説明

絶縁層形成用材料およびこれを用いた電子部品の製造方法。

【課題】アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法によるハイアスペクト比でのパターン加工が可能であり、かつ、電気的・熱機械的な信頼性に優れる絶縁層形成用材料を提供する。
【解決手段】(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂で、1分子中にカルボキシル基が1個の樹脂、(B)重合促進剤および(C)数平均粒子径1nm以上50nm以下の無機粒子を含む絶縁層形成用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子が有機物質中に分散した絶縁層形成用のペーストおよび未硬化シート、およびこれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化、高性能化に伴い、電子部品の絶縁材料として、ハイアスペクト比でのパターン加工が可能であり、かつ電子部品の電気的・熱機械的な信頼性を高める効果を有する材料が要求されている。
【0003】
アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法によるハイアスペクト比でのパターン加工を実現する材料として、感光性のエポキシアクリレート樹脂にカルボキシル基を付与した構造の樹脂が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この材料を絶縁材料として用いて電子部品を製造した場合、導体である銅配線との線膨張率の違いにより、PCT(プレッシャークッカーテスト)などの温度サイクル試験において、銅配線や絶縁材料に剥がれやクラックが生じ、熱機械的な信頼性が得られない問題があった。
【0004】
これに対し、無機粒子を樹脂などの有機物質中へ分散させて感光性樹脂組成物を作製し、パターン加工された硬化物を作製し、永久レジストとして用いる技術が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、フォトリソグラフィー法によるパターン加工において、照射光が樹脂中に分散した無機粒子により散乱されてパターン太りが生じることや、パターンの側面にクラックが生じることがあり、明瞭かつ微細なパターンを形成することが困難な場合があった。このため、絶縁層として狭ピッチかつハイアスペクト比のパターン加工を行うと、隣り合う凸部が近接して、間の凹部が狭くなることや、未硬化の材料の残渣が生じることがあった。
【0005】
一方、数平均粒子径が50nm以下の硫酸バリウム粒子を分散させて感光性樹脂組成物を作製し、パターン加工して、アサーマル性を発現する光配線を得るという技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、フォトリソグラフィー法によるパターン加工において、ハイアスペクト比の微細加工を行うと、パターンの剥離やクラックが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−90887号公報
【特許文献2】特開2007−156404号公報
【特許文献3】特開2008−39863号公報
【特許文献4】国際公開WO08/056639号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の絶縁層形成用材料を用いてハイアスペクト比でのパターン加工を行うと、導体配線と絶縁材料との線膨張率の違いにより導体配線や絶縁材料に剥がれやクラックが生じる問題があった。また、導体配線との線膨張率の違いを小さくするため、無機粒子を含む絶縁層形成用材料は、ハイアスペクト比でのパターン加工において、パターン剥がれやクラックが生じ、明瞭なパターン形成が困難な場合があった。
【0008】
本発明は、アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法によるハイアスペクト比でのパターン加工が可能であり、かつ、電気的・熱機械的な信頼性に優れる絶縁層形成用材料である。また、これを用いた電子部品の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂で、1分子中にカルボキシル基が1個の樹脂、(B)重合促進剤および(C)数平均粒子径1nm以上50nm以下の無機粒子を含む絶縁層形成用材料である。
【0010】
また、本発明は、上記絶縁層形成用材料を基板上に製膜して絶縁層を形成した後、露光、現像して絶縁層に凹部を形成して、該凹部に導体配線を形成する電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の絶縁層形成用材料は、パターン剥がれやクラックを生じず、ハイアスペクト比での微細加工が可能である。さらに、硬化処理によって、線膨張率が金属の線膨張率に近く、電気的・熱機械的な信頼性に優れる絶縁層が得られる。この特徴により、信頼性が高いインダクタなどの電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】銅櫛歯電極の上面図
【図2】本発明のスパイラルインダクタの上面図
【図3】本発明のスパイラルインダクタの製造方法を示した断面図
【図4】ビルドアップ多層配線基板からなる電子部品の断面図
【図5】ビルドアップ多層配線基板の絶縁層(最上層)の上面図
【図6】ビルドアップ多層配線基板の絶縁層(中央層)の上面図
【図7】ビルドアップ多層配線基板の絶縁層(最下層)の上面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の絶縁層形成用材料は、(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂で、1分子中にカルボキシル基が1個の樹脂、(B)重合促進剤および(C)数平均粒子径1nm以上50nm以下の無機粒子を含む材料である。
【0014】
本発明の絶縁層形成用材料は前記(A)〜(C)の成分が含まれていればその形状に制限はなく、例えばペースト状であっても未硬化シート状であってもよい。
【0015】
本発明の材料は、ハイアスペクト比での微細加工が可能であり、硬化後の線膨張率が金属の線膨張率に近いものである。そのため、電子部品の絶縁層を形成するのに非常に適した材料である。本発明におけるハイアスペクト比での微細加工とは、加工されたパターンの高さが幅に比べて大きい形状のもの(アスペクト比が1より大きいもの)のことをいう。
【0016】
狭ピッチかつハイアスペクト比の絶縁層を形成できると、絶縁層の凹部にハイアスペクト比の導体配線を形成できる。回路基板の実装面積を小さくして高密度化するためには、正方形の断面を持った導体配線では、その断面積を小さくする必要があるが、導体配線の断面積を小さくすると配線抵抗が大きくなり、電気信号の遅延やクロストークの問題、あるいは電力の損失やジュール熱の発生などの問題が生じる。これに対し、ハイアスペクト比の導体配線を形成できると、断面積を小さくすることなく底面積を小さくすることができるので、上記問題を発生させることなく電子部品の実装面積を小さくできるメリットがある。また、実装面積が小さくなると電子部品の中心から端までの距離が短くなるため、電子部品端部での熱変動による膨張の絶対値が小さくなり、よって発生応力が小さくなり、電子部品としての信頼性が高くなるというメリットがある。
【0017】
例えば、電子部品としてインダクタを例に挙げると、インダクタは、基板上に形成した絶縁層をパターン加工によりスパイラル状にとり除き、取り除いた部分を銅などの金属などの導体材料で埋めることで作製できる。このようなインダクタを製造する場合に、あらかじめ基板上に薄い導体層(シード層)を形成しておき、その上に本発明の材料を用いて絶縁層を形成し、パターン加工を行うことで絶縁層に凹部を形成するようにすると、電解めっきで絶縁層を取り除いた凹部に容易に導体材料からなるスパイラル回路を形成することができる。そして、本発明の材料を用いれば、絶縁層のパターン加工のアスペクト比を大きくすることができるのであるから、絶縁層の厚さ方向に深く導体材料形成領域を形成することにより、スパイラルの面内方向の広がりを大きくすることなくスパイラル回路の断面積を大きくすることができる。その結果、スパイラル回路の配線抵抗を小さくでき、インダクタのQ値を大きくできる。
【0018】
