説明

絶縁継手、及び常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造

【課題】短くて小型な絶縁継手、及びこの絶縁継手を利用した常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造を提供する。
【解決手段】絶縁継手1は、高電位の流体配管110と低電位の流体配管120とを電気的に絶縁した状態で接続するための部材である。この絶縁継手1は、高電位の流体配管110の端部に接続される第1接続筒部10と、低電位の流体配管120の端部に接続される第2接続筒部20と、両側にテーパー面31,32が形成された筒状のコンデンサコーン部30と、を備える。コンデンサコーン部30は、第1接続筒部10がコンデンサコーン部30の内周面33に接続され、第2接続筒部20がコンデンサコーン部30の外周面34に接続されるように、第1接続筒部10と第2接続筒部20との間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流通する流体配管同士を電気的に絶縁した状態で接続可能な絶縁継手に関する。特に、短くて小型な絶縁継手に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の流体を輸送するために流体配管が利用されており、特に、流体配管に流通する流体が冷媒である場合など、断熱性が求められる場合においては、真空断熱層を有する二重管構造の配管(真空断熱管)が利用されている。例えば、超電導ケーブルでは、超電導導体層を有する導体部を収納し、超電導導体層を冷却する冷媒が流通する冷媒配管として、真空断熱管が利用されている。
【0003】
超電導ケーブルには、超電導導体層の上に電気絶縁層を有する導体部(所謂ケーブルコア)が上記冷媒配管に収納され、当該電気絶縁層も冷媒(例、液体窒素(LN2))の温度に冷却される低温絶縁型のもの(例えば、特許文献1の段落0004参照)と、超電導導体層の上に電気絶縁層を有しない導体部が上記冷媒配管に収納され、この冷媒配管の上に電気絶縁層が形成され、当該電気絶縁層が常温に保持される常温絶縁型のもの(例えば、特許文献1の段落0003参照)とがある。
【0004】
低温絶縁型超電導ケーブルでは、冷媒配管に流通する冷媒を所定の温度に冷却維持するため、ケーブル外部に設けられた冷却システムに冷媒を貯留して所定の温度に調整し、冷媒配管と冷却システムとを流体配管を介して接続して、冷却システムで冷却した冷媒を冷媒配管に送り、使用時に昇温した冷媒配管の冷媒を冷却システムに戻す、という循環供給方式が提案されている。通常、冷却システムなどの外部装置は、接地部(低電圧部)に設けられる。低温絶縁型超電導ケーブルでは、高電圧部である超電導導体層の上に電気絶縁層を有するため、冷媒配管をアース電位(低電位)にしており、冷媒配管と外部装置とを流体配管を介して直接接続しても、電位差による問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐64041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、常温絶縁型超電導ケーブルでは、高電圧部である超電導導体層の上に電気絶縁層を有していないため、冷媒配管が高電位である。そのため、高電位の冷媒配管とアース電位(低電位)の外部装置とを流体配管を介して直接接続した場合、電位差により外部装置が故障する虞がある。よって、冷媒配管と外部装置との間で冷媒を流通させる場合、高電位の冷媒配管に接続される流体配管と低電位の外部装置に接続される流体配管との接続部に電界を緩和し、電気的に絶縁した状態で接続するための構造が必要である。
【0007】
ところで、常電導ケーブルには、絶縁油が流通する油管を備えるOFケーブルがある。OFケーブルと油タンクとの接続には、絶縁継手が利用されている。絶縁継手は、エポキシ樹脂などの電気絶縁性に優れる材料からなる絶縁筒と、絶縁筒と油管とを接続する連結筒を備えるものが代表的である。この絶縁筒は、通常、単なる円筒状である。
【0008】
ここで、上述したような高電位の流体配管と低電位の流体配管とを接続するにあたり、上記した絶縁継手を採用することを考えた場合、絶縁筒の長さを確保することで、高電位の流体配管の電界を緩和することが可能である。しかし、この場合、絶縁継手の全長が長くなることから、流体配管の接続構造も長くなる。また、絶縁筒の電界ストレスを緩和するために絶縁筒を厚くする必要があり、絶縁継手の径が大きくなることから、流体配管の接続構造も大きくなる。
