説明

絶縁回路装置、AC/DCコンバータ、及び給電システム

【課題】絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出して、エラー表示や給電停止を行う。
【解決手段】コンデンサ52よりも前記入力側において、前記コンデンサの高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第1絶縁スイッチング素子31,33と、前記コンデンサ52よりも前記出力側において、前記コンデンサ52の高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第2絶縁スイッチング素子32,34とを備えた絶縁回路を有する給電システムである。この給電システムは、前記対の第1絶縁スイッチング素子31,33及び前記対の第2絶縁スイッチング素子32,34の短絡故障を監視する監視部42を備えており、絶縁スイッチング素子が短絡故障するとエラー表示・給電停止を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路装置、それを備えたAC/DCコンバータ及び給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やプラグイン方式のHV(Hybrid Vehicle)では、一般家庭の電力を用いて駆動用の主電池を充電する。
一方、このようなEV等の主電池への充電を目的とするものではないが、交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源装置の提案がなされている(特許文献1〜3)。このスイッチング電源装置は、交流を全波整流する整流回路と、電源側と負荷側を絶縁するための絶縁回路と、を含んでいる。
【0003】
前記絶縁回路は、全波整流された電力を充電するコンデンサを備え、このコンデンサの前段に一対の前段スイッチング素子が配置され、また後段に一対の後段スイッチング素子が配置されている。
一対の前段スイッチング素子と一対の後段スイッチング素子とを交互にオン/オフすることで、コンデンサは電力の充電と放電とを交互に繰り返すことができる。つまり、前段スイッチング素子をオン・後段スイッチング素子をオフの状態では、全波整流された電力がコンデンサに充電され、前段スイッチング素子をオフ・後段スイッチング素子をオンの状態では、コンデンサに充電された電力が後段へ放電される。
【0004】
上記のようなバッチ式継電方法によれば、絶縁回路の入力側と出力側との間の絶縁が確保される。つまり、前段スイッチング素子と後段スイッチング素子のいずれかが常にオフ状態となるため、絶縁回路の入力側と出力側とは電気的に切り離された状態となるからである。
【0005】
また、特許文献4には、DC/DCコンバータにおいて、上記バッチ式継電方式によって、電源側と負荷側の絶縁を図ったものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−79425号公報
【特許文献2】特開2008−79426号公報
【特許文献3】特開2008−79427号公報
【特許文献4】特開2004−222379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、バッチ式継電方式による絶縁回路では、入力側と出力側との間の絶縁は、スイッチング素子がオフになることで実現される。
このため、絶縁を担うスイッチング素子が一つでも故障して短絡してしまった場合、絶縁が維持できなくなる。
しかし、特許文献1〜4には、絶縁を担うスイッチング素子が故障して短絡し、絶縁が確保できなくなった場合への対処は開示されていない。
【0008】
そこで、本発明は、絶縁を担う絶縁スイッチング素子が故障して短絡し、絶縁が確保できなくなった場合に、それを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)入力側と出力側とを絶縁しつつ前記入力側から前記出力側へ電力を供給する絶縁回路装置であって、入力電力が充電されるコンデンサと、前記コンデンサよりも前記入力側において、前記コンデンサの高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第1絶縁スイッチング素子と、前記コンデンサよりも前記出力側において、前記コンデンサの高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第2絶縁スイッチング素子と、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とをオン/オフすることで、前記入力側と前記出力側とを絶縁しつつ前記入力側から前記出力側へ電力を供給する制御を行うスイッチング制御手段と、前記対の第1絶縁スイッチング素子及び前記対の第2絶縁スイッチング素子のうちの少なくともいずれか一つの絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視する監視手段と、を備えていることを特徴とする絶縁回路装置である。
【0010】
上記本発明によれば、絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視する監視手段を備えているため、絶縁スイッチング素子が故障して短絡し、絶縁が確保できなくなった場合に、それを検出することができる。
【0011】
(2)前記監視手段は、前記対の第1絶縁スイッチング素子及び前記対の第2絶縁スイッチング素子のうちの少なくともいずれか一つの絶縁スイッチング素子の素子両端における電位差を測定し、前記絶縁スイッチング素子の前記電位差に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出するよう構成されているのが好ましい。この場合、絶縁スイッチング素子の電位差に基づいて、短絡故障を検出することができる。
【0012】