本発明の絶縁層形成用材料において(A)の樹脂はマトリックス樹脂成分であり、光重合可能な官能基とカルボキシル基を有するため、フォトリソグラフィー法によるアルカリ現像型のパターン加工が可能である。マトリックス樹脂にカルボキシル基が存在すると、未露光部はアルカリ現像液に溶解するので現像が可能となる。しかし、マトリックス樹脂中のカルボキシル基が多すぎると、逆に露光部にも現像液が浸潤しやすくなりパターン剥がれや接着性不良、クラックといった問題が生じる。特に、マトリックス樹脂が無機粒子を含有する場合はこのような問題がより発生しやすいので、良好な現像性を実現するためには、マトリックス樹脂中のカルボキシル基の量を最適化する必要がある。本発明の(A)の樹脂はビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂1分子中の2つの水酸基のうちの1つにカルボキシル基が付与され、もう1つの水酸基を残しているため、アルカリ現像液による現像が可能であり、かつ、パターン剥がれや接着性不良、クラックを防ぐことができる。したがって、ハイアスペクト比での良好なパターン加工が可能となる。
【0019】
エポキシアクリレート樹脂との反応に用いられる二塩基酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、4−メチル無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒド無水ロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸などを挙げることができる。
【0020】
(A)の樹脂の中でも、特に、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
上記一般式(1)中、RおよびRは水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される1価の基を示す。
【0023】
【化2】

【0024】
上記一般式(2)〜(4)中、R〜Rはメチル基を示し、a〜cはそれぞれ0〜2の整数である。
【0025】
前記一般式(1)において、光重合可能な官能基は、R、Rが水素原子の場合はアクリレート基であり、R、Rがメチル基の場合はメタクリレート基である。アクリレート基またはメタクリレート基は不飽和結合を有し、光照射や加熱によりラジカル重合をさせることが可能である。光によりラジカル重合をさせる際に、フォトマスクを介して光を照射するフォトリソグラフィー法を適用して、パターンを形成することができる。R、Rが水素原子であるアクリレート基の方が、重合性がより良好となり好ましい。
【0026】
(A)の樹脂の製造方法は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、アクリル酸またはメタクリル酸1モルをエステル化反応させ、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂を得る。次いで、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させることにより、本発明の(A)の樹脂を製造することができる。ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させることにより得られる反応生成物中の(A)の樹脂の含有量は、エポキシアクリレート樹脂と二塩基酸無水物の比率によって変えることができる。例えば、エポキシアクリレート樹脂の水酸基1モルに対して二塩基酸無水物0.5モルを反応させる場合、エポキシアクリレート樹脂の水酸基と二塩基酸無水物との反応が一定の確率で起こるとすると、すべての二塩基酸無水物が反応し終えた時点での反応生成物中の(A)の樹脂の存在割合は、50重量%である。反応生成物中の残りの生成物は、1分子中にカルボキシル基2個を有するエポキシアクリレート樹脂とカルボキシル基を有しないエポキシアクリレート樹脂である。得られた反応生成物をそのままマトリックス樹脂として用いても、(A)の樹脂を分子排斥クロマトグラフィーなどを用いて単離して用いても良い。
【0027】
特に、上記一般式(1)中のRおよびRが水素原子であり、Rが上記一般式(3)で表される樹脂を用いると、フォトリソグラフィー法によるパターン加工時に、残渣の発生が少なく、良好なパターン形状を実現できるので好ましい。
【0028】
本発明の絶縁層形成用材料は、硬化物中のマトリックスを形成する(A)の樹脂を含有するが、その他にもマトリックスを形成する樹脂を含有してもよい。このとき用いられる樹脂として、ポリアミック酸、ビニル樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シロキサン樹脂などの、重合性基を有する熱硬化型あるいはUV硬化型の樹脂が挙げられる。また、アラミド樹脂、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリイミドなどの、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
プロセス中で耐熱性などが要求される用途では、上記樹脂の中でも、熱硬化型樹脂やUV硬化型樹脂など重合性基を有する樹脂が好ましい。また、絶縁層形成用材料から得られる硬化物を光透過性が要求される用途に用いる場合は、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シロキサン樹脂などが好適に用いられる。
【0030】
絶縁層形成用材料中の(A)の樹脂の好ましい含有量は、マトリックス樹脂成分の20重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。(A)の樹脂がマトリックス樹脂成分の20重量%以上であるとアルカリ現像型のフォトリソグラフィー法によるパターン加工において、現像時の未露光部の溶解性が向上し、かつ、露光部のパターン剥がれやクラックの発生が低減するため、ハイアスペクト比での良好なパターン加工が可能となる。(A)の樹脂がマトリックス樹脂成分の40重量%以上であるとこれらの効果はより大きくなる。
【0031】
(A)の樹脂を上記の方法で製造し、得られた反応生成物をマトリックス樹脂としてそのまま用いる場合は、エポキシアクリレート樹脂の水酸基1モルに対して、二塩基酸無水物を0.1モル以上0.9モル未満の比率で反応させると、(A)の樹脂が20重量%以上含まれる反応生成物を得ることができ、上記の理由により、好ましい。さらに、エポキシアクリレート樹脂の水酸基1モルに対して、二塩基酸無水物を0.3モル以上0.7モル未満の比率で反応させると、(A)の樹脂が40重量%以上含まれる反応生成物を得ることができるので、この効果がより大きくなり、好ましい。
【0032】
本発明の絶縁層形成用材料において、(B)重合促進剤は光照射によりラジカルを発生させ、材料中の樹脂や分散剤の重合を促進させる働きがあり、フォトリソグラフィー法によるパターン加工を可能にしている。特に、下記一般式(7)で表される重合促進剤Aを用いてフォトリソグラフィー法によるパターン加工を行うとパターン太りが抑制されるので、好ましい。パターン太りが抑制されることにより、パターンの表面が平坦になりクラックの発生が抑えられ、また、パターン間の現像残渣が低減する。また、狭ピッチかつハイアスペクト比のパターン加工が可能となり、低抵抗でハイアスペクト比の導体配線が実現できる。
【0033】
【化3】

【0034】
上記一般式(7)中、RおよびRは下記一般式(8)〜(11)のいずれかで表される基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R〜R11は水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0035】
【化4】

【0036】
一般式(7)で表される重合促進剤を用いるとパターン太りが低減する理由は定かではないが、絶縁層形成用材料中を透過する光が無機粒子によりレイリー散乱され、未露光部へと散乱光が漏出することによりラジカル重合領域が露光部からはみ出すことが考えられる。レイリー散乱理論によると散乱の大きさは波長が長い光ほど小さくなる。前記一般式(7)で表される重合促進剤はラジカルを発生させる光の波長が400nmと比較的長波長であるためレイリー散乱による影響が少なく、よって、パターン太りが低減すると考えられる。
