説明

給湯用熱交換器

【課題】 燃料電池から流出する高温の排ガスで、水を加温して給湯する給湯用熱交換器において、熱交換器内部で局部的に水が沸騰することを防止すると共に、その水側流路内に炭酸カルシウム等のスケールが付着することを防止すること。
【解決手段】 排ガス1の上流位置に第1熱交換器3を配置し、下流位置に第2熱交換器4を配置する。第1熱交換器3内の水2の速度を第2熱交換器4のそれに比べて速くなるようにし、水2を第2熱交換器4に導いた後に第1熱交換器3に導く。それにより、第1熱交換器3内にスケールが付着することを可及的に小とすると共に、第1熱交換器3内で水の沸騰が生じることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として家庭用固体酸化物形燃料電池のコジェネシステム(cogeneration system)において、高温の排ガス(300〜400℃)で、水を加温して給湯する給湯用熱交換器に関し、特に、熱交換器の内部に、沸騰が生じたり、スケールが付着するのを可及的に少なくしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用燃料電池システムにおいては、給湯温度を75℃程度に設定した貯湯タンクが用いられている。燃料電池の排ガスによる給湯システムでは、燃料電池から流出する高温ガスと水道水とを熱交換するとき、熱交換器内部で局部的な沸騰が発生し、その熱交換器の耐久性に懸念が生じる。
さらに、この熱交換器の内部に流通する水道水の流量は、一例として150cc/min程度と比較的少ない。そのため熱交換器の水側流路内において、スケールの発生が懸念される。このスケールの発生は、水温が65℃を超えると急激に増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−325982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の如く、熱交換器は長期間運転後、スケールの付着により熱交換器の性能が低下すると共に、流路が閉塞するおそれがある。また、熱交換器内部に沸騰が起こると、熱交換器材料の劣化が生じるおそれがある。
そこで本発明は、係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、燃料電池から流出する高温の排出ガス(1)で、水(2)を加温して給湯する給湯用熱交換器において、
前記排出ガス(1)の導かれる上流位置に第1熱交換器(3)が配置され、下流位置に第2熱交換器(4)が配置され、被加温用の水(2)が第2熱交換器(4)に導入された後に、ついでそれが第1熱交換器(3)に供給されるように構成し、
第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の総断面積が、第2熱交換器(4)の水側流路(6a)の総断面積に比べて小さくされて、第1熱交換器(3)内の水(2)の速度が第2熱交換器(4)内のそれに比べて速くなるように構成することにより、第1熱交換器(3)の水側流路(5a)内にスケールが付着するのを可及的に小とすると共に、その水側流路(5a)内で沸騰が生じることを防止したことを特徴とする給湯用熱交換器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の流速が0.3m/sec以上であり、第2熱交換器(4)から流出する水の温度が、65℃以下とされることを特徴とする給湯用熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の流速が0.3m/sec以上であり、第2熱交換器(4)から流出する水の温度が、60℃以下とされることを特徴とする給湯用熱交換器である。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)は、一以上のチューブ(5)内に水(2)が流通し、そのチューブの外面側に排ガス(1)が流通し、
前記第2熱交換器(4)は、並列された多数の偏平チューブ(6)を有し、各偏平チューブ(6)内に排ガス(1)が流通すると共に、偏平チューブ(6)の外面側に水(2)が流通するように構成され、
第2熱交換器(4)内の各偏平チューブ(6)による総伝熱面積が、第1熱交換器(3)のチューブ(5)による総伝熱面積より大とすると共に、第2熱交換器(4)の熱交換量を第1熱交換器(3)のそれよりも大とした給湯用熱交換器である。
【0008】
