスポットにおける345±25V/mに等しいものであった。この等価性を我々の試験期間中に使用し、パルス強度の任意の設定に対し3kV/100%の比を維持した。例えば、最大強度の半分であるパルスの給送時に、50%Magstim電力と1.5kVのHMS負荷を用い、一方で最大強度の3/4のパルスについて、75%Magstim電力と2.25kVのHMS負荷を用いた。
【0209】
ホットスポットでの誘起電界の推定 神経細胞の位置における誘起電界を推定すべく、コイル内部に配置する導電媒体の寸法について検討した。導電媒体外部のあらゆる誘起電界が表面電荷により界面において相殺されるため、一様な磁界から生ずる電界を算出する関連する長さ尺度はコイル平面に平行な導電媒体の断面のそれとなる。二次元培養組織の刺激の場合、球状の球体(球体の平坦化された基底が故に、直径が5cmで、残りは球体上部の空気となる)の寸法としてこの長さ尺度を採用した。ラット上のTMSの場合、これは各ラットの耳と耳の間の間隔(直径で3〜4cmの間)として採用した。
【0210】
四つ葉クローバーコイル構成についての誘起電界のシミュレーション
【0211】
シミュレーション用の誘起電界の算出
【0212】
四つ葉クローバーコイルが生成する電界は、数値計算により算出されたものである。この目的に合わせ、コイル巻線の形状はx軸とy軸の三次多項スプライン関数で記述し、続いて長さ1mmの直線セグメントベクトルlに離散化させた。ワイヤの高さについての根拠を明らかにするため、それぞれ全電流の1/6を導通させるz軸方向にそれぞれ1mmシフトさせた6個のコイル例を考察した。全てのセグメントは、下式に従い磁気ベクトル電位Aに寄与し、すなわち
【0213】
【数5】

【0214】
ただしrはセグメントiの中心を指すベクトルである。一旦ベクトル電位が算出されると、誘起電界は
【0215】
【数6】

【0216】
となる。
【0217】
算術計算の精度は、分析解[3]との比較により理想化した円形コイルについて試験した。1mmのセグメント内での離散化はコイル表面から1cmで評価した電界強度における0.01%未満の誤差をもっての分析解の再現には十分であった。螺旋状巻線を用いるシミュレーションもまた比較したが、それはそれらが事実上内部巻線が最も外側の巻線の縮尺変更した写しとなるシミュレーションに見てとれるからである。唯一の差異は、各巻線の始端と終端とに見てとれた。四つ葉クローバーコイルの始端と終端にはワイヤがコイルの中心から離間させて配置してあり、小さな偏差はシミュレーションには関係がなく、内部ループの形状再生用に縮尺変更を用いた(図13もまた参照)。
【0218】
神経細胞励起用の閾値
【0219】
四つ葉クローバーコイルの刺激効果を判定すべく、コイルと神経突起との間の様々な向きについての予想励起閾値を推定した。その中心上方3cmの四つ葉クローバーコイルが誘起する電界Eを用い、受動ケーブル(直径1μm、長さ1mm)の細胞膜電位Vに対する影響を、電界Eの根拠となる生成項を用いたケーブル方程式を使用し、前に説明した如く(RotemおよびMoses、2008年)算出した。
【0220】
【数7】

【0221】
軸方向長定数λ=384μmと時定数τ=300μsを選択し、脱髄化軸索の状態を近似(RotemおよびMoses、2008年)したが、l軸はケーブルに平行に走り、Eはこの方向へのEの射影である。ケーブル端は封止を想定しており、下記の境界条件を意味する。
【0222】
【数8】

【0223】
軸方向抵抗rを用いることで、生成項は電流注入
【0224】
【数9】

【0225】
と等価となり、2箇所の端部で反対の符号を有する。シミュレーションを遂行すべく、シミュレーション環境NEURONのIClamp法を用いた。x軸と神経突起との間の各角度について、特定の最大コイル電流について誘起電界と、かくしてE(EmaxとEmax)のx軸成分とy軸成分の特定の最大振幅を算出した。次に、射影Eを用い、細胞膜電位の生成時間経過を算出した。この計算は、EmaxとEmaxを2値探索にて可変して反復し、細胞膜が我々の首尾良き励起用の規準である丁度30mVだけ減極する値を見いだした。角度やコイル電流、加えてNEURONに対する個別の電流注入I通信もまた含めた系統的可変を、Pythonを用いて自動化した。
【0226】
回転磁界計測
【0227】
平面配置された円形の交差コイルを用い、電界を計測した。計測間でプローブを90度回転させ、各コイルごとに別個に、組み立てられた交差コイルの両方について計測を実行した。生成電界は図1に示してあり、ここでは位相シフトは明白であり、2つのベクトルの合成和もまた図示してある。総生成電界は、3/4周期すなわち300μs台でほぼ270度走査する回転を遂行する。図1e内を回転するベクトルの半径により表わされるその大きさは、最初の1/4回転期間中は単一コイルを用いて得られる300V/m台のピーク強度に比肩する値に事実上一定に保たれる。
【0228】
二次元神経培養組織の励起
【0229】
交差コイルを用いる主要な成果は、二次元(2D)培養組織に注目することで即理解することができる。以前は磁気パルスを用いた二次元培養組織の刺激は不首尾であったが、交差コイルではこれは簡単に達成された。図8に示す如く、試験した二次元培養組織の半分(N=30のうちの15個)は、磁気刺激により励起した。驚くべきことに、この幾何学的形状を用いることで、交差コイルに対し応答した二次元培養組織のほぼ25%(N=4)が、その閾値電界が交差コイルと同様かまたは15%より強固であるかのいずれかである交差コイルシステムのうちの単一のコイルだけを用いた場合の励起にも応答した。励起に関する推定電界閾値は平均値360±40(SD)V/m台で分布し、ID培養組織について先に報告された(300±130(SD)V/m)に符合した。方向性に関する試験は2個の培養組織に見いだされ、これらを単一コイルと交差コイルの両方により励起した。培養組織をコイルに対し物理的に45度回転させることで、初期の無作為の配向が励起を可能にする上で支配的かどうかを試験しうる。単一コイルによる刺激は事実この回転に感応し、閾値は当方のシステムの最大電界強度を越えて上昇した。顕著なことに、交差コイルを用いた刺激は回転に対し一切感度の違いを示さず、培養組織は全ての角度で応答した。
【0230】
初代培養組織の調製 新型刺激装置の効果を試験すべく、刺激装置に対し先ず二次元培養組織を適用した。全ての処置は、Weizmann Ethics Committee(ワイツマン倫理協会)(IACUC)により承認されたものである。培養組織は、先のプロトコル(M.Papa、M.C.Bundman、V.Greenberger、M.Segal、J Neurosci、第15巻1頁(1995年1月))に従い、胎児期のラットの分離海馬から調製した。細胞は、カバースリップごとに300万細胞の密度にて30mmの第0番ガラス製カバースリップ(ドイツ Menzel−Glaser社製)上に塗布した。
【0231】
