説明

締付トルク測定ユニット及びトルク表示締付機

【課題】 締付機本体に取り付けて使用するトルク測定ユニットにおいて、表示されたトルクの信頼性を高める。
【解決手段】 締付トルク測定ユニット4は、締付機本体1の第1出力軸12に接続可能な内軸31と、第2出力軸13に接続可能な外軸32を有し、内軸31には締付用ソケット21、外軸32には反力受22が設けられており、外軸32に歪ゲージ47、該歪ゲージの歪み量に対応する締付トルクを表する表示部5を具えている。該測定ユニット4に反力受22を取り付けできるから、締付け反力が反力受22を倒す様に働くことを抑えて、ナットの軸心の延長上に、締付機本体1、締付トルク測定具9、締付用ソケット21の軸心を一直線上に揃えて、正しく締付トルクを測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト・ナットに対する締付トルクを測定するユニット及びトルク表示ができる締付機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボルト・ナットの締付機の締付トルクの調整と確認は、締付機本体に具えたトルク調整ダイヤル(図24の符号(10)参照)と、人手によるトルクレンチの追い締めによって行っている。
具体的には、先ずトルク調整ダイヤル(10)を所望の締付トルク値より少し低くなる様にセットしてボルト又はナット(以下、代表して「ナット」と呼ぶ)の締付けを行なう。
これは、図22のX図に示す締付機の締付トルクと、Y図に示す締付機の負荷電流が比例に近い関係にあることを利用して、トルク調整ダイヤル(10)によって目安となるトルク値を設定するものである。負荷電流が目標値に達すると締付機のモータは停止する。このときの実際の締付トルクは、締付機本体が内蔵する減速機のギア効率等によって調整ダイヤルでセットした値とは差が生じる。
そこで作業者が、トルク表示器付きトルクレンチによってナットを追い締めし、実際の締付トルクを確認する。
上記トルク調整ダイヤル(10)の操作、締付機によるナットの締付け、トルクレンチによる追い締めを何度か繰り返して、締付機の実際の締付トルクの値が所望のトルク値になる様にトルク調整ダイヤル(10)を設定する。
橋梁等、大型鉄骨構造物では、使用するナットは大型であり、手動でトルクレンチを締付け操作することは大きな労力の負担である。又、高所で足場が悪い等、トルクレンチを使用し難い作業環境であるから、安全面からも問題が多い。
【0003】
そこで、図24に示す如く、締付機本体(1)に取り付けて使用する締付トルク測定具(9)が提案されている。
これは、図22のX図の締付トルクとZ図に示す締付機の歪み量が、略比例関係にあることを利用するものである。
締付機本体(1)は、互いに逆方向に回転する第1出力軸(12)と第2出力軸(13)を同軸上に有しており、通常の締付作業を行うには、第1出力軸(12)に締付用ソケット(21)、第2出力軸(13)に反力受(22)を取り付け、ナットNに締付用ソケット(21)を係合し、反力受(22)を該ナットN近傍の他のナット等の突出物(図示せず)に当てて締付けを行なう。
締付トルク測定具(9)は、締付機本体(1)の第1出力軸(12)と締付用ソケット(21)との間に連結して使用する。締付トルク測定具(9)は、中実軸部(91)の基端に締付機本体(1)の第1出力軸(12)の角軸部(12a)が嵌まる角穴(92)を有し、先端に締付用ソケット(21)の基端に嵌合する角軸(93)を有している。
締付トルク測定具(9)の中央軸部(91)の表面に歪ゲージ(47)を貼り付け、該軸部(91)の周囲に、回路基板、トルク表示部及びバッテリー(何れも図示せず)を具えている。
【0004】
締付トルク測定具(9)をセットした締付機のトルク調整と確認は、先ず前記と同様にして、締付機本体(1)に具えたトルク調整ダイヤル(10)を、所望のトルク値よりも少し低くなる様に設定する。
締付機本体(1)の第2出力軸(13)に反力受(22)を取り付け、締付用ソケット(21)をナットNに係合し、反力受(22)を該ナット近傍の突出物に当てて、ナットNを締め付ける。
締付機のモータに流れる電流値が所定値に達するとモータが停止し、このときの締付トルク測定具(9)の軸部(91)の歪み量に応じた締付トルクが表示部に表示される。
上記トルク調整ダイヤル(10)の操作、ナットの締付けを何度か繰り返して、締付機の表示部に示される実際の締付トルクの値が所望のトルク値になる様に、トルク調整ダイヤル(10)を設定する。
この様に、表示部に示される実際の締付トルクの値を見てトルク調整ダイヤルの操作を行なうことで、所望のトルク値を設定できることから、作業者は、トルクレンチによる追い締めをして、締付トルクを測定する必要がない。
従って、トルクレンチによる追い締め作業の労力負担、危険性等の問題は一切解消される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記締付トルク測定具(9)は一軸式であって、反力受(22)は締付機本体(1)の第2出力軸(13)に取り付けなければならない。
締付機本体(1)の第1出力軸(12)に直接に締付用ソケット(21)を取り付ける場合は、反力受(22)の反力受アーム(20)は、締付用ソケット(21)の長さだけ、該ソケットの軸心に沿う方向に長くすればよい。
しかし、締付機本体(1)と締付用ソケット(21)との間に、締付トルク測定具(9)を介在させると、反力受アーム(20a)は、更に締付トルク測定具(9)の長さだけ長くしなけばならない。すると、締付け反力が作用する締付機本体(1)の第2出力軸(13)と、実際に締付け反力を受ける相手部材に当たる反力受アーム(20a)先端との距離が長くなる。この場合、反力受アーム(20a)に作用する反力は、アームを倒す様に大きく働く。従って、ナット締付けの際に、ナットの軸心の延長上で一直線上に揃うべき、締付機本体(1)、締付トルク測定具(9)、締付用ソケット(21)の軸心が安定せず、ナットの軸心に対して傾いた状態での締付トルク、即ち、正確ではないトルク値が表示されてしまう虞れがあった。
締付機本体(1)のトルク調整を終了すれば、締付トルク測定具(9)を外し、締付機本体(1)に直接に締付用ソケット(21)を接続して締付作業を行うことが一般的である。この場合、反力受(22)もアーム長さの短いものと交換せねばならない。更にアームの長さの違いによってトルクの伝達効率も変わる。即ち、締付トルク測定具(9)をセットした場合と、外した場合とでは、締付トルクの値に差が生じる。
