説明

結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに、該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルター

【課題】微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量で、目詰まりがなく、濾過寿命が長く、高強度の結晶性ポリマー微孔性膜、及び、該結晶性ポリマー微孔性膜を精度よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに、該微孔性膜を用いた濾過用フィルターの提供。
【解決手段】第1の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第1の予備成形体を成形し、第2の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第2の予備成形体を成形し、前記第1及び第2の予備成形体を押出成形して第1及び第2の押出体をそれぞれ成形し、前記第1及び第2の押出体を積層して積層体を形成し、該積層体を圧延する積層体形成工程と、前記積層体の一方の面を加熱して、該積層体の厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程と、前記積層体を延伸する延伸工程と、を含む結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに、該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている(非特許文献1参照)。このような微孔性膜としては、例えば、セルロースエステルを原料とするもの(特許文献1〜7参照)、脂肪族ポリアミドを原料とするもの(特許文献8〜14参照)、ポリフルオロカーボンを原料とするもの(特許文献15〜18参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(特許文献19参照)、などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーからなる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称することもある)を原料とした結晶性ポリマー微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
このような結晶性ポリマー微孔性膜において、空孔率が高い多孔質PTFE膜を製造するために、個別に作製された同一のフィルムを圧縮ロール間で圧縮して層状化することが提案されている(例えば、特許文献20参照)。
しかしながら、前記製造方法により製造された多孔質PTFE膜には、微粒子を効率良く捕捉することができないという問題がある。
そこで、微粒子を効率良く捕捉するために、例えば、PTFE膜に、低分子量PTFEの分散液を塗布することにより、フィルム物性(孔形状)を制御することが提案されている(例えば、特許文献21参照)。
しかしながら、前記各フィルムの厚みが制御されていないので、高流量、目詰まりがないこと、濾過寿命が長いこと、高強度、などの要求される膜性能の全てをバランスよく満たすのが難しいという問題がある。
【0004】
したがって、微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量で、目詰まりがなく、濾過寿命が長く、高強度の結晶性ポリマー微孔性膜、及び、該結晶性ポリマー微孔性膜を精度よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに、該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルターの速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第3,133,132号明細書
【特許文献3】米国特許第2,944,017号明細書
【特許文献4】特公昭43−15698号公報
【特許文献5】特公昭45−3313号公報
【特許文献6】特公昭48−39586号公報
【特許文献7】特公昭48−40050号公報
【特許文献8】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献9】米国特許第3,408,315号明細書
【特許文献10】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献11】米国特許第4,340,480号明細書
【特許文献12】米国特許第4,450,126号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3,138,525号明細書
【特許文献14】特開昭58−37842号公報
【特許文献15】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,340,482号明細書
【特許文献17】特開昭55−99934号公報
【特許文献18】特開昭58−91732号公報
【特許文献19】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献20】特表2009−501632号公報
【特許文献21】特開平11−35716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、微粒子を効率良く捕捉することができ、高流量で、目詰まりがなく、濾過寿命が長く、高強度の結晶性ポリマー微孔性膜、及び、該結晶性ポリマー微孔性膜を精度よく製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに、該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 第1の結晶性ポリマーを含む層と、第2の結晶性ポリマーを含む層とが積層され、厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された2層以上の積層体を有し、前記第1の結晶性ポリマーの結晶化度が前記第2の結晶性ポリマーの結晶化度よりも高く、前記第1の結晶性ポリマーを含む層の最大厚みが前記第2の結晶性ポリマーを含む層の最大厚みよりも厚く、前記積層体における少なくとも1層が、前記積層体の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が連続的乃至非連続的に変化する複数の孔部を有する結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法であって、前記第1の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第1の予備成形体を成形し、前記第2の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第2の予備成形体を成形し、前記第1及び第2の予備成形体を押出成形して第1及び第2の押出体をそれぞれ成形し、前記第1及び第2の押出体を積層して積層体を形成し、該積層体を圧延する積層体形成工程と、前記積層体の一方の面を加熱して、該積層体の厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程と、前記積層体を延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<2> 積層体形成工程において、加圧時における圧力が0.01MPa〜100MPaである前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<3> 積層体形成工程において、加圧時における圧力の付与時間が0.01秒間〜1000秒間である前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<4> 積層体形成工程が、加圧時において、5℃〜35℃の温度まで加熱することを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<5> 積層体形成工程おいて、押出成形時における温度が15℃〜200℃である前記<1>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<6> 積層体形成工程おいて、押出成形時における圧力が0.001MPa〜1000MPaである前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<7> 積層体形成工程おいて、圧延時における温度が19℃〜380℃である前記<1>から<6>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<8> 積層体形成工程おいて、圧延時における圧力が0.001MPa〜1000MPaである前記<1>から<7>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<9> 非対称加熱工程において、加熱温度が322℃〜361℃である前記<1>から<8>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<10> 延伸工程において、積層体の長手方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍である前記<1>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<11> 延伸工程において、積層体の幅方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍である前記<1>から<10>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<12> 第1の押出体の厚みが、第2の押出体の厚み以上である前記<1>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<13> 第1の結晶性ポリマーの結晶化度が、第2の結晶性ポリマーの結晶化度の1.02倍以上である前記<1>から<12>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<14> 第1の結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである前記<1>から<13>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<15> 第2の結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレン共重合体のいずれかである前記<1>から<14>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<16> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<17> 前記<16>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルターである。
<18> 結晶性ポリマー微孔性膜における孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルターの濾過面に使用する前記<17>に記載の濾過用フィルターである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に係る2層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、従来の2層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、従来の3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造方法の工程を示す図である。