初代培養組織の経血管磁気刺激(TvMS) 磁気刺激に対する培養組織の応答を計測するため、培養組織をカルシウム感応蛍光染料にて染色し、培養組織に磁気パルスを印加しつつ、カルシウム中間体を撮像(参照により全て組み込まれる、A.Rotem、E.Moses、Biophys J.、第94巻5065頁(2008年6月))した。培養組織に対するコイルの位置決めは、2組のコイルで異なるものであった。
【0232】
交差コイルの場合(図1c)、培養組織は直径がほぼ60mmのほぼ球形のガラス製球体内に配置し、この球体の底部には平坦化してその上にカバースリップを載置する直径がほぼ30mmの円形基部を作成した。球体の頂部にはスロットが開口しており、これを介してカバースリップを挿入しえ、また球体の基部には直径が13mmの視認孔を基部周縁近くに作成し、光学的な透明なガラス製カバースリップでもって被覆した。極の一方の上に平坦な基部を配置し(図1c参照)、視認孔の下側に倒立顕微鏡を配置した状態で、ガラス球体を交差コイル内に配置した。
【0233】
四つ葉クローバーのコイルの場合、培養組織はコイル中心の5mm下方にその平面に平行に配置した。培養組織の下側に、倒立顕微鏡を配置した。
【0234】
麻酔をかけたラットの経頭蓋磁気刺激 新型の磁気刺激装置の励起力をさらに評価すべく、ケタミンとキシラジンを用いて麻酔をかけた成体ラットに対するそれらの影響を試験した。キシラジンと組み合わせたケタミンは、ラットにおいて絶対不可欠の機能を抑圧することなく十分な麻酔と痛覚消失を示した(S.Zandieh、R.Hopf、H.Redl、M.G.Schlag、Spinal Cord、第41巻16頁(2003年1月)参照)。全ての処置は、Weizmann Ethics Committee(ワイツマン倫理協会)(IACUC)により承認されたものである。実験に先立ち、腹腔内注射する75mg/kgケタミン(オランダ Kepro社製)と7.5mg/kgキシラジン(オランダ Kepro社製)を用いて麻酔をかけた。ラットは実験の開始に先立つほぼ1時間前に麻酔をかけ、その後に動物の麻酔レベルに従い75mg/kg/hの平均レートで実験を通じてずっとケタミンを腹腔内注射した。実験終了時に、ラットは150mg/Kgのペントバルビトン・ナトリウム(イスラエル CTS社)を用いて安楽死させた。
【0235】
TMSプロトコル期間中、ラットを位置決めし、その運動皮質が刺激の焦点となるようにした。交差コイルの場合、一方の極の真下に運動皮質を配置した状態で、ラットを2個のコイルの内部に配置した。四つ葉クローバーコイルの場合、コイルの中心は運動皮質の直上に配置した。
【0236】
ラットに対するTMSの影響を監視すべく、誘起した筋肉電位をEMGシステムを用いてその後ろ脚から記録した。刺激閾値、すなわちEMGに記録される応答の生成に必要な最小磁界を計測した。
【0237】
ラットの運動皮質の励起
【0238】
交差コイル構成はラットに対する適用に特に良好に適合するものであり、何故なら電界が最大である場合に、2個のコイルの接合軸上に皮質を配置した状態で、動物の頭部は交差コイル(その共有直径について、図1fを参照)の内部に良好に嵌まるからである。動物の脚部上の筋電図(EMG)電極により計測される如く、磁気刺激に対する腓腹筋の応答について9匹の動物を試験した。この試験における主要な難題は、運動皮質の励起と脊髄の励起とを差別化することにある。これは、2つの励起モードにおいて異なる応答潜伏期を用いて行なった。
【0239】
図2dに示す如く、刺激に対する腓腹筋の応答は複雑であるが、再現可能であった。2つの典型的な潜伏期を観察したが、それらは脊椎応答(3.2±0.2ms(SE))と皮質応答(7.4±0.4ms(SE))に関連するものであった。大半の事例では、脊椎応答と皮質応答は潜伏期により確実に差別化しうる。頸部転位あるいは脊椎の切断は、より長い潜在性応答を消滅させ、一方でより短い応答を数分に亙り賦活状態のままとした。脊椎応答は一般に、皮質応答よりも低い磁気刺激閾値で励起された。
【0240】
試験した9匹の動物のうち8匹に、交差コイル刺激に対する運動皮質の明確な応答が観察された。これらの動物のうち4匹は、交差コイルシステムのうちの単一コイルだけを用いた刺激に対しても応答した。神経培養組織の刺激時の如く、単一コイルしか用いないときは、電界閾値は二重コイルシステムのそれに常に等しいかまたはそれを上回る(0%から33%、平均で10%は高い)ものであった。励起用の推定電界閾値は、平均して250±10(SD)V/m台で分布していた。
【0241】
配向に対する皮質の応答の依存性を、交差コイルを用いて評価した。回転磁界を用いることで、コイルと動物との間の全ての相対的な方位で依存性は全く観察されず、同じ応答が計測され、かくしてラットの位置決めは実験の決定的なパラメータとはならなかった。対照的に、皮質応答の効果的な刺激を確実にする上で単一コイルの使用はコイル内でのラットの頭部の精密な位置を必要とした。他方、単一コイルの励起についての最適な配向が一旦定まると、単一コイルあるいは交差コイルを用いた皮質の励起に必要な閾値には識別可能な差異は皆無であった。本願明細書において下記に説明する如く、単純な円形コイルを用いて皮質を刺激する幾つかの試行を行なったが、明快な励起は全く達成されなかった。
【0242】
キシラジン麻酔注射直後に励起閾値の50%の増大が観察され、それは1時間後に基線値に減少復帰した。ケタミン麻酔注射は、被計測閾値に影響を及ぼさなかった(より詳細は、本願明細書の下記に見いだすことができる)。
【0243】
一次元初代培養組織の電気刺激 持続時間の異なる刺激に対する培養組織の応答を比較すべく、一次元培養組織を電気的に刺激した。これらの培養組織は、研究所にて開発したプロトコルを用いて13mmのガラス製カバースリップ上の厚み200μmで長さ8mmの直線にパターン形成した。詳細は、O.Feinerman、E.Moses、J Neirosci Methods、第127巻75頁(2003年7月15日)に見いだすことができ、これは参照により組み込まれる。記録シャーレ内に浸漬させた長さ2cmで3cm離間させた2本の平行な白金線(米国 A−M Systems社製で厚み0.005インチ)で出来た浸液電極を用い、刺激を与えた。刺激を与えるため、ピーク間で1〜36Vの振幅を有し0.1〜10msの間持続する双極性矩形パルスを用いた。
【0244】
結果
【0245】
回転電界刺激の計測
【0246】
図1eは、ほぼ全ての方向に走査させる試作交差コイルの生成電界を示す。
【0247】
一次元培養組織の電気刺激 軸索励起対神経突起励起の考えの背後にある原理は、直接浸液電極刺激を用いて試験することができ、何故なら電気パルスの長さが(磁気パルスとは対照的に)簡単に制御できるからである。電極による電流注入の持続時間は、100μsから10msまで簡単に可変することができる。図16は、培養組織の2つの実施例を示す。図16aに示す如く、一方は100μsのパルスを用いて既に励起してあり、電極間の電界に平行な培養組織内に十分な軸索が存在し、それらがネットワークの残りを励起することが示されている。第2の実施例は、100μsでは応答しないものの、応答に数msのパルスを必要とする培養組織である。ここでは、樹状突起の励起のみが有効であると予測される。事実、予測の如く、図14bは第1の培養組織が配向に対し極めて依存し、電界が培養組織(および軸索)に平行であるときの励起に必要な振幅が、電界が軸索に対し所定角度をなすときの励起に必要な電界を大幅に下回ることを示している。他方、樹状突起の励起により応答する培養組織は、電界に対する培養組織の配向に対する観察可能な依存性を一切持たないものである。この結果は、2つのモードの励起、すなわち樹状突起対軸索は、培養組織内の活動開始時に極めて異なる決定的な役割を果たすことができるとの理解を補強するものである。
