説明

緊急指令装置および緊急指令方法

【課題】緊急通報輻輳時にも素早く対応しながら可及的早急に詳細な災害情報を入手して指令をかける。
【解決手段】119番通報が一定時間指令員により応答されない場合、代理応答装置1が災害情報質問用音声ファイル3を再生して通報内容について質問を実施する。通報者は通報者端末32のダイヤルボタンを押して質問に答える。このPB信号をPB信号解析部4で解析し、解析結果と通報者の位置情報取得から災害情報を作成し、出動情報データベース7と車両動態情報8を利用して指令をかける署所を選択し、指令用音声ファイル6で指令をかける。しかし、質問未了の緊急通報を指令台にて受け付けた場合、代理応答により作成されている災害情報を指令台に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は119番通報等の緊急通報に対し緊急指令を送信する緊急指令装置緊急指令方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災や救急等の119番通報を受付けて、その通報内容により各署所の消防車両または救急車両に対して出動指令を行う消防指令システムが周知である。この消防指令システムにおいては、119番通報が着信しても指令員に一定時間受け付けられなかった場合には、通報者に対し、指令制御装置にて、録音した音声を再生して通報者に聞かせることにより、119番通報着信の輻輳で指令員に繋がり難い旨を伝え、指令員が受け付けるまでの間、そのまま待機するように指示を出している。しかし、この種の通報着信は輻輳することが多いので、指令員が通報を受け付けられるようになるまで通報者は待たされることが度々あり、119番通報に対する迅速な対応とはいえない。
【0003】
このような問題の解消を図った第1の従来技術として、119番通報を受け付ける受付台の操作者からの応答が一定時間以上遅れると、119番通報を自動受付回路へ接続し、自動受付回路の合成音声と通報者の音声による質問と応答を経て災害情報を検出し、災害情報から車両選択に必要な情報を自動出動指定装置に入力し、操作者の介入なしに車両を選択する代理応答システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第2の従来技術は、緊急通話回線の混雑時に音声案内を自動応答し、通報者からの所定の音声ガイダンスに対するプッシュボタンの押下による応答から災害通報内容を認識するPB信号認識部を備えている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11-098258(第2頁−第3頁、図2)
【特許文献2】特開2003-158586(第4頁,第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来技術1では、通報者からの応答音声情報から検出された災害情報により出動指令するため、音声認識の精度により正確な災害情報を取得できる可能性が低いという問題点がある。この点は、従来技術2と組み合わせて、応答情報をPB信号で得るようにすれば解消できよう。しかし、それであっても、自動応答により得ることができる災害情報は、通報者と指令員の間の通常の音声によって得られる災害情報に比べれば、精緻さに欠ける。
【0007】
更に、従来技術1では、自動出動指定装置を使用して指令をかけるので、自動出動指定装置が導入されていない消防本部では緊急指令をすることができないという問題点もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、緊急通報輻輳時にも素早く対応しながら、可及的早急に詳細な災害情報を入手して指令をかけることができる緊急指令装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の緊急指令装置は、上記問題を解決するため、指令台にて一定時間以上受付けられなかった通報者端末からの緊急通報に対して代理応答装置が自動的に代理応答し、代理応答による災害情報に関する質問が終了すると署所を選択して指令をかけるが、質問未了の緊急通報を前記指令台にて受け付けた場合、代理応答により作成されている災害情報を指令台に表示することを特徴とする。
【0010】
