説明

継手

【課題】 部品点数の削減が可能で、且つ液垂れの発生がない継手を提供する。
【解決手段】 プラグ10は、内側にプラグ側液体通路11a、外側にプラグ側気体通路11bがそれぞれ形成され、通路11a,11bがそれぞれ先端部で開口している筒状のプラグ本体11を有する。このプラグ本体11のプラグ側液体通路11a内にはプラグ側弁体12が進退自在に装着され、プラグ側液体通路11aの開口11cを開閉する。ソケット20は、内側にソケット側液体通路21aが形成されると共にプラグ10との接続端部である先端部の側面に内外を連通する貫通孔21bが形成された内部筒体21と、この内部筒体21との間に気体通路22aを形成する外部筒体22とを有する。内部筒体21と外部筒体22の間には、ソケット側弁体23が進退自在に装着される。ソケット側弁体23は、液体通路11a,21aと気体通路11b,22aとを開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が収容された容器と気体供給管及び液体取り出し管とを接続する継手に関し、特に気体の圧力によって前記液体を外部に取り出す気体及び液体の通路を形成する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用薬品、塗料などの液体を収容した容器から液体を取り出すために、容器の内部に空気などの気体を導入してその圧力で液体を容器の外部へ送り出すことが行われている。この場合、容器内部へ気体を送り込むホース(管)と容器外部へ液体を取り出すホース(管)を、容器を閉じる蓋に設けた継手を介して容器に接続する方法が採用されている。
【0003】
従来、この方法では、各ホースを容器に接続するために容器の蓋に2個の継手を設け、気体導入用ホースを一方の継手に接続するとともに液体取り出し用ホースを他方の継手に接続して、気体を気体導入用ホースおよび一方の継手を介して容器の内部に導入し、液体を液体取り出し用ホースと他方の継手を介して容器の外部へ取り出す方式が採用されている。
【0004】
しかし、このような方式では、気体導入用ホースおよび液体取り出し用ホースに夫々対応して専用の独立した2組の継手を蓋に設けるので、蓋は部品点数が多く構造が大掛りになり、また2組の継手を設けるスペースを確保するために大型化する。さらに、気体導入用ホースと液体取り出し用ホースを容器に接続、離脱する場合には、夫々個別に継手に対して接続および離脱する必要があるので作業が面倒であった。
【0005】
そこで、最近ではこのような欠点を改善するために、液体通路と気体通路の両方の通路を備えた単一の継手を容器の蓋に設け、気体導入用ホースと液体取り出し用ホースの両方をこの単一の継手に接続する方式が提案されている。
【0006】
この方式を採用した第1の継手として、プラグ本体に液体通路と気体通路を備えて容器の蓋に取り付けられるプラグと、ソケット本体に液体通路と気体通路を備えるとともに気体通路に連通する環状通路を備えて、液体用ホースと気体用ホースが接続されるソケットとを備えたものがある(特許文献1参照)。
【0007】
この継手のプラグとソケットは、夫々本体の液体通路において開閉方向に移動可能でばねにより閉塞位置へ偏倚された弁体を備え、これら弁体は先端突起部を有しており、夫々閉塞位置で先端突起部がプラグ本体とソケット本体の先端部から外部へ突出している。
【0008】
そして、ソケットをプラグに接続すると、外部へ突出したソケットの弁体とプラグの弁体の先端突起部が当接して押し合い、両方の弁体がばね力に抗して閉塞位置から開放位置に移動するので、プラグとソケットの各液体通路が連通する。プラグ本体とソケット本体の各気体通路が環状通路を介して連通する。これにより気体を気体ホースからプラグとソケットの各気体通路および環状通路を通して容器の内部に導入し、容器内部の液体をプラグ本体とソケット本体の各液体通路を通して送り出す。
【0009】
また、前記方式を採用した第2の継手として、蓋に取り付けるプラグと、ホースに接続するソケットとを備え、プラグにはプラグ本体に凹部(プラグ部)を設けるとともに、この凹部に液体通路を形成する主筒体およびこの主筒体の内部に開閉方向に移動可能でばねにより閉塞位置に偏倚された弁体を設け、ソケットにはソケット本体に固定された軸形弁体と、この軸形弁体と組合せて開閉方向に移動可能でばねにより閉塞位置に偏倚された摺動筒を設けたものがある(特許文献2参照)。
【0010】
この継手のプラグは、プラグ本体の凹部の底部に液体通路と平行に気体通路を形成し、この気体通路に開閉方向に移動可能でばねにより閉塞位置に偏倚された弁体を設けている。ソケットは、ソケット本体の外部に気体通路パイプを設け、この気体通路パイプを気体ホースと接続している。
