説明

緑化基盤及びその製造方法

【課題】緑化基盤の変形や形崩れ等を防止し、手指によって壁面パネルの溝内に緑化基盤を容易に挿入することができる緑化基盤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】壁面緑化用植物の緑化基盤(11)は、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体(1)の外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝(10)内に収容される。緑化基盤は、溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体(20)と、固化培土の形状保持力を高めるために、溝の長手方向に延びる成形体の角部領域を被覆する外装被覆材(14)とを有する。溝の長手方向に延びる成形体の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分(12,13)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化基盤及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、壁体外面の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤及びその製造方法に関するものである。本発明は又、このような緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物等の壁面緑化及び屋上緑化が、ヒートアイランド現象緩和、美観向上、環境負荷軽減等の観点より、近年殊に、注目されている。壁面緑化方法として、付着根を有するつる植物を自立登攀させて壁面を覆う登攀式壁面緑化法、屋上、ベランダ等に設置したプランターから植物を垂らして壁面を緑化する垂下式壁面緑化法、ワイヤー等の補助材を用いてつる植物を登攀又は下垂させて壁面を緑化する補助材式壁面緑化法(特開2004-267084号公報)、つる植物を誘引・巻付け可能なユニットを用いたユニット式壁面緑化法(特開2004-254565号公報)、更には、壁面緑化専用の植栽済み緑化パネルを用いて壁面を早期に緑化する立体基盤式壁面緑化法(特開2003-155714号公報、特開2001-169658号公報)等が知られている。
【0003】
従来の緑化法は、建築物の壁面等の外側に緑化設備又は緑化構造を付加的に配設する構成を採用したものであり、建築物の外装は、壁体等の建築構造体と、緑化専用の緑化設備又は緑化構造とからなる二重構造を有する。これに対し、壁面を構成する壁材自体を利用した壁面緑化法が、特開平9-324434号公報及び特開2006-225907号公報に記載されている。特開平9-324434号公報に記載された生態系育成用パネルは、吸水機能及び保水機能を有する詰物を中空部に充填した構造を有する。また、特開2006-225907号公報に記載された押出成形板は、保水性を有する壁面緑化用ガーデンマットを外面に取付け可能な構造を有する。
【特許文献1】特開2004-267084号公報
【特許文献2】特開2004-254565号公報
【特許文献3】特開2003-155714号公報
【特許文献4】特開2001-169658号公報
【特許文献5】特開平9-324434号公報
【特許文献6】特開2006-225907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように壁材自体によって緑化設備又は緑化構造を形成する壁面緑化法によれば、緑化設備又は緑化構造を壁体の外側に更に構築することを要しないので、外壁の構造を簡素化するとともに、緑化設備又は緑化構造を含む外壁全体の壁厚を低減することが可能となる。
【0005】
しかし、特許文献5に開示された緑化構造は、給水・保水機能を有する詰物のみを中空パネル内の中空部に充填し、連通穴によって壁体外面の植物に水分を補給するように構成されているにすぎず、植物の根は、従来の緑化構造と同じく、壁体の外側に配置される。このため、特許文献5の緑化構造によれば、植栽基盤としての表面化粧材を壁体外面に接着することにより、植栽基盤を壁体外面に付加的に設けなければならない。このような緑化構造では、農場等で予め育苗又は育成した植物を植栽可能な緑化基盤を用いることは困難である。
【0006】
特許文献6に記載された緑化構造は、特殊なアタッチメントによって壁面緑化用のガーデンマットを押出成形板の外面に取付けた構造のものであり、比較的複雑なガーデンマット支持構造が必要とされる。しかも、ガーデンマット全体が押出成形板の外側に露出するので、ガーデンマットは、高い強度、耐久性及び耐候性等を要求される。このため、ガーデンマット自体の構造に関する特別の配慮ないし対策が必要とされる。
【0007】
このため、本発明者等は、緑化基盤を収容可能な前面開口形の溝を水平且つ平行なリブによって形成した押出成形板等の外装パネル材料を用い、溝内に収容した緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造を開発し、特願2010-224529号において提案している。この壁面緑化構造によれば、予め植栽した緑化基盤等を溝内に収容することにより壁面を緑化することができる。
【0008】
しかしながら、本発明者等は、このような壁面緑化構造の開発過程において、緑化基盤を溝内に収容する際に手指の圧力等で緑化基盤が崩れ又は破損し易いという問題に遭遇するに至った。殊に、緑化基盤を溝内に挿入する際、リブの突条部分によって溝内への緑化基盤の挿入が妨げられることから、緑化基盤を強引に溝内に挿入しようとすると、緑化基盤の角部が変形し又は形崩れしたり、過大な局所歪み等により緑化基盤が部分的に崩壊することがあり、このため、緑化基盤を容易に溝内に挿入し難いという問題が生じた。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、緑化基盤の変形や形崩れ等を防止し、手指によって壁面パネルの溝内に緑化基盤を容易に挿入することができる緑化基盤及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明は又、このような緑化基盤を壁面パネルの溝内に緑化基盤を挿入してなる壁面緑化構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体(20)からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝(10)内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤(11)において、
