説明

網トポロジ・リンク容量設計処理方法とシステムおよびプログラム

【課題】単一リンク障害時の迂回トラヒックに対する品質をも考慮した、網トポロジとリンク容量の設計を可能とする。
【解決手段】ノード位置と、トラヒック交流マトリクス、ルーティング方式、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力し、入力処理装置101は、制約条件に加えて、全ノード間に設置するリンク数Lと、予め定められたリンク数k(<L)とを入力し、設計処理装置102は、正常時の各リンクの使用率を規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網トポロジとリンク容量を算出する際、トラヒック量が大きな上位k本のリンクに限定し、かつ、残るL−k本の各リンクの単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されることを制約条件として、各リンクの単一リンク障害に伴う迂回トラヒックを考慮した網トポロジとリンク容量の算出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等における網のトポロジとリンク容量の設計技術に係り、特に、網トポロジ設計問題において、単一リンク障害時に発生する迂回トラヒックを考慮して、任意のリンクの使用率を任意に定めた上限値以下に抑えることを制約条件に、総コストを最小化することにより、最適な網トポロジとリンク容量を求める技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットは個々のフローの状態を網内で管理せず、受信アドレスにのみ基づきルーティング処理が行われる。各ISP(Internet Services Provider)が管理する単一AS(Autonomous System)内では、OSPF(Open Shortest Path First)により固定的に設定されたリンク重みの総和が最小となる経路上にパケットが転送される。
【0003】
また、フローの受付制御を行わず転送レートは送信ホストが自律的に決定するため、原理的にリンク輻輳が発生し得る。そのため適切な通信品質を維持するために、網を構成する全てのリンクの利用率が適切な水準以下となるよう網を設計・管理することがISPの主要な課題の一つとなる。
【0004】
リンク使用率は、各リンクの設計帯域と流れるトラヒック量とで決まるが、トラヒック量は、交流トラヒックデマンド量の変動や各種障害に起因する経路の変更によって常に変化する。そのため、利用率の低いリンクを積極的に利用するようパケットの流れる経路を動的に設定し、リンク負荷の分散を図るトラヒックエンジニアリング(TE)が数多く検討されている。
【0005】
例えば、MPLS(Multi−Protocol Label Switching)を用いれば発着ノードペア間に明示的にパスを設定できる。非特許文献1においては、各発着ノード間のトラヒックを設置可能な複数のパス間で平準化する設計技術が提案されており、また、非特許文献2,3においては、リンク負荷が網全体で平準化されるようOSPFの固定的なリンク重みを設定する技術が提案されている。
【0006】
またOSPFは、リンクやノードの障害時、自律的に迂回経路を算出するが、例えば、非特許文献4においては、障害時に生成される迂回トラヒックに着目し、いくつかの障害パターンにおいてリンク負荷がうまく分散されるよう、OSPFのリンク重みのパターンを各々用意することが検討されている。
【0007】
これらの技術では、事前に想定した静的な交流マトリクス(発着ノードペアごとのトラヒック量を行列表現したもので、i行j列の要素が、ノードiからノードjに向かうトラヒック量となり、「交流行列」、「デマンド行列」、「トラヒック交流」等ともいう)に基づき経路の最適化を行うが、例えば、非特許文献5,6においては、リアルタイムに計測したリンク使用率に基づき、動的にパケットの流れる経路を最適化することも検討されている。
【0008】
このようなTEを用いればリンク負荷を平準化することが可能であり、交流マトリクスが動的に変化する場合(非特許文献5,6)や、リンク・ノード障害により迂回トラヒックが発生する場合(非特許文献4)にも、網資源を有効に活用して輻輳の発生を最小限に抑えることが可能となる。
【0009】
しかしながら、リンク利用率は、交流マトリクスや経路だけでなく、網トポロジやリンク容量にも依存する。
【0010】
前述のTEでは、網トポロジやリンク容量が既知のものとして与えられることを前提としている。一方で、網トポロジやリンク容量は、網の構築コストや運営コストを決める大きな要因となりISPの経営に及ぼす影響が大きい。
【0011】
従って、ISPは、自身が運営する網のトポロジやリンク容量を自由に設計することができ、これらを適切に設計することが良好な通信品質を低コストで保つためには重要となる。
【0012】
また、TEによって経路を動的に設定した場合、静的なリンク重みを用いたOSPFで定まる経路と比較して、経由するリンク数(ホップ数)が増加する。
【0013】
そのため、網資源の消費を抑える観点からは、TEを用いずに、静的なリンク重みを用いたOSPFで経路を設定することが望ましい。
【0014】
また、ルーティングプロトコル種別(ルーティング方式)としてOSPFを想定し、通信品質を規定値以上に保つために必要なリンク容量の設計手法が、例えば、非特許文献7において検討されているが、この技術でもやはり網トポロジは、設計対象とせず、与えられることを想定している。
【0015】
以下、ISP自身が網を運営するにあたって、良好な通信品質を低コストで保つために重要となる、網トポロジやリンク容量の適切な設計について説明する。
【0016】
網トポロジは、網コスト、伝送遅延、負荷の分散度合い、信頼性、といった様々な評価尺度に影響を与える。そのため、網トポロジを評価し設計する際には、これら複数の評価尺度を同時に考慮して最適性を評価する必要がある。
【0017】
例えば、本願の発明者らによる非特許文献8,9においては、複数評価尺度を同時に考慮可能なDEA(Data Envelopment Analysis)やAHP(Analytical Hierarchy Process)を用いて網トポロジを評価する技術が記載されている。
【0018】
また、各リンクの利用率は、交流マトリクスが与えられ、トポロジ、リンク容量、経路の3つが定まれば決定する。従って、伝送遅延といったユーザの体感品質や、負荷の分散度合いといった各リンクの使用率に関連する品質尺度に対する制約条件を導入すれば、総コストという単一の評価尺度を最適化する整数計画問題となる。
【0019】
すなわち、ノード位置と交流マトリクス、そしてリンク使用率(もしくはパケットの転送遅延や設計リンク容量)に関連する制約条件に対して総コストを最小化するよう、網トポロジ・リンク容量・経路を同時に最適化する問題となる。このことは、例えば、非特許文献10において記載されている。
【0020】
このようにトポロジ設計問題を整数計画問題とみなして解くアプローチは、既に数多く検討されている。例えば、非特許文献11,12においては、各ノード間の遅延時間を規定上限値以下に抑えることを制約条件に、総リンクコストを最小化する離散最適化問題を「Branc hand Bound法」によりヒューリスティックに解く技術、同様の問題を、多数のリンクが設置された状態からスタートし、1本ずつリンクを除去する作業を解の改善が大きな順に解の改善が見られなくなるまで繰り返す「貪欲算法」により解く技術などが検討されている。
【0021】
しかし、これらのトポロジ設計技術では障害が考慮されていない。障害を考慮したトポロジ設計技術としては、例えば、非特許文献13に記載のように、各ノード間にdisjointな経路が規定数以上存在することを制約条件に、総リンクコストを最小化する離散最適化問題をローカルサーチによりヒューリスティックに解く技術や、非特許文献14に記載のように、任意の単一ノード障害においても全ノード間の接続性が維持されることを制約条件に、やはりリンクコストの総和が最小化するようタブサーチや遺伝アルゴリズムといったヒューリスティックな解法で解く技術が検討されている。
【0022】
しかし、これらの技術は、障害時の接続性のみを考慮しており、障害時に発生する迂回トラヒックに対しても品質を規定水準内に保つことを考慮した研究は見られない。
【0023】
【非特許文献1】D.Mitra and K.Ramakrishna,“A Case Study of Multiservice Multipriority Traffic Engineering Design,” IEEE Globecom 99.
【非特許文献2】B. Fortz and M. Thorup,“Internet Traffic Engineering by Optimizing OSPF Weights,” IEEE Infocom 2000.
【非特許文献3】B. Fortz and M. Thorup,“Robust optimization of OSPF/IS−IS weights,” INOC 2003.
【非特許文献4】A. Kvalbein, A. F. Hansen, T. Cicic, S. Gjessing, and O. Lysne,“Fast IP Network Recovery using Multiple Routing Configurations,” IEEE Infocom 2006.
【非特許文献5】A. Elwalid, C. Jin, S. Low, and I. Widjaja,“MATE: MPLS Adaptive Traffic Engineering,” IEEE Infocom 2001.
【非特許文献6】S. Kandula, D. Katabi, B. Davie, and A. Charny,“Walking the Tightrope: Responsive Yet Stable Traffic Engineering,” ACM SIGCOMM 2005.
【非特許文献7】M. Menth, R. Martin, J. Charzinski,“Capacity Overprovisioning for Networks with Resilience Requirements,” ACM SIGCOMM 2006.
【非特許文献8】N. Kamiyama,“Network Topology Design using Data Envelopment Analysis,” IEEE Globecom 2007.¥bibitem{Kamiyama2}
【非特許文献9】神山憲明,佐藤大輔,“AHPを用いた網トポロジ設計,” 信学技報IN2006−145.
【非特許文献10】M. Gerla and L. Kleinrock,“On the Topological Design of Distributed Computer Networks,” IEEE Trans. Communications, COM−25, 1, pp.48−60, 1977.
【非特許文献11】N. G. Chattopadhyay, T. W. Morgan, and A. Raghuram,“An Innovative Technique for Backbone Network Design,” IEEE Trans. System, Man, and Cybernetics, 19, 5, 1989.
【非特許文献12】A. Gersht and R. Weihmayer,“Joint Optimization of Data Network Design and Facility Selection,” IEEE J. Selec. Areas, Commun., 8, 9, pp.1667−1681, 1990.
【非特許文献13】K. Steiglitz, P. Weiner, and D. J. Kleitman,“The Design of Minimum−Cost Survivable Networks,” IEEE Trans. Circuit Theory, CT−16, 4, pp.455−460, 1969.
【非特許文献14】E. C. G. Wille, M. Mellia, E. Leonardi, and M. A. Marsan,“Topological Design of Survivable IP Networks Using Metaheuristic Approaches,” Lecture Notes in Computer Science, Springer−Verlag, pp.191−206, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
解決しようとする問題点は、従来の技術では、障害時の接続性のみを考慮しており、障害時に発生する迂回トラヒックに対しても品質を規定水準内に保つことを考慮していない点である。