【0006】
本発明は、締付機本体にトルク測定ユニットをセットしたときと、外したときの締付トルクの値に可及的に差を生じさせないトルク測定ユニット及びトルク表示締付機を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の締付トルク測定ユニット(4)は、締付機本体(1)の第1出力軸(12)に接続可能な内軸(31)と、第2出力軸(13)に接続可能な外軸(32)を有し、内軸(31)の先端には締付用ソケット(21)、外軸(32)の先端には反力受(22)が設けられており、
外軸(32)上に歪ゲージ(47)を具え、該歪ゲージの歪み量に対応する締付トルク量に変換する回路基板(7)及び締付トルク量を表示する表示部(5)を外軸(32)上又は適所に具えている。
【発明の効果】
【0008】
締付トルク測定ユニット(4)の表示部(5)に締付けトルクが表示されることから、トルク表示器付きトルクレンチで追い締めしてトルクを測定する作業は不要となる。
締付トルク測定ユニット(4)に反力受(22)を設けたから、締付機本体(1)に反力受(22)を取り付ける場合に比べて、反力受(22)の反力受アーム(20)の長さを短くできる。このため、締付け反力が反力受(22)を倒す様に働くことを抑えて、ナットの軸心の延長上に、締付機本体(1)、締付トルク測定具(9)、締付用ソケット(21)の軸心を一直線上に揃えて、正しく締付トルクを測ることができる。
締付トルク測定ユニット(4)を、締付機本体(1)に着脱可能に取り付ければ、締付機本体(1)の締付トルクを正しく設定した後は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外して、締付機本体(1)に直接に締付用ソケット(21)と反力受(22)を取り付けできる。即ち、締付機を締付トルク測定ユニット(4)の分だけ軽量化して、締付け作業を行うことができる。
締付トルク測定ユニット(4)を締付機本体(1)に着脱することを前提とせず、該締付トルク測定ユニット(4)のトルク測定機能を締付機に具えれば、締付トルク測定ユニット(4)の脱着の手間は要らず、常時締付トルクを確認しながら締付作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1実施例(図1乃至図7)
図1、図2は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外し、更に、締付トルク測定ユニット(4)をユニット本体(3)とソケットユニット(2)とに分離した状態を示している。図3は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットした状態を示している。
締付機本体(1)の先端には、内側に筒状の第1出力軸(12)、外側に筒状の第2出力軸(13)が同軸上に配備されている。第1出力軸(12)と第2出力軸(13)は、互いに逆方向に回転する様に遊星歯車減速機構(11)に連繋されている。
遊星歯車減速機構(11)は締付機本体(1)に内蔵したモータ(図示せず)によって作動する。
締付機本体(1)は、締付トルクを調整するトルク調整ダイヤル(図24の符号(10)参照)を具えている。該ダイヤルは、モータに流れる電流値と締付トルクが比例に近い関係であることを利用して、締付トルクを調整するものである。
前記第1出力軸(12)の内面には、軸心に沿う方向に延びる凸条(15)と凹条(16)が、周方向に交互に形成されている。
第2出力軸(13)は第1出力軸(12)より少し外側まで延びており、先端縁に等間隔に複数の突片(17)を突設している。第2出力軸(13)の先端部には、締付トルク測定ユニット(4)に対する抜止めボルト(18)が螺合されている。
【0010】
締付トルク測定ユニット(4)は、ユニット本体(3)とソケットユニット(2)とによって構成される。
通常の締付け作業では、ソケットユニット(2)を直接に締付機本体(1)に接続して使用する。
ソケットユニット(2)は、締付用ソケット(21)と反力受(22)とからなる。
反力受(22)は、先端側が拡大した筒部材(23)の拡大部外周に、筒部材(23)の軸心と直交して反力受アーム(20)を突設して形成される。
反力受(22)の筒部材(23)には、基端部に前記締付機本体(1)の抜止めボルト(18)の先端が侵入可能な周溝(29)が開設されている。
反力受(22)には周溝(29)より少し先端側に周壁(27)が形成され、該周壁(27)には、前記締付機本体(1)の第2出力軸(13)上の突片(17)が嵌合可能な切欠(28)が開設されている。
締付用ソケット(21)は、反力受(22)の筒部材(23)内に回転可能に収容された筒軸部(21a)の先端を拡大して、拡大部にナット係合穴(24)を形成している。
締付用ソケット(21)の筒軸部(21a)の基端は、反力受(22)の筒部材(23)から突出しており、突出部の外周面に締付用ソケット(21)の軸方向に伸びる凹条(26)と凸条(25)を、周方向に交互に形成している。該凹条(26)と凸条(25)は、前記締付機本体(1)の第1出力軸(12)内面の凸条(15)と凹条(16)に嵌合可能である。
反力受(22)の筒部材(23)先端の内面に施したスナップリング(22a)を外せば、反力受(22)に対して、締付用ソケット(21)を前方に抜き外しできる。従ってナット係合穴(24)のサイズの異なる締付用ソケットに交換可能である。
【0011】
ユニット本体(3)は筒状内軸(31)と、該内軸(31)を回転可能に同軸に収容した筒状外軸(32)を有している。
内軸(31)の基端は外軸(32)の基端から突出しており、突出部外周面に軸方向に延びる凹条(36)と凸条(35)を周方向に交互に形成している。該凹条(36)と凸条(35)は、前記締付機本体(1)の第1出力軸(12)内面の凸条(15)と凹条(16)に嵌合可能である。
【0012】
外軸(32)の基端外周に、前記締付機本体(1)の抜止めボルト(18)の先端が嵌まる周溝(38)が開設され、該周溝(38)より先端側の肉厚部には、締付機本体(1)の第2出力軸(13)上の突片(17)が嵌合する切欠(37)が開設されている。
