説明

給紙装置及びこの給紙装置を適用した印刷装置

【課題】給紙トレイ上に積載された用紙の紙質を判定する。
【解決手段】複数枚の用紙Pを積載する給紙トレイ21と、給紙トレイ21上に積載された用紙Pの端部をなぞるなぞり部材24と、給紙トレイ21及びなぞり部材24を相対的に移動させる移動手段(22)と、移動手段(22)による移動させる動作に伴ってなぞり部材24で用紙Pの端部をなぞったときに発生したなぞり音を収音する収音手段(26)と、収音手段(26)で収音したなぞり音から用紙Pの紙質を判定する制御部80と、を備えたことを特徴とする給紙装置20を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄紙,普通紙,厚紙などの各種の用紙や封筒などに画像や文字を印刷する際に、給紙トレイ上に積載された用紙の紙質を判定できる給紙装置及びこの給紙装置を適用した印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄紙,普通紙,厚紙などの各種の用紙や封筒などに画像や文字を印刷できる印刷装置は、インクジェット印刷装置,孔版印刷装置,レーザビームプリンタ,熱転写印刷装置などが家庭用又は業務用として多用されている。
【0003】
そして、印刷装置により各種の用紙を用いて画像や文字を印刷する場合に、1平方メートルあたりの紙1枚の重量となる坪量は、例えば、薄紙の場合に60g/m以下であり、普通紙の場合には60〜120g/mであり、厚紙の場合には120g/m以上であるので、既存の普通紙に対して一枚の厚みが半分以下の薄紙を用いれば省資源化(エコ化)や省スペース化を実現することが明らかである。
【0004】
この際、プリンタを用いて複数種の印刷用紙に対して印刷を行うにあたって、印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別方法がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示された用紙種類判別方法では、ここでの図示を省略するものの、給紙トレイ上に積載されている複数枚の印刷用紙に対してピックアップローラにより最上層の印刷用紙を所定距離引き出した後、この印刷用紙を停止させる。そして、給紙トレイから引き出された印刷用紙を横切る光軸を形成する投光器及び受光器によって、印刷用紙を透過する光の透過光量を検出し、この光の透過光量に対応した電圧に変換する。この後、光の透過光量に対応した電圧と所定のしきい電圧とを比較し、比較結果に基づいて印刷用紙の種類を判別する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−196207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された用紙種類判別方法では、前述したように、印刷用紙の種類を判別するときに、給紙トレイ上から引き出した最上層の印刷用紙を投光器と受光器との間を通過させてこのときの光の透過光量を検出しているが、印刷用紙よっては光を透過させない種類が多々あり、例えば印刷用紙の厚さが同じでも表面の色が異なってしまえば光の透過光量が異なってしまうために同じ紙質であると判定できないので問題である。
【0008】
また、特許文献1に開示された用紙種類判別方法では、単に印刷用紙の種類を判別しているだけであり、用紙種類判別結果に基づいてプリンタの給紙部などを制御することについて何等の開示もなく、示唆もされていない。
【0009】
そこで、給紙トレイ上に積載された用紙の紙質を確実に判定できる給紙装置及びこの給紙装置を適用した印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、複数枚の用紙を積載する給紙トレイと、
前記給紙トレイ上に積載された前記用紙の端部をなぞるなぞり部材と、
前記給紙トレイ及び前記なぞり部材を相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段による移動させる動作に伴って前記なぞり部材で前記用紙の端部をなぞったときに発生したなぞり音を収音する収音手段と、
前記収音手段で収音した前記なぞり音から用紙の紙質を判定する制御部と、
を備えたことを特徴とする給紙装置である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、上記した請求項1記載の給紙装置において、
前記制御部は、前記用紙の坪量に応じた各なぞり音パターンを予め格納した記憶部を有し、前記給紙トレイ上に積載された用紙に対して前記収音手段で収音した前記なぞり音と、前記記憶部に記憶した前記各なぞり音パターンとを比較することで、前記坪量を判定することを特徴とする給紙装置である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2記載の給紙装置において、
前記なぞり部材は、前記用紙の端部のうちでコーナ部位近傍をなぞることを特徴とする給紙装置である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置で給紙した前記用紙に画像や文字を印刷する印刷部と、
前記印刷部で印刷された印刷済みの用紙を排紙する排紙部と、を備え、