より詳しくは、本発明の緊急指令装置は、通報者端末(図1の32)からの119番通報を受け付けることが可能であり、通報者と指令員との音声通話により災害情報を聴取して署所を選択し指令をかけるための指令台(図1の2)と、指令台により一定時間以上受け付けられなかった119番通報に対して自動的に応答し、通報者端末から入力されたPB信号を解析して災害情報を作成して自動的に選択した署所に音声合成により指令をかける代理応答装置(図1の1)を有し、代理応答中の119番通報を指令台にて受け付けた場合、該指令台から代理応答装置へ受付通知メッセージを送り、該受付通知メッセージを受けた代理応答装置は、代理応答によって通報者が通報者端末から入力したPB信号を解析して作成している災害情報を指令台に送り、該指令台は災害情報を表示することを特徴とする。
【0011】
上記の受付通知メッセージは、車両動態情報を代理応答装置に通知する指令サーバ(図1の9)を介して授受されるようにしてもよい。
【0012】
上記代理応答装置(図1の1)は、指令の後に指令台からの応答を待つか、緊急通報中の緊急回線を切断するかを通報者端末にアナウンスし、切断が選択された場合には緊急回線を切断する。また、指令台では、代理応答装置が代理応答している間も通報の着信を知らせる着信音が鳴動を継続する。
【0013】
代理応答装置(図1の1)は、PB信号を解析するPB信号解析部(図1の4)と、通報者への案内や災害情報取得のための質問を実施するための災害情報質問用音声ファイル(図1の3)と、質問により取得した位置情報の確認等に使用される位置情報用音声ファイル(図1の5)と、PB信号を解析した結果により、指令をかける署所を選択するための出動情報データベース(図1の7)と、各署所に配備されている車両の動態情報を保持している車両動態情報ファイル(図1の8)と、指令をかける際に使用する指令用音声ファイル(図1の6)を備える。
【0014】
本発明では、通報者端末からの緊急通報が指令台で受け付けられると、通報者と指令員との音声通話により災害情報を聴取して署所を選択し指令をかける。しかし、緊急通報が指令台で一定時間以上受付けられなかった緊急通報に対しは代理応答装置が自動的に応答し、通報者端末から入力されたPB信号を解析して災害情報を作成して自動的に選択した署所に音声合成により指令をかける。
【0015】
指令台では、代理応答装置が代理応答している間も通報の着信を知らせる着信音が鳴動を継続し、代理応答中の緊急通報を指令台にて受け付けた場合、指令台から代理応答装置へ受付通知メッセージを送る。受付通知メッセージを受けた代理応答装置は、代理応答によって通報者が通報者端末から入力したPB信号を解析して作成している災害情報を指令台に送る。指令台は災害情報を表示するので指令員が災害情報を見ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急通報輻輳時にも素早く対応しながら、可及的早急に詳細な災害情報を入手して指令をかけることができるという効果を得ることができる。その理由は、先ず、一定時間以上指令台において受け付けられていない緊急通報に対しては、自動的に応答できるようにし、位置情報受信後に付近の災害情報をアナウンスし、既に出動指令済みの災害情報を通報者に伝えることにより、同一の災害に対する通報の処理時間が短くするからである。次に、指令台において受け付けられることなく代理応答による災害情報に関する質問が終了すると、代理応答装置が署所を選択して指令をかけるためである。更に、質問未了、即ち代理応答中の緊急通報を指令台にて受け付けた場合、それまで代理応答により作成されている災害情報を指令台に表示し、指令員はその災害情報を認識できるので、通報者から重複聴取することなく、更なる災害内容の聴取を行なうことができるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の緊急指令装置を通報者端末32と共に示すブロック図である。この緊急指令装置は、例えば消防本部に設置され、通報者端末32が119番回線で接続され得る。図1では、図面の煩雑化を回避するために、通報者端末32を1つだけ示しているが、複数の通報者端末32が同時に緊急指令装置に接続されることも多い。
【0019】
緊急指令装置は、図1に示すように、代理応答装置1,指令台2,指令サーバ9,位置情報受信装置10および指令制御装置11から成る。この緊急指令装置と、管区内の各消防署において緊急指令装置から指令を受けるための署所端末(図示省略)とは、指令制御装置11または指令サーバ9を介して連絡できる。通報者端末32は、火災や事故等災害の発生を目撃した人が本119番指令装置に災害情報を119番通報するための電話等の端末である。また、指令サーバ9は出動車両の端末(図示省略)から車両動態情報を受信することができる。
【0020】
