説明

線材の巻取方法

【課題】 巻太りや巻細りの検出感度が高く、しかも、トラバース反転位置の制御に速やかにフィードバックできる線材の巻取方法を得る。
【解決手段】 巻取ボビン5に接近したパスラインで線材3に作用する巻取り張力を検出する張力検出手段13を備え、トラバース反転位置を制御するトラバース制御回路11では、巻取ボビン5の鍔部5b,5cからボビン軸方向内側に所定距離以上離れた所定の領域での巻取り張力の平均値を基準張力として、、この基準張力をもとに算出される評価基準値を設定して、巻取ボビン5の鍔部5b,5cからボビン軸方向への離間距離が所定距離未満になる領域での巻取り張力と評価基準値とを所定の基準で比較して巻太り又は巻細りを判定して、トラバース反転位置を自動調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電線や光ファイバ等の線材を巻取ボビンに積層状態に整列させて巻取る線材の巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、線材の巻取方法として、回転駆動されて線材を巻取る胴部の両側部に鍔部を有した巻取ボビンと、巻取ボビン上への線材の導入位置(パスライン)を設定するガイドプーリと、巻取ボビンをその軸方向にトラバースさせるボビントラバース機構と、巻取ボビンの鍔部付近で巻太りや巻細りが発生することを防止するために、ボビントラバース機構によるトラバース反転位置を制御するトラバース制御回路とを備えて、線材を巻取ボビンに積層状態に整列巻できる線材の巻取方法が各種提案されている。
【0003】
このような巻取方法を実施する装置は、一般的に、巻取ボビンへの線材の巻取り速度の変動を防止するために、ガイドプーリの前段に、変位により線材送給量を自動調整するダンサー(ダンサーロール)が装備される。
そして、トラバース反転位置を制御する方法としては、ダンサーの変位を監視し、このダンサーが基準位置から上方(貯留している線材を放出する方向)に変位するか、下方(線材の撓みを吸収する方向)に変位するかによって、巻取ボビンにおける線材の巻太り又は巻細りの発生を検出し、基準位置からの変位量に応じて、トラバース反転位置をフィードバック制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−310369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ダンサーの変位は、ダンサー自体に線速に応じた制御が働くため、巻太りや巻細りの検出感度が低く、巻太りや巻細りを厳密に防止することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、巻太りや巻細りの検出感度が高く、しかも、速やかにトラバース反転位置の制御にフィードバックして、巻太りや巻細り等の巻不良の発生を効果的に防止することができる線材の巻取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の線材の巻取方法は、
線材を巻取る胴部の両側に鍔部を有した巻取ボビンを胴部の軸方向にトラバースさせ、前記線材の巻取り層毎に前記鍔部付近でトラバースを反転させ、前記線材を前記巻取ボビンに積層状態に巻取る線材の巻取方法であって、
前記巻取ボビンに近いパスラインで前記線材に作用する張力を巻取り張力として検出し、
前記鍔部からボビン軸方向内側への離間距離が所定距離以上となる第1の所定領域での前記巻取り張力をもとに評価基準値を設定し、前記離間距離が所定距離未満になる第2の所定領域での前記巻取り張力と前記評価基準値とを所定の基準によって比較することによって、巻き状態を自動判定して、前記判定結果に基づいてトラバース反転位置を自動調整することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る請求項2記載の線材の巻取方法は、請求項1に記載の線材の巻取方法において、
前記線材に作用する巻取り張力を、前記巻取ボビンに接近した位置に装備したセンシングローラを使用して検出することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る請求項3記載の線材の巻取方法は、請求項1又は2に記載の線材の巻取方法において、
前記ボビンの同一鍔部側で、巻太りの判定によって前記トラバース反転位置をボビン内側に調整する動作が、予め設定した基準回数以上連続するとき、前記トラバース反転位置を規定量だけボビン外側に修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