前記制御部で前記用紙の紙質を判定したときに、前記制御部は前記給紙装置,前記印刷部,前記排紙部のうち少なくとも一つを前記用紙の紙質に応じて制御することを特徴とする印刷装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の給紙装置によると、複数枚の用紙を積載する給紙トレイと、給紙トレイ上に積載された用紙の端部をなぞるなぞり部材と、給紙トレイ及びなぞり部材を相対的に移動させる移動手段と、移動手段による移動させる動作に伴ってなぞり部材で用紙の端部をなぞったときに発生したなぞり音を収音する収音手段と、収音手段で収音したなぞり音から用紙の紙質を判定する制御部と、を備えているので、これにより給紙トレイ上に積載された用紙の紙質がわかるので、用紙の紙質に応じて給紙制御を行うことができるために、給紙ミスや用紙の重送などのない良好な給紙ができる。
【0015】
また、請求項2記載の給紙装置によると、請求項1記載の給紙装置において、制御部は、用紙の坪量に応じた各なぞり音パターンを予め格納した記憶部を有し、給紙トレイ上に積載された用紙に対して収音手段で収音したなぞり音と、記憶部に記憶した各なぞり音パターンとを比較することで、坪量を判定しているので、給紙トレイ上に積載された坪量が未知である用紙が薄紙,普通紙,厚紙のいずれであるかを確実に判定することができる。
【0016】
また、請求項3記載の給紙装置によると、請求項1又は請求項2記載の給紙装置において、なぞり部材は、用紙の端部のうちでコーナ部位近傍をなぞるので、コーナ部位近傍はなぞり部材によって上方に向かって大きく変位し易く、且つ、きれいななぞり音を発生することができるために、用紙の紙質及び用紙の坪量を正確に判定することができる。
【0017】
また、請求項4記載の印刷装置によると、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の給紙装置を用いて制御部で用紙の紙質を判定したときに、制御部は給紙装置(給紙部),印刷部,排紙部のうち少なくとも一つを用紙の紙質に応じて制御しているので、印刷装置の性能を用紙の紙質に応じて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る給紙装置及びこの給紙装置を適用したインクジェット印刷装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図2】図1に示した制御部を拡大して示した図である。
【図3】本発明に係る給紙装置を示した上面図であり、(a)は給紙トレイ上に積載した用紙の幅方向のサイズが小さい場合を示し、(b)は給紙トレイ上に積載した用紙の幅方向のサイズが大きい場合を示した図である。
【図4】本発明に係る給紙装置を筐体の給紙トレイガイド側板の内側から見た前面図であり、(a)は給紙トレイが下動して初期位置に至っている状態を示し、(b)は給紙トレイが上動して給紙位置に至っている状態を示した図である。
【図5】図1及び図2に示したマイク音処理回路を示したブロック図である。
【図6】本発明に係る給紙装置において、給紙トレイが上動して給紙位置に至るときに、なぞり部材及びマイクロホンを給紙トレイの先端部側から退避させた状態を示した側面図である。
【図7】本発明に係る給紙装置において、給紙トレイが給紙位置に至っているときに、なぞり部材及びマイクロホンを給紙トレイの先端部側に向けて移動させた状態を示した側面図である。
【図8】(a),(b)は本発明に係る給紙装置において、給紙トレイが給紙位置から初期位置に向けて下動しているときに、なぞり部材で複数の用紙の各先端部のコーナ部位近傍をなぞっている状態を示した側面図,イ部拡大図である。
【図9】坪量が42g/mの用紙をロットごとになぞり部材でなぞったときの各なぞり音を示した図である。
【図10】坪量が58g/mの用紙をロットごとになぞり部材でなぞったときの各なぞり音を示した図である。
【図11】坪量が68g/mの用紙をロットごとになぞり部材でなぞったときの各なぞり音を示した図である。
【図12】坪量が180g/mの用紙をロットごとになぞり部材でなぞったときの各なぞり音を示した図である。
【図13】図9,図10,図11,図12に示した坪量が42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙の各なぞり音をロット数で平均化した各なぞり音を示した図である。
【図14】坪量が42g/mの用紙のなぞり音パターンを求める方法を説明するための図である。
【図15】(a)〜(d)は制御部のROM内に格納した坪量が42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙の各なぞり音パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る給紙装置及びこの給紙装置を適用した印刷装置の一実施例について、図1〜図15を参照して詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る給紙装置は、薄紙,普通紙,厚紙などの各種の用紙や封筒などに画像や文字を印刷するインクジェット印刷装置,孔版印刷装置,レーザビームプリンタ,熱転写印刷装置などの印刷装置に適用可能に構成されているが、以下の実施例では本発明に係る給紙装置(給紙部)を上記した各種の印刷装置のうちで例えば印刷部にインクジェットヘッドを用いたインクジェット印刷装置に適用した例について説明する。
【0021】
この際、給紙装置(給紙部)内に設けた給紙トレイ上に積載される用紙は、薄紙,普通紙,厚紙などの各種の用紙や封筒などのうちで1種類が積載されているが、本発明では給紙トレイ上に積載された用紙の紙質を確実に判定できるように構成されていることを特徴とするものである。
【実施例】
