結合型の圧電半導体ナノ発電機
【解決手段】 発電機(100)は、基板(110)と、第1の端部(122)と、当該第1の端部に対向し、且つ前記基板(110)に隣接して配置されている第2の端部(124)とを有する半導体圧電構造(120)と、第1の導電性接触子(210)と、第2の導電性接触子(212)とを含む。前記構造(120)は、前記第1の端部(122)付近に力が加えられると湾曲し、それによって当該構造(120)の第1の側部(126)と第2の側部(128)との間に電位差が生じる。第1の導電性接触子(210)は、前記第1の端部(122)と通電しており、前記構造(120)の前記第1の端部(122)の一部と前記第1の導電性接触子(210)との間にショットキー障壁を生じさせる物質を含む。また、前記第1の導電性接触子(210)は、前記構造(120)に対して、当該構造(120)が変形されると前記ショットキー障壁が順バイアスされる位置に配置されていることにより、当該第1の導電性接触子(130)から前記第1の端部(122)に電流が流れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月20日付けで出願された米国仮特許出願第60/752,558号、2006年1月18日付けで出願された米国仮特許出願第60/759,637号、2006年4月28日付けで出願された米国仮特許出願第60/795,734号、および2006年5月1日付けで出願された米国仮特許出願第60/796,442号に対して利益を主張するものである。それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、米国NASAグレン研究センターより付与された助成金協力協定第NCC3−982号および米国立科学財団より付与された第DMR−9733160号に基づく米国政府支援によりなされたものである。米国政府は、本発明の特定の権利を有することができる。
【0003】
本発明は発電機に関し、より具体的には、圧電半導体構造を使用して機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電機に関する。
【背景技術】
【0004】
ショットキー障壁は、電流を整流することからダイオードとして使用可能な金属半導体接合である。電流を整流しない金属半導体接合は、オーミック接触と呼ばれる。金属半導体接合の整流特性は、金属の仕事関数と、真性半導体のバンドギャップと、半導体中のドーパントのタイプおよび濃度とに依存する。
【0005】
圧電物質とは、その物質に不均一な機械的力が加えられるとき、その物質の2領域間に電位差が生じるものをいう。例えば、特定の圧電物質は、湾曲されたとき1つの領域に正電圧を生じ、別の領域に負電圧を生じる。
【0006】
これまで、マイクロスケール機械およびナノスケール機械の多くは、インビトロ(in vitro)医療装置などとしての使用が提案されてきた。しかし、これらの機械の大半は、それを駆動する電源のサイズに制限を受ける。具体的には、このような設計の多くでは、装置への電力供給が化学電池に依存する。そのため、それらの装置は、使用する電池より小さくすることができず、その電池が電力を供給できる間しか役立たない。
【0007】
しかし、このような装置の一部は、電池の寿命に制限されず、長期にわたり動作可能であり続ける必要がある。また、環境センサなど一部の装置では、電池を交換することが極めて難しい。
【0008】
したがって、長期にわたり電力を供給でき、環境的に利用可能な機械的エネルギーにより駆動される発電機が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において第1の基板と、半導体圧電構造と、第1の導電性接触子と、第2の導電性接触子とを含む発電機である本発明により、先行技術の欠点は克服される。前記半導体圧電構造構成は、第1の端部と、当該第1の端部に対向する第2の端部とを有する。前記第2の端部は前記第1の基板に隣接して配置される。前記構造は柔軟性を有し、前記第1の端部付近に力が加えられると湾曲し、それによって当該半導体圧電構造の前記第1の端部の一部における第1の側部と第2の側部との間に電位差を生じる。第1の導電性接触子は、前記第1の端部と通電するように配置され、前記構造の前記第1の端部の一部と当該第1の導電性接触子との間にショットキー障壁を生じる物質から本質的に成る。また、前記第1の導電性接触子は、前記構造に対して、当該構造が変形されると前記ショットキー障壁が順バイアスされて前記第1の導電性接触子から前記第1の端部に電流が流れる位置配置されている。前記第2の導電性接触子は、前記第2の端部と通電するように配置されている。
【0010】
別の態様において、本発明は発電機を作製する方法であって、この方法においては、半導体圧電構造を第1の基板から成長させる。第1の導電性接触子は、前記半導体圧電構造に対して一定の位置に配置され、前記半導体圧電構造が湾曲すると前記第1の導電性接触子が前記半導体圧電構造の一部と通電し、当該半導体圧電構造と当該導電性接触子との間に当該順バイアスショットキー障壁が形成される。
【0011】
さらに別の態様において、本発明はシート発電機を作製する方法であって、この方法においては、基板から上向きに複数の半導体圧電構造を成長させる。前記基板上に一定のレベルまで第1の変形可能な絶縁層を成膜し、当該絶縁層が所定のレベルまで前記複数の半導体圧電構造の各々を取り囲む。導電性接触層は前記変形可能な絶縁層の上方に成膜され、下向きの力が加えられたとき、前記複数の半導体圧電構造と通電する。
【0012】
以上に述べた本発明の態様等は、添付の図面を参照して以降の好適な実施形態に関する説明を考慮することで明らかになるであろう。当業者であれば明白であるように、本発明の変形形態および変更形態の多くは、本開示の新規性のある概念の要旨を逸脱しない範囲で、実施可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。図面では、全図にわたり、同様な番号は同様な部分(部品)を示している。本明細書の説明および請求項全体にわたって使用するように、次の用語は、別段の断りがない限り、本明細書で明示的に関連付けられた意味を有する。すなわち、「a」と「an」と「the」の意味は複数形を包含し、「in」の意味は、「in」および「on」を包含する。
【0014】
図1A〜1Dに示すように、発電機100の一実施形態では、第1の端部122と当該第1の端部に対向する第2の端部124とを有する半導体圧電構造120が基板100から延出している。この半導体圧電構造120には、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノベルト、ナノチューブなどのナノ構造を含めることができる。代表的なナノ構造の1つには酸化亜鉛構造があり、酸化亜鉛結晶が圧電特性および半導体作用の双方を呈する。
【0015】
原子間力顕微鏡のプローブ先端などの導電性接触子130によって矢印方向へ力が加えられると、前記半導体圧電構造120は湾曲し、第1の側126(当該半導体圧電構造120の圧縮される側)と、第2の側128(延伸される側)との間に電位差が生じる。前記第1の側126に対して正電位を有する前記第2の側128に前記導電性接触子130が接触すると、当該導電性接触子130と当該第2の側128との間で逆バイアスショットキー障壁が形成される。このショットキー障壁には逆バイアスがかかっているため、前記導電性接触子130と前記半導体圧電構造120との間に電流は流れない。ただし、この導電性接触子が前記半導体圧電構造120を横切って移動し、(前記第2の側128に対して負電位を有した)前記第1の側126に到達すると、この導電性接触子130と前記半導体圧電構造120との間のショットキー障壁に順バイアスがかかり、電流が当該ショットキー障壁を越えて貫流可能になる。
【0016】
酸化亜鉛(ZnO)は、半導体特性および圧電特性の双方を呈する。発電機の一実施形態では、整列させたZnOナノワイヤーアレイを使用してナノスケールの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する。その発電機の動作機序は、ZnOのこの圧電・半導体両特性の結合と、金属先端130と前記ナノワイヤー120との間に形成されるショットキー障壁の整流機能とに依存する。このアプローチでは、生体の機械的エネルギー、音響振動または超音波振動のエネルギー、および生体液の圧エネルギーを電気に変換し、結果的に、無線のナノ装置およびナノシステムで自己給電を実現できる可能性がある。これらの実施形態では、ウルツ鉱型構造の物質(ZnO、GaN、およびZnSなど)を含むナノワイヤー(nano−wire:NW)およびナノベルト(nano−belt:NB)を使って、自己給電する装置およびシステム(ナノスケールで構築可能)を作製する。
【0017】
実験的実施形態の1つでは、原子間力顕微鏡(atomic force microscope:AFM)に連結されたプローブ130により、単一のZnOワイヤー/ベルト120を機械的に操作した。光学顕微鏡で十分見られる大きさの長いZnOワイヤー/ベルト120を選択し、ZnOワイヤーの一端を銀ペーストでシリコン基板に固定し、他端は自由端とした。前記基板は真性シリコンであるため、導電率が比較的低かった。前記ワイヤー120は、この基板110の上に水平方向に載置した(ただし、当該基板から短い距離だけ離間して、固定端以外での摩擦をなくした)。測定は、4面体形状で頂角70°、高さ14μm、バネ定数1.42N/mの、プラチナ膜でコーティングしたシリコン先端を使ってAFMにより行った。またAFM接触モードで、前記先端と試料表面との間で法線方向に5nNの一定の力を加えながら、70×70μm2の走査領域を測定した。
【0018】