【0248】
初代培養組織の磁気刺激 直径30mmのカバースリップ上に塗布した二次元海馬ニューロンの27個の培養組織を、試験した。これらのうち、13個を培養組織上方に水平に配置した円形コイルを用いて刺激し、10個を交差コイル構成(方法参照)を用いて刺激し、両方の方法を用いて4個を刺激した。交差コイルを用いて刺激した14個の培養組織のうち、5個が回転電界に応答し、ただ1個だけ交差システムの単一の垂直交差にも応答した(図4)。水平コイルを用いて刺激した17個の培養組織のうち、3個しか応答しなかった。両方の方法を用いて刺激した全4個の培養組織は回転磁界に応答したが、水平コイルにはこれら培養組織のうち1個しか応答しなかった。両方の方法における刺激閾値は類似しており、その平均値は460±40V/mであった。この閾値は一次元培養組織について計測した閾値よりも約50%高く、一方交差コイルの成功率(36%)は一次元培養組織よりも約50%低いものである[Rotem&Moses、Biophys J.、2008年]。結果は、図8に要約してある。
【0249】
実施例2:神経培養組織の電気励起対磁気励起
【0250】
この態様に従い、一実施形態では、磁気刺激への洞察を目的に電気刺激を試験する。長いパルス(約1ms)は磁気的ではなく電気的に刺激するのが簡単であり、2つのモードの刺激の背後の基本的なメカニズムは類似するため、電気パルスの変動する持続時間に対する培養組織の応答を調査した。これに基づき、合理的な結論と推測を磁気刺激の基本であるメカニズムに対して行なった。
【0251】
時間依存性を実証するため、電気的と磁気的の両方で刺激することのできる培養組織を試験し、電気的にしか刺激できないものと比較した。当然のことながら、磁石に応答する培養組織が短い電気パルスに応答することが判明した。明白でない点は、磁気刺激に応答しない培養組織が短いパルスにも応答せず、長い電気パルスでしか励起できない点である。
【0252】
方法:
【0253】
電気刺激装置
【0254】
神経培養組織は、円形のカバースリップ上で成長するが、本願明細書に前記した如く記録シャーレの中心に配置した。特注の環状テフロン(登録商標)製フレームを検体シャーレ内にはめ込み、培養組織上方で自由回転しうるようにした。2本の平行な長さが20mmで12.5mm離間する白金ワイヤ(米国A−M Systems社製で厚み0.005インチ)をフレームの底部に沿って培養組織のほぼ1mm上方に装着し、記録媒体内に浸漬させた。
【0255】
このワイヤをフォトカプラを介してトリガーする特注の電池給電刺激装置に接続し、給電網内に発生するあらゆる電気ノイズから検体を遮断した。刺激用に、0.01〜10msの間持続する可変持続時間とピーク間で1〜36Vの振幅を有する双極性の矩形パルスを用いた。トリガー期間とパルス持続時間は信号発生器(米国カルフォニア州サニーベール市のStanford Research Systems社製合成関数発生器DS345)により正確に制御した。
【0256】
神経培養組織
【0257】
様々な実験プロトコルを用い、異なる態様の実験用に培養組織を取得した。二次元(N=15)とパターン化一次元(N=98)の両方の幾何学的形状の培養組織を、用いた。ラットの海馬および皮質からとマウスの胸椎根部結節腫から、ニューロンを採取した。これら全ての種を用い、培養組織の電気対磁気の励起可能性を比較した。ラットの海馬培養組織は、当方の研究所において開発したプロトコルに従い成長させた13mmのガラス製カバースリップ上の200μmの厚みと8mmの長さの直線にパターン形成した。(FeinermanO.、SegalM.、MosesE.共著、「Signal Propagation along Uni−dimensional Neuronal Networks(単一方向神経ネットワークに沿う信号伝搬)」、神経生理学誌、第94巻3406〜3416頁、2005年)。
【0258】
計測
【0259】
2種類のシミュレーションどうしを比較対照すべく、培養組織の刺激に必要とされる最小の電気パルス持続時間を計測し、パルス持続時間閾値(DT)と名付けた。DTは、閾値が特定されるまで、刺激装置の電流をその最大振幅に設定し、双極性探索アルゴリズムを用いて双極性パルスの持続時間だけを調節することで特定した。
【0260】
結果:N=112の培養組織を磁気と電気の両方の励起可能性について試験した。全ての培養組織が電気刺激に応答したが、磁気刺激には16%(N=19)しか応答しなかった。全DTの分布が、図10に記載してある。磁気的に刺激可能な培養組織のDTは、I10±40μs(SE)の平均値を有しており、一方で磁気的な刺激に対応しない全ての培養組織の平均値は510±50μs(SE)であった。
【0261】
誘起電界と導電性電界の等価性
【0262】
外部電界に対する神経突起の応答を記述する受動的なケーブル方程式は、電界源に依存しない。TMSパルスが誘起する電界は、浸液電極が生み出すものと類似の強度にある。原則として、電界全体の幾何学的形状と対向イオンの動きは、厳密なコイル構成に応じて異なることがあり、境界条件は異なることもある。しかしながら、電界の方向に配向された軸索規模では、電界は実際には同一であると見なすことができる。
【0263】
電気パルスと磁気パルスの有効なパルス幅の比較対照が、何らかの配慮を保証する。手書きの図1dに示す如く、240μsの典型的な磁気正弦波状パルスは電界に対し余弦波を誘起し、ほぼ60μsは正で、I20μsは負で、60μsの残りの正段の3段を有する。細胞膜電位における対応する変化もまた双極性であり、位相π/2で最大限正であり、3π/2で最大限負である電位シフトをもたらす。比較対照すると、図10aは最初が正段で続いて負となる2段を有する双極性矩形電気パルスを示す。典型的な軸索や樹状突起の終端あるいは曲線の対応する細胞膜電位は、単極性である。この電位は対応する磁気パルス内のものに類似の値まで上昇するが、ゼロに緩和された後、反対符号まではシフトしない。
【0264】
原則として、ニューロンが負あるいは正の電位変化を受けるか否かは、活動電位を生み出す正の電位シフトに対するより高い可能性を伴ってニューロンの応答における差異を生む筈である。しかしながら、所与の方向について軸索と樹状突起が対向する両方向を指す可能性があったことを示す極性配列に対する明白な依存性は全く見つからなかった。
【0265】