巻取ボビンの端部の鍔部付近で巻太りや巻細りが発生し、それに伴って巻取り張力に変動が生じると、巻取ボビンに近いパスライン上に装備されたセンシングローラが直ちにその変動を検知する。そして、センシングローラの検出した巻取り張力を評価基準値と比較することで、即座に巻太りや巻細りの状態が検知される。従って、ダンサーの変位により巻太りや巻細りの発生を検出する従来の場合と比較すると、巻太りや巻細りを迅速に検知でき、高い検出感度を得ることができる。
また、巻太りや巻細りの判定に使用する評価基準値は、鍔部から所定距離以上離れたボビンの胴部での正常巻のときの巻取り張力の平均値をもとにその都度算出されるため、巻取ボビン上への線材の積層数が進んでも、安定した正確な判定が可能になる。
そして、例えば巻太りの判定結果を、速やかにトラバース反転位置の制御にフィードバックするため、巻太りや巻細り等の巻不良の発生を効果的に防止することができ、巻不良のない良好な線材の巻取を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る線材の巻取方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図4は本発明に係る線材の巻取方法の一実施形態を示し、図1は本発明に係る巻取装置の要部の概略構成図、図2は図1に示した巻取装置において、巻取ボビンに作用する巻取り張力と、巻取ボビン上の巻取り位置との相関を示す説明図、図3は図1に示した巻取装置により実施される線材の巻取方法の処理手順を示すフローチャート、図4は評価基準値と巻取り張力との関連を示す図である。
【0012】
図1に示した巻取装置1は、図示せぬ回転駆動機構によって回転駆動されて光ファイバ等の線材3を巻取る円筒状の胴部5aの両側に鍔部5b,5cを有した巻取ボビン5と、この巻取ボビン5上への線材3の導入位置(パスライン)を設定するガイドプーリ7と、このガイドプーリ7の前段に装備される図示せぬダンサーローラーと、巻取ボビン5をボビン軸方向にトラバースさせ、線材3の巻取り層毎に巻取ボビン5の鍔部5b,5c付近でトラバースを反転させるボビントラバース機構9と、巻取ボビン5の鍔部5b,5c付近で巻太りや巻細りが発生することを防止するためにボビントラバース機構9によるトラバース反転位置を制御するトラバース制御回路11とを備えて、線材3を巻取ボビン5に積層状態に整列巻取りさせる。
【0013】
ガイドプーリ7の前段に装備される図示せぬダンサーローラーは、ガイドプーリ7の前段の架空線材3に宙づり状態に設けられて自体の変位により線材送給量を自動調整するもので、巻取ボビン5への線材3の巻取り速度の変動を防止するために装備される。
【0014】
巻取ボビン5は、ボビントラバース機構9により、図1の矢印(イ)に示す方向に往復移動可能にされている。
トラバース制御回路11は、巻取ボビン5の胴部5a上での線材3の巻取り位置が鍔部5b,5cの際まで到達すると、反転の指示をボビントラバース機構9に送出して、巻取ボビン5のトラバース方向を反転させる。
巻取り位置が巻取ボビン5上の鍔際に到達したか否かは、線材3のパスラインを挟んで配置された一対の鍔検出センサ15,16によって行う。
鍔検出センサ15,16は、何れも線材3のパスラインから距離sだけ離れて配置されている。各センサ15,16は、巻取ボビン5に向けて出射したセンサ光15a,16aの反射位置から、各鍔検出センサ15,16の前方に鍔部が到達したことを検出する。
【0015】
図1の場合は、鍔検出センサ16が、鍔部5cがセンサ前方に到達していることを検出する。このとき、線材3の巻取り位置は、鍔部5cの際から約距離sだけボビン内側に離れた位置にある。つまり、鍔検出センサ16が鍔部5cの内端を検出した後、更に距離sの分だけ、巻取ボビン5を矢印(ロ)方向にトラバースさせれば、線材3の巻取り位置が鍔部5cの際まで到達したことになる。従って、鍔検出センサ16が鍔部5cの内端を検出した後、鍔部5cの内端位置が更に距離sの分だけ同方向にトラバースした後、トラバース反転を行えば、巻取られる線材3は、鍔部5cの際で折り返して、今度は鍔部5bに向かって整列巻されることになる。
【0016】
しかし、上記のように鍔検出センサ15,16によって鍔部5b,5cを検出して、線材3の巻取り位置を鍔部の際で折り返すように、トラバース反転を制御するようにしても、ボビン5の個体差や鍔部15,16の変形等の影響で、鍔部5b,5cの検出精度が低下すると、トラバース反転のタイミングが早まったり、或いは遅れたりすることによって、鍔部5b,5c付近で、巻太りや巻細り等の巻不良が発生する虞がある。
【0017】
そこで、本実施の形態の巻取装置1では、線材3の巻取り速度の変動の影響を吸収するダンサーローラーよりも巻取ボビン5に接近したパスライン上に、巻取ボビン5に巻取られる線材3に作用する巻取り張力を検出する張力検出手段13が装備されている。