外軸(32)の先端は、前記反力受(22)の筒部材(23)の基端に嵌合する大きさに形成され、先端部には、該筒部材(23)上の周溝(29)に嵌まる抜止めボルト(30)が螺合され、先端縁には、筒部材(23)上の切欠(28)に嵌合する突片(39)が周方向に等間隔に突設されている。
外軸(32)には、両端側に2つの周壁(32e)(32f)が突設され、一方の周壁(32e)は他方の周壁(32f)よりも外径が小さく壁の肉厚が大である。小径の周壁(32e)の周面には、後記する筒状ケース(49)の抜止めを図る穴(32c)が開設され、大径の周壁(32f)には、周壁を貫通し周方向に等間隔に4つのビス孔(32g)が開設されている。
【0013】
周壁(32e)(32f)間の中央部にて、外軸(32)表面に歪ゲージ(47)が貼り付けられる。
実施例では、X字状を呈する歪ゲージ(47)が外軸(32)の周方向に等間隔に4箇所に貼り付けられる。
歪ゲージ(47)は、外軸(32)を一周する保護層(48)で覆われている。
周壁(32e)(32f)間にて、外軸(32)には同形状の2つのブロック(41)(41)が、外軸(32)を挟んで対向配備される。
ブロック(41)の内面は外軸(32)に沿う円弧状に形成され、外面は、前記外軸(32)上の2つの周壁(32e)(32f)の内、大径の周壁(32f)の外径よりも少し小径の円弧面に形成されている。
ブロック(41)の内面には、前記保護層(48)との干渉を避ける溝部(41a)が開設されている。
ブロック(41)の外周には、周溝(42)及び該周溝(42)を横切って軸方向に伸びるW字状凹部(43)が形成されている。
周溝(42)は前記各歪ゲージ(47)と後記する回路基板(7)(71)を繋ぐ配線(図示せず)を通す通路となる。
各W字状凹部(43)には、バッテリーVを収納するケース(44)が取り付けられる。
各ブロック(41)(41)の端面には、前記外軸(32)上の大径周壁(32f)の4つのビス孔(32g)に対応してネジ穴(41b)が開設され、各ブロック(41)(41)は、夫々2本のビス(40b)で周壁(32f)に固定されている。
【0014】
ブロック(41)(41)の互いに対向する両端面間に、2つの回路基板(7)(71)が配備される。
両回路基板(7)(71)は、ブロック(41)(41)の対向する端面に開設された溝(45)(45)に、基板の端縁を嵌め込んで支持されている。
一方の回路基板(7)上には、前記歪ゲージ(47)の歪み量に応じた締付トルク値を表示する表示部(5)及び、回路基板(7)(71)への通電用押し釦スイッチ(6)を配備している。
【0015】
実施例の表示部(5)は4桁表示であり、各桁表示面(51)は、縦4本、横3本の点灯バー(52)(52a)によって『0』〜『9』の数字を表わすことができ、各桁表示面の右下には、『.(ドット)』を点灯表示するドット部(53)が設けられている。点灯バー(52)(52a)毎及びドット部(53)毎に、個別にLED(図示せず)が配備されている。
【0016】
上記外軸(32)に2つの周壁(32e)(32f)に跨って筒状ケース(49)が被せられ、該ケースの周壁の一端に貫通螺合したビス(40)の先端無ネジ部(40a)を前記小径周壁(32e)上の係合穴(32c)に嵌めている。周壁(32e)には、ビス(40)のネジ推力は作用していない。
ケース(49)には、前記回路基板(7)上の表示部(5)及び押し釦スイッチ(6)に対応して窓部(49a)が開設されており、ケース(49)の外側から押し釦スイッチ(6)の操作が可能である。
前記外軸(32)上の4箇所の歪ゲージ(47)は、回路基板(7)上でブリッジ回路(図示せず)を構成し、歪ゲージ(47)が貼り付けられた外軸(32)の4箇所の平均的な歪み量に対応する締付トルク値が表示部(5)に表示される。
【0017】
然して、図3に示す様に、ユニット本体(3)の内軸(31)及び外軸(32)に、ソケットユニット(2)の締付用ソケット(21)と反力受(22)を接続して、締付トルク測定ユニット(4)を構成する。
締付トルク測定ユニット(4)の内軸(31)基端を締付機本体(1)の第1出力軸(12)に嵌合し、該ユニット(4)の外軸(32)基端を締付機本体(1)の筒状第2出力軸(13)に挿入して、第2出力軸(13)上の突片(17)を、外軸(32)上の切欠(37)に嵌め込む。
これによって、第1出力軸(12)と、ユニット本体(3)の内軸(31)と、締付用ソケット(21)は一体回転可能に連結され、第2出力軸(13)とユニット本体(3)の外軸(32)と、ソケットユニット(2)の反力受(22)は第1出力軸(12)の回転とは逆方向に一体回転可能に連結される。
上記の様にして、締付トルク測定ユニット(4)をセットした締付機のトルク調整と確認は、先ず、締付機本体(1)に具えたトルク調整ダイヤル(10)を、所望のトルクよりも少し低くなる様に設定する。
締付トルク測定ユニット(4)の押し釦スイッチ(6)を押して、回路基板(7)(71)に通電する。
締付機本体(1)の第2出力軸(13)に反力受(22)を取り付け、締付用ソケット(21)をナットに係合し、反力受(22)を該ナット近傍の突出物に当てる。
締付機本体(1)のモータを作動させると、第2出力軸(13)は反力受(22)によって回転が阻止されるから第1出力軸(12)だけが回転する。即ち、締付用ソケット(21)が回転してナットを締め付ける。
締付機のモータに流れる電流値が所定値に達するとモータが停止する。このとき、締付トルク測定ユニット(4)の外軸(32)の歪みを4箇所の歪ゲージ(47)が検出し、歪みの平均値が締付トルクとして表示部(5)に表示される。
反力受(22)は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットする場合でも、外した場合でも、同じものが使用でき、従来の様に、アーム長さの異なる2種類の反力受(22)を準備する必要はない。
【0018】
実施例では、歪ゲージ(47)を貼り付けた外軸(32)と締付機本体(1)の接続、該外軸(32)とソケットユニット(2)の接続は、互いに軸方向に延びる凸条と凹条又は、突片(17)(39)と切欠(37)(28)の嵌合、即ち、互いに軸方向に延びる凸部と凹部の嵌合によるものである。このためナット締付け時に、外軸(32)は各歪ゲージ(47)を通過する周方向において、歪み量に大きな差は生じない。但し、抜止めボルト(18)(30)のネジ推力を外軸(32)に作用させると測定の信頼性を低下させるので、実施例では、外軸(32)の周方向に等間隔に4箇所配備した歪ゲージ(47)で歪み量を測定し、測定した歪みの平均値を表示して測定の信頼性を高める様にしたのである。