磁気的に誘起されたものに似た形状の電気パルスの使用もまた、1/4周期を正方向とし、続いて2/4周期を反対の負方向とし、最終的な1/4周期を再度正方向として、試験した。この結果は、元々の使用パルスを用いたものに類似するものであった。60μs未満の持続時間のパルスに応答する全培養組織もまたTMSにより励起し、恐らくはこれらだけについてはより有意であることが分かった。これは、TMSのパルス持続時間、すなわち60μsによく符合する。より長いパルスが、より多くの培養組織を刺激する。
【0266】
DTの分布(図10b)から、より長いパルスが培養組織の刺激により有効であると結論付けることができる。このことは、磁気刺激と電気刺激との間の等価性と併せ、より長いTMSパルスが200μsの決定的な時間尺度でのニューロンの励起においてより有効となろうことを意味する。例えば、500μs持続することになるTMSパルスは全培養組織の80%を刺激すると予想される。
【0267】
従来の円形のコイルを用いる
【0268】
培養組織実験結果
【0269】
先の研究では、無作為に接続した二次元(2D)培養組織は、自家製電源([Rotem、Moses共著、生物物理学誌、2008年])が生成する高(最大5T)磁界であっても、標準的な円形コイルを用いて磁気的に刺激しえないものである。この研究は、11個の培養組織の試験に基づくものである。目下の研究では、12個の培養組織のうちの交差コイルに応答した2個は標準的コイルにも応答した(他の3個の培養組織は標準的コイルに応答し、時間経過に伴う検体の劣化が故に二重コイルを用いて試験は行なわなかった)。
【0270】
この現象についての可能な説明は、これらの培養組織では軸索の小集合が誘起電界に平行な方向に配向されるということである。電界がカバーガラス境界に同心のリング上に横たわっているため、この方向に横たわりうる軸索を調査した。この種のGFT染色ニューロンの一例が、図17に図示してある。このニューロンの軸索は3mm伸びており、カバースリップの境界に対し平行に成長している。軸索に対する境界の配向効果は、既に実証されている(Fienerman et al.共著、神経生理学誌、2005年)。実際に境界が多数のニューロンを培養組織を囲繞する縁に沿って軸索を配向させる場合、そのときはこれらは誘起電界によって刺激される筈であり、培養組織全体で活動を開始しうる。
【0271】
ラット実験結果
【0272】
皮質機能の首尾良き交差コイル励起に加え、本願明細書において前記に報じた如く、ラットは標準的な単一の円形コイルを用いて磁気的に刺激した。頸部の刺激は明白であったが、信号中の皮質成分は差別化しえないものである。それ故、頸部機能励起用の閾値に対する麻酔薬ケタミンやキシラジンの効果を特性解明するタスクに、大半は円形を用いた。交差コイルを用いた一つの実験を行ない、これらの結果を検証した。
【0273】
刺激閾値に対する麻酔の影響
【0274】
図17に示す実験において、ケタミンとキシラジンの組み合わせかあるいはケタミン単独のいずれかを用い、動物に麻酔をかけ、数服の麻酔薬を与える一方で、一連の15個の閾値計測を遂行した。図面に見てとれるように、ケタミンだけの服用後に計測される閾値は互いにせいぜい10%だけ相違し、一方でキシラジンは閾値をほぼ5%増大させた。閾値特定の精度が10%台であるため、電界はキシラジン適用の近傍で計測してはならない(緩和時間はデータ合わせからほぼ1時間であると導出)が、ケタミンの適用は一般の統計的な計測値の偏差を上回って閾値に影響を及ぼすことはないと結論付けることができる。
【0275】
四つ葉クローバー設計
【0276】
交差コイル構成は、目下臨床用途にある標準的なコイルとは根本的に異なるものである。この構成は、培養組織とラットに対し極めて効率的であることが判っているが、これをヒトに適用する際に何らかの合併症を生ずることがある。特に、大型の構造と鳥籠様の構成内部での頭部の位置決めは被験体の心をくじき、実験中の患者の気持ちの落ち着きを妨げうる。加えて、交差コイルが誘起する電界は標準的なコイルよりも脳内のずっと深い領域に達し、実験期間中に非標的領域あるいは筋肉を賦活することができる。
【0277】
一つの代替例として、一実施形態として四つ葉クローバー構成をここで説明する。四つ葉クローバー構成は、目下利用可能な従来の製品に類似するものである。四つ葉クローバーは、2組の「8の字」コイルで構成してある(図13)。各組は、独立した電源に接続してある。2組は同一平面内に互いに垂直に配置され、かくしてホットスポットにおいてそれらの生成電界は垂直となる。交差コイル設定と同様、対をなすパルスは位相90度分だけ引き離される。ホットスポットの生成電界は、1個の被合成パルス期間中に3/4周期が完了する。Z軸上での強度と収束と減衰についての電界のその他の特性は、従来の8の字コイルのそれに類似するものである。
【0278】
四つ葉クローバーコイルの改良版が、高密度四つ葉クローバー(図13)である。このコイルでは、各円形構成要素はホットスポット近傍で歪み、ホットスポット上方の空隙を空にするよう最小化し、かくしてホットスポットの容積を減少させつつホットスポット自体の電界強度を増大させる。
【0279】
実施例3:樹状突起励起用の磁気刺激装置
【0280】
一実施形態では、樹状突起励起は刺激装置の容量を増大させることで可能とされる1msの立ち上がり時間を有する磁気パルスを必要とする。これに合わせ、1msの立ち上がり時間を有するほぼ10Tを給送可能な4.8mFのコンデンサ容量Cと6.5kVの最大電圧負荷(米国 General Atomics Electronic Systems社製3650CMF3480)とを用い、大型の刺激装置を構成した。2つのイグナイトロンI1,I2(米国 National Electronics社製NL7703)を使用した。I1はコイルを介する放電の始動に用い、I2はコイルを短絡し、コイルを介する放電を停止させるのに用いた(図7)。こうして、パルスの始端はI1を用いて制御することができ、パルスの終端はI2により制御することができる。一実施形態では、本発明の刺激装置に用いるコンデンサは、http://www.gaesi.com/EP/capacitors/series−cmf−self−healing−capacitors.phpに記載されたGeneral Atomics社製コンデンサ等の市販のコンデンサとすることができる。
【0281】