指令制御装置11は交換機であって、通報者端末32からの119番通報に応答し指令台2に対して通報者端末32からの119番通報を伝える。その結果、一定時間内に指令台2から指令員による指令があると、その指令を管区内の各消防署に送信する。しかし、一定時間が経過しても指令台2から指令がない場合には、通報者端末32と代理応答装置1との間を回線接続する。そして、通報者端末32と代理応答装置1との応答の結果により得られる代理応答装置1からの指令を管区内の各消防署の署所端末へ送信する。
【0021】
代理応答装置1は、119番通報が着信すると、その119番通報が上記のように一定時間経過しても指令台2により応答されない場合に通報者端末32に対して自動的に代理応答し、また通報者端末32との間で自動的に情報のやり取りをする。その中で、災害情報を取得し、位置情報を確認し、災害地点を決定した後、その付近の災害情報を通報者端末32にアナウンスする。また、署所を選択して指令制御装置11により指令をかける。そして、指令台2からの応答を待つか、119番回線を切断するかを通報者端末32にアナウンスし、切断が選択された場合には119番回線を切断する。
【0022】
代理応答装置1は、代理応答の途中で、指令サーバ9から受付通知メッセージを受け取ると災害情報メッセージを返送する。また、位置情報要求メッセージを指令サーバ9へ送出し、これに対して指令サーバ9から位置情報メッセージを受け取る。
【0023】
指令台2は、通報者端末32からの119番通報を指令制御装置11経由で受けると、着信音を鳴動させて119番着信中であることを指令員に知らせる。この鳴動は、上記一定時間内に119番通報が指令員によって受け付けられた場合には停止する。指令員は指令台2から指令制御装置11を経由して通報者から災害情報を聴取し、119番回線を切断して署所端末へ指令を送信する。
【0024】
一方、一定時間内に119番通報が指令員によって受け付けられず、119番通報が代理応答装置1において代理応答中であっても指令台2は着信音の鳴動を継続する。この場合、代理応答中の119番回線は指令サーバ9を経由して伝えられ指令台2において認識できるようになっている。
【0025】
この119番通報が指令員によって受け付けられると、指令台2は指令サーバ9を経由して代理応答装置1へ受付通知メッセージを送出する。そして、代理応答装置1から代理応答において作成途中の災害情報メッセージを指令サーバ9経由で受け取ると、災害情報の内容を表示する。この結果、指令員は、そこまで代理応答装置1で取得してきている災害情報を認識できるので、通報者から重複聴取することなく、更なる災害内容の聴取を行なうことができる。この場合は、代理応答装置1による通報者端末32への前述のアナウンスに対して切断が選択された場合には鳴動を停止する。
【0026】
指令サーバ9は、指令台2からの受付通知メッセージを代理応答装置1へ伝え、これに対する代理応答装置1からの災害情報メッセージを指令台2へ伝える。また、代理応答装置1からの位置情報要求メッセージを位置情報受信装置10へ伝え、これに対する位置情報受信装置10からの位置情報メッセージを代理応答装置1へ伝える。また、車両動態情報を受信すると代理応答装置1へ通知する。
【0027】
位置情報受信装置10は、指令サーバ9から位置情報要求メッセージを受け取ると、例えば、携帯電話事業者,IP事業者,NTT等のネットワークから通知されて通報者の位置(位置情報という)を取得する。これらの業者は、通報者端末32が発射する電波を受信することにより、通報者端末32、従って通報者が位置する緯度と経度、または都道府県市区町村地番を知ることができる。
【0028】
次に、代理応答装置1は、災害情報質問用音声ファイル3,PB信号解析部4,位置情報用音声ファイル5,指令用音声ファイル6,出動情報データベース7および車両動態情報ファイル8を備えている。
【0029】
災害情報質問用音声ファイル3には、通報者から災害情報を聴取するための質問、例えば、「火災ですか、救急ですか?」等の録音された音声が保存されている。災害情報とは、火災ならば、燃えているもの(例えば、建物,車両,船舶)の情報や、燃えている場所(例えば、林野,トンネル,高速道路)や、建物内に残されている人がいるか、それは何人か、怪我人がいるか、といった情報である。また、救急ならば、事故(例えば、交通事故,機械事故)情報や、山岳救助か水難救助か、救助対象者の意識があるか、病気なら容体・持病か、といった情報である。
【0030】
位置情報用音声ファイル5には、位置情報受信装置10が位置情報取得後に、通報者に対してその位置の確認を取るための住所音声、例えば「A市」,「B町」,「D村」,「1丁目」,「2番地」等が録音されている。これは、指令時や車両位置アナウンス時にも使用する。
【0031】
