絶縁測定システム
【課題】 担当者が一般家庭を訪れることを不要にし、天候等の各種要因に伴う絶縁劣化を把握可能にする絶縁測定システムを提供する。
【解決手段】 通信網NWとデータの送受信をする通信部21を持つと共に住宅Aに設置されているスマートメータ20を使用する絶縁測定システムであって、住宅Aの電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する活線絶縁測定部23と、通信網NWから測定指示を受け取ると、活線絶縁測定部23が測定した漏洩電流を表す測定データを、通信部21を制御して通信網NWに送信する監視制御部24と、通信網NWに測定指示を送信した後で、通信網NWを経て通信部21から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定する保安用装置10とを備える。
【解決手段】 通信網NWとデータの送受信をする通信部21を持つと共に住宅Aに設置されているスマートメータ20を使用する絶縁測定システムであって、住宅Aの電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する活線絶縁測定部23と、通信網NWから測定指示を受け取ると、活線絶縁測定部23が測定した漏洩電流を表す測定データを、通信部21を制御して通信網NWに送信する監視制御部24と、通信網NWに測定指示を送信した後で、通信網NWを経て通信部21から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定する保安用装置10とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家庭などの絶縁測定を行うための絶縁測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気の低電圧需要家である一般家庭では、電気の供給を受けるために電気配線が行われている。現在、電力会社は、電気を使用する一般家庭の保守・保安を目的として、一般家庭に対して定期点検業務を行っている。この定期点検業務では、電気配線の絶縁抵抗を調べるための絶縁測定などが行われる。この場合、担当者が一般家庭を訪れ、絶縁抵抗計を用いて、絶縁抵抗を測定する。また、測定のために電気を止めることができない場合には、電気配線が活線の状態で担当者は漏洩電流を測定する。この漏洩電流の測定には、各種の方式がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
こうした絶縁測定により、一般家庭での電気配線等の絶縁劣化が調べられる。そして、絶縁劣化の状態に応じて、一般家庭では、絶縁劣化に対応することになる。例えば、使用している電気配線に問題があれば、この配線がさらに調査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、絶縁劣化には、天候等の外的な要因に伴うものがある。例えば、晴天の場合には正常であった絶縁が、雨天の場合に悪化する、というようなケースがある。また、特定の電気機器、例えばエアコンの使用で絶縁が悪化する、というようなケースもある。つまり、一般家庭内の絶縁抵抗は、天候等による外的要因や、使用する電化製品や電気配線による内的要因で変化する。
【0006】
このように日々に変化する絶縁の劣化を、担当者が一般家庭を訪れる定期点検業務で、電力会社が把握することは困難である、という課題がある。
【0007】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、担当者が一般家庭を訪れることを不要にし、天候等の各種要因に伴う絶縁劣化を把握可能にする絶縁測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、通信網とデータの送受信をする通信手段を持つと共に顧客の住宅等に設置されている電力量計を使用する絶縁測定システムであって、前記電力量計に設けられ、前記顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する測定手段と、前記電力量計に設けられ、前記通信網から測定指示を受け取ると、前記測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、前記通信手段を制御して該通信網に送信する制御手段と、前記通信網に測定指示を送信した後で、該通信網を経て前記通信手段から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、該測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定するサーバ装置と、を備えることを特徴とする絶縁測定システムである。
【0009】
請求項1の発明では、顧客の住宅等に設置されている電力量計が通信網とデータの送受信をする通信手段を持つ。電力量計には測定手段と制御手段とが設けられている。測定手段は、顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定し、制御手段は、通信網から測定指示を受け取ると、測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、通信手段を制御して通信網に送信する。一方、サーバ装置は、通信網に測定指示を送信した後で、通信網を経て通信手段から測定データを受け取る。この後、サーバ装置は、あらかじめ設定されている規定値と、測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の絶縁測定システムにおいて、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計から前回得た測定データを、第1のデータとして記憶する記憶手段を備え、前記サーバ装置は、前記記憶手段の第1のデータを得たときから所定期間が経過した場合に、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の絶縁測定システムにおいて、前記記憶手段は、電気設備や電気機器に関連するデータ、例えば顧客の住宅等に設置された電気設備や電気機器の経年数、該顧客による電力使用の状態等のデーを、第2のデータとして記憶し、前記サーバ装置は、任意に設定された条件、例えば電気設備や電気機器に不良が発生する時期、電力使用が多い時期等のような条件により、前記記憶手段の第2のデータから顧客を抽出し、抽出した顧客の顧客宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、停電を伴なわない活線による絶縁測定を、遠隔からの指示で行うことを可能にする。また、顧客の住宅等において、従来では電気配線と分電盤との接続部分で絶縁測定を行っていたが、この発明によれば、電力量計の印加部で絶縁測定を行うので、電力量計から分電盤までの間に設けられている電気配線を含む、顧客宅に対する電気配線の絶縁測定も可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、顧客の住宅等に対しては、停電を伴なわない、活線による絶縁測定を定期的に、かつ、遠隔で行うことを可能にする。
【0014】
請求項3の発明によれば、任意に設定された条件を満たす顧客を対象に、絶縁測定を行うことを可能にする。例えば、特定の電気機器で不良が発生する時期、つまり、時間帯や天候等を基に抽出した顧客を対象として、絶縁測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による絶縁測定システムを示す構成図である。
【図2】分電盤を示す構成図である。
【図3】スマートメータの外観を示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【図4】スマートメータを示す構成図である。
【図5】検出部を説明する図であり、図5(a)は3相の場合、図5(b)は2相の場合を示す図である。
【図6】顧客データの一例を示す図である。
【図7】定期調査データの一例を示す図である。
【図8】災害調査データの一例を示す図である。
【図9】定期絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図10】緊急絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2で用いられる電気設備・電気機器データの一例を示す図である。
【図12】不良発生データの一例を示す図である。
【図13】活線絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図14】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図15】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図16】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図17】この発明の実施の形態3による分電盤の一例を示す構成図である。
【図18】スマートメータの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
(実施の形態1)
【0017】
この実施の形態による絶縁測定システムを図1に示す。図1の絶縁測定システムは活線絶縁測定を行うものであり、保安用装置10と、スマートメータ20と、分電盤30とを備えている。保安用装置10は電力会社に設置され、スマートメータ20と分電盤30の各設備は、住宅Aに設置されている。なお、図1以下の図では、信号の配線系統を図中の細線で示し、住宅Aでの電力の配線系統を太線で示して、2つを区別している。また、住宅Aは、多数の中の代表例を示している。