(3)前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子の素子両端それぞれの電圧を分圧する分圧回路部を備え、分圧された前記絶縁スイッチング素子の素子両端それぞれの電圧の差に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出することができる。絶縁スイッチング素子の電圧が高い場合であっても、分圧することで、検出するのに適当な電圧まで下げることができ、検出が容易となる。
【0013】
(4)前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子における素子両端の前記電位差分の電圧で充電される検出用コンデンサを備え、当該検出用コンデンサの電圧に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出することができる。この場合、絶縁スイッチング素子の素子両端それぞれの電圧が高い場合であっても、素子両端の電位差はさほど大きくないため、検出用コンデンサを、絶縁スイッチング素子における素子両端の電位差分の電圧により充電しておくことで、検出用コンデンサの電圧に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を容易に検出することができる。
【0014】
(5)前記スイッチング制御手段は、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視する際には、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とを交互にオン/オフするスイッチングの周波数を低くするのが好ましい。スイッチング周波数を低くすると、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子との間にある前記コンデンサの充電又は放電がより長い間行われることになる。この結果、絶縁スイッチング素子の前記コンデンサ側端の電位が大きく変動し易くなり、絶縁スイッチング素子の素子両端における電位差を大きくすることができる。このため、短絡故障の検出がより確実に行える。
【0015】
(6)前記スイッチング制御手段は、前記各絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視するモードでは、通常モードとの対比において、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とを共にオフにするときのオフ時間を延長するようにしてもよい。この場合、延長されたオフ時間に故障監視を実行することができ、オン時間を延長する必要は無い。すなわち、オン時間を延長しない分だけ、無駄な時間を節約し、故障監視のために電力が供給される時間を、最小限に抑制することができる。
【0016】
(7)前記(6)に関して、前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子における素子両端の前記電位差分の電圧で充電される検出用コンデンサを備え、当該検出用コンデンサの電圧に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出するものであり、前記スイッチング制御手段が延長するオフ時間は、前記検出用コンデンサの充電開始から終了までに要する時間、であってもよい。この場合、オフ時間の延長を、検出用コンデンサの充電開始から終了までに要する時間に抑制することができる。すなわち、その後、検出用コンデンサの電圧を読み取るステップについては、延長されたオフ時間に行う必要が無いからである。
【0017】
(8)また、前記(6)に関して、前記監視手段は、短絡故障を監視するモードの際、前記対の第1絶縁スイッチング素子及び対の第2絶縁スイッチング素子のうち一方の監視が完了した後に、他方の監視を実行することが好ましい。この場合、一方の絶縁スイッチング素子の故障監視が確実に終わってから他方のスイッチング素子の故障監視を開始することができる。
【0018】
(9)他の観点からみた本発明は、AC電力を整流して直流電力を出力する整流部を備え、整流された前記直流電力が絶縁回路装置を介して出力されるAC/DCコンバータであって、前記絶縁回路装置として、前記(1)に記載の絶縁回路装置を用いたことを特徴とするAC/DCコンバータである。
【0019】
(10)さらに他の観点からみた本発明は、前記AC/DCコンバータを用いて交流電力を直流電力に変換して給電を行う給電システムであって、前記監視手段によって前記絶縁スイッチング素子の短絡故障が検出された場合に、給電システムの異常をユーザに知らせるエラーの報知又は給電停止を行う異常処理手段を備えていることを特徴とする給電システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁スイッチング素子において短絡故障が発生してもそれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両に搭載された給電システムの回路図である。
【図2】AC/DCコンバータの回路図である。
【図3】正常時における絶縁スイッチング素子の素子電位差を示す図である。
【図4】故障時における絶縁スイッチング素子の素子電位差を示す図である。
【図5】測定回路の回路図である。
【図6】測定回路から監視部に与えられる信号波形を示す波形図である。
【図7】スイッチング周波数を変化させた場合において、絶縁スイッチング素子の端子両端の電位差の変動の仕方を示す図である。
【図8】測定回路の変形例を示す回路図である。
【図9】通常モードにおける、前段の第1絶縁スイッチング素子(前段SW)と、後段の第2絶縁スイッチング素子(後段SW)との、オン/オフのタイムチャートである。
【図10】故障監視モードにおける、前段の第1絶縁スイッチング素子(前段SW)と、後段の第2絶縁スイッチング素子(後段SW)と、選択部と、スイッチと、監視部によるA/D変換とのオン/オフのタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《給電システム》
