説明

線形アクチュエータおよびその動作方法

【課題】線形アクチュエータの係止機構の複雑性を解消する。
【解決手段】線形アクチュエータ100は、ハウジング104、線形出力部材108、および回転式係止アセンブリ112を備える。線形出力部材は、径方向溝124を備え、ハウジング内の後退位置から軸方向に動かすことができる。回転式係止アセンブリは、ハウジング内で軸方向運動を抑制され、回転子116および係止部を備える。回転子は、第1の位置から第2の位置へと回転することができる。線形出力部材が後退位置にあるとき、回転子は、径方向溝を取り囲む。回転子が第1の位置へと回転するとき、係止部は、径方向溝に係合し、出力部材が後退位置から軸方向に運動することを妨げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、線形アクチュエータに関する。より詳細には、開示される実施形態の態様は、定位置に係止することができる線形アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の線形アクチュエータは、回転源により、あるいは空圧または油圧を用いて駆動することができる、出力ラムを有する。アクチュエータは、固定された位置における出力を保持するために、係止機構を有することができる。米国特許第4,463,661号においてTootleにより教示されるものなど、知られている係止機構は、アクチュエータ同期システムに係合し、したがって出力ラムへの間接的な係止しかもたらさない。線形アクチュエータを用いる直接係止機構が開発されており、これらは通常、より大きいサイズおよび質量を有する多部片ハウジングを備える。そのようなアクチュエータは、その一例がCarlinにより米国特許第5,267,760号において開示される、尖叉係止部を備える。いくつかの尖叉係止部構成は、単一部片のハウジングアクチュエータを可能にすることができるが、それらは、可撓性係止要素を用いる結果として疲労について考慮しなければならないという欠点を有する。係止アクチュエータは、油圧または空圧ではなく、回転源によって動作させることができる。Grimmにより米国特許第4,603,594号において開示されるものなど、現在の回転源で動作させられるアクチュエータは、ラムの運動の開始を可能にする前にアクチュエータ係止部を解放するために、電気的に動作させられる電磁機構(または回転源とは別個の他の機械的入力)を必要とするという欠点を有する。Sueにより米国特許第4,703,683号において、Deutchにより米国特許第4,240,332号において、およびDellaRoccaにより米国特許第4,742,758号において教示されるものなど、ボール式係止機構は、点接触応力が係止ボールにかかるためラムの外部荷重担持能力が低いという欠点を有する。Kopecek(本開示の発明者)により英国特許GB2435877号において開示されるものなど、直線運動係止スリーブおよびキー構成は、係止スリーブのために回転運動から直線運動への変換機構を備えるが、それには複雑性が伴う。したがって、上記で特定した少なくともいくつかの問題を克服する、線形アクチュエータ構成を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,267,760号明細書
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載するように、例示的な実施形態は、当業界で知られる、1つまたは複数の上記または他の欠点を克服する。
【0005】
開示される実施形態の一態様は、線形アクチュエータに関する。線形アクチュエータは、ハウジング、線形出力部材、および回転式係止アセンブリを備える。線形出力部材は、径方向溝を備え、ハウジング内の後退位置から軸方向に動かすことができる。回転式係止アセンブリは、ハウジング内で軸方向運動を抑制され、回転子および係止部を備える。回転子は、第1の位置から第2の位置へと軸方向に回転することができる。線形出力部材が後退位置にあるとき、回転子は、径方向溝を取り囲む。回転子が第1の位置へと回転するとき、係止部は、径方向溝を、径方向に動く係止キーに係合させ、出力部材が後退位置から軸方向に運動することを妨げる。
【0006】
開示される実施形態の別の態様は、線形アクチュエータのハウジング内の後退位置において軸方向運動することができる、線形出力部材を係止する方法に関する。この方法は、軸方向運動が抑制された、回転式係止アセンブリ内に配置された回転子を、第1の回転子位置へと回転させることを含む。この方法は、回転子が第1の回転子位置へと回転するときに、回転式係止アセンブリ内の係止キーを移動させることをさらに含む。
【0007】