特許請求の範囲の事項中、「一つの(a)」や「一つの(an)」や「その(the)」は、その逆が示されたり、あるいはさもなくば文脈から明白でない限り、1またはそれ以上を意味する。群の構成要素間に「あるいは」や「および/または」を含む請求項や説明は、群構成要素のうちの1つ、2以上あるいは全てが、正反対かあるいはさもなくば文脈から明白でない限り、所与の製品あるいは工程に提示され、用いられ、さもなくば関連する。本発明は、群のうちの厳密に1個の構成要素が所与の製品あるいは工程に提示され、用いられ、さもなくば関連する実施形態を含んでいる。本発明は、群構成要素のうちの2以上あいるは全てが所与の製品あるいは工程に提示され、用いられ、さもなくば関連する実施形態もまた含んでいる。さらに、他に指示するか、あるいは反論あるいは不一致が生ずる筈であることが当業者に明白でない限り、本発明が様々な実施形態において、1以上の掲載請求項からの1以上の限定や構成要素や句や記述用語等を同一の基幹請求項に依存する別の請求項に導入する全ての変形や組み合わせや置換を提供することは、理解されたい。要素が一覧として例えばマーカッシュ群書式等にて提示される場合、要素の各下位群もまた開示され、1(または複数)の任意の要素を群から取り除くことができることを、理解されたい。一般に、本発明あるいは本発明の態様が特定の要素や特徴等を含むと称される場合、本発明あるいは本発明態様の幾つかの実施形態がこの種の要素や特徴等で構成あるいは実質構成されることは、理解さるべきである。簡明さに配慮し、これら実施形態は本願明細書ではいずれの場合も同一の用語では具体的に記載されていない。幾つかの請求項は便宜上従属形式で提示してあるが、出願人は任意の従属請求項を独立形式に書き換え、独立請求項あるいはこの種の従属請求項が従属する他の任意の1(または複数)の請求項の構成要件や限定を含める権利を留保するものであり、この種の書き換えた請求項は独立形式にて書き換える前にそれが如何なる形式(補正済みあるいは非補正済み)であろうと、あらゆる点で従属請求項と等価であるとみなすべきである。
【0282】
本発明のしかるべき特徴を本願明細書に例示し説明してきたが、多くの改変と置換と変形と等価物がここで当業者には想起されよう。それ故、添付特許請求の範囲が本発明の真の趣旨に含まれるこの種の全ての改変と変形を網羅する意図のあることは、理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善されたニューロン励起方法であって、
1以上のニューロンを回転電界にさらすことによって前記ニューロンを励起するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記回転電界が、少なくとも2つの時間依存性電界の合成和であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの時間依存性電界が、少なくとも2つの時間依存性磁界によって誘起されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの時間依存性磁界が、少なくとも2つの別個の互いに独立したコイルに電流を流すことによって誘起されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの別個の互いに独立したコイルが、前記電流の時間におけるシフト位相によって駆動されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コイルが、その合成和の方向が時間と共に変わる少なくとも2つの時間依存性電界を生成することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの時間依存性電界が互いに対して所定の角度をなすようにしたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記角度が90度であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記2つのコイルが互いに独立して駆動されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記2つのコイルが、2つの電源によって、互いに独立して駆動されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記2つのコイル及び前記2つの電源が装置の一部であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記装置がシステムの一部であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記システムが、電気信号検出ユニット、撮像ユニットまたはそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2つのコイルが互いに対して所定の角度をなして配置されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記2つのコイルが互いに対して直角をなして配置されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つのコイルを流れる前記電流が、第1のコイルを流れる第1の電流と、第2のコイルを流れる第2の電流とを含み、
前記第1の電流が前記第2の電流に対して所定の位相を有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の電流に対する前記第1の電流の前記位相が90度の位相であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記90度の位相が、前記第1の電流が前記第2の電流よりも1/4周期遅れることを表わすことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の電流がそれぞれパルス化されていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のパルス周期を有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一の波形パターンを有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のピーク振幅を有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が1であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が2以上であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記パルスのパターンが、パルスの数、各パルスの時間、パルス間の間隔、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の電流の前記パルスが第1の正弦波を含み、
前記第2の電流の前記パルスが前記第1の正弦波よりも1/4周期遅れる第2の正弦波を含むことを特徴とする特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の電流のパルスが前記第1の正弦波の1周期を含み、
