説明

縦型射出成形機

【課題】、射出ノズルや加熱筒を着脱するときの着脱作業を容易に行なえるようにする。
【解決手段】金型が装着される型開閉ユニットの保持プレート7に、ユニットベース2を介して射出ユニット1を保持した縦型射出成形機において、ユニットベース2に、縦型射出成形機の前後左右の4方向に位置して開口部35を設け、開口部35に連通する作業空間部40をユニットベース2の内側に設ける。これにより、加熱筒4を下降させ、ユニットベース2の内側の作業空間部40に射出ノズル5や加熱筒4の先端側を挿通させた状態において、開口部35から作業空間部40へ手や工具等を差し入れて、射出ノズル5の着脱や加熱筒4の着脱作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の型開閉を縦方向に行って成形体を成形する縦型射出成形機に関し、特に縦方向に昇降可能に設けられた射出ユニットを容易に保守・点検することができる縦型射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターンテーブルを回転させることにより、1つの上側金型に対して、ターンテーブルに取り付けた2つの下側金型の各々を型開閉可能な対向位置に移動させ、縦方向に型開閉を行う、いわゆる2ステーション方式の縦型射出成形機が用いられている。こうした上側金型と複数の下側金型とを型締めするいわゆる2ステーション方式等の縦型射出成形機においては、成形体を成形する型締め工程の間に、型締めされている下側金型の反対側に配置された下側金型にインサート成形用の金属製の部品を組み付け、その組み付け後にターンテーブルを所定位置に回転し、金属製の部品を組み付けた下側金型と上側金型とを型締めすることで、金属製のインサート部品と樹脂とを一体成形する製造方法が採られている。
【0003】
前記縦型射出成形機に係る従来技術が特許文献1及び特許文献2には開示されており、特許文献1には、昇降可能な射出ユニットの先端に射出ノズルを備え、射出ノズルが挿通される貫通孔を金型の装着される保持プレートに形成し、貫通孔に連設する作業用凹部を保持プレートに形成することにより、射出ノズルが貫通孔内に挿入された状態であっても、作業用凹部及び貫通孔を通じて手や工具を差し入れて、射出ノズル先端の保守・点検作業を行えるようにした技術が開示されている。また、特許文献2には、金型が取り付けられる型開閉ユニットに構成されたダイプレートと、射出ユニットに構成されたノズルタッチ用のボールネジ機構のネジ軸とをユニットベースとしてのベースブラケットにより連結し、該ベースブラケットには、射出ノズルを装着した加熱筒が挿通される中心孔を備えた縦型射出成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−221623号公報
【特許文献2】特開2007−69571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されているようなユニットベースを有さない一般的な縦型射出成形機においては、射出ノズルの先端を保持プレートの上側へと上昇さえすれば、射出ノズルの先端を目視しながらにしてその保守・点検作業を比較的容易に行うことができるが、特許文献2に開示されているような、例えば比較的大型なモータを動力源とし、高速射出を達成しようという縦型射出成形機においては、保持プレートに対して射出ユニット(より詳しくは、射出ユニットのボールネジ機構のネジ軸)を直接保持すると、保持プレートに取り付けられた金型の型開閉動作等に悪影響を及ぼしてしまうことがあることから、特許文献2のように、金型の取り付けられる保持プレートに対し射出ユニットを保持する際はユニットベースを介在して固定することが好適である。
【0006】
しかし、特許文献2のようにユニットベースを介在して保持プレート上に射出ユニットを保持した場合には、射出ノズルの先端を目視しながら行う保守・点検作業時にユニットベースが邪魔となったり、或いは、射出ノズルを装着した加熱筒を着脱する際には、作業がし易いようにこれらを下降させた状態で着脱するのだが、ボルト等で取り付けられている射出ノズルや加熱筒を、手作業によりレンチを用いて着脱作業を行うときには、ユニットベースの存在が邪魔となり、作業性が悪くなるという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ユニットベースを用いて型開閉ユニットに射出ユニットを保持する縦型射出成形機において、射出ノズルや該射出ノズルが装着される加熱筒を着脱するとき、これらの着脱作業を容易に行なえるようにし、保守・点検等の利便性を図った縦型射出成形機を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る縦型射出成形機は、
