説明

緊急通報システム、緊急通報方法及び緊急通報に用いる番号登録処理システム

【課題】聴覚障害者に対して迅速に緊急通報を行なうことができる緊急通報システム、緊急通報方法及び緊急通報に用いる番号登録処理システムを提供する。
【解決手段】携帯端末30の電話帳データ記憶部には、オートダイヤル装置13の内線番号に関連付けて「火災発報」の表示名が記録されている。火災発生に伴う異変を検知した場合、火災報知器11が出力する火災検知信号は、信号分配装置12を介して各オートダイヤル装置13に供給される。各オートダイヤル装置13は、予め記憶している内線番号に番号通知を伴う発信処理を行なう。携帯端末30は、通知された電話番号(オートダイヤル装置13の番号)を含む電話帳レコードを抽出し、これの表示名(「火災発報」)データを取得し、この表示名と現在の時刻とを関連付けて着信履歴データ記憶部に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災警報等の緊急警報を聴覚障害者等に通知するための緊急通報システム、緊急通報方法及び緊急通報に用いる番号登録処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、緊急事態を知らせる装置がある。例えば、火災報知器は、煙や高温等の火災発生に伴う異変を検知した場合、ベルを鳴らして緊急事態を通知する。更に、緊急事態を通知する通信手段として携帯端末を用いた緊急連絡システムも検討されている(特許文献1参照。)。この文献においては、携帯端末と消防本部と警察本部とがネットワークを介して接続される。携帯端末は、単一のボタンを複数回押したときには、この緊急連絡時の携帯端末の高さ位置(患者の起倒状態)に応じて消防本部(119番)又は警察本部(110番)のいずれかを自動的に選択する。GPSにより端末装置の位置情報を認識し、ユーザのID情報と共に選択した消防本部又は警察本部に送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した火災報知器のように、音により緊急事態を通知する装置では、聴覚障害者が緊急事態を迅速に知ることは難しい。そこで、特許文献1に記載されているように、携帯端末を利用する場合には、この携帯端末に搭載されたメール機能を用いて、聴覚障害者に対してはメールで通知を行なうことも可能である。
【0004】
しかしながら、メールによる通知では即時性が保証できない。このため、緊急事態を通知するには適さない。更に、メールで緊急事態を通知する場合には、メール機能がある携帯端末を用いる必要がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、聴覚障害者に対して迅速に緊急通報を行なうことができる緊急通報システム、緊急通報方法及び緊急通報に用いる番号登録処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、緊急警報の発令に対応して警報発令信号を出力する警報装置と、前記警報発令信号を分配する信号分配装置と、緊急警報を通知する携帯端末の電話番号を予め記憶した複数のオートダイヤル装置と、このオートダイヤル装置の電話番号に対して緊急内容が関連付けられた電話帳データを記憶した電話帳データ記憶手段と、着信表示を表示する表示手段とを備えた携帯端末とを備えた緊急通報システムであって、前記信号分配装置は、前記警報装置からの警報発令信号を各オートダイヤル装置に供給し、前記警報発令信号を取得したオートダイヤル装置は、予め記憶している電話番号に呼出コールを行ない、前記携帯端末は、前記オートダイヤル装置から着信があった場合には、このオートダイヤル装置の電話番号に対応する緊急内容を前記電話帳データ記憶手段から抽出して、この緊急内容を着信表示することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緊急通報システムにおいて、前記オートダイヤル装置は、前記警報発令信号を受信した場合、呼出コールの開始から予め記憶された呼出時間が経過したときには回線を切断し、その後、予め定めた所定時間を経過してから再度呼出コールを行なうリダイヤル処理を所定回数繰り返し、前記リダイヤル処理の最中に前記携帯端末からの応答があった場合には、これ以降のリダイヤル処理を中止して終了
することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の緊急通報システムにおいて、前記携帯端末は、電話の着信を検出した場合に振動する振動手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、緊急警報の発令に対応して警報発令信号を出力する警報装置と、前記警報発令信号を分配する信号分配装置と、緊急警報を通知する携帯端末の電話番号を予め記憶した複数のオートダイヤル装置と、このオートダイヤル装置の電話番号に対して緊急内容が関連付けられた電話帳データを記憶した電話帳データ記憶手段と、着信表示を表示する表示手段とを備えた携帯端末とを備えた緊急通報システムを用いて緊急通報を行なう方法であって、前記信号分配装置は、前記警報装置からの警報発令信号を各オートダイヤル装置に供給し、前記警報発令信号を取得したオートダイヤル装置は、予め記憶している電話番号に呼出コールを行ない、前記携帯端末は、前記オートダイヤル装置から着信があった場合には、このオートダイヤル装置の電話番号に対応する緊急内容を前記電話帳データ記憶手段から抽出して、この緊急内容を着信表示することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、緊急通報システムにおいて警報装置からの警報発令信号を受信した場合に、予め記憶している電話番号の1つに自動的に呼出コールを行なう複数のオートダイヤル装置の番号と、このオートダイヤル装置が呼出コールを行なう携帯端末の番号とを含む電話番号割当レコードを記録した電話番号割当データ記憶手段と、制御手段とを備え、携帯端末にオートダイヤル装置の番号を割り当てて登録処理を実行する番号登録処理システムであって、前記制御手段は、緊急通報システムに設置されるオートダイヤル装置の番号のうち、携帯端末に割り当てられていない番号を取得する登録対象番号特定手段と、この番号を携帯端末に登録するオートダイヤル番号登録手段と、前記オートダイヤル番号登録手段により登録された前記携帯端末の番号と、この携帯端末の番号を、前記登録対象番号特定手段が特定した番号と対応付けて前記電話番号割当データ記憶手段に記録する対応番号記録手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
(作用)
本発明によれば、信号分配装置は、警報装置からの警報発令信号を各オートダイヤル装置に供給する。オートダイヤル装置は、警報装置が緊急警報を発生した場合、予め記憶している電話番号に呼出コールを行なう。この場合、各オートダイヤル装置が、通知する1つの携帯端末に同時に呼出コールを行なう。携帯端末は、オートダイヤル装置からの電話番号に対応する緊急内容の着信表示を表示する。このため、緊急警報が聞こえない聴覚障害者等のユーザであっても、緊急内容を含む着信表示を閲覧することにより、緊急事態を把握することができる。更に、通知する携帯端末が複数ある場合であっても、各オートダイヤル装置がそれぞれ1つの携帯端末に対してダイヤルするので、より迅速に緊急警報を通知することができる。従って、ユーザに対して迅速に緊急通報を行なうことができる。ここで、着信表示とは、着信に関する表示であって、着信中の表示や着信履歴等を含む。
【0012】
本発明によれば、オートダイヤル装置は、携帯端末に電話をかけたときから予め記憶された呼出時間が経過した場合には、回線を切断し、所定時間おいてから再度呼出コールを行なうリダイヤル処理を所定回数繰り返す。更に、携帯端末からの応答があった場合には、それ以降のリダイヤル処理を中止して終了する。このため、オートダイヤル装置は、聴覚障害者等のユーザが着信に気が付くように繰り返して呼出コールを行なうので、より確実にユーザに緊急警報を伝えることができる。更に、ユーザが携帯端末をオフフックして応答した場合には、オートダイヤル装置は、これ以降のダイヤル処理を中止する。この場合、着信表示を閲覧することにより緊急内容を把握したと考えられるので、無駄なコールを省略することができる。
【0013】
本発明によれば、携帯端末は、電話の着信を検出した場合に振動する振動手段が設けられている。このため、携帯端末は振動によって電話の着信を知らせるため、聴覚障害者等のユーザであっても電話の着信に気が付き易い。従って、より迅速に緊急通報をユーザに通知することができる。
【0014】
本発明によれば、制御手段は、緊急通報システムに設置される未対応のオートダイヤル装置の番号を取得して特定し、この番号を携帯端末に登録する。制御手段は、登録された携帯端末の番号を取得し、この携帯端末の番号を、先に特定した番号と対応付けて電話番号割当データ記憶手段に記録する。このため、オートダイヤル装置及び携帯端末において、それぞれ1対1で対応する電話番号を、より確実に対応付けて登録することができる。従って、緊急通報が必要な聴覚障害者等のユーザに対して、漏れなく確実に通報を行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、聴覚障害者等に対しても緊急警報を迅速に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるシステムの概略構成図。
【図2】電話帳データ記憶部に記録されたデータ構成を説明する説明図。