【0009】
このような絶縁継手の長大化は、ハンドリング性の低下、搬送作業性の低下、接続作業性の低下などを招くことから、好ましくない。また、超電導ケーブルの布設現場では、超電導ケーブルと冷却システムといった外部装置との接続箇所の収納スペースを十分に確保することが難しいことがあり、収納スペースの縮小のために、絶縁継手(流体配管の接続構造)はできるだけ小さいことが望まれる。
【0010】
そこで、本発明の目的の一つは、短くて小型な絶縁継手、及びこの絶縁継手を利用した常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の絶縁継手は、流体が流通する流体配管同士を接続する絶縁継手であり、高電位の流体配管の端部に接続される第1接続筒部と、低電位の流体配管の端部に接続される第2接続筒部と、両側に傾斜面(テーパー面)が形成された筒状のコンデンサコーン部と、を備える。そして、第1接続筒部がコンデンサコーン部の内周面に接続され、第2接続筒部がコンデンサコーン部の外周面に接続されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、コンデンサコーン部を備えることで、短い距離であっても、高電位の流体配管の電界を緩和することができ、高電位の流体配管と低電位の流体配管とを接続することができる。また、コンデンサコーン部は、高電位の流体配管の電界を効果的に緩和することができるので、絶縁継手の長さを短くできると共に、電界ストレスも効果的に緩和することができるので、絶縁継手の径も小さくできる。よって、絶縁継手の小型化を図ることができ、流体配管の接続構造も小さくできる。
【0013】
流体の流れる方向は、高電位の流体配管から低電位の流体配管に向かって流れてもよいし、低電位の流体配管から高電位の流体配管に向かって流れてもよい。また、コンデンサコーン部の両側に形成されるテーパー面は、高電位側では第1接続筒部から第2接続筒部に向かうに従って厚くなるように、一方、低電位側では、第2接続筒部から第1接続筒部に向かうに従って厚くなるように形成し、コンデンサコーン部の断面を略平行四辺形状にすることが挙げられる。
【0014】
コンデンサコーン部は、電気絶縁材料からなる絶縁部内に金属箔を埋設し、金属箔間の電圧分担が略均一になるように金属箔間の静電容量を適当に分布させたものであれば、特に限定されるものではない。また、コンデンサコーン部は、流体に接触することから流体と反応せず、流体温度に対する耐熱性又は耐低温脆性を有する材料を利用するとよい。例えば、絶縁部は、エポキシ樹脂などの電気絶縁性に優れる樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)といった断熱性や強度にも優れる複合材料や、ナイロン6(例えば、MCナイロン(日本ポリペンコ株式会社の登録商標))などの材料で形成し、金属箔にはアルミニウム箔などを用いることが挙げられる。特に、超電導ケーブルの冷媒が流通する流体配管同士を接続する場合など、断熱性が求められる場合においては、繊維強化プラスチック(FRP)で絶縁部を形成することが好ましい。
【0015】
第1接続筒部及び第2接続筒部はそれぞれ一端側が流体配管の端部に接続され、他端側では第1接続筒部に対して第2接続筒部が外側になるように径が異なる。そして、第1接続筒部がコンデンサコーン部の内周面に接続され、第2接続筒部がコンデンサコーン部の外周面に接続されることで、第1接続筒部と第2接続筒部との間にコンデンサコーン部が設けられる。これら第1接続筒部及び第2接続筒部は、流体と反応せず、流体温度に対する耐熱性又は耐低温脆性を有する材料を利用することができる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属が挙げられる。特に、ステンレス鋼は強度に優れて好ましい。
【0016】
本発明の絶縁継手の一形態としては、少なくとも低電位側の外側に真空槽が形成されていることが挙げられる。
【0017】
上述したように、コンデンサコーン部の両側にはテーパー面が形成されており、このテーパー面が形成されたテーパー部では、コンデンサコーン部の厚さが薄くなる。ここで、冷媒が流通する場合など、断熱性が求められる場合は、このテーパー部で断熱性が低下する。上記構成によれば、真空槽が形成されていることで、断熱性を確保することができる。また、第2接続筒部の外周に断熱材を配置し熱絶縁層を形成することで、侵入熱を抑え、断熱性をある程度高めることができる。