【0011】
そして、ソケットをプラグに接続する時には、ソケット本体をプラグ本体の凹部(プラグ部)に挿入すると、ソケットの固定された軸形弁体がプラグの弁体を押して開放方向へ移動させるともに、プラグの主筒体がソケットの摺動筒を押して開放方向へ移動させる。これによりソケット本体とプラグ本体の各液体通路が連通する。また、ソケット本体に設けた気体通路パイプがプラグ本体の凹部(プラグ部)に入り、プラグ本体の気体通路に設けた弁体を開放方向へ移動させる。これによりソケット本体とプラグ本体の各気体通路が連通する。
【0012】
さらに、前記方式を採用した第3の継手として次に述べる構成のものがある。この継手は、蓋に取り付けるプラグと、ホースに接続するソケットとを備え、プラグではプラグ本体の内部に設けた内筒体の内側に液体通路(主流路)を、外側に気体通路(副流路)を夫々形成し、液体通路と気体通路には主バルブと副バルブを設けて、弾性部材により閉塞方向に偏倚させ、またソケットではソケット本体の内部に設けたバルブホルダの内側に液体通路(主流路)を、外側に気体通路(副流路)を夫々形成し、液体通路と気体通路には主バルブと副バルブを設けて、弾性部材により閉塞方向に偏倚させるようにしたものである(特許文献3参照)。
【0013】
そして、ソケットをプラグに接続する時には、プラグの内筒体がソケットの主バルブを開放方向に押すとともに、ソケットに設けた弁押し体がプラグの主バルブを開放方向に押して、プラグとソケットの各液体通路(主流路)を互いに連通させ、プラグの副バルブとソケットの副バルブが互いに開放方向へ押して、プラグとソケットの各気体通路(副流路)を互いに連通させる。
【特許文献1】特開2001−192099号公報
【特許文献2】特開2002−31288号公報
【特許文献3】特開2003−172487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
第1の継手は次に述べる問題がある。
【0015】
この継手はプラグ本体とソケット本体の各液体通路に夫々移動可能な弁体を設け、プラグ本体とソケット本体とを接続する際に各弁体を突き合わせて各弁体を開放方向へ移動させることにより液体通路を連通するようにしている。一方、プラグ本体とソケット本体の各気体通路には夫々これを開閉する弁体が設けられておらず、プラグ本体とソケット本体とを分離している状態では各気体通路が大気に開放され、プラグ本体とソケット本体を接続すると各気体通路が直接連通する。すなわち、この継手では通路を開閉する弁体は、プラグ本体とソケット本体に夫々液体通路を開閉する弁体を備えるのみであり、気体通路を開閉する弁体は特別に用意されていない。
【0016】
このため、気体通路を開閉するためには、液体通路用弁体に加えてプラグ本体および/またはソケット本体に新たに別な気体通路開閉用弁体を組込まなければならず、この場合にはプラグおよび/またはソケットの大型化および構成の複雑化を招きコストが大幅に上昇する。また、ソケット本体に接続される気体ホースに弁体を組み込むと、容器へ気体を供給する空気供給系統の構成が複雑になるという問題点がある。
【0017】
また、第1の継手は、プラグとソケットとを接続する際に、先ず各弁体の先端突起部が突き合った後に、プラグ本体の先端部端面とソケット本体の先端部端面とが当接して、各本体の先端部開口が各弁体の先端突起部を囲むことにより各本体の液体通路が連通する。プラグとソケットとを分離する時には、プラグ本体とソケット本体の先端部端面が互いに離れた後も各弁体の先端突起部が突合った状態が維持され、この各弁体の先端突起部の周囲を囲む空間部が最後まで形成され、この空間部(液溜り空間部)に液体通路を流れる液体が残って溜る。このため、プラグ本体とソケットとが完全に分離する時には前記空間部に溜った液体がプラグとソケット本体との間から外部へこぼれ落ちる、いわゆる液垂れが発生する。この液垂れはプラグとソケットを汚すだけでなく、床や近傍にある他の部品を汚す。
【0018】
また、第2の継手も次に述べる問題がある。
【0019】
この継手は、プラグとソケットを接続した状態で、プラグ本体に設けた主筒体がソケット本体に設けた摺動筒を押すとともに、ソケットに設けた固定軸形弁体がプラグの主筒体に設けた弁体を押すことにより液体通路を開放する。また、ソケット本体の外部に設けた気体通路用のパイプがプラグに設けた弁体を押すことにより各気体通路を開放して互いに連通する。すなわち、この継手は、プラグの液体通路とソケットの液体通路に夫々液体通路用の弁体を設けることに加えて、プラグに気体通路用の弁体を設けており、2個の液体通路用の弁体と1個の気体通路用の弁体を設けている。このため、この継手は弁体の数が多く、3個の弁体を設けるために継手全体として構成が複雑且つ大掛かりになり、さらに3個の弁体を設けるためのスペースが必要で大型となっている。
