結晶性抗ヒトIL−12抗体
本発明は抗hIL−12抗体を結晶化させるためのバッチ晶析方法として、前記抗体の工業的規模の生産を可能にする方法、前記方法により得られた抗体結晶、前記結晶を含有する組成物並びに前記結晶及び組成物の使用方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体を結晶化させるためのバッチ晶析方法として、抗体の工業的規模の生産を可能にする方法、特に開示する方法により得られるような抗体結晶、前記結晶を含有する組成物並びに前記結晶及び組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
a)抗体結晶
現在100種類を超えるモノクローナル抗体(mAb)が臨床試験フェーズ2又は3で検討中であり、mAb市場は最も有望なバイオ医薬品市場の1つであるとみなされる。これらの薬剤は多くの場合には100mgを上回る用量を単回送達するので、安定性、安全性及び患者コンプライアンスを満足する適切な製剤化ストラテジーを見出すことが急務である。しかし、高濃度液体mAb製剤は粘度が高いため、患者に優しい細い針で注射しにくい。更に、mAb分子がこのような高濃度で凝集する傾向は適度な濃度の溶液に比較して指数的に増加する。これは安全性及び安定性要件の点で許容できない。
【0003】
従って、高mAb用量の送達は大容量に限られるが、その場合には一般に輸液により送達しなければならない。この投与方法はコストがかかり、患者のコンプライアンスを著しく悪化させる。
【0004】
従って、医薬的に適用可能な低容量の皮下注射用mAb結晶懸濁液が非常に望ましい。理論的には、結晶格子は剛性であり、蛋白質構造内の運動を妨げるので、mAb完全性に影響を与える分解経路は著しく減速するはずである。更に、高濃度結晶懸濁液を液体製剤に比較すると、速度の増加は著しく少ないと考えられる。持続放出に関して、患者の体内に入るとゆっくりと溶解するように蛋白質結晶を作製又は改変することは可能であると思われる。この結果、mAb構造を損なう賦形剤とプロセスの多用が避けられるので、徐放製剤の非常に優れた送達方法となろう。
【0005】
原薬としての蛋白質結晶の使用には大きな将来性があるが、このストラテジーを系統的に評価する試みは殆ど行われていない。
【0006】
例外としてよく知られているのはインスリンであり、数十年前に結晶化に成功している。今日、インスリンの結晶懸濁液の使用は詳細に記載されており、安定な長時間作用型製剤が市場に定着している。インスリン結晶の開発と他の全蛋白質の結晶化の間のずれは、規則的インスリン凝集物が膵臓で天然に形成されるという事実と関係があると思われる。即ち、インスリンを過剰の亜鉛イオンと接触させると、インスリン結晶が容易に得られる。大半の他の蛋白質は結晶よりも不規則沈殿を形成する傾向があるため、蛋白質の結晶化条件を見出すのは時間のかかる厄介な作業である。
【0007】
X線回折分析用として蛋白質結晶を採取することに大きな関心が寄せられているが、原則として全蛋白質は挙動が異なるため、適切な結晶化条件を見出す作業は依然として経験科学である。今日までに、選択蛋白質に有効な結晶化条件を確実に予測できる一般原理はみつかっていない。従って、その後に予定されている目的用途に関係なく、所定の蛋白質の結晶を得ることは常に「隘路」であると言われている。
【0008】
抗体は分子の柔軟性により、特に結晶化が難しい。一方、免疫グロブリン結晶の例は古くから知られている。免疫グロブリン結晶の最初の例は150年前に英国の物理学者ヘンリー・ベンス・ジョーンズ(Henry Bence Jones)により記載され、彼は骨髄腫患者の尿から異常Ig軽鎖二量体の結晶を単離している(Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62)。このような異常Igはそれ以来、ベンス・ジョーンズ蛋白質と呼ばれている。1938年には、骨髄腫患者の血清に由来する明白な異常Igの自然結晶化が記載されている(von Bonsdorf,B.et al.(1938)Folia Haematologia 59:184−208)が、これはIg重鎖オリゴマー(MW200kDa)と見受けられる。
【0009】
更に30年後に、同じく主に骨髄腫患者から単離された(2本の重鎖が2本の軽鎖に結合した)正常構造の結晶ヒト免疫グロブリンが記載されている(Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7)。デイビーズ(Davies)らはX線結晶構造解析を使用して「Dob」と呼ばれる無傷のヒト骨髄腫抗体の構造を最初に特性決定し(Terry,W.D.et al.(1968)Nature 220(164):239−41)、1971年にその三次元構造を決定した(Sarma,V.R.et al.(1971)J.Biol.Chem.246(11):3753−9)。彼らの先駆的業績に続き、IgG「Kol」(Huber,R.et al.(1976)Nature 264(5585):415−20)、IgG「Mcg」(Rajan,S.S.et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99)、及びイヌリンパ腫IgG2a(Harris,L.J.et al.(1992)Nature 360(6402):369−72)の結晶構造が得られた。
【0010】
免疫グロブリンの結晶は再溶解後もその顕著な免疫活性を維持する。1968年にニソノフ(Nisonoff)らは容易に結晶化されるウサギ抗p−アゾベンゾエート抗体「X4」について報告している(Nisonoff,A.et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 32:89−93)。抗体X4は結晶化前と結晶の再溶解後に詳細に特性決定されている。[125I]−p−ヨードベンゾエートは再溶解後のX4と特異的に強く結合することが判明し、再溶解後の結晶は更に未精製ウサギ血清に特徴的な複数の特異的オクタロニー免疫拡散反応も示した(Nisonoff et al.,1968)。コンネル(Connell)らは低温で血清から自然に結晶化する「Tem」と呼ばれるヒト骨髄腫γ免疫グロブリン−1κ(IgG−K)について記載している(Connell,G.E.et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41)。Tem結晶は形が整っていることが判明し、菱面対称であった。Temを含有する血清はアガロース免疫拡散法により詳細に特性決定されている。Tem結晶の再溶解溶液の電気泳動と免疫拡散によると、この結晶は低温沈殿法により血清から得られる物質及び単離骨髄腫蛋白質と一致することが判明した(Connell et al.,1973)。
【0011】
ミルズ(Mills)らは1983年にアルブミンに対するヒトモノクローナル抗体に起因する特殊な結晶クリオグロブリン血症について報告している(Mills,L.E.et al.(1983)Annals of Internal Med 99(5):601−4)。ここでは、非常によく似た立方結晶が2人の患者から単離された。結晶の再溶解後に電気泳動と免疫電気泳動を行った処、結晶は1:2の比でモノクローナルIgG−λとヒト血清アルブミンの2つの蛋白質成分から構成されることが分かった(Jentoft,J.E.et al.(1982)Biochem.21(2):289−294)。元の結晶の溶解後にカラムクロマトグラフィーによりこれらの成分を分取規模で分離した。分離したどちらの成分もそのままでは結晶化しなかったが、組換え後に元の二元複合体が再形成された後、結晶化した。再溶解後に分離したIgGとそのFabフラグメントの顕著な沈降特性とヒト血清アルブミンに対する免疫反応性を更に検討した結果、再溶解後に分離した2成分の再会合体は本質的に免疫性であること、即ち結晶抗体は一旦再溶解しても(ヒト血清アルブミンに対する)その天然の高度に特異的な結合特性を維持することが判明した(Mills et al.,1983)。
【0012】
最近、マーゴリン(Margolin)らは結晶抗体の潜在的治療用途について報告している(Yang,M.X.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939)。彼らは治療用モノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))を結晶化できることを発見した(Shenoy,B.et al.(2002)PCT国際出願WO/2002/072636,(Altus Biologies Inc.,USA).173pp.)。結晶トラスツズマブ懸濁液はマウス腫瘍モデルで治療効果を示したため、結晶トラスツズマブは生物活性を維持することが実証された(Yang et al.,2003)。
【0013】
b)結晶化技術
各種蛋白質の結晶化は規定方法又はアルゴリズムを使用して首尾よく実施することができない。確かに、世界的に著名な蛋白質結晶化の専門家であるエイ・マクファーソン(A.McPherson)が述べているように、過去2、30年間には目覚ましい技術進歩があった。マクファーソンは巨大分子の結晶化のための方策、ストラテジー、試薬及び装置について詳細に記載している(McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159)。しかし、彼は当業者がそれなりに成功を見込んで実際に所定の巨大分子を結晶化させることができるようにするための方法については記載していない。マクファーソンは例えば次のように述べている。「どのような手順であれ、分子間の特異的結合相互作用を助長及び促進し、一旦形成された相互作用を安定化させるために、溶媒と溶質の両者の系のパラメーターを改良及び最適化する努力を惜しんではならない。問題のこの後者態様は一般に結晶化させる特定蛋白質又は核酸の特定の化学的及び物理的性質に依存する。」。
【0014】
新規該当蛋白質を選択し、明確な処理工程を適用し、それにより所望の結晶を取得するためのアルゴリズムが存在しないことは蛋白質結晶化分野の当業者に広く認められている。
【0015】
特定蛋白質に潜在的に適切な結晶化条件をマイクロリットル規模でスクリーニングすることが可能な数種類のスクリーニングシステムが市販されている(例えばHampton 1及び2,Wizzard I及びII)。しかし、このようなスクリーニングシステムで良い結果が得られたとしても、より大規模の工業的に適用可能なバッチ規模の結晶化を必ずしも成功できるとは限らない。マイクロリットルサイズの結晶化試験を工業的寸法に転換するのは困難な作業であると言われている(Jen,A.,Merkle,H.P.(2001)Pharm.Res.18,11,1483参照)。
【0016】
バルドック(Baldock)らは結晶化条件の初期スクリーニング法としてマイクロバッチ法と蒸気拡散法の比較について報告している(Baldock,P.et al.(1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174)。1組の結晶化溶液を使用して6種類の市販蛋白質をスクリーニングしている。スクリーニングは最も一般的な蒸気拡散法と、新規蒸発技術を含むマイクロバッチ晶析法の3種類の変形を使用して実施された。確認された58種類の結晶化条件のうち、43種類(74%)はマイクロバッチ法により確認され、41種類(71%)は蒸気拡散法により確認された。26種類の条件が両方の方法により確認され、マイクロバッチ法を全く使用しなかった場合には17種類(29%)は確認されなかった。このことから明らかなように、初期結晶化スクリーニングで最も一般的に使用されている蒸気拡散法で必ずしも良い結果が得られる訳ではない。
【0017】
c)抗ヒトIL−12抗体結晶
ヒトIL−12は免疫及び炎症反応を伴う数種類の疾患(例えば多発性硬化症、クローン病及び乾癬)に関連する病理に重要な役割を果たす。従って、このようなヒトIL−12関連疾患の適切な治療方法が大いに必要とされている。1つの有望な治療アプローチは医薬有効用量の抗ヒトIL−12抗体を投与する方法である。
【0018】
各種ヒト疾患におけるヒトIL−12の役割により、IL−12活性を阻害又は抑制するように治療ストラテジーがデザインされている。特に、IL−12と結合してこれを中和する抗体がIL−12活性を阻害する手段として求められている。最初期の抗体には、IL−12を免疫したマウスのリンパ球から作製したハイブリドーマにより分泌されるマウスモノクローナル抗体(mAb)があった(例えばWO97/15327参照)。しかし、これらのマウスIL−12抗体は血清半減期が短く、所定のヒトエフェクター機能を誘発できず、マウス抗体に対する望ましくない免疫反応をヒトに誘発する(「ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応)等のマウス抗体をヒトに投与することに伴う問題によりそのインビボ使用が制限されている。
【0019】
一般に、完全マウス抗体をヒトで使用することに伴う問題を解決しようとする場合には、抗体をより「ヒト様」にするような遺伝子操作が行われている。例えば、抗体鎖の可変領域がマウスに由来し、抗体鎖の定常領域がヒトに由来するキメラ抗体が作製されている。しかし、これらのキメラヒト化抗体は依然として所定のマウス配列を保持しているため、特に長期間投与すると、望ましくない免疫反応であるヒト抗キメラ抗体(HACA)反応を誘発する恐れがある。
【0020】
米国特許第6,914,128号はヒト抗体、好ましくはヒトインターロイキン−12(hIL−12)と特異的に結合する組換えヒト抗体を開示している。同特許に開示されている好ましい抗体はhIL−12に対して親和性をもち、hIL−12活性をインビトロ及びインビボで中和する。これらの抗体又は抗体部分は例えばhIL−12活性が有害に作用する疾患に罹患したヒト対象においてhIL−12を検出し、hIL−12活性を阻害するために有用である。同発明の組換えヒト抗体を発現させるための核酸、ベクター及び宿主細胞と、組換えヒト抗体の合成方法も含まれる。結晶形態の抗hIL−12抗体又はその製造方法は米国特許第6,914,128号に特に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2002/072636号
【特許文献2】国際公開第97/15327号
【特許文献3】米国特許第6,914,128号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62
【非特許文献2】von Bonsdorf,B.et al.(1938)Folia Haematologia 59:184−208
【非特許文献3】Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7
【非特許文献4】Terry,W.D.et al.(1968)Nature 220(164):239−41
【非特許文献5】Sarma,V.R.et al.(1971)J.Biol.Chem.246(11):3753−9
【非特許文献6】Huber,R.et al.(1976)Nature 264(5585):415−20
【非特許文献7】Rajan,S.S.et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99
【非特許文献8】Harris,L.J.et al.(1992)Nature 360(6402):369−72
【非特許文献9】Nisonoff,A.et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 32:89−93
【非特許文献10】Connell,G.E.et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41
【非特許文献11】Mills,L.E.et al.(1983)Annals of Internal Med 99(5):601−4
【非特許文献12】Jentoft,J.E.et al.(1982)Biochem.21(2):289−294
【非特許文献13】Yang,M.X.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939
【非特許文献14】McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159
【非特許文献15】Jen,A.,Merkle,H.P.(2001)Pharm.Res.18,11,1483
【非特許文献16】Baldock,P.et al.(1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明が解決しようとする課題は抗IL−12抗体に適した晶析条件、特にバッチ晶析条件を開発し、工業的な抗体結晶生産に適した容量に適用可能な晶析プロセス条件を確立することである。同時に、このような抗体の医薬品としての利用可能性に悪影響を与える恐れのある毒性物質を使用しない晶析方法を確立する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記問題は、生理的に許容可能なポリアルキレンポリオールを結晶化誘導剤として利用することによりマイクロリットル規模を上回るバッチ晶析容量で完全抗ヒトIL−12抗体の結晶を得ることが可能であるという知見により意外にも解決された。
【0025】
第1の態様において、本発明は抗ヒトIL−12抗体を結晶化するためのバッチ晶析方法として、
a)例えば好ましくは溶解形態で存在する抗体の水溶液を溶解形態の結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含有する結晶化水溶液と混合するか、あるいは固体形態の結晶化剤を加えることにより、以下により詳細に定義するようなポリアルキレンポリオール型の少なくとも1種の結晶化剤、例えばポリアルキレングリコールと混合したIL−12抗体の水溶液を準備する段階と;
(b)抗体の結晶が形成されるまで水性結晶化混合物を温置する段階を含む方法を提供する。
【0026】
別の実施形態によると、本発明の方法は結晶化を開始又は促進するために段階a)で得られた結晶化混合物に適量の既存抗ヒトIL−12抗体結晶を種晶として添加できるように実施してもよい。
【0027】
本発明の晶析方法は一般に約pH4から約6.5、特に約4.5から約6.0、約5.0から約5.8又は約5.3から約5.7の範囲の水性結晶化混合物のpH、例えば5.4、5.5又は5.6で実施される。
【0028】
更に、水性結晶化混合物には少なくとも1種の緩衝液を加えることができる。緩衝液は主成分として酢酸塩成分、特にそのアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩(例えば酢酸ナトリウム)を含むことができる。酸、特に酢酸を加えることにより塩を必要なpHに調整する。晶析方法の好ましい一実施形態において、水性結晶化混合物中の緩衝液濃度(総酢酸塩)は約0から約0.5M又は約0.02から約0.5M、例えば約0.05から約0.3M又は約0.07から約0.2M又は約0.09から約0.12Mである。
【0029】
「ポリアルキレンポリオール型の結晶化剤」について以下により詳細に定義する。
【0030】
当業者に自明の通り、この用語は広義に理解すべきであり、ポリアルキレンポリオールとその誘導体を含む。
【0031】
本発明により使用される「ポリアルキレンポリオール」とは直鎖又は分岐鎖、特に直鎖のポリC2−C6−アルキレンポリオールである。ポリエーテルは2から6個、2から4個、特に2又は3個の好ましくは隣接するヒドロキシル基と、好ましくは直鎖炭素主鎖を形成する2から6個、特に2、3又は4個の炭素原子をもつ少なくとも1種の多官能性脂肪族アルコールから形成される。非限定的な例はエチレン−1,2−ジオール(グリコール)、プロピレン−1,2−ジオール、プロピレン−1,3−ジオール、n−ブチレン−1,3−ジオール及びn−ブチレン−1,4−ジオールである。特に好ましいジオールはグリコールである。
【0032】
本発明のポリアルキレンポリオールは単一種のポリオールから構成されるものでもよいし、少なくとも2種の異なるポリオールの混合物から構成されるものでもよく、ランダムに重合したものでも、ブロックコポリマーとして存在するものでもよい。
【0033】
更に、「ポリアルキレンポリオール」なる用語はその誘導体も含む。非限定的な例はアルキルエステル及びエーテル、特にモノアルキルエーテル及びジアルキルエーテルである。「アルキル」とは特に直鎖又は分岐鎖C1−C6−アルキル残基として定義され、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル及びn−ヘキシルが挙げられる。
【0034】
本発明により使用されるポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコールは更に広範囲の分子量により特徴付けられる。数又は重量平均分子量として表した分子量範囲は一般に400から10,000、例えば1,000から8,000、2,000から6,000、3,000から6,000又は3,200から6,000、例えば3,350から6,000、3,350から5000又は3,800から4,200、特に約4,000である。
【0035】
特定ポリアルキレンポリオールはポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)と対応するランダム又はブロックコポリマーである。適切なポリオールの特定例はPEG2,000、PEG3,000、PEG3,350、PEG4,000、PEG5,000及びPEG6,000である。
【0036】
特に、結晶化混合物中のポリアルキレンポリオール濃度、特にポリエチレングリコール濃度は約5から約30%(w/v)、例えば約7から約15%(w/v)又は約9から約16%(w/v)又は約10から約14%(w/v)又は約11から約13%(w/v)である。平均分子量約4,000のポリエチレングリコールを結晶化混合物中に約11から約13%(w/v)の濃度で使用することが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、抗体蛋白質溶液と結晶化溶液を約1:1の比で混合する。従って、元の結晶化溶液中の緩衝剤/結晶化剤のモル濃度は結晶化混合物中の濃度の約2倍となる。
【0038】
一般に、上記晶析方法は約1mlから約20000リットル、又は1mlから約15000リットル、又は1mlから約12000リットル、又は約1mlから約10000リットル、又は1mlから約6000リットル、又は1mlから約3000リットル、又は1mlから約1000リットル、又は1mlから約100リットル、例えば約50mlから約8000ml、又は約100mlから約5000ml、又は約1000mlから約3000ml、又は約1リットルから約1000リットル、又は約10リットルから約500リットルの範囲のバッチ容量で実施される。
【0039】
更に、本発明の晶析方法は以下の付加的な結晶化条件のうちの少なくとも1つを満足するように実施することができる。
a)温置を約1時間から約250日間又は1から約250日間又は13から約250日間、例えば約1から約30日間又は約2から10日間実施する;
b)温置を約0℃から約50℃、例えば約4℃から約37℃又は約15℃から約25℃の温度で実施する;
c)結晶化混合物中の抗体濃度(即ち蛋白質濃度)を約0.5から280mg/ml又は約1から200mg/ml又は1から100mg/ml、例えば1.5から20mg/ml、特に約2から15mg/ml又は5から10mg/mlの範囲とする。蛋白質濃度は標準蛋白質定量法に従って測定することができる。
【0040】
好ましい一実施形態では、例えばポリエチレングリコールを結晶化剤とし、温置を約20℃の温度と約5から10mg/mlの抗体濃度で約13から60日間実施するように晶析方法を実施する。
【0041】
特に好ましい方法によると、以下の結晶化混合物の条件下で結晶化を実施する。
ポリアルキレングリコール:10から15%(w/v)PEG4000
緩衝液:0から0.3M酢酸ナトリウム(総酢酸塩)
pH:5.3から5.8
抗hIL−12濃度:3から10mg/ml
温度:18から24℃
バッチ容量:1から100リットル
撹拌:なし
期間:約1から60日間。
【0042】
上記に概説したような結晶化混合物は一般に溶液又は固体としての結晶化剤を蛋白質溶液に加えることにより得られる。どちらの溶液も緩衝溶液とすることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。元の結晶化溶液は蛋白質溶液で「希釈」されるので、元の結晶化溶液中の結晶化剤濃度と緩衝液モル濃度は一般に結晶化混合物中よりも高い。
【0043】
別の実施形態において、本発明の晶析方法は得られた結晶を乾燥する段階を更に含むことができる。適切な乾燥方法としては蒸発乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、流動層乾燥、噴霧凍結乾燥、準臨界乾燥、超臨界乾燥及び窒素ガス乾燥が挙げられる。
【0044】
別の実施形態において、本発明の晶析方法は例えば遠心、透析濾過、限外濾過又は他の一般に使用されている緩衝液交換技術により結晶化母液を別の液体又は緩衝液、例えば結晶化に使用するものとは異なる約300から8000ダルトンの範囲の分子量のポリアルキレンポリオール又は前記ポリオールの混合物を含有する液体又は緩衝液と交換する段階を更に含むことができる。別の液体又は緩衝液は、結晶の「天然」結晶化母液とは異なり、形成される結晶の溶解を妨げる「人工母液」と言うこともできる。
【0045】
本発明は更に上記晶析方法により取得可能な抗hIL−12抗体の結晶及び一般に抗hIL−12抗体の結晶にも関する。
【0046】
本発明の結晶は各種形状をとることができる。形状は一般に「剣状」と言う。特に、この用語は「板状」、「針状」又は「針束状」(ウニ状)も含む。例えば、本発明の結晶は約2から500μm又は約100から300μmの最大長(l)と約1から100の長さ/直径(l/d)比をもつ針状形態により特徴付けることができる。このような針状結晶の高さはほぼ直径の寸法内である。
【0047】
本発明の板状結晶は以下の寸法:約2から500μm又は約100から300μmの最大長(l)と約1から100の長さ/直径(l/d)比とすることができる。このような板状結晶の高さは直径よりも著しく小さい。
【0048】
本発明の針束状結晶は以下の寸法:約2から200μm又は約10から100μmの最大長(l)と約1から3の長さ/直径(l/d)比とすることができる。
【0049】
結晶はポリクローナル抗体から得ることもできるが、モノクローナル抗体から得ることが好ましい。
【0050】
特に、抗体は非キメラ又はキメラ抗体、ヒト化抗体,非糖鎖付加抗体,ヒト抗体及びマウス抗体から構成される群から選択される。特に、結晶化させる抗体は非キメラヒト抗体であり、場合により抗原結合性及び/又は効力を改善するように更に処理されている。
【0051】
好ましくは、結晶は例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体等のIgG抗体から得られる。特に、抗体はIgG1群の完全抗ヒトIL−12抗体である。
【0052】
好ましい一実施形態において、結晶はいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−10M以下のKdと1×10−3s−1以下のkoff速度定数でhIL−12から解離する単離ヒト抗体から作製される。
【0053】
特に、結晶は配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体から作製することができる。
【0054】
好ましいヒト抗体は例えば米国特許第6,914,128号に記載されている。
【0055】
抗体ABT−874から作製された結晶が最も好ましい。
【0056】
別の実施形態において、本発明は(a)上記に定義したような抗hIL−12抗体の結晶と、(b)抗体結晶を安定に維持する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を含有する固体、液体又は半固体医薬組成物に関する。
【0057】
本発明の別の態様は(a)本明細書に定義する抗hIL−12抗体の結晶と、(b)抗体結晶を封入又は包埋する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を含有する固体、液体又は半固体医薬組成物に関する。組成物には(c)抗体結晶を安定に維持する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を更に添加することができる。更に、封入と包埋を併用してもよい。
【0058】
特に、本発明の組成物は約1mg/mlを上回る抗体結晶濃度とすることができ、特に約200mg/ml以上、例えば約200から約600mg/ml又は約300から約500mg/mlとすることができる。
【0059】
賦形剤は少なくとも1種の場合により生分解性のポリマー担体又は少なくとも1種の油類もしくは脂質担体を含むことができる。
【0060】
ポリマー担体はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマーから構成される群から選択される1種以上のポリマーとすることができる。
【0061】
油類(又は油性液体)は油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、液体トリグリセリド、液体蝋及び高級アルコールから構成される群から選択される1種以上の油類(又は油性液体)とすることができる。
【0062】
脂質担体は脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質から構成される群から選択される1種以上の脂質とすることができる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物起源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0063】
好ましい一実施形態において、組成物は約10から約400又は約50から約300mg/mlの範囲の抗体結晶濃度で上記抗hIL−12抗体結晶を含有する注射用組成物である。
【0064】
別の態様において、本発明は約100mg/mlを上回る抗体結晶濃度、例えば約150から約600mg/ml又は約200から約400mg/mlで上記抗hIL−12抗体結晶を含有する結晶スラリーに関する。
【0065】
本発明は更に有効量の上記完全抗hIL−12抗体結晶又は有効量の上記組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法に関する。非経口経路、経口経路又は注射により組成物を投与することが好ましい。
【0066】
更に、本発明は治療有効量の上記抗体結晶を投与する段階を含む対象におけるhIL−12関連疾患の治療方法に関する。
【0067】
特に、hIL−12関連疾患は関節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎微小血管炎、慢性活動性肝炎、ぶどう膜炎、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺性内分泌不全症候群I型及び多腺性内分泌不全症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラジミア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞動脈炎、原発性硬化性肝炎、特発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣不全、早発卵巣不全、肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、ショーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性ないしルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫性低血糖症、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、NOS腎疾患、糸球体腎炎、腎微小血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、特発性又はNOS男性不妊症、精子自己免疫疾患、多発性硬化症(全サブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病続発性肺高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ぶどう膜炎、原発性血管炎及び白斑から選択される。本発明のヒト抗体及び抗体部分は自己免疫疾患、特にリウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎等の炎症を伴う自己免疫疾患を治療するために使用することができる。
【0068】
更に、本発明は上記hIL−12関連疾患の治療用医薬組成物の製造用としての上記完全抗hIL−12抗体結晶の使用に関する。
【0069】
最後に、本発明は医薬用としての上記抗hIL−12抗体結晶を提供する。
【0070】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点と本発明自体は添付図面を参考に以下の好ましい実施形態の記載から更によく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】結晶化におけるABT−874結晶の光学顕微鏡写真を示す。
【図2】ABT−874結晶の倍率1,250倍のSEMを示す。
【図3】ABT−874結晶の倍率10,000倍のSEMを示す。
【図4】ABT−874結晶の倍率3,227倍のSEMを示す。
【図5】ABT−874結晶の倍率15,000倍のSEMを示す。
【図6A】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。A)ABT−874結晶緩衝液とpI8.4、8.5、10.1及び10.4のpIマーカー。
【図6B】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。B)ABT−874結晶;同一pIマーカー及びpI=9.29の特徴的ABT−874シグナル。
【図6C】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。C)参照標準;同一pIマーカー及びpI=9.29の特徴的ABT−874シグナル。
【図7】実施例28(撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針束状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図8】実施例32(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図9】実施例33(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図10】実施例34b(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図11】ABT−874サンプルの二次導関数IRスペクトルを示す。図11AはBioATRセルにより記録した結晶懸濁液のスペクトルを示す。図11BはAquaSpecセルにより記録した再溶解結晶のスペクトルを示す。実線は結晶ABT−874からのサンプルを表し、破線は液体標準を表す。分かり易くするためにサンプルと標準の間の補正値を挿入した。
【図12】0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に22%PEG4,000緩衝液を加えた中に50mg/mL結晶蛋白質濃度で3カ月間25℃で保存したABT−874サンプルの二次導関数IRスペクトルを示す。図11AはBioATRセルにより記録した結晶懸濁液のスペクトルを示す。図11BはAquaSpecセルにより記録した再溶解結晶のスペクトルを示す。実線は結晶ABT−874からのサンプルを表し、破線は液体標準を表す。分かり易くするためにサンプルと標準の間の補正値を挿入した。
【図13】種晶添加時と非添加時におけるABT−874の40mLバッチ晶析(例えばバッチからのABT−874質量に対して3.25%結晶化蛋白質を種晶材料として使用)。R2は夫々種晶非添加バッチでは0.9711であり、種晶添加バッチでは0.9763である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
A.定義
「バッチ晶析方法」は結晶化させようとする抗体の溶液に好ましくは溶解形態の結晶化剤を含有する結晶化溶液を加える段階を含む。
【0073】
