説明

絶縁層組成物、これにより製造された絶縁層を含む多層印刷配線板、及びその製造方法

【課題】本発明は、絶縁層組成物、これより製造された絶縁層を含む多層印刷配線板、及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む多層配線板の絶縁層組成物、これより製造された絶縁層を含む多層印刷配線板、及びその製造方法に関する。
本発明は、多層配線板の絶縁層製造時に、SiO、CaCOの2種の無機フィラーを混合使用することにより、前記絶縁層のエッチング段階において、酸化剤として3NHHFを含むフッ素系溶液を使用しなくてもめっき層との高い密着力を具現することができ、さらに環境有害物質の排出を抑制する効果を誘導することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層印刷配線板の絶縁層形成のための組成物、これにより製造された絶縁層を含む多層配線板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル電子製品の小型化、多機能化に伴い、先端部品の機能もまたさらにアップグレードしている。特に、多層印刷配線板(multi layered PCB)の場合、高い仕様に対応するための薄膜化、高集積化、微細回路の具現開発のためにビルドアップ(build−up)フィルム(絶縁層)を使用している。
【0003】
多層印刷配線板は、伝導性を有するように印刷された複数の配線パターンを有し、隣接して印刷された配線パターンは、間にそれぞれ介在された絶縁層によって電気的に絶縁される。
【0004】
前記絶縁層には無機フィラー(inorganic filler)が含まれており、前記無機フィラーは、絶縁層の熱的特性を増加させるだけでなく、表面に露出されたフィラーを除去してめっき層との密着力を向上させる機能を行う。
【0005】
前記絶縁層の表面に露出された無機フィラーをエッチングして除去すると、無機フィラーが位置した空間の絶縁層表面に粗さが形成され、めっき層との密着力が向上されることができる。
【0006】
図1と図2は、それぞれ3NHHF溶液の使用有無による多層印刷配線板の粗さ形成過程を図示したものである。図1は、3NHHF溶液を使用する場合であって、第一の段階では先ず銅基板10上にSiO無機フィラー11を含む絶縁層20を形成する。この場合、前記絶縁層20に含まれたSiO無機フィラー11が前記絶縁層20の表面に露出される。そのため、前記露出されたSiO無機フィラー11を3NHHF溶液を使用してエッチングする。この際、絶縁層20の表面に露出されたSiO無機フィラー11がエッチングされることで絶縁層表面に粗さAが形成される。これは、めっきの際にアンカリング(anchoring)効果Bにより高い剥離強度(peel strength)を有する。
【0007】
一方、3NHHF溶液を使用せず、硫酸(HSO)溶液のみを使用して絶縁層20の表面に露出されたSiO無機フィラー11をエッチングする図2の場合、SiO無機フィラー11がエッチングされず、絶縁層20表面に粗さを形成できないことが分かる。そのため、めっき層と低い剥離強度(peel strength)を有することになり、これは即ち多層印刷配線板の信頼性に影響を及ぼす。
【0008】
前記のように絶縁層表面に露出された無機フィラーを除去し表面に粗さを形成するためのエッチング段階では、3NHHFを含むフッ酸系溶液を使用し、これに硫酸(HSO)を添加する。
【0009】
前記フッ酸系溶液とSiO無機フィラーのエッチング反応式は次のとおりである。
【0010】
[反応式1]
SiO+3NHHF→[NHSiF+NHOH+H
【0011】
しかし、前記3NHHF溶液は高価であり、かつ、使用後に発生した廃液は環境有害物質であるため、処理が相当困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10−1996−0040103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、従来のフッ酸系溶液の使用による様々な環境汚染やめっき層との密着力問題を解決するためのものであって、従来の環境に有害なエッチング液を使用しなくてもめっき層との密着力を高めることができる多層印刷配線板の絶縁層組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記絶縁層組成物からなる絶縁層を含む多層印刷配線板を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記多層印刷配線板の製造方法をさらに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題を解決するための一実施形態による多層配線板の絶縁層組成物は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含むことを特徴とする。
【0016】
前記2種の無機フィラーは、SiOとCaCOであることが好ましい。
【0017】
前記2種の無機フィラーのいずれか一つの無機フィラーは、無機フィラー全体の20重量%を超えないように含まれることが好ましい。
【0018】
前記無機フィラーは、D50が2μm以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の課題を解決するための好ましい一実施形態による多層配線板は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む多層配線板の絶縁層組成物からなる絶縁層を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、印刷回路基板に絶縁層を形成する段階と、前記絶縁層をエッチングする段階と、を含む多層配線板の製造方法を提供する。
【0021】
前記絶縁層は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む組成物からなることが好ましい。
【0022】