前記第2の電流のパルスが前記第2の正弦波の1周期を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ニューロンから電気信号を収集または検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記ニューロンからの電気信号の収集または検出を脳波検査法(EEG)により行なうことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記回転電界を、少なくとも2対の電極を含む電極組立体を用いて生成したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記電極組立体の前記少なくとも2対の電極に対して少なくとも2つの電圧を印加するようにしたことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記電圧が経時的に変化することを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2対の電極が、互いに対して所定の角度をなして配置されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも2対の電極が、互いに対して直角をなして配置されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも2対の電極を流れる前記電流が、第1の電極を流れる第1の電流と、第2の電極を流れる第2の電流とを含み、
前記第1の電流が前記第2の電流に対して所定の位相を有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の電流に対する前記第1の電流の前記位相が90度の位相であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記90度の位相が、前記第1の電流が前記第2の電流よりも1/4周期遅れることを表わすことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1及び第2の電流がそれぞれパルス化されていることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のパルス周期を有することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一の波形パターンを有することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のピーク振幅を有することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が1であることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が2以上であることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項44】
前記パルスのパターンが、パルスの数、各パルスの時間、パルス間の間隔、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の電流の前記パルスが第1の正弦波を含み、
前記第2の電流の前記パルスが前記第1の正弦波よりも1/4周期遅れる第2の正弦波を含むことを特徴とすることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の電流のパルスが前記第1の正弦波の1周期を含み、
前記第2の電流のパルスが前記第2の正弦波の1周期を含むことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ニューロンから電気信号を収集または検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項48】
前記ニューロンからの電気信号の収集または検出を脳波検査法(EEG)により行なうことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ニューロンの励起が軸索の励起を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項50】
当該方法が被験体の脳に適用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項51】
当該方法が診断に適用されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
当該方法が治療に適用されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記ニューロンの励起を神経培養に適用したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記ニューロンの励起に対する前記神経培養組織の応答を検出することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記応答を前記神経培養組織におけるスペクトル変化を撮像することによって検出するようにしたことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記スペクトル変化が蛍光発光の変化を含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記回転電界で前記ニューロンの軸索を励起し、第1の軸索の長軸の向きが第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記回転電界で、前記ニューロン群の応答を生成するのに必要な最小限数のニューロンを励起することによって、前記ニューロン群の大域応答を生成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記ニューロンのうちの少なくとも2つの軸索の長軸が互いに平行でないことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
改善されたニューロン励起装置であって、1組の少なくとも2つの別個のコイルを備えることを特徴とする装置。
【請求項61】
前記少なくとも2つの別個のコイルが、時間軸上で位相シフトさせた電流によって駆動されることを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記コイルが、その合成和の方向が時間と共に変わる少なくとも2つの時間依存性電界を生成することを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項63】
前記2つのコイルが互いに独立して駆動されることを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項64】
前記2つのコイルが、2つの電源によって、互いに独立して駆動されることを特徴とする請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記2つのコイル及び前記2つの電源が装置の一部であることを特徴とする請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記装置がシステムの一部であることを特徴とする請求項65に記載の装置。
【請求項67】
前記システムが、電気信号検出ユニット、撮像ユニットまたはそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の装置。
