説明

結晶回転停止方法および結晶回転停止装置

【課題】チョクラルスキー法による単結晶の製造において、ワイヤーロープの素線切れや破断の発生を防止しつつ、育成した結晶の回転を安全に停止することができる結晶回転停止方法を提供する。
【解決手段】原料物質の融液13に対しワイヤーロープ19の先端に設置した種結晶17を接触させ、該種結晶17を回転させながら引き上げて単結晶16を製造する際に、引き上げた結晶16の回転を停止する方法であって、ワイヤーロープ19の自転モーメントM:23.5N・mm以上(M≧23.5N・mm)と、ワイヤーロープ19の自転角θ:40°以上(θ≧40°)との少なくとも一方を満たす条件で結晶が回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶16の回転を停止させる、結晶回転停止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法による単結晶の製造において、育成した単結晶の回転を停止する方法および単結晶の回転を停止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、るつぼ中の原料物質の融液に種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら引き上げて単結晶を育成するチョクラルスキー法(CZ法、MCZ法)で単結晶を製造する場合、引き上げた結晶の回転の停止については制御がなされていなかった。
【0003】
しかしながら、本発明者が結晶回転の停止について検討したところ、結晶回転を停止する際に、ワイヤーロープの自転モーメントや自転角が大きい場合には、育成した結晶が懸吊されているワイヤーロープに過度の撚り締りや撚り戻りが発生し、最悪の場合には、ワイヤーロープの素線切れや破断が生じて引き上げた結晶が落下する恐れがあることが明らかとなった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、チョクラルスキー法による単結晶の製造において、ワイヤーロープの素線切れや破断の発生を防止しつつ、育成した結晶の回転を安全に停止することができる結晶回転停止方法を開発する必要があった。また、育成した結晶の回転を安全に停止するための装置を開発することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の結晶回転停止方法は、原料物質の融液に対しワイヤーロープの先端に設置した種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら引き上げて単結晶を製造する際に、引き上げた結晶の回転を停止する方法であって、ワイヤーロープの自転モーメントM:23.5N・mm以上(M≧23.5N・mm)と、ワイヤーロープの自転角θ:40°以上(θ≧40°)との少なくとも一方を満たす条件で結晶が回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させることを特徴とする。このように、自転モーメントMが23.5N・mm以上の場合と、ワイヤーロープの自転角θが40°以上の場合との少なくとも一方に該当する場合に、結晶の回転速度を0.53rad/s以下の角減速度で減少させれば、ワイヤーロープの素線切れや破断の発生を防止することができる。従って、例えば直径が450mmである重量物のシリコンインゴットを製造する際にも、育成した結晶の回転を安全に停止することができる。なお、ワイヤーロープの自転モーメントMが23.5N・mm未満(M<23.5N・mm)、且つ、ワイヤーロープの自転角θが40°未満(θ<40°)の場合には、そもそも結晶回転停止時にワイヤーロープの素線切れ等は生じ難いので、任意の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させることができる。
【0006】
なお、本発明において、ワイヤーロープの自転モーメントMは、下記式(I)に従い算出することができ、ワイヤーロープの自転角θは、下記式(II)に従い算出することができる。
M=α×W×sin(a)・・・(I)
θ=M×l/(Gr×Ip)・・・(II)
[式中、αは定数、Wは育成した結晶の質量、aはワイヤーロープの撚り線角度、lはワイヤーロープの長さ、Grはワイヤーロープの横弾性係数、Ipはワイヤーロープの断面二次極モーメントである。]
【0007】
ここで、本発明の結晶回転停止方法においては、前記角減速度は一定であることが好ましい。
【0008】
そして、本発明の結晶回転停止装置は、原料物質の融液に対しワイヤーロープの先端に設置した種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら引き上げて単結晶を製造する際に、引き上げた結晶の回転を停止する装置であって、引き上げた結晶の質量を測定する結晶質量測定手段と、引き上げた結晶を懸吊しているワイヤーロープの長さを測定するワイヤーロープ長測定手段と、前記結晶質量測定手段で測定した結晶の質量と、前記ワイヤーロープ長測定手段で測定したワイヤーロープの長さとを用いてワイヤーロープの自転モーメントMおよびワイヤーロープの自転角θを演算する演算手段と、結晶が、前記自転モーメントM:23.5N・mm以上(M≧23.5N・mm)と、前記自転角θ:40°以上(θ≧40°)との少なくとも一方を満たす条件で回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させる結晶回転停止手段とを備えることを特徴とする。このように、自転モーメントMが23.5N・mm以上の場合と、ワイヤーロープの自転角θが40°以上の場合との少なくとも一方に該当する場合に、結晶の回転速度を0.53rad/s以下の角減速度で減少させて結晶の回転を停止させる結晶回転停止手段を備えていれば、ワイヤーロープの素線切れや破断の発生を防止することができる。従って、本発明の結晶回転停止装置を用いれば、例えば直径が450mmである重量物のシリコンインゴットを製造する際にも、育成した結晶の回転を安全に停止することができる。なお、ワイヤーロープの自転モーメントMが23.5N・mm未満(M<23.5N・mm)、且つ、ワイヤーロープの自転角θが40°未満(θ<40°)の場合には、そもそも結晶回転停止時にワイヤーロープの素線切れ等は生じ難いので、任意の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チョクラルスキー法による単結晶の製造において、ワイヤーロープの素線切れや破断の発生を防止しつつ、育成した結晶の回転を安全に停止することができる結晶回転停止方法および結晶回転停止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の結晶回転停止方法を適用し得る単結晶製造装置の一例の構成を示す説明図である。