【0020】
しかも、第2の継手は、気体通路をソケット本体の外部に設けているので、気体通路を設けるために特別なスペースが必要でソケットが大型化している。
【0021】
さらに、第3の継手には次に述べる問題がある。
【0022】
この継手におけるプラグでは内筒体の内側に形成した液体通路に主弁体を、外側に形成した気体流路に副弁体を夫々設け、ソケットではソケット本体の内側に形成した液体通路に主弁体を、外側に形成した気体通路にと副弁体をそれぞれ設けている。すなわち、この継手では液体通路に2個の弁体を設けるとともに、気体通路に2個の弁体を設けている。従って、この継手は弁体の数が多く、合計4個の弁体を設けるために継手全体として構成が複雑且つ大掛かりになり、さらに4個の弁体を設けるためのスペースが必要で大型となっている。
【0023】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、部品点数の削減が可能で、且つ液垂れの発生がない継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る継手は、プラグ及びこのプラグに着脱可能に接続されるソケットを具備し、液体が収容された容器と気体供給管及び液体取り出し管とを接続し、前記プラグ及びソケットが接続された状態で前記容器の内部に前記気体供給管を介して気体を導入する気体通路と、前記気体通路を介して前記容器の内部に導入された気体の圧力によって前記液体を前記液体取り出し管に取り出す液体通路とを形成する継手において、前記プラグは、内側にプラグ側液体通路、外側にプラグ側気体通路がそれぞれ形成され、これらプラグ側液体通路及びプラグ側気体通路がそれぞれ前記ソケットとの接続端部である先端部で開口している筒状のプラグ本体と、このプラグ本体のプラグ側液体通路内に進退自在に装着されて前記プラグ側液体通路の開口を開閉するプラグ側弁体と、このプラグ側弁体を前記開口が閉塞される向きに付勢するプラグ側弾性部材とを備え、前記ソケットは、内側にソケット側液体通路が形成されると共に前記プラグとの接続端部である先端部の側面に内外を連通する貫通孔が形成され、前記プラグとの接続時に前記先端部が前記プラグ本体の開口に挿入されて前記プラグ側弁体を後退させると共に前記貫通孔を介して前記ソケット側液体通路が前記プラグ側液体通路と連通する内部筒体と、この内部筒体を取り囲むように設けられ前記内部筒体との間に気体通路を形成する外部筒体と、前記内部筒体及び前記外部筒体の間の先端部側に前記内部筒体の中心軸に沿って進退自在に装着され、前記先端部側への前進時には、内周側で前記内部筒体の貫通孔を閉塞すると共に外周側で前記ソケット側気体通路の先端部側の出口を閉塞し、前記先端部側からの後退時には、前記内部筒体の貫通孔を開放すると共に前記ソケット側気体通路の出口を開放して前記ソケット側気体通路と前記プラグ側気体通路とを連通させる環状のソケット側弁体と、このソケット側弁体を前進させる向きに付勢するソケット側弾性部材とを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】

本発明によれば、プラグとソケットの内部に夫々液体通路と気体通路を設けて、プラグとソケットとを接続する場合に液体通路と気体通路が互いに連通するようになっており、単一の継手に液体通路と気体通路を内蔵しているので、液体通路用と気体通路用の2組の継手を設ける必要がなく、構成部品点数の削減による構成の簡素化および省スペース化を図ることができ、経済性を高めることができる。
【0026】
また、本発明によれば、プラグに液体通路用の1個のプラグ側弁体を設け、ソケットには、液体通路用と気体通路用とに兼用される1つの環状のソケット側弁体を設けているので、液体通路用と気体通路用としてプラグとソケットとを合わせて2個の弁体しか必要とせず、従来のようにプラグとソケットとを合わせて液体通路用の2個の弁に1個または2個の気体通路用の弁を加えて合計3個または4個の弁を設けなければならない構成に比較して、弁の数を削減することができ、弁を設けるための大きなスペースと大掛かりで複雑な構成を必要とせず、従って小型化と構成の簡素化に大いに寄与して経済性を大幅に高めることができる。
【0027】