【0018】
本発明の絶縁継手の一形態としては、少なくとも高電位側の外側に碍管が設けられていることが挙げられる。
【0019】
この構成によれば、碍管が設けられていることで、高電位側において電気絶縁特性を高めることができ、また、流体配管の接続構造をより小さくできる。碍管には、磁器製又はポリマー製のものを用いることができる。特に、高電圧部(例えば22kV級以上)と低電圧部(接地部)との間で流体を流通させる場合に好適である。また、碍管を設けておくことで、この接続構造を屋外環境でも設置し易い。一方、この接続構造を屋内など、汚損による特性劣化が起こり難い環境に設置する場合は、エポキシ樹脂などの樹脂製の套管を用いてもよい。
【0020】
上記した本発明の絶縁継手を利用して、以下の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造を構築することができる。この常温絶縁型超電導ケーブルは、超電導導体層を有する導体部と、導体部を収納し、超電導導体層を冷却する冷媒が流通する冷媒配管と、冷媒配管の上に形成される電気絶縁層と、を備える。
【0021】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造は、超電導ケーブルの超電導導体層と電気的に接続され、常温側に引き出される引き出し導体を備え、超電導導体層と引き出し導体との接続構造を有する。また、超電導ケーブルの冷媒配管から引き出し導体の引き出し方向とは異なる方向に分岐するように冷媒配管に接続される高電位の流体配管と、外部装置に接続される低電位の流体配管とを備える。そして、これら流体配管同士が、上記した本発明の絶縁継手により接続され、流体配管の接続構造を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造は、超電導導体層と電気的に接続される引き出し導体を備え、超電導導体層と引き出し導体との接続構造を有する。また、超電導ケーブルの冷媒配管に接続されて高電位となる流体配管と、低電圧部(接地部)に設けられる外部装置に接続されて低電位(アース電位)となる流体配管とを備え、流体配管同士が絶縁継手により接続され、流体配管の接続構造を有する。流体配管同士の接続に上記した本発明の絶縁継手を利用することで、流体配管の接続構造を小さくすることができる。よって、この流体配管の接続構造を収納する収納スペースの縮小を図ることができる。
【0023】
また、流体配管同士の接続に上記した本発明の絶縁継手を利用することで、流体配管の接続構造を、超電導導体層と引き出し導体との接続構造よりも小さくすることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の絶縁継手は、コンデンサコーン部を備えることで、短くかつ小型でありながら、高電位の流体配管の電界を緩和することができる。また、本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造は、冷媒配管に接続される流体配管と外部装置に接続される流体配管との接続に、上記した本発明の絶縁継手を利用することで、流体配管の接続構造を小さくして、当該接続構造の収納スペースの縮小を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1に係る絶縁継手を備える流体配管の接続構造を示す要部拡大概略半断面図である。
【図2】常温絶縁型超電導ケーブルの端末の概略構成を示す要部拡大一部切欠断面図である。
【図3】常温絶縁型超電導ケーブルの一例の構造を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。
【0027】
(実施の形態1)
以下、図1を参照して、実施の形態1に係る絶縁継手1、及びその絶縁継手1を備える流体配管の接続構造100を説明する。なお、この例では、絶縁継手1により互いに接続される流体配管110,120に流通する流体が冷媒(例えば、液体窒素(LN2))である場合を例に挙げて説明する。
【0028】
[絶縁継手]
図1に示す絶縁継手1は、高電位の流体配管110と低電位の流体配管120とを電気的に絶縁した状態で接続するための部材である。この絶縁継手1は、高電位の流体配管110の端部に接続される第1接続筒部10と、低電位の流体配管120の端部に接続される第2接続筒部20と、両側にテーパー面31,32が形成された筒状のコンデンサコーン部30と、を備える。