【図6】図6は、予備成形体の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の結晶性ポリマー微孔膜の製造方法の他の工程を示す図である。
【図8】図8は、ハウジングに組込む前の一般的なプリーツフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図9】図9は、カプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込む前の一般的なフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図10】図10は、ハウジングと一体化された一般的なカプセル式のフィルターカートリッジの構造を表す図である。
【図11】図11は、本発明に係る3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である(その2)。
【図12】図12は、本発明に係る3層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である(その3)。
【図13】図13は、本発明に係る4層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【図14】図14は、本発明に係る5層構造の結晶性ポリマー微孔膜の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(結晶性ポリマー微孔性膜)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、少なくとも積層体を有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0010】
<積層体>
前記積層体は、少なくとも、第1の結晶性ポリマー(以下、「高結晶性ポリマー」ということもある)を含む層と、第2の結晶性ポリマー(以下、「低結晶性ポリマー」ということもある)を含む層とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0011】
前記積層体とは、2層以上の結晶性ポリマー層を積層することにより形成される「複層構造」であり、「単層構造」ではないことを意味する。
前記「積層構造」であることは、結晶性ポリマー層と他の結晶性ポリマー層の間に境界を有することにより、境界を有さない「単層構造」と明確に区別できる。ここで、結晶性ポリマー層と他の結晶性ポリマー層の間の境界は、例えば結晶性ポリマー微孔性膜を厚み方向に切断した切断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより検出することができる。
【0012】
前記積層体の構造としては、2層以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層以上の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、1層の第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層との積層体が好ましく、2層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、該2層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層間に介装された1層の第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層とを有する3層構造がより好ましい。
前記3層構造とすることにより、各層間の収縮率の差異により生じるカールを防止することができると共に、捕捉粒径に最も影響する最も小さい径の第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー層)を、摩擦、引っ掻き等の物理的破壊要因から保護することができ、捕捉性能の安定化を図ることができる。
また、前記3層構造において、1層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みが、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みよりも厚く、他の1層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みが、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みよりも厚いことが、好ましい。第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みより厚い第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層を出口側(アウトレット側)に配置することより、結晶性ポリマー微孔性膜の流量を向上することができる。
【0013】
前記積層体の構造としては、例えば、3種類の結晶化度(低分子量)の結晶性ポリマー層を4層積層したもの(図13)、及び、5種類の結晶化度(低分子量)の結晶性ポリマー層を5層積層したもの(図14)。ここで、outlet側(濾過液の出口側)の結晶性ポリマー層ほど、該結晶性ポリマー層を形成している結晶性ポリマーが結晶化度(分子量)が低いことが好ましい。
【0014】
本発明においては、前記積層体の厚み方向に貫通した複数の孔部が形成され、前記積層体における少なくとも1層が、前記積層体の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が連続的乃至非連続的に変化する複数の孔部を有する。これにより、微粒子を効率良く捕捉することができ、目詰まりがなく、濾過寿命を長くすることができる。
前記「厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された」ことは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認することができる。
前記平均孔径の厚み方向に関する変化は、連続的乃至非連続的に増加、及び連続的乃至非連続的に減少のいずれかである。
前記「前記積層体における少なくとも1層が、前記積層体の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が連続的乃至非連続的に変化する複数の孔部を有する」とは、横軸に結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面からの厚み方向の距離d(おもて面からの深さに相当)をとり、縦軸に孔部の平均孔径Dをとったとき、(1)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、結晶性ポリマー層ごとに1本の連続線で描かれ(連続的)、グラフの傾き(dD/dt)が負の領域(減少)、及び傾きが正の領域(増加)のいずれであることや、(2)おもて面(d=0)からうら面(d=膜厚)に至るまでのグラフが、結晶性ポリマー層ごとに1本の連続線又は非連続線で描かれることなどが含まれる。即ち、図11及び図12などの態様も含むものである。ここで、傾きが0(ゼロ)の部分(変化なし)が一部乃至全部に含まれていてもよいが、好ましくは、傾きが0(ゼロ)の部分(変化なし)が含まれていない完全に傾斜している場合が好ましい。
これらの中でも、前記積層体における少なくとも1層における孔部の平均孔径が、おもて面からうら面に至るまでのグラフが連続的に減少しているものが特に好ましい。
本発明においては、結晶性ポリマー微孔性膜における非対称加熱面の反対側である孔部の平均孔径が大きい方の面を「おもて面」と言い、非対称加熱面である孔部の平均孔径が小さい方の面を「うら面」と言っているが、これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎない。したがって、複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム(積層体)のいずれの面を非対称加熱して「うら面」にしても構わない。
前記結晶性ポリマー微孔性膜において、おもて面とうら面における孔部の平均孔径の
比(おもて面/うら面の比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.2倍〜2.0×10倍が好ましく、1.5倍〜1.0×10倍がより好ましく、2.0倍〜2.0×10倍が特に好ましい。
前記結晶性ポリマー微孔性膜のおもて面における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜500μmが好ましく、0.25μm〜250μmがより好ましく、0.50μm〜100μmが特に好ましい。
前記平均孔径が0.1μm未満であると、流量が低下するおそれがあり、500μmを超えると、効率よく微粒子を捕捉できなくなるおそれがある。一方、前記特に好ましい範囲内であると、流量及び微粒子捕捉性の点で有利である。
前記結晶性ポリマー微孔性膜のうら面における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5.0μmが好ましく、0.025μm〜2.5μmがより好ましく、0.05μm〜1.0μmが特に好ましい。
前記平均孔径が0.01μm未満であると、流量が低下するおそれがあり、5.0μmを超えると、効率よく微粒子を捕捉できなくなるおそれがある。一方、前記特に好ましい範囲内であると、流量及び微粒子捕捉性の点で有利である。
【0015】
ここで、図1に示すように、結晶性ポリマー層101、102を積層した2層構造の本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101a、102aの孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化(連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
これに対し、図2に示すように、結晶性ポリマー層101、102を積層した2層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101b、102bの孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化しておらず、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
また、図3に示すように、結晶性ポリマー層101、102、103を積層した3層構造の本発明の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101a、102a、103aの孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化(連続的に減少)しており、結晶性ポリマー微孔性膜全体としては、孔径が厚み方向に変化(段階的に減少)している。
これに対し、図4に示すように、結晶性ポリマー層101、102、103を積層した3層構造の従来の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101b、102b、103bの孔径は、いずれも積層体の厚み方向に変化しておらず、結晶性ポリマー微孔性膜全体としても、孔径が厚み方向に段階的に変化している部分がある。
【0016】