【0022】
図1に示した如く、本発明に係る給紙装置を適用したインクジェット印刷装置1では、この装置全体を操作する操作パネル部10と、給紙トレイ21上に複数枚積載された用紙Pのうちで最上層の用紙Puに給紙ローラ31が回転しながら当接して最上層の用紙Puを搬送方向下流側に向って給紙すると共に、用紙Pの給紙前に給紙トレイ21上に積載された複数枚の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときに発生したなぞり音をマイク音処理回路25内に設けた収音手段(以下、マイクロホンと記す)26で収音する給紙装置(以下、給紙部と記す)20と、給紙部20により給紙した用紙Pの搬送方向下流側の端部(以下、先端部と記す)Paを突き当てて先端位置を揃えた後に回転して用紙Pを下流に向けて搬送するレジストローラ対42と、レジストローラ対42により搬送された用紙Pを下記する印刷部60及びこの印刷部60よりも下流の排紙部70に向けて搬送するベルトプラテン部50と、ベルトプラテン部50の上方に設置され、インクIKを吐出するインクジェットヘッド61を少なくとも一以上有して用紙P上に画像や文字を印刷する印刷部60と、印刷部60で印刷された印刷済みの用紙Pを排紙する排紙部70と、装置全体を制御すると共にマイクロホン26で収音したなぞり音から用紙Pの紙質を判定して用紙Pの紙質に応じて給紙制御を行う制御部80と、各部に電源を供給する電源部90とを備えることで、インクジェット印刷方式を適用して構成されている。
【0023】
ここで、インクジェット印刷装置1の各部について順を追って具体的に説明すると、このインクジェット印刷装置1の外観を形成する筐体2は箱状に形成されている。
【0024】
まず、上記した操作パネル部10は、筐体2の上面2aに設置されており、ここでの詳細な図示を省略するが、用紙印刷キー,封筒印刷キー,スタートキー,ストップキー,数字を入力するテンキー,印刷枚数を設定する印刷枚数設定キー,ジャムの発生や各種の故障の発生などを警告するアラーム表示部,液晶パネルなどが設けられている。
【0025】
次に、上記した給紙部(給紙装置)20は、本発明の要部となるものであり、普通紙,薄紙,厚紙などの各種の用紙Pとか封筒(図示せず)のうちで1種類の用紙Pを複数枚積載した給紙トレイ21が移動手段となるエンコーダ付きモータ22により筐体2の左側面下方部位に設けた給紙トレイガイド側板2bの外側に沿って上下動可能に配設されており、後述の図4(a)に示したように給紙トレイ21が下動して初期位置に至っている状態と、図4(b)に示したように給紙トレイ21が上動して給紙位置に至っている状態とを取り得るようになっている。
【0026】
また、給紙トレイ21上には用紙Pの幅方向左右をガイドする左右一対のガイドフェンス(23A),23Bが用紙Pの搬送方向と直交する幅方向の左右に移動自在に設けられており、これによりA3サイズ,A4サイズ,封筒サイズなどの用紙Pが積載可能になっている。
【0027】
また、給紙トレイ21上に積載された複数枚の用紙Pの搬送方向下流側となる先端部Pa側で筐体2の給紙トレイガイド側板2bの内側に複数枚の用紙Pの各端部をなぞるなぞり部材24が用紙Pの先端部Pa側に向かって進退自在に設けられており、このなぞり部材24はステンレスなどの金属材料を用いて先端部が鋭角に形成されている。
【0028】
また、なぞり部材24で最下層の用紙Plの先端部Paから最上層の用紙Puの先端部Paに向って複数枚の用紙Pの各先端部Paをなぞったときに発生したなぞり音を収音するマイクロホン(収音手段)26が設置されているが、なぞり部材24及びマイクロホン26については後で詳述する。
【0029】
また、給紙位置に対応した給紙トレイ21の上方には給紙ローラ31と捌きローラ33とがアーム32に回転可能に軸支されており、用紙Pの先端部Pa側に位置する給紙ローラ31は捌きローラ33の軸を支点としてアーム32を介して最上層の用紙Puに回転しながら当接して、最上層の用紙Puを搬送方向下流側に向かって給紙している。尚、後述するように、アーム32に不図示のバネを掛けることで用紙Pの紙質により給紙ローラ31の押圧力を調整可能になっているが、アーム32にバネを掛けずに給紙ローラ31の自重による押圧力だけでも可能である。
【0030】
また、給紙ローラ31により給紙された最上層の用紙Puは、給紙ローラ31よりも搬送方向下流側に設けた捌きローラ33と摩擦板34との間で挟持搬送されながら一枚ずつ分離されて重送が防止され、この後、最上層の用紙Puが更に搬送方向下流側に向って搬送される。
【0031】
この際、給紙部20内に設けた給紙ローラ31と捌きローラ33は、ギア列35を介してエンコーダ付きモータ36によって一定の搬送速度でそれぞれ反時計方向に回転駆動されており、この一定の搬送速度により用紙Pが所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0032】
また、捌きローラ33及び摩擦板34よりも搬送方向下流側には、レジストローラ対42がエンコーダ付きモータ43によって回転駆動されている。そして、給紙部20により給紙された用紙Pの先端部Paは停止中のレジストローラ対42に突き当るが、レジストローラ対42よりも搬送方向上流側に設置したレジストセンサ41で給紙中の用紙Pの先端部Paを検出した後に、給紙ローラ31及び捌きローラ33を更に一定時間に亘って回転させると、停止中のレジストローラ対42の上流側に二点鎖線で示したような用紙Pの先端部Pによる撓みTが所定量生じ、この撓みTにより用紙Pの先端位置がレジストローラ対42に対して揃うようになっている。