また、本発明によれば、ソケット側気体通路内に気体を送り込むと、その気体の圧力がソケット側弁体の基端部端面に作用して先端部側への力を加える。このため、ソケットをプラグから外している状態において、弁体は弾性部材の力により押されてソケット本体のソケット部に接触してその先端部開口を閉じることに加えて、気体通路からソケット部に気体が送り込まれた場合には、この気体の圧力を受けてさらに強固にソケット部に接触して先端部開口を閉じた状態を安定して保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1ないし図6は本発明の一実施形態に係る継手を示すもので、図1は継手のプラグとソケットを接続した状態を示す断面図、図2はプラグとソケットとを接続/分離する途中の状態を示す断面図、図3はプラグとソケットとを分離した状態を示す断面図、図4はプラグを示す平面図、図5は継手を容器に装着した状態を示す平面図、図6は同じく継手を装着した容器を一部切欠して示す正面図である。
【0029】
本実施形態に係る継手1は、プラグ10とこのプラグ10に着脱可能に接続されるソケット20とを備えて構成されている。この例では、図6に示すように、プラグ10は、液体Lを溜める樹脂ボトル等の容器2の上端開口部を塞ぐ蓋体3に着脱可能に取り付けられている。ソケット20には、液体取り出し管4および気体供給管5が接続される。蓋体3には、液体を取り出すための液体取り出し口3aと気体を導入するための気体導入口3bとが形成されており、液体取り出し口3aには、容器2の底面近傍まで延びる液体管6が接続されている。プラグ10及びソケット20には、後述するようにそれぞれ液体通路と気体通路とが形成され、プラグ10の気体通路が蓋体3の気体導入口3bに接続され、プラグ10の液体通路が蓋体3の液体取り出し口3aに接続されている。継手1は、このような構成にあって、気体供給管5を介して容器2の内部に導入された気体の圧力によって、液体容器2内の液体Lを液体取り出し管4を介して外部に取り出す機能を有する。
【0030】
次に継手1の詳細について説明する。
【0031】
プラグ10は、プラグ本体11と、このプラグ本体11のプラグ側液体通路11a内に進退自在に装着されたプラグ側弁体12と、このプラグ側弁体12を付勢するプラグ側弾性部材としての圧縮コイルばね13と、プラグ本体11を蓋体3に固定するための矩形状のベース14とを備えて構成されている。
【0032】
プラグ本体11は、円筒形をなすもので、その内側部(中央部)にプラグ側液体通路11aが、また、その周囲の側壁部の内部の例えば周方向4箇所に、プラグ側気体通路11bが夫々軸方向に沿って形成されている。これら液体通路11aと気体通路11bとは夫々ソケット20との接続端である先端部側で開口している。
【0033】
プラグ側液体通路11aの先端部の開口11cは、他の部分(大径部)の内径よりも小径となっており、この小径部と大径部とはテーパ部を介して接続されている。プラグ側弁体12は、プラグ本体11のプラグ側液体通路11aの形状に適合する円筒形状をなし、先端部が、プラグ側液体通路11aの先端部側の小径部と液密に嵌合し開口11cを閉塞する小径部を形成し、その他の部分はこれよりも大径に形成され、小径部と大径部とがテーパ部を介して接続された外形を有する。プラグ側弁体12のテーパ部を形成する部分には、内外を連通する複数の貫通孔12aが形成されている。従って、プラグ側弁体12が先端部側から後退したときには、プラグ側液体通路11aの大径部とプラグ側弁体12のテープ部の貫通孔12aとの間に隙間が生じ、弁体12の内外が連通するようになっている。プラグ側弁体12の先端面12bは、外周部を残して中央部が僅かに凹没した平坦面をなしている。
【0034】
また、プラグ本体11の先端部は、内周側から外周側にかけて、3段階に先端面が後退して段差を形成している。プラグ側気体通路11bの開口11dは、外周側の先端面と真ん中の先端面とを跨ぐように段差部分に形成されている。プラグ本体11の基端部は、蓋体3に形成された液体取出し口3aを形成する円筒状のプラグ側連結筒3cと液密に嵌合している。このプラグ側連結筒3cの先端とプラグ側弁体12の内側の先端部側に形成された段差との間に圧縮コイルばね13が装着され、弁体12を、常時、プラグ10の先端部側に付勢している。
【0035】
蓋体3のプラグ側連結筒3cには、環状のカラー7が固定されている。また、蓋体3の気体導入口3bを形成するプラグ側に突出するプラグ側連結筒3dの内部には、逆止弁3eが装着されており、プラグ側連結筒3dの外周にはナット8が締結されている。ベース14は、プラグ本体11の基端部に外装されると共に、プラグ側連結筒3dを覆うように装着され、カラー7及びナット8にボルト14aによって固定される。ベース14には、プラグ本体11のプラグ側気体通路11bと蓋体3の逆止弁3eの入口とを連通するプラグ側気体通路14bが形成されている。