【0025】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、単一リンク障害時の迂回トラヒックに対する品質をも考慮した、網トポロジとリンク容量の設計を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するため、本発明では、網のトポロジとリンク容量の設計処理を行うために、ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別(ルーティング方式)が与えられたときに、正常時の任意のリンクの使用率を規定値γ以下に抑えることを制約条件に、総ネットワークコストを最小化する。この際、リンク数Lと、0から1の範囲の値をとる任意に定めた実数パラメタεに対して、正常時のトラヒック量が大きな順にk=εL本のリンクの各々の単一障害時に発生する迂回トラヒックを考慮して、リンク使用率をγ以下に抑えることと、残るL−k本のリンクの各々の単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されることを制約条件とする。また、全ノード間にリンクを設置した状態からスタートし、リンクコストを正常時に流れるトラヒック量で除した値が大きなリンクから優先的に削除する作業を、総ネットワークコストの改善が見られなくなるまで反復する。さらに、任意のリンクを削除した際、削除したリンクを通るパスに対してのみ経路を再計算することで計算時間を抑える。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ノードの位置と、ノード間の交流トラヒック行列と、経路設定法(ルーティングプロトコル種別)と、リンク使用率の規定上限とを少なくとも含むデータが与えられているときに、任意の単一リンク障害により生じる迂回トラヒックを考慮しながらリンク使用率を規定上限以下に抑えるという制約の範囲内で、最適な網トポロジとリンク容量を設計することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態例を説明する。図1は、本発明に係る網のトポロジとリンク容量の設計を行うシステムの構成例を示すブロック図であって、本図1におけるシステムは、CPU(Central Processing Unit)や主メモリ、表示装置、入力装置、外部記憶装置からなるコンピュータ構成からなり、光ディスク駆動装置等を介してCD−ROM等の記憶媒体に記録されたプログラムやデータを外部記憶装置内にインストールした後、この外部記憶装置から主メモリに読み込みCPUで処理することにより、各処理部の機能を実行する。
【0029】
すなわち、本例の網のトポロジとリンク容量の設計を行うシステムは、プログラムされたコンピュータ処理実行手段として、入力処理装置(図中「ノート情報,交流マトリクス,経路設定法,制約条件入力装置」と記載)101、設計処理装置(図中「網トポロジ・リンク容量設計装置」と記載)102、出力処理装置(図中「最適トポロジ・最適リンク容量出力装置」と記載)103を具備している。
【0030】
入力処理装置101は、キーボードから入力操作やファイルから読み込みにより、ノードの位置、ノード間のトラヒックデマンド量(交流マトリクス)、経路設定法(ルーティングプロトコル種別)、リンク使用率の規定上限値γと迂回トラヒックを考慮する対象のリンク数比率ε等のデータを取り込み、記憶装置に入力して記憶し、設計処理装置102は、入力処理装置101から入力されたデータを記憶装置から読み出して、これらのデータを用いて、最適な網トポロジとリンク容量を算出し、出力処理装置103は、入力処理装置101が算出した最適トポロジと最適リンク容量をCRT画面や記憶装置等に出力する。
【0031】
このような構成のシステムにより、本例では、リンク輻輳を回避するため、リンク利用率が与えられた任意の水準以下となることを制約条件に、総コストを最小化する網のトポロジとリンク容量の設計値を算出する。より具体的には、ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別(ルーティング方式)、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力し、プログラムされたコンピュータ装置によって、正常時の各リンクの使用率を規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網のトポロジとリンク容量を算出するために、プログラムされたコンピュータ装置の処理実行手段として、入力処理装置101と、設計処理装置102とを具備し、入力処理装置101は、制約条件に加えて、全ノード間に設置するリンク数Lと、予め定められたリンク数k(<L)とを入力して記憶装置に書き込み、設計処理装置102は、制約条件とリンク数Lおよびリンク数kとからなる情報を記憶装置から読み出し、読み出した情報を用いて、正常時の各リンクの使用率を規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網トポロジとリンク容量を算出する際、トラヒック量が大きな上位k本のリンクに限定し、かつ、残るL−k本の各リンクの単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されることを制約条件として、各リンクの単一リンク障害に伴う迂回トラヒックを考慮した網トポロジとリンク容量の算出を行う。
【0032】
トラヒックの交流マトリクスは常に変化するが、物理的な設備の設計は数ヶ月以上といった長期の時間スケールで行うため、通常、静的な交流マトリクスに基づき設計を行う必要がある。交流マトリクスは日や週といった周期的な変動を示すため、例えば最繁時のトラヒック量に基づき設計を行えば良い。
【0033】
静的なリンク重みを用いたOSPFを用いた場合も、リンクやノードの意図しない障害によりトラヒックが流れる経路は変化し、日常的に様々なリンクで障害が発生しており(「A. Markopoulou, G. Iannaccone, S. Bhattacharyya, C. Chuah, and C. Diot,“Characterization of Failures in an IP Backbone,” IEEE Infocom 2004.」参照)、リンク利用率を算出する際には、障害時の迂回トラヒックをも考慮する必要がある。
【0034】
IPバックボーンにおいて、メインテナンスに起因するものを除いた意図しない障害の約70%は単独リンク障害であることから(「A. Markopoulou, G. Iannaccone, S. Bhattacharyya, C. Chuah, and C. Diot,“Characterization of Failures in an IP Backbone,” IEEE Infocom 2004.」参照)、本例では、単一リンク障害時に発生する迂回トラヒックを考慮して、リンク使用率を規定値以下に抑える。
【0035】
また、本例では、米国と日本のバックボーンを対象に本設計技術を用いて設計された網トポロジについて分析し、障害に伴う迂回トラヒックの収容を目的として設計される過剰帯域が、どのようなリンクに多く用意されるかについて分析する。
【0036】
尚、本例では、単一のISPに閉じた網のうち、バックボーンの設計を対象とする。波長多重技術(DWDM;Dense Wavelength Division Multiplexing)を用いることでリンクの伝送容量の飛躍的な向上が可能であり(「R. Ramaswami and K. N. Sivarajan,“Optical Networks,” Academic Press, 2002.」参照)、既に、多くのIPバックボーンは、ルータ間に設置した伝送リンクにDWDMを用いている。
【0037】
本例においても、リンクはDWDMにより波長多重された光心線で構成される網を想定する。また、ルーティングプロトコル種別(ルーティング方式)としてOSPFを想定する。 SONET/SDH(Synchronous Optical NETwork/Synchronous Digital Hierarchy)を用いた障害復旧は高速であるが高コストなため、近年はIPレイヤで障害復旧を行うISPが多い(「F. Giroire, A. Nucci, N. Taft, and C. Diot,“Increasing the Robustness of IP Backbones in the Absence of Optical Level Protection,” IEEE Infocom 2003.」参照)。
【0038】
そこで本例でもSONET/SDHは用いず、障害発生時にはIPレイヤでOSPFにより迂回経路が設定されることを想定する。この場合、迂回経路が安定するまでに時間を要することが問題となり、近年、事前に代替経路を計算しておくことで対処するFRR(Fast ReRoute)が検討されているが(「A. Atlas, et al.,“Basic specification for IP fast−reroute: loop−free alternate,” Internet draft, draft−ietf−rtgwg−ipfrr−spec−base−01.txt, 2004−9.」参照)、本例では、OSPFのみにより迂回経路が設定されることを想定する。
【0039】
以下、本例による、リンク障害時の迂回トラヒックを考慮した網トポロジとリンク容量の設計処理技術について、詳細を説明する。
【0040】
ISPは、リンク輻輳を避けて安定した品質をユーザに提供し続けるためには、各リンクの利用率を大雑把な規定値以下に抑えることを目標に、網を設計・運用すれば実用上は十分であると思われる。
【0041】
すなわち、ノードiからノードjの間に設置されたリンク(以後、「eij」と表記)の使用率をuijとし、リンク使用率の規定上限をγとすると、リンクが設置された任意の組i,jに対してuij≦γを満たすことを制約条件とする。
【0042】
リンクeijのリンク容量(光ネットワークにおける設計波長数)をxijとし、リンクを設置しない場合にはxij=0とする。リンクは双方向(bidirectional)とし、xji=xijとする。
【0043】
また、交流マトリクスをD、ノードsからノードdに向かうトラヒックデマンド量をDsdとし、トラヒックデマンド量Dds=トラヒックデマンド量Dsdを仮定する。すなわち、交流行列(交流マトリクス)は対称形であるとし、ノードdからノードsに向かうパケットは、ノードsからノードdに向かうパケットと同一のノードとリンクを逆方向に経由する。しかし、以下に示す本例の設計手法は、交流マトリクスが非対称形であり、リンクが片方向(unidirectional)な場合にも容易に拡張可能である。
【0044】
以下、リンク使用率制約(リンク使用率の規定上限γ)、ノードの地理的な位置、交流マトリクスDが与えられたときに、網全体のコストCを最小化することを目的に網トポロジとリンク容量(設計波長数xij)を設計する処理について説明する。
【0045】
尚、「L. Li, D. Alderson, W. Willinger, and J. Doyle,“A First−Principles Approach to Understanding the Internet's Router−level Topology,” ACM SIGCOMM 2004.」においては、実際のISPの網トポロジを調べ、トポロジを決める主要因が、「コスト」と「ルータの処理能力」から決まる制約であると分析している。
【0046】
しかし、「ルータの処理能力」向上のペースは著しく、現在は、例えば「Cisco systems, http://www.cisco.com.」にあるように、1.28Tbpsもの処理能力を備えたルータを用いることも可能であり、本例では、ルータの処理能力制約は考慮しないものとする。
【0047】
まず、以下、網全体のコストCについて説明する。
【0048】
網コストCは、ノードコストとリンクコストの総和であるが、本例では簡単のため、ルータのポートあたりのコストをCepとし、リンクの両端に必要数のルータポートが用意されると見なしてノードコストをリンクコストに含めて考える。
【0049】
以下、リンクコストをモデル化する。本例では、DWDMによるルータ間の波長多重リンクを想定しているため、リンクコストは、土木インフラコスト、光心線コスト、光デバイスコストから構成される。
【0050】
土木インフラコストは、光ファイバを収容するための土管の敷設費用や、土管を保有する鉄道会社、電力会社、自治体などから土管を借りるための費用であり、1kmあたりのコストをCcdとする。
【0051】
また、光心線の1kmあたりのコストをCfbとする。1本の光心線に多重可能な波長数には制約があることから、多重可能な波長数の上限をWとすると、下記の数1に示す本数の光心線をリンクeijに敷設する必要がある。
【0052】
【数1】

