説明

絶縁物ナノ粒子のプラズマ処理方法及び処理装置

粒子サイズが100nm以下の酸化物及び絶縁膜でコーティングされたナノ粒子を気体搬送しながらプラズマ処理することで,酸化物ナノ粒子表面の有機汚染,未反応基を除去することができる。
【課題】粒子サイズが100nm以下の酸化物及び絶縁膜でコーティングされたナノ粒子は,壁面などへ付着しやすく,凝集体となりやすい。これらの材料を単分散状態で気体搬送することは極めて困難である。
【解決手段】ブラシなどのような微小な突起を多数設けた構造体をホッパー下端に設置し,その構造体を回転させることで材料を定量供給する。供給した材料を体積変動によって煙状化し,キャリアガスと共にプラズマ処理する部分に気体搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,微粒子を気体搬送しながらプラズマ処理する装置に関する。特に,本発明は,処理する微粒子が絶縁性であるナノ粒子の供給方法及び改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術において,Siウェーハ上の有機物及び有機汚染は,酸素を主成分としたガスをプラズマ化して生成させた酸素ラジカルによって揮発除去される。容量結合型及び誘導結合型によるプラズマは,100Pa前後で発生させることが一般的である。
【0003】
高い透明性と紫外線遮蔽機能を有する白色顔料として,酸化チタン及び酸化亜鉛ナノ粒子が広く用いられている。酸化チタン及び酸化亜鉛のバンドギャップは共に約3.2eVであるため,約380nm以下の波長領域を遮蔽することができる。
【0004】
酸化チタンなどの機能性ナノ粒子は,一般的に液相中で合成されるため,合成されたナノ粒子表面には有機物が残存している。加えて,気相法もしくは液相法で生成したナノ粒子の表面活性をシールドする目的にゾルゲル法などの手法で酸化物をコーティングする場合がある。しかしながら,ゾルゲル法で形成したシールドには未反応基が残ってしまう。
【0005】
特にゾルゲル法で微粒子表面に形成したシリカ膜には,疎水性の未反応基が残留してしまう。シリカは親水性であるため,シリカ表面の有機汚染,未反応基を除去することによって,親水性を増すことができる。つまり,酸素含有プラズマによって,シリカ膜表面を処理することによって,ナノ粒子の分散溶液への分散性が高めることが期待できる。
【0006】
微粒子表面の有機汚染などを除去するため,容器に一定量の微粒子を搭載してプラズマ処理する場合,プラズマ処理できる領域とできない領域ができてしまう。プラズマ処理できる領域においても粒子表面全ての有機汚染を除去することはできない。このため,粒子をプラズマ処理する場合,粒子を動かしながらプラズマ処理する必要がある。粒子を動かし,粒子表面全てをプラズマ処理する手段として,気体搬送しながら,プラズマ領域を通過させて有機汚染を除去する方法が有効である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粒子サイズが100nm以下のナノ粒子の内,酸化物ナノ粒子は,特に壁面などへ付着しやすく,凝集体となりやすい。定量供給する手法として,スクリューフィーダ,振動フィーダが多く利用される。しかし,スクリューフィーダの場合は,回転するスクリューと配管間のギャップを狭くする必要がある。酸化物ナノ粒子を供給する場合,ギャップ間で凝集するため,供給することすら困難となる。振動フィーダの場合,文献に示されているように,振動周波数を可変することで供給量を制御することができる。しかし,酸化物ナノ粒子の場合,振動によって顆粒状になってしまう問題がある。
【特許文献1】特開平8−33839号公報
【0008】
次に,プラズマ部として,一対の電極間に誘電体を介した誘電体バリア放電方式を用いた場合,放電ギャップは10mm程度である。この狭ギャップ間に発生させたプラズマ雰囲気に酸化物ナノ粒子を凝集体もしくは顆粒状の材料を定量供給すると直ちに詰まってしまう。
【0009】
以上の様に,酸化物ナノ粒子をプラズマ処理する際,配管内の付着,放電ギャップ内での詰まりを抑制できる材料のプラズマ処理方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
