説明

絵付きセラミック体製造方法

【課題】
安価な装置により、セラミック体の表面に、特殊色を含む多彩な色相の高解像度なセラミック画像を簡便かつ低コストに形成することができる絵付きセラミック体製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成し、該粘着性潜像が形成された側の受像材料表面に無機顔料紛体を降り掛けて粘着性潜像部分に無機顔料を接着させて無機顔料像を形成し、受像材料上に形成された無機顔料像をセラミック体の表面に配置し、無機顔料像が少なくとも配置されたセラミック体を加熱し、前記無機顔料像をセラミック体の表面に焼結する焼成工程と、を有することを特徴とする絵付きセラミック体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質の画像を形成する絵付きセラミック体製造方法に関し、詳しくは、美術陶板、写真陶板、サイン陶板等の建材や景観材などとしてのセラミック体に半永久画像として無機質の焼結画像を形成する絵付きセラミック体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美術タイル等の建材やセラミックス材などのセラミック体の表面に、黒白又はカラー画像が形成されたセラミック体は、風呂場、玄関、屋外等の壁に使用する美術タイル等の建材、屋外で使用する案内板、サイン陶板のみならず、肖像や遺影等の写真陶板、ペンダント、ブローチ等のアクセサリー等、種々の用途への適用が期待されている。
従来、これらの用途に使用される、写真陶板、美術陶板、サイン陶板等を作製する方法としては、〈1〉紙支持体上に水溶性ポリマーが塗設された転写紙にスクリーン印刷等により無機顔料像を印刷し、〈2〉その上にカバーコート層を塗布し、〈3〉該転写紙を水に浸し、該水溶性ポリマーを溶解して紙支持体を剥離し、〈4〉該顔料像を陶磁器あるいは陶板上に接着し、〈5〉そして焼成する事により作製していた(参考特許1参照)。しかし、この方法は印刷版が必要であり、特にフルカラー画像の場合には少なくとも4枚、通常は10枚近く必要である上に、手間、時間がかかり、極めて高コストのものとなっていた。
そこで、印刷版を用いないで、簡易に作製する方法が提案されてきた。例えば、通常の印画紙に画像を形成した後、該印画紙の紙部を除去して陶磁器、陶板等の表面に接着し、その画像部表面を紫外線硬化樹脂によりラミネ−トして画像部を保護する方法が知られている(参考特許2参照)。しかし、この方法により形成された画像は、画像部の耐光性及び耐熱性が不十分である。また、セラミック体の表面に熱可塑性の受像層を設け、この受像層に昇華性色素からなる色素画像を熱転写して画像を形成することが知られている(参考特許3参照)。しかし、この画像も耐光性及び耐熱性が不十分である。
【0003】
当発明者は、先に、簡易に耐光性、耐熱性の優れた画像を形成する方法として、前記の印刷法により無機顔料像を形成する代わりに、熱転写法を利用したセラミック画形成方法を提案した(参考特許4参照)。この方法は、薄層フイルム上に無機顔料と熱溶融性バインダーよりなる画像供与層を有する画像供与シートを受像シート(又は転写紙)と重ね合わせ画像供与シートのバック層側から感熱プリンターの感熱ヘッドによりイメージワイズに加熱することにより画像供与層をイメージワイズに転写して無機顔料像を形成する。しかし、この方法で、フルカラー像を形成しようとすると、予め、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の画像供与層を色順次に同一支持体上に塗布しておかねばならず、任意の顔料を絵柄に応じて追加したりすることは極めて難しいという問題があった。
更にその後別の方法として、無機材料で着色された着色トナーを画像様に付与して画像形成する電子写真法を利用する方法が提案された(参考特許5参照)。この方法は、無機質の着色トナーを用いて、予め形成した静電潜像から着色トナー画像を形成し、これを転写する方法である。しかし、この方法では、色画像即ち多色若しくはフルカラーの画像を形成しようとする場合には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の一般色のほか、金色等の特殊色など、各色顔料ごとに対応したトナーを作製、準備しなければならない。したがって、個々の顔料特性に応じたトナー設計も必要とされる。しかも、着色トナー中に鉄やその酸化物等を含む場合には、焼成時に黒く着色され易く所望の色相よりなる画像が得られにくい。また、多色若しくはフルカラー画像を形成する場合には、カラー画像形成用のプリンタの使用が不可欠であり、これは一般に高価である。
本発明者は、インクジェット法により、簡易に無機顔料像を転写形成する方法を開発した(参考特許6参照)。この方法は、安価なインクジェットプリンターを用いて、受像材料上に転写促進剤をイメージワイズに印画した後、薄層フイルム上に無機顔料と熱溶融性バインダーよりなる画像供与層を有する画像供与シートと重ね合わせてヒートローラーに通すことにより、転写促進剤よりなる画像に対応して無機顔料像を転写形成する方法である。この方法は印刷版も必要なく、簡易にフルカラー像も形成できるが、予め、無機顔料を熱可塑性又は熱溶融性バインダーともに薄層フイルム等に塗布しておくことが必要であり、支持体、バインダーの材料費、塗布経費等がかかる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−85099号公報
【特許文献2】特開平5−318990号公報
【特許文献3】特開平8−34158号公報
【特許文献4】特開平9−236999号公報
【特許文献5】特開2002−293677号公報
【特許文献6】特開2002−097088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の点から、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、予め画像色相に対応するだけの着色トナーを使用することなく、また、予め無機顔料と熱溶融性または熱可塑性バインダーよりなる画像供与層を有する画像供与材料を塗布して用意する必要がなく、安価な装置により、美術タイル等の建材やセラミックス材などのセラミック体の表面に、特殊色を含む多彩な色相の高解像度な無機質画像(多色若しくはフルカラー像を含む)を簡便かつ低コストに形成することができる絵付きセラミック体製造方法を提供することを目的し、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1>受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程と、
粘着性潜像が形成された側の受像材料表面に無機顔料紛体を降り掛けて粘着性潜像部分に無機顔料を接着させて無機顔料像を形成する像形成工程と、
受像材料上に形成された無機顔料像をセラミック体の表面に配置する配置工程と、
無機顔料像が少なくとも配置されたセラミック体を加熱し、前記無機顔料像をセラミック体の表面に焼結する焼成工程と、
を有することを特徴とする絵付きセラミック体製造方法。
【0007】
<2> 粘着性組成物が無色若しくは淡色であることを特徴とする前記<3>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0008】
<3> 配置工程前に、像形成工程において無機顔料像が形成された受像材料上に水不溶性のカバーコート層を形成するカバーコート層形成工程を有し、かつ配置工程において、無機顔料像を前記カバーコート層と共にセラミック体の表面に配置する前記<1>又は<2>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0009】
<4> 受像材料が、透水性支持体の表面に受像層として水溶性ポリマーを含む層を有してなる前記<1>〜<3>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0010】
<5>受像材料が、透水性支持体の表面に水溶性ポリマーを含有する層と水不溶性ポリマーを含有する受像層とを順次有してなる前記<1>〜<3>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0011】
<6>配置工程において、受像材料の支持体側を水に浸漬することにより水溶性ポリマーを一部溶解させて受像材料の透水性支持体を剥離し、剥離後の剥離面がセラミック体の表面に接触するように、受像層と共に無機顔料像をセラミック体の表面に配置する前記<4>又は<5>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0012】
<7>配置工程において、水溶性ポリマーを一部溶解させて受像材料の透水性支持体を剥離する前又は剥離後に、糊剤を溶解又は分散した液を介して前記画像形成表面がセラミック体の表面に接触するように、受像層と共に無機顔料像をセラミック体の表面に配置する前記<4>又は<5>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0013】
<8>カバーコート層が疎水性ポリマーを含み、該疎水性ポリマーのガラス転移点が室温以下である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0014】
<9>カバーコート層形成工程が、無機顔料像が形成された側の受像材料表面と、カバーコート層を有する転写体の前記カバーコート層表面とを少なくとも接触させて加熱し、該受像材料上に該カバーコート層を転写する工程である請求項1〜8のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0015】
<10> カバーコート層形成工程が、無機顔料像が形成された側の受像材料表面にカバーコート層塗布液を塗布することにより形成する工程である前記<1>〜<8>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0016】