AFMの先端でワイヤーまたはベルトを走査した際、一定負荷の表面形状(スキャナからのフィードバック信号)およびそれに対応した出力電圧(V)画像の双方を、同時に記録した。その表面形状画像は、前記先端が前記ワイヤー上を走査した場合のみ、前記基板に垂直な法線方向の力の変化を反映していたが、これは凹凸を示すものである。また、前記先端が前記ワイヤー上または前記ベルト上を走査する間は、導電性先端と接地との間の前記出力電圧を、連続的に監視した。この実験のどの段階においても、外部からの電圧は一切印加していない。
【0019】
前記AFM先端130は、前記ワイヤーに垂直に、前記ワイヤーの頂端の上方から下方部分にかけて、または下方部分から頂端へ向かって、速度105.57μm/sで線状に複数回走査を行った。断面が六角形のワイヤーの場合は、3つの特徴が観測された。前記先端が、前記ワイヤーの頂端の上方を当該ワイヤーに触れずに走査した場合、出力電圧信号は、単なる雑音であった。この先端が、前記ワイヤーの頂端に接触するまで走査を行った場合は、スパーク出力電圧信号が観測された。この出力電圧は、負荷RLの場合にほぼすべての観測ケースで負となり、前記先端の電位が接地された銀ペーストより低かったことを示した。前記先端130は、前記ワイヤー120に沿って下方へ走査した場合、前記ワイヤーをたわませたが、それを越えることはなく、出力電圧は雑音以外ピークを示さなかった。
【0020】
変位力をかけると前記ナノワイヤー120の片側が延伸され、他の側部は圧縮された。観測結果をまとめると、次のようになる。第1に、ワイヤーおよびベルトのどちらについても圧電放電が観測され、これは、湾曲された当該ワイヤー/ベルトの端部に前記AFM先端が接触した場合のみ発生した。第2に、この圧電放電は、前記AFM先端が前記ワイヤー/ベルトの圧縮側に接触した場合のみ起こり、当該先端が当該ワイヤー/ベルトの延伸側に接触した場合には電圧出力が測定されなかった。第3に、この圧電放電により、負荷RLから負の出力電圧が測定された。最後に、表面形状画像を見ると、電圧出力事象は、前記AFM先端が前記ワイヤー/ベルト120の幅を横切り終わる直前に起こったことがわかり、これは、この放電事象が前記先端130と前記ワイヤー/ベルト120との接触期間の後半まで持ち越されていたことを意味する。
【0021】
観測された現象を説明するため、ここで、圧電誘導された電位分布に基づき、前記ワイヤー/ベルト120における電位分布を調べる。ここでは、単純に、弾性変形の結果ベルト内に生じた分極を考慮する。ひずみ(ε)と局所的な圧電電場(E)との関係は、ε=dEにより与えられる。ここで、dは圧電係数である。厚さT、長さLのベルトが、AFM先端から当該ベルトの頂部(z=L)へ垂直方向にかけられた外力Fにより変位している場合、このベルト内にはひずみ場が形成される。このベルトの長手方向に沿った任意セグメントについて、局所的な湾曲は、その局所的な曲率1/Rにより記述され(Rは、当該ベルトの湾曲を記述するための局所半径)、曲率1/Rは、次式のように当該ベルトの形状と関係している。
【0022】
【数1】
【0023】
これは、湾曲した前記ベルトの幾何学的形状から得られる。当該ベルトの形状は、その静的なたわみ方程式により次のように記述できる。
【0024】
【数2】
【0025】
ここで、Yは前記ベルトの弾性率、Iは慣性モーメントである。前記ベルトの局所的なひずみはε=y/Rで与えられ、それに対応するZ軸に沿った電場は次式で表せる。
【0026】
【数3】
【0027】
これが、湾曲が小さい場合の近似において、圧電効果による局所的なひずみに関する電場効果がわからない場合に、電位分布を決定付ける電場である。簡略化のため、前記ベルトの長手方向全体に沿って電場を積分して、2つの側面y=±T/2における電位を考慮する。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、θmaxは、前記ワイヤーの頂部における最大たわみ角度である。次式の関係があるため、
【数5】
【0030】
最大たわみymと加えられた力
【数6】
【0031】
との関係を使うと、延伸および圧縮された側面においてそれぞれ圧電効果により誘導される電位が次式のように得られる。
【0032】
【数7】
【0033】
前記AFMの導電性先端と、前記ベルトの前記延伸および圧縮された側面との接触を調べると、半導体ZnOワイヤー/ベルト120の前記圧縮された側部が負の電位V−を有し、前記延伸された側部が正の電位(V+)を有することが示される。これが、後述するように、界面のショットキー障壁を越える2つの異なる輸送過程を生じる。前記延伸された側面に前記先端が接触すると、Pt金属先端は、ほぼゼロの電位Vm=0を有し、前記金属先端とベルトの界面は、ΔV=Vm−V+<0だけ負にバイアスされる。合成したままのZnOベルトの合成n型半導体特性を考慮すると、前記Pt金属およびZnO半導体(M−S)の界面は、この場合、逆バイアスされたショトキーダイオードとなり、結果的にこの界面を越えて流れる電流はほとんどない。この場合、主にZn2+イオンおよびO2−イオンによる圧電静電荷が蓄積および保存されるが、前記ベルトを貫流する電流は生じない。これが、前記先端で変形が進行している間に緩慢な「漏れ」電流を阻む重要な過程であり、それ以外、次の段階で観測可能な出力電気信号は生じない。前記先端が引き続き前記ベルトの圧縮側を走査し、これに接触するに伴い、前記金属先端およびベルトの界面は、ΔV=VL=Vm−V−>0だけ正にバイアスされる。前記界面は、このようにして正にバイアスされたショトキーダイオードとなり、前記先端から前記ベルト120を通過する電流が可能になる。電子の流れが前記ベルト内に分布した圧電イオンの電荷を中和する結果、出力電流は急増する。電流の方向を考慮すると、前記負荷で測定される出力電圧は、前記ベルトの接地された根元に対して負の電位を有する。
【0034】
変位力Fにより生じる弾性変形エネルギーは、主に、前記ベルト120のリリース後に機械的な共振/振動を生じる、その各振動サイクルで圧電放電エネルギーを生じる、および環境および前記基板との摩擦および粘性がある場合それらを克服する、という3つの方法で散逸する。前記ベルト120の機械的共振は、多数のサイクルにわたり継続する可能性があるが、最終的には当該媒体の粘性により減衰される。前記圧電電圧出力は前記振動の各サイクルで生じるが、この実験設計の前記AFM先端130は、前記ベルトの各振動サイクルの電気信号出力を集める上で十分な速度がない可能性がある。前記放電信号については、長時間かけると集められる場合もあることがわかり、その間には、前記ベルトが10サイクルを超えて共振し、連続的に一定の出力DC電圧を生じる。前記ワイヤーの共振周波数が約10kHzで、前記先端の走査速度が約10μm/sだったため、このワイヤー120は、前記AFMプローブ先端130との接触が不可能な位置を離れる前までに、当該AFMプローブ先端130に100回を超えて接触したと考えると妥当である。圧電出力電圧は、各振動サイクルで生じることが観測された。このように、前記出力電圧を連続的に集めると、DC電源を生成することができる。
【0035】
電流は、前記AFM先端130が、前記ベルト/ワイヤーの圧縮側と接触している場合のみ生じる。前記AFMプローブ先端130が前記延伸側128に接触している場合は、弾性変形が極めて大きくても出力電流は流れない。ZnOワイヤーが大きな変形を受けた場合には、この期待される結果が観測されたが、出力電圧は測定されなかった。
【0036】
AFMの導電性先端130を使って接触モードでワイヤー/ベルト120をたわめることにより、エネルギーは、まず前記たわみ力により生じ、圧電電位として保存されたのち、圧電エネルギーに変換される。当該発電機の機構は、ZnOの半導体および圧電特性が結合された結果生まれたものである。圧電効果は、弾性変形からイオン電荷の電位を生じる上で必要であり、半導体特性は、当該工程の全体にわたりスイッチとして機能する金属ZnO界面のショットキー障壁の整流作用により、前記電荷を維持したのち前記電位を放出する上で必要である。導電率が良好なZnOは、電流が流れるのを可能にする。また、この工程は、GaNおよびZnSなどウルツ鉱型構造の物質でも可能である。
【0037】
発電機の第2の実施形態を示したのが図2Aおよび図2Bで、これらの図では、第1の導電性接触子210は前記第1の端部122に設けられており、第2の導電性接触子212は前記第2の端部124に設けられている。前記第2の導電性接触子212は、前記半導体圧電構造120に抗して配置でき、または前記基板110が導電物質で作製されている場合は前記基板110に抗して配置できる。負荷214は、前記第1の端部122に方向Fへ力が加えられると電流Iが当該負荷214を貫流するよう、前記第1の導電性接触子210と前記第2の導電性接触子212との間に連結されてる。
【0038】
第3の実施形態を図3A〜3Dに示す。この実施形態において、第1の導電性接触子310は、起伏のある表面を有する。図3Bに示すように、この第1の導電性接触子310に下向きの力が加えられると、前記半導体圧電構造120の一部が当該第1の導電性接触子310に接触する。これにより、前記半導体圧電構造120が湾曲し、その両面に電位差が生じる。初期には、図3Cに示すように、前記半導体圧電構造120の正側だけが前記第1の導電性接触子310に接触し、電流の流れない逆バイアスショットキー障壁を生じる。しかし、前記第1の導電性接触子310が十分押し下げられて、前記半導体圧電構造120の負側に接触すると、順バイアスのショットキー障壁が生じて、電流が前記負荷214を貫流できるようになる。前記半導体圧電構造120の前記正側は依然として前記第1の導電性接触子310に接触しているが、それによる影響はない。これは前記正側と前記第1の導電性接触子310との間の前記ショットキー障壁にまだ逆バイアスがかかっており、前記正側で電流が流れないためである。
【0039】