開示される実施形態のさらなる一態様は、ハウジングと、線形出力部材と、回転子と、係止部とを備える、線形アクチュエータに関する。この線形出力部材は、径方向溝を備え、ハウジング内の後退位置から軸方向に動かすことができる。回転子は、線形出力部材を取り囲みそれと同軸であるハウジング内に配置される。この係止部は、回転子の孔内に配置され、回転子の第1の回転子位置への回転に応答して、線形出力部材の径方向溝内に係合し、拘束される。
【0008】
例示的な実施形態のこれらおよび他の態様および利点が、添付の図面と関連付けて考えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、これらの図面は、本発明の範囲の定義としてではなく、説明のためにのみ描かれたものであり、本発明の範囲の定義に関しては、添付の特許請求の範囲が参照されるべきであることを理解されたい。さらに、これらの図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、そうではないと示されない限り、それらは単に、本明細書で説明される構造および手順を概念的に示すことが意図されているに過ぎない。さらに、いかなる適当なサイズ、形状、またはタイプの要素または材料を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の一実施形態による線形アクチュエータを示す前方斜視図である。
【図2】係止位置にある線形アクチュエータを示す前方斜視断面図である。
【図3】本開示の一実施形態による図2の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図4】非係止位置にある線形アクチュエータを示す前方斜視断面図である。
【図5】本開示の一実施形態による図4の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図6】本開示の一実施形態による係止位置にある線形アクチュエータを示す断面図である。
【図7】本開示の一実施形態による非係止位置にある線形アクチュエータを示す断面図である。
【図8】本開示の一実施形態による線形アクチュエータを示す断面図である。
【図9】本開示の一実施形態による図8の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図10】本開示の一実施形態による図8の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図11】本開示の一実施形態による図8の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図12】本開示の一実施形態による図8の線形アクチュエータを示す断面図である。
【図13】本開示の一実施形態による線形アクチュエータのラムを係止するための工程ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、開示される実施形態の態様を組み込む線形アクチュエータ100を示す前方斜視図である。アクチュエータ100は、外部ハウジング104および出力ラム108(本明細書では「線形出力部材」とも呼ばれる)を有する。図2は、図1に示すような後退位置などからハウジング104に出入りして(方向矢印Xにより示す)軸方向に運動することができる、出力ラム108を示す。非限定的な例として、ハウジング104が限定はされないが航空機などより大きい物のフレームに取り付けられる一方で、ラム108は、ドア、パネル、またはエンジン逆噴射装置に取り付けることができる。ラム108の運動は、それによりドア、パネル、または逆噴射装置、あるいは他の取付け面の位置を決定する。ラム108は、ハウジング104内へと後退させられるとき、ラム108がハウジング104から不用意にまたは意図せずに拡張することを防ぐように係止することができる。開示される実施形態の態様は、線形アクチュエータ100のための回転式係止機構を提供する。図2は、軸方向に固定された係止キーを備える回転式係止機構112を示し、これらの係止キーは、係止部回転子116内の溝により径方向に移動させられて、出力ラム108内の径方向溝に係合し、それによりラム108がその後退位置から軸方向に動くことを係止および防止する。内部溝を備える係止リング136は、係止キーを径方向に誘導する。回転子の非係止位置は、キーが径方向溝から離れることを可能にするが、回転子の係止位置は、キーを溝内に係合させ拘束する。
【0011】
図2および図3は、ラム108が係止位置で回転式係止アセンブリ112によってハウジング104内に保持された状態にある、アクチュエータ100の断面図を示す。一実施形態では、回転式係止アセンブリ112は、回転子116および係止キー120(本明細書では「係止部」とも呼ばれる)を備える。ラム108は、係止キー120を内部に配置することができる径方向溝124を備える。言い換えると、係止位置では、係止キー120はラム108の径方向溝124に係合し、ラム108の径方向運動を妨げる。