<11> カバーコート層形成工程が、疎水性ポリマーを含む液をインクジェットプリンターにて全面に均一に印字することにより形成する工程である前記<1>〜<8>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0017】
<12> 受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程が、粘着性を有する組成物がインク溶媒中に分散された分散インクをインクジェットプリンターにより、イメージワイズに印字することよりなることを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0018】
<13> 粘着性を有する組成物が、粘着付与剤を含む組成物であることを特徴とする前記<12>記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0019】
<14> 粘着性を有する組成物が、樹脂及び該樹脂の可塑剤を含む組成物であることを特徴とする前記<12>及び<13>記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0020】
<15> 前記粘着性を有する組成物がインク溶媒中に分散された分散インク中に、末端疎水性水溶性ポリマーを含有することを特徴とする前記<12>〜<14>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0021】
<16> 前記末端疎水性水溶性ポリマーが、下記一般式(1)で表される前記<15>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【0022】
【化1】

〔但し、式(1)中、Rは疎水性基又は疎水性重合体を表し、nは整数を表す。〕
【0023】
<17> 前記末端疎水性水溶性ポリマーが、下記一般式(2)で表わされる前記<15>に記載の絵付きセラミック体製造方法。
一般式(2):R’−(S−P) 〔式(2)中、R’は疎水性基又は疎水性重合体を表わし、Pは下記構造単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含み、重合度が10以上3500以下の重合体を表わす。nは1又は2を表わす。
【0024】
【化2】

〔ここで、Rは−H又は炭素数1〜6のアルキル基を表わし、Rは−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表わし、Rは−H又は−CHを表わし、RはH、−CH、−CHCOOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHを表わし、Yは−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−SOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−OSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CONHC(CHCHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHCHCHCH(CHClを表わす。〕
【0025】
<18> 受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程が、受像材料表面の組成物を膨潤することのできる溶媒を含むインクをインクジェットプリンターにより、イメージワイズに印字することよりなることを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の絵付セラミックス体の製造方法では、画像形成時に、リスフィルム等の作製が不要であり、簡易な工程で且つ低コストに絵付セラミックス体を作製することができる。また、本発明では、粘着性組成物を用いて潜像を形成する潜像形成工程を経て画像形成を行っているので、比較的比重が大きい無機顔料を水系媒体等に分散させたインクを使用する必要がなく、無機顔料の沈降等を生じさせることなく、安定的に画像を形成することができる。さらに、画像を構成している無機顔料は、セラミックス体の表面に焼結されるので、画像は高い保存安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の絵付セラミックス体の製造方法は、受像材料上に、画像形成用無機顔料粉体の接着が可能となる粘着剤をイメージワイズに付与する潜像形成工程を有する。次に、潜像形成工程で粘着性潜像が形成された側の受像材料表面に無機顔料紛体を降り掛けて粘着性潜像部分に無機顔料を接着させて無機顔料像を形成する無機顔料像形成工程を有する。必要に応じて無機顔料像が形成されたセラミックス体の表面に透明ガラス層を形成する透明ガラス層形成層を形成する工程及び/又はオーバーコート層形成工程を経た後、無機顔料像を受像層とともにセラミックス体の表面に配置する配置工程、焼結工程を実施する。前期潜像形成工程と前記無機顔料像形成工程は、同じ顔料又は、異なる色相の顔料を用いて繰り返し行うことにより、高濃度又は、多色の無機顔料像を形成することができる。
以下、本発明の絵付セラミックス体の製造方法に使用可能な種々の材料及び工程について説明する。
【0028】
−粘着性組成物−
前記潜像形成工程に使用可能な前記粘着性組成物は、前記無機顔料粉体を接着しうる組成物である。前記粘着性組成物としては(1)受像層を構成する物質を膨潤または軟化あるいは可塑化させて粘着性を付与する液状組成物、(2)粘着性を有する物質が溶解している液状組成物、(3)粘着性を有する疎水性組成物が水性液体中に分散されている液状組成物等がある。以下に上記(1)、(2)及び(3)について順次説明する。
【0029】
(1)受像層を構成する物質を膨潤または軟化あるいは可塑化させて粘着性を付与する液状組成物
このタイプの液状組成物はこれら自体が無機粉体を接着することもできるが、主たる機能は、受像層を構成する物質を膨潤または軟化あるいは可塑化させて粘着性を付与することである。該液状組成物としては、例えば、水、有機溶剤類、界面活性剤類およびこれらの混合物を挙げることができる。中でも、水、常温で水と自由に混和する有機溶剤類、水と混和し得る界面活性剤類、及びこれらの混合物が望ましい。さらに、前記粘着性組成物は、無機顔料粉体に対して化学的に作用せず、その後の焼成工程等でも発色反応などを起こさない材料であるのが好ましく、それ自体無色あるいは淡色のものが好ましい。
【0030】
前記水混和性有機溶剤類としては、具体的には、前記水混和性の高沸点有機溶剤としては、アルコール(例えば、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングルコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)およびその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)等が挙げられる。尚、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。これらの水混和性有機溶媒のうち、常温常圧下で沸点が摂氏100度以上であるものが好ましい。溶液の吐出安定性が向上し、潜像形成時および待機後再開始時の不吐出現象を防ぐことができ、また、印字後蒸発しにくいため無機粉体の接着の再現性を向上させることができる。
【0031】
前記界面活性剤類としては、アニオン、カチオン、ノニオンおよび両性の界面活性剤類のいずれも使用可能であるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。水に溶解させて使用する場合は、水に溶解し得る範囲内の濃度で使用可能である。
前記ノニオン性界面活性剤としては、親水基としてエチレンオキシド基を付加したノニオン化合物が特に好ましい。エチレンオキシド基を付加したノニオン化合物を使用すると、受像層を構成するバインダーに対する親和性が高く、膨潤、可塑化しやすく、従って印字部分の粘着性が増大しやすく、高解像度が得られるので好ましい。前記ノニオン系化合物としては、下記一般式(3)から一般式(6)のいずれかで表される化合物等が挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
前記一般式(3)中、Rはアルキル基またはアルキレン基を示し、nは2〜30、好ましくは2〜20のいずれかの整数を示す。前記一般式(4)中、Rはアルキル基を示し、nは2〜30、好ましくは2〜20のいずれかの整数を示す。前記一般式(5)中、Rはアルキル基を示し、nおよびlは2〜30、好ましくは2〜20のいずれかの整数を示す。前記一般式(6)中、R1およびR2は水素またはアルキル基を示し、mおよびnは2〜30好ましくは2〜20のいずれかの整数を示す。また、前記一般式(3)〜(6)において、エチレンオキシドの付加数は2ないし30が好ましく、特に好ましくは2ないし20である。前記一般式(3)〜(6)で表される化合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニールエーテル、エチレンオキシドープロピレンオキシド共重合体(n=10,l=7),アセチレングリコールのエチレンオキシド付加体(n+m=10)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
前記界面活性剤として、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミン、アルキルアミン塩、アルキルベタイン、モノまたはジヒドロキシアセチレン化合物等も挙げられる。
【0035】
(2)粘着性を有する物質が溶解している液状組成物
このタイプの液状組成物としては溶媒により(2-1)水系組成物と(2-2)溶剤系組成物の2種に分けられる。