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、EVやHVなどの車両用の給電システムを示している。この給電システムは、家庭用電源などの商用電源(交流電源)Pの電力を、車両Vに搭載されたバッテリ(メインバッテリ)Bに供給して、当該バッテリBを充電させるためのものである。
【0023】
給電システムは、交流電源Pの交流電力を直流電力に変換するためのAC/DCコンバータ1を有し、交流電源Pから供給される交流電力を直流電力に変換した上で、車両Vに搭載されたバッテリBを充電するよう構成されている。この給電システムは、交流電源Pのコンセントに接続されるプラグ付きケーブル(図示省略)を介して、交流電源Pに接続される。
【0024】
なお、本給電システムでは、交流電源PとAC/DCコンバータ1との間(のケーブル)、及びAC/DCコンバータ1とバッテリBとの間のそれぞれのラインに、リレー素子2a,2b,3a,3bが設けられており、異常時には、これらのリレー2a,2b,3a,3bを遮断して、バッテリBへの給電を停止することが可能な構成となっている。
【0025】
また、車両Vには、バッテリBから供給される電力によって駆動されるモータなどの負荷が設けられている。負荷側の回路の詳細は、省略するが、図1に示すように、負荷側の回路においては、バッテリBの高圧側及び低圧側の双方に対して、比較的高い抵抗値(数MΩ)を持つ抵抗Ra,Rbを介して、車両Vの車体(シャーシ)に接地されている。つまり、バッテリBの低圧側は、車両Vの車体GNDとは電位が異なっており、バッテリB及びバッテリBに接続されたAC/DCコンバータは、車体GNDに対して、電気的に浮いた状態となっている。
【0026】
《AC/DCコンバータ》
図2は、AC/DCコンバータ1の回路構成を示している。なお、図2では、説明の簡易化のため、AC/DCコンバータ1の入力側には交流電源Pのみ示し、出力側にはバッテリBのみ示した。
このAC/DCコンバータ1は、整流部10、昇圧部(力率改善回路)20、絶縁回路(バッチ式継電部)30、制御部40を備えている。
【0027】
前記整流部10は、4つのダイオード11,12,13,14を有しており、全波整流回路として構成されている。この整流部10によって、交流電源Pの交流電力が脈流の直流電力へ整流される。
【0028】
前記昇圧部(昇圧コンバータ)20は、昇圧部20の入力側電圧V−1よりも高い出力電圧V−2を出力するためのものであり、インダクタ21と、出力側に向く方向を順方向とするダイオード22と、昇圧部スイッチング素子23と、を有している。
【0029】
この昇圧部スイッチング素子23のゲートには、制御部40から、交流電源Pの周波数に対して十分に大きい数kHz〜数百kHzのスイッチング信号が与えられ、昇圧部スイッチング素子23がインダクタ21を流れる電流のチョッピングを行って、昇圧が行われる。昇圧部20によって昇圧された電圧は、昇圧用コンデンサ(第1コンデンサ)51に蓄えられる。
昇圧部20が設けられていることで、交流電源Pの電圧(100V又は200V程度)よりもバッテリBの定格電圧(例えば、330V程度)が大きい場合であっても、効率よく充電することが可能となる。
【0030】
前記絶縁回路(バッチ式継電部)30は、AC/DCコンバータの入力側と出力側との間を絶縁して、バッテリBへ給電しつつも、交流電源PとバッテリBとの間の絶縁を維持させるためのものである。
【0031】
この絶縁回路30は、絶縁回路30に入力された電力が充電される中央コンデンサ(第2コンデンサ)52を備えている。このコンデンサ52と昇圧用コンデンサ51との間には、両コンデンサ51,52の高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第1絶縁スイッチング素子31,33が設けられている。また、中央コンデンサ52の出力側には、中央コンデンサ52の高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第2絶縁スイッチング素子32,34が設けられている。
【0032】
これらの絶縁スイッチング素子31,32,33,34は、MOS−FETやIGBTなどのスイッチング素子に逆阻止用ダイオードを接続して構成されている。なお、絶縁スイッチング素子としては、逆阻止能力を有する逆阻止用IGBT等を用いて構成してもよい。
さらに、対の第2絶縁スイッチング素子32,34よりも出力側には、メインバッテリへの充電の電圧等を平滑化するために、平滑コンデンサ(第3コンデンサ)53が設けられている。
【0033】
バッチ式継電部である絶縁回路30は、対の第1絶縁スイッチング素子31,33がオンであり、かつ、対の第2絶縁スイッチング素子32,34がオフのときに、昇圧部20(昇圧用コンデンサ51)から絶縁回路30に入力された電力を、中央コンデンサ52に充電する。
中央コンデンサ52への充電時には、対の第2絶縁スイッチング素子32,34がオフであるため、中央コンデンサ52と絶縁回路30出力側との間が絶縁された状態となる。
【0034】
一方、対の第1絶縁スイッチング素子31,33がオフであり、かつ、対の第2絶縁スイッチング素子32,34がオンのときに、中央コンデンサ52に充電された電荷は、バッテリBを充電するため、放電される。中央コンデンサ52の放電時には、対の第1絶縁スイッチング素子31,33がオフであるため、絶縁回路30入力側と中央コンデンサ52との間が絶縁された状態となる。
【0035】
対の第1絶縁スイッチング素子31,33及び対の第2絶縁スイッチング素子32,34のオン/オフ切替は交互に繰り返し行われるため、中央コンデンサ52への充電及び放電は交互に繰り返し行われる。なお、絶縁スイッチング素子31,32,33,34のオン/オフのスイッチング周波数は、通常、100kHzである。
【0036】