【0037】
重合促進剤としては、前記一般式(7)におけるRが一般式(8)で表される基であり、Rが一般式(11)で表される基であり、R〜R11がメチル基であるものが、よりパターン太りが抑えられるので好ましい。一般式(7)で表される重合促進剤の具体例としては、チバ・ジャパン(株)製の“DAROCUR TPO”(一般式(7)におけるRおよびRが一般式(8)で表されるものであり、R〜R11がメチル基である。)、“IRGACURE 819”(一般式(7)におけるRが一般式(8)で表されるものであり、Rが一般式(11)で表されるものであり、R〜R11がメチル基である。)が挙げられる。
【0038】
樹脂の重合を促進するために、光照射によりラジカルを発生させる重合促進剤のほかに加熱によりラジカルを発生する重合促進剤を含有しても良い。光照射によりラジカルを発生させる重合促進剤と加熱によりラジカルを発生する過酸化物などの重合促進剤を併せて使用すると、フォトリソグラフィー法によるパターン加工が可能で、その後の加熱によりさらに硬化を進行できる。また、カチオン、アニオンなどの活性種を発生する重合促進剤を含有してもよく、用途に応じて使い分けることが可能である。
【0039】
本発明の絶縁層形成用材料は、(C)数平均粒子径1nm以上50nm以下の無機粒子を含有する。絶縁層形成用材料中の無機粒子は、凝集が完全にほぐれた1次粒子の状態にあるものと、複数個の1次粒子が凝集した状態にあるものが存在する。ここで、無機粒子の粒子径とは、凝集していない1次粒子はその粒子の粒子径であり、1次粒子が凝集したものはその凝集体の粒子径である。絶縁層形成用材料中の無機粒子の数平均粒子径を測定する方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)により直接粒子を観察し、粒子径の数平均を計算する方法が挙げられる。
【0040】
本発明で用いる無機粒子は特に限定されないが、Si、Al、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Ag、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどの酸化物、硫酸塩、炭酸塩、フッ化物などの単独塩もしくは、複塩のMgAlなどが挙げられる。
【0041】
マトリックス樹脂と無機粒子の屈折率差を小さくするとハイアスペクト比のパターン加工に好適である。本発明の材料のようにマトリックス樹脂中に無機粒子が分散した材料に光が入射すると、分散無機粒子によるレイリー散乱が生じる。マトリックス樹脂と無機粒子の屈折率が近いと、入射した光のレイリー散乱が小さくなるため、照射した光が散乱されることなく、より膜厚方向の深くまで入り、ハイアスペクト比のパターン加工が容易となる。(A)の樹脂の屈折率は一般に1.55〜1.65の範囲であるので、この範囲の屈折率を持つ無機粒子を選択することが好ましい。例えば、屈折率1.6の硫酸バリウム粒子が好適に使用できる。
【0042】
一方、上記レイリー散乱は分散無機粒子の粒子径の3乗に比例することから、その散乱を抑制し、ハイアスペクト比での良好なパターン加工を行うためには、無機粒子は小さいものを用いる必要がある。絶縁層形成用材料中の無機粒子の数平均粒子径が50nm以下であると、露光時に照射光のレイリー散乱が抑制されるため、ハイアスペクト比の加工が容易となり、露光条件や現像条件の加工マージンが広がる。また、絶縁層形成用材料および硬化物の各形態において、均質性が向上し、誘電率などの電気物性のムラが低減する。さらに、無機粒子の数平均粒子径が30nm以下であると、露光時の照射光が、ほとんど散乱されずに膜厚方向のより深いところまで届き、よりアスペクト比の大きなパターン加工が可能となる。一方、無機粒子の数平均粒子径が1nm以上であると、粒子の体積に対する比表面積が小さくなるため、粒子の分散性は良好となる。無機粒子の数平均粒子径が5nm以上であると、この効果はさらに大きくなる。
【0043】
本発明では、絶縁層形成用材料の無機粒子の含有量は、固形成分に対して、30重量%以上80重量%以下であることが好ましい。絶縁層形成用材料の固形成分に対する無機粒子の含有量が30重量%以上であると、絶縁層形成用材料から得られる硬化物の線膨張率が低減する。絶縁層形成用材料の固形成分に対する無機粒子の含有量は、より好ましくは50重量%以上である。絶縁層形成用材料の固形成分に対する無機粒子の含有量が80重量%以下であると、耐クラック性や基板との接着性が向上し、凝集破壊に対する耐性も高くなる。また、フォトリソグラフィー法によるパターン加工を行った場合に、現像時の未露光部の残渣が低減する。絶縁層形成用材料中の固形成分に対する無機粒子の含有量は、より好ましくは70重量%以下である。
【0044】
本発明の絶縁層形成用材料は、無機粒子を凝集させることなく分散させるために分散剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の絶縁層形成用材料はシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を含有することにより、フォトリソグラフィー法によるパターン加工において露光部のパターンの細りや剥がれを低減し、クラックの発生を抑制できるため、明瞭なパターン形状を実現できる。また、未露光部の残渣をより低減することもできる。一般に、シランカップリング剤には無機材料と有機材料との接着性を向上させる効果があることが知られている。本発明においても、絶縁層形成用材料中の樹脂成分と無機成分との接着性や、組成物中の樹脂成分とシリコンウエハーなどの無機基板との接着性を向上させ、フォトリソグラフィー法によるパターン加工において露光部のパターンの細りや剥がれを低減し、クラックの発生を抑制するという効果が期待できる。一方、フォトリソグラフィー法によるパターン加工における未露光部の残渣を低減する効果に関しては、以下のような理由が考えられる。未露光部に現像液が接触すると、樹脂や分散剤などが溶出し、また、分散剤に捕捉された無機粒子も溶出する。現像時に分散剤が無機粒子から脱離すると、表面がむき出しになった無機粒子が互いに凝集し、その近傍の樹脂なども凝着し、現像残渣となる。しかし、シランカップリング剤が存在すると、シランカップリング剤が無機成分である無機粒子と有機成分である分散剤や樹脂との結合力をより強固にするため、現像時の無機粒子の分散性が保たれ、未露光部の絶縁層が速やかに溶出し、残渣が生じにくくなる。
【0046】
シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが好ましい。また、絶縁層形成用材料のシランカップリング剤の含有量は、固形成分に対して、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。絶縁層形成用材料の固形成分に対するシランカップリング剤の含有量が0.1重量%以上であると、上記シランカップリング剤による十分な効果が得られる。また、上記列挙したものを始め一般のシランカップリング剤は屈折率が1.45以下であり、無機粒子との屈折率差が大きい場合が多い。したがって、絶縁層形成用材料中の固形成分に対するシランカップリング剤の含有量が10重量%以下であると、レイリー散乱が低減し光透過性を向上させることができ好ましい。
【0047】
本発明の絶縁層形成用材料は有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0048】
次に、本発明の絶縁層形成用材料のペーストおよび未硬化シートの2つの形態に関して、その製造方法を詳細に説明する。ただし、未硬化シートはペーストを用いて製造することができるため、まず、ペーストの製造方法について説明する。
【0049】
絶縁層形成用材料のペーストを製造する方法としては、例えば、無機粒子を有機溶媒中で分散装置にて分散処理し、次いで、得られた無機粒子の分散液と樹脂などを混合する方法や、すでに有機溶媒中に無機粒子が分散しているスラリーやゾルなどの市販品と樹脂などを混合する方法が挙げられる。
【0050】
