説明

縦型コールドプレス装置

【課題】常温状態での押圧による被処理体を均一の厚さに成形することで、完成品としての積層合板を均一の厚さに成形し得る縦型コールドプレス装置を提供する。
【解決手段】縦型コールドプレス装置1は、被処理体Wの上側及び下側の少なくとも一方の側に配置され、上下方向に移動可能な押圧盤13と、押圧盤13の押圧面13aに対して互いに異なる複数の位置に配置され、その押圧盤13を介して被処理体Wを上下方向に押圧する押圧シリンダ16L,16Rと、押圧シリンダ16L,16Rによる押圧下での押圧盤13の基準位置に対する上下方向の位置ずれ量を検出する押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41R(位置ずれ量検出手段)と、検出される押圧盤13の位置ずれ量が設定範囲内に収まるように押圧シリンダ16L,16Rを個別に駆動制御する制御基板60及び電磁切換弁53L,53R(シリンダ制御手段)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を非加熱状態で押圧処理する縦型コールドプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の板材を複数配置された熱板の間にそれぞれ起立状態で搬入し、それら複数の板材で構成される被処理体の左側及び右側の少なくとも一方の側に配置された押圧盤を駆動することによって被処理体を加熱押圧する横型ホットプレス装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この横型ホットプレス装置では、矩形状の板材の長辺の一方(下辺)を搬送基準面としてホットプレス装置に搬入し、長手方向(左右方向)に配置する複数の押圧シリンダ(例えば油圧シリンダ)の押圧位置を板材の短辺方向(上下方向)の中心位置と合致させるようにして加熱押圧するのが一般的である。したがって、通常は、押圧シリンダの押圧位置を押圧盤の押圧面に対して移動調節(昇降)するための移動調節機構(例えば昇降用油圧シリンダ)を設け、搬入される板材の大きさに応じて押圧シリンダの押圧位置を変えることにより、板材の大きさが変わっても加熱圧着後の被処理体ひいては各板材の厚さが不均一にならないようにしている。
一方、複数の板材を複数配置された熱板の間にそれぞれ水平状態で搬入し、それら複数の板材で構成される被処理体の上側及び下側の少なくとも一方の側に配置された押圧盤を駆動することによって被処理体を加熱押圧する縦型ホットプレス装置も知られている。この縦型ホットプレス装置では、板材の大きさにかかわらず、板材の基準線(中心線)と押圧盤の基準線(中心線)とを一致させることが比較的容易である。このため、縦型ホットプレス装置では、横型ホットプレス装置のような押圧シリンダの移動調節機構を設けなくて済むので、プレス装置を簡易に構成することができるという利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2007−313864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、木製積層合板を製造する工程には、上記したホットプレス装置を用いて合板を加熱圧着(本接着)する工程の前に、単板を複数重ね合わせた状態で押圧することにより単板の水分を抜くようにした工程や、接着剤が塗布された複数の単板からなる合板を複数積層した状態で押圧することにより各合板を仮接着するとともに、接着剤が板面全域に均等に行き渡るようにした工程などが含まれている。これらの工程では、通常、コールドプレス装置が用いられるが、このようなコールドプレス装置を用いた工程において単板や合板(板材)に厚さの不揃いが生じると、以後のホットプレス装置を用いた工程で修整を図るのが困難となり、完成品としての積層合板の品質に悪影響を及ぼしてしまうという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、常温状態での押圧による被処理体を均一の厚さに成形することで、完成品としての積層合板を均一の厚さに成形し得る縦型コールドプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の縦型コールドプレス装置は、積層された複数の板材を水平状態又はほぼ水平に近い状態で搬入し、それら複数の板材で構成される被処理体を非加熱状態で上下方向に押圧する縦型コールドプレス装置において、被処理体の上側及び下側の少なくとも一方の側に配置され、上下方向に移動可能な押圧盤と、押圧盤の押圧面に対して互いに異なる複数の位置に配置され、その押圧盤を介して被処理体を上下方向に押圧する複数の押圧シリンダと、複数の押圧シリンダによる押圧下での押圧盤の基準位置に対する上下方向の位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出手段と、位置ずれ量検出手段により検出される押圧盤の位置ずれ量が設定範囲内に収まるように複数の押圧シリンダを個別に駆動制御するシリンダ制御手段と、を備えることを特徴とする。ここで、ほぼ水平に近い状態とは、板材が水平面に対して所定角度(例えば水平面に対する上方を+側、下方を−側とした場合、±10度程度の範囲内)だけ傾斜した状態を意味する。また、板材は、その長手方向が搬入方向と一致するようにして搬入されてもよいし、その短辺方向が搬入方向と一致するようにして搬入されてもよい。
【0007】
本発明の縦型コールドプレス装置では、位置ずれ量検出手段により検出される押圧盤の基準位置に対する上下方向の位置ずれ量が設定範囲内に収まるように、シリンダ制御手段によって複数の押圧シリンダが個別に駆動制御される。このため、複数の押圧シリンダの押圧下において押圧盤がほぼ水平姿勢に保たれるようになるので、この押圧盤により押圧される被処理体ひいては板材(単板、合板など)を均等な厚さに成形することが可能である。
【0008】
本発明の実施に際して、位置ずれ量検出手段は、押圧盤の押圧面上で平行かつ互いに直交する2つの基準線のうち少なくとも一方の基準線方向における位置ずれ量を検出可能とされており、シリンダ制御手段による複数の押圧シリンダの駆動制御により、板材が少なくとも一方の基準線方向において均等な厚さとなる、又は均等な厚さに近づくように設定されているとよい。
【0009】
押圧盤の押圧面上で平行かつ互いに直交する2つの基準線(中心線)のうち、例えば矩形状の板材の長辺(例えば左右方向)と平行に延びる基準線上に複数の押圧シリンダを、板材の短辺(例えば前後方向)と平行に延びる基準線に対して対称に配置した場合には、板材の長辺方向における厚さを均等に成形することができる。また、例えば矩形状の板材の短辺と平行に延びる基準線上に複数の押圧シリンダを、板材の長辺と平行に延びる基準線に対して対称に配置した場合には、板材の短辺方向における厚さを均等に成形することができる。さらに、例えば矩形状の板材の長辺と平行に延びる基準線と短辺と平行に延びる基準線との両基準線に対して複数の押圧シリンダを対称に配置した場合には、板材の長辺及び短辺方向における厚さを均等に成形することができる。
【0010】