本実施の形態の場合、張力検出手段13は、線材3が巻掛けられるセンシングローラ13aに、線材3からセンシングローラ13aに作用する張力(摩擦力)を検出して出力する張力検出素子13bを組み込んだものである。センシングローラ13aは、ダンサーローラーよりも巻取ボビン5に接近した位置で、ガイドプーリ7によるパスライン上に装備される。
【0018】
トラバース制御回路11では、図2に示すように、巻取ボビン5の鍔部5b,5cの内端からボビン軸方向の内側に所定距離X1以上離れた第1の所定領域S1での巻取り張力TS1の平均値をもとに算出される評価基準値Aを設定し、巻取ボビン5の鍔部5b,5cからボビン軸方向内側への離間距離が所定距離X1未満になる第2の所定領域S2での巻取り張力TS2と上記の評価基準値Aとを所定の基準によって比較することによって、巻太り若しくは巻細りとなる巻き状態の異常を自動判定して、この巻太り又は巻細りが解消されるように、トラバース反転位置を自動調整する。
【0019】
本実施の形態の場合、第1の所定領域S1は、各鍔部の内端から5mm〜25mm(なお、25mmは一例であり、これに限定されずに設定可能)の範囲である。即ち、鍔部内端からの第1の所定領域S1までの離間距離X1は5mmとなる。この第1の所定領域S1の範囲で、2mm間隔で巻取り張力TS1を5点測定し、その平均値を基準張力Tmとして、これに所定幅の閾値を加えて評価基準値Aを設定する。つまり、評価基準値Aは、第1の所定領域で測定された巻取り張力の平均値B(基準張力Tm)、巻取り張力の許容範囲を閾値Cとしたとき、A=B±Cで表される。なお、基準張力Tmはトラバース反転される直前の1層における平均値、あるいは、複数層での平均値とすることができる。
一方、第2の所定領域S2は、各鍔部の内端から5mm未満の範囲である。
【0020】
トラバース制御回路11は、図2に示すように、張力検出手段13によって検出された第2の所定領域S2における巻取り張力Txの分布から、(基準張力Tm(平均値)+閾値分)を上回っている時間の総和tと、(基準張力Tm(平均値)−閾値分)を下回っている時間の総和tとを求め、t>tの時には巻太りとなる状態と判定し、t<tの時には巻細りとなる状態と判定する。
なお、上記の判定に使用する閾値分は、不感帯の定数で、張力変化が大きくなりすぎたときを速やかに検知するために、閾値分1と閾値分2(閾値分1>閾値分2)の大小2種類が用意される。従って、評価基準値Aとしては、大きい閾値分1を採った場合の評価基準値A1と、小さい閾値分2を採った場合の評価基準値A2とが設定される。
【0021】
図2では、一例として、右側の鍔部5cの際で巻太りが発生し、左側の鍔部5bの際で巻細りが発生した場合を示している。
本実施の形態のトラバース制御回路11では、同一鍔部側で、巻太り又は巻細りを示す同じ判定が2回連続して出た場合、つまり、同一鍔部側でトラバース反転する直前の1層目に続いて、トラバース反転した直後の2層目となる1層を飛ばして、同一鍔部側でトラバース反転する直前の3層目に同じ判定が出た場合に、判定を解消する方向にトラバース反転位置を0.1mmだけずらす。但し、連続する2回の内、1回でも変化が大きいと判断する閾値分1(評価基準値A1を使用)を超えた場合は、判定を解消する方向にトラバース反転位置を0.2mmだけずらす。 但し、前回ターン時の巻取り張力と現在の巻取り張力とを比較して、改善傾向にある場合には、トラバース反転位置の補正は行わない。
【0022】
図4は、巻取り張力Txの巻太りを示す判定が、同一鍔部側のトラバース反転する直前の第2の領域S2において、図4(a)に示す1層目と図4(b)に示す3層目とで連続して2回出た場合の異なる態様を示している。なお、図中の実線は第1のケースを示し、破線は第2のケースを示している。
第1のケースは、測定される巻取り張力Txが、1層目および3層目のいずれも大きい閾値分1を採った評価基準値A1の範囲より小さいものの、ともに小さい閾値分2を採った評価基準値A2の範囲を超えている場合を示す。このとき、評価基準値A2を2回連続して超えたことを検出するために、計数アップが図られる。なお、巻細りを判定する際には、計数ダウンが計られる。
また、第2のケースは、1層目で測定される巻取り張力Txが、大きい閾値分1を採った評価基準値A1の範囲より小さいものの、3層目では評価基準値A1の範囲を超えた場合を示している。このような場合は、次回の5層目において直ちにトラバース反転位置が変更される。なお、1層目で評価基準値A1の範囲を超えた場合には、次回の3層目において直ちにトラバース反転位置が変更される。
【0023】
また、本実施の形態のトラバース制御回路11では、同一鍔部側(例えば、鍔部5c側)で、巻太りの判定によってトラバース反転位置をボビン内側に調整する動作が、予め設定した基準回数以上連続するとき、トラバース反転位置を規定量(例えば、0.1mm)だけボビン5外側に修正する。
【0024】
上記巻取装置1により実施される線材3の巻取方法は、図3に示す通りとなる。