【0018】
まず、住宅Aの設置されている各設備について説明する。住宅Aにはコンセント401〜40nが備えられている。コンセント401〜40nには、各部屋の照明器具や空調機器等の電気機器が接続される。
【0019】
住宅Aでは、配電線101からの電流がスマートメータ20と電気配線121とを経て分電盤30に流れる。この電流は分電盤30で分岐される。分電盤30は、図2に示すように、主開閉器31と分岐ブレーカ321〜32nとを備えている。主開閉器31は、スマートメータ20から住宅Aに流れる過電流を検出して遮断する。分岐ブレーカ321〜32nは、主開閉器31を経て分岐された電流を住宅Aの各部屋の電路に流す際に、各電路の漏電を検出して遮断する。各電路には、コンセント401〜40nが接続されている。通常、1つの電路には、1つ以上のコンセントが接続されている。
【0020】
スマートメータ20(図1)は、配電線101から住宅Aに供給される電力を計量する電力量計であり、かつ、通信機能を持つ電力量計である。つまり、スマートメータ20は、通信網NWを介在して、電力会社の保安用装置10とデータの送受信が可能な状態にある。これにより、スマートメータ20は、住宅Aでの電力使用量などを保安用装置10に送信し、保安用装置10から各種の指示等を受け取る。こうしたスマートメータ20の一例を図3と図4とに示す。このスマートメータ20は、箱状のケース20Aに、通信部21と、計量部22と、活線絶縁測定部23と、監視制御部24とを備えている。
【0021】
スマートメータ20の通信部21は、通信線111により通信網NWに接続されている。これにより、通信部21は、監視制御部24の制御によって、電力会社の保安用装置10とデータの送受信が可能な状態にある。
【0022】
スマートメータ20の計量部22は、配電線101から住宅Aに供給される交流電力の使用量を計量する。計量部22は計量結果を監視制御部24に送る。計量部22は端子台22Aを備え、この端子台22Aを介在して、配電線101と通信線111と電気配線121とがスマートメータ20に接続されている。特に、電気配線121が端子台22Aに接続されている部分、つまり、電気配線の端部は、後述の検出部23Aが設けられている印加部でもある。印加部に対する電気配線が、住宅A側に電気を加える部分である。
【0023】
活線絶縁測定部23は、印加部以降つまり住宅A側で発生する漏洩電流を測定する。漏洩電流は、電気配線121を含む住宅Aの電気配線の絶縁不良や、電気機器等の絶縁不良で発生する。こうした漏洩電流を測定するために、活線絶縁測定部23は、検出部23Aを備えている。検出部23Aは、先に述べたように、端子台22Aの印加部に設けられている。検出部23Aは例えば零相変流器である。電気が3相の場合には、図5(a)に示すように、3相の電気配線がすべて零相変流器CTを貫通するように、零相変流器CTが印加部の近傍に設置されている。これにより、零相変流器CTは、位相が120度異なる電流の漏洩電流を検出する。また、電気が2相の場合には、図5(b)に示すように、2相の電気配線がすべて零相変流器CTを貫通するように、零相変流器CTが印加部の近傍に設置されている。これにより、零相変流器CTは、往復する電流から漏洩電流を検出する。つまり、検出部23Aにより、配電線が活線の状態で、印加部以降の電路で発生する漏洩電流が検出される。活線絶縁測定部23は、検出部23Aが検出した漏洩電流の大きさを調べて、漏洩電流の大きさを表す検出信号を監視制御部24に送る。
【0024】
スマートメータ20の監視制御部24は、電力会社の保安用装置10と共に活線絶縁測定のための処理と制御を行う。監視制御部24は、住宅Aに設置されているスマートメータ20の識別情報として、計器番号をあらかじめ記憶している。
【0025】
監視制御部24は、通信部21を経て、保安用装置10から測定指示を受け取ると、活線絶縁測定部23からの検出信号を受け取る。監視制御部24は、検出信号を受け取ると、検出信号が表す漏洩電流の大きさに対して、スマートメータ20の計器番号と、測定指示を受け取ったときの日付および時刻とを付加して、測定データを生成する。そして、監視制御部24は、生成した測定データを、通信部21を制御して保安用装置10に送信する。
【0026】
以上が住宅Aに設置されている設備の構成である。次に、電力会社が備える保安用装置10(図1)について説明する。保安用装置10の通信制御装置11は、通信網NWを経由したデータ通信を可能にする。つまり、通信制御装置11は、住宅Aから送信される測定データ等の各種データを受信すると、社内ネットワーク11Aを経て、受信したデータをシステムサーバ12に送る。また、通信制御装置11は、システムサーバ12からの指示等を、通信網NWを経て住宅Aのスマートメータ20に送信する。
【0027】
保安用装置10の端末14は、電力会社の担当者によって操作される専用のコンピュータである。端末14は、例えば、システムサーバ12からのデータを基に、住宅Aでの活線絶縁測定の結果等を表示する。
【0028】
保安用装置10の記憶装置13は、活線絶縁測定に必要とする各種データを記憶している。記憶装置13が記憶するデータに顧客データがある。顧客データは、電力会社の顧客に関するデータであり、顧客が住む住宅に設置されている計器などを示す。この顧客データの一例を図6に示す。この顧客データには、顧客の氏名および住所、顧客宅に設置されている電力量計の計器番号、顧客の電子メールのアドレスなどが記録されている。
【0029】
記憶装置13が記憶するデータに定期調査データがある。定期調査データは、低圧需要家である一般家庭の保守保安のために、4年に一度のように、定期的に行われる活線絶縁測定の測定結果を表す。この定期調査データの一例を図7に示す。この定期調査データには、活線絶縁測定の対象である顧客のリスト、調査年月日、調査時間、調査時の天候、測定結果である漏洩電流、漏洩電流の判定結果、漏洩電流が発生した不良原因等が記録されている。なお、定期調査データの中で、括弧内のデータは、再調査による漏洩電流などを表す。この括弧内のデータは、電気設備の保安等を行う機関が顧客宅を訪問して得たものである。
【0030】
記憶装置13が記憶するデータに災害調査データがある。災害調査データは、災害が発生したときの、一般家庭の保守保安のために、緊急に行われる活線絶縁測定の測定結果を表す。この災害調査データの一例を図8に示す。この災害調査データには、定期調査データに対して、災害の種類を表す災害種別の項目などが付加されている。災害調査データの対象となる災害には、台風や地震のような自然災害と、火災のような人為的災害とがある。
【0031】
記憶装置13が記憶するデータに気象データ(図示を省略)がある。気象データは、各種機関から提供されているものを蓄積したものである。気象データは、システムサーバ12により随時に更新されている。
【0032】
保安用装置10のシステムサーバ12は、定期的な活線絶縁測定(以下、「定期絶縁測定」という)と緊急の活線絶縁測定(以下、「緊急絶縁測定」という)とを行う。これらの測定を行う際には、システムサーバ12は、必要に応じて電力会社の営業管理を行うシステムサーバ(図示を省略)や、その他のサーバ(図示を省略)に対して、通信制御装置11を制御してアクセスする。
【0033】
システムサーバ12が行う処理の中で、まず、定期絶縁測定の処理について説明する。システムサーバ12は、端末14から定期絶縁測定の指示を受け取ると、図9に示す定期絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、定期絶縁測定の処理を開始すると、定期調査データの前回の調査年月日を参照して、定期絶縁測定の対象である顧客を抽出する(ステップS1)。この後、システムサーバ12は、降水量や湿度などの気象条件を含む設定条件を調べる(ステップS2)。設定条件は、端末14からシステムサーバ12に対して、あらかじめ入力されているデータである。ステップS2の後、システムサーバ12は、気象データなどを参照して設定条件を満たしたときに、通信制御装置11を制御して、スマートメータ20に測定指示を送信する(ステップS3)。
【0034】
ステップS3が終了すると、システムサーバ12は、通信制御装置11を経て、測定指示を送ったスマートメータ20から測定データを受信する(ステップS4)。この後、システムサーバ12は、測定データが示す漏洩電流の大きさと、規定値とを比較する(ステップS5)。ステップS5の規定値は、「電気設備技術基準の解釈」で規定されている値(1mA)を基にしている。漏洩電流の大きさが規定値以下であると(ステップS6)、システムサーバ12は、良好であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件、ステップS2の設定条件等を基にして定期調査データを更新し(ステップS7)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS8)。
【0035】
一方、ステップS6で、漏洩電流の大きさが規定値を越えると、システムサーバ12は、不良であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件、ステップS2の設定条件等を基にして定期調査データを更新し(ステップS9)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS10)。この後、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼つまり再調査の依頼を送信する(ステップS11)。
【0036】