【図3】火災通報処理の処理手順を説明するための流れ図。
【図4】着信履歴を表示する表示画面図であり、(a)はオートダイヤル装置から着信があった場合、(b)は緊急解除用電話機からの着信があった場合を示す。
【図5】変更例における番号登録処理の処理手順を説明するための流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。本実施形態においては、社内の建物内において火災報知器の警報を聴覚障害者(ユーザ)に通知する場合について説明する。この通知は、図1に示すように、ユーザが自分の内線番号として使用する電話機能を有する携帯端末30に対して行なわれる。
【0018】
本実施形態では、緊急通報システムとしての火災通報システム10は、警報装置としての火災報知器11、信号分配装置12、複数のオートダイヤル装置13及び緊急解除用電話機15を備えている。この火災通報システム10は、通知先のユーザの人数に相当する個数のオートダイヤル装置13を備えている。
【0019】
火災報知器11は、感知手段、警報手段及び火災検知信号発生手段を備えている。感知手段は、火災発生に伴う異変(煙や高温)を検知する。警報手段は、ベル等の音響装置を備えており、感知手段が火災発生に伴う異変を検知した場合には、ベルを鳴動させて、火災の発生を通報する。火災検知信号発生手段は、感知手段が火災発生に伴う異変を検知した場合に、警報発令信号としての火災検知信号を出力する。
【0020】
火災報知器11には、信号分配装置12が接続されている。更に、この信号分配装置12には、各オートダイヤル装置13が接続されている。この信号分配装置12は、火災報知器11からの火災検知信号を、一斉に各オートダイヤル装置13に分配して供給する。
【0021】
オートダイヤル装置13は、火災検知信号を受信すると、予め設定されている内線番号に対して電話をかける(呼出コールを行なう)。本実施形態では、各オートダイヤル装置13のメモリには、コール先である携帯端末30の内線番号に関するデータが記録されている。本実施形態では、各オートダイヤル装置13には、通知先のユーザに応じてそれぞ
れ異なる内線番号が記憶されている。更に、各オートダイヤル装置13は、それぞれに割り当てられた内線番号を記憶しており、発信元(オートダイヤル装置13)の内線番号を通知する。更に、オートダイヤル装置13は、コール先に対して呼出コールを継続する時間(呼出時間)に関するデータを記憶している。オートダイヤル装置13は、呼出コールを開始してからの経過時間が呼出時間より長くなった場合に、呼出コールを切断する。
【0022】
各オートダイヤル装置13は、電話交換機20に接続されている。この電話交換機20には、緊急解除用電話機15が接続されている。この緊急解除用電話機15は、火災報知器11が火災の発生を通報した後、緊急事態が解除された場合に通知するための電話機である。本実施形態では、この緊急解除用電話機15を用いて、管理者が、各ユーザの携帯端末30に呼出コールを行なう。
【0023】
一方、本実施形態では、電話交換機20として公知のPBX(Private Branch Exchanger)を用いる。この電話交換機20は、内線電話同士の交換接線(スイッチング)や内線電話と外部の電話との交換接線を行なう。具体的には、電話交換機20は、建物内等に配置された基地局21に接続されており、基地局21を介して携帯端末30と送受信を行なう。このため、オートダイヤル装置13及び緊急解除用電話機15は、電話交換機20及び基地局21を介して携帯端末30に呼出コールを行なう。
【0024】
ユーザが使用する携帯端末30は、公知の構成を有するPHS(Personal Handy-phone
System)端末である。具体的には、携帯端末30は、通信手段、音声出力手段、音声入
力手段、操作手段、表示手段及び振動手段を備えている。通信手段は、基地局21と信号の送受信を行なう。音声出力手段は、スピーカを備え、音声信号に応じて音声をスピーカから出力する。音声入力手段は、マイクを備え、マイクから入力された音声を音声信号に変換をして取得する。操作手段は、ダイヤル番号ボタンや選択ボタン等の各種ボタンを備え、選択されたボタンに応じた予め定めされた処理を実行する。表示手段は、ディスプレイを備え、このディスプレイに着信通知、着信履歴やダイヤルする電話番号を表示する。振動手段は、ボタン操作に応じたバイブレーション設定によって、着信があった場合に、音声出力手段の出力の代わりに振動によって着信を通知する。
【0025】
更に、本実施形態の携帯端末30は、電話帳データ記憶手段としての電話帳データ記憶部32と、着信履歴データ記憶手段としての着信履歴データ記憶部(図示せず)とを備えている。図2に示すように、この電話帳データ記憶部32は、電話帳データ320を記憶している。この電話帳データは、複数の電話帳レコードから構成されている。電話帳レコードは、新たに入力されて登録指示が行なわれると記録される。この電話帳レコードは、電話番号及び表示名に関するデータが記録される。
