説明

練条機用トップローラ

【課題】 従来のトップローラでは、回転が速い場合に温度が上昇し、保持されているグリスが液状になってオイルシール12から漏れ、アーバーの回転部の温度が上昇すると、回転部からアーバーのコットに熱が伝わり、コット自体が硬化し、破裂するという問題があった。
【解決手段】 スラストプレート3とボール4の周囲のエンドブッシュ11に冷却油配管16の接続穴11cが対向して形成され、冷却油配管16にポンプ17及び冷却装置18さらに濾過装置19を装着した冷却油循環装置20が接続され、又、押圧部材21がエンドブッシュ11を押圧して、アーバー1のコット2をボトムローラ15に押しつけるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転したときに温度上昇を防ぐようにした練条機用トップローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のトップローラとしては、図2に示すように、ボトムローラ(図示せず)との間で糸を挟持するためのコット(硬質ゴム)2を装着したアーバーの両端面にスラストプレート3が装着され、このスラストプレート3の凹み3aにボール4が接触して配置され、又、ボール4はブッシュ5の内部に設けられた平らなスラストプレート6と接触するように構成され、ブッシュ5に空気抜き孔5aがもうけられ、さらに、アーバー1の回転部1aに装着される軸受け手段として、多数のニードル7がリテーナ8で等間隔に装着され、又、これらのニードル7及びリテーナ8は図では二列に設けられ、ニードル7は回転部1aに接触されている。
【0003】
さらに、アーバー1の回転部1aのほぼ中央部分に凹み9が設けられ、この凹み9はニードル7のほぼ中間に設けられ、この凹み9にスナップリング10が装着され、このスナップリング10は弾力性のある円筒状の合成樹脂からなり、アーバー1の回転部1aに装着し易いように軸方向に割り入れられ、して、ブッシュ5及びニードル7を覆うにようにエンドブッシュ11が装着され、エンドブッシュ11の内面はニードル7と接触し、又、エンドブッシュの内端にオイルシール12が固着され、このオイルシール12の内端はアーバー1の回転部1aと接触するようにこうせいされている。なお、図2において、アーバー1の両側の形状は同じであるので、アーバー1の片側のみで説明している。
【0004】
しかしながら、このように構成された従来のトップローラでは、一般にアーバー1の回転部1a内にグリスを充填しているが、回転が遅い場合は、温度はさほど上昇しないが、回転が速くなると、ニードル7とエンドブッシュ11の内面及びニードルとアーバー1の回転部1aの外面との摩擦により温度が上昇し、ニードル7とスナップリングの間に保持されているグリスが液状になってオイルシール12から漏れるという問題があり、又、アーバー1の回転部1aの温度が上昇すると、エンドブッシュ11からアーバー1のコット2に熱が伝わり、コット2自体が硬化し、破裂するという問題があった。
【特許文献1】実開平4−40775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来のトップローラでは、潤滑油としてグリスを使用しているために、回転が速い場合に温度が上昇し、保持されているグリスが液状になってオイルシール12から漏れるという問題があり、又、アーバーの回転部の温度が上昇すると、回転部からアーバーのコットに熱が伝わり、コット自体が硬化し、破裂するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中央の拡大部にコットを装着したアーバーの両端面にスラストプレートとボールからなるスラスト受け手段を装着し、前記アーバーの両端面近傍の小径部に複数列のニードルからなる軸受け手段を装着し、該軸受け手段の周囲にエンドブッシュを装着し、該エンドブッシュの内端は前記コットを装着する前記アーバーの拡大部の側面に形成した溝に挿入され、前記軸受け手段を装着した回転部と前記コットの装着部の間の段差に形成した突出部を形成し、前記軸受け手段の近傍の前記エンドブッシュの内面にオイルシールの一端が固着され、他端が前記突出部の内側に近接して装着され、前記エンドブッシュのスラストプレートとボールの近傍に冷却油配管を装着し、該冷却油配管にポンプによって冷却油を強制的に循環するように注入し、前記冷却油配管から注入された冷却油を前記エンドブッシュの内部で循環し、潤滑と同時に前記アーバーを冷却するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の練条機のトップローラでは、エンドブッシュ内にオイル循環を採用することにより、ベアリングの摩耗防止だけでなく、コットの摩耗、硬化を防止することができ、コットの研磨・交換周期を延長することができ、コットの交換、研磨のために練条機を停止する期間が短くなり、コットの交換周期を延長することができるので、寿命がきて廃棄するコットを減少でき、さらに、高価なグリスを使用する必要はなく、廉価な工業用潤滑油を使用することができ、又、従来のトップローラでは、潤滑にグリスを使用しているために、エンドブッシュが異常に高温となり、コットの交換時に、作業者が高温のエンドブッシュを持たずに、低温のコット部分を素手で持ってしまうが、コットを素手で持つと、コットが接する糸スライバーの品質に悪影響を及ぼすが、オイル循環方式によってエンドブッシュが低温になり、素手で持つことができるので、コットの表面を素手でもつことが防止でき、品質管理が向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、エンドブッシュのスラストプレートとボールの近傍に冷却油配管を装着し、冷却油配管にポンプによって冷却油を強制的に循環するように注入し、この冷却油配管から注入された冷却油をエンドブッシュの内部で循環することにより、潤滑と同時にアーバーを冷却するようにしたものである。