【0033】
また、レジストローラ対42を挟んで上流側にレジストセンサ41が設置され、且つ、下流側に第1トップエッジセンサ44が設置され、両センサ41,44は光透過型のフォトセンサを用いて用紙Pの通過状態を検出していると共に、第1トップエッジセンサ44は後述する印刷部60内に設けたインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能をも兼ね備えている。
【0034】
そして、用紙Pの先端部Paに発生した撓みTの量が所定量に至った後に、エンコーダ付きモータ43によりレジストローラ対42を搬送速度に応じて回転駆動させている。
【0035】
また、第1トップエッジセンサ44よりも搬送方向下流側には、光反射型の第2トップエッジセンサ45と、ベルトプラテン部50と、このベルトプラテン部50と対向した印刷部60とが設置されている。
【0036】
上記した第2トップエッジセンサ45は、ベルトプラテン部50の上方に設けられているために光反射型のフォトセンサが用いられており、この第2トップエッジセンサ45は上流側に設けた第1トップエッジセンサ44と協働してインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能を備えている。
【0037】
この際、用紙Pの先端部Paが第1,第2トップエッジセンサ44,45をそれぞれ通過したときに、後述するベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54からのエンコーダパルス数を制御部80内に設けた第1,第2カウンタ80d,80e(図2)により計数を開始して、ここで計数したエンコーダパルス数が各色のインクジェットヘッド61ごとに予め設定した各パルス数に至ったときに各色のインクIKの吐出を開始するようになっているが、第1トップエッジセンサ44よりも下流側に設置した第2トップエッジセンサ45が主としてインク吐出制御を行い、一方、第1トップエッジセンサ44は第2トップエッジセンサ45によるインク吐出制御が不能となったときの予備として準備されている。
【0038】
この理由は、第2トップエッジセンサ45がベルトプラテン部50内のエンドレスベルト52の上方に設置され且つインクジェットヘッド61に近い位置に設置されており、且つ、印刷時に用紙Pはエンドレスベルト52上にエア吸引されて一定速度で搬送されているために、第2トップエッジセンサ45で用紙Pの先端部Paを検出したときの方が精度の良いインク吐出タイミングが得られるために、この第2トップエッジセンサ45を主として用いている。
【0039】
しかしながら、第2トップエッジセンサ45は、エンドレスベルト52の上方に設置されているために光反射型のフォトセンサを用いなければならないので、エンドレスベルト52と用紙Pとの反射率が近い場合、例えば黒色のエンドレスベルト52上に黒色の用紙Pを搭載したときに用紙Pを検出できない場合があり、この場合には光透過型のフォトセンサを用いた第1トップエッジセンサ44で用紙Pを確実に検出できるために第1トップエッジセンサ44に切替えている。
【0040】
また、上記したベルトプラテン部50は、箱体51内に複数のエア吸引孔(図示せず)を有して帯状に形成されたエンドレスベルト52が従動プーリ53とエンコーダ付きモータ54により一定の搬送速度で回転駆動される駆動プーリ55との間に2個の中間プーリ56を介してエンドレスに掛け渡されており、且つ、従動プーリ53及び駆動プーリ55に紙押えローラ57,58が添接して、エンドレスベルト52上に搬送された少なくとも一枚以上の用紙Pをエンドレスベルト52の内側に設置したエア吸引部59でエア吸引しながら印刷部60及び後述する排紙部70に向けて搬送している。
【0041】
この際、ベルトプラテン部50は、エンドレスベルト52と後述するインクジェットヘッド61との間の間隔(ギャップ)を、用紙Pの厚さとか封筒(図示せず)の厚さに応じて調整できるように不図示の上下動手段により箱体51ごと上下動可能に設けられている。
【0042】
また、印刷部60は、ベルトプラテン部50の上方でこのベルトプラテン部50と僅かに間隔を離して対向して設けられており、筐体2内の略中央部位に位置している。
【0043】
この印刷部60では、複数色のインクIKと対応して複数のインクジェットヘッド61が搬送方向上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に固定設置されていると共に、各インクジェットヘッド61間に用紙Pをエンドレスベルト52上に押し付ける紙押えローラ62が設けられている。
【0044】
尚、この実施例1では、4色(CKMY)のインクIKに対応して4個のインクジェットヘッド61を設置した例で説明するが、例えば文字だけを印刷する場合には1色(K)だけで良いので、インクジェットヘッド61は少なくとも一以上設置すれば良いものである。
【0045】
ここで、各色用のインクジェットヘッド61は、詳細な図示を省略するが、ライン型に構成されており、複数のノズルを紙面と垂直な主走査方向に沿って配列させたヘッドブロックが、主走査方向に沿った一のライン上に沿って複数個配置され、且つ、主走査方向と直交する副走査方向に計2ラインに分けて配置されていると共に、隣り合うラインでは各ヘッドブロックが一部重なりあうように互い違いに千鳥状に配置されている。
【0046】