順バイアスがかかった状態の本装置は、図4Aに示したエネルギーバンドギャップ図402を有し、前記半導体圧電構造(この例ではZnO)の圧縮側の伝導エネルギーレベル(Ec)が前記金属のフェルミエネルギー(Ef)を超える。前記圧縮側は前記金属に対し負電位(V−)であることから、(電流が正電荷の流れを表すという慣習に従うと)電流は、ショットキー障壁406を越えて前記金属から前記半導体圧電構造へ流れることが可能になる。前記半導体圧電構造の前記延伸側に前記金属が接触している場合は、図4Bに示したように、前記圧縮側の伝導エネルギーレベル(Ec)が当該金属のフェルミエネルギー(Ef)以下になり、前記延伸側が前記金属の電位に対して正電位を有するため、電流はショットキー障壁406を超えて流れることができない。
【0040】
図5Aに示すように、一実施形態では、酸化亜鉛(ZnO)ナノ構造522のアレイ520で、前記ナノ構造522の上方に波形の導体510が配置されたものを使用する。負荷214は、前記ナノ構造アレイ520の基部(との間にオーミック接触を形成している)と、前記波形の導体510とに連結されている。適切なZnOナノ構造522の顕微鏡画像を図5Bに示す。その代替実施形態では、図6Aに示すように、複数のナノボウル612を画成するシート610が、前記導電性接触子として使用される。複数のナノボウル612の顕微鏡画像を図6Aに示す。適切なナノボウルは、米国特許出願公開第US−2005−0224779−A1号(2004年12月10日付け出願済み第11/010,178号)で詳しく開示されている方法に従って製作できる(参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする)。この実施形態は、体の動きで発電する場合に使用できる。例えば、この実施形態を靴底に適用した場合、その靴を履いたヒトが歩くと発電できる。
【0041】
図7では、往復動する接触子710により作動するナノワイヤーのアレイ520を使用した一実施形態を示す。この往復動する接触子710には、ピストン型アクチュエータなどのアクチュエータ714に駆動される金属接触ブレード712が含まれる。
【0042】
図8Aは回転する発電機を示したもので、半導体圧電構造820に含まれる複数のナノロッド822は、コア824から径方向に延出しており、軸を中心として回転方向Rに回転自在である。導電性接触子810に画成された開口部812は、前記半導体圧電構造820の回転に伴い、前記ナノロッド822が当該接触子810の縁部に抗して移動するように配置されている。この実施形態では、風車と同様な方法で、流れる流体が前記半導体圧電構造820を回転させることができる。この実施形態は、血管や送水管など、流体流れ構造内の発電機として使用できる。
【0043】
振動エネルギーを電気エネルギーに変換する一実施形態は、図9Aに示しており、半導体圧電ナノ構造922のアレイ920が導電性ナノロッド912のアレイ910と対向関係で配置されている。前記半導体圧電ナノロッド922の少なくとも一部の第1の端部924は、前記導電性ナノロッドの少なくとも一部の第1の端部914と隣接しあっており、前記導電性ナノロッド912が前記半導体圧電ナノロッド922に対し横方向(VおよびV’の方向)に振動すると、前記導電ナノロッド912の少なくとも1つと、前記半導体圧電ナノロッドの少なくとも1つとの接触により、順バイアスショットキー障壁が形成されて電流が生じるようになっている。半導体圧電ナノロッド922のアレイ920の顕微鏡画像を、図9Bに示す。
【0044】
発電機を作製する方法の1つでは、図10A〜10Dに示したように、複数の触媒粒子1022(金粒子など)が基板1010上に配置される。次いで、米国特許出願公開第US−2005−0224779−A1号に開示されているタイプの工程により、前記触媒粒子1022から酸化亜鉛ナノワイヤー120が成長する。そして、有機ポリマーの層など変形可能な層1030が、各前記複数の酸化亜鉛半導体圧電構造120を所定のレベルまで取り囲むよう、前記基板1010上に成膜される。前記ナノワイヤー120の上方には、起伏のある導電性接触層1040が配置され、前記導電性接触層1040に下向き(矢印方向)の力が加えられると、(図3A〜3Dを参照して説明した態様で)順バイアスショットキー障壁が形成されて電流が負荷1032に流れるようになっている。この実施形態では、前記変形可能な層1030が前記ナノワイヤー120の姿勢を保ち、これらを常に離間させ、また前記基板1010から剥がれないようにしている。
【0045】
この実施形態は、柔軟な若しくは折り畳み可能な電源として柔軟な電子機器に使用できるよう、極めて大きく変形させることができる。この実施形態で酸化亜鉛を選択する理由の1つは、酸化亜鉛が生体適合性のある生体に安全な物質であるため、電源として人体に移植できる可能性があるということである。酸化亜鉛ナノワイヤーの成長に使用されるポリマー基板の柔軟性により、人体内の機械的エネルギー(体の動き、筋肉の伸張)を使用して発電できるよう、ヒトの筋肉の柔軟性に対応させることが実施可能となる。
【0046】
また、図10A〜10Dに示した実施形態は、図11に示すように、音波または超音波のエネルギーに応答する。一端が自由端である梁としての前記ナノワイヤー120の共振によっても、発電は可能である。
【0047】
ここに実証した原理および技術は、機械的な運動エネルギー(体の動き、筋肉の伸張、血圧など)、振動エネルギー(音波/超音波など)、および水圧エネルギー(体液の流れ、血流、血管の収縮、自然に存在する動的な流体など)を、ナノ装置およびナノシステムの自己給電に十分な電気エネルギーに変換できる可能性がある。この技術は、環境からエネルギーを調達することにより、自己給電式無線ナノ装置への重要な用途を有する可能性がある。また、電池を間接的に充電する方法も提供できる。ZnOワイヤー/ベルトのアレイを使うと大出力の発電機を製作することが可能であり、そのアレイは、金属膜、柔軟な有機プラスチック基板、セラミック基板(アルミナなど)、化合物半導体(GaNやAlNなど)といった基板上に成長させることができる。前記ナノ発電機は、in situ(チャンバー内)、リアルタイム、および埋め込み型のバイオセンシング、生物医学的監視、および生物学的検出のための自己給電技術を使用する基部となることができる。また、リモートセンシング(遠隔計測)および作動の重要なエネルギー要件を満たせる可能性がある。
【0048】
一実施形態では、図12に示すようにナノ構造をクラスター1220にパターン化し、または図13に示すように個々のナノ構造1320をパターン化して配置することができる。一実施形態では、図14に示すように、導電性ピラミッド1440のアレイを導電性接触子に含めることができる。
【0049】
上記説明した実施形態は、出願時に本発明者が周知であった本発明の好適な実施形態および最良の形態を含んでいるが、あくまでも例示的なものである。本明細書に開示した具体的な実施形態から、本発明の要旨を逸脱しない範囲で多くの修正・変形形態が可能であることが容易に理解されるであろう。このため、本発明の範囲は具体的に上述した実施形態に限定されることなく、以下の特許請求の範囲により決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】図1A〜1Bは、第1の実施形態の概略図である。
【図1B】図1A〜1Bは、第1の実施形態の概略図である。
【図2A】図2A〜2Bは、第2の実施形態の概略図である。
【図2B】図2A〜2Bは、第2の実施形態の概略図である。
【図3A】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3B】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3C】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3D】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図4A】図4Aは、順バイアスがかかった装置における相対エネルギーバンドを示したエネルギーバンドギャップ図である。
【図4B】図4Bは、逆バイアスがかかった装置における相対エネルギーバンドを示したエネルギーバンドギャップ図である。
【図5A】図5Aは、一実施形態の概略図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノ構造の顕微鏡画像である。
【図6A】図6Aは、ナノボウルを使用した一実施形態の概略図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノボウルの顕微鏡画像である。
【図7】図7は、ナノボウルを使用した一実施形態の概略図である。
【図8A】図8Aは、回転する一実施形態の概略図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに示した実施形態に使用できるタイプの放射状に設けられたナノ構造の顕微鏡画像である。
【図9A】図9Aは、2セットのナノワイヤーを使用した一実施形態の概略図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノワイヤーの顕微鏡画像である。
【図10A】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10B】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10C】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10D】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図11】図11は、音波エネルギーに応答する一実施形態の動作を示した概略図である。