この絶縁回路30では、中央コンデンサ52への充電及び放電が交互に繰り返し行われるため、絶縁回路30の入力側から出力側へ電力を供給可能である。したがって、交流電源Pから電力が供給されると、継続的にバッテリBへの充電を行うことができる。しかも、絶縁回路30では、対の第1絶縁スイッチング素子31,33及び対の第2絶縁スイッチング素子32,34のいずれか一方が、オフ状態となるため、絶縁回路30の入力側と出力側との間の絶縁が、常時、確保される。この結果、交流電源PとバッテリBとの間の絶縁が確保される。
【0037】
このような絶縁確保に、絶縁スイッチング素子ではなく、トランスを用いた場合、回路が大型化したり電力損失が増大したりするおそれがあるが、絶縁スイッチング素子を用いると、小型化や電力損失低減に有利である。
【0038】
前記制御部40は、AC/DCコンバータの制御のほか、給電システム全体を制御するためのものであり、マイクロコンピュータ等によって構成されている。
制御部40は、絶縁スイッチング素子31,32,33,34に与えるオン/オフの制御信号を生成するスイッチング制御部(スイッチング制御手段)41を備えている。図示は省略しているが、制御部40は、各スイッチング素子31,32,33,34の制御電極(ゲート)に接続されており、スイッチング制御部41によって、各絶縁スイッチング素子31,32,33,34がオン/オフされる。
なお、スイッチング制御部41は、前記スイッチング周波数を変更可能に構成されている。スイッチング周波数の変更については後述する。
【0039】
さらに、制御部40は、絶縁スイッチング素子31,32,33,34の異常を監視する監視部42と、絶縁スイッチング素子31,32,33,34に異常が起こったときの処理を行う異常処理部43と、を備えている。
【0040】
絶縁回路30における絶縁効果は、絶縁スイッチング素子31,32,33,34が正常にオフすることを前提としているため、絶縁スイッチング素子31,32,33,34が何らかの原因によって故障し、短絡してしまった場合には、絶縁回路30における入力側と出力側との間の絶縁が保てなくなる。
【0041】
《絶縁回路装置としての構成・動作》
図3(a)(b)は、正常時(短絡故障していない時)における、高圧端側の第1絶縁スイッチング素子31の素子両端の電位差Vを示している。なお、図3(a)では、図2に示すAD/DCコンバータ1のうち、主に絶縁回路30のみ示し、他の構成は簡略化して示した。
【0042】
図3(b)に示すように、第1絶縁スイッチング素子31(及び第1絶縁スイッチング素子33)がオンのときは、素子抵抗が非常に小さくなるため、スイッチング素子31の両端の電位差Vは比較的小さくなる。つまり、スイッチング素子31がオンになると、第1コンデンサ51から第2コンデンサ52へ電流が流れて第2コンデンサ52充電されていくにつれて電位差Vが小さくなる。そして、第2コンデンサ52の充電が完了すると、電位差Vが小さい状態で安定する。
【0043】
また、第1絶縁スイッチング素子31(及び第1絶縁スイッチング素子33)がオフのときは、第1コンデンサ51が充電されるとともに、第2絶縁スイッチング素子32,34がオンになっているため第2コンデンサ52の放電が生じることから、スイッチング素子31の両端の電位差Vは徐々に大きくなっている。
このように、スイッチング素子31が正常のときは、素子31のオン/オフに伴って、素子31の抵抗が変化するため、素子両端の電位差Vが変動する。
【0044】
一方、図4(a)に示すように、第1絶縁スイッチング素子31が故障して、短絡すると、図4(b)に示すように、素子31がオンのときもオフのときも、素子両端の電位差Vは、ほぼ一定となる。
本実施形態のような車両用の給電システムでは、絶縁回路30の故障によってAC/DCコンバータの絶縁が維持できなくなると、図1に示すように交流電源P側から、負荷側へ短絡電流が流れるおそれがある。
【0045】
本実施形態では、上記のように、正常時と短絡故障時とで、絶縁スイッチング素子の両端の電位差の状態が異なることを利用して、短絡故障の監視を行う。
短絡故障の監視は、図5に示すように、測定回路44と、制御部40の監視部42とによって行われる。
【0046】
《監視手段の構成・動作:第1例》
測定回路44は、図5に示すように、4つのスイッチング素子31,32,33,34の素子端に相当する6箇所にそれぞれ接続された分圧回路部44aを備えている。素子端の電圧Va,Vb,Vc,Vd,Ve,Vfは、後述の差動増幅器44bに直接入力するには、電圧が高すぎるため、それぞれの分圧回路部44aによって、各位置の電圧Va,Vb,Vc,Vd,Ve,Vfを分圧し、差動増幅器44bに入力するのに適した電圧Va’,Vb’,Vc’,Vd’,Ve’,Vf’にまで下げる。なお、複数の分圧回路部44aそれぞれにおける分圧抵抗比は、同一となっている。
【0047】
分圧された電圧Va’,Vb’が入力される差動増幅器44bは、高圧側の第1絶縁スイッチング素子31の両端電圧V1に対応する電圧V1’を出力する。また、分圧された電圧Vb’,Vc’ が入力される差動増幅器44bは、高圧側の第2絶縁スイッチング素子32の両端電圧Vに対応する電圧V’を出力する。分圧された電圧Vd’,Ve’が入力される差動増幅器44bは、低圧側の第1絶縁スイッチング素子33の両端電圧V3に対応する電圧V’を出力する。分圧された電圧Ve’,Vf’ が入力される差動増幅器44bは、低圧側の第2絶縁スイッチング素子34の両端電圧V4に対応する電圧V’を出力する。
【0048】
各差動増幅器44bの出力は、それぞれ、アナログスイッチ44cを介して、監視部42に与えられる。なお、アナログスイッチ44cの後段には、コンデンサ44dがそれぞれ接続されている。
【0049】
図6に示すように、アナログスイッチ44cへの制御信号(スイッチのオン/オフ信号)は、絶縁スイッチング素子31,32,33,34がオン及びオフである状態それぞれにおいて、所定の期間、アナログスイッチ44cをオンにするものである。アナログスイッチ44cがオンであるときには、絶縁スイッチング素子31,32,33,34の両端の電位差に対応した電圧V’,V’,V’,V’が、コンデンサ44dにチャージされ、コンデンサ44dにチャージされた電圧が監視部42に与えられる。また、アナログスイッチ44cがオフであるときには、コンデンサ44dにチャージされた電圧が保持される。
