説明

緑化装置

【課題】人工土壌の保水性を確保することができるとともに運搬や部品交換等の際における取り扱い性を向上させることができる緑化装置を提供すること。
【解決手段】収容体8は、枠体3に着脱可能とされ、枠体3への取着状態において、枠内周面6を構成する互いに対向する一対の横枠材5に枠内周面6の内側からそれぞれ臨む一対の横壁部10,11と、これら横壁部10,11における対象面2側の端部同士の間に連設され、前記取着状態において枠内周面6の開口または断面開口を遮蔽する底壁部12とを有し、一対の横壁部10,11および底壁部12がなす空間内に人工土壌7が収容されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化装置に係り、特に、構造物の対象面を植物を用いて緑化するのに好適な緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、景観緑三法の施行等により、自然木が少ない都市部をはじめとした各地における計画的な緑化が推進されるようになった。
【0003】
しかしながら、市街地や密集した住宅地等においては、樹木を植えるもしくは育成するための十分な敷地を確保することは非常に困難であった。
【0004】
このようなことから、緑化のための独立した敷地を要しない好適な場所として、建築物の壁面等の既存の構造物の外面が着目されるようになり、これまでにも、この種の構造物の外面を緑化するための種々の試みがなされてきた。
【0005】
例えば、特許文献1においては、上下横枠材、左右竪枠材、複数の仕切り枠材および底板によってフレーム枠を形成し、このフレーム枠に植物を育成するための人工土壌(特許文献1における植栽基盤)を取り付けて緑化パネルとし、このような緑化パネルを、構造物の壁面に複数取り付ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−95347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の人工的な緑化を行う場合には、人工土壌が外気(特に、風)によって乾き易いため、人工土壌の保水性を確保することが重要であった。
【0008】
この点、特許文献1においては、フレーム枠に底板を設けて風の吹き抜けを防止しているので、人工土壌の保水性を確保することは可能であった。
【0009】
しかしながら、特許文献1においては、底板が1つの緑化パネルに対応するように大判に形成されているため、緑化パネルの組立前または解体後における運搬の際の取り扱いが煩雑となり、また、底板が老朽化等によって劣化した場合には、フレーム枠に取り付けられている複数の人工土壌のすべてをフレーム枠から取り外した上で底板を交換しなければならないといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、人工土壌の保水性を確保することができるとともに運搬や部品交換等の際における取り扱い性を向上させることができる緑化装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明に係る緑化装置は、構造物における緑化すべき対象面を植物を用いて緑化するための緑化装置であって、複数の縦枠材およびこれらに直交する複数の横枠材によって少なくとも1つの枠内周面を有するような矩形枠状に形成され、前記対象面に対向配置される枠体と、植物を育成するための人工土壌を収容した状態で前記枠内周面の内側に配置される少なくとも1つの収容体とを備え、前記収容体は、前記枠体に着脱可能とされ、前記枠体への取着状態において、前記枠内周面を構成する互いに対向する一対の前記横枠材に前記枠内周面の内側からそれぞれ臨む一対の横壁部と、これら横壁部における前記対象面側の端部同士の間に連設され、前記取着状態において、前記枠内周面の開口または断面開口を遮蔽する底壁部とを有し、前記一対の横壁部および前記底壁部がなす空間内に前記人工土壌が収容されることを特徴としている。このような構成によれば、収容体の底壁部によって枠内周面の内側の空間における外気の通り抜けを抑制することができるので、人工土壌の乾燥を抑制して保水性を確保することができ、また、底壁部の運搬や交換を収容体の単位で容易に行うことができる。さらに人工土壌の設置および交換も収容体の着脱によって容易に行うことができる。
【0012】