【図12】図12は、第1のパターン化ナノ構造実施形態の上面斜視図である。
【図13】図13は、第2のパターン化ナノ構造実施形態の上面斜視図である。
【図14】図14は、角錐形の導電性接触子実施形態の上面斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月20日付けで出願された米国仮特許出願第60/752,558号、2006年1月18日付けで出願された米国仮特許出願第60/759,637号、2006年4月28日付けで出願された米国仮特許出願第60/795,734号、および2006年5月1日付けで出願された米国仮特許出願第60/796,442号に対して利益を主張するものである。それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、米国NASAグレン研究センターより付与された助成金協力協定第NCC3−982号および米国立科学財団より付与された第DMR−9733160号に基づく米国政府支援によりなされたものである。米国政府は、本発明の特定の権利を有することができる。
【0003】
本発明は発電機に関し、より具体的には、圧電半導体構造を使用して機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電機に関する。
【背景技術】
【0004】
ショットキー障壁は、電流を整流することからダイオードとして使用可能な金属半導体接合である。電流を整流しない金属半導体接合は、オーミック接触と呼ばれる。金属半導体接合の整流特性は、金属の仕事関数と、真性半導体のバンドギャップと、半導体中のドーパントのタイプおよび濃度とに依存する。
【0005】
圧電物質とは、その物質に不均一な機械的力が加えられるとき、その物質の2領域間に電位差が生じるものをいう。例えば、特定の圧電物質は、湾曲されたとき1つの領域に正電圧を生じ、別の領域に負電圧を生じる。
【0006】
これまで、マイクロスケール機械およびナノスケール機械の多くは、インビトロ(in vitro)医療装置などとしての使用が提案されてきた。しかし、これらの機械の大半は、それを駆動する電源のサイズに制限を受ける。具体的には、このような設計の多くでは、装置への電力供給が化学電池に依存する。そのため、それらの装置は、使用する電池より小さくすることができず、その電池が電力を供給できる間しか役立たない。
【0007】
しかし、このような装置の一部は、電池の寿命に制限されず、長期にわたり動作可能であり続ける必要がある。また、環境センサなど一部の装置では、電池を交換することが極めて難しい。
【0008】
したがって、長期にわたり電力を供給でき、環境的に利用可能な機械的エネルギーにより駆動される発電機が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において第1の基板と、半導体圧電構造と、第1の導電性接触子と、第2の導電性接触子とを含む発電機である本発明により、先行技術の欠点は克服される。前記半導体圧電構造構成は、第1の端部と、当該第1の端部に対向する第2の端部とを有する。前記第2の端部は前記第1の基板に隣接して配置される。前記構造は柔軟性を有し、前記第1の端部付近に力が加えられると湾曲し、それによって当該半導体圧電構造の前記第1の端部の一部における第1の側部と第2の側部との間に電位差を生じる。第1の導電性接触子は、前記第1の端部と通電するように配置され、前記構造の前記第1の端部の一部と当該第1の導電性接触子との間にショットキー障壁を生じる物質から本質的に成る。また、前記第1の導電性接触子は、前記構造に対して、当該構造が変形されると前記ショットキー障壁が順バイアスされて前記第1の導電性接触子から前記第1の端部に電流が流れる位置配置されている。前記第2の導電性接触子は、前記第2の端部と通電するように配置されている。
【0010】
別の態様において、本発明は発電機を作製する方法であって、この方法においては、半導体圧電構造を第1の基板から成長させる。第1の導電性接触子は、前記半導体圧電構造に対して一定の位置に配置され、前記半導体圧電構造が湾曲すると前記第1の導電性接触子が前記半導体圧電構造の一部と通電し、当該半導体圧電構造と当該導電性接触子との間に当該順バイアスショットキー障壁が形成される。
【0011】
さらに別の態様において、本発明はシート発電機を作製する方法であって、この方法においては、基板から上向きに複数の半導体圧電構造を成長させる。前記基板上に一定のレベルまで第1の変形可能な絶縁層を成膜し、当該絶縁層が所定のレベルまで前記複数の半導体圧電構造の各々を取り囲む。導電性接触層は前記変形可能な絶縁層の上方に成膜され、下向きの力が加えられたとき、前記複数の半導体圧電構造と通電する。
【0012】
以上に述べた本発明の態様等は、添付の図面を参照して以降の好適な実施形態に関する説明を考慮することで明らかになるであろう。当業者であれば明白であるように、本発明の変形形態および変更形態の多くは、本開示の新規性のある概念の要旨を逸脱しない範囲で、実施可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。図面では、全図にわたり、同様な番号は同様な部分(部品)を示している。本明細書の説明および請求項全体にわたって使用するように、次の用語は、別段の断りがない限り、本明細書で明示的に関連付けられた意味を有する。すなわち、「a」と「an」と「the」の意味は複数形を包含し、「in」の意味は、「in」および「on」を包含する。
【0014】
図1A〜1Dに示すように、発電機100の一実施形態では、第1の端部122と当該第1の端部に対向する第2の端部124とを有する半導体圧電構造120が基板100から延出している。この半導体圧電構造120には、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノベルト、ナノチューブなどのナノ構造を含めることができる。代表的なナノ構造の1つには酸化亜鉛構造があり、酸化亜鉛結晶が圧電特性および半導体作用の双方を呈する。
【0015】
原子間力顕微鏡のプローブ先端などの導電性接触子130によって矢印方向へ力が加えられると、前記半導体圧電構造120は湾曲し、第1の側126(当該半導体圧電構造120の圧縮される側)と、第2の側128(延伸される側)との間に電位差が生じる。前記第1の側126に対して正電位を有する前記第2の側128に前記導電性接触子130が接触すると、当該導電性接触子130と当該第2の側128との間で逆バイアスショットキー障壁が形成される。このショットキー障壁には逆バイアスがかかっているため、前記導電性接触子130と前記半導体圧電構造120との間に電流は流れない。ただし、この導電性接触子が前記半導体圧電構造120を横切って移動し、(前記第2の側128に対して負電位を有した)前記第1の側126に到達すると、この導電性接触子130と前記半導体圧電構造120との間のショットキー障壁に順バイアスがかかり、電流が当該ショットキー障壁を越えて貫流可能になる。
【0016】
酸化亜鉛(ZnO)は、半導体特性および圧電特性の双方を呈する。発電機の一実施形態では、整列させたZnOナノワイヤーアレイを使用してナノスケールの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する。その発電機の動作機序は、ZnOのこの圧電・半導体両特性の結合と、金属先端130と前記ナノワイヤー120との間に形成されるショットキー障壁の整流機能とに依存する。このアプローチでは、生体の機械的エネルギー、音響振動または超音波振動のエネルギー、および生体液の圧エネルギーを電気に変換し、結果的に、無線のナノ装置およびナノシステムで自己給電を実現できる可能性がある。これらの実施形態では、ウルツ鉱型構造の物質(ZnO、GaN、およびZnSなど)を含むナノワイヤー(nano−wire:NW)およびナノベルト(nano−belt:NB)を使って、自己給電する装置およびシステム(ナノスケールで構築可能)を作製する。
【0017】
実験的実施形態の1つでは、原子間力顕微鏡(atomic force microscope:AFM)に連結されたプローブ130により、単一のZnOワイヤー/ベルト120を機械的に操作した。光学顕微鏡で十分見られる大きさの長いZnOワイヤー/ベルト120を選択し、ZnOワイヤーの一端を銀ペーストでシリコン基板に固定し、他端は自由端とした。前記基板は真性シリコンであるため、導電率が比較的低かった。前記ワイヤー120は、この基板110の上に水平方向に載置した(ただし、当該基板から短い距離だけ離間して、固定端以外での摩擦をなくした)。測定は、4面体形状で頂角70°、高さ14μm、バネ定数1.42N/mの、プラチナ膜でコーティングしたシリコン先端を使ってAFMにより行った。またAFM接触モードで、前記先端と試料表面との間で法線方向に5nNの一定の力を加えながら、70×70μm2の走査領域を測定した。
【0018】
AFMの先端でワイヤーまたはベルトを走査した際、一定負荷の表面形状(スキャナからのフィードバック信号)およびそれに対応した出力電圧(V)画像の双方を、同時に記録した。その表面形状画像は、前記先端が前記ワイヤー上を走査した場合のみ、前記基板に垂直な法線方向の力の変化を反映していたが、これは凹凸を示すものである。また、前記先端が前記ワイヤー上または前記ベルト上を走査する間は、導電性先端と接地との間の前記出力電圧を、連続的に監視した。この実験のどの段階においても、外部からの電圧は一切印加していない。
【0019】