また、本発明の実施に際して、位置ずれ量検出手段は、複数の押圧シリンダの駆動距離をそれぞれ検出する距離検出手段で構成されており、シリンダ制御手段は、押圧後の被処理体の厚さを許容寸法の範囲内に収めるために、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲内に収まるように複数の押圧シリンダを個別に駆動制御するように構成されているとよい。なお、距離検出手段としては、例えば押圧シリンダのラム移動量を検出するリニアエンコーダを用いることができる。
【0011】
これによれば、押圧盤の位置ずれ量を押圧シリンダの駆動距離として簡易に検出することができるので、シリンダ制御手段による押圧シリンダの駆動制御を簡易に構成することができる。
【0012】
また、複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、シリンダ制御手段は、圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲に達したとき、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲内に収まっていることを条件として、複数の押圧シリンダを停止制御するように構成されているとよい。なお、圧力検出手段としては、例えば押圧シリンダのシリンダ内圧を検出する圧力センサを用いることができる。
【0013】
さらに、複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、シリンダ制御手段は、圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲に達したとき、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲内にあり、かつ偏りなく均一とみなせる均一範囲内にある場合は複数の押圧シリンダを停止制御し、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離のいずれかが均一範囲内にない場合は対応する押圧シリンダの駆動圧力を増減制御するように構成されているとよい。このとき、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離のいずれかが均一範囲内にない場合には、例えば押圧シリンダの駆動圧力に係る目標範囲の上下限を拡大することによって、その押圧シリンダの駆動圧力を増減制御するように構成されていると好適である。ここで、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離が均一範囲内にあるか否かは、例えば各駆動距離の差や、各駆動距離から演算される押圧盤の傾きに基づいて判定することができる。
【0014】
欅、ラワンのように硬く弾力性や反発力が相対的に大きい合板等(硬質材)では、反発による戻り(スプリングバック)現象で板材が傾きやすい。そこで、まず各押圧シリンダの駆動圧力を目標範囲内に到達させ、そのときの各押圧シリンダの駆動距離が設定範囲内であれば、板材の傾きが0であるか、あるいは極めて小さいと考えられるので、各押圧シリンダを停止制御する。他方、いずれかの押圧シリンダの駆動距離が均一範囲内になければ、是正(緩和)すべき傾きが板材に発生していると考えられるので、この場合には、対応する押圧シリンダの駆動圧力を増減制御する。このように押圧シリンダの駆動を圧力重視で個別に制御するようにした場合には、特に硬質材における戻り現象によって板材が一時的に傾いたとしても、被処理体の全体厚さを所定の許容寸法に仕上げる過程において板材の傾きを良好に是正(緩和)することができるので、不良品の発生を抑制し製品歩留まりを良好に向上させることができる。
【0015】
また、複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、シリンダ制御手段は、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲に達したとき、圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲の上限以下であることを条件として、複数の押圧シリンダを停止制御するように構成されているとよい。
【0016】
さらに、複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、シリンダ制御手段は、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲に達したとき、圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲の上限以下であり、かつ距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離が前記均一範囲内にある場合は複数の押圧シリンダを停止制御し、距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離のいずれかが前記均一範囲内にない場合は対応する押圧シリンダの駆動距離が設定範囲の上限以下であることを条件として、その押圧シリンダの駆動圧力を増圧制御するように構成されているとよい。
【0017】
杉、桐のように軟らかく弾力性や反発力が相対的に小さい合板等(軟質材)では、押圧によって容易に厚さが減少しやすく、規定の駆動圧力であっても押圧後の板材の厚さが部分的に(特にシリンダ押圧位置で)規定より薄くなりやすい。そこで、各押圧シリンダの駆動距離が設定範囲に達したとき、各押圧シリンダの駆動圧力が目標範囲の上限以下であって、かつ各押圧シリンダの駆動距離が均一範囲内にあれば、板材の傾きが0であるか、あるいは極めて小さいと考えられるので、各押圧シリンダを停止制御する。他方、いずれかの押圧シリンダの駆動距離が均一範囲内になければ、是正(緩和)すべき傾きが板材に発生していると考えられるので、この場合は、対応する押圧シリンダの駆動距離が設定範囲の上限以下であればその駆動圧力を増圧制御する。このように押圧シリンダの駆動を距離重視で個別に制御するようにした場合には、特に軟質材に対して押圧過剰の発生を防止(監視)しつつ、被処理体の全体厚さを所定の許容寸法に仕上げる過程において板材の傾きを良好に是正(緩和)することができるので、不良品の発生を抑制し製品歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
a.第1実施形態
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る縦型コールドプレス装置1を示す正面図であり、図2は図1の側面図である。縦型コールドプレス装置1は、接着剤が塗布された複数の単板からなる合板w(木質積層合板)を、図示を省略するホットプレス装置により本接着する前の仮接着の段階で用いられる。
【0019】
この縦型コールドプレス装置1は、支柱11の下部に固定された固定盤12と、支柱11の中間部と上部間を上下方向に移動可能な押圧盤13と、支柱11に架設された梁部材15に固定されている開閉シリンダ16K及び押圧シリンダ16L,16Rと、合板wをローダコンベヤ2から固定盤12上へ搬入(送入)し、また固定盤12上からアンローダコンベヤ3へ搬出(取出)する搬送機構20とを備えている。
