説明

絶縁体インクとそれを用いた印刷配線基板

【課題】インクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法により絶縁層を形成可能な絶縁体インクを提供する。
【解決手段】式(1)に示す構造を分子中に1以上有する分子量200以上の樹脂を成分とする絶縁体インクであって、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤を含有し、25℃における粘度が50mPa・s以下である絶縁体インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線板の製造に用いられる絶縁体インクとそれを用いた印刷配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層印刷配線板は、片面印刷配線板または両面印刷配線板をガラス織布プリプレグ等の接着層を介して複数枚プレス積層し、ドリル、レーザー等により孔明けし、さらにめっき等により異なる層の導電層を電気的に接続するといった工程により製造されている。
【0003】
このような従来の多層印刷配線板の製造方法に対して、近年、特許文献1に記載されているようなインクジェット印刷法による配線パターンの形成方法や、特許文献2に記載されているようなオフセット印刷法による印刷配線板の製造方法が提案されている。また、特許文献3では、基材上に導体層及び孔のある絶縁層を印刷法で形成することにより、多層印刷配線板を製造する方法が提案されている。
【0004】
これらの製造方法によれば、プレス設備やめっき設備などの大規模な設備を用いずに、多層印刷配線板を製造することが可能である。また、導体インクや絶縁体インクを必要な箇所にのみ印刷することができるため、材料の使用効率が非常に高いという利点もある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−80694号公報
【特許文献2】特開平11−58921号公報
【特許文献3】特開2003−110242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2には使用する絶縁体インクに関する記述は皆無であり、また特許文献3によれば絶縁層形成用のインクには熱硬化性樹脂を使用するとの記述があるが、そのインクの粘度や樹脂組成に関する具体的な記述がない。
【0007】
また、印刷された絶縁層は、通常、表面が平坦な場合が多く、例えば通常の配線板で使用されているような粗化処理された銅箔による、絶縁層との接着力が向上するアンカー効果(投錨効果)は期待できない。また、近年は基板上を流れる電気信号が高周波数化しているが、たとえ配線に凹凸を設けられたとしても、電気信号伝播速度の遅延につながるため、できるだけ平坦な配線層を形成することが望まれている。本発明は、インクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法により絶縁層を形成可能な絶縁体インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
1. 式(1)に示す構造を分子中に1以上有する分子量200以上の樹脂を成分とする絶縁体インクであって、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤を含有し、25℃における粘度が50mPa・s以下である絶縁体インク。
【0009】
【化1】

【0010】
2. 分子量200以上の樹脂が、さらに式(2)及び/又は式(3)に示す構造を分子中に1以上有する、前記の絶縁体インク。
【0011】
【化2】

【0012】
3. グリシジルエステル基を二つ以上有するエポキシ樹脂を成分とする、前記の絶縁体インク。
4. エポキシ樹脂がフェノール類とアルデヒド類の縮合物のグリシジルエーテル化物である、前記の絶縁体インク。
5. 絶縁体と配線を有する印刷配線基板において、前記の絶縁体インクを印刷配線基板の所望の位置に塗布し、加熱処理により樹脂の硬化及び/または溶媒除去を行い、絶縁体を形成してなる、印刷配線基板。
6. 絶縁体上に、導電性材料により配線を形成してなる、前記の印刷配線基板。
7. 絶縁体インクを所望の位置に塗布する際に、インクジェット印刷機を使用する、前記の印刷配線基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクジェット印刷法などの印刷法により絶縁層を形成可能な絶縁体インクを得ることができる。また、本絶縁体インクを用いることで、配線層を印刷法で形成した場合にも、配線と絶縁体間の接着力や絶縁性に優れた絶縁層を有した印刷配線基板を形成可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の絶縁体インクは、例えば、インクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法により絶縁層を形成することに供されるものであり、式(1)に示す構造を分子中に1以上有する分子量200以上の樹脂を成分とする。
【0015】
【化3】