前記AFM先端130は、前記ワイヤーに垂直に、前記ワイヤーの頂端の上方から下方部分にかけて、または下方部分から頂端へ向かって、速度105.57μm/sで線状に複数回走査を行った。断面が六角形のワイヤーの場合は、3つの特徴が観測された。前記先端が、前記ワイヤーの頂端の上方を当該ワイヤーに触れずに走査した場合、出力電圧信号は、単なる雑音であった。この先端が、前記ワイヤーの頂端に接触するまで走査を行った場合は、スパーク出力電圧信号が観測された。この出力電圧は、負荷RLの場合にほぼすべての観測ケースで負となり、前記先端の電位が接地された銀ペーストより低かったことを示した。前記先端130は、前記ワイヤー120に沿って下方へ走査した場合、前記ワイヤーをたわませたが、それを越えることはなく、出力電圧は雑音以外ピークを示さなかった。
【0020】
変位力をかけると前記ナノワイヤー120の片側が延伸され、他の側部は圧縮された。観測結果をまとめると、次のようになる。第1に、ワイヤーおよびベルトのどちらについても圧電放電が観測され、これは、湾曲された当該ワイヤー/ベルトの端部に前記AFM先端が接触した場合のみ発生した。第2に、この圧電放電は、前記AFM先端が前記ワイヤー/ベルトの圧縮側に接触した場合のみ起こり、当該先端が当該ワイヤー/ベルトの延伸側に接触した場合には電圧出力が測定されなかった。第3に、この圧電放電により、負荷RLから負の出力電圧が測定された。最後に、表面形状画像を見ると、電圧出力事象は、前記AFM先端が前記ワイヤー/ベルト120の幅を横切り終わる直前に起こったことがわかり、これは、この放電事象が前記先端130と前記ワイヤー/ベルト120との接触期間の後半まで持ち越されていたことを意味する。
【0021】
観測された現象を説明するため、ここで、圧電誘導された電位分布に基づき、前記ワイヤー/ベルト120における電位分布を調べる。ここでは、単純に、弾性変形の結果ベルト内に生じた分極を考慮する。ひずみ(ε)と局所的な圧電電場(E)との関係は、ε=dEにより与えられる。ここで、dは圧電係数である。厚さT、長さLのベルトが、AFM先端から当該ベルトの頂部(z=L)へ垂直方向にかけられた外力Fにより変位している場合、このベルト内にはひずみ場が形成される。このベルトの長手方向に沿った任意セグメントについて、局所的な湾曲は、その局所的な曲率1/Rにより記述され(Rは、当該ベルトの湾曲を記述するための局所半径)、曲率1/Rは、次式のように当該ベルトの形状と関係している。
【0022】
【数1】
【0023】
これは、湾曲した前記ベルトの幾何学的形状から得られる。当該ベルトの形状は、その静的なたわみ方程式により次のように記述できる。
【0024】
【数2】
【0025】
ここで、Yは前記ベルトの弾性率、Iは慣性モーメントである。前記ベルトの局所的なひずみはε=y/Rで与えられ、それに対応するZ軸に沿った電場は次式で表せる。
【0026】
【数3】
【0027】
これが、湾曲が小さい場合の近似において、圧電効果による局所的なひずみに関する電場効果がわからない場合に、電位分布を決定付ける電場である。簡略化のため、前記ベルトの長手方向全体に沿って電場を積分して、2つの側面y=±T/2における電位を考慮する。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、θmaxは、前記ワイヤーの頂部における最大たわみ角度である。次式の関係があるため、
【数5】
【0030】
最大たわみymと加えられた力
【数6】
【0031】
との関係を使うと、延伸および圧縮された側面においてそれぞれ圧電効果により誘導される電位が次式のように得られる。
【0032】
【数7】
【0033】
前記AFMの導電性先端と、前記ベルトの前記延伸および圧縮された側面との接触を調べると、半導体ZnOワイヤー/ベルト120の前記圧縮された側部が負の電位V−を有し、前記延伸された側部が正の電位(V+)を有することが示される。これが、後述するように、界面のショットキー障壁を越える2つの異なる輸送過程を生じる。前記延伸された側面に前記先端が接触すると、Pt金属先端は、ほぼゼロの電位Vm=0を有し、前記金属先端とベルトの界面は、ΔV=Vm−V+<0だけ負にバイアスされる。合成したままのZnOベルトの合成n型半導体特性を考慮すると、前記Pt金属およびZnO半導体(M−S)の界面は、この場合、逆バイアスされたショトキーダイオードとなり、結果的にこの界面を越えて流れる電流はほとんどない。この場合、主にZn2+イオンおよびO2−イオンによる圧電静電荷が蓄積および保存されるが、前記ベルトを貫流する電流は生じない。これが、前記先端で変形が進行している間に緩慢な「漏れ」電流を阻む重要な過程であり、それ以外、次の段階で観測可能な出力電気信号は生じない。前記先端が引き続き前記ベルトの圧縮側を走査し、これに接触するに伴い、前記金属先端およびベルトの界面は、ΔV=VL=Vm−V−>0だけ正にバイアスされる。前記界面は、このようにして正にバイアスされたショトキーダイオードとなり、前記先端から前記ベルト120を通過する電流が可能になる。電子の流れが前記ベルト内に分布した圧電イオンの電荷を中和する結果、出力電流は急増する。電流の方向を考慮すると、前記負荷で測定される出力電圧は、前記ベルトの接地された根元に対して負の電位を有する。
【0034】
変位力Fにより生じる弾性変形エネルギーは、主に、前記ベルト120のリリース後に機械的な共振/振動を生じる、その各振動サイクルで圧電放電エネルギーを生じる、および環境および前記基板との摩擦および粘性がある場合それらを克服する、という3つの方法で散逸する。前記ベルト120の機械的共振は、多数のサイクルにわたり継続する可能性があるが、最終的には当該媒体の粘性により減衰される。前記圧電電圧出力は前記振動の各サイクルで生じるが、この実験設計の前記AFM先端130は、前記ベルトの各振動サイクルの電気信号出力を集める上で十分な速度がない可能性がある。前記放電信号については、長時間かけると集められる場合もあることがわかり、その間には、前記ベルトが10サイクルを超えて共振し、連続的に一定の出力DC電圧を生じる。前記ワイヤーの共振周波数が約10kHzで、前記先端の走査速度が約10μm/sだったため、このワイヤー120は、前記AFMプローブ先端130との接触が不可能な位置を離れる前までに、当該AFMプローブ先端130に100回を超えて接触したと考えると妥当である。圧電出力電圧は、各振動サイクルで生じることが観測された。このように、前記出力電圧を連続的に集めると、DC電源を生成することができる。
【0035】
電流は、前記AFM先端130が、前記ベルト/ワイヤーの圧縮側と接触している場合のみ生じる。前記AFMプローブ先端130が前記延伸側128に接触している場合は、弾性変形が極めて大きくても出力電流は流れない。ZnOワイヤーが大きな変形を受けた場合には、この期待される結果が観測されたが、出力電圧は測定されなかった。
【0036】
AFMの導電性先端130を使って接触モードでワイヤー/ベルト120をたわめることにより、エネルギーは、まず前記たわみ力により生じ、圧電電位として保存されたのち、圧電エネルギーに変換される。当該発電機の機構は、ZnOの半導体および圧電特性が結合された結果生まれたものである。圧電効果は、弾性変形からイオン電荷の電位を生じる上で必要であり、半導体特性は、当該工程の全体にわたりスイッチとして機能する金属ZnO界面のショットキー障壁の整流作用により、前記電荷を維持したのち前記電位を放出する上で必要である。導電率が良好なZnOは、電流が流れるのを可能にする。また、この工程は、GaNおよびZnSなどウルツ鉱型構造の物質でも可能である。
【0037】
発電機の第2の実施形態を示したのが図2Aおよび図2Bで、これらの図では、第1の導電性接触子210は前記第1の端部122に設けられており、第2の導電性接触子212は前記第2の端部124に設けられている。前記第2の導電性接触子212は、前記半導体圧電構造120に抗して配置でき、または前記基板110が導電物質で作製されている場合は前記基板110に抗して配置できる。負荷214は、前記第1の端部122に方向Fへ力が加えられると電流Iが当該負荷214を貫流するよう、前記第1の導電性接触子210と前記第2の導電性接触子212との間に連結されてる。
【0038】
第3の実施形態を図3A〜3Dに示す。この実施形態において、第1の導電性接触子310は、起伏のある表面を有する。図3Bに示すように、この第1の導電性接触子310に下向きの力が加えられると、前記半導体圧電構造120の一部が当該第1の導電性接触子310に接触する。これにより、前記半導体圧電構造120が湾曲し、その両面に電位差が生じる。初期には、図3Cに示すように、前記半導体圧電構造120の正側だけが前記第1の導電性接触子310に接触し、電流の流れない逆バイアスショットキー障壁を生じる。しかし、前記第1の導電性接触子310が十分押し下げられて、前記半導体圧電構造120の負側に接触すると、順バイアスのショットキー障壁が生じて、電流が前記負荷214を貫流できるようになる。前記半導体圧電構造120の前記正側は依然として前記第1の導電性接触子310に接触しているが、それによる影響はない。これは前記正側と前記第1の導電性接触子310との間の前記ショットキー障壁にまだ逆バイアスがかかっており、前記正側で電流が流れないためである。
【0039】
順バイアスがかかった状態の本装置は、図4Aに示したエネルギーバンドギャップ図402を有し、前記半導体圧電構造(この例ではZnO)の圧縮側の伝導エネルギーレベル(Ec)が前記金属のフェルミエネルギー(Ef)を超える。前記圧縮側は前記金属に対し負電位(V−)であることから、(電流が正電荷の流れを表すという慣習に従うと)電流は、ショットキー障壁406を越えて前記金属から前記半導体圧電構造へ流れることが可能になる。前記半導体圧電構造の前記延伸側に前記金属が接触している場合は、図4Bに示したように、前記圧縮側の伝導エネルギーレベル(Ec)が当該金属のフェルミエネルギー(Ef)以下になり、前記延伸側が前記金属の電位に対して正電位を有するため、電流はショットキー障壁406を超えて流れることができない。
