説明

締結機構

【課題】良好な締結状態が得られ、締結解除後には部品の取り出しが容易な締結機構を提供する。
【解決手段】軸12の先端側には、回転体18が外嵌される筒部14とネジ穴20が形成され、筒部14の内側には、テーパ孔32を有するカラー30が収納され、カラー30の内側には、ネジ穴42を有する締付コーン40が収納される。締付コーン40を、ネジ穴20と螺合するボルト50によって軸方向に押し込み、カラー30と筒部14を弾性変形させることで、回転体18を軸12に締結する。カラー内周面30Aと締付コーン外周面40Aは、深さ略中央部において面接触し、上側逃げ部46と下側逃げ部48を形成するため、当たりが均一で、面圧が低く、トルクが出しやすい。軸12のネジ穴20よりも径が大きいネジ穴42に、他のボルト60と螺合させると、締付コーン40とカラー30の密着を解除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車やプーリなどの回転体を、被締結部材として軸の先端に締結するための締結機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車やプーリなどの回転体を被締結部材として軸の先端に締結する技術としては、例えば、下記特許文献1に示す回転体固定方法がある。当該技術によれば、回転軸と回転体のボスとを所定のはめあい嵌合状態に設定し、この回転軸端部に螺合させる固定用ネジを回転軸の端部の回転体外嵌域にテーパー嵌合させ、このテーパー嵌合部の軸又は固定用ネジの外周面をボスの内周面に内接させている。また、下記特許文献2には、被締結部材を外嵌させた軸の端部に先端に向かって拡大するテーパ穴を設け、前記テーパ穴に対して締付け用コーンをテーパ嵌合させ、前記締付け用コーンを前記テーパ穴に押し込む為の押し込み手段を設け、前記締め付け用コーンには大径側端部から一定深さの逃がし穴を同軸に設け、前記締付け用コーンにおける前記逃がし穴の外周壁は、前記押し込み手段による最終締付状態において所定の弾性変形状態となる程度の剛性に設定されており、前記締付け用コーンのテーパ面と前記テーパ穴のテーパ面の少なくとも一方は、その母線が各テーパ面の軸線に向かって凸の曲線に構成されていることを特徴とする締結方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−149615号公報
【特許文献2】特許第3755986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した背景技術には次のような不都合がある。まず、特許文献1に記載の技術では、双方のテーパ面の母線が直線となっているため、これらのテーパ面が高精度に形成されていなければ、当たりが均一にならないという不都合がある。また、テーパ穴の穴底部分の肉厚が厚くなり、押し広げるのが大変になるため、トルクが出しにくいという不都合がある。一方、前記特許文献2に記載の技術では、締付け用コーンのテーパ面の母線を、外周に向かって凸の円弧状曲線として、このテーパ面が略中央部で外側に凸となるようにすることで、この中央部がテーパ穴の内周面に確実に接触する。このため、締付けバランス偏りを防止する一方で、前記凸部で一点加重となるため、塑性変形を起こすおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、嵌合部分における当たりが均一で、面圧が低く、トルクも出しやすいという良好な締結状態が得られるとともに、締結解除後には部品同士の密着を容易に解除することができる締結機構を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の締結機構は、外周面に回転体が外嵌され、該回転体に向けて弾性変形可能な略円筒状の筒部が先端に設けられるとともに、該筒部の底面に一端が臨むように、該筒部と同軸に形成された第1のネジ穴を有する軸,前記筒部の内周面に沿って収納可能であって、収納状態において前記筒部の先端に向けて径が拡大するテーパ孔を有するとともに、弾性変形により外周面が前記筒部の内周面を押圧可能なカラー,前記テーパ孔に嵌合可能であって、前記第1のネジ穴よりも径が大きく同軸の貫通孔を有する締付コーン,前記貫通孔を貫通し前記第1のネジ穴に螺合可能なネジ部と、前記筒部内のカラーに嵌合した締付コーンの先端面に当接可能な頭部を有し、前記締付コーンを軸方向に押し込む第1のボルト,軸方向に押し込まれた締付コーンと前記カラーとの密着を解除するための密着解除手段,を備えるとともに、前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記テーパ孔の深さ略中央部において面接触し、該面接触した部分の両側のうち、少なくとも前記テーパ孔の下側に、互いに接触しない下側逃げ部を形成することを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記下側逃げ部を、前記テーパ孔の深さの1/3程度としたことを特徴とする。