説明

結合剤組成物、及び低圧縮性薬物を所定硬度及び脆砕性の錠剤に加工する方法

【解決手段】低圧縮性薬物のタブレット(錠剤)を、結合剤組成物を用いる直接圧縮によって作製するが、結合剤組成物は、重合体、好ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP)及び酢酸ビニル(VA)の共重合体であって、規定されるガラス転移温度(Tg)を持つものであり、可塑剤、例えば、有機性エステル又はポリオールで、少なくとも10℃だけ共重合体のTgを低減させるものと混ぜられる。結合剤組成物及び薬物は、予め定める硬度及び脆砕性の錠剤中に、及び許容可能な圧縮力で直接圧縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の背景)
本発明は、低圧縮性(poorly compressible)薬物の直接圧縮に関し、及び更に詳しくは、かかる薬物のための新しく、及び優れた結合剤組成物に関し、これは、その混合物が、所望の硬度及び脆砕性(friability)の薬物錠剤(drug tablets)中に、及び許容可能な圧縮力で加工されるのを可能にする。
【背景技術】
【0002】
(2.従来技術の記載)
ナプロキセン及びアセトアミノフェンのような低圧縮性薬物は、目下、湿式造粒によって錠剤(タブレット)に作製されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、かかる薬物の錠剤を直接圧縮によって形成する方法を提供することは有利であり、それは商業上より一層有利な処理である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
低圧縮性薬物の錠剤を、結合剤組成物を用いる直接圧縮によって作製するが、結合剤組成物は、重合体、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)及び酢酸ビニル(VA)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンの共重合体で、規定されるガラス転移温度(Tg)を持つものと、それと共に用いる有効量の可塑剤で、前記共重合体のTgを少なくとも10℃だけ低減させるものとの混合物である。結合剤組成物と薬物は、混ぜられ、及び直接圧縮によって許容可能な圧縮力で錠剤に形成される。得られる錠剤は有利な硬度及び脆砕性を持つ。
【0005】
好ましい共重合体は、60重量%のPVP及び40(wt.)%のVAであり、 106℃のTgを持ち、及び可塑剤は、それと共に約1-25重量%、好ましくは5-15(wt.)%の量で混ぜもの中に存在するとき、この共重合体のTgを少なくとも20℃だけ低減させる。代表的な可塑剤には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、アセチル化脂肪酸グリセリド(acetylated fatty acid glyceride)、ヒマシ油(キャスターオイル)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、トリ酢酸グリセリル(glyceryl triacetate)、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体及びプロピレングリコールが包含される。好ましい可塑剤は、有機性エステル(organic esters)及びポリオール、例えば、クエン酸トリエチル及びポリエチレングリコールである。
【0006】
概して、結合剤組成物は、約30-90μ(ミクロン、μm)の平均粒度を持つ自由流動性(free-flowing)粉体である。
【0007】
本発明では、典型的な低圧縮性薬物は、ナプロキセン又はアセトアミノフェンである。
【0008】
本発明の方法は、約1-25重量%の結合剤組成物及び少なくとも50%、好ましくは50-90重量%の薬物で、残余が他の賦形剤(excipients)である混ぜものの直接圧縮によって遂行される。約3000-7000lbs.[約1360.8-約3175.2kg(1lb=453.6gとして換算する)]での直接圧縮は、少なくとも約8Kp(kP)、概して8-20Kp(kP)の硬度、及び約3%未満、好ましくは1-3%の脆砕性を持つ錠剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な記載)
次に、本発明を以下の例を参照してより一層詳細に例証する。
選定する重合体及び可塑剤の有効性のための試験を、次の例1において説明するが、ここでは、成分の水性分散系を調製し、よく混合し、及び基材上で乾燥する。次いで、ガラス転移温度Tgを定め、及び対照(可塑剤なしのもの)と比較する。有効性の基準は、Tg(可塑剤を伴うもの)での少なくとも10℃だけの低減である。
【0010】
(例1)
PVP/VA共重合体(重量で60:40)及び可塑剤の結合剤組成物の水性分散系を、実験室規模の噴霧乾燥機において噴霧乾燥した。得られる粉末をプラスチック袋中に収集した。各組成物についてのガラス転移温度を定め、及び可塑剤のない共重合体(対照)と比較した。結果を次の表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
表1でのデータは、可塑剤が少なくとも10℃だけ、及び27(21)℃まで共重合体のTgを低減させることを実証する。
【0013】
(例2)
添加したPEG4000(5及び10%w/w)又はクエン酸トリエチル(TEC)(5及び10%w/w)を用いて可塑化されたPVP/VA(60:40)の結合剤組成物の自由流動性粉末で、30μの粒度を持つものと、低圧縮性薬物(アセトアミノフェン)とを、75:25の薬物:結合剤組成物の重量比で調製した。次いで、0.5%のシリカ(二酸化ケイ素)及び0.5%の潤滑剤を添加し、及び混合物を(ポンド、lbsで)3000(約1360.8kg)、5000(約2268kg)又は7000(約3175.2kg)の圧縮力で圧縮した。得られるタブレットの硬度及び脆砕性の値を次の表2に示す。
【0014】
【表2】