プラズマ処理するナノ粒子を収納する容器(ホッパー)と,容器内のナノ粒子を掻き落して定量供給する定量供給機構と,定量供給されたナノ粒子を体積変動によって煙状化しキャリアガスと共に気体搬送する機構と,気体搬送されたナノ粒子をプラズマ処理機構と,排気機構及びナノ粒子を回収する機構で構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,酸化物ナノ粒子の定量供給と煙状化を実施後、プラズマ処理機構に気体搬送することで,酸化物ナノ粒子表面の有機汚染,未反応基を除去と、ナノ粒子の分散性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ナノ粒子の定量供給機構をホッパー下端に設け,定量供給機構にブラシなどのような微小な突起を多数設けた構造体を設置し,その構造体を回転させることで材料を定量供給する。回転する構造体には微小な突起を設けることによって詰まることなく,定量供給することができ,供給速度は構造体の回転速度によって制御することができる。
【0013】
また,定量供給機構から供給された材料を煙状化するため,定量供給機構の下端以降の空間を体積変動させ,この体積変動によって,定量供給した材料を煙状化することができる。煙状化した材料を直ちにキャリアガスに乗せて気体搬送しプラズマ処理機構でプラズマ処理を行う。
【0014】
なお,プラズマ処理機構は放電ギャップ内での詰まりを抑制するため,キャリアガスとは別にガスをプラズマ部に供給すると共に,プラズマ電極を縦型にして,材料供給の入口を上部にすることで詰まり難い構成とする。
【実施例】
【0015】
図1はプラズマ処理装置の全構成を示し,1はプラズマ処理する材料をセットするためホッパーを,2はホッパー内壁への材料の付着を防止するための攪拌機構を,3はホッパーと煙状化室との間に設けられた回転駆動体を,4は回転駆動体の駆動用モータを,5は煙状化室を,6はキャリアガスを,7はガスを,8は誘電体を,9はRF電極を,10はアース電極を,11は真空ポンプを,12はダイヤフラムポンプを,13はバッファを,14はフィルタを,21は材料を,22はブラシを,23はホルダーを,23はホルダーを,31はボイスコイルをそれぞれ示す。
【0016】
図2は本発明の回転駆動体の一実施例を示し,ホッパー1と煙状化室5との間に設けて,ホッパー内の材料を定量供給する。図3は本発明の煙状化室の一実施例を示し,回転駆動体3から定量供給された材料を煙状化する。
【0017】
以下,本発明の一実施例を図1,図2及び図3を用いて説明する。
【0018】
プラズマ処理する材料をホッパー1にセットする。ホッパー内壁への付着を防止する撹拌機構2を駆動し,ホッパー内にセットされた材料をホッパー壁面への付着を防止すると共に材料の凝集を防いでいる。
【0019】
ホッパー1と煙状化室5との間に設けられた回転駆動体3は,図2に示すようにホッパー1下端の材料21を煙状化室側に掻き落す。駆動体は円筒型のホルダー23に部分的にブラシ22が設置されている。駆動用モータ4によって回転し,回転速度の制御によって,材料の供給速度を制御することができる。
【0020】
煙状化室5は,周波数5〜500Hz,体積変動率<10%の範囲で体積を変動させる。図3に示すようにボイスコイル31]に入力された電力によって加振する。煙状化室5は加振による体積変動により,供給された材料は煙状化する。煙状化室5には,キャリアガス6が導入されているため,直ちにキャリアガス6と共にプラズマ処理部8,9,10に導かれる。この際,キャリアガス6は,希ガスと反応性ガスの混合ガスを用いる。
【0021】
プラズマ処理部8,9,10は,一対の電極9,10の一方9に周波数13.56MHzの高周波電力を投入し,誘電体8を介した他方のアース10に接続する誘電体バリア方式を用いる。本実施例では10mmほどの放電ギャップにプラズマが発生される。プラズマ処理部8,9,10の入口には,煙状化室5に導入されているキャリアガス6とは別のガス7が導入される。
【0022】
排気系統は,真空ポンプ11及びダイヤフラムポンプ12が設置される。真空ポンプ11は,装置内を素早く短時間で置換し,ダイヤフラムポンプ12はプラズマ処理された材料の回収を行う。排気系統には,バッファタンク13及びフィルタ14が設けられ,プラズマ処理された材料はバッファタンク13で1次回収され,更にフィルタ14で二次回収される。
