説明

緑色感光性樹脂組成物、それを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】液晶表示装置用のカラーフィルタに、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消し、色再現域が広くかつ輝度が高い緑色画素を高感度で形成できる緑色感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、(A)着色剤(B)バインダー樹脂(C)光重合性モノマー(D)光重合開始剤(E)有機溶剤を含有する着色感光性樹脂組成物において、前記(A)着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有するものであり、前記着色感光性樹脂組成物における全固形分中の緑色顔料の濃度が30〜45%であって、かつ(B)バインダー樹脂として、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより重合性不飽和結合を有する単位構造を含有する緑色感光性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物、これを用いて形成されるカラーフィルタ及び該カラーフィルタを具備した液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、携帯電話・デジタルカメラ等の小面積のものからパーソナルコンピュータの表示装置・テレビなどの大面積のものまで広く普及が進んでいる。これらの液晶表示装置については、輝度や色再現性、コントラストなどの性能をより高めることが要求されており、液晶表示装置を構成する部材であるカラーフィルタにおいても、さらなる高明度化や高色再現性、高コントラスト化などが望まれている。
【0003】
上記のような、色再現域が広くかつ輝度が高いカラーフィルタを形成するために、最近では、カラーフィルタを構成する緑色フィルタセグメントの形成には、主顔料として、従来のハロゲン化銅フタロシアニン顔料(例えば、臭素化銅フタロシアニン顔料からなるC.I.ピグメントグリーン36や、塩素化銅フタロシアニン顔料からなるC.I.ピグメントグリーン7など)に代わり、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(例えば、C.I.ピグメントグリーン58など)が用いられるようになってきた。
【0004】
しかしながら、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンは優れた着色剤であると同時に、有機半導体としても知られる材料であり、特に脱気下において光照射によりフタロシアニンラジカルとなって安定することが知られており(特許文献1、2)、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを着色剤として用いる場合には大きな問題となっている。すなわち、フタロシアニンラジカルは吸光波長が基底状態のフタロシアニンとは吸光の波長がずれてしまうため、着色剤として用いた場合には色が変化して見えてしまう。この現象は特に液晶表示装置のように空気とは完全に遮断された状態で用いられる場合に顕在化し、改善が望まれている。
【0005】
一方、カラーフィルタの色再現特性向上のために、緑色感光性樹脂組成物中の着色剤の含有量を多くする、あるいは、膜厚を厚くする傾向があるが、色素の含有量を多くする方法においては、感度低下、現像性、解像性が悪化する等の問題が発生する、膜厚を厚くする方法においては、膜底部まで露光光が届かず、パタ−ン形状が不良となる等の問題が発生する。このような問題を解決するため、緑色感光性樹脂組成物の高感度化が進められているが(特許文献3)、この中で例示されているような、ヒドロキシル基を有する共重合性不飽和単量体を共重合した樹脂に不飽和イソシアナート化合物を反応させることにより、樹脂の側鎖に重合性不飽和結合を導入した感光性樹脂を用いて感度向上を図った場合、前記の脱気下における光照射での色の変化が顕著となっていた。
以上のような背景から、輝度の高い緑色画素を形成することができ、耐候性にも優れ、しかも高感度な緑色感光性樹脂組成物の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2949230号公報
【特許文献2】特許第2958461号公報
【特許文献3】特開2009−223288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液晶表示装置用のカラーフィルタにハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消し、色再現域が広くかつ輝度が高い緑色画素を高感度で形成することができる緑色感光性樹脂組成物を提供することにある。さらには、前記緑色感光性樹脂組成物から形成された画素を備えてなる信頼性の高いカラーフィルタ、および当該カラーフィルタを具備するカラー液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、(A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤、(E)有機溶剤を含有する緑色感光性樹脂組成物において、前記(A)着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有するものであり、前記緑色感光性樹脂組成物における全固形分中の着色剤の濃度が30〜45重量%であって、かつ(B)バインダー樹脂として、重合性不飽和結合を含む単位構造を持つ樹脂を含有することを特徴とする、緑色感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、前記(B)バインダー樹脂の重合性不飽和結合が、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより導入されたことを特徴とする、請求項1に記載の緑色感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1〜2に記載の緑色感光性樹脂組成物を用いて形成されるフィルタセグメントを備えることを特徴とするカラーフィルタである。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項3に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いることにより、液晶表示装置用のカラーフィルタにハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消できるため、信頼性が高く、表示特性に優れたカラー液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物について詳細に説明すると共に、緑色感光性樹脂組成物の一般的製法、カラーフィルタ基板の製造方法について詳述する。