「マイクロスケール晶析方法」は例えば蒸気拡散法に基づくことができ、結晶化剤を含有するリザーバ緩衝液とマイクロリットル範囲の小容量の抗体溶液を混合する段階と;混合物の液滴を密閉容器に入れてリザーバ緩衝液のアリコートの隣に並べる段階と;蒸気拡散により液滴とリザーバの間で溶媒を交換させる段階を含み、この間に液滴の溶媒含量が変化し、適切な結晶化条件に達すると、結晶化が認められる。
【0074】
「結晶化剤」(例えばポリエチレングリコール)は結晶化させようとする抗体の結晶形成を助長する。
【0075】
「結晶化溶液」は溶解形態の結晶化剤を含有する。好ましくは、溶液は水性系であり、即ちその液体成分は主に水から構成される。例えば、80から100重量%又は95から100重量%又は98から100重量%を水から構成することができる。
【0076】
抗体「結晶」は蛋白質の物質の固体状態の1形態であり、第2の固体形態即ち原則的に無秩序な不均質固体として存在する非晶質状態から区別される。結晶は一般に格子と呼ばれる規則的な三次元構造をもつ。抗体結晶は抗体分子の規則的な三次元配列を含む(Giege,R.and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ed.,pp.1−16,Oxford University Press,New York(1999)参照)。
【0077】
本発明により結晶化された「完全」ないし「無傷」の抗hIL−12抗体はその抗原であるヒトIL−12をインビトロ及び/又はインビボで認識してこれと結合することが可能な機能的抗体である。抗体は抗体とその抗原の結合に関連する患者の後続免疫系反応、特に直接細胞傷害作用、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を開始することができる。抗体分子は相互に共有結合した2本の同一の重鎖(各々MW約50kDa)と、各々重鎖の一方と共有結合した2本の同一の軽鎖(各々MW約25kDa)から構成される構造をもつ。4本鎖は典型的「Y」字型モチーフとして配置されている。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVRないしVHと略称する)と重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3領域から構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRないしVLと略称する)と軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1個の領域CLから構成される。VH領域とVL領域は更に相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域と、その間に配置された比較的保存度の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に分けることができる。各VH及びVLはアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3個のCDRと4個のFRから構成される。完全な抗体分子は2個の抗原結合部位をもち、即ち「二価」である。これらの2個の抗原結合部位は単一のhIL−12抗原に特異的であり、即ち抗体は「単一特異性」である。
【0078】
「モノクローナル抗体」はBリンパ球(B細胞)の単一クローンに由来し、同一の抗原決定基を認識する抗体である。完全モノクローナル抗体は2本の完全な重鎖と2本の完全な軽鎖を含む上記典型的分子構造をもつ抗体である。モノクローナル抗体は抗体産生B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合させ、細胞培養で持続的にモノクローナル抗体を産生するB細胞ハイブリドーマを作製することにより生産するのが通例である。例えばファージディスプレイ技術を使用して細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物細胞培養でモノクローナル抗体を発現させる方法;完全ヒトB細胞ゲノムを含み、これを発現するように改変されたウシ、ヤギ、ブタ、ウサギ、ニワトリ又はトランスジェニックマウス等の遺伝子改変動物におけるインビボ生産;あるいはタバコやトウモロコシ等の遺伝子改変植物における生産等の他の生産方法も利用できる。このような全起源に由来する抗hIL−12抗体を本発明により結晶化させることができる。
【0079】
本発明により結晶化させるモノクローナル抗体としては重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定種に由来又は特定抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同であり、重鎖及び/又は軽鎖のその他の部分が別の種に由来又は別の抗体抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同である「キメラ」抗hIL−12抗体が挙げられる。例えば、マウス/ヒトキメラはマウス抗体の可変領域抗原結合部分とヒト抗体に由来する定常領域部分を含む。
【0080】
非ヒト(例えばマウス)抗hIL−12抗体の「ヒト化」形態も本発明に含まれる。ヒト化抗体は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリンの1個以上の相補性決定領域(CDR)又は超可変ループ(HVL)からの残基が所望機能をもつマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等の非ヒト種のCDR又はHVLからの残基で置換されたヒト免疫グロブリンである。抗原結合親和性を改善するためにヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基を対応する非ヒト残基で置換することができる。更に、ヒト化抗体は対応するヒト又は非ヒト抗体部分のどちらにも存在しない残基を含むことができる。抗体効力を更に改善するためにこれらの改変が必要となる場合がある。
【0081】
「ヒト抗体」ないし「完全ヒト抗体」はヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもつ抗体又は組換え生産された抗体である。本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ抗体を意味する。本発明のヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばランダムもしくは部位特異的インビトロ突然変異誘発又はインビボ体細胞突然変異により誘導される突然変異)を例えばCDR、特にCDR3に含むことができる。他方、本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はマウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフトした抗体を意味しない。
【0082】
本明細書で使用する「組換えヒト抗体」なる用語は組換え手段により作製、発現、創製又は単離された全ヒト抗体を意味し、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylor,L.D.et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列のスプライシングを伴う他の任意手段により作製、発現、創製もしくは単離された抗体が挙げられる。このような組換えヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ。しかし、所定実施形態では、このような組換えヒト抗体にインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合にはインビボ体細胞突然変異誘発)するので、組換え抗体のVH領域とVL領域のアミノ酸配列はヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来するが、インビボヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0083】
本明細書で使用する「中和抗体」(又は「hIL−12活性を中和した抗体」)なる用語はhIL−12と結合することによりhIL−12の生物活性を阻害する抗体を意味する。hIL−12の生物活性のこの阻害はhIL−12により誘導される細胞増殖及びhIL−12とhIL−12受容体の結合又はhIL−12により誘導される白血球のインビボ減少等のhIL−12生物活性の1種類以上の指標を測定することによりインビトロ又はインビボで評価することができる。
【0084】
hIL−12生物活性のこれらの指標は当分野で公知の数種の標準インビトロ又はインビボアッセイの1種以上により評価することができる。フィトヘマグルチニン芽細胞及びマウス2D6細胞でhIL−12により誘導される細胞増殖の阻害によりhIL−12活性を中和する抗体の能力を評価することが好ましい。
【0085】
「親和性成熟」抗hIL−12抗体は1個以上の超可変領域の1カ所以上の改変により、親抗体に比較して抗体の抗原親和性が改善された抗体である。親和性成熟抗体は標的抗原に対する親和性値がナノモル又はピコモルとなる。親和性成熟抗体は当分野で公知の方法により生産される。Marks et al.(1992),Bio/Technology 10:779−783はVH及びVL領域シャフリングによる親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発はBarbas et al.(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813;Scier et al.(1995)Gene 169:147−155;Yelton et al.(1995)J.Immunol.155:1994−2004;Jackson et al.(1995)J.Immunol.154(7):3310−9;及びHawkins et al.(1992)J.Mol Biol.226:889−896に記載されている。
【0086】
本明細書で使用する「単離抗体」とは、異なる抗原特異性をもつ他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えばhIL−12と特異的に結合する単離抗体はhIL−12以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。他方、hIL−12と特異的に結合する単離抗体は他の種に由来するhIL−12分子等の他の抗原に対して交差反応性をもつ場合がある。更に、単離抗体は他の細胞材料及び/又は化学薬品を実質的に含まない場合がある。
【0087】
本明細書で使用する「ヒトインターロイキン12」(本明細書ではhIL−12又はIL−12と略称する)なる用語は主にマクロファージと樹状細胞により分泌されるヒトサイトカインを意味する。この用語はいずれもジスルフィド橋と結合した35kDサブユニット(p35)と40kDサブユニット(p40)を含むヘテロダイマー蛋白質を意味する。このヘテロダイマー蛋白質を「p70サブユニット」と言う。ヒトIL−12の構造は更に例えばKobayashi,et al.(1989)J.Exp Med.170:827−845;Seder,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:10188−10192;Ling,et al.(1995)J.Exp Med.154:116−127;Podlaski,et al.(1992)Arch.Biochem.Biophys.294:230−237に記載されている。ヒトIL−12なる用語は標準組換え発現法により作製可能な組換えヒトIL−12(rhIL−12)を意味する。
【0088】
本明細書で使用する「koff」なる用語は抗体が抗体/抗原複合体から解離する解離速度定数を意味する。
【0089】
本明細書で使用する「Kd」なる用語は特定抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する。
【0090】
本発明により結晶化された特定「親」抗hIL−12抗体の「機能的等価物」とは同一の抗原特異性を示すが、アミノ酸レベル又は糖鎖付加レベルで「親」抗体の分子組成と相違する抗体である。相違は単に結晶化条件が本明細書に開示するようなパラメーター範囲内であるという程度でよい。
【0091】
抗体結晶の「封入」とは組込まれる結晶がコーティング材料の少なくとも1層により各々被覆された製剤を意味する。好ましい一実施形態において、このようなコーティング付き結晶は溶解速度を持続させることができる。
【0092】
抗体結晶の「包埋」とは封入の有無に拘わらず、結晶が分散状態で固体、液体又は半固体担体に組込まれた製剤を意味する。このような包埋結晶化抗体分子は担体から制御下で持続的に放出又は溶解させることができる。
【0093】
B.晶析方法
本発明の晶析方法は原則として任意抗hIL−12抗体に適用可能である。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体は各々糖鎖付加又は非糖鎖付加型のキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又は非ヒト(例えばマウス)抗体とすることができる。特に、前記方法はABT−874とその機能的等価物に適用可能である。
【0094】
好ましくは、抗hIL−12抗体はIgG抗体、特にIgG1群の抗ヒトIL−12抗体である。
【0095】
特に指定しない限り、本発明の晶析方法は当分野で周知の技術的装置、化学薬品及び手法を利用する。しかし、上記に説明したように、本発明は特定結晶化条件、特に特定結晶化剤を選択し、場合により更に対応物質(緩衝液、抗体、結晶化剤)の特定pH条件及び/又は濃度範囲も選択することにより、抗体、特にhIL−12に対する非キメラヒト抗体の安定な結晶を再現可能に大規模製造することが初めて可能になり、これらの結晶を更に処理し、非常に有利な優れた医薬組成物の活性成分を形成できるという驚くべき発見に基づく。
【0096】
晶析方法を実施するための出発材料は通常、結晶化させようとする抗体の濃厚溶液を含む。蛋白質濃度は例えば約5から約300mg/ml、好ましくは約5から約200mg/ml、好ましくは約5から約75mg/mlの範囲とすることができる。溶液には溶解抗体を安定化させる添加剤を添加することができ、添加剤を予め除去するとよいと思われる。これは緩衝液交換工程を実施することにより実現することができる。
【0097】
好ましくは、結晶化を実施するための出発材料はpHを約3.2から約8.2又は約4.0から約8.0、特に約4.5から約6.5、好ましくは約5.0から約5.5の範囲に調整した水溶液中に抗体を含有する。pHは適切な緩衝液を終濃度約1から約500mM、特に約1から約500mM又は約1から約10mMで添加することにより調整することができる。溶液を更に安定化させるために、例えば溶液の総重量に対して約0.01から約15又は約0.1から約5又は約0.1から約2重量%の割合で塩、糖、糖アルコール及び界面活性剤等の添加剤を溶液に添加することができる。賦形剤は医薬製剤に通常添加される生理的に許容可能な化合物から選択することが好ましい。非限定的な例として、賦形剤としてはNaCl等の塩;ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)等の界面活性剤;スクロース、トレハロース等の糖;マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール;リン酸緩衝系、上記のようなリン酸水素ナトリウム緩衝液及びリン酸水素カリウム緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、マレイン酸緩衝液又は琥珀酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液等の緩衝剤;ヒスチジン、アルギニン及びグリシン等のアミノ酸が挙げられる。
【0098】
緩衝液交換は例えば透析、透析濾過又は限外濾過等の常法により実施することができる。
【0099】
出発材料として使用する水溶液の初期蛋白質濃度は約0.5から約200又は約1から約50mg/mlの範囲とすべきである。
【0100】
(1mlから20000リットルの範囲であり得る)目的最終バッチ寸法に応じて、初期容量の抗体水溶液を不活性材料(例えばガラス、ポリマー又は金属)製の適当な容器(例えば液体容器、ビン又はタンク)に入れる。水溶液の初期容量は最終バッチ寸法の約30から80%、通常は約50%に対応する量とすることができる。
【0101】
必要に応じて、容器に充填後の溶液を標準条件に設定する。特に、温度を約4℃から約37℃の範囲に調整する。
【0102】
次に、場合により抗体溶液と同様に予め条件設定した適当な濃度の結晶化剤を含有する結晶化溶液を抗体溶液に加える。
【0103】
結晶化溶液の添加は2液の混合を助長するために場合により温和な撹拌下に連続的又は不連続的に実施する。蛋白質溶液を撹拌下に添加し、結晶化溶液(又はその固体形態の結晶化剤)を制御下に添加する条件下で添加を実施することが好ましい。
【0104】
上記のようなポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、又は上記のような少なくとも2種類の異なるポリアルキレングリコールの混合物を結晶化剤として添加することにより、抗体結晶の形成を開始する。結晶化溶液は結晶化混合物中のポリアルキレンポリオールの終濃度を約5から30%(w/v)の範囲とするために十分な濃度の結晶化剤を含有する。
【0105】
好ましくは、結晶化溶液は更に結晶化混合物のpHを約4から6の範囲に調整させるのに適した濃度の酸性緩衝液、即ち抗体溶液の緩衝液とは異なる緩衝液を含有する。
【0106】
結晶化溶液の添加の完了後、最大収率の抗体結晶を得るために、こうして得られた混合物を約1時間から約250日間更に保温してもよい。必要に応じて、混合物を例えば撹拌、温和に撹拌、回転又は他の方法で運動させてもよい。
【0107】
最後に、公知方法、例えば濾過又は遠心、例えば室温又は4℃にて約200から20,000rpm、好ましくは500から2,000rpmで遠心することにより、得られた結晶を分離することができる。残りの母液は捨ててもよいし、更に処理してもよい。
【0108】
必要に応じて、こうして単離した結晶を洗浄後、乾燥してもよいし、懸濁抗体の保存及び/又は最終利用に適した別の溶媒系に母液を交換してもよい。
【0109】
本発明により形成された抗体結晶は既に上述したように種々の形状をとることができる。治療投与では、結晶の寸法は投与経路により異なり、例えば皮下投与の場合の結晶寸法は静脈内投与よりも大きくすることができる。
【0110】
蛋白質結晶と低分子量有機及び無機分子の結晶の両者について従来記載されているように、結晶の形状は特定の付加的な添加剤を結晶化混合物に添加することにより変えることができる。
【0111】
必要に応じて、結晶が実際に抗体の結晶であることを検証してもよい。抗体の結晶を複屈折について顕微鏡分析することができる。一般に、内部立方対称以外の結晶では偏光の偏光面が回転する。更に別の方法では、結晶を単離し、洗浄し、再可溶化させ、SDS−PAGEにより分析し、場合により抗Fc受容体抗体で染色することができる。場合により、再可溶化させた抗体を更に標準アッセイによりそのhIL−12との結合について試験することもできる。
【0112】
本発明により得られた結晶を更に相互に架橋させてもよい。このような架橋は結晶の安定性を増すことができる。結晶の架橋方法は例えば米国特許第5,849,296号に記載されている。グルタルアルデヒド等の二官能性試薬を使用して結晶を架橋させることができる。架橋させたら、結晶を凍結乾燥し、例えば診断又は治療用途に備えて保存することができる。
【0113】
場合により、結晶を乾燥することが望ましい場合がある。窒素ガス等の不活性ガス、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、蒸発、トレー乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又はローラー乾燥等により結晶を乾燥することができる。適切な方法は周知である。
【0114】
本発明により形成された結晶は元の結晶化溶液に維持してもよいし、洗浄し、不活性担体又は成分等の他の物質を加え、本発明の結晶を含有する組成物又は製剤を形成してもよい。このような組成物又は製剤は例えば治療及び診断用途で使用することができる。
【0115】
好ましい一実施形態は製剤の結晶を賦形剤により包埋又は封入するように適切な担体又は成分を本発明の結晶に添加する方法である。適切な担体はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマー、SAIB、脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質の非限定的な群から選択することができる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物起源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0116】
C.組成物
本発明の別の態様は少なくとも1種の担体/賦形剤と共に抗hIL−12抗体結晶を含有する組成物/製剤に関する。
【0117】
製剤は固体、半固体又は液体とすることができる。
【0118】
本発明の製剤は必要な純度の抗体を担体、賦形剤及び/又は安定剤等の生理的に許容可能な添加剤(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edn,Osol,A.Ed.(1980)参照)と懸濁液として混合することにより保存及び/又は使用に適した形態で製造され、凍結乾燥又は別の方法で乾燥される。場合により、例えば別の抗体、生体分子、化学的又は酵素により合成された低分子量分子等の他の活性成分も加えてもよい。
【0119】
許容可能な添加剤は使用する用量及び濃度でレシピエントに非毒性である。その非限定的な例を以下に挙げる。
−酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸等の酸性化剤。
−ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、イソブタン、プロパン、トリクロロモノフルオロメタン等のエアゾール用噴射剤。
−二酸化炭素、窒素等の空気置換剤;
−メチルイソブチルケトン、オクタ酢酸スクロース等のアルコール変性剤;
−アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミン等のアルカリ化剤;
−ジメチコン、シメチコン等の消泡剤。
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズアルコニウム溶液、塩化ベンズエトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール等の抗菌防腐剤。
−アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、トコフェロール賦形剤等の酸化防止剤;
−酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、第一リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム溶液、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、ヒスチジン等の緩衝剤。
−エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び塩、エデト酸等のキレート剤;
−カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬品用艶出し剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステメ、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルフタル酸エステル、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、ゼイン、ポリアミノ酸、他のポリマー(例えばPLGA等)、及びSAIB等のコーティング剤。
−酸化第二鉄等の着色剤。
−エチレンジアミン四酸化及び塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールアミド、硫酸オキシキノリン等の錯化剤。
−塩化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等の乾燥剤。
−アラビアガム、コレステロール、ジエタノールアミン(付加物)、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ及びジグリセリド、モノエタノールアミン(付加物)、オレイン酸(付加物)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミン、乳化蝋等の乳化及び/又は可溶化剤。
−粉末セルロース、精製珪藻土等の濾過助剤。
−アネトール、ベンズアルデヒド、エチルバニリン、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、オレンジ花油、ハッカ、ハッカ油、ハッカ精、バラ油、高濃度バラ水、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ、バニリン等の香味剤及び香料。
−ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク等の流動促進剤及び/又は凝結防止剤。
−グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の湿潤剤;
−ラノリン、無水ラノリン、親水性軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ペトロラタム、親水性ペトロラタム、白色ペトロラタム、バラ水軟膏、スクアレン等の軟膏基剤。
−ヒマシ油、ラノリン、鉱物油、ペトロラタム、ギ酸ベンジル、クロロブタノール、フタル酸ジエチル、ソルビトール、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジアセチル、グリセリン、グリセロール、モノ及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、エタノール等の可塑剤。
−低分子量(約10残基未満)等のポリペプチド;
−血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等の蛋白質;
−酢酸セルロース膜等のポリマー膜。
−アセトン、アルコール、希アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、落花生油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、胡麻油、注射用水、注射用滅菌水、持続洗浄用滅菌水、精製水、液体トリグリセリド、液体蝋、高級アルコール等の溶剤。
−粉末セルロース、活性炭、精製珪藻土、二酸化炭素吸着剤、水酸化バリウム、石灰、ソーダ石灰等の吸着剤。
−水素化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステル蝋、硬質脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化蝋、白蝋、黄蝋等の硬化剤。
−カカオバター、硬質脂肪、ポリエチレングリコール等の坐剤基剤;
−アラビアガム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶及びカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガム、キサンタンガム等の懸濁及び/又は増粘剤;
−アスパルテーム、デキストレート、デキストロース、デキストロース賦形剤、フルクトース、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクロース、圧縮糖、粉糖、シロップ等の甘味剤;
−アラビアガム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、糊化デンプン、シロップ等の錠剤結合剤。
−炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、糊化デンプン、スクロース、圧縮糖、粉糖等の錠剤及び/又はカプセル希釈剤;
−アルギン酸、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、糊化デンプン等の錠剤崩壊剤。
−ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、軽鉱物油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、精製ステアリン酸、タルク、水素化植物油、ステアリン酸亜鉛等の錠剤及び/又はカプセル滑沢剤;
−デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の浸透圧調節剤。
【0120】
溶媒:香味剤及び/又は甘味剤入り芳香エリキシル、化合物ベンズアルデヒドエリキシル、イソアルコールエリキシル、ハッカ水、ソルビトール溶液、シロップ、トルーバルサムシロップ。
−油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、固体担体粒状糖、注射用滅菌静菌水、静菌塩化ナトリウム注射液、液体トリグリセリド、液体蝋、高級アルコール等の溶媒。
−シクロメチコン、ジメチコン、シメチコン等の撥水剤;
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、水素化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル50、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及びチロキサポール等の湿潤及び/又は可溶化剤。
【0121】
安定性及び/又は持続放出を実現するために結晶にポリマー担体を添加してもよい。このようなポリマーとしては生体適合性で生分解性のポリマーが挙げられる。ポリマー担体は単一ポリマー種でもよいし、複数のポリマー種の混合物から構成してもよい。ポリマー担体の非限定的な例は上記に挙げた通りである。
【0122】
好ましい成分又は賦形剤の例を以下に挙げる。
−グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、ヒスチジン等のアミノ酸の塩;
−グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボース等の単糖類;
−ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロース等の二糖類;
−マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲン等の多糖類;
−マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトール等のアルジトール;
−グルクロン酸、ガラクツロン酸;
−メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−(3−シクロデキストリン)等のシクロデキストリン類;
−塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機塩類;
−酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩等の有機塩類;
−アラビアガム、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及び他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、蝋、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体等の乳化又は可溶化剤;並びに
−寒天、アルギン酸とその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースとその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチロキサポール等の増粘剤。
【0123】
本明細書に記載する製剤は更に有効量の結晶抗体を含有する。特に、本発明の製剤は「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体結晶を含有することができる。「治療有効量」とは必要な用量と投与期間で所望治療結果を達成するために有効な量を意味する。抗体結晶の「治療有効量」は個体の疾患状態、年齢、性別及び体重や、個体に所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子により変動し得る。治療有効量は抗体の有益な治療作用が毒性ないし有害作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは必要な用量と投与期間で所望予防結果を達成するために有効な量を意味する。一般に、疾患以前又は疾患の初期段階の対象では予防用量を使用するので、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0124】
適切な用量は標準方法を使用して容易に決定することができる。抗体を患者に一度に投与するか又は複数回に分けて投与すると適切である。例えば1回もしくは2回以上に分けて投与するか、又は連続輸液により投与するかに関係なく、上記因子に応じて抗体約1μg/kgから約50mg/kg、例えば0.1から20mg/kgが患者に投与する初期候補用量である。典型的な1日又は1週間用量としては、症状に応じて約1μg/kgから約20mg/kg又はそれ以上が挙げられ、疾患症状の所望の抑制が得られるまで投与を繰返す。しかし、他の投与レジメンが有用な場合もある。場合により、製剤は再可溶化時に少なくとも約1g/L以上の濃度の抗体を含有する。他の実施形態では、抗体濃度は再可溶化時に少なくとも約1g/Lから約100g/Lとする。
【0125】
抗体の結晶又はこのような結晶を含有する製剤は単独で投与してもよいし、医薬製剤の一部として投与してもよい。非経口、経口又は局所経路で投与することができる。例えば、経口、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼球、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所又は頭蓋内経路で投与することができ、あるいは口腔内に投与してもよい。投与技術の特定例としては、肺吸入、病巣内投与、有針注射、乾燥粉末吸入、皮膚エレクトロポレーション、エアゾール送達及び無針注射技術(無針皮下投与を含む)が挙げられる。
【0126】
以下、非限定的な実施例により本発明を更に詳細に説明する。当業者は以下の記載の概論部分と自身の一般知識に基づき、過度の実験を要することなしに本発明の他の実施形態に想到できよう。
【実施例】
【0127】
A.材料
a)蛋白質
凍結モノクローナル抗体(mAb)ABT−874はAbbott Laboratoriesから入手した。全実験は初期mAb濃度64mg/mlの製品ロットから実施した。
【0128】
b)精製化学薬品
酢酸ナトリウムはGrussing GmbH,Filsumから入手した。各種重合度のポリエチレングリコールはClariant GmbH,Sulzbachから入手した。更に、所定のマイクロスケール実験には市販結晶化スクリーニングキット及び試薬(Hampton Research,Nextal Biotechnologies)を使用した。全化学薬品はSigma−Aldrich,Steinheim又はMerck,Darmstadtから入手した。
【0129】
B.一般方法
a)ABT−874原薬の融解
ABT−874は撹拌下の水浴中で25℃にて融解した。
【0130】
b)緩衝液交換−方法A
ABT−874溶液のアリコートを30KDa MWCO Vivaspin 20コンセントレーター(Vivascience)にピペットで注入した。蛋白質サンプルを新しい緩衝液で10倍に希釈し、4℃にて5,000×gで遠心(Sigma 4K 15実験室用遠心機)することにより、サンプル容量を元のサンプル容量に戻した。希釈/遠心工程を1回繰返し、元のサンプル緩衝液の100倍希釈液を得た。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0131】
b)緩衝液交換−方法B