【図2】(a)は、図1に示す単結晶製造装置のワイヤーロープの一部を正面から見た説明図であり、(b)は、図2(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す単結晶製造装置のワイヤーロープ回転機構の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここに、本発明の結晶回転停止方法を適用し得る単結晶製造装置の一例は、例えば直径450mmの円柱状のシリコンインゴットをチョクラルスキー法(CZ法またはMCZ法(磁場印加式チョクラルスキー法))により製造するための単結晶製造装置10であり、図1に示すように、チャンバ11内に、単結晶シリコンの原料物質となる多結晶シリコンを収容するためのるつぼ12と、該るつぼ12内の原料物質を加熱して融液13とするためのヒーター14と、るつぼ12の下部に設けられてるつぼ12を円周方向(図1では装置上方から見て時計回り)に回転させるるつぼ回転機構15と、単結晶16を育成するための種結晶17を保持する種結晶保持器(シードチャック)18が先端に取り付けられているワイヤーロープ19と、該ワイヤーロープ19をるつぼ12の回転方向とは反対の方向(図1では装置上方から見て反時計回り)に回転させながら巻き取って単結晶16、種結晶17および種結晶保持器18を回転させつつ引き上げる結晶回転・引き上げ機構20とを有している。
【0012】
ここで、ワイヤーロープ19は、例えば図2(a)に示すような撚り線角度aの同心撚り構造を有している。具体的には、ワイヤーロープ19は、図2(b)に図2(a)のA−A線に沿う断面を示すように、1本のコア素線23(素線径:d)の周囲に6本の素線24(素線径:d)を撚り合わせた構造を有している。
【0013】
結晶回転・引き上げ機構20は、ワイヤーロープ19を巻き取って単結晶16、種結晶17および種結晶保持器18を引き上げるワイヤーロープ巻き取り器21と、そのワイヤーロープ巻き取り器21が内部に設置された筐体22を回転させてワイヤーロープ19を回転させる、図3に示すようなワイヤーロープ回転機構25(図1には図示せず)と、ワイヤーロープの回転速度および結晶の引き上げ距離を検出する検出手段(図示せず)とを備えている。
【0014】
ここで、検出手段は、例えばエンコーダよりなり、ワイヤーロープの回転速度および結晶を引き上げた距離を検出することができるものである。
【0015】
ワイヤーロープ回転機構25は、筐体22の回転軸を介して筐体22へ動力源(モータ28)の回転出力を伝達させることで筐体22を回転させるものであり、ワイヤーロープ19(筐体22)の回転速度を制御する回転速度制御手段26を備えている。ここで、このワイヤーロープ回転機構25には、停電時にも電力を供給し得る無停電電源装置(UPS)32が設けられているので、停電時でも装置が急停止することはない。なお、回転速度制御手段26および上記検出手段は、育成した結晶の回転を停止する際に、本発明の結晶回転停止装置のワイヤーロープ長測定手段、演算手段、結晶回転停止手段としても機能する。
【0016】
回転速度制御手段26は、コントローラ27によって回転を制御されるモータ28と、モータ28の回転を入力される入力プーリ29と、筐体22の回転軸へ回転を出力する出力プーリ30と、入力プーリ29と出力プーリ30との間に巻き掛けられたベルト31とを備えている。そして、コントローラ27で決定された回転数で動作するモータ28の回転が、入力プーリ29、ベルト31、出力プーリ30を介して筐体22の回転軸へ伝達されることにより、筐体22(ワイヤーロープ19)の回転速度が回転速度制御手段26により制御されることとなる。
【0017】
ここで、この単結晶製造装置10では、ワイヤーロープ19の先端に設置した種結晶17をるつぼ12中の原料物質の融液13に接触させ、種結晶17を例えば10rpmで周方向に回転させながら引き上げることにより単結晶シリコン16が製造される。なお、結晶引き上げ時の結晶回転速度は、回転速度制御手段26でワイヤーロープ19の回転速度を制御することにより制御される。即ち、結晶回転速度は、ワイヤーロープ19の回転速度と同じとみなすことができる。また、結晶の引き上げは、結晶回転・引き上げ機構20のワイヤーロープ巻き取り器21でワイヤーロープ19を巻き取ることにより行うことができ、ワイヤーロープ19の巻き取り量(結晶を引き上げた距離)は、前述したように検出手段としてのエンコーダを用いて検出することができる。
【0018】
そして、上述のように回転させながら引き上げられた結晶は、融液から離れた状態で以下のようにして結晶回転を停止させられる。
【0019】
まず、結晶質量測定手段としての結晶質量センサー(図示せず)で引き上げた結晶の質量Wを測定すると共に、エンコーダ(検出手段)でワイヤーロープ19の巻き取り量l’を検出する。そして、質量Wおよび巻き取り量l’の情報をコントローラ27へと送り、コントローラ27で、ワイヤーロープ19の全長Lから巻き取り量l’を引き算することにより、引き上げた結晶を懸吊しているワイヤーロープの長さl(l=L−l’)を求める。即ち、エンコーダおよびコントローラ27は、ワイヤーロープ長測定手段として機能する。
