説明

緩衝体とその製造方法および振動減衰装置

【課題】金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体を軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体およびその製造方法、緩衝体を備えた振動減衰装置を提供する。
【解決手段】金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体である芯材1と軟質樹脂2からなる構造体であって、該芯材1は該軟質樹脂2に含浸されるとともに、上記軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体A、とその製造方法および振動減衰特性のある緩衝体を備えた振動減衰装置C。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動減衰特性のある緩衝体に関する。さらに詳しくは金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体を軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体およびその製造方法、緩衝体を備えた振動減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動減衰特性のある緩衝体は、防振ゴムを使ったものが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
振動減衰特性のある緩衝体は防振ゴムを使ったものがある。防振ゴムを使っているため、使用環境の制限や、耐久性などの問題がある。
【0004】
使用環境の制限が少なく、耐久性がある金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体は、振動減衰特性が得られないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明においては、次のような技術的手段を講じている。すなわち、金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体を含む芯材と軟質樹脂からなる構造体であって、該芯材は該軟質樹脂に含浸されるとともに、上記軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体が提供される。
【0006】
上記軟質樹脂としては、伸び率の高いウレタン樹脂系、ポリウレタン系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系が好ましく使用できる。軟質樹脂の成型形状は所要の特性を考慮して決めることができる。粘弾性の高い軟質樹脂を使用することで、緩衝体が提供できる。
【0007】
さらに、本願第二発明によれば、型枠に芯材を搭載し、軟質樹脂を所要量注型し、硬化反応終了後離型して、上記芯材が軟質樹脂と一体成形された、塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体の製造方法が提供される。
【0008】
本願第三発明によれば、本願第一発明の振動減衰特性のある緩衝体を備えた振動減衰装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本願第一発明は上記のとおりであり、ステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体である芯材と軟質樹脂からなる構造体であって、該芯材は該軟質樹脂に含浸されるとともに、上記軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされているため、弾性力の相互作用によって振動減衰特性のある緩衝体を得ることができる。
【0010】
上記芯材がステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体で構成されることで、使用環境の制限が少なく、耐久性がある振動減衰特性のある緩衝体を得ることができる。
【0011】
また、ステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体の形状は自由に作れるので、形状に自由度が高い振動減衰特性のある緩衝体を得ることができる。
【0012】
ステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体は空隙にバラツキがあるが、軟質樹脂に含浸することで空隙を作為的に微調整することができ、バラツキを抑えることができる。
【0013】
ステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体を軟質樹脂に含浸することによって、軟質樹脂の接着力によりほつれがなくなる。