【0040】
図5Aに示すように、一実施形態では、酸化亜鉛(ZnO)ナノ構造522のアレイ520で、前記ナノ構造522の上方に波形の導体510が配置されたものを使用する。負荷214は、前記ナノ構造アレイ520の基部(との間にオーミック接触を形成している)と、前記波形の導体510とに連結されている。適切なZnOナノ構造522の顕微鏡画像を図5Bに示す。その代替実施形態では、図6Aに示すように、複数のナノボウル612を画成するシート610が、前記導電性接触子として使用される。複数のナノボウル612の顕微鏡画像を図6Aに示す。適切なナノボウルは、米国特許出願公開第US−2005−0224779−A1号(2004年12月10日付け出願済み第11/010,178号)で詳しく開示されている方法に従って製作できる(参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする)。この実施形態は、体の動きで発電する場合に使用できる。例えば、この実施形態を靴底に適用した場合、その靴を履いたヒトが歩くと発電できる。
【0041】
図7では、往復動する接触子710により作動するナノワイヤーのアレイ520を使用した一実施形態を示す。この往復動する接触子710には、ピストン型アクチュエータなどのアクチュエータ714に駆動される金属接触ブレード712が含まれる。
【0042】
図8Aは回転する発電機を示したもので、半導体圧電構造820に含まれる複数のナノロッド822は、コア824から径方向に延出しており、軸を中心として回転方向Rに回転自在である。導電性接触子810に画成された開口部812は、前記半導体圧電構造820の回転に伴い、前記ナノロッド822が当該接触子810の縁部に抗して移動するように配置されている。この実施形態では、風車と同様な方法で、流れる流体が前記半導体圧電構造820を回転させることができる。この実施形態は、血管や送水管など、流体流れ構造内の発電機として使用できる。
【0043】
振動エネルギーを電気エネルギーに変換する一実施形態は、図9Aに示しており、半導体圧電ナノ構造922のアレイ920が導電性ナノロッド912のアレイ910と対向関係で配置されている。前記半導体圧電ナノロッド922の少なくとも一部の第1の端部924は、前記導電性ナノロッドの少なくとも一部の第1の端部914と隣接しあっており、前記導電性ナノロッド912が前記半導体圧電ナノロッド922に対し横方向(VおよびV’の方向)に振動すると、前記導電ナノロッド912の少なくとも1つと、前記半導体圧電ナノロッドの少なくとも1つとの接触により、順バイアスショットキー障壁が形成されて電流が生じるようになっている。半導体圧電ナノロッド922のアレイ920の顕微鏡画像を、図9Bに示す。
【0044】
発電機を作製する方法の1つでは、図10A〜10Dに示したように、複数の触媒粒子1022(金粒子など)が基板1010上に配置される。次いで、米国特許出願公開第US−2005−0224779−A1号に開示されているタイプの工程により、前記触媒粒子1022から酸化亜鉛ナノワイヤー120が成長する。そして、有機ポリマーの層など変形可能な層1030が、各前記複数の酸化亜鉛半導体圧電構造120を所定のレベルまで取り囲むよう、前記基板1010上に成膜される。前記ナノワイヤー120の上方には、起伏のある導電性接触層1040が配置され、前記導電性接触層1040に下向き(矢印方向)の力が加えられると、(図3A〜3Dを参照して説明した態様で)順バイアスショットキー障壁が形成されて電流が負荷1032に流れるようになっている。この実施形態では、前記変形可能な層1030が前記ナノワイヤー120の姿勢を保ち、これらを常に離間させ、また前記基板1010から剥がれないようにしている。
【0045】
この実施形態は、柔軟な若しくは折り畳み可能な電源として柔軟な電子機器に使用できるよう、極めて大きく変形させることができる。この実施形態で酸化亜鉛を選択する理由の1つは、酸化亜鉛が生体適合性のある生体に安全な物質であるため、電源として人体に移植できる可能性があるということである。酸化亜鉛ナノワイヤーの成長に使用されるポリマー基板の柔軟性により、人体内の機械的エネルギー(体の動き、筋肉の伸張)を使用して発電できるよう、ヒトの筋肉の柔軟性に対応させることが実施可能となる。
【0046】
また、図10A〜10Dに示した実施形態は、図11に示すように、音波または超音波のエネルギーに応答する。一端が自由端である梁としての前記ナノワイヤー120の共振によっても、発電は可能である。
【0047】
ここに実証した原理および技術は、機械的な運動エネルギー(体の動き、筋肉の伸張、血圧など)、振動エネルギー(音波/超音波など)、および水圧エネルギー(体液の流れ、血流、血管の収縮、自然に存在する動的な流体など)を、ナノ装置およびナノシステムの自己給電に十分な電気エネルギーに変換できる可能性がある。この技術は、環境からエネルギーを調達することにより、自己給電式無線ナノ装置への重要な用途を有する可能性がある。また、電池を間接的に充電する方法も提供できる。ZnOワイヤー/ベルトのアレイを使うと大出力の発電機を製作することが可能であり、そのアレイは、金属膜、柔軟な有機プラスチック基板、セラミック基板(アルミナなど)、化合物半導体(GaNやAlNなど)といった基板上に成長させることができる。前記ナノ発電機は、in situ(チャンバー内)、リアルタイム、および埋め込み型のバイオセンシング、生物医学的監視、および生物学的検出のための自己給電技術を使用する基部となることができる。また、リモートセンシング(遠隔計測)および作動の重要なエネルギー要件を満たせる可能性がある。
【0048】
一実施形態では、図12に示すようにナノ構造をクラスター1220にパターン化し、または図13に示すように個々のナノ構造1320をパターン化して配置することができる。一実施形態では、図14に示すように、導電性ピラミッド1440のアレイを導電性接触子に含めることができる。
【0049】
上記説明した実施形態は、出願時に本発明者が周知であった本発明の好適な実施形態および最良の形態を含んでいるが、あくまでも例示的なものである。本明細書に開示した具体的な実施形態から、本発明の要旨を逸脱しない範囲で多くの修正・変形形態が可能であることが容易に理解されるであろう。このため、本発明の範囲は具体的に上述した実施形態に限定されることなく、以下の特許請求の範囲により決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】図1A〜1Bは、第1の実施形態の概略図である。
【図1B】図1A〜1Bは、第1の実施形態の概略図である。
【図2A】図2A〜2Bは、第2の実施形態の概略図である。
【図2B】図2A〜2Bは、第2の実施形態の概略図である。
【図3A】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3B】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3C】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図3D】図3A〜3Dは、第3の実施形態の概略図である。
【図4A】図4Aは、順バイアスがかかった装置における相対エネルギーバンドを示したエネルギーバンドギャップ図である。
【図4B】図4Bは、逆バイアスがかかった装置における相対エネルギーバンドを示したエネルギーバンドギャップ図である。
【図5A】図5Aは、一実施形態の概略図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノ構造の顕微鏡画像である。
【図6A】図6Aは、ナノボウルを使用した一実施形態の概略図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノボウルの顕微鏡画像である。
【図7】図7は、ナノボウルを使用した一実施形態の概略図である。
【図8A】図8Aは、回転する一実施形態の概略図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに示した実施形態に使用できるタイプの放射状に設けられたナノ構造の顕微鏡画像である。
【図9A】図9Aは、2セットのナノワイヤーを使用した一実施形態の概略図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示した実施形態に使用できるタイプの複数のナノワイヤーの顕微鏡画像である。
【図10A】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10B】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10C】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図10D】図10A〜10Dは、シート実施形態の作製方法を示した一連の概略図である。
【図11】図11は、音波エネルギーに応答する一実施形態の動作を示した概略図である。
【図12】図12は、第1のパターン化ナノ構造実施形態の上面斜視図である。
【図13】図13は、第2のパターン化ナノ構造実施形態の上面斜視図である。
【図14】図14は、角錐形の導電性接触子実施形態の上面斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機であって、
a.第1の基板と、
b.第1の端部と、当該第1の端部に対向し、且つ前記第1の基板に隣接して配置されている第2の端部とを有する半導体圧電構造であって、当該構造は柔軟性を有し、前記第1の端部付近に力が加えられると湾曲し、それによって当該半導体圧電構造の前記第1の端部の一部における第1の側部と第2の側部との間に電位差を生じるものである、前記半導体圧電構造と、