指令用音声ファイル6には、署所に指令をかける時に使用する音声ファイルで、指令音声、例えば「火災」,「救急」,「○○救急」(車両名),「建物一般」等が録音されている。
【0032】
出動情報データベース7は、事前に作成される災害情報別出動計画を記録している。災害情報別出動計画とは、例えば、A地区で火災が発生した場合にはC署から車両を出動させ、B地区で火災が発生した場合にはD署から車両を出動させるといったような計画である。
【0033】
車両動態情報ファイル8は、指令サーバ9から通知された車両動態情報を保存する。車両動態情報とは、各消防署に配置されている消防車や救急車等の状態、即ち待機中,出動中,現場到着,作業中,整備中の別を車両毎に示す情報である。
【0034】
PB信号解析部4は、通報者端末32との間でやり取りされた情報(PB信号)を解析し、その結果によって災害情報を代理応答装置1内に蓄積する。
【0035】
次に、以上のように構成された本緊急指令装置の動作について説明する。
【0036】
通報者端末32から本緊急指令装置に119番通報の着信があると(図2−A1)、指令台2では着信音が鳴動する。その119番通報が指令台2において一定時間内に指令員に受け付けられ応答され場合は、通報者と指令員の間のやり取りによって119番通報は通常の方法で処理される。即ち、指令員は通報者から聴取した情報によって、指令台2から指令制御装置11を経由して適切な署所へ指令を発出する。119番回線は切断され、着信音は鳴動を停止する。
【0037】
しかし、その119番通報が一定時間以上指令員により応答されない場合(図2−A2)、代理応答装置1が自動的に応答することになる(図2−A3)。代理応答装置1は、通報者端末32に対し災害情報質問用音声ファイル3を再生し(図2−A4)、通報者に聞かせる。この災害情報質問用音声ファイル3によって、通報者に災害情報について質問を実施し、通報者側は電話端末等通報者端末のダイヤルボタンを押すことによって質問(例えば、通報内容が「火災」か「救急」のどちらかであるといった項目)に答える(図2−A5、図3−B1)。
【0038】
代理応答装置1は、通報者端末32から送出されてきたPB信号をPB信号解析部4にて解析し(図2−A6)、その解析結果によって災害情報を代理応答装置1内に蓄積する。また、通報者に対し位置情報取得を行うことを通知し(図2−A7、図3−B2,B3)、位置情報取得を行う(図2−A8)。図4は位置情報取得時におけるメッセージの流れを示している。
【0039】
図4において、代理応答装置1より指令サーバ9に位置情報要求メッセージ12を送出し、指令サーバ9は位置情報受信装置10に対し位置情報要求メッセージ13を送出する。位置情報受信装置10にて位置情報の取得を行い、指令サーバ9に位置情報メッセージ14を送出し、指令サーバ9が代理応答装置1に位置情報メッセージ15で位置情報を通知する。位置情報を受信した代理応答装置1は、位置情報用音片ファイル5を使用して、通報者に位置情報が正確であるかの確認をとる(図2−A9、図3−B4)。
【0040】
確認を終了し、災害点を決定した後、その付近の災害情報を位置情報用音声ファイル5と指令用音声ファイル6を使用してアナウンスし(図2−A10)、重複している災害情報があると通報者が判断した場合は、既に指令がかかり車両が出動している旨を通報者端末32に伝え、119番通報を切断する。通報者が、アナウンスされた災害情報に通報内容と重複したものがないと判断した場合は(図2−A11)、通報内容に対する質問を継続する(図2−A12,A13、図3−B5〜B7)。
【0041】
また、PB信号の解析(図2−A6)と位置情報取得(図2−A8)により作成された災害情報を基に、出動情報データベース7と車両動態情報ファイル8から、指令をかける署所を選択する(図2−A14)。車両動態情報ファイル8の保存内容は、各署所から車両動態情報を受信することによって時々刻々変化し得る。代理応答装置1は、選択した署所に指令用音声ファイル6を使用して指令をかけ(図2−A15)、通報者は、指令員の応答を待つか、119番回線を切断するかのアナウンスをする(図2−A16)。通報者が、119番回線の切断を選択した場合は、代理応答装置1が119番回線の切断を行う。これにより119番回線が維持されることはない。
【0042】
上記は、指令員によって119番通報が受け付けられることなく、代理応答のみで119番通報に対する処理が終了した場合の説明である。しかし、代理応答装置1にて119番通報応答中にも、指令台2では119番着信音が鳴動を継続し、119番通報の着信中であることを指令員に知らせる。従って、代理応答による処理が終了する前に指令員によって119番通報が受け付けられることがある。