【0014】
本発明の緑色感光性樹脂組成物において、(A)着色剤は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)を含有するものである。前記顔料については、鮮やかで明るい色を実現することができることから、広く用いられるようになってきたが、背景技術で詳述したように光反応性を有するため、パネル化して液晶表示装置の中に組み込まれ、空気とは完全に遮断された状態であるカラーフィルタの画素に用いる場合、その光反応性から色が変化してしまっていた。特に、高色度域達成のために顔料の濃度を高くしている緑色感光性樹脂組成物において、高感度化のために重合性二重結合を付与した感光性樹脂を含有するとその傾向が顕著となるため、PG58を含有する緑色画素を有するカラーフィルタの耐光性を確保することが難しくなっていた。
【0015】
そこで、本発明者らは、緑色画素の色の変化の原因が光で生ずるフタロシアニンラジカルアニオンであることを推定し、その対策を検討した。すなわち、フタロシアニンラジカ
ルアニオンの発生を促進させる官能基を特定し、当該成分を非含有とすることで、高感度でありながら緑色画素の耐光性が飛躍的に向上することを見出した。
【0016】
本発明のカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物は、少なくとも着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤を含んでなり、前記着色剤が少なくとも1種のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有し、かつバインダー樹脂として、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより重合性不飽和結合を有する単位構造を含有することを特徴とするものである。また、本発明のカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、非感光性樹脂、溶剤、その他成分を用いて構成することができる。
【0017】
緑色感光性樹脂組成物における着色剤の濃度は、30〜45重量%である。30重量%未満では、着色剤の濃度が薄いため、カラーフィルタとして十分な色の着色画素を形成するためには、着色画素の膜厚を非常に厚くしなくてはならないため、画素形成が困難であり、生産性も悪化するため実用上難点がある。45重量%を越えると、顔料を分散化するための樹脂の量が少なくなることで不安定になり、顔料の凝集による増粘やコントラスト低下の原因となり、また、感光性樹脂のフォトリソグラフィ適性を調節する透明成分(バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤など)も十分な量がなく、これら透明成分の調整だけでパターン形状や現像性の適正化を図るのは困難となる。
【0018】
本発明の緑色感光性樹脂組成物においては、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより重合性不飽和結合を有する単位構造を含有する感光性樹脂が含有される。光照射時のフタロシアニン分子の光反応において、電子供与性の成分となるウレタン結合部やアミノ基を導入することなく二重結合の付与を行うことで、フタロシアニンラジカルアニオンの発生を抑制しながら高感度化を達成することができるので、酸素遮断下のような条件においても優れた耐候性を示すこととなる。
【0019】
本発明の緑色感光性樹脂組成物では、カルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体(以下、第1単量体と称する)を有してなる重合体が必須である。このカルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水フタル酸などの酸無水物を付加させたもの等が挙げられる。このような、カルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体は、他の単量体(以下、第2単量体と称する)と共に共重合体を作る。そのような共重合体を形成する他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基(メタ)アクリレート、スチレン及びスチレン誘導体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド等が挙げられる。これらは1種類でも又2種以上を組み合わせて用いることができる。共重合体中において、第1単量体は15〜80重量%、第2単量体は20〜85重量%であることが望ましい。第1単量体の重合比が15重量%未満では感度が上がらず、80重量%よりも多いと、後工程でのモノマー付加量を多くせねばならず、現像性が低下するからである。
【0020】
本発明では、この共重合体にエポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体(以下、第3単量体と称する)が付加される。第3単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−3,4−エポキシ
−シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。この第3単量体は、上記共重合体のカルボン酸基に対し、20〜80モル%の範囲で付加される。20モル%未満では感度が上がらず、80モル%よりも多いと現像性が低下してしまう。該単位構造はバインダー樹脂中に5重量%以上50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、10重量%以上40重量%以下である。5重量%未満では感度・耐光性を向上させるのに十分な効果を発揮できず、50重量%を超えると、不飽和二重結合の量が多くなりすぎるため、経時安定性が悪化してしまう可能性がある。
