説明

網点画像形成方法、印画物

【課題】トーンジャンプの発生を抑え、濃度ムラを極力少なくすることが可能な網点画像の形成方法等を提供する。
【解決手段】複数の画素2で構成される画素ブロック5の各画素2に所望する画像の濃度に応じてドットを配置して構成される網点パターンに基づいて網点画像を形成する網点画像形成方法において、前記網点パターンは、複数のドットの集合体で構成されるドットパターンと、このドットパターンと間隔を有して配置される他の前記ドットパターンとが、ドットにより接続されて構成される万線パターンを有し、前記ドットパターンから前記万線パターンに移行する直前のドットパターンは、先細り状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃淡表現を面積階調の網点で表現する網点画像形成方法、及び当該網点画像形成方法により印刷された印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から印画物の濃淡表現を面積階調の網点で表現する熱転写プリンタが知られている(特許文献1参照)。この種の熱転写プリンタの網点形成方法の一例として、1個の網点の大きさを原画像に応じて変えて、大小の網点の集合によって擬似的に多階調を表現するAMスクリーニング方式が知られている。
【0003】
このような熱転写プリンタは、原画像に対応する網点パターンを作成し、この網点パターンに基づいて網点画像の形成(印刷)を行うが、このような網点画像の形成においては、印刷物への忠実な網点の再現性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−208288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5はAMスクリーニング方式による従来の一般的な濃度変動を示す図である。図中破線は理想的な濃度変動曲線を示し、図中実線は実際の濃度変動曲線を示し、図中二点鎖線で示す丸印はトーンジャンプが発生している箇所を示す。このように、ドット数の増加に応じて隣接するドットの間隔が狭まり、意図せずドット同士が繋がったり繋がらなかったりするためにトーンジャンプが発生し、且つこの濃度域では、濃度ムラが発生しやすくなる。
【0006】
また、この種の熱転写プリンタにおけるサーマルヘッドの解像度は、一般的に300dpi〜600dpiであり、1ドットを多階調で制御しなければフルカラーを滑らかに再現することができないが、多階調による形状制御は、外的な変動により1ドット以下の面積率が変動し、網点の制御が難しく不安定となり、ドットの形状にムラが発生しやすくなる。例えば、ある1ドットにインクが転写する電力の50%をかけても、ヘッドの幅方向や印刷物の流れ方向の機械的・材料的な変動を拾って、その1ドットが全く転写しなかったり、全て転写したりする場合がある。
【0007】
特に、印刷物の流れ方向における、ドットの形状制御は難しく不安定であり、従来行われているように濃度を上げるためにドットを単に大きくするような網点パターンを用いると、ドット間の間隔が一定以下になるような濃度域において、ドットが繋がったり繋がらなかったりするためにトーンジャンプが発生し、且つ濃度ムラも発生しやすくなる。
【0008】
万線パターンのみを用いて濃度表現を行えば、前述のようなドット結合によるトーンジャンプは発生しづらくなるが、最小濃度はドットパターンを用いた時よりも高くなり、最大濃度はドットパターンを用いた時よりも低くなるため、表現可能な濃度域が狭くなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題の解消を課題の一つとし、トーンジャンプの発生を抑え、濃度ムラを極力少なくすることが可能な網点画像の形成方法等を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0011】
すなわち、請求項1に係る網点画像形成方法は、複数の画素で構成される画素ブロックの各画素に所望する画像の濃度に応じてドットを配置して構成される網点パターンに基づいて網点画像を形成する網点画像形成方法において、前記網点パターンは、複数のドットの集合体で構成されるドットパターンと、このドットパターンと間隔を有して配置される他の前記ドットパターンとが、ドットにより接続されて構成される万線パターンを有し、前記ドットパターンから前記万線パターンに移行する直前のドットパターンは、先細り状に形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る網点画像形成方法は、請求項1に記載の網点画像形成方法において、前記万線パターンは、前記ドットの幅が、前記ドットパターンの幅よりも狭いことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る網点画像形成方法は、請求項1又は2に記載の網点画像形成方法において、前記万線パターンは、前記ドットにより接続された接続部の線幅を前記濃度の上昇に伴って線幅が均一となるまで太くすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る網点画像形成方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の網点画像形成方法において、前記万線パターンは、印刷方向に延びて形成されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る印画物は、複数の画素で構成される画素ブロックの各画素に所望する画像の濃度に応じてドットを配置して構成される網点パターンに基づいて網点画像が形成された印画物において、前記網点パターンは、複数のドットの集合体で構成されるドットパターンと、このドットパターンと間隔を有して配置される他の前記ドットパターンとが、ドットにより接続されて構成される万線パターンを有し、前記万線パターンに移行する直前のドットパターンは、先細り状に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トーンジャンプの発生を抑え、このトーンジャンプが原因の印刷不良の発生を抑えることができる。