【0020】
合板wは、単板(ベニヤ)の板面に接着剤を塗布して、例えば繊維方向を平行に複数枚(例えば3枚)積層したもの(平行合板、単板積層材)や、あるいは繊維方向を直交させて複数枚積層したものである。このように積層された合板wは、例えば20〜30枚程度を一つの板群として、各板群毎に仕切り板Bにより仕切られる。複数の板群で構成される被処理体Wは、その全体が例えば1200〜1300mm程度の厚さとなるように積み重ねられた状態で、ローダコンベヤ2から搬送機構20へ送り込まれる。
【0021】
開閉シリンダ16K及び押圧シリンダ16L,16Rは、例えば油圧シリンダ等の流体圧シリンダであり、それぞれのラム16Ka,16La,16Raが押圧盤13の天井部に取り付けられている。押圧盤13は、ラム16Ka,16La,16Raの伸張・収縮動作に伴い、ガイドレール14に沿って固定盤12に対して接近(閉鎖)・離間(開放)するように上下方向に移動する。
【0022】
搬送機構20は、ベーステーブル21上に設置されたチェンコンベヤ22と、そのベーステーブル21を昇降させる昇降シリンダ23(例えば油圧シリンダ)とを備えている。チェンコンベヤ22は、昇降シリンダ23の伸張・収縮動作に応じて、固定盤12の押圧面12aよりも下側の下降位置と、固定盤12の押圧面12aよりも上側の上昇位置との間を移動可能とされている。具体的には、図3(a)に示すように、固定盤12が所定の隙間を有する分割形状に形成されており、その隙間を通してチェンコンベヤ22が下降位置から上昇位置へ、あるいは上昇位置から下降位置へと移動するようになっている。
【0023】
したがって、昇降シリンダ23の伸張動作に伴ってチェンコンベヤ22が図3(b)に示す下降位置から図3(c)に示す上昇位置へ移動すると、チェンコンベヤ22が固定盤12の押圧面12aよりも上方へ突出するようになる。この状態でのチェンコンベヤ2の駆動により、ローダコンベヤ2上の被処理体Wが水平状態又はほぼ水平に近い状態(広い意味で横向き状態とみることもできる)で固定盤12の押圧面12aの中央上方位置へ送入される(図4参照)。
【0024】
チェンコンベヤ22の駆動が停止された後、昇降シリンダ23の収縮動作に応じて、チェンコンベヤ22上の被処理体Wが固定盤12の押圧面12a上に載置される。開閉シリンダ16Kの引き下げ作動により、押圧盤13が図1に示す原位置から図5に示す作動位置へ向けて往動する。押圧盤13が作動位置に位置した状態での押圧シリンダ16L,16Rの押圧作動により、被処理体Wが固定盤12と押圧盤13とによって上下方向に押圧された状態となる(縦型コールドプレス装置1の閉鎖状態)。これにより、押圧盤13の押圧力が各仕切り板Bを介して被処理体Wに効率良く伝達され、接着剤が各合板wの板面に均等に分布するようになる。
【0025】
押圧シリンダ16L,16Rによる押圧作動が停止された後、開閉シリンダ16Kの引き上げ作動により、押圧盤13が図5に示す作動位置から図1に示す原位置へ向けて復動する(縦型コールドプレス装置1の開放状態)。昇降シリンダ23の伸張動作に伴って、再びチェンコンベヤ22が図3(b)に示す下降位置から図3(c)に示す上昇位置へ移動する(図4参照)。これにより、固定盤12の押圧面12a上の被処理体Wがチェンコンベヤ22により担持され、この状態でのチェンコンベヤ22の駆動により、被処理体Wがアンローダコンベヤ3上へ取り出される。
【0026】
図6は、合板w(被処理体W)と、押圧盤13の押圧面13aと、開閉シリンダ16K及び押圧シリンダ16L,16Rとの位置関係を示す平面図である。H1,H2は、それぞれ押圧面13aの左右方向(間口方向)、前後方向(奥行方向)の水平基準線を示している。このように合板wは、その長辺方向の基準線(中心線)が水平基準線H1に一致し、その短辺方向の基準線(中心線)が水平基準線H2に一致するように固定盤12の押圧面12a上に載置される。
【0027】
開閉シリンダ16Kは、その中心軸線が水平基準線H1,H2の交点(すなわち押圧面13aの中心点)を通る位置に配置されている。また、押圧シリンダ16L,16Rは、押圧面13aの左右に配置、すなわち各中心軸線が水平基準線H1上に位置するとともに、水平基準線H2に対して対称に配置されている。
【0028】
このように、押圧盤13の押圧面13aに対して押圧シリンダ16L,16Rを均等に配置することにより、押圧シリンダ16L,16Rに付与される駆動圧力(すなわちシリンダ内圧)が押圧盤13に対して同時にかつ均等に作用するようになるので、押圧盤13の押圧に際して被処理体Wの水平基準線H1方向における傾きが発生し難くなる。
【0029】
次に、上記第1実施形態に係る縦型コールドプレス装置1の制御構成について説明する。図7は縦型コールドプレス装置1の開閉シリンダ16K及び押圧シリンダ16L,16Rの回路図を示し、図8は縦型コールドプレス装置1の制御ブロック図を示す。
【0030】
開閉シリンダ16Kは、押圧盤13の開放・閉鎖をシリンダ内圧の高低により検出する開閉シリンダ用圧力スイッチ42Kを備えている。一方、押圧シリンダ16L,16Rは、図7及び図8に示すように、被処理体Wの全体厚さの減少量をラム16La,16Raの移動量(駆動距離)として検出する押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41R(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)と、押圧盤13の押圧力を押圧シリンダ16L,16Rのシリンダ内圧(駆動圧力)として検出する押圧シリンダ用圧力センサ42L,42R(圧力検出手段)とを備えている。なお、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rや、押圧シリンダ用圧力センサ42L,42Rの検出値は、図示を省略するラム移動量表示部、シリンダ内圧表示部に表示されるようになっている。
【0031】
図7の回路図に示すように、電動モータ51で駆動される可変容量型のポンプ52と押圧シリンダ16L,16Rとの間には、4ポート3位置切換型の電磁切換弁53L,53Rがそれぞれ配置されている。電磁切換弁53L,53Rは、中立のa位置からb位置に切り換えられたときポンプ52と押圧シリンダ16L,16Rとを押圧盤13の閉鎖方向に接続するとともに、c位置に切り換えられたときポンプ52と押圧シリンダ16L,16Rとを押圧盤13の開放方向に接続する。なお、電磁切換弁53L,53Rを例えばデューティ比に基づくPWM制御(デューティ制御とも通称される)により切り換えるようにすれば、押圧シリンダ16L,16Rを高精度で駆動することができる。
【0032】
また、電動モータ51で駆動される可変容量型のポンプ54と開閉シリンダ16Kとの間には、4ポート3位置切換型の電磁切換弁53Kが配置されている。電磁切換弁53Kは、中立のa位置からb位置に切り換えられたときポンプ54と開閉シリンダ16Kとを押圧盤13の閉鎖方向に接続するとともに、c位置に切り換えられたときポンプ54と開閉シリンダ16Kとを押圧盤13の開放方向に接続する。
