説明

結晶シリコンインゴット及びその製造方法

【課題】結晶シリコンインゴット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶シリコンシード層を用いて、結晶シリコンインゴットが方向性凝固法によって形成される。結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとから形成されている。第1の単結晶シリコンシードの各々は(100)と異なる第1の結晶方向を有する。第2の単結晶シリコンシードの各々は第1の結晶方向と異なる第2の結晶方向を有する。第1の単結晶シリコンシードの各々は第2の単結晶シリコンシードのうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコンインゴットと、その製造方法とに関する。より詳細には、本発明は、方向性凝固法に基づき結晶シリコンシード層を用いて形成される結晶シリコンインゴットと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
大抵の太陽電池は日光を吸収して、光起電力効果を生じる。現在、太陽電池はシリコンからなる主要材料を含んでいるが、これはシリコンが世界で2番目に入手可能な元素であり、コスト効率的で、無毒性および高安定性という長所を有するためである。また、シリコンは、半導体産業において一般に用いられている。
【0003】
シリコンから主としてなる太陽電池は、単結晶シリコン、多結晶シリコンおよびアモルファスシリコンの3つの種類に分けられる。コストを考慮すると、太陽電池の材料としては多結晶シリコンが用いられるが、これは多結晶シリコンのコストが従来のチョクラルスキ法および浮遊帯域法によって生成される単結晶シリコンのそれよりも低いためである。
【0004】
太陽電池の製造のための用いられる多結晶シリコンは、一般に鋳造法によって形成される。鋳造法によって生成される多結晶シリコンを太陽電池に適用可能であることは、一般的な技術である。簡潔に述べると、多結晶シリコンの結晶シリコンインゴットは、石英るつぼなど1つのモードにより高純度シリコンを溶融させ、凝縮を制御しつつ冷却することによって、形成可能である。次に、この多結晶シリコンの結晶シリコンインゴットをソーで切断してウエハにし、太陽電池の寸法に近づけるとともに、このウエハが太陽電池に適用されることが可能である。上記方法によって形成される多結晶シリコンの結晶シリコンインゴットは、シリコン結晶粒の集合体である。上記方法によって製造されるウエハは、結晶粒間にランダムな結晶方向を有する。
【0005】
従来の多結晶シリコンを考慮すると、結晶方向がランダムであるためチップの表面を粗くすることが困難である。粗化された表面は光の反射を減少させ、セルの表面を通過する光の吸収を高めることが可能であり、したがって、光電セルの効率を高めることが可能である。また、ポリシリコン結晶粒間のねじれ粒境界は、核転位のクラスタまたは線転位の構造欠陥を生じる傾向にある。それらの転位や転位によって引きつけられる不純物のため、従来の多結晶シリコンから製造される光電セルにおける電荷キャリア再結合が速くなったり、セル効率が低下したりする。この種の多結晶シリコンから製造される光電セルの効率は、従来の技術によって生成される単結晶シリコンにおける欠陥を考慮したとしても、単結晶シリコンから製造されるそれよりも低い。しかしながら、従来の多結晶シリコンは比較的単純な手法により、比較的低いコストで、また効率的な欠陥修復をもって生成可能であり、したがって、光電セルの組立てにおいては多結晶シリコンが広範に用いられている。
【0006】
特許文献1には、結晶のシリコンシードおよび方向性凝固法を用いる従来技術について開示されている。特許文献1では、結晶方向(100)を有する単結晶シリコンが第1の結晶のシード(種結晶)として用いられており、単結晶シリコン太陽電池の製造のために用いられたシリコンウエハが結晶方向(100)を有すると期待される。光トラップ面はエッチング処理を用いて形成される。残念なことに、結晶方向(100)を有する結晶粒と続くランダムな核形成との間の競争期間において、結晶方向(100)を有する結晶粒は十分に機能しない。インゴットにおける結晶シードの量を最大化するべく、引用文献1では、結晶方向(111)を有するシリコンの境界によって結晶方向(100)を有する
結晶シリコンシードの領域を包囲し、この境界によって他の結晶方向において結晶に歪みを与えることが開示されている。これによって、高い性能を有する単結晶シリコンおよび/または双結晶シリコンのインゴットを鋳造可能であり、高い効果を有する太陽電池を製造するのに用いられるウエハから少数得られるキャリアの寿命は最大化される。用語「単結晶シリコン」は、同一の結晶方向を有する単結晶シリコンの全体を示す。用語「双結晶シリコン」は、同一の結晶方向を有するものをその体積の50%以上含み、その残りは別の同一の結晶方向を有するシリコン本体を示す。例えば、双結晶シリコンは、別の同一の結晶方向を有する単結晶シリコンの本体の残りの部分に隣接した同一の結晶方向を有する単結晶シリコンからなる本体を含有してもよい。また、従来の多結晶シリコンは、センチメートル規模に高濃度で広がり、ランダムな結晶方向の結晶を含有している結晶化シリコンを意味する。