前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体と、
前記固化培土の形状保持力を高めるために、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域を被覆する外装被覆材(14)とを有することを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤を提供する。
【0012】
本発明の上記構成によれば、緑化基盤の角部が外装被覆材によって補強されるので、緑化基盤を溝内に挿入する際に生じ得る緑化基盤の角部の変形又は形崩れや、緑化基盤の歪み等による緑化基盤の部分的崩壊を確実に防止することができる。外装被覆材は、輸送時の緑化基盤の損傷を防止する上でも有利である。
【0013】
好ましくは、上記成形体の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分(12,13)が形成される。面取り部分又はベベルエッジ部分の形成により、緑化基盤の角部の突出がなくなるので、緑化基盤を溝内に挿入する際、緑化基盤の角部とリブの突条部分とを衝合又は当接させることなく、緑化基盤を比較的容易に溝内に挿入することができる。
【0014】
本発明は又、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤において、
前記成形体は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した前記固化培土からなり、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤を提供する。
【0015】
本発明の上記構成によれば、面取り部分又はベベルエッジ部分により、緑化基盤の角部の突出がなくなるので、緑化基盤を溝内に挿入する際、緑化基盤の角部とリブの突条部分とを衝合又は当接させることなく、緑化基盤を比較的容易に溝内に挿入することができる。
【0016】
本発明は更に、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤において、
前記成形体は、全体的に直方体形状に賦形され且つ外装被覆材によって長手方向の縁部を被覆された固化培土からなり、前記成形体の前面下部又は背面上部に位置する前記縁部の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されており、前記成形体の前面には、前記植物が植栽されることを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤を提供する。
【0017】
本発明の上記構成によれば、緑化基盤の角部が外装被覆材によって補強されるので、緑化基盤を溝内に挿入する際に生じ得る緑化基盤の角部の変形又は形崩れや、緑化基盤の歪み等による緑化基盤の部分的崩壊を確実に防止することができ、しかも、面取り部分又はベベルエッジ部分により、緑化基盤の角部の突出がなくなるので、緑化基盤を溝内に挿入する際、緑化基盤の角部とリブの突条部分とを衝合又は当接させることなく、緑化基盤を比較的容易に溝内に挿入することができる。
【0018】
他の観点より、本発明は、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を成形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤を製造する緑化基盤の製造方法において、
外界環境に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙(70)を下型(50)の成形空間(F)内に敷設し、
熱融着性繊維を配合した培土基材(S)を前記成形空間に投入し、
上型(60)を前記下型に組付けるとともに、該上型によって前記培土基材を加圧し、
前記不織布及び培土基材を収容した前記下型及び上型を加熱処理して前記熱融着繊維を溶融し、
前記上型及び下型を冷却し、前記不織布又は紙によって被覆してなる固化培土の成形体を脱型することを特徴とする緑化基盤の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の上記構成によれば、上記成形体の角部領域を外装被覆材によって比較的容易に被覆することができる。
【0020】
好ましくは、上記溝の長手方向に延びる緑化基盤の角部領域に面取り部分又はベベルエッジ部分を形成するためのインサート部材(56,66)が下型又は上型の一方又は双方に配置され、インサート部材の斜面によって成形体の角部領域に面取り部分又はベベルエッジ部分が形成される。
【0021】
本発明は又、壁面緑化用植物を植栽可能な培土を成形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤を製造する緑化基盤の製造方法において、
前記溝の長手方向に延びる前記緑化基盤の角部領域に面取り部分又はベベルエッジ部分を形成するためのインサート部材を下型又は上型の一方又は双方に配置し、
熱融着性繊維を配合した培土基材を前記下型の成形空間内に投入し、
前記上型を前記下型に組付けるとともに、該上型によって前記培土基材を加圧し、
前記培土基材を収容した前記下型及び上型を加熱処理して前記熱融着繊維を溶融し、
前記上型及び下型を冷却し、前記インサート部材の斜面によって前記面取り部分又はベベルエッジ部分を前記角部領域に形成した固化培土の成形体を脱型することを特徴とする緑化基盤の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の上記構成によれば、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分を緑化基盤の角部領域に比較的容易に形成することができる。
【0023】