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)のチューブ(5)は、蛇行状のスリット(7)が形成された平板(8)と、その両面に配置された一対の閉塞板(9)とからなり、そのスリット(7)内に水(2)が流通し、閉塞板(9)の外面に排ガス(1)が流通するように構成された給湯用熱交換器である。
【0009】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜請求項5に記載のいずれかの給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)のチューブ(5)の外面にアウターフィン(10)が固定され、第2熱交換器(4)の偏平チューブ(6)内にインナーフィン(11)が固定された給湯用熱交換器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、高温の排ガス1で水2を加温して給湯する給湯用熱交換器において、排ガス1の上流側に位置される第1熱交換器3の水側流路5aの総断面積が、下流側の第2熱交換器4の水側流路6aのそれに比べて小さくされて、第1熱交換器3内の水2の速度を第2熱交換器4内のそれに比べて速くすることができる。それにより、第1熱交換器3の水側流路5a内にスケールが付着することを可及的に小さくすることができる。それと共に、第1熱交換器3の水側流路5a内の流速を速くし、そこに沸騰が生じるのを防止できる。
これは、排ガス1の上流側に位置して、より高温の排ガス1が流通する第1熱交換器3内でスケールの付着や沸騰が生じがちであるのを、水2の流速を増すことにより防止したものである。
【0011】
請求項2および請求項3に記載のように、第1熱交換器3の水側流路5aの流速を0.3m/sec以上とした場合には、より確実に第1熱交換器3内のスケールの付着を防止すると共に、沸騰を防止できる。
また、第2熱交換器4から流出する水の温度を65℃または60℃以下とすることにより、流速が遅くスケールが付着し易い第2熱交換器4の、スケール析出の発生自体を抑制できる。
【0012】
上記構成において、第2熱交換器4内の各偏平チューブ6による総伝熱面積を、第1熱交換器3のチューブ5のそれよりも大とすると共に、第2熱交換器4の熱交換量を第1熱交換器3のそれよりも大とした場合には、スケールの析出が生じない範囲で、第2熱交換器4の熱交換量を可及的に大きくし、その分だけ第1熱交換器3の負担を軽減して、第1熱交換器3の水2の流速を速くすることができる。それにより、第1熱交換器3の内部にスケールが付着するのを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の給湯用熱交換器の第1実施例の一部分解斜視図。
【図2】同熱交換器の第2熱交換器4の要部正面図であって、第2ケーシング13を破断したもの。
【図3】同熱交換器の第2熱交換器4のコアの要部斜視図。
【図4】同熱交換器の他の第1熱交換器3の要部斜視図。
【図5】本発明の給湯用熱交換器の第2実施例の熱交換器の要部斜視図。
【図6】同第1熱交換器3の分解斜視図。
【図7】同第1熱交換器3の組立て状態を示す斜視図。
【図8】本発明の熱交換器の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態を示し、この熱交換器は第1熱交換器3と第2熱交換器4とが直列に接続されている。そして、第1熱交換器3は排ガス1の上流側に位置し、第2熱交換器4が下流側に位置する。それと共に、水2に対しては、第2熱交換器4が上流側に位置し、第1熱交換器3が下流側に位置する。そして、第1熱交換器3の第1ケーシング12の下流端と第2熱交換器4の第2ケーシング13の上流端とが接続されている。
第1熱交換器3は、この例では断面円形のチューブ5が第1ケーシング12内に位置され、そのチューブ5内に水2が流通し、チューブ5の外面側に排ガス1が流通する。この例では、チューブ5が蛇行状に曲折されて第1ケーシング12内に配置されている。
【0015】
次に、第2熱交換器4は第2ケーシング13内にコア4a設けられている。コア4aは図3に示す如く、多数の偏平チューブ6の積層体からなる。各偏平チューブ6は一対の溝状プレートを組み合わせたものからなり、その両端部に厚み方向に膨出部16が形成されている。また各プレートの中間部の表面には凸部22が外面側に突出し、隣接する偏平チューブ6の凸部22どうしが接触する。そして各偏平チューブ6間に水側流路6aが形成され、各偏平チューブ6内にガス側流路6bが形成される。そのガス側流路6bにはインナーフィン11が配置され、各部品間が一体的にろう付け固定される。そしてコア4aの両端位置で筒状の第2ケーシング13の両端部外周が気密に接合され、第2ケーシング13の一側の両端部位置に一対の水パイプ14が連通される。