【0036】
一方、ソケット20は、同軸配置された内部筒体21及び外部筒体22と、これらの間の先端部側に内部筒体21の中心軸に沿って進退自在に装着された環状のソケット側弁体23と、このソケット側弁体23を付勢するソケット側弾性部材としての圧縮コイルばね24と、内部筒体21及び外部筒体22の基端側に外装されるソケットカバー25と、内部筒体21及び外部筒体22の先端側に外装された環状のスリーブ26とを備えて構成されている。
【0037】
内部筒体21は、内側部(中央部)にソケット側液体通路21aを形成し、プラグ10側接続端部である先端部が閉塞し、その外径がプラグ本体11の先端の開口11cに嵌合し得る外径を有している。内部筒体21の先端面21eは、外周部を残して僅かに突出した平坦面を形成し、この平坦面がプラグ側弁体12の先端面12bの外周部を残して僅かに凹没した平坦面と密接する。内部筒体21の先端部から僅かに基端側側面位置には、内外を連通する複数の貫通孔21bが形成されている。プラグ側弁体12の先端面(平坦面)12bと内側筒体21の先端面(平坦面)21eが、凹部と凸部の関係で組み合わさるのは、プラグ側弁体12と内側筒体21とが密接する時に位置し易いことと、密接面に液体が浸入し難いことによるものである。内部筒体21の基端側の外径は、先端側よりも大きく設定されている。また、内部筒体21の基端部には、更に外径が大きく張り出したフランジ21cが形成されている。このフランジ21cには、周方向の複数箇所に、気体用に軸方向に貫通する複数の貫通孔21dが形成されている。
【0038】
外部筒体22は、内周部が先端部側から小径部、中径部、大径部となり、外周部が先端部側から小径部、大径部、中径部となっている。そして、外部筒体22の内周側の大径部及び中径部に沿ってソケット側気体通路22aが形成される。
【0039】
ソケット側弁体23は、前進位置において、その内周側で内部筒体21の先端部を密接して貫通孔21aを塞ぎ、外周側で外部筒体22の小径部と中径部とに密接する。また、ソケット側弁体23は、後退位置において、内部筒体21の貫通孔21aを開放し、外周側にソケット側気体通路22aを形成する。ソケット側弁体23の先端部の内径側には、プラグ本体11の先端部の最も突出した内周側端面が嵌合及び当接される段部が形成されている。
【0040】
ソケット側弁体23の基端面と内部筒体21の基端側のフランジ21bとの間に圧縮コイルばね24が装着され、弁体23を、常時、ソケット20の先端部側に付勢している。
【0041】
ソケットカバー25は、外部筒体22の基端側の中径部に気密に外装され、液体取出し管4が接続される液体取出し管接続部25aと、気体供給管5が接続される気体供給管接続部25bとを有する。液体取出し管接続部25aは、ソケット側液体通路21aと連通するソケット側液体通路25cと連通している。また、気体供給管接続部25bは、ソケット側気体通路22aと連通するソケット側気体通路25dと連通している。なお、液体取り出し管の接続部25aは、図1ないし図3に示すように、ソケットカバー25の側面で開口するように形成されているが、これに限定されず、図3の符号25fで示すように、ソケットカバー25の基端面で開口するように形成しても良い。両方の接続部を形成した場合には、必要に応じて一方を使用し、他方を止め栓25eで閉じておく。
【0042】
環状のスリーブ26は、外部筒体22の先端側に進退自在に装着される。スリーブ26の内周部に形成された基端側を小径部とする段差と外部筒体22の小径部及び大径部の境の段差との間に圧縮コイルばね27が装着され、これによりスリーブ26が常に先端側に付勢されるようになっている。外部筒体22の先端部には、周方向に4箇所のボール収容孔22bが形成され、これらボール収容孔22bに、それぞれボール28が収容されている。このボール28は、プラグ10とソケット20とが非接続状態のときにスリーブ26の先端内周部とソケット側弁体23の先端外周部との間で保持されている。このボール28は、プラグ10とソケット20との接続時に、プラグ本体11の先端外周に形成された凹部11eに嵌合する。また、外部筒体22の先端外周には、ストップリング29が装着されている。
【0043】