【0033】
図8の制御ブロック図に示すように、制御基板60は、演算装置であるCPU61と、読み取り専用記憶装置であるROM63と、読み書き可能な主記憶装置でありワークエリアとして使用されるRAM62と、入出力インターフェース(I/F)64とを中心に構成されている。これらの装置は、バス65で相互に送受信可能に接続されている。ROM63には、各種制御プログラム63a,63b,63cや押圧時の被処理体Wの傾きを押圧盤13(押圧面13a)の傾きとして演算するための傾き算出プログラム63dの他、被処理体Wの大きさ(厚さ)や材質を初期設定するための選択テーブル63e,63f等が予め格納・記憶されている。制御基板60は、電磁切換弁53L,53R等と共にシリンダ制御手段として機能する。
【0034】
制御基板60には、次の各信号が入出力インターフェース64を介して入力されるようになっている。
・大きさ選択スイッチ71:被処理体Wの大きさ、厚さを押しボタン等によって人為的に選択入力又はデータ入力したときのスイッチ信号;
・材質選択スイッチ72:被処理体Wの材質(硬質材、軟質材)を押しボタン等によって人為的に選択入力又はデータ入力したときのスイッチ信号;
・開閉シリンダ用圧力スイッチ42K:開閉シリンダ16Kによって押圧盤13を開放・閉鎖したときのシリンダ内圧の高低検出信号;
・押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41R:ラム16La,16Raの移動量の検出信号;
・押圧シリンダ用圧力センサ42L,42R:押圧シリンダ16L,16Rのシリンダ内圧の検出信号。
【0035】
また、制御基板60から次の各信号が入出力インターフェース64を介して出力されるようになっている。
・電磁切換弁53K,53L,53R,53K:開閉シリンダ16K及び押圧シリンダ16L,16R内への流体の流量を制御するための制御信号。
【0036】
次に、図9〜図11のフローチャートを用い、制御基板60によるプレス制御について説明する。図9は図7のプレス準備処理プログラム63aに対応したフローチャートを示し、図10は硬質材用プレス処理プログラム63bに対応したフローチャートを示し、図11は軟質材用プレス処理プログラム63cに対応したフローチャートを示している。
【0037】
図9に示すプレス準備処理では、まず、S1にて大きさ選択スイッチ71及び材質選択スイッチ72により被処理体Wの大きさ(3尺材、4尺材等)、厚さと材質(硬質材、軟質材等)を手操作入力する。その入力内容に基づき、ROM63の選択テーブル63e,63fを参照して微調整を行う。具体的には、S2において、被処理体Wの大きさ(厚さ)に応じて、ラム移動量の設定値S及びシリンダ内圧の目標値Pを微調整する。次いで、S3にて選択した材質を確認し、材質が硬質材であれば(S3でYES)、S4にて硬質材用プレス処理を実行してプレス準備処理を終了し、材質が軟質材であれば(S3でNO)、S6にて軟質材用プレス処理を実行する。
【0038】
図10は、図9の硬質材用プレス処理サブルーチン(S4)を示す。被処理体Wが硬質材の場合、押圧シリンダ16L,16Rによる押圧盤13の押圧に伴って、各シリンダ内圧を所定の目標範囲P±ΔP内に到達させる。このとき、押圧シリンダ16L,16Rのラム16La,16Raのラム移動量が所定の設定範囲S±ΔS内であれば、各ラム移動量の検出値から、傾き算出プログラム63d(図8参照)にて被処理体Wの傾きを押圧盤13(押圧面13a)の傾きとして演算する。その傾きが所定値を超える場合には、是正(緩和)すべき傾きが被処理体Wに発生していると考えられるので、シリンダ内圧に係る目標範囲P±ΔPの上下限値P+ΔP,P−ΔPを各々P+2ΔP,P−2ΔPに広げて対応するシリンダ内圧を増圧(又は減圧)する。
【0039】
具体的には、プレス開始スイッチ(図示せず)がONされると(S41でYES)、S42にて電磁切換弁53Kをb位置に切り換えて、開閉シリンダ16Kにより押圧盤13を閉鎖駆動させ、開閉シリンダ用圧力スイッチ42Kの検知により駆動を停止する。次にS43にて押圧シリンダ16L,16Rにより押圧盤13を一斉に押圧駆動する。その後S44にて、押圧シリンダ用圧力センサ42L,42Rにより検出された押圧シリンダ16L,16Rのシリンダ内圧に基づいて、各シリンダ内圧が目標範囲P±ΔP(例えば、7.0±0.2MPa)内に到達したかを判定する。各シリンダ内圧が目標範囲P±ΔP内に到達していれば(S44でYES)、S45にて押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rにより検出されたラム16La,16Raの移動量に基づいて、各ラム移動量が設定範囲S±ΔS(例えば、1770±20mm)内にあるかを判定する。各ラム移動量が設定範囲S±ΔS内にあれば(S45でYES)、S46にて各ラム移動量の検出値から、水平基準線H1(図6参照)方向における位置ずれ量としての押圧盤13(押圧面13a)の傾きを演算する。
【0040】
次に、S47にてS46で算出した傾きの大小を判別する。傾きが所定値(例えば5°)を超える場合には(S47でNO)、S48にて、押圧盤13の傾きから判断して、傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する(あるいは、場合によっては逆に戻す)必要のある押圧シリンダを決定する。さらにS49にて、傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する場合には押圧シリンダの内圧がP+2ΔP(例えば、7.0+0.4MPa)以下であるかを判定し、戻す場合には押圧シリンダの内圧がP−2ΔP(例えば、7.0−0.4MPa)以上であるかを判定する。そのシリンダ内圧がP+2ΔP以下(又はP−2ΔP以上)であれば(S49でYES)、S50にて対応する押圧シリンダの内圧を増加(又は減少)して、押圧盤13の傾きを是正(緩和)し、S45に戻る。
【0041】
例えば、押圧シリンダ16Lのラム移動量が押圧シリンダ16Rのラム移動量に比して小さく、かつ傾きが所定値超と判定された場合(S47でNO)、押圧シリンダ16Lをさらに押圧する必要があると決定する(S48)。押圧シリンダ16Lのシリンダ内圧がP+2ΔP以下であれば(S49でYES)、傾きを是正(緩和)するために電磁切換弁53L(図7,8参照)のデューティ比を高め、押圧シリンダ16Lへの流量を増加する(S50)。
【0042】
これとは逆に、押圧シリンダ16Rのラム移動量が押圧シリンダ16Lのラム移動量に比して小さく、かつ傾きが所定値超と判定された場合(S47でNO)、押圧シリンダ16Rをさらに押圧する必要があると決定する(S48)。押圧シリンダ16Rのシリンダ内圧がP+2ΔP以下であれば(S49でYES)、傾きを是正(緩和)するために電磁切換弁53R(図7,8参照)のデューティ比を高め、押圧シリンダ16Rへの流量を増加する(S50)。
【0043】