【0007】
しかしながら、結晶方向(100)を有する第1の単結晶シリコンシードを用いて形成された結晶シリコンインゴットは、光電変換効率を高めることの可能な太陽電池を形成するためのシリコンウエハへスライスされることが可能である。
【0008】
換言すると、結晶方向(100)を有する単結晶シリコンシードは、第1の単結晶シリコンシードについて最良の選択肢ではない。
また、結晶シリコンインゴットが形成されるとき、結晶シリコンシード層において2つの隣接する単結晶シリコンシードの境界に有害な欠陥が生じる確率を減少させるべく、特許文献2には、結晶シリコンシード層において2つの隣接する単結晶シリコンシードの境界の間の間隙を除去する方法について開示されている。しかしながら、この方法では、結晶シリコンインゴットを製造するコストが大幅に上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0193031号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0193664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、結晶シリコンインゴットと、その製造方法とに関する。結晶シリコンインゴットは、2つの隣接する単結晶シリコンシードの境界が繋がっていなくても、2つの隣接する単結晶シリコンシードの境界に有害な欠陥が生成するのが制限されるように形成される。
【0011】
典型的には、本発明は、方向性凝固法を用いて高品質で形成される結晶シリコンインゴットに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
結晶シリコンインゴットを製造するための一実施形態では、結晶シリコンシード層は最初に型に提供され、この結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとから形成されている。第1の単結晶シリコンシードの各々は(100)と異なる第1の結晶方向を有し、第2の単結晶シリコンシードの各々は第1の結晶方向と異なる第2の結晶方向を有する。第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度は約35度以上である。第1の単結晶シリコンシードの各々は第2の単結晶シリコンシードのうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている。次に、シリコン溶融物が型に充填され、シリコン溶融物が結晶シリコンシード層に接触する。最後に、方向性凝固法を用いて型が冷却され、シリコン溶融物は凝固し、結晶シリコンシード層を含む結晶シリコンインゴットが形成されることが可能である。
【0013】
一実施形態では、結晶シリコンインゴットは、その下部に結晶シリコンシード層を含む。結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとから形成されている。第1の単結晶シリコンシードの各々は(100)と異なる第1の結晶方向を有し、第2の単結晶シリコンシードの各々は第1の結晶方向と異なる第2の結晶方向を有する。第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度は約35度以上である。第1の単結晶シリコンシードの各々は第2の単結晶シリコンシードのうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている。
【0014】
一実施形態では、第1の結晶方向は、(110),(232),(112)または他の結晶方向であり、各結晶方向と(100)との間の角度は35度以上である。
一実施形態では、第2の結晶方向は(100)である。
【0015】
一実施形態では、第1の単結晶シリコンシードおよび第2の単結晶シリコンシードは、交互に型に配置される。一実施形態では、第2の単結晶シリコンシードは、第1の単結晶シリコンシードの間に交互に配置される。結晶シリコンシード層の体積に対する第1の単結晶シリコンシードの体積の比は、約80%より大きい。
【0016】
一実施形態では、第2の単結晶シリコンシードは、第1の単結晶シリコンシードの間に交互に配置される。第1の単結晶シリコンシードのうちの2つの間に交互に配置された1つの第2の単結晶シリコンシードの幅は、3〜5センチメートルの間である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の一実施形態による結晶シリコンインゴットの製造の概略図。