【0050】
なお、アナログスイッチ44cをオンするタイミングは、図6に示すように、絶縁スイッチング素子がオン状態のときにあっては、第2コンデンサ52への充電が完了するなどして、素子両端の電位差が低い状態で安定したときにするのが好ましく、絶縁スイッチング素子がオフ状態のときにあっては、素子両端の電位差が十分に高くなったときとするのが好ましい。
【0051】
監視部42は、アナログスイッチ44cを介して入力された絶縁スイッチング素子31,32,33,34の両端の電位差に対応した電圧V’,V’,V’,V’それぞれについて、絶縁スイッチング素子がオン状態のときの電圧と、オフ状態のときの電圧との差を求めたり、絶縁スイッチング素子がオフ状態のときの電圧がしきい値Thよりも高いか否かを判定したりするなどして、絶縁スイッチング素子がオフ状態のときに正常に電圧が上昇しているか否かを判定する。
【0052】
仮に、絶縁スイッチング素子が短絡故障すると、絶縁スイッチング素子がオン状態のときの電圧と、オフ状態のときの電圧との差がほとんど無くなったり、絶縁スイッチング素子がオフ状態のときの電圧がしきい値Thよりも低くなったりするため、監視部42は、絶縁スイッチング素子が短絡故障したことを検出することができる。
このように、本実施形態の測定回路44及び監視部42は、絶縁スイッチング素子故障の監視手段を構成している。また、この監視手段やスイッチング制御部41は、絶縁回路30とともに、本発明の絶縁回路装置を構成している。
【0053】
監視部42が複数の絶縁スイッチング素子31,32,33,34のうちの少なくとも一つの短絡故障を検出した場合、異常処理部43は、所定の異常処理を行う。
異常処理としては、リレー2a,2b,3a,3bに対して、リレー断とする指令信号を出力し、交流電源PからバッテリBへの給電を強制的に停止させる給電停止処理、及び/又は、表示画面装置・表示ランプ・音声出力装置などの適宜の報知手段によって給電システムの異常をユーザに知らせるエラー報知処理を行うことができる。
なお、給電停止のためのリレーは、前記リレー3a,3b,3a,3bに加えて又は代えて、AC/DCコンバータ内に設けても良い。
【0054】
ここで、絶縁スイッチング素子31,32,33,34の短絡故障が生じても、バッテリBへの充電自体が阻害されるわけではないので、エラー報知処理行いつつ、バッテリBへの給電を継続してもよい。なお、エラー報知の際には、給電システムを修理すべき旨をユーザに報知するのが好ましい。
【0055】
また、本実施形態では、複数の絶縁スイッチング素子31,32,33,34それぞれの短絡故障を個別に検出可能であるため、故障した絶縁スイッチング素子31,32,33,34の数に応じて、異常処理の内容を異ならせても良い。例えば、第1絶縁スイッチング素子31,33及び第2絶縁スイッチング素子32,34のうち、いずれか一方側だけが故障したのであれば、エラー報知処理だけを行い、第1及び第2絶縁スイッチング素子の双方が故障した場合には、エラー報知処理とともに給電停止処理を行うことができる。
【0056】
前記監視部42は、絶縁スイッチング素子31,32,33,34の監視を常時行っても良いが、本実施形態の監視部42は、給電の間、常に監視を行うのではなく、給電開始時及びその他給電中の必要なときに故障監視モードとなって、絶縁スイッチング素子31,32,33,34の監視を行う。
【0057】
故障監視モードになると、スイッチング制御部41は、故障監視モード以外の通常モードのときよりも、スイッチング周波数を低くする。故障監視モードにおいて、スイッチング周波数を低くすると、絶縁スイッチング素子がオフとなっている時間が長くなり、絶縁スイッチング素子の両端電位差が大きくなる。この結果、故障の監視が容易となる。
【0058】
ここで、スイッチング周波数は、コンデンサ52の容量を小さくするという観点からは、高く設定されているのが好ましい。かかる観点から、図7(a)に示すように、通常モードにおけるスイッチング周波数を例えば100kHzとすると、絶縁スイッチング素子のオフ時間は5μsecとなる(オフ時間とオン時間が等しい場合)。
【0059】
この5μsecという比較的短い時間では、素子両端間の電位差が大きくなるための十分な時間とならず、絶縁スイッチング素子のオフ状態の素子両端間電圧差が小さいために、故障精度が低下するおそれがある。また、比較的安価なマイクロコンピュータで監視部42を構成した場合、監視対象の信号が高速であると、監視部42が処理しきれずに、やはり監視制度が低下するおそれがある。
【0060】
そこで、本実施形態では、通常モードでは、スイッチング周波数を比較的高く維持しつつも、監視部42が故障監視モードになると、スイッチング制御部41は、スイッチング周波数を、例えば、1/2の50kHzに低下させて、絶縁スイッチング素子のオフ時間を長くする。この場合、絶縁スイッチング素子のオフ時間は10μsecとなって、長くなり、素子両端間の電位差を大きくすることができる。しかも、監視対象の信号が低速化するため、監視部42を比較的安価なマイクロコンピュータで構成することも可能となる。
【0061】
《監視手段の構成・動作:第2例》
図8は、監視手段を構成する測定回路44の他の例を示している。図8の測定回路44では、各絶縁スイッチング素子31,32,33,34における素子両端の電位差分の電圧で充電される検出用コンデンサ44eが設けられている。
【0062】
絶縁スイッチング素子31,32,33,34の各端における電圧Va,Vb,Vc,Vd,Ve,Vfが比較的大きくても、素子両端の電位差はさほど大きくなく、監視部42に入力可能な程度の大きさである。
そこで、図8の測定回路44では、検出用コンデンサ4eを、各絶縁スイッチング素子31,32,33,34における素子両端の電位差分の電圧で充電することで、図5に示す測定回路44における分圧回路部44aを省略している。
【0063】