ステップS8またはステップS11が終了すると、システムサーバ12は定期絶縁測定の処理を終了する。
【0037】
以上が定期絶縁測定の処理である。次に、緊急絶縁測定の処理について説明する。システムサーバ12は、端末14から緊急絶縁測定の指示を受け取ると、図10に示す緊急絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、緊急絶縁測定の処理を開始すると、電力会社の営業管理用のシステムサーバや端末14から、災害が発生したエリアのデータを受け取る(ステップS21)。この後、システムサーバ12は、顧客データの住所などを参照して、災害発生エリアに住む顧客を抽出し(ステップS22)、該当する顧客のスマートメータ20に測定指示を送信する(ステップS23)。
【0038】
ステップS23が終了すると、システムサーバ12は、通信制御装置11を経て、測定指示を送ったスマートメータ20から測定データを受信する(ステップS24)。この後、システムサーバ12は、測定データが示す漏洩電流の大きさと、規定値とを比較する(ステップS25)。漏洩電流の大きさが規定値以下であると(ステップS26)、システムサーバ12は、良好であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件等を基にして緊急絶縁測定データを更新し(ステップS27)、顧客データのアドレスを利用して、緊急絶縁測定であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS28)。
【0039】
一方、ステップS26で、漏洩電流の大きさが規定値を越えると、システムサーバ12は、不良であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件等を基にして緊急絶縁測定データを更新し(ステップS29)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS30)。この後、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する(ステップS31)。
【0040】
ステップS28またはステップS31が終了すると、システムサーバ12は緊急絶縁測定の処理を終了する。
【0041】
次に、この実施の形態による絶縁測定システムの作用について説明する。電力会社では担当者が端末14を操作して、定期絶縁測定を行う際の気象条件等の設定条件を、システムサーバ12に送る。この後、担当者が端末14を操作して定期絶縁測定の指示を送ると、システムサーバ12は定期絶縁測定の処理を開始する。これにより、定期絶縁測定の対象となる顧客に対して、漏洩電流の測定が行われる。この後、システムサーバ12は、漏洩電流の大きさが良好であると、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を顧客に電子メール等で送る。
【0042】
一方、漏洩電流の大きさが不良であると、システムサーバ12は、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を顧客に電子メール等で送ると共に電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの、再調査の依頼を送信する。
【0043】
ところで、台風や地震のような自然災害、火災のような人為的災害が発生すると、電力会社の担当者は、端末14を操作して、災害が発生した地区を表すデータ等を入力して、緊急絶縁測定の指示を入力する。これにより、システムサーバ12は緊急絶縁測定の処理を開始し、災害発生エリアに住む顧客に対して、漏洩電流の測定が緊急で行われる。この後、システムサーバ12は、災害発生後の漏洩電流の大きさが良好であると、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を電子メール等で顧客に送る。
【0044】
一方、災害発生後の漏洩電流の大きさが不良であると、システムサーバ12は、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を電子メール等で顧客に送ると共に電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの、再調査の依頼を送信する。
【0045】
このように、この実施の形態によれば、停電を伴なわない活線による絶縁測定である活線絶縁測定を、電力会社側から遠隔で行うことを可能にする。また、この実施の形態によれば、電力会社側のシステムサーバ12の設定条件、つまり天候等の任意の設定条件に応じた測定を可能にする。また、この実施の形態によれば、スマートメータ20から分電盤30までの間に設けられている電気配線121を含む電気配線の絶縁測定も可能である。なお、従来では電気配線121と分電盤30との接続部分で担当者が漏洩電流の測定を行っていた。
【0046】
(実施の形態2)
【0047】
この実施の形態では、保安用装置10が活線絶縁測定サービスを提供する。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0048】
保安用装置10の記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、電気設備・電気機器データを記憶している。電気設備・電気機器データは、住宅Aを含む各顧客の住宅建築年数つまり電気設備の配線経過年数や、電気機器の設置後年数および経過年数を表す。この電気設備・電気機器データの一例を図11に示す。この電気設備・電気機器データには、住宅Aを含む各顧客の住宅の建築年数、電気機器として電気温水器、電気空調設備、電化厨房が設置されている場合に、これらの年数が記録されている。さらに、電気設備・電気機器データには、測定結果である漏洩電流、漏洩電流の判定結果、漏洩電流が発生した不良原因等が記録されている。
【0049】
記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、不良発生データを記憶している。不良発生データは、電気設備・電気機器データを基にシステムサーバ12が生成したものであり、電気機器などの不良発生の状況を表す。この不良発生データの一例を図12に示す。この不良発生データには、電気設備・電気機器データの中から、電気配線や電気機器に不良が発生したデータを抽出したものが記録されている。この他にも、図示を省略しているが、不良発生データには、不良が発生した日付や日時などが記録されている。さらに、不良発生データには、不良発生率が付加されている。不良発生率は、不良発生データを基にシステムサーバ12が生成したものであり、建築年数(屋内の電気配線等)や、電気機器として電気温水器、電気空調設備、電化厨房の各経過年数に対応する不良発生率が記録されている。
【0050】
記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、活線絶縁調査データを記憶している。活線絶縁調査データは、活線絶縁測定を行った際に更新されるデータである。この活線絶縁調査データは、定期調査データ(図7)と同様であるので、図示を省略する。なお、活線絶縁調査データでは、定期調査データの調査年月日の更新が必要に応じて頻繁に行われる。
【0051】
保安用装置10のシステムサーバ12は、活線絶縁測定サービスを顧客に提供するために、次ぎの各処理を行う。まず、システムサーバ12は、データ作成処理を行う。システムサーバ12は、端末14からデータ作成の指示を受け取ると、電力会社の営業管理を行う別のシステムサーバのデータや、定期調査データを基にして、電気設備・電気機器データを作成する。また、システムサーバ12は、電気設備・電気機器データから不良発生データを作成し、さらに、この不良発生データから不良発生率のデータを作成する。
【0052】
システムサーバ12は、活線絶縁測定サービスを顧客に提供するために、活線絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、端末14から活線絶縁測定の開始の指示を受け取ると、図13に示す活線絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、活線絶縁測定の処理を開始すると、測定対象の顧客を抽出するための条件である、任意に設定された条件(以下、「任意設定条件」という)を調べる(ステップS41)。この任意設定条件は、あらかじめ端末14によりシステムサーバ12に設定されているか、または、ステップS41でシステムサーバ12が端末14から読み出す。
【0053】
この任意設定条件として各種のものがある。例えば、任意に設定された条件として電気設備条件がある。電気設備条件は、住宅の建築経年数や、増設工事竣工後の経年数などを条件としたデータである。
【0054】
任意設定条件として電気機器条件がある。電気機器条件は、住宅に設置されている電気温水器、電気空調設備および電化厨房設備の設置年数(例えば、15年程度以上)を条件とするデータである。また、電気機器条件としては、その他の電気機器の設置年数を条件としたデータであってもよい。
【0055】
任意設定条件として統計データ抽出条件がある。統計データ抽出条件は、電気設備や電気機器の不良発生の統計データにより示される、不良発生を条件とするデータである。さらに、統計データ抽出条件では、不良が発生した電気設備や電気機器(以下、「不良発生対象」という)が指定される。
【0056】
任意設定条件として日時条件がある。日時条件は昼夜間、個別の時間、曜日、季節などを条件とするデータである。
【0057】
さらに、任意設定条件として電力負荷条件がある。電力負荷条件は、電力使用の状態を条件とするデータである。