【0053】
また、DWDM伝送を行うためには、リンクの両端において波長の多重と分離を行う波長多重分離装置と、減衰した光信号を増幅する光アンプ、そして、crosstalk(クロストーク ; 信号漏れ)やASE(amplified spontaneous emission)やPMD(polarization mode dispersion)によって劣化した光パルスを修復するリピータが必要になる(前述の「R. Ramaswami and K. N. Sivarajan,“Optical Networks,” Academic Press, 2002.」参照)。
【0054】
波長多重分離装置のコストは、おおよそ波長数に比例することから、ここでは、その波長あたりのコストをCmdとする。また、光アンプ1台のコストをCapとする。トランスポンダ(中継機器)1台のコストをCtpとすると、光パルスの整形は電気信号に変換してから行う必要があることから、1箇所のリピータで必要になるコストは(Ctp+2Cmd)xijとなる。
【0055】
従って、距離が「dij」で設計波長数(設計リンク容量)が「xij」のリンクeijのコストcij(dij,xij)は、下記の式となる。
【0056】
ij(dij,xij)=Ccdij+{α(dij)+β(dij)W}yij+α(dij)δij(zij)+β(dij)zij
【0057】
ただし、上記式において、「yij」は、上限であるW本の波長が多重された光心線の本数であり、「zij」は、Wに満たない本数の波長が多重された残り1本の光心線における多重波長数であり、下記の数2に示す式となる。
【0058】
【数2】

