説明

給湯システム

【課題】給湯システムにおいて、エネルギー効率の良い運転を行なう。
【解決手段】給湯システムは、高温湯を貯湯する高温タンク3と中温湯を貯湯する中温タンク1と、ヒートポンプ2によって加熱された湯の送湯先を高温タンク3と中温タンク1のいずれかに切り替える切り替え弁32とを備える。制御部4は、沸かし上げた湯の温度に応じて送湯先を高温タンク3と中温タンク1のいずれかに切り替える。高温湯と中温湯とを分けて沸かし上げるので、エネルギー効率の良い運転を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプにより水を沸かし、貯湯タンクに溜めた湯をカランや食洗機等の湯使用端末に供給する給湯システムがある。図3に、従来の給湯システムの一例を示す。この給湯システムは、湯を溜める貯湯タンク103と、貯湯タンク103の上部と下部において循環配管100で連結されたヒートポンプ102とを備えている。また、貯湯タンク103は、下部において給水配管105と接続され、上部において給湯配管115と接続され、給湯配管115の端末は食洗機122等の湯使用端末に繋がっている。給水配管105からは分岐配管が分岐し、給湯配管115に接続され、湯と給水とが混合される。
【0003】
このような給湯システムでは、市水である温度15℃程度の水が給水配管105を通じて貯湯タンク103の下部より貯湯タンク103内部に供給され、この低温水が貯湯タンク103の下部より循環配管100内に取り出され、ヒートポンプ102で沸かされて温度80℃〜90℃の高温水にされ、貯湯タンク100に上部より入れられる。沸かし上げられた高温水は、湯使用端末に設けられた開閉弁を開けることにより、給湯配管115を通じて取り出され、市水と混合弁119において混合され、適温に調整されてカラン124等の湯使用端末より出湯される。このときに使用される混合弁124には、形状記憶合金により適温に調整するものがある。また、出湯温度をフィードバックして混合弁124を制御するものがある。業務用途の場合には食洗機122等で80℃以上の高温を必要とする端末があるため、タンクの湯を直接取り出すための高温出湯経路が設けられることがある。
【0004】
給湯システムにおいて、沸き上げる際の、(加熱量)/(消費電力)で示される値は、COP(成績係数)といわれ、エネルギー効率を表す指標となり、例えば電気ヒータのCOPは1であるが、ヒートポンプでは3〜4にもなる。一般にヒートポンプは、その沸上温度が高くなるほど効率が低下するという特性を持つ。図4に、一般のヒートポンプにおける沸上温度とCOPの関係を示す。環境条件は、外気温16℃、水温16℃である。沸上温度が70℃のときは、COPが3.72であるが、沸上温度が90℃のときは、COPは2.91になる。従来の技術の給湯システムでは、混合湯にも高温で沸き上げられた湯を水で希釈して出湯しているため、総合的なエネルギー効率が低い状態で運転していることとなる。
【0005】
また、貯湯タンクの中腹に多数の湯取り出し口を設け、貯湯タンク内の中温水を有効的に使用することにより、総合的なエネルギー効率を高める給湯システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところが、特許文献1に示されるような給湯システムにおいても、ヒートポンプは、高温湯のみを沸かし上げ、中温水を多量に使用するときは、高温湯と市水とを混合して出湯しており、総合的なエネルギー効率は低くなる。
【特許文献1】特開2003−294251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解消するものであり、エネルギー効率の良い運転を行なうことができる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、高温湯の出湯、及び、高温湯と給水とを混合した混合湯の出湯が可能な給湯システムにおいて、給水を加熱するヒートポンプと、前記ヒートポンプにより加熱された高温湯を貯湯する高温タンクと、前記ヒートポンプにより前記高温湯よりも低い温度に加熱された中温湯を貯湯する中温タンクと、前記ヒートポンプに配管を介して接続され、該ヒートポンプより加熱された湯の送湯先を湯温に応じて前記高温タンクと前記中温タンクのいずれかに切り替える切り替え弁と、前記高温タンクに接続され高温湯を出湯する出湯配管と、前記出湯配管からの高温湯と給水とを混合する混合弁を介して混合湯を出湯する出湯配管と、を備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の給湯システムにおいて、前記高温タンクが、大気開放型のタンクであるものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の給湯システムにおいて、前記高温タンクが、圧力タンクであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、高温タンクと中温タンクを備え、高温湯と中温湯とを分けて沸かし上げるので、エネルギー効率の良い運転を行なうことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、高温タンクが、大気開放型のタンクであるので、設置場所に応じた任意の形状にすることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、高温タンクが、圧力タンクであるので、ヒートポンプへの給水や高温湯の出湯を市水の給水圧力によって行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る給湯システムについて図1を参照して説明する。本実施形態の給湯システムは、給水を貯溜する中温タンク1と、中温タンク1の水を加熱するヒートポンプ2と、ヒートポンプ2で加熱された湯を貯湯する高温タンク3と、給湯システムの全体を制御する制御部4を備えている。中温タンク1は、給水管5と、給水弁6を介して接続されており、貯水量を測る水位センサ7aと、水温を計る温度センサ8aと、大気と通気している通気口9aと、を有している。中温タンク1は、熱交換器10を備えており、熱交換器10の給水口が給水管5に繋がれ、吐出口が混合弁11に繋がれている。
