説明

結合手段を持つ積層体から成るフローセル

本発明は3つの板(3〜5)から成る積層体を持つフローセルに関し、可撓性材料から成る中間板(4)が、一層剛性の材料から成る板(3,5)の間に挟まれ、板の少なくとも1つが液体を収容する少なくとも1つの凹所(15,17)を持ち、この凹所が積層体の他の板(3,5)により区画されている。凹所は特に微小溝及び反応室である。本発明によれば、板は、板面に対して平行な方向に凹所から離れて設けられる手段により、中間板を押付けて互いに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの板から成る積層体を持つフローセルであって、可撓性材料から成る中間板が、一層剛性の材料から成る板の間に挟まれ、板の少なくとも1つが、液体を収容するために設けられる少なくとも1つの凹所を持ち、この凹所が積層体の他の板により区画されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような微小化されたフローセルは、化学特に生化学及び医学特に診断学の分野で分析装置及びセンサ装置においてますます使用されるようになっている。上記の凹所により、例えば微小通路、この通路を流体接続される反応室及び/又はセンサの収容室を形成することができ、このような凹所の寸法は、少なくとも1つの空間方向に数10μm〜100μm動く。構造及び取付けに応じてこのようなフローセルは、実験室で行われる試験を全部又は一部引受けることができる。
【0003】
特に医学における使用に関して、このような微小構造を持つフローセルを量産でできるだけ安価に製造することが重要である。半導体技術により精密な微小構造化を可能にする高価なガラス状又はシリコン状基板は、材料性質のためプラスチックを使用できないフローセルの部品のために残されていなければならない。
【0004】
上述したフローセルに類似の装置は、米国特許第4,798,706号明細書、国際公開第WO01/24933号、国際公開第WO99/19717号、米国特許第5,500,270号明細書、米国特許第5,571,410号明細書、米国特許第5,658,413号明細書、米国特許第5,738,825号明細書及び国際公開第WO99/46045号からわかる。前記の国際公開第WO01/24933号は、弾性中間板を持つ3つの部品から成るフローセルを記載しており、これらの部品は互いに接する表面の付着能力のみによってまとめられる。
【0005】
最初にあげた種類のフローセルは、米国特許第5,376,252号明細書からわかる。弾性材料から成る中間板は溝構造を持っている。フローセルの操作の際3つの部品は外部締付け装置によって圧縮されるので、液密な微小溝が生じる。外部締付け装置からフローセルを取外した後、板の間の結合が解消され、周囲の化学的及び生物学的汚染の危険がある。板を締付け装置へ挿入する前に、板上の機能的に共同作用する微小構造を互いに整列するため、大規模な対策が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎になっている課題は、公知のこのようなフローセルより少ない費用で確実に製造及び操作され、微小ポンプ、微小弁、液体貯蔵室等のように別個に予め製造される構造部品を統合可能な、最初にあげた種類のフローセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決する本発明によるフローセルは、板が、板面に対して平行方向に凹所から離れた所に設けられる手段により、中間板を押付けながら互いに結合されていることによって解決される。
【0008】
本発明によれば、凹所により形成される微小溝、反応室等が、押付けられる中間板により、フローセルの廃棄物処理後も、永続的に有利に密閉される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、側方に即ち板面に対して平行な方向に凹所から離れて、フローセルの板の相互整列のため、位置ぎめ素子が積層体に設けられている。これらの位置ぎめ素子により、板に形成される構造部分が、フローセルの組立ての際自動的に互いに整列され、組立てられるフローセルにおいて整列された状態に保たれる。
【0010】
本発明の特に好ましい実施形態では、位置ぎめ素子及び結合手段が共通な構成部分を持っている。
【0011】
結合手段及び/又は位置ぎめ素子が穴及びピンであると好都合である。3つの板のうち1つは直角に立つピンを持つことができ、これらのピンが他の板の穴へ導入されている。ピンは熱により変形可能なので、適当な押付け兼加熱ダイにより、自由端に、鋲止めのように、該当する板に係合する頭部を形成することができる。ピン直径は穴直径より少し小さい。この差は板相互の位置ぎめ精度を決定する。他方ピン及び穴が多数である場合、この差により、ピン及び穴の位置ぎめ公差にもかかわらず、ピンを持つ板上に穴のあいた板をはめることができる。
【0012】
結合手段又は/及び位置ぎめ素子が、板の互いに対向する縁に場合によっては枠状に設けられていると好都合である。更に板の内部にも、凹所から横に離れて、結合手段及び位置ぎめ素子を設けることができる。更に枠状の接着又は溶接も考えられる。
【0013】
中間板を包囲する外側の板が予め曲げられており、フローセルの組立ての際平面にされることにより、中間板の押付けが強化される。
【0014】
本発明の別の構成では、一層剛性の材料から成る板の少なくとも1つが、板の結合のために使用される結合ピンの頭部を収容する凹所を有する穴を持っている。従って底板からピンが突出せず、フローセルは平らな台板上に安定に置かれる。
【0015】
板の少なくとも1つ特に一層剛性の材料から成る板の1つは、なるべく別々に予め製造されかつ場合によってはシリコン又はガラスから成る微小部材を精確な位置で収容する少なくとも1つの凹所を持っていることができる。この微小部材は、例えばポンプ用の凹所、弁、センサ、場合によっては表面処理されたのぞき窓、フィルタ、流体貯蔵室又は電極であってもよい。
【0016】
