説明

緑化ユニット及び該緑化ユニットを備える緑化システム

【課題】緑化ユニットの構成部材を効率的に運搬できるようにして施工性の向上を図るとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応可能な緑化ユニット及びこれを備える緑化システムを提供する。
【解決手段】側壁2aと底板2bを有する箱状の貯水部2と、貯水部2と重なるように貯水部2の上端側に設けられて土壌を収容する植栽部3とを備える緑化ユニット1において、貯水部2が、側壁2aの底板2bと繋がる下端側が上端側よりも内側に配されるように形成され、植栽部3は、貯水部2の上端側に着脱可能に載置され且つ積層可能な少なくとも一つの略筒状の側壁部3aと、貫通孔を有する略平板状の底板部3bとを備え、底板部3bが側壁部3aの内側に着脱可能に支持されつつ設置されて、貯水部2の側壁2a及び底板2bで画成される空間6と土壌を収容する空間7とが貫通孔を通じて連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物の屋上、テラス、ベランダや、駐車場などの人工地盤上に敷設されて該人工地盤に緑化を施すための緑化ユニット及び該緑化ユニットを備える緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和や大気中の炭酸ガスの吸収、アメニティ空間の創出などを目的として、建築物や駐車場などの人工地盤上に植栽を施し緑化することが行なわれている。
【0003】
この種の緑化システムには、例えば特許文献1に開示されるような、側壁(側壁部)と底面(底板部)を有し平面視略方形で上面開口の箱形の植栽部と、側壁と底面(底板)を有し平面視略方形で上面開口の箱形の貯水部とを備え、貯水部上に植栽部を分離可能に載置して構成される緑化ユニット(緑化体)を具備したものがある。この緑化システムでは、緑化ユニットの植栽部内に充填した人工土壌(土壌)上に種子を蒔いたり、切芝を載置するなどして植栽が施され、この状態の緑化ユニットを建築物の屋上などの人工地盤の敷設面に隙間なく複数敷設することにより人工地盤に緑化を施すことが可能とされている。また、この緑化システムにおいては、敷設した複数の緑化ユニットをそれぞれ個別に取り扱うことができるため、その設置や撤去が容易で施工性に優れるとともに、レイアウト変更などにも柔軟に対応できるという利点を有している。
【0004】
また、特許文献1に開示された緑化ユニットにおいては、植栽部の底面に、土壌に供給された雨水などの水のうち土壌に保水されない余剰水を貯水部内に排出し、かつ空気の流通を可能にするための通水兼通気孔(貫通孔)が設けられている。さらに、植栽部の底面から略円柱状の複数の第1柱状部材が上方に突出するように設けられ、かつこの底面には下方に突出して垂設され、その下端面が貯水部の底面に当接する略円柱状の複数の第2柱状部材が設けられている。これにより、この緑化ユニットでは、余剰水が貯水部に排出されることで土壌に植栽した植物を好適に生育でき、かつ植栽部の上方から歩行者の踏圧などの外力が作用した場合においても、第1柱状部材と第2柱状部材により高い支持強度と安定性が付与されて、前記外力により植栽部や貯水部が破損することを防止している。
【特許文献1】特開2004−261016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の緑化ユニット及び緑化システムにおいては、植栽部と貯水部がそれぞれ平面視略方形の略同形同大の箱状に形成されているため、人工地盤上に隙間なく敷設する際の取扱性がよい反面、これらを運搬する際には、複数の貯水部や複数の植栽部をそれぞれ積み重ねて大きな荷姿の状態で運搬せざるを得ず、運搬時の取扱性や運搬効率が悪く、施工性を悪化させていた。
【0006】