また、図8の測定回路44では、検出用コンデンサ44eの前段側に、フォトカプラを用いることで絶縁を確保した選択部44f,44fが設けられている。一方の選択部44fには、高圧側のVa,Vb,Vcの3つの電圧が入力され、他方の選択部44fには、低圧側のVd,Ve,Vfの3つの電圧が入力される。
【0064】
高圧側の第1絶縁スイッチング素子31の両端の電位差Va−Vbによって、検出用コンデンサ44eを充電させる場合、一方の選択部44fは、電圧Vaが検出用コンデンサ44eの高圧側に、電圧Vbが検出用コンデンサ44eの低圧側に生じるように、選択部44fの内部スイッチの切替を行う。具体的には、図8において、一方の選択部44fの1段目及び3段目の内部スイッチをオンとし、他の内部スイッチをオフとする。
検出用コンデンサ44eに蓄積された電圧は、スイッチ44gを介して、監視部42に与えられる。スイッチ44gは、検出用コンデンサ44eへの充電中は、オフとなって、検出用コンデンサ44eと監視部42とを切り離しているが、検出用コンデンサ44eへの充電が終了して、絶縁回路30と検出用コンデンサ44eとが選択部44fによって切り離されると、スイッチ44gはオンとなって、検出用コンデンサ44eにおける電圧を、監視部42へ与える。
【0065】
また、高圧側の第2絶縁スイッチング素子32の両端の電位差Vb−Vcによって、検出用コンデンサ44eを充電させる場合、一方の選択部44fは、電圧Vbが検出用コンデンサ44eの高圧側に、電圧Vcが検出用コンデンサ44eの低圧側に生じるように、選択部44fの内部スイッチの切替を行う。具体的には、図8において、一方の選択部44fの2段目及び4段目の内部スイッチをオンとし、他の内部スイッチをオフとする。検出用コンデンサ44eに蓄積された電圧は、上記と同様に、スイッチ44gを介して、監視部42に与えられる。
【0066】
さらに、低圧側の第1絶縁スイッチング素子33の両端の電位差Vd−Veによって、検出用コンデンサ44eを充電させる場合、他方の選択部44fは、電圧Vdが検出用コンデンサ44eの高圧側に、電圧Veが検出用コンデンサ44eの低圧側に生じるように、選択部44fの内部スイッチの切替を行い、低圧側の第2絶縁スイッチング素子33の両端の電位差Ve−Vfによって、検出用コンデンサ44eを充電させる場合、一方の選択部44fは、電圧Veが検出用コンデンサ44eの高圧側に、電圧Vfが検出用コンデンサ44eの低圧側に生じるように、選択部44fの内部スイッチの切替を行う。
これらの場合も、検出用コンデンサ44eに蓄積された電圧は、上記と同様に、スイッチ44gを介して、監視部42に与えられる。
【0067】
ここで、前記選択部44fは、フォトカプラを介して、各電圧Va,Vb,Vc,Vd,Ve,Vfを、検出用コンデンサ44e側へ与える。フォトカプラが介在していることで、検出用コンデンサ44eに蓄電が行えるようにしても、絶縁回路30と検出用コンデンサ44eとの間の絶縁が確保される。
【0068】
なお、上記のような選択部44f及びスイッチ44gの制御は、監視部42から与えられる指令信号に従って行われる。
選択部44f及びスイッチ44gの制御すなわち故障監視を行う際には、第1例と同様に、スイッチング周波数を低くすることにより、故障の監視を容易なものとすることができる。但し、このスイッチング周波数を低くする、という考え方とは異なる制御手法で故障監視を行おうとするのが、以下の第3例である。
【0069】
《監視手段の構成・動作:第3例》
第3例としての監視手段の回路構成は、例えば第2例の図8と同一である。前述のように、絶縁スイッチング素子31〜34の故障が発生した場合は、図4(b)に示すように、オフの際の両端電位差に変動が無くなるため、電圧変動の有無を測定することで、故障を検知することができる。
【0070】
図9は、通常モードにおける、前段の第1絶縁スイッチング素子31,33(前段SWと表記)と、後段の第2絶縁スイッチング素子32,34(後段SWと表記)との、オン/オフのタイムチャートである。この図は、ここまでは省略したデッドタイムも表記したものである。デッドタイムとは、前段の第1絶縁スイッチング素子31,33及び後段の第2絶縁スイッチング素子32,34が共にオフである時間である。ここで、数値例を挙げると、1周期は10μ秒、オン時間4.2μ秒、デッドタイムは1周期内に2回有り、各0.8μ秒である。デッドタイムを含めたオフ時間は、5.8(=4.2+0.8×2)μ秒である。
【0071】
例えば、前段の第1絶縁スイッチング素子31,33がオンからオフになった後に、当該素子のそれぞれの両端での電位差V及びVを測定するにあたって、測定開始できる状態となるまでを故障監視の第1ステップとすると、この第1ステップに、選択部44fを構成するフォトカプラのターンオン時間(例えば0.3m秒)、検出用コンデンサ44eのチャージ時間(0.2m秒、但し容量に依存する。)、及び、当該フォトカプラのターンオフ時間(例えば0.1m秒)を要する。通常モードの1周期が前述の例えば10μ秒であることを考慮すれば、第1ステップに要する時間は明らかに長い。
【0072】
また監視部42にて実際に電圧検知するには、故障監視の第2ステップとして、スイッチ44gの制御や、監視部42におけるA/D変換処理時間等の時間を要する。従って、電位差VやVを測定するには、上記第1ステップの時間と、第2ステップの時間とが必要である、ということになる。しかしながら、ここで、第1ステップの時間さえ経過すれば、第2ステップの時間を要する各動作は、第1絶縁スイッチング素子31,33及び第2絶縁スイッチング素子32,34を通常モードと同様にオン/オフ動作させながら、これと並行して行うことが可能である。
【0073】
そこで、少なくとも第1ステップの時間を確保すべく、第1絶縁スイッチング素子31,33がターンオフした瞬間から、第2絶縁スイッチング素子32,34がターンオンを開始するまで、第1絶縁スイッチング素子31,33及び第2絶縁スイッチング素子32,34共にオフの時間を、通常モード時よりも長く設定する必要がある。
【0074】