そして、用紙Pをエア吸引によりエンドレスベルト52上に固定した状態でエンドレスベルト52の回転より用紙Pを副走査方向(矢印方向)に搬送しながら4個のインクジェットヘッド61により印刷データD(図2)に基いてカラー画像を印刷している。
【0047】
また、ベルトプラテン部50及び印刷部60の下流側に排紙部70が設けられており、この排紙部70は、印刷部60で印刷が終了した印刷済みの用紙Pを排紙ローラ対71を介して筐体2の右側面2c側に着脱可能に設けた排紙トレイ72上に排紙することが可能になっている。この際、排紙トレイ72の用紙口には印刷済みの用紙Pの幅方向左右と対応して左右一対のサイドフェンス(図示せず)が設けられており、印刷済みの用紙Pが左右一対サイドフェンスによりV字状又はW字状に腰を付けて飛ばされることで確実に排紙トレイ72上に排紙できるようになっている。
【0048】
また、上記した制御部80は、図2に拡大して示したように、各部を制御するCPU80aと、インクジェット印刷装置1の動作プログラムや、後述するように薄紙,普通紙,厚紙などの各種の用紙Pに対して紙質を判定するために給紙トレイ21上に積載されて坪量が既知の複数種の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときに発生した各なぞり音パターンなどを含めて予め固定された情報を格納するROM80bと、インクジェット印刷装置1の動作時に変更可能な情報として坪量が未知の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときに発生したなぞり音などを一時的に格納するRAM80cと、給紙部20で給紙した用紙Pが第1,第2トップエッジセンサ44,45を通過したときにインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御するためにベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54(図1)からのエンコーダパルスを計数する第1,第2カウンタ80d,80eとを有している。
【0049】
また、制御部80は、パソコンPCなどで作成した印刷データDがインターフェース81を介して入力されると共に、操作パネル部10と、給紙トレイ21や給紙ローラ31とか捌きローラ33を含めた給紙部20と、なぞり部材24と、マイクロホン26を含めたマイク音処理回路25と、レジストローラ対42と、ベルトプラテン部50と、インクジェット印刷方式を適用した印刷部60と、排紙ローラ対71を含めた排紙部70と、搬送路中に設けた各種の光センサ41,44,45とを制御している。
【0050】
ここで、本発明の要部となる給紙装置(給紙部)20及びマイク音処理回路25の具体的な構成について、図3〜図5を用いて詳述する。
【0051】
図3(a),(b)に示した如く、本発明に係る給紙装置(給紙部)20は、用紙Pの幅方向の中心部を中心に略左右対称に設けられており、左右一対のガイドフェンス23A,23Bが給紙トレイ21の上面21a上に形成した左右一対のガイド溝21a1,21a2に案内されて不図示の駆動源又は手動により用紙の幅方向左右に移動可能に設けられている。
【0052】
これにより、用紙Pの幅方向のサイズが小さい場合には図3(a)に示したように左右一対のガイドフェンス23A,23Bを互いに内側に向かって移動させる一方、用紙Pの幅方向のサイズが大きい場合には図3(b)に示したように左右一対のガイドフェンス23A,23Bを互いに外側に向かって移動させることで、用紙Pの幅方向の寸法が異なる各種の用紙Pに対応できるようになっている。
【0053】
また、図3(a),(b)及び図4(a),(b)に示した如く、給紙トレイ21には、先端側凹部21c1が用紙Pの先端部Paと対応する先端部21cのうちで幅方向中心部よりも左側に沿い、且つ、給紙トレイ21の上面21aと下面21bとの間を貫通させて長尺で矩形状に切り欠かれており、この先端側凹部21c1に用紙Pの先端部aのうちで左側のコーナ部位Pac近傍が臨んでいる。
【0054】
尚、実施例では、給紙トレイ21に形成した先端側凹部21c1を幅方向に長尺に形成した場合について説明したが、これに限ることなく、ここでの図示を省略するが先端側凹部を給紙トレイ21と別体でなぞり部材24の幅よりも一回り大きく且つ幅方向に短尺に形成した上で給紙トレイ21の先端部21cに沿ってなぞり部材24の位置に合わせるように移動可能に設ければ、用紙Pのコーナ部位Pac近傍の幅方向の側部を給紙トレイ21上に搭載できる。
【0055】
一方、図3(a),(b)及び図4(a),(b)に示した如く、筐体2の左側面下方部位に設けた給紙トレイガイド側板2bには長尺な矩形孔2b1が貫通して穿設されており、この長尺な矩形孔2b1は給紙トレイ21が図4(b)に示した給紙位置に至ったときの下面21bより少し下方に形成されて、給紙トレイ21の先端部21cに形成した先端側凹部21c1と対向可能に設けられている。
【0056】
そして、なぞり部材24とマイクロホン26とが、筐体2の給紙トレイガイド側板2bに穿設した長尺な矩形孔2b1と対向しながら給紙トレイ21の先端部21c側に向かって臨んでいる。
【0057】
この際、なぞり部材24は、用紙Pの搬送方向と対応してX軸方向に案内するX軸方向案内部材24Xに沿って移動自在に設けられ、且つ、用紙Pの幅方向と対応してY軸方向に案内するY軸方向案内部材24Yに沿って移動自在に設けられていると共に、なぞり部材24のY軸方向への移動は左右一対のガイドフェンス23A,23Bの移動と連動するようになっているので、用紙Pの幅方向のサイズに対応できる。