【0058】
以上の任意設定条件の他にも、雨天等の各種の条件を付加することも可能であり、また、複数の任意設定条件を組み合わせることも可能である。
【0059】
ステップS41が終了すると、システムサーバ12は、任意設定条件に該当する顧客を抽出する(ステップS42)。ステップS42でシステムサーバ12は、ステップS41で受け取った任意設定条件に対応して、該当する顧客を抽出する。例えば、ステップS41で受け取った任意設定条件が電気設備条件、つまり、住宅の建築経年数や増設工事竣工後の経年数などを条件とするデータである場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を、電気設備・電気機器データの建築年数の欄を参照して抽出する。
【0060】
ステップS41で受け取った任意設定条件が電気機器条件、つまり、電気温水器、電気空調設備および電化厨房設備の設置年数や、その他の電気機器の設置年数を条件とするデータである場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を、電気温水器、電気空調設備、電化厨房設備、その他の欄を参照して抽出する。
【0061】
ステップS41で受け取った任意設定条件が統計データ抽出条件である場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を次のようにして抽出する。システムサーバ12は、統計データである不良発生データ(図12)を参照し、不良発生対象の不良の状態を調べる。そして、システムサーバ12は高い不良率を条件として設定する。この後、システムサーバ12は設定した条件に該当する顧客を抽出する。
【0062】
この場合の具体的な条件の設定を図14に示す。図14では、不良発生対象が電気温水器、電気空調設備、建築年数である場合を例としている。システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の建築年数、電気温水器、電気空調設備の項目と、漏洩電流の項目と、それぞれの経過年数とから、建築年数、電気温水器、電気空調設備の故障発生の状態を調べる。この後、システムサーバ12は、不良率の高い条件を設定する。不良発生対象が電気温水器である場合、システムサーバ12は、例えば経過年数、屋外設置などを条件として設定する。また、不良発生対象が建築年数である場合、システムサーバ12は、経過年数などを条件として設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0063】
ステップS41で受け取った任意設定条件が日時条件であり、昼夜間、個別の時間、曜日、季節などを条件とするデータである場合、システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の、不良が発生した日付や時間を基に、不良発生対象の故障発生の状態を調べる。そして、システムサーバ12は不良率の高い期間や季節等を条件として設定する。この後、システムサーバ12はこの条件に該当する顧客を抽出する。
【0064】
この場合の具体的な条件の設定を図15に示す。図15では、図14と同様に不良発生対象が電気温水器、電気空調設備、建築年数である場合を例としている。システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の建築年数、電気温水器、電気空調設備の項目と、漏洩電流の項目と、それぞれの日付や時間(図示を省略)とから、建築年数、電気温水器、電気空調設備の故障発生の状態を調べる。この後、システムサーバ12は、不良率の高い時間や期間等を条件を設定する。不良発生対象が電気温水器である場合、システムサーバ12は、例えば夜間を条件として設定する。また、不良発生対象が建築年数である場合、システムサーバ12は、季節を条件として設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0065】
ステップS41で受け取った任意設定条件が電力負荷条件であり、電力使用の時間帯を条件とするデータである場合、システムサーバ12は、電力会社の営業管理を行うシステムサーバにアクセスして、電力使用に関するデマンドデータ、つまり所定時間毎の使用電力量を収集し、電力使用の状態を調べる。そして、システムサーバ12は電力使用の高い時間帯を条件として設定する。この後、システムサーバ12はこの条件に該当する顧客を抽出する。
【0066】
この場合の具体的な条件の設定を図16に示す。図16では、昼間が不在である家庭(昼間外出型の家庭)の電力負荷推移と、一般的な家庭(一般型の家庭)の電力負荷推移と、夜間の生活が多い家庭(夜間型の家庭)の電力負荷推移とを例としている。電力負荷が高い時間帯、つまり、使用されている電気機器が多い時間帯は不具合の発生が高いと想定されるので、システムサーバ12は、電力負荷が所定量以上であり、かつ、この状態が所定時間続くという条件を設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0067】
こうして、ステップS42が終了すると、システムサーバ12は、次ぎのステップS43〜ステップS51を行うが、これらの処理は、定期絶縁測定の処理の中の、ステップS3〜ステップS11と同様であるので、ステップS43〜ステップS51の説明を省略する。なお、ステップS43〜ステップS51の中のステップS47およびステップS49で更新されるのは、定期調査データの代わりに活線絶縁調査データである。
【0068】
こうして、この実施の形態により、定期的に行われる定期絶縁測定に比べて、任意設定条件に応じて抽出した顧客に対して絶縁測定を行うことができる。これにより、電気配線等の絶縁劣化の状況を把握可能にし、また、雨天などの天候で変化する絶縁劣化の状況を把握可能にする。
【0069】
(実施の形態3)
【0070】
この実施の形態では、各部屋などに電気を送る電路の状態を基にして、不良箇所の判定を行う。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0071】
この実施の形態では、分電盤30は、図17に示すように、分岐ブレーカ321〜32nに対して、検出部331〜33nを備えている。検出部331〜33nは、住宅Aの各電路の漏洩電流を計測する。検出部331〜33nは、常時、漏洩電流の計測結果をスマートメータ20にそれぞれ送る。
【0072】
この実施の形態によるスマートメータ20では、図18に示すように、監視制御部24が検出部331〜33nからの計測結果を受け取る。この後、監視制御部24は、計測結果に対して、スマートメータ20の計器番号と、漏洩電流の測定指示を受け取ったときの日付および時刻と、ブレーカ名とを付加して、測定データを生成する。そして、監視制御部24は、生成した測定データを、通信部21を制御して保安用装置10に送信する。
【0073】
保安用装置10のシステムサーバ12は、定期的に行われる定期絶縁測定の処理や、活線絶縁測定サービスで行われる活線絶縁測定の処理で、漏洩電流を検出すると、漏洩電流が発生した住宅Aのスマートメータ20に対して、検出部331〜33nによる漏洩電流の測定指示を送る。この後、システムサーバ12は、スマートメータ20から、測定データを受け取ると、検出部331〜33nの中で、漏洩電流が流れている分岐ブレーカを抽出する。この後、システムサーバ12は、電流測定時に漏洩電流が流れていた分岐ブレーカ名を測定結果に付加する。そして、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する際に、分岐ブレーカ名が付加された測定結果も送信する。
【0074】
こうして、この実施の形態によれば、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する際に、分岐ブレーカ名が付加された、漏洩電流の測定結果も送信するので、不良箇所の判定を容易にする。なお、この実施の形態では、分岐ブレーカ321〜32nに検出部331〜33nを設けたが、コンセント401〜40nに検出部331〜33nを設ける構成としてもよい。また、検出部331〜33nが単に電流を検出するセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 保安用装置(サーバ装置)
20 スマートメータ(電力量計)
21 通信部(通信手段)
22 計量部
23 活線絶縁測定部(測定手段)
24 監視制御部(制御手段)
30 分電盤
401〜40n コンセント
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家庭などの絶縁測定を行うための絶縁測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気の低電圧需要家である一般家庭では、電気の供給を受けるために電気配線が行われている。現在、電力会社は、電気を使用する一般家庭の保守・保安を目的として、一般家庭に対して定期点検業務を行っている。この定期点検業務では、電気配線の絶縁抵抗を調べるための絶縁測定などが行われる。この場合、担当者が一般家庭を訪れ、絶縁抵抗計を用いて、絶縁抵抗を測定する。また、測定のために電気を止めることができない場合には、電気配線が活線の状態で担当者は漏洩電流を測定する。この漏洩電流の測定には、各種の方式がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