【0026】
電話番号データ領域には、各電話番号に関するデータが記録されている。本実施形態では、この携帯端末30に呼出コールを行なうオートダイヤル装置13の内線番号や緊急解除用電話機15の内線番号が記録される。
【0027】
表示名データ領域には、この電話番号からの着信があった場合に、この着信に対応する表示名に関するデータが記録されている。通常、この表示名データ領域には、この電話番号の携帯端末30を使用するユーザの氏名に関するデータが記録される。本実施形態では、図2に示すように、オートダイヤル装置13の内線番号の電話番号データ領域に関連付けられた表示名データ領域には、「火災発報」の表示名が記録されている。また、緊急解除用電話機15の内線番号の電話番号データ領域に関連付けられた表示名データ領域には、「異常ありません」の表示名が記録されている。
【0028】
一方、着信履歴データ記憶部には、着信履歴に関する着信履歴レコードが記録されてい
る。この着信履歴レコードは、携帯端末30に対して電話の着信があった場合に記録される。この着信履歴レコードには、着信日時及び着信先に関するデータが含まれる。着信日時データ領域には、着信があった月日及び時刻に関するデータが記録される。着信先データ領域には、着信先の電話番号又は表示名が記録される。着信先の電話番号に関連付けられた表示名が電話帳データ領域に記録されている場合には、電話番号の代わりに表示名が記録される。
【0029】
(火災通報処理)
次に、以上のように構成した火災通報システム10の火災通報処理について、図3及び図4を用いて説明する。
【0030】
火災報知器11は、火災発生に伴う異変を検出した場合、ベルを鳴動させるとともに、火災検知信号を出力する。この火災検知信号は、信号分配装置12を介して各オートダイヤル装置13に複数台同時に供給される。これにより、各オートダイヤル装置13は、火災検知信号の取得処理を一斉に実行する(ステップS1−1)。
【0031】
火災検知信号を取得したオートダイヤル装置13は、予め記憶している内線番号の携帯端末30に呼出コールを行なう。具体的には、オートダイヤル装置13は、まず、記憶している内線番号に、番号通知を伴う発信処理(呼出)を行なう(ステップS1−2)。この場合、番号通知は公知の発信者電話番号通知サービスを利用して行なわれる。発信者電話番号通知サービスを利用することにより、相手先の電話端末(ここでは各携帯端末30)に対して発信元(ここではオートダイヤル装置13)の電話番号が通知される。
【0032】
電話交換機20及び基地局21を介して火災通報システム10からの呼出を受信した携帯端末30は、着信応答を行なう(ステップS1−3)。そして、携帯端末30と電話交換機20との間では、認証処理、通信チャネルの確立処理が行なわれる。
【0033】
そして、通信チャネルの確立処理の終了後、携帯端末30は、着信の記録処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、携帯端末30は、オートダイヤル装置13から通知された電話番号を含む電話帳レコードを電話帳データ記憶部32において検索する。
【0034】
そして、携帯端末30は、通知された電話番号を含む電話帳レコードを抽出し、この電話帳レコードの表示名データ領域に記録されている表示名を取得する。ここでは、携帯端末30は、オートダイヤル装置13の内線番号に関連付けて記録されている表示名として「火災発報」を取得して、表示手段のディスプレイに表示する。
【0035】
そして、オートダイヤル装置13はリングバックトーンが出力される(ステップS1−5)。一方、電話交換機20からリンギングトーンを発生させるためのトリガ信号を受信した携帯端末30は、呼出音としてのリンギングトーンを出力する(ステップS1−6)。
【0036】
ここで、携帯端末30がバイブレーション設定になっている場合には、呼出音の代わりに振動手段を作動させる。その後、オートダイヤル装置13は、呼出時間が経過すると、回線の切断処理を実行する。この場合、携帯端末30は、ディスプレイに表示していた表示名と、現在の時刻とを関連付けて着信履歴データ記憶部に記録する。
【0037】
一方、着信に気が付いたユーザは、携帯端末30のディスプレイを閲覧する。呼出コール中の場合、ユーザは、このディスプレイを見るだけで何の操作もなく火災報知器11が警報を発生したことを知ることができる。また、呼出コールが終了した場合には、操作ボタンを押下して、着信履歴を表示手段に表示させることもできる。この場合、図4(a)
