説明

絶縁コンポーネントの部分放電テストのための方法及びシステム

【課題】絶縁コンポーネントの部分放電テストにおいて、部分放電の開始電圧を低く抑えることのできる方法及びシステムを提供する。
【解決手段】フラッシュX線源6により少なくとも一つのX線パルス7が、絶縁コンポーネント2に照射され、交流電圧源5により絶縁コンポーネント2に加えられた交流電圧を電圧センサー9により測定する。また、前記少なくとも一つのX線パルス7により引き起こされる部分放電が部分放電センサー8で測定され、部分放電検出装置10で評価される。コントロール・ユニット11が設けられ、交流電圧源5、フラッシュX線源6、および/または、部分放電検出装置10が、コントロールされ、特に加えられる交流電圧に依存して、コントロールされる。ここで、前記少なくとも一つのX線パルス7の線量は、少なくとも10-2Gray/sとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に基づく絶縁コンポーネントの部分放電テストのための方法に係り、また、請求項11の前文に基づく絶縁コンポーネントの部分放電テストのためのシステムに係る。この絶縁コンポーネントは、例えば、固体誘電体材料(例えば、充填されたエポキシ樹脂)からなることがあるが、固体であることのみに限定されない。
【背景技術】
【0002】
絶縁コンポーネントは、例えば、キャパシタ、変圧器、またはスイッチギア・バリアなどのような、高電圧の電気的な装置において、広く使用されている。しかしながら、絶縁コンポーネントの誘電体には、高い電場強度の領域が生ずることがあり、それが部分放電を引き起こすことがある。この部分放電は、電極を完全にはブリッジしないことにより特徴付けられる。部分放電は、しばしば、例えば固体絶縁コンポーネントの中のボイドまたはクラックまたは液体絶縁コンポーネントの中の泡などのような、例えば、不均質部の中で開始する。説明を簡潔にするために、これらの不均質部を、以下において“ボイド”と呼ぶことにする。
【0003】
これらのボイドは、典型的にガスで満たされている。もし、ボイドを横切る電圧ストレスが、ボイドの中のガスに対する開始電圧を超える場合には、ガスがイオン化して、部分放電がボイドの中で発生し始める。部分放電は、その後、絶縁コンポーネントの材料の漸進的な劣化を引き起こすことがあり、それは、最終的に、絶縁コンポーネントの電気的な絶縁破壊をもたらすことになる。
【0004】
電場の中での劣化及び電気的な絶縁破壊を避けるために、且つ、絶縁コンポーネントの質をコントロールするために、絶縁コンポーネントは、通常、工場から出荷される前に、部分放電テストにより、ボイドについてテストされる。そのような既知の部分放電テストは、典型的には、分のオーダーの限られた持続時間の間の、高い交流の過電圧の印加、及びそれに伴う部分放電測定から構成されている(以下において、既知の部分放電テストと呼ばれる)。
【0005】
部分放電が発生するためには:
− ボイドを横切る電圧ストレスが開始電圧を超えることに加えて;
− ボイドの中で電子アバランシェが開始するために、且つそれによって部分放電が開始するために、ボイドの中またはボイドに十分な自由電子がなければならない。
自由電子は、スタート電子と呼ばれることもある。未使用の絶縁コンポーネントにおいて、そのような自由電子を生じさせる可能性が最も高い事象は、バックグラウンド照射である。スタート電子の生成のための他のメカニズムは、ボイド表面からの電界放出である。
【0006】
これが意味するところは、ボイドが存在する場合であっても、ボイドの中またはボイドでの自由電子の欠乏のために、または統計的なタイム・ラグ(自由電子がボイドの中に現れるために必要な時間)のために、それらが、検出されないことがあると言うことである。そのような自由電子がボイドの中に現れるための時間は、ボイドのサイズの減少に伴い、典型的に増大する。特に、小さいボイドは、既知の部分放電テストの持続時間の中で、部分放電を成長させないことがあり、それ故に、自由電子が検出されないことがある。
【0007】
従来の既知の部分放電テストでは、しばしば、非常に高い交流電圧が使用され、それが、ボイド表面からの電界放出をもたらし、また、小さいボイドを放電させることがある。しかしながら、そのような高い交流電圧の使用は、実使用中のストレスでは無害であったであろう、例えば金属粒子の介在物のような他の欠陥が、ストレスを受けて拡大されたものから、電気的なツリーを発展させて、回復困難な損傷を引き起こすことがある。
【0008】
最初の自由電子を生じさせるために、絶縁コンポーネントをイオン化照射、例えばX線照射に暴露し、それと同時に、交流電圧を印加して、部分放電を測定することが知られている。連続するX線ビームへの暴露に関しては、下記の非特許文献1〜4文献の中に、記載されている。
【0009】
X線照射によって自由電子を発生させておくことにより、部分放電の開始の前のタイム・ラグ/遅延が縮小されることが可能である。更にまた、開始電圧が、絶縁コンポーネントの性質及び欠陥のタイプ(即ち、ボイドのタイプ)に対して固有の真の値に遥かに近いと考えられる値まで、低下されることが可能である。