金型を縦方向に型開閉する型開閉ユニットと、
型閉された前記金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットと、を備えた縦型射出成形機であって、
金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズルと、
該射出ノズルを先端に装着した加熱筒と、
該加熱筒に内挿された射出スクリューと、
前記加熱筒が一体に設けられ該加熱筒と共に縦方向に昇降される加熱筒取付ブラケットと
該加熱筒取付ブラケットを昇降させる駆動源としての電動サーボモータと、
該電動サーボモータによる回転運動を直線運動に変換し、該直線運動により前記加熱筒取付ブラケットを縦方向に昇降するボールネジ機構と、
前記加熱筒が下降されたときに、前記射出ノズル及び前記加熱筒の先端側が挿通されるユニットベースと、を備え、
前記型開閉ユニットに構成されている前記金型が装着される保持プレートに対しユニットベースを固定すると共に、該保持プレートに固定されたユニットベースに前記ボールネジ機構を固定することにより、前記ユニットベースを介して前記型開閉ユニットに前記射出ユニットを保持し、
前記ユニットベースには、前記縦型射出成形機の前後左右の4方向に位置して開口部を備え、該開口部に連通する作業空間部を前記ユニットベースの内側に備え、
前記加熱筒を下降させたときに、前記開口部から前記作業空間部へ工具を差し入れて、前記作業空間部に配置された射出ノズル、及び該射出ノズルが装着された加熱筒の着脱作業を行えるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る縦型射出成形機は、請求項1記載の縦型射出成形機において、
前記射出ユニットのボールネジ機構には、
前記ユニットベースに固定されるネジ軸と、
該ネジ軸に螺合され前記電動サーボモータによる回転運動を直線運動に変換して該直線運動により前記加熱筒取付ブラケットに一体に設けた加熱筒を昇降させるナット体と、を備えており、
該ナット体の縦方向の直線運動により、該ナット体と一体に設けられた前記加熱筒取付ブラケットを昇降させ、該加熱筒取付ブラケットに一体に設けた前記射出ノズルを装着した加熱筒を縦方向に昇降させるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本縦型射出成形機の発明によれば、先端に射出ノズルを装着した加熱筒を下方に前進させた状態で、射出ノズルや加熱筒の着脱作業や、保守・点検作業を行なう際、縦型射出成形機の前後左右の開口部から作業用空間部へ手や工具等を差し入れ、これらの作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一例の縦型射出成形機の射出ユニットを前側から視た状態を示す正面図である。
【図2】射出ユニットに構成されるユニットベースを示す正面図である。
【図3】射出ユニットに構成されるユニットベースを示す平面図である。
【図4】射出ユニットに構成されるユニットベースを示す側面図である。
【図5】射出ユニットに構成されるユニットベースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図5により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0013】
本発明の一例の縦型射出成形機は大別すると、溶融樹脂を金型のキャビティへ射出充填する射出ユニット1、金型の型開閉を行う型開閉ユニット(図示せず)から構成され、型開閉ユニットの上部には、ユニットベース2を介して射出ユニット1が保持されている。
【0014】
射出ユニット1には、成形体の材料となるペレットを加熱溶融する加熱筒4、この先端(下部)に着脱可能に螺合された射出ノズル5が構成されており、射出ユニット1の加熱筒4内には、射出ノズル5の先端側へ溶融樹脂を供給する射出スクリュー6が設けられている。
【0015】