微小部材が接着又は溶接ではなくはまり合いで保持されていると有利である。
【0017】
必要に応じて、凹所が中間板及びフローセルの外側の方へ開いていてもよい。
【0018】
凹所内に設けられる微小部材の横寸法が、微小部材により区画される中間板の凹所例えば反応室の横寸法より大きいと有利である。この場合微小部材と凹所の側壁との間に形成されるスリットが、軟らかい中間板により密閉されていると有利である。
【0019】
板積層体に、それぞれ単独で機能する複数のフローセル機能ユニットを収容することができる。場合によっては機能ユニットの間に、中間板上にできるだけ均一な面圧を得るため、別の結合手段及び/又は位置ぎめ素子が設けられている。
【0020】
本発明の別の構成では、一層剛性の材料から成る板の少なくとも1つと一体に、接続片が形成され、この接続片は例えば円錐状の外面又は/及び内面を持つことができる。円錐状外面は異なる直径のホースの取付けを容易にする。円錐状内面を持つ接続片に、円錐状端部片を持つ結合ホースが接続される。
【0021】
本発明の有利な構成では、中間板が、主として凹所及び場合によっては結合手段に隣接する範囲においてのみ押付けられている。これは、中間板又はこれに接する板にあって凹所から離れて設けられている平らな凹所によって行われる。この手段により面圧が高められる。こうして密閉性を確実にするため加えるべき押付け力を全体として減少することができ、それにより組立てが簡単化される。押付け力の減少は、結合手段にかかる荷重が小さいことによって、フローセルの疲れ強度の増大に役立つ。
【0022】
フローセルの外側に、例えば反応室及び微小溝のように液体を収容するため箔により覆われる凹所を形成することもでき、例えばこれらの構造体は、セルの内部に形成される液体回路網を補足する。
【0023】
本発明の別の構成では、板の少なくとも1つに、板厚に対して薄くされて変形可能又はカニューレにより突き破り可能な底範囲を持つ凹所が形成されている。外部から底範囲への作用により、例えば統合されたディスペンサ装置を操作することができる。カニューレを介して外部から液体の注入及び取出しが可能である。
【0024】
統合されたポンプ及び弁は、例えば圧電操作器により駆動することができ、そのため本発明の実施形態によれば、フローセルに電気接続導体が統合されている。
【0025】
全部で3つの板から成る好ましい実施形態では、覆い板及び底板が、1000N/mm〜10000N/mmの弾性係数を持つ比較的剛性のプラスチックから成っている。材料として、とりわけPMMA、COC、PC、PS、LCP、PEEK及びPPのような熱可塑性プラスチックが考慮される。
【0026】
中間板は、0.5mm〜3mmの厚さで、1N/mm〜10N/mmの弾性係数を持つ比較的軟らかいプラスチックから成っている。この板は、ポリウレタン及びシリコーンのような熱可塑性エラストマから微小射出成形により製造されているのがよい。組立ての際このような板は、その最初の厚さの50〜95%に圧縮される。
【0027】
その代わりに底板のために、例えばセラミック又は印刷配線板材料のような別の材料が考慮される。後者の材料は、特に電気導体の受入れに特に適している。
【0028】
さて実施例及びこれらの実施例に関する添付図面により、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1〜3に示すフローセル1は覆い板3、中間板4及び底板5を持っている。図示した実施例では、フローセルは4つの一致する機能ユニット2を含んでいる。板3〜5は、複製法なるべく微小射出成形により製造されている。板の外側寸法は5〜200mm、厚さは0.5〜10mmである。
【0030】
各機能ユニット2は、覆い板3と一体にその上面に結合される複数の接続部、貯槽又は井戸7の形の接続部及びホース接続部8,9を含んでいる。更に各機能ユニット2は、覆い板3に形成される貫通ポケット10へ下から挿入可能な後述する微小部材6を含んでいる。
【0031】
図3からわかるように、長方形のポケット10は、微小部材6用の座を形成する肩部11を持っている。肩部の範囲におけるポケット10の横寸法は、挿入すべき微小部材の対応する寸法に対して、0.01〜0.1mmだけ大きく選ばれている。肩部の深さは、微小部材6の厚さに対して、なるべく0.01〜0.1mmだけ小さいので、組込まれた状態で微小部材6は覆い板3の下面から突出している。
【0032】
覆い板3には更に位置ぎめピン12が一体に形成され、その長さは中間板と底板の板厚の和より大きい。図2及び3からわかるように、覆い板3の両方の長辺に、このようなピンの直線列がそれぞれ形成されている。位置ぎめピンの配置は、板の組立てられた状態で均一な面圧を可能にする。位置ぎめピンの間隔はなるべく10mmより小さい。
【0033】
射出成形法で製造される板3及び5は、例えばPMMAのような剛性プラスチックから成っているが、中間板4の材料は、軟らかく場合によっては弾性のある材料例えばシリコーンである。
【0034】
中間板4は、位置ぎめピン12に応じて配置される位置ぎめ穴13を持ち、これらの穴の内径は位置ぎめピン12の直線よりなるべく0.01〜0.2mmだけ大きい。
【0035】
中間板には更に貫通穴14が形成され、その位置は井戸7及びホース接続部8,9と一致している。中間板4の下面にある微小溝15は、フローセルへの要求に応じて設定される断面寸法を持っている。典型的に断面積は0.01×0.01mm〜1×1mmである。微小溝15は、結合穴16を介して、中間板4の上面に形成される反応室17に接続され、これらの反応室は長方形凹所として形成され、その上面を微小部材6の下面により区画される結合穴16の位置は、これらの結合穴が微小部材の外縁に対してなるべく0.1〜1mmだけ内方へずれているように選ばれている。それにより液体は、微小溝15から結合穴16を経て漏れなしに反応室17へ達することができる。
【0036】