尚、外軸(32)への歪ゲージ(47)の取付けは、実施例の様に4箇所に限ることはなく、2、4、6箇所等2の倍数箇所であればよい。歪ゲージ(47)の数が多いほど、より精度の高い締付トルクの測定ができる。
作業者が支持して使用するボルト・ナット締付機の大きさに合わせた締付トルク測定ユニット(4)の外軸(32)の周長、及びボルト・ナットの締付トルクに必要な精度からすれば、歪みゲージの取付けは4箇所が望ましい。
歪みゲージを6箇所以上とするほどのトルク測定精度は必要としない。又、歪みゲージを2箇所とすることはトルク測定の信頼性に不安が残る。
【0019】
上記の如く、締付トルク測定ユニット(4)の表示部(5)に締付トルクが表示されるから、従来の様に、トルク表示器付きトルクレンチで追い締めする作業は不要となる。
反力受アーム(20)は、締付用ソケット(21)に被さった反力受(22)の外周部分に、ナットと同じ位置から外側に突設されているから、反力受アーム(20)に作用する締付反力が、締付トルク測定ユニット(4)や締付機本体(1)を倒す様に作用することはない。従って、締付トルク測定ユニット(4)及び締付トルク測定ユニット(4)の軸心を、ナットの軸心に一致させてナットの締付けができ、可及的に正しい締付けトルク値を表示部(5)に表示させることができる。
上記締付機本体(1)のトルク調整ダイヤル(10)の操作、ナットの締付けを何度か繰り返して、締付トルク測定ユニット(4)の表示部(5)に示される実際の締付トルクの値が所望のトルク値になる様に、トルク調整ダイヤル(10)を設定すればよい。
反力受(22)は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットする場合でも、外した場合でも、同じものが使用でき、従来の様に、アーム長さの異なる2種類の反力受(22)を準備する必要はない。
【0020】
複数個のナットに対して上記作業を行い、トルク設定の信頼性を確認後、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外し、該締付トルク測定ユニット(4)のソケットユニット(2)を直接に締付機本体(1)に連結する。即ち、ソケットユニット(2)の締付用ソケット(21)基端の凹条(26)と凸条(25)を、締付機本体(1)の第1出力軸(12)の凸条(15)と凹条(16)に嵌合し、反力受(22)の基端を第2出力軸(13)に嵌めて、反力受(22)上の切欠(28)に、第2出力軸(13)上の突片(17)を係合する。
上記の様に、締付機本体(1)に直接にソケットユニット(2)を連結すれば、締付トルク測定ユニット(4)のユニット本体(3)の重量を軽減して、ナットの締付作業を行うことができ、締付機本体(1)のトルク調整がなされているから、ナットを設定トルクで締め付けして、自動的に締付用ソケット(21)の回転は停止する。
【0021】
実施例の締付トルク測定ユニット(4)のユニット本体(3)の内軸(31)は、筒状に形成されており重量を軽減でき、又、ナット締付において、ボルト余長(ナット頂面からボルト先端が臨出する)が発生しても、内軸(31)内に逃がすことができる。
【0022】
第2実施例(図8乃至図10)
図8、図9は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外し、更に、締付トルク測定ユニット(4)を、ユニット本体(3)、締付用ソケット(21)及び反力受(22)に分離した状態を示している。図10は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットした状態を示している。
締付機本体(1)は、前記第1実施例と同じである。
締付トルク測定ユニット(4)のユニット本体(3)は、内軸(31)と外軸(32)の夫々先端部が前記第1実施例と異なり、他の部分は同じである。
ユニット本体(3)の外軸(32)の先端部は、短い多角形軸部(32a)、実施例では六角軸部が形成されている。
ユニット本体(3)の内軸(31)は先端側が閉塞して、上記外軸(32)の多角形軸部(32a)を回転可能貫通し、先端に角軸(31a)を突設している。
締付用ソケット(21)は、先端にナット係合穴(24)、基端に角穴(2a)を同軸上に開設しており、角穴(2a)に前記ユニット本体(3)の内軸(31)先端の角軸(31a)が着脱可能に嵌まる。
反力受(22)は、リング部(22b)の外周に反力受アーム(20)を突設して形成されている。
該リング部(22b)は、上記ユニット本体(3)の外軸(32)の多角形軸部(32a)に一体回転可能に嵌合する。リング部(22b)には抜止め用のクランプボルト(22c)が貫通螺合されている。
反力受アーム(20)は、リング部(22b)から締付用ソケット(21)の先端まで延びて外側に略直角に屈曲している。
前記第1実施例に比べて、反力受(22)の反力受アーム(20)は、締付用ソケット(21)の軸心に沿う方向に、締付用ソケット(21)の長さ分だけ長く形成されている。従って、締付けの際に、締付用ソケット(21)、ユニット本体(3)及び締付機本体(1)の軸心が一直線に揃う安定性は低下する。しかし、図24に示す従来例の様に、締付機本体(1)に接続した締付トルク測定具(9)よりも更に、締付機本体(1)の奥方に反力受(22)を取り付けることに比べると、反力受アーム(20)の締付用ソケット(21)の軸方向に沿う長さを短くでき、締付け時の安定性は、従来例よりも優れている。
締付機本体(1)からユニット本体(3)を外し、締付機本体(1)に前記第1実施例のソケットユニット(2)を直接に取り付けて、通常のナット締付作業行なうことができる。
【0023】
第3実施例(図11乃至13)
図11、図12は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外し、更に、締付トルク測定ユニット(4)を、ユニット本体(3)、締付用ソケット(21)及び反力受(22)に分離した状態を示している。図13は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットした状態を示している。