【0016】
そして第2熱交換器4の第2ケーシング13の下流端には第2タンク25が接続され、その第2タンク25に出口用の排ガスパイプ26が取付けられている。また、第1熱交換器3の第1ケーシング12の一端に入口用の排ガスパイプ26が連通されている。そして第1熱交換器3の排ガスパイプ26に燃料電池から流出する高温の排ガス1が流入され、それがチューブ5の外面側を流通して、第2熱交換器4の各偏平チューブ6内を流通し、第2タンク25から排ガスパイプ26を介して外部に導かれる。
水2は、第2熱交換器4の下流端の水パイプ14から流入し、各偏平チューブ6間の水側流路6aを流通し、上流側の水パイプ14より流出する。そこから流出した水2は、第1熱交換器3のチューブ5内部の水側流路5aに導かれ、蛇行状に流通してその上流端から流出し、図8の貯湯タンク24に導かれる。そしてこの貯湯タンク24の下端から水2が前記同様に、第2熱交換器4の偏平チューブ6の外側を流通し、次いで第1熱交換器3の チューブ5内を流通する。
【0017】
このとき本発明では、第2熱交換器4を流通する水2の温度は65℃以下になるように設計される。さらに好ましくは60℃以下である。これは65℃を超えると水道水中の炭酸カルシウム等が急激に、水中に析出し始めるからである。即ち、水道水中に含まれる炭酸カルシム等は、熱交換によって一定以上の高温になる程、析出し、それが配管に付着するおそれがあるからである。
実験によれば、65℃を超えると、その付着量が急激に増加する。それ以下では、炭酸カルシム等は水に溶解した状態にある。
なお、水中に析出したスケールは静水の状態にあるとき、配管系の内面に容易に付着するが、流速が高いときは配管内に殆ど付着することがない。
【0018】
そこで本発明は、第2熱交換器4によって水2を65℃以下または60℃以下まで加熱し、温度上昇した水2を第1熱交換器3のチューブ5に導く。そのチューブ5の水側流路5aの断面積は、第2熱交換器4の総流路断面積に比べて著しく小さく、水側流路5a内の流速が速い。そのためその第1熱交換器3で70℃以上に加熱されても、その温水中に析出したスケールがチューブ5の内面に付着することなく、貯湯タンク24に導かれる。
この実施例では、第2熱交換器4の水側流路6aは各偏平チューブ6間に存在し、その水側流路6aと偏平チューブ6の内面のガス側流路6bとの伝熱面積は、第1熱交換器3のそれに比べて著しく大きなものとなる。そのため、水2は第2熱交換器4によって効率良く暖められ一定温度に達し、それが第1熱交換器3に導かれる。第1熱交換器3のチューブ5から流出する水2の温度は、70〜80℃程度である。
【0019】
次に、図4は第1熱交換器3のコアの他の例を示す説明図である。
この例のチューブ5は、蛇行状に曲折され且つ、それが折り返し蛇行されている。そして往路と復路との間に隙間が形成され、そこにアウターフィン10が配置されたものである。
なお、この例では一本のチューブ5を蛇行させたが、複数のチューブ5を蛇行させても良い。
【0020】
次に、図5〜図7は本発明の第2の実施の形態を示し、図5はその全体を示す斜視図であり、この例が図1のそれと異なる点は、第1熱交換器3の構造及び第2熱交換器4の上流側に第2タンク25が配置されている点のみである。
第1熱交換器3は、図6に示す如く、そのチューブ5が蛇行状のスリット7を有する平板8と、その上下両面を閉塞する一対の閉塞板9とからなる。この平板8のスリット7の両端には、一対の連通孔20が設けられている。そして、閉塞板9にもそれに整合する連通孔20が設けられている。
【0021】
この例では、チューブ5としてのエレメントが2段に設けられ、それらの間にアウターフィン10が配置され、そのアウターフィン10の両側に端板19とスペーサ18とが配置されている。そのスペーサ18には、一対の連通孔20が設けられている。そしてそれら各部品が積層されてコアを構成し、そのコアの両端に、ガス側の一対の第1タンク17が配置される。それと共に、一対の水パイプ21が連通孔20に連通する。この例においても、第1熱交換器3が排ガス1の上流側に位置し、第2熱交換器4が下流側に位置する。
【0022】