【0029】
まず、流体配管110及び流体配管120は、冷媒が流通することから、真空断熱層を有する二重管構造の真空断熱管が利用されている。この真空断熱管は、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属製の内管及び外管を有し、両管の間が真空引きされて真空断熱層が形成されている。この例では、内管及び外管のそれぞれにコルゲート加工が施されている。また、真空断熱層にスーパーインシュレーションといった断熱材を配置すると、断熱性を高めることができる。内管と外管との間にスペーサを配置すると、両管の接触を防ぎ、接触箇所からの熱侵入を防止でき、断熱性を高めることができる。
【0030】
第1接続筒部10及び第2接続筒部20はそれぞれ一端側が流体配管110,120の端部に接続されている。第1接続筒部10は、一端側から他端側に亘って流体配管110と径が略等しくなるように形成されている。一方、第2接続筒部20は、一端側と他端側とで径が異なり、一端側が流体配管120と径が略等しく、他端側が第1接続筒部10に対して外側になるように段差状に形成されている。また、第1接続筒部10と第2接続筒部20とは、長手方向に一部重複している。第1接続筒部10及び第2接続筒部20は、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属で形成されている。
【0031】
この例では、第2接続筒部20の流体配管120に接続される一端側において、流体配管120の真空断熱層に導通する真空引きポート125が取り付けられている。この真空引きポート125は、シールオフバルブであり、第2接続筒部20内で屈曲し、第2接続筒部20の径方向に先端部が突出するように設けられている。
【0032】
コンデンサコーン部30は、両側にテーパー面31,32が形成された筒状の部材である。そして、第1接続筒部10の外周面がコンデンサコーン部30の内周面33に接続され、第2接続筒部20の内周面がコンデンサコーン部30の外周面34に接続されるように、コンデンサコーン部30が第1接続筒部10と第2接続筒部20との間に設けられている。このようにコンデンサコーン部30が設けられることで、第1接続筒部10と第2接続筒部20とは電気的に絶縁された状態となる。コンデンサコーン部30の高電位側に形成されるテーパー面31は、第1接続筒部10から第2接続筒部20に向かうに従って厚くなるように、一方、低電位側に形成されるテーパー面32は、第2接続筒部から第1接続筒部に向かうに従って厚くなるように形成されている。また、テーパー面31,32は略平行であり、コンデンサコーン部30の断面は略平行四辺形状である。コンデンサコーン部30は、絶縁部がガラス繊維強化プラスチック(G‐FRP)で形成されており、この例では、第1接続筒部10とコンデンサコーン部30と第2接続筒部20とを接着剤で接着している。
【0033】
この例では、絶縁継手1において、少なくとも低電位側の外側に真空槽40が形成されている。この真空槽40は、少なくとも低電位側の外側を覆うように、両端にフランジ43,44を有する筒状体42を第2接続筒部20の外側に取り付けることで形成されている。具体的には、筒状体42の一方のフランジ43が第2接続筒部20の外周面に接続されると共に、流体配管120の外周面に筒状の台座41を装着し、この台座41に筒状体42の他方のフランジ44が接続されることで、真空槽40が形成されている。筒状体42は、径方向に2分割可能に形成され、第2接続筒部20の外側からの取り付けが容易になっており、台座41及び筒状体42は、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属で形成されている。また、筒状体42のフランジ44には、真空槽40に導通する真空引きポート45が取り付けられており、真空槽40の真空引きが可能である。この真空引きポート45は、シールオフバルブであり、筒状体42の軸方向に先端部が突出するように設けられている。なお、ここでいう「低電位側」とは、コンデンサコーン部30の低電位側のテーパー面32と内周面33との交点よりも軸方向に、流体配管120が接続される第2接続筒体20の一端側に向かう側のことである。
【0034】
また、この例では、絶縁継手1において、少なくとも高電位側の外側に碍管50が設けられている。この碍管50は、上記真空槽40の筒状体42の外周面に筒状の取り付け金具55を接続し、碍管50の底部に設けられたフランジ51と取り付け金具55のフランジ56とをボルト締結することで、取り付けられている。なお、ここでいう「高電位側」とは、コンデンサコーン部30の低電位側のテーパー面31と外周面34との交点よりも軸方向に、流体配管110が接続される第1接続筒体10の一端側に向かう側のことである。