このようにして、押圧盤13の傾きが所定値以下に是正(緩和)されたとき、あるいは当初から傾きが所定値以下であったとき(S47でYES)、S52にて全押圧シリンダ16L,16Rの押圧駆動を停止する。さらにS53にて、所定時間経過後(例えば、10秒後)に電磁切換弁53K,53L,53Rを各々c位置に切り換えて、開閉シリンダ16K及び全押圧シリンダ16L,16Rにより押圧盤13を開放駆動させ、開閉シリンダ用圧力スイッチ42K及び押圧シリンダ用圧力センサ42L,42RLの検知により駆動を停止して硬質材用プレス処理を終了する。なお、各ラム移動量が設定範囲S±ΔS内にない場合(S45でNO)、及び傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する(又は戻す)必要のある押圧シリンダの内圧がP+2ΔP超(又はP−2ΔP未満)である場合(S49でNO)には、不良品となる可能性が大きいので、S51にて警報を発して処理を中断する。
【0044】
欅、ラワンのように硬く弾力性や反発力が相対的に大きい硬質材では、反発による戻り(スプリングバック)現象で押圧盤13が傾きやすい。そこで、まず各シリンダ内圧を目標範囲P±ΔP内に到達させ、そのときの各押圧シリンダ16L,16Rのラム移動量が設定範囲S±ΔS内にあって、押圧盤13の傾きが所定値を超える場合には、さらにシリンダ内圧を許容範囲P+2ΔPまで高めて傾きを是正(緩和)する。このようにして、押圧シリンダ16L,16Rの駆動を圧力重視で個別に制御する。これにより、特に硬質材における戻り現象によって押圧盤13が傾いても、被処理体Wの全体厚さを所定の許容寸法に仕上げる過程において押圧盤13の傾きを是正(緩和)できるので、不良品の発生を抑制し製品歩留まりを向上させることができる。
【0045】
図11は、図9の軟質材用プレス処理サブルーチン(S6)を示す。被処理体Wが軟質材の場合、押圧シリンダ16L,16Rによる押圧盤13の押圧に伴って、各ラム移動量を所定の設定範囲S±ΔSの下限値S−ΔSに到達させる。このとき、各シリンダ内圧が所定の目標範囲P±ΔPの上限値P+ΔP以下であれば、各ラム移動量の検出値から、傾き算出プログラム63d(図8参照)にて被処理体Wの傾きを押圧盤13(押圧面13a)の傾きとして演算する。その傾きが所定値を超える場合には、是正(緩和)すべき傾きが被処理体Wに発生していると考えられるので、対応する押圧シリンダのラム移動量が設定範囲S±ΔS内において対応するシリンダ内圧を目標範囲P±ΔP内で増圧する。
【0046】
具体的には、プレス開始スイッチ(図示せず)がONされると(S61でYES)、S42にて電磁切換弁53Kをb位置に切り換えて、開閉シリンダ16Kにより押圧盤13を閉鎖駆動させ、開閉シリンダ用圧力スイッチ42Kの検知により駆動を停止する。次にS62にて押圧シリンダ16L,16Rにより押圧盤13を一斉に押圧駆動する。その後S63にて、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rにより検出されたラム16La,16Raの移動量に基づいて、各ラム移動量が設定範囲S±ΔS(例えば、1770±20mm)の下限値S−ΔS(例えば1750mm)に到達したかを判定する。各ラム移動量が下限値S−ΔS以上であれば(S64でYES)、S65にて押圧シリンダ用圧力センサ42L,42Rにより検出された押圧シリンダ16L,16Rの内圧に基づいて、各シリンダ内圧が目標範囲P±ΔP(例えば、7.0±0.2MPa)の上限値P+ΔP(例えば、7.2MPa)以下であるかを判定する。各シリンダ内圧が上限値P+ΔP以下であれば(S65でYES)、S66にて各ラム移動量の検出値から、水平基準線H1(図6参照)方向における位置ずれ量としての押圧盤13(押圧面13a)の傾きを演算する。
【0047】
次に、S67にてS66で算出した傾きの大小を判別する。傾きが所定値(例えば5°)を超える場合には(S67でNO)、S68にて、押圧盤13の傾きから判断して、傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する必要のある押圧シリンダを決定する。さらにS69にて、傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する押圧シリンダのラム移動量が設定範囲S±ΔSの上限値S+ΔS(例えば、1790mm)以下であるかを判定する。そのラム移動量が上限値S+ΔS以下であれば(S69でYES)、S70にて対応する押圧シリンダの内圧を増加して、押圧盤13の傾きを是正(緩和)し、S65に戻る。
【0048】
例えば、押圧シリンダ16Lのラム移動量が押圧シリンダ16Rのラム移動量に比して小さく、かつ傾きが所定値超と判定された場合(S67でNO)、押圧シリンダ16Lをさらに押圧する必要があると決定する(S68)。押圧シリンダ16Lのラム移動量が上限値S+ΔS以下であれば(S69でYES)、傾きを是正(緩和)するために電磁切換弁53L(図7,8参照)のデューティ比を高め、押圧シリンダ16Lへの流量を増加する(S70)。
【0049】
これとは逆に、押圧シリンダ16Rのラム移動量が押圧シリンダ16Lのラム移動量に比して小さく、かつ傾きが所定値超と判定された場合(S67でNO)、押圧シリンダ16Rをさらに押圧する必要があると決定する(S68)。押圧シリンダ16Rのラム移動量が上限値S+ΔS以下であれば(S69でYES)、傾きを是正(緩和)するために電磁切換弁53R(図7,8参照)のデューティ比を高め、押圧シリンダ16Rへの流量を増加する(S70)。
【0050】
このようにして、押圧盤13の傾きが所定値以下に是正(緩和)されたとき、あるいは当初から傾きが所定値以下であったとき(S67でYES)、S72にて全押圧シリンダ16L,16Rの押圧駆動を停止する。さらにS73にて、所定時間経過後(例えば10秒後)に電磁切換弁53K,53L,53Rを各々c位置に切り換えて、開閉シリンダ16K及び全押圧シリンダ16L,16Rにより押圧盤13を開放駆動させ、開閉シリンダ用圧力スイッチ42K及び押圧シリンダ用圧力センサ42L,42RLの検知により駆動を停止して軟質材用プレス処理を終了する。なお、各シリンダ内圧が上限値P+ΔP超である場合(S65でNO)、及び傾きを是正(緩和)するためにさらに押圧する必要のある押圧シリンダのラム移動量が上限値S+ΔS超である場合(S69でNO)には、不良品となる可能性が大きいので、S71にて警報を発して処理を中断する。
【0051】
杉、桐のように軟らかく弾力性や反発力が相対的に小さい軟質材では、押圧によって容易に厚さが減少しやすく、目標範囲P±ΔP内のシリンダ内圧であっても押圧後の厚さが部分的に(特にシリンダ押圧位置で)規定より薄くなりやすい。そこで、まず各ラム移動量を設定範囲S±ΔSの下限値S−ΔSに到達させ、そのときの各押圧シリンダ16L,16Rのシリンダ内圧が上限値P+ΔP以下であって、押圧盤13の傾きが所定値を超える場合には、さらにラム移動量を上限値S+ΔSまで高めて傾きを是正(緩和)する。このようにして、押圧シリンダ16L,16Rの駆動を距離重視で個別に制御する。これにより、特に軟質材に対して押圧過剰の発生を防止(監視)しつつ、被処理体Wの全体厚さを所定の許容寸法に仕上げる過程において押圧盤13の傾きを是正(緩和)できるので、不良品の発生を抑制し製品歩留まりを向上させることができる。