【請求項68】
前記2つのコイルが互いに対して所定の角度をなして配置されることを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項69】
前記2つのコイルが互いに対して直角をなして配置されることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項70】
前記少なくとも2つのコイルを流れる前記電流が、第1のコイルを流れる第1の電流と、第2のコイルを流れる第2の電流とを含み、
前記第1の電流が前記第2の電流に対して所定の位相を有することを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項71】
前記第2の電流に対する前記第1の電流の前記位相が90度の位相であることを特徴とする請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記90度の位相が、前記第1の電流が前記第2の電流よりも1/4周期遅れることを表わすことを特徴とする請求項71に記載の装置。
【請求項73】
前記第1及び第2の電流がそれぞれパルス化されていることを特徴とする請求項61に記載の装置。
【請求項74】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のパルス周期を有することを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一の波形パターンを有することを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項76】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のピーク振幅を有することを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項77】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が1であることを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項78】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が2以上であることを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項79】
前記パルスのパターンが、パルスの数、各パルスの時間、パルス間の間隔、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項78に記載の装置。
【請求項80】
前記第1の電流の前記パルスが第1の正弦波を含み、
前記第2の電流の前記パルスが前記第1の正弦波よりも1/4周期遅れる第2の正弦波を含むことを特徴とすることを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項81】
前記第1の電流のパルスが前記第1の正弦波の1周期を含み、
前記第2の電流のパルスが前記第2の正弦波の1周期を含むことを特徴とする請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記ニューロンから電気信号を収集または検出する収集器または検出器をさらに備えることを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項83】
前記収集器または検出器が、脳波検査(EEG)収集器または検出器であることを特徴とする請求項81に記載の装置。
【請求項84】
改善されたニューロン励起装置であって、少なくとも2対の電極を含む電極組立体を備えることを特徴とする装置。
【請求項85】
前記電極組立体が、回転電界の生成に用いられることを特徴とする請求項84に記載の装置。
【請求項86】
前記電極組立体の前記少なくとも2対の電極に対して少なくとも2つの電圧を印加するようにしたことを特徴とする請求項85に記載の装置。
【請求項87】
前記電圧が経時的に変化することを特徴とする請求項86に記載の装置。
【請求項88】
前記少なくとも2対の電極が、互いに対して所定の角度をなして配置されることを特徴とする請求項84に記載の装置。
【請求項89】
前記少なくとも2対の電極が、互いに対して直角をなして配置されることを特徴とする請求項88に記載の装置。
【請求項90】
前記少なくとも2対の電極を流れる前記電流が、第1の電極を流れる第1の電流と、第2の電極を流れる第2の電流とを含み、
前記第1の電流が前記第2の電流に対して所定の位相を有することを特徴とする請求項84に記載の装置。
【請求項91】
前記第2の電流に対する前記第1の電流の前記位相が90度の位相であることを特徴とする請求項90に記載の装置。
【請求項92】
前記90度の位相が、前記第1の電流が前記第2の電流よりも1/4周期遅れることを表わすことを特徴とする請求項91に記載の装置。
【請求項93】
前記第1及び第2の電流がそれぞれパルス化されていることを特徴とする請求項87に記載の装置。
【請求項94】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のパルス周期を有することを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項95】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一の波形パターンを有することを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項96】
前記第1及び第2の電流の前記パルスが互いに同一のピーク振幅を有することを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項97】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が1であることを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項98】
前記第1及び第2の電流の前記パルスの数が2以上であることを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項99】
前記パルスのパターンが、パルスの数、各パルスの時間、パルス間の間隔、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項98に記載の装置。
【請求項100】
前記第1の電流の前記パルスが第1の正弦波を含み、
前記第2の電流の前記パルスが前記第1の正弦波よりも1/4周期遅れる第2の正弦波を含むことを特徴とする請求項93に記載の装置。
【請求項101】
前記第1の電流のパルスが前記第1の正弦波の1周期を含み、
前記第2の電流のパルスが前記第2の正弦波の1周期を含むことを特徴とする請求項100に記載の装置。
【請求項102】