覆い板3にある位置ぎめピン12に応じて、底板5に位置ぎめ穴18が形成されている。位置ぎめ穴18の直径は、溶接された状態で、位置ぎめピン12の直径よりなるべく0.5〜5mmだけ小さい。板の組立てられた状態で、微小溝15は底板5の上面により区画される。
前述したフローセルの組立ての際、まず微小部材6が覆い板3のポケット10へ差込まれ、続いて中間板及び底板5が覆い板3の位置ぎめピン12上へはめられ、その際位置ぎめピン12が中間板及び底板の位置ぎめ穴13及び18へ入る。
【0037】
押付け装置により、板積層体が所定の大きさの押付け力を及ぼしながら圧縮される。圧縮された位置に板を固定するため、位置ぎめピンが例えば超音波処理の範囲内で溶融されて、貫通穴内で押付けられる。その際底板の下で広げられる位置ぎめピンは底板に係合し、板積層体の冷却及び硬化後、押付け装置により前もって及ぼされる押付け力を充分維持しながら板積層体をまとめる。圧縮される軟らかい中間板は、プラスチック部材の製造公差を補償し、密閉作用するので、中間板にあって覆い板及び底板の方へ開く凹所即ち微小溝及び反応室は液密に閉鎖されている。
【0038】
ここに説明したフローセルは、例えば特定のDNAシーケンスによる試料の証明に適している。この場合微小部材6は、下面に多数のDNAゾンデ分子を持つ透明なガラスチップである。ソンデ分子を持つ検出面の寸法は、覆い板3のポケット10の横寸法より小さいのがよい。こうして簡単に、フローセルの内部で放出される光量子ここでは蛍光を、ガラスチップを通して従来の検出方法で検出することができる。
【0039】
フローセルは生物応用工学の標準測定器と両立可能である。
【0040】
ハイブリッド化を行うため、試料溶液が井戸へ入れられる。試料の量は典型的には数μ1である。流れ断面は、微小溝15、結合穴16及び反応室17の毛管作用のため試料液が反応室へ達して、ゾンデを持つガラスチップの下面と接触するように、選ぶことができる。透明なガラスチップは、更に反応室の充填レベルの視覚による監視を可能にする。
【0041】
毛管作用による充填の代わりに、試料液を反応室へ吸い込むこともできる。このためホース接続部8が閉じられ、ホース接続部9が試料出口として利用されて、外部のポンプに接続される。ポンプにより試料出口9に発生される負圧は、井戸7にある試料溝へ伝達される。こうして試料液は反応室17へ達する。そこでガラスチップ上のDNAゾンデとハイブリッド化反応する。ホース接続部9に接続されるポンプにより、交互に負圧と正圧が形成されることによって、この過程が援助される。こうしてガラスチップの表面に関して試料液の相対運動が起こる。反応は反応室の連続的又は脈動的な温度調節を援助することもできる。温度調節のため、底板の表面に導体条片の形で設けられかつ図11により更に説明される薄膜抵抗が使用される。導体条片は反応室17のすぐ下に設けることができる。中間板により形成される反応室と導体条片との間の中間層は、反応室の底面にわたる温度分布の均一化に役立つ。
【0042】
ハイブリッド化反応の終了後反応室の洗浄のため、洗浄液を収容する外部の貯槽にホース接続部8を接続し、ホース接続部9に接続されるポンプにより反応室へ吸入することができる。それから透明なガラスチップを通る光を検出しながら蛍光測定により、ハイブリッド化反応の結果を検出することができる。
【0043】
図4は、覆い板3a、中間板4a及び底板5aから成る装置内に微小溝を形成する種々の可能性を示している。
【0044】
図4aによれば、前述した実施例の微小溝15の配置に従って、微小溝18を中間板4aの下面に設ける可能性を示し、溝18は中間板4aに加工され、底板5aの平らな上面により覆われている。溝断面寸法は、両空間方向においてなるべく0.01から1mmである。
【0045】
図4bは、覆い板3aと中間板4aとの境界面で中間板4aに加工される微小溝19を示し、この微小溝は覆い板3aの下面により覆われている。
【0046】
図4cの実施例では、種々の微小溝20〜25が覆い板と中間板との境界面及び中間板と底板との境界面を形成されている。溝の位置及び断面寸法は、フローセルの液体回路網のそのつどの要求に合わせることができるので、このようなフローセルにおける種々の媒体の関与で非常に複雑な過程を行うことができる。それぞれ1つの境界面にある微小溝は互いに移行し合って、例えば液体流を1つの溝から複数の溝へ分配するか、又は逆に複数の溝から1つの溝へ集めることができる。液体を配量して供給するか又は混合するため、微小溝は交差することもできる。
【0047】
図4dによる覆い箔26は、微小溝27を形成し、それによりもっと複雑な回路網を形成するための別の可能性を示している。箔26は、通常のように接着溶接又は結合により、底板の下面に取付けることができる。このような補足箔の使用は、特に、通常箔のために使用されるような例えば0.002mm〜0.2mmの小さい材料厚さを持つ微小溝又は反応室を覆うことが重要である時に、考慮される。薄い箔26は箔を通る光の検出を可能にする。他方薄い材料層は、種々の生化学過程例えばPCRにおいて必要であるように、箔の裏側に導かれる液体の能率的な加熱を可能にする。
【0048】
図4eの実施例では、中間板4aの上面及び下面に、微小溝18aの両側で板の接触面積を減少する凹所28が形成されている。それにより範囲140において、面圧即ち密閉に必要な押付け力が減少される。それにより位置ぎめピン又は結合ピンの必要な引張り応力も有利に減少し、これが組立て過程を容易にし、フローセルの有効寿命を高める。
【0049】
図5は、例えば図1〜3のフローセルのために使用可能な種々の接続部を示している。
【0050】
図5aは、ホースをはめることができる特に簡単な接続部に関する。覆い板は、円筒状毛細管壁30と円筒状毛細管開口31から成る毛細管と結合されている。毛細管開口31は覆い板全体を貫通している。中間板には、覆い板にある毛細管開口の直径及び位置に一致する毛細管開口32が形成されている。毛細管開口32は底板との境界面で微小溝33に通じている。毛細管壁30の外径は典型的に0.5mm〜2mmであり、内径は0.1mm〜1mmである。ホース接続部の突出する長さは、典型的に1mm〜10mmの範囲で変化する。