c.前記第1の端部と通電するように配置されている第1の導電性接触子であって、前記構造の前記第1の端部の一部と当該第1の導電性接触子との間にショットキー障壁を生じさせる物質から本質的に成り、さらに前記構造に対して、当該構造が変形されると前記ショットキー障壁が順バイアスされる位置に配置されていることにより、当該第1の導電性接触子から前記第1の端部に電流が流れるものである、前記第1の導電性接触子と、
d.前記第2の端部と通電するように配置されている第2の導電性接触子と
を有する発電機。
【請求項2】
請求項1記載の発電機において、この発電機は、さらに、
前記第1の導電性接触子および前記第2の導電性接触子の双方に電気的に連結された回路素子を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の発電機において、前記構造はナノ構造を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の発電機において、前記構造は単結晶性である。
【請求項5】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノロッドを有するものである。
【請求項6】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノワイヤーを有するものである。
【請求項7】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノチューブを有するものである。
【請求項8】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノリボンを有するものである。
【請求項9】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノベルトを有するものである。
【請求項10】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は酸化亜鉛を含むものである。
【請求項11】
請求項1記載の発電機において、前記第1の導電性接触子は金属を含むものである。
【請求項12】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は前記第1の基板に対して平行、且つ当該第1の基板から間隔をおいて配置された起伏のある表面を有するものである。
【請求項13】
請求項12記載の発電機において、前記起伏のある表面は複数の波形を形成するものである。
【請求項14】
請求項12記載の発電機において、前記起伏のある表面は前記第1の基板に向かう方向へ方向付けられた複数のナノボウルを形成するものである。
【請求項15】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は、
a.前記第1の基板の対して平行、且つ前記ナノロッドに対して横方向の縁部を有する導電性ブレードと、
b.前記ブレードを前記複数のナノロッドに対して横断移動させて前記ナノロッドのセットを湾曲させ、さらに当該ブレードを前記ナノロッドのセットの各端部に接触させることにより、前記ブレードと前記ナノロッドのセットとの間に順バイアスショットキー障壁を形成する機構と
を有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は、軸を中心として回転自在なコアから径方向に延出した複数のナノロッドを有するものである。
【請求項17】
請求項16記載の発電機において、前記第1の導電性接触子は一定の関係で前記コアから離間されており、これにより前記コアが回転するのに伴い前記ナノロッドの各々の第1の端部が移動して前記第1の導電性接触子に接触し、順バイアスショットキー障壁を形成するものである。
【請求項18】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数の半導体圧電ナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は第2の基板から下方へ延出する複数の導電性ナノロッドを有し、さらに、この導電性ナノロッドは、前記半導体圧電ナノロッドの各セットの第1の端部が当該導電性ナノロッドの各セットの第1の端部に隣接するように配置されており、これにより前記導電性ナノロッドが前記半導体圧電ナノロッドに対し横方向に振動すると、前記導電性ナノロッドの少なくとも1つが前記半導体圧電ナノロッドの少なくとも1つに接触して順バイアスショットキー障壁が形成されるものである。
【請求項19】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は、前記基板から間隔をおいて配置され、前記複数のナノロッドのセットに接触した導電層を有するものである。
【請求項20】
請求項19記載の発電機において、この発電機は、さらに、
前記基板と前記導電層との間に設けられた変形可能な絶縁層を有するものである。
【請求項21】
請求項20記載の発電機において、前記変形可能な絶縁層は、当該発電機に所定の力が加えられた場合に前記ナノロッドが湾曲するのを可能にする上で十分可塑性のある物質を含むものである。
【請求項22】
請求項20記載の発電機において、前記変形可能な絶縁層は有機化合物を含むものである。
【請求項23】
請求項20記載の発電機において、前記導電層は金属を含むものである。
【請求項24】
請求項23記載の発電機において、前記金属は金を含むものである。
【請求項25】
請求項20記載の発電機において、前記導電層は導電性ポリマーを含むものである。
【請求項26】
発電機を作製する方法であって、
a.第1の基板から半導体圧電構造を成長させる工程と、
b.第1の導電性接触子を前記半導体圧電構造に対して一定の位置に配置することにより、前記半導体圧電構造が湾曲すると前記第1の導電性接触子が前記半導体圧電構造の一部と通電し、当該導電性接触子と当該半導体圧電構造との間に順バイアスショットキー障壁が形成されるようにする工程と
を有する方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の導電性接触子を電気的負荷に電気的に連結する工程を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載の方法において、前記成長工程は、
a.前記第1の基板に触媒粒子を適用する工程と、
b.前記触媒粒子、前記第1の基板、および気相前駆物質を一定の環境内に配置して、前記気相前駆物質を前記触媒粒子上に蒸着させる工程と、
c.所定の時間後、前記環境から前記基板を取り出す工程と
を有するものである。
【請求項29】
請求項26記載の方法において、この方法は、さらに、
a.平面上に起伏のある表面を有するように前記第1の導電性接触子を作製する工程と、
b.前記第1の導電性接触子を、前記第1の基板に平行、且つ当該第1の基板から間隔をおいて配置する工程と
を有するものである。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記作製工程は導電性物質から複数のナノボウルを形成する工程を有するものである。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記形成する工程は、
a.第2の基板の表面上に複数の有機球体を配置する工程と、
b.前記有機球体に金属酸化物を適用して、前記有機球体の周囲に金属酸化物シェルを形成する工程と、
c.各金属酸化物シェルの一部およびそれに対応した各有機球体の一部を除去する工程と、
d.各有機球体の残りの部分をすべて除去することにより、前記第2の基板上に複数のボウル形状の構造を残す工程と
を有するものである。
【請求項32】
シート発電機を作製する方法であって、
a.基板から上向きに複数の半導体圧電構造を成長させる工程と、
b.前記基板上に一定のレベルまで第1の変形可能な層を成膜し、当該変形可能な層が、所定のレベルまで前記複数の半導体圧電構造の各々を取り囲むようにする工程と、
c.前記変形可能な絶縁層の上方に導電性接触層を成膜し、当該導電層に下向きの力が加えられたとき、当該導電層が前記複数の半導体圧電構造と通電するようにする工程と
を有する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記導電層を成膜する工程は、導電性金属を成膜する工程を有するものである。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記導電層を成膜する工程は、導電性ポリマーを成膜する工程を有するものである。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記複数の半導体圧電構造を成長させる工程は、複数のナノロッドを成長させる工程を有するものである。
【請求項1】
発電機であって、
a.第1の基板と、
b.第1の端部と、当該第1の端部に対向し、且つ前記第1の基板に隣接して配置されている第2の端部とを有する半導体圧電構造であって、当該構造は柔軟性を有し、前記第1の端部付近に力が加えられると湾曲し、それによって当該半導体圧電構造の前記第1の端部の一部における第1の側部と第2の側部との間に電位差を生じるものである、前記半導体圧電構造と、
c.前記第1の端部と通電するように配置されている第1の導電性接触子であって、前記構造の前記第1の端部の一部と当該第1の導電性接触子との間にショットキー障壁を生じさせる物質から本質的に成り、さらに前記構造に対して、当該構造が変形されると前記ショットキー障壁が順バイアスされる位置に配置されていることにより、当該第1の導電性接触子から前記第1の端部に電流が流れるものである、前記第1の導電性接触子と、
d.前記第2の端部と通電するように配置されている第2の導電性接触子と