また、上記の緑化ユニットでは、植栽部が予め所定の大きさの箱状に形成されているため、例えば植栽する植物の種類の変更などに応じて土壌の厚さを大きくしたい場合に柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、緑化ユニットの構成部材を効率的に運搬できるようにして施工性の向上を図るとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応可能な緑化ユニット及びこれを備える緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の緑化ユニットは、側壁と底板を有し上端側に開口部を備えた箱状の貯水部と、該貯水部と重なるように前記貯水部の前記上端側に設けられ植物が植栽される土壌を収容する植栽部とを備えた緑化ユニットであって、前記貯水部は、前記側壁の前記底板と繋がる下端側が前記上端側よりも内側に配されて形成されており、前記植栽部は、前記貯水部の前記上端側に着脱可能に載置され且つ積層可能な少なくとも一つの略筒状の側壁部と、貫通孔を有する略平板状の底板部とを備え、前記底板部が前記側壁部の内側に着脱可能に支持されつつ設置されて、前記貯水部の前記側壁及び前記底板で画成される空間と前記植栽部の側壁部及び底板部で画成され土壌を収容する空間とが前記貫通孔を介して連通していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の緑化ユニットにおいて、前記貯水部の前記側壁には、前記下端側に、前記上端側から前記下端に向かうに従い漸次内側に傾斜するテーパー部が設けられていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の緑化ユニットにおいては、前記側壁部が、略矩形筒状に形成されるとともに、4つの角部にそれぞれヒンジ部を備えて形成されていることがより望ましい。
【0012】
また、本発明の緑化ユニットにおいては、前記植栽部の前記土壌を収容する空間内に、上方側からの平面視で該空間を分割して区画する仕切部が設置されており、該仕切部は、略矩形平板状の複数の仕切板がそれぞれの前記仕切板に形成された係合溝を介して互いに交差するように分離可能に係合されて形成されていることがさらに望ましい。
【0013】
さらに、本発明の緑化ユニットにおいて、前記仕切板には、前記仕切部で分割して区画した前記空間を連通させる切欠部が設けられていることがより望ましい。
【0014】
また、本発明の緑化ユニットにおいては、前記底板部に、前記貯水部に貯留した水を、前記貫通孔を通じて前記土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることが望ましい。
【0015】
さらに、本発明の緑化システムは、上記の緑化ユニットを備えた緑化システムであって、複数の前記緑化ユニットが、隣り合う前記緑化ユニットの前記側壁部を接触させて上方からの平面視に隙間なく人工地盤上に並べられて敷設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の緑化ユニット及び緑化システムにおいては、貯水部の側壁の底板と繋がる下端側が、例えばテーパー形状とされて上端側よりも内側に配されていることによって、貯水部の内部に他の貯水部の底板側を挿入しつつ係合させることが可能になる。これにより、複数の貯水部を運搬する際に、複数の貯水部を係合させつつ安定的に積み重ね、見掛けの容積を小さくした状態でまとめて運搬することが可能になる。よって、複数の貯水部の運搬時の取扱性や運搬効率の向上を図ることができ、施工性を向上させることが可能になる。
【0017】
また、側壁の下端側を内側に配して貯水部を形成した場合には、複数の緑化ユニットを人工地盤上に敷設した際に、隣り合う緑化ユニットの貯水部の側壁上端側同士が隙間なく密着されるのに対し、隣り合う貯水部の側壁下端側の間に隙間が画成されることになる。そして、この隙間は、複数の緑化ユニットの並設方向に沿って延設する通水路を人工地盤上に形成することになり、この通水路を通じて人工地盤上に溜まってしまう雨水などの水を外部に排出することが可能になる。
【0018】
さらに、本発明においては、植栽部が貯水部に着脱可能に載置され且つ積層可能な側壁部と底板部を備えて構成されているため、植栽部の空間に充填されて収容する土壌の層厚を大きく変更したい場合に、貯水部に設置された側壁部に他の側壁部を積上げるように積層するという簡易な操作で、植栽部の空間を上方に拡大することができ、柔軟に土壌の層厚変更に対応することができる。
【0019】
また、本発明の緑化ユニット及び緑化システムにおいては、植栽部の側壁部が略矩形筒状に形成され、その4つの角部にそれぞれヒンジ部が設けられていることによって、側壁部を折畳むことが可能になる。これにより、複数の側壁部の運搬時には、これらを折畳んでまとめて効率的に運搬することができ、設置時には、所定の矩形筒状を呈するように元に戻して設置できるため、さらなる施工性の向上を図ることが可能になる。