【0016】
式(1)に示す構造を分子内に1以上有する樹脂を使用することで、その後に形成する金属配線層との結合力を得ることができ、結果として平坦な絶縁層上に形成した配線層でも、絶縁層との高い接着力を得ることができる。式(1)に示す構造を分子内に1以上有する樹脂は、溶剤などの加熱により揮発する成分を除いた樹脂成分の内、10質量%以上となることが好ましい。これより添加量が少ない場合は、その効果も少ない。式(1)の構造に加え、さらに、下記式(2)及び/又は下記式(3)に示す構造を分子内に有することで、例えばエポキシ樹脂などとの反応性を付与でき好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
本発明の絶縁体インクはインクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法により絶縁層を形成することに供されるものであり、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤を含む。このような溶剤であれば、溶剤の揮発によるインク粘度の上昇を抑えることができる。例えば25℃の蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤のみであると、溶剤の揮発によるインク粘度の上昇が著しく、例えばインクジェット印刷法ではインクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出することが困難になり、更にインクジェットヘッドの目詰まりが生じやすくなる傾向にある。また、オフセット印刷法では版胴に塗布したインク塗布面からパターンの不要部分を除去する工程や、版胴から被印刷物にインクを転写する工程で糸引きが起こり、良好なパターン形成ができないなどの不具合を生じる。なお、蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤と、蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤とを併せて用いてもよいが、その場合、蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤の配合割合を、溶剤全量の質量基準で、60mass%(質量%)以下とすることが好ましく、50mass%(質量%)以下とすることがより好ましく、40mass%(質量%)以下とすることがさらに好ましい。なお、溶剤としては、蒸気圧が所望の範囲で、かつ絶縁性の樹脂を分散又は溶解するものであれば種々のものを用いることができる。
【0019】
25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤としては、具体的には、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、アニソール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、1、3−ブチレングリコールジアセテート等が挙げられる。また、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤として具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
インク中における溶媒の含有割合については、特に限定されず、インクの25℃における粘度及び表面張力が以下に示す範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、通常、インク質量に対して、40から99質量%とすることが好ましい。
【0021】
本発明の絶縁体インクの粘度は、25℃で50mPa・s以下である。絶縁体インクの粘度が50mPa・s以下であれば、インクジェット印刷時の不吐出ノズルの発生や、ノズルの目詰まりの発生を一層確実に防止することができる。また、絶縁体インクの粘度は、25℃で1〜30mPa・sであることが好ましい。インク粘度を当該範囲とすることによって、液滴を小径化でき、インクの着弾径を一層小さくすることができる傾向がある。
【0022】
本発明の絶縁体インクの25℃における表面張力は20mN/m以上であることが好ましい。絶縁体インクの表面張力が20mN/m未満の場合、インク液滴が基材に着弾後に濡れ広がり、平坦な膜を形成できない傾向がある。絶縁体インクの表面張力は、20〜80mN/mの範囲であることがより好ましい。これは、インクの表面張力が80mN/mを超える場合、インクジェットノズル詰まりが発生し易くなる傾向があるためである。20〜50mN/mであると特に好ましい。
【0023】
本発明の絶縁体インクに用いる樹脂成分は、一般に電気絶縁性を示す材料であればどのようなものでも良く、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂などがあるが、特に制限するものではない。また、これらは単独又は二種類以上を併用しても良い。これらの材料を印刷配線板に用いる場合には絶縁信頼性、接続信頼性、耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、特にエポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂を用いる場合には、モノマー、オリゴマー等を必要に応じて溶剤に溶解し、基板に塗布後、加熱処理することにより溶剤除去及び樹脂を硬化させる。また、必要に応じて硬化促進剤、カップリング剤、酸化防止剤、充填剤などを配合しても良い。
【0024】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、またはフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール類とホルムアルデヒドやサリチルアルデヒドなどのアルデヒド類の縮合物のグリシジルエーテル化物、その他、二官能フェノール類のグリシジルエーテル化物、二官能アルコールのグリシジルエーテル化物、ポリフェノール類のグリシジルエーテル化物、及びそれらの水素添加物、ハロゲン化物などがあるが、耐熱性や接続信頼性の観点からフェノール類とアルデヒド類の縮合物のグリシジルエーテル化物が好ましい。これらのエポキシ樹脂の分子量はどのようなものでもよく、また何種類かを併用することができる。