に示すように、携帯端末30の表示画面500には、着信コール毎の着信履歴表示が含まれる。更に、オートダイヤル装置13からの着信として「火災発報」の文字を含む着信履歴表示510がされる。これにより、ユーザは、火災報知器11が警報を発生したことを知ることができる。
【0038】
(緊急解除処理)
その後、緊急事態が解除された場合には、緊急事態解除の通知が行なわれる。本実施形態では、火災報知器11の警報に基づいて、火災の状況について調査が行なわれる。そして、火災が鎮火した場合や異常がなかった場合には、緊急事態解除の通知が行なわれる。
【0039】
具体的には、建物の管理者は、緊急解除用電話機15を用いて各携帯端末30に対して順番に呼出コールを行なう。この場合、緊急解除用電話機15は、上述したステップS1−2〜S1−6と同様な処理により、オートダイヤル装置13の代わりに各携帯端末30の内線番号に呼出コールを行なう。ここで、緊急解除用電話機15がリングバックトーンを出力した場合、建物の管理者は、携帯端末30の呼出を確認し、回線を切断する。この場合、図4(b)に示すように、携帯端末30の表示画面600には、緊急解除用電話機15からの着信として「異常ありません」の文字を含む着信履歴表示610がされる。これにより、ユーザは、通知された緊急事態が解除されたことを把握することができる。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、携帯端末30の電話帳データ記憶部32には、オートダイヤル装置13の内線番号に関連付けて「火災発報」の表示名が記録されている。火災発生に伴う異変を検知した場合、火災報知器11が出力する火災検知信号は、信号分配装置12を介して各オートダイヤル装置13に供給される。火災検知信号を取得した各オートダイヤル装置13は、予め記憶している内線番号に番号通知を伴う発信処理を行ない(ステップS1−2)、携帯端末30は着信応答を行なう(ステップS1−3)。通信チャネルの確立処理の終了後、携帯端末30は、着信の記録処理を実行する(ステップS1−4)。この場合、携帯端末30は、通知された電話番号を含む電話帳レコードを抽出し、この電話帳レコードの表示名データ領域に記録されているデータを取得する。ここでは、携帯端末30は、オートダイヤル装置13の内線番号に関連付けて「火災発報」の表示名に関するデータを取得し、ディスプレイに表示する。このため、ユーザは、このディスプレイに表示された「火災発報」を閲覧することにより、火災報知器11が警報を発生したことを知ることができる。
【0041】
・ 本実施形態では、呼出コールが終了した場合には、携帯端末30は、ディスプレイに表示していた表示名と、現在の時刻とを関連付けて着信履歴データ記憶部に記録する。このため、ユーザは、呼出コールが終了しても、着信履歴の「火災発報」という表示を閲覧することにより、火災警報が発生したことを把握することができる。
【0042】
・ 本実施形態では、火災通報システム10は、通知するユーザの人数に応じた複数のオートダイヤル装置13を備える。更に、火災通報システム10は、火災報知器11から出力された火災検知信号を各オートダイヤル装置13に分配する信号分配装置12を備えている。このため、火災報知器11が出力した火災検知信号は、信号分配装置12を介して各オートダイヤル装置13に供給される。このため、各オートダイヤル装置13は、予め記憶された内線番号の携帯端末30に対して一斉に呼出コールを行なうことができる。従って、火災報知器11からの警報を、通知すべきユーザに対して一斉に「火災発報」を通知することができる。
【0043】
・ 本実施形態では、携帯端末30は、呼出コールとしてのリンギングトーンを出力した場合(ステップS1−6)、バイブレーション設定になっている場合には、呼出音の代
わりに振動手段を作動させる。これにより、ユーザは、聴覚障害者であっても、携帯端末30が呼出中であることを把握する。
【0044】
・ 本実施形態では、携帯端末30の電話帳データ記憶部32には、緊急解除用電話機15の内線番号に関連付けて「異常ありません」の表示名が記録されている。火災通報システム10は、緊急状態が解除された場合に、これを通知するための緊急解除用電話機15を備えている。火災が発生しておらず異常がなかった場合には、緊急解除用電話機15は、オートダイヤル装置13の代わりに各携帯端末30の内線番号に呼出コールを行なう。このため、緊急解除用電話機15の着信があった場合には、着信履歴として「異常ありません」の文字が表示される。従って、ユーザは、火災報知器が警報を発生したが、異常がなかったことを把握することができる。
【0045】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態においては、携帯端末30の電話帳データ記憶部32には、オートダイヤル装置13及び緊急解除用電話機15の電話帳レコードが記憶されている。これら電話帳レコードの登録を自動的に行なうようにしてもよい。例えば、図5に示す番号登録処理によって行なってもよい。