【図1B】本発明の一実施形態による結晶シリコンインゴットの製造の概略図。
【図1C】本発明の一実施形態による結晶シリコンインゴットの製造の概略図。
【図1D】本発明の一実施形態による結晶シリコンインゴットの製造の概略図。
【図2】一実施形態における結晶シリコンシード層の平面図。
【図3】別の実施形態における結晶シリコンシード層の平面図。
【図4】本発明の一実施形態の結晶シリコンインゴットから生成された太陽電池と、比較の結晶シリコンインゴットから生成された太陽電池との平均の光電変換効率を比較する結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1A〜1Dは、本発明の一実施形態による結晶シリコンインゴットの製造の概略図である。
図1Aを参照すると、一実施形態では、型10が最初に提供される。型10は、シリコン原料を一方向性凝固法によって冷却または溶融するために用いられるべく適合されている。一実施形態では、型10は石英るつぼである。
【0019】
次に、図1Aを参照すると、結晶シリコンシード層12が型10に提供される。結晶シリコンシード層12は、複数の第1の単結晶シリコンシード122と、複数の第2の単結晶シリコンシード124とから形成されている。
【0020】
第1の単結晶シリコンシード122の各々は、第1の単結晶シリコンシード122の上面に垂直な第1の結晶方向を有する。第1の結晶方向は、(100)とは異なる。第2の単結晶シリコンシード124の各々は、第2の単結晶シリコンシード124の上面に垂直な第2の結晶方向を有する。第2の結晶方向は第1の結晶方向とは異なる。第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度θ1は約35度以上である。角度θ1は、第1の結晶方向のステアリングベクトルと第2の結晶方向のステアリングベクトルの間の角度であり、
余弦法則を用いて算出可能である。第1の単結晶シリコンシードの各々122は、第2の単結晶シリコンシード124のうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシード122から分離されている。
【0021】
次に、図1Bを参照すると、結晶シリコンシード層12を含んでいる型10は、方向性凝固法の結晶成長炉に配置される。図1Bには、結晶成長炉の加熱器14を示す。
次に、図1Bを参照すると、シリコン溶融物16が型10に充填され、シリコン溶融物16が結晶シリコンシード層12に接触する。
【0022】
次に、図を1C参照すると、方向性凝固法を用いて型10を冷却して、結晶シリコンシード層12からシリコン溶融物16のシードが形成され、型10の開口部に向かって凝固される。シリコン溶融物16を凝固する処理では、固相と液相との間、かつ、シリコン溶融物16の最前面にある界面17と、凝固された単結晶シリコンシード122,124とは、型10の開口部に向かって移動する。
【0023】
最後に、図1Dを参照すると、型10は方向性凝固法を用いて引き続き冷却され、結晶シリコンインゴット18が形成されることが可能である。結晶シリコンシード層12の単結晶シリコンシード122,124の構成に基づき、結晶シリコンインゴット18は、高性能を有する略単結晶シリコンまたは双結晶シリコンのインゴットのように鋳造可能である。本願明細書では、用語「双結晶シリコン」は、体積の75%より多くが同一の結晶方向を有する結晶シリコン本体を示す。例えば、この種の単結晶シリコンは、ポリシリコン領域に隣接する単結晶シリコン本体を含むことが可能であり、または大きな連続的な結晶シリコン本体を含むことが可能であり、その一部または全部は、他の結晶方向を有する比較的わずかな結晶シリコン本体を含む。用語「双結晶シリコン」については上記の通りである。
【0024】
結晶シリコンシード層12は、本発明の方法により形成される別の結晶シリコンインゴットの下部からカットされることが可能である。
一実施形態では、第1の結晶方向は、(110),(232),(112)または他の結晶方向であり、各結晶方向と(100)との間の角度は約35度以上である。
【0025】
一実施形態では、第2の結晶方向は(100)である。