【0051】
図5bは、円錐状外面142を持つ毛細管壁30aを持つホース接続部を示している。円錐はホースをはめるのを有利に容易にする。特に異なる内径を持つホースをはめることができる。典型的な円錐角は1〜15°である。
【0052】
図5cは、覆い板との結合個所にアンダカット33を持つホース接続部を示し、このアンダカットにより、接続部上へはめられるホースの保持力が有利に高められる。
【0053】
図5dによれば、接続部の毛細管開口31及び32に相当する開口は、貯槽容積又は井戸34及び35となるように拡張されている。貯槽容積35は微小溝33cに結合されている。毛細管壁30cの典型的な外径は3mm〜10mmであり、典型的な内径は2mm〜9mmである。覆い板から突出する長さは、典型的に0.1〜10mmの範囲にある。
【0054】
図5eは、覆い板の上面で終わりかつ円錐内面を持つ差込み壁36及び差込み開口37を持つコネクタの形の接続部を示している。差込み開口37へ、ホースと結合される円錐状接続片が差込まれて、円錐状内面143に液密に付着する。円錐角はなるべく2〜10°である。覆い板にある毛細管開口31dの内径は、接続片の内径に等しく、この接続片と一直線をなしている。こうして結合個所におけるむだ容積が回避される。
【0055】
図5fの実施例では、接続部のため円錐状内面を持つ差込み開口37eに、直径変化なしに、覆い板にある開口31eがすぐ続いている。開口31eに整列されて、中間板に貯槽容積32eがあり、隔壁として役立つ中間壁38により開口31eから隔離されている。注射針により液体をフローセルへ入れる場合、隔壁38が注射針を突き通される。隔壁の適当に軟らかい弾性的な材料により、注射針の除去後突き刺し個所が再び液密に閉じられるようになっている。隔壁の典型的な横の長さは1mm〜5mmである。厚さはなるべく0.05〜0.5mmで変化する。最後の実施例は、特にフローセルが、微小部材を持つか、又はフローセルの製造と使用との間の期間にその使用中及び/又は廃棄物処理後、例えば酸素流入又は封入されている液体の蒸発を回避するため、外気にさらされてはならずかつ/又は気密に閉鎖されねばならない他の範囲を持っている時、有利である。更にこの実施例は液体の自動注入及び排出の際有利であり、使用される注射針は、このような配量システムに統合することができる。更に空気が微小溝及び反応室から逃げることができるようにする時に、このような接続部は有利である。隔壁を突き通る中空針を介して、空気がフローセルから流出し、場合によっては吸い出されることができる。こうしてフローセルにおいて進行する複雑な過程が制御される。
【0056】
図6は、覆い板、中間板及び底板の位置ぎめ及び結合の種々の変形例を示している。
【0057】
図6a及び6bによれば、覆い板の下面になるべく円筒状の位置ぎめピン12aが形成され、覆い板と一体に結合されている。中間板及び底板は対応して設けられる位置ぎめ穴を持っている。穴の内径は位置ぎめピンの直径に対して0.1mm〜0.2mmだけ大きくされている。位置ぎめピンの長さは、中間板及び底板の高さの和より0.5mm〜5mmだけ大きい。フローセルの組立ての際、板が押付け装置により板面に対して直角に圧縮される。ピンは、機械的作用、熱的作用及び/又は超音波作用を受けて圧縮され、図6bによればそれぞれ頭部29を形成される。場合によっては冷却及び押付け装置の取外し後、頭部29が板をまとめ、その際押付け装置により前もって及ぼされた押付け力はその大きさを充分維持される。
【0058】
図6c及び6dの実施例では、底板の下面に拡張部40を持つ位置ぎめ開口が形成され、この拡張部の高さは、上記のように形成される頭部29bを収容できるように選ばれ、頭部29bはなるべく底板の下面から拡張部へ引込んでいる。その場合フローセルは、平らな基礎上に安定に載るための平らな載置面を持っている。
【0059】
図6e及び6fによれば、軟らかくかつ/又は弾性的な中間板が上面及び下面に凹所41を持ち、これらの凹所により板の範囲141における当接面は、位置ぎめ穴だけ減少されている。従って小さい押付け力で液密性が得られる。位置ぎめピン又は結合ピンの引張り応力は有利に減少し、従ってフローセルは減少した内部応力を受け、それにより有効寿命が高まる。組立て過程は容易になる。
【0060】
図6gによる実施例では、弾性的に構成される位置ぎめピン12dが設けられ、互いに離れて設けられるその2つのばね腕42及び43は、自由端にアンダカットされた拡張部44及び45を持っている。中間板及び底板はピン12d上へはめられ、その際ばね腕42,43が圧縮され、拡張部44,45が板を通った後再び広がる。その際これらの拡張部が板をまとめる。組立てのため、有利なことに位置ぎめピン12及び板の機械的負荷は殆ど必要でなく、熱的負荷は全く必要でない。
【0061】
図7は微小部材の種々の変形例及びフローセルへのその統合を示している。
【0062】
図7aによれば、肩部11aを持つ長方形ポケット10aに、1片から成る微小部材6aが挿入されている。肩部の横の長さは微小部材の横の長さに対して0.01mm〜0.1mmだけ大きい。肩部11aに当接する微小部材6aは、ポケット10aから0.01〜0.1mmだけ突出している。それにより微小部材の縁は中間板により密閉されている。中間板には、反応室17a用の凹所、結合穴16a及び微小溝15aが形成されている。反応室17aは、片側を微小部材6aにより区画されている。結合穴16aは、微小部材16aの外縁に対して約0.1mm〜1mmだけ内方へずらされている。それにより液体は、微小溝から結合穴を経て反応室へ漏れることなく輸送される。微小部材は、板の1つへの接着又は溶接なしにはまり合いで、ポケット内に正しい位置で保持される。接着材又は溶接熱による機能化された表面の損傷は防止されている。
【0063】