また、結晶性ポリマー微孔性膜における各結晶性ポリマー層は、それぞれ異なる両端開口径を有することが好ましい。即ち、図1に示すように、各結晶性ポリマー層101、102における孔部101a、102aの孔径が積層体の厚み方向に連続的乃至非連続的に減少している場合には、両端開口径L1、L2はL1>L2となり、両端開口径L3、L4はL3>L4となる。
この場合、各結晶性ポリマー層において、おもて面とうら面における孔部の平均孔径の比(おもて面/うら面の比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.1倍〜30倍が好ましく、1.25倍〜25倍がより好ましく、1.5倍〜20倍が特に好ましい。
前記各結晶性ポリマー層のおもて面における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm〜500μmが好ましく、0.002μm〜250μmがより好ましく、0.005μm〜100μmが特に好ましい。
前記各結晶性ポリマー層のうら面における孔部の平均孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm〜500μmが好ましく、0.002μm〜250μmがより好ましく、0.003μm〜100μmが特に好ましい。
【0017】
また、3層以上の結晶性ポリマー層を積層してなる積層体の内部に、孔部の最大平均孔径が最も小さい結晶性ポリマー層を有することが好ましい。これにより、捕捉粒径に最も影響する最も小さい径の結晶性ポリマー層を、摩擦、引っ掻き等の物理的破壊要因から保護することができ、捕捉性能の安定化を図ることができる。
ここで、図3に示すように、結晶性ポリマー層101、102、103を積層した3層構造の結晶性ポリマー微孔性膜における孔部101a、102a、103aにおいて、孔部の最大平均孔径Lm1、Lm2、Lm3のうち最も小さい最大平均孔径Lm2を有する結晶性ポリマー層102が結晶性ポリマー微孔性膜(積層体)の内部に存在している。
【0018】
ここで、前記孔部の平均孔径は、例えば走査型電子顕微鏡(日立S−4300、4700型で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜50,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径が求められる。
【0019】
前記孔部の最大頻度の孔径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm〜0.5μmが好ましい。
前記最大頻度の孔径が0.001μm未満であると、十分な流量が得られないことがあり、0.5μmを超えると、小さい粒径の微粒子の捕捉率が落ちることがある。
ここで、前記最大頻度の孔径は、パームポロメーター(PMI社製)により測定することができる。
【0020】
−結晶性ポリマー−
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、初めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
【0021】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、液晶性ポリマー、などが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、などが挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性と取り扱い性の点で、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、該ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点で、HDPEが好ましい。
【0022】
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0023】
前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ポリフロンPTFE F−104、ポリフロンPTFE F−106、ポリフロンPTFE F−201、ポリフロンPTFE F−205、ポリフロンPTFE F−207、ポリフロンPTFE F−301(いずれも、ダイキン工業株式会社製);Fluon PTFE CD1、Fluon PTFE CD141、Fluon PTFE CD145、Fluon PTFE CD123、Fluon PTFE CD076、Fluon PTFE CD090(いずれも、旭硝子株式会社製);テフロン(登録商標)PTFE 6−J、テフロン(登録商標)PTFE 62XT、テフロン(登録商標)PTFE 6C−J、テフロン(登録商標)PTFE 640−J(いずれも、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)、などが挙げられる。これらの中でも、F−104、F−106、F−205、CD1、CD141、CD145、CD123、6−Jが好ましく、F−104、F−106、F−205、CD1、CD123,6−Jがより好ましく、F−106、F−205が特に好ましい。
【0024】
前記結晶性ポリマーのガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜400℃が好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。
前記結晶性ポリマーの質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000〜100,000,000が好ましい。
前記各結晶性ポリマーの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500〜50,000,000が好ましく、1,000〜10,000,000がより好ましい。
ここで、前記数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。しかし、PTFEは、溶剤に不溶であるため、DSC測定による結晶化熱(ΔHc:cal/g)測定を行い、関係式:Mn=2.1×1010×ΔHc−5.16、を用いて算出することが好ましい。
【0025】
前記結晶性ポリマー微孔性膜の合計膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜200μmがより好ましく、10μm〜100μmが特に好ましい。
【0026】
第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みとしては、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みよりも厚い限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みの1.2倍以上が好ましく、1.25倍以上がより好ましく、1.5倍以上が特に好ましい。
前記高結晶性ポリマーを含む層の最大厚みが、低結晶性ポリマーを含む層の最大厚みの1.2倍未満であると、低結晶性ポリマー層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがある。一方、前記特に好ましい範囲内であると、微粒子捕捉性の点で有利である。
なお、各層の界面において、高結晶性ポリマー及び低結晶性ポリマーの両方を含む中間層が存在する場合は、該中間層は、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層、及び、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層のいずれにも含まれないものとする。
【0027】
<<第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層>>
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層は、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みは、前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みより厚い。これにより、結晶性ポリマー微孔性膜の流量を向上することができる。
ここで、「最大厚み」とは、各層の厚みの最大値を意味する。例えば、厚みが20μmの第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、厚みが15μmの第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、厚みが10μmの第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層とを有する積層体の場合、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みは20μmとなり、また、厚みが20μmの第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層と、厚みが15μmの第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層と、厚みが10μmの第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層とを有する積層体の場合、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みは20μmとなる。
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0μm〜100μmが好ましく、1.25μm〜75μmがより好ましく、1.5μm〜50μmが特に好ましい。
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みが、1.0μm未満であると、低結晶性ポリマー層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがあり、100μmを超えると、十分な流量を得られないことがある。一方、前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みが前記特に好ましい範囲内であると、微粒子捕捉性及び流量の点で有利である。
【0028】
前記結晶性ポリマー微孔性膜が2層構造である場合、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の厚みと、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みとの比は、10,000:1〜1.2:1であることが好ましく、5,000:1〜1.25:1であることがより好ましく、1,000:1〜1.5:1であることが特に好ましい。
前記比が10,000超:1であると、低結晶性ポリマー層の膜厚を精密に制御できなくなるおそれがあり、1.2未満:1であると、低結晶性ポリマー層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがある。一方、前記比が前記特に好ましい範囲内であると、膜厚制御及び微粒子捕捉性の点で有利である。
【0029】
前記結晶性ポリマー微孔性膜が3層構造(2層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、該2層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層間に介装された1層の第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー))である場合、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みと、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みとの比は、5,000:1〜1.2:1であることが好ましく、2,500:1〜1.25:1であることがより好ましく、1,000:1〜1.5:1であることが特に好ましい。