まず、無機粒子を有機溶媒中に分散させた分散液の製造方法を示す。数平均1次粒子径が50nm以下の無機粒子(2次粒子、凝集状態のものを含む)、分散剤、有機溶媒、および必要に応じて(A)の樹脂および/または他の樹脂や重合促進剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、重合禁止剤、可塑剤、シランカップリング剤などを所定の分量で混合し、攪拌する。ただし、重合促進剤などは、分散液の保存安定性の観点から、ペーストを製造する直前に添加することが好ましい。混合直後は、無機粒子の表面を空気の層が覆っているため、無機粒子と有機溶媒との濡れが十分でなく、粘度が増加する場合がある。その場合は、無機粒子と有機溶媒が完全に濡れるまで、回転羽根などで時間をかけて攪拌することが好ましい。
【0051】
無機粒子を混合する際に、目的のペーストを製造するために必要な樹脂の全量を、あるいはその一部を加えてもよい。分散処理後に樹脂を加える場合と比較して、分散処理前に樹脂を加える場合では、樹脂と無機粒子とを均一に混合することができる。一方で、分散液の粘度が上がり分散処理の効率が悪くなる、あるいは分散処理後の分散液の保存安定性が悪くなるなどのことが生じる場合がある。分散剤に関しても分散処理前に必要量を全量入れてもよいし、分散処理前には必要量の一部を入れておき、分散処理後に残りの量を加えてもよい。また、分散処理中の分散液の粘度などの性状を測定しながら、徐々に分散剤やその他の物質を加えることもできる。
【0052】
無機粒子(2次粒子、凝集状態のものを含む)、分散剤、有機溶媒、および他の必要な物質を混合、攪拌した後、分散装置にて無機粒子の分散処理を行う。
【0053】
分散装置としては、例えば、寿工業(株)製の“ウルトラアペックスミル”やアシザワ・ファインテック(株)製の“スターミル”などのビーズミルが挙げられる。ビーズミルで使用するビーズの平均粒子径は0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましい。ビーズの平均粒子径が0.5mm以下である場合、ビーズミル内で無機粒子とビーズとが接触する頻度が高いため、十分な分散効果が得られる。一方、ビーズの平均粒子径が0.01mm以上である場合、個々のビーズの持つ運動量が大きいため、凝集した無機粒子を分散するのに十分なせん断応力が得られる。
【0054】
ビーズの材質としては、セラミックやガラス、金属製のものなどが使用できる。具体的には、例えば、ソーダガラス、石英、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、スチール、ステンレスなどが挙げられる。これらの中でも特に硬度が高いジルコニアビーズが好適に使用できる。
【0055】
ビーズミルによる分散は小さいビーズを用いた一度の処理で実施してもよく、段階的にビーズの大きさを変えて実施してもよい。例えば、まず、平均粒子径が0.5mmのビーズを用いて無機粒子の分散粒子径が100nm程度になるまで分散処理を行ってから、次に、より微小なビーズを用いて分散処理を施してもよい。
【0056】
分散処理に費やす時間は無機粒子や、分散剤、有機溶媒などの分散液を構成する物質の種類や組成比により適宜設定する。また、一定時間ごとに分散液をサンプリングし、分散液中での無機粒子の平均粒子径を測定することは、分散状態の経時変化を把握でき、分散処理の終了時点を判断することができるので好ましい。分散液中の無機粒子の平均粒子径の測定装置としては、動的光散乱方式であるシスメックス(株)製の“ゼータサイザーナノZS”が挙げられる。
【0057】
次に、上記方法で得られた分散液と(A)の樹脂および/または他の樹脂などを混合し、ペーストを製造する方法について説明する。ただし、分散液製造時に目的のペーストを製造するために必要な物質を全て混合している場合は、上記方法で得られた分散液がペーストとなる。
【0058】
まず、無機粒子の分散液と(A)の樹脂および/または他の樹脂を所定量混合してペーストを製造する。混合する際は、樹脂中に分散液を所定量となるまで注入してもよいし、分散液中に樹脂を所定量となるまで注入してもよい。ペースト製造時に分散剤をさらに加え組成調整することもできる。
【0059】
所定量の分散液と樹脂などを混合して得られたペーストに対し、さらに均質になるようにするために、ボールミルやロールミルを用いた処理を行うことができる。また、混合処理によりペースト中に気泡が混入した場合は、静置する、減圧下に置く、あるいは攪拌脱泡機を用いるなどして気泡を除去すると、ペーストを用いて製造する硬化物中への気泡の混入を避けることができる。
【0060】
ペーストの粘度を調整するために、さらに有機溶媒を添加したり、加熱や減圧により有機溶媒を適量除去してもよい。また、加熱処理や光照射により分散剤や樹脂の重合反応を適度に進行させてもよい。
【0061】
次に、絶縁層形成用材料の未硬化シートの製造方法の例について説明する。上記のようにして製造したペーストを基材上に塗布し、有機溶剤を除去し、未硬化シートを製造する。ペーストを塗布する基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。未硬化シートをシリコンウエハーなどの基板に貼り合わせて用いる際に、基材であるPETフィルムを剥離除去する必要がある場合は、表面にシリコーン樹脂などの離型剤がコーティングされているPETフィルムを用いると、容易に未硬化シートとPETフィルムを剥離できるので好ましい。
【0062】
ペーストをPETフィルム上へ塗布する方法としては、スクリーン印刷、スプレーコーター、バーコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スピンコーターなどを用いることができる。有機溶媒を除去する方法としては、オーブンやホットプレートによる加熱の他、真空乾燥、赤外線やマイクロ波などの電磁波による加熱などが挙げられる。ここで、有機溶媒の除去が不十分である場合、次の硬化処理により得られる硬化物が未硬化状態となったり、熱機械特性が不良となったりすることがある。
【0063】
PETフィルムの厚みは特に限定されないが、作業性の観点から、30〜80μmの範囲であることが好ましい。また、未硬化シートの表面を大気中のゴミ等から保護するために、表面にカバーフィルムを貼り合わせてもよい。また、ペーストの固形分濃度が低く、所望する膜厚の未硬化シートを作製できない場合は、有機溶媒除去後の未硬化シートを2枚以上貼り合わせても良い。
【0064】
上記の方法にて製造した未硬化シートを別の基板上に貼り合わせる場合は、ロールラミネーターや真空ラミネーターなどのラミネート装置を使用しても、ホットプレート上で加熱した基板にゴムローラーを用いて手動で貼り合わせても良い。基板へ貼り合わせた後、十分に冷却してからPETフィルムを剥離する。
【0065】
次に、上記のようにして製造したペーストあるいは未硬化シートを用いて絶縁層を形成し、フォトリソグラフィー法により絶縁層のパターン加工を行う方法について説明する。
【0066】
まず、ペーストを基板上に塗布し乾燥する方法あるいは未硬化シートを基板上に貼り合わせる方法により基板上に絶縁層を形成する。次いで、パターンに対応した必要部分のみ光を通すように設計されたマスクを介して、重合促進剤の吸収波長帯に対応した光を照射する。光源としては超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、ヘリウム−ネオンレーザー、YAGレーザーなどが挙げられる。露光装置としては、超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)などが挙げられる。本発明の絶縁層形成用材料の硬化機構がラジカル重合である場合は、ラジカル反応種が酸化により失活することを防ぐために、窒素雰囲気下での露光処理をすることが好ましい。また、パターンの解像度を高めるために、露光装置の照射光の平行度を高くする方が好ましく、さらに、マスクによる回折光の影響を低減するために、マスクと基板を接触させる、またはマスクと基板とのギャップを小さくすることが好ましい。
【0067】
露光時に照射光が絶縁層内部で散乱することにより、パターンが太ることがある。この場合は、紫外線吸収剤を絶縁層形成用材料中に添加しておくと紫外線吸収剤が露光部から漏れ出る微弱光を吸収して散乱を抑えるため、パターンエッジをシャープに保つことができるので好ましい。絶縁層内部の光の散乱は無機粒子からのレイリー散乱によるものが大きく、短波長の光ほどその散乱は大きい。よって、短波長の光を選択的に吸収する紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。また、光源とマスクとの間に短波長光をカットするフィルターを挿入することにより、散乱を抑えることも可能である。