【0052】
以上の説明からも明らかなように、上記第1実施形態では、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41R(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)により検出される押圧盤13(押圧面13a)の左右方向における傾き、すなわち水平基準線H1方向における傾き(位置ずれ量)が設定範囲内に収まるように、制御基板60及び電磁切換弁53L,53R(シリンダ制御手段)によって押圧シリンダ16L,16Rが個別に駆動制御される(S48〜S50、S68〜S70)。これにより、押圧シリンダ16L,16Rの押圧下において押圧盤13が左右方向においてほぼ水平姿勢に保たれるようになるので、この押圧盤13により押圧される被処理体Wひいては合板w(板材)が左右方向において均等な厚さとなり、又は左右方向において均等な厚さに近づくように成形することが可能である。
【0053】
また、押圧盤13の位置ずれ量を押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rにより検出される押圧シリンダ16L,16Rの駆動距離として簡易に検出することができるので、制御基板60及び電磁切換弁53L,53Rによる押圧シリンダ16L,16Rの駆動制御を簡易に構成することができる。
【0054】
また、シリンダ内圧やラム移動量を押圧シリンダ16L,16R毎に検出して制御するので、押圧シリンダ16L,16Rから得られる検出値(シリンダ内圧とラム移動量)に基づいて直ちに押圧シリンダ16L,16Rの作動を制御することができ、制御の簡素化と迅速化を図ることができる。さらに、合板wの個々の厚さではなく被処理体Wに仕切り板Bを加えた全体厚さをラム移動量により検出するので、検出に要する時間も減らすことができる。したがって、制御の遅れが原因となって、押圧盤13の傾きが発生し被処理体Wの厚さの不揃いとなったり、押圧シリンダ16L,16Rの停止が遅れて規格外れ厚さとなったりすることを良好に防止することができる。
【0055】
しかも、押圧シリンダ16L,16Rの他に、押圧盤13の開閉専用の開閉シリンダ16Kを設けたので、ロングスパンでの高速移動を要する開閉シリンダ16Kとショートスパンでの微細移動を要する押圧シリンダ16L,16Rとを使い分けることができる。したがって、押圧盤13の開閉動作の迅速化によりコールドプレスの作業能率が向上するとともに、押圧盤13の開閉動作の影響を受けることなく押圧シリンダ16L,16Rを高精度で駆動制御することができる。
【0056】
(変形例1−1)
図12は、図10の変形例を示すフローチャートである。図12に示す硬質材用プレス処理サブルーチン(S4)では、S46の押圧盤13(押圧面13a)の傾きを演算する処理に代えて、S46’にて押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rで検出された各ラム移動量の差(最大許容幅;例えば20mm)を演算するようにしている。したがって、この変形例によれば、図8に示した傾き算出プログラム63dを省略することができるので、制御の簡素化を図ることができる。
【0057】
(変形例1−2)
図13は、図11の変形例を示すフローチャートである。図13に示す軟質材用プレス処理サブルーチン(S6)では、S66の押圧盤13(押圧面13a)の傾きを演算する処理に代えて、S66’にて押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41Rで検出された各ラム移動量の差(最大許容幅;例えば20mm)を演算するようにしている。したがって、この変形例によっても、図8に示した傾き算出プログラム63dを省略することができるので、制御の簡素化を図ることができる。
【0058】
b.第2実施形態
上記第1実施形態では、押圧シリンダ16L,16Rをそれぞれ左右に配置したが、これに代えて、例えば図14に示すように、押圧シリンダ16F,16Bをそれぞれ前後に配置、すなわち各中心軸線が水平基準線H2上に位置するとともに、水平基準線H1に対して対称となるように配置してもよい。なお、この第2実施形態では、図15の回路図に示すように、ポンプ52と押圧シリンダ16F,16Bとの間に、電磁切換弁53F,53Bがそれぞれ配置されている。また、図16の制御ブロック図に示すように、押圧シリンダ16F,16Bに対応して、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41F,41B、押圧シリンダ用圧力センサ42F,42Bがそれぞれ設けられている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0059】
この第2実施形態では、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41F,41B(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)により検出される押圧盤13(押圧面13a)の前後方向における傾き、すなわち水平基準線H2方向における傾き(位置ずれ量)が設定範囲内に収まるように、制御基板60及び電磁切換弁53F,53Bによって押圧シリンダ16F,16Bが個別に駆動制御される(S48〜S50、S68〜S70)。
【0060】
この第2実施形態によれば、押圧シリンダ16F,16Bの押圧下において押圧盤13が前後方向においてほぼ水平姿勢に保たれるようになるので、この押圧盤13により押圧される被処理体Wひいては合板wが前後方向において均等な厚さとなり、又は前後方向において均等な厚さに近づくように成形することが可能である。
【0061】
c.第3実施形態
上記第1実施形態と上記第2実施形態とを統合して、例えば図17〜図19に示すように、押圧シリンダ16L,16Rをそれぞれ左右に配置するとともに、押圧シリンダ16F,16Bをそれぞれ前後に配置してもよい。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0062】
この第3実施形態では、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41L,41R(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)により検出される押圧盤13(押圧面13a)の左右方向における傾き、すなわち水平基準線H1方向における傾き(位置ずれ量)が設定範囲内に収まるように、制御基板60及び電磁切換弁53L,53Rによって押圧シリンダ16L,16Rが個別に駆動制御され(S48〜S50、S68〜S70)、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41F,41B(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)により検出される押圧盤13(押圧面13a)の前後方向における傾き、すなわち水平基準線H2方向における傾き(位置ずれ量)が設定範囲内に収まるように、制御基板60及び電磁切換弁53F,53Bによって押圧シリンダ16F,16Bが個別に駆動制御される(S48〜S50、S68〜S70)。