【0012】
図2および図3に示すように、回転子116は、ラム108と同軸上に配置されており、かつ孔128を備え、孔128は、係止キー120の冠部132と連結する内径を有する。以下でさらに詳細に説明するように、係止リング136は、ハウジング104に固定され、かつ溝138を備え、溝138は、係止キー120を誘導し、それらの移動を径方向運動に限定する。例示的な一実施形態では、係止キー120が径方向溝124に係合させられるとき、孔128の内径は、冠部132の外径とほぼ等しくなる。回転子116が図2および図3の係止位置内に配置されるのに応答して、孔128は、係止キー120の冠部132に連結し、係止キー120は、いかなる外向きの(たとえば図2の方向Yなど)径方向運動も抑制されることを理解されたい。したがって係止キー120は、回転子116によってラム108の溝124に係合し、溝124内に拘束または保持される。
【0013】
図2を参照すると、係止キー120が溝124内に係合し保持されるのに応答して、ラム108は軸方向に係止される。すなわち、図2の右側にX(軸)方向に外部から加えられる張力に応答して、ラム108の運動が防止される。ラム108に加えられる(ラム108をまず非係止状態にせずに引っ張ろうとする)外部張力荷重に応答して、加えられる荷重はラム108により作用させられ、溝124を介して係止キー120に伝達される。係止キー120は次いで、加えられた張力荷重を、固定要素である係止リング136内へと作用させ、係止リング136は、その荷重をハウジング104内へと作用させる。したがって、ラム108は、ラム108に外部荷重が加えられるのに応答して、ハウジング104内でしっかりと係止されたままとなる。
【0014】
図4および図5は、回転子116が非係止位置にある、アクチュエータ100を示す断面図である。図3、図4、および図5を参照すると、回転子116の一例は、図4および図5に示すようにそれぞれの係止キー120の冠部132を内部に配置することができる、3つの軸方向溝140または凹部を備える。回転子116を非係止位置に置くことにより、回転子116が溝140内に係止キー120を受けることが可能になり、それにより非係止状態が定まる。非係止状態では、ラム108は、後退位置からハウジング104の外へと、たとえば図4の右などへ軸方向に拡張することができる。
【0015】
一実施形態では、径方向溝124の後縁部(図4の左に向かう)は、軸方向に角度付けられた表面144を備え、係止キー120の後縁部は、径方向溝124の表面144と相補的な、軸方向に角度付けられた対応する表面148を備える。静止した係止リング136は、開口部152を備え、開口部152は、係止キー120の2つの表面160と係合する2つの誘導面156を有する。係止リング136の誘導面156(図5)は、係止キー120の運動が径方向に限定されるように、表面156と160との間に適当な間隙を備えて設計される。回転子116が非係止位置にあることに応答して、係止キー120は、溝124から自由に離れる。ラム108の、後退位置から外へと拡張する軸方向の運動により、ラム108の角度付けされた表面144と係止キーの角度付けされた表面148との係合がもたらされる。角度付けされた表面144、148の幾何学形状により、ラム108の運動に伴う軸方向の力の一部が、係止キー120上へと径方向外向きに方向付けられる成分へと分解される。図5に最もよく見られるように、径方向外向きに方向付けられる力、および誘導面156の拘束に応答して、係止キー120は非係止位置へと、回転子116の溝140内に引き下がり、または径方向外向きに動く。
【0016】
開示される実施形態は、係止部追従部162を備えることができ、係止部追従部162は、ラム108と同じ直径であり、ばね164によってラム108の拡張方向に向かって偏位させられる。係止部追従部162は、ラム108が最初に拡張し、図示のような引き下がった位置において係止キー120を径方向に保持するとき、ラム108に追従する。これにより、ラム108が延びる間または延びた後に、そうでなければ周囲の振動などに応答して生じるおそれがある、係止キー120の径方向内向きの落下が防止される。
【0017】
一実施形態では、回転子116は、たとえば油圧または空圧ピストンなど線形ピストンによって、制御し作動させることができる。図6および図7は、ピストンを有し、かつそれぞれ係止および非係止状態にある回転子116に対応する、アクチュエータ100の断面図を示す。
【0018】
図6を参照すると、係止ピストン168は、ピン170によって回転子116に結合される。一実施形態では、収容されたばね構成172は、係止ピストン168を、回転子116の係止位置に相当する図6の右に向かって偏位させる。このばね力による偏位は、以下でさらに詳細に説明するように、油圧または空圧などのいかなる外力も用いずに、係止部回転子116が係止位置に留まることを保証する。