即ち、まず鍔検出センサ15,16によって鍔部5b,5cまでの距離のモニターが開始され(ステップS101)、鍔部までの距離が5〜25mmの所定の領域になったら(ステップS102)、2mm間隔で巻取り張力TS1を5点測定し、その平均値として得られる基準張力Tmを基にして評価基準値Aを設定する(ステップS103,S104)。そして、鍔部までの距離が5mm以下になったら(ステップS105)、巻取り張力の測定及び記録を行い、予め設定しておいた閾値分と、ステップS103で設定した基準張力Tmとから、巻取り張力Txが(基準張力Tm+閾値分2)を上回っている時間の総和tと、巻取り張力Txが(基準張力Tm−閾値分2)を下回っている時間の総和tとを算出する(ステップS106,107)。そして、次のステップS108で、上回り総時間tと下回り総時間tの大小比較により、巻太りや巻細りとなる異常状態かを判定する。
【0025】
ステップS108で、巻太りとなる状態ではないと判定された場合、ステップS111に移行し、上回り総時間tと下回り総時間tが等しい場合には巻状態が正常と判定され(ステップS112)、計数をクリアして(ステップS113)、ステップS101に戻る。一方、上回り総時間t<下回り総時間tの場合は、ステップS111からステップS121に移行して、巻細りが発生した際の処理に移行する。
【0026】
ステップS108で、巻太りとなる状態と判定された時には、その判定結果が計数アップ(ステップS132)されるとともに、次のステップS142で前回に続いて2回連続で巻太りと判定されたか否かが判断される。
巻太りの判定が連続でない場合は、ステップS142からステップS101に戻る。巻太りの判定が連続の場合は、計数をクリア(ステップS143)した後、ステップS144に進み、前回ターン時の巻取り張力と比較して改善の有無が判定される。
ステップS144で、巻取り張力が改善されていると判定された場合には、トラバース反転位置の補正は行わずに、ステップS101に戻る。一方、ステップS144で巻取り張力が改善されていないと判定された場合には、ステップS161に進み、巻太りの判定に際して、大きな閾値分1が使用されたか、小さな閾値分2が使用されたかが判定される。すなわち、第1の評価基準値A1が使用されたか、第2の評価基準値A2が使用されたかが判定される。ステップS161で第1の評価基準値A1が使用されたと判定された場合には、ステップS171に進み、トラバース反転位置をボビン内側に0.2mm補正(オフセット)して、ステップS101に戻る。また、ステップS171で第2の評価基準値A2が使用されたと判定された場合には、ステップS181に進み、トラバース反転位置をボビン内側に0.1mm補正(オフセット)して、ステップS101に戻る。
以上のステップS171,181では、トラバース反転位置を内側に補正する処理が基準回数(例えば、3回)以上連続している場合には、トラバース反転位置を外側に0.1mm拡げる。
【0027】
また、ステップS111において巻細りの状態が判定された場合には、その判定結果が計数ダウン(ステップS122)されるとともに、次のステップS142で前回に続いて2回連続で巻細りと判定されたか否かが判断される。
巻細りの判定が連続でない場合は、ステップS142からステップS101に戻る。巻細りの判定が連続の場合は、計数をクリア(ステップS143)した後、ステップS144に進み、前回ターン時の巻取り張力と比較して改善の有無が判定される。
ステップS144で、巻取り張力が改善されていると判定された場合には、トラバース反転位置の補正は行わずに、ステップS101に戻る。一方、ステップS144で巻取り張力が改善されていないと判定された場合には、ステップS161に進み、巻細りの判定に際して、大きな閾値分1が使用されたか、小さな閾値分2が使用されたかが判定される。すなわち、第1の評価基準値A1が使用されたか、第2の評価基準値A2が使用されたかが判定される。ステップS161で第1の評価基準値A1が使用されたと判定された場合には、ステップS171に進み、トラバース反転位置をボビン外側に0.2mm補正(オフセット)して、ステップS101に戻る。また、ステップS161で第2の評価基準値A2が使用されたと判定された場合には、ステップS181に進み、トラバース反転位置をボビン外側に0.1mm補正(オフセット)して、ステップS101に戻る。
【0028】
以上に説明した巻取装置1による線材の巻取方法によれば、巻取ボビン5の端部の鍔部5b,5c付近で巻太りや巻細りが発生し、それに伴って巻取り張力に変動が生じると、図示せぬダンサーローラーよりも巻取ボビン5に接近してパスライン上に装備された張力検出手段13が直ちにその変動を検知する。そして、トラバース制御回路11が、張力検出手段13の検出した巻取り張力Txを、基準張力をもとに算出される評価基準値と所定の基準によって比較することで、即座に巻太りや巻細りとなる異常状態が検知される。