図10は、故障監視モードにおける、前段の第1絶縁スイッチング素子31,33(以下、前段SWという。)と、後段の第2絶縁スイッチング素子32,34(以下、後段SWという。)と、選択部44fと、スイッチ44gと、監視部42によるA/D変換とのオン/オフのタイミングを示すタイムチャートである。故障監視モードは、前半の前段SWの故障監視と、後半の後段SWの故障監視とに分けられる。
【0075】
(前段SW/第1ステップ)
図において、まず、前段SWは、通常モードと同じオン時間の後、時刻t1にターンオフする。この時刻t1以後の時刻t2に、選択部44fのフォトカプラを、オフからオンに動作させる(正確には動作開始させる。)。前段SWは、通常モードには無い、長いオフ時間に入る。また、このとき、後段SWもオフのままの状態が続く。選択部44fは、時刻t3でオフに転じる。選択部44fがオンになっている時間(t2〜t3)に、検出用コンデンサ44eはチャージされている。すなわち、検出用コンデンサ44eに、前段SWである第1絶縁スイッチング素子31,33の両端の電位差に基づく電荷が蓄積され、監視部42による電圧検知が可能な状態となる。
【0076】
(前段SW/第2ステップ)
ここで、絶縁回路30では、一旦、前段SW及び後段SWが交互にオン/オフ制御される状態に戻る。一方、時刻t4からt5まで、スイッチ44gがオンとなり、その間にコンデンサ44dがチャージされる。次に、時刻t6からt7までの間に、監視部42はコンデンサ44dにチャージされた電圧のA/D変換を実行する。そして、時刻t7には、前段SWである第1絶縁スイッチング素子31,33の両端の電位差に基づく電圧が、監視部42にデジタル値で取り込まれる。
【0077】
なお、上記のように、スイッチ44gをオンにしてコンデンサ44dをチャージし、さらに、A/D変換を行う時間が必要であるため、前段SWの故障監視に引き続いて直ちに後段SWの故障監視を実行することは困難である。そこで、前段SWの故障監視開始後、A/D変換が終わるまでは、後段SWの故障監視を開始せず、待機する。これにより、前段SWの故障監視が確実に終わってから後段SWの故障監視を開始することができる。
【0078】
(後段SW/第1ステップ)
次に、後段SWの故障監視について説明する。後段SWは、例えば、通常モードと同じオン時間の後、時刻t8にターンオフする。この時刻t8以後の時刻t9に、選択部44fのフォトカプラを、オフからオンに動作させる(正確には動作開始させる。)。後段SWは、通常モードには無い、長いオフ時間に入る。また、このとき、前段SWもオフのままの状態が続く。選択部44fは、時刻t10でオフに転じる。選択部44fがオンになっている時間(t9〜t10)に、検出用コンデンサ44eはチャージされている。すなわち、検出用コンデンサ44eに、後段SWである第2絶縁スイッチング素子32,34の両端の電位差に基づく電荷が蓄積され、監視部42による電圧検知が可能な状態となる。
【0079】
(後段SW/第2ステップ)
ここで、絶縁回路30では、一旦、前段SW及び後段SWが交互にオン/オフ制御される状態に戻る。一方、時刻t11からt12まで、スイッチ44gがオンとなり、その間にコンデンサ44dがチャージされる。次に、時刻t13からt14までの間に、監視部42はコンデンサ44dにチャージされた電圧のA/D変換を実行する。そして、時刻t14には、後段SWである第2絶縁スイッチング素子32,34の両端の電位差に基づく電圧が、監視部42にデジタル値で取り込まれる。
【0080】
以上のような、前段SW及び後段SWの故障監視モードの動作において、選択部44fのオンに対応して前段SW/後段SWのオフ時間は通常モード時より延長され、長くなる。このとき延長に必要な最低限のオフ時間は、選択部44fのオンによって検出用コンデンサ44eに必要な電荷を蓄え、選択部44fがオフに戻るまでの時間である。但し、上記の第2ステップは、通常モードと同様に前段SW及び後段SWをオン/オフ制御しながら、同時進行で行われるので、オフ時間の延長を、概ね第1ステップ相当の時間に抑制することができる。
【0081】
一方、前段SW又は後段SWがオンのときは、故障監視を行わない。従って、オン時間を延長する必要はなく、前段SW及び後段SWのオン時間は、モードに関わらず一定である。
【0082】
このように、上記第3例では、前段SW及び後段SWに関するオン時間は変更せず、オフ時間のみを延長することで故障監視を実行する。かかる制御によれば、故障監視にあたってスイッチング周波数を低くするよりも、オン時間を延長しない分だけ、無駄な時間を節約することができる。すなわち、オン時間には故障監視を行わないので、故障監視モードでオン時間を延長することには意義がなく、故障監視のために商用電源から電力供給される時間が長くなる一因である。そこで、上記第3例のように、オン時間は変更せず、オフ時間のみを延長することで故障監視のために商用電源から電力が供給される時間を、最小限に抑制することができる。その結果、バッテリB(図1)の充電時間を短縮することができる。
【0083】
なお、故障監視の順序は、上記とは逆に、後段SWを先に行って、続いて前段SWについて行うようにしてもよい。
また、そもそも前段SWと後段SWについて故障監視を、時間をずらして順番に行うのは図8の回路構成において検出用コンデンサ44eや、コンデンサ44dが2個しかないことに基づいている。仮に4つの電圧を同時に処理できる構成(例えば図5)であれば、順番に行う必要は無い。但し、図8の構成は、その分、回路構成が簡素であるという利点がある。
【0084】
《その他》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0085】
例えば、絶縁スイッチング素子の短絡故障の監視は、絶縁スイッチング素子の両端の電位差を測定する他、絶縁スイッチング素子に流れる電流を測定することで行っても良い。絶縁スイッチング素子が正常であれば、絶縁スイッチング素子がオフのときは、絶縁スイッチング素子に電流は流れないが、短絡故障すると絶縁スイッチング素子をオフとする制御信号が与えられても、絶縁スイッチング素子に電流が流れてしまうので、この電流を検出することで短絡故障を検出することが可能である。