一実施形態では、第1の単結晶シリコンシード122および第2の単結晶シリコンシード124は、型10に交互に配置される。例えば、図2は、一実施形態における結晶シリコンシード層の平面図である。図2を参照すると、結晶シリコンシード層12は、結晶方向(100)を有する複数の第1の単結晶シリコンシード122と、結晶方向(110)を有する複数の第2の単結晶シリコンシード124とから形成されている。結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシードおよび結晶方向(100)を有する第2の単結晶シリコンシード124は、交互に配置されている。結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシード122の各々は、結晶方向(100)を有する第2の単結晶シリコンシード124のうちの1つ以上に隣接しており、結晶方向(110)を有する他の第1の単結晶シリコンシード122から分離されている。これによって、結晶シリコンシード層12を用いて、高性能を有する双結晶シリコンのインゴットは方向性凝固法によって鋳造可能である。結晶シリコンインゴットは、2つの隣接する単結晶シリコンシード122,124の境界が繋がっていなくても、結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシード122と、結晶方向(100)を有する隣接する第2の単結晶シリコンシード124との境界に有害な欠陥が生じるのが制限されるように形成されている。
【0026】
別の一実施形態では、第2の単結晶シリコンシード124は、第1の単結晶シリコンシード122の間に交互に配置される。結晶シリコンシード層12の体積に対する第1の単
結晶シリコンシード122の体積の比は、約80%より大きい。例えば、図3は、別の実施形態における結晶シリコンシード層の平面図である。図3を参照すると、結晶シリコンシード層12は、結晶方向(100)を有する複数の第1の単結晶シリコンシード122と、結晶方向(110)を有する複数の第2の単結晶シリコンシード124とから形成されている。結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシードおよび結晶方向(100)を有する第2の単結晶シリコンシード124は、交互に配置されている。結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシード122の各々は、結晶方向(100)を有する第2の単結晶シリコンシード124のうちの1つ以上に隣接しており、結晶方向(110)を有する他の第1の単結晶シリコンシード122から分離されている。これによって、結晶シリコンシード層12を用いて、高性能を有する略単結晶シリコンのインゴットは方向性凝固法によって鋳造可能である。結晶シリコンインゴットは、2つの隣接する単結晶シリコンシード122,124の境界が繋がっていなくても、結晶方向(110)を有する第1の単結晶シリコンシード122と、結晶方向(100)を有する隣接する第2の単結晶シリコンシード124との境界に有害な欠陥が生じるのが制限されるように形成されている。
【0027】
一実施形態では、図3を参照すると、第2の単結晶シリコンシード124は、第1の単結晶シリコンシード122の間に交互に配置される。第1の単結晶シリコンシード122のうちの2つの間に交互に配置された1つの第2の単結晶シリコンシード124の幅wは、3〜5センチメートルの間である。
【0028】
本発明の一実施形態では、結晶シリコンシード層12は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとから形成されている。図2,3における結晶シリコンシード層12からの差は、第1の単結晶シリコンシードの各々が、その上面に垂直な第1の結晶方向と、その側面に垂直な第2の結晶方向とを有し、第1の結晶方向は、(100)とは異なることである。第2の単結晶シリコンシードの各々は、その上面に垂直な第1の結晶方向と、その側面に垂直な第3の結晶方向とを有する。第3の結晶方向は第2の結晶方向とは異なる。第3の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度θ2は約35度以上である。第1の単結晶シリコンシードの各々は第2の単結晶シリコンシードのうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている。それによって、第1の単結晶シリコンシードの各々は、隣接する第2の単結晶シリコンシードの側面のそれとは異なる結晶方向を有する側面を有する。一実施形態では、第1の結晶方向は、(110),(232),(112)または他の結晶方向であり、各結晶方向と(100)との間の角度は約35度以上である。一実施形態では、第1の単結晶シリコンシードおよび第2の単結晶シリコンシードは、型10に交互に配置される。一実施形態では、第1の単結晶シリコンシードおよび第2の単結晶シリコンシードは、型10に交互に配置される。
【0029】