【0021】
こうして調整されたアクリル系樹脂の分子量は、5000〜50000が好ましく、10000〜30000であればより好ましい。分子量が5000未満では、現像性が良すぎて、形状の制御が困難であるし、50000より大きいと、現像性が低下するからである。また、アクリル樹脂の酸価は、共重合組成と第3単量体の付加量で決定されるが、40〜150であることが好ましい。酸価40未満では現像性が低下し、150より多いと、レジストの耐水性や電気特性の低下が見られるからである。
【0022】
<緑色感光性着色組成物>
その他、本発明に係る緑色感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0023】
[着色剤]
本発明の緑色感光性樹脂組成物には、PG58以外の他の着色剤をさらに含有することができる。ほかの着色剤としては、特に限定されるものではないが、耐熱性や耐候性など、カラーフィルタの要求特性を考慮すると有機顔料が好ましい。用いることのできる有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0024】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができるが、特にC.I.ピグメントグリーン7、36が好適に用いられる。黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等が挙げられるが、特にC.I.ピグメントイエロー138、139、150が好適に用いられる。
【0025】
着色剤として顔料を用いる場合には、適宜、樹脂型顔料分散剤、色素誘導体、界面活性剤等の分散剤を用いることができる。分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、着色剤100重量%に対して、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の量で用いることができる。
【0026】
[バインダー樹脂]
本発明の緑色感光性樹脂組成物に用いることのできるバインダー樹脂として、その他、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの非感光性樹脂を含むことができる。さらには必要に応じて、その前駆体である、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーを単独で、または2種以上混合して
用いることができる。
【0027】
非感光性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有しない樹脂であり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。中でも透明性の観点からアクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0028】
バインダー樹脂を生成するモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、などの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる
【0029】
[光重合性モノマー]
光重合性モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロカラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0030】
なお、本発明の緑色感光性樹脂組成物における経時安定性および現像性と、形成された着色層のタック性を考慮すると、光重合性モノマーの含有量は、緑色感光性樹脂組成物の20重量%以下であることが好ましい。また、露光感度、パターンの解像性および耐溶剤性の観点から、1重量%以上であることが好ましい。
【0031】
[光重合開始剤]
本発明における光重合開始剤としては、オキシムエステル系重合開始剤が好適に使用できる。例えば、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、O−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4'−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)である。
【0032】
他の重合開始剤を併用することもできる。このような重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。
アセトフェノン系化合物としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が例示できる。また、ベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。チオキサンソン系化合物としては、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。トリアジン系化合物としては、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が例示できる。ホスフィン系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が例示できる。また、キノン系化合物としては、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を例示できる。光重合開始剤の使用量は、光重合性モノマーの5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%とすることが望ましい。
【0033】
さらに、緑色感光性樹脂組成物には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。
【0034】
[溶剤]
本発明に係る緑色感光性樹脂組成物には、必要に応じて有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0035】