図3において、51はプラグ側弁体12の先端部に設けられたシールリングで、これは弁体12がプラグ本体11の先端開口部11cを閉じる時に両者間をシールする。52はベース14のプラグ10の装着部に装着されてプラグ本体11の外周面との間のシールを行うシールリングである。53はソケット20の内部筒体21の先端部に設けられて内部筒体21と弁体23の間をシールするシールリングである。54は内部筒体21の基端面に設けられて内部筒体21とソケットカバー25との間をシールするシールリングである。55は外部筒体22に設けられて外部筒体22と弁体23との間をシールするシールリングである。56ないし58は弁体23に設けられたシールリングで、シールリング56は弁体23と内部筒体21との間をシールし、リールリング57は弁体23と外部筒体22との間をシールし、シールリング58は弁体23とプラグ本体11との間をシールする。また、59は、プラグ本体11に装着され、プラグ本体11と蓋体3のプラグ側連結筒3cとの間のシールを行うシールリングである。
【0044】
なお、これらプラグ10及びソケット20を構成する部品は合成樹脂、例えば耐薬品性や摺動抵抗が小さいという特性を有する四フッ化エチレン樹脂で形成することが望ましい。また、圧縮コイルばね13,24,27は、金属からなるばねに合成樹脂を被覆したものを用いる。
【0045】
次に、このように構成された本実施形態に係る継手1の作用について説明する。
【0046】
図6に示すように、蓋体3を容器2の開口部に取り付けて、蓋体3の液体取出し口3aに液体管6を保持具6aにより連結する。液体管6は容器2の内部に配置され、容器2の底面近くまで延びている。蓋体3の気体導入口3bは容器2の内部に連通しているが、蓋体3のプラグ側連結筒3dに設けた逆止弁3eにより容器2から外部への逆流を阻止している。図1に示すようにソケット20では、ソケットカバー25の液体取出し管接続部25aに液体取出し管4の一端を接続し、液体取出し管4の他端は、図示しないタンクなどの液体入れに接続する。ソケットカバー25の気体供給管接続部25bには、気体供給管5を接続する。
【0047】
図3に示すように、プラグ10とソケット20とを分離した状態にでは、プラグ10のプラグ側弁体12が圧縮コイルばね13により先端部側へ向けて付勢され、プラグ側弁体12の先端部がプラグ本体11の液体通路11aの開口11cに嵌合して閉塞している。一方、ソケット20のソケット側弁体23は、圧縮コイルばね24及び気体の圧力により先端部へ向けて付勢され、その内周部で内部筒体21の貫通孔21bを閉塞すると共に、その外周部が外部筒体22の内周面の小径部及び中径部と密着している。これにより、ソケット側気体通路22a、ソケット側液体通路21a共に、ソケット20の先端部で閉塞されている。
【0048】
このようにソケット20の気体通路22aとプラグ10の気体通路11bとはソケット20の弁体23の働きにより互いに閉塞遮断し、ソケット20の液体通路21aとプラグ10の液体通路11aとはソケット20の弁体23の働きにより互いに閉塞遮断する。すなわち、1個のソケット側弁体23だけで、液体通路21aと気体通路22aの両方を閉塞することができる。
【0049】
また、ソケット20の気体供給管5からソケット20に気体を送り込むと、その気体の圧力がソケット側弁体23の基端部端面に作用してソケット20をより強固に閉塞状態に維持する。このため、ソケット20をプラグ10から外している状態において、ソケット側弁体23は、ばね24のような弾性部材の力により押されて外部筒体22の小径部と中径部との段差部に接触してその気体通路22aを閉じることに加えて、気体供給管5からソケット20に気体が送り込まれた場合には、この気体の圧力を受けてさらに強固に段差部に接触して閉塞状態を安定して保持できる。
【0050】
プラグ10とソケット20とを接続する場合には、図2に示すようにプラグ10の先端部とソケット20の先端部とを位置合わせし、プラグ本体11の先端部の凸部をなす外周側先端面を、ソケット20の弁体23の先端内周部に形成された凹部に係合させる。このようにプラグ10の凸部とソケット20の凹部を組み合せるのは、プラグ10とソケット20とを接続する時に位置決めし易いことと、プラグ本体11の凸部によって壁を形成して液体通路側に気体を侵入し難くするシール構造を形成できるからである。
【0051】
図2の状態からプラグ10とソケット20とを互いの側に更に押し込んでいくと、プラグ本体11の先端部がばね24の圧力に抗してソケット側弁体23の先端面を押し込んでこれを後退させると共に、ソケット20の内部筒体21の先端部がプラグ側弁体12の先端面を押し込んでこれを後退させる。ソケット側弁体23の先端側の外周の小径部が外部筒体22の内周の中径部に対向する位置まで後退すると、外部筒体22の内周面とソケット側弁体23の外周面との間に隙間が生じる。一方、プラグ本体11のプラグ側気体通路11bの開口11dは、プラグ本体11の先端面の段差部に形成されているので、プラグ本体11の先端とソケット側弁体23の先端面との間にも隙間が形成され、この隙間を介してソケット側気体通路22aとプラグ側気体通路11bとが連通する。更に押し込むと、ソケット側弁体23の内周側基端部が、内部筒体21の基端側の大径部と先端側小径部との段差に当接して止まる。