【0058】
また、なぞり部材24上にマイクロホン(収音手段)26が固着されており、なぞり部材24と一体にマイクロホン26もX軸方向及Y軸方向に移動可能になっている。
【0059】
上記したマイクロホン26は、給紙トレイ上に積載された複数枚の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときに発生するなぞり音を収音しており、マイクロホン26で収音したなぞり音は図5に示したマイク音処理回路25で処理されている。
【0060】
上記したマイク音処理回路25は、図5に示した如く、マイクロホン26と、このマイクロホン26で収音したなぞり音をアナログからディジタルにA/D変換するA/D変換器27と、A/D変換したなぞり音をフーリェ変換するフーリェ変換器28とから構成されており、フーリェ変換されたなぞり音は制御部80のRAM80c内に一時的に格納されるので、このフーリェ変換されたなぞり音と制御部80のROM80b内に予め格納された複数種の用紙Pの各なぞり音パターンとを制御部80のCPU80a内で比較することにより、後述するように、用紙Pの坪量及び用紙Pの紙質を判定することができるようになっている。
【0061】
次に、上記のように構成した給紙装置(給紙部)20及びマイク音処理回路25の動作について、図6〜図15を用いて詳述する。
【0062】
まず、図6に示した給紙装置20において、制御部80は、用紙Pの給紙前に、なぞり部材24及びマイクロホン26をX軸方向案内部材24Xを介して用紙Pの搬送方向下流側となる矢印X1方向に移動させて、なぞり部材24及びマイクロホン26が給紙トレイ21の先端部21cに衝突しないように筐体2の給紙トレイガイド側板2bに形成した矩形孔2b1よりも内側に退避させておき、この後、給紙トレイ21を筐体2の給紙トレイガイド側板2bの外側に沿って初期位置から給紙位置まで上動させている。
【0063】
この後、図7に示した給紙装置20において、制御部80は、給紙トレイ21が給紙位置に至っても用紙Pの給紙をせずに、なぞり部材24及びマイクロホン26をX軸方向案内部材24Xを介して用紙Pの搬送方向下流側とは反対側となる矢印X2方向に移動させて、なぞり部材24を筐体2の給紙トレイガイド側板2bに形成した矩形孔2b1を通って給紙トレイ21の先端部21c側の下面21bの下方に臨ませると共に、マイクロホン26を給紙トレイ21上に積載した複数の用紙Pの各先端部Pa側に接近させている。
【0064】
更にその後、図8(a),(b)に示した給紙装置20において、制御部80は、給紙トレイ21を給紙位置から筐体2の給紙トレイガイド側板2bの外側に沿って下動させると、なぞり部材24が給紙トレイ21の先端部21c側に形成した先端凹部21c1内に進入して、給紙トレイ21上に積載した複数枚の用紙Pのうちで最下層の用紙Plの先端部左側のコーナ部位Pac近傍に接触する。そして、給紙トレイ21の更なる下動に伴って、なぞり部材24で最下層の用紙Plのコーナ部位Pac近傍から最上層の用紙Puのコーナ部位Pac近傍に向ってなぞるとなぞり音が発生し、このなぞり音をマイクロホン26で収音している。
【0065】
この際、複数枚の用紙Pの各先端部Paのうちでコーナ部位Pac近傍は、なぞり部材24によって上方に向かって大きく変位し易く、且つ、きれいななぞり音を発生することができるために、下記するように用紙Pの坪量及び用紙Pの紙質を正確に判定することができる。
【0066】
そして、給紙トレイ21上に積載した複数枚の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞった時に発生するなぞり音は、用紙Pの坪量及び用紙Pの紙質に応じてなぞり音の周波数特性が異なることが判明した。
【0067】
そこで、インクジェット印刷装置1を出荷する前に、給紙装置(給紙部)20を用いて、薄紙,普通紙,厚紙など用紙Pの紙質に対応して坪量が既知の用紙Pを予め複数種用意し、例えば、薄紙の1種である坪量が42g/mの用紙P,薄紙の1種である坪量が58g/mの用紙P,普通紙の1種である坪量が68g/mの用紙P,厚紙の1種である坪量が180g/mの用紙Pをロット単位でそれぞれ複数ロットずつ用意した上で、坪量が異なる各用紙Pに対してロットごとになぞり部材24でなぞった時に発生するなぞり音を測定した。
【0068】
具体的には、給紙トレイ21上に坪量が42g/mの用紙Pをロットごとに複数枚積載し、ロットごとに坪量が42g/mの複数枚の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときのなぞり音を、図5に示したマイク音処理回路25内のマイクロホン26で収音すると、ロットごとになぞり音がばらつくことを確認した。
【0069】
この後、マイクロホン26で収音したロットごとの各なぞり音を、A/D変換器27でA/D変換した後にフーリェ変換器28で周波数分析すると、図9に示したように坪量が42g/mの用紙Pをロットごとになぞり部材24でなぞったときの各なぞり音の周波数特性が得られた。
【0070】
上記と同様な操作により、図10では坪量が58g/mの用紙Pをロットごとになぞり部材24でなぞったときの各なぞり音の周波数特性が得られ、また、図11では坪量が68g/mの用紙Pをロットごとになぞり部材24でなぞったときの各なぞり音の周波数特性が得られ、更に、図12では坪量が180g/mの用紙Pをロットごとになぞり部材24でなぞったときの各なぞり音の周波数特性が得られた。
【0071】