【0025】
エポキシ樹脂とともに用いられる硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミドなどのアミン類、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などの酸無水物、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどのイミダゾール類、及びイミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレートなどでマスクされたイミダゾール類、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ポリビニルフェノールなどのフェノール類、及びフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール類とホルムアルデヒドやサリチルアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合物及びこれらのハロゲン化物などがあるが、耐熱性や接続信頼性の観点から、フェノール類とアルデヒド類の縮合物が好ましい。これらの化合物の分子量はどのようなものでも良く、また何種類かを併用することができる。
【0026】
なお、前記式(2)および/又は前記式(3)に示す構造を含むフェノール化合物が、前記式(1)の構造を含む場合、エポキシ樹脂との硬化が可能であり、より高い接着性を得られる点から好ましい。
【0027】
上記エポキシ樹脂(a)と上記フェノール樹脂(b)を組合せて使用する場合、両者の配合量は、エポキシ当量と水酸基当量の当量比(エポキシ当量/水酸基当量)で0.70/0.30〜0.30/0.70とするのが好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65とするのがより好ましく、0.60/0.30〜0.30/0.60とするのが更に好ましく、0.55/0.45〜0.45/0.55とするのが特に好ましい。両者の配合量が上記当量比の範囲外であると、硬化性が不十分となる傾向がある。
【0028】
絶縁体インクの印刷法としては、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ナノインプリント印刷法、コンタクトプリント印刷法、スピンコート印刷法など種々の印刷法が適用できる。中でもインクジェット印刷法は、特別な版を使用せずに所望の位置に所望の量のインクを印刷でき、材料利用効率やパターン設計変更への対応の容易さなどの特長を有し好ましい。インクジェット印刷法としては、例えば、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式や、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出させるサーマル方式等、一般に報告されている吐出方法を使用できる。中でも、ピエゾ方式はインクに熱がかからないなどの点から好ましい。このようなインクジェット印刷法を実施するためには、例えば、通常のインクジェット装置を用いることができる。インクを吐出するヘッドのノズル径は所望の液滴サイズによって最適なものを選択することができる。
【0029】
インクが基板に着滴した後に溶媒を除去する方法としては、基板を加熱したり、熱風を吹き付けたりする加熱処理方法を採用することができる。このような加熱処理は、例えば、加熱温度150〜250℃、加熱時間0.2〜2.0時間で行うことができる。なお、樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、溶剤の除去後または溶剤除去と同時に樹脂を硬化させることができる。例えば紫外線硬化型樹脂の場合は、溶剤除去後紫外線を照射することで、樹脂を硬化することができる。
【0030】
基材としては、一般に配線板用の基材として用いられているような材料であれば特に制限はない。ガラスクロスを有する絶縁樹脂積層板やガラスクロスを使用しない絶縁層及び絶縁フィルム、ガラス基材、銅箔などの金属箔などを使用することができ、目的に応じて選択することができる。また、均一な印刷性を得るため、酸素やアルゴンを使用したUV処理やプラズマ処理による表面の清浄化や均一化を採用しても良い。
【0031】
形成した絶縁体上に導体配線を形成するための方法として、めっき法や印刷法による配線形成方法が適用できる。なかでも、印刷法により配線を形成することで、薬液の使用量を減らすことができ好ましい。
印刷法としては、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ナノインプリント印刷法、コンタクトプリント印刷法、スピンコート印刷法などの種々の印刷方法を適用することができる。中でもインクジェット印刷法は、特別な版を使用せずに所望の位置に所望の量のインクを印刷でき、材料利用効率やパターン設計変更への対応の容易さなどの特徴を有し好ましい。
【0032】
印刷法に適用する導電性材料として、Ag、Au、Cuなどの金属ナノ粒子化合物を導電性材料として使用した、導電性ペーストやインクを適用することができる。導電性ペーストやインクの粘度、表面張力、加熱焼結温度/方法は、印刷方法や使用する基材、使用する導電材料に応じて、適宜選択すればよい。中でも、Agナノ粒子を使用した導電性ペースト及びインクは200℃以下の比較的低温で、低抵抗値を得ることができ好ましい。また、Cuナノ粒子を使用した導電ペースト及びインクは、配線形成後の耐エレクトロマイグレーション性に優れ好ましい。
導電性材料は、Ag、Au、Cuに限らず所望の導電性を得られるものであればよく、1種を単独でまた2種以上を混合して、若しくは、合金として用いることもできる。
【0033】