従って、ダンサーローラーの変位により巻太りや巻細りの発生を検出する従来の場合と比較すると、巻太りや巻細りを迅速に検知でき、高い検出感度を得ることができる。
【0029】
また、巻太りや巻細りの判定に使用する基準張力Tmは、鍔部5b,5cから所定距離X1以上離れた所定領域におけるボビン5の胴部5aでの正常巻の時の巻取り張力TS1の平均値がその都度算出されるため、巻取ボビン5上への線材3の積層数が進んでも、安定した正確な判定が可能になる。
そして、トラバース制御回路11では、検出した巻太りや巻細りが解消されるように、速やかにトラバース反転位置の制御にフィードバックするため、巻太りや巻細り等の巻不良の発生を効果的に防止することができ、巻不良のない良好な線材3の巻取りを実現することができる。
【0030】
また、以上に説明した巻取装置1による線材の巻取方法によれば、図1に示したように、ガイドプーリ7によって設定される線材3のパスラインの終端等にセンシングローラ13aを配置することで、パスラインからダンサーローラー側への線材3の引き渡しや向きの変更が容易になり、ダンサーローラー等の配置自由度が向上する。
【0031】
また、以上に説明した巻取装置1による線材の巻取方法によれば、巻太りの判定によってトラバース反転位置をボビン内側に調整する動作が連続するとき、間欠的に反転位置が外側に0.1mm拡げられて、トラバース反転位置の外側の巻状態が確かめられるため、巻太りの修正処理のために鍔部5b,5c際に巻細りが形成されるという不都合の発生を確実に防止することができる。
【0032】
なお、本発明の線材の巻取方法において、巻太り又は巻細りの異常状態を検知するために巻取り張力をモニターする領域は、トラバース反転させる鍔部の近傍だけであるので、上記実施の形態の巻取装置1で採用した巻取ボビンをその軸方向にトラバースさせる方式だけでなく、ガイドプーリ自体を巻取ボビンの軸方向にトラバースさせるガイドトラバース方式の装置にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る線材の巻取方法を実施する巻取装置の一実施の形態の要部の概略構成図である。
【図2】図1に示した巻取装置において、巻取ボビンに巻取り中の線材に作用する巻取り張力と、巻取ボビン上の巻取り位置との相関を示す説明図である。
【図3】図1に示した巻取装置において実施される線材の巻取方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は評価基準値と巻取り張力との関連を示す図で、(a)は1層目のトラバース反転での巻取り張力を示し、(b)は3層目を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 巻取装置
3 線材
5 巻取ボビン
5a 胴部
5b,5c 鍔部
7 ガイドプーリ
9 ボビントラバース機構
11 トラバース制御回路
13 張力検出手段
13a センシングローラ
15,16 鍔検出センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を巻取る胴部の両側に鍔部を有した巻取ボビンを胴部の軸方向にトラバースさせ、前記線材の巻取り層毎に前記鍔部付近でトラバースを反転させ、前記線材を前記巻取ボビンに積層状態に巻取る線材の巻取方法であって、
前記巻取ボビンに近いパスラインで前記線材に作用する張力を巻取り張力として検出し、
前記鍔部からボビン軸方向内側への離間距離が所定距離以上となる第1の所定領域での前記巻取り張力をもとに評価基準値を設定し、前記離間距離が所定距離未満になる第2の所定領域での前記巻取り張力と前記評価基準値とを所定の基準によって比較することによって、巻き状態を自動判定して、前記判定結果に基づいてトラバース反転位置を自動調整することを特徴とする線材の巻取方法。
【請求項2】
前記線材に作用する巻取り張力を、前記巻取ボビンに接近した位置に装備したセンシングローラを使用して検出することを特徴とする請求項1に記載の線材の巻取方法。
【請求項3】
前記ボビンの同一鍔部側で、巻太りの判定によって前記トラバース反転位置をボビン内側に調整する動作が、予め設定した基準回数以上連続するとき、前記トラバース反転位置を規定量だけボビン外側に修正することを特徴とする請求項1又は2に記載の線材の巻取方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−210752(P2007−210752A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32807(P2006−32807)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】