【0059】
また、「δij(zij)」を、「zij≧1」のとき「δij(zij)=1」で、「zij=0」のとき「δij(zij)=1」となる関数と定義する。
【0060】
さらに、「α(dij)」は、1本の光心線に必要なコストのうち距離にのみ依存した項であり、「β(dij)」は設計波長数(設計リンク容量)に比例する項であり、次の数3に示す式で与えられる。
【0061】
【数3】

【0062】
ただし、上記数3において、「Δap」と「Δrp」は、各々、光アンプとリピータの設置間隔である。
【0063】
次に、「設計アルゴリズム」について説明する。
【0064】
まず、網トポロジとリンク容量の設計問題を定式化する。
【0065】
与えられたノード集合に対して任意に設計した網トポロジをTとし、網トポロジTに含まれるエッジ(リンク)の集合をEとする。そして、網トポロジTから、集合Eに含まれる任意のリンクeijを除去した網トポロジを下記の数4に示すものとする。
【0066】
【数4】

【0067】
各発着ノード間の、パケットが流れる経路は、固定的に定めたリンク重みを用いたOSPFにより設定されることを想定する。
【0068】
上述の「リンクコストのモデル化」で説明したように、リンクコストは、距離(dij)と設計波長数(リンク容量xij)に依存するが、距離(dij)は、設計量に独立であり、固定的な重みとして用いるのが容易であることから、本例では、リンク重みとしてリンク距離dijを用いる。
【0069】
総コストCは、上述の『距離が「dij」で設計波長数が「xij」のリンクeijのコストcij(dij,xij)』を用いて次の数5に示す式で得られる。
【0070】
【数5】

【0071】
網トポロジTと交流マトリクスDに対して、正常時にリンク集合Eに含まれるリンクeijを流れる、下記の数6の記号で示されるトラヒック量は、下記の数7に示すようになる。
【0072】
【数6】

【0073】
【数7】

【0074】
ただし、上記数7における「Psd(T)」は、網トポロジTにおいて発ノードsから着ノードdに向かうトラヒックが経由するリンクの集合である。
【0075】
また、下記の数8の記号で示される網トポロジにおいて同一の交流マトリクスDを与えたときに、当該網トポロジの、下記の数9の記号で示されるエッジ集合に含まれる任意のリンクeijを流れるトラヒック量を、下記の数10の記号で示されるものとすると、それぞれ、下記の数11に示す関係式となる。
【0076】
【数8】

【0077】
【数9】

【0078】
【数10】

【0079】
【数11】

【0080】
任意の単一リンク障害時にも、各リンクの使用率を規定上限γ以下に抑えるためには、集合Eの各リンク(下記の数12参照)に対して、下記の数13で定義される最大トラヒック量を想定し、下記の数14の式が満たされれば良い。ただし、数14におけるBは波長の伝送帯域である。
【0081】
【数12】

【0082】
【数13】

【0083】
【数14】

【0084】
集合Eに含まれるリンクの本数をLとすると、L本全てのリンクを対象に、単一リンク障害に伴う迂回トラヒックを考慮してリンク容量を設計すると、正常時に各リンクを流れる、トラヒック量(数6参照)と比較して、非常に大きな帯域を過剰設計することが予想される。
【0085】
そこで、リンク障害を考慮する対象のリンクをL本の全てではなく、下記の数15で与えられるk本のリンクに限定することを考える。ただし、数15におけるεは0≦ε≦1の範囲の値をとる設計パラメタである。
【0086】
【数15】

【0087】
正常時に各リンクに流れるトラヒック量(数6参照)が大きなリンクほど、障害時に発生する迂回トラヒック量が大きいことから、正常時に各リンクに流れるトラヒック量(数6参照)が大きな上位k本のリンクに対してのみ迂回トラヒックを考慮する。
【0088】
ただし、任意の単一リンク障害時にも全ノード間の接続性を維持することを制約条件に考え、残るL−k本のリンクに対しては、単一障害時に孤立ノードが発生するか否かの判定を行う。
【0089】
以上のことから、本例の網トポロジとリンク容量の設計問題(設計波長数xijの決定問題)は、以下の数16に示す整数計画問題として表現できる。
【0090】
【数16】

【0091】
ただし、数16の制約式における、上位k本に限定したリンクに対して定義される最大トラヒック量は、下記の数17となる。
【0092】
【数17】

【0093】
上記数17において、E(k)は、集合Eに含まれるリンクのうち、正常に流れるトラヒック量(数6参照)が大きな上位k本のリンク集合である。
【0094】
また、上記数17の制約式における下記の数18で示す値は、下記の数19で示すリンク集合のリンク重みの総和であり、上記数16の制約式におけるE(L−k)は、集合Eから迂回トラヒックを考慮するk本のリンクを除いたリンク集合である。
【0095】
【数18】