他の形態は、前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記面接触した部分の上側に、互いに接触しない上側逃げ部を形成することを特徴とする。
【0008】
更に他の形態は、(1)前記締付コーンの貫通孔が、前記第1のネジ穴よりも径が大きい第2のネジ穴であるときに、前記密着解除手段が、前記第2のネジ穴と螺合するネジ部を有する第2のボルトであること,あるいは、(2)前記密着解除手段が、前記第1のボルトの頭部との間に前記締付コーンを挟むように、該第1のボルトのネジ部に鍔状に固定されており、前記締付コーンの下端部と前記第1のネジ穴の縁部の双方に当接可能であって前記カラーのテーパ孔に挿通可能な外形を有する鍔部,であることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明の締結機構によれば、回転体が外嵌される筒部を軸の先端に設け、該筒部の内側に、先端に向けて径が拡大するテーパ孔を有するカラーを収納し、該カラーのテーパ孔に嵌合するとともに前記軸と同軸の貫通孔を有する締付コーンを、前記軸に設けられた第1のネジ部と螺合する第1のボルトによって押し込むことで、前記カラー及び筒部を弾性変形させて前記回転体を軸に締結する。その際、前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記テーパ孔の深さ略中央部において面接触し、該面接触した部分の両側のうち、少なくとも前記テーパ孔の下側において、互いに接触しない下側逃げ部を形成するので、嵌合部分における当たりが均一で、面圧が低く、トルクが出しやすいという良好な締結状態が得られる。また、締付コーンとカラーの密着を解除する密着解除手段を設けることで、締結解除後の部品の取り出しが容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1を示す主要断面図であり、(A)は締結前の状態を示す図,(B)は締結状態を示す図,(C)は締付コーン取り出しの様子を示す図である。
【図2】本発明の実施例2を示す主要断面図であり、(A)は締結前の状態を示す図,(B)は締結状態を示す図,(C)は締付コーン取り出しの様子を示す図である。
【図3】本発明におけるカラーと締付コーンを示す断面図であり、(A)は実施例1を示す図,(B)〜(F)は他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1及び図3(A)を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例を示す主要断面図であり、(A)は締結前の状態を示す図,(B)は締結状態を示す図,(C)は締結解除後の締付コーンの取り出しの様子を示す図である。図3(A)は、本実施例におけるカラーと締付コーンを示す断面図である。本発明の締結機構は、例えば、歯車やプーリなどの回転体を、被締結部材として回転軸の先端に締結するものである。図1(A)〜(C)に示すように、本実施例の締結機構10は、回転体18が締結される軸12と、該軸12の先端内側に収納されるカラー30と、該カラー30の内側に嵌合する締付コーン40と、該締付コーン40を軸方向(図1(A)の矢印FA方向)に押し込むボルト50と、前記締付コーン40とカラー30の密着を解除するためのボルト60により構成されている。
【0013】
前記軸12は、先端に略円筒状の筒部14を備えるとともに、該筒部14の底面14Cに一端が臨むように、該筒部14と同軸に形成されたネジ穴20を備えている。前記筒部14は、外周面14Bに回転体18が外嵌されるとともに、前記回転体18の内周面18Aに向けて弾性変形が可能となっている。前記回転体18は、前記筒部14と軸12の本体との間に形成された段部16に係止されるため、筒部14の下方に位置ずれすることはない。このような軸12は、他端側が図示しない回転駆動機構などに連結されている。また、前記筒部14には、内周面14Aに沿ってカラー30が収納される。該カラー30は、収納状態において前記筒部14の先端14Dに向けて径が拡大するテーパ孔32を有している。該テーパ孔32は、前記軸12と同軸に形成されている。また、前記カラー30は、弾性変形によって、外周面30Bが前記筒部14の内周面14Aを押圧可能であって、前記筒部14とほぼ同等の深さに設定されている。