【0010】
更に、絶縁コンポーネントをパルス型のX線照射に暴露することも、下記の非特許文献5及び6の中で、提案されている。
【0011】
この場合には、連続型のX線ビームを発生するためにX線チューブが使用される。パルス型のX線ビームの発生のために、チョッパーが、X線チューブと絶縁コンポーネントの間に挿入される。チョッパーは、交流モータにより駆動される二つの矩形の窓を備えたリード・ディスクから構成される。そのようにして得られたX線パルスの長さ/持続時間は、1サイクル当り2ms程度である。X線チューブとチョッパーの組み合わせにより、より短いパルス長さを備えたX線パルスは、一般的に、得られることが可能ではない。
【0012】
パルス形のX線照射が使用されるとき、部分放電は、X線パルスの照射のインターバルの間でのみ生ずる。それ故に、部分放電は、X線パルスにより調整される。
【0013】
連続型のX線照射または2ms以上のパルス長さを備えたパルス型のX線照射により、発生する部分放電パルスの強度が、しかしながら、かなり低くなることもあり、それによって、精度の高い低ノイズ部分放電検出装置が、部分放電パルスの検出のために要求されることがある。しかしながら、そのような精度の高い低ノイズ部分放電検出装置は、工場内の環境での使用に適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“Partial discharge - Part XV: Improved PD Testing of Solid Dielectrics using X-ray Induced Discharge Initiation”, N. Fujimoto et al., IEEE Electrical Insulation Magazine, Vol. 8, No. 6, 1992, pp. 33-41、
【非特許文献2】“Modulation of Partial discharge Activity in GIS Insulators by X-ray irradiation” by J. M. Braun et al., IEEE Transactions on Electrical Insulation, Vol. 26, No.3, June 1991, pp. 460-468,
【非特許文献3】“X-ray Induced Partial discharge - an Application for High Voltage Insulation Diagnostics” by L. S. Pritchard et al., Proceedings of the IEE Colloquium on Materials Characterisation - How Can We Do It ? What Can It Tell Us ? (Ref. No: 1997/150), December 1997, pp. 7/1 - 7/3、
【非特許文献4】“Location of Partial discharges in High Voltage Equipment Using Ionizing Rays” by J. Svitek, Proceedings of the 5th International Conference on Dielectric Materials, Measurements and Applications, June 1988, pp. 183-186)。
【非特許文献5】“Study of Continuous and Pulse X-ray Induced Partial discharge Statistical Behaviour in Epoxy Samples” by G. C. da Silva et al., Proceedings of the 7th International Conference on Properties and Applications of Dielectric Materials, June 2003, Session S7-1, pp. 831-834、
【非特許文献6】“Continuous and Pulsed X-ray Induced Partial discharges: Similarities and Differences” by G. S. Silva at al., 2006 Annual Report Conference on Electrical Insulation and Dielectric Phenomena, pp. 598-601