【0015】
表2でのデータは、PEG又はTECを用いて可塑化した薬物タブレットが、対照についての5から7.4kPまでだけに比べ、13.9から26.1kPまでの硬度値を持つことを実証する。また、脆砕性は、対照(可塑剤を伴わない共重合体)についての3-9%から、添加される可塑剤によって0.27から0.64%までだけに低減された。
【0016】
(例3)
本発明の結合剤組成物の特性を定め、及び対照としての共重合体自体と比較した。試験粉末を、実験室の機器において(組成物A)、又は空気ほうき(air broom)装置を伴うか又は伴わない回転式ホイール(rotary wheel)アトマイザを用いる生産のマイナーな噴霧乾燥機(5'x 5')において(組成物B)調製した。これらの共重合体を対照として用いるか、又は可塑剤(組成物C)及び(組成物D)と混ぜる。乾燥を、150℃の入口温度、80℃の出口温度及び50℃の供給温度で遂行した。結果を次の表3に与える。
【0017】
【表3】

【0018】
表3での結果は、結合剤組成物C及びDが、対照の共重合体A又はBのTgを>20℃だけ低減させ、共重合体粉末の粒度を減少させることを示す。
【0019】
(例4)
タブレットへの直接圧縮用に準備される結合剤組成物及び薬物の典型的な調剤物を次の表4に与える。
【0020】
【表4】

【0021】
(例5)
次の表5は、種々の圧縮力で例4の調剤物を直接圧縮することによって得られるタブレットの硬度及び脆砕特性を示す。
【0022】
【表5】

【0023】
表5での結果は、本発明の結合剤組成物が、タブレット中に存在する多量の薬物(77%)とでも、低い脆砕性を硬いタブレットに提供することを示す。
【0024】
(例6)
タブレットは、上記のように、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンを、結合剤組成物中の重合体成分として用いて調製することができる。同様の結果が得られる。
【0025】
(例7)
タブレットは、可塑剤として次の:ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、トリ酢酸グリセリル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体及びプロピレングリコールを用いて調製することができる。同様の結果が得られる。
【0026】
本発明を特にその一定の具体例に関して説明するが、変形及び修飾が行われ、それらがその技術の習熟度内にあることは理解される。したがって、添付する請求の範囲によってのみ拘束されることを意図する:

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧縮性薬物の錠剤を直接圧縮によって作製するにあたり、ポリビニルピロリドン(PVP)及び酢酸ビニル(VA)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンの共重合体からなる群より選ばれ、規定されるガラス転移温度(Tg)を持つ重合体と、それと共に前記共重合体のTgを少なくとも10℃だけ低減させる有効量の可塑剤との混合物を含む、結合剤組成物を提供する工程、前記結合剤組成物と前記薬物を混ぜる工程、及びその錠剤を、予め定める硬度及び脆砕性を持つように、及び許容可能な圧縮力で、直接圧縮によって形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記可塑剤が前記重合体のTgを少なくとも20℃だけ低減させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記薬物がナプロキセン又はアセトアミノフェンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記共重合体が、60重量%のPVP及び40重量%のVAを含み、約106℃のTgを持つ、請求項1記載の方法。
【請求項5】
結合剤組成物が約20−90μ(ミクロン、μm)の平均粒度を持つ粉体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記可塑剤が前記結合剤組成物中約1−25重量%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記量が5−15重量%である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記薬物が前記錠剤中少なくとも50重量%の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記可塑剤が有機性エステル又はポリオールである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記可塑剤がクエン酸トリエチル又はポリエチレングリコールである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
直接圧縮を3000−7000lbs.(約1360.8−約3175.2kg)で遂行し、及び錠剤が少なくとも8kPの硬度及び約3%未満の脆砕性を持つ、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記錠剤の硬度が約8−30kPであり、及び前記脆砕性が約1−3%である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
薬物が50から90重量%までの量で前記結合剤組成物と薬物の前記混合物中に存在する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
低圧縮性薬物の直接圧縮のための結合剤組成物であって、ポリビニルピロリドン(PVP)及び酢酸ビニル(VA)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンの共重合体からなる群より選ばれる重合体と、重合体のガラス転移温度(Tg)を少なくとも10℃だけ低減させる有効量の可塑剤との混合物を含む、結合剤組成物。
【請求項15】
前記可塑剤が前記共重合体のTgを少なくとも20℃だけ低減させる、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項16】
前記共重合体が60重量%のPVP及び40重量%のVAを含み、約106℃のTgを持つ、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項17】
約20−90μの平均粒度を持つ粉体である、請求項16記載の結合剤組成物。
【請求項18】
前記可塑剤が約1−25重量%の量で存在する、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項19】
前記量が5−15重量%である、請求項18記載の結合剤組成物。
【請求項20】
前記可塑剤が、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、トリ酢酸グリセリル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体及びプロピレングリコールからなる群より選ばれる、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項21】
前記可塑剤が有機性エステル又はポリオールである、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項22】
前記可塑剤がクエン酸トリエチル又はポリエチレングリコールである、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項23】
重合体と可塑剤の水性混合物を噴霧乾燥することによって得られる、請求項14記載の結合剤組成物。
【請求項24】
前記噴霧乾燥がシリカ粉末の存在下に遂行される、請求項23記載の結合剤組成物。
【請求項25】
混合物であって、低圧縮性薬物と請求項14記載の結合剤組成物との混合物。
【請求項26】
また、他の賦形剤を含む、請求項25記載の混合物。
【請求項27】
薬物錠剤であって、請求項1記載の方法によって形成される、薬物錠剤。
【請求項28】
前記薬物がナプロキセン又はアセトアミノフェンである、請求項27記載の薬物錠剤。
【請求項29】
前記薬物がその中で約50−90重量%の量で存在する、請求項27記載の薬物錠剤。

【公表番号】特表2006−525326(P2006−525326A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509650(P2006−509650)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010256
【国際公開番号】WO2004/098493
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(596121138)アイエスピー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】ISP INVESTMENTS INC.
【Fターム(参考)】