【0014】
前記締付コーン40は、前記カラー30のテーパ孔32に嵌合可能な外周面40Aを有するとともに、前記ネジ穴20よりも径が大きく、かつ、同軸のネジ穴42を有している。該締付コーン40の深さは、後述するボルト50によって前記カラー30内に完全に押し込んだときに、該カラー30とほぼ同じ深さになるように設定されている。本実施例では、図3(A)に示すように、前記テーパ孔32のテーパ面,すなわち、カラー30の内周面30Aの母線は直線となっている。一方、前記締付コーン40の外周面40Aの断面は、深さ方向に、上部44A,中央部44B,下部44Cと分けたときに、前記中央部44Bのみが前記内周面30Aの母線と略同一の傾斜を有する直線となっており、上部44A及び下部44Cは、前記内周面30Aとの間に、上側逃げ部46及び下側逃げ部48を形成可能な勾配の直線となっている。すなわち、カラー内周面30Aと締付コーン外周面40Aは、中央部44Bにおいて均一に面接触し、その上部及び下部で非接触状態となっている。前記下側逃げ部48は、例えば、締付コーン40の下側約1/3程度の範囲に形成されており、トルクが出にくくなるのを防止している。
【0015】
次に、前記ボルト50は、前記締付コーン40のネジ穴42を貫通し、前記軸12のネジ穴20に螺合するネジ部52と、前記筒部14内のカラー30に嵌合した締付コーン40の上端40Bに当接可能な頭部54を有している。前記筒部14内に、カラー30及び締付コーン40を収納した状態で、前記ボルト50を前記ネジ穴20に螺合させることにより、該ボルト50の頭部54が、前記締付コーン上端40Bに接触し、該締付コーン40を矢印FAに示す軸方向に押し込むことができる。また、前記カラー30内に押し込まれた締付コーン40を取り出すためのボルト60は、前記締付コーン40のネジ穴42と螺合するネジ部62と頭部64を有しており、軸方向への押し込みよるカラー30と締付コーン40の密着を解除することができる。
【0016】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、図1(A)に示すように、あらかじめ軸12の筒部14内に、カラー30と締付コーン40を収納する。このとき、前記締付コーン40の上端40Bは、筒部先端14Dから若干突出している。次に、締結対象の回転体18の内周面18Aを、筒部外周面14Bに沿って外嵌させる。そして、図示しない工具を利用して、前記ボルト50のネジ部52を軸12のネジ穴20に螺合させ、頭部54を締付コーン上端40Bに当接させながら、更に回転させることで、締付コーン40が矢印FA方向に押し込まれる。すると、カラー内周面30Aと締付コーン外周面40Aが、中央部44Bにおいて均一に面接触し、当該部分を起点としてカラー30を押圧する。押圧されたカラー30が、弾性変形により筒部14を径方向に押圧することで、更に、該筒部14が径方向に弾性変形し、外周面14Bが回転体内周面18Aに密着するため、図1(B)に示すように、軸12に回転体18を締結することができる。
【0017】
回転体18の締結を解除するときは、まず、図示しない工具を利用して、前記ボルト50を、軸12のネジ穴20から取り外し、次に、前記ボルト60を、同じく図示しない工具を利用して、締付コーン40のネジ穴42に螺合させる。そして、該ボルト60の端部62Aが、筒部底面14Cに達したあとも、ボルト60の捻じ込みを続けると、締付コーン40がボルト60のネジ部62に沿って軸方向に上昇し、カラー30との密着が解除される。これにより、図1(C)に矢印FBで示すように、ボルト60を上方に引き上げることで、カラー30から締付コーン40を取り出すことができる。該締付コーン40の取り出し後は、筒部14から回転体18とカラー30を外す。
【0018】