また、鉛直方向に対して平行または傾斜状に形成された前記対象面の緑化に用いられ、前記一対の横壁部のうちの前記底壁部に鉛直下方側において連設された一方の横壁部における前記対象面側と反対側の端部に、水分を貯留可能な溝部が垂設され、前記人工土壌は、前記収容体への収容状態において前記溝部の内部にまで至るようにしてもよい。このような構成によれば、溝部に貯留された水分によって、人工土壌の保水性を向上させることができる。
【0013】
さらに、前記溝部は、前記一対の横枠材のうちの前記一方の横壁部が臨む一方の横枠材を、前記対象面側と反対側において覆い隠すような形状および大きさに形成され、前記一対の横壁部のうちの他方の横壁部における前記対象面側と反対側の端部に、前記一対の横枠材のうちの他方の横枠材を前記対象面側と反対側において覆い隠すような形状および大きさに形成された端縁部が立設され、前記溝部および前記端縁部に、前記一対の横枠材が前記対象面側と反対側において露出する場合に比較して前記対象面上の外観を向上させるための着色が施されていてもよい。このような構成によれば、横枠材を覆い隠すように形成された溝部および端縁部にそれぞれ施された着色により、対象面上の外観を向上させるといった景観の美化を利用目的の1つとした緑化装置に適した付加価値を生み出すことができる。さらに、端縁部を横枠材に当接させた状態で収容体を枠体に安定的に取り付けることもできる。
【0014】
さらにまた、前記収容体は、金属製の基材と、この基材における前記人工土壌に臨む表面上に植設された水分保持機能を持つ植設繊維層とを有していてもよい。このような構成によれば、植設繊維層によって人工土壌の保水性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、前記枠体を前記対象面に対向させた状態で前記対象面に直交する所定の面上に起立状態に支承するための前記所定の面に立設される支柱を備えるようにしてもよい。このような構成によれば、枠体を簡便かつ安定的に支承することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人工土壌の保水性を確保することができるとともに運搬や部品交換等の際における取り扱い性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る緑化装置の実施形態を示す斜視図
【図2】本発明に係る緑化装置の実施形態を示す主要部の分解斜視図
【図3】本発明に係る緑化装置の実施形態を示す断面図
【図4】本発明に係る緑化装置の第1変形例を示す断面図
【図5】第1変形例の具体的な構成を示す構成図
【図6】本発明に係る緑化装置の第2変形例を示す斜視図
【図7】本発明に係る緑化装置の第3変形例を示す斜視図
【図8】本発明に係る緑化装置の第4変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る緑化装置の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における緑化装置1は、建築物等の構造物における壁面等の緑化すべき対象面2に対向配置された状態で、この対象面2を植物を用いて緑化するようになっている。なお、図1においては、対象面2が鉛直方向に平行な面となっているが、本発明は、例えば、屋根の上面等の鉛直方向に対して傾斜した対象面にも好適に用いることができる。
【0020】
このような対象面の緑化に用いられる緑化装置1の具体的な構成について説明すると、図1に示すように、緑化装置1は、対象面2に対向配置された状態で対象面2に固定される金属製の枠体3を有している。この枠体3は、図1に示すように、横方向(水平方向)に所定の間隔を設けて配置された複数の縦枠材4と、縦方向(鉛直方向)に所定の間隔を設けて配置された縦枠材4に直交する複数の横枠材5とによって矩形枠状に形成されている。また、図1に示すように、枠体3は、縦枠材4の左側面または右側面と横枠材5の上面または下面とによって構成される断面矩形状の複数(図1において6つ)の枠内周面6を有している。
【0021】
なお、枠体3を対象面2に固定する方法としては、例えば、特許文献1と同様に、縦枠材4および横枠材5の図1における後端面(背面)にブラケットを設け、このブラケットを対象面2にボルト等の連結手段を用いて連結する方法を採用してもよい。あるいは、特願2010−114290号に記載されている鉄板(23)および磁力固定部材(24)を用いて枠体3を対象面2に固定してもよい。また、枠材3は、例えば、アルミニウム合金等の耐候性に優れた軽量合金によって形成してもよいし、あるいは、ステンレス(SUS)等の防錆性に優れた合金鋼によって形成してもよい。さらに、縦枠材4、横枠材5および枠内周面6の個数は、図1に示したものに限定されない。さらにまた、枠体3は、軽量化の観点から中空に形成してもよい。また、枠体3は、縦枠材4と横枠材5とをボルト等の連結手段を介して連結させることによって簡便に組み上げられるものであってもよい。