この後、図9,図10,図11,図12に示した坪量が42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙Pの各なぞり音をロット数で周波数帯域に沿って平均化すると、図13に示したような平均化したときの各なぞり音の周波数特性が得られた。
【0072】
更に、図9,図10,図11,図12に示した坪量が42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙Pの各なぞり音をロット数で周波数帯域に沿って平均化した値を基にして標準偏差σを求めた。
【0073】
そして、図14に示した如く、例えば、坪量が42g/mの用紙Pで得られた平均化したなぞり音の周波数に対して±3σの幅で周波数帯域に沿って大ざっぱにパターン化して帯状のなぞり音パターンを設定し、以下、同様に、坪量が58g/m,68g/m,180g/mの各用紙Pに対して各なぞり音パターンを設定すると、図15(a)〜(d)に示したような結果が得られるので、坪量が既知である42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙Pの各なぞり音パターンを制御部80のROM80b(図2,図5)内に予め格納しておく。
【0074】
この際、なぞり部材24によって発生するなぞり音は、用紙Pの水分量によって変化することもあり、用紙の水分量が少なく乾いていれば高いなぞり音になる一方、用紙の水分量が多く湿っていれば低いなぞり音になる傾向を有しているので、この状況を考慮する場合には、インクジェット印刷装置1内に不図示の湿度計を設置し、且つ、坪量が既知である42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙Pの各なぞり音パターンの組を1組として、この組を湿度に対応して制御部80のROM80b内に複数組格納しておき、湿度計の湿度に応じて制御部80のROM80b内から該当する組のなぞり音パターンを選択できるようにしても良い。
【0075】
一方、ユーザによって坪量が未知である用紙Pを給紙トレイ21上に複数枚積載したときに、給紙トレイ21を給紙位置から下動させながら複数枚の用紙Pの各端部をなぞり部材24でなぞったときに発生したなぞり音を、図5に示したマイク音処理回路25内のマイクロホン26で収音して、A/D変換器27及びフーリェ変換器28で周波数分析したなぞり音を制御部80のRAM80c内に一時格納する。
【0076】
この後、制御部80のRAM80c内に一時格納した坪量が未知である用紙Pと、制御部80のROM80b内に格納した坪量が既知である42g/m,58g/m,68g/m,180g/mの複数種の用紙Pの各なぞり音パターンとを制御部80のCPU80aにより比較して、坪量が未知である用紙Pがどの坪量に該当する用紙Pであるかを判定することで、制御部80は給紙トレイ21上に積載された坪量が未知である用紙Pが薄紙,普通紙,厚紙のいずれかであるかを判定することができるので、用紙Pの紙質を判定できる。
【0077】
この際、坪量が未知である用紙Pに対して制御部80のROM80b内に該当する用紙Pがないと判定された場合には、図1に示したインクジェット印刷装置1内の操作パネル部10に用紙Pの使用不可をアラーム表示すれば良い。
【0078】
そして、用紙Pの紙質が判定できた後に、給紙トレイ21を再び給紙位置まで上動させることで、用紙Pの紙質に応じて給紙制御を行うことができるので、給紙ミスや用紙の重送などのない良好な給紙ができる。
【0079】
尚、実施例では、給紙トレイ21を給紙位置から初期位置に向けて下動させながらなぞり部材24で複数枚の用紙Pの各端部をなぞったときに発生したなぞり音をマイクロホン26で収音する場合について説明したが、これに限ることなく、給紙トレイ21を給紙位置に固定設置した場合でも用紙Pの紙質を判定することが可能である。
【0080】
即ち、給紙トレイ21を給紙位置に固定設置した場合には、なぞり部材24を不図示の駆動源により上下動可能に構成した上で、なぞり部材24を給紙トレイ21の先端部21c側に形成した先端凹部21c1内に進入させた後に上動させながら、なぞり部材24により給紙トレイ上に積載した複数枚の用紙Pのうちで最下層の用紙Plの先端部左側のコーナ部位Pac近傍から最上層の用紙Puの先端部左側のコーナ部位Pac近傍に向ってなぞるとなぞり音が発生するので、このなぞり音をマイクロホン26で収音すれば良いものである。
【0081】
従って、給紙トレイ21及びなぞり部材24のいずれか一方を移動させる動作に伴ってなぞり部材24で複数枚の用紙の各端部をなぞったときに発生したなぞり音をマイクロホン26で収音することが可能になるので、給紙トレイ21及びなぞり部材24を相対的に移動させる移動手段を設ければ良いものである。
【0082】
尚更に、実施例では、給紙トレイ21を筐体2の給紙トレイガイド側板2bの外側に上下動可能に設置した場合について説明したが、これに限ることなく、ここでの図示を省略するが給紙トレイを筐体の内部に設置しても良く、この場合には給紙トレイの周囲に吸音材を取り付けておけば、なぞり部材24により発生したなぞり音をマイクロホン26で明瞭に収音することができる。
【0083】
そして、なぞり部材24とマイクロホン26と制御部80とにより給紙トレイ21上に積載された用紙Pの紙質が判定できた場合に、制御部80は、インクジェット印刷装置1(図1)内に設けた給紙部20,印刷部60,排紙部70のうち少なくとも一つを用紙Pの紙質に応じて制御しているので、インクジェット印刷装置1の性能を用紙Pの紙質に応じて向上させることができるようになっている。