1片から成る微小部材には種々の機能を与えることができる。構造化されないガラス製微小部材は窓としてのみ用いられ、この窓を通してフローセル内の反応を観察及び/又は検出することができる。ガラス、シリコン、金属又はプラスチックとして下面に結合した分子特にマトリクス配置のDNAゾンデが存在する微小部材は、フローセルにおける上述したハイブリッド化過程のために使用することができる。金属から成る微小部材は、例えば反応室内で行われる過程を制御する触媒として使用される。微小部材は、更に外部熱源からの熱を反応室へ伝達する伝熱体であってもよい。更に微小部材は、例えば電気泳動又は電気滲透に基いてフローセル内で液体を輸送するために、電極を形成する電気導体であってもよい。
【0064】
図7bは2片から成る微小部材を持つフローセルの一部を示している。微小部材は蓋46及び底47から成り、蓋と底は液密に互いに結合されている。蓋と底との間には室48が形成されて、反応室又は微小溝として使用することができる。室48は、開口49,50及び結合穴16bを介して、中間板にある微小溝15bに接続されている。液体回路網のため毛細管開口及び/又は溝が必要な時、このような構造は有利であり、これらの開口又は溝の寸法は、流れに対して直角な少なくとも1つの方向において0.1mm〜5μmであり、従って覆い板、中間板又は底板の構成部分として成形技術により多額の費用なしに製造可能である。これらの場合微小部材のために、シリコン底とガラス蓋から成る組合わせが提供される。これらの部分は公知の結合技術により液密に結合され、シリコン部分は、次微子範囲にあるエッチングされた構造を持つことができる。
【0065】
図7cは、電極区域を形成する複数の微小電極56が固定的に埋込まれている母体55から成る微小部材6cを示している。母体55の材料としてセラミック又はプラスチックが考慮され、電極の材料として金、銀又は白金のような金属、ただし金属繊維又は炭素繊維を持つ導電性プラスチックコンパウンドも考慮される。更に電極のために、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェンのような導電性プラスチックも使用可能である。微小電極区域を持つこのような微小部材は、公知の電気的証明方法を使用して、ハイブリッド化室を持つフローセルの構成を可能にする。
【0066】
図7dから、フィルタ素子57を入れられている母体55dから成る少なくとも2片から成る別の微小部材6dがわかる。フィルタ素子は、寸法が典型的に0.1μm〜100μmの範囲にある細孔を持つ多孔性の海綿状材料から成っている。フィルタ素子は、結合穴16dを介して、中間板と底板との境界に形成されている微小溝15dに接続されている。フィルタ素子57により、フローセルを通して輸送される媒体を簡単に濾過でき、その際液体は例えば結合穴の1つを経てフィルタ素子へ入り、結合穴の所でフィルタから出る。フィルタ素子は更に毛細管ポンプとして用いることができる。毛細管作用により媒体が微小溝15dを経てフィルタ材料に接触すると、細孔フィルタ材料へ吸い込まれる。フィルタ材料の収容能力が使用し尽くされると、液体流は停止する。このような微小部材は、フローセルにおける過程例えば分析の終了後、反応生成物又は他の媒体を廃物容器におけるように蓄えるために、更に使用することができる。この容器は、フローセルの廃棄物処理の場合にも、液体が意に反して流出するのを防止することもできる。
【0067】
図7eの実施例では、中間板に形成される反応室7eがフィルタ素子57eを満たされている。フィルタ素子は、結合穴16eを介して微小溝15eと接続されている。この実施例では、覆い板はフィルタ素子の範囲に収容ポケット又は他の構造を持つ必要がなく、それによりフローセルの構造が簡単になる。
【0068】
さて図8が考慮され、そこには覆い板、中間板及び底板を持つプローセルに微小ポンプ及び微小弁を統合する例が示されている。
【0069】
図8aによれば、微小ポンプ58が、覆い板の上面にあるなるべく円筒状のポケット59へ挿入されている。ポンプは、入口通路61及び出口通路62を有する母体60を持っている。母体上には弾性操作膜63が設けられて、その縁範囲を母体と固定的に統合され、操作膜と母体との間にポンプ空所64を形成している。ポンプ空所に隣接して入口通路に入口弁65が設けられ、出口通路に出口弁66が設けられている。弁は、開口68を有するそれぞれ1つの座部材67と開口を閉じるか又は開くばね部材69とを持っている。操作膜64の周期的操作により、入口弁及び出口弁の交互の開閉が行われるので、液体が入口通路から出口通路へ輸送される。片側で開いているポケットにおいて、弁へ外から接近可能である。操作膜63を操作する外部の装置を適当に使用することができる。最も簡単な場合、この装置は突き棒を持ち、この突き棒が例えば半球状に形成された操作膜を圧縮し、戻しにより膜の弾性的な再伸張を可能にする。予め製造されてフローセルへ入れられている部材によりポンプ機能がフローセルに統合され、例えば異なる流量を持つポンプ又はプラスチック又はシリコンのように種々の材料から成るポンプの種々の構成を、必要に応じて融通のきくように僅かな費用で組込むことができると、有利である。ポンプを操作するため、例えば突き棒の形又は最も簡単な場合手動操作の形の機械的インタフェースしか必要でなく、それによりフローセルを操作する外部ポンプ装置の費用が少なく保たれる。
【0070】
フローセルに統合される図8bの微小ポンプ58aは、圧電円板70を接着されているポンプ膜63aを持っている。例えば+400V〜−100Vの電圧の周期的印加により、ポンプ膜が下方及び上方へ偏位し、それによりポンプ空所64aの容積を減少及び増大する。微小ポンプは、各空間方向に数mmの寸法しか持っていないので、ポンプはフローセル内に僅かな場所しか必要としない。特に外部からの機械的接触を許さない性質を持つシリコンからポンプを形成する時、又は外部からのポンプの操作が全く不可能である時、このようなポンプの使用が考慮される。
【0071】