(2-1)水系組成物としては水溶性ポリマーを水に溶解したもの、これに更に水混和性の高沸点有機溶剤を添加したものが挙げられる。該水混和性の高沸点有機溶媒はインクジェットプリンターにより印字する際、インクの湿潤剤として働きヘッドの目詰まりを防止すると同時に、水溶性ポリマーの可塑剤としても働き、水溶性ポリマーの粘着性をアップし、水溶性ポリマーによる画像への無機顔料の接着性が増大する。
【0036】
前記の粘着性を有する水系組成物を構成する水溶性ポリマーとしては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、多糖類〔デンプン、デキストリン、デキストラン、プルラン等〕、アラビアゴム、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体、イソブテン−無水マレイン酸共重合物等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類(ゼラチン、アセチル化ゼラチン、フタレート化ゼラチン、酸化ゼラチンなど)等も挙げることができる。
その他、特開2001−205919号、特開2002−264489号、特開平11-165461号公報の〔0011〕〜〔0014〕に記載の化合物などもあげられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
これらの水溶性ポリマーはこれらのポリマー単独では粘着性を有しないが、水及び/又は前記水混和性の高沸点有機溶媒の存在下で粘着性を有する。
【0037】
(2−2)溶剤系組成物としては油溶性ポリマーを溶剤に溶解したもの、これに可塑剤等を添加したものが挙げられる。油溶性ポリマーとしては、天然ゴム、合成イソブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体,又はその共重合体等のゴム系組成物、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース誘導体系樹脂、ポリスチレンメタクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ロジン系樹脂、炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、インデン系樹脂、ポリテルペン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも低Tg(ガラス転移点)のものが好ましい。特にTgが0℃以下のものが好ましい。これらの低Tgのポリマーを構成するモノマーとしてエチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、iso-ペンチルアクリレート、iso-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、iso-デシルアクリレート、iso-オクチルアクリレート等のアクリル系が特に好ましい。
【0038】
また、油溶性ポリマーとして粘着付与剤を単独又は前記油溶性ポリマーと併用して用いることは好ましい。該粘着付与剤としては、ロジン誘導体樹脂、テルペン樹脂(例えば、高分子β−ピネン)、クマロン・インデン樹脂及び石油系炭化水素樹脂の群の中から選択される少なくとも一種が挙げられる。該石油系炭化水素樹脂の具体例としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水添系石油樹脂及び脂環族系石油樹脂等が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、特に炭素原子数5のものが好ましく、芳香族系石油樹脂は、特に炭素原子数9のものが好ましい。
【0039】
溶剤系組成物の粘着性を増大するために可塑剤等を添加することは好ましい。
該可塑剤としては、エステル類の他、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1−メチル−1−ジメチルフェニル−2−フェニルメタン、1−エチル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、1−プロピル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、トリアリルメタン(例えば、トリトルイルメタン、トルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
前記エステル類としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ブチル、リン酸オクチル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸エステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸エチル、フタル酸オクチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル;テトラヒドロフタル酸ジオクチル;安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル;アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル等のアビエチン酸エステル;アジピン酸ジオクチル;コハク酸イソデシル;アゼライン酸ジオクチル;シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジエチル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル;クエン酸トリブチル;ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸ブチル等のソルビン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル;ギ酸モノエステル及びジエステル、酪酸モノエステル及びジエステル、ラウリン酸モノエステル及びジエステル、パルミチン酸モノエステル及びジエステル、ステアリン酸モノエステル及びジエステル、オレイン酸モノエステル及びジエステル等のエチレングリコールエステル類;トリアセチン;炭酸ジエチル;炭酸ジフェニル;炭酸エチレン;炭酸プロピレン;ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル等のホウ酸エステル等が挙げられる。その他、特開平2−141279号公報に記載された高沸点オイルの中から適宜選択することができる。
【0040】
(3)粘着性を有する疎水性組成物が水性液体中に分散されている液状組成物
水性液体中に分散される粘着性を有する疎水性組成物としては、前記(2−2)の溶剤系組成物に用いられる油溶性ポリマー、油溶性ポリマーと可塑剤が用いられる。油溶性ポリマーの分散物は乳化重合等により合成することもできるし、油溶性ポリマーが液体状の場合はそのまま水性液体中に乳化分散することもできる。また、油溶性ポリマーが常温で固体状の場合は、高温で溶融状態にして乳化分散するか、低沸点有機溶剤に溶解して乳化分散することができる。乳化分散する際、有機相中にその油溶性ポリマーによる粘着性を増大するために前記可塑剤を添加して分散することは好ましい。あるいは、可塑剤を含む乳化分散物と前記油溶性ポリマーの分散物を混合して攪拌することにより油溶性ポリマー中に可塑剤を浸透させることもできる。油溶性ポリマー等を水性液体中に分散する際、油溶性ポリマーにカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基等を少量含有させることにより界面活性剤なしで分散することもできるが、分散剤として界面活性剤を用いて分散することもできる。更に、分散時、又は分散後、分散安定剤を添加し、分散物が経時により凝集等が生じないようにすることは好ましい。
【0041】
該分散安定剤としては、末端疎水性基変性水溶性ポリマーが好ましい。
ここで、前記末端疎水性水溶性ポリマーとしては、前記粘着性組成物等を水性液体中に凝集することなく安定に存在させることができるものであれば特に制限はないが、これらの中でも、下記一般式(1)で表される化合物、又は下記一般式(2)で表される化合物が好適である。
【0042】
【化4】

〔但し、式(1)中、Rは疎水性基又は疎水性重合体を表し、nは整数を表す。〕
【0043】
一般式(2):R'−(S−P)
〔式(2)中、R'は疎水性基又は疎水性重合体を表わし、Pは下記構造単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含み、重合度が10以上3500以下の重合体を表わす。nは1又は2を表わす。
【0044】
【化5】

ここで、Rは−H又は炭素数1〜6のアルキル基を表わし、Rは−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表わし、Rは−H又は−CHを表わし、RはH、−CH、−CHCOOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHを表わし、Yは−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−SOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−OSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CONHC(CHCHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHCHCHCH(CHClを表わす。〕
【0045】
前記一般式(1)中、Rは疎水性基又は疎水性重合体を表し、nは整数を表す。前記nは2〜30であることが好ましく、4〜20であることがさらに好ましい。ここでnが2〜30であることにより、水溶性で、且つ本発明の効果を充足する。