前記比が5,000超:1であると、低結晶性ポリマー層の膜厚を精密に制御できなくなるおそれがあり、1.2未満:1であると、低結晶性ポリマー層が摩擦、引っ掻きの影響を受け、安定な微粒子捕捉性を保てないことがある。一方、前記比が前記特に好ましい範囲内であると、膜厚制御及び微粒子捕捉性の点で有利である。
前記2層の第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層のうち他の1層(最大厚みを有する層でない他方の層)の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第2の結晶性ポリマーを含む層の厚み以下が好ましく、前記第2の結晶性ポリマーを含む層の厚みの0.5倍以下がより好ましい。
前記第2の結晶性ポリマーを含む層の厚みを超えると、流量が十分でない場合がある。一方、前記厚みが前記より好ましい範囲内であると、流量の点でさらに有利である。
【0030】
ここで、各層の膜厚の測定は、例えば、微孔性膜を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)により断面観察を行うことで、各層の膜厚を測定することができる。
【0031】
−第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)−
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)としては、結晶化度が後述する低結晶性ポリマーよりも高い結晶性ポリマーである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐薬品性の点で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)の結晶化度としては、後述する第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)の結晶化度よりも高い限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)の結晶化度の1.02倍以上が好ましく、1.03倍以上がより好ましく、1.05倍以上が特に好ましい。
前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)の結晶化度が、後述する第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)の結晶化度の1.02倍未満であると、高結晶性ポリマー層と低結晶性ポリマー層との孔径が同程度となってしまい、効率よくより小さい微粒子を捕捉できないおそれがある。一方、前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)の結晶化度が前記特に好ましい範囲内であると、より小さい微粒子の捕捉性の点で有利である。
なお、「結晶化度」は、下記式にて定義できる。

ここで、100Cが結晶化度(%)、ρが試料密度、ρが完全結晶密度(PTFEの場合、2.302)、ρが非晶密度(PTFEの場合、2.060)を表す。試料密度は、乾式、湿式密度計、密度勾配管などで測定でき、例えば、島津製作所製アキュピックII 1340、アキュピック1330などで測定できる。
また、前記結晶化度は、例えば広角X線回折、NMR、赤外線(IR)、DSC、「ふっ素樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、里川孝臣編)P.45に記載の
方法などにより測定することもできる。
【0032】
<<第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層>>
前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層は、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みは、前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層の最大厚みより薄い。これにより、結晶性ポリマー微孔性膜の流量を向上することができる。
前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜100μmが好ましく、0.02μm〜80μmがより好ましく、0.03μm〜60μmが特に好ましい。
前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みが、0.01μm未満であると、孔部の孔径を小さくすることができない、孔径の面内均一性を失うおそれがあり、100μmを超えると、高流量化を図ることができないことがある。一方、前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層の厚みが前記特に好ましい範囲内であると、孔径の面内均一性及び流量の点で有利である。
【0033】
−第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)−
前記第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)の結晶化度としては、結晶化度が前記第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)よりも低い結晶性ポリマーである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐薬品性の点で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、が好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、などが挙げられる。
【0034】
(結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、積層体形成工程と、非対称加熱工程と、延伸工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0035】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、前記第1の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第1の予備成形体を成形し、前記第2の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第2の予備成形体を成形し、前記第1及び第2の予備成形体を押出成形して第1及び第2の押出体をそれぞれ成形し、前記第1及び第2の押出体を積層して積層体を形成し、該積層体を圧延する工程であり、必要に応じて、加圧時において加熱すること、加圧時において冷却すること、などを含む。
【0036】
<<予備成形体の成形>>
前記第1及び第2の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー及び低結晶性ポリマー)としては、上述したものの中から目的に応じて適宜選択して用いることができる。
前記金型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の金型を用いることができる。
前記金型内に敷き詰められる組成物としては、前記第1の結晶性ポリマー又は前記第2の結晶性ポリマーを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、さらに押出助剤などを含むことが好ましい。
前記押出助剤としては、液状潤滑剤を用いることが好ましく、例えば、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどが挙げられる。また、前記押出助剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、エッソ石油株式会社製「アイソパー」などの炭化水素油を用いても構わない。前記押出助剤の添加量は、前記結晶性ポリマー100質量部に対して、15質量部〜30質量部が好ましい。
前記金型内に敷き詰められる組成物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペーストであることが好ましい。
【0037】
前記加圧時における圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01MPa〜100MPaが好ましく、0.025MPa〜75MPaがより好ましく、0.05MPa〜50MPaが特に好ましい。
前記圧力が、0.01MPa未満であると、十分にペーストを固められず、予備成形体を作製できないおそれがあり、100MPaを超えると、助剤が染み出し、ペーストの流動性が失われ、次工程の押出ができなくなるおそれがある。一方、前記圧力が前記特に好ましい範囲内であると、押出工程において、流動するペーストが再現性よく作製できる点で有利である。
【0038】
前記加圧時における圧力の付与時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01秒間〜1,000秒間が好ましく、0.05秒間〜500秒間がより好ましく、0.1秒間〜100秒間が特に好ましい。
前記圧力の付与時間が、0.01秒間未満であると、十分にペーストを固められず、予備成形体を作製できないおそれがあり、1,000秒間を超えると、助剤が染み出し、ペーストの流動性が失われ、次工程の押出ができなくなるおそれがある。一方、前記圧力が前記特に好ましい範囲内であると、押出工程において、流動するペーストが再現性よく作製できる点で有利である。
【0039】
前記加圧時における加熱による到達温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5℃〜35℃が好ましく、10℃〜33℃がより好ましく、19℃〜30℃が特に好ましい。
前記到達温度が、5℃未満であると、助剤が染み出し、ペーストの流動性が失われ、次工程の押出ができなくなるおそれがあり、35℃を超えると、十分にペーストを固められず、予備成形体を作製できないおそれがある。一方、前記到達温度が前記特に好ましい範囲内であると、押出工程において、流動するペーストが再現性よく作製できる点で有利である。
【0040】
<<押出体の成形>>
前記押出体の成形は、特に制限はなく、公知のペースト押出方法に準じて行うことができる。
まず、第1の予備成形体を押出成形して第1の押出体を成形し、次に、第2の予備成形体を押出成形して第2の押出体を成形する。
前記押出成形は、例えば、公知のペースト押出装置により行うことができる。
【0041】
前記押出成形時における温度としては、15℃〜200℃が好ましく、17℃〜150℃がより好ましく、19℃〜100℃が特に好ましい。
前記温度が、15℃未満であると、十分な流動性が得られず押出できないおそれがあり、200℃を超えると、助剤が蒸発してしまうおそれがある。一方、前記温度が前記特に好ましい範囲内であると、予備成形体を押出すことができ、安定して押出品を得ることができる点で有利である。
【0042】
前記押出成形時における圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001MPa〜1,000MPaが好ましく、0.005MPa〜500MPaがより好ましく、0.01MPa〜100MPaが特に好ましい。