このように、実施例1によれば、回転体18が外嵌される筒部14を軸12の先端に設け、該筒部14の内側に、先端に向けて径が拡大するテーパ孔32を有するカラー30を収納し、前記テーパ孔32に嵌合するとともに前記軸12と同軸のネジ穴42とを有する締付コーン40を、前記軸12のネジ穴20と螺合するボルト50によって軸方向に押し込むことで、前記カラー30及び筒部14を弾性変形させて前記回転体18を軸12に締結する。その際、前記カラー30のテーパ孔32と前記締付コーン40の外周面40Aは、前記テーパ孔32の深さ略中央部において面接触し、該面接触した部分の上下側に、互いに接触しない上側逃げ部46と下側逃げ部48を形成するので、嵌合部分における当たりが均一で、面圧が低く、トルクが出しやすいという良好な締結状態が得られるという効果がある。また、前記ネジ穴42を、軸12のネジ穴20よりも大きく設定し、前記ネジ穴42と螺合するネジ部62を有するボルト60を用いることで、締結解除後に、締付コーン40とカラー30の密着を解除し、締付コーン40を容易に取り出すことができる。
【実施例2】
【0019】
次に、図2を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図2は、本実施例を示す主要断面図であり、(A)は締結前の状態を示す図,(B)は締結状態を示す図,(C)は締結解除後の締付コーンの取り出しの様子を示す図である。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には、同一の符号を用いることとする。前記実施例1は、カラー30に密着した締付コーン40を取り出すために、押し込み用のボルト50よりも径が大きい他のボルト60を用いることとしたが、本実施例は、座金を利用して密着解除を行う構成とした例である。本実施例の締結機構100は、軸12,カラー110,締付コーン120,ボルト50,座金140により構成されている。前記軸12及びボルト50の構成は、前記実施例1と同様である。また、カラー110も、基本的には前記実施例1のカラー30と同様の構成となっており、収納状態において筒部先端14Dに向けて径が拡大するテーパ孔112を有しており、該テーパ孔112は、前記軸12と同軸に形成されている。該カラー110は、弾性変形によって、外周面110Bによる筒部内周面14Aの押圧が可能となっており、前記筒部14と略同一深さに設定されている。また、内周面110Aは、テーパ部114Aと垂直部114Bを有している。
【0020】
次に、締付コーン120は、前記テーパ孔112に嵌合可能であって、前記ネジ穴20よりも径が大きく、かつ、同軸の貫通孔122を有している。該締付コーン120の深さは、前記カラー110内に完全に押し込んだときに、下端120Cと筒部底面14Cの間に、座金140を収納する隙間130を形成できるように設定されている。本実施例においても、締付コーン外周面120Aの断面は、前記カラー110のテーパ部114Aの母線と略同一の傾斜を有する直線状の中央部124Bと、その上下に異なる勾配で形成された直線状の上部124A及び下部124Cにより構成される。従って、カラー内周面110Aと締付コーン外周面120Aは、中央部124Bにおいて均一に面接触し、その上下で互いに接触しない上側逃げ部126と下側逃げ部128を形成する。以上のような締付コーン120は、前記座金140によって、前記ボルト50の頭部54との間に保持されている。前記座金140は、前記ボルト頭部54との間に、若干の隙間を残して締付コーン120を挟む位置に、溶接又は接着などの適宜手法によって固定されている。前記隙間を残すことにより、締付コーン120がボルト50と一体に回転するのを防止することができる。なお、前記座金140は、前記締付コーン120の下端120C及びネジ穴20の縁部(すなわち、筒部底面14C)の双方に当接可能であって、前記カラー110のテーパ孔112に挿通可能な外径を有している。
【0021】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、図2(A)に示すように、軸12の筒部14内に、カラー110を収納する。また、ボルト50のネジ部52を、締付コーン120の貫通孔122と座金140に挿通し、ボルト頭部54と座金140の間に前記締付コーン120が挟まれるように、前記座金140を前記ネジ部52に固定しておく。次に、締結対象の回転体18を、筒部外周面14Bに沿って外嵌させ、図示しない工具を利用して、前記ボルト50のネジ部52をネジ穴20に螺合させ、頭部54を締付コーン上端120Bに当接させながら、更に回転させることで、締付コーン120が矢印FA方向に押し込まれる。すると、カラー内周面110Aと締付コーン外周面120Aが、中央部124Bにおいて均一に面接触し、当該部分を起点としてカラー110を押圧する。押圧されたカラー110が、弾性変形により径方向に広がり、筒部14を介して回転体内面18Aを押圧することで、図2(B)に示すように、軸12に回転体18が締結される。本実施例では、回転体18の締結を解除するときは、図示しない工具を利用して、前記ボルト50を引き抜き方向に回転させる。すると、前記ボルト50と一体に回転する座金140が、ボルト頭部54との間に前記締付コーン120を挟んだまま、図2(C)に矢印FBで示す方向に持ち上がり、カラー110との密着が解除されて容易に取り出すことができる。