【0019】
一実施形態はまた、回転子116が係止位置にあるか非係止位置にあるかを遠隔指示するために、状態指示器176を備えることもできる。状態指示器は、スイッチ180、標的184、および係止アーム188を備える。係止アーム188は、ピストン168に結合され、枢動部192の周りでピストン168の運動に応答する。図6に示すように、回転子116が係止位置にあることに応答して、係止アーム188は、標的184がスイッチ180に接触し、回転子116が係止位置にあることを指示するように位置決めされる。
【0020】
一実施形態は、回転子116とピストン168との間の、「受け」とも呼ばれる追加の界面を備えることができる。この受けの一例は、回転子116の溝195と連結するように設計されたショルダ193を、ピストン168上に備えることができる。この受けは、ピン170が破損した場合に、振動により回転子116が独自に係止位置から非係止位置へと回転し、または「逃れる」ことができないように設計される。そのような受けが存在しないと、ピン170の故障(たとえば破損したピンなど)の際に、スイッチ180が、回転子116が実際は非係止位置にあるにもかかわらず係止位置にあると指示してしまうおそれがある。
【0021】
図7は、非係止位置にあるピストン168、したがって回転子116を示す。再び図6を参照すると、ピストン168が左に動かされ、したがって回転子116がピン170によって非係止位置へと時計回りに回転させられたことが理解されるであろう。ピストン168の係止位置から非係止位置への動きにより、係止アーム188が枢動部192の周りで反時計回りに回転させられ、したがって標的184がスイッチ180から離される。スイッチ180はそれにより、回転子116が非係止位置にあることを指示する。
【0022】
一実施形態では、ピストン168は、2つの動的封止部196、200(図7)を備えることができる。係止位置から非係止位置への移動は、油圧または空圧を2つの動的封止部196、200の間に加えることにより完了することができる。動的封止部196が、図示のように動的封止部200よりも大きく設計される場合、封止部196、200の間の面積の差により、ピストンを左に動かす力が生み出される。ピストン168のこの運動は、ばね構成172(図6)を圧縮し、回転子116に係合するピン170が左へと動いて、回転子116を時計回りに非係止位置へと動かす。
【0023】
一実施形態では、ラム108は、たとえば油圧または空圧など、圧力によって作動させることができる。図2および図4を再び参照すると、ラム108は、動的封止部204を備えることができ、アクチュエータ100は、動的封止部204の拡張側208または後退側212(それぞれ図2および図4の左および右に示される)のいずれかに圧力を加えるために、適当な制御装置を備えることができる。ラム108の動的封止部204の拡張側208は、拡張側208に圧力を加えることにより同時に係止ピストン168の動的封止部196と200との間に圧力が加えられるように、係止ピストン168とポーティング(porting)を分担することができる。このようにして、圧力を1回加えることにより、ラム108の係止解除および拡張を実現することができる。たとえば、ラム108の動的封止部204の拡張側208に圧力を加えることに応答して、係止ピストン168は、係止位置(ばね構成172によりそこに向けて偏位させられる)から非係止位置へと移動させられ、それにより回転子116を非係止位置へと回転させる。ラム108の拡張側208に圧力を加えることによってかけられる、ラム108上の軸方向の力の一部は、角度付けされた表面144、148により分解されて、外向きの径方向の力を係止キー120にかけ、係止キー120は、回転子の孔128の軸方向溝140内へと移動させられ、それにより、ラム108がハウジング104内の後退位置から移動することを可能にする。係止部追従部162は、ラム108に追従し、それにより、係止キー120を溝140内のそれらの引き下げられた位置内に保持する。
【0024】
拡張サイクルの完了に続いて、ラム108および再係止部回転子116を後退させるために、動的封止部204の拡張側208が減圧され、動的封止部204の後退側212に圧力が加えられる。したがって、動的封止部204の右側に圧力が存在する。次いでラム108は後退し、係止部追従部162を(図2および図4の左へと)押しのける。係止部追従部が押しのけられ、ラム108が後退位置にある状態で、係止キー120が、ラム108内の径方向溝124と位置合わせされる。ばね構成172は、係止ピストン168を右へと押すように作用し(図6および図7参照)、回転子116を反時計回りに回転させる。溝140の径方向に角度付けされた表面213は、係止キー120の冠部132に隣接する係止キー120の径方向に角度付けされた表面215(図3参照)と連結して、回転力の一部を内向き方向の径方向の力に分解し、係止キー120をラム108の径方向溝124内へと移行または移動させる。回転子116は、回転子孔128の内径が係止キーの冠部132を超えて回転するまで反時計回りに回転し続け、ラム108が確実に係止位置に保持されるようにする。