また、トーンジャンプの発生を抑えることにより、印刷紙に良好な印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画素ブロックの一例を示す図である。
【図2】網点パターンの一例を説明するための図であり、図2(a)はドット形状を示す図、図2(b)は万線形状を示す図である。
【図3】濃度変動に応じた網点パターンの形成方法を説明するための図であり、図3(a)はドット形状を示す図、図3(b)はドット同士が接続された直後の状態図、図3(c)はドット形状から除々に万線形状に移行する状態図、図3(d)は万線形状を示す図である。
【図4】実施例における濃度変動に応じた網点パターンの形成方法を説明するための図であり、図4(a)はドットを点在させた状態図、図4(b)はドットの周辺にドットを配置してドットの形状を大きくした状態図、図4(c)は、印刷方向に先細り形状となるようにドットを配置した状態図、図4(d)は図4(c)の状態から更に印刷方向に先細り形状となるようにドットを配置した状態図、図4(e)は異なるドット同士がドットにより接続された直後の状態図、図4(f)はドット形状から除々に万線形状に移行する状態図、図4(g)は万線形状に移行した状態図、図4(h)は印刷方向に万線形状を延ばした状態図である。
【図5】AMスクリーニング方式による従来の一般的な濃度変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の網点画像形成方法の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明の網点画像形成方法は、所望する画像を網点で形成する方法である。この網点で形成された画像(以下、「網点画像」と称する。)は、例えば、デジタルカメラ等で撮影された画像を読み込み、この画像の濃度に応じて大小の点(ドット)のパターンで表した網点パターンを作成し、この網点パターンを印刷することで形成される。なお、一般的な網点画像の形成方法、及び印刷方法についてはすでに公知であるため詳細な説明は省略する。
【0020】
この網点パターンは、図1に示すように、線数に応じてその大きさが異なる複数の画素ブロック5を有しており、各画素ブロック5は、画素2の集合体で構成されている。各画素2(例えば、画素ブロック5中の1〜16)には、図4(a)に示すように、インキが置かれるドット部7の画素であるか、インキのないヌケ部8の画素であるかのいずれかを意味するデータが貼り付けられ、ドット部7は0〜100%の多値の階調を持つ。画素ブロック5は、このドット部7の個数及び階調値によって、その輝度が規定される。各画素ブロック5は、表現したい濃度に応じて、所定の形状及び大きさの網点パターンに形成される。
【0021】
この画素ブロック5は、例えば、図1に示すように、4行4列の16個の画素で構成される正方形状の画素の集合体である。なお、画素ブロック5の配列や画素数、又は形状はこれに限られず、それ以上又はそれ以下の複数の画素を含む他の形状の画素ブロックでも良い。この画素ブロック5には、上述したようにドット部7とヌケ部8とを有する画素2の集合体により網点パターンが形成される。
【0022】
網点パターンは、大小のドット(単数、又は複数のドットの集合体)で構成されるドットパターンやドットの集合(ドットパターンの接続)により一定の幅を有し線状に構成される万線パターン、又はドットパターンと万線パターンの組み合わせで構成される。なお、このドットパターンや万線パターンは、表現したい濃度に応じて予め規定された算出式により算出されて形成される。
【0023】
ここで、ドットパターンと万線パターンの濃度変動について検討すると、ドットパターンは、線数を高める程、各ドットを近接して配置する必要性があるものの、サーマルヘッドが熱的・機械的な変動を受けることにより、図2に示すように、ドットは、印刷方向にその形状が変化(伸び縮み)するため、例えば、隣接するドット同士の間隔が狭い場合などにおいて、ドット同士の分離結合を制御することができず、急な濃度変動(トーンジャンプ)が発生する。このように、ドットパターンは線数が高くなる程、困難となり不安定な制御となってしまう。
【0024】
一方で、万線パターンは、サーマルヘッドが熱的・動的な変動を受けても印刷方向にその形状が変化しないため容易且つ安定的に万線パターンの形状を制御可能である。
【0025】
なお、ドットパターン又は万線パターンの幅方向の形状は、サーマルヘッドが熱的・動的な変動を受けてもその形状は比較的安定している(濃度変動がおきにくい)。
【0026】
そこで、本実施形態では、安定した印刷品質を得るために、網点パターンの作成において、万線パターンを極力使用することとしている。
【0027】