【0022】
また、図2に示すように、緑化装置1は、植物の種子が含まれた当該植物を育成するための人工土壌7を収容する収容体8を有しており、この収容体8は、図3に示すように、人工土壌7を収容した状態で枠内周面6の内側に部分的に配置されるようになっている。この収容体8は、人工土壌7を収容した状態で枠体3における任意の枠内周面6に対応する位置に着脱可能とされおり、この枠体3の着脱により、枠体3に対する人工土壌7の設置および交換を簡便に行うことができるようになっている。なお、収容体8は、ステンレス鋼(SUS)、表面処理鋼鈑、アルミニウム板あるいはアルミニウム合金等の金属を用いて形成してもよい。また、人工土壌7としては、例えば、東邦レオ株式会社製のビバソイル(登録商標)あるいは株式会社クレアテラ製のガーデンマット(登録商標)等の種々の人工土壌を用いることができる。また、人工土壌7は、必要に応じて収容体8内に収納される好適な形状(図1参照)に展張可能な不図示の可撓性の袋体内に収容されて好適な形状が保持されるものであってもよい。ただし、この袋体は、人工土壌7への吸水および植物の発芽を許容するための開孔が形成されていることが望ましい。また、人工土壌7は、好適な材料からなるバインダーによって好適な形状に適度な硬さで固められたものであってもよい。
【0023】
次に、収容体8の具体的な構成について説明すると、まず、図2および図3に示すように、収容体8は、上側横壁部10および下側横壁部11からなる互いに平行な上下一対の横壁部10,11を有している。図3に示すように、上側横壁部10は、収容体8の枠体3への取着状態において、枠内周面6における上面部6aを構成する横枠材5に、枠内周面6の内側(下側)から臨むようになっている。なお、上面部6aは、これに対応する横枠材5の下面によって構成されている。一方、図3に示すように、下側横壁部11は、前記取着状態において、枠内周面6における下面部6bを構成する横枠材5に、枠内周面6の内側(上側)から臨むようになっている。なお、下面部6bは、これに対応する横枠材5の上面によって構成されている。ここで、図3からも分かるように、上面部6aを構成する横枠材5と、下面部6bを構成する横枠材5とは、縦枠材4の長手方向において互いに対向している。
【0024】
また、図2および図3に示すように、収容体8は、両横壁部10,11のそれぞれの後端部(対象面2側の端部)同士の間に連設された底壁部12を有している。図3に示すように、底壁部12は、前記取着状態において、枠内周面6の後端部開口6cを遮蔽するようになっている。ただし、横壁部10,11の奥行きが枠体3の奥行きよりも短い場合には、前記取着状態において、底壁部12は、枠内周面6の断面開口を遮蔽することになる。
【0025】
そして、これら両横壁部10,11および底壁部12がなす空間内に、人工土壌7が収容されるようになっている。
【0026】
さらに、これ以外にも、収容体8は、図2および図3に示すように、下側横壁部11における前端部(対象面2側と反対側の端部)に垂設された上部が開口したコの字状を呈する溝部13を有しており、この溝部13は、水分を貯留可能とされている。図2に示すように、溝部13は、前壁部13A、底壁部13Bおよび後壁部13Cの平板状の3つの壁部13A,13B,13Cが連設されてなる。そして、図3に示すように、人工土壌7は、収容体8への収容状態において、溝部13の内部にまで至るように形成されている。また、図3に示すように、溝部13は、下側横壁部11が臨む横枠材5を前方(対象面2側と反対側)において覆い隠すような形状(前方から見て長方形状)および大きさに形成されている。
【0027】
さらにまた、収容体8は、図2および図3に示すように、上側横壁部10における前端部に上方に向かって立設された端縁部14を有しており、この端縁部14は、上側横壁部10が臨む横枠材5を前方において覆い隠すような形状(前方から見て長方形状)および大きさに形成されている。なお、前記取着状態において、端縁部14は、これが覆い隠す横枠材5の前端面に当接するようになっている。
【0028】