次に、本発明に係る緑色感光性樹脂組成物の調製方法について説明する。本発明に係る緑色感光性樹脂組成物は、例えば、光重合性モノマー、透明樹脂(感光性透明樹脂、非感光性透明樹脂)、顔料、分散剤及び溶剤とから下記(1)〜(4)のいずれかの方法により調製することができる。
【0036】
(1): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を予め混合して調製した顔料組成物を添加して分散させ、残りの成分を添加する。
(2): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を別々に添加して分散させた後、残りの成分を添加する。
(3): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料を分散させた後、顔料分散剤を添加した後、残りの成分を添加する。
(4): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液を2種類調製し、顔料と分散剤を予め別々に分散させてから、これらを混合し、残りの成分を添加する。なお、顔料と分散剤のうち一方は溶剤にのみ分散させても良い。
【0037】
ここで、顔料や分散剤の分散は、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、アトライター、ペイントコンディショナー等の各種分散装置を用いて行うことができる。
【0038】
また、顔料と分散剤を予め混合して顔料組成物を調製する場合、粉末の顔料と粉末の分散剤を単に混合するだけでも良いが、(a)ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル等の各種粉砕機により機械的に混合するか、(b)顔料を溶剤に分散させた後、分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に分散剤を吸着させるか、(c)硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に顔料と分散剤を共溶解した後、水等の貧溶媒を用いて共沈させるなどの混合方法を採用することが好ましい。
【0039】
以下に、本発明のカラーフィルタを得るための方法を記述する。本発明のカラーフィルタは少なくとも透明基板上に複数色の画素を備えており、当該複数色の画素は少なくとも着色層から構成されている。複数色には赤、緑、青(加法混色型)の組み合わせやイエロー、マゼンダ、シアン(減法混色型)の組み合わせが挙げられるが、本発明のカラーフィルタは緑色画素を有するカラーフィルタに対して特に好ましく適用できる。
【0040】
本発明の方法に用いられる透明基板は可視光に対してある程度の透過率を有するものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものを用いることができる。一般に液晶表示装置に用いられているものでよく、PETなどのプラスチック基板やガラスが挙げられるが、通常はガラス基板を用いるとよい。遮光パターンを用いる場合はあらかじめ該透明基板上にクロム等の金属薄膜や遮光性樹脂によるパターンを公知の方法で付けたものを用いればよい。
【0041】
本発明における透明基板上への着色層の形成は、フォトリソグラフィ法により下記の方法で行う。すなわち、透明樹脂中に顔料を光開始剤、重合性モノマーと共に適当な溶剤に分散させた着色感光性樹脂組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンマスクを介して、高圧水銀灯などを光源として紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成したのち、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。
【0042】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0043】
以上の一連の工程を、着色感光性樹脂組成物およびパターンを替え、必要な数だけ繰り返すことで複数色の画素を備えるカラーフィルタを得ることができる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における「部」は、「質量部」を表す。また、樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0045】
<分散樹脂の調整>
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器に、シクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりベンジルメタクリレート13.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.9部、メタクリル酸1.6部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)11.6部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続して、顔料分散に用いる樹脂溶液を調製した。樹脂の重量平均分子量は30000であった。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、分散樹脂溶液を調製した。
【0046】
<バインダー樹脂の調整>
(重合性二重結合をもつ樹脂の合成:カルボキシル基へのグリシジル付加)
以下に、実施例及び比較例で用いたバインダー樹脂溶液の調製について説明する。
まず、反応容器にシクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸(MAA)48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)17部、メタクリル酸メチル(MMA)16部、ベンジルメタクリレート(BzMA)17部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)9部、および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル12.0部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル3.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させた溶液を加え、さらに80℃で1時間反応を続けて、共重合体を得た。得られた共重合体に、グリシジルメタクリレート(GMA)21部と、ベンジルジメチルアミン0.5部を加え、100℃で20時間反応させてアクリル樹脂を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は、約18000であった。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、バインダー樹脂溶液(P−1)を調製した。