【0086】
なお、上記第3例のようにオフ時間のみを延長することで故障監視を実行する制御は、第1例の回路構成(図5)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:AC/DCコンバータ、2a,2b,3a,3b:リレー、10:整流回路、11,12,13,14:ダイオード、20:昇圧部、21:インダクタ、22:ダイオード、23:昇圧部スイッチング素子、30:絶縁回路、31,33:第1絶縁スイッチング素子、32,34:第2絶縁スイッチング素子、40:制御部、41:スイッチング制御部、42:監視部、43:異常処理部、44:測定回路、44a:分圧抵抗部、44b:差動増幅器、44c:アナログスイッチ、44d:平滑コンデンサ、44f:選択部、44e:検出用コンデンサ、44g:スイッチ、P:交流電源、B:バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側と出力側とを絶縁しつつ前記入力側から前記出力側へ電力を供給する絶縁回路装置であって、
入力電力が充電されるコンデンサと、
前記コンデンサよりも前記入力側において、前記コンデンサの高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第1絶縁スイッチング素子と、
前記コンデンサよりも前記出力側において、前記コンデンサの高圧側端及び低圧側端それぞれに接続された対の第2絶縁スイッチング素子と、
前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とをオン/オフすることで、前記入力側と前記出力側とを絶縁しつつ前記入力側から前記出力側へ電力を供給する制御を行うスイッチング制御手段と、
前記対の第1絶縁スイッチング素子及び前記対の第2絶縁スイッチング素子のうちの少なくともいずれか一つの絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視する監視手段と、
を備えていることを特徴とする絶縁回路装置。
【請求項2】
前記監視手段は、前記対の第1絶縁スイッチング素子及び前記対の第2絶縁スイッチング素子のうちの少なくともいずれか一つの絶縁スイッチング素子の素子両端における電位差を測定し、前記絶縁スイッチング素子の前記電位差に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出する
請求項1記載の絶縁回路装置。
【請求項3】
前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子の素子両端それぞれの電圧を分圧する分圧回路部を備え、分圧された前記絶縁スイッチング素子の素子両端それぞれの電圧の差に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出する
請求項2記載の絶縁回路装置。
【請求項4】
前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子における素子両端の前記電位差分の電圧で充電される検出用コンデンサを備え、当該検出用コンデンサの電圧に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出する
請求項2記載の絶縁回路装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御手段は、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視する際には、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とを交互にオン/オフするスイッチングの周波数を低くする
請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁回路装置。
【請求項6】
前記スイッチング制御手段は、前記各絶縁スイッチング素子の短絡故障を監視するモードでは、通常モードとの対比において、前記対の第1絶縁スイッチング素子と前記対の第2絶縁スイッチング素子とを共にオフにするときのオフ時間を延長する
請求項1又は2に記載の絶縁回路装置。
【請求項7】
前記監視手段は、前記絶縁スイッチング素子における素子両端の前記電位差分の電圧で充電される検出用コンデンサを備え、当該検出用コンデンサの電圧に基づいて、前記絶縁スイッチング素子の短絡故障を検出するものであり、
前記スイッチング制御手段が延長する前記オフ時間は、前記検出用コンデンサの充電開始から終了までに要する時間である請求項6記載の絶縁回路装置。
【請求項8】
前記監視手段は、短絡故障を監視するモードの際、前記対の第1絶縁スイッチング素子及び前記対の第2絶縁スイッチング素子のうち一方の監視が完了した後に、他方の監視を実行する請求項6記載の絶縁回路装置。
【請求項9】
AC電力を整流して直流電力を出力する整流部を備え、整流された前記直流電力が絶縁回路装置を介して出力されるAC/DCコンバータであって、
前記絶縁回路装置として、請求項1に記載の絶縁回路装置を用いたことを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項10】
請求項9記載のAC/DCコンバータを用いて交流電力を直流電力に変換して給電を行う給電システムであって、
前記監視手段によって前記絶縁スイッチング素子の短絡故障が検出された場合に、給電システムの異常をユーザに知らせるエラーの報知又は給電停止を行う異常処理手段を備えていることを特徴とする給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−103760(P2011−103760A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122977(P2010−122977)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】