【0023】
酸化チタンナノ粒子にゾルゲル法で形成したシリカ膜の未反応基を有した材料を本発明の装置で処理した。処理条件及び手順はは以下の通りである。
【0024】
真空ポンプで装置内を排気した後,He−Ar混合ガスと酸素ガスを導入する。トータル流量は10slmである。なお,酸素分圧は1%である。ダイヤフラムポンプで装置内の圧力を20kPaとして,プラズマが発生する。RF電力は2kWである。
【0025】
プラズマが発生した後,煙状化室を周波数50Hzで体積変動させる。供給モータを駆動し,材料を煙状化室に導入する。煙状化室で煙状化した材料は,キャリアガスと共にプラズマ部に送られ,プラズマ処理される。プラズマ処理された材料は,排気系統に設けられたフィルタで回収した。
【0026】
図4にプラズマ処理前後の分散性の評価結果を示す。エタノール分散液に5w%のシリカ膜付酸化チタンナノ粒子を分散させ,分散10日経過後の分散領域の沈降量を評価した。プラズマ処理によって,分散性が向上し,沈降量が低下していることがわかる。プラズマ処理によってシリカ膜の未反応基が除去されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
有機汚染の少ない酸化物ナノ粒子を提供でき,高い透明性と紫外線遮蔽効果を兼ね備えた特性が必要な化粧品材料の用途において,微粒子の粒径が100nm以下のナノ粒子のニーズは大きい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の一実施例
【図2】本発明の回転駆動体の一実施例
【図3】本発明の煙化室の一実施例
【図4】本発明の分散性の評価結果
【符号の説明】
【0029】
1 ホッパー
2 撹拌機構
3 回転駆動体
4 駆動用モータ
5 煙状化室
6 キャリアガス
7 ガス
8 誘電体
9 RF電極
10 アース電極
11 真空ポンプ
12 ダイヤフラムポンプ
13 バッファ
14 フィルタ
21 材料
22 ブラシ
23 ホルダー
31 ボイスコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を収納する容器と,前記容器内のナノ粒子を掻き落して定量供給する機構と,定量供給されたナノ粒子を体積変動によって煙状化しキャリアガスと共に気体搬送する機構と,気体搬送されたナノ粒子をプラズマ処理機構と,排気機構及びナノ粒子を回収する機構から構成したことを特徴とするナノ粒子のプラズマ処理装置。
【請求項2】
ナノ粒子が収納された容器から閉じた空間に前記ナノ粒子を掻き落とすことで定量供給し,前記閉じた空間の体積変動によって前記ナノ粒子を煙状化し,キャリアガスと共に気体搬送し,気体搬送されたナノ粒子をプラズマ処理した後,排気機構に設けらたフィルタなどで回収することを特徴とするナノ粒子のプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の定量供給する機構は,ブラシなどの微小な突起を多数設けた構造体であり,その構造体をモータなどによって回転駆動させることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1及び請求項2に記載の煙状化して気体搬送する機構は,5〜500Hzの範囲で体積変動していることを特徴とする。
【請求項5】
請求項1及び請求項2に記載のキャリアガスは,アルゴンとヘリウムの混合ガスと酸素などの反応性ガスの混合ガスであることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1及び請求項2に記載のプラズマ処理部の放電方式は誘電体バリア放電方式であり,気体搬送されたナノ粒子は重力方向に移動することを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75658(P2006−75658A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259113(P2004−259113)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(300050367)日立計測器サービス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】