前記圧力が、0.001MPa未満であると、十分な流動性が得られず押出できないおそれがあり、1,000MPaを超えると、予備成形体に十分にせん断応力を伝えることができず押出品の形状安定性に劣ることがある。一方、前記圧力が前記特に好ましい範囲内であると、予備成形体を押出すことができ、形状安定性の優れた押出品を得ることができる点で有利である。
【0043】
なお、前記第2の押出体の厚みが、前記第1の押出体よりも薄くなるように、前記押出成形時における温度及び圧力が調整されることが好ましい。
【0044】
前記押出体の形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常は、棒状乃至シート状が好ましい。
【0045】
<<積層>>
前記第1の押出体と前記第2の押出体とが積層され、少なくとも2層の積層体が形成される。
【0046】
<<圧延>>
前記圧延は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カレンダーロールにより5m/分の速度でカレンダー掛けすることにより行うことができる。
【0047】
前記圧延時における圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001MPa〜1,000MPaが好ましく、0.002MPa〜600MPaがより好ましく、0.035MPa〜350MPaが特に好ましい。
前記圧力が、0.001MPa未満であると、十分にせん断応力を伝えることができず圧延できないおそれがあり、1,000MPaを超えると、薄膜化しすぎて膜の強度が得られないことがある。一方、前記圧力が前記特に好ましい範囲内であると、安定して圧延でき、圧延品の強度も保たれる点で有利である。
【0048】
前記圧延時における温度としては、19℃〜380℃が好ましく、22℃〜365℃がより好ましく、30℃〜350℃が特に好ましい。
前記温度が、19℃未満であると、十分な流動性が得られず、圧延できないことがあり、380℃を超えると、十分な流動性が得られるため、薄膜化しすぎて膜の強度が得られないことがある。一方、前記温度が前記特に好ましい範囲内であると、安定して圧延でき、圧延品の強度も保たれる点で有利である。
【0049】
<<押出助剤の除去>>
圧延後、フィルムを加熱することにより押出助剤を除去して複層結晶性ポリマー未加熱フィルムとする。
前記加熱における温度は、特に制限はなく、助剤の種類に応じて適宜選択することができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。
前記温度が、40℃未満であると、助剤が十分に乾燥しないことがあり、400℃を超えると、膜質が変わってしまうことがある。一方、前記温度が前記より好ましい範囲内であると、膜質を変えず、助剤を十分に乾燥させることができる点で有利である。
【0050】
例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いて、ソルベントナフサを除去する場合には、150℃〜280℃が好ましく、200℃〜255℃がより好ましい。前記加熱は、フィルムを熱風乾燥炉に通すなどの方法で行うことができる。
【0051】
このようにして製造される複層結晶性ポリマー未加熱フィルムの厚みは、最終的に製造しようとする結晶性ポリマー微孔性膜の厚みに応じて適宜調整することができ、後の工程で延伸を行う場合には、延伸による厚みの減少も考慮して調整することが必要である。
なお、複層結晶性ポリマー未加熱フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0052】
ここで、図5〜図7を参照して、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法の一例について説明する。
図6に示すように、単層構造の結晶性ポリマー層からなる予備成形体10を作製する。
前記予備成形体は、平均一次粒径0.2μm〜0.4μmのPTFE乳化重合水性分散体を凝析して製造したPTFEのファインパウダーにソルベントナフサ、ホワイトオイル等のような液状潤滑剤を添加したペースト4(図5)から得られる。前記液状潤滑剤の使用量は、その種類、成形条件等によって異なり、通常PTFEのファインパウダー100質量部に対して15質量部〜35質量部の範囲で用いられる。更に必要に応じて着色剤などを添加することもできる。
まず、図5に示すような箱形状の下金型8内に、ペースト4を層状に下金型8上に敷き詰め、ペースト4に圧力を付与し、予備成形体10を形成する(図6参照)。
以上により、図6に示すような、ペースト押出装置のシリンダー部の中に収納される寸法に成形された予備成形体10が得られる。
【0053】
次に、得られた予備成形体10を図7に示すペースト押出装置のシリンダー部に収納した後、これを加圧手段(不図示)によって矢印方向に押圧して押出体15を押出成形する。図7のペースト押出装置のシリンダー部は、例えば軸直角方向断面は50mm×100mmの矩形であり、出口部でシリンダー部の一方が絞られたノズル50mm×5mmで構成されている。
上記のように、押出体15を複数成形し、該複数の押出体15を積層して積層体を形成し、該積層体をカレンダーロールなどにより圧延する。さらに、圧延後、フィルムを加熱して、押出助剤を除去する。
このようにして、複数の押出体が完全に一体化され、各層が均一な厚みを有する複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム(未加熱積層体)が形成される。
前記積層体の各層の厚み構成比は、前記押出体の各層の厚み構成比とほぼ同一であることが実体顕微鏡によって確認できている。
なお、前記積層体は、複数の予備成形体を成形した後に、該複数の予備成形体から成形された複数の押出体を積層しているので、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の各層の厚み構成比は、前記押出体の厚み構成比との一致度が極めて高い。
【0054】
<非対称加熱工程>
前記非対称加熱工程は、得られた積層体の一方の面を加熱して、該積層体の厚み方向に温度勾配を形成する工程である。
なお、前記積層体の一方の面とは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低結晶性ポリマーを含む層側を加熱することが好ましい。ここで、前記積層体の外側の層が同じ材料で構成されている場合は、厚みが薄い層側を加熱することが好ましい。
ここで、前記非対称加熱とは、第1の結晶性ポリマー(高結晶性ポリマー)を含む層と、第2の結晶性ポリマー(低結晶性ポリマー)を含む層とを積層してなる2層以上の未加熱フィルム(未加熱積層体)を、その加熱フィルム(加熱積層体)の融点−5℃以上であり、かつ、その未加熱フィルム(未加熱積層体)の融点+15℃以下の温度で加熱処理することを意味する。
本発明において、未加熱フィルム(未加熱積層体)とは、非対称加熱処理をしていないものを意味する。また、未加熱フィルム(未加熱積層体)の融点とは、未加熱フィルム(未加熱積層体)を示差走査熱量計により測定した際に現れる吸熱カーブのピークの温度を意味する。前記加熱フィルム(加熱積層体)の融点及び未加熱フィルム(未加熱積層体)の融点は、結晶性ポリマーの種類や数平均分子量等により変化するが、50℃〜450℃が好ましく、80℃〜400℃がより好ましい。
このような温度は、以下のように考えることができる。例えば、ポリテトラフルオロエ
チレンの場合、加熱フィルム(加熱積層体)の融点が約327℃で未加熱フィルム(未加熱積層体)の融点が約346℃である。したがって、融点約327℃のものと融点約346℃のものが混在している状態である半加熱フィルム(半加熱積層体)にするには、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの場合には、322℃〜361℃が好ましく、327℃〜346℃がより好ましく、例えば338℃の温度に加熱する。
【0055】
前記非対称加熱工程における、熱エネルギーの供給については、連続的乃至非連続的に供給する方法、もしくは何度かに分割して間欠的にエネルギーを供給する方法のいずれも採用することができる。前記非対称加熱の定義上、フィルム(積層体)のおもて面とうら面で温度に差を生じさせることが必要であるが、この方法として、間欠的にエネルギーを供給することによりうら面の温度上昇を抑えるという方法が利用できる。一方、連続的乃至非連続的に加熱する場合、この温度勾配を保持するために、おもて面の加熱と同時にうら面を冷却するという方法も有効に使用できる。
【0056】
前記熱エネルギーの供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこ
とができ、例えば(1)フィルム(積層体)に熱風を吹き付ける方法、(2)フィルム(積層体)に熱媒に接触させる方法、(3)フィルム(積層体)を加熱部材に接触させる方法、(4)フィルム(積層体)に赤外線を照射する方法、(5)フィルム(積層体)をマイクロ波等の電磁波により加熱する方法などが使用できる。これらの中でも、(3)加熱部材に接触させる方法、(4)赤外線を照射する方法が好ましい。
前記(3)の加熱部材としては、加熱ロールが好ましい。加熱ロールであれば、工業的
に流れ作業で連続的乃至非連続的に非対称加熱を行うことができ、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。加熱ロールの温度は、上記半加熱フィルム(半加熱積層体)にする際の温度に設定することができる。加熱ロールにフィルムを接触させる時間は、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、1秒間〜120秒間が好ましく、2秒間〜110秒間がより好ましく、3秒間〜100秒間が特に好ましい。
【0057】
前記(4)の赤外線照射としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが
できる。
前記赤外線の一般的な定義は「実用赤外線」(人間と歴史社、1992年発行)を参考
にすることができる。本発明において、前記赤外線とは、波長が0.74μm〜1,00
0μmの電磁波を意味し、そのうち波長が0.74μm〜3μmの範囲を近赤外線とし、
波長が3μm〜1,000μmの範囲を遠赤外線とする。
本発明においては、フィルム(積層体)の表面と裏面での温度差がある方が好ましいため、表層の加熱に有利な遠赤外線が好ましく使用される。
前記赤外線の装置の種類としては、目的の波長の赤外線が照射できれば特に制限はなく
、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に、近赤外線は電球(ハロゲンラン
プ)、遠赤外線はセラミック、石英、金属酸化面などの発熱体を用いることができる。
また、赤外線照射であれば、工業的に流れ作業で連続的に非対称加熱を行うことができ
、しかも温度制御や装置のメンテナンスも容易である。また非接触であるため、クリーン
、かつ毛羽立ちのような欠陥が生じることがない。
前記赤外線照射によるフィルム表面温度は、赤外線照射装置の出力、赤外線照射装置と
フィルム表面の距離、照射時間(搬送速度)、雰囲気温度で制御でき、上記の半加熱フィルム積層体にする際の温度に設定することができるが、324℃〜380℃が好ましく、335℃〜360℃がより好ましい。前記表面温度が、324℃未満であると、結晶状態が変化せず、孔径制御ができなくなることがあり、380℃を超えると、フィルム積層体全体が溶融することにより過度に形状が変形したり、結晶性ポリマーの熱分解が生じることがある。
前記赤外線の照射時間は、特に制限はなく、目的とする非対称加熱が十分に進行するのに必要な時間であり、30秒間〜120秒間が好ましく、45秒間〜90秒間がより好ましく、60秒間〜80秒間が特に好ましい。