また、水2に対しては第2熱交換器4が上流側に位置し、第1熱交換器3が下流側に位置する。そして、先ず第1熱交換器3に導かれた排ガス1は、水2との間で熱交換されて温度低下し、その排ガス1が第2熱交換器4の各偏平チューブ6のガス側流路6b内に導かれる。そして水2が各偏平チューブ6間の水側流路6aを流通し、排ガス1との間に熱交換され、40℃〜65℃程度に加温されて、第1熱交換器3のチューブ5に導かれ、そこで排ガス1と熱交換して70℃〜80℃程度に加温され、貯湯タンク24に導かれるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 排ガス
2 水
3 第1熱交換器
4 第2熱交換器
4a コア
5 チューブ
5a 水側流路
5b ガス側流路
6 偏平チューブ
6a 水側流路
6b ガス側流路
【0024】
7 スリット
8 平板
9 閉塞板
10 アウターフィン
11 インナーフィン
12 第1ケーシング
13 第2ケーシング
14 水パイプ
16 膨出部
【0025】
17 第1タンク
18 スペーサ
19 端板
20 連通孔
21 水パイプ
22 凸部
23 燃料電池
24 貯湯タンク
25 第2タンク
26 排ガスパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から流出する高温の排出ガス(1)で、水(2)を加温して給湯する給湯用熱交換器において、
前記排出ガス(1)の導かれる上流位置に第1熱交換器(3)が配置され、下流位置に第2熱交換器(4)が配置され、被加温用の水(2)が第2熱交換器(4)に導入された後に、ついでそれが第1熱交換器(3)に供給されるように構成し、
第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の総断面積が、第2熱交換器(4)の水側流路(6a)の総断面積に比べて小さくされて、第1熱交換器(3)内の水(2)の速度が第2熱交換器(4)内のそれに比べて速くなるように構成することにより、第1熱交換器(3)の水側流路(5a)内にスケールが付着するのを可及的に小とすると共に、その水側流路(5a)内で沸騰が生じることを防止したことを特徴とする給湯用熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の流速が0.3m/sec以上であり、第2熱交換器(4)から流出する水の温度が、65℃以下とされることを特徴とする給湯用熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)の水側流路(5a)の流速が0.3m/sec以上であり、第2熱交換器(4)から流出する水の温度が、60℃以下とされることを特徴とする給湯用熱交換器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)は、一以上のチューブ(5)内に水(2)が流通し、そのチューブの外面側に排ガス(1)が流通し、
前記第2熱交換器(4)は、並列された多数の偏平チューブ(6)を有し、各偏平チューブ(6)内に排ガス(1)が流通すると共に、偏平チューブ(6)の外面側に水(2)が流通するように構成され、
第2熱交換器(4)内の各偏平チューブ(6)による総伝熱面積が、第1熱交換器(3)のチューブ(5)による総伝熱面積より大とすると共に、第2熱交換器(4)の熱交換量を第1熱交換器(3)のそれよりも大とした給湯用熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)のチューブ(5)は、蛇行状のスリット(7)が形成された平板(8)と、その両面に配置された一対の閉塞板(9)とからなり、そのスリット(7)内に水(2)が流通し、閉塞板(9)の外面に排ガス(1)が流通するように構成された給湯用熱交換器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の給湯用熱交換器において、
前記第1熱交換器(3)のチューブ(5)の外面にアウターフィン(10)が固定され、第2熱交換器(4)の偏平チューブ(6)内にインナーフィン(11)が固定された給湯用熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−117723(P2012−117723A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266664(P2010−266664)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】