導電性材料を印刷する面となる絶縁層は、本発明の絶縁体インクの印刷層となるが、この絶縁層は印刷後、溶剤を10質量%以下に除去してあることが好ましい。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、その硬化度によらず印刷面として適用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例の絶縁体インクの粘度は、株式会社エー・アンド・ディー社製の小型振動式粘度計SV−10(商品名)を用いて25℃で測定した。また、インクの表面張力は、Wilhelmy法(白金プレート法)による表面張力測定装置である、協和界面化学社製の全自動表面張力計(商品名:CBVP−Z)を用いて25℃で測定した。印刷後の絶縁体層の表面粗さ(Ra)は、株式会社菱化システムズ社製の三次元非接触表面形状計測システム(マイクロマップ、商品名)を使用して測定した(表1参照)。
【0035】
(実施例1)
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(N−865:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)14.5g、アミノトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(LA−3018−50Pの固形物のみを使用:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)10.5g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.013gをガンマブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)75.0gに溶解し、粘度が15mPa・s、表面張力44mN/mの絶縁体インクを得た。
【0036】
(実施例2)
N−865:14.5g、アミノトリアジン含有フェノールノボラック樹脂(LA−1356の固形物のみを使用:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)10.5g、2−エチル−4−イミダゾール:0.013gをガンマブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)49.0g、メチルイソブチルケトン(25℃における蒸気圧2.7×10Pa)26.0gに溶解し、粘度が11mPa・s、表面張力32mN/mの絶縁体インクを得た。
【0037】
(比較例1)
N−865;16.1g、ビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170:大日本インキ化学工業株式会社、商品名)8.9g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.02gをガンマブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)75.0gに溶解し、粘度が13mPa・s、表面張力44mN/mの絶縁体インクを得た。
【0038】
(印字性評価)
実施例1、2及び比較例1で得られた絶縁体インクをインクジェット印刷装置(MJP−1500V、株式会社マイクロジェット製)を用いて塗布したところ、いずれのインクもインクジェットヘッドの目詰まりを生じることなく良好に吐出できた。
【0039】
(金属層の形成)
実施例1、2及び比較例1で得られた絶縁体インクを、インクジェット装置を使用して厚み0.7mmのガラス基材上に印刷した後、180℃のホットプレート上で1時間加熱乾燥し、厚み約1μmの絶縁体層を得た。この絶縁体層上に、Agナノ粒子含有インク(ナノメタルインクAg1TeH、アルバックマテリアル製、商品名)をスピンコートによって塗布し、200℃で2時間加熱乾燥することで厚み約2μmの導体薄膜を形成した。
【0040】
(金属層と絶縁体層間の接着力(付着力)測定)
上記の手法で形成した金属層を、カッターを使用して1mm角の碁盤目状にカット(100マス)した後、スコッチテープをカットした金属層上に貼り付けた後に剥離し、碁盤目状の金属層の内剥離せずに残ったマス目の割合で接着力(付着力)を比較した(JIS K5400を参考とした)。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、本発明の絶縁体インクは、金属との接着力に優れた絶縁体樹脂層を印刷法で形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、インクジェット印刷法やオフセット印刷法などの印刷法により、絶縁層を形成可能な絶縁体インク及びそれを用いた印刷配線板を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)に示す構造を分子中に1以上有する分子量200以上の樹脂を成分とする絶縁体インクであって、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤を含有し、25℃における粘度が50mPa・s以下である絶縁体インク。
【化1】

【請求項2】
分子量200以上の樹脂が、さらに式(2)及び/又は式(3)に示す構造を分子中に1以上有する、請求項1に記載の絶縁体インク。
【化2】

【請求項3】
グリシジルエステル基を二つ以上有するエポキシ樹脂を成分とする、請求項1または2に記載の絶縁体インク。
【請求項4】
エポキシ樹脂がフェノール類とアルデヒド類の縮合物のグリシジルエーテル化物である、請求項3に記載の絶縁体インク。
【請求項5】
絶縁体と配線を有する印刷配線基板において、請求項1から4いずれかに記載の絶縁体インクを、印刷配線基板の所望の位置に塗布し、加熱処理により樹脂の硬化及び/または溶媒除去を行い、絶縁体を形成してなる、印刷配線基板。
【請求項6】
絶縁体上に、導電性材料により配線を形成してなる、請求項5に記載の印刷配線基板。
【請求項7】
絶縁体インクを所望の位置に塗布する際に、インクジェット印刷機を使用する、請求項5または6に記載の印刷配線基板。

【公開番号】特開2010−95559(P2010−95559A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265141(P2008−265141)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】