図8cは、フローセルへの微小弁71の統合を示している。覆い板にあるなるべく円筒状のポケット72内に設けられる微小弁71は、入口通路74及び出口通路75を有する母体73を持ち、これらの通路の少なくとも1つは偏心して設けられている。なるべく半球殻の形に製造される弾性操作膜76が縁側を母体と結合され、操作膜と母体との間に流れ範囲77が形成されている。操作膜の変形されない状態で、弁は、結合穴78及び79を介して、中間板にある微小溝80と81を接続する。操作膜を押込むことにより、入口通路74が閉じられ、それにより流れ範囲の流通が中断される。微小弁は外部から接近可能なので、外部装置により上述した微小弁ポンプと同じように操作することができる。予め製造された部材をフローセルへ入れることにより、弁機能が有利に統合され、組立て費用が少なく、種々の弁構造の使用に関して高度の融通性が与えられる。
【0072】
図8dは微小弁の統合に対する別の変形例を示している。半球状弾性操作膜の代わりに、圧電円板83を接着される平らな操作膜76aが設けられている。なるべく+400Vの電圧の印加により、下方への弾性膜の偏位が行われ、それにより入口通路74aが閉じられ、弁を通る液体流が中断される。電圧の遮断により、操作膜が再びその最初の平らな形状をとるので、液体輸送が再び行われる。あらゆる空間方向に数mmの特に小さい寸法を持つフローセルに統合するか、又は外部からの操作を許さない多孔質材料を持つシリコン製微小弁を統合するか、又は外部からの操作がいずれにせよ不可能又は好ましくない時、この実施例は有利である。弁の操作のため、フローセルへの電気接続部しか必要としない。
【0073】
図8eはフローセルへの微小弁の統合の別の例を示している。覆い板は、その下面に、例えば接着又は溶接により覆い板と結合される箔84を持っている。中間板には結合穴85が形成されて、弁入口として用いられ、中間板の下面にある微小溝86と接続されている。別の結合穴87は弁出口として用いられ、中間板にある微小溝88と接続されている。微小溝の横寸法は結合穴の断面寸法よりなるべく大きい。弁入口に圧力を受ける液体が加えられると、これにより覆い板にある凹所144の中へ箔84が偏位した状態で、液体は弁の流れ範囲82を通ることができる。凹所144に、例えば外部ポンプにより発生される背圧なるべく空気圧が加えられると、これにより弁箔が戻って中間板の上面へ当接し、弁入口を閉じる。付加的な微小部材なしに弁箔のみにより弁機能がフローセルへ有利に統合される。
【0074】
図9は、フローセルへ液体貯蔵室を統合する種々の実施例を示している。
【0075】
図9によれば、貯蔵室89が覆い板にあるポケット90へ挿入されている。貯蔵室は、なるべく円筒状の母体91と、例えば熱成形により形成される半球殻状の貯蔵室覆い92とから成っている。毛細管93が母体を通っている。貯蔵室容積は、少なくとも部分的に、フローセルの操作例えば洗浄のために必要な液体95たとえば緩衝溶液を満たされている。貯蔵室容積94は、毛細管93及び結合穴96を介して中間板にある微小溝97に接続されている。例えばフローセルの振動により貯蔵室から液体が意に反して流出するのを回避するため、中間板はその上面に毛細管93を液蜜に閉じるばね素子98を持っている。貯蔵室に収容される液体を放出するため、覆い92へ圧力が及ぼされる。貯蔵室覆いが0.02mm〜0.2mmの厚さであると、これにより変形が起こり、それにより液体が貯蔵室から押出される。このような貯蔵室の典型的な容積は10〜1000μlである。上述した貯蔵室により、フローセルを操作するための装置技術的な費用を有利に少なくすることができる。フローセルは、例えば現場で、例えば配量装置又は充填装置のような実験室機器とは無関係に使用される。
【0076】
図9bに示す実施例では、覆い板にポケット90aが設けられている。ポケットには、凹所145により、係止突起を持ちかつ互いに対向するばね素子99が形成されている。貯蔵室をフローセルと液密に結合するため、既に完成しているフローセルのポケットへ貯蔵室が押込まれ、ばね素子99により係止され、ばね力によりポケット90a内に液密に固定される。貯蔵室は、選択的にフローセルの製造及び組立て後に初めて、有利に統合することができる。使用者にとってこれは、フローセルの使用における一層大きい融通性を意味する。特にフローセルの同じ構造で、種々の液体が使用可能である。なお図9bの構成は図9aの構成に相当している。
【0077】
図9cはフローセルに統合される貯蔵室を示し、その母体91cに貯蔵室入口100及び貯蔵室出口101が形成されている。貯蔵室入口及び出口は、結合穴102及び103を介して、中間板と底板との境界面にある微小溝104及び105と接続されている。熱により変形される箔から成る蓋い92cは、縁側を母体91cと結合されている。貯蔵室容積94c内には、フローセルに充填すべき液体を乾燥試薬107の形で収容する範囲106が形成されている。乾燥試薬の始動のため洗浄液が注入され、この洗浄液に乾燥試薬が溶解し、貯蔵室出口101を経て連続的に又は不連続的に中間板の中へ輸送されることができる。
【0078】
図9dによる別の実施例では、覆い板に凹所108が設けられている。その中間板に面する開口縁に、接着又は溶接により箔109が固定され、凹所内で貯蔵室の覆い92dとなるように湾曲されている。中間板の上面と覆いとの板には、例えば海綿の形の液体保持体110があって、毛細管作用により液体を保持し、フローセルの組立て中又は操作中に液体の望ましくない輸送を防止する。箔109により形成される貯蔵室覆い92dの塑性変形により、液体が貯蔵室から放出される。フローセルの組立ての際、液体保持体110は、その中にある液体と共に、箔と固定的に結合される覆い板上に、貯蔵室覆い92dの範囲において置かれ、続いてフローセルが組立てられる。貯蔵室が非常に簡単に構成され、貯蔵室素子を持つフローセルが、予め製造されてフローセルへ入れられる貯蔵室素子の統合が問題にならない多量使用のために安価に製造可能なので、上述した構造は有利である。
【0079】
図10にはフローセルへのディスペンサの統合の種々の実施例を示している。ディスペンサは、フローセルにある特定体積の液体をフローセルから送出するため、フローセルにおいて使用される。通常の一分与容積は数100pl〜数μlの範囲にある。