こうした絶縁測定により、一般家庭での電気配線等の絶縁劣化が調べられる。そして、絶縁劣化の状態に応じて、一般家庭では、絶縁劣化に対応することになる。例えば、使用している電気配線に問題があれば、この配線がさらに調査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、絶縁劣化には、天候等の外的な要因に伴うものがある。例えば、晴天の場合には正常であった絶縁が、雨天の場合に悪化する、というようなケースがある。また、特定の電気機器、例えばエアコンの使用で絶縁が悪化する、というようなケースもある。つまり、一般家庭内の絶縁抵抗は、天候等による外的要因や、使用する電化製品や電気配線による内的要因で変化する。
【0006】
このように日々に変化する絶縁の劣化を、担当者が一般家庭を訪れる定期点検業務で、電力会社が把握することは困難である、という課題がある。
【0007】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、担当者が一般家庭を訪れることを不要にし、天候等の各種要因に伴う絶縁劣化を把握可能にする絶縁測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、通信網とデータの送受信をする通信手段を持つと共に顧客の住宅等に設置されている電力量計を使用する絶縁測定システムであって、前記電力量計に設けられ、前記顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する測定手段と、前記電力量計に設けられ、前記通信網から測定指示を受け取ると、前記測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、前記通信手段を制御して該通信網に送信する制御手段と、前記通信網に測定指示を送信した後で、該通信網を経て前記通信手段から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、該測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定するサーバ装置と、を備えることを特徴とする絶縁測定システムである。
【0009】
請求項1の発明では、顧客の住宅等に設置されている電力量計が通信網とデータの送受信をする通信手段を持つ。電力量計には測定手段と制御手段とが設けられている。測定手段は、顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定し、制御手段は、通信網から測定指示を受け取ると、測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、通信手段を制御して通信網に送信する。一方、サーバ装置は、通信網に測定指示を送信した後で、通信網を経て通信手段から測定データを受け取る。この後、サーバ装置は、あらかじめ設定されている規定値と、測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の絶縁測定システムにおいて、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計から前回得た測定データを、第1のデータとして記憶する記憶手段を備え、前記サーバ装置は、前記記憶手段の第1のデータを得たときから所定期間が経過した場合に、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の絶縁測定システムにおいて、前記記憶手段は、電気設備や電気機器に関連するデータ、例えば顧客の住宅等に設置された電気設備や電気機器の経年数、該顧客による電力使用の状態等のデーを、第2のデータとして記憶し、前記サーバ装置は、任意に設定された条件、例えば電気設備や電気機器に不良が発生する時期、電力使用が多い時期等のような条件により、前記記憶手段の第2のデータから顧客を抽出し、抽出した顧客の顧客宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、停電を伴なわない活線による絶縁測定を、遠隔からの指示で行うことを可能にする。また、顧客の住宅等において、従来では電気配線と分電盤との接続部分で絶縁測定を行っていたが、この発明によれば、電力量計の印加部で絶縁測定を行うので、電力量計から分電盤までの間に設けられている電気配線を含む、顧客宅に対する電気配線の絶縁測定も可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、顧客の住宅等に対しては、停電を伴なわない、活線による絶縁測定を定期的に、かつ、遠隔で行うことを可能にする。
【0014】
請求項3の発明によれば、任意に設定された条件を満たす顧客を対象に、絶縁測定を行うことを可能にする。例えば、特定の電気機器で不良が発生する時期、つまり、時間帯や天候等を基に抽出した顧客を対象として、絶縁測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による絶縁測定システムを示す構成図である。
【図2】分電盤を示す構成図である。
【図3】スマートメータの外観を示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
【図4】スマートメータを示す構成図である。
【図5】検出部を説明する図であり、図5(a)は3相の場合、図5(b)は2相の場合を示す図である。
【図6】顧客データの一例を示す図である。
【図7】定期調査データの一例を示す図である。
【図8】災害調査データの一例を示す図である。
【図9】定期絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図10】緊急絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2で用いられる電気設備・電気機器データの一例を示す図である。
【図12】不良発生データの一例を示す図である。
【図13】活線絶縁測定の処理を示すフローチャートである。
【図14】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図15】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図16】統計データによる条件の設定を説明する説明図である。
【図17】この発明の実施の形態3による分電盤の一例を示す構成図である。
【図18】スマートメータの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
(実施の形態1)
【0017】
この実施の形態による絶縁測定システムを図1に示す。図1の絶縁測定システムは活線絶縁測定を行うものであり、保安用装置10と、スマートメータ20と、分電盤30とを備えている。保安用装置10は電力会社に設置され、スマートメータ20と分電盤30の各設備は、住宅Aに設置されている。なお、図1以下の図では、信号の配線系統を図中の細線で示し、住宅Aでの電力の配線系統を太線で示して、2つを区別している。また、住宅Aは、多数の中の代表例を示している。
【0018】
まず、住宅Aの設置されている各設備について説明する。住宅Aにはコンセント401〜40nが備えられている。コンセント401〜40nには、各部屋の照明器具や空調機器等の電気機器が接続される。
【0019】
住宅Aでは、配電線101からの電流がスマートメータ20と電気配線121とを経て分電盤30に流れる。この電流は分電盤30で分岐される。分電盤30は、図2に示すように、主開閉器31と分岐ブレーカ321〜32nとを備えている。主開閉器31は、スマートメータ20から住宅Aに流れる過電流を検出して遮断する。分岐ブレーカ321〜32nは、主開閉器31を経て分岐された電流を住宅Aの各部屋の電路に流す際に、各電路の漏電を検出して遮断する。各電路には、コンセント401〜40nが接続されている。通常、1つの電路には、1つ以上のコンセントが接続されている。
【0020】
スマートメータ20(図1)は、配電線101から住宅Aに供給される電力を計量する電力量計であり、かつ、通信機能を持つ電力量計である。つまり、スマートメータ20は、通信網NWを介在して、電力会社の保安用装置10とデータの送受信が可能な状態にある。これにより、スマートメータ20は、住宅Aでの電力使用量などを保安用装置10に送信し、保安用装置10から各種の指示等を受け取る。こうしたスマートメータ20の一例を図3と図4とに示す。このスマートメータ20は、箱状のケース20Aに、通信部21と、計量部22と、活線絶縁測定部23と、監視制御部24とを備えている。
【0021】
スマートメータ20の通信部21は、通信線111により通信網NWに接続されている。これにより、通信部21は、監視制御部24の制御によって、電力会社の保安用装置10とデータの送受信が可能な状態にある。
【0022】
スマートメータ20の計量部22は、配電線101から住宅Aに供給される交流電力の使用量を計量する。計量部22は計量結果を監視制御部24に送る。計量部22は端子台22Aを備え、この端子台22Aを介在して、配電線101と通信線111と電気配線121とがスマートメータ20に接続されている。特に、電気配線121が端子台22Aに接続されている部分、つまり、電気配線の端部は、後述の検出部23Aが設けられている印加部でもある。印加部に対する電気配線が、住宅A側に電気を加える部分である。
【0023】