【0020】
さらに、本発明の緑化ユニット及び緑化システムにおいては、植栽部の側壁部及び底板部で画成された空間を分割して区画する仕切部が設けられていることによって、植栽部の上方から歩行者の踏圧などの外力が作用した場合においても、この外力を仕切部で受けることができ、緑化ユニットに高い支持強度と安定性を付与することができる。これにより、植栽部や貯水部が外力によって破損することを防止できる。また、仕切部が、略矩形平板状の複数の仕切板を互いに係合させて形成されるものであるため、すなわち、仕切部が複数の仕切板を組み立てて形成される構成を採っているため、運搬時には分離した状態の仕切板をまとめて運搬でき、設置時に複数の仕切板を係合させて組み立てるという簡易な操作で容易に仕切部を形成し設置することができる。
【0021】
また、仕切板に、仕切部で分割して区画した空間を連通させる切欠部が設けられていることにより、区画した空間内の土壌で生育する植物の根や、各空間に供給された水をこの切欠部を通じて他の空間(土壌)内に行き来させることができる。これにより、植物の好適な生育環境を保持することが可能になる。
【0022】
さらに、植栽部の底板部に、貯水部に貯留した水を、貫通孔を通じて土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることによって、土壌に供給された雨水や灌水などの水のうち、土壌に保水されずに貯水部に貯められた余剰水を、吸水帯を介して再度土壌に供給することができる。これにより、雨水や灌水を有効に再利用できるため、灌水頻度を低下させることが可能になるとともに、植物の好適な生育環境を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1から図8を参照し、本発明の一実施形態に係る緑化ユニット及び緑化システムについて説明する。本実施形態は、建築物の屋上やベランダ、駐車場などの人工地盤上に敷設して人工地盤に緑化を施すための緑化ユニット及びこの緑化ユニットを備える緑化システムに関するものである。
【0024】
本実施形態の緑化システムAは、図1及び図2に示すように、複数の緑化ユニット1を備えて構成され、本実施形態の緑化ユニット1は、図1から図4に示すように、雨水や灌水などの余剰水を貯留する貯水パネル(貯水部)2と、植栽を施す図示せぬ土壌を保持する植栽部3と、歩行者の踏圧などの外力を支持する仕切部4と、植栽部3に保持した土壌に貯水パネル2内の余剰水を供給するための吸水帯5とが主な構成要素とされている。
【0025】
貯水パネル2は、側壁2aと底板2bを有し、平面視略正方形状の箱状に形成され、その上面側が開口されて開口部2cを備えるものとされている。また、側壁2aは、開口部2cを画成する上端2d側が底板2bに直交するように垂直方向に延設されているのに対し、下端2e側は、上端2d側から底板2bと繋がる下端2eに向かうに従い漸次貯水パネル2の内側に向けて傾斜するように形成されている。ここで、本実施形態では、側壁2aの下端2e側に形成された傾斜部分がテーパー部2fとされている。
【0026】
植栽部3は、互いに分離した側壁部3aと底板部3bとから構成されている。側壁部3aは、平面視略正方形状の筒状に形成されており、上端3c側の開口面積が貯水パネル2の開口部2cの開口面積と略等しい大きさとなるように形成されている。また、側壁部3aの下端3d側には、側壁部3aの厚さ寸法と同等もしくは僅かに大きな寸法で水平方向内側に延びる段差部3eが設けられ、この段差部3eによって側壁部3aの下端3d側は、上端3c側と平行しつつ内側に配設されている。さらに、平面視略正方形状を呈するこの側壁部3aには、図5に示すように、その4つの角部にヒンジ部3fが設けられており、側壁部3aはこれらヒンジ部3fによって折畳み可能とされている。
【0027】
一方、植栽部3の底板部3bは、図1から図4に示すように、平面視略正方形状の平板状に形成されており、その上面及び下面の面積が、側壁部3aの上端3c側の開口面積と略等しくなるように形成されている。また、底板部3bには、上面から下面に貫通する複数の排水孔(貫通孔)3gが設けられている。
【0028】