【0046】
前記一般式(1)におけるRの疎水性基としては、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基など)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)及び脂環基があり、これらは置換されているものも含む。置換基としては、脂肪族基、芳香族基、脂環基、複素環基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、N−置換スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基、アシル基などが挙げられる。前記一般式(1)におけるRの疎水性基がアルキル基の場合には、炭素数3〜70、好ましくは4〜50、特に8〜24、その中でも12が好ましい。
【0047】
また、前記一般式(1)におけるRが疎水性重合体の場合、ポリスチレン及びその誘導体、ポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリメタクリル酸メチル)及びその誘導体、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリブテン、ポリ酢酸ビニル、ポリバーサチック酸ビニル等に代表される水に不溶性のビニル重合体やビニル共重合体、ポリオキシプロピレンやポリオキシテトラメチレンの如き水に不溶性のポリオキシアルキレン類、更にはポリアミド及びポリエステル等の水不溶性重合体等が挙げられる。特にポリスチレン及びその誘導体、ポリメタクリル酸エステル及びその誘導体、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体並びにポリ塩化ビニルが好ましく用いられる。また、疎水性重合体の重合度は2以上500以下、好ましくは2以上200以下、更に好ましくは2以上100以下である。
【0048】
以下に一般式(1)のRが疎水性基の場合の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
本発明における一般式(1)の化合物の使用量は、使用する塗布層中の各種疎水性分散物及びその量などによって異なるが、通常水性液体中の各種疎水性分散物等に対して0.1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0059】
前記一般式(1)で表される化合物は水溶性から水分散性まで広い範囲のものを含む。この一般式(1)で表される化合物は、例えば、特開平09−157384号等の公報に記載される方法によって合成することができる。この一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、ダイセル(株)よりML−10(末端アルキルポリグリセリン)が上市されている。
【0060】
この一般式(1)で表される化合物の各種疎水性分散物等を水性液体中に凝集することなく安定に存在させる作用は明確ではないが、この化合物は分子内に疎水基を有し、且つ、重合体単位(水溶性部)を有するため、各種疎水性微粒子表面とこの疎水基との親和性により、微粒子表面に一点で強固に吸着するとともに、分散媒側には分散媒に親和性の高い重合体単位が存在することになり、微粒子の分散安定性に寄与するものと考えられる。
【0061】
次に、前記一般式(2)で表わされる化合物の代表的な例として、ビニルアルコールとビニルエステルのランダム又はブロック共重合体あるいは更にカルボキシル基等のアニオン性基を有する第3モノマー成分を含むビニルアルコールとビニルエステルのランダム又はブロック共重合体の末端をアルキル基又は疎水性重合体で変性したものが挙げられる。
【0062】
前記ポリビニルアルコール(PVA)系重合体は、従来から写真分野において、それ自身保護コロイドとして、又はフィルムの強度向上のためにゼラチン等の水溶性蛋白質保護コロイドとブレンドして用いられている(例えば、特開昭63−20349号公報)が、本発明に従い、式(2)で表わされる化合物を粘着性組成物の水性分散液に用いることにより、各種疎水性分散物等を水性液体中に凝集することなく安定に存在させることができ、製造安定性が大幅に向上する。
【0063】
本発明の一般式(2)で表される化合物は、写真分野で従来用いられていた界面活性剤よりも比較的分子量が大きいことが一つの特徴であるが、更に従来の界面活性剤の親水性基としてエチレンオキサイド等のノニオン性のアルキレンオキサイド基、カルボキシル基、スルホン基、燐酸基などのアニオン性基、四級アンモニウム基などのカチオン性基を通常一つ有しているのに対して、本発明の一般式(2)で表される化合物の親水性基は、OH基を含むモノマー単位の繰り返し構造、アニオン性基の繰り返し構造及びカチオン性基の繰り返し構造のうちのいずれか1つ以上を有しており、この繰り返し構造が従来の界面活性剤と比べてかなり大きいことに特徴がある。このように、親水性部が大きい上に、更にポリアニオン又はポリカチオンが存在する場合には、それらにより分散粒子間に大きな静電的反発力が生ずる。更に、本発明の一般式(2)で表される化合物は、各種疎水性微粒子表面とこの疎水基との親和性により、微粒子表面に一点で強固に吸着し、粒子間に渡って吸着することがないので、架橋凝集がおきにくい。本発明の顕著な効果はこれらによって引き出されているものと推定される。
【0064】
前記一般式(2)におけるR'の疎水性基としては、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基など)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)及び脂環基があり、これらは置換されているものも含む。置換基としては、脂肪族基、芳香族基、脂環基、複素環基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、N−置換スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基、アシル基などが挙げられる。
【0065】
一般式(2)におけるR'の疎水性基がアルキル基の場合には、炭素数3〜70、好ましくは4〜50、特に8〜24が好ましい。更に、R'は、置換又は未置換の、脂環基、芳香族炭化水素基又は疎水性重合体の場合、各種疎水性分散物等との相溶性が高く、分散安定性を高める効果がより大きい。
【0066】
また、前記一般式(2)におけるR'が疎水性重合体の場合、ポリスチレン及びその誘導体、ポリメタクリル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチル)及びその誘導体、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリブテン、ポリ酢酸ビニル、ポリバーサチック酸ビニル等に代表される水に不溶性のビニル重合体やビニル共重合体、ポリオキシプロピレンやポリオキシテトラメチレンの如き水に不溶性のポリオキシアルキレン類、更にはポリアミド及びポリエステル等の水不溶性重合体等が挙げられる。特にポリスチレン及びその誘導体、ポリメタクリル酸エステル及びその誘導体、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体並びにポリ塩化ビニルが好ましく用いられる。また、疎水性重合体の重合度は2以上500以下、好ましくは2以上200以下、更に好ましくは2以上100以下である。
【0067】
前記一般式(2)のR'が疎水性基の場合の具体例としては、上記一般式(1)のRの具体例と同じものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記一般式(2)で表される化合物に関し、重合体Pは上記構造単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含む重合体である。重合体Aを構成する構造単位Aとしては具体的には、ビニルアルコール、α−メチルビニルアルコール、α−プロピルビニルアルコール等が挙げられる。重合体Pを構成する構造単位Bとしては酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びこれらのα置換体が挙げられる。更に重合体Pを構成する構造単位Cとしてはアクリル酸、メタクリル酸又はクロトン酸(それぞれアンモニウム塩、又はNa、K等の金属塩を含む)、マレイン酸又はイタコン酸(それぞれモノアルキルエステル、アンモニウム塩、又はNa、K等の金属塩を含む)、ビニルホスホン酸、ビニル硫酸、アクリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、2−アクリルアミド−3−メチルプロパンスルホン酸又は2−メタクリルアミド−3−メチルプロパンスルホン酸(それぞれアンモニウム塩、又はNa、K等の金属塩を含む)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド又はメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の水中でイオン解離する単量体単位が挙げられる。
【0069】
これらの中で構造単位Aとしては、ビニルアルコール単位が、構造単位Bとしては酢酸ビニル単位が、また構造単位Cとしてはアクリル酸(アンモニウム塩、又はNa、K等の金属塩を含む)又はマレイン酸又はイタコン酸(それぞれアンモニウム塩、又はNa、K等の金属塩を含む)がより好ましい単位である。
【0070】
重合体Pを構成する上記構造単位A、B及びCの含量については特に制限はないが、構造単位Cの含量が1モル%以下の場合、一般式(2)で表される重合体が水溶性又は水分散性であるためには、構造単位Aの含量は50モル%〜100モル%であるのが好ましい。
【0071】