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、絶縁コンポーネントの部分放電テストのための方法及びシステムを提供することにあり、この方法及びシステムによって、絶縁コンポーネントのボイドが容易に検出されることが可能になる。特に、絶縁コンポーネントの部分放電テストのための方法及びシステムが提供され、この方法及びシステムによって、部分放電の開始電圧が低く抑えられることが可能であり、且つそれと同時に、部分放電の動的な挙動(及び、部分放電を生じさせるボイドの中の電子アバランシェの動的な挙動は、照射の無い既知のテスト及びシステムと比較したとき、基本的に、維持されたままである。
【0016】
この目的を実現するために、及び以下の説明の中でより容易に明らかになる本発明の更なる目的を実現するために、絶縁コンポーネントの部分放電テストのための方法が提供される。ここで、交流電圧が絶縁コンポーネントに加えられ、且つ、10-2Gray/s(10mGray/s)以上の照射線量の、且つ、好ましくは1ms以下の持続時間の、少なくとも一つのX線パルスが、絶縁コンポーネントに照射され、この少なくとも一つのX線パルスにより引き起こされる部分放電が測定される。特定の予め規定された強度の部分放電、特に部分放電パルス、が測定された場合に、それぞれ、絶縁コンポーネントが、単数または複数のボイドを有していると結論付けられることが可能である。
【0017】
X線照射を使用することにより、自由電子が、絶縁コンポーネントのボイドの中に生成されることが可能であり、開始電圧が低くされることが可能である。特に、開始電圧が、典型的に2から5のファクターで、大幅に低くされることが可能である。
【0018】
絶縁コンポーネントが、10-2Gray/s超の線量のX線パルスに、且つ、好ましくは1ms未満の持続時間で、暴露されるだけで、1個よりも遥かに多い自由電子が、技術的に妥当な、基本的に球状の、100μm超の直径を備えたボイドの中に、生成されることが可能である。1msの時間間隔(インターバル)は、高い電圧インシュレイションのために適切な一つまたはそれ以上のガス(例えば、空気、窒素、6弗化硫黄(SF))で満たされたボイドの内側で、自由電子とイオンとの再結合のために要求される時間に対応している。その結果として、X線パルスの終了の後、発生した多くの自由電子は、ミリ秒の時間スケールで、それらのイオンと再結合する。これは、数ミリ秒の期間の後であっても、ボイドのカソード(ボイド・カソード)の近くに位置する少なくとも一つの自由電子を見出す可能性が高いと言うことを意味している。ボイドのカソードは、ボイドの中の電場の方向にあるボイド表面として規定される。
【0019】
それ故に、好ましくは、少なくとも一つのX線パルスの持続時間は、一つまたはそれ以上のガスで満たされたボイドの内側での自由電子とイオンの再結合時間に対応している。もし、ボイドの固有の開始電圧が、X線パルスに続く数ミリ秒のこの期間の間に、印加された電圧により超えられ、且つ、ボイド・カソードの近くに位置する自由電子が残っている場合に、部分放電が生ずる。そのとき、部分放電の動的な挙動は、X線照射が無い場合の、部分放電の動的な挙動に近い。部分放電は、ボイド表面に電荷を堆積させ、この電荷は、X線照射が無い場合の部分放電の強度及び分布に近い強度及び分布を有している。それに続いて、帯電された表面から放出されたスタート電子で引き起こされる部分放電は、X線照射が照射されていない場合に生ずる部分放電パターンに近い部分放電パターンを作り出す。
【0020】
もし、ボイドを横切って印加された電圧が既に開始電圧を超えているときに、X線パルスが照射された場合、部分放電が瞬時に開始される。しかしながら、この場合には、照射の間に生ずる部分放電の動的な挙動は、部分放電の自然的な動的な挙動(即ち、X線照射が行われない場合の挙動)とは異なっている。それは、更なる自由電子とイオンの存在のためである。これは、その結果もたらされるボイド表面の電荷の状態を変化させ、そして、後続する部分放電の特性に影響を与えることもある。それ故に、更に短いパルスを採用することが有益である。
【0021】
もし、好ましくも、絶縁コンポーネントが、100ns未満の持続時間のX線パルスのみに暴露され、且つ線量が、好ましくは100Gray/s超の場合、1個よりも遥かに多い数の、典型的には100個程度の自由電子が、技術的に妥当な、基本的に球状の、直径100μm超のボイドの中に作り出される。100nsの時間間隔(インターバル)は、高い電圧インシュレイション(例えば、空気、窒素、SF)のために適切なガスの中で、単一の部分放電イべントの持続時間に対応している。これは、既に、第一の部分放電イべントが、自然的な部分放電の動的な挙動(即ち、X線照射が行われない場合の挙動)に非常に近い動的な挙動を示すことを意味している。その結果もたらされる表面電荷は、結果として、自然的な(即ち、X線照射が照射されない場合の)部分放電の表面電荷、に対応していて、後続する部分放電もまた、自然的な部分放電である。
【0022】
発生する部分放電が、それ故に、自然的な部分放電であることは、使用される部分放電装置または設備が、より低い精度であることが可能になり、且つ、恒久的なX線照射の下での部分放電検出のために使用される装置と比べて少ないノイズ低下で、動作することが可能になると言う優位性を有している。他方、もし、その固有のノイズ低下を有する所与のデバイス使用された場合には、より小さいボイドさえも、検出されることが可能になる。もう一つの優位性は、結果の解釈のために、十分に確立されたルールが使用されることが可能であると言うことである。