前記絶縁層をエッチングする段階は、別途の酸化剤を使用せずに行われることができる。
【0023】
前記酸化剤は、3NHHFを含むフッ素系溶液であることができる。
【0024】
前記絶縁層をエッチングする段階は、前記絶縁層内の無機フィラーのうち表面に露出された無機フィラーがエッチングされることを特徴とする。
【0025】
前記無機フィラーは、CaCOであることがある。
【0026】
前記絶縁層をエッチングするエッチング溶液は、硫酸(HSO)が好ましい。
【0027】
前記絶縁層をエッチングする段階において、表面に露出された無機フィラーと硫酸(HSO)が反応して粗さを形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、多層配線板の絶縁層製造時に、SiO、CaCOの2種の無機フィラーを混合使用することにより、前記絶縁層のエッチング段階において、酸化剤として3NHHFを含むフッ素系溶液を使用しなくてもめっき層との高い密着力を具現することができ、さらに環境有害物質の排出を抑制する効果を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術としての3NHHF溶液を使用した多層配線板の粗さ形成過程を示すものである。
【図2】従来技術としての3NHHF溶液を使用しない多層配線板の粗さ形成過程を示すものである。
【図3】本発明の実施例による3NHHF溶液を使用しない多層配線板の粗さ形成過程を示したのである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をより詳細に説明すると、次のとおりである。
【0031】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施例を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。本明細書に用いられたように、単数型は文脈上異なる場合を明白に指摘するものでない限り、複数型を含むことができる。また、本明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及された形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせが存在することを特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせの存在または付加を排除するものではない。
【0032】
本発明は多層配線板の絶縁層形成のための組成物、これより製造された絶縁層を含む多層配線板、及びその製造方法に関する。
【0033】
本発明の絶縁層組成物は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む。
【0034】
前記エポキシ樹脂には、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能性エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物からなる多官能性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂などがあるが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明では、特に、無機フィラーとして必ずSiOとCaCOの2種を混合使用しなければならない。前記無機フィラーは、前記エポキシ樹脂100重量部に対して10〜60重量部、好ましくは、30〜40重量部が含まれる。
【0036】
前記2種の無機フィラーの含量が10重量部未満の場合には、熱膨脹係数が顕著に低下され熱的特性が劣る問題があり、また、60重量部を超える場合には、熱的特性は向上するが誘電特性が劣る問題があって好ましくない。また、前記含量範囲のエッチング段階において絶縁層表面に適切な粗さを形成することができる。
【0037】
本発明によると、前記2種の無機フィラーのいずれか一つの無機フィラーは、無機フィラー全体の20重量%を超えないように含まれることが、熱膨脹係数が上昇しない範囲であるため好ましい。
【0038】
また、本発明で使用される無機フィラーは、D50が2μm以下であることが好ましく、2μmを過えると、後工程において絶縁材表面の粗さが高くなって回路形成時に微細なピッチ形成が難しくなるため好ましくない。
【0039】
また、本発明による絶縁層組成物には、前記エポキシ樹脂の硬化のために様々な形態の硬化剤が使用でき、例えば、酸無水物系、アミン系、イミダゾール系、ヒドラジン系、ルイス酸、イソシアネート系などがあるが、これら硬化剤に特に限定されない。
【0040】
その他にも、本発明の絶縁層形成に影響を及ぼさない範囲内で様々な添加剤を少量含むことができることは当業者にとって自明である。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態によると、前記絶縁層組成物を準備し、液体状態で適当に分散されるように混合し、混合物を銅基板の上面と下面の両側にコーティングした後、コーティング層を硬化させて最終の絶縁層を含む多層印刷配線板を提供する。本発明による絶縁層は、約10〜50μmの厚さで形成することが好ましい。
【0042】
前記絶縁層組成物を印刷回路基板に塗布させ、120〜210℃で20〜60分間硬化することが好ましい。
【0043】
本発明による多層印刷配線板の製造方法を添付の図3を参照して詳細に説明する。先ず、印刷配線板(印刷回路基板)110に絶縁層120を形成する。前記絶縁層120は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーであるSiOとCaCOを10〜60重量部含む組成物からなることが好ましい。また、前記絶縁層は、約10〜50μmの厚さで形成することが好ましい。
【0044】
図3のように、絶縁層120に含まれた2種の無機フィラーであるSiO無機フィラー111とCaCO無機フィラー112は、前記絶縁層120内で均一に分散されている。また、前記2種の無機フィラーは、絶縁層120表面に露出されて形成されることもできる。