また、溝部13および端縁部14には、これらに覆い隠された横枠材5が前方において露出する場合に比較して対象面2上の外観を向上させるための着色が施されている。この着色による色は、横枠材5の色に比べて育成すべき植物の色に近い色であることが好ましい。ただし、単一色に限定しなくてもよい。このような着色は、例えば、溝部13における前壁部13Aの前端面13aおよび端縁部14の前端面に施せばよい。
【0029】
なお、収容体8の枠体3への取着は、端縁部14をボルト等の連結手段によって横枠材5に連結することによって行うようにしてもよい。
【0030】
さらに、図1および図2に示すように、緑化装置1は、人工土壌7及びその人工土壌7に植えた植物の脱落を防止するための収容体8ごとの金網15を有しており、この金網15は、人工土壌7及びその人工土壌7に植えた植物における枠体3から前方にはみ出した部位を前方から取り囲むようにして枠体3の前端部に着脱可能とされている。なお、金網15を枠体3に取着する方法としては、例えば、枠体3の前端部に、金網15の左右の後端部15a,15bに対応する嵌合溝をそれぞれ形成して、この嵌合溝に左右の後端部15a,15bを嵌合させた上で、さらに、嵌合溝に沿った長尺な押さえ部材を嵌合溝に押し込む方法を用いてもよいが、このような方法に限定されるものではない。
【0031】
さらにまた、図3に示すように、複数の収容体8を上下で互いに隣接させるように枠体3に取着する場合には、下側に取着された収容体8における端縁部14と、上側に取着された収容体8における溝部13とが、互いに前後で重なることになる。このとき、これら端縁部14と溝部13との重なりによって上側に取着される収容体8の枠内周面6内への挿し込みが不十分とならないように、溝部13の後壁部13C(換言すれば、下側横壁部11の前端部)は、端縁部14(換言すれば、上側横壁部10の前端部)よりも僅かに前方に形成されていることが望ましい。
【0032】
このような構成を有する緑化装置1を設置する場合には、枠体3を対象面2に対向させて固定した上で、人工土壌7及びその人工土壌7に植えた植物が収容された収容体8を、枠体3における所望の枠内周面6内に挿し込む。その上で、金網15を、人工土壌7及びその人工土壌7に植えた植物における枠体3からのはみ出し部位に前方から被せるようにして枠体3に取着する。
【0033】
このとき、特許文献1に示したような大判の底板を用意する必要がないので、緑化装置1の設置のための部品の運搬を容易に行うことができる。このことは、解体後の運搬においても同様である。また、底壁部12が劣化した場合においても、収容体8単位で簡便に交換ができる。
【0034】
そして、このようにして設定された緑化装置1に対して、例えば、前方から水栓に連結されたホース等を用いて人工土壌7に水を供給する。
【0035】
このとき、底壁部12によって枠内周面6の内側の空間における外気の通り抜けを抑制することができるので、人工土壌7の乾燥が抑制され、人工土壌7が供給された水を良好に保持することができる。
【0036】
また、このとき、供給された水の一部を溝部13に貯留させるとともに、この貯留された水に人工土壌7の一部を浸らせることができるので、人工土壌7が供給された水を更に有効に保持することができる。
【0037】
さらに、横枠材5を覆い隠すように形成された溝部13および端縁部14にそれぞれ施された着色により、対象面2上の外観を良好にすることができる。
【0038】
(第1の変形例)
前述した実施形態に対する第1の変形例としては、収容体8を図4に示すように構成する。
【0039】
すなわち、図4に示すように、本変形例における収容体8は、金属製(例えば、ステンレス鋼、表面処理鋼板、アルミニウム板またはアルミニウム合金製)の基材16と、この基材16における人工土壌7に臨む表面上に植設された水分保持機能を持つ植設繊維層17とを有している。また、植設繊維層17を有すると水分保持機能を有するので、収容体8用の基材16としてはより望ましいが、植設繊維層17を有さない金属板製(例えば、ステンレス鋼板、表面処理鋼板、アルミニウム板またはアルミニウム合金板製)の基材16を収容体8として用いることができる。これらの金属板に有機樹脂などを被覆した基材16も収容体8として使用できる。
【0040】
ここで、植設繊維層17は、図5に示すように、例えば金属を折り曲げ加工してなる基材16の表面にプレコート層18を形成し、このプレコート層18に、多数の樹脂繊維素材20を接着剤層19を介して植設することによって形成することができる。この樹脂繊維素材20の材質、太さ、高さおよび密度等は、植設繊維層17が水分を保持するのに好ましい条件を満たすように形成すればよい。例えば、ナイロン繊維を、太さ19μm、高さ0.8mm、密度30,000本/cmとして植設繊維層17を形成してもよい。