ABT−874溶液のアリコートをSLIDE−A−LYZER透析カセット(Pierce Biotechnology Inc.)に入れた。選択緩衝液を充填したビーカーに透析カセットを入れ、4℃で一晩撹拌下に緩衝液交換を行った。蛋白質濃度の調整後、2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0132】
c)OD280−蛋白質濃度測定
ThermoSpectronics UV1装置を使用し、消光係数1.42cm2mg−1を適用して波長280nmで蛋白質濃度を推定した。このために、結晶化スラリーのアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の残留蛋白質濃度を測定した。
【0133】
d)pH測定
pH測定はMettler Toledo MP220 pH計を使用して実施した。 Inlab 413電極とInlab 423微小電極を利用した。
【0134】
e)晶析方法
e1)マイクロスケール結晶化−シッティングドロップ蒸気拡散Hydra II
Hydra II結晶化ロボットとGreiner 96ウェルプレート(3ドロップウェル,Hampton Research)を使用して初期結晶化スクリーニングを実施した。プレートをセットアップ後、ウェルをClearsealフィルム(Hampton Research)で密閉した。
【0135】
e2)マイクロスケール結晶化−ハンギングドロップ蒸気拡散法
VDXプレート(シーラント付き,Hampton Research)と夫々OptiClearプラスチックカバースライド(正方形,Hampton Research)又はシリコンコートガラスカバースライド(円形,Hampton Research)を使用してハンギングドロップ蒸気拡散実験を実施した。リザーバ溶液の調製後、カバースライド上でリザーバ溶液1滴を蛋白質溶液1滴と混合し、液滴がリザーバの上に垂れ下がるようにカバースライドを裏返してウェルを密閉した。
【0136】
e3)バッチ晶析−方法A(24ウェルプレート)
ウェル内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液(500μl)と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルを接着テープで密閉した。
【0137】
e4)バッチ晶析−方法B(エッペンドルフ反応チューブ)
1.5mL又は2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0138】
e5)バッチ晶析−方法C(ファルコンチューブ,撹拌なし)
15mL又は50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0139】
e6)バッチ晶析−方法D(ファルコンチューブ,撹拌)
15mL又は50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。蓋をした直後にチューブを実験室用振盪器(GFL3013又はGFL3015)に載せるか、あるいは旋回により撹拌した。これらの方法を適用することにより、サンプルに撹拌器を挿入するのを避けた。
【0140】
f)SDS−PAGE
蛋白質濃度を8μg/20μLに調整することによりサンプルを作製した。ブロモフェノールブルーを添加したSDS/Tris/グリセリンでサンプルを希釈した。Invitrogen NuPage 10%Bis−Tris Gels、NuPage MES SDS Running Buffer及びMark12 Wide Range Protein Standardsを使用して定性的SDS PAGE分析を実施した。サンプル20μLをゲルポケットにピペットで注入した。ゲルを泳動させ、酢酸/メタノール試薬で固定後、Novex Colloidal Blue Stain Kitを使用して染色を実施した。Invitogen Gel−Dry乾燥液を使用してゲルを乾燥した。
【0141】
g)光学顕微鏡分析
Zeiss Axiovert 25又はNikon Labophot顕微鏡を使用して結晶を観察した。後者には偏光フィルターセットとJVC TK C1380カラービデオカメラを接続した。
【0142】
h)SE−HPLC
ABT−874サンプルの凝集レベルをSE−HPLCにより判定した。Dionex P680ポンプと、ASI−100オートサンプラーと、UVD170U検出器を使用した。批准Abbott標準プロトコール(A−796874.0−ABT874,J695)を適用してAmersham Bioscience Superdex 200 10/300 GLゲル濾過カラムにより凝集種を単量体から分離した。
【0143】
C.蒸気拡散結晶化実験
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液とリザーバ溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0144】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0145】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0146】
(実施例1)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
ABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0147】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液と(完全に脱塩し、場合により予め蒸留した)ミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約6%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0148】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0149】
(実施例2)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0150】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約6%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0151】
結果:評価した24個のウェルのうち、約16%のPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0152】
(実施例3)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG400を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0153】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0154】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0155】
(実施例4)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0156】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0157】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0158】
(実施例5)
蛋白質濃度と設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
別の蛋白質濃度と別の設定を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0159】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約5.7又は6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0160】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0161】
(実施例6)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG10,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG10,000を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0162】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG10,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG10,000を約4%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0163】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0164】
(実施例7)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG10,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG10,000を使用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0165】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG10,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG10,000を約4%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0166】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0167】
(実施例8)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0168】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約22%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約4.2、4.7、5.2、5.7、6.2及び6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0169】
結果:評価した48個のウェルから結晶は認められなかった。
【0170】
(実施例9)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000と別の設定を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0171】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約8%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約5.7、6.2及び6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0172】
結果:評価した24個のウェルのうち、本実施例で使用した全pHにおいて約10から14%のPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0173】
(実施例10)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムの併用のグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0174】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約8%w/vから約12%w/vまで2%刻みで変化させた。同時に、PEG400を夫々約26%w/v、28%w/v、30%w/v及び32%w/vの濃度でPEG4,000/酢酸溶液に加えた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0175】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0176】
(実施例11)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムの併用のグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0177】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約8%w/vまで2%刻みで変化させた。同時に、PEG400を夫々約30%w/v、32%w/v、34%w/v及び36%w/vの濃度でPEG4,000/酢酸溶液に加えた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0178】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0179】
(実施例12)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、蛋白緩衝液を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0180】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0181】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約12%w/v、18%w/v、20%w/v、22%w/v及び24%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0182】
(実施例13)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0183】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0184】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約10%w/v及び14%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0185】
(実施例14)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000/酢酸ナトリウムを使用し、蛋白緩衝液を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を20mg/mLに調整した。
【0186】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0187】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約10%w/v、14%w/v、16%w/v、20%w/v及び22%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0188】
(実施例15)
蒸気拡散法による条件の広範なスクリーニング
ABT−874で広範なスクリーニング用のハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を20mg/mLに調整した。
【0189】
Hydra II結晶化ロボットを使用し、数種類の市販結晶化スクリーニングキットを使用して96ウェルGreinerプレートを周囲温度でセットアップした。蛋白質溶液と結晶化剤を約1:1、好ましくは1:1比で混合した。
【0190】
以下のスクリーニングキットを使用した。Hampton Crystal Screen 1及び2、Hampton Index Screen、Hampton SaltRX Screen(いずれもHampton Research製品)、Nextal The Classics,The Classics Lite,The PEGs,The Anions,The pH clear及びThe Ammonium sulfate(いずれもNextal Biotechnologies製品)。
【0191】
(上記のような3種類の異なる蛋白質濃度で条件毎に3滴ずつ)蛋白質を結晶化剤に添加後、プレートをClearsealフィルムで密閉した。各プレートを4枚ずつセットアップした後、夫々周囲温度、4℃、27℃及び37℃で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0192】
結果:評価した10,368種類の条件のうち、4種類から結晶が得られた。条件は製造業者により公表されているように以下の蛋白質濃度及び結晶化剤とした。
−周囲温度、ABT−874 約20mg/mL
0.2M硫酸アンモニウム,30%w/v PEG8,000
(Hampton Crystal Screen,C6)
−4℃、ABT−874 約5mg/mL
0.1M HEPES pH7.5,5%w/v PEG8,000
(Nextal The Classics Lite,F4)
−4℃、ABT−874 約10mg/mL
0.1M HEPES pH7.5,5%w/v PEG6,000,2.5%v/v MPD
(Nextal The Classics Lite,H9)
−4℃、ABT−874 約20mg/mL
0.1M HEPES,5%w/v PEG6,000,pH7.00
(Nextal pH Clear,C4)。
【0193】
結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0194】
(実施例16)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0195】
グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、夫々約12%w/v、18%w/v、24%w/v及び30%w/vのPEG4,000濃度を使用した。pHは約3.6から約5.6まで0.2刻みで変化させ、48種類の異なる条件を設定した。各条件を上記のような2種類の蛋白質濃度で設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0196】
結果:試験した96種類の条件のうち、pH約5.6で5mg/mL ABT−874及び約24% PEG4,000の場合に針束状結晶が観察された。
【0197】
(実施例17)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000/クエン酸ナトリウムを併用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0198】
グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、約12%w/v、18%w/v、24%w/v又は30%w/vのPEG4,000濃度を使用した。pHは約4.2から約6.4まで0.2刻みで変化させ、48種類の異なる条件を設定した。各条件を上記のような2種類の蛋白質濃度で設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0199】
結果:試験した96種類の条件から結晶は認められなかった。
【0200】
D.バッチ晶析実験
ABT−874でバッチ晶析法を実施した。以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0201】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0202】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0203】
(実施例18)
1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0204】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約6.7とした。PEG4,000を約14%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。16日後に1μLアリコートの顕微鏡観察を行った。
【0205】
結果:16日後に結晶は認められなかった。
【0206】
(実施例19)
300μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
300μL容量バッチ法でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0207】
ウェル内で蛋白質溶液約150μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液150μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.5とした。PEG4,000を約12%w/vから約34%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から2日間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0208】
結果:評価した36個のウェルのうち、22%w/vから26%w/v PEG4,000に設定した実験で結晶が認められた。
【0209】
(実施例20)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0210】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。本実験は4本でセットアップした。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から78日間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0211】
結果:7日後に剣状結晶が出現した。その後の数カ月間の保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、60日後に50から70%であった。
【0212】
(実施例21)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0213】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約26%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0214】
結果:1日後に沈殿種が認められた。5日後に沈殿以外に剣状結晶が認められた。
【0215】
(実施例22)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0216】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0217】
結果:1日後に針束状結晶が出現した。5日後に針束状結晶以外に針状結晶と板状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、13日後に50から70%であった。
【0218】
(実施例23)
蛋白質濃度を変更した1ml容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0219】
ウェル内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。
【0220】
各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.5とした。PEG4,000を約12%w/vから約34%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0221】
結果:評価した24個のウェルのうち、約24%w/vから26%w/v PEG4,000に設定した実験で剣状結晶が認められた。
【0222】
(実施例24)
設定を変更した1ml容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
設定を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0223】
ウェル内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは約4.1、4.6及び5.1とした。PEG4,000を約20%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から4日間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0224】
結果:評価した18個のウェルのうち、28%w/v PEG4,000とpH5.1の酢酸ナトリウム緩衝液に設定した実験で結晶が認められた。
【0225】
(実施例25)
温度を変更した2mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
温度を変更し、2mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0226】
2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約1mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。反応チューブを4から8℃で保存した。翌日から1カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0227】
結果:一晩保存後に沈殿種が認められた。
【0228】
(実施例26)
撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
撹拌を使用し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0229】
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらチューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0230】
結果:6日後に剣状結晶が出現したが、容器表面にほぼ完全に吸着した。顕微鏡観察からバッチが沈殿種を含んでいないと判断することはできなかった。結晶化液はほぼ透明であった。
【0231】
(実施例27)
非撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
非撹拌下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0232】
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0233】
結果:1日後に針束状結晶が出現した。4日後に針束状結晶以外に針状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、7日後に30から40%であった。
【0234】
(実施例28)
容器材料を変更した撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
容器材料を変更し、撹拌下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0235】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0236】
結果:18日後に剣状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、18日後に40から50%であった。針束状結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図7に示す。
【0237】
(実施例29)
容器材料を変更し、撹拌下でポリソルベート80の影響下における10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
容器材料を変更し、撹拌下でポリソルベート80の影響下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0238】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。更に、0.1%の濃度のポリソルベート80を緩衝液に加えた。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0239】
結果:18日後に剣状結晶が認められた。本実施例と実施例28(ポリソルベート80非添加)の結晶形状に相違は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、18日後に25から35%であった。
【0240】
(実施例30)
撹拌下と非撹拌下のバッチを比較した10mlバッチ容量での各種PEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
撹拌下と非撹拌下のバッチの比較を使用し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0241】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/v及び24%w/vの濃度で使用した。非撹拌下又はバッチを回転により撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、1個のバッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0242】
結果:撹拌下のバッチでは、いずれも26日後に沈殿種が認められた。約22%w/v PEG4,000の緩衝液を使用した非撹拌下のバッチでは26日後に剣状結晶が認められたが、懸濁液は巨視的にほぼ透明であったので、結晶収率は低いとみなされた。約24%w/v PEG4,000の緩衝液を使用した非撹拌下のバッチでは26日後に剣状結晶が認められた。70日後に上清から測定した収率は65から75%であった。
【0243】
(実施例31)
種晶添加の影響
ABT−874結晶収率に及ぼす種晶添加の影響を試験した。実施例30からの約22%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した非撹拌下のバッチは26日後の結晶収率が非常に低かった。そこで、同一実施例からの約24%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した非撹拌下のバッチ約100μLを前記バッチに加えて温置した。
【0244】
結果:種晶添加下の温置により明白な収率増加は生じなかった。
【0245】
(実施例32)
蛋白質濃度を変更し、撹拌下と非撹拌下のバッチを比較した10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
種々の蛋白質濃度を使用し、撹拌下と非撹拌下のバッチを比較し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0246】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/v、24%w/v及び26%w/vの濃度で使用した。非撹拌下又はバッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、1個のバッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0247】
結果:約22%w/v及び約24%w/v PEG4,000を含有する緩衝液を使用したバッチは65日後に透明であった。約26%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した撹拌下のバッチでは4日後に沈殿種が認められ、同一結晶化用緩衝液の非撹拌下のバッチでは4日後に剣状結晶が認められた。26日後に上清から測定したこの特定バッチの結晶収率は40から50%であった。非撹拌下で得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ225μmに対応する)を図8に示す。
【0248】
(実施例33)
設定を変更した10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
設定を変更し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0249】
15mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0250】
結果:11日後に剣状結晶が認められた。26日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は40から50%であった。非撹拌下で26日後に得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図9に示す。
【0251】
(実施例34a)
50mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
50mLバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0252】
15mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約25mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液25mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0253】
結果:3日後に剣状結晶が認められた。16日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は50から60%であった。
【0254】
(実施例34b)
700mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
700mLバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0255】
1L透明ポリエチレンびん内で蛋白質溶液約350mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液とPEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液350mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。びんを周囲温度で保存した。40日後に溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0256】
結果:40日後に剣状結晶が認められた。40日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は50から60%であった。非撹拌下で40日後に得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図10に示す。
【0257】
上記バッチ実験の実験条件を下表1にまとめる。
【0258】
【表1】
【0259】
E.結晶処理及び分析方法
(実施例35)
結晶の洗浄
結晶の形成後は、結晶を再溶解させない洗浄工程が有利であると思われる。従って、結晶化工程の終了後、結晶スラリーを遠心管に移し、500から1000×gで20分間遠心した。遠心は4℃又は周囲温度で実施した。遠心後、上清を捨て、約0.1M酢酸ナトリウム中に約24%w/v PEG4,000を含有するpH約5.5の緩衝液に結晶ペレットを容易に再懸濁した。OD280により分析した処、このような洗浄用緩衝液中に測定可能なABT−874結晶は溶解していなかった。次いで遠心/再懸濁工程を1から3回繰返し、この洗浄工程後に、このような緩衝液にペレットを再懸濁し、保存した。
【0260】
(実施例36)
SDS PAGEによる結晶の分析
結晶の蛋白性を確認するために、実施例32に記載したように結晶を洗浄用緩衝液で洗浄した。液に蛋白質が溶解していないことをOD280により確認した後、結晶を遠心し、上清を捨て、次いで結晶を蒸留水に溶解した。この溶液のOD280測定によると、サンプルの吸光度は残留洗浄用緩衝液中と同程度まで有意に高くなっていたので、蛋白質が存在していることが判明した。再溶解後の結晶のこの溶液のSDS PAGE分析は、元のABT−874サンプルと同一パターンを示した。