【0014】
請求項2に記載の本願第二発明は上記のとおりであり、型枠に芯材を搭載し、軟質樹脂を所要量注型し、硬化反応終了後離型して、振動減衰特性のある緩衝体を製造するため、簡単に作業性よく、芯材が均一に軟質樹脂と一体成形された振動減衰特性のある緩衝体を得ることができる。
【0015】
請求項3に記載の本願第三発明は上記のとおりであり、本願第一発明の振動減衰特性のある緩衝体を備えた振動減衰装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明では、ステンレススチール線の編み方と圧縮度による金属体の空隙率である密度と、軟質樹脂の塗布面及び含浸量と、軟質樹脂の特性との組み合わせが自由にできるので、バランスを変えることで、さまざまな特性に対応できるという利点がある。
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して、詳細に説明する。図1は、本発明にかかる振動減衰特性のある緩衝体Aの構成を示す断面図である。図1から明らかなように、上記振動減衰特性のある緩衝体Aは、ステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体である芯材1は軟質樹脂2に含浸、一体化して形成されている。以下、上記振動減衰特性のある緩衝体Aについて、その製造方法にも言及しながら詳細に説明する。
【0018】
振動減衰特性のある緩衝体Aの、芯材1を含浸する軟質樹脂2の形態は、図2、図3、図4があり、いずれも芯材1と軟質樹脂2は一体化されている。図2は軟質樹脂が芯材全面に含浸されて、図3は軟質樹脂が芯材内面に含浸されて、図4は軟質樹脂が芯材外面に含浸されている。
【0019】
上記芯材1に使われるステンレススチール線を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体は軟質樹脂2に含浸、一体化して本発明の振動減衰特性のある緩衝体を得るのであるが、その製造方法は型枠を用いる注型法により行われる。
【0020】
以下、注型法により上記振動減衰特性のある緩衝体を製造する方法について説明する。まず、図6に示すようにステンレススチール線をメリヤス編みして、図7に示すように丸目、圧縮成形することで、図8に示すような塑性変形可能な立体に成形した金属体である芯材1を得る。図9に示すように平面視逆T字型の型枠5の垂直部分に円筒状の芯材1をセットする。次に図10に示すように、型枠6に合わせて芯材1の位置を調整し、図11に示すように、型枠7を嵌合し、型枠6と型枠7を結合する。図12に示すように、シリコーン粘着剤などの軟質樹脂2を注入口8から注型し、芯材1を含浸する。これを真空槽に入れることで、軟質樹脂が均等になるようにする。その後、常圧にて硬化させ、硬化反応終了後、図13に示すように型枠6、7を開放し、図14に示すように型枠5の垂直部分から離型し、図1に示すように本発明の振動減衰特性のある緩衝体Aを得る。あらかじめ型枠5、6、7に離型剤を塗布したり、芯材1に接着性を高める前処理をすることが好ましく用いられる。
【0021】
上記芯材1の形状は円筒状に限らず、角型などもある。また穴の無い形状も使用できる。穴の無い形状の場合は上記型枠5を使用しなくても済む場合がある。
【0022】
上記注型法に限定されず、射出成形法やブロー成形法など他の方法により本発明の振動減衰特性のある緩衝体Aを製造することも可能である。
【0023】
軟質樹脂を芯材内面や外面に含浸する場合、注型法ではなく、次の方法を取り入れることができる。図15に示すように軟質樹脂2と接着しないシート9に硬化前の軟質樹脂2を塗布し、図16に示すように芯材1の内面または外面に貼り合わせた後、真空槽に入れて、軟質樹脂2が均等になるようにする。その後、常圧にて硬化させ、硬化反応終了後、軟質樹脂2と接着しないシート9を取り除くことで、振動減衰特性のある緩衝体Aを得ることができる。
【実施例】
【0024】
本発明の振動減衰特性のある緩衝体Aの使用する例を図17に示す。振動発生源10からの振動を筐体11に伝わらないように本発明の振動減衰特性のある緩衝体Aを取り付ける。緩衝体Aは取り付けに必要な形状にできる。軟質樹脂によって振動減衰特性が決まるので、振動周波数に合わせた軟質樹脂を選ぶことで振動を減衰することができる。加重に対して芯材の特性を選ぶことができるので、軽量物から重量物まで対応できる。
【0025】
本願第三発明である、本願第一発明の振動減衰特性のある緩衝体を備えた振動減衰装置の実施例として、振動減衰特性のある緩衝体の上端・下端に、ナット付き取付板を付けた振動減衰装置Cがあり、製造方法も含め詳細に説明する。
【0026】
図18で示すようにナット付き取付板12と芯材1と軟質樹脂2からなる振動減衰装置Cである。
【0027】
ナット付き取付板は、図19に示す一体型13でも、図20に示す取付板にボルトを取り付けたもの14でもよく、ボルトだけのものでもよい。