【0035】
[流体配管の接続構造]
次に、図1に示す流体配管の接続構造100の構築手順の一例を説明する。
【0036】
碍管50及び取り付け金具55を流体配管110側に逃がし、流体配管120の外周面の所定の位置に台座41を装着しておく。第1接続筒部10とコンデンサコーン部30と第2接続筒部20とを予め接着剤で接着しておいた絶縁継手1の第1接続筒部10の一端側を流体配管110の端部に溶接すると共に、第2接続筒部20の一端側を流体配管120の端部に溶接する。次に、筒状体42を第2接続筒部20の外側から取り付け、筒状体42の一方のフランジ43を第2接続筒部20の外周面に溶接し、他方のフランジ44を流体配管120の外周面に装着しておいた台座41に溶接することで、真空槽40を形成する。次いで、流体配管110側に逃がしておいた碍管50及び取り付け金具55を所定の位置に配置し、取り付け金具55を筒状体42に溶接し、碍管50の底部に設けられたフランジ51と取り付け金具55のフランジ56とをボルト締結することで、碍管50を取り付ける。これにより、流体配管110の流体が流通する内部空間と流体配管120の流体が流通する内部空間とが絶縁継手1を介して連続することになり、流体配管110と流体配管120との間で絶縁継手1を通して流体を流通させることができる。
【0037】
[常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造]
次に、図2、3を参照して、実施の形態1に係る絶縁継手1を利用した常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造の一例を説明する。
【0038】
常温絶縁型超電導ケーブルの端末においては、図2に示すように、常温絶縁型超電導ケーブル200の超電導導体層212と常温側の引き出し導体310とを電気的に接続する接続構造350を有する。また、常温絶縁型超電導ケーブル200の冷媒配管213に接続される流体配管110と、外部装置(この例では、冷却システム400)に接続される流体配管120とを接続し、冷媒配管213と冷却システム400との間で冷媒を流通させるための流体配管の接続構造100を有する。
【0039】
まず、常温絶縁型超電導ケーブル200は、図3に示すように、冷媒配管213内に、超電導導体層212を有する導体部210を収納したケーブルであり、超電導導体層212が冷媒214により冷却され、電気絶縁層215が冷媒214により冷却されない構成である。ここでは、冷媒配管213内に1本の導体部210が収納された単心ケーブルを示す。この常温絶縁型超電導ケーブル200は、66kV級の高電圧ケーブルである。
【0040】
導体部210は、代表的には、中心から順にフォーマ211、超電導導体層212、保護層(図示せず)を有する。フォーマ211は、超電導導体層212の支持体や異常時電流(短絡電流など)の流路に利用される部材であり、銅やアルミニウムなどの常電導材料から構成された中実体や中空体が利用される。より具体的には、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を有する複数の金属線を撚り合わせた撚り線、金属パイプや金属のスパイラルパイプが挙げられる。金属パイプなどの中空体は、その内部空間を冷媒の流路にすることが可能である。
【0041】
超電導導体層212は、例えば、酸化物超電導体を有するテープ状線材が好適に利用できる。テープ状線材は、例えば、Bi2223系超電導テープ線(Ag-MnやAgなどの安定化金属中に酸化物超電導体からなるフィラメントが配されたシース線)、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素(例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)。金属基板に酸化物超電導相が成膜された積層線材)が挙げられる。超電導導体層212は、上記テープ状線材を螺旋状に巻回して形成した単層構造又は多層構造が挙げられる。保護層は、この超電導導体層212を保護するためのものであり、クラフト紙などを巻回した構成が挙げられる。
【0042】