【0261】
(実施例37)
SE−HPLCによる結晶の分析
ABT−874結晶の凝集種の含量を調べるために、洗浄した結晶のアリコートを遠心し、SE−HPLCランニング緩衝液(92mMリン酸水素二ナトリウム/211mM硫酸二ナトリウム,pH7.0)に再溶解した。結晶化工程の終了直後(本実施例では周囲温度で16日)に、凝集物含量は一般に約0.9%から約1.6から1.7%まで僅かに増加した。このような凝集物が結晶中又はその表面にに含まれ、洗浄工程により適切に除去されなかったか否かはまだ不明である。
【0262】
F.その他の実施例
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0263】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0264】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0265】
(実施例38)
固体結晶化剤
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0266】
2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを酢酸緩衝液(0.1M,pH5.5)と混合することによりバッチ晶析を実施した。次に、固体ポリエチレングリコールを終濃度12%m/v(120mg/mL)まで加えた。次いでチューブを密閉し、結晶化剤が完全に溶解するまで撹拌した。チューブを非撹拌下に周囲温度で保存した。翌日から数週間、結晶化混合物のアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0267】
結果:7日後に剣状結晶が認められた。
【0268】
(実施例39)
別の緩衝液調製プロトコール及び結晶の作製
本実施例では、次のように酢酸緩衝液を調製した。氷酢酸60gを精製水約840mLで希釈した。水酸化ナトリウム溶液でpHを調整し、容量を1,000mLに調整した。この場合には、総酢酸塩量を1M(蛋白質溶液、結晶化用緩衝液及び結晶化混合物中100mM)に固定した。
【0269】
実施例34aに従って結晶化を実施すると、3日後に剣状結晶が認められる。
【0270】
(実施例40)
封入結晶の作製
実施例34で得られた結晶はMalvern Instruments Zetasizer nanoを使用するゼータ電位測定によると正に荷電している。結晶性を維持し、結晶を荷電状態に保つpHをもつ賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。次に、適切な封入剤を結晶懸濁液に加える。この点で、適切な封入剤は毒性が低く、生分解性と対イオン特徴をもつ(ポリマー)物質である。この対イオン特徴により、前記物質は結晶に吸引され、コーティングを可能にする。この技術により、結晶性を維持する他の賦形剤を含有しない溶媒への結晶の溶解を持続することが好ましい。
【0271】
(実施例41)
封入/包埋結晶の作製
実施例34に記載したように結晶を得る。結晶性を維持する賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。
【0272】
その後、結晶を乾燥し、これらの乾燥した結晶を例えば圧縮、溶融分散等により担体と混合することにより結晶を包埋することができる。あるいは、
−結晶懸濁液を水不混和性担体溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。担体の溶媒の除去後に担体は沈殿する。その後、材料を乾燥する。
−結晶懸濁液を水混和性担体溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。担体は混合物中でその溶解度限界を越えると沈殿する。
−乾燥した結晶又は結晶懸濁液を水混和性担体溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
−乾燥した結晶を水不混和性担体溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
【0273】
(実施例42)
沈殿したABT−874の検証
a)沈殿
酢酸ナトリウム1モルを水に溶解し、酢酸(100%)でpH5.5に調整することにより酢酸緩衝液を調製した。ストック溶液を緩衝液交換のために水で10倍に希釈した。20gのPEG4000を1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)5mLと水に溶解することによりPEG4000溶液を調製した。溶解後、容量を水で50mLに調整した。(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.5中)10mg/mL ABT−874(透析濾過により交換する元の緩衝液)5mLを0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中40% PEG4000溶液5mLと混合した。
【0274】
沈殿バッチを非撹拌下に室温で一晩維持した。約1から10μmの寸法の非複屈折粒子が形成された。
【0275】
b)沈殿の洗浄
沈殿スラリー2mLを遠心機に入れ、500×gで20分間遠心した。上清を捨て、(上記手順により調製した)約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中40% PEG4000溶液2mLに再懸濁した。最終懸濁液の蛋白質濃度をOD280により測定した処、3.9mg/mLであった。
【0276】
G.結晶特性決定
以下のセクションでは、結晶モノクローナル抗体ABT−874が結晶材料の再溶解後に非結晶化ABT−874に特徴的な生物活性を維持するか否かを判定するために実施した実験を要約する。
【0277】
G1.NK−92細胞のIFN−γ産生の測定による生物活性試験
a)一般方法
IL−12による刺激に応答するNK−92細胞のIFN−γ産生をモニターする細胞アッセイにより、再溶解したABT−874結晶の生物活性を測定した。分析に先立ち、サンプルを先ず細胞培養培地(20% FCSと200mM L−グルタミンを加えたα−MEM培地)で30μg/mLまで希釈した。次にサンプルを更に3μg/mLから0.1ng/mLまで11段階で希釈した。IL−12溶液を細胞培養培地で10ng/mLまで希釈し、ABT−874サンプルに加えた。その後、混合物を37℃で5%CO2下に1時間温置した。
【0278】
NK−92細胞(2.0×106個/mL)の懸濁液を96ウェルマイクロプレートにピペットで注入し、ABT−874/IL−12混合物を細胞に加えた後、マイクロプレートを37℃で5%CO2下に20時間温置した。温置後、マイクロプレートを1,000rpmで5℃にて10分間遠心し、各ウェルの上清50μLを使用し、細胞により産生されたIFN−γの量をELISA(ELISA Kit Human Interferon−γ,Pierce,カタログ番号EHIFNG)により測定した。
【0279】
ビオチン化抗IFN−γ抗体溶液を96ウェルプレコートマイクロプレートにピペットで注入し、細胞培養上清を加えた(両者サンプル各4列)。マイクロプレートを室温で2時間温置後、洗浄した。その後、ストレプトアビジン−HRP溶液を加えてマイクロプレートを更に30分間温置した後、洗浄した。TMB基質を加えた後、マイクロプレートを暗所で室温にて約20分間温置した後、停止溶液を加えることにより反応を停止した。
【0280】
最後に、次の5分以内にマイクロプレートリーダーで450nm(補正波長550nm)にて吸収を測定し、結果をABT−874濃度に対してプロットした。その後、4パラメーター非直線曲線フィットを使用してIC50値を求め、参照標準の平均IC50値をサンプルのIC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの相対生物活性を計算した。
【0281】
b)ABT−874結晶の相対活性
参照標準に対するサンプルの生物活性の比較として試験を実施した。細胞により産生されたIFN−γの量を市販ELISAキットにより測定し、450nmの波長における吸収単位として報告した。これらの値をABT−874濃度に対してプロットし、4パラメーター非直線回帰により評価した処、ABT−874によるIL−12効果の阻害のIC50値が判明した。両方のサンプルをマイクロプレート1枚で4回ずつ繰返して試験したので、夫々ABT−874参照標準とサンプルに4個のIC50値を得た。次に、参照標準のIC50値の平均を計算し、参照標準の平均IC50値をサンプルの該当IC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの各反復の相対活性を計算した。
【0282】
サンプル(2.9mg/mL結晶懸濁液)の試験の結果、相対生物活性は98%であることが判明した。従って、サンプルは完全に生物学的に活性であるとみなすことができる。
【0283】
G2.顕微鏡による特性決定
以下、ABT−874の結晶の顕微鏡による特性決定に関するデータについて記載する。
【0284】
a)mAb結晶バッチサンプルの光学分析
均質化後、1から10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して結晶調製物を分析した。デジタルカメラ(Sony Cybershot DSC S75)を使用して写真撮影した。
【0285】
b)ABT−874結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)による特性決定
蛋白質結晶を電子顕微鏡で撮像するためには、乾燥し、導電性であり、高真空と電子ビームエネルギーに耐えるために十分に安定でなければならない。本プロトコールは結晶をその緩衝液から濾過により分離し、グルタルアルデヒド系固定液で化学的に固定することにより結晶を安定化させ、段階系列エタノールで脱水し、臨界点法により乾燥し、金をプラズマコーティングして導電性にする。
【0286】
b1)材料
−0.2Mセーレンセンリン酸緩衝液(SPB)−0.15Mリン酸二ナトリウム,0.05M第一リン酸カリウム,pH7.3。
−カルノフスキー固定液−2.5%グルタルアルデヒド,1.5%パラホルムアルデヒド,0.1M SPB。
−50%,75%,95%及び100%エタノール。
−(実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存した実施例34からの)結晶化用緩衝液中ABT−874結晶サンプル。
−ABT−874結晶化用緩衝液(実施例35からの洗浄用緩衝液)。
−13mmフィルターメンブレンをシリンジに装着するためのミリポアステンレス鋼フィルターアセンブリ。
−0.4μmポリカーボネートフィルターメンブレン(Nucleopore,カタログ番号110407)。
【0287】
b2)機器
−臨界点乾燥機(CPD)−Baltec Model CPD030,Asset LC978501。
−走査型電子顕微鏡(SEM)−Phillips XL30フィールドエミッション走査型電子顕微鏡。
−スパッターコーター−Denton Desk IIスパッターコーター,Asset LC827847。
【0288】
b3)手順
フィルターアセンブリに溶液をフラッシュし、シリンジをフィルターアセンブリに指定保持時間保持することによりステップ3から12を実施する。
1.シリンジフィルターホルダーにポリカーボネートフィルターを装着する。
2.1.0mlシリンジ内で結晶サンプル0.1mlを結晶緩衝液0.4mlと混合する。
3.フィルターアセンブリを通して希釈結晶溶液を分配する。
4.結晶緩衝液1mlを分配し、2分間保持する。
5.50%固定液、50%結晶緩衝液1mlを分配し、2分間保持する。
6.100%固定液1mlを分配し、2分間保持する。
7.SPB 1mlを分配し、2分間保持する。
8.再びSPB 1mlを分配し、2分間保持する。
9.50%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
10.75%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
11.95%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
12.100%エタノール1mlを分配し、2分間保持する段階を3回繰り返す。
13.100%エタノールを充填したCPDに結晶が付着したフィルターメンブレンを移す。
14.フィルターをCPDで次のように処理する。
a.10℃で液体CO2を5回交換し、交換毎に5分間混合する。
b.40℃、80バール気圧まで加熱する。
c.20分間かけてゆっくりと大気圧まで抽気する。
15.フィルターメンブレンをSEMサポートに載せる。
16.金を60秒間スパッターコーティングする。
17.SEMで試験する。
【0289】
c)結果
添付の図1から5には、ABT−874結晶の代表的な写真を示す。
【0290】
図1は実施例34により得られた(実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存した実施例34からの)結晶化用緩衝液中のABT−874結晶の光学顕微鏡写真を示す。晶癖は図2から5に示す固定乾燥結晶の晶癖と同様である。結晶は複屈折を示した。
【0291】
図2から5は実施例34により得られたABT−874結晶の各種倍率のSEMを示す。
【0292】
G3.複屈折
全バッチ実験から生じた結晶は複屈折を示した。
【0293】
G4.注射適性
結晶中に取込まれた蛋白質150mg/mLを実施例35からの洗浄用緩衝液に配合したABT−874結晶懸濁液は27G針で注射可能である。
【0294】
H.ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験
a)機器
iCE280分析装置(Convergent Bioscience)を分析に使用した。システムID(IS#2785)。
【0295】
b)材料
使用したキャピラリーは長さ50mm、内径100μmのコートカラム(Convergent,カタログ番号101700)とした。使用した電解液は陽極液(80mM H3PO4)及び陰極液(100mM NaOH)(Convergent,カタログ番号101800)とした。両性担体は4% Pharmalyte(8−10.5)(GE Healthcare,カタログ番号17−0455−01)とした。添加剤はメチルセルロース(0.35%)(Convergent,カタログ番号101876)とした。内部pIマーカーはBioRad製品とした(8.4,8.5,10.1及び10.4−BioRad,カタログ番号148−2100,ロット番号482−511)。
【0296】
【表2】
【0297】
c)方法
収束時間は1500Vで2分間、3000Vで20分間とした。サンプル調製手順−Mab結晶、Mab沈殿及び参照標準をいずれもミリQ水で約1mg/mlまで希釈した。サンプル調製手順(尿素による)。
【0298】
【表3】
【0299】
1.5mLマイクロ遠心管内で上記表に示すようにサンプルを混合した。次に終濃度約1.6Mとなるように尿素(20mg)を加えた。次に遠心管をボルテックスし、10分間遠心後、注意深く分析用バイアルに移した。
【0300】
d)結果
以下のサンプルを分析した。
ABT−874結晶緩衝液(実施例35からの洗浄用緩衝液)
ABT−874結晶(実施例33により得られた結晶を実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存したもの)
参照標準(ABT−874液体サンプル)。
【0301】
結果を添付図6AからCに示す。
【0302】
(実施例43)
結晶化/結晶再溶解後の天然二次構造の維持
製造業者の指示に従ってBruker Optics Tensor 27でConfocheckシステムを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120から500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580から1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0303】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、結晶ペレットをpH5.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。
【0304】
図11は実施例34bに記載したような方法に従って結晶化させ、実施例35に紹介した手順に従って洗浄し、再溶解した結晶ABT−874懸濁液のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも二次構造の顕著な変化は認められない。
【0305】
(実施例44)
安定性データ(SE HPLC,FT−IR,形態)
実施例34bに記載した結晶化手順を使用してABT−874を結晶化させた。22% PEG4,000と0.1M酢酸ナトリウムを含有する分散用緩衝液を使用して実施例35に記載したように結晶を洗浄し、氷酢酸でpHを5.5に調整した。次に、結晶を遠心により夫々蛋白質5mg/mL及び50mg/mLまで濃縮し、2から8℃で保存した。
【0306】
5mg/mL及び50mg/m結晶ABT−874を2から8℃で3カ月間保存後の安定性データは90%を上回る単量体の維持を示した。
【0307】
(a)SE−HPLC
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
Dionex HPLCシステム(P680ポンプ,ASI 100オートサンプラー,UVD170U)を使用してABT−874抗体の安定性を測定した。流速0.75mL/分を適用してABT−874サンプルをGE Superose(登録商標)200カラムで分離した。波長214nmで検出を実施した。ランニング緩衝液は0.09Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中0.2M硫酸二ナトリウムから構成した。
【0311】
(b)FT−IR
Bruker Optics Tensor 27でConfocheckを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120から500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580から1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0312】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、ペレットをpH5.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。
【0313】
図2は結晶ABT−874懸濁液(上記のように調製し、25℃で3カ月間保存した50mg/mL保存安定性サンプル)とこのような前処理結晶の再溶解後のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも25℃で3カ月間保存後に二次構造の顕著な変化は認められない。
【0314】
(c)形態
2から8℃で3カ月間保存後に、結晶の光学顕微鏡分析で顕著な形態変化は認められなかった。1から10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、製剤化用緩衝液(22%PEG)で希釈し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して結晶調製物を評価した。
【0315】
(実施例45)
晶析法の収率増加
晶析法の終点は結晶化スラリーの上清のアリコートのOD280測定値が例えばその後3日間一定となる時点として定義することができる。結晶化スラリーの上清に所定量の付加的なPEG4,000(pH約5.5の約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中50%w/v溶液)を加えることにより収率増加が可能である。最初に晶出した結晶と同様の結晶がその後の数日間形成される。この手順を適用すると、沈殿を生じずに総収率は容易に90%を超える。
【0316】
例えば、実施例34bの上清のアリコート中でPEG4,000濃度を約11%w/vから約22%w/v、約20%w/v、約18%w/v、約16%w/v又は約14%w/vまで増加する。周囲温度(例えば約20から約25℃)で数日間保存後、所定のPEG4,000濃度(例えば約22%w/v、約20%w/v又は約18%w/v PEG4,000)では沈殿種が認められる。PEG4,000濃度が低いと(例えば約16%w/v及び約14%w/v PEG4,000)、汚染性沈殿を伴わずに結晶が認められる。結晶化スラリーの残留上清にPEG4,000を例えば約14%w/vの総濃度まで加えることにより、総結晶収率は数日間で約60%から約70%となり、更には90%を超える。
【0317】
(実施例46)
連続法の適用による収率増加
本実施例では、(場合により所定量の結晶化剤を加えた)結晶化バッチに付加的な沈殿剤及び/又は蛋白質を所定速度で「滴定」する。経時的連続結晶化を誘導し、最終的に90%を上回る結晶収率が得られる。
【0318】
(実施例47)
ABT−874結晶化バッチの種晶添加
自然界では統計的に自発核生成の傾向が高い。同一蛋白質(均質種晶添加)又は結晶化させる物質とは別の物質(不均質種晶添加)から構成される種晶は分子を更に集合させることができる鋳型を提供する。従って、種晶添加により結晶化を加速することができる。
【0319】
実施例34bに記載したようにABT−874結晶化バッチを調製した。蛋白質溶液を結晶化用緩衝液と混合後、混合物にABT−874結晶を均質種晶添加した。例えば、約50から60%の結晶収率を示す実施例34bに記載したように調製した結晶懸濁液のアリコートを例えば1/20比(v/v)で結晶化バッチに加えた。このストラテジーを適用し、総結晶収率を高め、処理時間を短縮するように更に最適化した。
【0320】
要約すると、ABT−874結晶化混合物(pH5.5の0.1M酢酸緩衝液中5mg/mL蛋白質及び11%PEG4,000)を調製し、2つの40mLアリコートに分けた。第1のバッチはそれ以上処理せずに室温で保存し、第2のバッチは既に結晶収率65%を示した同一組成の結晶化混合物2mLを加えることにより種晶添加した(バッチ中200mgのABT−874に対して結晶化蛋白質を基に計算して種晶6.5mg)。図13に示すプロットから明らかなように、この種晶添加アプローチを適用することにより、総収率は80日以内に約15%増加したが、平行曲線推移によると、最大収率に達するための処理時間はさほど短縮されないと予想された。図13によると、非種晶添加バッチは約80日後に収率プラトーに達したが、理論的に可能な収率は種晶添加バッチと同等であると予想され、種晶添加の結果、収率増加よりも晶析法の時間が短縮すると考えられる。
【0321】
(文献の援用)
本明細書に引用する全引用文献(文献資料、特許、特許出願及びウェブサイト)はこれらの文献に引用されている文献と共にその開示内容全体を特に本明細書に援用する。本発明の実施には特に指定しない限り、当分野で周知の従来の結晶化及び製剤化技術を利用する。
【0322】
(等価物)
本発明はその精神又は本質的特徴から逸脱せずに他の特定形態で実施することができる。従って、上記実施形態は本明細書に記載する発明を制限するものではなく、あらゆる点において例証とみなすべきである。従って、本発明の範囲は以上の記載により限定されるものではなく、特許請求の範囲に指定される通りであり、そのため、特許請求の範囲の意味と等価範囲内に該当するあらゆる変更も本発明に含むものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体を結晶化させるためのバッチ晶析方法として、抗体の工業的規模の生産を可能にする方法、特に開示する方法により得られるような抗体結晶、前記結晶を含有する組成物並びに前記結晶及び組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
a)抗体結晶
現在100種類を超えるモノクローナル抗体(mAb)が臨床試験フェーズ2又は3で検討中であり、mAb市場は最も有望なバイオ医薬品市場の1つであるとみなされる。これらの薬剤は多くの場合には100mgを上回る用量を単回送達するので、安定性、安全性及び患者コンプライアンスを満足する適切な製剤化ストラテジーを見出すことが急務である。しかし、高濃度液体mAb製剤は粘度が高いため、患者に優しい細い針で注射しにくい。更に、mAb分子がこのような高濃度で凝集する傾向は適度な濃度の溶液に比較して指数的に増加する。これは安全性及び安定性要件の点で許容できない。
【0003】
従って、高mAb用量の送達は大容量に限られるが、その場合には一般に輸液により送達しなければならない。この投与方法はコストがかかり、患者のコンプライアンスを著しく悪化させる。
【0004】
従って、医薬的に適用可能な低容量の皮下注射用mAb結晶懸濁液が非常に望ましい。理論的には、結晶格子は剛性であり、蛋白質構造内の運動を妨げるので、mAb完全性に影響を与える分解経路は著しく減速するはずである。更に、高濃度結晶懸濁液を液体製剤に比較すると、速度の増加は著しく少ないと考えられる。持続放出に関して、患者の体内に入るとゆっくりと溶解するように蛋白質結晶を作製又は改変することは可能であると思われる。この結果、mAb構造を損なう賦形剤とプロセスの多用が避けられるので、徐放製剤の非常に優れた送達方法となろう。
【0005】
原薬としての蛋白質結晶の使用には大きな将来性があるが、このストラテジーを系統的に評価する試みは殆ど行われていない。
【0006】
例外としてよく知られているのはインスリンであり、数十年前に結晶化に成功している。今日、インスリンの結晶懸濁液の使用は詳細に記載されており、安定な長時間作用型製剤が市場に定着している。インスリン結晶の開発と他の全蛋白質の結晶化の間のずれは、規則的インスリン凝集物が膵臓で天然に形成されるという事実と関係があると思われる。即ち、インスリンを過剰の亜鉛イオンと接触させると、インスリン結晶が容易に得られる。大半の他の蛋白質は結晶よりも不規則沈殿を形成する傾向があるため、蛋白質の結晶化条件を見出すのは時間のかかる厄介な作業である。
【0007】
X線回折分析用として蛋白質結晶を採取することに大きな関心が寄せられているが、原則として全蛋白質は挙動が異なるため、適切な結晶化条件を見出す作業は依然として経験科学である。今日までに、選択蛋白質に有効な結晶化条件を確実に予測できる一般原理はみつかっていない。従って、その後に予定されている目的用途に関係なく、所定の蛋白質の結晶を得ることは常に「隘路」であると言われている。
【0008】
抗体は分子の柔軟性により、特に結晶化が難しい。一方、免疫グロブリン結晶の例は古くから知られている。免疫グロブリン結晶の最初の例は150年前に英国の物理学者ヘンリー・ベンス・ジョーンズ(Henry Bence Jones)により記載され、彼は骨髄腫患者の尿から異常Ig軽鎖二量体の結晶を単離している(Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62)。このような異常Igはそれ以来、ベンス・ジョーンズ蛋白質と呼ばれている。1938年には、骨髄腫患者の血清に由来する明白な異常Igの自然結晶化が記載されている(von Bonsdorf,B.et al.(1938)Folia Haematologia 59:184−208)が、これはIg重鎖オリゴマー(MW200kDa)と見受けられる。
【0009】
更に30年後に、同じく主に骨髄腫患者から単離された(2本の重鎖が2本の軽鎖に結合した)正常構造の結晶ヒト免疫グロブリンが記載されている(Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7)。デイビーズ(Davies)らはX線結晶構造解析を使用して「Dob」と呼ばれる無傷のヒト骨髄腫抗体の構造を最初に特性決定し(Terry,W.D.et al.(1968)Nature 220(164):239−41)、1971年にその三次元構造を決定した(Sarma,V.R.et al.(1971)J.Biol.Chem.246(11):3753−9)。彼らの先駆的業績に続き、IgG「Kol」(Huber,R.et al.(1976)Nature 264(5585):415−20)、IgG「Mcg」(Rajan,S.S.et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99)、及びイヌリンパ腫IgG2a(Harris,L.J.et al.(1992)Nature 360(6402):369−72)の結晶構造が得られた。
【0010】
免疫グロブリンの結晶は再溶解後もその顕著な免疫活性を維持する。1968年にニソノフ(Nisonoff)らは容易に結晶化されるウサギ抗p−アゾベンゾエート抗体「X4」について報告している(Nisonoff,A.et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 32:89−93)。抗体X4は結晶化前と結晶の再溶解後に詳細に特性決定されている。[125I]−p−ヨードベンゾエートは再溶解後のX4と特異的に強く結合することが判明し、再溶解後の結晶は更に未精製ウサギ血清に特徴的な複数の特異的オクタロニー免疫拡散反応も示した(Nisonoff et al.,1968)。コンネル(Connell)らは低温で血清から自然に結晶化する「Tem」と呼ばれるヒト骨髄腫γ免疫グロブリン−1κ(IgG−K)について記載している(Connell,G.E.et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41)。Tem結晶は形が整っていることが判明し、菱面対称であった。Temを含有する血清はアガロース免疫拡散法により詳細に特性決定されている。Tem結晶の再溶解溶液の電気泳動と免疫拡散によると、この結晶は低温沈殿法により血清から得られる物質及び単離骨髄腫蛋白質と一致することが判明した(Connell et al.,1973)。
【0011】
ミルズ(Mills)らは1983年にアルブミンに対するヒトモノクローナル抗体に起因する特殊な結晶クリオグロブリン血症について報告している(Mills,L.E.et al.(1983)Annals of Internal Med 99(5):601−4)。ここでは、非常によく似た立方結晶が2人の患者から単離された。結晶の再溶解後に電気泳動と免疫電気泳動を行った処、結晶は1:2の比でモノクローナルIgG−λとヒト血清アルブミンの2つの蛋白質成分から構成されることが分かった(Jentoft,J.E.et al.(1982)Biochem.21(2):289−294)。元の結晶の溶解後にカラムクロマトグラフィーによりこれらの成分を分取規模で分離した。分離したどちらの成分もそのままでは結晶化しなかったが、組換え後に元の二元複合体が再形成された後、結晶化した。再溶解後に分離したIgGとそのFabフラグメントの顕著な沈降特性とヒト血清アルブミンに対する免疫反応性を更に検討した結果、再溶解後に分離した2成分の再会合体は本質的に免疫性であること、即ち結晶抗体は一旦再溶解しても(ヒト血清アルブミンに対する)その天然の高度に特異的な結合特性を維持することが判明した(Mills et al.,1983)。
【0012】
最近、マーゴリン(Margolin)らは結晶抗体の潜在的治療用途について報告している(Yang,M.X.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939)。彼らは治療用モノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))を結晶化できることを発見した(Shenoy,B.et al.(2002)PCT国際出願WO/2002/072636,(Altus Biologies Inc.,USA).173pp.)。結晶トラスツズマブ懸濁液はマウス腫瘍モデルで治療効果を示したため、結晶トラスツズマブは生物活性を維持することが実証された(Yang et al.,2003)。
【0013】
b)結晶化技術
各種蛋白質の結晶化は規定方法又はアルゴリズムを使用して首尾よく実施することができない。確かに、世界的に著名な蛋白質結晶化の専門家であるエイ・マクファーソン(A.McPherson)が述べているように、過去2、30年間には目覚ましい技術進歩があった。マクファーソンは巨大分子の結晶化のための方策、ストラテジー、試薬及び装置について詳細に記載している(McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159)。しかし、彼は当業者がそれなりに成功を見込んで実際に所定の巨大分子を結晶化させることができるようにするための方法については記載していない。マクファーソンは例えば次のように述べている。「どのような手順であれ、分子間の特異的結合相互作用を助長及び促進し、一旦形成された相互作用を安定化させるために、溶媒と溶質の両者の系のパラメーターを改良及び最適化する努力を惜しんではならない。問題のこの後者態様は一般に結晶化させる特定蛋白質又は核酸の特定の化学的及び物理的性質に依存する。」。
【0014】
新規該当蛋白質を選択し、明確な処理工程を適用し、それにより所望の結晶を取得するためのアルゴリズムが存在しないことは蛋白質結晶化分野の当業者に広く認められている。
【0015】
特定蛋白質に潜在的に適切な結晶化条件をマイクロリットル規模でスクリーニングすることが可能な数種類のスクリーニングシステムが市販されている(例えばHampton 1及び2,Wizzard I及びII)。しかし、このようなスクリーニングシステムで良い結果が得られたとしても、より大規模の工業的に適用可能なバッチ規模の結晶化を必ずしも成功できるとは限らない。マイクロリットルサイズの結晶化試験を工業的寸法に転換するのは困難な作業であると言われている(Jen,A.,Merkle,H.P.(2001)Pharm.Res.18,11,1483参照)。
【0016】
バルドック(Baldock)らは結晶化条件の初期スクリーニング法としてマイクロバッチ法と蒸気拡散法の比較について報告している(Baldock,P.et al.(1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174)。1組の結晶化溶液を使用して6種類の市販蛋白質をスクリーニングしている。スクリーニングは最も一般的な蒸気拡散法と、新規蒸発技術を含むマイクロバッチ晶析法の3種類の変形を使用して実施された。確認された58種類の結晶化条件のうち、43種類(74%)はマイクロバッチ法により確認され、41種類(71%)は蒸気拡散法により確認された。26種類の条件が両方の方法により確認され、マイクロバッチ法を全く使用しなかった場合には17種類(29%)は確認されなかった。このことから明らかなように、初期結晶化スクリーニングで最も一般的に使用されている蒸気拡散法で必ずしも良い結果が得られる訳ではない。
【0017】
c)抗ヒトIL−12抗体結晶
ヒトIL−12は免疫及び炎症反応を伴う数種類の疾患(例えば多発性硬化症、クローン病及び乾癬)に関連する病理に重要な役割を果たす。従って、このようなヒトIL−12関連疾患の適切な治療方法が大いに必要とされている。1つの有望な治療アプローチは医薬有効用量の抗ヒトIL−12抗体を投与する方法である。
【0018】
各種ヒト疾患におけるヒトIL−12の役割により、IL−12活性を阻害又は抑制するように治療ストラテジーがデザインされている。特に、IL−12と結合してこれを中和する抗体がIL−12活性を阻害する手段として求められている。最初期の抗体には、IL−12を免疫したマウスのリンパ球から作製したハイブリドーマにより分泌されるマウスモノクローナル抗体(mAb)があった(例えばWO97/15327参照)。しかし、これらのマウスIL−12抗体は血清半減期が短く、所定のヒトエフェクター機能を誘発できず、マウス抗体に対する望ましくない免疫反応をヒトに誘発する(「ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応)等のマウス抗体をヒトに投与することに伴う問題によりそのインビボ使用が制限されている。
【0019】
一般に、完全マウス抗体をヒトで使用することに伴う問題を解決しようとする場合には、抗体をより「ヒト様」にするような遺伝子操作が行われている。例えば、抗体鎖の可変領域がマウスに由来し、抗体鎖の定常領域がヒトに由来するキメラ抗体が作製されている。しかし、これらのキメラヒト化抗体は依然として所定のマウス配列を保持しているため、特に長期間投与すると、望ましくない免疫反応であるヒト抗キメラ抗体(HACA)反応を誘発する恐れがある。