【0043】
指令台2は応答中の119番回線を認識しており、指令員が指令台2にて、代理応答装置1が応答中の119番通報を受け付けた場合、指令台2は指令サーバ9に受付通知メッセージ16を送る(図5の16)。指令サーバ9は受付通知メッセージ16を受けると、代理応答装置1に対し受付通知メッセージ17を通知する(図5の17)。受付通知メッセージ17の通知を受けた代理応答装置1は、作成途中の災害情報メッセージ18を指令サーバ9に送る(図5の18)。災害情報メッセージ18を受けた指令サーバ9は、指令台2に対し災害情報メッセージ19を送付する(図5の19)。
【0044】
災害情報メッセージ19を受け取った指令台2は、代理応答装置1で取得してきている災害情報を表示する。指令員は、それを見た上で、そこからは代理応答に代わって、通常の方法で処理される。即ち、指令員は通報者から聴取したより高精度な情報によって、指令台2から指令制御装置11を経由して適切な署所へ指令を発信する。119番回線は切断され、着信音は鳴動を停止する。この際、通報者から災害情報を重複聴取することなく、更なる災害内容の聴取を行なうことができ、その結果、119番回線の維持時間を短縮することができる。
【0045】
次に、図6は本発明の第2の緊急指令装置を示すブロック図である。本発明の第1の緊急指令装置との重複した説明は回避し異なる点のみに言及する。この緊急指令装置は、図1に示した緊急指令装置に対して、外観上は自動出動指定装置24と事案端末25が付加されている。
【0046】
従来、この種の緊急指令装置には、災害情報により出動車両を選んで自動的に指令をかける自動出動指定装置24を備えていることが多いので、これを利用することにより新規装置を導入することなく本発明を適用可能とするものである。代理応答装置1は、PB信号の解析と位置情報の受信により作成された災害情報を指令サーバ9経由で自動出動指定装置24に送り、指令(図2−A15)を委ねる。自動出動指定装置24は指令制御装置11を介して指令をかける。
【0047】
また、災害情報メッセージ22を受信した指令サーバ9は、図5に示したように指令台2ではなく、図6に示すように自動出動指定装置24に対し災害情報メッセージ23を送る。自動出動指定装置24は、これ(通報者から聴取した災害情報内容)を事案端末24にて表示する。指令員は、事案端末24において表示された災害情報を見た上で、そこからは代理応答に代わって、通常の方法で119番通報を処理する。
【0048】
図7は本発明の第3の緊急指令装置を示すブロック図である。本発明の第1および第2の緊急指令装置との重複した説明は回避し異なる点のみに言及する。この緊急指令装置は、図1に示した緊急指令装置に対して、外観上は事案表示端末26が付加されている。
【0049】
ここでは、代理応答装置1は、PB信号の解析と位置情報の受信により作成された災害情報を災害情報メッセージ27で事案表示端末26に送り(図7の27)、災害情報メッセージ27を受信した事案表示端末26は災害情報一覧を表示する。この事案表示端末26を操作して指令(図2−A15)をかける指令員を配置し、同一の災害を見分けて指令をコントロールし、緊急度の高いものから指令をかけるなどの選択を行う。また、事案表示端末26を操作することで、指令をかける署所の編集なども可能になる。
【0050】
これまでの説明においては、指令台は1台としているが、図8は、指令台が2台設置され指令員が2人体制の消防本部の緊急指令装置を示している。通報者端末および119番回線は3つ存在する。この緊急指令装置においては、指令台が2台設置されており指令員も2人体制だが、119番回線が3回線あるので、119番通報が2件あった場合、3件目にすぐに対応することはできない。従来の代理応答システムを使用すれば、音声ガイダンスを流すことで通報者を待機させることが可能だが、それでは迅速な対応ができない。
【0051】
そこで、本発明の緊急指令装置は、代理応答後に通報内容の聴取と位置情報の取得を行い、災害情報を作成して指令をかけることにより通報者を待たせることもない上に、指令員による119番通報を受付が可能になった場合には、災害情報を重複して聴取することなく、より迅速な対応が可能である。119番回線の維持時間も短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の緊急指令装置を通報者端末と共に示すブロック図
【図2】通報者と代理応答装置のメッセージと動作を示す流れ図
【図3】災害情報に関する質問の具体例を示す図
【図4】位置情報受信のメッセージの流れを示す図
【図5】災害情報のメッセージの流れを示す図