【0015】
ヒートポンプ2は、中温タンク1と配管で接続されており、配管の途中には、中温タンク1の水をヒートポンプ2に送る給水ポンプ12が配設されている。ヒートポンプ2は、炭酸ガス等の冷媒を圧縮して昇温させ、熱交換器を介して給水と熱交換を行い、給水を加熱する。ヒートポンプ2は、出湯側に送湯先を中温タンク1と高温タンク3に切り替える切り替え弁25を備えており、また、ヒートポンプ2は、加熱した湯温を検出する温度センサ8eを有している。
【0016】
高温タンク3は、ヒートポンプ2と接続され、貯湯量を測る水位センサ7bと、湯温を測る温度センサ8bと、大気と通気している通気口9bと、を有している。高温タンク3は、ヒートポンプ2から送られた湯が所定の水位を超えると、湯を中温タンク1にオーバーフローさせるオーバーフロー管13を備えている。また、高温タンク3は、貯湯している湯を湯使用端末へ送る高温出湯配管14を、下部に備えた湯取り出し口15に接続されている。高温出湯配管14には、湯を湯使用端末へ送る給湯ポンプ16と、配管内の圧力により湯の使用を検知する圧力センサ17が配設されている。高温出湯配管14は、2方に分岐し、1方は、食洗機20等の高温の湯を使用する端末に接続し、他方は、熱交換器10からの配管と混合弁11において結合され、混合出湯配管18となって中温水を使用する端末に接続している。
【0017】
高温出湯配管14は、茹麺機19と食洗機20との接続の下流側において、中温タンク1と高温出湯戻り管21bによって接続されており、高温出湯戻り管21bは、途中に逆止弁22bと即湯弁23bを有している。混合出湯配管18は、カラン24との接続の下流側において、中温タンク1と混合出湯戻り管21aによって接続されており、混合出湯戻り管21aは、途中に逆止弁22aと即湯弁23aを有している。
【0018】
次に、上記のように構成された本実施形態の給湯システムの動作について説明する。制御部4は、水位センサ7aによって中温タンク1の水位を検出し、検出された水位に応じて、給水弁6を開き中温タンク1に給水を行ない、給水ポンプ12によって、中温タンク1の下部から給水を取り入れヒートポンプ2へ送る。制御部4は、水位センサ7a及び7bの検出した水位に応じて、中温タンク1と高温タンク3の湯量が、設定湯量になるように、給水をヒートポンプ2において中温タンク1又は、高温タンク3に必要な温度に沸かし上げる。そして、制御部4は、温度センサ8eによって湯温を検出し、切り替え弁25を切り替えて、湯温に応じて湯を中温タンク1又は、高温タンク3に送湯する。高温タンク3の貯湯量が、一定量を超えるとオーバーフロー管13を通して中温タンク1へ送られる。
【0019】
制御部4は、高温タンク3に繋がっている給湯ポンプ16に、常時低速運転を行なわせるか、又は、給湯ポンプ16の後段にアキュムレータを配して蓄圧することで、高温出湯配管14中の圧力を一定に保つ。湯使用端末において湯が使用されると、制御部4は、圧力センサ17によって高温出湯配管14中の圧力低下を感知し、給湯ポンプ16に高速運転を行なわせ、高温タンク3中の湯を出湯する。また、混合出湯のときは、制御部4は、使用温度に応じて混合弁11を開き、高温湯と、熱交換器10において中温タンク1と熱交換をした給水とを混合して出湯する。
【0020】
温度センサ8c、8dは、混合出湯配管18及び高温出湯配管14中の湯温を検出している。長い時間出湯されず、混合出湯配管18又は高温出湯配管14中の湯温が下がると、制御部4は、給湯ポンプ16に高速運転を行なわせ、即湯弁23a又は即湯弁23bを開き、混合出湯配管18又は高温出湯配管14中の温度の下がった湯を中温タンク1に出湯する。このことにより、混合出湯配管18及び高温出湯配管14中の湯温は、常に保たれ、茹麺機19や食洗機20やカラン24の湯使用端末で、湯を使用するときに、湯待ち時間が生じない。また、逆止弁22a、22bが配されているので、混合出湯戻り管21a及び高温出湯戻り管21b中の湯が、混合出湯配管18及び高温出湯配管14に戻ることはない。
【0021】
また、ヒートポンプ2によって中温湯と高温湯とを別に沸かし上げ、中温タンク1と高温タンク3とに分けて送湯できるようにし、高温湯を水で希釈する無駄をなくした。これにより、省エネルギーを図ることができる。混合出湯量が90℃換算で3,000l/日、高温出湯湯量が同じく90度換算で、1,500l/日の店舗において、中温タンクへ65℃での沸かし上げを行なった。給水温は16℃であった。このときのCOPは、混合出湯が3.9で高温出湯が2.9であった。このときの消費電力は混合出湯分として66.4kWh/日、高温出湯分として44.7kWh/日で、合計111.1kWh/日であった。これを全て高温の90℃で沸上げたとして計算すると混合出湯分が89.3kWh/日となって合計134.0kWh/日となる。従って沸上温度を切り替えることにより17%の省エネルギーを達成することができる。
【0022】