更に他の観点より、本発明は、壁面緑化用植物を植栽した緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造において、
前記壁面は、外界に開放し且つ横方向又は水平方向に延びる前面開口形の溝を有する建築構造物又は土木構造物の外装パネル材により形成され、
前記植物を植栽した前記緑化基盤が前記溝内に収容され且つ保持され、前記植物を前記溝の前面開口(10a)から外界に露出せしめ、
前記緑化基盤は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体と、前記固化培土の形状保持力を高めるために、前記溝の長手方向に延びる角部領域を少なくとも被覆する外装被覆材とを有することを特徴とする壁面緑化構造を提供する。
【0024】
好ましくは、上記溝の長手方向に延びる成形体の角部領域には、角部の突出を解消する面取り部分又はベベルエッジ部分が形成される。
【0025】
本発明は又、壁面緑化用植物を植栽した緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造において、
前記壁面は、外界に開放し且つ横方向又は水平方向に延びる前面開口形の溝を有する建築構造物又は土木構造物の外装パネル材により形成され、
前記植物を植栽した前記緑化基盤が前記溝内に収容され且つ保持され、前記植物を前記溝の前面開口から外界に露出せしめ、
前記緑化基盤は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体からなり、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消する面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする壁面緑化構造を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の緑化基盤によれば、緑化基盤の変形や形崩れ等を防止し得るので、手指によって壁面パネルの溝内に緑化基盤を比較的容易に挿入することができる。本発明の緑化基盤製造方法によれば、このような緑化基盤を比較的容易に製造することができる。また、本発明の壁面緑化構造によれば、緑化基盤の変形や形崩れ等を防止し、手指によって壁面パネルの溝内に緑化基盤を容易に挿入することができ、しかも、工期の短縮、施工性の向上、施工コストの削減、壁面の構造の簡素化、緑化構造を含む壁体全体の壁厚の低減等の利点が更に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の緑化基盤を挿入可能な溝を有する建築外装パネルを示す縦断面図及び部分拡大断面図である。
【図2】図2は、図1に示す建築外装パネルの正面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す建築外装パネルを用いて形成された壁面緑化構造を示す縦断面図及び部分拡大断面図である。
【図4】図4は、図3に示す壁面緑化構造の正面図である。
【図5】図5は、緑化基盤を緑化基盤保持空間内に挿入する際の動作を示す縦断面図及び部分拡大断面図である。
【図6】図6は、緑化基盤の構造を例示する正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図及び右側面図である。
【図7】図7は、図6のI−I線及びII−II線における緑化基盤の断面図である。
【図8】図8は、植物を植栽した育苗用固化培土を緑化基盤に移植する態様を示す斜視図である。
【図9】図9は、緑化基盤の製造に使用される下型の縦断面図、平面図及び横断面図である。
【図10】図10は、下型に組付けられる上型の平面図、縦断面図及び横断面図である。
【図11】図11は、外装被覆材の素材を示す平面図及び斜視図である。
【図12】図12は、不織布及び接着用シートを下型内に敷設した状態を示す縦断面図及び横断面図である。
【図13】図13は、培土基材を下型内に投入した状態を示す縦断面図及び横断面図である。
【図14】図14は、上型を下型に組付けた状態を示す縦断面図及び横断面図である。
【図15】図15は、培土基材のプレス工程を示す縦断面図及び横断面図である。
【図16】図16は、加熱装置による加熱処理工程を概略的に示す立面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の緑化基盤に係る好適な実施形態によれば、上記成形体は、熱融着性繊維を培土基材に配合した培土基材を加熱処理により固化してなる固化培土からなり、上記外装被覆材は、外界雰囲気に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙からなり、固化培土の表面に接着される。
【0029】
好ましくは、上記溝は、壁体外面に突設したリブによって形成され、リブは、緑化基盤が溝から脱落するのを阻止すべく溝の前面に配設され且つ溝の前面開口内に突出する上向き又は下向きの突条(5b,5c)を有する。上記面取り部分又はベベルエッジ部分は、成形体を溝内に挿入するときに生じ得る成形体と突条との衝合又は当接を回避すべく、成形体の前面下部及び/又は背面上部の角部領域に形成される。更に好ましくは、成形体は、溝の前面開口を介して外界に開放した開孔部(21)を有し、植物の根鉢部分(26)が開孔部内に挿入される。
【0030】
本発明の緑化基盤製造方法に係る好適な実施形態によれば、成形空間内の不織布又は紙の上に熱可塑性樹脂の接着用シート(80)が敷設された後、培土基材が成形空間内に投入される。接着用シートは、加熱処理により可塑化し、固化培土と不織布又は紙とを接着する。
【0031】
本発明の壁面緑化構造に係る好適に実施形態によれば、成形体は、熱融着性繊維を配合した培土基材を加熱処理により固化してなる固化培土であり、外装被覆材は、外界雰囲気に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙からなる。外装被覆材は、固化培土の表面に接着される。更に好ましくは、溝は、壁体外面に突設したリブによって形成され、リブは、緑化基盤が前記溝から脱落するのを阻止すべく溝の開口部に沿って配設され且つ開口部内に突出する上向き又は下向きの突条を有する。面取り部分又はベベルエッジ部分は、成形体を溝内に挿入するときに生じ得る成形体と突条との衝合又は当接を回避すべく、成形体の前面下部及び/又は背面上部の角部領域に形成される。