【0096】
【数19】

【0097】
しかし、この種の整数計画問題は、NP困難な問題(条件を満たす解の数が膨大で、最も良い解を現実的な時間で求めるのが難しい問題)であり、多項式時間で厳密な最適解を得ることができないことが知られている(前述の「非特許文献10」参照)。
【0098】
そのため、大規模な問題に対しても現実的な計算時間で近似最適解が得られるよう、「ローカルサーチ」、「タブサーチ」、「遺伝的アルゴリズム」、「焼きなまし法」、といった様々なヒューリスティックな解法が開発されている(「柳浦睦憲,茨木俊秀,“組合せ最適化,” 朝倉書店, 2004.」参照)。
【0099】
一般に、各々の近似解法には問題に対する相性があり、汎用的に優れた解法は存在しないため、本例では、近似解法の詳細な評価には立ち入らず、局所探索法と並ぶ近似アルゴリズムの基本手法の一つである「貪欲算法」を用いる。
【0100】
この「貪欲算法」は、初期状態からスタートし、目的関数値が最も大きく改善すると思われる解の修正を、目的関数値の改善が見られなくなるまで反復する手法である。
【0101】
本例では、全ノード間にフルメッシュにリンクを設置した状態(完全グラフ)からスタートし、1本ずつリンクを除去するアプローチを用いる(前述の「非特許文献12」を参照)。
【0102】
この手法によれば、あるリンクを除去することでそのリンクを経由していたトラヒックが他のリンクにまわるが、最小コストとなる経路が常に選択されるため、網全体としては消費されるリンク資源量が増加する。このコスト増加分に対してリンクを除去することによるコスト減少分が大きなリンクほど、除去することによる総コストの改善効果が期待できる。
【0103】
よって、リンクコストが大きく、流れるトラヒック量が小さいリンク、すなわち、下記の数20に示す値が大きなリンクを優先的に除去する。
【0104】
【数20】

【0105】
以下に、このような「貪欲算法」を用いた本発明に係る網トポロジとリンク容量の設計アルゴリズムを、図8を用いて説明する。図8は、図1におけるシステムによる本発明に係る網トポロジ・リンク容量設計処理動作例を示すフローチャートである。
【0106】
(1)まず、初期設定処理を行う(ステップS801)。すなわち、全ノード間にリンクを設置し、前述の数17の式より、正常時に各リンクに流れるトラヒック量(数6参照)が大きな上位k本のリンクに対して定義される最大トラヒック量(下記の数21参照)を算出し、また、前述の数5の式より、当該網の総コストCを算出する。
【0107】
【数21】

【0108】
(2)次に、リンク評価値の算出を行う(ステップS802)。すなわち、下記の数22の式で示すリンクeijの評価値aijを、全リンクに対して各々算出し、評価値aijの大きな順にソートする。また、j=1とする。
【0109】
【数22】

【0110】
(3)さらに、リンク除去後の総コストを算出する(ステップS803)。すなわち、リンクeijの評価値aijがj番目に大きなリンクei’j’を除去したトポロジ(下記の数23参照)に対して、前述の数17の式より、正常時に各リンクに流れるトラヒック量(数6参照)が大きな上位k本のリンクに対して定義される最大トラヒック量を算出し、前述の数5の式より、当該網の総コストCを算出する。また、集合E(L−k)に含まれるリンクを各々除去した場合にも全ノード間の接続性が維持されるか否かを調べる。
【0111】
【数23】

【0112】
(4)そして、リンク除去の実施判定を行う(ステップS804)。すなわち、総コストCが減少し、かつ、集合E(L−k)に含まれる任意のリンク(下記の数24参照)の単一障害時にも全ノード間の接続性が維持される場合には、上述の「(2)リンク評価値の算出」処理に進み、そうでない場合には、該当リンクを除去しないで「j」を「1」だけ増加させて、上述の「(3)リンク除去後の総コスト算出」処理に進む。「j=L」の場合には終了。
【0113】
【数24】