射出スクリュー6は、溶融樹脂の計量時には、計量用電動サーボモータ10を駆動源とし、計量用回転プーリ11、図示しない計量用タイミングベルトを介して回転され、射出ノズル5の先端側へ溶融樹脂の供給を行う一方で、計量された溶融樹脂を射出ノズル5の先端から射出するときには、射出用電動サーボモータ15を駆動源とし、射出用回転プーリ16、図示しない射出用タイミングベルトを回転し、射出用タイミングベルトが掛け回された射出用回転プーリ16の回転運動を、駆動伝達部としての図示しない射出用ボールネジ機構により直線運動に変換することで昇降可能に設けられた射出駆動部21を駆動し、射出駆動部21に回転可能に固定された射出スクリュー6を射出駆動部21と共に下降することで、射出ノズル5から保持プレート7の下面に取り付けられた金型のキャビティ内へ溶融樹脂の射出がなされる。
【0016】
また、金型に射出ノズル5をノズルタッチするため、昇降可能に設けられた加熱筒取付ブラケット22を下降させ、該加熱筒取付ブラケット22に一体に設けた加熱筒4に装着された射出ノズル5を下降するときは、ノズルタッチ用電動サーボモータ23を駆動源とし、この駆動力が、ノズルタッチ用電動サーボモータ23の回転軸に装着されたノズルタッチ用主動プーリ24、ノズルタッチ用主動プーリに24に掛け回されたノズルタッチ用タイミングベルト25、ノズルタッチ用タイミングベルト25が掛け回されたノズルタッチ用従動プーリ26へと伝達され、ノズルタッチ用従動プーリ26の回転運動を、加熱筒取付ブラケット22に装着されたノズルタッチ用ボールネジ機構27により直線運動に変換することで、加熱筒4の基端部を保持した加熱筒取付ブラケット22を下降できるようになっており、より詳しくは、加熱筒取付ブラケット22には、ノズルタッチ用ボールネジ機構27のナット体27aが回転可能に保持され、ナット体27aにはノズルタッチ用ボールネジ機構27のネジ軸27bが螺合され、ノズルタッチボールネジ機構27は加熱筒4を中心として90度間隔で4つ設けられ、各ノズルタッチ用ボールネジ機構27のネジ軸27bの下部は、ユニットベース2の上部にそれぞれ固定される一方で、各ネジ軸27bの上部は、加熱筒取付ブラケット22にそれぞれ固定され、ノズルタッチ用電動サーボモータ23が回転されると、各ノズルタッチ用ボールネジ機構27のナット体27aが回転され、それに伴い、ナット体27aと一体となって加熱筒取付ブラケット22を下降する。
【0017】
ここで、型開閉ユニットの上部に射出ユニット1を保持するユニットベース2について説明する。ユニットベース2は、図2〜5に示すように、逆台形型をなしており、略直方体型の本体フレーム30、この本体フレーム30の各隅から水平方向外側に延出された延出部31,32が構成されている。本体フレーム30は8箇所の各隅を結ぶようにして一体に形成されており、ユニットベース2の下部の本体フレーム30に一体に形成された延出部32の各々には下孔33が形成され、この下孔33を用いてユニットベース2が、型開閉ユニットに構成され、下面に固定金型が取り付けられる保持プレート7に対しボルトにより螺着されている。
【0018】
また、ユニットベース2の上部の本体フレーム30に一体に形成された延出部31の各々には上孔34が形成され、この上孔34には、射出ユニット1のノズルタッチ用ボールネジ機構27のネジ軸27bの下端がボルトにより螺着され、これにより、図1に示すように、射出ユニット1はユニットベース2を介して型開閉ユニットの上部に保持されている。
【0019】
ユニットベース2の6方(前後左右上下)には、開口部35が形成されており、本体フレーム30のうち、前側上部の一辺に位置する着脱フレーム30aは、ボルトにより着脱可能に設けられており、ユニットベース2の内側(本体フレームに囲まれた部位)には射出ユニット1の先端側(射出ノズル1と加熱筒4の先端側)が挿通される作業空間部40を有し、該作業空間部40と開口部35は連通している。なお、前記着脱フレーム30aは、射出ノズル5や加熱筒4を射出ユニット1から着脱する際、作業が容易になるよう取り外すものであり、また、ユニットベース2の前後左右の向きは、射出ユニット1及び縦型射出成形機の前後左右の向きと対応している。
【0020】
また、ユニットベース2の下部に形成された下孔33は、ユニットベース2の下部の4隅に各2つずつ形成され、これらの上方であるユニットベース2の上部の4隅には、1つずつ上孔34が形成されている。そして、上孔34は下孔33よりも外側に配設されており、上孔34の形成された延出部31と下孔33の形成された延出部32とは略逆3角形状の補強リブ41により一体に連結され、ユニットベース1は逆台形型となっており、射出ノズル5から高速射出を実現するため高速で動作される射出ユニット(射出ユニット1の射出スクリュー6)1を、上孔34を用いてボルトにより確実に保持した上で、これら上孔34が形成されたユニットベース2の上部よりも幅寸法が小さく小スペース化を実現したユニットベース2の下部に位置する下孔33を用い、ボルトにより金型の取り付けられる保持プレート7を保持することで、保持プレート7に取り付けられた金型の型開閉動作等に悪影響を及ぼすことなく高速射出を実現でき、さらには、射出ノズル5や、射出ノズル5が装着された加熱筒4を着脱するときには、縦型射出成形機の前後左右に対応するユニットベース2の側面側4方向(前後左右)の開口部35から手やレンチ等の工具を差し入れて、作業空間部40に配置された射出ノズル5や加熱筒4の着脱作業を容易に行うことができる。