【実施例】
【0009】
図1は本発明の実施例の練条機用トップローラの側面断面図で、1はアーバー、2はコット、3はスラストプレート、4はボール、5はブッシュ、7は多数のニードル、8はリテーナ、10はカラー、11はエンドブッシュで、これらの構成は上記従来例と同じであるので、説明は省略するが、本実施例では、アーバー1の中央部分に拡大部1bが形成され、この拡大部1bにローラースリーブ13を介してコット2が固着され、アーバー1の回転部1aと拡大部1bの間の段付き部1cに突出部1dが形成され、ニードル7が接触しているエンドブッシュ11の内面に一端が固着されたシールリング14の他端は突出部1dの近傍にアーバー1の段付き部1cと近接して装着され、又、エンドブッシュ11の内端11aはアーバー1の拡大部1bの側面に形成された溝11b挿入され、さらに、コット2と接触してボトムローラ15が装着され、ボトムローラ15の中心に軸方向に中心孔15aが形成され、又、スラストプレート3とボール4の周囲のエンドブッシュ11に冷却油配管16の接続穴11cが対向して形成され、冷却油配管16にポンプ17及び冷却装置18さらに濾過装置19を装着した冷却油循環装置20が接続され、又、押圧部材21がエンドブッシュ11を押圧して、アーバー1のコット2をボトムローラ15に押しつけるようにしている。
【0010】
このように構成された本実施例の練条機用トップローラでは、冷却油循環装置20のポンプ17を駆動すると、潤滑油がエンドブッシュ11内に供給され、多数のニードル7からなるベアリングの潤滑だけでく、アーバー1の回転部1aを
冷却され、さらに、エンドブッシュ11を通過した潤滑油は濾過装置19で風綿や塵埃が除去され、さらに、冷却装置18を使用することにより、アーバー1全体が冷却され、コット2の摩耗、硬化を防止することができ、コット2の研磨・交換周期を延長することができ、コット2の交換、研磨のために練条機を停止する期間が短くなり、コット2の交換周期を延長することができるので、寿命がきて廃棄するコット2を減少でき、さらに、高価なグリスを使用する必要がなく、廉価な工業用潤滑油を使用することができ、又、オイル循環方式によってエンドブッシュ11が低温になり、素手で持つことができるので、コット2の表面を素手でもつことが防止でき、品質管理が向上するという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0011】
なお、上記実施例の説明では、冷却循環装置20に冷却装置18をもうけたが、冷却装置18が無くてもエンドブッシュ内を充分冷却することかでき、又、上記実施例の説明では、トップローラのみを説明したが、ボトムローラ15の中心孔に冷却油循環装置20から冷却油を循環することにより、ボトムローラ15も冷却することができ、練条機全体を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の練条機用トップローラの側面断面図である。
【図2】従来の練条機用トップローラの側面断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 アーバー
2 コット
3 スラストプレート
4 ボール
5 ブッシュ
7 多数のニードル
8 リテーナ
10 カラー
11 エンドブッシュ
13 ローラースリーブ
14 シールリング
15 ボトムローラ
16 冷却油配管
17 ポンプ
18 冷却装置
19 濾過装置
20 冷却油循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の拡大部にコットを装着したアーバーの両端面にスラストワッシャとボールからなるスラスト受け手段を装着し、前記アーバーの両端面近傍の小径部に複数列のニードルからなる軸受け手段を装着し、該軸受け手段の周囲にエンドブッシュを装着し、該エンドブッシュの内端は前記コットを装着する前記アーバーの拡大部の側面に形成した溝に挿入され、前記軸受け手段を装着した回転部と前記コットの装着部の間の段差に形成した突出部を形成し、前記軸受け手段の近傍の前記エンドブッシュの内面にオイルシールの一端が固着され、他端が前記突出部の内側に近接して装着され、前記エンドブッシュのスラストワッシャとボールの近傍に冷却油配管を装着し、該冷却油配管にポンプによって冷却油を強制的に循環するように注入し、前記冷却油配管から注入された冷却油を前記エンドブッシュの内部で循環し、潤滑と同時に前記アーバーを冷却するようにしたことを特徴とする練条機用トップローラ。
【請求項2】
前記冷却油配管に冷却装置を接続し、前記エンドブッシュ内を循環する冷却油を冷却することを特徴とする請求項1記載の練条機用トップローラ。
【請求項3】
前記トップローラの下部に装着するボトムローラの軸方向に中心孔を形成し、前記冷却油配管を循環する潤滑油を前記ボトムローラの中心孔に循環することを特徴とする請求項1記載の練条機用トップローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−7714(P2010−7714A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165279(P2008−165279)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(598084149)鈴喜産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】