【0020】
米国特許第6,914,128号はヒト抗体、好ましくはヒトインターロイキン−12(hIL−12)と特異的に結合する組換えヒト抗体を開示している。同特許に開示されている好ましい抗体はhIL−12に対して親和性をもち、hIL−12活性をインビトロ及びインビボで中和する。これらの抗体又は抗体部分は例えばhIL−12活性が有害に作用する疾患に罹患したヒト対象においてhIL−12を検出し、hIL−12活性を阻害するために有用である。同発明の組換えヒト抗体を発現させるための核酸、ベクター及び宿主細胞と、組換えヒト抗体の合成方法も含まれる。結晶形態の抗hIL−12抗体又はその製造方法は米国特許第6,914,128号に特に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2002/072636号
【特許文献2】国際公開第97/15327号
【特許文献3】米国特許第6,914,128号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Jones,H.B.(1848)Philosophical Transactions of the Royal Society,London 138:55−62
【非特許文献2】von Bonsdorf,B.et al.(1938)Folia Haematologia 59:184−208
【非特許文献3】Putnam,F.W.(1955)Science 122:275−7
【非特許文献4】Terry,W.D.et al.(1968)Nature 220(164):239−41
【非特許文献5】Sarma,V.R.et al.(1971)J.Biol.Chem.246(11):3753−9
【非特許文献6】Huber,R.et al.(1976)Nature 264(5585):415−20
【非特許文献7】Rajan,S.S.et al.(1983)Mol.Immunol.20(7):787−99
【非特許文献8】Harris,L.J.et al.(1992)Nature 360(6402):369−72
【非特許文献9】Nisonoff,A.et al.(1968)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 32:89−93
【非特許文献10】Connell,G.E.et al.(1973)Canad.J.Biochem.51(8):1137−41
【非特許文献11】Mills,L.E.et al.(1983)Annals of Internal Med 99(5):601−4
【非特許文献12】Jentoft,J.E.et al.(1982)Biochem.21(2):289−294
【非特許文献13】Yang,M.X.et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100(12):6934−6939
【非特許文献14】McPherson,A.(1999)Crystallization of Biological Macromolecules.Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.159
【非特許文献15】Jen,A.,Merkle,H.P.(2001)Pharm.Res.18,11,1483
【非特許文献16】Baldock,P.et al.(1996)J.Crystal Growth 168(1−4):170−174。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明が解決しようとする課題は抗IL−12抗体に適した晶析条件、特にバッチ晶析条件を開発し、工業的な抗体結晶生産に適した容量に適用可能な晶析プロセス条件を確立することである。同時に、このような抗体の医薬品としての利用可能性に悪影響を与える恐れのある毒性物質を使用しない晶析方法を確立する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記問題は、生理的に許容可能なポリアルキレンポリオールを結晶化誘導剤として利用することによりマイクロリットル規模を上回るバッチ晶析容量で完全抗ヒトIL−12抗体の結晶を得ることが可能であるという知見により意外にも解決された。
【0025】
第1の態様において、本発明は抗ヒトIL−12抗体を結晶化するためのバッチ晶析方法として、
a)例えば好ましくは溶解形態で存在する抗体の水溶液を溶解形態の結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含有する結晶化水溶液と混合するか、あるいは固体形態の結晶化剤を加えることにより、以下により詳細に定義するようなポリアルキレンポリオール型の少なくとも1種の結晶化剤、例えばポリアルキレングリコールと混合したIL−12抗体の水溶液を準備する段階と;
(b)抗体の結晶が形成されるまで水性結晶化混合物を温置する段階を含む方法を提供する。
【0026】
別の実施形態によると、本発明の方法は結晶化を開始又は促進するために段階a)で得られた結晶化混合物に適量の既存抗ヒトIL−12抗体結晶を種晶として添加できるように実施してもよい。
【0027】
本発明の晶析方法は一般に約pH4から約6.5、特に約4.5から約6.0、約5.0から約5.8又は約5.3から約5.7の範囲の水性結晶化混合物のpH、例えば5.4、5.5又は5.6で実施される。
【0028】
更に、水性結晶化混合物には少なくとも1種の緩衝液を加えることができる。緩衝液は主成分として酢酸塩成分、特にそのアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩(例えば酢酸ナトリウム)を含むことができる。酸、特に酢酸を加えることにより塩を必要なpHに調整する。晶析方法の好ましい一実施形態において、水性結晶化混合物中の緩衝液濃度(総酢酸塩)は約0から約0.5M又は約0.02から約0.5M、例えば約0.05から約0.3M又は約0.07から約0.2M又は約0.09から約0.12Mである。
【0029】
「ポリアルキレンポリオール型の結晶化剤」について以下により詳細に定義する。
【0030】
当業者に自明の通り、この用語は広義に理解すべきであり、ポリアルキレンポリオールとその誘導体を含む。
【0031】
本発明により使用される「ポリアルキレンポリオール」とは直鎖又は分岐鎖、特に直鎖のポリC2−C6−アルキレンポリオールである。ポリエーテルは2から6個、2から4個、特に2又は3個の好ましくは隣接するヒドロキシル基と、好ましくは直鎖炭素主鎖を形成する2から6個、特に2、3又は4個の炭素原子をもつ少なくとも1種の多官能性脂肪族アルコールから形成される。非限定的な例はエチレン−1,2−ジオール(グリコール)、プロピレン−1,2−ジオール、プロピレン−1,3−ジオール、n−ブチレン−1,3−ジオール及びn−ブチレン−1,4−ジオールである。特に好ましいジオールはグリコールである。
【0032】
本発明のポリアルキレンポリオールは単一種のポリオールから構成されるものでもよいし、少なくとも2種の異なるポリオールの混合物から構成されるものでもよく、ランダムに重合したものでも、ブロックコポリマーとして存在するものでもよい。
【0033】
更に、「ポリアルキレンポリオール」なる用語はその誘導体も含む。非限定的な例はアルキルエステル及びエーテル、特にモノアルキルエーテル及びジアルキルエーテルである。「アルキル」とは特に直鎖又は分岐鎖C1−C6−アルキル残基として定義され、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル及びn−ヘキシルが挙げられる。
【0034】
本発明により使用されるポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコールは更に広範囲の分子量により特徴付けられる。数又は重量平均分子量として表した分子量範囲は一般に400から10,000、例えば1,000から8,000、2,000から6,000、3,000から6,000又は3,200から6,000、例えば3,350から6,000、3,350から5000又は3,800から4,200、特に約4,000である。
【0035】
特定ポリアルキレンポリオールはポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)と対応するランダム又はブロックコポリマーである。適切なポリオールの特定例はPEG2,000、PEG3,000、PEG3,350、PEG4,000、PEG5,000及びPEG6,000である。
【0036】
特に、結晶化混合物中のポリアルキレンポリオール濃度、特にポリエチレングリコール濃度は約5から約30%(w/v)、例えば約7から約15%(w/v)又は約9から約16%(w/v)又は約10から約14%(w/v)又は約11から約13%(w/v)である。平均分子量約4,000のポリエチレングリコールを結晶化混合物中に約11から約13%(w/v)の濃度で使用することが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、抗体蛋白質溶液と結晶化溶液を約1:1の比で混合する。従って、元の結晶化溶液中の緩衝剤/結晶化剤のモル濃度は結晶化混合物中の濃度の約2倍となる。
【0038】
一般に、上記晶析方法は約1mlから約20000リットル、又は1mlから約15000リットル、又は1mlから約12000リットル、又は約1mlから約10000リットル、又は1mlから約6000リットル、又は1mlから約3000リットル、又は1mlから約1000リットル、又は1mlから約100リットル、例えば約50mlから約8000ml、又は約100mlから約5000ml、又は約1000mlから約3000ml、又は約1リットルから約1000リットル、又は約10リットルから約500リットルの範囲のバッチ容量で実施される。
【0039】
更に、本発明の晶析方法は以下の付加的な結晶化条件のうちの少なくとも1つを満足するように実施することができる。
a)温置を約1時間から約250日間又は1から約250日間又は13から約250日間、例えば約1から約30日間又は約2から10日間実施する;
b)温置を約0℃から約50℃、例えば約4℃から約37℃又は約15℃から約25℃の温度で実施する;
c)結晶化混合物中の抗体濃度(即ち蛋白質濃度)を約0.5から280mg/ml又は約1から200mg/ml又は1から100mg/ml、例えば1.5から20mg/ml、特に約2から15mg/ml又は5から10mg/mlの範囲とする。蛋白質濃度は標準蛋白質定量法に従って測定することができる。
【0040】
好ましい一実施形態では、例えばポリエチレングリコールを結晶化剤とし、温置を約20℃の温度と約5から10mg/mlの抗体濃度で約13から60日間実施するように晶析方法を実施する。
【0041】
特に好ましい方法によると、以下の結晶化混合物の条件下で結晶化を実施する。
ポリアルキレングリコール:10から15%(w/v)PEG4000
緩衝液:0から0.3M酢酸ナトリウム(総酢酸塩)
pH:5.3から5.8
抗hIL−12濃度:3から10mg/ml
温度:18から24℃
バッチ容量:1から100リットル
撹拌:なし
期間:約1から60日間。
【0042】
上記に概説したような結晶化混合物は一般に溶液又は固体としての結晶化剤を蛋白質溶液に加えることにより得られる。どちらの溶液も緩衝溶液とすることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。元の結晶化溶液は蛋白質溶液で「希釈」されるので、元の結晶化溶液中の結晶化剤濃度と緩衝液モル濃度は一般に結晶化混合物中よりも高い。
【0043】
別の実施形態において、本発明の晶析方法は得られた結晶を乾燥する段階を更に含むことができる。適切な乾燥方法としては蒸発乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、流動層乾燥、噴霧凍結乾燥、準臨界乾燥、超臨界乾燥及び窒素ガス乾燥が挙げられる。
【0044】
別の実施形態において、本発明の晶析方法は例えば遠心、透析濾過、限外濾過又は他の一般に使用されている緩衝液交換技術により結晶化母液を別の液体又は緩衝液、例えば結晶化に使用するものとは異なる約300から8000ダルトンの範囲の分子量のポリアルキレンポリオール又は前記ポリオールの混合物を含有する液体又は緩衝液と交換する段階を更に含むことができる。別の液体又は緩衝液は、結晶の「天然」結晶化母液とは異なり、形成される結晶の溶解を妨げる「人工母液」と言うこともできる。
【0045】
本発明は更に上記晶析方法により取得可能な抗hIL−12抗体の結晶及び一般に抗hIL−12抗体の結晶にも関する。
【0046】
本発明の結晶は各種形状をとることができる。形状は一般に「剣状」と言う。特に、この用語は「板状」、「針状」又は「針束状」(ウニ状)も含む。例えば、本発明の結晶は約2から500μm又は約100から300μmの最大長(l)と約1から100の長さ/直径(l/d)比をもつ針状形態により特徴付けることができる。このような針状結晶の高さはほぼ直径の寸法内である。
【0047】
本発明の板状結晶は以下の寸法:約2から500μm又は約100から300μmの最大長(l)と約1から100の長さ/直径(l/d)比とすることができる。このような板状結晶の高さは直径よりも著しく小さい。
【0048】
本発明の針束状結晶は以下の寸法:約2から200μm又は約10から100μmの最大長(l)と約1から3の長さ/直径(l/d)比とすることができる。
【0049】
結晶はポリクローナル抗体から得ることもできるが、モノクローナル抗体から得ることが好ましい。
【0050】
特に、抗体は非キメラ又はキメラ抗体、ヒト化抗体,非糖鎖付加抗体,ヒト抗体及びマウス抗体から構成される群から選択される。特に、結晶化させる抗体は非キメラヒト抗体であり、場合により抗原結合性及び/又は効力を改善するように更に処理されている。
【0051】
好ましくは、結晶は例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体等のIgG抗体から得られる。特に、抗体はIgG1群の完全抗ヒトIL−12抗体である。
【0052】
好ましい一実施形態において、結晶はいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−10M以下のKdと1×10−3s−1以下のkoff速度定数でhIL−12から解離する単離ヒト抗体から作製される。
【0053】
特に、結晶は配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体から作製することができる。
【0054】
好ましいヒト抗体は例えば米国特許第6,914,128号に記載されている。
【0055】
抗体ABT−874から作製された結晶が最も好ましい。
【0056】
別の実施形態において、本発明は(a)上記に定義したような抗hIL−12抗体の結晶と、(b)抗体結晶を安定に維持する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を含有する固体、液体又は半固体医薬組成物に関する。
【0057】
本発明の別の態様は(a)本明細書に定義する抗hIL−12抗体の結晶と、(b)抗体結晶を封入又は包埋する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を含有する固体、液体又は半固体医薬組成物に関する。組成物には(c)抗体結晶を安定に維持する少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤を更に添加することができる。更に、封入と包埋を併用してもよい。
【0058】
特に、本発明の組成物は約1mg/mlを上回る抗体結晶濃度とすることができ、特に約200mg/ml以上、例えば約200から約600mg/ml又は約300から約500mg/mlとすることができる。
【0059】
賦形剤は少なくとも1種の場合により生分解性のポリマー担体又は少なくとも1種の油類もしくは脂質担体を含むことができる。
【0060】
ポリマー担体はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマーから構成される群から選択される1種以上のポリマーとすることができる。
【0061】
油類(又は油性液体)は油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、液体トリグリセリド、液体蝋及び高級アルコールから構成される群から選択される1種以上の油類(又は油性液体)とすることができる。
【0062】
脂質担体は脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質から構成される群から選択される1種以上の脂質とすることができる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物起源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0063】
好ましい一実施形態において、組成物は約10から約400又は約50から約300mg/mlの範囲の抗体結晶濃度で上記抗hIL−12抗体結晶を含有する注射用組成物である。
【0064】
別の態様において、本発明は約100mg/mlを上回る抗体結晶濃度、例えば約150から約600mg/ml又は約200から約400mg/mlで上記抗hIL−12抗体結晶を含有する結晶スラリーに関する。
【0065】
本発明は更に有効量の上記完全抗hIL−12抗体結晶又は有効量の上記組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法に関する。非経口経路、経口経路又は注射により組成物を投与することが好ましい。
【0066】
更に、本発明は治療有効量の上記抗体結晶を投与する段階を含む対象におけるhIL−12関連疾患の治療方法に関する。
【0067】
特に、hIL−12関連疾患は関節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎微小血管炎、慢性活動性肝炎、ぶどう膜炎、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺性内分泌不全症候群I型及び多腺性内分泌不全症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラジミア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞動脈炎、原発性硬化性肝炎、特発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣不全、早発卵巣不全、肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、ショーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性ないしルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫性低血糖症、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、NOS腎疾患、糸球体腎炎、腎微小血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、特発性又はNOS男性不妊症、精子自己免疫疾患、多発性硬化症(全サブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病続発性肺高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ぶどう膜炎、原発性血管炎及び白斑から選択される。本発明のヒト抗体及び抗体部分は自己免疫疾患、特にリウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎等の炎症を伴う自己免疫疾患を治療するために使用することができる。
【0068】
更に、本発明は上記hIL−12関連疾患の治療用医薬組成物の製造用としての上記完全抗hIL−12抗体結晶の使用に関する。
【0069】
最後に、本発明は医薬用としての上記抗hIL−12抗体結晶を提供する。
【0070】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点と本発明自体は添付図面を参考に以下の好ましい実施形態の記載から更によく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】結晶化におけるABT−874結晶の光学顕微鏡写真を示す。
【図2】ABT−874結晶の倍率1,250倍のSEMを示す。
【図3】ABT−874結晶の倍率10,000倍のSEMを示す。
【図4】ABT−874結晶の倍率3,227倍のSEMを示す。
【図5】ABT−874結晶の倍率15,000倍のSEMを示す。
【図6A】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。A)ABT−874結晶緩衝液とpI8.4、8.5、10.1及び10.4のpIマーカー。
【図6B】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。B)ABT−874結晶;同一pIマーカー及びpI=9.29の特徴的ABT−874シグナル。
【図6C】ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験の結果を示す。C)参照標準;同一pIマーカー及びpI=9.29の特徴的ABT−874シグナル。
【図7】実施例28(撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針束状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図8】実施例32(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図9】実施例33(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図10】実施例34b(非撹拌下の結晶化)により得られた結晶(針状)の光学顕微鏡写真を示す。
【図11】ABT−874サンプルの二次導関数IRスペクトルを示す。図11AはBioATRセルにより記録した結晶懸濁液のスペクトルを示す。図11BはAquaSpecセルにより記録した再溶解結晶のスペクトルを示す。実線は結晶ABT−874からのサンプルを表し、破線は液体標準を表す。分かり易くするためにサンプルと標準の間の補正値を挿入した。
【図12】0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に22%PEG4,000緩衝液を加えた中に50mg/mL結晶蛋白質濃度で3カ月間25℃で保存したABT−874サンプルの二次導関数IRスペクトルを示す。図11AはBioATRセルにより記録した結晶懸濁液のスペクトルを示す。図11BはAquaSpecセルにより記録した再溶解結晶のスペクトルを示す。実線は結晶ABT−874からのサンプルを表し、破線は液体標準を表す。分かり易くするためにサンプルと標準の間の補正値を挿入した。
【図13】種晶添加時と非添加時におけるABT−874の40mLバッチ晶析(例えばバッチからのABT−874質量に対して3.25%結晶化蛋白質を種晶材料として使用)。R2は夫々種晶非添加バッチでは0.9711であり、種晶添加バッチでは0.9763である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
A.定義
「バッチ晶析方法」は結晶化させようとする抗体の溶液に好ましくは溶解形態の結晶化剤を含有する結晶化溶液を加える段階を含む。
【0073】
「マイクロスケール晶析方法」は例えば蒸気拡散法に基づくことができ、結晶化剤を含有するリザーバ緩衝液とマイクロリットル範囲の小容量の抗体溶液を混合する段階と;混合物の液滴を密閉容器に入れてリザーバ緩衝液のアリコートの隣に並べる段階と;蒸気拡散により液滴とリザーバの間で溶媒を交換させる段階を含み、この間に液滴の溶媒含量が変化し、適切な結晶化条件に達すると、結晶化が認められる。
【0074】
「結晶化剤」(例えばポリエチレングリコール)は結晶化させようとする抗体の結晶形成を助長する。
【0075】
「結晶化溶液」は溶解形態の結晶化剤を含有する。好ましくは、溶液は水性系であり、即ちその液体成分は主に水から構成される。例えば、80から100重量%又は95から100重量%又は98から100重量%を水から構成することができる。
【0076】
抗体「結晶」は蛋白質の物質の固体状態の1形態であり、第2の固体形態即ち原則的に無秩序な不均質固体として存在する非晶質状態から区別される。結晶は一般に格子と呼ばれる規則的な三次元構造をもつ。抗体結晶は抗体分子の規則的な三次元配列を含む(Giege,R.and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ed.,pp.1−16,Oxford University Press,New York(1999)参照)。
【0077】
本発明により結晶化された「完全」ないし「無傷」の抗hIL−12抗体はその抗原であるヒトIL−12をインビトロ及び/又はインビボで認識してこれと結合することが可能な機能的抗体である。抗体は抗体とその抗原の結合に関連する患者の後続免疫系反応、特に直接細胞傷害作用、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を開始することができる。抗体分子は相互に共有結合した2本の同一の重鎖(各々MW約50kDa)と、各々重鎖の一方と共有結合した2本の同一の軽鎖(各々MW約25kDa)から構成される構造をもつ。4本鎖は典型的「Y」字型モチーフとして配置されている。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVRないしVHと略称する)と重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3領域から構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRないしVLと略称する)と軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1個の領域CLから構成される。VH領域とVL領域は更に相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域と、その間に配置された比較的保存度の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に分けることができる。各VH及びVLはアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3個のCDRと4個のFRから構成される。完全な抗体分子は2個の抗原結合部位をもち、即ち「二価」である。これらの2個の抗原結合部位は単一のhIL−12抗原に特異的であり、即ち抗体は「単一特異性」である。
【0078】
「モノクローナル抗体」はBリンパ球(B細胞)の単一クローンに由来し、同一の抗原決定基を認識する抗体である。完全モノクローナル抗体は2本の完全な重鎖と2本の完全な軽鎖を含む上記典型的分子構造をもつ抗体である。モノクローナル抗体は抗体産生B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合させ、細胞培養で持続的にモノクローナル抗体を産生するB細胞ハイブリドーマを作製することにより生産するのが通例である。例えばファージディスプレイ技術を使用して細菌、酵母、昆虫又は哺乳動物細胞培養でモノクローナル抗体を発現させる方法;完全ヒトB細胞ゲノムを含み、これを発現するように改変されたウシ、ヤギ、ブタ、ウサギ、ニワトリ又はトランスジェニックマウス等の遺伝子改変動物におけるインビボ生産;あるいはタバコやトウモロコシ等の遺伝子改変植物における生産等の他の生産方法も利用できる。このような全起源に由来する抗hIL−12抗体を本発明により結晶化させることができる。
【0079】
本発明により結晶化させるモノクローナル抗体としては重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定種に由来又は特定抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同であり、重鎖及び/又は軽鎖のその他の部分が別の種に由来又は別の抗体抗体分類もしくは亜分類に属する抗体中の対応配列と同一又は相同である「キメラ」抗hIL−12抗体が挙げられる。例えば、マウス/ヒトキメラはマウス抗体の可変領域抗原結合部分とヒト抗体に由来する定常領域部分を含む。
【0080】
非ヒト(例えばマウス)抗hIL−12抗体の「ヒト化」形態も本発明に含まれる。ヒト化抗体は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリンの1個以上の相補性決定領域(CDR)又は超可変ループ(HVL)からの残基が所望機能をもつマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等の非ヒト種のCDR又はHVLからの残基で置換されたヒト免疫グロブリンである。抗原結合親和性を改善するためにヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基を対応する非ヒト残基で置換することができる。更に、ヒト化抗体は対応するヒト又は非ヒト抗体部分のどちらにも存在しない残基を含むことができる。抗体効力を更に改善するためにこれらの改変が必要となる場合がある。
【0081】
「ヒト抗体」ないし「完全ヒト抗体」はヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列をもつ抗体又は組換え生産された抗体である。本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ抗体を意味する。本発明のヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばランダムもしくは部位特異的インビトロ突然変異誘発又はインビボ体細胞突然変異により誘導される突然変異)を例えばCDR、特にCDR3に含むことができる。他方、本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はマウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフトした抗体を意味しない。
【0082】
本明細書で使用する「組換えヒト抗体」なる用語は組換え手段により作製、発現、創製又は単離された全ヒト抗体を意味し、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylor,L.D.et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列のスプライシングを伴う他の任意手段により作製、発現、創製もしくは単離された抗体が挙げられる。このような組換えヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ。しかし、所定実施形態では、このような組換えヒト抗体にインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合にはインビボ体細胞突然変異誘発)するので、組換え抗体のVH領域とVL領域のアミノ酸配列はヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来するが、インビボヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0083】
本明細書で使用する「中和抗体」(又は「hIL−12活性を中和した抗体」)なる用語はhIL−12と結合することによりhIL−12の生物活性を阻害する抗体を意味する。hIL−12の生物活性のこの阻害はhIL−12により誘導される細胞増殖及びhIL−12とhIL−12受容体の結合又はhIL−12により誘導される白血球のインビボ減少等のhIL−12生物活性の1種類以上の指標を測定することによりインビトロ又はインビボで評価することができる。
【0084】
hIL−12生物活性のこれらの指標は当分野で公知の数種の標準インビトロ又はインビボアッセイの1種以上により評価することができる。フィトヘマグルチニン芽細胞及びマウス2D6細胞でhIL−12により誘導される細胞増殖の阻害によりhIL−12活性を中和する抗体の能力を評価することが好ましい。
【0085】
「親和性成熟」抗hIL−12抗体は1個以上の超可変領域の1カ所以上の改変により、親抗体に比較して抗体の抗原親和性が改善された抗体である。親和性成熟抗体は標的抗原に対する親和性値がナノモル又はピコモルとなる。親和性成熟抗体は当分野で公知の方法により生産される。Marks et al.(1992),Bio/Technology 10:779−783はVH及びVL領域シャフリングによる親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発はBarbas et al.(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813;Scier et al.(1995)Gene 169:147−155;Yelton et al.(1995)J.Immunol.155:1994−2004;Jackson et al.(1995)J.Immunol.154(7):3310−9;及びHawkins et al.(1992)J.Mol Biol.226:889−896に記載されている。
【0086】
本明細書で使用する「単離抗体」とは、異なる抗原特異性をもつ他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えばhIL−12と特異的に結合する単離抗体はhIL−12以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。他方、hIL−12と特異的に結合する単離抗体は他の種に由来するhIL−12分子等の他の抗原に対して交差反応性をもつ場合がある。更に、単離抗体は他の細胞材料及び/又は化学薬品を実質的に含まない場合がある。
【0087】
本明細書で使用する「ヒトインターロイキン12」(本明細書ではhIL−12又はIL−12と略称する)なる用語は主にマクロファージと樹状細胞により分泌されるヒトサイトカインを意味する。この用語はいずれもジスルフィド橋と結合した35kDサブユニット(p35)と40kDサブユニット(p40)を含むヘテロダイマー蛋白質を意味する。このヘテロダイマー蛋白質を「p70サブユニット」と言う。ヒトIL−12の構造は更に例えばKobayashi,et al.(1989)J.Exp Med.170:827−845;Seder,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:10188−10192;Ling,et al.(1995)J.Exp Med.154:116−127;Podlaski,et al.(1992)Arch.Biochem.Biophys.294:230−237に記載されている。ヒトIL−12なる用語は標準組換え発現法により作製可能な組換えヒトIL−12(rhIL−12)を意味する。
【0088】
本明細書で使用する「koff」なる用語は抗体が抗体/抗原複合体から解離する解離速度定数を意味する。
【0089】
本明細書で使用する「Kd」なる用語は特定抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する。
【0090】
本発明により結晶化された特定「親」抗hIL−12抗体の「機能的等価物」とは同一の抗原特異性を示すが、アミノ酸レベル又は糖鎖付加レベルで「親」抗体の分子組成と相違する抗体である。相違は単に結晶化条件が本明細書に開示するようなパラメーター範囲内であるという程度でよい。
【0091】
抗体結晶の「封入」とは組込まれる結晶がコーティング材料の少なくとも1層により各々被覆された製剤を意味する。好ましい一実施形態において、このようなコーティング付き結晶は溶解速度を持続させることができる。
【0092】
抗体結晶の「包埋」とは封入の有無に拘わらず、結晶が分散状態で固体、液体又は半固体担体に組込まれた製剤を意味する。このような包埋結晶化抗体分子は担体から制御下で持続的に放出又は溶解させることができる。
【0093】
B.晶析方法
本発明の晶析方法は原則として任意抗hIL−12抗体に適用可能である。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体は各々糖鎖付加又は非糖鎖付加型のキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又は非ヒト(例えばマウス)抗体とすることができる。特に、前記方法はABT−874とその機能的等価物に適用可能である。