また、高温タンク3が大気開放型であるので、後述の高圧タンクのように、内圧に耐えるために形状を円筒としたり、上下端を半球形状にしたりする必要がなく、設置場所に応じた任意の形状にすることができ、狭い場所にも設置することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る給湯システムについて図2を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第1の実施形態に係る給湯システムにおいて、高温タンク3を大気開放型から高圧タンク3bに置き換えたものである。本実施形態に係る給湯システムは、高温湯の貯湯タンクとして高圧タンク3bを備えている。高圧タンク3bは、下部において給水管5とヒートポンプ2と繋がっている。また、高圧タンク3bは、上部において切り替え弁25と繋がり、ヒートポンプ2から送られる高温湯が上部から入れられる。また、高圧タンク3bは、上部において高温出湯配管14と繋がり、高温湯を出湯する。高圧タンク3bは、タンクの上部から下部にかけてn個の温度センサ8b1乃至8bnを有している。高温出湯配管14は、茹麺機19や食洗機20と繋がると共に、高温出湯配管14から分岐した配管は、補助弁27に繋がる。また、高温出湯配管14は、安全弁28を介して中温タンク1と繋がっている。
【0024】
中温タンク1は、混合弁11と繋がる中温タンク出湯配管29を備え、中温タンク出湯配管29の途中には、給湯ポンプ16a及び圧力センサ17aを有している。また、中温タンク出湯配管29から分岐した配管は、補助弁27と繋がっている。中温タンク出湯配管29は、混合弁11を介して給水管5からの分岐配管と繋がり、混合出湯配管18になっている。
【0025】
本実施形態の給湯システムにおいて、高圧タンク3bは、タンク下部において給水管5から給水を受ける。高圧タンク3bの下部の水は、給水管5の給水圧力によりヒートポンプ2へ送られる。制御部4は、水位センサ7a、温度センサ8a及び、温度センサ8b1乃至8bnが検出したデータから、貯湯量を把握し、ヒートポンプ2によって給水を必要な温度に加熱する。そして、加熱した湯温に応じて切り替え弁25を切り替え、中温タンク1又は、高圧タンク3bへ送湯する。
【0026】
茹麺機19又は食洗機20において高温湯が使用されると、高圧タンク3bの圧力によって高圧タンク3bから高温出湯配管14を通して高温湯が出湯される。カラン24において中温湯が使用されると、制御部4は、混合出湯配管18内の圧力低下を圧力センサ17aが検出した圧力によって感知し、給湯ポンプ16aを駆動させて中温タンク1の中温湯を送湯し、混合弁11を調整して給水と混合して出湯する。このときに、中温タンク1の中温湯が無い場合には、補助弁27を開いて高温湯と給水とを混合して出湯する。
【0027】
また、高温タンクを高圧タンクにしたことにより、ヒートポンプ2への給水や高温湯の出湯を市水の給水圧力によって行なえるので、例えば、ヒートポンプ2へ給水するためのポンプと、高温湯を出湯するためのポンプとが不要となる等、ポンプを適宜省略することができる。また、例えば、給湯ポンプ16aの故障時にも、高圧タンク3bの高温湯を給水と混合して混合湯を出湯することができる等、給湯ポンプ16aの故障時も使用することができる。また、第1の実施形態に比べて、沸かし上げに中温水を使用しない分、COPが低下しない。また、中温水を直接出湯するため、中温水の利用効率が良く、熱交換器も省略することができる。
【0028】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば高温出湯や混合出湯の配管経路や、出湯に係る構成は、使用状況に応じて自在に変えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図3】従来の給湯システムの構成図。
【図4】一般のヒートポンプにおける沸上温度とCOPの関係を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 中温タンク
2 ヒートポンプ
3 高温タンク
3b 高圧タンク
11 混合弁
14 高温出湯配管(出湯配管)
18 混合出湯配管(出湯配管)
25 切り替え弁




【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温湯の出湯、及び、高温湯と給水とを混合した混合湯の出湯が可能な給湯システムにおいて、
給水を加熱するヒートポンプと、
前記ヒートポンプにより加熱された高温湯を貯湯する高温タンクと、
前記ヒートポンプにより前記高温湯よりも低い温度に加熱された中温湯を貯湯する中温タンクと、
前記ヒートポンプに配管を介して接続され、該ヒートポンプより加熱された湯の送湯先を湯温に応じて前記高温タンクと前記中温タンクのいずれかに切り替える切り替え弁と、
前記高温タンクに接続され高温湯を出湯する出湯配管と、
前記出湯配管からの高温湯と給水とを混合する混合弁を介して混合湯を出湯する出湯配管と、を備えたことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記高温タンクが、大気開放型のタンクであることを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
前記高温タンクが、圧力タンクであることを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−96050(P2008−96050A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279984(P2006−279984)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】