ユニット本体(3)、締付用ソケット(21)及び反力受(22)の取付け関係は、前記第2実施例と同じである。
締付機本体(1)とユニット本体(3)との取り付け関係が、前記第1、第2実施例とは異なる。
締付機本体(1)の第2出力軸(13)は、先端部が多角形軸部(13a)に形成されている。締付機本体(1)の第1出力軸(12)は、先端側が閉塞して上記第2出力軸(13)の多角形軸部(13a)を回転可能に貫通し、先端に角軸(12a)を突設している。
ユニット本体(3)の外軸(32)の基端には、締付機本体(1)の第2出力軸(13)の多角形軸部(13a)が嵌合する係合穴(32b)が開設されている。係合穴(32b)の周壁には抜止め用クランプボルト(32d)が貫通螺合されている。
ユニット本体(3)の内軸(31)の基端には、締付機本体(1)の第1出力軸(12)先端の角軸(12a)が嵌合する角穴(31b)が形成されている。
締付機本体(1)の外軸(32)の多角形軸部(32a)に反力受(22)のリング部(22b)を一体回転可能に嵌め、締付用ソケット(21)の角穴(2a)に内軸(31)の角軸(12a)を嵌めて、通常のナット締付作業を行うことができる。
【0024】
第4実施例(図14乃至図16)
図14、図15は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外した状態、図16は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットした状態を示している。
締付トルク測定ユニット(4)と締付機本体(1)の取り付け関係は、前記第1、第2実施例と同じである。
締付トルク測定ユニット(4)の内軸(31)には、先端部を拡大してナット係合穴(24)が形成されている。
外軸(32)の内面先端に、内軸(31)の抜止めを図るスナップリング(22e)が設けられている。内軸(31)は、ナット係合穴(24)のサイズ違いのものと交換可能である。
締付トルク測定ユニット(4)の外軸(32)の先端外周は、軸方向に延びる凸条と凹条が周方向に交互に並んでスプライン状に形成されている。
上記外軸(32)の先端に反力受(22)が取り付けられる。
反力受(22)は、上記外軸(32)の先端に嵌合するリング部(22b)に外向きに反力受アーム(20)を突設して形成されている。リング部(22b)の内面には外軸(32)の凸条と凹条に係合する凹条と凸条が形成され、反力受(22)と外軸(32)は一体回転する。
反力受(22)は、スナップリング(22d)を外して、外軸(32)から抜き出すことができる。
上記の如く、外軸(32)の先端外周のスプライン状の凹条と凸部に、反力受(22)の凸条と凹条を嵌合すれば、反力受アーム(20)で受けた反力を外軸(32)の全周に均等に作用させることができ、外軸(32)の歪に偏りを生じさせずに、歪ゲージ(47)によって可及的に正確に歪み量を検出できる。
上記第4実施例の場合、締付機本体(1)のトルク設定を終えて、通常の締付け作業を行う場合は、締付トルク測定ユニット(4)を外して、前記図1に示すソケットユニット(2)を締付機本体(1)にセットすればよい。
【0025】
第5実施例(図17乃至図19)
図17は、締付機本体(1)から締付トルク測定ユニット(4)を外した状態、図18は、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)をセットした状態を示している。
第5実施例は、図18に示す如く、剪断用或いは反力受け用のチップTを具えたボルトBとナットNを締め付ける締付機に実施するものである。
締付トルク測定ユニット(4)と締付機本体(1)の取付け関係及び締付トルク測定ユニット(4)自体は前記第1実施例と同じである。
ユニット本体(3)の先端に着脱可能に接続するソケットユニット(2)は、ナットに係合するナット係合ソケット(21b)と、該ソケット(21b)内に回転可能に配備されボルトチップTに係合するボルトチップ係合ソケット(22b)とからなる。
ナット係合ソケット(21b)の基端部に前記締付機本体(1)の抜止めボルト(18)の先端或いは前記締付トルク測定ユニット(4)の抜止めボルト(30)が侵入可能な穴又は周溝等の凹部(29a)が開設されている。
ナット係合ソケット(21b)には上記凹部(29a)より少し先端側に周壁(27a)が形成され、該周壁(27a)には、締付機本体(1)の第2出力軸(13)上の突片(17)或いはユニット本体(3)の突片(39)が嵌合可能な切欠(28a)が開設されている。
ボルトチップ係合ソケット(22b)の基端外周面に軸方向に伸びる凹条(26a)と凸条(25a)を、周方向に交互に形成している。該凹条(26a)と凸条(25a)は、前記締付機本体(1)の第1出力軸(12)内面の凸条(15)と凹条(16)或いは前記ユニット本体(3)の内軸(31)先端の凸条(33)と凹条(34)に嵌合可能である。
【0026】
然して、図18に示す様に、ユニット本体(3)の内軸(31)及び外軸(32)に、ソケットユニット(2)のナット係合ソケット(21b)とボルトチップ係合ソケット(22b)を接続して、締付トルク測定ユニット(4)を構成する。更に、締付トルク測定ユニット(4)を前記同様にして締付機本体(1)に接続する。
図18中、符号(100)は、ユニット本体(3)の内軸(31)内面の凸部(31c)とボルトチップ係合ソケット(22b)との間に配備されボルトチップ係合ソケット(22b)を前方に付勢して、ナット係合ソケット(21b)の内周段部(21c)に当てる役割をなすバネである。
ボルトチップ係合ソケット(22b)にボルトチップTを、ナット係合ソケット(21b)にナットNを係合して、締付機を作動させる。
締付機本体(1)の第2出力軸(13)が回転すると、ユニット本体(3)の外軸(32)を介してソケットユニット(2)のナット係合ソケット(21b)も回転してナットNを締め付ける。
締付反力は、締付機本体(1)の第1出力軸(12)、ユニット本体(3)の内軸(31)、ソケットユニット(2)のボルトチップ係合ソケット(22b)を介してボルトBで受け止められる。
締付けの進行に伴って、ナットNからのボルト軸部の臨出量は大きくなるが、ボルトチップ係合ソケット(22b)はバネ(100)に抗して後退するから、締付に支障はない。