【0068】
露光後に硬化反応をさらに進行させるため、一定時間、基板を室温で保存したり、熱処理を行うこともできる。露光処理後、基板を現像液に浸し、露光していない部分の絶縁層を除去し、硬化物のパターンが形成された基板を洗浄し乾燥させる。硬化反応を進めるために、さらに加熱処理をしてもよい。
【0069】
本発明の絶縁層を現像する際に用いる現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。
【0070】
中でも、下記一般式(12)で表されるアニオン性界面活性剤を含むアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
【0071】
【化5】

【0072】
上記一般式(12)中、R12は炭素数5〜18のアルキル基またはアルコキシル基を示し、dは1〜2の整数である。R13は下記一般式(13)で示される基を示し、eは0〜2の整数である。R14は炭素数5〜18のアルキル基またはアルコキシル基を示し、fは0〜2の整数である。R15は下記一般式(13)で示される基を示し、gは1〜2の整数である。
【0073】
【化6】

【0074】
上記一般式(13)中、MはNa、KまたはNHのいずれかである。
【0075】
前記一般式(12)で表されるアニオン性界面活性剤を含むと、本発明の絶縁層の未露光部の除去速度が速くなり、かつ、残渣の発生を抑制する効果が大きくなる。これは、上記界面活性剤が本発明の材料とアルカリ水溶液との親和性を向上させて、水溶液を速やかに材料内部に輸送する働きを有するためであると考えられる。未露光部の除去速度が速くなることにより、現像液が露光部に浸透しパターンを膨潤させ形状を変形させることを抑制でき、また、現像残渣を低減することにより、後工程で絶縁層の凹部に導体配線をめっきなどで形成する場合に、下地層との密着性が向上する効果がある。
【0076】
前記一般式(12)で表されるアニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0077】
次に、本発明の絶縁層形成用材料を用いた電子部品の製造方法の例について説明する。
【0078】
ガラス基板やシリコンウエハー、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、プラスチックフィルムなどの基板上に、スパッタリング法により銅膜を形成し、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法と塩化銅水溶液を用いた銅のエッチングにより、銅膜に所望のパターン加工を施す。次に、ペーストを塗布し乾燥させる方法あるいは未硬化シートを貼り合わせる方法により、基板上に絶縁層を形成し、フォトリソグラフィー法により下地銅スパッタ膜パターンが露出するように絶縁層のパターン加工を行う。必要に応じてパターン加工後に熱処理を行い絶縁層の硬化を進める。次いで、絶縁層の凹部に露出した銅スパッタ膜を電極にして、電解めっきにより銅層を形成する。このようにして得られる銅層が埋め込まれた絶縁層は、抵抗やコンデンサ、インダクタなどの電子部品として使用することができる。また、得られた絶縁層上に、必要に応じて、絶縁層や銅層を一層以上形成したり、層間に半導体層を形成したり、あるいは、ビア加工や接続端子形成などを行うことにより、LED素子やTFTなどの電子部品を製造することもできる。さらに、これらの電子部品を組み合わせ、必要に応じて、IC実装や封止などを施すことにより、パワーモジュールやLEDモジュール、MEMSなどより複雑な電子部品を製造することもできる。
【0079】
本発明の電子部品は、基板上に絶縁層と導体配線を積層して製造することができるが、剥離や溶解などにより基板を取り除いたものを最終製品としてもよい。この場合、基板上にあらかじめ剥離層、溶解性の犠牲層などを形成したものや、基板そのものが溶解性のものを用いることができる。このような剥離性の材料としては、UV硬化や熱硬化により接着力が大きく低下する接着剤やシリコーン樹脂などからなる微粘着性の接着剤が挙げられ、溶解性のものとしては、銅などの金属、ガラス、金属酸化物などが挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また実施例で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて以下に示す。
THFA:テトラヒドロフルフリルアルコール
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
硫酸バリウム粒子の分散液、絶縁層形成用材料から得られる硬化物の各特性の測定方法は以下の通りである。
【0081】
<分散液製造前の凝集した原料硫酸バリウム粒子の数平均粒子径の測定方法>
以下のように光学顕微鏡を用いて測定した。粒子をガラスなどの透明板上に載せ、粒子が載った透明板を光学顕微鏡の観察ステージ上に置いた。透明板の下側から光を当て、その透過光像を光学顕微鏡の接眼レンズ部の代わりに取り付けたCCDカメラADP−240M((株)フローベル製)を介してデジタル画像としてコンピューターに取り込み、画像処理ソフトFlvFs((株)フローベル製)にて、観察された任意の100個の粒子に対し、球形近似したときの粒子径を求め、数平均粒子径を算出した。
【0082】
<分散液中の無機粒子の数平均粒子径の測定方法>
カーボン蒸着したコロジオン膜上に、分散液を滴下し、有機溶媒を乾燥除去後、透過型電子顕微鏡H−7100FA(日立製作所(株)製)にて粒子を観察した。加速電圧は100kVとした。観察像はデジタル画像としてコンピューターに取り込み、画像処理ソフトFlvFs((株)フローベル製)にて、観察された任意の100個の粒子に対し、球形近似したときの粒子径を求め、数平均粒子径を算出した。なお、1次粒子が凝集して存在する場合は、凝集体としての粒子径を測定した。
【0083】
<硬化物中の無機粒子の数平均粒子径の測定方法>
未硬化シート状の絶縁層形成用材料を全面露光してから200℃で1時間(窒素雰囲気下)加熱することにより硬化膜を作製した。超薄切片法によってこの硬化膜の試料薄膜(約100nm)を作製した。透過型電子顕微鏡“H−7100FA”(日立製作所(株)製)にて粒子を観察した。加速電圧は100kVとした。観察像はデジタル画像としてコンピューターに取り込み、画像処理ソフト“FlvFs”((株)フローベル製)にて、観察された任意の100個の粒子に対し、球形近似したときの粒子径を求め、数平均粒子径を算出した。なお、1次粒子が凝集して存在する場合は、凝集体としての粒子径を測定した。
【0084】
<硬化物の線膨張率の測定方法>
80℃のホットプレート上に載置した膜厚50μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料上に、ゴムローラーを用いてもう1枚の膜厚50μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料を貼り合わせた。次いで、超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量300mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した後、PETフィルムを剥離して、窒素中200℃で1時間加熱し、硬化物を作製した。得られた硬化物を1辺が5mm程度の正方形に切断し、数枚重ねたものの厚さ方向の寸法の変位をエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製のTMA測定装置“TMA/SS6100”を用いて測定した。押し込み荷重50mNで、窒素雰囲気中で、室温から120℃まで昇温し、再び室温まで降温したときの変位値を測定し、50℃から70℃における昇降温の平均の線膨張率を算出した。線膨張率の温度履歴を除去するために、昇降温を連続して2度繰り返し、2度目の測定結果を変位値として用いた。
【0085】
<絶縁信頼性試験の方法>