【0063】
この第3実施形態によれば、押圧シリンダ16L,16Rの押圧下において押圧盤13が左右方向においてほぼ水平姿勢に保たれ、押圧シリンダ16F,16Bの押圧下において押圧盤13が前後方向においてほぼ水平姿勢に保たれるようになるので、押圧盤13により押圧される被処理体Wひいては合板wが左右前後方向において均等な厚さとなり、又は左右前後方向において均等な厚さに近づくように成形することが可能である。
【0064】
(変形例3−1)
押圧シリンダの配置は、上記第3実施形態に限らず、例えば図20〜図22に示すように、前列(押圧シリンダ16LF,16RF)と後列(押圧シリンダ16LB,16RB)が水平基準線H1に対して対称、かつ左列(押圧シリンダ16LF,16LB)と右列(押圧シリンダ16RF,16RB)が水平基準線H2に対して対称となるように配置してもよい。なお、この変形例では、図21の回路図に示すように、ポンプ52と押圧シリンダ16LF,16RF,16LB,16RBとの間に、電磁切換弁53LF,53RF,53LB,53RBがそれぞれ配置されている。また、図22の制御ブロック図に示すように、押圧シリンダ16LF,16RF,16LB,16RBに対応して、押圧シリンダ用リニアエンコーダ41LF,41RF,41LB,41RBと、押圧シリンダ用圧力センサ42LF,42RF,42LB,42RBとがそれぞれ設けられている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0065】
この変形例によれば、左列の押圧シリンダ16LF,16LBと右列の押圧シリンダ16RF,16RBの押圧下において押圧盤13が左右方向においてほぼ水平姿勢に保たれ、前列の押圧シリンダ16LF,16RFと後列の押圧シリンダ16LB,16RBの押圧下において押圧盤13が前後方向においてほぼ水平姿勢に保たれるようになるので、上記第3実施形態と同様、押圧盤13により押圧される被処理体Wひいては合板wが左右前後方向において均等な厚さとなり、又は左右前後方向において均等な厚さに近づくように成形することが可能である。
【0066】
(変形例3−2)
押圧シリンダは、例えば図23に示すように、上記変形例3−1と同じ配置としつつ、ポンプ52と前列の押圧シリンダ16LF,16RFとの間に、一つの電磁切換弁53FUを配置し、ポンプ52と後列の押圧シリンダ16LB,16RBとの間に、一つの電磁切換弁53BUを配置してもよい。また、例えば図24に示すように、ポンプ52と左列の押圧シリンダ16LF,16LBとの間に、一つの電磁切換弁53LUを配置し、ポンプ52と右列の押圧シリンダ16RF,16RBとの間に、一つの電磁切換弁53RUを配置してもよい。なお、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0067】
これらの変形例によっても、上記第3実施形態と同様、押圧盤13により押圧される被処理体Wひいては合板wが左右前後方向において均等な厚さとなり、又は左右前後方向において均等な厚さに近づくように成形することが可能である。
【0068】
なお、上記第1〜第3実施形態等では、位置ずれ量検出手段、距離検出手段として、押圧シリンダ用リニアエンコーダを用いたが、これに代えて、例えば図25に示すように、押圧盤13自体の左右方向、前後方向又は左右前後方向の位置ずれ量を検出可能な押圧盤用リニアエンコーダ73を用いてもよい。なお、図25では4個の押圧盤用リニアエンコーダ73(例えば押圧盤13の各隅部、押圧盤13の各辺の中点の移動量を検出)を用いているが、その使用数は適宜変更可能である。
【0069】
また、上記第1〜第3実施形態等では、本発明をいわゆる上ラム式の縦型コールドプレス装置1に適用した場合について説明したが、例えば図26に示すように、いわゆる下ラム式の縦型コールドプレス装置101に本発明を適用してもよい。このような縦型コールドプレス装置101の場合には、開閉シリンダを省略することができる。この縦型コールドプレス装置101においても、上記第1実施形態等と同様、押圧盤113の押圧面113aにより押圧される被処理体Wひいては合板wが均等な厚さとなり、又は均等な厚さに近づくように成形することが可能である。なお、図26において、図1と同様の機能を果たす構成部材には図1に記載した符合を含む百番台の符合を付してある。
【0070】
また、押圧シリンダ16L,16R等及び電磁切換弁53L,53R等に代えて、例えば入力信号に基づいて流量又は圧力を制御する制御弁(サーボ弁)と、最終制御位置(駆動距離=ラム移動量)をフィードバック制御する追従機構とが一体化されたサーボアクチュエータとしてのサーボシリンダを用いてもよい。これによれば、油圧回路の簡素化を図ることができる。また、サーボ弁は総流量と流速とを同時に制御する機能を有しているので、被処理体Wの押圧時に各ラム移動量と各ラム移動速度とを複合調整することができ、一層精密な制御が可能となる。
【0071】
また、固定盤に代えて押圧盤が配置され、上下の押圧盤の移動によって被処理体が押圧されるいわゆる上下ラム式の縦型コールドプレス装置に本発明を適用してもよい。
【0072】
また、上記第1〜第3実施形態等では、本発明を、合板wの仮接着の工程で用いられる縦型コールドプレス装置に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば単板の水分を抜く工程で用いられる縦型コールドプレス装置に本発明を適用してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第3実施形態等では、本発明を一段式の縦型コールドプレス装置に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば多段式の縦型コールドプレス装置(上ラム式、下ラム式、上下ラム式)に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る縦型コールドプレス装置(上ラム一段)を示す正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】(a)は図1の固定盤の平面図。(b)は図1のチェンコンベヤが下降位置にある状態を示す部分拡大正面図。(c)は図1のチェンコンベヤが上昇位置にある状態を示す部分拡大正面図。
【図4】図2の縦型コールドプレス装置において、チェンコンベヤが上昇位置にあるときの正面図。
【図5】図2の縦型コールドプレス装置において、押圧盤が作動位置にあるときの正面図。
【図6】図2において、合板(被処理体)と、押圧盤の押圧面と、開閉シリンダ及び押圧シリンダとの位置関係を示す平面図。
【図7】図2の縦型コールドプレス装置の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図8】図2の縦型コールドプレス装置の制御ブロック図。
【図9】図2の制御基板により実行されるプレス準備処理を示すフローチャート。