ボルトチップTを剪断するまでのトルクでボルト・ナットを締め付ける場合、ボルトチップTに係合するボルトチップ係合ソケット(22b)が反力受となる。
ボルトチップTを剪断する場合は、ナットNに係合するナット係合ソケット(21b)が反力受となるのである。
図19は、締付機本体(1)にソケットユニット(2)を直接に接続した状態を示している。締付トルク設定後の通常の締付作業は、図19の状態で行なう。ボルトチップ係合ソケット(22b)を付勢するバネ(100)は、締付機本体(1)の遊星歯車支持枠(11a)等に当てる。
【0027】
図22は、前記した様に、ボルト締結時の締付機に発生するトルクと、締付機(具体的には締付トルク測定ユニット(4)のユニット本体(3)の外軸(32)に対する歪み量と、締付機の負荷電流の関係を示している。締付機が起動し、ボルトの締付けが開始されると、徐々に締付機の発生するトルク(ボルトの締付トルク)が上昇し、それに比例して締付機の負荷電流も徐々に上昇する。
ボルトに一定のトルクが導入され、締付機への電流供給が停止されると、ボルトに導入されるトルクはそのまま保持される(図22の破線参照)が、締付機の発生トルク及び負荷電流は急激に低下する。従って、締付機に発生するトルクに比例するトルク測定ユニットの歪み量も急激に低下する。つまり、ボルトの締付け後は次のボルトの締付けが開始されるまで、歪み量を検出する必要は無い。
そこで出願人は、本発明において、締付トルク測定ユニット(4)が締付トルクをピークホールドした後は、歪センサーブリッジ回路への電源供給を遮断し、更に必要時のみに表示部(5)のLEDに通電を行なって無駄な消費電流を無くし、締付トルク測定ユニット(4)にセットしたバッテリーVの寿命を延ばすことを案出した。又、締付トルク測定ユニット(4)の回路基板(7)(71)上に構成された制御回路を1つの押し釦スイッチ(6)で操作可能とし、回路基板(7)上での押し釦スイッチ(6)の配置スペースを小さくすることを案出した。
【0028】
通常、制御回路は電源スイッチとセット(リセット)スイッチの2つ以上の操作スイッチが必要である。又、CPUを搭載した制御回路の場合、CPUの電源を常時On(待機電力)にしておくか、電源をOnした後、セットスイッチを押さなければCPUがセット(ブリッジ電源On+オートゼロ(後述する))されたことを認識できない。ところが、回路基板(7)上に2つ以上のスイッチを実装すると、部品点数が増えると共に回路基板(7)の面積が大きくなってしまう。又、CPU電源を常時Onさせておくと電池の消耗が大きくなってしまう。そこで、本実施例では、CPUの外部にハード的な自己保持回路を設け、押し釦スイッチ(6)をOnしている間に、CPUに電源を供給すると同時にCPUより自己保持指令を出力し、スイッチがOffされても電源が供給し続ける様にした。又、それと同時に押し釦スイッチ(6)のOn/Off認識入力ポートを設け、押し釦スイッチ(6)がOnされる時このポートにスイッチOn信号が入力することにより、電源Onとセットの兼用を可能とした。
同じ押し釦スイッチ(6)で電源のOn/Offスイッチとセットスイッチを兼用させるため、それを区別する方法として、On時間(押し釦スイッチを押し続けている時間)の違いで行っている。実施例では電源Onは1秒間以上の長押しとし、セットは1秒間以内の短押し(CPUが認識可能な最短時間以上)とする。電源が自己保持によりOnしている間は、押し釦スイッチ(6)を短押しすることでセットとなる。又、電源OffはOn時間を3秒以上として自己保持回路が解除され、押し釦スイッチ(6)を離すと同時に全電源(CPU電源も含む)を遮断する。
電源On時間を1秒、電源Off時間を3秒としたことで、押し釦スイッチ(6)の短押しによるセットと区別されるだけでなく、電源の誤作動によるOn又はOffが防止されるという効果も奏する。
【0029】
図20、図21は、制御回路操作のフローチャートである。
スタートからステップ1で押し釦スイッチ(6)が押された否かを判断する。Noであれば、ステップ1の直前に戻る。Yesであればステップ2(S2)に移り回路基板(7)上のCPUへ電源供給が開始される。
CPUへ電源供給が開始されるとステップ3(S3)に移って、押し釦スイッチ(6)を押している時間が1秒間以上が否かを判断する。Noであればステップ4(S4)に移って、CPUへの電源供給を終了し、ステップ1の直前に戻る。Yesであればステップ5(S5)に移ってCPU電源を自己保持し、ステップ6(S6)にて表示部(5)のLEDに電源供給を開始する。
次にデータセット動作に移り、ステップ7(S7)で表示部(5)は1桁のみ“0”を表示し、他の桁は全てOffする。ステップ8(S8)で歪みゲージ(47)で組んだブリッジ回路とその信号を増幅するアナログ増幅回路に電源供給が開始される。僅かのタイムラグを経て、ステップ9(S9)にてトルク0(ゼロ)時に歪みゲージ(47)のブリッジ回路から出力される電圧のアナログ値をデジタル値に変換した値をメモリし、この分を差し引いた値をトルク値に換算して表示する「オートゼロ」が実行される。オートゼロ(S9)とは、トルク測定機器には一般的に付いているもので、温度等の外乱によりトルク0(ゼロ)時の歪ゲージ(47)のブリッジからの出力電圧の変動を自動的に補正する機能である。
次にステップ10(S10)で、締付トルクが所望の締付トルクを越えたか否かを判断し、Noであればステップ10 (S10)の直前に戻り、Yesであれば、ステップ11(S11)トルク測定を行ない、表示部(5)には徐々に上昇する締付トルクが表示される。このトルク測定が開始されるレベルは締付機本体(1)の定格トルクの10%ぐらいが適当であると思われるが、誤動作が防止できるなら、なるべく0(ゼロ)に近い方が良い。
次にステップ12(S12)でトルクピーク値を検出したか否かを判定し、Noであればステップ12(S12)の直前に戻り、Yesであればステップ13(S13)でブリッジ回路への電源供給を終了する。但し、表示部(5)は、ピーク値が表示された状態で保持される。
次にステップ15(S15)で押し釦スイッチ(6)が押されたか否かを判断し、Noであればステップ15の直前に戻る。
ステップ15でYesであればステップ16(S16)に移って、押し釦スイッチ(6)を押している時間が3秒以上が否かを判断する。Noであればステップ7の直前に戻り、次のトルク測定に具える。