活線絶縁測定部23は、印加部以降つまり住宅A側で発生する漏洩電流を測定する。漏洩電流は、電気配線121を含む住宅Aの電気配線の絶縁不良や、電気機器等の絶縁不良で発生する。こうした漏洩電流を測定するために、活線絶縁測定部23は、検出部23Aを備えている。検出部23Aは、先に述べたように、端子台22Aの印加部に設けられている。検出部23Aは例えば零相変流器である。電気が3相の場合には、図5(a)に示すように、3相の電気配線がすべて零相変流器CTを貫通するように、零相変流器CTが印加部の近傍に設置されている。これにより、零相変流器CTは、位相が120度異なる電流の漏洩電流を検出する。また、電気が2相の場合には、図5(b)に示すように、2相の電気配線がすべて零相変流器CTを貫通するように、零相変流器CTが印加部の近傍に設置されている。これにより、零相変流器CTは、往復する電流から漏洩電流を検出する。つまり、検出部23Aにより、配電線が活線の状態で、印加部以降の電路で発生する漏洩電流が検出される。活線絶縁測定部23は、検出部23Aが検出した漏洩電流の大きさを調べて、漏洩電流の大きさを表す検出信号を監視制御部24に送る。
【0024】
スマートメータ20の監視制御部24は、電力会社の保安用装置10と共に活線絶縁測定のための処理と制御を行う。監視制御部24は、住宅Aに設置されているスマートメータ20の識別情報として、計器番号をあらかじめ記憶している。
【0025】
監視制御部24は、通信部21を経て、保安用装置10から測定指示を受け取ると、活線絶縁測定部23からの検出信号を受け取る。監視制御部24は、検出信号を受け取ると、検出信号が表す漏洩電流の大きさに対して、スマートメータ20の計器番号と、測定指示を受け取ったときの日付および時刻とを付加して、測定データを生成する。そして、監視制御部24は、生成した測定データを、通信部21を制御して保安用装置10に送信する。
【0026】
以上が住宅Aに設置されている設備の構成である。次に、電力会社が備える保安用装置10(図1)について説明する。保安用装置10の通信制御装置11は、通信網NWを経由したデータ通信を可能にする。つまり、通信制御装置11は、住宅Aから送信される測定データ等の各種データを受信すると、社内ネットワーク11Aを経て、受信したデータをシステムサーバ12に送る。また、通信制御装置11は、システムサーバ12からの指示等を、通信網NWを経て住宅Aのスマートメータ20に送信する。
【0027】
保安用装置10の端末14は、電力会社の担当者によって操作される専用のコンピュータである。端末14は、例えば、システムサーバ12からのデータを基に、住宅Aでの活線絶縁測定の結果等を表示する。
【0028】
保安用装置10の記憶装置13は、活線絶縁測定に必要とする各種データを記憶している。記憶装置13が記憶するデータに顧客データがある。顧客データは、電力会社の顧客に関するデータであり、顧客が住む住宅に設置されている計器などを示す。この顧客データの一例を図6に示す。この顧客データには、顧客の氏名および住所、顧客宅に設置されている電力量計の計器番号、顧客の電子メールのアドレスなどが記録されている。
【0029】
記憶装置13が記憶するデータに定期調査データがある。定期調査データは、低圧需要家である一般家庭の保守保安のために、4年に一度のように、定期的に行われる活線絶縁測定の測定結果を表す。この定期調査データの一例を図7に示す。この定期調査データには、活線絶縁測定の対象である顧客のリスト、調査年月日、調査時間、調査時の天候、測定結果である漏洩電流、漏洩電流の判定結果、漏洩電流が発生した不良原因等が記録されている。なお、定期調査データの中で、括弧内のデータは、再調査による漏洩電流などを表す。この括弧内のデータは、電気設備の保安等を行う機関が顧客宅を訪問して得たものである。
【0030】
記憶装置13が記憶するデータに災害調査データがある。災害調査データは、災害が発生したときの、一般家庭の保守保安のために、緊急に行われる活線絶縁測定の測定結果を表す。この災害調査データの一例を図8に示す。この災害調査データには、定期調査データに対して、災害の種類を表す災害種別の項目などが付加されている。災害調査データの対象となる災害には、台風や地震のような自然災害と、火災のような人為的災害とがある。
【0031】
記憶装置13が記憶するデータに気象データ(図示を省略)がある。気象データは、各種機関から提供されているものを蓄積したものである。気象データは、システムサーバ12により随時に更新されている。
【0032】
保安用装置10のシステムサーバ12は、定期的な活線絶縁測定(以下、「定期絶縁測定」という)と緊急の活線絶縁測定(以下、「緊急絶縁測定」という)とを行う。これらの測定を行う際には、システムサーバ12は、必要に応じて電力会社の営業管理を行うシステムサーバ(図示を省略)や、その他のサーバ(図示を省略)に対して、通信制御装置11を制御してアクセスする。
【0033】
システムサーバ12が行う処理の中で、まず、定期絶縁測定の処理について説明する。システムサーバ12は、端末14から定期絶縁測定の指示を受け取ると、図9に示す定期絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、定期絶縁測定の処理を開始すると、定期調査データの前回の調査年月日を参照して、定期絶縁測定の対象である顧客を抽出する(ステップS1)。この後、システムサーバ12は、降水量や湿度などの気象条件を含む設定条件を調べる(ステップS2)。設定条件は、端末14からシステムサーバ12に対して、あらかじめ入力されているデータである。ステップS2の後、システムサーバ12は、気象データなどを参照して設定条件を満たしたときに、通信制御装置11を制御して、スマートメータ20に測定指示を送信する(ステップS3)。
【0034】
ステップS3が終了すると、システムサーバ12は、通信制御装置11を経て、測定指示を送ったスマートメータ20から測定データを受信する(ステップS4)。この後、システムサーバ12は、測定データが示す漏洩電流の大きさと、規定値とを比較する(ステップS5)。ステップS5の規定値は、「電気設備技術基準の解釈」で規定されている値(1mA)を基にしている。漏洩電流の大きさが規定値以下であると(ステップS6)、システムサーバ12は、良好であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件、ステップS2の設定条件等を基にして定期調査データを更新し(ステップS7)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS8)。
【0035】
一方、ステップS6で、漏洩電流の大きさが規定値を越えると、システムサーバ12は、不良であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件、ステップS2の設定条件等を基にして定期調査データを更新し(ステップS9)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS10)。この後、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼つまり再調査の依頼を送信する(ステップS11)。
【0036】
ステップS8またはステップS11が終了すると、システムサーバ12は定期絶縁測定の処理を終了する。
【0037】
以上が定期絶縁測定の処理である。次に、緊急絶縁測定の処理について説明する。システムサーバ12は、端末14から緊急絶縁測定の指示を受け取ると、図10に示す緊急絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、緊急絶縁測定の処理を開始すると、電力会社の営業管理用のシステムサーバや端末14から、災害が発生したエリアのデータを受け取る(ステップS21)。この後、システムサーバ12は、顧客データの住所などを参照して、災害発生エリアに住む顧客を抽出し(ステップS22)、該当する顧客のスマートメータ20に測定指示を送信する(ステップS23)。
【0038】
ステップS23が終了すると、システムサーバ12は、通信制御装置11を経て、測定指示を送ったスマートメータ20から測定データを受信する(ステップS24)。この後、システムサーバ12は、測定データが示す漏洩電流の大きさと、規定値とを比較する(ステップS25)。漏洩電流の大きさが規定値以下であると(ステップS26)、システムサーバ12は、良好であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件等を基にして緊急絶縁測定データを更新し(ステップS27)、顧客データのアドレスを利用して、緊急絶縁測定であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS28)。
【0039】
一方、ステップS26で、漏洩電流の大きさが規定値を越えると、システムサーバ12は、不良であった漏洩電流の大きさ、測定時刻、当日の気象条件等を基にして緊急絶縁測定データを更新し(ステップS29)、顧客データのアドレスを利用して、定期調査であることを表す測定理由、測定の日時、当日の天候などの測定結果を電子メール等で顧客に送信する(ステップS30)。この後、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する(ステップS31)。
【0040】
ステップS28またはステップS31が終了すると、システムサーバ12は緊急絶縁測定の処理を終了する。
【0041】
次に、この実施の形態による絶縁測定システムの作用について説明する。電力会社では担当者が端末14を操作して、定期絶縁測定を行う際の気象条件等の設定条件を、システムサーバ12に送る。この後、担当者が端末14を操作して定期絶縁測定の指示を送ると、システムサーバ12は定期絶縁測定の処理を開始する。これにより、定期絶縁測定の対象となる顧客に対して、漏洩電流の測定が行われる。この後、システムサーバ12は、漏洩電流の大きさが良好であると、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を顧客に電子メール等で送る。