【0045】
そのため、第二の段階は、前記絶縁層をエッチングする過程を経る。これは、前記絶縁層120表面に露出された無機フィラーをエッチングして絶縁層120表面に適切な粗さを有するようにするためである。
【0046】
本発明では、前記絶縁層をエッチングする段階は、従来のように環境的問題となるフッ酸系の別途の酸化剤を使用せずに行われることができる。即ち、前記酸化剤として3NHHFを含むフッ素系溶液を排除し、硫酸のみを用いてエッチングする。
【0047】
前記硫酸溶液を使用すると、絶縁層に含まれた無機フィラー中のSiOはそのまま残存し、CaCOのみが硫酸と反応してエッチングされ、その位置に適切な粗さAを形成する。
【0048】
前記CaCO無機フィラーと硫酸(HSO)溶液間のエッチング反応式は次のとおりである。
【0049】
[反応式2]
CaCO+HSO→CaSO+HO+CO
【0050】
前記反応により、絶縁層120表面でCaCO無機フィラーが存在した位置に適切な粗さが形成される。その後、前記絶縁層120上にめっき層を形成すると、めっき時のアンカリング(anchoring)効果Bによって高い剥離強度(peel strength)を有するようになる。
【0051】
従来は、3NHHF溶液を使用しないと粗さが形成されなかったが、本発明は、多層印刷配線板の製造時に、SiOフィラーの他にCaCOフィラーを混合することで、CaCOフィラーが硫酸(HSO)溶液にエッチングされ、めっき層とのアンカリング(anchoring)効果を誘導する。これは、従来のデスミア(Desmear)工程を同様に使用して行う。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施例を参照して詳細に説明する。但し、これら実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例により制限されると解釈されない。
【0053】
実施例1
エポキシ樹脂(Bisphenol A type epoxy&Novolac type epoxy)100 重量部に、硬化剤、無機フィラーとしてSiO30重量部、及びCaCO8重量部、及びその他添加剤として硬化促進剤(accelerator)、レベリング剤(leveling agent)などを添加して絶縁層形成のための組成物を製造した。
【0054】
前記絶縁層組成物を印刷回路基板に塗布し、120〜210℃で20〜 60分間硬化して厚さ10〜50μmの絶縁層を形成した。
【0055】
前記絶縁層表面に露出された無機フィラーに硫酸溶液を添加してエッチングした。その後、めっき層を形成し、これを剥離した。
【0056】
図3のように、絶縁層表面に露出された無機フィラーであるCaCOが適切にエッチングされ、最終に製造された印刷回路基板でアンカー(anchor)を形成し、剥離強度が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0057】
10、110 印刷配線板
20、120 絶縁層
11、111 SiO無機フィラー
112 CaCO無機フィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む多層配線板の絶縁層組成物。
【請求項2】
前記2種の無機フィラーは、SiOとCaCOである請求項1に記載の多層配線板の絶縁層組成物。
【請求項3】
前記2種の無機フィラーのいずれか一つの無機フィラーは、無機フィラー全体の20重量%を超えないように含まれるものである請求項2に記載の多層配線板の絶縁層組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーは、D50が2μm以下である請求項2に記載の多層配線板の絶縁層組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む多層配線板の絶縁層組成物からなる絶縁層を含む多層配線板。
【請求項6】
印刷回路基板に絶縁層を形成する段階と、
前記絶縁層をエッチングする段階と、を含む多層配線板の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁層は、エポキシ樹脂100重量部に対して2種の無機フィラーを10〜60重量部含む組成物からなる請求項6に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層をエッチングする段階は、別途の酸化剤を使用せずに行われる請求項6に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、3NHHFを含むフッ素系溶液である請求項8に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁層をエッチングする段階は、前記絶縁層内の無機フィラーのうち表面に露出された無機フィラーがエッチングされることを特徴とする請求項6に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項11】
前記無機フィラーは、CaCOである請求項10に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層をエッチングするエッチング溶液は、硫酸(HSO)である請求項6に記載の多層配線板の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁層をエッチングする段階において、表面に露出された無機フィラーと硫酸(HSO)が反応して粗さを形成する請求項12に記載の多層配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−12726(P2013−12726A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119320(P2012−119320)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】