【図10】図9のプレス準備処理における硬質材用プレス処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図11】図9のプレス準備処理における軟質材用プレス処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図12】第1実施形態の変形例1−1に係り、図9のプレス準備処理における硬質材用プレス処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図13】第1実施形態の変形例1−2に係り、図9のプレス準備処理における軟質材用プレス処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図14】本発明の第2実施形態に係り、合板(被処理体)と、押圧盤の押圧面と、開閉シリンダ及び押圧シリンダとの位置関係を示す平面図。
【図15】図14の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図16】本発明の第2実施形態に係る縦型コールドプレス装置の制御ブロック図。
【図17】本発明の第3実施形態に係り、合板(被処理体)と、押圧盤の押圧面と、開閉シリンダ及び押圧シリンダとの位置関係を示す平面図。
【図18】図17の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図19】本発明の第3実施形態に係る縦型コールドプレス装置の制御ブロック図。
【図20】第3実施形態の変形例3−1に係り、合板(被処理体)と、押圧盤の押圧面と、開閉シリンダ及び押圧シリンダとの位置関係を示す平面図。
【図21】図20の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図22】第3実施形態の変形例3−1に係る縦型コールドプレス装置の制御ブロック図。
【図23】第3実施形態の変形例3−2に係る縦型コールドプレス装置の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図24】第3実施形態の変形例3−2に係る縦型コールドプレス装置の開閉シリンダ及び押圧シリンダの回路図。
【図25】本発明の別の実施形態に係る縦型コールドプレス装置の制御ブロック図。
【図26】本発明の別の実施形態に係る縦型コールドプレス装置(下ラム一段)の部分正面図。
【符号の説明】
【0075】
1,101 縦型コールドプレス装置
12,112 固定盤
12a,112a 押圧面
13,113 押圧盤
13a,113a 押圧面
16K 開閉シリンダ
16L,16R,16F,16B,16LF,16RF,16LB,16RB,116L,116R 押圧シリンダ
w 合板(板材)
W 被処理体
20 搬送機構
41L,41R,41F,41B,41LF,41RF,41LB,41RB 押圧シリンダ用リニアエンコーダ(位置ずれ量検出手段、距離検出手段)
42K 開閉シリンダ用圧力スイッチ
42L,42R,42F,42B,42LF,42RF,42LB,42RB 押圧シリンダ用圧力センサ(圧力検出手段)
51 電動モータ
52,54 ポンプ
53K 電磁切換弁
53L,53R,53F,53B,53LF,53RF,53LB,53RB,53FU,53BU,53LU,53RU 電磁切換弁(シリンダ制御手段)
60 制御基板(シリンダ制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の板材を水平状態又はほぼ水平に近い状態で搬入し、それら複数の板材で構成される被処理体を非加熱状態で上下方向に押圧する縦型コールドプレス装置において、
前記被処理体の上側及び下側の少なくとも一方の側に配置され、上下方向に移動可能な押圧盤と、
前記押圧盤の押圧面に対して互いに異なる複数の位置に配置され、その押圧盤を介して前記被処理体を上下方向に押圧する複数の押圧シリンダと、
前記複数の押圧シリンダによる押圧下での前記押圧盤の基準位置に対する上下方向の位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出手段と、
前記位置ずれ量検出手段により検出される前記押圧盤の位置ずれ量が設定範囲内に収まるように前記複数の押圧シリンダを個別に駆動制御するシリンダ制御手段と、
を備えることを特徴とする縦型コールドプレス装置。
【請求項2】
前記位置ずれ量検出手段は、前記押圧盤の押圧面上で平行かつ互いに直交する2つの基準線のうち少なくとも一方の基準線方向における前記位置ずれ量を検出可能とされており、前記シリンダ制御手段による前記複数の押圧シリンダの駆動制御により、前記板材が前記少なくとも一方の基準線方向において均等な厚さとなる、又は均等な厚さに近づくように設定されている請求項1に記載の縦型コールドプレス装置。
【請求項3】
前記位置ずれ量検出手段は、前記複数の押圧シリンダの駆動距離をそれぞれ検出する距離検出手段で構成されており、前記シリンダ制御手段は、押圧後の前記被処理体の厚さを許容寸法の範囲内に収めるために、前記距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも設定範囲内に収まるように前記複数の押圧シリンダを個別に駆動制御する請求項1又は2に記載の縦型コールドプレス装置。
【請求項4】
前記複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、前記シリンダ制御手段は、前記圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲に達したとき、前記距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも前記設定範囲内に収まっていることを条件として、前記複数の押圧シリンダを停止制御する請求項3に記載の縦型コールドプレス装置。
【請求項5】
前記複数の押圧シリンダに付与される駆動圧力をそれぞれ検出する圧力検出手段を備え、前記シリンダ制御手段は、前記圧力検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動圧力がいずれも目標範囲に達したとき、前記距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離がいずれも前記設定範囲内にあり、かつ偏りなく均一とみなせる均一範囲内にある場合は前記複数の押圧シリンダを停止制御し、前記距離検出手段により検出される複数の押圧シリンダの駆動距離のいずれかが前記均一範囲内にない場合は対応する押圧シリンダの駆動圧力を増減制御する請求項3に記載の縦型コールドプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−149126(P2010−149126A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326723(P2008−326723)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【出願人】(000148818)株式会社太平製作所 (37)
【Fターム(参考)】