【0032】
本発明の壁面緑化構造に係る更に好適な実施形態によれば、突条は、溝の前面開口部の上端部及び下端部に配設され、緑化基盤の上面に近接する下向き突条の背後領域には、緑化基盤の植物に給水すべく、溝の長手方向に延びる灌水用配管(30)が配置され、前面開口の下端部に配置された上向き突条は、灌水用配管が吐出した給水の余剰水を滞留させる液溜を形成するとともに、液溜の余剰水を下向き突条の外側に流出させる切欠き部(7)を有し、切欠き部を介して下向き突条の外側に流出した余剰水は、下方に位置する溝に流下し、下側の溝に収容された緑化基盤の植物に供給される。
【0033】
好ましくは、外装パネル材(1)は、押出成形セメント板からなり、溝は、押出成形板の外面に上下間隔を隔てて突設された平行なT形リブ(5)によって形成される。
【実施例1】
【0034】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の緑化基盤を挿入可能な溝を有する建築外装パネルを示す縦断面図及び部分拡大断面図であり、図2は、図1に示す建築外装パネルの正面図である。図3及び図4は、図1及び図2に示す建築外装パネルを用いて形成された壁面緑化構造を示す縦断面図及び正面図である。
【0036】
建築外装パネル1は、セメント、けい酸質原料及び繊維質原料の混合物を板状に押出成形し且つオートクレーブ養生してなる正面視矩形の押出成形セメント板からなり、幅W1=600mm〜900mm、厚さT1=50mm〜100mm、長さL1=1000mm〜5000mmの範囲内の外形寸法、例えば、幅W1=600mm、厚さT1=60mm、長さL1=3000mmの外形寸法を有する。押出成形セメント板又はその基材として、株式会社ノザワ製「アスロック」(登録商標)を好適に使用し得る。
【0037】
パネル1は、間隔を隔てて配置され且つ長手方向に延びる中空部2と、上端面に突設された凸部3と、下端面に形成された凹所4とを有する。所定間隔を隔てた複数のT形リブ5がパネル1の外側面に突設される。リブ5は、パネル1の幅方向に間隔を隔てて互いに平行に配置され、パネル1の長手方向に延びており、リブ5の間に前面開口形の溝を形成する。本例のパネル1は、リブ5をパネル1の基材とともに一体的に押出成形してなる一体成形パネルである。各リブ5は、中空部6を備えた基部5aと、基部5aの先端部から上下方向に延びる上向き及び下向きの突条5b、5cとを有する。基部5a及び突条5b、5cは、パネル1の全長に亘って延在する。
【0038】
図1(B)に示すように、上下に間隔を隔てたリブ5の間に形成された前面開口形の溝は、緑化基盤1(図3)を挿入可能な緑化基盤保持空間10を形成する。緑化基盤保持空間10は、下側の基部5aの上面5dと、下側の突条5bの内側面5hと、上側の基部5aの下面5eと、上側の突条5cの内側面5iと、パネル本体の前面(正面)5fとによって画成される。上面5dには、水勾配が付けられており、上面5dは外方且つ下方に傾斜する。上面5dの両端部には、図2に破線で示す如く、堰8が形成される。堰8は、上面5d上の水が上面5dの端部から流出するのを阻止する。上面5dと上向き突条5bとの境界部分には、パネル1の長手方向に延びる排水溝5gが形成される。
【0039】
図2に示す如く、下側の突条5bには、所定間隔を隔てて切欠き部7が形成される。切欠き部7は、所定間隔(例えば、200mm〜500mmの間隔)を隔てて配置される。切欠き部7は、各段のリブ5に形成されるが、上下方向に隣り合う切欠き部7は、上下に整列せず、互いにずれた位置に配置されており、従って、切欠き部7は、上下方向に千鳥配列に配置される。
【0040】
図1に示すように、リブ5は、最上部及び最下部のリブ5を除き、上下対称の断面形状を有し、下面5eは、外方且つ上方に傾斜して下向き突条5cに連接する。突条5b、5cの内側面5h、5iは前面5fと平行であり、内側面5h、5iは、緑化基盤保持空間10内の緑化基盤11(図3)が緑化基盤保持空間10から脱落するのを阻止する。かくして、緑化基盤保持空間10は、上面5d、下面5e、前面5f及び内側面5h、5iによって画成された台形輪郭の断面を有し、突条5b、5cの間には、緑化基盤保持空間10を外界に開放する前面開口10aが形成される。緑化基盤保持空間10及び前面開口10aは、パネル1の全長に亘って延在する。
【0041】
図3に示す如く、パネル1は、ボルト等の固定具101によってZクリップ等の留め具102に係留される。留め具102は、アングル形鋼等の下地材103に固定され、下地材103は、鋼製ブラケット等(図示せず)によって建築物の鉄骨柱104に固定される。パネル1は、横張り形態に建築物の外面に施工され、上下方向に隣接するパネル1は、下側のパネル1の凸部3と上側のパネルの凹所4との嵌合により、相互連結される。パネル1同士の間に形成される縦目地及び横目地には、ガスケットの介挿、シーリング剤充填等の目地処理105がなされる。
【0042】
図3及び図4には、植物を植栽した緑化基盤11を緑化基盤保持空間10内に収容した状態が示されている。図3に示す緑化基盤11の断面は、溝(緑化基盤保持空間10)と直交する断面であり、緑化基盤11は全体的に多角形断面(本例では、長方形又は4角形断面)を有する。植物は、緑化基盤保持空間10の前面開口10aから外界に露出し、外界環境下に生育し、パネル1の外側面を緑化する。各パネル1の最も上部に位置する緑化基盤保持空間10には、灌水パイプ30が配置される。灌水パイプ30は、リブ5の下面e及び内側面5iの連接部に沿って緑化基盤保持空間10の上部に配置され、パネル1の長手方向に延びる。
【0043】
灌水パイプ30は、制御弁等の制御装置(図示せず)を介して給水源(図示せず)に連結される。灌水パイプ30には、多数の給水口(図示せず)が間隔を隔てて配設されており、灌水パイプ30に面する最上段の緑化基盤11に給水する。灌水パイプ30として、例えば、圧力調整機能を有するラムホース等の灌水パイプを好適に使用し得る。灌水パイプ30の給水口から吐出した水は、緑化基盤保持空間10内の緑化基盤11に給水される。
【0044】