【0046】
この番号登録処理においては、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ端末によって構成された番号登録処理システムを用いて行なう。この番号登録処理システムは、制御手段と、電話番号割当データ記憶手段とを備える。制御手段は、登録対象番号特定手段、オートダイヤル番号登録手段及び対応番号記録手段として機能する。電話番号割当データ記憶手段には、オートダイヤル装置番号と携帯端末番号とを含む電話番号割当レコードから構成される電話番号割当テーブルが記録されている。オートダイヤル装置番号データ領域は、火災通報システム10に設置するオートダイヤル装置13に付与した内線番号に関するデータを記録する。携帯端末番号データ領域は、このオートダイヤル装置13が呼出コールを行なう携帯端末30の内線番号に関するデータを記録する。更に、制御手段には、緊急解除用電話機15の内線番号に関するデータが記録されている。そして、番号登録処理を行なう場合には、これから使用するオートダイヤル装置13に付与した内線番号を番号登録処理システムのオートダイヤル装置番号データ領域に記録しておく。
【0047】
番号登録処理においては、番号登録作業を行なう作業者は、電話帳を登録する携帯端末を特定し、この携帯端末30を番号登録処理システムに接続する。この場合、番号登録処理システムは携帯端末30とデータの送受信が可能となる。まず、制御手段は、電話帳情報の取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御手段は、番号登録対象の携帯端末30の電話帳データ記憶部32から、現在記憶されている電話帳データ320を抽出する。
【0048】
次に、緊急メッセージが既に登録されているか否かを判定する(ステップS2−2)。具体的には、制御手段は、携帯端末30の電話帳データ記憶部32の表示名データ領域に「火災発報」の文字が含まれているか否かを検索する。ここで、緊急メッセージが既に登録されている場合(ステップS2−2において「YES」の場合)には、制御手段は、次に番号登録処理を行なう携帯端末30を特定して、ステップS2−1以降の処理を実行する。
【0049】
一方、緊急メッセージがまだ登録されていない場合(ステップS2−2において「NO」の場合)には、制御手段は、オートダイヤル装置がまだ割り当てられていない番号の特定処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御手段は、電話番号割当テーブルにおいて、携帯端末番号データ領域が空の電話番号割当レコードを1つ抽出する。
【0050】
制御手段は、オートダイヤル装置の番号を電話帳に登録する処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御手段は、抽出した電話番号割当レコードのオートダイヤル装置番号と、「火災発報」の表示名とを含む電話帳レコードを携帯端末30の電話帳データ記憶部32に記録する。
【0051】
次に、制御手段は、緊急解除用電話機15の番号を電話帳に登録する処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御手段は、記憶している緊急解除用電話機15の内線番号と「異常ありません」の表示名とを携帯端末30の電話帳データ記憶部32に記録する。
【0052】
次に、制御手段は、割当テーブルに携帯電話番号を登録する処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御手段は、ステップS2−4及びS2−5で内線番号が電話帳に記録された携帯端末30から、この携帯端末の内線番号を取得する。制御手段は、取得した内線番号を、ステップS2−3において特定したオートダイヤル装置の番号が記録された電話番号割当レコードに記録する。
【0053】
以上のステップS2−1〜S2−6を携帯端末毎に繰り返して、制御手段は、この建物内で働くユーザの数に対応する携帯端末30に、オートダイヤル装置13及び緊急解除用電話機15の電話帳レコードを記録する。そして、番号登録対象となる携帯端末30に、オートダイヤル装置13の電話帳レコード及び緊急解除用電話機15の電話帳レコードが記録されると、電話番号割当テーブルに基づいて各オートダイヤル装置13に、対応するコール先の設定処理を実行する(ステップS2−7)。以上により、電話帳登録処理が完了する。このため、携帯端末30に、オートダイヤル装置13の番号を重複せずに登録することができる。更に、登録したオートダイヤル装置13の番号と、これを登録した携帯端末30の番号とを対応付けして電話番号割当テーブルに記憶することができる。従って、ユーザの携帯端末30において、オートダイヤル装置13の番号の重複登録を抑制し、通知対象のユーザに漏れなく通知を行なうことが期待できる。