本実施形態の仕切部4は、略長方形平板状に形成された同形同大の2枚の仕切板4a、4bからなり、これら2枚の仕切板4a、4bが分離可能に係合されて十字状を呈するように形成されている。この仕切部4を構成する2枚の仕切板4a、4bには、それぞれ、図6に示すように、長手方向に延びる軸線O1、O2方向中央に、軸線O1、O2に平行する下端4cから上端4d側に向けて切り欠かれた平面視矩形状の係合溝4eが設けられている。また、この係合溝4eは、仕切板4a、4bの厚さと略等しい幅を備え、かつ下端4cから上下方向中央まで延設されている。さらに、仕切板4a、4bには、軸線O1、O2方向一端と中央の間、及び軸線O1、O2方向中央と他端の間にそれぞれ、上端4dから下端4cに向けて凹み、かつ下端4cから上端4dに向けて凹む互いに上下方向に対向する一対の切欠部4fが設けられている。そして、このように形成された2枚の仕切板4a、4bは、一方の仕切板4bの天地を逆に配しつつ対向する互いの係合溝4eを介して互いの軸線O1、O2が直交(交差)するように係合されて、十字状の仕切部4を形成している。
【0029】
吸水帯5は、例えばウレタンやフェルトなどの繊維質部材、毛細管部材、パーライト、大谷石や麦飯石などの多孔質部材などを帯状に形成したり、帯状にまとめたものとされている。この吸水帯5は、図2から図4に示すように、上端側が例えば植栽部3の底板部3bに形成された一部の排水孔3gに挿通されて支持され、下端側が底板部3bから垂下するように設けられている。
【0030】
上記のように形成された貯水パネル2と植栽部3と仕切部4と吸水帯5とを備える緑化ユニット1は、図1から図4に示すように、はじめに、貯水パネル2の上端2dに、段差部3eの下方を向く面を当接させつつ支持させて植栽部3の側壁部3aが貯水パネル2に着脱可能に係合設置される。すなわち、植栽部3の側壁部3aが貯水パネル2の上端2d側に上下方向に重なるように設置される。そして、貯水パネル2の上方に設置した側壁部3aの内部に、吸水帯5が取り付けられた底板部3bを挿入し、この底板部3bの下面を側壁部3aの段差部3eの上方を向く面に当接させつつ支持させて底板部3bが設置される。このとき、底板部3bが水平に配設されるとともに、底板部3bよりも上方に、側壁部3aと底板部3bとで土壌を収容する空間6が、底板部3bよりも下方に、貯水パネル2の側壁2aと底板2bとで余剰水を貯留する空間7が画成され、この底板部3bに取り付けた吸水帯5が貯水パネル2の空間7内に配置される。
【0031】
ついで、植栽部3の側壁部3aと底板部3bとで画成された空間6内に、仕切部4を挿入しその下端を底板部3bに支持させて設置する。このとき、仕切部4を構成する十字状に係合された2枚の仕切板4a、4bのそれぞれの一端と他端が、側壁部3aの対向する内面に接触、もしくは近接配置され、植栽部3の前記空間6が4つに分割されて区画される。また、仕切部4の上端は、側壁部3aの上端3cと同一水平面上、もしくは僅かに側壁部3aの上端3cよりも下方に配置される。そして、このように各部材が組み立てられた段階で、仕切部4により4つに区画された空間6内に、上面が側壁部3aの上端3cと略同一水平面上に位置するように図示せぬ土壌を充填し、この土壌上に種子を蒔いたり、切芝を載置するなどして植栽を施し緑化ユニット1が完成される。このような緑化ユニット1を、図1及び図2に示すように、建築物の屋上などの人工地盤Tの敷設面T1に複数並べて敷設し、必要に応じて各緑化ユニット1の土壌及び植栽した植物に液肥や灌水を供給する図示せぬ灌水手段を設置して緑化システムAが形成され、これにより人工地盤Tの緑化の施工が完了する。
【0032】
ここで、従来、建築物の屋上などの人工地盤Tに緑化ユニット1を敷設する際には、上記のような完成状態の緑化ユニット1を搬入して設置するのではなく、各部材を搬入してはじめに貯水パネル2を並べて敷設し貯水パネル2に植栽部3を設置した後に、土壌の充填と植栽が施され、すなわち、現地にて緑化ユニット1を完成させている。このとき、従来の緑化ユニットにおいては、貯水部や植栽部がそれぞれ同形同大の矩形箱状に形成されているため、設置する緑化ユニットの数が多くなるほど貯水部や植栽部の運搬効率が悪くなり、施工性が悪化することになる。また、植栽部が予め所定の大きさの定形箱状に形成されているため、例えば植物の種類などの変更に応じて植栽部に収容する土壌を増量し、その厚さを大きくすることができず、柔軟に対応できないという問題があった。
【0033】