ステップ16(S16)でYesであれば、ステップ17(S17)で表示部(5)への電源供給を終了する。
次にステップ18(S18)でCPU電源の自己保持を終了し、ステップ19(S19)で押し釦スイッチ(6)の押圧が解除されたか否かを判断し、Noであれば、ステップ19の直前に戻り、YesであればステップS1の直前に戻る。
上記の如く、歪ゲージ(47)のブリッジに電源の供給を測定に必要な時だけに限って行なうことにより、バッテリーVの消費を抑えると同時に、歪ゲージ(47)のブリッジに流す電流によるジュール熱も極力抑えることができる。更には、CPU電源の自己保持されていない状態での押し釦スイッチ(6)の「1秒以上の押圧」にて、電源Onとオートゼロの兼用操作となる。
又、押し釦スイッチ(6)の「3秒未満の押圧」で、2回目以降のトルク測定のオートゼロとなり、CPU電源の自己保持している状態での押し釦スイッチ(6)の「3秒以上の押圧」で電源Off操作となり、1つの押し釦スイッチ(6)により、3種類のスイッチ機能を有す。これにより、3つのスイッチを配備することに比べて、スイッチ配置面積を小さくでき、スイッチの押し間違いを防止できる。
上記では、押し釦スイッチ(6)の押し時間の判断基準を1秒と3秒としたが、これに限ることきはないのは勿論であり、操作する作業者が、短すぎたり、長すぎると感じない程度であれば、任意に設定できるのは勿論である。
【0030】
上記各実施例は、締付機本体(1)にソケットユニット(2)を着脱可能に連結し、一旦締付トルクを設定すれば、締付機本体(1)からソケットユニット(2)を外すことを前提にしているが、ソケッユニット(2)を締付機本体に取り付けたまま、ボルト・ナットの締付け作業を行なうことができるのは勿論である。
【0031】
次に、図23に基づき締付機の出力軸に歪ゲージ(47)を設けたトルク表示締付機について説明する。
締付機の遊星歯車減速機構(11)の遊星歯車支持枠(11a)に第1出力軸(12)を突設し、遊星歯車減速機構(11)のインターナルギア(11b)に第2出力軸(13)を突設する。
第1出力軸(12)は、遊星歯車支持枠(11a)と一体ものでもよく、或いは遊星歯車支持枠(11a)とスプライン係合(12a)によって一体回転可能に連結してもよい。
又、第2出力軸(13)はインターナルギア(11b)と一体ものでもよく、或いはインターナルギア(11b)の先端縁に突設した複数の凸片(17)を第2出力軸(13)に開設して切欠(37)に嵌め込んで一体回転可能に連結してもよい。
第1出力軸(12)の先端にナット係合穴(24)を有する締付用ソケット(21)を形成し、第2出力軸(13)の先端に反力受(22)を設ける。
反力受(22)と第2出力軸(13)は一体ものでもよいが、実施例では組立の便宜上、及び損傷し易い反力受(22)の交換を考慮して、反力受(22)と第2出力軸(13)は別体とした。反力受(22)は、前記第4実施例の締付トルク測定ユニット(3)の外軸(32)と反力受(22)と同様の接続構造によって(段落番号「0024」参照)、第2出力軸(13)に取り付けられている。
第2出力軸(13)上に、歪ゲージ(47)、回路基板(7)、表示部(5)、バッテリー(図示せず)が取り付けられる。これらの取付け構造は、前記締付トルク測定ユニットにおいて、外軸(32)に歪ゲージ(47)、回路基板(7)、表示部(5)、バッテリー(図示せず)を取り付ける構造と同じである。
インターナルギア(11b)と第2出力軸(13)の抜止めは、インターナルギア(11b)の先端部を、該ギアの軸芯に直交して貫通配備したピン(12b)を、第2出力軸(31)のインターナルギア(11b)先端への嵌合部(12c)の穴、周溝等の凹部(12d)に嵌めて行っている。
インターナルギア(11b)の先端部には、回路基板(7)等を覆う筒状ケース(44)の端部が前記ピン(12b)を隠す様に被さっており、該ピン(12b)が抜け外れることはない。
上記図23に示すトルク表示締付機は、第1出力軸(12)が遊星歯車支持枠(11a)と一体ものでなく、第2出力軸(13)がインターナルギア(11b)と一体ものでなければ、前記図14,図15、図6に示す実施例と殆んど同じであるが、締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)を着脱可能に取り付けることが本発明の必須構成であるとの誤解を避けるため、敢えて図23で説明を加えたのである。
【0032】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、実施例の締付用ソケット(21)は、先端にナット係合穴(24)を有しているが、これに限定されることはない。締付用ソケット(21)先端に、六角穴付きボルトの該六角穴に係合する六角軸を突設する等、相手ボルト・ナットに係合する穴又は多角形軸を具えていれば本発明に係る締付用ソケット(21)に含まれるのは勿論である。
又、実施例では、締付トルク測定ユニット(4)は、外軸(32)上に歪ゲージ(47)のみならず、回路基板(7)及び表示部(5)を設けたが、これに限定されることはなく、回路基板(7)及び表示部(5)は、締付機上の適所あるいは締付機から離れている適所に配備することができる。歪ゲージ(47)側と回路基板(7)、表示部(5)側を配線することが無理な場合、無線で信号伝達すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】締付トルク測定ユニットの分解正面図である。
【図2】同上の断面図である。
【図3】締付機本体に締付トルク測定ユニットをセットした断面図である。
【図4】ユニット本体の分解斜面図である。
【図5】ユニット本体の断面図である。
【図6】図5A−A線に沿う断面図である。
【図7】回路基板上の表示部及び押し釦スイッチの断面図である。
【図8】第2実施例の締付トルク測定ユニットの分解正面図である。
【図9】同上の断面図である。
【図10】締付機本体に締付トルク測定ユニットをセットした断面図である。
【図11】第3実施例の締付トルク測定ユニットの分解正面図である。
【図12】同上の断面図である。
【図13】締付機本体に締付トルク測定ユニットを接続した断面図である。
【図14】第4実施例の締付トルク測定ユニットを締付機本体から外した状態の正面図である。