具体的には、各画素ブロック5内において、画像濃度が薄い場合には、従来通りドットを点在させてドットパターンを構成し、濃度が濃くなるにつれて、図3(a)に示すように、印刷方向に複数のドットが配置されるようにドットパターンを構成する。更に濃度が濃くなってドット同士が接近しドット形状が不安定な濃度に至ったら、図3(b)に示すように、各ドットが印刷方向において先細り状となるようにドット同士を1ドットのパターンで接続し、更に濃度が濃くなるにつれて、図3(c)及び図3(d)に示すように、ドット同士の接続部を幅方向に除々に太らせて、最終的には幅方向が均一な万線パターンを形成するようにして網点パターンを形成するようにしている。
【0028】
これにより、濃度変動がスムーズに上昇するため、トーンジャンプなどが発生しにくく、結果的に画像上の濃度ムラの発生を抑止することができる。
【0029】
―実施例―
次に、具体的な網点パターンの実施例について図4を用いて説明する。
【0030】
まず画像濃度が薄い場合には、図4(a)に示すように、各画素ブロックの上段側にドットを点在させ、濃度が濃くなるに従って、図4(b)に示すように、その周辺の画素を塗りつぶし、ドットの形状を大きくする。
【0031】
さらに、濃度が濃くなるにしたがって、図4(c)、図4(d)に示すように、ドットパターンの形状が先細り状となるように印刷方向側の下段側の画素を塗りつぶす。本実施形態では、下端右側の画素を印刷方向に塗りつぶすようにしているが、下段左側の画素を印刷方向に塗りつぶすようにしても構わない。
【0032】
さらに、濃度が高まるにしたがって、印刷方向にドットパターンを延ばす。すなわち、ドットパターンが略L字状になるように画素を塗りつぶす。
【0033】
次に、図4(d)に示すように、濃度が高まるにしたがって、隣接する画素ブロックのドットパターンが近接するため、図4(e)に示すように、両者のドットパターンをドット20で接続し、万線形状(万線パターン)にする。このとき、特には、ドットパターン同士を接続するドット20は、外部の変動等を考慮して印字方向に伸びない位置に配置される。
【0034】
図4(e)によれば、画素22にドット20を配置する選択肢も考えられるが、外部の変動によってドットの形状が伸びた場合に、印字方向へとドットの形状が伸びるため、トーンジャンプが発生する可能性がある一方で、図4(e)に示すようにドット20を配置することで、ドットの変動を考慮する必要がなくなる。
【0035】
このように、特に、ドットパターン同士を接続する際には、上述したドットの形状変動も考慮してドットパターン同士を接続するためのドットの位置が決定される。
【0036】
さらに、濃度が高まるにしたがって、図4(f)〜図4(h)に示すように、幅方向が均一な万線形状となるようにドットを配置する。
【0037】
このように、ドットパターン同士を接続する際には、ドットパターン同士の接続部の幅が各ドットパターンの線幅よりも狭くなるようにドットにより結合され、濃度が高まるにしたがって、接続部の線幅を除々に太くしていき、最終的に線幅が均一な万線形状とすることで、濃度がスムーズに上昇し、トーンジャンプの発生を抑え、ムラの発生を防止できる。
【符号の説明】
【0038】
2…画素
5…画素ブロック
7…ドット部
8…ヌケ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素で構成される画素ブロックの各画素に所望する画像の濃度に応じてドットを配置して構成される網点パターンに基づいて網点画像を形成する網点画像形成方法において、
前記網点パターンは、
複数のドットの集合体で構成されるドットパターンと、このドットパターンと間隔を有して配置される他の前記ドットパターンとが、ドットにより接続されて構成される万線パターンを有し、
前記ドットパターンから前記万線パターンに移行する直前のドットパターンは、先細り状に形成されることを特徴とする網点画像形成方法。
【請求項2】
前記万線パターンは、
前記ドットの幅が、前記ドットパターンの幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の網点画像形成方法。
【請求項3】
前記万線パターンは、
前記ドットにより接続された接続部の線幅を前記濃度の上昇に伴って線幅が均一となるまで太くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の網点画像形成方法。
【請求項4】
前記万線パターンは、印刷方向に延びて形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の網点画像形成方法。
【請求項5】
複数の画素で構成される画素ブロックの各画素に所望する画像の濃度に応じてドットを配置して構成される網点パターンに基づいて網点画像が形成された印画物において、
前記網点パターンは、
複数のドットの集合体で構成されるドットパターンと、このドットパターンと間隔を有して配置される他の前記ドットパターンとが、ドットにより接続されて構成される万線パターンを有し、
前記万線パターンに移行する直前のドットパターンは、先細り状に形成されることを特徴とする印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151696(P2012−151696A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9294(P2011−9294)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】