使用するアクリルモノマーの量、種類の違いを除いて、同様の方法でバインダー樹脂溶液P−2,P−3を作製した。アクリルモノマーの種類と比率、及び測定した重量平均分子量と酸価を併せて下記表1に示す。なお、分子量の調整のために、4,4´−アゾビスイソブチロニトリルの量は適宜調整した。
【0047】
【表1】

【0048】
(重合性二重結合をもつ樹脂の合成:水酸基へのイソシアネート付加)
反応容器にシクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸(MAA)20.9部、ベンジルメタクリレート(BzMA)20.9部、グリコールメタクリレート(GLM)35.8部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート(M110:東亞合成社製 「アロニックスM110」)22.4部および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル12.0部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。
【0049】
滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル3.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させた溶液を加え、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂の溶液を得た。次に該アクリル樹脂溶液を40℃に調整し、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズMOI」30部を2時間かけて滴下して反応させた。滴下完了後、40℃に保ったまま1時間攪拌してバインダー樹脂(P−4)を得た。
【0050】
(非感光性樹脂の合成)
まず、反応容器にシクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸(MAA)34部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)17部、メタクリル酸メチル(MMA)15部、ベンジルメタクリレート(BzMA)21部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)14部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル12.0部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル3.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させた溶液を加え、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂溶液を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は、約20000であった。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、バインダー樹脂溶液(P−5)を調製した。
【0051】
<緑色顔料分散体の調整>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン系緑色顔料(C.I.ピグメントグリーン58、大日本インキ化学工業(株)製「FASTOGEN Green A110」)13部、樹脂型分散剤(チバ・ジャパン社製「EFKA4300」)4部、分散樹脂溶液を15部、及びエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート68部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し緑色顔料分散体(1)を調整した。
【0052】
<実施例1>
以下の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾
過して、緑色感光性樹脂組成物(1)を調整した。
・着色剤 :緑色顔料分散体(1) 42.0部
・バインダー樹脂 :バインダー樹脂溶液P−1 26.0部
・光重合性モノマー :東亜合成社製「アロニックスM−402」 2.5部
・光重合開始剤 :チバ・ジャパン社製 0.5部
「イルガキュアOXE−02」
・溶剤 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
29.0部
【0053】
<実施例2>
バインダー樹脂として、バインダー樹脂溶液P−2を用いた以外は実施例1と同様の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(2)を調整した。
【0054】
<実施例3>
バインダー樹脂として、バインダー樹脂溶液P−3を用いた以外は実施例1と同様の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(3)を調整した。
【0055】
<比較例1>
バインダー樹脂として、バインダー樹脂溶液P−4を用いた以外は実施例1と同様の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(4)を調整した。
【0056】
<比較例2>
バインダー樹脂として、バインダー樹脂溶液P−5を用いた以外は実施例1と同様の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(5)を調整した。
【0057】
<比較例3>
以下の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(6)を調整した。