【0020】
次に、演算手段としても機能するコントローラ27において、結晶の質量Wおよびワイヤーロープの長さlを用いてワイヤーロープ19の自転モーメントMおよび自転角θを演算する。
ここで、結晶の質量:W、ワイヤーロープの有効断面積:A(本例の場合、素線が7本なので7×(d/2)π)、ワイヤーロープの撚り線角度:aとすると、ワイヤーロープの引張応力σは、
σ=W/A
となり、ワイヤーロープの垂直荷重Wは、
=σ×A×cos(a
となり、ワイヤーロープの自転力Tは、
T=W×tan(a
となる。
従って、ワイヤーロープの自転モーメントMは、定数:α、モーメント半径:R(ワイヤーロープの半径:D/2)とすると、コントローラ27において、下記式:
M=α×T×R=α×W×sin(a
を用いて算出することができる。
また、ワイヤーロープの自転角θは、ワイヤーロープの横弾性率:Gr、ワイヤーロープの断面二次極モーメント:Ip、ワイヤーロープの長さ:lとすると、コントローラ27において、下記式:
θ=M×l/(Gr×Ip)
を用いて算出することができる。
なお、ワイヤーロープの断面二次極モーメントIpは、素線径:d、ワイヤーロープの撚り構成により定まる定数:γとすると、下記式:
Ip=γ×π×d/32
で表すことができる。
【0021】
そして、引き上げた結晶が、自転モーメントM≧23.5N・mmと、自転角θ≧40°との少なくとも一方を満たす条件で回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度となるように回転速度制御手段26で結晶回転速度を減少させ(コントローラ27がモータ28の回転数を制御し)、結晶の回転を停止させる。一方、引き上げた結晶が、自転モーメントM<23.5N・mm、且つ、自転角θ<40°を満たす条件で回転している場合には、回転速度制御手段26が任意の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させる。ここで、回転速度制御手段26は、結晶回転停止手段として機能している。なお、角減速度とは、負の加速度、即ち単位時間当たりの角速度の減少率であり、本発明においては、角減速度一定で結晶回転速度を減少させることが好ましい。
【0022】
このように、単結晶製造装置10において結晶質量センサー、エンコーダ、コントローラおよび回転速度制御手段を結晶回転停止装置として機能させ、ワイヤーロープ19の自転モーメントMおよび自転角θを考慮して結晶回転を停止すれば、ワイヤーロープ19の素線切れが生じてワイヤーロープ19の寿命が短縮されることを防止し得ると共に、ワイヤーロープ19の破断を防止して安全に結晶回転を停止することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=69.6N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=86°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.52rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0025】
(比較例1)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=69.6N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=86°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.58rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れが発生していた。
【0026】
(比較例2)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=69.6N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=86°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度1.05rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させようとしたところ、ワイヤーロープが破断した。
【0027】
(参考例1)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=13.9N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=17°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.73rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0028】
(参考例2)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=13.9N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=17°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度1.05rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0029】
(参考例3)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=13.9N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=17°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度1.57rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0030】