上記導体部210を収納する冷媒配管213は、超電導導体層212を超電導状態に維持するための冷媒214(代表的には液体窒素や液体ヘリウム)が充填され、冷媒214の流路として機能する。この冷媒配管213は、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属製の内管213i及び外管213oを有し、両管213i,213oの間に真空断熱層が形成された二重管構造の真空断熱管である。この例では、内管213i及び外管213oのそれぞれにコルゲート加工が施されている。また、真空断熱層にスーパーインシュレーションといった断熱材を配置すると、断熱性を高めることができる。内管213iと外管213oとの間にスペーサを配置すると、両管213i,213oの接触を防ぎ、接触箇所からの熱侵入を防止でき、断熱性を高めることができる。
【0043】
常温絶縁型超電導ケーブル200では、上記冷媒配管(真空断熱管)213の上に電気絶縁層215が設けられている。電気絶縁層215は常温環境で使用されるため、その構成材料には、常電導ケーブルで実績がある電気絶縁強度に優れる材料、代表的にはCVケーブルに利用される架橋ポリエチレン(XLPE)などを利用できる。架橋ポリエチレンなどの絶縁性樹脂は、冷媒配管213の上に押出しにより電気絶縁層215を容易に形成できるため、超電導ケーブルの製造性に優れる。電気絶縁層215の上には、図示しないが、銅やアルミニウムなどの遮蔽や、ビニルやポリエチレンなどのシースを施す。この遮蔽は主として電界遮蔽層として機能し、一方、シースは機械的な保護層として機能する。
【0044】
図2に示す常温絶縁型超電導ケーブルの端末300における超電導ケーブル200の超電導導体層212と引き出し導体310との接続構造350は、以下のようにして構築されている。常温絶縁型超電導ケーブル200を段剥ぎ処理して、電気絶縁層215、冷媒配管213を露出させ、冷媒配管213の端部から導体部210を引き出す。導体部210を段剥ぎ処理して、超電導導体層212、フォーマ211を露出させる。超電導ケーブル200の電気絶縁層215を有する箇所に底板330を取り付け、電気絶縁層215を段剥ぎ処理した状態で碍管320を挿入し、電気絶縁層215を段剥ぎした周囲に碍管320を設ける。この碍管320は、支持碍子331を介して底板330に支持される。
【0045】
引き出し導体310は、銅製の部材であり、常温側に引き出されている。この引き出し導体310は、一端側にフォーマ211及び露出させた超電導導体層212を挿入可能な挿入穴が形成されており、この挿入穴にフォーマ211を挿入し把持することができる。また、この挿入穴の開口側内周面に超電導導体層212を半田接続することで、引き出し導体310が超電導導体層212と電気的に接続される。超電導導体層212と引き出し導体310との導体接続部は、碍管320から突出されている。また、超電導導体層212と引き出し導体310との導体接続部を挟むように電界シールド335が取り付けられる。
【0046】
図2に示す常温絶縁型超電導ケーブルの端末300において、常温絶縁型超電導ケーブル200の冷媒配管213から冷媒が、低電圧部(接地部)に設けられる冷却システム400に送られるように構成されている。具体的には、常温絶縁型超電導ケーブル200の冷媒配管213から引き出し導体310の引き出し方向とは異なる方向に分岐するように、冷媒配管213に流体配管110が接続されている。そして、この流体配管110と流体配管120とを接続する流体配管の接続構造100が構築されている。冷媒配管213は高電圧部にあるので高電位であり、冷媒配管213に接続される流体配管110も高電位である。一方、流体配管120は低電圧部に設けられる冷却システム400に接続されるので低電位である。
【0047】
流体配管の接続構造100は、図1を参照して説明した絶縁継手1を備える流体配管の接続構造100と同じ構成である。そして、この流体配管の接続構造100は、図1に示すように、絶縁継手1がコンデンサコーン部30を備えることで、高電位の冷媒配管の電界を効果的に緩和することができると共に、電界ストレスも効果的に緩和することができるので、絶縁継手1の小型化を図ることができ、流体配管の接続構造も小さくできる。例えば図2に示すように、流体配管の接続構造100を、超電導導体層と引き出し導体との接続構造350よりも小さくすることが可能である。なお、真空ポンプ410は、図1に示す流体配管の接続構造100における真空引きポート45に接続され、真空槽40を真空引きするものである。