【0025】
一実施形態では、多重アクチュエータ100の動きを同期させることが望ましいことがある。図2を参照すると、アクチュエータ100は、ボールナット216、ボールねじ220、ウォーム歯車224、およびたとえば連結器232を有するウォーム228など、同期構成を備えることができる。ボールナット216は、拡張または後退のいずれかを行うときにラム108から軸方向に移動するように、ラム108に結合され、またはラム108内に固定される。ボールナット216はまた、当業者には容易に理解されるようにしてボールねじ220と係合させられ、そのようなボールねじ220は、ボールナット216の軸方向運動に応答して、中心軸Xの周りで回転する。ウォーム歯車224は、ボールねじ220に固定され、したがって、ボールねじ220が回転するときに回転する(当業界で「後進駆動ウォーム歯車」として知られる構成)。ウォーム歯車224は、当業者には容易に理解されるようにしてウォーム228に係合し、ウォーム歯車224の回転に反応して、ウォーム228の周りで回転する。連結器232(図2に星形構成として示す)は、図示されたアクチュエータ100の、他のアクチュエータの同様の連結器への外部リンクを提供し、それにより、機械的な同期リンクをそれらの間に提供する。
【0026】
ラム108および回転子116の空圧式または油圧式作動部を有する、本開示の実施形態を図示および説明してきたが、本開示の範囲はそのように限定されず、ラム108および回転子116の作動の他の手段を備えることができることを理解されたい。たとえば、ラム108および係止ピストン168を駆動するために使用される加圧されるシステムは、当業者には理解されるように、ラム108を駆動するためにボールねじ220に結合される遊星歯車構成で置換することができる。
【0027】
図8は、機械的に駆動されるアクチュエータ101の例示的な一実施形態を示す。機械的アクチュエータ101は、遊星歯車構成236を備え、遊星歯車構成236は、太陽歯車240、遊星歯車244、リング歯車248,および遊星キャリヤ252を有する。遊星歯車244は、太陽歯車240およびリング歯車248の両方に係合させられる。遊星歯車構成の一般的な動作は当業界で理解されているので、その完全な説明はここでは必要ない。
【0028】
遊星歯車構成236の太陽歯車240は、歯車構成236への機械的駆動入力を提供し、遊星キャリヤ252は、ボールねじ220を遊星歯車244に結合して、ラム108を拡張および後退させるためのエネルギーを提供する。遊星歯車構成236のリング歯車248(環部)は、軸受溝内に収容し、回転子延長部256により回転子116に直接取り付けることができる。したがって、この実施形態では、ボールねじ220は、駆動装置として働き、ラム108は、ボールねじ220の回転に応答して軸方向に動くことが理解されるであろう。
【0029】
例示的な一実施形態では、非係止位置へと動くための回転子116の回転は、遊星歯車アセンブリ236によって提供することができ、このアセンブリはまず、空動きストローク中に「星」モードとして知られるモードで動作する。図10を参照すると、回転子延長部256(リング歯車248に結合される)は、径方向スロット260に係合するキーとして作用し、そのことは、回転子116の係止位置から非係止位置への回転に等しい(したがってそれを定める)。一実施形態では、回転子116を係止位置へと直接偏位させる、(ばねアセンブリ172と類似する)ねじりばねを備えることができる。
【0030】
図8および図9をまとめて参照すると、ラム108を拡張するために、エネルギーが(たとえばモータなどにより)太陽歯車240に入力される。ラム108は、係止キー120により、いかなる軸方向運動も抑制されるので、ボールねじ220は、ラム108を回転および前進させることができない。したがってキャリヤ252は、空動きにより係止キー120の係止が解除されるまで、係止される。したがって、回転入力への太陽歯車240による唯一の応答は、回転子116に結合されたリング歯車248を回転させることである。回転子116の回転に応答して係止キー120の係止を解除することは、回転子延長部256がハウジング104のスロット260内の底にあることと、機械的に一致する。スロット260の延長部256が底にあること、および係止キー120の係止を解除することによって、リング歯車248が係止され、遊星キャリヤ252が解放されて、遊星歯車244が太陽歯車240の周りで公転することが可能になる。こうして、遊星歯車構成236は、星モード(固定された遊星キャリヤ252、自由な太陽240、および自由な環部248)から遊星モード(固定された環部248、自由な太陽240、および自由な遊星キャリヤ252)へと変化する。遊星モードでは、太陽歯車240内へのエネルギーが、遊星歯車244を太陽歯車240の周りで公転させるためおよび遊星キャリヤ252を駆動するために用いられ、それがボールねじ220を駆動し、それにより、ラム108をボールナット216により軸方向に動かす。