前記非対称加熱における赤外線照射は、連続的に行ってもよく、又は何度かに分割して間欠的に行ってもよい。
【0058】
また、フィルム(積層体)の厚み方向の温度勾配としては、おもて面とうら面の温度差は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。
なお、連続的にフィルム(積層体)のうら面を加熱する場合には、フィルム(積層体)のおもて面とうら面で温度勾配を保持するため、うら面の加熱と同時におもて面を冷却することが好ましい。
前記おもて面を冷却する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば冷風を吹き付ける方法、冷媒に接触させる方法、冷却した材料に接触させる方法、放冷による冷却等の種々の方法が使用でき、フィルム(積層体)の表面に冷却部材を接触させる方法は、接触物表面が遠赤外線により加熱されるため好ましくない。
また、前記非対称加熱工程を間欠的に行う場合にも、フィルム(積層体)のうら面を間欠的に加熱及び冷却し、表面の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0059】
<<延伸工程>>
前記延伸工程は、フィルム(積層体)を延伸する工程である。
前記延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
前記長手方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍が好ましく、1.5倍〜40倍がより好ましく、2.0倍〜10倍が特に好ましい。長手方向の延伸温度は、35℃〜330℃が好ましく、45℃〜320℃がより好ましく、55℃〜310℃が特に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍が好ましく、1.5倍〜40倍がより好ましく、2.0倍〜30倍が更に好ましく、2.5倍〜10倍が特に好ましい。幅方向の延伸温度は、35℃〜330℃が好ましく、45℃〜315℃がより好ましく、60℃〜300℃が特に好ましい。
面積延伸倍率は、1.5倍〜2,500倍が好ましく、2倍〜2,000倍がより好ましく、2.5倍〜100倍が特に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度に結晶性ポリマーフィルムを予備加熱しておいてもよい。
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。該熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマーの融点未満で行うことが好ましい。
結晶性ポリマーが、PTFEなどフッ素樹脂の場合は、融点以上で加熱することが好ましい。
【0060】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、様々な用途に用いることができるが、特に、以下に説明する濾過用フィルタとして好適に用いることができる。
【0061】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その表面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(表面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0062】
本発明の濾過用フィルタは、プリーツ状に加工成形することが好ましい。プリーツ状に加工することにより、カートリッジあたりのフィルタの濾過に使用する有効表面積を増大させることができるという利点がある。
【0063】
ここで、図8はエレメント交換式のプリーツフィルターカートリッジエレメントの構造を示す展開図である。精密ろ過膜113は2枚の膜サポート112、114によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するコアー115の廻りに巻き付けられている。その外側には外周カバー111があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端にはエンドプレート116a、116bにより、精密ろ過膜がシールされている。エンドプレートはガスケット117を介してフィルターハウジング(不図示)のシール部と接する。ろ過された液体はコアーの集液口から集められ、流体出口118から排出される。
【0064】
カプセル式のプリーツフィルターカートリッジを図9及び図10に示す。
図9はカプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込まれる前の精密ろ過膜フィルターエレメントの全体構造を示す展開図である。精密ろ過膜22は2枚のサポート21、23によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するフィルターエレメントコア27の廻りに巻き付けられている。その外側にはフィルターエレメントカバー26があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端には上部エンドプレート24、下部エンドプレート25により、精密ろ過膜がシールされている。
図10は、フィルターエレメントがハウジングに組込まれて一体化されたカプセル式のプリーツフィルターカートリッジの構造を示す。フィルターエレメント30はハウジングベースとハウジングカバーよりなるハウジング内に組込まれている。下部エンドプレートはOリング28を介してハウジングベース中心部にある集水管(不図示)にシールされている。液体は液入口ノズルからハウジング内に入り、フィルターメディア29を通過し、フィルターエレメントコア27の集液口から集められ、液出口ノズル34から排出される。ハウジングベースとハウジングカバーは通常溶着部37で液密に熱融着される。
【0065】
図9は、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールをOリングを介して行う事例を示しているが、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールは熱融着や接着剤によって行われることもある。又はウジングベースとハウジングカバーとのシールも熱融着の他に、接着剤を用いる方法も可能である。図8〜図10は精密ろ過フィルターカートリッジの具体例であり、本発明はこれらの図に限定されるわけではない。
【0066】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるという特徴を有することから、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを直列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば直列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0067】
本発明の濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられる。特に、本発明の濾過用フィルタは耐熱性及び耐薬品性に優れているため、従来の濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも効果的に用いられる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
<微孔性膜の作製>
−予備成形体の作製(成形工程)−
高結晶性ポリマーとしてのポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「F106」、結晶化度98.5%)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーH」)23質量部を加えた。これをペースト1とした。
低結晶性ポリマーとしてのポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「F205」、結晶化度93.7%)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーH」)20質量部を加えた。これをペースト2とした。
次に、ペースト1を、圧力:0.5MPa、圧力の付与時間:10秒間、最高到達温度:36℃、敷き詰め加圧し、厚み70mmの予備成形体1とした。
次に、ペースト2を、圧力:0.5MPa、圧力の付与時間:10秒間、最高到達温度:35℃、厚み70mmの予備成形体2とした。
【0070】
なお、予備成形体の厚み及び結晶化度は、それぞれ、下記のように測定した。
【0071】
−−予備成形体の厚みの測定方法−−
JIS B 7516に記載の方法で、金属製直尺を用いて測定した。
【0072】
−−結晶化度の測定方法−−
島津製作所製アキュピック1330で測定した。
測定の24時間前に測定試料を25℃、1%RHの低湿保管庫に保存し、水分の吸着等を防いだ。測定時に使用する量としては、0.1g〜1.0g範囲内に収まるようにとり、測定試料が膜の場合は、幅8mm、長さ数cm〜20cm程度の棒状サンプルをまるめて、サンプル管に入れ、測定することができる。
【0073】
−未加熱フィルムの作製(フィルム積層体形成工程)−
作製した予備成形体1を、ペースト押し出し金型の角型シリンダー内に挿入し、温度45℃、圧力5.0MPaの条件でシート状に押し出し、厚み3.0mmの押出体1を作製した。
作製した予備成形体2を、ペースト押し出し金型の角型シリンダー内に挿入し、温度45℃、圧力5.0MPaの条件でシート状に押し出し、厚み3.0mmの押出体2を作製した。
作製したシート状の押出体1及び2を、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が約2/1/2となるように)、積層して積層体を作製し、該積層体を60℃に加熱したカレンダーロールにより圧力35.0MPaの条件でカレンダー掛けして、複層ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。得られた複層ポリテトラフルオロエチレンフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ100μm、平均幅250mm、比重1.45の複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。
なお、押出体及びポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムの厚みは、下記のように測定した。
【0074】
−押出体の厚み測定−
押出体を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立S−4700型、日立製作所製)により断面観察を行うことで、該押出体の膜厚を測定した。
【0075】
−複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムの厚み測定−
複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立S−4700型、日立製作所製)により断面観察を行うことで、該押出体の膜厚を測定した。
【0076】
−半加熱フィルムの作製(非対称加熱工程)−
得られた複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムの一方の面を、338℃に保温したロール(表面材質:SUS316)で26秒間加熱して、半加熱フィルムを作製した。
【0077】
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製(延伸工程)−