【0041】
本変形例によれば、植設繊維層17によって人工土壌7の保水性を更に向上させることができる。
【0042】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例としては、縦枠材4を図6に示すように構成する。
【0043】
すなわち、図6に示すように、本変形例における縦枠材4は、その前端面4a(対象面2と反対側の端面)が、前記取着状態において溝部13における前壁部13Aの前端面13a(図2参照)と同一面上となるように形成されている。換言すれば、縦枠材4の前端面4aは、横枠材5の前端面5aよりも溝部13の奥行きに相当する大きさだけ前方に突出するように形成されている。
【0044】
本変形例によれば、図1〜図3の構成において枠体3の前方にはみ出していた人工土壌7の一部(はみ出し部位)を、横枠材5の前端面5aから前方に延出された縦枠材4の側面4bによって左右から保持することができる。この結果、人工土壌7の保水性および形状保持性を向上させることができ、また、人工土壌7及びその人工土壌7に植えた植物の脱落を防止するための金網15の形状を簡易な略平板状(図6参照)にすることも可能となる。
【0045】
(第3の変形例)
次に、第3の変形例としては、収容体8を図7に示すように構成する。
【0046】
すなわち、図7に示すように、本変形例においては、収容体8が、図2および図3に示した構成に加えて、更に、上側横壁部10、下側横壁部11、底壁部12および溝部13のそれぞれの左端部に連設された左側縦壁部22と、各壁部10〜12および溝部13のそれぞれの右端部に連設された右側縦壁部23とを有している。また、両縦壁部22,23の前端部は、溝部13における前壁部13Aの前端面13aと同一面上となる位置まで形成されている。
【0047】
本変形例によれば、縦壁部22,23によって他の壁部10〜12と協働して収容体8を箱状に構成することができるので、人工土壌7の保水性を更に有効に確保することができ、また、人工土壌7の形状保持性を向上することができ、さらに、人工土壌7が飛散しやすいものであっても、人工土壌7の収容体8内への収容作業を容易に行うことができる。
【0048】
なお、本変形例の収容体8は、平面に展開できる形状を有しているので、金属の折り曲げ加工によって溶接部位を可及的に削減した状態で形成することも可能である。
(第4の変形例)
次に、第4の変形例としては、収容体8を図8に示すように構成する。
【0049】
すなわち、図8に示すように、本変形例においては、図2および図3に示した構成に加えて、更に、端縁部14の左右の両端部に、端縁部14と面一状かつ一体の平板とされ、端縁部14から左右にそれぞれ延出された左右一対の延出部25,26が形成されている。両延出部25,26の下端部は、下側横枠材11と同じ高さの位置に至っている。
【0050】
さらに、両延出部25,26の前端面には、前述した溝部13および端縁部14に施された着色と同色の着色が施されている。
【0051】
本変形例によれば、着色が施された左右の延出部25,26によって縦枠材4の前端面を前方から覆い隠すことができるので、対象面2上の外観をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、延出部25,26の形状および大きさは、縦枠材4を前方から覆い隠すのに好適な形状および大きさに設計することが必要であるが、それだけでなく、左右で互いに隣接する収容体8同士の間で、左側の収容体8における右側の延出部26と右側の収容体8における左側の延出部25とが前後で重なり合う場合に、一方の収容体8の枠内周面6内への挿し込みが不十分となることを念頭においた設計を行うことが望ましい。すなわち、延出部25,26が左右の収容体8同士の間で抵触しないように、延出部25,26の横幅は、縦枠材4の前端面の横幅の半分以下にすることが望ましい。
【0053】
以上述べたように、本発明によれば、収容体8の底壁部12によって枠内周面6の内側の空間における外気の通り抜けを抑制することができるので、人工土壌7の乾燥を抑制して保水性を確保することができ、また、底壁部12の運搬や交換を収容体8の単位で容易に行うことができる。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0055】