【0031】
ラム108を後退させ、回転子116を係止位置へと回転させるためには、この工程は逆にされる。太陽歯車240を駆動するモータは、方向が逆になる。リング歯車248は、荷重の方向を逆にし、回転子116を非係止位置から係止位置へと回転させようとする。ただし係止キー120は、係止部追従部162によって回転子116の溝140内の引き下げられた位置に拘束され、それにより回転子116のいかなる回転も妨げる。これにより、リング歯車248が(回転子延長部256により)効果的に係止され、遊星モードを定める。したがって、太陽歯車240の入力回転は、キャリヤ252へと伝達され、それにより、ボールねじ220が回転させられラム108が後退させられる。
【0032】
ラム108が完全に後退位置に来ると、それに応答して、係止部追従部162が、ラム108によって(軸方向に)押しのけられ、係止キー120が、ラム108内の径方向溝124と位置合わせされる。ラム108が完全に後退させられて、さらなるいかなる軸方向運動も可能でなくなることに応答して、ボールねじ220(およびしたがって遊星キャリヤ252)が係止され、遊星歯車構成236が、遊星モードから星モードに移行する。このことにより、回転子116を非係止位置から係止位置へと回転させ、係止キー120を、それぞれ回転子216の溝の連結する表面213、215および係止冠部132によって径方向内向きに溝124内へと押して、ラム108を本明細書で説明したように再び係止することが可能になる。
【0033】
空動きストローク(星モード)中の、リング歯車248および回転子116の出力回転方向が、ラム108の拡張(遊星モード)中の、遊星キャリヤ252およびボールねじ220の出力回転方向と反対であることが理解されるであろう。これは、星モードおよび遊星モードの両方で動作させられる遊星歯車の基本的な特徴である。この空動きの特徴により、駆動トルクに加えていかなる追加の命令または信号も必要とせずに、自己係止および自己係止解除する設計がもたらされる。
【0034】
明確さを増すために、本明細書において説明され、図8において示されるようなアクチュエータ101の、さらなる断面図を提供する。図10は、太陽歯車240、遊星歯車244、リング歯車248、および遊星キャリヤ252を備える、図8に示す遊星構成236の断面図を示す。図11は、リング歯車248、遊星キャリヤ252、および回転子延長部256を備える、図8に示す遊星構成236の断面図を示す。図12は、係止キー120が係止位置にある回転子116の断面図を示す。
【0035】
上記の図において、図13は、たとえばラム108をアクチュエータ100内の後退位置に係止するなど、線形アクチュエータの線形出力部材を係止するための方法の、例示的な工程ステップの流れ図を示す。工程ステップ300は、アクチュエータ100の回転式係止アセンブリ112内に配置された回転子116を、第1の係止された回転子位置へと回転させることを含み、回転式係止アセンブリ112は、アクチュエータ100のハウジング104内の軸方向運動が抑制される。
【0036】
回転子116を第1の係止位置へと回転させることに応答して、工程ステップ310は、回転式係止アセンブリ112内の係止キー120を移動させて、ラム108の径方向溝124に係合させることを含む。回転子116を第1の係止された回転子位置へと回転させることに応答して、係止キー120は、回転子孔128の内径により、ラム108の径方向溝124内に拘束されることがさらに理解されるであろう。この工程は、回転子116を第2の非係止部回転子位置へと回転させることをさらに含むことができ、それにより、係止キー120が軸方向溝140内へと径方向外向きに移動するための間隙および自由度をもたらし、係止キーを径方向溝124から離すことを可能にする。表面144、148が連結するので、ラム108の後退位置からの軸方向運動によって一部の軸方向の力が径方向の力の成分へと分解されて、係止キー120をラム108の径方向溝から離す。
【0037】