前記一般式(2)で表される化合物は水溶性から水分散性まで広い範囲のものを含む。前記一般式(2)で表される化合物が水溶性又は水分散性である限りにおいては、重合体Pが上記構造単位A、B及びC以外の構造単位を含むことも何ら差し支えなく、これらの構造単位として、例えば、エチレン、プロピレン、イソプテン、アクリロニロリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル又はフッ化ビニル単位が挙げられる。該重合体Pの重合度は10〜3500、好ましくは10〜2000、更に好ましくは10〜1000、特に好ましくは10〜500である。
【0072】
該重合体Pの構造単位A及びBにおけるRの低級アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、該アルキル基はヒドロキシル基、アミド基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルホンアミド基等により置換されていてもよい。
【0073】
本発明の一般式(2)で表される化合物は、本発明の目的により、これを構成するP及びR'の最適化学組成、分子量等は異なるが、どの目的においても、PとR'の質量比が0.001≦R'/P≦2、より好ましくは0.01≦R'/P≦1の組成を有するものが特に効果が優れている。
【0074】
本発明における一般式(2)で表わされる化合物の具体例を表1〜表4に化合物P−1〜P−37として挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、表1〜表4中、R、P、A、B、C及びnは前記一般式(2)において説明した通りである。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
本発明における一般式(2)の化合物の使用量は、使用する塗布層中の各種疎水性分散物及びその量などによって異なるが、通常使用する水性液体中の各種疎水性分散物等に対して0.1〜40質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0080】
前記一般式(2)で表される化合物は、例えば、特開昭62−288643号、同61−254237号、同61−254238号、同61−254239号、同61−254240号等の公報に記載される方法によって合成することができる。また、前記一般式(2)の重合体における重合体R'がアルキル基の場合は、市販品としても入手可能である(例えば、MP−103、MP−203、MP102など;株式会社クラレ製)。
【0081】
粘着性組成物は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。粘着性組成物には、液滴として吐出させる際の吐出適性の調整および液滴の拡散防止、保存安定性の向上等の目的で、表面張力調整剤、防黴剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0082】
−受像シート−
受像層は、通常、支持体上に設けられ、支持体と受像層からなる受像シートの形態で用いられる。前記受像シートは、支持体上に少なくとも1層の受像層を有し、所望により、支持体と受像層との間に剥離層等を1層または2層以上を設けた構成をとってもよい。
【0083】
前記受像シートの支持体としては、プラスチックシート、金属シート、ガラスシート、紙等のような通常のシート状の基材が挙げられる。プラスチックシートの例としては、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニリデンシート、ポリスチレンシート、スチレン−アクリロニトリルシート、ポリエステルシート等を挙げることができる。また、紙支持体としては平滑性が良好な印刷本紙、コート紙等を用いることができる。尚、配置工程において無機顔料像を受像シートの全部とともに配置する場合、支持体は焼結工程において蒸発および/または焼却される必要があるので、支持体としては、焼結工程において蒸発または燃焼により消失しない原子または化合物を含んだり、顔料と反応して変色させるような原子または化合物を含まないのが好ましい。支持体の受像層とは反対側の面に、搬送性向上のためのバック層を設けることが好ましい。
【0084】
前記受像シートの支持体の厚さは、通常10〜400μmであり、25〜200μmであるのが好ましい。また、支持体の表面は、受像層との密着性を調節するために、コロナ放電処理、グロー放電処理等の表面処理が適度に施されていてもよい。
【0085】
前記受像シートの表面の受像層は有機重合体バインダーを主体として形成される層であるのが好ましい。前記バインダーは、水又は溶剤膨潤性ポリマーであることが好ましい。その例としては、前記粘着性組成物の(2−1)で記載した水溶性ポリマー、及び同(2−2)で記載した油溶性ポリマーが挙げられる。
【0086】
前記油溶性ポリマー層は架橋剤により架橋されることは好ましい。該架橋剤としてはイソシアネート系化合物、活性エステル系化合物、アルデヒド系化合物、エポキシ系化合物等が好ましく用いることができる。
前記架橋剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0087】
前記受像層の厚みは、一般的には0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmである。
【0088】
前記受像シートが、セラミックス体表面に接着可能であると、皿、瓶の如く曲面を有する形状のセラミックス体を用いる場合も、操作が容易となるので好ましい。前記受像シートとしては、(イ)透水性支持体上に、前記水溶性ポリマーからなる層(以下、「水溶性ポリマー層」という場合がある)を受像層とする構成のシート、(ロ)透水性支持体上に前記水溶性ポリマー層、その上に前記油溶性ポリマーからなる受像層(以下、「油溶性ポリマー層」という場合がある)が順次形成された構成のシート、(ハ)支持体上に離型層、前記油溶性ポリマー層が順次形成された構成のシート(ニ)フイルム支持体上に前記油溶性ポリマー層が形成された構成のシート等が挙げられる。
【0089】
前記支持体としては、紙支持体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、グラシン紙、セルロースエステル、フッ素ポリマー、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスルフォン、セロファン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。透水性支持体としては紙支持体、貫通孔を有するフイルム支持体が挙げられる。支持体がプラスチックフィルムの場合は、表面(前記水溶性ポリマー層が形成される側の面)に、シリコーン、高級脂肪酸あるいはフッ素系化合物等を含有する離型層を有しているのが好ましく、また、該離型層のみから構成されていてもよい。
【0090】
前記(イ)の支持体上に水溶性ポリマー層を受像層として有する構成のシートの場合、この受像シート上に無機顔料像を形成した後、その表面に油溶性ポリマー層をオーバーコート層として、塗布、転写等により設けることが好ましい。該オーバーコート層として用いる油溶性ポリマーとしては、ガラス転移温度が室温以下、好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。陶磁器等のセラミックス体の上絵付け用オーバープリントラッカーとして用いられる樹脂は好ましく用いられ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0091】
前記(イ)及び(ロ)の構成の受像シートの場合、水に浸漬した際に、水溶性ポリマーの一部が溶解して油溶性ポリマー層が紙支持体から剥離可能になる。この際、(イ)の場合、水溶性ポリマー層上に形成した無機顔料像はその上に塗布または転写により設けられた油溶性ポリマー層側に付着して剥離する。この際、該水溶性ポリマーが一部油溶性ポリマー層側に付着しているため、そのまま剥離面を陶板等のセラミックス体表面に向けて配置することにより接着可能となる。
一方、前記(ロ)の構成の受像シートの場合、油溶性ポリマー層表面に無機顔料像が形成される。この場合、(イ)の場合と同様に剥離面をセラミックス体に向けて接着することもできるが、無機顔料像形成面をセラミックス体面に向かい合わせにして、前記水溶性ポリマーの水溶液を糊剤としてこれを介して接着するのが好ましい。そして受像層上に形成する画像は鏡像(反転像)が好ましい。この場合は、画像とセラミックス体表面との間に、前記疎水性ポリマー層が介在しないので、引き続き行う焼結工程において、無機顔料とセラミックス体との焼結がより安定的に進行するので好ましい。
また、(ハ)の構成の受像シートを使用する場合、前述の様に予めフィルムに離型層形成の表面処理を行うことによって、水に浸漬することなく、画像が形成された油溶性ポリマー層を支持体から剥離することができる。剥離した油溶性ポリマー層は、無機顔料像が形成されており、糊剤を介して陶板等のセラミックス体表面に接着することができる。
【0092】
また、前記(ニ)のように受像層との密着性の弱い支持体上に受像層が塗設されているか、前記(ハ)のように離型層が塗布された上に受像層が塗設されている場合、これらの受像層表面に無機顔料像を形成した後、これらと前記(イ)の受像紙と塗布面同士を重ね合わせてヒートローロー等に通して受像層ごと転写する。該画像の転写された(イ)のタイプの受像紙を、前述の如く水に浸漬した後、紙支持体を剥離し、セラミックス体の表面に油溶性ポリマー層(受像層)とともに配置することもできる。
更に又、前記(ニ)のように受像層との密着性の弱い支持体上に受像層が塗設されているか、前記(ハ)のように離型層が塗布された上に受像層が塗設されている場合、これらの受像層表面に無機顔料像を形成した後、これらとセラミックス体表面と重ね合わせてヒートローロー等に通して受像層ごと転写することもできる。この際、セラミックス体との接着性が不充分な場合は接着剤を介して接着することができる。該接着剤としては前記粘着性を有する水溶性ポリマー、油溶性ポリマーが有用である。該接着剤の層は前記粘着性組成物の塗布によっても設けることができるし、該接着剤層が塗設された材料とセラミックス体と重ね合わせて加圧又は/及び加熱することにより転写して設けることもできる。