【0052】
一方、ソケット20の内部筒体21の先端部は、プラグ側弁体12のばね13による圧力に抗してプラグ本体11に侵入し、図1に示すように、内部筒体21の貫通孔21bがプラグ本体11の液体通路11aの大径部にまで達すると、プラグ側液体通路11aと、ソケット側液体通路21aとが2つの貫通孔12a,21bを介して連通する。
【0053】
この状態では、ソケット側弁体23が、大きく後退して、ボール28の内周側の規制体が無くなることにより、ボール28は、プラグ本体11の凹部11eに嵌入する。この結果、スリーブ26が先端側に移動し、ストップリング29に引っ掛かって止まる。これにより、プラグ10とソケット20とが強固に固定されることになる。
【0054】
このようにしてソケット20の気体通路22aとプラグ10の気体通路11bはソケット20の弁体23の働きにより互いに開放連通し、ソケット20の液体通路21aとプラグ10の液体通路11aはソケット20の弁体23の働きにより互いに開放連通する。すなわち、1個の弁体23で液体通路と気体通路の両方を開放することができる。
【0055】
そして、図示しない気体、一般的には空気を空気供給装置によりソケット20およびプラグ10の気体通路を通して容器2の内部に送り込と、容器2の内部に充填された液体Lが押されてプラグ10およびソケット20の液体通路を通って外部に押し出される。
【0056】
次に、ソケット20をプラグ10から外す時には、スリーブ26をばね27の力に抗して後退させ、ソケット20をプラグ10から引き抜く。この時、弁体23が、ばね24のばね力と気体通路22aからソケット20に送り込まれた気体の圧力とを受けてソケット本体先端部側へ急速に前進移動して閉塞位置で停止して、内部筒体21に形成した貫通孔21bを閉じて液体通路21aを閉塞するとともに、外部筒体22の先端部を覆って気体通路22aを閉塞する。すなわち、弁体23が気体通路22aとともに液体通路21aを同時に閉塞する。このようにソケット20をプラグ10から外す時に、弁体23がソケット20の液体通路21aを急速(瞬時)に閉塞するので、液体通路21内部にある液体が液体通路21aの先端部側から外へ漏れ出すことを確実に防止できる。
【0057】
仮に液体通路と気体通路に夫々個別に開閉用の弁体を設けた場合には、ソケットがプラグから離れる時に何らかの理由で液体通路用の弁体の液体通路を閉じる動作が遅れて、液体通路から液体が外部へ漏れ出る事態が生じることが考えられる。この点、本実施形態の継手では、そのような不具合は生じない。
【0058】
また、プラグ10とソケット20とを分離する場合には、プラグ10の弁体12はばね13に押されて平坦な先端面12bが、ソケット20側の内部筒体21の平坦な先端面21eに当接した状態を維持する。プラグ10とソケット20とを図2の状態まで離間する方向へ移動すると、プラグ本体11がソケット20の内部筒体21と離間する寸前となる。この時も、まだ、プラグ10の弁体12はばね13に押されて先端面12bがソケット20の内部筒体21の先端面21eに当接した状態であり、プラグ本体11の先端面12bとソケット20の内部筒体21の先端面21eとが離間するのは、プラグ本体11の開口11c及びソケット20の内部筒体21の貫通孔21bがいずれも閉塞状態となった後である。このため、プラグ10とソケット20とが分離する場合に、両者が全く離間するまでプラグ10とソケット20の液体通路を流れる液体が、プラグ10とソケット20の接続部において流れる液体に晒される箇所に液体が溜る空間部が最後まで形成されないので、プラグ10とソケット20とを分離する場合に分離箇所に液体が残って両者が離れる瞬間に液だれを生じることがない。
【0059】
本発明は前述した実施の形態に限定されず、種々変形して実施ずることができる。例えば、プラグに気体供給管および液体取り出し管を接続し、ソケットを容器の蓋に取り付けるようにしても良い。
【0060】
なお、蓋の気体通路に設ける逆止弁は、特許請求の範囲に言う本発明の継手に設ける弁に含まれない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る継手の完全接続状態での構成を示す断面図である。