開示されるように、本開示のいくつかの実施形態は、長さおよび直径ならびに質量のうちの少なくとも1つにおいてサイズ全体が縮小された単一部片のハウジングを用いて、ラムの堅固な直接の係止を提供する能力、別個の電気的/水圧的/油圧的および/または機械的な係止または非係止命令または信号を用いずに、線形ラムの係止および解放を開始する能力、ならびにより高い信頼性をもたらすための単純に係止される荷重通路などの、利点を備えることができる。
【0038】
3つの軸方向溝を備える回転子を有する、本開示の実施形態を説明してきたが、本開示の範囲は、そのように限定されず、たとえば1つ、2つ、4つ、またはそれ以上の溝など、らせん形の溝を含むことができる他の数の溝を有する回転子を備えることが企図されることが理解されるであろう。さらに、線形ピストンにより回転子を制御する、本開示の実施形態を説明してきたが、本開示の範囲はそのように限定されず、たとえば線形モータまたはソレノイドなど、代替手段によって制御することができるピストンを備えることが企図されることが理解されるであろう。さらに、星形構成を有する連結器である連結器232(図2に星形構成として示す)に関して本開示の実施形態を説明してきたが、本開示の範囲はそれに限定されず、たとえば正方形、六角形、八角形、トルクス(TORX)など、トルク伝達手段の他の幾何学形状を備えることが企図されることが理解されるであろう。
【0039】
すなわち、その例示的な実施形態に適用されるときの本発明の基本的な新規特徴を、図示、説明、および指摘してきたが、図示の装置の形態および詳細ならびにそれらの動作における、様々な省略および代用ならびに変更が、本発明の精神から逸脱することなく当業者により行われ得ることが理解されるであろう。さらに、同じ結果を実現するために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を果たす、これらの要素および/または方法ステップのすべての組み合わせが、本発明の範囲に包含されることがはっきりと意図される。さらに、本発明の何らかの開示された形態または実施形態と関連付けて図示および/または説明される、構造および/または要素および/または方法ステップは、開示されまたは説明されまたは示唆される他の何らかの形態または実施形態に、一般的な設計上の選択の問題として組み込むことができることが認識されるべきである。したがって、本明細書に添付される特許請求の範囲によって指示されるようにのみ限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
100 アクチュエータ
101 アクチュエータ
104 ハウジング
108 ラム
112 回転式係止アセンブリ
116 回転子
120 係止キー
124 径方向溝
128 孔
132 冠部
136 係止リング
138 溝
144 表面
148 表面
152 開口部
156 誘導面
160 表面
162 係止部追従部
164 ばね
168 係止ピストン
170 ピン
172 ばね構成
176 状態指示器
180 スイッチ
184 標的
188 係止アーム
192 枢動部
193 ショルダ
195 溝
196 動的封止部
200 動的封止部
204 動的封止部
208 拡張側
212 後退側
213 表面
215 表面
216 ボールナット
220 ボールねじ
224 ウォーム歯車
228 ウォーム
232 連結器
236 遊星構成
240 太陽歯車
244 遊星歯車
248 リング歯車
252 遊星キャリヤ
256 回転子延長部
260 スロット
300 工程ステップ
310 工程ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内の後退位置から軸方向に動かすことができ、径方向溝を備える線形出力部材と、
前記ハウジング内に配置され、軸方向運動が抑制される回転式係止アセンブリとを備える線形アクチュエータであって、前記回転式係止アセンブリが、
前記線形出力部材が前記後退位置にあることに応答して、前記線形出力部材の前記径方向溝を取り囲んで配置され、第1の回転子位置から第2の回転子位置へと回転することができる回転子と、
前記回転子の孔内に配置された、径方向に移動することができる係止部であって、前記回転子の前記第1の回転子位置への回転に応答して、前記径方向溝に係合し、前記後退位置からの前記出力部材の軸方向運動を妨げる係止部とを備える、線形アクチュエータ。
【請求項2】
前記回転子の前記第2の回転子位置への回転に応答して、前記係止部が、前記径方向溝から自由に離れる、請求項1記載の線形アクチュエータ。
【請求項3】
前記径方向溝の後縁部が、軸方向に角度付けられた表面を備え、
前記係止部の後縁部が、前記径方向溝の前記後縁部の前記軸方向に角度付けられた表面と相補的な軸方向に角度付けられた表面を備える、請求項2記載の線形アクチュエータ。
【請求項4】
前記係止部が、前記出力部材の前記後退位置からの軸方向運動に応答して前記外周溝から離れる、請求項3記載の線形アクチュエータ。
【請求項5】