得られた半加熱フィルムを200℃にて長手方向に3倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、両端をクリップで挟み、200℃で幅方向に3倍に延伸した。その後、360℃で熱固定を行った。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。得られたポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の面積延伸倍率は、9.0倍であった。
得られたポリテトラフルオロエチレン微孔性膜における各層の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が連続的乃至非連続的に変化する複数の孔部を有することは、各微孔性膜を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立S−4700型、日立製作所製)により断面観察を行うことにより確認した。実施例2〜6についても同様に確認した。
【0078】
(実施例2)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/2となるように)、積層して積層体を作製する代わりに、押出体1と押出体2とを、厚み(押出体1/押出体2)が12mm/3mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2)が4/1となるように)、積層して積層体を作製し、実施例1において、得られた複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを、338℃に保温したロール(表面材質:SUS316)で26秒間加熱する代わりに、押出体2側の面をタングステンフィラメント内蔵のハロゲンヒーターで近赤外線により、フィルム表面温度が340℃で1分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0079】
(実施例3)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/2となるように)、積層して積層体を作製する代わりに、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/3.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/1となるように)、積層して積層体を作製した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。なお、非対称加熱工程における加熱面は、厚み3.0mmの押出体1側とした。
【0080】
(実施例4)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/2となるように)、積層して積層体を作製する代わりに、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が12.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/0.5/1となるように)、積層して積層体を作製した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。なお、非対称加熱工程における加熱面は、厚み6.0mmの押出体1側とした。
【0081】
(実施例5)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、高結晶性ポリマーとしてポリテトラフルオロエチレンを用いる代わりに、高結晶性ポリマーとして旭硝子社製CD123(結晶化度98.7%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0082】
(実施例6)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、低結晶性ポリマーとしてダイキン工業社製F205を用いる代わりに、低結晶性ポリマーとしてダイキン工業社製F201(結晶化度93.1%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0083】
(比較例1)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、ポリテトラフルオロエチレン複層未加熱フィルムの非対称加熱処理
を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリテトラフルオロエチレン
微孔性膜を作製した。
【0084】
(比較例2)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚み(押出体1/押出体2/押出体1)が6.0mm/3.0mm/6.0mmとなるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/2となるように)、積層して積層体を作製する代わりに、押出体1と押出体2とを、厚み(押出体2/押出体1)が12.0mm/3.0mm(厚み比(押出体2/押出体1)が4/1)となるように、積層して積層体を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。なお、非対称加熱工程における加熱面は、押出体1側とした。
【0085】
(比較例3)
<微孔性膜の作製>
実施例1において、押出体1と押出体2とを、押出体1/押出体2/押出体1の順に、厚みが(押出体1:6.0mm/3.0mm/6.0mm)となるように(厚み比(押出体1/押出体2/押出体1)が2/1/2となるように)、積層して積層体を作製する代わりに、押出体1と押出体2とを、押出体2/押出体1/押出体2の順に、厚みが(押出体2:9.0mm/押出体1:3.0mm/押出体2:3.0mm)となるように(厚み比(押出体2/押出体1/押出体2)が3/1/1となるように)、積層して積層体を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
なお、非対称加熱工程における加熱面は、厚み3.0mmの押出体1側とした。
【0086】
(参考例1)
<微孔性膜の作製>
−予備成形体の作製−
高結晶性ポリマーとしてのポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「F106」、結晶化度98.5%)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)23質量部を加えた。これをペースト1とした。
低結晶性ポリマーとしてのポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「F205」、結晶化度93.7%)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)23質量部を加えた。これをペースト2とした。
次に、ペースト1と、ペースト2とを、ペースト1/ペースト2/ペースト1の順に、厚み比(ペースト1/ペースト2/ペースト1)が2/1/2となるように、圧力:0.5MPa、圧力の付与時間:10秒間、最高到達温度:36℃、敷き詰め加圧し、3層構造の予備成形体とした。
【0087】
−未加熱フィルムの作製−
作製した予備成形体を、ペースト押し出し金型の角型シリンダー内に挿入し、温度45℃、圧力5.0MPaの条件でシート状に押し出し、シート状に複層ペースト押出しを行った。これを、60℃に加熱したカレンダーロールにより圧力35.0MPaの条件でカレンダー掛けして、複層ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。得られた複層ポリテトラフルオロエチレンフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚さ100μm、平均幅250mm、比重1.45の複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムを作製した。
【0088】
−半加熱フィルムの作製−
得られた複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルムの一方の面を、340℃に保温したロール(表面材質:SUS316)で30秒間加熱して、半加熱フィルムを作製した。
【0089】
−ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の作製−
得られた半加熱フィルムを300℃にて長手方向に3倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、両端をクリップで挟み、300℃で幅方向に3倍に延伸した。その後、380℃で熱固定を行った。得られた延伸フィルムの面積延伸倍率は、9.0倍であった。以上により、実施例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0090】
(比較例4)
<微孔性膜の作製>
参考例1において、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(ペースト1/ペースト2/ペースト1)が2/1/2となるように、敷き詰め加圧し、3層構造の予備成形体とする代わりに、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(ペースト2/ペースト1)が4/1となるように、敷き詰め加圧し、2層構造の予備成形体とした以外は、参考例1と同様にして、比較例4のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。なお、非対称加熱工程における加熱面は、ペースト1側とした。
【0091】
(比較例5)
<微孔性膜の作製>
参考例1において、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(ペースト1/ペースト2/ペースト1)が2/1/2となるように、敷き詰め加圧し、3層構造の予備成形体とする代わりに、ペースト1と、ペースト2とを厚み比(おもて面からペースト2/ペースト1/ペースト2)が3/1/1となるように、敷き詰め加圧し、3層構造の予備成形体とした以外は、参考例1と同様にして、比較例5のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
比較例5では、低結晶性ポリマー層が外側に設けられているため、微孔性膜が引き裂けると共に、カレンダーロールにくっつくという問題が発生した。
なお、非対称加熱工程における加熱面は、厚みの薄いペースト2側とした。
【0092】
次に、作製した実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各微孔性膜について、以下のようにして、「厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された」ことの確認、各層の膜厚の測定、非加熱面側の層の孔径の測定、濾過テスト、流量テスト、強度テスト、カール性テストを行った。
【0093】
<「厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された」ことの確認>
前記「厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された」ことは、各微孔性膜を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立S−4700型、日立製作所製)により断面観察することにより確認した。
【0094】
<各層の膜厚の測定>