【0080】
図10aは、覆い板を通ってポケット112を形成しながら中間板の中へ延びる切欠き111を持つ第1実施例を示している。底板にある微小溝113を通って、液体がディスペンサへ導入される。微小溝113は底板にある凹所114へ通じ、底板の下面で、微小毛細管115が、底板の残りの厚さを通って延び、上面は中間板のばね素子として作用する範囲116により液密に覆われている。底板の下面から環状壁117が突出し、微小毛細管115の出口開口を環状に包囲している。ディスペンサを操作するため、突き棒状の外部操作器118が用いられ、その外径は凹所114の直径よりなるべく小さい。微小溝及び凹所が液体を満たされていると、msec範囲の短時間操作により、数μm〜数100μmの送りにより凹所の容積が小さくなり、それにより毛細管115から滴が押し出される。環状壁117は、底板の表面に対して直角でない方向に出る滴を捕集して、望ましくない汚れを有利に回避することができる。
【0081】
図10bに示す実施例では、切欠き111aは覆い板全体を貫通していない。皿ばねとして作用する底範囲119が残っている。底範囲の下面から、中間板に形成されるポケット112aを通って突き棒120が延びている。突き棒は底範囲119又はポケット111aの底範囲116aと一体に結合することができる。外部操作器118aは、底範囲119を介して突き棒120を操作し、それにより滴が図10aについて説明したように出る。突き棒を予め位置ぎめすることにより、外部操作器118a従って外部操作装置の配置の精度に対する要求を少なくすることができるので、この実施例は有利である。
【0082】
図10cの実施例では、底板に、その全厚さを貫通する簡単に製造可能な微小毛細管115bのみが形成されている。中間板は、ポケット112bのほかに入口溝121、分与範囲122及び出口溝123を持っている。液体が入口溝を通って輸送されると、底板又は/及び中間板が透明な場合、時間tにわたって、覆い板にあるのぞき窓124又は底板を通して、流れる液体の特定部分を検出することができる。検出は光量子を検出するセンサ又は他のセンサにより行うことができる。入口溝の流速及び寸法が既知であると、この部分は時間t+t1後分与範囲122へ達し、そこから外部操作器118bにより押出される。そのため出口溝123の方向における液体輸送を中断する必要がない。このような実施例は、予め規定された特定の液体割合又は液体中に存在する例えば細胞のような微小粒子の押出しを可能にする。
【0083】
図10dに示すディスペンサは、凹所111c内にあって操作膜を形成する底範囲119c上にある圧電円板の形の統合された操作器118cを使用している。底範囲119cに接着された圧電円板は、+400Vの電圧を印加すると、底範囲を湾曲させるので、滴が押出される。この実施例では、中間板は前述した実施例におけるより薄い。
【0084】
フローセルの融通性のある使用のために、電気的機能素子及び外部から簡単に接触できる導体条片を統合する構成が必要である。こうしてなるべく電極が、電気泳動による液体の輸送用駆動装置として、センサ素子として、又は例えば統合される圧電操作器との接触のためにも使用される。図11は種々の実施例を示している。
【0085】
図11aに示すような実施例が最も好ましい。底板はその上面に金属電極126を持ち、この電極は微小溝127の部分範囲へ達し、そこにある液体と接触することができる。このような電極の製造は、例えばスパッタリングのように薄膜技術により、又はスクリン印刷法におけるように厚膜技術により安価に行われる。電極材料として、例えばアルミニウム、金及び白金が適している。底板の材料として、プラスチック、セラミック又は印刷回路版材料が考慮される。外部からの電気的接触は、ばね接触子129を持つコネクタ128により、フローセルの縁から突出する底板の範囲138の所で行われる。その代わりに、中間板及び覆い板にある切欠きに通されるピン130を介して接触を行うことができる。電極が板表面に簡単に塗布され、それにより複雑な電極装置が僅かな費用で製造されるので、この実施例は有利である。
【0086】
図11bは、電極を形成する内部導体131、貫通接触子132及び外部導体133を持つ実施例を示している。導体はなるべくスクリン印刷法で製造される。外部導体の接触は、底板の自由に接近可能な下面へ押付けられるピン134によって行われる。この実施例は、僅かな電極長さ従って小さい接触抵抗しか必要としない。電極及び接触子は高い密度で可能であり、接触は接触ばねにより行うことができる。底板の下面における電気的接触は、底板の上面において液体にさらされる接触部から、空間的に十分隔離されている。
【0087】
図11cは、挿入技術により底板へ注入される打抜き部材または/及び曲げ部材の形の電極135を持つ実施例を示している。中間板及び覆い板は切欠き136及び137を持ち、これらの切欠きに舌片の形の電極が通されている。それにより覆い板の上面で、統合される操作器の接触のため又はその他の必要な接続のために使用できる電気的接触が利用可能である。
【0088】
前述した機能素子を任意に組合わせ、微小溝、結合穴及び室から成る異なる液体回路網と共に使用できることは明らかである。
【0089】
接着及び溶接を大幅に回避することにより、フローセルの組立ての際、機能化される表面を損傷することはない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】 本発明によるフローセルを斜視図で示す。
【図2】 図1のフローセルを斜め上からの分解斜視図で示す。
【図3】 図1のフローセルを斜め下からの分解斜視図で示す。
【図4】 本発明によるフローセルにある微小溝の種々の構成及び配置を示す。
【図5】 本発明によるフローセルにある接続部の種々の実施例を示す。
【図6】 本発明によるフローセルの板の種々の結合方法を示す。
【図7】 本発明によるフローセルへ組込まれる微小部材の種々の実施例を示す。
【図8】 本発明によるフローセルにある微小ポンプの種々の実施例を示す。