ラインアンドスペースが10μm/10μmの銅櫛歯電極(図1)上にペースト状の絶縁層形成用材料をピンセットの先端部を用いて塗布し、大気中90℃で1時間乾燥させた。次いで、超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量300mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した後、窒素中200℃で1時間加熱し、評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルの電極間に、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で、電圧20Vを印加し続け1000時間の絶縁信頼性試験を行った。1000時間まで抵抗値10Ω以上を保持し続けた場合に評価結果を○とした。銅櫛歯電極には、厚さ0.4μmの熱酸化膜とその上に厚さ0.8μmの窒化珪素膜が形成されたシリコンウエハー上に、厚さ0.08μmのクロム下地電極とその上に厚さ10μmの銅電極がパターン加工されたものを用いた。
【0086】
<サーマルサイクル試験の方法>
各実施例および比較例で作製したスパイラルインダクタまたはビルドアップ多層配線基板上にICチップを実装した電子部品に対し、低温−45℃、高温100℃の往復で、一方の温度環境に30分間保持した後に他方の温度に移動させるというサーマルサイクル気相法でサーマルサイクル試験を1000サイクル行い、絶縁層の剥離や割れなどの発生の有無を確認した。剥離や割れなどの異常が見られなかったものを○、剥離や割れなどの異常が見られたものを×とした。
【0087】
<分散液の製造>
分散液A〜Dを次のように製造した。硫酸バリウム2次粒子“BF−40”(堺化学工業(株)製、平均2次粒子径15μm、平均1次粒子径10nm)と分散剤“HOA−MPL”(共栄社化学(株)製)、有機溶媒THFAを、表1に示す各混合量で混合し、平均粒子径が5mmであるジルコニアビーズ((株)ニッカトー製、YTZボール)1kgが充填された500mlのポリ容器へ投入し、ボールミル架台上で200rpm、24時間回転させて、硫酸バリウム粒子を分散した。
【0088】
次いで、ボールミル架台にて処理した上記の分散液を、ビーズミルである“ウルトラアペックスミルUAM−015”(寿工業(株)製)を用いて分散処理した。ビーズは材質がジルコニアであり、平均粒子径は0.05mm((株)ニッカトー製、YTZボール)、投入量は400gとした。また、ビーズミルのローターの周速は9.5m/sとし、送液圧力は0.1MPaとした。分散処理を表1に示す時間行い、分散処理終了後に液を回収し硫酸バリウム粒子の分散液を得た。分散終了時の分散液中の硫酸バリウム粒子の数平均粒子径を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
<(A)の樹脂の合成>
合成例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂“jER828”(エポキシ当量186g、ジャパンエポキシレジン(株)製)372重量部、アクリル酸144重量部を用いて、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸152重量部を加えて、(A)の樹脂を含む反応生成物を得た。
【0091】
得られた反応生成物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分離し、H−NMRスペクトル測定により組成分析を行ったところ、1分子中にカルボキシル基1個を有するエポキシアクリレート樹脂が4割、1分子中にカルボキシル基2個を有するエポキシアクリレート樹脂が2割、カルボキシル基を有しないエポキシアクリレート樹脂が2割、二量体以上の高分子成分が2割であった。
【0092】
さらに、上記方法により別途(A)の樹脂を含む反応生成物を合成し、GPCにより組成分離し、1分子中にカルボキシル基1個を有するエポキシアクリレート樹脂(樹脂A)、1分子中にカルボキシル基2個を有するエポキシアクリレート樹脂(樹脂B)、カルボキシル基を有しないエポキシアクリレート樹脂(樹脂C)を得た。得られた樹脂A〜Cをエバポレーターにより濃縮することで、展開溶媒(THFA)を除去した。
【0093】
合成例2
ビスフェノールA型エポキシ樹脂“jER828”(エポキシ当量186g、ジャパンエポキシレジン(株)製)372重量部、アクリル酸144重量部を用いて、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂を得た。その後、無水コハク酸100重量部を加えて、(A)の樹脂を含む反応生成物を得た。
【0094】
得られた反応生成物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分離し、H−NMRスペクトル測定により組成分析を行ったところ、1分子中にカルボキシル基1個を有するエポキシアクリレート樹脂が4割、1分子中にカルボキシル基2個を有するエポキシアクリレート樹脂が2割、カルボキシル基を有しないエポキシアクリレート樹脂が2割、二量体以上の高分子成分が2割であった。
【0095】
実施例1
合成例1で得られた反応生成物10.0gに分散液A45.3g、重合促進剤“IRGACURE 819”(チバ・ジャパン(株)製、一般式(7)におけるRが一般式(8)で表される1価の基であり、Rが一般式(11)で表される1価の基であり、R〜R11がメチル基である重合促進剤)0.5g、シランカップリング剤“KBM−503”(信越化学工業(株)製、化学名:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)0.15gをボールミルを用いて混合し、ペースト状の絶縁層形成用材料を製造した。なお、この絶縁層形成用材料において有機溶媒を除いた固形成分中の硫酸バリウム粒子の含有量は60重量%であった。
【0096】
上記ペースト状の絶縁層形成用材料をバーコーターを用いて、PETフィルム“SR−1”(厚み38μm、大槻工業(株)製)上に塗布し、大気中90℃で15分間乾燥し、乾燥後の膜厚が50μmと10μmの未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造した。未硬化シート状絶縁層形成用材料を硬化して得られる硬化物中の硫酸バリウム粒子の数平均粒子径は13nmであり、硬化物の線膨張率は25ppm/℃であった。
【0097】
次いで、80℃のホットプレート上でシリコンウエハー上にゴムローラーを用いて膜厚50μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料を貼り合わせ、絶縁層を形成した。超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)にラインアンドスペース(L/S)パターンが形成された石英製フォトマスクをセットし、絶縁層とフォトマスクを密着させて、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行った。露光後、スプレー型現像装置“AD−3000”(滝沢産業(株)製)を用いて現像を行った。現像液には3重量%TMAH水溶液である現像液Aを用いた。ただし、現像液Aは界面活性剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを2重量%含有する。
【0098】
現像後の絶縁層のL/Sパターンを光学顕微鏡を用いて確認したところ、L/Sの幅が10μm/10μmの狭ピッチまで、パターンが明瞭な輪郭を持ちクラックの発生がなく、パターン間残渣やパターン剥がれがなく、良好にパターン加工されていることを確認した。
【0099】
また、未硬化シート状絶縁層形成用材料から得られる硬化物の絶縁信頼性試験を行ったところ、1000時間まで抵抗値10Ω以上を保持し続けた。
【0100】
次に、この未硬化シート状絶縁層形成用材料を用いて図2〜3に示すようなスパイラルインダクタを作製した。80℃のホットプレート上でFR−4ガラスエポキシ基板5上にゴムローラーを用いて膜厚10μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料6を貼り合わせた。次いで、超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光し、絶縁層を得た。この絶縁層の上にスパッタリング法で厚さ0.2μmの銅層を形成し、この上にさらに銅の総厚さが10μmとなるように銅の電解めっきを施し、銅層7を形成した。
【0101】