【0094】
好ましくは、抗hIL−12抗体はIgG抗体、特にIgG1群の抗ヒトIL−12抗体である。
【0095】
特に指定しない限り、本発明の晶析方法は当分野で周知の技術的装置、化学薬品及び手法を利用する。しかし、上記に説明したように、本発明は特定結晶化条件、特に特定結晶化剤を選択し、場合により更に対応物質(緩衝液、抗体、結晶化剤)の特定pH条件及び/又は濃度範囲も選択することにより、抗体、特にhIL−12に対する非キメラヒト抗体の安定な結晶を再現可能に大規模製造することが初めて可能になり、これらの結晶を更に処理し、非常に有利な優れた医薬組成物の活性成分を形成できるという驚くべき発見に基づく。
【0096】
晶析方法を実施するための出発材料は通常、結晶化させようとする抗体の濃厚溶液を含む。蛋白質濃度は例えば約5から約300mg/ml、好ましくは約5から約200mg/ml、好ましくは約5から約75mg/mlの範囲とすることができる。溶液には溶解抗体を安定化させる添加剤を添加することができ、添加剤を予め除去するとよいと思われる。これは緩衝液交換工程を実施することにより実現することができる。
【0097】
好ましくは、結晶化を実施するための出発材料はpHを約3.2から約8.2又は約4.0から約8.0、特に約4.5から約6.5、好ましくは約5.0から約5.5の範囲に調整した水溶液中に抗体を含有する。pHは適切な緩衝液を終濃度約1から約500mM、特に約1から約500mM又は約1から約10mMで添加することにより調整することができる。溶液を更に安定化させるために、例えば溶液の総重量に対して約0.01から約15又は約0.1から約5又は約0.1から約2重量%の割合で塩、糖、糖アルコール及び界面活性剤等の添加剤を溶液に添加することができる。賦形剤は医薬製剤に通常添加される生理的に許容可能な化合物から選択することが好ましい。非限定的な例として、賦形剤としてはNaCl等の塩;ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)等の界面活性剤;スクロース、トレハロース等の糖;マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール;リン酸緩衝系、上記のようなリン酸水素ナトリウム緩衝液及びリン酸水素カリウム緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、マレイン酸緩衝液又は琥珀酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液等の緩衝剤;ヒスチジン、アルギニン及びグリシン等のアミノ酸が挙げられる。
【0098】
緩衝液交換は例えば透析、透析濾過又は限外濾過等の常法により実施することができる。
【0099】
出発材料として使用する水溶液の初期蛋白質濃度は約0.5から約200又は約1から約50mg/mlの範囲とすべきである。
【0100】
(1mlから20000リットルの範囲であり得る)目的最終バッチ寸法に応じて、初期容量の抗体水溶液を不活性材料(例えばガラス、ポリマー又は金属)製の適当な容器(例えば液体容器、ビン又はタンク)に入れる。水溶液の初期容量は最終バッチ寸法の約30から80%、通常は約50%に対応する量とすることができる。
【0101】
必要に応じて、容器に充填後の溶液を標準条件に設定する。特に、温度を約4℃から約37℃の範囲に調整する。
【0102】
次に、場合により抗体溶液と同様に予め条件設定した適当な濃度の結晶化剤を含有する結晶化溶液を抗体溶液に加える。
【0103】
結晶化溶液の添加は2液の混合を助長するために場合により温和な撹拌下に連続的又は不連続的に実施する。蛋白質溶液を撹拌下に添加し、結晶化溶液(又はその固体形態の結晶化剤)を制御下に添加する条件下で添加を実施することが好ましい。
【0104】
上記のようなポリアルキレンポリオール、特にポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、又は上記のような少なくとも2種類の異なるポリアルキレングリコールの混合物を結晶化剤として添加することにより、抗体結晶の形成を開始する。結晶化溶液は結晶化混合物中のポリアルキレンポリオールの終濃度を約5から30%(w/v)の範囲とするために十分な濃度の結晶化剤を含有する。
【0105】
好ましくは、結晶化溶液は更に結晶化混合物のpHを約4から6の範囲に調整させるのに適した濃度の酸性緩衝液、即ち抗体溶液の緩衝液とは異なる緩衝液を含有する。
【0106】
結晶化溶液の添加の完了後、最大収率の抗体結晶を得るために、こうして得られた混合物を約1時間から約250日間更に保温してもよい。必要に応じて、混合物を例えば撹拌、温和に撹拌、回転又は他の方法で運動させてもよい。
【0107】
最後に、公知方法、例えば濾過又は遠心、例えば室温又は4℃にて約200から20,000rpm、好ましくは500から2,000rpmで遠心することにより、得られた結晶を分離することができる。残りの母液は捨ててもよいし、更に処理してもよい。
【0108】
必要に応じて、こうして単離した結晶を洗浄後、乾燥してもよいし、懸濁抗体の保存及び/又は最終利用に適した別の溶媒系に母液を交換してもよい。
【0109】
本発明により形成された抗体結晶は既に上述したように種々の形状をとることができる。治療投与では、結晶の寸法は投与経路により異なり、例えば皮下投与の場合の結晶寸法は静脈内投与よりも大きくすることができる。
【0110】
蛋白質結晶と低分子量有機及び無機分子の結晶の両者について従来記載されているように、結晶の形状は特定の付加的な添加剤を結晶化混合物に添加することにより変えることができる。
【0111】
必要に応じて、結晶が実際に抗体の結晶であることを検証してもよい。抗体の結晶を複屈折について顕微鏡分析することができる。一般に、内部立方対称以外の結晶では偏光の偏光面が回転する。更に別の方法では、結晶を単離し、洗浄し、再可溶化させ、SDS−PAGEにより分析し、場合により抗Fc受容体抗体で染色することができる。場合により、再可溶化させた抗体を更に標準アッセイによりそのhIL−12との結合について試験することもできる。
【0112】
本発明により得られた結晶を更に相互に架橋させてもよい。このような架橋は結晶の安定性を増すことができる。結晶の架橋方法は例えば米国特許第5,849,296号に記載されている。グルタルアルデヒド等の二官能性試薬を使用して結晶を架橋させることができる。架橋させたら、結晶を凍結乾燥し、例えば診断又は治療用途に備えて保存することができる。
【0113】
場合により、結晶を乾燥することが望ましい場合がある。窒素ガス等の不活性ガス、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、蒸発、トレー乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥又はローラー乾燥等により結晶を乾燥することができる。適切な方法は周知である。
【0114】
本発明により形成された結晶は元の結晶化溶液に維持してもよいし、洗浄し、不活性担体又は成分等の他の物質を加え、本発明の結晶を含有する組成物又は製剤を形成してもよい。このような組成物又は製剤は例えば治療及び診断用途で使用することができる。
【0115】
好ましい一実施形態は製剤の結晶を賦形剤により包埋又は封入するように適切な担体又は成分を本発明の結晶に添加する方法である。適切な担体はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマーないしPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリコサミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマー、SAIB、脂肪酸及び脂肪酸塩、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、リン脂質、糖脂質、ステロール及び蝋並びに関連類似物質の非限定的な群から選択することができる。蝋は更に天然物と合成物に分類される。天然物としては蜜蝋、カルナウバ蝋又はモンタン蝋等の植物、動物又は鉱物起源から得られる蝋が挙げられる。合成蝋製品の例としては塩素化ナフタレンとエチレンポリマーが挙げられる。
【0116】
C.組成物
本発明の別の態様は少なくとも1種の担体/賦形剤と共に抗hIL−12抗体結晶を含有する組成物/製剤に関する。
【0117】
製剤は固体、半固体又は液体とすることができる。
【0118】
本発明の製剤は必要な純度の抗体を担体、賦形剤及び/又は安定剤等の生理的に許容可能な添加剤(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edn,Osol,A.Ed.(1980)参照)と懸濁液として混合することにより保存及び/又は使用に適した形態で製造され、凍結乾燥又は別の方法で乾燥される。場合により、例えば別の抗体、生体分子、化学的又は酵素により合成された低分子量分子等の他の活性成分も加えてもよい。
【0119】
許容可能な添加剤は使用する用量及び濃度でレシピエントに非毒性である。その非限定的な例を以下に挙げる。
−酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸等の酸性化剤。
−ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、イソブタン、プロパン、トリクロロモノフルオロメタン等のエアゾール用噴射剤。
−二酸化炭素、窒素等の空気置換剤;
−メチルイソブチルケトン、オクタ酢酸スクロース等のアルコール変性剤;
−アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミン等のアルカリ化剤;
−ジメチコン、シメチコン等の消泡剤。
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズアルコニウム溶液、塩化ベンズエトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール等の抗菌防腐剤。
−アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、トコフェロール賦形剤等の酸化防止剤;
−酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、第一リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム溶液、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、ヒスチジン等の緩衝剤。
−エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び塩、エデト酸等のキレート剤;
−カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬品用艶出し剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステメ、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルフタル酸エステル、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、ゼイン、ポリアミノ酸、他のポリマー(例えばPLGA等)、及びSAIB等のコーティング剤。
−酸化第二鉄等の着色剤。
−エチレンジアミン四酸化及び塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールアミド、硫酸オキシキノリン等の錯化剤。
−塩化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等の乾燥剤。
−アラビアガム、コレステロール、ジエタノールアミン(付加物)、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ及びジグリセリド、モノエタノールアミン(付加物)、オレイン酸(付加物)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミン、乳化蝋等の乳化及び/又は可溶化剤。
−粉末セルロース、精製珪藻土等の濾過助剤。
−アネトール、ベンズアルデヒド、エチルバニリン、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、オレンジ花油、ハッカ、ハッカ油、ハッカ精、バラ油、高濃度バラ水、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ、バニリン等の香味剤及び香料。
−ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク等の流動促進剤及び/又は凝結防止剤。
−グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の湿潤剤;
−ラノリン、無水ラノリン、親水性軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ペトロラタム、親水性ペトロラタム、白色ペトロラタム、バラ水軟膏、スクアレン等の軟膏基剤。
−ヒマシ油、ラノリン、鉱物油、ペトロラタム、ギ酸ベンジル、クロロブタノール、フタル酸ジエチル、ソルビトール、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジアセチル、グリセリン、グリセロール、モノ及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、エタノール等の可塑剤。
−低分子量(約10残基未満)等のポリペプチド;
−血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等の蛋白質;
−酢酸セルロース膜等のポリマー膜。
−アセトン、アルコール、希アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、落花生油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、胡麻油、注射用水、注射用滅菌水、持続洗浄用滅菌水、精製水、液体トリグリセリド、液体蝋、高級アルコール等の溶剤。
−粉末セルロース、活性炭、精製珪藻土、二酸化炭素吸着剤、水酸化バリウム、石灰、ソーダ石灰等の吸着剤。
−水素化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステル蝋、硬質脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化蝋、白蝋、黄蝋等の硬化剤。
−カカオバター、硬質脂肪、ポリエチレングリコール等の坐剤基剤;
−アラビアガム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶及びカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガム、キサンタンガム等の懸濁及び/又は増粘剤;
−アスパルテーム、デキストレート、デキストロース、デキストロース賦形剤、フルクトース、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクロース、圧縮糖、粉糖、シロップ等の甘味剤;
−アラビアガム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、糊化デンプン、シロップ等の錠剤結合剤。
−炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、糊化デンプン、スクロース、圧縮糖、粉糖等の錠剤及び/又はカプセル希釈剤;
−アルギン酸、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、糊化デンプン等の錠剤崩壊剤。
−ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、軽鉱物油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、精製ステアリン酸、タルク、水素化植物油、ステアリン酸亜鉛等の錠剤及び/又はカプセル滑沢剤;
−デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の浸透圧調節剤。
【0120】
溶媒:香味剤及び/又は甘味剤入り芳香エリキシル、化合物ベンズアルデヒドエリキシル、イソアルコールエリキシル、ハッカ水、ソルビトール溶液、シロップ、トルーバルサムシロップ。
−油性アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、軽鉱物油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、落花生油、杏仁油、胡麻油、大豆油、スクアレン、固体担体粒状糖、注射用滅菌静菌水、静菌塩化ナトリウム注射液、液体トリグリセリド、液体蝋、高級アルコール等の溶媒。
−シクロメチコン、ジメチコン、シメチコン等の撥水剤;
−塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、水素化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル50、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及びチロキサポール等の湿潤及び/又は可溶化剤。
【0121】
安定性及び/又は持続放出を実現するために結晶にポリマー担体を添加してもよい。このようなポリマーとしては生体適合性で生分解性のポリマーが挙げられる。ポリマー担体は単一ポリマー種でもよいし、複数のポリマー種の混合物から構成してもよい。ポリマー担体の非限定的な例は上記に挙げた通りである。
【0122】
好ましい成分又は賦形剤の例を以下に挙げる。
−グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、ヒスチジン等のアミノ酸の塩;
−グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボース等の単糖類;
−ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロース等の二糖類;
−マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲン等の多糖類;
−マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトール等のアルジトール;
−グルクロン酸、ガラクツロン酸;
−メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−(3−シクロデキストリン)等のシクロデキストリン類;
−塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機塩類;
−酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩等の有機塩類;
−アラビアガム、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン及び他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、蝋、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体等の乳化又は可溶化剤;並びに
−寒天、アルギン酸とその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースとその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチロキサポール等の増粘剤。
【0123】
本明細書に記載する製剤は更に有効量の結晶抗体を含有する。特に、本発明の製剤は「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体結晶を含有することができる。「治療有効量」とは必要な用量と投与期間で所望治療結果を達成するために有効な量を意味する。抗体結晶の「治療有効量」は個体の疾患状態、年齢、性別及び体重や、個体に所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子により変動し得る。治療有効量は抗体の有益な治療作用が毒性ないし有害作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは必要な用量と投与期間で所望予防結果を達成するために有効な量を意味する。一般に、疾患以前又は疾患の初期段階の対象では予防用量を使用するので、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0124】
適切な用量は標準方法を使用して容易に決定することができる。抗体を患者に一度に投与するか又は複数回に分けて投与すると適切である。例えば1回もしくは2回以上に分けて投与するか、又は連続輸液により投与するかに関係なく、上記因子に応じて抗体約1μg/kgから約50mg/kg、例えば0.1から20mg/kgが患者に投与する初期候補用量である。典型的な1日又は1週間用量としては、症状に応じて約1μg/kgから約20mg/kg又はそれ以上が挙げられ、疾患症状の所望の抑制が得られるまで投与を繰返す。しかし、他の投与レジメンが有用な場合もある。場合により、製剤は再可溶化時に少なくとも約1g/L以上の濃度の抗体を含有する。他の実施形態では、抗体濃度は再可溶化時に少なくとも約1g/Lから約100g/Lとする。
【0125】
抗体の結晶又はこのような結晶を含有する製剤は単独で投与してもよいし、医薬製剤の一部として投与してもよい。非経口、経口又は局所経路で投与することができる。例えば、経口、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼球、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所又は頭蓋内経路で投与することができ、あるいは口腔内に投与してもよい。投与技術の特定例としては、肺吸入、病巣内投与、有針注射、乾燥粉末吸入、皮膚エレクトロポレーション、エアゾール送達及び無針注射技術(無針皮下投与を含む)が挙げられる。
【0126】
以下、非限定的な実施例により本発明を更に詳細に説明する。当業者は以下の記載の概論部分と自身の一般知識に基づき、過度の実験を要することなしに本発明の他の実施形態に想到できよう。
【実施例】
【0127】
A.材料
a)蛋白質
凍結モノクローナル抗体(mAb)ABT−874はAbbott Laboratoriesから入手した。全実験は初期mAb濃度64mg/mlの製品ロットから実施した。
【0128】
b)精製化学薬品
酢酸ナトリウムはGrussing GmbH,Filsumから入手した。各種重合度のポリエチレングリコールはClariant GmbH,Sulzbachから入手した。更に、所定のマイクロスケール実験には市販結晶化スクリーニングキット及び試薬(Hampton Research,Nextal Biotechnologies)を使用した。全化学薬品はSigma−Aldrich,Steinheim又はMerck,Darmstadtから入手した。
【0129】
B.一般方法
a)ABT−874原薬の融解
ABT−874は撹拌下の水浴中で25℃にて融解した。
【0130】
b)緩衝液交換−方法A
ABT−874溶液のアリコートを30KDa MWCO Vivaspin 20コンセントレーター(Vivascience)にピペットで注入した。蛋白質サンプルを新しい緩衝液で10倍に希釈し、4℃にて5,000×gで遠心(Sigma 4K 15実験室用遠心機)することにより、サンプル容量を元のサンプル容量に戻した。希釈/遠心工程を1回繰返し、元のサンプル緩衝液の100倍希釈液を得た。蛋白質濃度の調整後、0.2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0131】
b)緩衝液交換−方法B
ABT−874溶液のアリコートをSLIDE−A−LYZER透析カセット(Pierce Biotechnology Inc.)に入れた。選択緩衝液を充填したビーカーに透析カセットを入れ、4℃で一晩撹拌下に緩衝液交換を行った。蛋白質濃度の調整後、2μmシリンジ駆動式フィルターユニットで溶液を滅菌濾過した。
【0132】
c)OD280−蛋白質濃度測定
ThermoSpectronics UV1装置を使用し、消光係数1.42cm2mg−1を適用して波長280nmで蛋白質濃度を推定した。このために、結晶化スラリーのアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の残留蛋白質濃度を測定した。
【0133】
d)pH測定
pH測定はMettler Toledo MP220 pH計を使用して実施した。 Inlab 413電極とInlab 423微小電極を利用した。
【0134】
e)晶析方法
e1)マイクロスケール結晶化−シッティングドロップ蒸気拡散Hydra II
Hydra II結晶化ロボットとGreiner 96ウェルプレート(3ドロップウェル,Hampton Research)を使用して初期結晶化スクリーニングを実施した。プレートをセットアップ後、ウェルをClearsealフィルム(Hampton Research)で密閉した。
【0135】
e2)マイクロスケール結晶化−ハンギングドロップ蒸気拡散法
VDXプレート(シーラント付き,Hampton Research)と夫々OptiClearプラスチックカバースライド(正方形,Hampton Research)又はシリコンコートガラスカバースライド(円形,Hampton Research)を使用してハンギングドロップ蒸気拡散実験を実施した。リザーバ溶液の調製後、カバースライド上でリザーバ溶液1滴を蛋白質溶液1滴と混合し、液滴がリザーバの上に垂れ下がるようにカバースライドを裏返してウェルを密閉した。
【0136】
e3)バッチ晶析−方法A(24ウェルプレート)
ウェル内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液(500μl)と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルを接着テープで密閉した。
【0137】
e4)バッチ晶析−方法B(エッペンドルフ反応チューブ)
1.5mL又は2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0138】
e5)バッチ晶析−方法C(ファルコンチューブ,撹拌なし)
15mL又は50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。
【0139】
e6)バッチ晶析−方法D(ファルコンチューブ,撹拌)
15mL又は50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液を等量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。蓋をした直後にチューブを実験室用振盪器(GFL3013又はGFL3015)に載せるか、あるいは旋回により撹拌した。これらの方法を適用することにより、サンプルに撹拌器を挿入するのを避けた。
【0140】
f)SDS−PAGE
蛋白質濃度を8μg/20μLに調整することによりサンプルを作製した。ブロモフェノールブルーを添加したSDS/Tris/グリセリンでサンプルを希釈した。Invitrogen NuPage 10%Bis−Tris Gels、NuPage MES SDS Running Buffer及びMark12 Wide Range Protein Standardsを使用して定性的SDS PAGE分析を実施した。サンプル20μLをゲルポケットにピペットで注入した。ゲルを泳動させ、酢酸/メタノール試薬で固定後、Novex Colloidal Blue Stain Kitを使用して染色を実施した。Invitogen Gel−Dry乾燥液を使用してゲルを乾燥した。
【0141】
g)光学顕微鏡分析
Zeiss Axiovert 25又はNikon Labophot顕微鏡を使用して結晶を観察した。後者には偏光フィルターセットとJVC TK C1380カラービデオカメラを接続した。
【0142】
h)SE−HPLC
ABT−874サンプルの凝集レベルをSE−HPLCにより判定した。Dionex P680ポンプと、ASI−100オートサンプラーと、UVD170U検出器を使用した。批准Abbott標準プロトコール(A−796874.0−ABT874,J695)を適用してAmersham Bioscience Superdex 200 10/300 GLゲル濾過カラムにより凝集種を単量体から分離した。
【0143】
C.蒸気拡散結晶化実験
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液とリザーバ溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0144】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0145】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0146】
(実施例1)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
ABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0147】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液と(完全に脱塩し、場合により予め蒸留した)ミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約6%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0148】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0149】
(実施例2)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0150】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約6%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0151】
結果:評価した24個のウェルのうち、約16%のPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0152】
(実施例3)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG400を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0153】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0154】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0155】
(実施例4)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0156】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0157】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0158】
(実施例5)
蛋白質濃度と設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
別の蛋白質濃度と別の設定を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0159】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG400溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG400を約30%w/vから約40%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約5.7又は6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0160】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0161】
(実施例6)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG10,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG10,000を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0162】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG10,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG10,000を約4%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0163】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0164】
(実施例7)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG10,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG10,000を使用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0165】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG10,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG10,000を約4%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0166】
結果:評価した12個のウェルから結晶は認められなかった。
【0167】
(実施例8)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0168】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約22%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約4.2、4.7、5.2、5.7、6.2及び6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0169】
結果:評価した48個のウェルから結晶は認められなかった。
【0170】
(実施例9)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000と別の設定を使用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0171】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約8%w/vから約14%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは夫々約5.7、6.2及び6.7とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0172】
結果:評価した24個のウェルのうち、本実施例で使用した全pHにおいて約10から14%のPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0173】
(実施例10)
ハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムの併用のグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0174】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約8%w/vから約12%w/vまで2%刻みで変化させた。同時に、PEG400を夫々約26%w/v、28%w/v、30%w/v及び32%w/vの濃度でPEG4,000/酢酸溶液に加えた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0175】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0176】