【0022】
このように、実施例2によれば、ボルト50のネジ部52に、ボルト頭部54との間に締付コーン120を挟むように、座金140を固定することで、押し込み用ボルト50のみで締付コーン120の押し込みと取り出しを行うことができる。このため、部品点数を少なくするとともに、締付コーン120の貫通孔122にネジ部を形成する必要がなくなるため、製造コストの低減も可能となる。他の基本的な効果については、上述した実施例1と同様である。
【0023】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、締付コーン外周面40Aの上部44A及び下部44Cの断面を、中央部44Bと異なる勾配の直線とすることで、上側逃げ部46と下側逃げ部48を設けることとしたが、図3(B)に示す例のように、下部44Cのみを、上部44A及び中央部44Bと異なる勾配の直線とすることで、下側逃げ部48のみを形成するようにしてもよい。あるいは、図3(C)に示すように、前記下部44Cを曲線状に形成して前記下側逃げ部48を形成してもよい。更に、図3(D)に示すように、上部44A及び下部44Cの双方を曲線状に形成しても、前記実施例1と同様の効果が得られる。
【0024】
また、図3(E)に示す例のように、カラー内周面30Aを、テーパ部34Aと垂直部34Bにより構成し、締付コーン外周面40Aの断面の中央部44B及び下部44Cを前記テーパ部34Aと略同一勾配の直線とし、上部44Aを、前記テーパ部34Aと異なる勾配の直線とすることで、上側逃げ部46と下側逃げ部48を形成してもよい。すなわち、カラー内周面30A側に逃げ部を形成するための細工を施してもよい。同様の例として、図3(F)に示すように、カラー内周面30Aを、テーパ状の中央部36Bと、該中央部36と異なる傾斜の上部36A及び下部36Cにより形成し、締付コーン40の外周面40Aの断面の中央部44Bを、前記中央部36Bと略同一勾配の直線に形成し、上部44A及び下部44Cを前記上部36A及び下部36Cと逆方向に傾斜する直線にすることでも、上側逃げ部46及び下側逃げ部48の形成が可能である。むろん、図3(B)〜(F)に示す形状に限定されるものではなく、直線同士の組み合わせ,直線と曲線の組み合わせ,曲線同士の組み合わせの中から、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。前記実施例2に、図3(B)〜(F)に示す形態を適用してもよい。
【0025】
(2)前記実施例で示したカラーと締付コーンの密着解除方法も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。例えば、前記実施例2では、座金140を利用することとしたが、これも一例であり、ボルト頭部54との間に締付コーン120を挟むように、ネジ部52に固定され、かつ、前記締付コーン下端120Cとネジ穴20の縁部の双方に当接可能であって前記カラー110のテーパ孔112に挿通可能な外形を有する鍔状のものであればよい。また、ネジ部52への固定方法も一例であり、上述した溶接や接着のほか、ネジ部52に形成した凹部に挿入するような形態であってもよい。
(3)前記実施例で示した締結手順も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更してよい。
(4)前記実施例では、回転体18として歯車やプーリなどを例に挙げて説明したが、これも一例であり、本発明は、軸の先端に締結される回転体全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、回転体が外嵌される筒部を軸の先端に設け、該筒部の内側に、先端に向けて径が拡大するテーパ孔を有するカラーを収納し、該カラーのテーパ孔に嵌合するとともに前記軸と同軸の貫通孔とを有する締付コーンを、前記軸の第1のネジ部と螺合する第1のボルトによって軸方向に押し込むことで、前記カラー及び筒部を弾性変形させて前記回転体を軸に締結する。その際、前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記テーパ孔の深さ略中央部において面接触し、該面接触した部分の両側のうち、少なくとも前記テーパ孔の下側において、互いに接触しない下側逃げ部を形成するので、嵌合部分における当たりが均一で、面圧が低く、トルクも出しやすいという良好な締結状態が得られる。また、締付コーンとカラーの密着を解除する密着解除手段を設けて、締結解除後の部品の取り出しを容易にした。このため、軸の先端に被締結部材を回転体として締結するための締結機構の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