これに対して、本実施形態の緑化ユニット1においては、図7に示すように、貯水パネル2の側壁2aにテーパー部2fが設けられているため、貯水パネル2の内部に他の貯水パネル2のテーパー部2fを挿入しつつ係合させてゆき、複数の貯水パネル2を安定的に積み重ねてまとめることができる。これにより、本実施形態では、複数の貯水パネル2が、係合しつつ積み重ねて安定的にまとめられてその見掛けの容積が小さくなり、効率的に運搬できる。また、植栽部3においても、図3から図5に示すように、側壁部3aと底板部3bが分離可能とされ、かつ側壁部3aが、その角部にヒンジ部3fが設けられて折畳み可能とされているため、やはり見掛けの容積を小さくした状態で複数の側壁部3aをまとめて運搬することができる。さらに、仕切部4においても、図6に示すように、2枚の仕切板4a、4bから構成され、各仕切板4a、4bに形成した係合溝4eを介して互いを係合させて組み合わせることで所定の形状に形成することができるため、運搬時には2枚の仕切板4a、4bを分離した状態でまとめて運搬することができる。また、本実施形態においては、2枚の仕切板4a、4bが同形同大とされているため、特にその仕分けを行う必要がなく容易に組み合わせることが可能とされている。
【0034】
そして、本実施形態においては、このように緑化ユニット1を構成する各部材をそれぞれ効率的に現地に搬入した段階で、複数の貯水パネル2を人工地盤Tの敷設面T1に並べて設置してゆき、上記のように、各貯水パネル2に側壁部3a、底板部3bを取付けて植栽部3を形成するとともに、2枚の仕切板4a、4bを十字に組み合わせた仕切部4を取付け、緑化ユニット1を組立てる。そしてさらに、植栽部3の空間6に土壌を充填してこの土壌に植栽を施し、必要に応じて灌水手段を敷設することによって本実施形態の緑化システムAの施工が完了する。
【0035】
また、本実施形態の緑化ユニット1では、植物の種類などに応じて植栽部3に収容する土壌の厚さを大きくしたい場合、図8に示すように、既設の側壁部3aの上端3cに、他の側壁部3aの段差部3eの下方を向く面を当接させつつ互いを係合させて、この既設の側壁部3aの上方に積上げるように積層して他の側壁部3aを設置する。これにより、植栽部3の空間6を容易に上方に拡大することができ、新たに設置した他の側壁部3aで画成された空間6に土壌を充填することにより所望の厚さの土壌を形成できる。
【0036】
また、本実施形態では、敷設した緑化ユニット1に雨水(または灌水手段からの灌水)が供給された際に、土壌に雨水が浸透し、その一部が土壌に保水されて植物の生育に供される。この一方で、土壌に保水されずに下方に通過した余剰水が、底板部3bの排水孔3gを通じて流下し貯水パネル2の空間7に貯留されることになる。このように貯水された余剰水は、例えば晴天時に吸水帯5によって吸い上げられ、再度上方に位置する土壌に供給されて植物の生育に供されることになる。よって、本実施形態の緑化ユニット1では、雨水や灌水の余剰水を貯留し再度上方の土壌に供給できるため、灌水手段による灌水頻度を低減することができる。
【0037】
さらに、図2に示すように、側壁3aの垂直方向に延びる上端3a側の外面が面接触するように複数の緑化ユニット1を人工地盤T上に隙間なく並べた際に、隣り合う緑化ユニット1の下端側の間には、対向する両側壁2aのテーパー部2fと人工地盤Tの敷設面T1とにより断面三角形状の通水路8が画成される。この通水路8が画成されることにより、本実施形態の緑化システムAでは、人工地盤T上に溜まる雨水をこの通水路8を流通させて排出することができる。
【0038】
また、本実施形態では、仕切部4が土壌中に設けられていることによって、緑化システムAが施工された後に、例えば歩行者の踏圧などの外力が緑化ユニット1に作用した場合においても、この外力を仕切部4で受けて支持することができる。これにより、例えば植栽部3の側壁部3aに集中的に外力が作用することを防止でき、緑化ユニット1が損傷することを防止できる。また、このとき、仕切部4で植栽部3の4つに分割された空間6内に土壌が充填されることになるため、外力が作用した土壌が片寄ってしまったりすることがなく、好適な状態で土壌を保持することも可能になる。
【0039】
さらに、仕切部4で土壌が4分割された場合においても、仕切板4a、4bに設けられた複数の切欠部4fを通じて、植栽された植物の根や、灌水された水を、分割した土壌間で行き来させることができる。これにより、植物の生育を好適な状態で維持することが可能になる。
【0040】