【0084】
具体的には、まず、給紙部20を用紙Pの紙質に応じて制御する場合には、給紙ローラ31の押圧力とか、給紙ローラ31の回転数とか、摩擦板34に進入するときの用紙位置とか、摩擦板34の捌き角θ(図6,図7)とか、捌きローラ33と摩擦板34とのニップ圧などを制御することで、とくに、省資源化(エコ化)や省スペース化を図るために薄紙の用紙Pを用いたときに薄紙の用紙Pに対して給紙不良や重送の発生を抑制することができる。
【0085】
この際、給紙ローラ31の押圧力を用紙の紙質に応じて可変する場合には、用紙Pの坪量が小さくなる(用紙Pの厚みが薄くなる)に従いアーム32に掛けたバネ(図示せず)により給紙ローラ31の押圧力が小さくなるように調整し、且つ、用紙Pの坪量が小さくなるに従い給紙ローラ31の回転が遅くなるようにエンコーダ付きモータ36(図1)を制御すれば良い。
【0086】
また、給紙トレイ21が上動して給紙位置で停止する停止位置と、摩擦板34との相対位置を、用紙Pの坪量が小さくなるに従い互いに接近させることで用紙Pが捌きローラ33と摩擦板34との間に進入し易くなる。
【0087】
また、捌きローラ33に接する摩擦板34の捌き角θ(図6,図7)を不図示の角度調整機構を介して調整可能に構成した場合には、用紙Pの坪量が小さくなるに従い摩擦板34の捌き角θを大きく設定すれば用紙Pが捌きローラ33と摩擦板34にて捌かれ易くなる。更に、捌きローラ33と摩擦板34とのニップ圧は、用紙の坪量が小さくなるに従い大きく設定すれば捌かれ易くなる。
【0088】
次に、インクジェット方式を適用した印刷部60を用紙Pの紙質に応じて制御する場合には、用紙Pの坪量が小さくなる(用紙Pの厚みが薄くなる)に従いインクジェットヘッド61からのインクIKの吐出量を少なく設定することで、用紙Pの裏面にインクIKがにじみ出ることを防止できる。
【0089】
次に、排紙部70を用紙Pの紙質に応じて制御する場合には、前述したように排紙トレイ72の用紙口の左右に設けた不図示の左右一対サイドフェンスにより排紙される用紙Pに対してV字状又はW字状に腰を付けて飛ばしているので、この際に、用紙Pの坪量が小さくなる(用紙Pの厚みが薄くなる)に従い不図示の左右一対サイドフェンスの傾斜角度を立てるように調整すれば良いものである。
【符号の説明】
【0090】
1…インクジェット印刷装置、
2…筐体、2b…給紙トレイガイド側板、2b1…矩形孔、
10…操作パネル部
20…給紙部、21…給紙トレイ、21a…上面、21b…下面、
21c…先端部、21c1…先端側凹部、22…移動手段(エンコーダ付きモータ)、
23A,23B…左右一対のガイドフェンス、
24…なぞり部材、25……マイク音処理回路、26…収音手段(マイクロホン)、
27…A/D変換器、28…フーリェ変換器、
31…給紙ローラ、33…捌きローラ、34…摩擦板、
41…レジストセンサ、42…レジストローラ対、44…第1トップエッジセンサ、
45…第2トップエッジセンサ、
50…ベルトプラテン部、51…箱体、52…エンドレスベルト、
60…印刷部、61…インクジェットヘッド、
70…排紙部、71…排紙トレイ、
80…制御部、80a…CPU、80b…ROM、80c…RAM、
80d…第1カウンタ、80e…第2カウンタ、
90…電源部、D…印刷データ、IK…インク、
P…用紙、Pa…搬送方向下流側の端部(先端部)、Pac…コーナ部位、
Pu…最上層の用紙、Pl…最下層の用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙を積載する給紙トレイと、
前記給紙トレイ上に積載された前記用紙の端部をなぞるなぞり部材と、
前記給紙トレイ及び前記なぞり部材を相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段による移動させる動作に伴って前記なぞり部材で前記用紙の端部をなぞったときに発生したなぞり音を収音する収音手段と、
前記収音手段で収音した前記なぞり音から用紙の紙質を判定する制御部と、
を備えたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記用紙の坪量に応じた各なぞり音パターンを予め格納した記憶部を有し、前記給紙トレイ上に積載された用紙に対して前記収音手段で収音した前記なぞり音と、前記記憶部に記憶した前記各なぞり音パターンとを比較することで、前記坪量を判定することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記なぞり部材は、前記用紙の端部のうちでコーナ部位近傍をなぞることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置で給紙した前記用紙に画像や文字を印刷する印刷部と、
前記印刷部で印刷された印刷済みの用紙を排紙する排紙部と、を備え、
前記制御部で前記用紙の紙質を判定したときに、前記制御部は前記給紙装置,前記印刷部,前記排紙部のうち少なくとも一つを前記用紙の紙質に応じて制御することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−229066(P2012−229066A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96885(P2011−96885)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】