例えば、本発明は、第1の変形例乃至第4の変形例を適宜組み合わせた新たな変形例にも有効に適用することができる。
【0056】
また、前述した実施形態においては、枠体3を対象面2に固定する構成について述べたが、このような構成の代わりに、枠体3を、対象面2に対向させた状態で対象面2に直交する所定の面(例えば、対象面2の前方の地面や路面等)上に起立状態に支承してもよい。そのための具体的な手段としては、前記所定の面に金属等からなる支柱を立設し、この支柱に枠体3を固定すればよい。この場合に、支柱は、枠体3の図1における左右の両端部に1本ずつ配置してもよい。また、枠体3は、支柱に着脱可能とすればよく、さらに、支柱も、前記所定の面に着脱可能としてもよい。さらに、枠体3は、前記所定の面上に支承された状態において、支柱に固定されてさえいれば、前記所定の面上に接触していてもよいし、前記所定の面から上方に浮き上がっていてもよい。さらにまた、枠体3を支柱に固定する手段としては、ボルト等による締結や嵌合手段による嵌合等の各種の固定手段を採用することができる。また、必要に応じて、前記所定の面に支柱を挿し込むための穴部を設けても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 緑化装置
2 対象面
3 枠体
4 縦枠材
5 横枠材
6 枠内周面
7 人工土壌
8 収容体
10 上側横壁部
11 下側横壁部
12 底壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物における緑化すべき対象面を植物を用いて緑化するための緑化装置であって、
複数の縦枠材およびこれらに直交する複数の横枠材によって少なくとも1つの枠内周面を有するような矩形枠状に形成され、前記対象面に対向配置される枠体と、
植物を育成するための人工土壌を収容した状態で前記枠内周面の内側に配置される少なくとも1つの収容体と
を備え、
前記収容体は、
前記枠体に着脱可能とされ、
前記枠体への取着状態において、前記枠内周面を構成する互いに対向する一対の前記横枠材に前記枠内周面の内側からそれぞれ臨む一対の横壁部と、
これら横壁部における前記対象面側の端部同士の間に連設され、前記取着状態において、前記枠内周面の開口または断面開口を遮蔽する底壁部と
を有し、
前記一対の横壁部および前記底壁部がなす空間内に前記人工土壌が収容されること
を特徴とする緑化装置。
【請求項2】
鉛直方向に対して平行または傾斜状に形成された前記対象面の緑化に用いられ、
前記一対の横壁部のうちの前記底壁部に鉛直下方側において連設された一方の横壁部における前記対象面側と反対側の端部に、水分を貯留可能な溝部が垂設され、
前記人工土壌は、前記収容体への収容状態において前記溝部の内部にまで至ること
を特徴とする請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記一対の横枠材のうちの前記一方の横壁部が臨む一方の横枠材を、前記対象面側と反対側において覆い隠すような形状および大きさに形成され、
前記一対の横壁部のうちの他方の横壁部における前記対象面側と反対側の端部に、前記一対の横枠材のうちの他方の横枠材を前記対象面側と反対側において覆い隠すような形状および大きさに形成された端縁部が立設され、
前記溝部および前記端縁部に、前記一対の横枠材が前記対象面側と反対側において露出する場合に比較して前記対象面上の外観を向上させるための着色が施されていること
を特徴とする請求項2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記収容体は、金属製の基材と、この基材における前記人工土壌に臨む表面上に植設された水分保持機能を持つ植設繊維層とを有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の緑化装置。
【請求項5】
前記枠体を前記対象面に対向させた状態で前記対象面に直交する所定の面上に起立状態に支承するための前記所定の面に立設される支柱を備えたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24059(P2012−24059A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168795(P2010−168795)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(396026570)株式会社栄住産業 (21)
【Fターム(参考)】