したがって、本実施形態の緑化ユニット1及び緑化システムAによれば、緑化ユニット1の構成部材を分離状態で効率的に運搬して施工性の向上を図ることが可能とされるとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応することができる。また、緑化ユニット1がシンプルに構成された各部材を組み立てて形成され、その組立も容易であるため、コストの低減を図ることもできる。さらに、本実施形態の緑化システムAにおいては、上記の緑化ユニット1を複数敷設して構成されるため、例えば個々の緑化ユニット1に植栽された植物が枯れてしまった場合など、その個々の緑化ユニット1を個別に交換して対応することができ、また、緑化を施した建築物などをメンテナンスする際にも緑化ユニット1、ひいては緑化システムAの撤去が容易とされ、緑化ユニット1やこれを敷設した建築物などのメンテナンスにも柔軟に対応することができる。
【0041】
以上、本発明に係る緑化ユニット及び緑化システムの実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、貯水パネル2の側壁2aにテーパー部2fが設けられることによって、複数の貯水パネル2を係合させつつ積み重ね、見掛けの容積を小さくした状態でまとめて運搬することが可能であるとしたが、例えば、貯水パネル2の側壁2aに、上端2d側の側壁2aに対し下端2e側の側壁2aを内側に配置する段差部を形成し、下端2e側を上端2d側と平行しつつ下方に垂直に延びるように形成してもよいものである。この場合には、側壁2aの下端2e側にテーパー部2fを設けた本実施形態と同様、貯水パネル2の下端2e側を他の貯水パネル2の上端2d側の開口部2cから挿入して、複数の貯水パネル2を係合させつつ積み重ね、見掛けの容積を小さくすることができる。よって、効率的に複数の貯水パネル2をまとめて運搬することができる。
【0042】
また、本実施形態では、1つの植栽部3の側壁部3aを貯水パネル2に設置して、土壌厚の変更時に、既設の側壁部3aに他の側壁部3aを積上げるように設置することにより対応するものとしたが、建築物などの人工地盤Tに緑化ユニット1を設置する段階で、複数の側壁部3aが積層されつつ繋げられて緑化ユニット1が構成されていてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、貯水パネル2や植栽部3の側壁部3a及び底板部3bがそれぞれ平面視正方形状を呈するように形成されているものとしたが、特にその形状が限定される必要はなく、例えばそれぞれ平面視長方形状に形成されたり、側壁部3aの上端3c側が平面視正方形状や長方形状に形成される一方で、段差部3eを境に下端3d側が例えば断面視円形状を呈するように形成されていてもよく、この場合には、貯水パネル2が側壁部3aの下端3d側の形状に合わせて、例えば平面視円形状に形成されていてもよいものである。
【0044】
また、本実施形態では、緑化ユニット1に仕切部4が具備されているものとしたが、歩行者の踏圧などの外力が作用しない、もしくは外力が作用しても緑化ユニット1が損傷したり、土壌に片寄りが生じないと判断される場合には、必ずしも仕切部4が具備されなくてもよい。また、仕切部4が2枚の仕切板4a、4bを組み合わせて十字状に形成されているものとしたが、例えば仕切板4a、4bに複数の係合溝4eを形成し、3枚以上の仕切板4a、4bを互いに組み合わせ、仕切部4が例えば格子状に形成されてもよい。この場合には、仕切板の数に応じて、本実施形態の仕切部4よりも大きな外力を支持することができ、より安定的に土壌や緑化ユニット1を保持することができる。また、これに加えて、仕切板4a、4bにそれぞれ断面コ字状を呈する一対の切欠部4fが2組設けられているものとしたが、仕切部4で区画した土壌間に植物の根や水が行き来できるように切欠部4fが形成されていれば、切欠部4fの形状や配置、数などは特に限定を必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る緑化システムを示す平面図である。
【図2】図1のX−X線矢視図である。
【図3】図1の緑化システムに具備される本発明の一実施形態に係る緑化ユニットの分解斜視図である。