前記ハウジングが、一部片ハウジングである、請求項1記載の線形アクチュエータ。
【請求項6】
前記回転子の前記孔が、軸方向溝を備え、
前記回転子が前記第2の回転子位置へと回転させられるのに応答して、前記軸方向溝が、前記係止部に隣接して配置される、請求項1記載の線形アクチュエータ。
【請求項7】
前記軸方向溝が、径方向に角度付けされた表面を備え、
前記係止キーの第1の端部が、前記軸方向溝の前記径方向に角度付けされた表面と相補的な径方向に角度付けされた表面を備える、請求項6記載の線形アクチュエータ。
【請求項8】
第1の位置から第2の位置へと直線運動することができる係止ピストンをさらに備え、前記係止ピストンが前記回転子に動作可能に連結される、請求項1記載の線形アクチュエータ。
【請求項9】
前記係止ピストンが、圧力に応答して、前記第1の位置から前記第2の位置へと移動し、
前記回転子が、前記係止ピストンの前記第2の位置への移動に応答して、前記第2の回転子位置へと回転する、請求項8記載の線形アクチュエータ。
【請求項10】
前記線形出力部材が、前記加圧および前記回転子の前記第2の回転子位置への回転に応答して前記ハウジング内の前記後退位置から拡張する、請求項9記載の線形アクチュエータ。
【請求項11】
第1の係止ピストン動的封止部と、
前記第1の係止ピストン動的封止部より大きい第2の係止ピストン動的封止部とをさらに備える、請求項9記載の線形アクチュエータ。
【請求項12】
遊星歯車列をさらに備え、前記遊星歯車列が、
太陽歯車と、
前記太陽歯車の周りでの前記遊星歯車の公転に応答して軸方向に動く前記線形出力部材と、動作可能に連絡する前記太陽歯車に係合する遊星歯車と、
前記遊星歯車に係合させられ、前記回転子に結合されるリング歯車とを備え、前記回転子が、前記ハウジング内の溝によって定められる前記第1の回転子位置と第2の回転子位置との間で回転することができる、請求項1記載の線形アクチュエータ。
【請求項13】
前記線形出力部材と結合されたボールナットと、
前記遊星歯車と結合されたボールねじとをさらに備え、前記線形出力部材が、前記ボールねじの回転に応答して軸方向に動く、請求項12記載の線形アクチュエータ。
【請求項14】
前記回転子が前記第1の回転子位置にあることに応答して、前記遊星歯車が前記太陽歯車の周りを公転することが妨げられる、請求項12記載の線形アクチュエータ。
【請求項15】
前記線形アクチュエータのハウジング内で軸方向に運動することができる線形出力部材を、線形アクチュエータ内の後退位置に係止する方法であって、
前記アクチュエータの、軸方向運動が抑制された回転式係止アセンブリ内に配置された回転子を、第1の回転子位置へと回転させることと、
前記回転子を前記第1の位置へと回転させることに応答して、前記回転式係止アセンブリ内の係止部を、前記線形出力部材の径方向溝に係合するように移動させることとを含む方法。
【請求項16】
前記回転子を前記第1の回転子位置へと回転させることに応答して、前記係止部を前記線形出力部材の前記径方向溝内に拘束することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記回転子を第2の回転子位置へと回転させることと、
前記回転子を前記第2の回転子位置へと回転させることに応答して、前記係止部が前記線形出力部材の前記径方向溝から離れることを可能にすることとをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記線形出力部材を前記後退位置から動かすことと、
前記線形出力部材を前記後退位置から動かすことに応答して、前記係止部を前記線形出力部材の前記径方向溝から離すこととをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ハウジングと、
前記ハウジング内の後退位置から軸方向に動かすことができ、径方向溝を備える線形出力部材と、
前記線形出力部材を取り囲み、それと同軸の前記ハウジング内に配置される回転子と、
前記回転子の孔内に配置され、前記回転子の第1の回転子位置への回転に応答して、前記線形出力部材の前記径方向溝内に係合し拘束される係止部とを備える、線形アクチュエータ。
【請求項20】
前記回転子の前記孔が、軸方向溝を備え、
前記回転子が第2の回転子位置へと回転させられるのに応答して、前記軸方向溝が前記係止部に隣接して配置される、請求項19記載の線形アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−141058(P2012−141058A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285342(P2011−285342)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】