実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各微孔性膜を凍結割断し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立S−4700型、日立製作所製)により断面観察を行うことで、各層の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
なお、各層の界面において、高結晶性ポリマー及び低結晶性ポリマーの両方を含む中間層が存在する場合は、該中間層は、高結晶性ポリマーを含む層、及び、低結晶性ポリマーを含む層のいずれにも含まれないものとした。
【0095】
【表1】

表1において実施例1〜6と、参考例1及び比較例4〜5とを比較することにより、本発明の製造方法によれば、押出体の厚さを制御することにより、目的の厚み比の積層体からなる結晶性ポリマー微孔性膜を精度よく製造することができることが分かる。
【0096】
<非加熱面側の層の孔径の測定>
実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各微孔性膜について、パームポロメータ(PMI社製)を用いて非加熱面側の層の最大頻度の孔径の測定を行った。結果を表2に示す。
【0097】
<濾過テスト>
次に、実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各結晶性ポリマー微孔性膜について、濾過テストを行った。まず、金コロイド(平均粒子サイズ0.1μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧10kPaとして濾過を行った。結果を表2に示す。
【0098】
<流量テスト>
次に、実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各結晶性ポリマー微孔性膜について、流量テストを行った。具体的には、IPAを差圧100kPaで流した時の単位面積(m)・単位時間(min)あたりの透過量を流量(L・m−2・min−1)とした。結果を表2に示す。
【0099】
<強度テスト>
次に、実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各結晶性ポリマー微孔性膜について、強度テストを行った。メンディングテープを用いた剥離試験を行った。両面とも剥離・繊維付着等なかったものは○、片面のみ剥離・繊維付着等あったものは△、剥離・繊維付着等あったものは×とした。結果を表2に示す。
【0100】
<カール性テスト>
次に、実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1の各結晶性ポリマー微孔性膜について、カール性テストを行った。各微孔性膜を平坦な場所に静置し、目視評価によりカール性を評価し、カールなしの場合を○、カールが少なく、平坦部分に置いた時にカールがなくなるような場合は△、平坦部分においてもカールしてしまう場合を×とした。結果を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
また、表2の結果から、比較例1は、225mL/cmで実質的に目詰まりを起こした。また、比較例2〜5は、1,000mL/cmに満たず実質的に目詰まりを起こした。これに対し、実施例1〜6では、それぞれ1,220mL/cm、1,435mL/cm、1,256mL/cm、1,460mL/cm、1,557mL/cm、1,698mL/cm、まで濾過が可能であり、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることにより濾過寿命が大幅に改善されることが分かった。
【0103】
また、表2の結果から、比較例1は孔径が大きいため、高流量であるが、比較例2〜5は、1L・m−2・min−1以下と低流量である。それに対し、孔径がほぼ同等である実施例1〜6は比較例2〜5よりも数倍以上高流量であり、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることにより高流量化を図ることができることが分かった。
【0104】
また、表2の結果から、低結晶性ポリマー層が表面に存在する実施例2、比較例2はテープへの繊維付着があり、両面に低結晶性ポリマー層が存在する比較例3及び5、は、両面とも繊維付着があり強度が弱いと言える。一方で、実施例1、3〜6、比較例1に関しては剥離・繊維付着等なく、強度が強く、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることにより高強度化を図ることができることが分かった。
【0105】
また、表2の結果から、2層積層膜についてはカールが見受けられたが、3層積層膜に関してはカールしておらず、実施例1及び3〜5の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることによりカール防止を図ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、長期間にわたって効率よく微粒子を捕捉することができ、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過などに幅広く用いることができる。また、電線被覆材料としても用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
4 第1層
5 第2層
8 下金型
10 予備成形体
15 複層ポリテトラフルオロエチレン未加熱フィルム(未加熱フィルム積層体)
101、102、103 結晶性ポリマー層
101a、102a、103a 孔部
101b、102b、103b 孔部
21 一次側サポート
22 精密ろ過膜
23 二次側サポート
24 上部エンドプレート
25 下部エンドプレート
26 フィルターエレメントカバー
27 フィルターエレメントコア
28 Oリング
29 フィルターメディア
30 フィルターエレメント
31 ハウジングカバー
32 ハウジングベース
33 液入口ノズル
34 液出口ノズル
35 エアーベント
36 ドレン
37 溶着部
111 外周カバー
112 膜サポート
113 精密ろ過膜
114 膜サポート
115 コアー
116a、116b エンドプレート
117 ガスケット
118 液体出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結晶性ポリマーを含む層と、第2の結晶性ポリマーを含む層とが積層され、厚み方向に貫通した複数の孔部が形成された2層以上の積層体を有し、前記第1の結晶性ポリマーの結晶化度が前記第2の結晶性ポリマーの結晶化度よりも高く、前記第1の結晶性ポリマーを含む層の最大厚みが前記第2の結晶性ポリマーを含む層の最大厚みよりも厚く、前記積層体における少なくとも1層が、前記積層体の厚み方向における少なくとも一部において、平均孔径が連続的乃至非連続的に変化する複数の孔部を有する結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法であって、
前記第1の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第1の予備成形体を成形し、前記第2の結晶性ポリマーを金型内に敷き詰め、加圧して第2の予備成形体を成形し、前記第1及び第2の予備成形体を押出成形して第1及び第2の押出体をそれぞれ成形し、前記第1及び第2の押出体を積層して積層体を形成し、該積層体を圧延する積層体形成工程と、
前記積層体の一方の面を加熱して、該積層体の厚み方向に温度勾配を形成する非対称加熱工程と、
前記積層体を延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項2】
積層体形成工程において、加圧時における圧力が0.01MPa〜100MPaである請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項3】
積層体形成工程において、加圧時における圧力の付与時間が0.01秒間〜1000秒間である請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項4】
積層体形成工程が、加圧時において、5℃〜35℃の温度まで加熱することを含む請求項1から3のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項5】
積層体形成工程おいて、押出成形時における温度が15℃〜200℃である請求項1から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項6】
積層体形成工程おいて、押出成形時における圧力が0.001MPa〜1000MPaである請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項7】
積層体形成工程おいて、圧延時における温度が19℃〜380℃である請求項1から6のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項8】
積層体形成工程おいて、圧延時における圧力が0.001MPa〜1000MPaである請求項1から7のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項9】
非対称加熱工程において、加熱温度が322℃〜361℃である請求項1から8のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項10】
延伸工程において、積層体の長手方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍である請求項1から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項11】
延伸工程において、積層体の幅方向の延伸倍率は、1.2倍〜50倍である請求項1から10のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項12】
第1の押出体の厚みが、第2の押出体の厚み以上である請求項1から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項13】
第1の結晶性ポリマーの結晶化度が、第2の結晶性ポリマーの結晶化度の1.02倍以上である請求項1から12のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項14】
第1の結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1から13のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項15】
第2の結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン及びポリテトラフルオロエチレン共重合体のいずれかである請求項1から14のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項17】
請求項16に記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルター。
【請求項18】
結晶性ポリマー微孔性膜における孔部の平均孔径の大きな側の面をフィルターの濾過面に使用する請求項17に記載の濾過用フィルター。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−212605(P2011−212605A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83830(P2010−83830)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】