【0114】
このような処理を、本例のシステムでは、ハードディスク装置等に記憶されたプログラムをCPUが順次に読み込みコンピュータ処理を実行し、各処理で生成したデータを主メモリ等の記憶装置に記憶し、また、記憶したデータを読み出して次の処理で用いる動作を以下手順で順次に行うことで実現する。
【0115】
すなわち、入力処理装置101は、ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力して記憶装置に書き込む第1の手順を実行し、設計処理装置102は、制約条件を記憶装置から読み出す第2の手順と、読み出した制約条件を用いて、全ノード間に設置される各リンクに対して、当該リンクのコストと当該リンクの使用率を規定値γ以下に抑える最大トラヒック量とを算出して記憶装置に書き込む第3の手順と、この第3の手順で算出した各リンクのコストを加算して網全体のコストである総コストを算出し記憶装置に書き込む第4の手順と、第3の手順で算出した各リンクのコストを当該リンクに正常時に流れるトラヒック量で除した値を当該リンクの評価値として算出しソートして記憶装置に書き込む第5の手順と、この第5の手順でソートした各リンクの評価値が一番大きなリンクを除去した残りの各リンクに対して、上述のコストと最大トラヒック量の算出と記憶装置への書き込みを行う6の手順と、この第6の手順で算出した各リンクのコストを加算してリンクを除去した後の網全体の総コストを算出し記憶装置に書き込む第7の手順と、この第7の手順で算出した総コストが第4の手順で算出した総コストより減少するか否か、および、残りの各リンクの各々の単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されるか否かを判別する第8の手順と、この第8の手順で、総コストが減少することおよび全ノード間の接続性が維持されることを判別した場合は、当該リンクを除去して上述の第5の手順からの処理を繰り返す第9の手順と、上述の第8の手順で、総コストが減少せず、もしくは、全ノード間の接続性が維持されないと判別した場合は、当該リンクを除去しないで上述の第4の手順で算出した評価値が次に大きなリンクを除去して、上述の第6の手順からの処理を繰り返す第10の手順と、この第10の手順による第6の手順からの繰り返し処理を、予め定められたリンク数で終了する第11の手順とを実行する。
【0116】
尚、前述の「(3)リンク除去後の総コスト算出」処理(図8のステップS801)において、リンクei’j’を除去したことで経路に影響を受けるトラヒックは、当該リンクei’j’を通るもののみであり、全ての発着ノードペアに対して経路を再計算することは非効率的である。
【0117】
そこで、本例では、各リンクeijに対して、リンクeijを経由する発着ノードペアの集合を管理することで、影響を受ける発着ノードペアに対してのみ経路を再計算する。
【0118】
同様に、単一リンク障害時の迂回トラヒック量を計算する際も、障害が生じたリンクを経由する発着ノードペアに対してのみ迂回経路を算出する。
【0119】
また、「(3)リンク除去後の総コスト算出」処理における「接続性の維持の判定」は、ダイクストラ法を適用した際の経路のコストが、任意の発着ノード間に対して有限値として得られるか否かで行う。
【0120】
すなわち、ノード数をNとすると、ダイクストラ法の計算量はO(N)となる。初期状態は、完全グラフでスタートするため、アルゴリズムの早い時点においてはO(N)本のリンクが存在するが、各リンクを経由する発着ノードペア数は、全ペア数N(N−1)/2と比較して遥かに小さい。よって、「(3)リンク除去後の総コスト算出」処理における計算量は、おおよそO(N)となる。よって、全体では、O(N)程度の計算量になる。
【0121】
以下、本例の網トポロジとリンク容量の設計による数値評価結果を説明する。ここでは、ノード間の距離dijは、ノードiとノードj間の直線距離(ユークリッド距離)とし、リンク使用率の規定上限γ=0.7とし、また、光心線の多重波長数の上限W=60、波長の伝送帯域B=10Gbps、光アンプの設置間隔Δap=80km、リピータの設置間隔Δrp=2000kmとする。
【0122】
コストは、全て相対値で考え、現状の価格を考慮して、「光心線の1kmあたりのコストCfb=0.1」、「光アンプ1台のコストCap=240」、「トランスポンダ1台のコストCtp=75」、「ルータのポートあたりのコストCep=40」、「波長あたりのコストCmd=3.3」と設定する。
【0123】
ただし、土木インフラコストは、地理的要因や契約形態に大きく依存し、適切に設定することが困難であるため考慮しないものとする(Ccd=0)。
【0124】
また、評価は、全米の大学や企業が参加するインターネット2の基盤となるバックボーンである「Abilene」を対象に実施した。「Abilene」は、全米に配置された11のノードから構成される。
【0125】
ノード位置は公開されている情報を用いる(「Abilene topology and traffic dataset. http://www.cs.utexas.edu/〜yzhang/research/AbileneTM/」参照)。また総トラヒック量がVとなるよう、交流マトリクスは同様に公開されている実測値に比例するよう配分する。
【0126】
ただし、全米の2006年末時点の総トラヒック量が1.39〜2.47Tbpsであったことから(「Minnesota Internet Traffic Studies (MINTS). http://www.dtc.umn.edu/mints/home.html」参照)、総トラヒック量V=1Tbpsと10Tbpsの場合について各々評価する。
【0127】
ここでは、単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数kの全リンク数Lに対する比率εが各種性能に与える影響を評価する。
【0128】
図2は、図1におけるシステムによる網トポロジの設計例を示す説明図であり、本図2においては、単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数kの全リンク数Lに対する比率εの3つの値に対して、各々、設計された網トポロジを示している。
【0129】
まず、「総トラヒック量V=1Tbps」の場合、図2の(a)〜(c)について見ると、比率ε=0(迂回トラヒックを全く考慮しない)のとき、図2の(a)に示すように、正常時のトラヒック流量が最大のリンクは(2,5)で、次に流量の大きいリンクは(4,5)であった。
【0130】
比率εを小さな値に設定すると、これらトラヒック流量の大きな特定のリンクの障害時の迂回トラヒックのみが考慮される。比率ε=0のとき、これらリンクは大きなループの一部を担っているため、これらリンクで障害が発生すると、迂回トラヒックが多数のリンクを経由するため非効率的である。
【0131】
そこで、例えば、比率ε=0.1のとき、図2の(b)に示すように、これらリンクの障害時の迂回トラヒックが効率的にショートカットされるリンク(3,5)が追加されることが確認できる。
【0132】
一方、比率εが大きく「1」に近い場合には、多数のリンクに対して単一リンク障害時の迂回トラヒックを考慮する結果、図2の(c)に示すように、多数の発着ノード間の迂回トラヒックを、共通のリンクで効率よく収容できるループを組み合わせた網トポロジとなることが確認できる。
【0133】
また、リンクeijの設計リンク容量から、正常時に流れるトラヒック量を引いたものを過剰設計帯域Ex(eij)と定義すると、この過剰設計帯域Ex(eij)が下記の数25のとき、リンク(1,11)と(1,5)の過剰設計帯域Ex(eij)が突出して大きかった。
【0134】
【数25】