【0042】
一方、漏洩電流の大きさが不良であると、システムサーバ12は、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を顧客に電子メール等で送ると共に電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの、再調査の依頼を送信する。
【0043】
ところで、台風や地震のような自然災害、火災のような人為的災害が発生すると、電力会社の担当者は、端末14を操作して、災害が発生した地区を表すデータ等を入力して、緊急絶縁測定の指示を入力する。これにより、システムサーバ12は緊急絶縁測定の処理を開始し、災害発生エリアに住む顧客に対して、漏洩電流の測定が緊急で行われる。この後、システムサーバ12は、災害発生後の漏洩電流の大きさが良好であると、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を電子メール等で顧客に送る。
【0044】
一方、災害発生後の漏洩電流の大きさが不良であると、システムサーバ12は、この漏洩電流の大きさを含む測定結果を電子メール等で顧客に送ると共に電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの、再調査の依頼を送信する。
【0045】
このように、この実施の形態によれば、停電を伴なわない活線による絶縁測定である活線絶縁測定を、電力会社側から遠隔で行うことを可能にする。また、この実施の形態によれば、電力会社側のシステムサーバ12の設定条件、つまり天候等の任意の設定条件に応じた測定を可能にする。また、この実施の形態によれば、スマートメータ20から分電盤30までの間に設けられている電気配線121を含む電気配線の絶縁測定も可能である。なお、従来では電気配線121と分電盤30との接続部分で担当者が漏洩電流の測定を行っていた。
【0046】
(実施の形態2)
【0047】
この実施の形態では、保安用装置10が活線絶縁測定サービスを提供する。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0048】
保安用装置10の記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、電気設備・電気機器データを記憶している。電気設備・電気機器データは、住宅Aを含む各顧客の住宅建築年数つまり電気設備の配線経過年数や、電気機器の設置後年数および経過年数を表す。この電気設備・電気機器データの一例を図11に示す。この電気設備・電気機器データには、住宅Aを含む各顧客の住宅の建築年数、電気機器として電気温水器、電気空調設備、電化厨房が設置されている場合に、これらの年数が記録されている。さらに、電気設備・電気機器データには、測定結果である漏洩電流、漏洩電流の判定結果、漏洩電流が発生した不良原因等が記録されている。
【0049】
記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、不良発生データを記憶している。不良発生データは、電気設備・電気機器データを基にシステムサーバ12が生成したものであり、電気機器などの不良発生の状況を表す。この不良発生データの一例を図12に示す。この不良発生データには、電気設備・電気機器データの中から、電気配線や電気機器に不良が発生したデータを抽出したものが記録されている。この他にも、図示を省略しているが、不良発生データには、不良が発生した日付や日時などが記録されている。さらに、不良発生データには、不良発生率が付加されている。不良発生率は、不良発生データを基にシステムサーバ12が生成したものであり、建築年数(屋内の電気配線等)や、電気機器として電気温水器、電気空調設備、電化厨房の各経過年数に対応する不良発生率が記録されている。
【0050】
記憶装置13は、活線絶縁測定サービスを提供するために、活線絶縁調査データを記憶している。活線絶縁調査データは、活線絶縁測定を行った際に更新されるデータである。この活線絶縁調査データは、定期調査データ(図7)と同様であるので、図示を省略する。なお、活線絶縁調査データでは、定期調査データの調査年月日の更新が必要に応じて頻繁に行われる。
【0051】
保安用装置10のシステムサーバ12は、活線絶縁測定サービスを顧客に提供するために、次ぎの各処理を行う。まず、システムサーバ12は、データ作成処理を行う。システムサーバ12は、端末14からデータ作成の指示を受け取ると、電力会社の営業管理を行う別のシステムサーバのデータや、定期調査データを基にして、電気設備・電気機器データを作成する。また、システムサーバ12は、電気設備・電気機器データから不良発生データを作成し、さらに、この不良発生データから不良発生率のデータを作成する。
【0052】
システムサーバ12は、活線絶縁測定サービスを顧客に提供するために、活線絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、端末14から活線絶縁測定の開始の指示を受け取ると、図13に示す活線絶縁測定の処理を行う。システムサーバ12は、活線絶縁測定の処理を開始すると、測定対象の顧客を抽出するための条件である、任意に設定された条件(以下、「任意設定条件」という)を調べる(ステップS41)。この任意設定条件は、あらかじめ端末14によりシステムサーバ12に設定されているか、または、ステップS41でシステムサーバ12が端末14から読み出す。
【0053】
この任意設定条件として各種のものがある。例えば、任意に設定された条件として電気設備条件がある。電気設備条件は、住宅の建築経年数や、増設工事竣工後の経年数などを条件としたデータである。
【0054】
任意設定条件として電気機器条件がある。電気機器条件は、住宅に設置されている電気温水器、電気空調設備および電化厨房設備の設置年数(例えば、15年程度以上)を条件とするデータである。また、電気機器条件としては、その他の電気機器の設置年数を条件としたデータであってもよい。
【0055】
任意設定条件として統計データ抽出条件がある。統計データ抽出条件は、電気設備や電気機器の不良発生の統計データにより示される、不良発生を条件とするデータである。さらに、統計データ抽出条件では、不良が発生した電気設備や電気機器(以下、「不良発生対象」という)が指定される。
【0056】
任意設定条件として日時条件がある。日時条件は昼夜間、個別の時間、曜日、季節などを条件とするデータである。
【0057】
さらに、任意設定条件として電力負荷条件がある。電力負荷条件は、電力使用の状態を条件とするデータである。
【0058】
以上の任意設定条件の他にも、雨天等の各種の条件を付加することも可能であり、また、複数の任意設定条件を組み合わせることも可能である。
【0059】
ステップS41が終了すると、システムサーバ12は、任意設定条件に該当する顧客を抽出する(ステップS42)。ステップS42でシステムサーバ12は、ステップS41で受け取った任意設定条件に対応して、該当する顧客を抽出する。例えば、ステップS41で受け取った任意設定条件が電気設備条件、つまり、住宅の建築経年数や増設工事竣工後の経年数などを条件とするデータである場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を、電気設備・電気機器データの建築年数の欄を参照して抽出する。
【0060】
ステップS41で受け取った任意設定条件が電気機器条件、つまり、電気温水器、電気空調設備および電化厨房設備の設置年数や、その他の電気機器の設置年数を条件とするデータである場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を、電気温水器、電気空調設備、電化厨房設備、その他の欄を参照して抽出する。
【0061】
ステップS41で受け取った任意設定条件が統計データ抽出条件である場合、システムサーバ12は、このデータに該当する顧客を次のようにして抽出する。システムサーバ12は、統計データである不良発生データ(図12)を参照し、不良発生対象の不良の状態を調べる。そして、システムサーバ12は高い不良率を条件として設定する。この後、システムサーバ12は設定した条件に該当する顧客を抽出する。
【0062】
この場合の具体的な条件の設定を図14に示す。図14では、不良発生対象が電気温水器、電気空調設備、建築年数である場合を例としている。システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の建築年数、電気温水器、電気空調設備の項目と、漏洩電流の項目と、それぞれの経過年数とから、建築年数、電気温水器、電気空調設備の故障発生の状態を調べる。この後、システムサーバ12は、不良率の高い条件を設定する。不良発生対象が電気温水器である場合、システムサーバ12は、例えば経過年数、屋外設置などを条件として設定する。また、不良発生対象が建築年数である場合、システムサーバ12は、経過年数などを条件として設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0063】
ステップS41で受け取った任意設定条件が日時条件であり、昼夜間、個別の時間、曜日、季節などを条件とするデータである場合、システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の、不良が発生した日付や時間を基に、不良発生対象の故障発生の状態を調べる。そして、システムサーバ12は不良率の高い期間や季節等を条件として設定する。この後、システムサーバ12はこの条件に該当する顧客を抽出する。
【0064】