【0023】
本発明に基づく方法とは異なり、上述の線量による恒久的なX線照射は、部分放電が生ずることが可能ではない大きくイオン化された導電性のボイドをもたらすことになるであろう。文献において報告されているような(5・10-6から2・10-4Gray/s)、より低い線量での既知の恒常的な照射は、ボイドの中に、単一の自由電子の時折の発生をもたらし、その多くは、しかしながら、要求される程に、ボイド・カソードの近くにはない。カソードの近くに高々数個の自由電子しかないので、自由電子が、1msの典型的な再結合時間の後に依然として存在する可能性が、非常に小さい。それ故に、適切な部分放電測定により、ボイドを検出する全体的な可能性は、やや小さい。
【0024】
単一の自由電子により引き起こされる部分放電、特に、小さいボイド(直径1mm未満のボイド)の中での部分放電は、非常に小さいことがあり、そのために、ボイド表面にその結果もたらされる電荷が、次の電圧サイクルにおいて持続する部分放電をもたらすために十分ではないことがある。
【0025】
ボイドの位置でのX線の線量は、X線に対する以下の良く知られた吸収則により評価されることが可能である。z方向(z方向をビームの方向とする)のX線ビームに沿って、最初の線量Io(X線源の特性により与えられる)が、下記の吸収則に基づいて減少する:
I(z)=Io・exp(−μz)
ここで、μは、X線質量減衰係数であって、絶縁コンポーネントの材料及びX線エネルギーに依存する。μに対する値は、最も技術的に妥当な材料及びX線エネルギーに対して、表に示されていて、例えば、
“CRC Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edition”, ISBN 0-8493-0475-X
の中に見出すことが可能である。
【0026】
本発明の方法に基づく絶縁コンポーネントの部分放電テストのための本発明のシステムは、絶縁コンポーネントに照射される交流電圧を発生するための交流電圧源と;加えられる交流電圧を測定するための電圧センサーと;引き起こされた部分放電を測定するための部分放電センサーと;測定された部分放電を評価するための部分放電検出装置と;フラッシュX線源と;を有している。フラッシュX線源を用いて、1ms未満の長さを備えたX線パルス、好ましくは、基本的に100nsの長さを備えたX線パルスが生成されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明に基づくシステムの第一の実施形態の概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の方法の第一の実施形態に基づく、交流電圧及び絶縁コンポーネントに照射されるX線パルスの時間曲線の例を示す。
【図3】図3は、本発明の方法の第二の実施形態に基づく、交流電圧及び絶縁コンポーネントに照射されるX線パルスの時間曲線の例を示す。
【図4】図4は、本発明に基づくシステムの第二の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
更なる好ましい特徴及び本発明の適用は、従属請求項、並びに、本発明を表す図面の以下の説明の中に、見出されることが可能である。これらの図面の中で、同様な参照符号は、幾つかの図面に亘って、同一または同様な部品を指している。
図2及び3の中で与えられた値は、単に例として示されたものに過ぎない。
【0029】
図1に、本発明に基づく絶縁コンポーネント2の部分放電テストのためのシステムの第一の実施形態1を示す。この絶縁コンポーネント2は、ボイド3を有すると言う点で欠陥を有している。ボイド3は、例えば、0.5mmのオーダーの直径を有している。絶縁コンポーネント2は、交流電圧源5に接続された二つの電極4の間に置かれる。交流電圧源5により、絶縁コンポーネント2が、交流電圧でストレスが掛けられることが可能である。交流電圧は、例えば、50Hzまたは60Hzの周波数、及び500kVの強度を有することが可能である。更にまた、フラッシュX線源6が、X線照射コーンの形態で、少なくとも一つのX線パルス7を発生するために、設けられている。フラッシュX線源6は、チョッパーを必要としない。フラッシュX線源6は、そのX線パルス7が絶縁コンポーネント2に照射されるように配置され、それによって、絶縁コンポーネント2は、好ましくも、照射コーンの中にその全体が配置されている。フラッシュX線源6は、例えば、15Hzの反復周波数で100個のX線パルスを発生することが可能であっても良い。
【0030】