給水の一部は、最上段の緑化基盤11に吸収され、給水の残部は、余剰水として下面5d上に流下し、下面5dの水勾配によって排水溝5gに溜まる。排水溝5gの水は、切欠き部7からリブ5の垂直外面5jに流出し、垂直外面5jに沿って流下する。垂直外面5jを流下した水は、内方に傾斜した突条5cの傾斜面5kに沿って更に流下し、湾曲した突条5cの下端縁5mから下段の緑化基盤保持空間10内に滴下し、下段の緑化基盤11に供給される。この緑化基盤11に供給された水の一部(余剰水)も又、同様に排水溝5g及び切欠き部7から流出し、更に下段の緑化基盤保持空間10内の緑化基盤11に供給される。
【0045】
このような壁面緑化構造によれば、パネル1の施工により、建築物の壁面と、緑化基盤11を壁面に保持するための緑化基盤保持空間10とを同時に形成することができるので、工期の短縮、施工性の向上、施工コストの削減等の利点が得られる。また、このような壁面緑化構造は、緑化構造を建築物の壁体に組み込んだ構成を有するので、緑化構造を含む壁面の構造を簡素化し、或いは、緑化構造を含む壁体全体の壁厚を低減することができ、しかも、極めて安定した各緑化基盤11の支持を確保することができる。
【0046】
このような壁面緑化構造においては、緑化基盤11は、パネル1の施工完了後に緑化基盤保持空間10内に手指で挿入される。緑化基盤11は、緑化基盤保持空間10と直交する断面を多角形断面(本例では、長方形又は4角形断面)に賦形した固化培土の成形体からなり、後述する如く熱融着性繊維の配合及び加熱処理により補強されるものの、非常に脆弱且つ低強度の素材である。例えば、ピートモス等を主材とする上記固化培土は、このような補強繊維を混入したとしても、手指で容易に変形し又は崩れる性質を依然として有する。しかも、緑化基盤保持空間10を画成する突条5h、5iが緑化基盤11の挿入を妨げるので、緑化基盤11を緑化基盤保持空間10内に挿入する際に緑化基盤11が損傷し又は破損し易い。
【0047】
このような挿入時の緑化基盤11の損傷又は破損を防止すべく、本例の緑化基盤11は、角部の突出を解消するための面取り部分(ベベルエッジ部分)12、13を角部領域に備えるとともに、少なくとも角部領域を被覆する外装被覆材14を備える。面取り部分12、13は、緑化基盤11の前面下部及び背面上部に形成され、緑化基盤11の角部領域に傾斜面(ベベル面)を形成する。面取り部分12、13は、緑化基盤11の中心に対して点対称に緑化基盤11の表面に配置され、緑化基盤11の全長に亘って、緑化基盤保持空間10の長手方向に延びる。外装被覆材14は、外界雰囲気に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙からなる。
【0048】
図5は、緑化基盤11を緑化基盤保持空間10内に挿入する際の動作を示す縦断面図及び部分拡大断面図である。
【0049】
緑化基盤11を緑化基盤保持空間10に挿入する際、緑化基盤11の正面下部及び背面上部は、突条5b、5cに干渉するので、緑化基盤11は、図5(A)に示す如く、正面(前面)を若干下方に向けて傾斜させた姿勢で緑化基盤保持空間10内に挿入される。緑化基盤11の背面上部に形成された面取り部分13は、図5(B)に示す如く、突条5cの下側を移行し、突条5cに衝合ないし当接せずに緑化基盤保持空間10内に移動する。同様に、緑化基盤11の正面下部に形成された面取り部分12は、図5(C)に示す如く、突条5bの上側を移行し、突条5bに衝合ないし当接せずに緑化基盤保持空間10内に移動する。従って、突条5b、5cとの衝合又は当接による緑化基盤11の損傷又は破損を未然に防止することができる。しかも、緑化基盤11は、外装被覆材14によって被覆されているので、挿入時の手指の圧力で緑化基盤11の基材(ピートモス等)が損傷し又は変形するのを防止することができる。
【0050】
図6は、緑化基盤11の構造を例示する正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図及び右側面図であり、図7は、図6のI−I線及びII−II線における緑化基盤11の断面図であり、図8は、植物を植栽した育苗用固化培土を緑化基盤11に移植する態様を示す斜視図である。
【0051】
図6及び図7に示すように、緑化基盤11は、中心線CL上に等間隔に整列配置された複数(本例では4つ)の移植用貫通穴21を備えた全体的に直方体形状の基盤本体と、基盤本体を被覆する外装被覆材14とから構成される。移植用貫通穴21は、全長に亘って均一な真円形断面を有し、移植用開孔部を緑化基盤11の前面に形成する。外装被覆材14は、緑化基盤11の正面(前面)、背面(裏面)、上面及び下面を被覆する。緑化基盤11の両端面には、基盤本体の固化培土が露出する。外装被覆材14は、貫通穴21と整合する円形開口75を有する。前述のとおり、緑化基盤11の角部領域(前面下部及び背面上部)には、面取り部分12、13が形成される。緑化基盤11及び面取り部分12、13の各部寸法は、例えば、以下のとおり設定される。
【0052】
緑化基盤11の幅W2=90mm
緑化基盤11の厚さT2=30mm
緑化基盤11の長さL2=300mm
面取り部分12、13の幅方向寸法W3=10mm
面取り部分12、13の厚さ方向寸法T3=7mm
移植用貫通穴21の直径D=40mm
円形開口75の直径D"=45mm
【0053】
図8には、農場等で予め植物を育苗したセル苗又はポット苗25を緑化基盤11に移植する態様が示されている。セル苗又はポット苗25は、根鉢部分26を移植用貫通穴21内に挿入することにより緑化基盤11に移植される。セル苗又はポット苗25を移植した緑化基盤11は、図5に示すとおり、パネル1の緑化基盤保持空間10内に挿入される。なお、緑化基盤11を緑化基盤保持空間10内に挿入した後にセル苗又はポット苗25を移植用貫通穴21内に挿入しても良い。
【0054】
次に、このような緑化基盤11の製造方法について説明する。
【0055】
図9は、緑化基盤11の製造に使用される下型の縦断面図、平面図及び横断面図であり、図10は、上型の平面図、縦断面図及び横断面図である。
【0056】
緑化基盤11を製造するための頂部開口形の下型50が図9に示されている。下型50は、水平な底面を形成する底壁51と、左右の側壁52と、両端の端壁53と、移植用貫通穴21を形成するための複数の円柱形コア55とを備える。下型50内に形成された直方体の成形空間Fは、緑化基盤11の幅W2及び長さL2と一致する平面寸法を有する。底壁50は、多数の円形貫通孔を有する有孔金属板からなり、側壁52及び端壁53は、垂直な側壁面及び端壁面を形成する金属板からなる。コア55は、中心線CL上に等間隔に整列配置される。各コア55は、移植用貫通穴21の直径Dと一致する直径の真円形断面を全高に亘って有する。