【0054】
○ 上記実施形態においては、オートダイヤル装置13、緊急解除用電話機15及び携帯端末30の番号として内線番号を用いた。これに限らず、外線番号を用いてもよい。
○ 上記実施形態においては、オートダイヤル装置13は、携帯端末30に発信処理を行なった後(ステップS1−2)、呼出時間が経過したときには、自動的に回線を切断した。これに限らず、回線を切断した後、再度、ステップS1−2以降の処理を、予め定めたリダイヤル回数分、繰り返して行なうリダイヤル処理を行なってもよい。この場合には、オートダイヤル装置13は、ユーザが着信に気が付くように繰り返して呼出コールを行なう。従って、例えば、最初の着信のときには通信圏外であっても、その後通信圏内となることがあるので、より各確実に緊急警報を通報することができる。また、呼び出し中のときに、ユーザが携帯端末30をオフフックして応答した場合には、再び火災検知信号の検知処理を行なうまで、リダイヤル処理を中止して終了してもよい。この場合には、ユーザが着信に気が付いて着信履歴を閲覧することにより緊急内容を把握したと考えられるので、無駄な電話をかけなくてもよい。また、ユーザが応答したとしても予め定めた回数分繰り返してリダイヤル処理を実行する設定も選択可能としてもよい。この場合には、任意に設定ができることにより、様々な場所での利用範囲の拡大が図れる。
【0055】
○ 上記実施形態においては、緊急信号としての火災検知信号を出力する火災報知器を備えた火災通報システム10について説明した。緊急警報はこれに限らず、例えばガス漏れ警報機器等を通知する緊急通報システムとしてもよい。また、火災報知器も上記実施形態に限らず、例えば、手動により緊急警報を発生して火災検知信号を送信する火災報知器を用いてもよい。更には、煙感知器、温度感知器、水漏れ感知器など、信号を発生して通知するシステムなどで広く利用することが可能である。
【0056】
○ 上記実施形態においては、聴覚障害者のユーザに対して緊急通報を行なう場合について説明した。緊急通報の対象者は、これに限らず、騒音現場の作業者、クリーンルーム作業者、両手が不自由な方等に対して、緊急通報を行なってもよい。
【0057】
○ 上記実施形態においては、火災報知器11に信号分配装置12を接続した。これに加えて、火災報知器11と信号分配装置12との間に、信号を切り替える切替え器を設けてもよい。この切替え器は、「試験送信」、「監視中」及び「遮断」の3つの動作状態の切替を行なう。通常、この切替え器は、「監視中」の動作状態になっており、火災報知器11と信号分配装置12とを接続している。火災報知器11の動作試験時には、この切替え器を「遮断」の動作状態にする。この場合、切替え器は、火災報知器11と信号分配装置12との接続を遮断する。これにより、火災報知器11の信号が信号分配装置12より先に供給されない。このため、オートダイヤル装置13に火災検知信号が供給されることなく、火災報知器11のみの試験動作を行なうことができる。更に、携帯端末30の動作試験時には、この切替え器を「試験送信」の動作状態にする。この場合には、切替え器は、試験用の火災検知信号をオートダイヤル装置13に供給する。このため、オートダイヤル装置13から携帯端末30への通報の試験動作を行なうことができる。従って、切替え器の動作状態の切替えを行なうことにより、火災報知器11や携帯端末30の動作試験を効率よく行なうことができる。
【0058】
○ 上記実施形態においては、火災通報システム10に緊急解除用電話機15を設けた。このように緊急解除を行なうための専用の緊急解除用電話機15を設置しなくてもよい。この場合には、火災発生を通報した携帯端末30に、緊急解除を通知する呼出コールを順次、行なう。
【0059】
○ 上記実施形態の携帯端末30においては、着信があった場合に、振動手段による振動によって着信を通知した。これに加えて、携帯端末30において、振動手段及び音声出力手段の両方を用いて着信を通知してもよい。この場合には、振動だけでなく音によっても通知が行なわれるので、周囲にも着信の通知を知らせることができる。
【0060】
○ 上記実施形態において、携帯端末30の表示名データ領域には、「火災発報」や「異常ありません」の表示名データを記録した。この表示名データ領域に記録される表示名は、携帯端末30が表示できる文字数まで自由に設定できる。例えば、19文字まで設定可能な場合には、「火災発報A地避難所に避難してください。」等を記録することもできる。なお、この場合には、携帯端末30毎の機能(例えば、設定可能文字数)に応じて、適切な表示名を設定する。
【符号の説明】
【0061】