電極4の内の一方から、好ましくは、アースに接続され電極4から、交流電圧源5までの電気的な経路内に、部分放電センサー8が、ボイド3の中で起こる可能性がある部分放電の検出及び測定のために、設けられている。典型的に、部分放電センサー8は、電流の導関数を測定することにより、および/または、部分放電により引き起こされた遷移電流パルスの下側の面積を決定することにより、即ち、遷移電流パルスを積分することにより、部分放電を検出し且つ測定する。更にまた、電圧センサー9が、絶縁コンポーネント2に印加された実際の電圧を測定するために、設けられている。
【0031】
典型的に、部分放電センサー8は、電流パルスを測定することにより、部分放電を検出し(そして、それ故に電流センサーを有することが可能である)、あるいは、テスト対象物に対して直列または並列に接続されたテスト・インピーダンス(ここでは:絶縁コンポーネント)を横切る電圧パルスを測定することにより、部分放電を検出する。他の方法は、超音波マイクロフォン、光学的センサー、および/または、アンテナを用いての、音響学的検出である。図1及び4において、部分放電センサー8は、例として、電流センサーとして形成されている。
【0032】
部分放電センサー8により測定された部分放電は、その後、部分放電検出装置10により、電圧センサー9により測定された交流電圧に対して評価される。この部分放電検出装置は、加えられた交流電圧の時間曲線、測定された電圧、および/または、測定された部分放電を示すための表示装置(図示されていない)を有することが可能である。
【0033】
好ましくは、コントロール・ユニット11が設けられ、このコントロール・ユニットにより、交流電圧源5、フラッシュX線源6、および/または、部分放電検出装置10が、コントロールされることが可能であり、特に加えられる交流電圧に依存して、コントロールされることが可能である。
【0034】
自由電子がボイド3の中発生するために、フラッシュX線源6が、1ms未満の長さを備えた1個のX線パルス、好ましくは、ほぼ100nsの長さを備えた1個のX線パルスを発生することで、十分である。照射線量は、例えば、200Gray/sである。部分放電がボイド3の中発生することを確保するために、加えられる交流電圧は、開始電圧よりも高くなければならない。それ故に、一つまたはそれ以上のX線パルスは、好ましくは、基本的に、加えられる交流電圧の係数が、開始電圧を上回る値に到達する瞬間に、照射される。
【0035】
交流電圧の値がその最大値に近いとき、特に、少なくとも最大値の90パーセントであるとき、X線パルスが実際に照射されることを確保するため、X線パルスのサイクルタイムとは異なる交流電圧のサイクルタイムの場合に、即ち、交流電圧とX線パルスのシーケンスが同期していない場合に、十分な数のX線パルスもまた、照射されなければならない。これが、例として、図2の中に示されている。図2は、加えられた交流電圧12と照射されたX線パルス13の時間曲線の例を示す。この例では、7個のX線パルス13が示されている。もちろん、より多いまたはより少ないX線パルス13が照射されることも可能である。
【0036】
ここに示された例において、座標システムの原点の後の、第二のX線パルス13が、交流電圧12の係数の最大値の十分近くにあり、それによって、開始電圧が交流電圧により到達されまたは超えられている。最大値の十分近くにあるX線パルス13についての情報は、X線パルスの反復周波数/サイクルタイムを、交流電圧のサイクルタイムと比較することにより、得られることが可能である。
【0037】
交流電圧の値がその最大値に到達するとき、または、その最大値に近い値(例えばその最大値の90パーセント)であるとき、X線パルスが照射されることを確保するためのその他のやり方は、加えられる交流電圧のある測定値に対応する瞬間に、特にその最大値またはその最大値の例えば90パーセントの領域の値になる瞬間に、フラッシュX線源6がX線パルス7を照射するようなコントロール・ユニット11を使用して、フラッシュX線源6をコントロールすることである。交流電圧の測定値は、電圧センサー9から得られる。電圧センサー9は、交流電圧の測定値を、コントロール・ユニット11へ、そして部分放電検出装置10へ送る。コントロール・ユニット11は、交流電圧の測定値を、予め規定された値、例えば、加えられる交流電圧の最大値またはその90パーセントと比較する。もし、交流電圧の測定された電圧が、予め規定された値に対応する場合、またはそれを超える場合、コントロール・ユニット11は、フラッシュX線源6を作動させて、X線パルス7を照射させる。図1の中に示された破線の矢印は、コントロール・ユニット11からフラッシュX線源6へのコントロール経路を示している。
【0038】
図3は、以上において説明された本発明の方法の実施形態に基づいて発生するX線パルス14を示していて、ここで、コントロール・ユニット11は、交流電圧12のある値に対応するある瞬間に、フラッシュX線源6を作動させる。その電圧の値は、この場合、交流電圧12の最大値よりも僅かに小さく、それによって、X線パルス14の減衰部が、基本的に、交流電圧12の最大値と同一の瞬間に現れるようになっている。もしそれが適切である場合には、1個を超えるX線パルス14が、このようにして発生されることが可能である。
【0039】