【0057】
底壁51と、一方の側壁52との連接部には、下型50の全長に亘ってインサート56が配設される。インサート56は、面取り部分13の面取り部分12を面取り加工するためのものであり、面取り部分12の幅W3、厚さT3と一致する底辺寸法及び高さ寸法の直角三角形断面を有する
【0058】
図10には、下型50内に挿入される上型60の構造が示されている。上型60は、直方体形状の上型本体61と、上型本体61の上面に一体的に立設された直方体形状の押圧部材62、63とから構成される。円柱形コア55を挿通可能な複数の円形開口65が、中心線CL上に等間隔に整列配置される。各円形開口65は、移植用貫通穴21の直径Dよりも僅かに大きい直径D'の真円形断面を全高に亘って有する。
【0059】
上型本体61の下面には、インサート66が配設される。インサート66は、上型本体61の側縁に沿って連続し、上型本体61の全長に亘って延在する。インサート66は、面取り部分13を面取り加工するためのものであり、面取り部分13の幅W3、厚さT3と一致する底辺寸法及び高さ寸法の直角三角形断面を有する
【0060】
図11は、外装被覆材14の素材を示す平面図及び斜視図である。外装被覆材14は、ビニロン繊維、ポリエステル繊維等を原料とした不織布70からなり、不織布70として、耐候性や耐久性等を要求される土木資材等の用途に使用される不織布、例えば、東洋紡績株式会社製不織布「スパンボンド」、株式会社クラレ製ビニロン紙「BFN No.1」「BFN No.2」等を好適に使用し得る。
【0061】
不織布70は、緑化基盤11の長さL2と実質的に同一もしくは僅かに小さい長さL2'を有する。不織布70には、中心線CLに沿って複数の円形開口75が形成される。円形開口75の中心間隔は、コア55及び円形開口65の中心間隔と一致する。円形開口75は、図6に示す如く、移植用貫通穴21の直径Dよりも僅かに大きい直径D"を有する。
【0062】
また、図11に括弧書き符号で示されるように、不織布70と同一の寸法及び形状を有する接着用シート80が用意される。接着用シート80は、円形開口75と整合する円形開口85を有する。接着用シート80は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂からなるシート状のホットメルト接着剤(融点150℃以下)であり、例えば、呉羽テック株式会社製接着用シートLNS3010等を好適に使用し得る。
【0063】
図12〜図16には、緑化基盤11の成形工程が示されている。図12は、不織布70及び接着用シート80を下型50内に敷設した状態を示す縦断面図及び横断面図であり、不織布70は一点鎖線で図示され、接着用シート80は二点鎖線で図示されている。図13は、培土基材を下型内に投入した状態を示す縦断面図及び横断面図である。図14は、上型を下型に組付けた状態を示す縦断面図及び横断面図である。図15は、上型を用いたプレス工程を示す縦断面図及び横断面図である。図16は、加熱装置による加熱処理工程を概略的に示す立面図である。
【0064】
先ず、不織布70が下型50内に敷設され、次いで、接着用シート80が、不織布70の上に重なるように下型50内に敷設される。不織布70は、成形空間Fの底面及び側壁面に沿って下型50内に敷設され、コア55は、不織布70及び接着用シート80の円形開口75、85を貫通する。
【0065】
かくして不織布70及び接着用シート80を下型50内に敷設した後、図13に示すように、緑化基盤11の基材を成形するための培土基材Sが下型50内に投入される。
【0066】
本例において、培土基材Sは、以下の原料を配合し、ミキサー等によって混合・攪拌することにより調整された育苗用培土からなる。
ピートモス(水苔由来天然繊維) 約50重量%
パーライト(真珠岩焼成発泡品) 約10重量%
炭酸苔土石灰(石灰石由来肥料) 約2重量%
粘土鉱物(火山灰系粘土鉱物) 約20重量%
熱融着性繊維(ポリエステル繊維) 約15重量%
【0067】
このように熱融着性繊維を混合した育苗用培土については、例えば、特開2002-58340号公報、特開2003-339226号公報等に記載されており、熱融着性繊維の溶融・軟化による繊維同士の接着や、繊維と他の成分との接着により三次元の網目状補強構造を形成し、これにより、培土を固化するとともに、ある程度の形状保持力を発揮する性質を有する。但し、固化後の培土は、手指等によって比較的容易に崩れる脆弱な性状を依然として有する。このような育苗用培土は、例えば、みのる産業株式会社製「エクセルソイル」として市場で入手することができる。なお、調整後の培土基材Sは、所望により加水処理を行った後、図13に示すように下型50内に投入される。
【0068】
下型50の頂部開口内に上型60を挿入した状態が図14に示されている。下型50の下面は、培土基材S上に押付けられる。培土基材Sから上方に延びる不織布70及び接着用シート80の縁部は、培土基材Sの上面の側縁部に重なるように折り曲げられる。このように上型60及び下型50にセットした後、図15に示す如くプレス圧Pが上型60に加えられる。プレス圧Pは、汎用のプレス機等によって上型60に加えられる。
【0069】
上型60及び下型50は、プレス機等による加圧工程を経た後、図16に示す如く加熱装置90による加熱処理工程を受ける。加熱装置90は、上型60及び下型50を搬送する搬送装置91と、搬送装置91上の上型60及び下型50を約100℃の水蒸気によって加熱する加熱部92とを備える。下型50内の不織布70、接着用シート80及び培土基材Sは、底壁51の貫通孔を介して下型50内に作用する水蒸気の潜熱・顕熱と、下型50を介して倍土基材Sに熱伝達する水蒸気の顕熱とによって加熱される。培土基材Sは、熱融着性繊維の溶融・軟化して、繊維同士や、繊維と他の成分とを接着し、加熱装置90を出た後に自然冷却して固化する。また、接着用シート80は熱融解し、加熱装置90を出た後に自然冷却して培土基材Sの外面に不織布70を接着する。
【0070】
培土基材Sの冷却・固化後、上型60は下型50から取外され、培土基材Sを不織布70によって被覆してなる緑化基盤11が、下型50から脱型される。