この場合の具体的な条件の設定を図15に示す。図15では、図14と同様に不良発生対象が電気温水器、電気空調設備、建築年数である場合を例としている。システムサーバ12は、不良発生データ(図12)の建築年数、電気温水器、電気空調設備の項目と、漏洩電流の項目と、それぞれの日付や時間(図示を省略)とから、建築年数、電気温水器、電気空調設備の故障発生の状態を調べる。この後、システムサーバ12は、不良率の高い時間や期間等を条件を設定する。不良発生対象が電気温水器である場合、システムサーバ12は、例えば夜間を条件として設定する。また、不良発生対象が建築年数である場合、システムサーバ12は、季節を条件として設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0065】
ステップS41で受け取った任意設定条件が電力負荷条件であり、電力使用の時間帯を条件とするデータである場合、システムサーバ12は、電力会社の営業管理を行うシステムサーバにアクセスして、電力使用に関するデマンドデータ、つまり所定時間毎の使用電力量を収集し、電力使用の状態を調べる。そして、システムサーバ12は電力使用の高い時間帯を条件として設定する。この後、システムサーバ12はこの条件に該当する顧客を抽出する。
【0066】
この場合の具体的な条件の設定を図16に示す。図16では、昼間が不在である家庭(昼間外出型の家庭)の電力負荷推移と、一般的な家庭(一般型の家庭)の電力負荷推移と、夜間の生活が多い家庭(夜間型の家庭)の電力負荷推移とを例としている。電力負荷が高い時間帯、つまり、使用されている電気機器が多い時間帯は不具合の発生が高いと想定されるので、システムサーバ12は、電力負荷が所定量以上であり、かつ、この状態が所定時間続くという条件を設定する。そして、システムサーバ12は、設定した条件に該当する顧客を、電気設備・電気機器データなどを参照して抽出する。
【0067】
こうして、ステップS42が終了すると、システムサーバ12は、次ぎのステップS43〜ステップS51を行うが、これらの処理は、定期絶縁測定の処理の中の、ステップS3〜ステップS11と同様であるので、ステップS43〜ステップS51の説明を省略する。なお、ステップS43〜ステップS51の中のステップS47およびステップS49で更新されるのは、定期調査データの代わりに活線絶縁調査データである。
【0068】
こうして、この実施の形態により、定期的に行われる定期絶縁測定に比べて、任意設定条件に応じて抽出した顧客に対して絶縁測定を行うことができる。これにより、電気配線等の絶縁劣化の状況を把握可能にし、また、雨天などの天候で変化する絶縁劣化の状況を把握可能にする。
【0069】
(実施の形態3)
【0070】
この実施の形態では、各部屋などに電気を送る電路の状態を基にして、不良箇所の判定を行う。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。
【0071】
この実施の形態では、分電盤30は、図17に示すように、分岐ブレーカ321〜32nに対して、検出部331〜33nを備えている。検出部331〜33nは、住宅Aの各電路の漏洩電流を計測する。検出部331〜33nは、常時、漏洩電流の計測結果をスマートメータ20にそれぞれ送る。
【0072】
この実施の形態によるスマートメータ20では、図18に示すように、監視制御部24が検出部331〜33nからの計測結果を受け取る。この後、監視制御部24は、計測結果に対して、スマートメータ20の計器番号と、漏洩電流の測定指示を受け取ったときの日付および時刻と、ブレーカ名とを付加して、測定データを生成する。そして、監視制御部24は、生成した測定データを、通信部21を制御して保安用装置10に送信する。
【0073】
保安用装置10のシステムサーバ12は、定期的に行われる定期絶縁測定の処理や、活線絶縁測定サービスで行われる活線絶縁測定の処理で、漏洩電流を検出すると、漏洩電流が発生した住宅Aのスマートメータ20に対して、検出部331〜33nによる漏洩電流の測定指示を送る。この後、システムサーバ12は、スマートメータ20から、測定データを受け取ると、検出部331〜33nの中で、漏洩電流が流れている分岐ブレーカを抽出する。この後、システムサーバ12は、電流測定時に漏洩電流が流れていた分岐ブレーカ名を測定結果に付加する。そして、システムサーバ12は、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する際に、分岐ブレーカ名が付加された測定結果も送信する。
【0074】
こうして、この実施の形態によれば、電気設備の保安等を行う機関に対して、漏洩電流の確認などの依頼を送信する際に、分岐ブレーカ名が付加された、漏洩電流の測定結果も送信するので、不良箇所の判定を容易にする。なお、この実施の形態では、分岐ブレーカ321〜32nに検出部331〜33nを設けたが、コンセント401〜40nに検出部331〜33nを設ける構成としてもよい。また、検出部331〜33nが単に電流を検出するセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 保安用装置(サーバ装置)
20 スマートメータ(電力量計)
21 通信部(通信手段)
22 計量部
23 活線絶縁測定部(測定手段)
24 監視制御部(制御手段)
30 分電盤
401〜40n コンセント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網とデータの送受信をする通信手段を持つと共に顧客の住宅等に設置されている電力量計を使用する絶縁測定システムであって、
前記電力量計に設けられ、前記顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する測定手段と、
前記電力量計に設けられ、前記通信網から測定指示を受け取ると、前記測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、前記通信手段を制御して該通信網に送信する制御手段と、
前記通信網に測定指示を送信した後で、該通信網を経て前記通信手段から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、該測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定するサーバ装置と、
を備えることを特徴とする絶縁測定システム。
【請求項2】
前記顧客の住宅等に設置されている電力量計から前回得た測定データを、第1のデータとして記憶する記憶手段を備え、
前記サーバ装置は、前記記憶手段の第1のデータを得たときから所定期間が経過した場合に、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁測定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、電気設備や電気機器に関連するデータ、例えば顧客の住宅等に設置された電気設備や電気機器の経年数、該顧客による電力使用の状態等のデーを、第2のデータとして記憶し、
前記サーバ装置は、任意に設定された条件、例えば電気設備や電気機器に不良が発生する時期、電力使用が多い時期等のような条件により、前記記憶手段の第2のデータから顧客を抽出し、抽出した顧客の顧客宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁測定システム。
【請求項1】
通信網とデータの送受信をする通信手段を持つと共に顧客の住宅等に設置されている電力量計を使用する絶縁測定システムであって、
前記電力量計に設けられ、前記顧客の住宅等の電気配線に電気を供給する印加部で、活線の漏洩電流を測定する測定手段と、
前記電力量計に設けられ、前記通信網から測定指示を受け取ると、前記測定手段が測定した漏洩電流を表す測定データを、前記通信手段を制御して該通信網に送信する制御手段と、
前記通信網に測定指示を送信した後で、該通信網を経て前記通信手段から測定データを受け取ると、あらかじめ設定されている規定値と、該測定データが示す漏洩電流との比較により、絶縁劣化の良否を判定するサーバ装置と、
を備えることを特徴とする絶縁測定システム。
【請求項2】
前記顧客の住宅等に設置されている電力量計から前回得た測定データを、第1のデータとして記憶する記憶手段を備え、
前記サーバ装置は、前記記憶手段の第1のデータを得たときから所定期間が経過した場合に、前記顧客の住宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁測定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、電気設備や電気機器に関連するデータ、例えば顧客の住宅等に設置された電気設備や電気機器の経年数、該顧客による電力使用の状態等のデーを、第2のデータとして記憶し、
前記サーバ装置は、任意に設定された条件、例えば電気設備や電気機器に不良が発生する時期、電力使用が多い時期等のような条件により、前記記憶手段の第2のデータから顧客を抽出し、抽出した顧客の顧客宅等に設置されている電力量計に測定指示を送る、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−189539(P2012−189539A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55393(P2011−55393)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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