【0135】
これは、全リンク数L=14で、単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数k=2となり、正常に流れるトラヒック量(前述の数6,7参照)の大きい上位二本のリンクが(5,8)と(8,11)であり、これらのリンクと同一のループを形成するためである。
【0136】
「Abilene」では、東海岸に人口の大きな都市が集中しており、正常に流れるトラヒック量(前述の数6,7参照)が大きなリンクが特定の地域に集中する傾向がある。このような場合、比率εを小さく設定すると、帯域を過剰設計するリンクもそのような地域に集中する傾向が見られる。
【0137】
図3は、各リンクの正常時のリンク使用率を値の大きな順にプロットした例の説明図であり、比率ε=0の場合、全リンクの使用率が、規定上限γ(=0.7)に近い値となるが、比率ε=0.1の場合には、少数のリンクの利用率が大きく低下し、また、比率εが0.4より大きい場合は、リンク利用率のばらつきが大きく、規定上限γ(=0.7)に近いものから小さなものまで幅広く分布することが確認できる。
【0138】
一方、「総トラヒック量V=10Tbps」の場合には、V=1Tbpsのときと比較して交流トラヒック量が大きく、複数の対地間でトラヒックを集約しなくても、波長帯域と比較して十分なトラヒック量が対地間で確保できるため、図2の(d)〜(f)に示すように、多数の対地に対してダイレクトリンクが設置される。
【0139】
次に、比率εの値の差異に応じて、どの程度異なった網トポロジが設計されるかを確認するため、二つのトポロジAとトポロジBの一致度η(A,B)を、「η(A,B)=n(A∩B)/n(A∪B)」で定義する。ただし「n(A∩B)」と「n(A∪B)」は、各々、トポロジAとトポロジBに含まれるリンクの積集合と和集合のリンク数である。
【0140】
図4は、二つのトポロジの一致度例を示す説明図である。図4の(a)においては、比率ε=0における設計トポロジT(ε=0)との一致度を、図4の(b)においては、比率ε=1における設計トポロジT(ε=1)との一致度をεに対して各々示す。
【0141】
図4の(a)においては、比率εの増加に伴い、設計トポロジT(ε=0)との一致度が減少する反面、図4の(b)においては、比率εの増加に伴い、設計トポロジT(ε=1)との一致度が増加する。
【0142】
図4の(b)において、設計トポロジT(ε=1)との一致度は、比率εの値に関係なく70%程度以上と高い。よって、設計されるトポロジの形に、比率εが及ぼす影響は全体としては小さいといえる。
【0143】
図5は、図1におけるシステムで設計したトポロジのリンク数および設計リンク容量の平均値と単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数の全リンク数に対する比率との対応関係を示す説明図であり、設計トポロジのリンク数Lと、設計リンク容量xijの平均値を、比率εに対して示している。
【0144】
図4で示したように、単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数の全リンク数に対する比率εが、設計トポロジに及ぼす影響は小さく、この比率εの変化に対して、設計トポロジのリンク数Lはあまり変化しない。
【0145】
一方、比率εの増加に伴い、より多数の単一リンク障害パターンの迂回トラヒックを考慮するため、平均設計リンク容量は増加する。しかし、比率εが中程度より大きな領域では、比率εを増加させても、設計リンク容量はほとんど変化しない。
【0146】
この傾向は、図5の(c)に示すように、平均過剰設計帯域(Ex(eij)の全リンクにわたる平均値)の、比率εに対する特性からも確認できる。これは、正常時のトラヒック量(前述の数6参照)が大きな半数程度のリンクの障害時の迂回トラヒックを考慮してリンク容量を設計すれば、残るリンクの障害時に発生する迂回トラヒックの多くも吸収できることが理由である。
【0147】
その結果、図5の(d)に示すように、比率εが中程度以上の領域では、比率εの増加に対して総コストはほとんど増加しなくなる。
【0148】
次に、図6を用いて、単一リンク障害時の特性について考察する。図6は、単一リンク障害時のリンク使用率のプロット例を示す説明図であり、図6の(a)においては、全ての(L個の)単一リンク障害パターンにおける各リンクの使用率の平均値を降順にプロットした例を示し、また、図6の(b)においては、L個の単一リンク障害パターン中の最大利用率を各リンクについて降順にプロットした例を示している。
【0149】
ここでは、総トラヒック量V=10Tbpsの結果についてのみ示し、図6の(a)においては、比率εが「0」や「0.1」の場合、想定していないリンクの障害に伴う迂回トラヒックにより、多数のリンクの平均利用率が、規定上限γ=0.7を超えている。
【0150】
特に、図6の(b)に示すように、少数のリンクの最大リンク使用率が非常に高くなることが確認できる。特に、最大利用率が最も高いリンク(7,9)の障害時利用率が突出して高いが、このリンクの正常時のトラヒック量は、全リンク中で最小であり、比率εを「0」や「0.1」としたときの過剰設計帯域も最小となっている。
【0151】
このように、正常時のトラヒック量(前述の数6参照)が大きな少数のリンクのみに限定して障害時の迂回トラヒックを考慮しても不十分である。
【0152】
図7は、単一リンク障害時の全リンクにわたるリンク使用率の平均値と最大値の比率に対するプロット例を示す説明図であり、図7の(a)においては、全ての単一リンク障害パターンの全リンクにわたるリンク使用率の平均値と最大値を、比率εに対してプロットしており、また、図7の(b)においては、単一リンク障害時にリンク使用率が規定値γ=0.7を超過したリンクを経由するトラヒック量の全トラヒック量Vに対する比率を示している。
【0153】
図7の(a)に示すように、比率εの増加に伴い、規定上限を超過し、輻輳状態になったリンクを経由するトラヒック量は、指数的に減少することが確認できる。
【0154】
また、図7の(b)に示すように、トラヒック量Vが大きな方が、同一の比率εに対するk(トラヒック量(前述の数6参照)が大きな上位リンクの本数)の値が大きくなるため、超過比率は低くなる。
【0155】
比率εが中程度より低い場合、単一リンク障害時に無視できない割合のトラヒックが輻輳リンクを経由することになるため、比率εは中程度以上に設定することが望ましい。また、全トラヒックに対して常にリンク利用率の規定上限を満たすには、比率εを「1」に近い値に設定する必要があるが、比率εが中程度以上の領域では、前述したように、比率εを増加させても総コストはほとんど増加しない。
【0156】
以上のことから、比率ε=1に設定すべきであると結論できる。
【0157】
以上、図1〜図8を用いて説明したように、本例では、ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別(ルーティング方式)、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力し、プログラムされたコンピュータ装置によって、正常時の各リンクの使用率を上記規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網のトポロジとリンク容量を算出するために、プログラムされたコンピュータ装置の処理実行手段として、入力処理装置101と、設計処理装置102とを具備し、入力処理装置101は、制約条件に加えて、全ノード間に設置するリンク数Lと、予め定められたリンク数k(<L)とを入力して記憶装置に書き込み、設計処理装置102は、制約条件とリンク数Lおよびリンク数kとからなる情報を記憶装置から読み出し、読み出した情報を用いて、正常時の各リンクの使用率を規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網トポロジとリンク容量を算出する際、トラヒック量が大きな上位k本のリンクに限定し、かつ、残るL−k本の各リンクの単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されることを制約条件として、各リンクの単一リンク障害に伴う迂回トラヒックを考慮した網トポロジとリンク容量の算出を行う。
【0158】
また、設計処理装置102は、網トポロジとリンク容量の算出を、全ノード間にリンクを設置した状態からスタートし、正常時に流れるトラヒック量でリンクコストを除した値が大きなリンクから優先的に除去する処理を、総ネットワークコストの改善が見られなくなるまで反復する。
【0159】
より詳細には、設計処理装置102は、制約条件を記憶装置から読み出し、読み出した制約条件を用いて、全ノード間に設置される各リンクに対して、当該リンクのコストと当該リンクの使用率を規定値γ以下に抑える最大トラヒック量とを算出して記憶装置に書き込むと共に、算出した各リンクのコストを加算して網全体のコストである総コストを算出し記憶装置に書き込み、また、算出した各リンクのコストを当該リンクに正常時に流れるトラヒック量で除した値を当該リンクの評価値として算出しソートして記憶装置に書き込み、ソートした各リンクの評価値が一番大きなリンクを除去した残りの各リンクに対して、コストと最大トラヒック量の算出と記憶装置への書き込みを行い、さらに、ここで算出した各リンクのコストを加算してリンクを除去した後の網全体の総コストを算出し記憶装置に書き込み、この算出した総コストが先に算出した総コストより減少するか否か、および、残りの各リンクの各々の単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されるか否かを判別し、総コストが減少することおよび全ノード間の接続性が維持されることを判別した場合は、当該リンクを除去して上記リンクの評価値の算出手順からの処理を繰り返し、総コストが減少せず、もしくは、全ノード間の接続性が維持されないと判別した場合は、当該リンクを除去しないで、評価値が次に大きなリンクを除去して、残りのリンクに対する最大トラヒックとコストの算出を繰り返し、この繰り返し処理を、予め定められたリンク数で終了する。