【0071】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0072】
例えば、固化培土として、ソッドピート、ピートブロック、サントリーホールディングス株式会社製「パフカル」(登録商標)等を使用しても良い。
【0073】
また、移植用貫通穴の数、形状、サイズや、外装被覆材の被覆範囲等は、適宜設計変更し得るものであり、例えば、移植用貫通穴は、緑化基盤を貫通しない非貫通穴又は凹所として形成して良い。
【0074】
更に、建築外装パネルの外面は、垂直な配置に限定されるものではなく、傾斜した状態に配置したものであっても良い。
【0075】
また、上記加熱装置として、オートクレーブ等の蒸気加熱装置を使用しても良く、また、成形空間は、任意の形式・構造の型材又は型枠により形成しても良い。
【0076】
また、前述の実施例では、緑化基盤の前面を全体的に被覆し、緑化基盤の背面を部分的に被覆しているが、緑化基盤の背面を全体的に被覆し、緑化基盤の前面を部分的に被覆するようにして良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、建築物等の外壁面を緑化するための緑化基盤及びその製造方法に適用される。本発明の緑化基盤によれば、緑化基盤の変形や形崩れ等を防止し、手指によって壁面パネルの溝内に緑化基盤を容易に挿入することができ、本発明の緑化基盤製造方法によれば、このような緑化基盤を製造することができる。本発明は又、建築物等の外壁面を緑化するための壁面緑化構造に適用される。本発明の壁面緑化構造によれば、建築外装パネルの施工により、建築物の壁面と、緑化基盤を壁面に保持するための緑化基盤保持空間とを同時に形成することができるので、工期の短縮、施工性の向上、施工コストの削減等を図ることができる。また、このような壁面緑化構造は、緑化構造を建築物の壁体に組み込んだ構成を有するので、緑化構造を含む壁面の構造を簡素化し、或いは、緑化構造を含む壁体全体の壁厚を低減することができ、しかも、極めて安定した各緑化基盤の支持を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1 建築外装パネル
5 T形リブ
5b、5c 突条
7 切欠き部
10 緑化基盤保持空間
10a 前面開口
11 緑化基盤
12、13 面取り部分(ベベルエッジ部分)
14 外装被覆材
20 成形体
21 移植用貫通穴
25 セル苗又はポット苗
26 根鉢部分
30 灌水パイプ
50 下型
55 円柱形コア
56、66 インサート
60 上型
70 不織布又は紙
80 接着用シート
90 加熱装置
S 培土基材
P プレス圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤において、
前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体と、
前記固化培土の形状保持力を高めるために、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域を被覆する外装被覆材とを有することを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤。
【請求項2】
壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤において、
前記成形体は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した前記固化培土からなり、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤。
【請求項3】
前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする請求項1に記載の緑化基盤。
【請求項4】
前記成形体は、熱融着性繊維を培土基材に配合した培土基材を加熱処理により固化してなる固化培土からなり、前記外装被覆材は、外界雰囲気に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙からなり、前記固化培土の表面に接着されていることを特徴とする請求項1又は3に記載の緑化基盤。
【請求項5】
前記溝を形成するように前記壁体外面に突設したリブは、前記緑化基盤が前記溝から脱落するのを阻止すべく前記溝の前面開口に配設され且つ該溝の前面開口内に突出する上向き又は下向きの突条を有し、前記面取り部分又はベベルエッジ部分は、前記成形体を前記溝内に挿入するときに生じ得る該成形体と前記突条との衝合又は当接を回避すべく、前記成形体の前面下部及び/又は背面上部の角部領域に形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の緑化基盤。
【請求項6】
前記成形体は、前記溝の前面開口を介して外界に開放した開孔部を有し、前記植物の根鉢部分が前記開孔部内に挿入されることを特徴とする請求項1乃至5に記載の緑化基盤。
【請求項7】
壁面緑化用植物を植栽可能な培土を賦形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤において、
前記成形体は、全体的に直方体形状に賦形され且つ外装被覆材によって長手方向の縁部を被覆された固化培土からなり、前記成形体の前面下部又は背面上部に位置する前記縁部の角部領域には、角部の突出を解消するための面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されており、前記成形体の前面には、前記植物が植栽されることを特徴とする壁面緑化用植物の緑化基盤。
【請求項8】
壁面緑化用植物を植栽可能な培土を成形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤を製造する緑化基盤の製造方法において、
外界環境に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙を下型の成形空間内に敷設し、
熱融着性繊維を配合した培土基材を前記成形空間に投入し、
上型を前記下型に組付けるとともに、該上型によって前記培土基材を加圧し、