部分放電の測定/取得は、一つまたはそれ以上のX線パルス7の照射が終了した後、即ち、最後のX線パルス7が消えた後に、好ましくは、発生する。これが、図2及び3の中に、例として示されている。交流電圧12の第一の期間T1の間に、一つまたはそれ以上のX線パルス13,14が、交流電圧12と同時に、絶縁コンポーネント2に照射される。部分放電測定は、行われない。期間T2の間、もはやX線パルス13,14が照射されることはなく、そして、そのときに、X線パルス13,14により引き起こされる部分放電の測定が、部分放電センサー8により、行われる。これは、部分放電を開始させるために実際に必要な程度を超えるX線パルス7が、もはや発生することが無いと言う優位性を有している。更にまた、部分放電の強度は、もし、測定の間にX線パルスが照射される場合と比べて、変化することが無い。
【0040】
もし、部分放電の測定が、X線パルス7の照射と同時に、行われる場合、部分放電センサー8が、フラッシュX線源6から遮蔽される必要がある。それは、X線パルスの発生が、測定と干渉することがあり、それにより測定をゆがめることがあるからである。他方、もし、部分放電の測定が最初に行われた場合には、X線パルスの発生及び照射が終了した後(これは好ましい)、フラッシュX線源6からの部分放電センサー8の遮蔽が、ほとんど要求されないか、あるいは全く要求されることがない。
【0041】
数個のX線パルスが照射されるとき、各X線パルスが、交流電圧の異なる値に対応する瞬間に照射されることがあり、ここで、交流電圧の異なる値は、時間により、増大するかまたは減少するかのいずれかである。例えば交流電圧ゼロ交差から開始し、その最大値まで続いて、コントロール・ユニット11が、交流電圧の異なる、増大する値に対応する瞬間にフラッシュX線源6を作動させても良い。それらの瞬間は、等距離であっても良い。
【0042】
そのようにして、固定された交流電圧が使用されるとき、開始電圧が見出されることが可能である、その理由は、加えられる交流電圧が開始電圧と等しいかまたはそれを超えるとき、部分放電センサー8が部分放電を最初に検出することが可能であるからである。即ち、部分放電が部分放電センサー8により検出されると、これは、最後のX線パルスが、開始電圧と等しいかまたはそれを超える交流電圧の値と同時に照射されたことを意味している。
【0043】
もちろん、開始電圧は、少なくとも一つのX線パルスが照射されている間に、継続的に増大する交流電圧またはその強度により見出されても良い。
【0044】
図4に、本発明に基づくシステムの更なる実施形態15を示す。実施形態15は、図1に示された実施形態1に対応しているが、更に、フラッシュX線源6の照射経路内に配置された開口16、即ち、フラッシュX線源6と絶縁コンポーネント2の間に配置された開口を有している。開口16の開口面積17、および/または、その位置は、変更されることが可能であり、特に、フラッシュX線源6の照射の方向に対して垂直の方向に、変更されることが可能である。開口16を開閉することにより、即ち、開口面積17を増大させまた減少させることにより、より広いまたはより狭いX線パルス・ビーム/コーンが絶縁コンポーネント2に照射されることが可能である。即ち、開口面積17を減少させることにより、X線パルスの部分的なコーン18のみが、絶縁コンポーネント2を照射して、高い分解能をもたらすことになる。
【0045】
X線パルス・ビームを狭めることにより、且つ照射に対して垂直の方向に開口16を動かすことにより、且つそれとともに、移動の間に数個の、継続性のX線パルスを発射することにより、絶縁コンポーネント2の中でボイド3の空間的な位置を突き止めるために、そしてそれ故に、絶縁コンポーネント2の中でのボイド3の位置を空間的な分解能を備えて決定するために、絶縁コンポーネント2の異なる位置が、(部分的な)X線パルス18により照射されることが可能である。開口面積17を適切に調整することにより、且つ、X線パルス18が絶縁コンポーネント2の異なる位置を照射するように、開口16を動かすことにより、絶縁コンポーネント2が、ボイド3を探してそのように走査されることが可能である。
【0046】
もちろん、図1から4に対して説明された特定のアスペクトは、互いに結合されることが可能である。
なお、以上において、本発明の特定の実施形態が示され且つ説明されたが、本発明は、説明され且つ示された特定の実施形態に限定されないと言うことが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
1…本発明のシステムの実施形態、2…絶縁コンポーネント、3…ボイド、4…電極、5…交流電圧源、6…フラッシュX線源、7…X線パルス、8…部分放電センサー、9…電圧センサー、10…部分放電検出装置、11…コントロール・ユニット、12…交流電圧時間曲線、13…X線パルス時間曲線、14…X線パルス時間曲線、15…本発明のシステムの実施形態、16…開口、17…開口面積、18…部分X線パルス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁コンポーネントの部分放電テスト(2)ための方法であって、