10:締結機構
12:軸
14:筒部
14A:内周面
14B:外周面
14C:底面
14D:先端
16:段部
18:回転体
18A:内周面
20:ネジ穴
30:カラー
30A:内周面
30B:外周面
32:テーパ孔
34A:テーパ部
34B:垂直部
36A:上部
36B:中央部
36C:下部
40:締付コーン
40A:外周面
40B:上端
40C:下端
42:ネジ穴
44A:上部
44B:中央部
44C:下部
46:上側逃げ部
48:下側逃げ部
50:ボルト
52:ネジ部
54:頭部
60:ボルト
62:ネジ部
62A:端部
64:頭部
100:締結機構
110:カラー
110A:内周面
110B:外周面
112:テーパ孔
114A:テーパ部
114B:垂直部
120:締付コーン
120A:外周面
120B:上端
120C:下端
122:貫通孔
124A:上部
124B:中央部
124C:下部
126:上側逃げ部
128:下側逃げ部
130:隙間
140:座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に回転体が外嵌され、該回転体に向けて弾性変形可能な略円筒状の筒部が先端に設けられるとともに、該筒部の底面に一端が臨むように、該筒部と同軸に形成された第1のネジ穴を有する軸,
前記筒部の内周面に沿って収納可能であって、収納状態において前記筒部の先端に向けて径が拡大するテーパ孔を有するとともに、弾性変形により外周面が前記筒部の内周面を押圧可能なカラー,
前記テーパ孔に嵌合可能であって、前記第1のネジ穴よりも径が大きく同軸の貫通孔を有する締付コーン,
前記貫通孔を貫通し前記第1のネジ穴に螺合可能なネジ部と、前記筒部内のカラーに嵌合した締付コーンの先端面に当接可能な頭部を有し、前記締付コーンを軸方向に押し込む第1のボルト,
軸方向に押し込まれた締付コーンと前記カラーとの密着を解除するための密着解除手段,
を備えるとともに、
前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記テーパ孔の深さ略中央部において面接触し、該面接触した部分の両側のうち、少なくとも前記テーパ孔の下側に、互いに接触しない下側逃げ部を形成することを特徴とする締結機構。
【請求項2】
前記下側逃げ部を、前記テーパ孔の深さの1/3程度としたことを特徴とする請求項1記載の締結機構。
【請求項3】
前記カラーのテーパ孔と前記締付コーンの外周面は、前記面接触した部分の上側に、互いに接触しない上側逃げ部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の締結機構。
【請求項4】
前記締付コーンの貫通孔が、前記第1のネジ穴よりも径が大きい第2のネジ穴であるときに、
前記密着解除手段が、前記第2のネジ穴と螺合するネジ部を有する第2のボルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の締結機構。
【請求項5】
前記密着解除手段が、
前記第1のボルトの頭部との間に前記締付コーンを挟むように、該第1のボルトのネジ部に鍔状に固定されており、前記締付コーンの下端部と前記第1のネジ穴の縁部の双方に当接可能であって前記カラーのテーパ孔に挿通可能な外形を有する鍔部,
であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の締結機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−33169(P2011−33169A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182539(P2009−182539)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(507144458)株式会社 GMS (4)
【Fターム(参考)】