図1Dを参照すると、結晶シリコンインゴット18は、その下部に結晶シリコンシード層12を含む。結晶シリコンシード層12は、複数の第1の単結晶シリコンシード122と、複数の第2の単結晶シリコンシード124とから形成されている。従来技術からの差は、第1の単結晶シリコンシード122の各々が第1の単結晶シリコンシード122の上面に垂直な第1の結晶方向を有し、第1の結晶方向が(100)とは異なることである。第2の単結晶シリコンシード124の各々は、第2の単結晶シリコンシード124の上面に垂直な第2の結晶方向を有する。第2の結晶方向は第1の結晶方向とは異なる。第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度θ1は約35度以上である。第1の単結晶シリコンシードの各々122は、第2の単結晶シリコンシード124のうちの1つ以上に隣接し、他の第1の単結晶シリコンシード122から分離されている。
【0030】
第1および第2の単結晶シリコンシード122,124の選択および構成は、上述にお
いて記載した。
本発明の方法によって形成される結晶シリコンインゴット全体が改良された品質を有することを証明するため、また続いて形成される太陽電池が改良された光電変換効率を有することを証明するために、本発明の結晶シリコンインゴットと比較のそれとの寿命が測定され、続いて光電変換効率が測定されている。図2に示した結晶シリコンシード層12を用いてシード形成される本発明の結晶シリコンインゴットの長さは、約250mmである。(100)の結晶方向を有する単結晶シリコンシードを用い、方向性凝固法を用いてシード形成される比較の結晶シリコンインゴットの長さは、約250mmである。
【0031】
テーブル1には、マイクロ波光電導崩壊(μ−PCD)を用いて本発明および比較の結晶シリコンインゴットの下部、中間部および上部の寿命の測定の結果を示す。
【0032】
【表1】

μ−PCDの原理は、光子の励起、光電導性の崩壊およびマイクロ波システムを用いて信号の変動を測定する、というものである。内部の電子−ホールの対は、赤外パルス光源を半導体材料に用いることによって励起される。光源は904nmの波長を有し、したがって、材料の表面に近い浸透レベルを有する。ここでは、光源は約30μmの浸透深度を有する。半導体材料が励起された後、電子−ホールの対は再結合するので、光導電性(σ)は時間とともに減衰する。この光導電性の減衰はマイクロ波システムを用いて測定されることが可能である。一般に、光導電性の減衰は、一定な指数関数によって表現可能である。その関数および一定な時定数を比較することによって、試料の関連する位置における寿命の値が取得可能である。原理的には、寿命の値は不純物の濃度に関係している。長い寿命は低濃度の不純物に相当する。
【0033】
テーブル1を参照すると、本発明の結晶シリコンインゴットの下部、中間部および上部の寿命は、比較のそれの下部、中間部および上部の寿命より長い。したがって、本発明の結晶シリコンインゴットは比較のものより低い不純物濃度を有し、すなわち、本発明の結晶シリコンインゴット全体は比較のものより良好な品質を有する。
【0034】
図4には、本発明の結晶シリコンインゴットの下部、中間部および上部から作成される太陽電池と、比較のそれの下部、中間部および上部から作成される太陽電池との光電変換効率を示す。図4を参照すると、本発明の結晶シリコンインゴット全体は改良された品質を有し、続いて形成される太陽電池は比較的高い光電変換効率を有する。対照的に、比較の結晶シリコンインゴット全体の品質は低く、続いて形成される太陽電池の光電子変換効率は比較的低い。まとめると、本発明により、従来技術とは異なる結晶シリコンシード層を用い、方向性凝固法を用いて結晶シリコンインゴットを形成する方法が提供される。本発明の結晶シリコンインゴットは改良された品質を有し、続いて形成される太陽電池は比
較的高い光電変換効率を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコンインゴットを製造する方法において、
結晶シリコンシード層を型に提供する工程であって、結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとを含み、各第1の単結晶シリコンシードは(100)と異なる第1の結晶方向を有し、第2の単結晶シリコンシードの各々は第1の結晶方向と異なる第2の結晶方向を有し、第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度は35度以上であり、各第1の単結晶シリコンシードは1つ以上の第2の単結晶シリコンシードに隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている、前記工程と、
シリコン溶融物を前記型に充填する工程であって、シリコン溶融物は結晶シリコンシード層に接触する、前記工程と、
方向性凝固法を用いて前記型を冷却する工程であって、前記シリコン溶融物は凝固し、前記結晶シリコンシード層を含む結晶シリコンインゴットが形成される、前記工程と、を備える方法。
【請求項2】