(実施例11)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムの併用のグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を50mg/mLに調整した。
【0177】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約8%w/vまで2%刻みで変化させた。同時に、PEG400を夫々約30%w/v、32%w/v、34%w/v及び36%w/vの濃度でPEG4,000/酢酸溶液に加えた。pHは全工程で約5.2とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から30日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0178】
結果:評価した24個のウェルから結晶は認められなかった。
【0179】
(実施例12)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、蛋白緩衝液を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0180】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0181】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約12%w/v、18%w/v、20%w/v、22%w/v及び24%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0182】
(実施例13)
蛋白質濃度を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000を使用し、蛋白質濃度を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0183】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0184】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約10%w/v及び14%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0185】
(実施例14)
蛋白質緩衝液を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000/酢酸ナトリウムを使用し、蛋白緩衝液を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を20mg/mLに調整した。
【0186】
グリース付きVDXプレートと正方形OptiClearプラスチックカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、PEG4,000を約4%w/vから約26%w/vまで2%刻みで変化させた。pHは全工程で約5.5とした。各条件を2回ずつ評価した。正方形OptiClearプラスチックカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。翌日から5日間、液滴の顕微鏡観察を複数回実施した。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0187】
結果:評価した24個のウェルのうち、夫々約10%w/v、14%w/v、16%w/v、20%w/v及び22%w/vのPEG4,000濃度で結晶が認められた。結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0188】
(実施例15)
蒸気拡散法による条件の広範なスクリーニング
ABT−874で広範なスクリーニング用のハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を20mg/mLに調整した。
【0189】
Hydra II結晶化ロボットを使用し、数種類の市販結晶化スクリーニングキットを使用して96ウェルGreinerプレートを周囲温度でセットアップした。蛋白質溶液と結晶化剤を約1:1、好ましくは1:1比で混合した。
【0190】
以下のスクリーニングキットを使用した。Hampton Crystal Screen 1及び2、Hampton Index Screen、Hampton SaltRX Screen(いずれもHampton Research製品)、Nextal The Classics,The Classics Lite,The PEGs,The Anions,The pH clear及びThe Ammonium sulfate(いずれもNextal Biotechnologies製品)。
【0191】
(上記のような3種類の異なる蛋白質濃度で条件毎に3滴ずつ)蛋白質を結晶化剤に添加後、プレートをClearsealフィルムで密閉した。各プレートを4枚ずつセットアップした後、夫々周囲温度、4℃、27℃及び37℃で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0192】
結果:評価した10,368種類の条件のうち、4種類から結晶が得られた。条件は製造業者により公表されているように以下の蛋白質濃度及び結晶化剤とした。
−周囲温度、ABT−874 約20mg/mL
0.2M硫酸アンモニウム,30%w/v PEG8,000
(Hampton Crystal Screen,C6)
−4℃、ABT−874 約5mg/mL
0.1M HEPES pH7.5,5%w/v PEG8,000
(Nextal The Classics Lite,F4)
−4℃、ABT−874 約10mg/mL
0.1M HEPES pH7.5,5%w/v PEG6,000,2.5%v/v MPD
(Nextal The Classics Lite,H9)
−4℃、ABT−874 約20mg/mL
0.1M HEPES,5%w/v PEG6,000,pH7.00
(Nextal pH Clear,C4)。
【0193】
結晶は針状又は針束状形態を示した。
【0194】
(実施例16)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG400とPEG4,000/酢酸ナトリウムを併用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0195】
グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、夫々約12%w/v、18%w/v、24%w/v及び30%w/vのPEG4,000濃度を使用した。pHは約3.6から約5.6まで0.2刻みで変化させ、48種類の異なる条件を設定した。各条件を上記のような2種類の蛋白質濃度で設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0196】
結果:試験した96種類の条件のうち、pH約5.6で5mg/mL ABT−874及び約24% PEG4,000の場合に針束状結晶が観察された。
【0197】
(実施例17)
設定を変更したハンギングドロップ蒸気拡散法によるPEG4,000/クエン酸ナトリウムグリッドスクリーニング
PEG4,000/クエン酸ナトリウムを併用し、設定を変更してABT−874でハンギングドロップ蒸気拡散式晶析法を実施した。20mM HEPES/150mM塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。別の場合には、蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0198】
グリース付きVDXプレートと円形シリコンコートガラスカバースライドを使用した。クエン酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を各ウェル内で混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、クエン酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、約12%w/v、18%w/v、24%w/v又は30%w/vのPEG4,000濃度を使用した。pHは約4.2から約6.4まで0.2刻みで変化させ、48種類の異なる条件を設定した。各条件を上記のような2種類の蛋白質濃度で設定した。円形シリコンコートガラスカバースライド上で蛋白質溶液約1μLを特定リザーバ溶液約1μLと混合し、スライドを裏返してウェルを密閉し、ハンギングドロップ実験を行った。プレートを周囲温度で保存した。6日後に液滴の顕微鏡観察を行った。透明液滴、ランダム沈殿を含む液滴、結晶を含む液滴、及び沈殿種と結晶の混合物を含む液滴に状態を分類した。
【0199】
結果:試験した96種類の条件から結晶は認められなかった。
【0200】
D.バッチ晶析実験
ABT−874でバッチ晶析法を実施した。以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0201】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0202】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0203】
(実施例18)
1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.2の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0204】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約6.7とした。PEG4,000を約14%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。16日後に1μLアリコートの顕微鏡観察を行った。
【0205】
結果:16日後に結晶は認められなかった。
【0206】
(実施例19)
300μL容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
300μL容量バッチ法でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0207】
ウェル内で蛋白質溶液約150μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液150μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.5とした。PEG4,000を約12%w/vから約34%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から2日間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0208】
結果:評価した36個のウェルのうち、22%w/vから26%w/v PEG4,000に設定した実験で結晶が認められた。
【0209】
(実施例20)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0210】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。本実験は4本でセットアップした。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から78日間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0211】
結果:7日後に剣状結晶が出現した。その後の数カ月間の保存中に沈殿種は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、60日後に50から70%であった。
【0212】
(実施例21)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0213】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約26%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0214】
結果:1日後に沈殿種が認められた。5日後に沈殿以外に剣状結晶が認められた。
【0215】
(実施例22)
PEG4,000濃度を変更した1mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
PEG4,000濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0216】
1.5mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。反応チューブを周囲温度で保存した。翌日から数カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0217】
結果:1日後に針束状結晶が出現した。5日後に針束状結晶以外に針状結晶と板状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、13日後に50から70%であった。
【0218】
(実施例23)
蛋白質濃度を変更した1ml容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
蛋白質濃度を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0219】
ウェル内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。
【0220】
各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは全工程で約5.5とした。PEG4,000を約12%w/vから約34%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から1カ月間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0221】
結果:評価した24個のウェルのうち、約24%w/vから26%w/v PEG4,000に設定した実験で剣状結晶が認められた。
【0222】
(実施例24)
設定を変更した1ml容量バッチ法によるPEG4,000/酢酸ナトリウムグリッドスクリーニング
設定を変更し、1mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0223】
ウェル内で蛋白質溶液約500μLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。次いで、水分蒸発を防ぐためにウェルプレートを接着テープで密閉した。各ウェル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液500μLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mで一定に維持し、酢酸緩衝液pHは約4.1、4.6及び5.1とした。PEG4,000を約20%w/vから約28%w/vまで2%刻みで変化させた。各条件を3回ずつ評価した。プレートを周囲温度で保存した。翌日から4日間、液滴の顕微鏡観察を実施した。
【0224】
結果:評価した18個のウェルのうち、28%w/v PEG4,000とpH5.1の酢酸ナトリウム緩衝液に設定した実験で結晶が認められた。
【0225】
(実施例25)
温度を変更した2mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム条件
温度を変更し、2mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0226】
2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約1mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより特定リザーバ溶液1mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。反応チューブを4から8℃で保存した。翌日から1カ月間、1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0227】
結果:一晩保存後に沈殿種が認められた。
【0228】
(実施例26)
撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
撹拌を使用し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0229】
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらチューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0230】
結果:6日後に剣状結晶が出現したが、容器表面にほぼ完全に吸着した。顕微鏡観察からバッチが沈殿種を含んでいないと判断することはできなかった。結晶化液はほぼ透明であった。
【0231】
(実施例27)
非撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
非撹拌下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0232】
50mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0233】
結果:1日後に針束状結晶が出現した。4日後に針束状結晶以外に針状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、7日後に30から40%であった。
【0234】
(実施例28)
容器材料を変更した撹拌下の10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
容器材料を変更し、撹拌下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0235】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0236】
結果:18日後に剣状結晶が認められた。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、18日後に40から50%であった。針束状結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図7に示す。
【0237】
(実施例29)
容器材料を変更し、撹拌下でポリソルベート80の影響下における10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
容器材料を変更し、撹拌下でポリソルベート80の影響下に10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0238】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約24%w/vの濃度で使用した。更に、0.1%の濃度のポリソルベート80を緩衝液に加えた。バッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、OD280により結晶収率を測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0239】
結果:18日後に剣状結晶が認められた。本実施例と実施例28(ポリソルベート80非添加)の結晶形状に相違は認められなかった。上清中の残留蛋白質濃度からOD280により結晶収率を測定した処、18日後に25から35%であった。
【0240】
(実施例30)
撹拌下と非撹拌下のバッチを比較した10mlバッチ容量での各種PEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
撹拌下と非撹拌下のバッチの比較を使用し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0241】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/v及び24%w/vの濃度で使用した。非撹拌下又はバッチを回転により撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、1個のバッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0242】
結果:撹拌下のバッチでは、いずれも26日後に沈殿種が認められた。約22%w/v PEG4,000の緩衝液を使用した非撹拌下のバッチでは26日後に剣状結晶が認められたが、懸濁液は巨視的にほぼ透明であったので、結晶収率は低いとみなされた。約24%w/v PEG4,000の緩衝液を使用した非撹拌下のバッチでは26日後に剣状結晶が認められた。70日後に上清から測定した収率は65から75%であった。
【0243】
(実施例31)
種晶添加の影響
ABT−874結晶収率に及ぼす種晶添加の影響を試験した。実施例30からの約22%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した非撹拌下のバッチは26日後の結晶収率が非常に低かった。そこで、同一実施例からの約24%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した非撹拌下のバッチ約100μLを前記バッチに加えて温置した。
【0244】
結果:種晶添加下の温置により明白な収率増加は生じなかった。
【0245】
(実施例32)
蛋白質濃度を変更し、撹拌下と非撹拌下のバッチを比較した10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
種々の蛋白質濃度を使用し、撹拌下と非撹拌下のバッチを比較し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を5mg/mLに調整した。
【0246】
50mLガラスクラスIバイアル内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。バイアル内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/v、24%w/v及び26%w/vの濃度で使用した。非撹拌下又はバッチを実験室用振盪器で撹拌しながらバイアルを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、1個のバッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0247】
結果:約22%w/v及び約24%w/v PEG4,000を含有する緩衝液を使用したバッチは65日後に透明であった。約26%w/v PEG4,000を含有する結晶化用緩衝液を使用した撹拌下のバッチでは4日後に沈殿種が認められ、同一結晶化用緩衝液の非撹拌下のバッチでは4日後に剣状結晶が認められた。26日後に上清から測定したこの特定バッチの結晶収率は40から50%であった。非撹拌下で得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ225μmに対応する)を図8に示す。
【0248】
(実施例33)
設定を変更した10mlバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
設定を変更し、10mlバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0249】
15mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約5mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液5mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0250】
結果:11日後に剣状結晶が認められた。26日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は40から50%であった。非撹拌下で26日後に得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図9に示す。
【0251】
(実施例34a)
50mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
50mLバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0252】
15mLファルコンチューブ内で蛋白質溶液約25mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。チューブ内で酢酸緩衝液と50%w/v PEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液25mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。チューブを周囲温度で保存した。翌日から数週間、溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0253】
結果:3日後に剣状結晶が認められた。16日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は50から60%であった。
【0254】
(実施例34b)
700mLバッチ容量でのPEG4,000/酢酸ナトリウム結晶化条件
700mLバッチ容量でPEG4,000/酢酸ナトリウムを使用してABT−874で晶析法を実施した。約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0255】
1L透明ポリエチレンびん内で蛋白質溶液約350mLを同一容量の結晶化用緩衝液と混合することによりバッチ晶析を実施した。酢酸緩衝液とPEG4,000溶液とミリQ水を混合することにより結晶化用緩衝液350mLを調製した。本実施例では、酢酸緩衝液モル濃度を約0.1Mとし、酢酸緩衝液pHを約5.5とした。PEG4,000を約22%w/vの濃度で使用した。びんを周囲温度で保存した。40日後に溶液の1μLアリコートの顕微鏡観察を実施した。更に、バッチの結晶収率をOD280により測定した。懸濁液のアリコートを14,000rpmで遠心し、上清中の蛋白質濃度を測定した。
【0256】
結果:40日後に剣状結晶が認められた。40日後に上清から測定したこのバッチの結晶収率は50から60%であった。非撹拌下で40日後に得られた結晶の光学顕微鏡写真(写真の幅は長さ450μmに対応する)を図10に示す。
【0257】
上記バッチ実験の実験条件を下表1にまとめる。
【0258】
【表1】
【0259】
E.結晶処理及び分析方法
(実施例35)
結晶の洗浄
結晶の形成後は、結晶を再溶解させない洗浄工程が有利であると思われる。従って、結晶化工程の終了後、結晶スラリーを遠心管に移し、500から1000×gで20分間遠心した。遠心は4℃又は周囲温度で実施した。遠心後、上清を捨て、約0.1M酢酸ナトリウム中に約24%w/v PEG4,000を含有するpH約5.5の緩衝液に結晶ペレットを容易に再懸濁した。OD280により分析した処、このような洗浄用緩衝液中に測定可能なABT−874結晶は溶解していなかった。次いで遠心/再懸濁工程を1から3回繰返し、この洗浄工程後に、このような緩衝液にペレットを再懸濁し、保存した。
【0260】
(実施例36)
SDS PAGEによる結晶の分析
結晶の蛋白性を確認するために、実施例32に記載したように結晶を洗浄用緩衝液で洗浄した。液に蛋白質が溶解していないことをOD280により確認した後、結晶を遠心し、上清を捨て、次いで結晶を蒸留水に溶解した。この溶液のOD280測定によると、サンプルの吸光度は残留洗浄用緩衝液中と同程度まで有意に高くなっていたので、蛋白質が存在していることが判明した。再溶解後の結晶のこの溶液のSDS PAGE分析は、元のABT−874サンプルと同一パターンを示した。
【0261】
(実施例37)
SE−HPLCによる結晶の分析
ABT−874結晶の凝集種の含量を調べるために、洗浄した結晶のアリコートを遠心し、SE−HPLCランニング緩衝液(92mMリン酸水素二ナトリウム/211mM硫酸二ナトリウム,pH7.0)に再溶解した。結晶化工程の終了直後(本実施例では周囲温度で16日)に、凝集物含量は一般に約0.9%から約1.6から1.7%まで僅かに増加した。このような凝集物が結晶中又はその表面にに含まれ、洗浄工程により適切に除去されなかったか否かはまだ不明である。
【0262】
F.その他の実施例
以下の実施例に記載する濃度値は抗体溶液と結晶化溶液を混合する前の各溶液の初期値である。
【0263】
特に指定しない限り、全pH値は結晶化剤等の他の物質を加える前の酢酸緩衝液ストックのpHを表す。
【0264】
特に指定しない限り、全緩衝液モル濃度は一般に氷酢酸を使用して実施したpH調整前のストック溶液中の酢酸ナトリウム濃度を表す。
【0265】
(実施例38)
固体結晶化剤
約0.1M酢酸ナトリウムを含有するpH約5.5の緩衝液でABT−874を希釈した。蛋白質濃度を10mg/mLに調整した。
【0266】
2mLエッペンドルフ反応チューブ内で蛋白質溶液約500μLを酢酸緩衝液(0.1M,pH5.5)と混合することによりバッチ晶析を実施した。次に、固体ポリエチレングリコールを終濃度12%m/v(120mg/mL)まで加えた。次いでチューブを密閉し、結晶化剤が完全に溶解するまで撹拌した。チューブを非撹拌下に周囲温度で保存した。翌日から数週間、結晶化混合物のアリコートの顕微鏡観察を複数回実施した。
【0267】
結果:7日後に剣状結晶が認められた。
【0268】
(実施例39)
別の緩衝液調製プロトコール及び結晶の作製
本実施例では、次のように酢酸緩衝液を調製した。氷酢酸60gを精製水約840mLで希釈した。水酸化ナトリウム溶液でpHを調整し、容量を1,000mLに調整した。この場合には、総酢酸塩量を1M(蛋白質溶液、結晶化用緩衝液及び結晶化混合物中100mM)に固定した。
【0269】
実施例34aに従って結晶化を実施すると、3日後に剣状結晶が認められる。
【0270】
(実施例40)
封入結晶の作製
実施例34で得られた結晶はMalvern Instruments Zetasizer nanoを使用するゼータ電位測定によると正に荷電している。結晶性を維持し、結晶を荷電状態に保つpHをもつ賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。次に、適切な封入剤を結晶懸濁液に加える。この点で、適切な封入剤は毒性が低く、生分解性と対イオン特徴をもつ(ポリマー)物質である。この対イオン特徴により、前記物質は結晶に吸引され、コーティングを可能にする。この技術により、結晶性を維持する他の賦形剤を含有しない溶媒への結晶の溶解を持続することが好ましい。
【0271】
(実施例41)
封入/包埋結晶の作製
実施例34に記載したように結晶を得る。結晶性を維持する賦形剤を含有する緩衝液で結晶を洗浄懸濁する。
【0272】
その後、結晶を乾燥し、これらの乾燥した結晶を例えば圧縮、溶融分散等により担体と混合することにより結晶を包埋することができる。あるいは、
−結晶懸濁液を水不混和性担体溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。担体の溶媒の除去後に担体は沈殿する。その後、材料を乾燥する。
−結晶懸濁液を水混和性担体溶液と混合することにより結晶を封入/包埋することができる。担体は混合物中でその溶解度限界を越えると沈殿する。
−乾燥した結晶又は結晶懸濁液を水混和性担体溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
−乾燥した結晶を水不混和性担体溶液と混合することにより結晶を包埋することができる。
【0273】
(実施例42)
沈殿したABT−874の検証
a)沈殿
酢酸ナトリウム1モルを水に溶解し、酢酸(100%)でpH5.5に調整することにより酢酸緩衝液を調製した。ストック溶液を緩衝液交換のために水で10倍に希釈した。20gのPEG4000を1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)5mLと水に溶解することによりPEG4000溶液を調製した。溶解後、容量を水で50mLに調整した。(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液,pH5.5中)10mg/mL ABT−874(透析濾過により交換する元の緩衝液)5mLを0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中40% PEG4000溶液5mLと混合した。
【0274】
沈殿バッチを非撹拌下に室温で一晩維持した。約1から10μmの寸法の非複屈折粒子が形成された。
【0275】
b)沈殿の洗浄
沈殿スラリー2mLを遠心機に入れ、500×gで20分間遠心した。上清を捨て、(上記手順により調製した)約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中40% PEG4000溶液2mLに再懸濁した。最終懸濁液の蛋白質濃度をOD280により測定した処、3.9mg/mLであった。
【0276】
G.結晶特性決定
以下のセクションでは、結晶モノクローナル抗体ABT−874が結晶材料の再溶解後に非結晶化ABT−874に特徴的な生物活性を維持するか否かを判定するために実施した実験を要約する。
【0277】
G1.NK−92細胞のIFN−γ産生の測定による生物活性試験
a)一般方法
IL−12による刺激に応答するNK−92細胞のIFN−γ産生をモニターする細胞アッセイにより、再溶解したABT−874結晶の生物活性を測定した。分析に先立ち、サンプルを先ず細胞培養培地(20% FCSと200mM L−グルタミンを加えたα−MEM培地)で30μg/mLまで希釈した。次にサンプルを更に3μg/mLから0.1ng/mLまで11段階で希釈した。IL−12溶液を細胞培養培地で10ng/mLまで希釈し、ABT−874サンプルに加えた。その後、混合物を37℃で5%CO2下に1時間温置した。
【0278】
NK−92細胞(2.0×106個/mL)の懸濁液を96ウェルマイクロプレートにピペットで注入し、ABT−874/IL−12混合物を細胞に加えた後、マイクロプレートを37℃で5%CO2下に20時間温置した。温置後、マイクロプレートを1,000rpmで5℃にて10分間遠心し、各ウェルの上清50μLを使用し、細胞により産生されたIFN−γの量をELISA(ELISA Kit Human Interferon−γ,Pierce,カタログ番号EHIFNG)により測定した。
【0279】
ビオチン化抗IFN−γ抗体溶液を96ウェルプレコートマイクロプレートにピペットで注入し、細胞培養上清を加えた(両者サンプル各4列)。マイクロプレートを室温で2時間温置後、洗浄した。その後、ストレプトアビジン−HRP溶液を加えてマイクロプレートを更に30分間温置した後、洗浄した。TMB基質を加えた後、マイクロプレートを暗所で室温にて約20分間温置した後、停止溶液を加えることにより反応を停止した。
【0280】
最後に、次の5分以内にマイクロプレートリーダーで450nm(補正波長550nm)にて吸収を測定し、結果をABT−874濃度に対してプロットした。その後、4パラメーター非直線曲線フィットを使用してIC50値を求め、参照標準の平均IC50値をサンプルのIC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの相対生物活性を計算した。
【0281】
b)ABT−874結晶の相対活性
参照標準に対するサンプルの生物活性の比較として試験を実施した。細胞により産生されたIFN−γの量を市販ELISAキットにより測定し、450nmの波長における吸収単位として報告した。これらの値をABT−874濃度に対してプロットし、4パラメーター非直線回帰により評価した処、ABT−874によるIL−12効果の阻害のIC50値が判明した。両方のサンプルをマイクロプレート1枚で4回ずつ繰返して試験したので、夫々ABT−874参照標準とサンプルに4個のIC50値を得た。次に、参照標準のIC50値の平均を計算し、参照標準の平均IC50値をサンプルの該当IC50値で割り、100%を掛けることによりサンプルの各反復の相対活性を計算した。