銅層7の上に膜厚10μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料8を貼り合わせ、続いて直径10μmのビアを2個空けるように石英製フォトマスクを介して超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した後、現像を行った(図3(A))。現像液には現像液Aを用いた。この上全面に厚さ0.1μmの銅層9をスパッタリング法で形成した後、フォトレジストを用いたフォトリソグライーと塩化銅水溶液を用いた銅のエッチングにより6.5ターンでL/Sが15μm/15μmのスパイラルを作製した。(図3(B))。この際、スパイラルの内側端と外側の引き出し端のそれぞれが下層のビア上に来るようにフォトレジストの露光時にアライメント調整を行った。
【0102】
続いてこの上から膜厚50μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料10を上記と同様の方法で貼り合わせ、上記の6.5ターンのスパイラルの直上と、後の工程の電解銅めっきのための給電部の引き出し部4が未露光部となりパターンが抜けるように石英製フォトマスクを介して超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した後、現像を行い絶縁層を形成した(図3(C))。現像液には現像液Aを用いた。
【0103】
次に電解銅めっきによりパターン底部から銅を析出させ、絶縁層にスパイラル状に形成された凹部を銅で埋めるように配線11の回路形成を行った(図3(D))。
【0104】
その後、厚さ15μmの取り出し電極3を設けた。取り出し電極の形成は、フォトレジストを用いて電極形成部のみを開口させた層を設け、その後スパッタリングにより厚さ0.2μmの銅層を形成した。続いてリフトオフによりフォトレジストと電極形成部以外の銅を除去した。その後再びフォトレジストを用いて電極形成部のみを開口させた層を設け、電解めっきで厚さ15μmとなるよう銅層を形成し、窒素中200℃で1時間加熱した。
【0105】
このようにして形成したスパイラルインダクタの周波数2GHzにおけるインダクタンスとQ値を高周波プローブ“MTF−100−SP”(エヌピイエス(株)製)とネットワークアナライザ“E8364A”(アジレントテクノロジーズ社製)を用いて評価した。インダクタンスは8nH、Q値は22であった。また、前記の方法でサーマルサイクル試験を行ったところ、絶縁層に剥離や割れなどの異常は見られなかった。
【0106】
実施例2〜6
合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂A、樹脂B、樹脂Cと樹脂以外の原料を表2に示す組成で用いて、実施例1と同様の方法でペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、実施例5において適切な露光、現像条件の探索を行ったが、L/S=15μm/15μmのパターンが形成できなかったので、膜厚10μmの未硬化シートを用いてL/S=15μm/15μmのパターン加工ができることを確認し、スパイラルインダクタ作製時には、未硬化シート状絶縁層形成用材料10として膜厚10μmのものを用いた。
【0107】
実施例7〜14
合成例1で得られた反応生成物とその他の原料を表2に示す組成で用いて、実施例1と同様の方法でペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0108】
なお、実施例9では重合促進剤として“DAROCUR TPO”(チバ・ジャパン(株)製、一般式(7)におけるRおよびRが一般式(8)で表されるものであり、R〜R11がメチル基である)を使用し、実施例10、14では重合促進剤として“IRGACURE OXE02”(チバ・ジャパン(株)製、オキシムエステル化合物)を使用した。また、実施例11〜14で使用した現像液Bは界面活性剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カリウムを2重量%含有する3重量%TMAH水溶液、現像液Cは界面活性剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウムを2重量%含有する3重量%TMAH水溶液、現像液Dは界面活性剤を含まない3重量%TMAH水溶液である。また、実施例10と13と14において適切な露光、現像条件の探索を行ったが、L/S=15μm/15μmのパターンが形成できなかったので、膜厚10μmの未硬化シートを用いてL/S=15μm/15μmのパターン加工ができることを確認し、スパイラルインダクタ作製時には、未硬化シート状絶縁層形成用材料10として膜厚10μmのものを用いた。
【0109】
実施例15
樹脂を合成例2で得られた反応生成物に変更した以外は実施例1と同様の方法でペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0110】
実施例16
硫酸バリウム粒子分散液Aをアルミナ粒子分散液“NANOBYK−3610”(ビックケミー・ジャパン(株)製、分散粒子径20nm)に変更し、ペースト状絶縁層形成用材料の固形成分中のアルミナ粒子の含有量を40重量%にしたこと以外は実施例1と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、適切な露光、現像条件の探索を行ったが、L/S=15μm/15μmのパターンが形成できなかったので、膜厚10μmの未硬化シートを用いてL/S=15μm/15μmのパターン加工ができることを確認し、スパイラルインダクタ作製時には、未硬化シート状絶縁層形成用材料10として膜厚10μmのものを用いた。
【0111】
実施例17
硫酸バリウム粒子分散液Aをシリカ粒子分散液“MIBK−ST”(日産化学(株)製、分散粒子径12nm)に変更し、ペースト状絶縁層形成用材料の固形成分中のアルミナ粒子の含有量を40重量%にしたこと以外は実施例1と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、適切な露光、現像条件の探索を行ったが、L/S=15μm/15μmのパターンが形成できなかったので、膜厚10μmの未硬化シートを用いてL/S=15μm/15μmのパターン加工ができることを確認し、スパイラルインダクタ作製時には、未硬化シート状絶縁層形成用材料10として膜厚10μmのものを用いた。
【0112】
実施例18
実施例1と同様の方法で未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、これを用いて図4〜7に示すような配線層を3層有するビルドアップ多層配線基板上にICチップを実装した電子部品を製造した。なお、図4は電子部品の断面図であり、3つの配線層を上から順に図5〜図7に示している。なお、図5〜図7の一点鎖線は、それぞれの層のパターンの配置がわかるように最上層のパターンの位置を示している。また、図5の破線A−A’で切断した断面が図4である。
【0113】
まず、80℃のホットプレート上でFR−4ガラスエポキシ基板20上にゴムローラーを用いて膜厚50μmの未硬化シート状絶縁層形成用材料21を貼り合わせた。次いで、図7に示すような幅15μmの4つの凹部を空けるように石英製フォトマスクを介して超高圧水銀灯露光装置“PEM−6M”(ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光した後、現像を行った。現像液には現像液Aを用いた。続いて形成した凹部に無電解銅めっきによりパターン底部から銅を絶縁層と同程度の高さとなるまで析出させ、第1層目(最下層)の配線層を形成した。
【0114】
次いで、第1層目と同様の方法で、第2層目および第3層目の配線層を形成し、窒素中200℃で1時間加熱して絶縁層を硬化させた。なお、第2層目の銅層は8つのビアからなり、それぞれのビアの直径は30μmである(図6)。また、第3層目(最上層)の銅層は外周部の16個の外部電極のうちの12個と、内部の16個のIC接合パッドのうちの12個が幅15μmの配線で結ばれている(図5)。続いて、最上層の外部電極とIC接合パッド以外の部分にソルダーレジスト層27を形成して、ビルドアップ多層配線基板を製造した。
【0115】