前記ニューロンから電気信号を収集または検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項84に記載の装置。
【請求項103】
前記ニューロンからの電気信号の収集または検出を脳波検査法(EEG)により行なうことを特徴とする請求項102に記載の装置。
【請求項104】
前記ニューロンの励起が軸索の励起を含むことを特徴とする請求項60または84に記載の装置。
【請求項105】
当該方法が被験体の脳に適用されることを特徴とする請求項60または84に記載の装置。
【請求項106】
当該方法が診断に適用されることを特徴とする請求項60または84に記載の装置。
【請求項107】
当該方法が治療に適用されることを特徴とする請求項60または84に記載の装置。
【請求項108】
前記ニューロンの励起を神経培養に適用したことを特徴とする請求項60または84に記載の装置。
【請求項109】
前記ニューロンの励起に対する前記神経培養組織の応答を検出することを特徴とする請求項108に記載の装置。
【請求項110】
前記応答を前記神経培養組織におけるスペクトルまたは蛍光発光の変化を撮像することによって検出するようにしたことを特徴とする請求項109に記載の装置。
【請求項111】
前記回転電界で前記ニューロンの軸索を励起し、第1の軸索の長軸の向きが第2の軸索の長軸の向きに対し非ゼロ角度を形成するようにしたことを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項112】
前記回転電界で、前記ニューロン群の応答を生成するのに必要な最小限数のニューロンを励起することによって前記ニューロン群の大域応答を生成するようにしたことを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項113】
前記ニューロンのうちの少なくとも2つの軸索の長軸が互いに平行でないことを特徴とする請求項112に記載の装置。
【請求項114】
ニューロンの励起方法であって、
ニューロンを200μs以上の持続時間を有する第1の電界パルスにさらすことによって前記ニューロン励起するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項115】
前記第1の電界パルスの持続時間が1μs以上であることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記ニューロンから電気信号を収集または検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記ニューロンからの電気信号の収集または検出を脳波検査法(EEG)により行なうことを特徴とする請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記第1の電界が、磁界により誘起されることを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項119】
前記磁界が、コイルに電流を流すことによって誘起されることを特徴とする請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記コイルがコンデンサに接続されていることを特徴とする請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記コンデンサの容量が少なくとも1.0mFであることを特徴とする請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記容量が、前記コンデンサの材料、前記コンデンサの構造、前記コンデンサの寸法、またはそれらの組み合わせにより決定されることを特徴とする請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記パルスの持続時間が、樹状突起の励起に必要な電界持続時間の閾値を上回るようにしたことを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項124】
前記ニューロンの励起が樹状突起の励起を含むことを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項125】
樹状突起の刺激装置であって、
コイル及び電源に接続されたコンデンサを備え、
前記コンデンサが少なくとも1.0mFの容量を有することを特徴とする装置。
【請求項126】
前記装置が、200μs以上の持続時間を有する電界パルスを生成することによって樹状突起を励起することを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項127】
前記電界パルスの持続時間が1ms以上であることを特徴とする請求項126に記載の装置。
【請求項128】
励起したニューロンから電気信号を収集または検出する電気信号検出器または収集器をさらに備えることを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項129】
前記検出器または収集器が脳波検査(EEG)検出器であることを特徴とする請求項128に記載の装置。
【請求項130】
前記電界が、磁界によって誘起されることを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項131】
前記磁界が、コイルに電流を流すことにより誘起されることを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項132】
前記コンデンサの容量が少なくとも1.0mFであることを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項133】
前記容量が、前記コンデンサの材料、前記コンデンサの構造、前記コンデンサの寸法、またはそれらの組み合わせにより決定されることを特徴とする請求項132に記載の装置。
【請求項134】
前記パルスの持続時間が、樹状突起の励起に必要な電界持続時間の閾値を上回ることを特徴とする請求項125に記載の装置。
【請求項135】
前記樹状突起の励起がニューロンの励起を引き起こすことを特徴とする請求項125に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−519050(P2012−519050A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552573(P2011−552573)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000171
【国際公開番号】WO2010/100643
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(502282973)エダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー,リミティド (3)
【Fターム(参考)】