【0093】
−潜像形成工程−
前記潜像形成工程において、前記粘着性組成物は前記受像層表面に画像様に付与すればよい。粘着性組成物を受像層表面に画像様に付与するには、公知のインクジェット記録方式の画像形成方法を利用することができる。例えば、内部に発熱素子を備えたインクジェットヘッドに、液状の粘着性組成物を充填し、画像情報に応じて所定の位置の発熱素子に電気を流し、発熱素子を発熱させ、近傍の粘着性組成物の溶媒(水や有機溶媒等)を沸騰させ、ヘッド内の圧力を上昇させ、所望の位置の粘着性組成物を液滴として飛翔させ、受像層のいずれかの表面に着弾させることができる。その他、ピエゾ素子を利用したインクジェット記録方式等、種々のインクジェット記録方式を利用して、粘着性組成物を受像層表面に画像様に付与することができる。本発明の画像形成方に対してはピエゾ素子を利用した方式が好ましい。
【0094】
−無機顔料像形成工程−
前記潜像形成工程により形成された粘着性潜像は、これに画像形成用無機顔料紛体を振り掛け、更に軽く刷毛等で擦ったり、受像材料を振動させたりすることにより粘着性潜像部分に該無機顔料が接着し、無機顔料像となる。
【0095】
本発明に用いる画像形成用無機顔料としては、着色剤とガラス成分(フリット)よりなる粉体組成物を用いる。該粉体組成物は、着色剤とガラス成分との混合物を用いる方法、着色剤とガラス成分との混合物を一旦加熱して溶融した後、冷却固化させ、これを粉砕して作製する方法などがある。あるいは画像形成には無機顔料として着色剤のみを用い、該顔料像を形成後その上にガラス成分を画像状、又は一面に均一に塗設、又は転写することにより付与することは解像度アップの点で好ましい。
【0096】
前記無機顔料(着色剤)としては、酸化銅、酸化コバルト等の結晶構造がスピネル、スフェイン、パイクロア、ルチール、プライディライト、フフォスフェイト、フェナサイト、ペリークレイス、オリビン、バデライト、ボレート、コランダム、ジルコン等の金属酸化物;カドミウムイエロー等の硫化物;セレン赤等のセレン化カドミウム化合物、金コロイド、銀コロイド等が挙げられる。
通常はこれらの着色剤を2種以上混合して加熱溶融し合金化して用いる。また、蛍光顔料や蓄光体顔料である無機顔料を使用することもできる。
【0097】
ガラス成分を併用すると、焼結工程において、無機顔料のセラミックス体表面への融着性を向上させることができるので好ましい。前記ガラス成分としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸化ビスマス等のアルカリ金属化合物;炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛等のアルカリ土類金属化合物;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の中性成分;酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の酸性成分;等が挙げられる。また、硼砂、石灰長石やカリ長石、ソーダ長石、ベタライト(リチウム長石)等の長石類、カオリン、珪石、アルミナ、シリカ、石英、酸化チタン、酸化鉛、シャモット、土灰類、石灰石、マグネサイト、タルク、ドロマイト等の天然鉱物や複合成分を使用することもできる。前記ガラス成分は、1種の単独をまたは2種以上を混合したものを溶解させ、いわゆるフリットとして用いることができる。
【0098】
着色剤とガラス成分(前期天然鉱物類も含む)の含有量としては、着色剤とガラス成分との重量比は2/8〜6/4が好ましく、特に3/7〜5/5が好ましい。2/8よりもガラス成分を増やすと焼成後の画像の着色濃度が低くなり、6/4よりもガラス成分を減らすと、焼成後の無機顔料像の焼結性が低下し、無機顔料像がセラミック体から剥離しやすくなる。
【0099】
−透明ガラス層形成工程―
前記受像紙上に無機顔料像を形成した後、その表面に透明ガラス形成層を設け、配置工程後の焼成により透明ガラス層を形成することは好ましい。この透明ガラス層により、既述の像形成工程で形成された無機顔料像中の無機顔料含有率が高い場合でもセラミック体に強固に焼結され易く、更に色相が鮮やかとなり、表面の光沢性が上がり、画像の耐候性、耐傷性がよりアップする。該透明ガラス形成層は例えば次の(イ)〜(ハ)の方法で形成するのが好ましい。
【0100】
(イ)無機顔料像が形成された受像紙の全表面上に、一様に粘着性組成物を含むインクを噴霧した後、透明ガラス層形成物質の粉末を振り掛けて接着させて、焼成により透明なガラス層を形成する透明ガラス層形成層を一様に形成する。
【0101】
(ロ)無機顔料像が形成された受像紙の全表面上に、透明ガラス層形成物質を含む液を噴霧して、透明ガラス層形成層を一様に形成する。
【0102】
(ハ)無機顔料像が形成された受像紙の全表面上に、支持体上に透明ガラス層形成物質と熱可塑性ポリマーを含む透明ガラス層形成層が塗設された転写シートの塗設面を重ね合わせて、加熱圧着後支持体を剥離して受像紙表面に透明ガラス層形成層を一様に転写する。
【0103】
前記透明ガラス層形成成分(ガラス成分)としては、フラックス、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ホウ酸、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。また、この他、ガラス成分の結合を強めるものとして、石灰長石やカリ長石、ソーダ長石、ベタライト(リチウム長石)等の長石類、カオリン、珪石、アルミナ、シリカ、石英、酸化チタン、シャモット、硼砂等を単独または複数混合したものがあげられる
前記フラックスは、1種単独で又は2種以上を併用して溶解させ、いわゆるフリットとして用いることもできる。
【0104】
−カバーコート層形成工程−
前記カバーコート層形成工程においては、無機顔料像が形成された受像紙上又は更にその上に透明ガラス層形成層が形成された受像紙上にカバーコート層を形成する。カバーコート層を形成する方法としては、塗布による方法、及び転写材料を用いて転写する方法のいずれであってもよい。
【0105】
前記カバーコート層は、疎水性ポリマーを少なくとも含んで構成される。疎水性ポリマーを主に構成されることで、後述の配置工程で水等の液体中に浸漬等して受像材料の支持体を剥離した際に、無機顔料像をカバーコート層表面で歪みを伴うことなく保持し得る支持材として機能し、画像に支障を来すこともない。前記疎水性ポリマーとしては、凹凸表面や湾曲面への密着、転写を可能とする観点から、ガラス転移点が室温(使用環境温度)以下のポリマーが好ましい。ここで、使用環境温度以下とは25℃以下をいう。更には、前記ガラス転移点としては、−50〜25℃が好ましく、−30〜15℃がより好ましい。具体的には、市販品として、互応化学工業(株)製のカバーコートレジンLO−210、同LO−176S、同LO−200H、同LO−170H等が挙げられる。
【0106】
カバーコート層を塗布により形成する場合、適当な溶媒に少なくとも疎水性ポリマーが溶解若しくは分散されてなる塗布液を調製し、該塗布液を例えばロッドコート法、シルクスクリーン法、ブレード法等の公知の塗布方法により、無機顔料像が形成された受像層表面の上に塗布、乾燥して形成することができる。
【0107】
カバーコート層を転写により形成する場合、仮支持体上に少なくともカバーコート層を有する転写材料を用い、像形成工程おいて、無機顔料像が形成された受像層表面と、カバーコート層を有する転写材料の前記カバーコート層表面とを少なくとも接触させて加熱し、前記カバーコート層を前記受像層上に転写する。即ち、無機顔料像を覆うようにカバーコート層を重ね合わせ、その状態で加熱しながら密着させて積層体を形成する。その後、該積層体から転写体の仮支持体を剥離除去することにより、受像層の一部又は全面にカバーコート層を転写形成することができる。
【0108】
加熱して積層体とする過程では、加圧しながら加熱してもよく、例えばヒーター等の加熱手段を内蔵する一対の加熱ニップローラを備える装置(例えば、ヒートロールラミネーター)等によりラミネートして両層を密着させることができる。加熱時の加熱温度としては、一般には50〜200℃が好ましい。
【0109】
前記転写材料は、仮支持体の表面に少なくともカバーコート層を有してなり、必要に応じてフリット層等の他の層や被覆シートが設けられていてもよい。ここで、前記仮支持体及び被覆シートとしては、特に制限はなく、既述の転写シートを構成する仮支持体、及び被覆シートと同様のものを用いることができる。また、仮支持体とカバーコート層との間に剥離層を設けることも好ましい。前記剥離層としては、ポリビニルアルコール又はその変性体、シリコーン系樹脂等を主成分とする層が好適に挙げられる。
【0110】
前記カバーコート層に前記ガラス成分(熱溶融性無機物質、フリット、フラックス)を含有させてもよい。ガラス成分を含有させることにより、既述の像形成工程で形成された無機顔料像中の無機顔料含有率が高い場合でもセラミック体に強固に焼結され易く、しかも焼結後の画像安定性、及び表面光沢性をも向上させることができる。
【0111】
前記ガラス成分の含有量としては、カバーコート層中の疎水性ポリマー含量(質量)に対して、1〜100質量%が好ましい。
【0112】
前記カバーコート層の層厚としては、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。該層厚が、5μm未満であると、配置工程における作業性が低下することがあり、50μmを超えると、焼成時に品質が悪化することがある。
【0113】