【0282】
サンプル(2.9mg/mL結晶懸濁液)の試験の結果、相対生物活性は98%であることが判明した。従って、サンプルは完全に生物学的に活性であるとみなすことができる。
【0283】
G2.顕微鏡による特性決定
以下、ABT−874の結晶の顕微鏡による特性決定に関するデータについて記載する。
【0284】
a)mAb結晶バッチサンプルの光学分析
均質化後、1から10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して結晶調製物を分析した。デジタルカメラ(Sony Cybershot DSC S75)を使用して写真撮影した。
【0285】
b)ABT−874結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)による特性決定
蛋白質結晶を電子顕微鏡で撮像するためには、乾燥し、導電性であり、高真空と電子ビームエネルギーに耐えるために十分に安定でなければならない。本プロトコールは結晶をその緩衝液から濾過により分離し、グルタルアルデヒド系固定液で化学的に固定することにより結晶を安定化させ、段階系列エタノールで脱水し、臨界点法により乾燥し、金をプラズマコーティングして導電性にする。
【0286】
b1)材料
−0.2Mセーレンセンリン酸緩衝液(SPB)−0.15Mリン酸二ナトリウム,0.05M第一リン酸カリウム,pH7.3。
−カルノフスキー固定液−2.5%グルタルアルデヒド,1.5%パラホルムアルデヒド,0.1M SPB。
−50%,75%,95%及び100%エタノール。
−(実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存した実施例34からの)結晶化用緩衝液中ABT−874結晶サンプル。
−ABT−874結晶化用緩衝液(実施例35からの洗浄用緩衝液)。
−13mmフィルターメンブレンをシリンジに装着するためのミリポアステンレス鋼フィルターアセンブリ。
−0.4μmポリカーボネートフィルターメンブレン(Nucleopore,カタログ番号110407)。
【0287】
b2)機器
−臨界点乾燥機(CPD)−Baltec Model CPD030,Asset LC978501。
−走査型電子顕微鏡(SEM)−Phillips XL30フィールドエミッション走査型電子顕微鏡。
−スパッターコーター−Denton Desk IIスパッターコーター,Asset LC827847。
【0288】
b3)手順
フィルターアセンブリに溶液をフラッシュし、シリンジをフィルターアセンブリに指定保持時間保持することによりステップ3から12を実施する。
1.シリンジフィルターホルダーにポリカーボネートフィルターを装着する。
2.1.0mlシリンジ内で結晶サンプル0.1mlを結晶緩衝液0.4mlと混合する。
3.フィルターアセンブリを通して希釈結晶溶液を分配する。
4.結晶緩衝液1mlを分配し、2分間保持する。
5.50%固定液、50%結晶緩衝液1mlを分配し、2分間保持する。
6.100%固定液1mlを分配し、2分間保持する。
7.SPB 1mlを分配し、2分間保持する。
8.再びSPB 1mlを分配し、2分間保持する。
9.50%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
10.75%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
11.95%エタノール1mlを分配し、2分間保持する。
12.100%エタノール1mlを分配し、2分間保持する段階を3回繰り返す。
13.100%エタノールを充填したCPDに結晶が付着したフィルターメンブレンを移す。
14.フィルターをCPDで次のように処理する。
a.10℃で液体CO2を5回交換し、交換毎に5分間混合する。
b.40℃、80バール気圧まで加熱する。
c.20分間かけてゆっくりと大気圧まで抽気する。
15.フィルターメンブレンをSEMサポートに載せる。
16.金を60秒間スパッターコーティングする。
17.SEMで試験する。
【0289】
c)結果
添付の図1から5には、ABT−874結晶の代表的な写真を示す。
【0290】
図1は実施例34により得られた(実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存した実施例34からの)結晶化用緩衝液中のABT−874結晶の光学顕微鏡写真を示す。晶癖は図2から5に示す固定乾燥結晶の晶癖と同様である。結晶は複屈折を示した。
【0291】
図2から5は実施例34により得られたABT−874結晶の各種倍率のSEMを示す。
【0292】
G3.複屈折
全バッチ実験から生じた結晶は複屈折を示した。
【0293】
G4.注射適性
結晶中に取込まれた蛋白質150mg/mLを実施例35からの洗浄用緩衝液に配合したABT−874結晶懸濁液は27G針で注射可能である。
【0294】
H.ABT−874によるキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)実験
a)機器
iCE280分析装置(Convergent Bioscience)を分析に使用した。システムID(IS#2785)。
【0295】
b)材料
使用したキャピラリーは長さ50mm、内径100μmのコートカラム(Convergent,カタログ番号101700)とした。使用した電解液は陽極液(80mM H3PO4)及び陰極液(100mM NaOH)(Convergent,カタログ番号101800)とした。両性担体は4% Pharmalyte(8−10.5)(GE Healthcare,カタログ番号17−0455−01)とした。添加剤はメチルセルロース(0.35%)(Convergent,カタログ番号101876)とした。内部pIマーカーはBioRad製品とした(8.4,8.5,10.1及び10.4−BioRad,カタログ番号148−2100,ロット番号482−511)。
【0296】
【表2】
【0297】
c)方法
収束時間は1500Vで2分間、3000Vで20分間とした。サンプル調製手順−Mab結晶、Mab沈殿及び参照標準をいずれもミリQ水で約1mg/mlまで希釈した。サンプル調製手順(尿素による)。
【0298】
【表3】
【0299】
1.5mLマイクロ遠心管内で上記表に示すようにサンプルを混合した。次に終濃度約1.6Mとなるように尿素(20mg)を加えた。次に遠心管をボルテックスし、10分間遠心後、注意深く分析用バイアルに移した。
【0300】
d)結果
以下のサンプルを分析した。
ABT−874結晶緩衝液(実施例35からの洗浄用緩衝液)
ABT−874結晶(実施例33により得られた結晶を実施例35からの洗浄用緩衝液中に保存したもの)
参照標準(ABT−874液体サンプル)。
【0301】
結果を添付図6AからCに示す。
【0302】
(実施例43)
結晶化/結晶再溶解後の天然二次構造の維持
製造業者の指示に従ってBruker Optics Tensor 27でConfocheckシステムを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120から500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580から1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0303】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、結晶ペレットをpH5.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。
【0304】
図11は実施例34bに記載したような方法に従って結晶化させ、実施例35に紹介した手順に従って洗浄し、再溶解した結晶ABT−874懸濁液のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも二次構造の顕著な変化は認められない。
【0305】
(実施例44)
安定性データ(SE HPLC,FT−IR,形態)
実施例34bに記載した結晶化手順を使用してABT−874を結晶化させた。22% PEG4,000と0.1M酢酸ナトリウムを含有する分散用緩衝液を使用して実施例35に記載したように結晶を洗浄し、氷酢酸でpHを5.5に調整した。次に、結晶を遠心により夫々蛋白質5mg/mL及び50mg/mLまで濃縮し、2から8℃で保存した。
【0306】
5mg/mL及び50mg/m結晶ABT−874を2から8℃で3カ月間保存後の安定性データは90%を上回る単量体の維持を示した。
【0307】
(a)SE−HPLC
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
Dionex HPLCシステム(P680ポンプ,ASI 100オートサンプラー,UVD170U)を使用してABT−874抗体の安定性を測定した。流速0.75mL/分を適用してABT−874サンプルをGE Superose(登録商標)200カラムで分離した。波長214nmで検出を実施した。ランニング緩衝液は0.09Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中0.2M硫酸二ナトリウムから構成した。
【0311】
(b)FT−IR
Bruker Optics Tensor 27でConfocheckを使用してIRスペクトルを記録した。MicroBiolytics AquaSpecセルを使用して液体サンプルを分析した。Harrick BioATRIIセル(登録商標)を使用して蛋白質懸濁液の測定を実施した。25℃で120から500個のスキャンの測定を少なくとも2回実施して各サンプルを評価した。ブランク緩衝液スペクトルを蛋白質スペクトルから夫々差し引いた。フーリエ変換により蛋白質二次導関数スペクトルを作成し、相対比較のために1580から1720cm−1からベクトルを正規化した。
【0312】
結晶の再溶解を次のように実施した。結晶懸濁液を遠心し、上清を捨て、ペレットをpH5.5の0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に蛋白質濃度10mg/mLまで溶解した。
【0313】
図2は結晶ABT−874懸濁液(上記のように調製し、25℃で3カ月間保存した50mg/mL保存安定性サンプル)とこのような前処理結晶の再溶解後のFT−IR二次導関数スペクトルを示す。スペクトルから明らかなように、結晶固体状態でも再溶解後でも25℃で3カ月間保存後に二次構造の顕著な変化は認められない。
【0314】
(c)形態
2から8℃で3カ月間保存後に、結晶の光学顕微鏡分析で顕著な形態変化は認められなかった。1から10μLサンプル容量のアリコートを対物レンズホルダープレートにピペットで滴下し、製剤化用緩衝液(22%PEG)で希釈し、ガラスカバースライドをかぶせた。E−PI 10倍接眼レンズと夫々10倍、20倍及び40倍対物レンズを装着したZeiss Axiovert 25倒立型光学顕微鏡を使用して結晶調製物を評価した。
【0315】
(実施例45)
晶析法の収率増加
晶析法の終点は結晶化スラリーの上清のアリコートのOD280測定値が例えばその後3日間一定となる時点として定義することができる。結晶化スラリーの上清に所定量の付加的なPEG4,000(pH約5.5の約0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中50%w/v溶液)を加えることにより収率増加が可能である。最初に晶出した結晶と同様の結晶がその後の数日間形成される。この手順を適用すると、沈殿を生じずに総収率は容易に90%を超える。
【0316】
例えば、実施例34bの上清のアリコート中でPEG4,000濃度を約11%w/vから約22%w/v、約20%w/v、約18%w/v、約16%w/v又は約14%w/vまで増加する。周囲温度(例えば約20から約25℃)で数日間保存後、所定のPEG4,000濃度(例えば約22%w/v、約20%w/v又は約18%w/v PEG4,000)では沈殿種が認められる。PEG4,000濃度が低いと(例えば約16%w/v及び約14%w/v PEG4,000)、汚染性沈殿を伴わずに結晶が認められる。結晶化スラリーの残留上清にPEG4,000を例えば約14%w/vの総濃度まで加えることにより、総結晶収率は数日間で約60%から約70%となり、更には90%を超える。
【0317】
(実施例46)
連続法の適用による収率増加
本実施例では、(場合により所定量の結晶化剤を加えた)結晶化バッチに付加的な沈殿剤及び/又は蛋白質を所定速度で「滴定」する。経時的連続結晶化を誘導し、最終的に90%を上回る結晶収率が得られる。
【0318】
(実施例47)
ABT−874結晶化バッチの種晶添加
自然界では統計的に自発核生成の傾向が高い。同一蛋白質(均質種晶添加)又は結晶化させる物質とは別の物質(不均質種晶添加)から構成される種晶は分子を更に集合させることができる鋳型を提供する。従って、種晶添加により結晶化を加速することができる。
【0319】
実施例34bに記載したようにABT−874結晶化バッチを調製した。蛋白質溶液を結晶化用緩衝液と混合後、混合物にABT−874結晶を均質種晶添加した。例えば、約50から60%の結晶収率を示す実施例34bに記載したように調製した結晶懸濁液のアリコートを例えば1/20比(v/v)で結晶化バッチに加えた。このストラテジーを適用し、総結晶収率を高め、処理時間を短縮するように更に最適化した。
【0320】
要約すると、ABT−874結晶化混合物(pH5.5の0.1M酢酸緩衝液中5mg/mL蛋白質及び11%PEG4,000)を調製し、2つの40mLアリコートに分けた。第1のバッチはそれ以上処理せずに室温で保存し、第2のバッチは既に結晶収率65%を示した同一組成の結晶化混合物2mLを加えることにより種晶添加した(バッチ中200mgのABT−874に対して結晶化蛋白質を基に計算して種晶6.5mg)。図13に示すプロットから明らかなように、この種晶添加アプローチを適用することにより、総収率は80日以内に約15%増加したが、平行曲線推移によると、最大収率に達するための処理時間はさほど短縮されないと予想された。図13によると、非種晶添加バッチは約80日後に収率プラトーに達したが、理論的に可能な収率は種晶添加バッチと同等であると予想され、種晶添加の結果、収率増加よりも晶析法の時間が短縮すると考えられる。
【0321】
(文献の援用)
本明細書に引用する全引用文献(文献資料、特許、特許出願及びウェブサイト)はこれらの文献に引用されている文献と共にその開示内容全体を特に本明細書に援用する。本発明の実施には特に指定しない限り、当分野で周知の従来の結晶化及び製剤化技術を利用する。
【0322】
(等価物)
本発明はその精神又は本質的特徴から逸脱せずに他の特定形態で実施することができる。従って、上記実施形態は本明細書に記載する発明を制限するものではなく、あらゆる点において例証とみなすべきである。従って、本発明の範囲は以上の記載により限定されるものではなく、特許請求の範囲に指定される通りであり、そのため、特許請求の範囲の意味と等価範囲内に該当するあらゆる変更も本発明に含むものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトIL−12抗体を結晶化するためのバッチ晶析方法であって、
(a)結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールと混合した抗体の水溶液を準備する段階;及び
(b)抗体の結晶が形成されるまで水性結晶化混合物を温置する段階
を含む晶析方法。
【請求項2】
水性結晶化混合物のpHが約pH4から6.5の範囲である請求項1に記載の晶析方法。
【請求項3】
水性結晶化混合物が緩衝液を含有している請求項1又は2に記載の晶析方法。
【請求項4】
緩衝液が酢酸緩衝液を含む請求項3に記載の晶析方法。
【請求項5】
緩衝液が酢酸ナトリウムを含む請求項4に記載の晶析方法。
【請求項6】
水性結晶化混合物中の緩衝液濃度が約0.5Mまでである請求項3から5のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールが約400から約10,000の平均分子量を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項8】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項7に記載の晶析方法。
【請求項9】
結晶化混合物中のポリアルキレングリコール濃度が約5から30%(w/v)の範囲である請求項1から8のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項9に記載の晶析方法。
【請求項11】
以下の付加的な結晶化条件:
a)温置を約1時間から約250日間実施する;
b)温置を約4℃から約37℃の温度で実施する;
c)抗体濃度を約0.5から約280mg/mlの範囲とする
のうちの少なくとも1つを満足する請求項1から10のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項12】
結晶を乾燥する段階を更に含む請求項1から11のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項13】
結晶化母液を人工母液と交換する段階を更に含む請求項1から12のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項14】
バッチ容量が約1mlから20,000リットルの範囲である請求項1から13のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項15】
抗ヒトIL−12抗体の結晶。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の晶析方法により取得可能な抗ヒトIL−12抗体の結晶。
【請求項17】
結晶が剣状形態である請求項15又は16の結晶。
【請求項18】
抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である請求項15から17のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項19】
抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、非糖鎖付加抗体、ヒト抗体及びマウス抗体から構成される群から選択される請求項18に記載の結晶。
【請求項20】
抗体がIgG抗体である請求項15から19のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項21】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から構成される群から選択される請求項20に記載の結晶。
【請求項22】
抗体がIgG1群の抗ヒトIL−12抗体である請求項21に記載の結晶。
【請求項23】
結晶が、いずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−10M以下のKdと1×10−3s−1以下のkoff速度定数でヒトIL−12から解離する単離ヒト抗体から作製される請求項22に記載の結晶。
【請求項24】
結晶が、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体から作製される請求項22又は23に記載の結晶。
【請求項25】
結晶が、抗体ABT−874から作製される請求項23に記載の結晶。
【請求項26】
(a)請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体の結晶、及び(b)少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物であって、組成物が固体、半固体又は液体製剤として提供され、各製剤が結晶形態の抗体を含有する前記組成物。
【請求項27】
(a)請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体の結晶、及び(b)前記結晶を包埋又は封入する少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項28】
約1mg/mlを上回る抗体濃度を有する請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
約200mg/mlを上回る抗体濃度を有する請求項28の組成物。
【請求項30】
生分解性ポリマー担体、非生分解性ポリマー担体、油類担体及び脂質担体から構成される群から選択される少なくとも1種の担体を含有する請求項26及び27に記載の組成物。
【請求項31】
ポリマー担体がポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマー即ちPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリサミノグリカン、硫酸化多糖、これらの混合物及びコポリマーから構成される群の1種以上から選択されるポリマーである請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を含有し及び約10から400mg/mlの範囲の抗体濃度を有する注射用液体組成物。
【請求項33】
請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を含有し、約100mg/mlを上回る抗体濃度を有する結晶スラリー。
【請求項34】
有効量の請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項35】
有効量の請求項26から33のいずれか一項に記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項36】
非経口経路、経口経路又は注射により組成物を投与する請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
治療有効量の請求項15から25のいずれか一項に記載の抗体結晶を投与する段階を含む対象におけるIL−12関連疾患の治療方法。
【請求項38】
IL−12関連疾患が関節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎微小血管炎、慢性活動性肝炎、ぶどう膜炎、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺性内分泌不全症候群I型及び多腺性内分泌不全症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラジミア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞動脈炎、原発性硬化性肝炎、特発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣不全、早発卵巣不全、肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、ショーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性ないしルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫性低血糖症、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、NOS腎疾患、糸球体腎炎、腎微小血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、特発性又はNOS男性不妊症、精子自己免疫疾患、多発性硬化症(全サブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病続発性肺高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ぶどう膜炎、原発性血管炎及び白斑から構成される群から選択される請求項37の方法。本発明のヒト抗体及び抗体部分は自己免疫疾患、特にリウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎を含む炎症を伴う自己免疫疾患の治療にも使用することができる。
【請求項39】
請求項37に定義されるIL−12関連疾患の治療用医薬組成物の製造用のための請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶の使用。
【請求項40】
医薬に用いるための請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶。
【請求項41】
ポリアルキレングリコールを更に添加することにより結晶の収率を上げる段階を更に含む請求項1から40のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項42】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリアルキレングリコールを連続的に添加する請求項41に記載の方法。
【請求項44】
反応にABT−874を種晶添加する段階を更に含む請求項1から43のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項1】
抗ヒトIL−12抗体を結晶化するためのバッチ晶析方法であって、
(a)結晶化剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールと混合した抗体の水溶液を準備する段階;及び
(b)抗体の結晶が形成されるまで水性結晶化混合物を温置する段階
を含む晶析方法。
【請求項2】
水性結晶化混合物のpHが約pH4から6.5の範囲である請求項1に記載の晶析方法。
【請求項3】
水性結晶化混合物が緩衝液を含有している請求項1又は2に記載の晶析方法。
【請求項4】
緩衝液が酢酸緩衝液を含む請求項3に記載の晶析方法。
【請求項5】
緩衝液が酢酸ナトリウムを含む請求項4に記載の晶析方法。
【請求項6】
水性結晶化混合物中の緩衝液濃度が約0.5Mまでである請求項3から5のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールが約400から約10,000の平均分子量を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項8】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項7に記載の晶析方法。
【請求項9】
結晶化混合物中のポリアルキレングリコール濃度が約5から30%(w/v)の範囲である請求項1から8のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項9に記載の晶析方法。
【請求項11】
以下の付加的な結晶化条件:
a)温置を約1時間から約250日間実施する;
b)温置を約4℃から約37℃の温度で実施する;
c)抗体濃度を約0.5から約280mg/mlの範囲とする
のうちの少なくとも1つを満足する請求項1から10のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項12】
結晶を乾燥する段階を更に含む請求項1から11のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項13】
結晶化母液を人工母液と交換する段階を更に含む請求項1から12のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項14】
バッチ容量が約1mlから20,000リットルの範囲である請求項1から13のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項15】
抗ヒトIL−12抗体の結晶。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の晶析方法により取得可能な抗ヒトIL−12抗体の結晶。
【請求項17】
結晶が剣状形態である請求項15又は16の結晶。
【請求項18】
抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である請求項15から17のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項19】
抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、非糖鎖付加抗体、ヒト抗体及びマウス抗体から構成される群から選択される請求項18に記載の結晶。
【請求項20】
抗体がIgG抗体である請求項15から19のいずれか一項に記載の結晶。
【請求項21】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から構成される群から選択される請求項20に記載の結晶。
【請求項22】
抗体がIgG1群の抗ヒトIL−12抗体である請求項21に記載の結晶。
【請求項23】
結晶が、いずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−10M以下のKdと1×10−3s−1以下のkoff速度定数でヒトIL−12から解離する単離ヒト抗体から作製される請求項22に記載の結晶。
【請求項24】
結晶が、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体から作製される請求項22又は23に記載の結晶。
【請求項25】
結晶が、抗体ABT−874から作製される請求項23に記載の結晶。
【請求項26】
(a)請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体の結晶、及び(b)少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物であって、組成物が固体、半固体又は液体製剤として提供され、各製剤が結晶形態の抗体を含有する前記組成物。
【請求項27】
(a)請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体の結晶、及び(b)前記結晶を包埋又は封入する少なくとも1種の医薬賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項28】
約1mg/mlを上回る抗体濃度を有する請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
約200mg/mlを上回る抗体濃度を有する請求項28の組成物。
【請求項30】
生分解性ポリマー担体、非生分解性ポリマー担体、油類担体及び脂質担体から構成される群から選択される少なくとも1種の担体を含有する請求項26及び27に記載の組成物。
【請求項31】
ポリマー担体がポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、乳酸・グリコール酸コポリマー即ちPLGA、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ(オルガノ)ホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸・アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリサミノグリカン、硫酸化多糖、これらの混合物及びコポリマーから構成される群の1種以上から選択されるポリマーである請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を含有し及び約10から400mg/mlの範囲の抗体濃度を有する注射用液体組成物。
【請求項33】
請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を含有し、約100mg/mlを上回る抗体濃度を有する結晶スラリー。
【請求項34】
有効量の請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項35】
有効量の請求項26から33のいずれか一項に記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む哺乳動物の治療方法。
【請求項36】
非経口経路、経口経路又は注射により組成物を投与する請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
治療有効量の請求項15から25のいずれか一項に記載の抗体結晶を投与する段階を含む対象におけるIL−12関連疾患の治療方法。
【請求項38】
IL−12関連疾患が関節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎微小血管炎、慢性活動性肝炎、ぶどう膜炎、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺性内分泌不全症候群I型及び多腺性内分泌不全症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラジミア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞動脈炎、原発性硬化性肝炎、特発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣不全、早発卵巣不全、肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、ショーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性ないしルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫性低血糖症、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、NOS腎疾患、糸球体腎炎、腎微小血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、特発性又はNOS男性不妊症、精子自己免疫疾患、多発性硬化症(全サブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病続発性肺高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ぶどう膜炎、原発性血管炎及び白斑から構成される群から選択される請求項37の方法。本発明のヒト抗体及び抗体部分は自己免疫疾患、特にリウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎を含む炎症を伴う自己免疫疾患の治療にも使用することができる。
【請求項39】
請求項37に定義されるIL−12関連疾患の治療用医薬組成物の製造用のための請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶の使用。
【請求項40】
医薬に用いるための請求項15から25のいずれか一項に記載の抗ヒトIL−12抗体結晶。
【請求項41】
ポリアルキレングリコールを更に添加することにより結晶の収率を上げる段階を更に含む請求項1から40のいずれか一項に記載の晶析方法。
【請求項42】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ポリアルキレングリコールを連続的に添加する請求項41に記載の方法。
【請求項44】
反応にABT−874を種晶添加する段階を更に含む請求項1から43のいずれか一項に記載の晶析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−522752(P2010−522752A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500996(P2010−500996)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/004006
【国際公開番号】WO2008/121301
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/004006
【国際公開番号】WO2008/121301
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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