前記不織布及び培土基材を収容した前記下型及び上型を加熱処理して前記熱融着繊維を溶融し、
前記上型及び下型を冷却し、前記不織布又は紙によって被覆してなる固化培土の成形体を脱型することを特徴とする緑化基盤の製造方法。
【請求項9】
壁面緑化用植物を植栽可能な培土を成形した成形体からなり、壁体外面に形成され且つ外界に開放した前面開口形の溝内に収容される壁面緑化用植物の緑化基盤を製造する緑化基盤の製造方法において、
前記溝の長手方向に延びる前記緑化基盤の角部領域に面取り部分又はベベルエッジ部分を形成するためのインサート部材を下型又は上型の一方又は双方に配置し、
熱融着性繊維を配合した培土基材を前記下型の成形空間内に投入し、
前記上型を前記下型に組付けるとともに、該上型によって前記培土基材を加圧し、
前記培土基材を収容した前記下型及び上型を加熱処理して前記熱融着繊維を溶融し、
前記上型及び下型を冷却し、前記インサート部材の斜面によって前記面取り部分又はベベルエッジ部分を前記角部領域に形成した固化培土の成形体を脱型することを特徴とする緑化基盤の製造方法。
【請求項10】
前記溝の長手方向に延びる前記緑化基盤の角部領域に面取り部分又はベベルエッジ部分を形成するためのインサート部材を前記下型又は上型の一方又は双方に配置し、前記インサート部材の斜面によって前記成形体の前記角部領域に前記面取り部分又はベベルエッジ部分を形成することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記成形空間内の前記不織布又は紙の上に熱可塑性樹脂の接着シートを敷設した後、前記培土基材を前記成形空間内に投入し、前記加熱処理により前記接着シートを可塑化して前記固化培土と前記不織布又は紙とを接着することを特徴とする請求項8又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
壁面緑化用植物を植栽した緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造において、
前記壁面は、外界に開放し且つ横方向又は水平方向に延びる前面開口形の溝を有する建築構造物又は土木構造物の外装パネル材により形成され、
前記植物を植栽した前記緑化基盤が前記溝内に収容され且つ保持され、前記植物を前記溝の前面開口から外界に露出せしめ、
前記緑化基盤は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体と、前記固化培土の形状保持力を高めるために、前記溝の長手方向に延びる角部領域を少なくとも被覆する外装被覆材とを有することを特徴とする壁面緑化構造。
【請求項13】
壁面緑化用植物を植栽した緑化基盤によって壁面を緑化する壁面緑化構造において、
前記壁面は、外界に開放し且つ横方向又は水平方向に延びる前面開口形の溝を有する建築構造物又は土木構造物の外装パネル材により形成され、
前記植物を植栽した前記緑化基盤が前記溝内に収容され且つ保持され、前記植物を前記溝の前面開口から外界に露出せしめ、
前記緑化基盤は、前記溝と直交する断面を多角形断面に賦形した固化培土の成形体からなり、前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消する面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする壁面緑化構造。
【請求項14】
前記溝の長手方向に延びる前記成形体の角部領域には、角部の突出を解消する面取り部分又はベベルエッジ部分が形成されることを特徴とする請求項12に記載の壁面緑化構造。
【請求項15】
前記成形体は、熱融着性繊維を配合した培土基材を加熱処理により固化した固化培土からなり、前記外装被覆材は、外界雰囲気に対する耐候性及び耐久性を有する樹脂繊維を含む不織布又は紙からなり、該不織布又は紙は、前記固化培土の表面に接着されていることを特徴とする請求項12又は14に記載の壁面緑化構造。
【請求項16】
前記溝は、前記緑化基盤が前記溝から脱落するのを阻止すべく前記溝の前面開口に沿って配設され且つ該前面開口に突出する上向き又は下向きの突条を有し、前記面取り部分又はベベルエッジ部分は、前記成形体を前記溝内に挿入するときに生じ得る該成形体と前記突条との衝合又は当接を回避すべく、前記成形体の前面下部及び/又は背面上部の角部領域に形成されることを特徴とする請求項13又は14に記載の壁面緑化構造。
【請求項17】
前記溝は、前記緑化基盤が前記溝から脱落するのを阻止すべく前記溝の前面開口に沿って配設され且つ該前面開口に突出する上向き又は下向きの突条を有し、
前記突条は、前記溝の前面開口の上端部及び下端部に配設され、前記緑化基盤の上面に近接する前記下向き突条の背後領域には、前記緑化基盤の植物に給水すべく、前記溝の長手方向に延びる灌水用配管が配置され、
前記前面開口の下端部に配置された上向き突条は、前記灌水用配管が吐出した給水の余剰水を滞留させる液溜を形成するとともに、該液溜の余剰水を前記下向き突条の外側に流出させる切欠き部を有し、該切欠き部を介して前記下向き突条の外側に流出した余剰水は、下方に位置する前記溝に流下し、下側の前記溝に収容された緑化基盤の植物に供給されることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の壁面緑化構造。
【請求項18】
前記外装パネル材は、押出成形セメント板からなり、前記溝は、前記押出成形板の外面に上下間隔を隔てて突設された平行なT形リブによって形成されることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の壁面緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−130270(P2012−130270A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283835(P2010−283835)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(594071804)森ビル株式会社 (8)
【出願人】(000135335)株式会社ノザワ (52)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)
【Fターム(参考)】