・着色剤 :緑色顔料分散体(1) 26.0部
・バインダー樹脂 :バインダー樹脂溶液P−1 36.0部
・光重合性モノマー :東亜合成社製「アロニックスM−402」 2.5部
・光重合開始剤 :チバ・ジャパン社製 0.5部
「イルガキュアOXE−02」
・溶剤 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
35.0部
【0058】
<比較例4>
以下の配合組成で、混合物を均一になるように攪拌混合した後に、1μmのフィルタで濾過して、緑色感光性樹脂組成物(7)を調整した。
・着色剤 :緑色顔料分散体(1) 52.0部
・バインダー樹脂 :バインダー樹脂溶液P−1 18.0部
・光重合性モノマー :東亜合成社製「アロニックスM−402」 2.5部
・光重合開始剤 :チバ・ジャパン社製 0.5部
「イルガキュアOXE−02」
・溶剤 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
27.0部
【0059】
以下の表2に、上記実施例1〜3及び比較例1〜4で調整した緑色感光性樹脂組成物(1)〜(7)の組成を記す。
【0060】
【表2】

【0061】
<評価項目と評価方法>
実施例1〜3および比較例1〜4で調整した緑色感光性樹脂組成物(1)〜(7)について、下記の手順に従って評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0062】
(耐光性評価)
実施例1〜2、比較例1〜4の緑色感光性樹脂組成物を、スピンコーターにてガラス基板(100mm×100mm、0.7mm厚)に、乾燥膜厚が2μmとなるように塗布し、塗布基板を得た。次に、減圧乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量200mJ、照度30mWで紫外線露光を行った。25℃の0.2重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像後、クリーンオーブンにて230℃で1時間加熱焼成することで、それぞれの感光性着色組成物の硬化塗膜を得た。この硬化塗膜上に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極膜(膜厚1500Å)をスパッタリング法により形成し、評価用のサンプルを得た。耐光性は、作成したサンプルをキセノンウェザーメーターCi35A(ALTAS社製)にて、照度0.5mW/cm(340nm)、温度63℃、湿度50%RHの条件下にて200時間照射し、照射前後の分光特性を顕微分光光度計OSP−SP200(オリンパス光学社製)で測定し、色差(ΔE*ab)を求め、顕微鏡にて試験後の外観観察をすることで評価を行った。耐候性評価の判定基準については、○:ΔE*ab≦3、×:ΔE*ab>3、とした。
【0063】
(感度)
感度の評価は、残膜率、すなわち、現像時に膜厚が成膜時の90%以上となるように光硬化させるのに必要な露光量を測定することで実施した。評価の判定基準については、○:感度≦50mJ/cm、×:感度>50mJ/cm、とした。
【0064】
(塗工性)
スピンコーターによって塗布した基板を目視で観察し、均一に塗布できているものを〇、面内で膜厚に差ができ、ムラ状になっているものを×とした。
【0065】
【表3】

【0066】
<比較結果>
表3の結果から、以下のことが明らかである。すなわち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いた緑色感光性樹脂組成物において、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより重合性不飽和結合を導入したバインダー樹脂を用いた実施例1〜3については、高感度化を実現しながらも、フタロシアニンラジカルアニオンの発生を促進することなく、耐候性が改善されていることがわかる。
【0067】
これに対し、ウレタン結合を含有する、水酸基へのイソシアネートを付加することで重合性二重結合を含有したアクリル樹脂(P−4)を用いた比較例1では、耐候性は悪い。また、エチレン性不飽和結合を有さないアクリル樹脂(P−5)を用いた比較例2においては、耐候性はよいものの、感度は低く、塗膜としてのパターニング適性に欠ける結果となった。比較例3においては、顔料濃度が低いため、高色度域を達成するために必要な膜厚が厚くなり、塗工適正は悪かった。比較例4においては、顔料濃度が高く、本発明の樹
脂を導入する余地が僅かであり、効果が不十分となる結果であった。
【0068】
以上のように、実施例1〜3の実施例による本発明品は、比較例1〜4の比較品に比べて、耐候性、感度および塗工性において、いずれも良好な結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)光重合性モノマー、(D)光重合開始剤を含有する緑色感光性樹脂組成物にあって、前記(A)着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有するものであり、前記緑色感光性樹脂組成物における全固形分中の着色剤の濃度が30〜45重量%であって、かつ(B)バインダー樹脂として、重合性不飽和結合を含む単位構造を持つ樹脂を含有することを特徴とする、緑色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)バインダー樹脂の重合性不飽和結合が、カルボキシル基と不飽和二重結合を有する単量体および該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する単量体を付加させることにより導入されたことを特徴とする、請求項1に記載の緑色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の緑色感光性樹脂組成物を用いて形成されるフィルタセグメントを備えることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−103475(P2012−103475A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251807(P2010−251807)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】