【図6】本発明の第2の緊急指令装置を通報者端末と共に示すブロック図
【図7】本発明の第3の緊急指令装置を通報者端末と共に示すブロック図
【図8】本発明の代理応答装置のより実際的なブロック図
【符号の説明】
【0053】
1 代理応答装置
2,28 指令台
3 災害情報質問用音声ファイル
4 PB信号解析部
5 位置情報用音声ファイル
6 指令用音声ファイル
7 出動情報データベース
8 車両動態情報ファイル
9 指令サーバ
10 位置情報受信装置
11 指令制御装置
12,13 位置情報要求メッセージ
14,15 位置情報メッセージ
16,17,20,21 受付通知メッセージ
18,19,22,23,27 災害情報メッセージ
24 自動出動指定装置
25 事案端末
26 事案表示端末
29〜31 119番回線
32〜35 通報者端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令台にて一定時間以上受付けられなかった通報者端末からの緊急通報に対して代理応答装置が自動的に代理応答し、前記代理応答による災害情報に関する質問が終了すると署所を選択して指令をかけるが、前記質問未了の緊急通報を前記指令台にて受け付けた場合、前記代理応答により作成されている災害情報を指令台に表示することを特徴とする緊急指令装置。
【請求項2】
通報者端末からの119番通報を受け付けることが可能であり、通報者と指令員との音声通話により災害情報を聴取して署所を選択し指令をかけるための指令台と、
前記指令台により一定時間以上受け付けられなかった前記119番通報に対して自動的に応答し、前記通報者端末から入力されたPB信号を解析して災害情報を作成して自動的に選択した署所に音声合成により指令をかける代理応答装置を有し、
代理応答中の119番通報を前記指令台にて受け付けた場合、該指令台から前記代理応答装置へ受付通知メッセージを送り、該受付通知メッセージを受けた前記代理応答装置は、前記代理応答によって通報者が前記通報者端末から入力したPB信号を解析して作成している災害情報を前記指令台に送り、該指令台は前記災害情報を表示することを特徴とする緊急指令装置。
【請求項3】
前記受付通知メッセージは、車両動態情報を代理応答装置に通知する指令サーバを介して授受されることを特徴とする請求項2記載の緊急指令装置。
【請求項4】
前記代理応答装置は、前記指令の後に前記指令台からの応答を待つか、前記緊急通報中の緊急回線を切断するかを前記通報者端末にアナウンスし、切断が選択された場合には前記緊急回線を切断することを特徴とする請求項1〜3記載の緊急指令装置。
【請求項5】
前記指令台では、前記代理応答装置が代理応答している間も通報の着信を知らせる着信音が鳴動を継続することを特徴とする請求項1〜請求項4記載の緊急指令装置。
【請求項6】
前記代理応答装置は、
前記PB信号を解析するPB信号解析部と、
通報者への案内や災害情報取得のための質問を実施するための災害情報質問用音声ファイルと、
前記質問により取得した位置情報の確認等に使用される位置情報用音声ファイルと、
前記PB信号を解析した結果により、指令をかける署所を選択するための出動情報データベースと、
各署所に配備されている車両の動態情報を保持している車両動態情報ファイルと、
前記指令をかける際に使用する指令用音声ファイルを備えることを特徴とする請求項1〜5に記載の緊急指令装置。
【請求項7】
通報者端末からの緊急通報が指令台で受け付けられると、通報者と指令員との音声通話により災害情報を聴取して署所を選択し指令をかける段階と、
前記緊急通報が前記指令台で一定時間以上受付けられなかった緊急通報に対し代理応答装置が自動的に応答し、前記通報者端末から入力されたPB信号を解析して災害情報を作成して自動的に選択した署所に音声合成により指令をかける段階と、
前記代理応答中の緊急通報を前記指令台にて受け付けた場合、該指令台から前記代理応答装置へ受付通知メッセージを送る段階と、
該受付通知メッセージを受けた前記代理応答装置は、前記代理応答によって通報者が前記通報者端末から入力したPB信号を解析して作成している災害情報を前記指令台に送る段階を有し、
該指令台にて前記災害情報を見ることができるようにしたことを特徴とする緊急指令方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−93599(P2010−93599A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262359(P2008−262359)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】