【図2】同継手の半接続状態での構成を示す断面図である。
【図3】同継手の非接続状態での構成を示す断面図である。
【図4】同継手におけるプラグを示す平面図である。
【図5】同継手を容器に装着した状態を示す平面図である。
【図6】同継手を装着した容器を一部切欠して示す正面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…継手、2…容器、3…蓋体、4…液体取出し管、5…気体供給管、6…液体管、10…プラグ、11…プラグ本体、12…プラグ側弁体、13,24,27…圧縮コイルばね、14…ベース、20…ソケット、21…内部筒体、22…外部筒体、23…ソケット側弁体、25…ソケットカバー、26…スリーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグ及びこのプラグに着脱可能に接続されるソケットを具備し、液体が収容された容器と気体供給管及び液体取り出し管とを接続し、前記プラグ及びソケットが接続された状態で前記容器の内部に前記気体供給管を介して気体を導入する気体通路と、前記気体通路を介して前記容器の内部に導入された気体の圧力によって前記液体を前記液体取り出し管に取り出す液体通路とを形成する継手において、
前記プラグは、
内側にプラグ側液体通路、外側にプラグ側気体通路がそれぞれ形成され、これらプラグ側液体通路及びプラグ側気体通路がそれぞれ前記ソケットとの接続端部である先端部で開口している筒状のプラグ本体と、
このプラグ本体のプラグ側液体通路内に進退自在に装着されて前記プラグ側液体通路の開口を開閉するプラグ側弁体と、
このプラグ側弁体を前記開口が閉塞される向きに付勢するプラグ側弾性部材と
を備え、
前記ソケットは、
内側にソケット側液体通路が形成されると共に前記プラグとの接続端部である先端部の側面に内外を連通する貫通孔が形成され、前記プラグとの接続時に前記先端部が前記プラグ本体の開口に挿入されて前記プラグ側弁体を後退させると共に前記貫通孔を介して前記ソケット側液体通路が前記プラグ側液体通路と連通する内部筒体と、
この内部筒体を取り囲むように設けられ前記内部筒体との間に気体通路を形成する外部筒体と、
前記内部筒体及び前記外部筒体の間の先端部側に前記内部筒体の中心軸に沿って進退自在に装着され、前記先端部側への前進時には、内周側で前記内部筒体の貫通孔を閉塞すると共に外周側で前記ソケット側気体通路の先端部側の出口を閉塞し、前記先端部側からの後退時には、前記内部筒体の貫通孔を開放すると共に前記ソケット側気体通路の出口を開放して前記ソケット側気体通路と前記プラグ側気体通路とを連通させる環状のソケット側弁体と、
このソケット側弁体を前進させる向きに付勢するソケット側弾性部材と
を備えてなることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記プラグ側弁体の先端面及び前記ソケットの内部筒体の先端面は、それぞれ平坦面からなり、前記プラグと前記ソケットとを接続する際に、前記両平坦面同士が密着することを特徴とする請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記プラグは液体を収容した容器に着脱可能に取り付けられ、前記プラグ本体に形成されるプラグ側液体通路及びプラグ側気体通路は夫々前記容器の内部に連通され、
前記ソケットは、前記内部筒体及び外部筒体の基端部を覆う円筒状のソケットカバーを有し、
前記ソケットカバーには、前記ソケット側液体通路に連通するように前記液体取り出し管が接続されると共に、前記ソケット側気体通路に連通するように前記気体供給管が接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の継手。
【請求項4】
前記プラグ本体の先端部の端面は、段差を有し、前記プラグ側気体通路の開口が前記段差を跨いで開口されており、前記ソケット側弁体の先端部に当接した際に、前記段差によって形成された隙間を介して前記プラグ側気体通路の開口が前記ソケット側気体通路と連通するように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−36348(P2006−36348A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223365(P2004−223365)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(391026379)株式会社ニューマシン (4)
【Fターム(参考)】