を有する発電機。
【請求項2】
請求項1記載の発電機において、この発電機は、さらに、
前記第1の導電性接触子および前記第2の導電性接触子の双方に電気的に連結された回路素子を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の発電機において、前記構造はナノ構造を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の発電機において、前記構造は単結晶性である。
【請求項5】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノロッドを有するものである。
【請求項6】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノワイヤーを有するものである。
【請求項7】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノチューブを有するものである。
【請求項8】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノリボンを有するものである。
【請求項9】
請求項3記載の発電機において、前記ナノ構造はナノベルトを有するものである。
【請求項10】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は酸化亜鉛を含むものである。
【請求項11】
請求項1記載の発電機において、前記第1の導電性接触子は金属を含むものである。
【請求項12】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は前記第1の基板に対して平行、且つ当該第1の基板から間隔をおいて配置された起伏のある表面を有するものである。
【請求項13】
請求項12記載の発電機において、前記起伏のある表面は複数の波形を形成するものである。
【請求項14】
請求項12記載の発電機において、前記起伏のある表面は前記第1の基板に向かう方向へ方向付けられた複数のナノボウルを形成するものである。
【請求項15】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は、
a.前記第1の基板の対して平行、且つ前記ナノロッドに対して横方向の縁部を有する導電性ブレードと、
b.前記ブレードを前記複数のナノロッドに対して横断移動させて前記ナノロッドのセットを湾曲させ、さらに当該ブレードを前記ナノロッドのセットの各端部に接触させることにより、前記ブレードと前記ナノロッドのセットとの間に順バイアスショットキー障壁を形成する機構と
を有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は、軸を中心として回転自在なコアから径方向に延出した複数のナノロッドを有するものである。
【請求項17】
請求項16記載の発電機において、前記第1の導電性接触子は一定の関係で前記コアから離間されており、これにより前記コアが回転するのに伴い前記ナノロッドの各々の第1の端部が移動して前記第1の導電性接触子に接触し、順バイアスショットキー障壁を形成するものである。
【請求項18】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数の半導体圧電ナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は第2の基板から下方へ延出する複数の導電性ナノロッドを有し、さらに、この導電性ナノロッドは、前記半導体圧電ナノロッドの各セットの第1の端部が当該導電性ナノロッドの各セットの第1の端部に隣接するように配置されており、これにより前記導電性ナノロッドが前記半導体圧電ナノロッドに対し横方向に振動すると、前記導電性ナノロッドの少なくとも1つが前記半導体圧電ナノロッドの少なくとも1つに接触して順バイアスショットキー障壁が形成されるものである。
【請求項19】
請求項1記載の発電機において、前記半導体圧電構造は前記第1の基板から上方へ延出する複数のナノロッドを有し、前記第1の導電性接触子は、前記基板から間隔をおいて配置され、前記複数のナノロッドのセットに接触した導電層を有するものである。
【請求項20】
請求項19記載の発電機において、この発電機は、さらに、
前記基板と前記導電層との間に設けられた変形可能な絶縁層を有するものである。
【請求項21】
請求項20記載の発電機において、前記変形可能な絶縁層は、当該発電機に所定の力が加えられた場合に前記ナノロッドが湾曲するのを可能にする上で十分可塑性のある物質を含むものである。
【請求項22】
請求項20記載の発電機において、前記変形可能な絶縁層は有機化合物を含むものである。
【請求項23】
請求項20記載の発電機において、前記導電層は金属を含むものである。
【請求項24】
請求項23記載の発電機において、前記金属は金を含むものである。
【請求項25】
請求項20記載の発電機において、前記導電層は導電性ポリマーを含むものである。
【請求項26】
発電機を作製する方法であって、
a.第1の基板から半導体圧電構造を成長させる工程と、
b.第1の導電性接触子を前記半導体圧電構造に対して一定の位置に配置することにより、前記半導体圧電構造が湾曲すると前記第1の導電性接触子が前記半導体圧電構造の一部と通電し、当該導電性接触子と当該半導体圧電構造との間に順バイアスショットキー障壁が形成されるようにする工程と
を有する方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第1の導電性接触子を電気的負荷に電気的に連結する工程を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載の方法において、前記成長工程は、
a.前記第1の基板に触媒粒子を適用する工程と、
b.前記触媒粒子、前記第1の基板、および気相前駆物質を一定の環境内に配置して、前記気相前駆物質を前記触媒粒子上に蒸着させる工程と、
c.所定の時間後、前記環境から前記基板を取り出す工程と
を有するものである。
【請求項29】
請求項26記載の方法において、この方法は、さらに、
a.平面上に起伏のある表面を有するように前記第1の導電性接触子を作製する工程と、
b.前記第1の導電性接触子を、前記第1の基板に平行、且つ当該第1の基板から間隔をおいて配置する工程と
を有するものである。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記作製工程は導電性物質から複数のナノボウルを形成する工程を有するものである。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記形成する工程は、
a.第2の基板の表面上に複数の有機球体を配置する工程と、
b.前記有機球体に金属酸化物を適用して、前記有機球体の周囲に金属酸化物シェルを形成する工程と、
c.各金属酸化物シェルの一部およびそれに対応した各有機球体の一部を除去する工程と、
d.各有機球体の残りの部分をすべて除去することにより、前記第2の基板上に複数のボウル形状の構造を残す工程と
を有するものである。
【請求項32】
シート発電機を作製する方法であって、
a.基板から上向きに複数の半導体圧電構造を成長させる工程と、
b.前記基板上に一定のレベルまで第1の変形可能な層を成膜し、当該変形可能な層が、所定のレベルまで前記複数の半導体圧電構造の各々を取り囲むようにする工程と、
c.前記変形可能な絶縁層の上方に導電性接触層を成膜し、当該導電層に下向きの力が加えられたとき、当該導電層が前記複数の半導体圧電構造と通電するようにする工程と
を有する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記導電層を成膜する工程は、導電性金属を成膜する工程を有するものである。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記導電層を成膜する工程は、導電性ポリマーを成膜する工程を有するものである。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記複数の半導体圧電構造を成長させる工程は、複数のナノロッドを成長させる工程を有するものである。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−521203(P2009−521203A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547684(P2008−547684)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/061933
【国際公開番号】WO2007/076254
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507336226)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】GEORGIA TECH RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/061933
【国際公開番号】WO2007/076254
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507336226)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】GEORGIA TECH RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】
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