【図4】図1の緑化システムに具備される本発明の一実施形態に係る緑化ユニットの分解断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る緑化ユニットに具備される植栽部の側壁部を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る緑化ユニットに具備される仕切部の分解斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る緑化ユニットに具備される貯水部を積み重ねた状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る緑化ユニットの側壁部に他の側壁部を設置して植栽部の空間を拡大した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 緑化ユニット
2 貯水パネル(貯水部)
2a 側壁
2b 底板
2c 開口部
2d 上端
2e 下端
2f テーパー部
3 植栽部
3a 側壁部
3b 底板部
3c 上端
3d 下端
3e 段差部
3f ヒンジ部
3g 排水孔
4 仕切部
4a 仕切板
4b 仕切板
4e 係合溝
4f 切欠部
5 吸水帯
6 空間
7 空間
8 通水路
A 緑化システム
T 人工地盤
T1 敷設面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底板を有し上端側に開口部を備えた箱状の貯水部と、該貯水部と重なるように前記貯水部の前記上端側に設けられ植物が植栽される土壌を収容する植栽部とを備えた緑化ユニットであって、
前記貯水部は、前記側壁の前記底板と繋がる下端側が前記上端側よりも内側に配されて形成されており、前記植栽部は、前記貯水部の前記上端側に着脱可能に載置され且つ積層可能な少なくとも一つの略筒状の側壁部と、貫通孔を有する略平板状の底板部とを備え、前記底板部が前記側壁部の内側に着脱可能に支持されつつ設置されて、前記貯水部の前記側壁及び前記底板で画成される空間と前記植栽部の側壁部及び底板部で画成され土壌を収容する空間とが前記貫通孔を介して連通していることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の緑化ユニットにおいて、
前記貯水部の前記側壁には、前記下端側に、前記上端側から前記下端に向かうに従い漸次内側に傾斜するテーパー部が設けられていることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の緑化ユニットにおいて、
前記側壁部が、略矩形筒状に形成されるとともに、4つの角部にそれぞれヒンジ部を備えて形成されていることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の緑化ユニットにおいて、
前記植栽部の前記土壌を収容する空間内に、上方側からの平面視で該空間を分割して区画する仕切部が設置されており、該仕切部は、略矩形平板状の複数の仕切板がそれぞれの前記仕切板に形成された係合溝を介して互いに交差するように分離可能に係合されて形成されていることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項5】
請求項4記載の緑化ユニットにおいて、
前記仕切板には、前記仕切部で分割して区画した前記空間を連通させる切欠部が設けられていることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の緑化ユニットにおいて、
前記底板部には、前記貯水部に貯留した水を、前記貫通孔を通じて前記土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることを特徴とする緑化ユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の緑化ユニットを備えた緑化システムであって、
複数の前記緑化ユニットが、隣り合う前記緑化ユニットの前記側壁部を接触させて上方からの平面視に隙間なく人工地盤上に並べられて敷設されていることを特徴とする緑化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−189910(P2007−189910A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8558(P2006−8558)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】