【0028】
図21において、芯材1とナット付き取付板12を一体化させる。接合15は溶接やハンダ付けなどによる方法、もしくは接着剤による接着法などが好ましく用いられる。
【0029】
図22において、一体化した芯材1とナット付き取付板12を型枠16,17にセットして軟質樹脂を注入口18より注型しエアー抜き口19より空気を抜くことで、芯材1に含浸する。これを真空槽に入れることで、軟質樹脂が均等になるようにする。その後、常圧にて硬化させ、硬化反応終了後、型枠16,17から離型し、振動減衰特性のある緩衝体の上端・下端に、ナット付き取付板を付けた振動減衰装置Cを得ることができる。
【0030】
別の製造方法として、図23のように振動減衰特性のある緩衝体Aとナット付き取付板12を接着剤20によって接着する方法もある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の振動減衰特性のある緩衝体は、使用する芯材と軟質樹脂の特性によって、自由に所要の特性を得ることができる。このため産業上の利点は極めて広汎である。たとえば、振動を嫌う光学系製造装置や計測機器の機構部品、振動を吸収する部品としての実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる振動減衰特性のある緩衝体構成図である。
【図2】軟質樹脂が芯材全面に含浸された斜図である。
【図3】軟質樹脂が芯材内面に含浸された斜図である。
【図4】軟質樹脂が芯材外面に含浸された斜図である。
【図5】公知の防振ゴムを使った緩衝体の図である。
【図6】ステンレススチール線をメリヤス編みした図である。bに編み目を示す。
【図7】メリヤス編みしたメッシュを丸目た時の図である。
【図8】図7を圧縮形成した、塑性変形可能な立体に成形した金属体の図である。
【図9】本発明にかかる製造方法において、型枠5に芯材をセットした断面図である。
【図10】型枠6に図9の芯材を合わせたときの断面図である。
【図11】型枠6と型枠7を嵌合したときの断面図である。
【図12】軟質樹脂を注型するときの断面図である。
【図13】軟質樹脂が硬化後、型枠6、7を開放したときの断面図である。
【図14】振動減衰特性のある緩衝体Aを型枠5から離型したときの断面図である。
【図15】シートに軟質樹脂を塗布した図である。
【図16】軟質樹脂を塗布したシートを芯材の内面または外面に貼り合わせたときの断面図である。
【図17】緩衝体の使用例を示す図である。
【図18】本発明にかかる振動減衰装置の製造において、取付板に緩衝体を載せた図である。
【図19】一体型のナット付き取付板を示す形状図である。
【図20】取付板にボルトを取り付けたナット付き取付板を示す形状図である。
【図21】取付板と緩衝体を一体化させた図である。
【図22】取付板と緩衝体を型を使って一体化させる製造方法ある。
【図23】取付板と緩衝体を接着剤を使って一体化させる製造方法である。
【符号の説明】
【0033】
A 本発明にかかる振動減衰特性のある緩衝体
B 公知の防振ゴムを使った緩衝体
C 振動減衰特性のある緩衝体の上端・下端に、ナット付き取付板を接着した振動減衰装置
1 芯材
2 軟質樹脂
3 ステンレススチール線をメリヤス編みしたメッシュ
4 メリヤス編みしたメッシュを丸目たもの
5 型枠
6 型枠
7 型枠
8 注入口
9 軟質樹脂と接着しないシート
10 振動発生源
11 筐体
12 ナット付き取付板
13 一体型ナット付き取付板
14 取付板にボルトを取り付けたナット付き取付板
15 溶接
16 型枠
17 型枠
18 注入口
19 エアー抜き口
20 接着性樹脂







【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を編んで塑性変形可能な立体に成形した金属体を含む芯材と軟質樹脂からなる構造体であって、該芯材は該軟質樹脂に含浸されるとともに、上記軟質樹脂と一体化して塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体。

【請求項2】
型枠に芯材を搭載し、軟質樹脂を所要量注型し、硬化反応終了後離型して、上記芯材が軟質樹脂と一体成形された、塑性変形可能とされた振動減衰特性のある緩衝体の製造方法。

【請求項3】
請求項1記載の振動減衰特性のある緩衝体を備えた振動減衰装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−197937(P2009−197937A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41389(P2008−41389)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(708000878)株式会社コーディアルテック (5)
【Fターム(参考)】