(実施例2)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=164.2N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=46°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.05rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0031】
(実施例3)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=164.2N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=46°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.52rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0032】
(比較例3)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=23.5N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=29°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.58rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れが発生していた。
【0033】
(参考例4)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=23.0N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=29°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.58rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【0034】
(比較例4)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=23.0N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=40°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.58rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れが発生していた。
【0035】
(参考例5)
単結晶製造装置において、ワイヤーロープの自転モーメントM=23.0N・mm、ワイヤーロープの自転角θ=38°で回転しているシリコン単結晶の結晶回転速度を角減速度0.58rad/sで減少させ、結晶の回転を停止させた。結晶の回転停止後にワイヤーロープの状態を目視で観察したところ、素線切れ等は発生していなかった。
【符号の説明】
【0036】
10 単結晶製造装置
11 チャンバ
12 るつぼ
13 融液
14 ヒーター
15 るつぼ回転機構
16 単結晶
17 種結晶
18 種結晶保持器
19 ワイヤーロープ
20 結晶回転・引き上げ機構
21 ワイヤーロープ巻き取り器
22 筐体
23 コア素線
24 素線
25 ワイヤーロープ回転機構
26 回転速度制御手段
27 コントローラ
28 モータ
29 入力プーリ
30 出力プーリ
31 ベルト
32 無停電電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料物質の融液に対しワイヤーロープの先端に設置した種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら引き上げて単結晶を製造する際に、引き上げた結晶の回転を停止する方法であって、
ワイヤーロープの自転モーメントM:23.5N・mm以上(M≧23.5N・mm)と、ワイヤーロープの自転角θ:40°以上(θ≧40°)との少なくとも一方を満たす条件で結晶が回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させることを特徴とする、結晶回転停止方法。
【請求項2】
前記角減速度は一定であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶回転停止方法。
【請求項3】
原料物質の融液に対しワイヤーロープの先端に設置した種結晶を接触させ、該種結晶を回転させながら引き上げて単結晶を製造する際に、引き上げた結晶の回転を停止する装置であって、
引き上げた結晶の質量を測定する結晶質量測定手段と、
引き上げた結晶を懸吊しているワイヤーロープの長さを測定するワイヤーロープ長測定手段と、
前記結晶質量測定手段で測定した結晶の質量と、前記ワイヤーロープ長測定手段で測定したワイヤーロープの長さとを用いてワイヤーロープの自転モーメントMおよびワイヤーロープの自転角θを演算する演算手段と、
結晶が、前記自転モーメントM:23.5N・mm以上(M≧23.5N・mm)と、前記自転角θ:40°以上(θ≧40°)との少なくとも一方を満たす条件で回転している場合には、0.53rad/s以下の角減速度で結晶回転速度を減少させて結晶の回転を停止させる結晶回転停止手段と、
を備えることを特徴とする、結晶回転停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37681(P2011−37681A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187856(P2009−187856)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】