【図9】 本発明によるフローセルにある弁の種々の実施例を示す。
【図10】 本発明によるフローセルにあるディスペンサの種々の実施例を示す。
【図11】 本発明によるフローセルに統合される電機導体の種々の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの板(3〜5)から成る積層体を持つフローセルであって、可撓性材料から成る中間板(4)が、一層剛性の材料から成る板(3,5)の間に挟まれ、板の少なくとも1つが、液体を収容するために設けられる少なくとも1つの凹所(15,17)を持ち、この凹所が積層体の他の板(3,5)により区画されているものにおいて、板(3,5)が、板面に対して平行な方向に凹所(15,17)から離れた所に設けられる手段(12,13,18)により、中間板(4)を押付けながら互いに結合されていることを特徴とする、フローセル。
【請求項2】
積層体が、板の相互整列のため、凹所の側方に離れて設けられる位置ぎめ素子(12,13,18)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
位置ぎめ素子及び結合手段(12,13,18)が共通な部分を持っていることを特徴とする、請求項2に記載のフローセル。
【請求項4】
位置ぎめ素子又は/及び結合手段が穴(13,18)及びピン(12)を含んでいることを特徴とする、請求項2又は3に記載のフローセル。
【請求項5】
ピン(12)が板(3〜5)の1つ(3)と一体に結合されていることを特徴とする、請求項4に記載のフローセル。
【請求項6】
ピン直径が穴直径より小さいことを特徴とする、請求項4又は5に記載のフローセル。
【請求項7】
結合手段又は/及び位置ぎめ素子が、板(3〜5)の互いに対向する縁に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載のフローセル。
【請求項8】
一層剛性の材料から成る板の少なくとも1つが、板に係合する結合ピン(12b)の頭部(29b)を収容する凹所(40)を有する穴を持っていることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載のフローセル。
【請求項9】
板(3〜5)の少なくとも1つ特に一層剛性の材料から成る板(3,5)の1つが、なるべく別々に予め製造される微小部材(6,58,71,89)を収容する少なくとも1つの凹所(10)を持っていることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載のフローセル。
【請求項10】
微小部材(6)がはまり合いで保持されていることを特徴とする、請求項9に記載のフローセル。
【請求項11】
凹所が中間板(4)及びフローセルの外側の方へ開いており、外側から見てアンダカットされていることを特徴とする、請求項9又は10に記載のフローセル。
【請求項12】
凹所(10)内に設けられる微小部材(6)の横寸法が、微小部材(6)により区画される中間板(4)の凹所(17)の横寸法より大きいことを特徴とする、請求項9〜11の1つに記載のフローセル。
【請求項13】
中間板が、主として凹所又は/及び結合手段に隣接する範囲(140,141)において押付けられていることを特徴とする、請求項1〜12の1つに記載のフローセル(図4e及び6e)。
【請求項14】
板の1つに、板厚に対して薄くされて変形可能又はカニューレにより突き破り可能な底範囲(38,116,119)を持つ凹所(32e,111,112)が形成されていることを特徴とする、請求項1〜13の1つに記載のフローセル(図5f及び図10a〜c)。
【請求項15】
一層剛性の材料から成る板(3,5)の少なくとも1つと一体に、接続片(7〜9)が形成されていることを特徴とする、請求項1〜14の1つに記載のフローセル。
【請求項16】
フローセルの接続片が円錐状の外面又は/及び内面(142,143)を持っていることを特徴とする、請求項1〜15の1つに記載のフローセル。
【請求項17】
フローセルに電気導体(126,130〜135)が統合されていることを特徴とする、請求項1〜16の1つに記載のフローセル。
【請求項18】
導体(126,131,133)が板の1つの被覆の形に形成されていることを特徴とする、請求項17に記載のフローセル。
【請求項19】
フローセルの外側に形成されて液体を収容するために設けられる凹所(27)が箔(26)により覆われていることを特徴とする、請求項1〜18の1つに記載のフローセル。
【請求項20】
板(3〜5)のただ1つの積層体が複数のフローセル機能ユニット(2)を持っていることを特徴とする、請求項1〜19の1つに記載のフローセル。
【請求項21】
積層体の2つの板の間に、弁を形成するか又は外方へ開く凹所を覆う箔(84,109)が形成されていることを特徴とする、請求項1〜20の1つに記載のフローセル(図8e及び図9d)。
【請求項22】
微小部材としてポンプ(58)、弁(71)、貯蔵室(89)、フィルタ(57)、のぞき窓、熱伝導体、電極(56)又は/及び検出器部材が設けられていることを特徴とする、請求項9〜21の1つに記載のフローセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−501940(P2007−501940A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525647(P2006−525647)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008700
【国際公開番号】WO2005/016529
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506080119)シンエックスエックスエス・マイクロテクノロジー・アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】