【0048】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の絶縁継手は、各種の低温流体(例えば、液体窒素、液体ヘリウム、液体空気、液体酸素、液体水素、液化石油ガス(LPG)などの液体、その他の低温のガス)、各種の高温流体(例えば、水蒸気や湯、或いは反応ガスなどの気体)の輸送に利用される流体配管同士の接続に好適に利用することができる。本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造は、高電圧(例えば22kV級以上)の常温絶縁型超電導ケーブルの端末において、冷媒配管に接続される高電位の流体配管と、冷却システムなどの外部装置に接続される低電位の流体配管とを接続し、冷媒配管と外部装置との間で冷媒を流通させるのに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 絶縁継手
10 第1接続筒部 20 第2接続筒部
30 コンデンサコーン部
31,32 テーパー面 33 内周面 34 外周面
40 真空槽
41 台座 42 筒状体 43,44 フランジ
45 真空引きポート
50 碍管 51 フランジ
55 取り付け金具 56 フランジ
100 流体配管の接続構造
110 流体配管(高電位) 120 流体配管(低電位)
125 真空引きポート
200 常温絶縁型超電導ケーブル
210 導体部 211 フォーマ 212 超電導導体層
213 冷媒配管(真空断熱管) 213i 内管 213o 外管
214 冷媒 215 電気絶縁層
300 常温絶縁型超電導ケーブルの端末
310 引き出し導体 320 碍管
330 底板 331 支持碍子 335 電界シールド
350 超電導導体層と引き出し導体との接続構造
400 冷却システム 410 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流体配管同士を接続する絶縁継手であって、
高電位の前記流体配管の端部に接続される第1接続筒部と、
低電位の前記流体配管の端部に接続される第2接続筒部と、
両側に傾斜面が形成された筒状のコンデンサコーン部と、を備え、
前記第1接続筒部が前記コンデンサコーン部の内周面に接続され、前記第2接続筒部が前記コンデンサコーン部の外周面に接続されていることを特徴とする絶縁継手。
【請求項2】
少なくとも低電位側の外側に真空槽が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁継手。
【請求項3】
少なくとも高電位側の外側に碍管が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁継手。
【請求項4】
超電導導体層を有する導体部と、前記導体部を収納し、前記超電導導体層を冷却する冷媒が流通する冷媒配管と、前記冷媒配管の上に形成される電気絶縁層と、を備える常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造であって、
前記超電導ケーブルの前記超電導導体層と電気的に接続され、常温側に引き出される引き出し導体を備え、
前記超電導導体層と前記引き出し導体との接続構造を有すると共に、
前記超電導ケーブルの前記冷媒配管から前記引き出し導体の引き出し方向とは異なる方向に分岐するように前記冷媒配管に接続される高電位の流体配管と、外部装置に接続される低電位の流体配管とを備え、
前記流体配管同士が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁継手により接続され、流体配管の接続構造を有することを特徴とする常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造。
【請求項5】
前記流体配管の接続構造が、前記超電導導体層と前記引き出し導体との接続構造よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の常温絶縁型超電導ケーブルの端末における冷媒引き出し構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175749(P2012−175749A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33149(P2011−33149)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】