第1の結晶方向は、(110),(232),または(112)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の結晶方向は(100)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の第1の単結晶シリコンシードおよび複数の第2の単結晶シリコンシードは、前記型に交互に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
複数の第2の単結晶シリコンシードは、複数の第1の単結晶シリコンシードの間に交互に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶シリコンシード層に対する前記第1の単結晶シリコンシードの体積比は80%より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2つの第1の単結晶シリコンシードの間に配置された1つの第2の単結晶シリコンシードの幅は、3〜5センチメートルの間の値である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
結晶シリコンインゴットであって、その下部に結晶シリコンシード層を含み、結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとを含み、各第1の単結晶シリコンシードは(100)と異なる第1の結晶方向を有し、第2の単結晶シリコンシードの各々は第1の結晶方向と異なる第2の結晶方向を有し、第1の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度は35度以上であり、各第1の単結晶シリコンシードは1つ以上の第2の単結晶シリコンシードに隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている、結晶シリコンインゴット。
【請求項9】
第1の結晶方向は、(110),(232),または(112)であり、第2の結晶方向は(100)である、請求項8に記載の結晶シリコンインゴット。
【請求項10】
複数の第1の単結晶シリコンシードおよび複数の第2の単結晶シリコンシードは交互に配置される、請求項8に記載の結晶シリコンインゴット。
【請求項11】
複数の第2の単結晶シリコンシードは、複数の第1の単結晶シリコンシードの間に交互に配置される、請求項8に記載の結晶シリコンインゴット。
【請求項12】
結晶シリコンインゴットを製造する方法において、
結晶シリコンシード層を型に提供する工程であって、結晶シリコンシード層は、複数の第1の単結晶シリコンシードと、複数の第2の単結晶シリコンシードとを含み、各第1の単結晶シリコンシードは第1の上面および第1の側面を有し、第1の上面に対し垂直な第1の結晶方向と、第1の側面に対し垂直な第2の結晶方向とを有し、各第2の単結晶シリコンシードは第2の上面および第2の側面を有し、第2の上面に対し垂直な前記第1の結晶方向と、第2の側面に対し垂直な第3の結晶方向とを有し、第1の結晶方向は(100)とは異なり、第3の結晶方向は第2の結晶方向とは異なり、第3の結晶方向と第2の結晶方向との間の角度は35度以上であり、各第1の単結晶シリコンシードは1つ以上の第2の単結晶シリコンシードに隣接し、他の第1の単結晶シリコンシードから分離されている、前記工程と、
シリコン溶融物を前記型に充填する工程であって、シリコン溶融物は結晶シリコンシード層に接触する、前記工程と、
方向性凝固法を用いて前記型を冷却する工程であって、前記シリコン溶融物は凝固し、前記結晶シリコンシード層を含む結晶シリコンインゴットが形成される、前記工程と、を備える方法。
【請求項13】
第1の結晶方向は、(110),(232),または(112)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数の第1の単結晶シリコンシードおよび複数の第2の単結晶シリコンシードは、前記型に交互に配置される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の第2の単結晶シリコンシードは、複数の第1の単結晶シリコンシードの間に交互に配置される、請求項13に記載の方法。

【図4】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87051(P2013−87051A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79770(P2012−79770)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(507204660)中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】