上記のようにカバーコート層にガラス成分を含有せず、又は含有すると共に、仮支持体と接しない側のカバーコート層の表面にガラス成分層を設けることが好ましい。ガラス成分層は、ガラス成分(熱溶融性無機物質)及び熱可塑性樹脂を少なくとも含んでなり、該層の層厚としては、1〜20μmが好ましい。前記ガラス成分層中のガラス成分の含有量としては、熱可塑性樹脂含量(質量)に対して、5〜100質量%が好ましい。また、前記熱可塑性樹脂としては、軟化点40〜150℃の非晶質有機高分子重合体などの公知のものの中から適宜選択できる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、特開平9−197719号公報の段落番号[0012]に記載のもの等が挙げられ、接着性を十分に確保する観点からは、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂、テルペンフェノール樹脂、アクリル系樹脂等が好ましく用いられる。
【0114】
−配置工程−
前記配置工程においては、受像材料の支持体を剥離する前又は剥離後に、機
顔料像をカバーコート層と共にセラミック体の表面に配置する。セラミック体表面への配置は、無機顔料像を少なくともカバーコート層と共にセラミック体表面に、必要に応じて加熱圧着することにより行える。配置方法は、受像材料の態様に応じて、セラミック体と無機顔料像との間に接着剤として水溶性ポリマー層を介在させて配置してもよいし、カバーコート層又は受像層の無機顔料像を有有する側の表面をセラミック体表面と対向させて配置してもよい。前者では、セラミック体上には所望の画像(正像)が形成され、後者では、セラミック体上に所望の画像の鏡面反転画像が形成される。
【0115】
透水性支持体の表面に水溶性ポリマーを含有する層と受像層とを順次有する受像シートを用いた場合、像形成工程及びカバーコート層形成工程の後、受像材料の透水性支持体側の一部を水等の液体に接触若しくは浸漬し、前記水溶性ポリマーの一部を溶解させて支持体を剥離除去すると共に、剥離後の剥離面においてセラミック体表面に接着し、無機顔料像をカバーコート層と共にセラミック体表面に配置することができる。したがって、この場合は配置するに当り糊剤を溶解又は分散した液は不要である。また、支持体がプラスチックフィルム支持体のとき、後述のように予めプラスチックフィルム支持体に離型性を付与する表面処理を施しておくことによって、水等の液体に浸漬等することなく、プラスチックフィルム支持体を容易に剥離することができる。この場合、糊剤を溶解又は分散した液を介してセラミック体表面に配置することができる。プラスチックフィルム自身が、無機顔料像及びカバーコートレジン等に対して離型性を有する場合には表面処理をしなくてもよい。この場合、糊剤を溶解又は分散した液を介してセラミック体表面に配置することもでき、ホットメルト接着剤を介して加熱圧着して配置することもできる。ここで、水等の液体は、水のみならず、水と該水に相溶性の溶剤等との混合溶液などの、受像材料中の水溶性ポリマーを溶解可能なものの中から適宜選択すればよい。
【0116】
上記において、糊剤を溶解又は分散した液としては、例えば、水に糊剤として、例えば水溶性ポリマー(例えば、ゼラチン、デンプン、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロースなど)、ラテックス又はエマルション(例えば、ポリエステル樹脂、エチレン、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂など)等を溶解又は分散した液等が挙げられる。
【0117】
前記セラミック体としては、タイル等の建材等に用いられる陶板、陶器、陶磁板、陶磁器、ホーロー等や他のセラミックス材料などが挙げられる。セラミック体の形状、厚み等の形態については目的、用途に応じて適宜選択することができる。
【0118】
−焼結工程−
前記焼結工程では、無機顔料画像が配置されたセラミックス体を加熱し、無機顔料をセラミックス体の表面に焼結する。無機顔料がセラミックス体の表面に焼結されるとともに、無機顔料以外の成分即ち画像とともにセラミックス体の表面に配置された受像層等の成分が蒸発または焼却される。セラミックス体の加熱は、温度制御、発色性等の観点から、例えば、電気窯等を用いて行うことが好ましい。加熱条件は選択した材料、セラミックス体の体積、画像の大きさ等に応じて、適宜設定することができる。加熱は焼成温度まで緩やかに昇温させるか、300℃〜500℃で一定時間定温加熱した後に、焼成温度まで緩やかに昇温していくのが好ましい。焼成は、無機顔料として上絵具を使用した場合、焼成温度を通常650℃〜900℃、好ましくは700℃〜850℃とし、焼成時間を1〜8時間で行うのが好ましい。また、無機顔料として下絵具を使用した場合は、焼成温度を1000℃〜1300℃、好ましくは1100℃〜1250℃とし、焼成時間を1〜12時間で行うのが好ましい。
【0119】
焼結工程では、転写材料中の無機顔料以外の成分、および画像とともにセラミックス体の表面に配置された受像層等の成分が蒸発または焼却される。従って、前記焼結工程時に無機顔料とともにセラミックス体表面に配置されている材料(転写層中の成分および受像層中の成分)は、焼結工程において蒸発または燃焼により消失しない原子または化合物を含んだり、無機顔料と反応して変色させるような原子または化合物を含まないのが好ましい。
【0120】
本発明の製造方法によって作製された絵付セラミックス体は、絵付けするセラミックス体の形状や形成画像を種々選択することによって、例えば、セラミックスフォト用途(肖像、葬式用の遺影、ペットの写真、永久保存したい記念写真用等)、アミューズメントおよびアクセサリー用途(マグカップ、酒類のボトル、家紋、魚拓等を含む)、建材用途(風呂場、玄関、居間、ロビー、客室等の壁に使用される美術タイル、看板、案内板、ルームアクセサリー、インテリア商品等)等、種々の用途に利用できる。
【0121】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0122】
<粘着性潜像形成物質溶液1の調製>
3,5−ジメチル−1−ヘキシル−3−オール 5質量部
蒸留水 50質量部
n−プロピルアルコール 45質量部
上記成分を均一に攪拌した後、0.45μmのミクロフィルターにより濾過し、粘着性潜像形成物質溶液1を調製した。
【0123】
<受像シートの作製>
下記組成の第一層用塗布液および第二層用塗布液を調製した。
(第一層用塗布液の組成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 160質量部
(日信化学(株)製;ソルバインCL2)
エチレン−酢酸ビニル共重合体 61質量部
(三井デュポンケミカル(株)製;エルバロイ742)
セバシン酸ポリエステル 28質量部
(日本曹達(株)製;FN−G25)
パーフルオロアルキル基含有オリゴマー 4質量部
(大日本インキ化学工業(株)製;メガファックF−178K)
メチルエチルケトン 630質量部
トルエン 210質量部
ジメチルホルムアミド 30質量部
【0124】
(第二層用塗布液の組成)
ポリビニルブチラール樹脂 16質量部
(電気化学工業(株)製;デンカブチラール#2000−L)
N,N−ジメチルアクリルアミド−ブチルアクリレート共重合体 4質量部
パーフルオロアルキル基含有オリゴマー 0.5質量部
(大日本インキ化学工業(株)製;メガファックF−177)
n−プロピルアルコール 200質量部
【0125】
厚さ130μmのPETフィルム支持体上に、前記第一層用塗布液を塗布し、100℃で乾燥させ、乾燥時の膜厚が20μmの第一層を形成した。次に、前記第一層上に前記第二層用塗布液を塗布し、100℃で乾燥させ、乾燥時の膜厚が2μmの第二層(受像層)を形成し、受像シートAを作製した。
【0126】
<絵付陶板の作製>
厚物用インクジェットプリンターPCM(アスカ社製)のブラック用インクカセットに前記粘着性潜像形成物質溶液1を充填し、画像情報に基づいて前記受像シートAに鏡像(反転画像)を印画し、粘着性潜像を形成した。
該粘着性潜像の形成された受像シートにブラック顔料(14209、セルディック社製)を降り掛けて、潜像部分に該ブラック顔料を接着させ、刷毛で未接着部分のブラック顔料を履き落とした。
【0127】
前記画像が形成された受像シートの画像形成表面と、陶板の表面とが接するように重ねて、熱ローラにて加熱圧着し、受像シートを剥離すると、無機顔料からなる画像と第二層が受像シートより剥離し、陶板上に接着した。陶板上には反転した顔料像が形成された。次に、上記無機顔料画像が形成された陶板を電気窯にて100℃/時間の昇温速度で温度を上げていき、400℃で1時間、更に800℃まで同じように上げていきで800℃で30分焼成し、絵付セラミックス板100を作製した。
【実施例2】
【0128】
<粘着性潜像形成物質分散液2の調製>
ポリn-ヘキシルアクリレート(重合度500)の10質量部にフタル酸ジブチル3質量部を加え、酢酸エチル10質量部に溶解し粘着性潜像形成物質とする。蒸留水100質量部にポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル1質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、ML−10(ダイセル株式会社製)2質量部を加えて溶解し、この中に前記粘着性潜像形成物質を全量加えて、ホモジナイザーにて乳化分散した。該分散液に更にグリセリン10重量部を加えて均一に攪拌した後、0.8μmのミクロフィルターにより濾過し、粘着性潜像形成物質分散液2を調製した。
【0129】
<受像シートBの作製>
つぼ量100gの平滑な紙支持体上に、デキストリンを8g/m2塗設して受像シートBを作製した。
【0130】
<絵付陶板の作製>
インクジェットプリンターPM770C(エプソン社製)のブラック用インクカセットに前記粘着性潜像形成物質溶液2を充填し、画像情報に基づいて前記受像シートBに鏡像(反転画像)を印画し、粘着性潜像を形成した。
該粘着性潜像の形成された受像シートにブラック顔料(14209、セルディック社製)を振り掛けて、潜像部分に該ブラック顔料を接着させ、刷毛で未接着部分のブラック顔料を履き落とした。