【図15】同上の断面図である。
【図16】締付機本体に締付トルク測定ユニットをセットした状態の断面図である。
【図17】第5実施例の締付トルク測定ユニットを締付機本体から外した状態の正面図である。
【図18】同上の断面図である。
【図19】締付機本体に締付トルク測定ユニットをセットした状態の断面図である。
【図20】操作フローチャートの前半を示す図である。
【図21】操作フローチャートの後半を示す図である。
【図22】締付トルクと負荷電流と歪み量の関係を示す図である。
【図23】他の実施例のトルク表示締付機の要部断面図である。
【図24】従来例の締付トルク測定具の使用説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 締付機本体
12 第1出力軸
13 第2出力軸
2 ソケットユニット
21 締付用ソケット
22 反力受
3 ユニット本体
4 締付トルク測定ユニット
5 表示部
6 押し釦スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆方向に回転可能な第1出力軸(12)と第2出力軸(13)を同軸上に具えた締付機本体(1)に着脱可能に接続して用いる締付トルク測定ユニット(4)であって、
締付トルク測定ユニット(4)は、締付機本体(1)の第1出力軸(12)に接続可能な内軸(31)と、第2出力軸(13)に接続可能な外軸(32)を有し、内軸(31)の先端には、締付用ソケット(21)と反力受(22)の何れか一方が、外軸(32)の先端には他方が設けられており、外軸(32)上に歪ゲージ(47)を設け、該歪ゲージの歪み量に対応する締付トルク量に変換する回路基板(7)及び締付トルク量を表示する表示部(5)を、外軸(32)上、又は適所に具えている締付トルク測定ユニット。
【請求項2】
トルク測定ユニット(4)は、内軸(31)と外軸(32)を含むユニット本体(3)に対して、ソケットユニット(2)を着脱可能に接続して構成され、ソケットユニット(2)は、筒部材(23)に反力受アーム(20)を突設して形成した反力受(22)と、該反力受(22)の筒部材(23)に回転可能に嵌まった締付用ソケット(21)とによって構成されている請求項1に記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項3】
締付用ソケット(21)は内軸(31)先端に突設された角軸(31a)に着脱可能に取り付けられ、反力受(22)が外軸(32)に着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項4】
締付機本体(1)の両軸(12)(13)とユニット本体(3)の両軸(31)(32)の接続及び、ユニット本体(3)の両軸(31)(32)と締付用ソケット(21)及び反力受(22)の接続は、締付トルク測定ユニット(4)の軸心に沿う方向に係脱する凸部と凹部の嵌合である請求項2又は3に記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項5】
外軸(32)に2つの周壁(32e)(32f)を設け、周壁(32e)(32f)間にて外軸(32)に歪ゲージ(47)を貼り付けると共に、周壁(32e)(32f)間内に、表示部(5)、回路基板(7)、押し釦スイッチ(6)及びバッテリーVを収容して、2つの周壁(32e)(32f)に跨って外軸(32)に嵌めた筒状ケース(49)でカバーし、該ケース(49)に設けた窓部(49a)と対応して表示部(5)と押し釦スイッチ(6)が位置している請求項1乃至4の何れかに記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項6】
歪ゲージ(47)は、外軸(32)の周方向に略等間隔に2の倍数箇所に設けられている請求項1乃至5の何れかに記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項7】
1つの押し釦スイッチ(6)の押し時間の長、短によって、制御回路の操作が可能である請求項1乃至6の何れかに記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項8】
回路基板(7)は、ボルト・ナットの締付トルク測定後は、次の締付トルク測定前のオートゼロ操作まで、歪みゲージのブリッジ回路及びアナログ増幅回路への電源供給を遮断できる機能を有する請求項1乃至7の何れかに記載の締付トルク測定ユニット。
【請求項9】
互いに逆方向に回転する第1出力軸(12)と第2出力軸(13)を同軸上に具えた締付機本体(1)に締付トルク測定ユニット(4)を接続した締付機であって、締付トルク測定ユニット(4)は、締付機本体(1)の第1出力軸(12)に接続可能な内軸(31)と、第2出力軸(13)に接続可能な外軸(32)を有し、内軸(31)の先端には締付用ソケット(21)と反力受(22)の何れか一方が、外軸(32)の先端には他方が設けられており、外軸(32)上に歪ゲージ(47)を設け、該歪ゲージの歪み量に対応する締付トルク量に変換する回路基板(7)及び締付トルク量を表示する表示部(5)を、外軸(32)上又は適所に具えているトルク表示締付機。
【請求項10】
互いに逆方向に回転可能な第1出力軸(12)と第2出力軸(13)を同軸上に具え、第1出力軸(12)の先端側に締付用ソケット(21)を具え、第2出力軸(13)の先端側に反力受(22)を設けた締付機において、第2出力軸(13)上に歪ゲージ(47)を有し、該歪ゲージ(47)の歪み量を締付トルク量に変換する回路基板(7)及び締付トルク量を表示する表示部(5)を、第2出力軸(13)上、又は適所に具えているトルク表示締付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−21272(P2006−21272A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201316(P2004−201316)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000201467)前田金属工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】