【0160】
また、設計処理装置102は、リンクを除去(削除)した際、除去(削除)したリンクを通るパスに対してのみ経路を再計算することで、計算時間を抑える。
【0161】
また、設計処理装置102は、接続性の維持の判定を、ダイクストラ法を適用した際の経路のコストが任意の発着間ノード間に対して有限値として得られる否かで行う。
【0162】
このように、本例では、ノードの位置と、ノード間の交流トラヒック行列と、経路設定法と、リンク使用率の規定上限とが与えられているときに、任意の単一リンク障害により生じる迂回トラヒックを考慮しながらリンク使用率を規定上限以下に抑えるという制約の範囲内で、最適な網トポロジとリンク容量を設計することができる。
【0163】
尚、本発明は、図1〜図8を用いて説明した例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本例では、光ネットワークを例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0164】
また、本例では、単一リンクのみを考慮したが、さらに、単一ノード障害を考慮する場合にも適用できる。この場合、各ノードに接続された全リンクに障害が発生したと見なし、各リンクの最大トラヒック量を算出する際に、各ノード障害時の迂回トラヒックを同時に考慮する。
【0165】
また、本例のコンピュータ装置の構成に関しても、キーボードや光ディスクの駆動装置の無いコンピュータ構成としても良い。また、本例では、光ディスクを記録媒体として用いているが、FD(Flexible Disk)等を記録媒体として用いることでも良い。また、プログラムのインストールに関しても、通信装置を介してネットワーク経由でプログラムをダウンロードしてインストールすることでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明に係る網のトポロジとリンク容量の設計を行うシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1におけるシステムによる網トポロジの設計例を示す説明図である。
【図3】各リンクの正常時のリンク使用率を値の大きな順にプロットした例の説明図である。
【図4】二つのトポロジの一致度例を示す説明図である。
【図5】図1におけるシステムで設計したトポロジのリンク数および設計リンク容量の平均値と単一障害時の迂回トラヒックを考慮するリンク数の全リンク数に対する比率との対応関係を示す説明図である。
【図6】単一リンク障害時のリンク使用率のプロット例を示す説明図である。
【図7】単一リンク障害時の全リンクにわたるリンク使用率の平均値と最大値の比率に対するプロット例を示す説明図である。
【図8】図1におけるシステムによる本発明に係る網トポロジ・リンク容量設計処理動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0167】
101:入力処理装置(ノート情報,交流マトリクス,経路設定法,制約条件入力装置)、102:設計処理装置(網トポロジ・リンク容量設計装置)、103:出力処理装置(最適トポロジ・最適リンク容量出力装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力し、プログラムされたコンピュータ装置によって、正常時の各リンクの使用率を上記規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網のトポロジとリンク容量を算出する網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
プログラムされたコンピュータ装置の処理実行手段として、入力処理手段と、設計処理手段とを具備し、
入力処理手段は、上記制約条件に加えて、全ノード間に設置するリンク数Lと、予め定められたリンク数k(<L)とを入力して記憶装置に書き込む第1の手順を実行し、
上記設計処理手段は、
上記制約条件と上記リンク数Lおよび上記リンク数kとからなる情報を記憶装置から読み出し、読み出した情報を用いて、上記正常時の各リンクの使用率を上記規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網トポロジとリンク容量を算出する際、
トラヒック量が大きな上位k本のリンクに限定し、かつ、残るL−k本の各リンクの単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されることを制約条件として、各リンクの単一リンク障害に伴う迂回トラヒックを考慮した上記網トポロジとリンク容量の算出を行う第2の手順を実行する
ことを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
上記設計処理手段は、上記第2の手順において、
上記網トポロジとリンク容量の算出を、全ノード間にリンクを設置した状態からスタートし、正常時に流れるトラヒック量でリンクコストを除した値が大きなリンクから優先的に除去する処理を、総ネットワークコストの改善が見られなくなるまで反復する
ことを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
上記設計処理手段は、
単一ノード障害に対して、各ノードに接続された全リンクに障害が発生したと見なし、各リンクの最大トラヒック量を算出する際に、各ノード障害時の迂回トラヒックを同時に考慮することを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項4】
プログラムされたコンピュータ装置によって、網のトポロジとリンク容量の設計処理を行う方法であって、
プログラムされたコンピュータ装置の処理実行手段として、入力処理手段と、設計処理手段とを具備し、
入力処理手段は、ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力して記憶装置に書き込む第1の手順を実行し、
設計処理手段は、上記制約条件を記憶装置から読み出す第2の手順と、
読み出した制約条件を用いて、全ノード間に設置される各リンクに対して、当該リンクのコストと当該リンクの使用率を上記規定値γ以下に抑える最大トラヒック量とを算出して記憶装置に書き込む第3の手順と、
該第3の手順で算出した各リンクのコストを加算して網全体のコストである総コストを算出し記憶装置に書き込む第4の手順と、
上記第3の手順で算出した各リンクのコストを当該リンクに正常時に流れるトラヒック量で除した値を当該リンクの評価値として算出しソートして記憶装置に書き込む第5の手順と、
該第5の手順でソートした各リンクの評価値が一番大きなリンクを除去した残りの各リンクに対して、上記コストと上記最大トラヒック量の算出と記憶装置への書き込みを行う6の手順と、
該第6の手順で算出した各リンクのコストを加算してリンクを除去した後の網全体の総コストを算出し記憶装置に書き込む第7の手順と、
該第7の手順で算出した総コストが上記第4の手順で算出した総コストより減少するか否か、および、上記残りの各リンクの各々の単一障害時にも全ノード間の接続性が維持されるか否かを判別する第8の手順と、
該第8の手順で、総コストが減少することおよび全ノード間の接続性が維持されることを判別した場合は、当該リンクを除去して上記第5の手順からの処理を繰り返す第9の手順と、
上記第8の手順で、総コストが減少せず、もしくは、全ノード間の接続性が維持されないと判別した場合は、当該リンクを除去しないで上記第4の手順で算出した評価値が次に大きなリンクを除去して、上記第6の手順からの処理を繰り返す第10の手順と、
該第10の手順による上記第6の手順からの繰り返し処理を、予め定められたリンク数で終了する第11の手順と
を実行することを特徴とする網トポロジ・リンク容量設定処理方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
上記設計処理手段は、
上記リンクを除去した際、削除したリンクを通るパスに対してのみ経路を再計算する手順を実行することを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
上記設計処理手段は、
上記接続性の維持の判定を、ダイクストラ法を適用した際の経路のコストが任意の発着間ノード間に対して有限値として得られる否かで行うことを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法であって、
上記網は光ネットワークからなり、
上記リンク容量が波長数であることを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理方法。
【請求項8】
ノード位置と、トラヒック交流マトリクスと、ルーティングプロトコル種別、および、正常時の任意のリンクの使用率の上限を規定する値γを少なくとも含むデータを制約条件として入力し、プログラムされたコンピュータ装置によって、正常時の各リンクの使用率を上記規定値γ以下に抑え、かつ、総ネットワークコストを最小化する網のトポロジとリンク容量を算出する網トポロジ・リンク容量設計処理システムであって、
プログラムされたコンピュータ処理を実行する手段として、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法における各手順を実行する処理手段を具備したことを特徴とする網トポロジ・リンク容量設計処理システム。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1から請求項7のいずれかに記載の網トポロジ・リンク容量設計処理方法における各手順を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−118201(P2009−118201A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289142(P2007−289142)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】