【0021】
以上のように構成された縦型射出成形機によれば、型開閉ユニットに構成され金型が装着される保持プレート7に、ユニットベース2を固定すると共に、保持プレート7に固定されたユニットベース2に、ノズルタッチ用ボールネジ機構27を固定することにより、ユニットベース2を介して保持プレート7に射出ユニット1を保持した縦型射出成形機において、ユニットベース2には、縦型射出成形機の前後左右の4方向に位置して開口部35を備え、この開口部35に連通する作業空間部40をユニットベース2の内側に備えたものである。これにより、加熱筒4を前進下降させ、ユニットベース2の内側の作業空間部40に、射出ノズル5や加熱筒4の先端側を挿通させた状態において、開口部35から作業空間部40へ手や工具等を差し入れて、射出ノズル5の着脱や加熱筒4の着脱作業、或いは、これらの保守・点検作業を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 射出ユニット
2 ユニットベース
4 加熱筒
5 射出ノズル
6 射出スクリュー
7 保持プレート
22 加熱筒取付ブラケット
23 ノズルタッチ用電動サーボモータ(電動サーボモータ)
27 ノズルタッチ用ボールネジ機構(ボールネジ機構)
27a ナット体
27b ネジ軸
35 開口部
40 作業空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を縦方向に型開閉する型開閉ユニットと、
型閉された前記金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットと、を備えた縦型射出成形機であって、
金型のキャビティに溶融樹脂を射出する射出ノズルと、
該射出ノズルを先端に装着した加熱筒と、
該加熱筒に内挿された射出スクリューと、
前記加熱筒が一体に設けられ該加熱筒と共に縦方向に昇降される加熱筒取付ブラケットと
該加熱筒取付ブラケットを昇降させる駆動源としての電動サーボモータと、
該電動サーボモータによる回転運動を直線運動に変換し、該直線運動により前記加熱筒取付ブラケットを縦方向に昇降するボールネジ機構と、
前記加熱筒が下降されたときに、前記射出ノズル及び前記加熱筒の先端側が挿通されるユニットベースと、を備え、
前記型開閉ユニットに構成されている前記金型が装着される保持プレートに対しユニットベースを固定すると共に、該保持プレートに固定されたユニットベースに前記ボールネジ機構を固定することにより、前記ユニットベースを介して前記型開閉ユニットに前記射出ユニットを保持し、
前記ユニットベースには、前記縦型射出成形機の前後左右の4方向に位置して開口部を備え、該開口部に連通する作業空間部を前記ユニットベースの内側に備え、
前記加熱筒を下降させたときに、前記開口部から前記作業空間部へ工具を差し入れて、前記作業空間部に配置された射出ノズル、及び該射出ノズルが装着された加熱筒の着脱作業を行えるようにしたことを特徴とする縦型射出成形機。
【請求項2】
前記射出ユニットのボールネジ機構には、
前記ユニットベースに固定されるネジ軸と、
該ネジ軸に螺合され前記電動サーボモータによる回転運動を直線運動に変換して該直線運動により前記加熱筒取付ブラケットに一体に設けた加熱筒を昇降させるナット体と、を備えており、
該ナット体の縦方向の直線運動により、該ナット体と一体に設けられた前記加熱筒取付ブラケットを昇降させ、該加熱筒取付ブラケットに一体に設けた前記射出ノズルを装着した加熱筒を縦方向に昇降させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の縦型射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206388(P2012−206388A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73936(P2011−73936)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】