10…火災通報システム、11…火災報知器、12…信号分配装置、13…オートダイヤル装置、15…緊急解除用電話機、20…電話交換機、21…基地局、30…携帯端末、32…電話帳データ記憶部、320…電話帳データ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2002−300316号公報(図1,図3及び図4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急警報の発令に対応して警報発令信号を出力する警報装置と、
前記警報発令信号を分配する信号分配装置と、
緊急警報を通知する携帯端末の電話番号を予め記憶した複数のオートダイヤル装置と、
このオートダイヤル装置の電話番号に対して緊急内容が関連付けられた電話帳データを記憶した電話帳データ記憶手段と、着信表示を表示する表示手段とを備えた携帯端末とを備えた緊急通報システムであって、
前記信号分配装置は、前記警報装置からの警報発令信号を各オートダイヤル装置に供給し、
前記警報発令信号を取得したオートダイヤル装置は、予め記憶している電話番号に呼出コールを行ない、
前記携帯端末は、前記オートダイヤル装置から着信があった場合には、このオートダイヤル装置の電話番号に対応する緊急内容を前記電話帳データ記憶手段から抽出して、この緊急内容を着信表示することを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
前記オートダイヤル装置は、
前記警報発令信号を受信した場合、呼出コールの開始から予め記憶された呼出時間が経過したときには回線を切断し、その後、予め定めた所定時間を経過してから再度呼出コールを行なうリダイヤル処理を所定回数繰り返し、
前記リダイヤル処理の最中に前記携帯端末からの応答があった場合には、これ以降のリダイヤル処理を中止して終了することを特徴とする請求項1に記載の緊急通報システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、電話の着信を検出した場合に振動する振動手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急通報システム。
【請求項4】
緊急警報の発令に対応して警報発令信号を出力する警報装置と、
前記警報発令信号を分配する信号分配装置と、
緊急警報を通知する携帯端末の電話番号を予め記憶した複数のオートダイヤル装置と、
このオートダイヤル装置の電話番号に対して緊急内容が関連付けられた電話帳データを記憶した電話帳データ記憶手段と、着信表示を表示する表示手段とを備えた携帯端末とを備えた緊急通報システムを用いて緊急通報を行なう方法であって、
前記信号分配装置は、前記警報装置からの警報発令信号を各オートダイヤル装置に供給し、
前記警報発令信号を取得したオートダイヤル装置は、予め記憶している電話番号に呼出コールを行ない、
前記携帯端末は、前記オートダイヤル装置から着信があった場合には、このオートダイヤル装置の電話番号に対応する緊急内容を前記電話帳データ記憶手段から抽出して、この緊急内容を着信表示することを特徴とする緊急通報方法。
【請求項5】
緊急通報システムにおいて警報装置からの警報発令信号を受信した場合に、予め記憶している電話番号の1つに自動的に呼出コールを行なう複数のオートダイヤル装置の番号と、このオートダイヤル装置が呼出コールを行なう携帯端末の番号とを含む電話番号割当レコードを記録した電話番号割当データ記憶手段と、
制御手段とを備え、携帯端末にオートダイヤル装置の番号を割り当てて登録処理を実行する番号登録処理システムであって、
前記制御手段は、
緊急通報システムに設置されるオートダイヤル装置の番号のうち、携帯端末に割り当てられていない番号を取得する登録対象番号特定手段と、
この番号を携帯端末に登録するオートダイヤル番号登録手段と、
前記オートダイヤル番号登録手段により登録された前記携帯端末の番号と、この携帯端末の番号を、前記登録対象番号特定手段が特定した番号と対応付けて前記電話番号割当データ記憶手段に記録する対応番号記録手段とを備えたことを特徴とする番号登録処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−187309(P2010−187309A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31398(P2009−31398)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(597175721)リコーエンジニアリング株式会社 (3)
【出願人】(596017761)リコーテクノシステムズ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】