a)絶縁コンポーネント(2)に交流電圧(12)を加え;
b)絶縁コンポーネント(2)に少なくとも一つのX線パルス(7;13;14;18)を照射し;
c)この少なくとも一つのX線パルス(7;13;14)により引き起こされる部分放電を測定する;
ステップを有する方法において、
前記インシュレータの内側での前記少なくとも一つのX線パルス(7;13;14)の線量が、少なくとも10-2Gray/sであることを特徴とする方法。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
前記インシュレータの中での前記少なくとも一つのX線パルス(7;13;14;18)線量は、基本的に100Gray/sである。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載の方法:
前記少なくとも一つのX線パルスの持続時間は、一つまたはそれ以上のガスで満たされたボイドの内側での、自由電子とイオンの再結合時間に対応している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載の方法:
前記少なくとも一つのX線パルスの持続時間は、1ms未満、特に100ns未満である。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載の方法:
前記少なくとも一つのX線パルス(7)の長さは、基本的に、部分放電の寿命に対応している。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5の何れか1項に記載の方法:
前記少なくとも一つのX線パルス(7;13;14)により引き起こされる部分放電は、一つまたはそれ以上のX線パルス(7;13;14)の照射が終了した後に、測定される。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載の方法:
前記少なくとも一つのX線パルス(7;14)は、基本的に、前記加えられる交流電圧(12)の予め規定された係数で照射される。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載の方法:
数個のX線パルス(7)が照射され、
各X線パルスは、異なる瞬間に対応する前記加えられる交流電圧(12)の異なる値で照射され、
前記交流電圧(12)の異なる値が、時間に亘って増大または減少する。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項7または8に記載の方法:
前記交流電圧(12)は、電圧センサー(9)により測定され、この電圧センサーは、交流電圧(12)の測定値をコントロール・ユニット(11)に供給し、
前記交流電圧(12)の測定値が予め規定された値に到達したとき、前記コントロール・ユニット(11)が、フラッシュX線源(6)を作動させてX線パルス(7;13)を発生させる。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9の何れか1項に記載の方法:
数個のX線パルス(7;18)が照射され、それらは、前記絶縁コンポーネント(2)の異なる位置に照射される。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の方法を使用して絶縁コンポーネントの部分放電テスト(2)を行うためのシステムであって:
少なくとも一つのX線パルス(7;13;14;18)を発生するためのX線源と、交流電圧源(5)と、電圧センサー(9)と、部分放電センサー(8)と、測定された部分放電を評価するための部分放電検出装置(10)と、を有し、
前記X線源は、フラッシュX線源(6)であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項11に記載の方法:
コントロール・ユニット(11)が設けられ、このコントロール・ユニットは、前記電圧センサー(9)により測定された交流電圧(12)の値が、予め規定された値に到達したとき、前記フラッシュX線源(6)を作動させてX線パルス(7;14)を発生させるように構成されている。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項11または12に記載の方法:
前記フラッシュX線源(6)に、開口(16)が設けられ、この開口の位置および/または開口面積(17)は、変えられることが可能である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−60559(P2010−60559A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−191532(P2009−191532)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.
【Fターム(参考)】