該無機顔料像が接着形成された受像シートB上に、メタクリル系樹脂を主成分とするオーバーコートラッカー(プラスサイズLD−170;互応化学工業社製)を乾燥膜厚15μmとなるように塗布し乾燥した。
次に、該オーバーコートラッカーを塗設した受像シートBを水に浸漬してデキストリンを溶解し、画像の付着したオ−バーコート層を隔離し、セラミックス体上に配置し、ゴムヘラにて余剰の水分を除去し、セラミックス板に密着(接着)させた。充分乾燥した後、電気窯にて100℃/時間の昇温速度で温度を上げていき、400℃で1時間、更に800℃まで同じように上げていきで800℃で30分焼成し、絵付セラミックス板200を作製した。
【実施例3】
【0131】
実施例2と同様にして、粘着性潜像形成物質分散液2、及び受像シートBを作製した。
更にこれらを用いて絵付けセラミックス体を以下のようにして作製した。
インクジェットプリンターPM770C(エプソン社製)のブラック用インクカセットに前記粘着性潜像形成物質溶液2を充填し、YMCKの色分解画像情報に基づいて前記受像シートBにY成分の鏡像(反転画像)を印画し、粘着性潜像を形成した。
該粘着性潜像の形成された受像シートにイエロー顔料(セルデック社製;13651)を振り掛けて、潜像部分に該イエロー顔料を接着させ、刷毛で未接着部分のイエロー顔料を履き落とした。
前記前記イエロー顔料像が形成された受像シート表面に、引き続き同様にして、マゼンタ顔料(セルデックス社製;77571)、シアン顔料(セルデックス社製;121522)およびブラック顔料(セルデックス社製;14209)を順次形成して、受像シートB上にフルカラーの無機顔料像を形成した。
更に、メタクリル系樹脂を主成分とするオーバーコートラッカー(プラスサイズLD−170;互応化学工業社製)が乾燥膜厚15μmとなるように塗布したポリエチレンテレフタレートフイルム(厚さ;50μ)の塗布面と、前記無機顔料像が接着形成された受像シートBを重ね合わせて、ヒートローラー(ローラー温度120℃)に通し、受像シートB表面にオーバーコート層を転写した。
【0132】
次に、前記オーバーコート層が転写された受像シートBを水に浸漬してデキストリンを溶解し、画像の付着したオ−バーコート層を隔離し、セラミックス体上に配置し、ゴムヘラにて余剰の水分を除去し、セラミックス板に密着(接着)させた。充分乾燥した後、電気窯にて100℃/時間の昇温速度で温度を上げていき、400℃で1時間、更に800℃まで同じように上げていき、800℃で30分焼成し、絵付セラミックス板300を作製した。
【0133】
絵付セラミックス板100、200及び300には、ともに解像度が高い、高解像度の画像が形成されており、また、耐水性および耐光性ともに良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程と、
粘着性潜像が形成された側の受像材料表面に無機顔料紛体を降り掛けて粘着性潜像部分に無機顔料を接着させて無機顔料像を形成する像形成工程と、
受像材料上に形成された無機顔料像をセラミック体の表面に配置する配置工程と、
無機顔料像が少なくとも配置されたセラミック体を加熱し、前記無機顔料像をセラミック体の表面に焼結する焼成工程と、
を有することを特徴とする絵付きセラミック体製造方法。
【請求項2】
粘着性組成物が無色若しくは淡色であることを特徴とする請求項1に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項3】
配置工程前に、像形成工程において無機顔料像が形成された受像材料上に水不溶性のカバーコート層を形成するカバーコート層形成工程を有し、かつ配置工程において、無機顔料像を前記カバーコート層と共にセラミック体の表面に配置する請求項1又は2に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項4】
受像材料が、透水性支持体の表面に受像層として水溶性ポリマーを含む層を有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項5】
受像材料が、透水性支持体の表面に水溶性ポリマーを含有する層と水不溶性ポリマーを含有する受像層とを順次有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項6】
配置工程において、受像材料の支持体側を水に浸漬することにより、水溶性ポリマーを一部溶解させて受像材料の透水性支持体を剥離し、剥離後の剥離面がセラミック体の表面に接触するように、受像層と共に無機顔料像をセラミック体の表面に配置する請求項4又は5に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項7】
配置工程において、水溶性ポリマーを一部溶解させて受像材料の透水性支持体を剥離する前又は剥離後に、糊剤を溶解又は分散した液を介して前記画像形成表面がセラミック体の表面に接触するように、受像層と共に無機顔料像をセラミック体の表面に配置する請求項4又は5に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項8】
カバーコート層が疎水性ポリマーを含み、該疎水性ポリマーのガラス転移点が室温以下である請求項1〜7のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項9】
カバーコート層形成工程が、無機顔料像が形成された側の受像材料表面と、カバーコート層を有する転写体の前記カバーコート層表面とを少なくとも接触させて加熱し、該受像材料上に該カバーコート層を転写する工程である請求項1〜8のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項10】
カバーコート層形成工程が、無機顔料像が形成された側の受像材料表面にカバーコート層塗布液を塗布することにより形成する工程である請求項1〜8のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項11】
カバーコート層形成工程が、疎水性ポリマーを含む液をインクジェットプリンターにて全面に均一に印字することにより形成する工程である請求項1〜8のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項12】
受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程が、粘着性を有する組成物がインク溶媒中に分散された分散インクをインクジェットプリンターにより、イメージワイズに印字することよりなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項13】
粘着性を有する組成物が、粘着付与剤を含む組成物であることを特徴とする請求項12記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項14】
粘着性を有する組成物が、樹脂及び該樹脂の可塑剤を含む組成物であることを特徴とする請求項12及び13記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項15】
前記粘着性を有する組成物がインク溶媒中に分散された分散インク中に、末端疎水性水溶性ポリマーを含有することを特徴とする請求項12〜14記載の絵付きセラミック体製造方法。
【請求項16】
前記末端疎水性水溶性ポリマーが、下記一般式(1)で表される請求項15に記載の絵付きセラミック体製造方法。
【化1】

[式中、Rは疎水性基または疎水性重合体を表し、nは整数を表す。]
【請求項17】
前記末端疎水性水溶性ポリマーが、下記一般式(2)で表わされる請求項15に記載の絵付きセラミック体製造方法。
一般式(2):R’−(S−P) 〔式(2)中、R’は疎水性基又は疎水性重合体を表わし、Pは下記構造単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含み、重合度が10以上3500以下の重合体を表わす。nは1又は2を表わす。
【化2】

ここで、Rは−H又は炭素数1〜6のアルキル基を表わし、Rは−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表わし、Rは−H又は−CHを表わし、RはH、−CH、−CHCOOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CNを表わし、Xは−H、−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHを表わし、Yは−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−SOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−OSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CONHC(CHCHSOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHCHCHCH(CHClを表わす。〕
【請求項18】
受像材料上に粘着性組成物からなる粘着性の潜像を形成する潜像形成工程が、受像材料表面の組成物を膨潤することのできる溶媒を含むインクをインクジェットプリンターにより、イメージワイズに印字することよりなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の絵付きセラミック体製造方法。

【公開番号】特開2006−35480(P2006−35480A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215298(P2004−215298)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(302020610)
【Fターム(参考)】