次いで、フリップチップボンダーを用いて、はんだバンプ電極28が形成されたICチップ29をビルドアップ多層配線基板上にフリップチップ実装し、電子部品を得た。なお、用いたICチップは16個のはんだバンプ電極がICチップ内部で導通しているTEGチップである。
【0116】
製造した電子部品のサーマルサイクル試験を行ったところ、絶縁層に剥離や割れなどの異常は見られなかった。また、試験後に任意の2つの外部接合パッド部間の抵抗値を確認したところ、どのパッド間においても導通していることが確認でき、多層配線基板内部での層間剥離やICチップとの接合部での剥離がないことを確認した。
【0117】
比較例1
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂B5.0gと樹脂C5.0gを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、現像時にパターン間に残渣が多く、明瞭なパターンを形成することができず、また、スパイラルインダクタを作製することができなかった。
【0118】
比較例2
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂B10.0gを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、現像時にパターン剥がれやクラックが発生し、明瞭なパターンを形成することができず、また、スパイラルインダクタを作製することができなかった。
【0119】
比較例3
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂C10.0gを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、現像時に未露光部が現像液に溶けず、パターン加工を行うことができず、また、スパイラルインダクタを作製することができなかった。
【0120】
比較例4
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物10.0gと分散液Dを表2に示す組成で用いて、実施例1と同様の方法でペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、適切な露光、現像条件の探索を行ったが、L/S=15μm/15μmのパターンが形成できなかったので、膜厚10μmの未硬化シートを用いてL/S=15μm/15μmのパターン加工ができることを確認し、スパイラルインダクタ作製時には、未硬化シート状絶縁層形成用材料10として膜厚10μmのものを用いた。
【0121】
比較例5
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂B5.0gと樹脂C5.0gを用いたこと以外は実施例16と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、現像時にパターン間に残渣が多く、明瞭なパターンを形成することができず、スパイラルインダクタを作製することができなかった。
【0122】
比較例6
樹脂として、合成例1で得られた反応生成物を分離して得られた樹脂B5.0gと樹脂C5.0gを用いたこと以外は実施例17と同様の方法で、ペースト状および未硬化シート状の絶縁層形成用材料を製造し、各種評価を行った。評価結果を表3に示した。なお、現像時にパターン間に残渣が多く、明瞭なパターンを形成することができず、スパイラルインダクタを作製することができなかった。
【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【符号の説明】
【0125】
1 銅電極
2 シリコンウエハー
3 取り出し電極
4 電解めっき用引き出し電極
5 FR−4ガラスエポキシ基板
6 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
7 銅層
8 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
9 銅層
10 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
11 銅配線
20 FR−4ガラスエポキシ基板
21 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
22 銅層
23 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
24 銅層
25 未硬化シート状絶縁層形成用材料から形成した絶縁層
26 銅層
27 ソルダーレジスト層
28 はんだバンプ電極
29 ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂に二塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂で、1分子中にカルボキシル基が1個の樹脂、(B)重合促進剤および(C)数平均粒子径1nm以上50nm以下の無機粒子を含む絶縁層形成用材料。
【請求項2】
(A)の樹脂が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1記載の絶縁層形成用材料。
【化1】

(上記一般式(1)中、RおよびRは水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基を示す。)
【化2】

(上記一般式(2)〜(4)中、R〜Rはメチル基を示し、a〜cはそれぞれ0〜2である。)
【請求項3】
一般式(1)におけるRおよびRが水素原子であり、Rが一般式(3)で表される基である請求項2記載の絶縁層形成用材料。
【請求項4】
(B)重合促進剤が下記一般式(7)で表される化合物である請求項1〜3のいずれか記載の絶縁層形成用材料。
【化3】

(上記一般式(7)中、RおよびRは下記一般式(8)〜(11)のいずれかで表される基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R〜R11は水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【化4】

【請求項5】
一般式(7)におけるRが一般式(8)で表される基であり、Rが一般式(11)で表される基であり、R〜R11がメチル基である請求項4記載の絶縁層形成用材料。
【請求項6】
無機粒子が硫酸バリウム粒子である請求項1〜5のいずれか記載の絶縁層形成用材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の絶縁層形成用材料からなる絶縁層を有する電子部品であって、絶縁層に凹部が形成されており、該凹部に導体配線が形成されている電子部品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか記載の絶縁層形成用材料を基板上に製膜して絶縁層を形成した後、露光、現像により絶縁層に凹部を形成して、該凹部に導体配線を形成する電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか記載の絶縁層形成用材料を基板上に製膜して絶縁層を形成した後、露光、現像により絶縁層に凹部を形成して、該凹部に導体配線を形成した層上に、さらに凹部に導体配線が形成された絶縁層を形成する電子部品の製造方法。
【請求項10】
現像液として下記一般式(12)で表されるアニオン性界面活性剤を含むアルカリ水溶液を用いる請求項8または9記載の電子部品の製造方法。
【化5】

(上記一般式(12)中、R12は炭素数5〜18のアルキル基またはアルコキシル基を示し、dは1〜2である。R13は下記一般式(13)で示される基を示し、eは0〜2である。R14は炭素数5〜18のアルキル基またはアルコキシル基を示し、fは0〜2である。R15は下記一般式(13)で示される基を示し、gは1〜2である。)
【化6】

(上記一般式(13)中、MはNa、KまたはNHのいずれかである。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−229290(P2010−229290A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78503(P2009−78503)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】